JP2004258059A - 時系列信号の圧縮解析装置および変換装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】時系列のサンプル列で構成される時系列信号に対して線形予測を行って、各サンプルの値を予測誤差値に変換した後、各サンプルの上位ビットと下位ビットを分離し、上位ビット成分は可変長で符号化し、下位ビット成分は固定長で符号化することにより、圧縮を行う。下位ビット成分のデータ量を量子化雑音成分と推定して算出すると共に、圧縮過程で生じる他のデータのデータ量を算出し、元の時系列信号のデータ量に対する割合を算出し、圧縮前と圧縮後で比較して表示する。
【選択図】 図13
Description
【産業上の利用分野】
本発明は、音楽制作、音響データの素材保管、ロケ素材の中継など音楽制作分野、特に音響信号の分析・分類や音響の加工による特殊効果分野、遠隔医療における生体信号の解析・診断等の分野において好適なデータ圧縮の解析技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、音響信号の圧縮には様々な手法が用いられている。音響信号を圧縮して符号化する手法として、MP3(MPEG−1/Layer3)、AAC(MPEG−2/Layer3)などが実用化されている。このような圧縮符号化方式により、音響信号を小さいデータとして扱うことが可能となり、データの記録・伝送の効率化に貢献している。
【0003】
上述のようなMP3、AAC等はいずれもロッシー符号化方式といわれるものであり、効率的な圧縮が可能であるが、復号化にあたって、少なからず品質の劣化を伴い、原信号を完全に再現することはできない。そのため、音楽制作、素材保管、ロケ素材の中継など音楽制作分野では、これらの符号化方式を適用できず、非効率ではあるが、非圧縮で保存・伝送する方式がとられている。特に最近は高精細オーディオを扱うプロダクションが増え、素材容量が膨大になり、ワークディスクを管理する上で問題になってきている。
【0004】
最近では、上記問題を解決するため、音響信号を可逆圧縮符号化する方法についても、様々なものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−278600号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、現状では、元のデータがどの程度まで圧縮されたかという圧縮率を測定することはできるが、圧縮した場合に元の信号のどの成分がどの程度圧縮されたかということを知ることはできない。
【0007】
そこで、このような問題を解決するため、本発明は、時系列信号を効率的に可逆圧縮すると共に、圧縮されたデータの圧縮精度を解析することが可能な時系列信号の圧縮解析装置および変換装置を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明では、時系列のサンプル列で構成される時系列信号に対して、前記全てのサンプル列を再現できるように情報量を圧縮すると共に圧縮した情報を解析する装置を、前記サンプル列の各サンプルの値を、時間的に過去の複数のサンプルからの予測誤差値に変換する予測誤差変換手段、前記予測誤差値に変換された各サンプル値を表現するビットデータを分断する位置を設定し、設定されたビット位置で分断し、上位ビットのサンプル列で構成される上位サンプル列と、下位ビットのサンプル列で構成される下位サンプル列とに分離するデータ分離手段、前記上位サンプル列に対しては、可変長符号で符号化を行うようにした上位サンプル符号化手段、前記下位サンプル列に対しては、固定長符号で符号化を行うようにした下位サンプル符号化手段、前記時系列信号の中で前記上位サンプル列に対応するデータの割合と、前記下位サンプル列に対応するデータの割合と、前記上位サンプル符号化手段で符号化されたデータの割合と、前記下位サンプル符号化手段で符号化されたデータの割合と、を表示するデータ表示手段を備えた構成としたことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、時系列信号を、予測誤差変換、上下位ビットを分離して圧縮を行うと共に、圧縮後の符号データに含まれる各データの割合を表示すると共に、圧縮前の各データの割合を分析して表示するようにしたので、時系列信号を効率的に可逆圧縮すると共に、圧縮されたデータの圧縮精度を解析することが可能となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
(装置構成)
図1は、本発明に係る時系列信号の符号化装置の一実施形態を示す構成図である。図1において、1は時系列信号入力手段、2は記憶手段、3は分析手段、4は表示手段、5は分離位置設定手段、6は音響信号変換手段、7は音声出力手段、10は信号平坦部処理手段、20は予測誤差変換手段、30はチャンネル間演算手段、40は相関フレーム検出手段、50はデータ分離手段、60は上位サンプル符号化手段、70は下位サンプル符号化手段である。
【0011】
図1において、時系列信号入力手段1はデジタル音響信号等のデジタル化された音響信号を入力する機能を有している。記憶手段2は、本装置により作成される各種データを記憶する機能を有している。分析手段3は、作成された各データを分析して本装置による圧縮効率を示すデータを作成する機能を有している。表示手段4は、分析手段3により分析されたデータを表示する機能を有している。分離位置設定手段5は、データ分離手段50に対して、その分離位置を設定する機能を有している。音響信号変換手段6は、記憶手段に記憶された各種データを各サンプルを固定ビット数に変換した後、D/A変換、増幅して音響信号として出力可能な状態に変換する機能を有している。音声出力手段7は、アナログ音響信号に変換されたデータを音として出力する機能を有する。音声出力手段7は具体的には、スピーカーで実現される。
【0012】
信号平坦部処理手段10は、各チャンネルごとのサンプル列に対して、信号の値が一定である平坦部を検出し、効率的に符号化する機能を有する。予測誤差変換手段20は、線形予測誤差の手法を用いて、各サンプルの値を予測誤差値に変換する機能を有する。チャンネル間演算手段30は、複数のチャンネルからなるサンプル列の各チャンネル間の差分演算を行う機能を有する。相関フレーム検出手段40は、チャンネル間演算が行われた各サンプル列に対して、所定の区間をフレームとして設定した後、フレーム間で対応する全てのサンプル値が同一になっている相関フレームを検出し、時間的に後方に位置する相関フレームを削除する機能を有する。
【0013】
データ分離手段50は、必要に応じて各サンプルの正負の極性処理を行うと共に、予測誤差値で記録された誤差サンプル列を構成する各サンプルを、所定の位置で上位ビットである上位サンプルデータと下位ビットである下位サンプルデータに分離する機能を有する。上位サンプル符号化手段60は、データ分離手段50により分離された上位サンプル列を効率良く符号化する機能を有する。下位サンプル符号化手段70は、データ分離手段50により分離された下位サンプル列を効率良く符号化する機能を有する。図1に示した各構成要素は、実際には、コンピュータおよびコンピュータにより実行される専用のソフトウェアプログラムにより実現される。
【0014】
(処理動作)
次に、図1に示した時系列信号の符号化装置の処理動作について説明する。ここでは、時系列信号として複数のチャンネルを有する音響信号の場合を例にとって説明する。まず、時系列信号であるアナログの音響信号をデジタル化する。これは、従来の一般的なPCMの手法を用い、所定のサンプリング周波数でこのアナログ音響信号をサンプリングし、振幅を所定の量子化ビット数を用いてデジタルデータに変換する処理を行えば良い。本実施形態では、サンプリング周波数44.1KHz、量子化ビット数16ビットで正負の符号を記録した場合を想定して以降説明する。サンプリング周波数44.1KHzでサンプリングすると、1秒あたり44100個のサンプルにより構成されるサンプル列ができることになる。またここでは、音響信号が複数のチャンネルからなるので、各チャンネルごとにデジタル化が行われる。デジタル化された音響信号を模式的に示すと図2(a)のようになる。図2(a)は、2チャンネルのステレオ音響信号を示しており、Ch1にL(左)信号、Ch2にR(右)信号が記録されている。また、図2(a)から(d)においては、左端が開始時刻であり、右端が終端時刻である。高さは各サンプルのビット数を示しており、本実施形態では、16ビットとしている。なお、本装置の時系列信号入力手段1では、デジタル化後の音響信号を入力する。
【0015】
(信号平坦部の処理)
このようにしてデジタル化されたデジタル音響信号であるサンプル列に対して、信号平坦部処理手段10が、信号平坦部の処理を行う。信号平坦部とは、同一の信号レベルが連続する部分のことをいう。特に信号レベルが「0」の無音部、および信号レベルの絶対値が最大の飽和部に現れることが多い。無音部は実際に無音であるか、音が非常に小さく記録されなかった場合に生じるが、飽和部は、信号の録音およびA/D変換の過程において生じる。無音部、飽和部またはそれ以外の同一信号レベルが連続する場合のいずれであっても、信号平坦部は、同一の信号レベルが所定の時間(所定のサンプル数)連続して記録される。このため、この部分は圧縮し易いデータになっている。具体的には、信号平坦部の先頭時刻位置と、同一信号レベルが続くサンプルの個数と、信号レベル(サンプル値)の3つの値を信号平坦部データとして各チャンネルのサンプル列と分離して記録する。各チャンネルのサンプル列からは、信号平坦部が削除される。これを模式的に示すと図2(b)(c)に示すようになる。図2(b)は、信号平坦部処理前のサンプル列である。図2(b)において、網掛けで示した部分は信号平坦部を示す。信号平坦部処理手段10の処理により、信号平坦部は元のサンプル列からは削除され、図2(c)に示すようになる。ただし、復号時に元通りに復元するために、分離された信号平坦部は、信号平坦部データとして図2(e)に示すような形式で記録しておく。
【0016】
信号平坦部データは、上述のように、信号平坦部ごとに、その先頭時刻(サンプル番号)、サンプル数、サンプル値の3属性で記録する。ここで、先頭時刻とは、信号の開始位置からの時刻であり、図2(e)の例では、先頭からのサンプル番号で記録している。このサンプル番号をサンプリング周波数で除算すれば、時刻に変換されることになる。サンプル数は、そのサンプル値がどの程度連続して続くかを示す情報である。なお、サンプル数の代わりに信号平坦部の終了時刻を記録するようにしても良い。サンプル値は、デジタル化された信号レベルを示している。本実施形態では、符号付き16ビットで量子化しているので、最大値は「32767」、最小値は「−32768」となる。すなわち、「0」は無音部、「32767」および「−32768」は飽和部を示している。ただし、信号平坦部処理手段10は、信号平坦部を無条件には処理しない。本発明は、データの圧縮を目的としているため、サンプル列の削減分よりも信号平坦部データが大きくなると意味がないからである。したがって、信号平坦部となるサンプルが所定数以上連続する場合に限り信号平坦部データを作成して各チャンネルのサンプル列から分離するのである。
【0017】
(予測誤差への変換)
続いて、信号平坦部の処理が行われたサンプル列の各サンプルの値を、予測誤差変換手段20が予測誤差値に変換する。あるサンプルにおける予測誤差値の算出は、時間的に過去に位置する直前の1つもしくは複数のサンプルの値を利用して行われる。本実施形態では、利用する直前のサンプル数を動的に変化させる手法を用いている。以下に、このような適応型線形予測符号化について説明する。予測誤差変換手段20により行われる適応型線形予測符号化の処理概要を図3のフローチャートに示す。まず、あらかじめ準備された複数の予測計算式を用いて、各予測計算式に対応した線形予測誤差を算出する(ステップS1)。具体的には、サンプル番号tの予測誤差を算出する予測計算式として、以下の〔数式1〕〜〔数式4〕を用意している。
【0018】
〔数式1〕
e1(t)=x(t)−x(t−1)−e1(t−1)/2
【0019】
〔数式2〕
e2(t)=x(t)−2×x(t−1)+x(t−2)−e2(t−1)/2
【0020】
〔数式3〕
e3(t)=x(t)−3×x(t−1)+3×x(t−2)−x(t−3)−e3(t−1)/2
【0021】
〔数式4〕
e4(t)=x(t)−4×x(t−1)+6×x(t−2)−4×x(t−3)+x(t−4)−e4(t−1)/2
【0022】
上記〔数式1〕〜〔数式4〕において、e1(t)〜e4(t)は各予測計算式による時刻tのサンプルにおける予測誤差であり、x(t)〜x(t−4)は時刻t〜t−4における振幅値である。
【0023】
上記〔数式2〕における「2×x(t−1)−x(t−2)」、上記〔数式3〕における「3×x(t−1)−3×x(t−2)+x(t−3)」、上記〔数式4〕における「4×x(t−1)−6×x(t−2)+4×x(t−3)−x(t−4)」は過去の2〜4個のサンプルに基づく線形予測成分である。この線形予測成分、および、直前のサンプルにおいて算出された予測誤差「e1(t−1)/2」〜「e4(t−1)/2」(誤差フィードバック成分)を用いて時刻tにおける予測誤差e1(t)〜e4(t)を算出する。
【0024】
続いて、上記各予測計算式別の予測誤差値の絶対値の累積である累積誤差が最小となる線形予測誤差をそのサンプルの予測誤差として選出する(ステップS2)。ここでは、累積誤差という考え方を用いている。具体的には、各予測計算式〔数式1〕〜〔数式4〕により算出された予測誤差の過去のサンプルについての累積値をR1〜R4として設定する。そして、この累積誤差R1〜R4のうち、最小となるものに対応する予測誤差を選出する。例えば、R1〜R4のうち、R2が最小であったとする。この場合、〔数式2〕で算出された予測誤差e2(t)を符号化対象とする予測誤差e(t)として選出することになる。選出された予測誤差e(t)はサンプルの元の値x(t)と置き換えられて以降処理が行われることになる。また、このとき用いられた予測式の次数をサンプル番号と対応付けて最適次数データとして記録する。「次数」とは、予測誤差の算出に過去いくつのサンプルを利用したかを示す数値であり、上記〔数式1〕〜〔数式4〕は1次〜4次に対応している。例えば、予測誤差e2(t)が予測誤差e(t)として選出された場合、次数は「2」となる。
【0025】
続いて、累積誤差R1〜R4に各予測誤差e1(t)〜e4(t)の絶対値を加算する(ステップS3)。具体的には、以下の〔数式5〕に示すように、累積誤差値となる変数R1〜R4を更新していく。同時に、各サンプルの処理を行う度に、カウンタを1つづつ加算していく処理を行う。
【0026】
〔数式5〕
R1←R1+|e1(t)|
R2←R2+|e2(t)|
R3←R3+|e3(t)|
R4←R4+|e4(t)|
【0027】
続いて、カウンタが所定回数を超えたかどうかの判定を行う(ステップS4)。本実施形態では、この所定回数を100回として設定している。すなわち、カウンタが100を超えたかどうかの判定を行う。
【0028】
この結果、カウンタが100を超えていたら、累積誤差を半分にする(ステップS5)。具体的には、以下の〔数式6〕に示すように、累積誤差となる変数R1〜R4を2で除算する。同時に、カウンタを0にリセットする。すなわち、ここでのR1〜R4は純粋な意味での累積誤差ではなく、累積誤差の移動平均となっている。本実施形態では、直前の最大100サンプルまでは累積されるが、それ以前のものは半分になるように処理する。これにより、時間的に離れたサンプルの影響が小さくなるようにしている。
【0029】
〔数式6〕
R1←(R1)/2
R2←(R2)/2
R3←(R3)/2
R4←(R4)/2
【0030】
上記ステップS1〜ステップS5の処理を時系列信号中の全時刻全サンプルに渡って実行することにより、全サンプルの値が元の振幅値x(t)から対象誤差e(t)に置き換えられることになる。ただし、予測誤差変換手段20による処理は、各サンプルの値を変えるだけであるため、音響信号を模式的に示した状態は、図2(c)に示した状態のままである。そのため、予測誤差変換手段20による処理後のサンプルを、元のサンプルと区別するため、誤差サンプルと言うこともできる。
【0031】
(チャンネル間演算)
次に、予測誤差値が記録された各チャンネルのサンプル列に対して、チャンネル間演算手段30によりチャンネル間の差分演算が行われる。これは、同一時刻におけるサンプル値の差分を単純にとることにより行われる。差分演算の結果は、一方のチャンネルのサンプル列として与え、他方のチャンネルのサンプル列の値は、元のままとしておく。具体的には、図2(c)に示すような2チャンネルのステレオ音響信号の場合Ch1にはL信号の値をそのまま記録しておき、Ch2にはR−Lの差分値を与える。一般に、ステレオ音響信号では、同一時刻におけるそれぞれのデータには相関があり、各時刻における両データの差分値は元の値に比べて小さな値となる。これは線形予測による予測符号後の値であっても同じである。そのため、図2(d)の例では、Ch2における各サンプルの値が小さくなり、後に圧縮できる余地が大きくなる。
【0032】
(相関フレーム検出)
続いて、チャンネル間演算が行われた各チャンネルのサンプル列に対して、相関フレーム検出手段40が、所定の区間長をもつフレームを設定して、設定されたフレーム間の比較を行う。本実施形態では、フレーム長をサンプル列の開始時刻から終了時刻までの全区間に渡って固定長としている。具体的には、1フレームを512サンプルとしている。相関フレーム検出手段40は、各チャンネルのサンプル列の先頭から512サンプルずつを1フレームとして設定し、フレーム間で全サンプルが一致する相関フレームを求めていくことになる。具体的な手順を図4のフローチャートに従って説明する。
【0033】
まず、相関フレーム検出手段40は、所定のサンプル数単位でフレーム化を行う(ステップS11)。本実施形態では、上述のようにフレーム長をサンプル列の開始時刻から終了時刻までの全区間に渡って固定長512サンプルとしている。相関フレーム検出手段40は、図5(a)に示すように、サンプル列の先頭から512サンプルずつを1フレームとして設定していくことになる。
【0034】
次に、各フレームに対して構成するサンプル値が全て一致するフレームを探索する。具体的には、図5(b)に示すように、まず、設定されたフレームのうち、時間的に最後尾のフレームを、相関フレームを探すための対象フレームとする。次に、所定の探索範囲内において、対象フレームの先頭サンプルの値と同一の値をもつサンプルを、時間的に遡りながら探索していく(ステップS12)。例えば、図6(a)に示すように、対象フレームがkT〜kT+511の512個のサンプルで構成されているとする。この場合、まず、対象フレームの先頭サンプルkTのサンプル値e(kT)と同一となるサンプルを探索していく。サンプルkT−1、サンプルkT−2と順に探索していく。なお、図6において、kは先頭からk番目のフレームであることを示し、Tはフレーム長(本実施形態では512サンプル)を示している。
【0035】
一致するサンプルtが見つかったら(ステップS13)、次に、そのサンプルtの次のサンプルt+1と対象フレームの2番目のサンプルkT+1が一致するかどうかを比較する。このようにしてサンプルの値が一致する限り後続するサンプル同士の比較を行っていく(ステップS14)。ステップS14においては、e(t+p)とe(kT+p)の値が一致する限り、処理を繰り返していく。例えば、図6(b)に示す例では、e(t)〜e(t+8)がe(kT)〜e(kT+8)と一致しているので、さらにp=9として、ステップS14の処理が続けられることになる。p=0〜p=511までの全てのe(t+p)とe(kT+p)が一致した場合(ステップS15)、そのサンプル列を対象フレームに対する相関フレームとし、相関フレームの先頭のサンプル番号と対象フレームの先頭のサンプル番号とを対応付けてフレーム相関データとして記録し、対象フレームを元のサンプル列から削除する(ステップS16)。対象フレームの全サンプルと一致しなければ、さらに対象フレームの先頭サンプルと値が一致するサンプルが存在するかどうかを時間的に遡りながら探索していく。所定のサンプル数分遡っても一致する相関フレームが存在しない場合は、その対象フレームに関する相関フレームの探索を中止し、対象フレームの直前のフレームを新たな対象フレームとして相関フレームの探索を行う。1つの対象フレームに対しての処理が終わったら、ステップS12に戻って、1つ直前のフレームを新たな対象フレームとして処理を続けていく(ステップS17)。このようにして、時系列信号の先頭時刻近辺に位置するフレームを除く全フレームを対象フレームとして相関フレームの検出処理を行う。
【0036】
時系列信号のサンプル列全体でみると、図5(c)に示すように対象フレームに対応する相関フレームが検出されたとすると、図5(d)に示すように対象フレームが削除されることになる。このとき、復号時に完全に復元できるように図5(e)に示すようなフレーム相関データが記録される。図5(e)に示すように、フレーム相関データには対象フレームの先頭のサンプル番号と相関フレームの先頭のサンプル番号が対応づけて記録される。
【0037】
(上位ビットと下位ビットの分離)
続いて、データ分離手段50が、各サンプルの上位ビットと下位ビットの分離を行う。実際に、分離を行う前に前処理として、正負の値をとる各サンプルの値を、正負の極性が付いたビット列に変換する。具体的には、16ビットで正負の値を表現しているビット列を、先頭の1ビットを正負の極性符号とし、他の15ビットで絶対値を表すように変換する。このように変換した場合、「0」については、極性符号が必要ないため、省略が可能となる。これにより、値が「0」のサンプル数×1ビット分が削減できることになる。
【0038】
極性処理が行われたら、次に、データ分離手段50は、各サンプルの上位ビットと下位ビットの分離を実行する。例えば、音響信号をPCMによりデジタル化する際に、量子化ビット数16でサンプリングした場合、各サンプルは16ビットで表現されている。この場合、本実施形態では、上位ビット12ビットと、下位ビット4ビットに分離する。この分離は、基本的に、A/D変換機等、音響信号をデジタル化する際に用いる回路の熱雑音を分離するために行う。そのため、熱雑音であると考えられる下位ビットを分離するのである。下位ビットとして、どの程度分離するかは、音源や利用した回路の特性によっても変化するが、通常量子化ビット数の1/4程度とすることが望ましい。したがって、ここでは、16ビットの1/4にあたる4ビットを下位ビットとして分離しているのである。本発明においては、特に、この上位ビットと下位ビットの分離を予測誤差に変換した後に行うことを特徴としている。これは、予測誤差への変換を上位ビットと下位ビットの分離後に上位サンプルに対して行うと、たとえ予測誤差への変換により圧縮可能な成分が下位ビットのなかに含まれていても、圧縮処理が行われないため、全体的に圧縮効率が低下する場合があるためである。
【0039】
ここで、データ分離手段50によるデータ分離の様子を図7に模式的に示す。図7において、Hは上位ビットもしくは上位サンプルデータを示し、Lは下位ビットもしくは下位サンプルデータを示す。図7(a)は分離前のサンプルデータである。データ分離手段50により、サンプルデータは、図7(b)に示す上位サンプルデータと図7(c)に示す下位サンプルデータに分離されることになる。なお、上位ビットに含まれる符号ビットは、そのまま上位サンプルデータに含まれて分離される。図7の例で、「H4」として示したように、前処理により符号ビットが削除されている場合には、符号ビットのない上位サンプルデータとなる。上記のようにして分離されたサンプルデータは、以降別々に処理されることになる。
【0040】
(上位サンプルの符号化)
次に、上位サンプル符号化手段60が、分離された上位サンプルの符号化を行う。まず、各チャンネルの上位サンプル列に対して、信号平坦部の処理を行う。上位サンプル符号化手段60が行う信号平坦部処理は、信号平坦部処理手段10が行った処理と全く同じである。すなわち、上位サンプル列中で同一の信号レベルが連続する部分を、信号平坦部の先頭時刻位置と、同一信号レベルが続くサンプルの個数と、信号レベル(サンプル値)の3つの値で構成される上位信号平坦部データとして、各チャンネルの上位サンプル列と分離して記録する。上位信号平坦部データは、図2(e)に示した信号平坦部データと同様の形式で記録される。
【0041】
続いて、上位サンプル符号化手段60が、固定長の上位サンプル列を可変長に変換する。まず、ビット構成の変換を行うために利用するルックアップテーブルの作成を行う。ルックアップテーブルの作成にあたって、上位サンプル列の全時刻に渡って、各上位サンプル値のヒストグラムを算出する。各上位サンプル値は上記データ分離手段50により、全て絶対値化されているので、正負の区別なくヒストグラムを算出する。その結果、サンプル絶対値の種類が640以上となった場合、セパレータビットを2ビット固定値「00」とし、サンプル絶対値の種類が639以下となった場合、セパレータビットを1ビット固定値「0」とする。さらに、出現頻度の高いサンプル絶対値から順に、少ないビット数のビットパターンを割り当てていく。この際、割り当てるビットパターンには規則が有り、最上位ビットは必ず「1」とすると共に、セパレータビットが2ビット「00」の場合は「001」のビットパターンを含むビットパターンは禁止し、セパレータビットが1ビット「0」の場合は「01」のビットパターンを含むビットパターンは禁止する。また、セパレータビットが2ビット「00」の場合のルックアップテーブルは1つだけであるが、セパレータビットが1ビット「0」の場合のルックアップテーブルは、サンプル絶対値の種類が320以上の場合と、320未満の場合で異なるものを作成するようにしている。サンプル絶対値の種類の数に応じたルックアップテーブルの例を図8、図9に示す。
【0042】
上記のようにして作成されたルックアップテーブルを用いて、上位サンプル符号化手段60は、12ビット固定長の連続する上位サンプルデータを、可変長のビットパターンに変換していく。可変長になるため、変換後の各データの区切りを区別する必要が生じる。そのため、本実施形態では、各データ間に上述のような1ビットもしくは2ビットのセパレータビットを挿入する。サンプル値の種類が320未満の場合、各順位のデータを表現するためのビット列、およびビット数は、図8(a)に示すようになる。図8(a)において、順位0位は、最もビット数が少ない1ビット「1」で表現される。図8(a)においては、変換前ビット列は省略してあるが、最も頻繁に現れるビット列が1ビット「1」に変換されることになる。また、各可変長ビットには、セパレータが必ず付加されるので、順位0位のデータを表現するためには、2ビットが必要となることになる。図8(a)に示すサンプル値の種類が320未満の場合は、セパレータビットが1ビット「0」であるため、「01」のビットパターンは割り当てられないことになる。
【0043】
また、サンプル値の種類が320以上640未満の場合、各順位のデータを表現するためのビット列、およびビット数は、図8(b)に示すようになる。図8(b)は、図8(a)に示したルックアップテーブルの各ビット列の最上位1ビットに後続して1ビットを付加したものを新たなビット列としている。例えば、図8(b)において順位0位の「10」と順位1位の「11」は、図8(a)において順位0位の「1」に1ビット「0」と「1」をそれぞれ付加したものであり、図8(b)において順位2位の「100」と順位3位の「110」は、図8(a)において順位1位の「10」の2ビット目に1ビット「0」と「1」をそれぞれ付加したものである。図8(b)においても。各可変長ビットには、セパレータが必ず付加されるので、順位0位のデータを表現するためには、3ビットが必要となることになる。図8(b)の例では、セパレータビットが1ビット「0」であるため、「01」のビットパターンは割り当てられないことになるが、データの読出しの順序を工夫することにより復号時には正しいデータが抽出できるようになっている。
【0044】
また、セパレータビットが2ビット「00」の場合、各順位のデータを表現するためのビット列、およびビット数は、図9に示すようになる。図9において、順位0位は、最もビット数が少ない1ビット「1」で表現される。図9においても、変換前ビット列は省略してあるが、最も頻繁に現れるビット列が1ビット「1」に変換されることになる。また、各可変長ビットには、セパレータが必ず付加されるので、順位0位のデータを表現するためには、3ビットが必要となることになる。図9の例では、セパレータビットが2ビット「00」であるため、「001」のビットパターンは割り当てられないことになる。
【0045】
図10(a)(b)に、上位サンプル符号化手段60によるデータ変換の様子を模式的に示す。図10(a)(b)はいずれもサンプル列の上位部分に対応しており、図10(a)は固定長の上位サンプルが連続して記録されている様子を示している。図10(a)に示したような上位サンプル列は、図8(a)(b)および図9に示したルックアップテーブルを用いて図10(b)に示すように変換されることになる。
【0046】
(下位サンプルの符号化)
一方、下位サンプルデータは、下位サンプル符号化手段70により処理される。具体的には、データ分離手段50により分離された下位2ビットのデータを連続に配置していく。
【0047】
(符号データの記録)
以上のようにして得られた符号データは、図11に示すようになる。すなわち、上位可変長サンプル列、ルックアップテーブル、上位信号平坦部データ、下位固定長サンプル列、フレーム相関データ、信号平坦部データ、チャンネル間データとなる。これらのデータはその符号化過程において記憶手段2に記憶されているので、このデータを記録すべき記録媒体に合わせたフォーマットで記録する。
【0048】
(符号データの分析)
符号データは、分析手段3により分析される。分析手段3の処理について図12のフローチャートを用いて説明する。まず、量子化雑音成分のデータ量を算出する(ステップS21)。これは、符号データ中の下位固定長サンプル列のデータ量を計測することにより算出される。本装置における圧縮では、もともと下位の所定のビット数を量子化成分として分離し、それを固定長で符号化しているため、この下位固定長サンプル列のデータ量が原デジタル音響信号の量子化雑音成分であると推測できるのである。次に、フレーム相関データのデータ量を算出する(ステップS22)。これは、フレーム相関データのデータ量を計測することにより行う。続いて、元のサンプル列から削除された対象フレームのデータ量を算出する(ステップS23)。これは、フレーム相関データの内容から削除された対象フレームのデータ量を算出することにより行う。具体的には、フレーム相関データ内の対象フレームにフレーム長であるサンプル数(本実施形態では512サンプル)および各サンプルのビット数(本実施形態では16ビット)を乗じることにより算出する。
【0049】
次に、信号平坦部データのデータ量を算出する(ステップS24)。これは、符号データ中の信号平坦部データのデータ量を計測することにより行われる。続いて、原デジタル音響信号の信号平坦部のデータ量を算出する(ステップS25)。これは、信号平坦部データの内容から元の信号平坦部のデータ量を算出する。具体的には、信号平坦部データ内のサンプル数に必要なビット数(本実施形態では16ビット)を乗じることにより算出する。
【0050】
次に、上位可変長サンプル列のチャンネル別のデータ量を算出する。(ステップS26)。これは、符号データ中の上位可変長サンプル列のチャンネルごとのデータ量を計測することにより行われる。続いて、原デジタル音響信号の線形予測対象成分のデータ量を算出する(ステップS27)。これは、原デジタル音響信号のデータ量から、上記ステップS21において算出した量子化雑音成分のデータ量、上記ステップS23において算出した削除フレームのデータ量、および上記ステップS25において算出した原信号平坦部のデータ量を減じることにより算出される。各チャンネルにおけるデータ量は同じであるため、さらにチャンネル数で除算することにより各チャンネル別の線形予測対象成分が算出される。最後に、算出した各データの原音響信号に対する割合を算出する(ステップS28)。
【0051】
分析手段3により分析された情報は、表示手段4に表示される。ここで、このときの表示画面の様子を図13に示す。図13において、上段は圧縮前の原音響信号の構成比率を示したものであり、下段は圧縮後の符号データの構成比率を示したものである。図13に示した各構成データは実際には色分けされて表示される。また、各構成データと共に、各構成データの原デジタル音響信号に対する割合が百分率で%表示される。各構成データの割合は、圧縮後の各構成データについても、原デジタル音響信号に対する割合で算出され、表示される。また、上段と下段において、対応するデータは同色で表示する。例えば、線形予測符号化対象成分Lは、予測符号化圧縮成分Lと同色で表示する。なお、図13の各データにおけるL、Rはチャンネルを示している。図13の例では、2チャンネルのステレオ音響信号を対象として行ったため、2チャンネル分が示されている。図13の例では、全体としてデータ量が50%程度に圧縮されており、特に、予測符号化対象成分、信号平坦部、削除フレームの部分が圧縮率に大きく貢献していることがわかる。
【0052】
(最適次数の出力)
また、分析手段3は、予測誤差変換手段20により記録された最適次数データを所定の表示形式に変換して表示手段4に表示させる。このときの表示手段4の画面の様子を図14に示す。図14において、横軸は時刻、縦軸は次数である。図14に示したような形式で表示させることにより、どのような予測式を用いれば最適な圧縮を行うことができるかの参考になる。
【0053】
(フレーム相関の出力)
また、分析手段3は、相関フレーム検出手段40により記録されたフレーム相関データを所定の表示形式に変換して表示手段4に表示させる。このときの表示手段4の画面の様子を図15に示す。図15において、上段下段共に時系列のサンプル列を矩形で示している。また、横軸は時刻であり、矩形の左端は開始時刻、右端は終了時刻を示している。上段に示したサンプル列中の上下方向の線分は相関フレーム、下段に示したサンプル列中の上下方向の太い線分は対象フレームを示している。上段のサンプル列も下段のサンプル列も同じものを示しているが、分けて表示しているのは、対象フレームと相関フレームの関係をわかりやすく示すためである。対応する相関フレームと対象フレームは点線で結んで示している。図15の例では、11個の対象フレームに対して11個の相関フレームが検出されたことを示している。図15からわかるように、相関フレームは必ず対象フレームよりも時間的に過去のものになっている。図15に示すような分析データを可視情報として出力することにより、その時系列信号にどの程度の相関があるか等の情報を得ることができる。効果的な圧縮を検討するのに役立つ。
【0054】
(予測誤差成分の音声出力)
上記のような視覚的な分析とは別に、本装置では、符号データの一部、あるいは符号データの作成過程において生じるデータを、音響信号として出力する機能も有している。予測誤差変換手段20により得られたサンプル列を音響信号変換手段により変換した後出力すると、予測誤差成分を音声として出力することができる。同時に、その信号波形を表示手段4により出力する。これにより、本来は予測誤差成分であるデータを新たな音響信号とする特殊効果的な音響信号が得られる。例えば、図16に示すような波形を示すPCM音響信号に対して処理を行うと、図17に示すような波形の予測誤差成分が得られる。
【0055】
(上位予測誤差成分の音声出力)
また、上位可変長サンプル列の生成過程において生じる上位固定長サンプル列を音響信号変換手段により変換した後出力すると、予測誤差成分の上位ビット成分を音声として出力することができる。同時に、その信号波形を表示手段4により出力する。これにより、本来は予測誤差成分の主成分であるデータを新たな音響信号とする特殊効果的な音響信号が得られる。例えば、図16に示すような波形を示すPCM音響信号に対して処理を行うと、図18に示すような波形の上位予測誤差成分が得られる。
【0056】
(下位予測誤差成分の音声出力)
また、下位固定長サンプル列を音響信号変換手段により変換した後出力すると、予測誤差成分の下位ビット成分を音声として出力することができる。同時に、その信号波形を表示手段4により出力する。これにより、本来は予測誤差成分の量子化雑音成分であるデータを新たな音響信号とする特殊効果的な音響信号が得られる。例えば、図16に示すような波形を示すPCM音響信号に対して処理を行うと、図19に示すような波形の下位予測誤差成分が得られる。
【0057】
(復号)
次に、上記符号化装置により符号化された符号データの復号について説明する。図20は、本発明に係る時系列信号の復号装置の構成を示す機能ブロック図である。図20において、91はデータ読込手段、92は上位サンプル変換手段、93はデータ統合手段、94はフレーム復元手段、95はチャンネル復元手段、96は独立サンプル復元手段、97は信号平坦部挿入手段である。図20に示す構成は、コンピュータおよびコンピュータに搭載される専用のソフトウェアプログラムにより実現される。
【0058】
続いて、図20に示した復号装置の処理動作について説明する。まず、図11に示したような符号データを記録した記録媒体を、データ読込手段91が読み込む。データ読込手段91は、読み込んだデータのうち、上位可変長サンプル列とルックアップテーブルを、上位サンプル変換手段92に渡す。上位サンプル変換手段92では、ルックアップテーブルを参照することにより、上位可変長サンプル列から、12ビット(値が「0」のものについては11ビット)固定長の上位固定長サンプル列を復元してゆく。この際、ルックアップテーブルが図8(a)もしくは図9に示したものである場合には、上位可変長サンプル列のビットデータを順番に読み込んで復元していけば問題ないが、図8(b)に示したようなルックアップテーブルである場合には、変換時に工夫が必要となる。この場合、セパレータビットが1ビット「0」であるため、「01」のビットパターンは本来禁止されるはずであるが、図8(b)に示すように、変換後ビット列には、「01」のビットパターンを含むものがある。そこで、本実施形態では、ビットパターンの書き込み順序を変更することで対応している。具体的には、図8(a)または図9の場合、常に1となる先頭ビットを最後に書き込むようにし、2ビット目から書き込むようにし、図8(b)の場合、1および2ビット目を最後に書き込むようにし、3ビット目から書き込むようにしている。例えば、順位4位のビット列「101」は「01」のビットパターンを含むが、このようなビット列の場合、まず3ビット目の「1」から読み込まれ、セパレータビットと第1ビットから構成される「01」パターンを認識して、2ビット目が最後に読まれることになるため、セパレータの誤認識が生じない。この場合、上位サンプル変換手段92は「101」のビット列を認識し、ルックアップテーブルに従って元の固定長ビット列が復元できる。
【0059】
さらに、上位サンプル変換手段92は読み込んだ上位信号平坦部データを上位固定長サンプル列の所定の位置に挿入していく。続いて、データ統合手段93が上位固定長サンプル列と下位固定長サンプル列を統合する。具体的には、上位固定長サンプル列から12ビットを抽出し、下位固定長サンプル列から4ビットを抽出して順次統合する処理を行う。さらに、続いて、データ統合手段93は、正負の正負極性部1ビットと数値部15ビットで表現されたサンプル列を正負の数値をとる16ビットに変換する。
【0060】
フレーム復元手段94は、このようなサンプル列に対して、フレーム相関データで定義されている相関フレームに対応する区間のサンプル列と同一のサンプル列をもつ区間を、フレーム相関データで定義されている対象フレームのアドレス位置に挿入することにより、フレームを復元する。この結果、図2(d)に示すようなサンプル列が復元される。さらに、チャンネル復元手段95がチャンネル間情報を用いて、どのチャンネルのサンプル列が元のままであるか、どのチャンネルのサンプル列がどのチャンネルのサンプル列との差分情報となっているかを認識して、サンプル列を復元する。この時点で各サンプルの値は前1つから4つまでのいずれかの個数のサンプル値に基づく予測誤差で記録されているので、独立サンプル復元手段96が、上記〔数式1〕〜〔数式4〕の左辺の項と右辺第1項を交換した式に基づいて、元のサンプル値x(t)を順次復元してゆく。最後に、信号平坦部挿入手段97は、図2(e)に示したような信号平坦部データを用いて、図2(b)に示すようにサンプル列の所定の位置に信号平坦部を挿入する。これにより、アナログ信号をPCM化した状態のデジタル音響信号がデータの欠落無く復元されることになる。
【0061】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明によれば、時系列のサンプル列で構成される時系列信号に対して、サンプル列の各サンプルの値を、時間的に過去の複数のサンプルからの予測誤差値に変換し、予測誤差値に変換された各サンプル値を表現するビットデータを分断する位置を設定し、設定されたビット位置で分断し、上位ビットのサンプル列で構成される上位サンプル列と、下位ビットのサンプル列で構成される下位サンプル列とに分離し、上位サンプル列に対しては、可変長符号で符号化を行い、下位サンプル列に対しては、固定長符号で符号化を行、時系列信号の中で上位サンプル列に対応するデータの割合と、下位サンプル列に対応するデータの割合と、上位サンプルの符号化で符号化されたデータの割合と、下位サンプルの符号化で符号化されたデータの割合を表示するようにしたので、時系列信号を効率的に可逆圧縮すると共に、圧縮されたデータの圧縮精度を解析することが可能となるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る時系列信号の符号化装置の一実施形態を示す機能ブロック図である。
【図2】信号平坦部処理手段10およびチャンネル間演算手段30による処理の様子を示す図である。
【図3】予測誤差変換手段20による予測誤差算出処理の様子を示す図である。
【図4】フレーム間演算手段40による処理を示すフローチャートである。
【図5】フレーム間演算手段40の処理による時系列信号全体の様子を示す図である。
【図6】フレーム間演算手段40の処理により比較されるサンプルの様子を示す図である。
【図7】データ分離手段50による処理の様子を示す図である。
【図8】サンプル絶対値の種類が640未満の場合のルックアップテーブルの一例を示す図である。
【図9】サンプル絶対値の種類が640以上の場合のルックアップテーブルの一例を示す図である。
【図10】上位サンプルのビット長の変換を模式的に示す図である。
【図11】本発明に係る時系列信号の符号化装置により得られる符号データを示す図である。
【図12】分析手段3による処理の様子を示すフローチャートである。
【図13】分析手段3により処理された各データ割合の表示例を示す図である。
【図14】表示手段4に表示された最適次数データを示す図である。
【図15】表示手段4に表示されたフレーム相関を示す図である。
【図16】原音響信号の波形を示す図である。
【図17】図16の原音響信号の処理により得られる予測誤差成分の波形を示す図である。
【図18】図16の原音響信号の処理により得られる上位予測誤差成分の波形を示す図である。
【図19】図16の原音響信号の処理により得られる下位予測誤差成分の波形を示す図である。
【図20】時系列信号の復号装置を示す機能ブロック図である。
【符号の説明】
1・・・時系列信号入力手段
2・・・記憶手段
3・・・分析手段
4・・・表示手段
5・・・分離位置手段
6・・・音響信号変換手段
7・・・音声出力手段
10・・・信号平坦部処理手段
20・・・予測誤差変換手段
30・・・チャンネル間演算手段
40・・・フレーム間演算手段
50・・・データ分離手段
60・・・上位サンプル符号化手段
70・・・下位サンプル符号化手段
91・・・データ読込手段
92・・・上位サンプル変換手段
93・・・データ統合手段
94・・・フレーム復元手段
95・・・チャンネル復元手段
96・・・独立サンプル復元手段
97・・・信号平坦部挿入手段
Claims (8)
- 時系列のサンプル列で構成される時系列信号に対して、前記全てのサンプル列を再現できるように情報量を圧縮すると共に圧縮した情報を解析する装置であって、
前記サンプル列の各サンプルの値を、時間的に過去の複数のサンプルからの予測誤差値に変換する予測誤差変換手段と、
前記予測誤差値に変換された各誤差サンプル値を表現するビットデータを分断する位置を設定し、設定されたビット位置で分断し、上位ビットのサンプル列で構成される上位サンプル列と、下位ビットのサンプル列で構成される下位サンプル列とに分離するデータ分離手段と、
前記上位サンプル列に対しては、可変長符号で符号化を行うようにした上位サンプル符号化手段と、
前記下位サンプル列に対しては、固定長符号で符号化を行うようにした下位サンプル符号化手段と、
前記時系列信号の中で前記上位サンプル列に対応するデータの割合と、前記下位サンプル列に対応するデータの割合と、前記上位サンプル符号化手段で符号化されたデータの割合と、前記下位サンプル符号化手段で符号化されたデータの割合と、を表示するデータ表示手段と、
を備えていることを特徴とする時系列信号の圧縮解析装置。 - 請求項1において、
前記サンプル列の中で、サンプルの値が連続して同一値になっている信号平坦部を抽出し、当該サンプル列から分離すると共に分離したサンプルの先頭時間位置と、サンプル個数と、サンプル値の3つの値を信号平坦部データとして符号化する信号平坦部符号化手段をさらに有し、
前記データ表示手段が、さらに前記信号平坦部の割合と、および前記信号平坦部データの割合を表示するものであることを特徴とする時系列信号の圧縮解析装置。 - 請求項1において、
前記サンプル列が同一時刻に複数の値をもつ複数のチャンネルで構成されている場合、チャンネル間のサンプル列に所定の演算を施し、いずれかのチャンネルのサンプル列を更新するようにしたチャンネル間演算手段をさらに有し、
前記データ表示手段が、さらに前記各データの割合を表示する際に、チャンネル別に表示するものであることを特徴とする時系列信号の圧縮解析装置。 - 請求項1において、
前記サンプル列の中から所定の個数のサンプル列で構成されるフレームを設定し、各フレームを対象フレームとして、時間的に過去のサンプルを探索することにより全サンプルが、前記対象フレームの全サンプルと同一値となる相関フレームが存在するかどうかを検出し、相関フレームが存在した場合に、前記対象フレームと相関フレームを対応付ける情報をフレーム相関データとして符号化し、当該対象フレームの各サンプルを前記サンプル列から削除するフレーム検出手段をさらに有し、
前記データ表示手段が、さらに前記各データの割合を表示する際に、前記時系列信号における前記対象フレームの位置を表示するものであることを特徴とする時系列信号の圧縮解析装置。 - 時系列のサンプル列で構成される時系列信号に対して、前記全てのサンプル列を再現できるように情報量を圧縮すると共に圧縮過程で作成されたデータを音響信号に変換して出力する装置であって、
前記サンプル列の各サンプルの値を、時間的に過去の複数のサンプルからの予測誤差値に変換する予測誤差変換手段と、
前記予測誤差値に変換された各誤差サンプル値を表現するビットデータを分断する位置を設定し、設定されたビット位置で分断し、上位ビットのサンプル列で構成される上位サンプル列と、下位ビットのサンプル列で構成される下位サンプル列とに分離するデータ分離手段と、
前記上位サンプル列に対しては、可変長符号で符号化を行うようにした上位サンプル符号化手段と、
前記下位サンプル列に対しては、固定長符号で符号化を行うようにした下位サンプル符号化手段と、
前記いずれかの手段において作成されたデータを音響信号として再生またはデータ出力するデータ出力手段と、
を有することを特徴とする時系列信号の変換装置。 - 前記データ出力手段は、予測誤差変換手段で変換された誤差サンプル列を出力するものであることを特徴とする時系列信号の変換装置。
- 前記データ出力手段は、前記データ分離手段で分離された上位サンプル列の各上位サンプルに対して対応する誤差サンプルと同一の正負極性符号を付与して、音響信号として出力するものであることを特徴とする時系列信号の変換装置。
- 前記データ出力手段は、前記データ分離手段で分離された下位サンプル列の各下位サンプルに対して対応する誤差サンプルと同一の正負極性符号を付与して、音響信号として出力するものであることを特徴とする時系列信号の変換装置。
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