JP2004257330A - 軸流式の小型水力発電機 - Google Patents

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Abstract

【課題】軸流式の小型水力発電機において、水路内の水流が小水流量時にディテントトルクによりロータが良好に回転せず、発電が十分にできない問題を解決する。
【解決手段】水路24内に回転軸28の軸心回りに回転可能に設けられた水車16を含むロータ18と、ロータ18の外周側に配置されたステータ14とを有し、水路24内の水流によりロータ18を回転させて発電を行う軸流式の小型水力発電機10において、ロータ18を軸方向に移動可能に設けるとともにばね34にて水流の向きとは逆方向に付勢する。これにより水流停止状態でロータ18をステータ14から軸方向に離れた位置に位置させる。そして水流発生時にその位置で回転開始させた上、水流の押動作用でロータ18をステータ14側にばね34の付勢力に抗して軸方向に移動させ、ステータ14に対向する位置で回転させて発電を行うようにする。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、水路内を流れる水流の勢いで水車を含むロータを回転させて発電を行う小型水力発電機に関し、詳しくは軸流式の小型水力発電機に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来より、自動水栓や便器の自動洗浄装置等の給水装置において、水路の水流により水車を含むロータを回転させて発電を行う小型水力発電機が広く用いられている。
詳しくは、これら自動水栓や便器の自動洗浄装置等においては、小型水力発電機で発生させた電力を2次電池やコンデンサ等の蓄電素子に蓄え、これを電源としてセンサや制御回路等を駆動するようにしている。
【0003】
従来これらの給水装置においては、水車に対して水流をその接線方向即ち軸直角方向に当て、水車即ちロータを回転させるようにしていた。
この場合水流の勢いを効率的に水車の回転力に変換することができ、従って効率高く発電を行うことが可能である。
【0004】
しかしながらこの形式の小型水力発電機を用いた給水装置の場合、水流を水車に対して接線方向に当てるように水流の向きを変えなければならないといった制約がある問題が内在する。
これに対して、小型水力発電機を軸流式のものとした場合、即ち水路内の水流の向きと同じ方向(つまり水路の軸方向)に水車の回転軸を配向させ、軸方向の水流によって水車を回転させる形式の水力発電機とした場合、上記のように水流の向きを直角に曲げたりする必要がない利点がある。
【0005】
しかしながら一方でこのような軸流式の小型水力発電機の場合、水流の勢いを効率高く水車の回転力に変換することが難しい問題がある。
軸流式の小型水力発電機の場合、水車における羽根形状がスクリュー状の形状とされ、その羽根形状に基づいて軸方向の水流の勢いを水車の回転方向の力に変換するが、この場合軸方向の水流のエネルギーの一部だけが水車の回転力に変換されるに過ぎず、残りのエネルギーが水車を軸方向に押す力として働いてしまい、そのためこの種軸流式の水力発電機の場合、水流の勢いを効率高く水車の回転力に変換して発電することが難しいのである。
【0006】
またこの軸流式の小型水力発電機の場合、水流による水車即ちロータの回転力が小さいため、静止状態で水路内に水流が生じたときその水流量が少ないと、半径方向に対向して位置するロータとステータとの間に発生する回転方向のブレーキ力(ディテントトルク)に打ち勝ってロータが回ることができず、発電がなされない問題が生ずる。
【0007】
水力発電機において、ロータとステータとの間のディテントトルクによって水車に回転抵抗が生じる問題の解決を図ったものが下記特許文献1に開示されている。
しかしながらこの特許文献1に開示のものは軸流式の水力発電機ではなく、またその解決手段も本発明とは異なったものである。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−89429号公報
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の軸流式の小型水力発電機はこのような課題を解決するために案出されたものである。
而して請求項1のものは、水路内において該水路の軸方向に配向された回転軸の軸心回りに回転可能に設けられた水車を含むロータと、該ロータの外周側に配置されたステータとを有し、該水路内の水流により該ロータを回転させて発電を行う軸流式の小型水力発電機において、前記ロータを軸方向に移動可能に設けるとともに該ロータを水流の向きとは逆方向にばねにて付勢し、水流停止状態で該ロータを前記ステータから軸方向に離れた位置に位置させ、水流の発生により該ロータを軸方向において該ステータ側に前記ばねの付勢力に抗して移動させるようになしてあることを特徴とする。
【0010】
請求項2のものは、請求項1において、前記ロータが前記水路内の水流量に応じて前記ステータ側に移動するようになしてあることを特徴とする。
【0011】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記水路内の最大水流量の下で前記ロータが前記ステータに対し半径方向に対向する位置で軸方向の移動を停止するようになしてあることを特徴とする。
【0012】
請求項4のものは、請求項1〜3の何れかにおいて、前記ばねの先端がスラスト軸受を介して前記水車に当接させてあることを特徴とする。
【0013】
【作用及び発明の効果】
以上のように本発明は、水車を含むロータを軸方向に移動可能となすとともにばねにより水流の向きとは逆方向に付勢し、水流停止状態でロータをステータから軸方向に離れた位置に位置させ、そして水流の発生によりロータを回転開始させるとともに水流による軸方向の押動力によりばねの付勢力に抗してステータ側に移動させるようになしたもので、本発明によれば、水路内に水流が生じて水車を含むロータが回転開始する際、ロータとステータとの間に働くディテントトルクから開放された状態でロータを回転開始させることができる。
従ってその際微弱な水流の下でも円滑にロータを回転開始させることができる。
【0014】
そして慣性力により回転を保ちながらロータがばねの付勢力に抗してステータ側に、即ち発電効率の高い位置に移動して回転するため、効率的に発電を行うことができる。
【0015】
本発明の軸流式の小型水力発電機によれば、水車を含むロータの回転のために水路を直角に曲げたりしなくても良く、また小水流量の下でも円滑にロータを回転させることができ、そしてディテントトルクに負けない強い回転力が水流からロータに加えられるようになった段階では、ロータをステータに対し半径方向に対向する位置に位置させて高効率で発電を行わせることができる。
【0016】
この場合において上記ロータは、水路内の水流量の増大に応じて漸次ステータ側に移動するようになしておくことができる(請求項2)。
また請求項3に従い、水路内の最大水流量の下でロータがステータに対し半径方向に対向する軸方向位置を保ち、それ以上には移動しないようになしておくことができる。
【0017】
請求項4は、上記ばねの先端をスラスト軸受を介して水車に当接させたもので、このようにしておくことで、ばねの付勢力を水車に対して及ぼしつつ水車を含むロータを円滑に回転させることができる。
【0018】
【実施例】
次に本発明の実施例を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は本例の軸流式の小型水力発電機(以下単に水力発電機)で、円筒形状のケーシング12と、ステータ14と、ケーシング12内部に配設された水車16を含むロータ18とを有している。
ここでステータ14はコイル20とヨーク22とを有している。
【0019】
ケーシング12の内部には水路24が形成されており、この水路24上に且つ軸方向に距離を隔てて一対の支持部材26が配設されている。これら一対の支持部材26には貫通穴38が形成されている。
【0020】
28はロータ18の回転軸で、軸方向の両端部が一対の支持部材26によって非回転状態に保持されている。
そしてこの回転軸28の軸心回りに回転可能な状態で上記ロータ18が配設されている。
【0021】
ここでロータ18は、水車16の外周面に水車16と一体回転状態に設けられた円筒形状のマグネット32を有している。
また水車16には、スクリュー状の羽根30が内筒部31から外筒部33にかけて設けられている。
【0022】
水車16は、この内筒部31において回転軸28の外周面に回転可能に外嵌されている。
この水車16を含むロータ18は、回転軸28に対し軸方向に移動可能とされている。
【0023】
回転軸28の外周側には、圧縮コイルスプリングから成るばね34が嵌装されている。
ばね34は、その一端を支持部材26に当接させ、また他端をスラスト軸受36を介してロータ18、詳しくは水車16の内筒部31に当接させている。
【0024】
次に本例の水力発電機10の作用を詳しく説明する。
本例において、ロータ18は水路24内に水流が生じていないとき(水流停止状態)、ばね34の付勢力でステータ14に対して半径方向に対向する位置から図1中右方向に移動した位置で停止している。
この状態では、ロータ18がステータ14に対し軸方向に距離L(図3(I)参照)離隔していることから、ロータ18とステータ14との間に回転方向のブレーキ力、即ちディテントトルクは生じない。
【0025】
従ってこの状態で、図3(I)に示しているように水路24内に図中左向きの水流が生ずると、ロータ18はそのディテントトルクによる回転抵抗を受けないで円滑に回転運動し始める。
このとき、図2に示しているように水車16には水流による図中左向きの、つまりばね34の付勢力とは反対方向のスラスト力と回転方向の力とが作用する。
ロータ18はこの回転方向の力、即ち回転方向の成分によって回転運動する。
【0026】
ロータ18はこのようにして水流発生と同時、即ち通水開始と同時に回転運動し、これとともに上記水流によるスラスト力(押動作用)によってばね34の付勢力に抗し図中左向きに移動開始する。
図3(II)はこのときの状態を表している。但し図3(II)は水路24内に生ずる水流が小水流量のときを表している。
【0027】
このとき、図3(II)に示しているようにロータ18はステータ14に対向する位置まで軸方向に移動せず、ステータ14から距離L離れた途中の位置で止まって回転運動を継続する。
そしてこのロータ18の回転運動に基づいて発電が行われる。
【0028】
この図3(II)に示すよりも更に水路24内に生ずる水流量が増し、ロータ18に対するスラスト力が更に増大すると、ロータ18は図3(III)に示しているようにステータ14に対して丁度半径方向に対向する位置に到り、その位置において回転運動を行って発電を継続する。
【0029】
この図3(III)に示す状態、即ちロータ18がステータ14に対して軸方向の丁度同じ位置に位置している状態は発電効率が最も高い状態であり、この位置においてロータ18が回転することによって高効率で発電が行われる。
【0030】
またこの図3(III)に示す状態ではロータ18の回転力も強いため、ロータ18とステータ14との間に働く電磁吸引力即ちブレーキ力(ディテントトルク)にも拘わらずロータ18が良好に勢い良く回転運動することができる。
【0031】
図3(III)に示す状態では、圧縮コイルスプリングから成るばね34は、ばねの巻線同士(1巻1巻)が軸方向に密着した状態にあり、従ってこれ以上水流量が増してもロータ18はこの状態から更に図中左方向に移動することはなく、図3に示す位置を保持しながら回転運動して発電を行う。
即ちこの例では、ばね34自体がロータ18をステータ14に対し半径方向に対向する位置に位置決めするストッパ手段を兼ねている。
【0032】
以上のように本例の水力発電機10によれば、ロータ18の回転のために水路24を直角に曲げたりしなくても良く、また水流停止状態においてロータ18をディテントトルクが働かない位置に位置させておくことができるため、水路24内に水流が生じてロータ18が回転開始する際、ディテントトルクから開放された条件下でロータ18を回転開始させることができる。
従ってその際水路24内の水流が微弱な水流であっても、円滑にロータ18を回転開始させることができる。
【0033】
回転開始したロータ18は慣性力によって回転運動を続けながら水流の押動作用でばね34の付勢力に抗して漸次ステータ14側に軸方向に移動するため、ステータ14との間でディテントトルクが働く位置に到っても回転運動を継続し、そして最終的にステータ14に対し半径方向に対向する位置に到った段階で最も高効率で発電を行う。
【0034】
本例では、ばね34の先端をスラスト軸受36を介して水車16に当接させているため、ばね34の付勢力を水車16に対して及ぼしつつ水車16を含むロータ18を円滑に回転させることができる。
【0035】
以上本発明の実施例を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である軸流式の水力発電機を示す図である。
【図2】図1の要部を示す斜視図である。
【図3】図1の軸流式の水力発電機の作用説明図である。
【符号の説明】
10 水力発電機
14 ステータ
16 水車
18 ロータ
24 水路
28 回転軸
34 ばね
36 スラスト軸受

Claims (4)

  1. 水路内において該水路の軸方向に配向された回転軸の軸心回りに回転可能に設けられた水車を含むロータと、該ロータの外周側に配置されたステータとを有し、該水路内の水流により該ロータを回転させて発電を行う軸流式の小型水力発電機において、
    前記ロータを軸方向に移動可能に設けるとともに該ロータを水流の向きとは逆方向にばねにて付勢し、水流停止状態で該ロータを前記ステータから軸方向に離れた位置に位置させ、水流の発生により該ロータを軸方向において該ステータ側に前記ばねの付勢力に抗して移動させるようになしてあることを特徴とする軸流式の小型水力発電機。
  2. 請求項1において、前記ロータが前記水路内の水流量に応じて前記ステータ側に移動するようになしてあることを特徴とする軸流式の小型水力発電機。
  3. 請求項1,2の何れかにおいて、前記水路内の最大水流量の下で前記ロータが前記ステータに対し半径方向に対向する位置で軸方向の移動を停止するようになしてあることを特徴とする軸流式の小型水力発電機。
  4. 請求項1〜3の何れかにおいて、前記ばねの先端がスラスト軸受を介して前記水車に当接させてあることを特徴とする軸流式の小型水力発電機。
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