以下、図示実施形態に基づき本発明を説明する。なお、部材を識別しやすくするために、一部の図面では部材毎に外形線の太さを異ならせたり、線種を異ならせている。また断面図中には、実際には周方向の異なる位置にあるが、作図上、同一断面上に表している箇所もある。
[ズームレンズ鏡筒の全体の説明]
まず、図1ないし図19について、本実施形態のズームレンズ鏡筒71の全体構造を説明する。図6及び図7に示すように、ズームレンズ鏡筒71はデジタルカメラ70に搭載されており、撮影光学系は、物体側から順に、第1レンズ群LG1、シャッタS及び絞りA、第2レンズ群LG2、第3レンズ群LG3、ローパスフィルタ(フィルタ類)LG4及びCCD(固体撮像素子)60からなっている。撮影光学系の光軸はZ1である。この撮影光軸Z1は、ズームレンズ鏡筒71の外観を構成する各環状部材の回動中心軸(以下、鏡筒中心軸Z0と呼ぶ)と平行であり、かつ該鏡筒中心軸Z0に対して下方に偏心している。ズーミングは、第1レンズ群LG1と第2レンズ群LG2を撮影光軸Z1方向に所定の軌跡で進退させることによって行い、フォーカシングは同方向への第3レンズ群LG3の移動で行う。なお、以下の説明中で「光軸方向」という記載は、特に断りがなければ撮影光軸Z1と平行な方向を意味している。
図6及び図7に示すように、カメラボディ72内に固定環(外側環状部材)22が固定され、この固定環22の後部にCCDホルダ21が固定されている。CCDホルダ21上にはCCDベース板62を介してCCD60が支持され、CCD60の前部に、フィルタホルダ73とパッキン61を介してローパスフィルタLG4が支持されている。フィルタホルダ73は、CCDホルダ21の一部として一体に形成されている。CCDホルダ21の後部には、画像や撮影情報を表示するLCD20が設けられている。
固定環22内には、第3レンズ群LG3を保持するAFレンズ枠(3群レンズ枠)51が光軸方向に直進移動可能に支持されている。すなわち、固定環22とCCDホルダ21には、撮影光軸Z1と平行な一対のAFガイド軸52、53の前端部と後端部がそれぞれ固定されており、このAFガイド軸52、53に対してそれぞれ、AFレンズ枠51に形成したガイド孔51a、51bが摺動可能に嵌まっている。本実施形態では、AFガイド軸52とガイド孔51aのクリアランスよりもAFガイド軸53とガイド孔51bのクリアランス大きくなっている。すなわち、AFガイド軸52が主たる(厳密な精度を出す)ガイド軸で、AFガイド軸53はサブ(回り止め)のガイド軸である。また、AFモータ160のドライブシャフトに形成した送りねじに対し、AFナット54が螺合している。図1に示すように、AFナット54は回転規制突起54aを有し、AFレンズ枠51は光軸方向へのガイド溝51mを有し、回転規制突起54aがガイド溝51mに対して摺動可能に嵌まっている。AFレンズ枠51はさらに、AFナット54の後方に位置するストッパ突起51nを有する。AFレンズ枠51は、AF枠付勢ばね55によって前方へ付勢されており、ストッパ突起51nがAFナット54に当て付くことによってAFレンズ枠51の前方移動端が決定される。そしてAFナット54が光軸方向後方へ移動したときに、AFレンズ枠51はAFナット54に押圧されて後方へ移動される。以上の構造により、AFモータ160のドライブシャフトを正逆に回転させると、AFレンズ枠51が光軸方向に進退される。なお、AFレンズ枠51を直接に(AFナット54によらずに)押圧して、AF枠付勢ばね55に抗して後方へ移動させることも可能である。
図5に示すように、固定環22の上部には、ズームモータ150と減速ギヤボックス74が支持されている。減速ギヤボックス74は内部に減速ギヤ列を有し、ズームモータ150の駆動力をズームギヤ28に伝える。ズームギヤ28は、撮影光軸Z1と平行なズームギヤ軸29によって固定環22に枢着されている。ズームモータ150とAFモータ160は、固定環22の外周面に配設したレンズ駆動制御FPC(フレキシブルプリント回路)基板75を介して、カメラの制御回路140(図19)により制御される。
固定環22の内周面には、雌ヘリコイド(回転進退機構)22a、撮影光軸Z1と平行な3本の直進案内溝22b、雌ヘリコイド22aと平行な3本の斜行溝(無ヘリコイド領域)22c、及び各斜行溝22cの前端部に連通する周方向への回転摺動溝(周方向溝)22dが形成されている。回転摺動溝22dは固定環22の前端部付近に形成され、この回転摺動溝22dの直後の前方環状領域22zには雌ヘリコイド22aが形成されていない(図8参照)。
ヘリコイド環(回転環)18は、雌ヘリコイド(回転進退機構)22aに螺合する雄ヘリコイド(回転進退機構)18aと、斜行溝22c及び回転摺動溝22d内に位置される回転摺動突起(回転案内突起)18bとを外周面に有している(図4、図9)。雄ヘリコイド18a上には、撮影光軸Z1と平行なギヤ歯を有するスパーギヤ部18cが形成されており、スパーギヤ部18cはズームギヤ28に対して螺合する。従って、ズームギヤ28からスパーギヤ部18cへ回転力が与えられたとき、ヘリコイド環18は、雌ヘリコイド22aと雄ヘリコイド18aが螺合関係にある状態では回転しながら光軸方向へ進退し、ある程度前方に移動すると、雄ヘリコイド18aが雌ヘリコイド22aから外れ、回転摺動溝22dと回転摺動突起18bの係合関係によって鏡筒中心軸Z0を中心とする周方向回転のみを行う。
斜行溝22cは、雌ヘリコイド22aと雄ヘリコイド18aが螺合する段階で回転摺動突起18bと固定環22の干渉を避けるために形成された逃げ溝であり、図28に示すように、斜行溝22cは雌ヘリコイド22aの底部よりも深くなっている。雌ヘリコイド22aは、各斜行溝22cを挟む一対のヘリコイド山の周方向間隔が他のヘリコイド山の周方向間隔よりも広くなっており、雄ヘリコイド18aは、この周方向間隔の広いヘリコイド山に係合するべく、回転摺動突起18bの後方に位置する3つのヘリコイド山18a-Wが他のヘリコイド山よりも周方向に幅広になっている。
固定環22にはさらに、その外周面と回転摺動溝22dとを貫通するストッパ挿脱孔(径方向貫通孔)22eが形成され、このストッパ挿脱孔22eに対し、撮影領域を越えるヘリコイド環18の回動を規制するための分解ストッパ(ストッパ部材)26が着脱可能となっている。
ヘリコイド環18の前端部内周面に形成した回転伝達凹部18d(図4、図10)に対し、第3外筒(回転環、連動回転環)15の後端部から後方に突設した回転伝達突起15a(図11)が嵌入されている。回転伝達凹部18dと回転伝達突起15aはそれぞれ、周方向に位置を異ならせて3箇所設けられており、周方向位置が対応するそれぞれの回転伝達突起15aと回転伝達凹部18dは、鏡筒中心軸Z0に沿う方向への相対摺動は可能に結合し、該鏡筒中心軸Z0を中心とする周方向には相対回動不能に結合されている。すなわち、第3外筒15とヘリコイド環18は一体に回転する。また、ヘリコイド環18には、回転摺動突起18bの内径側の一部領域を切り欠いて嵌合凹部18eが形成されており、該嵌合凹部18eに嵌合する嵌合突起(光軸方向移動規制突起)15bは、回転摺動突起18bが回転摺動溝22dに係合するとき、同時に回転摺動溝22dに係合する(図6の鏡筒上半断面参照)。
第3外筒15とヘリコイド環18の間には、互いを光軸方向での離間方向へ付勢する3つの離間方向付勢ばね(付勢部材)25が設けられている。離間方向付勢ばね25は圧縮コイルばねからなり、その後端部がヘリコイド環18の前端部に開口するばね挿入凹部18fに収納され、前端部が第3外筒15のばね当付凹部15cに当接している。この離間方向付勢ばね25によって、回転摺動溝22dの前側壁面に向けて嵌合突起15bを押圧し、かつ回転摺動溝22dの後側壁面に向けて回転摺動突起18bを押圧することで、固定環22に対する第3外筒15とヘリコイド環18の光軸方向のバックラッシュが除去される。
第3外筒15の内周面には、内径方向に突設された爪状の相対回動案内突起15dと、鏡筒中心軸Z0を中心とする周方向溝15eと、撮影光軸Z1と平行な3本のローラ嵌合溝15fとが形成されている(図4、図11)。相対回動案内突起15dは、周方向に位置を異ならせて複数設けられている。ローラ嵌合溝15fは、回転伝達突起15aに対応する周方向位置に形成されており、その後端部は、回転伝達突起15aを貫通して後方へ向け開口されている。また、ヘリコイド環18の内周面には鏡筒中心軸Z0を中心とする周方向溝18gが形成されている(図4、図10)。この第3外筒15とヘリコイド環18の結合体の内側には直進案内環14が支持される。直進案内環14の外周面には光軸方向の後方から順に、外径方向へ突出する3つの直進案内突起14aと、それぞれ周方向に位置を異ならせて複数設けた爪状の相対回動案内突起14b及び相対回動案内突起14cと、鏡筒中心軸Z0を中心とする周方向溝14dとが形成されている(図4、図12)。直進案内環14は、直進案内突起14aを直進案内溝22bに係合させることで、固定環22に対し光軸方向に直進案内される。また第3外筒15は、周方向溝15eを相対回動案内突起14cに係合させ、相対回動案内突起15dを周方向溝14dに係合させることで、直進案内環14に対して相対回動可能に結合される。周方向溝15eと相対回動案内突起14c、周方向溝14dと相対回動案内突起15dはそれぞれ、光軸方向には若干相対移動可能なように遊嵌している。さらにヘリコイド環18も、周方向溝18gを相対回動案内突起14bに係合させることで、直進案内環14に対して相対回動可能に結合される。周方向溝18gと相対回動案内突起14bは光軸方向には若干相対移動可能なように遊嵌している。
直進案内環14には、内周面と外周面を貫通する3つのローラ案内貫通溝14eが形成されている。各ローラ案内貫通溝14eは、図12に示すように、周方向へ向け形成された平行な前後の周方向溝部14e-1、14e-2と、この両周方向溝部14e-1及び14e-2を接続するリード溝部14e-3とを有する。それぞれのローラ案内貫通溝14eに対し、カム環11の外周面に設けたカム環ローラ32が嵌まっている。カム環ローラ32は、ローラ固定ねじ32aを介してカム環11に固定されており、周方向へ位置を異ならせて3つ設けられている。カム環ローラ32はさらに、ローラ案内貫通溝14eを貫通して第3外筒15内周面のローラ嵌合溝15fに嵌まっている。各ローラ嵌合溝15fの前端部付近には、ローラ付勢ばね17に設けた3つのローラ押圧片17aが嵌っている(図11)。ローラ押圧片17aは、カム環ローラ32が周方向溝部14e-1に係合するときに該カム環ローラ32に当接して後方へ押圧し、カム環ローラ32とローラ案内貫通溝14e(周方向溝部14e-1)との間のバックラッシュを取る。
以上の構造から、固定環22からカム環11までの繰り出しの態様が理解される。すなわち、ズームモータ150によってズームギヤ28を鏡筒繰出方向に回転駆動すると、雌ヘリコイド22aと雄ヘリコイド18aの関係によってヘリコイド環18が回転しながら前方に繰り出される。ヘリコイド環18と第3外筒15はそれぞれ、周方向溝14d、15e及び18gと相対回動案内突起15d、14c及び14bの係合関係によって、直進案内環14に対して相対回動可能かつ回転軸方向(鏡筒中心軸Z0に沿う方向)へは共に移動するように結合されているため、ヘリコイド環18が回転繰出されると、第3外筒15も同方向に回転しながら前方に繰り出され、直進案内環14はヘリコイド環18及び第3外筒15と共に前方へ直進移動する。また、第3外筒15の回転力はローラ嵌合溝15fとカム環ローラ32を介してカム環11に伝達される。カム環ローラ32はローラ案内貫通溝14eにも嵌まっているため、直進案内環14に対してカム環11は、リード溝部14e-3の形状に従って回転しながら前方に繰り出される。前述の通り、直進案内環14自体も第3外筒15及びヘリコイド環18と共に前方に直進移動しているため、結果としてカム環11には、リード溝部14e-3に従う回転繰出分と、直進案内環14の前方への直進移動分とを合わせた光軸方向移動量が与えられる。
以上の繰出動作は雄ヘリコイド18aと雌ヘリコイド22aが螺合している間行われ、このとき回転摺動突起18bは斜行溝22c内を移動している。ヘリコイド環18と第3外筒15が所定量繰り出されると、雄ヘリコイド18aと雌ヘリコイド22aの螺合が解除されて、やがて回転摺動突起18bと嵌合突起15bが斜行溝22cから回転摺動溝22d内へ入る。すると、ヘリコイドによる回転繰出力が作用しなくなるため、ヘリコイド環18及び第3外筒15は、回転摺動突起18b及び嵌合突起15bと回転摺動溝22dとの係合関係によって光軸方向の一定位置で回動のみを行うようになる。また、回転摺動突起18bが斜行溝22cから回転摺動溝22d内へ入るのとほぼ同時に、カム環ローラ32はローラ案内貫通溝14eの周方向溝部14e-1に入る。するとカム環11に対しても前方への移動力が与えられなくなり、カム環11は第3外筒15の回転に応じて一定位置で回動のみ行うようになる。
ズームギヤ28を鏡筒収納方向に回転駆動させると、以上と逆の動作が行われる。カム環ローラ32がローラ案内貫通溝14eの周方向溝部14e-2に入るまでヘリコイド環18に回転を与えると、以上の各鏡筒部材が図7に示す位置まで後退する。
続いて、カム環11より先の構造を説明する。直進案内環14の内周面には、撮影光軸Z1と平行な3つの第1直進案内溝14f及び6つの第2直進案内溝14gが、それぞれ周方向に位置を異ならせて形成されている。第1直進案内溝14fは、6つのうち3つの第2直進案内溝14gの両側に位置する一対の溝部からなっており、この3つの第1直進案内溝14fに対し、2群直進案内環10に設けた3つの股状突起10a(図3、図15)が摺動可能に係合している。一方、第2直進案内溝14gに対しては、第2外筒13の後端部外周面に突設した6つの直進案内突起13a(図2、図17)が摺動可能に係合している。したがって、第2外筒13と2群直進案内環10はいずれも、直進案内環14を介して光軸方向に直進案内されている。
2群直進案内環10は、第2レンズ群LG2を支持する2群レンズ移動枠8を直進案内するための部材であり、第2外筒13は、第1レンズ群LG1を支持する第1外筒12を直進案内するための部材である。
まず第2レンズ群LG2の支持構造を説明する。2群直進案内環10は、3つの股状突起10aを接続するリング部10bから前方へ向けて、3つの直進案内キー10cを突出させている(図3、図15)。図6及び図7に示すように、リング部10bの外縁部は、カム環11の後端部内周面に形成した周方向溝11eに対し相対回転は可能で光軸方向の相対移動は不能に係合しており、直進案内キー10cはカム環11の内側に延出されている。各直進案内キー10cは、撮影光軸Z1と平行な一対のガイド面を側面に有しており、このガイド面を、カム環11の内側に支持された2群レンズ移動枠8の直進案内溝8aに係合させることによって、2群レンズ移動枠8を軸方向に直進案内している。直進案内溝8aは、2群レンズ移動枠8の外周面側に形成されている。
なお、2群直進案内環10には周方向に位置を異ならせて直進案内キー10cが3つ設けられているが、そのうちひとつの直進案内キー10c-Wは、後述する露出制御用のFPC(フレキシブルプリント回路)基板77の支持部材を兼ねるために、残る2つの直進案内キー10cよりも周方向に幅広になっている。幅広の直進案内キー10c-Wには、リング部10bとの接続部分近傍を一部切り欠いて径方向へ貫通するFPC通し孔10dが形成されており、図6に示すように、露出制御FPC基板77は、該FPC通し孔10dを通してリング部10bの後方から直進案内キー10c-Wの外周面側へ延出され、直進案内キー10c-Wの先端部で後方に折り曲げられている。これに対応して、3つの直進案内溝8aのうちひとつは、幅広の直進案内キー10c-Wが係合可能な幅広の直進案内溝8a-Wとなっている。該直進案内溝8a-Wの中央部は、露出制御FPC基板77を通すことが可能な貫通部になっており、この貫通部の両側に直進案内キー10c-Wを支持するための有底部が形成されている。これに対し、残る2つの直進案内溝8aはいずれも、2群レンズ移動枠8の外周面側に形成された有底溝となっている。2群レンズ移動枠8と2群直進案内環10は、直進案内キー10c-Wが直進案内溝8a-Wに係合可能な特定の回転位相でのみ組み合わせることができる。
カム環11の内周面には2群案内カム溝11aが形成されている。図14に示すように、2群案内カム溝11aは、光軸方向及び周方向に位置を異ならせた前方カム溝11a-1と後方カム溝11a-2からなっている。前方カム溝11a-1と後方カム溝11a-2はいずれも、同形状の基礎軌跡αをトレースして形成されたカム溝であるが、それぞれが基礎軌跡α全域をカバーしているのではなく、前方カム溝11a-1と後方カム溝11a-2では基礎軌跡α上に占める領域の一部が異なっている。基礎軌跡とは、ズーム領域及び収納用領域を含む全ての鏡筒使用領域(使用領域)と、鏡筒の組立分解用領域とを含む概念上のカム溝形状である。つまり、鏡筒使用領域とはこのカム溝形状によって2群レンズ移動枠8の移動が制御されうる領域のことであり、組立分解領域と区別する意味で用いられている。また、ズーム領域とは、鏡筒使用領域の中でも特にワイド端とテレ端の間の移動を制御するための領域であり、収納用領域と区別する意味で用いられている。カム環11には、一対の前方カム溝11a-1と後方カム溝11a-2を1グループとした場合、周方向に等間隔で3グループの2群案内カム溝11aが形成されている。
2群案内カム溝11aに対して、2群レンズ移動枠8の外周面に設けた2群用カムフォロア8bが係合している。2群案内カム溝11aと同様に2群用カムフォロア8bも、光軸方向及び周方向に位置を異ならせた一対の前方カムフォロア8b-1と後方カムフォロア8b-2を1グループとして周方向に等間隔で3グループが設けられており、各前方カムフォロア8b-1は前方カム溝11a-1に係合し、各後方カムフォロア8b-2は後方カム溝11a-2に係合するように光軸方向及び周方向の間隔が定められている。
2群レンズ移動枠8は2群直進案内環10を介して光軸方向に直進案内されているため、カム環11が回転すると、2群案内カム溝11aに従って、2群レンズ移動枠8が光軸方向へ所定の軌跡で移動する。
2群レンズ移動枠8の内側には、第2レンズ群LG2を保持する2群レンズ枠6が支持されている。2群レンズ枠6は、一対の2群レンズ枠支持板36、37に対し、2群回動軸33を介して軸支されており、2群枠支持板36、37が支持板固定ビス66によって2群レンズ移動枠8に固定されている。2群回動軸33は撮影光軸Z1と平行でかつ撮影光軸Z1に対して偏心しており、2群レンズ枠6は、2群回動軸33を回動中心として、第2レンズ群LG2の光軸を撮影光軸Z1と一致させる撮影用位置(図6)と、第2レンズ群LG2の光軸を撮影光軸Z1から偏心した退避光軸Z2へと変位させる収納用退避位置(図7)とに回動することができる。2群レンズ移動枠8には、2群レンズ枠6を上記撮影用位置で回動規制する回動規制ピン35が設けられていて、2群レンズ枠6は、2群レンズ枠戻しばね39によって該回動規制ピン35との当接方向へ回動付勢されている。軸方向押圧ばね38は、2群レンズ枠6の光軸方向のバックラッシュ取りを行う。
2群レンズ枠6は、光軸方向には2群レンズ移動枠8と一体に移動する。CCDホルダ21には2群レンズ枠6に係合可能な位置にカム突起21a(図4)が前方に向けて突設されており、図7のように2群レンズ移動枠8が収納方向に移動してCCDホルダ21に接近すると、該カム突起21aの先端部に形成したカム面が、2群レンズ枠6に係合して上記の収納用退避位置に回動させる。
続いて第1レンズ群LG1の支持構造を説明する。直進案内環14を介して光軸方向に直進案内された第2外筒13の内周面には、周方向に位置を異ならせて3つの直進案内溝13bが光軸方向へ形成されており、各直進案内溝13bに対し、第1外筒12の後端部付近の外周面に形成した3つの係合突起12aが摺動可能に嵌合している(図2、図17及び図18参照)。すなわち、第1外筒12は、直進案内環14と第2外筒13を介して光軸方向に直進案内されている。また、第2外筒13は後端部付近の内周面に、周方向へ向かう内径フランジ13cを有し、この内径フランジ13cがカム環11の外周面に設けた周方向溝11cに摺動可能に係合することで、第2外筒13は、カム環11に対して相対回転可能かつ光軸方向の相対移動は不能に結合されている。一方、第1外筒12は、内径方向に突出する3つの1群用ローラ(カムフォロア)31を有し、それぞれの1群用ローラ31が、カム環11の外周面に3本形成した1群案内カム溝11bに摺動可能に嵌合している。
第1外筒12内には、1群調整環2を介して1群レンズ枠1が支持されている。1群レンズ枠1には第1レンズ群LG1が固定され、その外周面に形成した雄調整ねじ1aが、1群調整環2の内周面に形成した雌調整ねじ2aに螺合している。この調整ねじの螺合位置を調整することよって、1群レンズ枠1は1群調整環2に対して光軸方向に位置調整可能となっている。
1群調整環2は外径方向に突出する一対の(図2には一つのみを図示)ガイド突起2bを有し、この一対のガイド突起2bが、第1外筒12の内周面側に形成した一対の1群調整環ガイド溝12bに摺動可能に係合している。1群調整環ガイド溝12bは撮影光軸Z1と平行に形成されており、該1群調整環ガイド溝12bとガイド突起2bの係合関係によって、1群調整環2と1群レンズ枠1の結合体は、第1外筒12に対して光軸方向の前後移動が可能になっている。第1外筒12にはさらに、ガイド突起2bの前方を塞ぐように、1群抜止環3が抜止環固定ビス64によって固定されている。1群抜止環3のばね受け部3aとガイド突起2bとの間には、圧縮コイルばねからなる1群付勢ばね24が設けられ、該1群付勢ばね24によって1群調整環2は光軸方向後方に付勢されている。1群調整環2は、その前端部付近の外周面に突設した係合爪2cを、1群抜止環3の前面(図2に見えている側の面)に係合させることによって、第1外筒12に対する光軸方向後方への最大移動位置が規制される(図6の上半断面参照)。一方、1群付勢ばね24を圧縮させることによって、1群調整環2は光軸方向前方に若干量移動することができる。
第1レンズ群LG1と第2レンズ群LG2の間には、シャッタSと絞りAを有するシャッタユニット76が支持されている。シャッタユニット76は、2群レンズ移動枠8の内側に支持されており、シャッタSと絞りAは、第2レンズ群LG2との空気間隔が固定となっている。シャッタユニット76を挟んだ前後位置には、シャッタSと絞りAを駆動する2つのアクチュエータ131、132(図19)が、それぞれ一つずつ配置されており、シャッタユニット76からはこれらアクチュエータをカメラの制御回路140と接続するための露出制御FPC基板77が延出されている。なお、露出制御FPC基板77は、実際には図6における下半断面(ワイド端)の位置には存在しないが、他の部材との位置関係を分かりやすくするために図示している。
第1外筒12の前端部には、シャッタSとは別に、非撮影時に撮影開口を閉じて撮影光学系(第1レンズ群LG1)を保護するためのレンズバリヤ機構が設けられる。レンズバリヤ機構は、鏡筒中心軸Z0に対して偏心した位置に設けた回動軸を中心として回動可能な一対のバリヤ羽根104及び105と、該バリヤ羽根104、105を閉じ方向に付勢する一対のバリヤ付勢ばね106と、鏡筒中心軸Z0を中心として回動可能で所定方向の回動によってバリヤ羽根104、105に係合して開かせるバリヤ駆動環103と、該バリヤ駆動環103をバリヤ開放方向に回動付勢するバリヤ駆動環付勢ばね107と、バリヤ羽根104、105とバリヤ駆動環103の間に位置するバリヤ押さえ板102とを備えている。バリヤ駆動環付勢ばね107の付勢力はバリヤ付勢ばね106の付勢力よりも強く設定されており、ズームレンズ鏡筒71がズーム領域(図6)に繰り出されているときには、バリヤ駆動環付勢ばね107がバリヤ駆動環103をバリヤ開放用の角度位置に保持して、バリヤ付勢ばね106に抗してバリヤ羽根104、105が開かれる。そしてズームレンズ鏡筒71がズーム領域から収納位置(図7)へ移動する途中で、カム環11のバリヤ駆動環押圧面11d(図3、図13)がバリヤ駆動環103をバリヤ開放方向と反対方向に強制回動させ、バリヤ駆動環103がバリヤ羽根104、105に対する係合を解除して、該バリヤ羽根104、105がバリヤ付勢ばね106の付勢力によって閉じられる。レンズバリヤ機構の前部は、バリヤカバー101(化粧板)によって覆われている。
以上の構造のズームレンズ鏡筒71の全体的な繰出及び収納動作を、図6、図7及び図19を参照して説明する。図19は、ズームレンズ鏡筒71の主要な部材の関係を概念的に示したものであり、各部材の符号の後の括弧内の「S」は固定部材、「L」は光軸方向の直線移動のみ行う部材、「R」は回転のみ行う部材、「RL」は回転しながら光軸方向に移動する部材であることをそれぞれ意味している。また、括弧内に二つの記号が併記されている部材は、繰出時及び収納時にその動作態様が切り換わることを意味している。
カム環11が収納位置から定位置回転状態に繰り出される段階までは既に説明しているので簡潔に述べる。図7の鏡筒収納状態では、ズームレンズ鏡筒71はカメラボディ72内に完全に格納されており、カメラ70の前面は、カメラボディ72からズームレンズ鏡筒71が突出しないフラット形状になっている。この鏡筒収納状態からズームモータ150によりズームギヤ28を繰出方向に回転駆動させると、ヘリコイド環18と第3外筒15の結合体がヘリコイド(雄ヘリコイド18a、雌ヘリコイド22a)に従って回転繰出される。直進案内環14は、第3外筒15及びヘリコイド環18と共に前方に直進移動する。このとき、第3外筒15により回転力が付与されるカム環11は、直進案内環14の前方への直進移動分と、該直進案内環14との間に設けたリード構造(カム環ローラ32、リード溝部14e-3)による繰出分との合成移動を行う。ヘリコイド環18とカム環11が前方の所定位置まで繰り出されると、それぞれの回転繰出構造(ヘリコイド、リード)の機能が解除されて、鏡筒中心軸Z0を中心とした周方向回転のみを行うようになる。
カム環11が回転すると、その内側では、2群直進案内環10を介して直進案内された2群レンズ移動枠8が、2群用カムフォロア8bと2群案内カム溝11aの関係によって光軸方向に所定の軌跡で移動される。図7の鏡筒収納状態では、2群レンズ移動枠8内の2群レンズ枠6は、CCDホルダ21に突設したカム突起21aの作用によって撮影光軸Z1から上方へ偏心した収納用退避位置に保持されており、第2レンズ群LG2が退避光軸Z2位置にあった。そして、2群レンズ枠6は、2群レンズ移動枠8がズーム領域まで繰り出される途中でカム突起21aから離れて、2群レンズ枠戻しばね39の付勢力によって第2レンズ群LG2の光軸を撮影光軸Z1と一致させる撮影用位置(図6)に回動する。以後、ズームレンズ鏡筒71を再び収納位置に移動させるまでは、2群レンズ枠6は撮影用位置に保持される。
また、カム環11が回転すると、該カム環11の外側では、第2外筒13を介して直進案内された第1外筒12が、1群用ローラ31と1群案内カム溝11bの関係によって光軸方向に所定の軌跡で移動される。
すなわち、撮像面(CCD受光面)に対する第1レンズ群LG1と第2レンズ群LG2の繰出位置はそれぞれ、前者が、固定環22に対するカム環11の前方移動量と、該カム環11に対する第1外筒12のカム繰出量との合算値として決まり、後者が、固定環22に対するカム環11の前方移動量と、該カム環11に対する2群レンズ移動枠8のカム繰出量との合算値として決まる。ズーミングは、この第1レンズ群LG1と第2レンズ群LG2が互いの空気間隔を変化させながら撮影光軸Z1上を移動することにより行われる。図7の収納位置から鏡筒繰出を行うと、まず図6の下半断面に示すワイド端の繰出状態になり、さらにズームモータ150を鏡筒繰出方向に駆動させると、同図の上半断面に示すテレ端の繰出状態となる。図6から分かるように、本実施形態のズームレンズ鏡筒71は、ワイド端では第1レンズ群LG1と第2レンズ群LG2の間隔が大きく、テレ端では、第1レンズ群LG1と第2レンズ群LG2が互いの接近方向に移動して間隔が小さくなる。このような第1レンズ群LG1と第2レンズ群LG2の空気間隔の変化は、2群案内カム溝11aと1群案内カム溝11bの軌跡によって与えられるものである。このテレ端とワイド端の間のズーム領域(ズーミング使用領域)では、カム環11、第3外筒15及びヘリコイド環18は、前述の定位置回転のみを行い、光軸方向へは進退しない。
ズーム領域では、被写体距離に応じてAFモータ160を駆動することにより、第3レンズ群LG3(AFレンズ枠51)が撮影光軸Z1に沿って移動してフォーカシングがなされる。
ズームモータ150を鏡筒収納方向に駆動させると、ズームレンズ鏡筒71は、前述の繰り出し時とは逆の収納動作を行い、カメラボディ72の内部に完全に格納される収納位置(図7)まで移動される。この収納位置への移動の途中で、2群レンズ枠6がカム突起21aによって収納用退避位置に回動され、2群レンズ移動枠8と共に後退する。ズームレンズ鏡筒71が収納位置まで移動されると、第2レンズ群LG2は、光軸方向において第3レンズ群LG3やローパスフィルタLG4と同位置に格納される(鏡筒の径方向に重なる)。この収納時の第2レンズ群LG2の退避構造によってズームレンズ鏡筒71の収納長が短くなり、図7の左右方向におけるカメラボディ72の厚みを小さくすることが可能となっている。
デジタルカメラ70は、ズームレンズ鏡筒71に連動するズームファインダを備えている。ズームファインダは、ファインダギヤ30をスパーギヤ部18cに噛合させてヘリコイド環18から動力を得ており、該ヘリコイド環18がズーム領域において前述の定位置回転を行うと、その回転力を受けてファインダギヤ30が回転する。ファインダ光学系は、対物窓81a、第1の可動変倍レンズ81b、第2の可動変倍レンズ81c、プリズム81d、接眼レンズ81e、接眼窓81fを有し、第1と第2の可動変倍レンズ81b、81cをファインダ対物系の光軸Z3に沿って所定の軌跡で移動させることで変倍を行う。ファインダ対物系の光軸Z3は、撮影光軸Z1と平行である。可動変倍レンズ81b及び81cの保持枠83、84は、ガイドシャフト85、86(図6及び図7では重なって一本に見えている)によって光軸Z3方向に移動可能に直進案内され、かつ光軸Z3と平行な回動中心軸で回動可能なカムギヤ90(図5)によって移動力が与えられるようになっている。このカムギヤ90とファインダギヤ30の間に減速ギヤ列が設けられており、ファインダギヤ30が回転するとカムギヤ90が回転され、その結果として可動変倍レンズ81b、81cが進退する。以上のズームファインダの構成要素は、図5に示すファインダユニット80としてサブアッシされ、固定環22の上部に取り付けられる。
[本発明の特徴部分の説明]
以上のようにズームレンズ鏡筒71では、図7の鏡筒収納状態から図6の使用状態(ズーム領域)に至る途中までは、ヘリコイド環18、第3外筒15及びカム環11を前方へ回転繰出させ、使用状態においてはヘリコイド環18、第3外筒15及びカム環11を光軸方向に移動させることなく定位置で回転させる。
先に説明した通り、第3外筒15とヘリコイド環18は、回転伝達突起15aを回転伝達凹部18dに係合させることによって回転方向には一体に回動するように結合され、回転伝達突起15aが回転伝達凹部18dに係合する回転位相では同時に、回転摺動突起18bの内径部分に形成した嵌合凹部18eに対して嵌合突起15bが嵌合する(図34、図35参照)。回転伝達突起15a、嵌合突起15bがそれぞれ回転伝達凹部18d、嵌合凹部18eに係合する第3外筒15とヘリコイド環18の回転位相では、ヘリコイド環18の前端部に形成したばね挿入凹部18f内に収納された離間方向付勢ばね25が、第3外筒15の後端部のばね当付凹部15cに対応して位置される。
ヘリコイド環18と第3外筒15はまた、相対回動案内突起14b、14c及び15dと周方向溝18g、15e及び14dとの嵌合関係によって、それぞれが直進案内環14に対して相対回転可能に結合されている。図30ないし図33に示すように、各相対回動案内突起14b、14c及び15dと各周方向溝18g、15e及び14dは、光軸方向には若干相対移動可能に遊嵌しており、ヘリコイド環18と第3外筒15はそれぞれ、直進案内環14に対して光軸方向へ若干量移動可能になっている。つまり、ヘリコイド環18と第3外筒15は、直進案内環14を介することで光軸方向への完全な分割が規制されているが、同時に光軸方向への若干量の相対移動は可能となっている。この直進案内環14に対する光軸方向への遊び量(クリアランス)は、第3外筒15側よりもヘリコイド環18側の方が大きく取られている。
第3外筒15とヘリコイド環18が直進案内環14に対して相対回転可能に結合するとき、ばね当付凹部15cとばね挿入凹部18fの光軸方向の間隔は離間方向付勢ばね25の自由長よりも狭くなり、離間方向付勢ばね25は、圧縮された状態で第3外筒15とヘリコイド環18の対向端面間に保持される。圧縮された離間方向付勢ばね25はその復元力によって、第3外筒15とヘリコイド環18を互いの離間方向、すなわち第3外筒15を光軸方向前方、ヘリコイド環18を光軸方向後方に付勢する。
図24ないし図28に示すように、固定環22の内周面に形成した3つの斜行溝22cはそれぞれ、周方向に離間して対向する一対の対向斜行面22c-A、22c-Bを有し、ヘリコイド環18の3つの回転摺動突起18bはそれぞれ、対向斜行面22c-A、22c-Bに対向する一対の端部斜面18b-A、18b-Bを有している。斜行溝22cの対向斜行面22c-A、22c-Bは、雌ヘリコイド22aのヘリコイド山と平行な方向に向けて形成されていて、回転摺動突起18bの端部斜面18b-A、18b-Bは、各対向斜行面22c-A、22c-Bに干渉しない形状となっている。具体的には、図28のように雄ヘリコイド18aと雌ヘリコイド22aが螺合しているときには、斜行溝22cの対向斜行面22c-A及び22c-Bが回転摺動突起18bの端部斜面18b-A及び18b-Bを挟着(係合)しないようになっている。なお、1つの回転摺動突起18bのみは、分解ストッパ26に当接させるために、端部斜面18b-Aの一部を切り欠いて光軸と平行なストッパ当接面18b-Eが形成されている。
各斜行溝22cに続く3つの回転摺動溝22dではそれぞれ、光軸方向に離間して対向する一対の平行な回転案内面(対向壁面)22d-A、22d-Bを有し、ヘリコイド環18側の3つの回転摺動突起18bはそれぞれ、回転案内面22d-A、22d-Bに摺接可能な前方摺動面18b-Cと後方摺動面18b-Dを有している。図36に示すように、嵌合突起15bを収納する嵌合凹部18eは、各回転摺動突起18bの前方摺動面18b-C側を一部切り欠いて形成されている。また、嵌合突起15bの前面は、該嵌合突起15bが嵌合凹部18eに収納された状態で回転案内面22d-Aに対向する摺接面15b-Aとなっている。
図20及び図24に示す鏡筒収納状態では、ヘリコイド環18の回転摺動突起18bは固定環22の斜行溝22c内に位置しており、端部斜面18b-A、18b-Bがそれぞれ対向斜行面22c-A、22c-Bに対してわずかに離間した状態で対向している。この鏡筒収納状態では、雄ヘリコイド18aと雌ヘリコイド22aが螺合状態にある。したがって、スパーギヤ部18cに噛合するズームギヤ28によって鏡筒繰出方向(図20の上方)の回転をヘリコイド環18に与えると、ヘリコイド環18は、雄ヘリコイド18aと雌ヘリコイド22aの関係によって光軸方向前方(同図左方)に移動する。このヘリコイド環18の回転繰出時には、回転摺動突起18bは斜行溝22c内を移動するため、回転摺動突起18bが固定環22の雌ヘリコイド22aに対して干渉することはない。
回転摺動突起18bが斜行溝22c内に位置するとき、嵌合突起15bの光軸方向位置は斜行溝22cによる規制を受けない。また、回転摺動突起18bでは、対向斜行面22c-A及び22c-Bが斜行溝22cの対向斜行面22c-A及び22c-Bに対向しているが、前方摺動面18b-C及び後方摺動面18b-Dは斜行溝22cによる光軸方向の位置規制を受けない。よって、離間方向付勢ばね25の付勢力によって互いの離間方向に付勢された第3外筒15とヘリコイド環18は、図32及び図33に示すように、前述の各相対回動案内突起(14b、14c及び15d)と各周方向溝(18g、15e及び14d)の間のクリアランスに応じて光軸方向に若干量離間されている。この状態では、離間方向付勢ばね25の圧縮度が低いので付勢力の作用は弱く、第3外筒15とヘリコイド環18の光軸方向間隔は比較的ルーズに保たれているが、回転摺動突起18bが斜行溝22c内に位置する間は収納位置から撮影状態(ズーム領域)に至る途中であって撮影は行わないので、実用上問題はない。むしろ、コンパクトカメラのズームレンズ鏡筒では、電源オフ時を含めて鏡筒収納状態であることの方が撮影状態に比して多い(時間的に長い)ので、本実施形態の離間方向付勢ばね25のように、撮影状態以外では強い負荷を与えない方が経年劣化等のおそれが少なく好ましい。また、収納位置から撮影状態までの繰出に際しての抵抗も小さく抑えることができる。
ヘリコイド環18が光軸方向前方に移動すると、周方向溝18gと相対回動案内突起14bの係合関係によって、直進案内環14もヘリコイド環18と共に光軸方向前方に移動され、直進案内環14に支持されたカム環11にも前方への移動が与えられる。また、ヘリコイド環18の回転力は第3外筒15を介してカム環11に伝達され、該カム環11は、ローラ案内貫通溝14eのリード溝部14e-3とカム環ローラ32の関係によって、直進案内環14に対して光軸方向前方に繰り出される。さらに、カム環11が回転すると、該カム環11に形成した1群案内カム溝11bと2群案内カム溝11aに従って第1レンズ群LG1と第2レンズ群LG2が所定の軌跡で光軸方向に相対移動する。
回転摺動突起18bは、斜行溝22cの最前部まで移動すると、斜行溝22cから脱して回転摺動溝22d内に入る。雄ヘリコイド18aと雌ヘリコイド22aは、この時点で互いの螺合を解除するように、光軸方向の形成領域が設定されている。具体的には、固定環22の内周面上では、回転摺動溝22dの形成領域とその背後の前方環状領域22zが雌ヘリコイド22aを有しておらず、前方環状領域22zの光軸方向への幅は、光軸方向への雄ヘリコイド18aの形成領域よりも大きくなるように設定されている。一方、ヘリコイド環18の外周面上では、回転摺動突起18bが回転摺動溝22dに係合するとき、その後方の雄ヘリコイド18aが上記の前方環状領域22z内に位置する(重なる)ように、雄ヘリコイド18aと回転摺動突起18bの光軸方向間隔が定められている。したがって、回転摺動突起18bが回転摺動溝22dに係合する時点で雄ヘリコイド18aと雌ヘリコイド22aの螺合が解除され、回転するヘリコイド環18に対して光軸方向への繰出力が作用しなくなる。以後は、鏡筒繰出方向へのズームギヤ28の回転に応じて、ヘリコイド環18は周方向への回転のみを行うようになる。図21に示すように、ズームギヤ28は、ヘリコイド環18が定位置回転に以降した後もスパーギヤ部18cとの噛合を維持しており、回転繰出時に引き続いてヘリコイド環18に対して回転を与えることができる。
ヘリコイド環18が定位置回転を行うようになり、回転摺動突起18bが回転摺動溝22d内を若干進んだ図21及び図25の状態が、ズームレンズ鏡筒71のワイド端である。図25に示すように、ワイド端では、回転摺動突起18bの前後端を形成する平行な前方摺動面18b-Cと後方摺動面18b-Dが、回転摺動溝22dの前後の回転案内面22d-A、22d-Bに挟まれているため、ヘリコイド環18は光軸方向への移動が規制されている。
また、図30に示すように、回転摺動突起18bが回転摺動溝22d内に移動すると、回転摺動突起18bと同じ周方向位置にある嵌合突起15bも同時に回転摺動溝22d内に収納され、離間方向付勢ばね25の付勢力によって、嵌合突起15bの摺接面15b-Aが前方の回転案内面22d-Aに押し付けられ、回転摺動突起18bの後方摺動面18b-Dが後方の回転案内面22d-Bに押し付けられる。回転摺動溝22dの前後の回転案内面22d-A、22d-Bの光軸方向の間隔は、回転摺動突起18bと嵌合突起15bが斜行溝22c内に位置するときよりも該回転摺動突起18bと嵌合突起15bを光軸方向に強制的に接近させるように設定されており、これに応じて離間方向付勢ばね25の圧縮度が高まり、嵌合突起15bと回転摺動突起18bには鏡筒収納時よりも強い付勢力が作用する。以後、回転摺動突起18bと嵌合突起15bの両方が回転摺動溝22dに係合する間は、離間方向付勢ばね25の付勢力によって嵌合突起15bと回転摺動突起18bが互いに突っ張り合う状態となり、固定環22に対する第3鏡筒15とヘリコイド環18の光軸方向位置が安定する。つまり、光軸方向にガタのない状態で支持される。
第3外筒15とヘリコイド環18の結合体をワイド端から繰出方向に回転させると、嵌合突起15b(摺接面15b-A)と回転摺動突起18b(後方摺動面18b-D)は、それぞれが当接する回転案内面22d-A、22d-Bの案内を受けて回転摺動溝22dの終端方向に移動し、やがて図22及び図26に示すテレ端位置に達する。ワイド端からテレ端までの間は、嵌合突起15b及び回転摺動突起18bと回転摺動溝22dの係合が維持されているので、ヘリコイド環18と第3外筒15は固定環22に対する光軸方向移動が規制され、回転のみを行う。なお、図29に示すように、ヘリコイド環18は離間方向付勢ばね25によって光軸方向後方、すなわち後方摺動面18b-Dを回転案内面22d-Bに当接させる方向に付勢されているため、ヘリコイド環18の回転案内は、主として後方摺動面18b-Dと回転案内面22d-Bの摺接関係によってなされる。
ヘリコイド環18が定位置回転を行うとき、カム環ローラ32がローラ案内貫通溝14eの周方向溝部14e-1内に位置しているため、カム環11も直進案内環14に対して光軸方向には移動せずに定位置で回転する。すなわち、第1レンズ群LG1と第2レンズ群LG2は、2群案内カム溝11aと1群案内カム溝11bのズーム領域に従って所定の軌跡で光軸方向に相対移動し、ズーミングが行われる。
第3外筒15とヘリコイド環18をテレ端よりもさらに繰出方向に回転させ、図23及び図27に示すように回転摺動突起18bが回転摺動溝22dの終端部(分解領域)に達すると、第3外筒15、第2外筒13及び第1外筒12などを固定環22から前方に抜き取ることが可能な鏡筒分解状態となる。但し、固定環22に対して分解ストッパ26を装着しているときには、1つの回転摺動突起18bのストッパ当接面18b-Eが分解ストッパ26に当接して当該分解位置への回動が規制されるので、分解ストッパ26を取り外さない限り鏡筒分解状態にはならない。この分解構造については後述する。
第3外筒15とヘリコイド環18をテレ端から鏡筒収納方向(図22の下方)に回転させると、回転摺動突起18bと嵌合突起15bが、回転摺動溝22d内を斜行溝22cに接近する方向へ移動する。この間、先のワイド端からテレ端への移動時と同様に、嵌合突起15bと回転摺動突起18bはそれぞれ離間方向付勢ばね25によって対向する回転案内面22d-A、22d-Bに押し付けられており、第3外筒15とヘリコイド環18は光軸方向へのガタを生じることなく一体に回転する。
図21及び図25のワイド端位置を過ぎてさらに収納方向の回転を継続すると、回転摺動突起18bの一方の端部斜面18b-Bが斜行溝22cの対向斜行面22c-Bに当接する。すると、ヘリコイド環18を対向斜行面22c-Bに沿って光軸方向後方へ移動させる分力が生じ、回転繰出時とは逆に、ヘリコイド環18は回転しながら光軸方向後方へ移動を始める。回転摺動突起18bと斜行溝22cの関係によってヘリコイド環18が光軸方向後方に若干量移動すると、雄ヘリコイド18aが雌ヘリコイド22aに再び螺合し、以後は雄ヘリコイド18aと雌ヘリコイド22aの螺合関係により、図20及び図24の収納位置になるまでヘリコイド環18の回転収納動作が行われる。第3鏡筒15は、ヘリコイド環18と直進案内環14の作用によって、ヘリコイド環18と同様の回転収納動作を行い、回転摺動突起18bと共に嵌合突起15bが斜行溝22c内を移動する。ヘリコイド環18及び第3鏡筒15が光軸方向後方へ移動すると、直進案内環14も共に後方へ移動し、該直進案内環14に支持されるカム環11も後方へ移動される。また、ヘリコイド環18が定位置回転から回転収納動作に切り換わると、カム環ローラ32が周方向溝部14e-1からリード溝部14e-3内に移動して、カム環11は直進案内環14に対して回転しながら光軸方向後方へ相対移動する。
回転摺動突起18bが回転摺動溝22dから斜行溝22c内に移動すると、嵌合突起15bと回転摺動突起18bが回転摺動溝22dによる光軸方向の位置規制を受けない状態になるので、第3外筒15とヘリコイド環18は、光軸方向位置が厳密に定められた撮影状態での関係(図30及び図31)から、直進案内環14に対する遊嵌によって光軸方向位置が定められる関係(図32及び図33)に戻る。この時点では、ズームレンズ鏡筒71は既に撮影状態ではなくなっているので、第3外筒15とヘリコイド環18光軸方向の位置決めは厳密なものでなくてよい。
以上のように、本実施形態のズームレンズ鏡筒71では、ヘリコイド環18と固定環22の対向周面に設けた凹凸部からなる雄ヘリコイド18a、雌ヘリコイド22a、回転摺動突起18b及び回転摺動溝22dのみによって、光軸方向移動を伴う回転繰出(及び回転収納)動作と光軸方向移動を伴わない定位置回転の両方をヘリコイド環18に与えることができる。ヘリコイド嵌合は構造がシンプルで駆動精度に関する信頼性が高い。また、ヘリコイド嵌合では与えることができない定位置回転を与えるための回転摺動突起18bや回転摺動溝22dも、ヘリコイド嵌合と同様に凹凸部からなるシンプルな構造であり、しかもヘリコイドの形成面と同じ周面に形成されているため特別な配置スペースを要しない。従って、簡単かつコンパクトで安価な構造によって、回転繰出(及び収納)動作と繰出位置での定位置回転動作とを与えることができる。
また、回転繰出(収納)動作と定位置回転動作の両方を行う回転部材を光軸方向に若干量相対移動可能な第3外筒15とヘリコイド環18に分けた上で、この第3外筒15とヘリコイド環18を離間方向付勢ばね25によって離間方向に付勢して、撮影状態ではヘリコイド環18の回転摺動突起18bと第3外筒15の嵌合突起15bを、共通の回転摺動溝22dの反対側の対向端面に押し付けることで固定環22に対する光軸方向のバックラッシュ取りを行っている。上記の通り、回転摺動溝22dや回転摺動突起18bは、ヘリコイド環18に回転繰出動作と定位置回転動作を択一して与えるための駆動機構を構成しており、この駆動機構の構成部をバックラッシュ取りにも利用することで、部品点数を少なく抑えることができる。
離間方向付勢ばね25は、常に一体に回動する第3外筒15とヘリコイド環18の間に保持されているので、固定環22近傍にバックラッシュ取り用の付勢部材を配設するための特別なスペースを必要としない。また、嵌合突起15bが嵌合凹部18eに収納されるため、第3外筒15とヘリコイド環18における結合部分のスペース効率にも優れている。
また、離間方向付勢ばね25による負荷が大きくなるのは、回転摺動突起18bと嵌合突起15bの両方が回転摺動溝22dに係合する撮影時だけであり、鏡筒収納位置などの非撮影時には離間方向付勢ばね25の圧縮度が低いので、鏡筒繰出の初期段階での摺動抵抗が小さく抑えられ、耐久性にも優れている。
以上のように結合されているヘリコイド環18及び第3外筒15は、ズームレンズ鏡筒71の分解作業に際して最初に分割される関係にある。続いて、ヘリコイド環18及び第3外筒15に対するストッパ構造と、該ストッパ構造に関連するズームレンズ鏡筒71全体の分解及び組立の構造について説明する。
図8及び図37に示すように、固定環22には外周面から回転摺動溝22dの底部へ向けて貫通するストッパ挿脱孔22eが形成されており、該ストッパ挿脱孔22eの近傍にはビス孔(ストッパの固定手段)22fとストッパ位置決め突起(ストッパの固定手段)22gが形成されている。分解ストッパ26は、固定環22の外周面に沿うアーム部(周方向アーム部)26aから内径方向に向けてストッパ突起(係止突起部)26bを突出させており、該アーム部26aの一端部にビス挿通孔(ストッパの固定手段)26cを有し、他端部にフック部26dを有している。図38に示すように、分解ストッパ26は、フック部26dをストッパ位置決め突起22gに係合させた状態で、ビス挿通孔26cにストッパ固定ビス(ストッパの固定手段)67を挿通し、該ストッパ固定ビス67をビス孔22fに螺合させることで固定環22に固定される。分解ストッパ26を固定した状態では、ストッパ突起26bがストッパ挿脱孔22eに対して固定環22の内径方向に挿入されて、回転摺動溝22d内に突出する(図34の状態)。
固定環22の前端部には、周方向に間隔をおいて3つの突起挿脱孔22hが形成されており、各突起挿脱孔22hは3つの回転摺動溝22dのそれぞれに連通している。各突起挿脱孔22hは嵌合突起15bを光軸方向に通過させることが可能な開口幅を有している。図39は、先に説明したテレ端(図22、図26)における突起挿脱孔22h近傍を拡大して示したものであり、同図から明らかなように、回転方向における嵌合突起15bと突起挿脱孔22hの位相が異なっているため、嵌合突起15bは回転摺動溝22dから前方へ抜けることができない。図39には一組の嵌合突起15bと突起挿脱孔22hのみを図示しているが、残る2つの嵌合突起15bと突起挿脱孔22hも同様の位置関係にある。また、ワイド端(図21、図25)では、各嵌合突起15bはテレ端のときよりも突起挿脱孔22hから遠ざかっている。つまり、回転摺動溝22dにおけるワイド端からテレ端までの撮影用の領域では、固定環22に対して第3外筒15を前方へ抜き取ることはできない。
図39のテレ端位置から各嵌合突起15bと各突起挿脱孔22hの位相を一致させるためには、第3外筒15をヘリコイド環18と共にさらに分解必要角Rt1回転させる必要がある。ところが、ストッパ挿脱孔22eにストッパ突起26bが挿入されている状態では、テレ端から回転許容角Rt2だけ回転させると、回転摺動突起18bのストッパ当接面18b-Eがストッパ突起26bに当て付いてそれ以上の回転が規制される(図34)。回転許容角Rt2は分解必要角Rt1よりも小さいので、各嵌合突起15bと各突起挿脱孔22hの位相は一致せず、したがって第3外筒15を前方に抜き取ることはできない。つまり、回転摺動溝22dにおいて突起挿脱孔22hに連通する終端部付近が分解用の領域であるが、分解ストッパ26の装着状態では、この分解領域まで第3外筒15とヘリコイド環18を回転させることができない。
分解を行う際には、分解ストッパ26を固定環22から取り外す。具体的には、ストッパ固定ビス67を取り外した上で、分解ストッパ26を固定環22の外径方向へ引き上げる。すると、ストッパ突起26bがストッパ挿脱孔22eから抜け、第3外筒15とヘリコイド環18に対して上記の分解必要角Rt1を与えることが可能になる。図23及び図27は、第3外筒15とヘリコイド環18をテレ端から分解必要角Rt1回転させた分解可能状態であり、図40はこの分解可能状態における突起挿脱孔22hの近傍を拡大して示したものである。同図から分かるように、この位置まで第3外筒15とヘリコイド環18を回転させると、各回転摺動突起18bの嵌合凹部18eと各突起挿脱孔22hが光軸方向に連通し、該嵌合凹部18e内に収納された嵌合突起15bは突起挿脱孔22hを通して回転摺動溝22dから前方に脱することが可能になる。つまり、回転環22に対して第3外筒15を前方に抜き取ることが可能になる。嵌合突起15bが回転摺動溝22dから脱すると、該嵌合突起15bと回転摺動突起18bを反対方向へ押圧していた離間方向付勢ばね25の付勢力が解除され、第3外筒15とヘリコイド環18の間に作用していたバックラッシュ取り機能も解消される。なお、嵌合突起15bと突起挿脱孔22hの回転方向の位置関係は、回転摺動突起18bが回転摺動溝22dの終端部に当て付いたときに互いに一致するように設定されており、回転が規制されるまでヘリコイド環18及び第3外筒15を進めれば自動的に図40の分解可能な位置になる。
第3外筒15は、以上のようにして回転方向の特定位置(特定分解角度位置)において固定環22から取り外すことが可能であるが、第3外筒15はまた、周方向溝14dと相対回動案内突起15dの係合関係と、相対回動案内突起14cと周方向溝15eの係合関係によって、直進案内環14と結合されている。図11及び図12から分かるように、相対回動案内突起14cと相対回動案内突起15dはそれぞれ周方向に不等間隔で設けた複数の爪状の突起からなり、かつその一部の突起は周方向における幅を他の突起と異ならせている。第3外筒15の後端部側には、このような複数の相対回動案内突起14cを、周方向溝15eに対して特定の回転位相でのみ光軸方向に挿脱可能とさせる複数の突起挿脱孔15gが形成されている。同様に直進案内環14の前端部側には、複数の相対回動案内突起15dを、周方向溝14dに対して特定の回転位相でのみ光軸方向に挿脱可能とさせる複数の突起挿脱孔14hが形成されている。
図41ないし図44は、第3外筒15と直進案内環14の結合関係を展開して示したものであり、図41は鏡筒収納状態(図20及び図24)、図42はワイド端(図21及び図25)、図43はテレ端(図22及び図26)、図44は分解状態(図23及び図27)に対応している。図41ないし図44から分かる通り、収納状態からテレ端までの間は、全ての相対回動案内突起14c、15dが対応の突起挿脱孔15g、14hに対して同時に挿脱可能となる状態は存在せず、常に相対回動案内突起14c、15dのいずれかの部分が突起挿脱孔15g、14hに係合しているので、第3外筒15と直進案内環14を光軸方向に分解することはできない。そして、分解ストッパ26を外して第3外筒15とヘリコイド環18を上記の分解位置まで回転させたとき初めて、全ての相対回動案内突起14cが突起挿脱孔15gに対して挿脱可能な位置に達し、同時に全ての相対回動案内突起15dが突起挿脱孔14hに対して挿脱可能な位置に達する。これにより、図44及び図53(図53では固定環22は図示していない)のように直進案内環14から第3外筒15を前方に抜き取ることが可能になる。第3外筒15が抜き取られると、ヘリコイド環18との間に保持されていた離間方向付勢ばね25が露出して取り外し可能となる(図36、図53)。
つまり、分解ストッパ26を外して第3外筒15とヘリコイド環18を回転方向の特定分解位置まで回転させると、第3外筒15は、回転環22と直進案内環14に対して同時に取り外し可能になる。このときの直進案内環14、第3外筒15、ヘリコイド環18及び固定環22の対応位置関係を展開図として図57に示した。逆に言えば、固定環22へ取り付けた状態の分解ストッパ26は、ズームレンズ鏡筒71の通常の使用状態では上記の特定分解位置まで回転しないように、回転摺動溝22d内でのヘリコイド間18と第3外筒15の回転角度を制限する規制手段として機能している。前述の通り、回転摺動突起18bや回転摺動溝22dからなるガイド構造は簡単かつコンパクトであり、このガイド構造に分解ストッパ26を付加するだけの簡単な構造によって、通常使用状態においてヘリコイド間18と第3外筒15の回転角度を確実に制限することができる。
第3外筒15を取り外すことにより、さらに次のような分解が可能になる。図6及び図7に示すように、第3外筒15の前端部は第2直進案内溝14gの前端部を塞ぐ前端フランジ15hになっており、該第2直進案内溝14gに直進案内突起13aを係合させた第2外筒13は、第3外筒15が直進案内環14に取り付けられた状態では前方へ抜き取ることができず、第3外筒15を取り外して初めて第2外筒13が取り外し可能になる。但し、第2外筒13はさらに、内径フランジ13cと周方向溝11cが係合しているときは、カム環11に対する光軸方向移動が規制される。図17に示すように、第2外筒13の内径フランジ13cは周方向に不等間隔で複数に分割されている。一方、図13に示すように、該内径フランジ13cが係合するカム環11の周方向溝11cは、周方向に離間する3つの部分的な周方向溝からなっており、さらに3つの周方向溝11cにはそれぞれ前方へ開口する突起挿脱孔11fが形成されている。3つの突起挿脱孔11fは周方向に不等間隔で配置されている。
図49ないし図52は、カム環11に対する第2外筒13と第1外筒12の結合関係を展開して示したものであり、図49は鏡筒収納状態(図20及び図24)、図50はワイド端(図21及び図25)、図51はテレ端(図22及び図26)、図52は分解状態(図23及び図27)に対応する。図49ないし図51から分かる通り、収納状態からテレ端までの間は、複数の分割領域からなる内径フランジ13cの全ての領域が、3つの周方向溝11cの間のスペース及び突起挿脱孔11fに対して完全に一致する状態は存在せず、内径フランジ13cのいずれかの部分が周方向溝11cに係合している。よって、第2外筒13をカム環11に対して光軸方向に分解することはできない。そして、カム環11が第3外筒15に連れ回って分解位置まで回転したとき初めて、内径フランジ13cの全ての領域が、3つの周方向溝11cの間のスペースと突起挿脱孔11fとに完全に一致し、図52及び図54のようにカム環11から第2外筒13を前方に抜き取ることが可能になる。
さらに、図52の分解位置では、第1外筒12に設けた3つの1群用ローラ31がそれぞれ、カム環11の外周面に形成した1群案内カム溝11bの前端開放領域11b-xの近傍に達しており、図55のように第1外筒12も前方に引き抜くことができる。このとき、第3外筒15の前端フランジ15hは既に存在しないので、第1外筒12の外周面に設けた係合突起12aが該前端フランジ15hに干渉することはない。図2に示すように、第2外筒12からはさらに、固定ビス64による1群抜止環3の固定を解除して1群調整環2を前方に取り外すことができ、該1群調整環2内に支持された1群レンズ枠1も分解することができる。
図55の状態では、直進案内環14、ヘリコイド環18、カム環11及びその内部の2群レンズ移動枠8などが固定環22の内側に残っているが、さらに分解することもできる。
図54及び図55から分かるように、固定環22からレンズ鏡筒を繰り出した状態で第3外筒15が外れると、ローラ固定ねじ32aが露出する。そして、図56に示すようにローラ固定ねじ32aと共にカム環ローラ32を外すと、直進移動環14に対してカム環11の光軸方向移動を規制する要素がなくなるため、直進移動環14からカム環11と2群直進案内環10の結合体を引き抜くことができる。図56に示すように、2群直進案内環10の股状突起10aが係合する第1直進案内溝14fは、直進移動環14の前端部側が閉じて後端部側が開放されているので、カム環11と2群直進案内環10の結合体を引き抜く方向は後方になる。2群直進案内環10とカム環11は、リング部10bの外縁部と周方向溝11eが相対回転可能に係合しているが、この係合は回転方向の特定の相対位置で外れるようになっており、図3のように分解することができる。
また図14に示すように、ヘリコイド環18及び第3外筒15を前述の分解位置に回転させたとき、2群レンズ移動枠8の2群用カムフォロア8bは、前方カムフォロア8b-1が前方カム溝11a-1から前方に外れ、後方カムフォロア8b-2が後方カム溝11a-2の前端開放領域11a-2xに位置している。よって、2群レンズ移動枠8をカム環11から前方に引き抜いて、図3のように分解することができる。後方カム溝11a-2の前端開放領域11a-2xは光軸方向への直線溝部として形成されているため、上記分解位置において2群レンズ移動枠8は、2群直進案内環10による直進案内を受けている(直進案内溝8aに直進案内キー10cが係合している)か否かを問わず、カム環11から前方へ直線的に引き抜くことができる。なお、図55のようにカム環11及び2群直進案内環10が直進案内環14の内側に残っている状態で、2群レンズ移動枠8のみを取り外すことも可能である。
2群レンズ移動枠8からはさらに、支持板固定ビス66による2群枠支持板36、37の固定を解除することにより、2群回動軸33と2群レンズ枠6を取り外すことができる(図3参照)。
また、カム環11の内部要素とは別に、固定環22からヘリコイド環18を取り外すことも可能であり、この場合、固定環22からCCDホルダ21を外した上で、上記の分解位置から収納方向にヘリコイド環18を回転させる。すると、3つの回転摺動突起18bが回転摺動溝22dから斜行溝22c内に戻って雄ヘリコイド18aと雌ヘリコイド22aが螺合し、ヘリコイド環18は回転しながら後退する。ヘリコイド環18が図20及び図24に示す位置よりも後方に移動すると、斜行溝22cの後端開放領域22c-xから回転摺動突起18bが外れ、雄ヘリコイド18aと雌ヘリコイド22aの螺合も解除される。よって、ヘリコイド環18は直進案内環14と共に固定環18から後方に外れる。
ヘリコイド環18と直進案内環14は、周方向溝18gと相対回動案内突起14bの係合関係によって結合している。相対回動案内突起14bは、相対回動案内突起14cなどと同様に周方向に不等間隔で設けた複数の爪状の突起からなっており、ヘリコイド環18には、このような複数の相対回動案内突起14bを、周方向溝18gに対して回転方向の特定の相対位置でのみ光軸方向に挿脱可能とさせる複数の突起挿脱孔18hが形成されている。
図45ないし図48は、直進案内環14とヘリコイド環18の結合関係を展開して示したものであり、図45は鏡筒収納状態(図20及び図24)、図46はワイド端(図21及び図25)、図47はテレ端(図22及び図26)、図48は分解状態(図23及び図27)に対応する。これらの各図からから分かる通り、収納状態から分解状態のいずれにおいても、全ての相対回動案内突起14bが突起挿脱孔18hに対して同時に挿脱可能となる状態は存在せず、ヘリコイド環18と直進案内環14を光軸方向に分解することはできない。全ての相対回動案内突起14bが突起挿脱孔18hに対して同時に挿脱可能となるのは、図45の収納状態からさらにヘリコイド環18を収納方向(図中下方)に回転させた位置である。この位置までヘリコイド環18を回転させてからヘリコイド環18を前方(図45ないし図49の左方)に移動させると、相対回動案内突起14bが突起挿脱孔18hを通って周方向溝18gの後方へ外れる。
直進案内環14の外周面にはさらに、相対回動案内突起14bよりも前方に第3外筒15と係合するための相対回動案内突起14cが設けられている。前述の通り、相対回動案内突起14bと相対回動案内突起14cはいずれも周方向に不等間隔に設けた複数の爪状突起からなっているが、相対回動案内突起14bと相対回動案内突起14cでは、突起の数とその間隔、及び対応する各突起の周方向への幅が互いに同一になっている(図12参照)。よって、相対回動案内突起14cと突起挿脱孔18hの間にも、光軸方向へ挿脱可能となる回転方向の特定の位置関係が存在しており、この特定の位置関係にしてからヘリコイド環18を前方に移動させると、各相対回動案内突起14cが対応する突起挿脱孔18hの前方から入り後方へ抜けて、ヘリコイド環18を直進案内環14から完全に前方に抜き取ることが可能になる。突起挿脱孔18hは、このように相対回動案内突起14cを光軸方向に通過させる関係上、ヘリコイド環18の前後端に貫通して形成されている。
すなわち、ヘリコイド環18と直進案内環14は、固定環22から取り外した上で、相対回動案内突起14bと相対回動案内突起14cをそれぞれ突起挿脱孔18hから離脱させるように所定の相対回転を行うことによって始めて分解可能になる。言い換えれば、第3外筒15などを分解するときには、ヘリコイド環18と直進案内環14は、互いに結合された状態で固定環22の内部に支持される。このように直進案内環14やヘリコイド環18が第3外筒15などと同時に分解されず固定環22の内部に残るようにしたことで、次回組み立てる際の組立作業性が向上する。
以上のように、本実施形態のレンズ鏡筒によれば、分解ストッパ26を取り外した上で、ズーム領域や収納領域とは異なる特定の分解位置まで第3外筒15及びヘリコイド環18を回転させることで、回転繰出動作と定位置回転とを行う第3外筒15を容易に取り外すことができる。第3外筒15を取り外すことで、第3外筒15、ヘリコイド環18、固定環22及び直進案内環14の間に作用していたバックラッシュ取り機能も同時に解除させることができ、分解作業の工程数が少なくて済む。さらに、第3外筒15を取り外すための分解位置は、第2外筒13、第1外筒12、カム環11、2群レンズ移動枠8などの分解位置にもなっており、第3外筒15を取り外した後にはこれらの各要素を次々に分解することができ、レンズ鏡筒全体としての分解作業性にも優れている。
以上では分解作業について説明したが、逆の手順によって組立を行うことができる。すなわち、本実施形態のズームレンズ鏡筒71は組立作業性においても優れている。
以上の実施形態の説明から分かるように、本発明のレンズ鏡筒では、回転環(ヘリコイド環18)に設けた回転案内突起(回転摺動突起18b)と外側環状部材(固定環22)に形成した周方向溝(回転摺動溝22d)の係合関係によって、回転環に対して(ヘリコイドによる)回転進退動作のみならず定位置回転動作も与えることが可能になっている。そして、回転環の回転角度を規制するストッパ部材(分解ストッパ26(ストッパ突起26b))を、この定位置回転案内用の周方向溝内に挿入することで機能させるようにしたので、簡単な構造のストッパ機構が得られる。
特に、図示実施形態における分解ストッパ26のストッパ突起26bは、回転摺動溝22dに挿入された時点でその対向壁面(回転案内面22d−A、22d−B)によって光軸方向への位置ずれが制限されて必ず回転摺動突起18bの移動軌跡上に位置されるので、特別な位置調整を行うことなく確実に回転摺動突起18bに当接させることができる。また、回転摺動突起18bがストッパ突起26bに当接した場合に、回転摺動溝22dの回転案内面22d−A、22d−Bがストッパ突起26bのブレを防ぐ補強部として機能する。つまり、ストッパ突起26bを回転摺動溝22dに対して挿入する構造にすることで、該ストッパ突起26bを薄型にしつつ(小型な分解ストッパ26を採用しつつ)、回転摺動突起18bを確実に係止させることが可能になっている。
以上、図示実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、図示実施形態では、第3外筒15とヘリコイド環18の繰出後の定位置回転によって第1レンズ群LG1と第2レンズ群LG2を光軸方向に移動させてズーミング(変倍動作)を行っているが、第3外筒15とヘリコイド環18に相当する回転環の定位置回転により与える動作をズーミングではなくフォーカシングに置換するなどして、単焦点のレンズ鏡筒として適用することも可能である。
さらには、上記実施形態の第3外筒15とヘリコイド環18に相当する回転環が、繰出完了後(撮影状態)には回転せずに一定の位置に停止されるような態様であっても本発明は適用可能であり、この場合も単焦点のレンズ鏡筒として構成できる。
また、上記実施形態の分解ストッパ26は、第3外筒15とヘリコイド環18という一対に分割された回転環の分解可能位置への回転を規制するために設けられているが、本発明は、回転環が複数に分割されていないタイプのレンズ鏡筒に適用することも可能である。
また、実施形態のように分解ストッパ26のストッパ突起26bを固定環22(回転摺動溝22d)に対して径方向に挿脱させると、前述の通り回転摺動溝22dの前後の回転案内面22d−A、22d−Bがストッパ突起26bに対する位置決め部及び補強部としても機能するので好ましい。しかし、本発明におけるストッパ部材の着脱方向はこれに限定されるものではない。例えば、光軸方向へ向けてストッパ部材を着脱させる構造を採用することも可能である。
また、実施形態では分解ストッパ26が着脱される固定環22はカメラボディ72に対する固定部材であるが、本発明を適用するレンズ鏡筒の構造によっては、光軸方向に移動する直進部材に対してストッパ部材を取り付けることも可能である。
また、実施形態のレンズ鏡筒では、ヘリコイド環18の定位置回転時の位置精度を確保しやすくするために、回転摺動溝22dに係合するべき回転摺動突起18bの突出量を雄ヘリコイド18aの突出量よりも大きくしている(鏡筒径方向における回転摺動突起18bと回転摺動溝22dの係合量を大きくしている)。しかし、必要な位置精度が損なわれない範囲内で、回転摺動突起18bの突出量を実施形態よりも小さくして雄ヘリコイド18aと同等かそれ以下にすることも可能である。この場合には、固定環22側には斜行溝22cのような逃げ溝を形成せずとも回転摺動突起18bとの干渉を避けることができる。つまり、回転摺動突起18bの突出量が雄ヘリコイド18aの突出量を超えない場合、斜行溝22cに相当する幅(及び方向)の無ヘリコイド領域を、雌ヘリコイド22aの形成領域上に形成するだけでよい。具体的には、雌ヘリコイド22aの一部のヘリコイド山の間隔を広げれば、斜行溝22cに代わる無ヘリコイド領域を得ることができる。別言すれば、斜行溝22cも固定環22上における一種の無ヘリコイド領域であると言える。
逆に、斜行溝22cを単なる逃げ溝ではなく、ヘリコイドを補助する機構として積極的に用いることも可能である。すなわち、実施形態ではヘリコイド環18が回転進退動作するときにヘリコイド18a、22aによるガイド機能と干渉しないように、回転摺動突起18bの端部斜面18b-A、18b-Bを斜行溝22cの対向斜行面22c-A、22c-Bに係合させていない。しかし、ヘリコイドによるガイド機能を妨げないだけの十分な成形精度が得られるのであれば、端部斜面18b-A、18b-Bと対向斜行面22c-A、22c-Bを係合させて回転進退時のガイド面として利用してもよい。
また、実施形態では回転摺動突起18b、斜行溝22c、回転摺動溝22dなどは周方向に位置を異ならせて3箇所設けられているものとしたが、その数は3つ以外であってもよい。