JP2004256858A - ボールねじの焼入れ方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ボールねじ1において、ナット部材2やねじ軸3に対して簡単に良質な焼入れを施して、優れた耐摩耗性や動作円滑性を確保する。
【解決手段】ナット部材2やねじ軸3のねじ溝21,31およびその両肩部に対して高周波焼入れを施す。この高周波焼入れについては、ナット部材2やねじ軸3のねじ溝21,31に対してそれを横切る姿勢で高周波加熱コイル10を対向配置させた状態で、この高周波加熱コイル10に高周波電流を流すことによりナット部材2やねじ軸3の表面側にねじ溝21,31およびその両肩部の表面形状に沿ってねじ溝21,31を横切る向きの誘導電流を発生させつつ、ナット部材2やねじ軸3または高周波加熱コイル10の一方を周方向に動かすようにする。これにより、ナット部材2やねじ軸3のねじ溝21,31およびその両肩部にほぼ一定深さの硬化層35が形成される。
【選択図】 図3
【解決手段】ナット部材2やねじ軸3のねじ溝21,31およびその両肩部に対して高周波焼入れを施す。この高周波焼入れについては、ナット部材2やねじ軸3のねじ溝21,31に対してそれを横切る姿勢で高周波加熱コイル10を対向配置させた状態で、この高周波加熱コイル10に高周波電流を流すことによりナット部材2やねじ軸3の表面側にねじ溝21,31およびその両肩部の表面形状に沿ってねじ溝21,31を横切る向きの誘導電流を発生させつつ、ナット部材2やねじ軸3または高周波加熱コイル10の一方を周方向に動かすようにする。これにより、ナット部材2やねじ軸3のねじ溝21,31およびその両肩部にほぼ一定深さの硬化層35が形成される。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボールねじの焼入れ方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ボールねじに備えるS45Cなどの炭素鋼やSCM415などで造られるねじ軸あるいはナット部材のねじ溝を硬化する方法として、浸炭焼入れや高周波焼入れなどがある。
【0003】
浸炭焼入れでは、ねじ軸やナット部材の全表面を加熱するので、ねじ軸やナット部材の変形が避けられず、ねじ溝のリード精度を高くできないという問題がある。
【0004】
一方、高周波焼入れをねじ軸に対して行う方法を説明する。一般的に、ねじ軸は、その一端から他端までの全長にわたって連続する1条の螺旋形状のねじ溝が設けられている。そこで、例えば図8に示すように、螺旋形状の高周波加熱コイル80を用意し、その内部空間に例えばねじ軸81を挿入し、高周波加熱コイル80をねじ溝82に対して沿わせるように対向配置させておき、高周波加熱コイル80に高周波電流を通電することにより行う。
【0005】
この場合、高周波加熱コイル80によりねじ軸81に発生する誘導電流は、図9の矢印で示すように、ねじ溝82の長手方向に沿う向きに流れるが、ねじ溝82の両肩部の角に集中して流れる。そのため、ねじ溝82の両肩部の角が過剰に加熱される一方で、ねじ溝82の溝底側が加熱されにくくなるので、図9のクロスハッチングで示すように、ねじ溝82に所要深さの硬化層83を得るように焼入れすると、両肩部での硬化層が必要以上に深くなり、その結果、靭性が低下したり、耐衝撃荷重特性が悪くなったり、さらに極端な場合、焼割れなどが生じ、破損する場合がある。
【0006】
これに対して、螺旋形状の高周波加熱コイルをねじ軸のねじ溝内に入り込ませることにより、高周波加熱コイルとねじ溝や両肩部に対する隙間をほぼ一定にさせるような形態で行うことが考えられている(特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−326856号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来例では、ねじ軸のねじ溝内に高周波加熱コイルを所定の隙間を保った状態で入り込ませるようにしているが、ねじ溝と高周波加熱コイルとの相対位置を高精度に保つ必要があるために、均一な硬化層を得ることは困難であると言える。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るボールねじの焼入れ方法は、ナット部材の内周面に設けられるねじ溝とねじ軸の外周面に設けられるねじ溝との間に複数のボールが介装されたボールねじの前記ねじ軸を焼入れする方法であって、前記ねじ軸のねじ溝方向に対してそれを横切る姿勢で高周波加熱コイルを対向配置させた状態で、この高周波加熱コイルに高周波電流を流すことにより前記ねじ軸の表面側に前記ねじ溝およびその両肩部の表面形状に沿って当該ねじ溝を横切る向きの誘導電流を発生させつつ、前記ねじ軸または高周波加熱コイルの一方を周方向に動かすことにより、前記ねじ軸のねじ溝に対して高周波焼入れを施すようにする。
【0010】
この場合、高周波加熱コイルへの通電に伴いねじ軸の表面側においてねじ溝を横切る向きに誘導電流がねじ軸の表面形状に沿って流れるので、ねじ溝の両肩部を過剰に加熱することがなく、また、ねじ溝の底まで十分に加熱することができる。これにより、ねじ軸においてねじ溝およびその両肩部に、それらの表面からほぼ一定の深さの硬化層を形成できるようになる。
【0011】
本発明のボールねじの焼入れ方法は、ナット部材の内周面に設けられるねじ溝とねじ軸の外周面に設けられるねじ溝との間に複数のボールが介装されたボールねじの前記ナット部材を焼入れする方法であって、前記ナット部材のねじ溝方向に対してそれを横切る姿勢で高周波加熱コイルを対向配置させた状態で、この高周波加熱コイルに高周波電流を流すことにより前記ナット部材の表面側に前記ねじ溝およびその両肩部の表面形状に沿って当該ねじ溝を横切る向きの誘導電流を発生させつつ、前記ナット部材または高周波加熱コイルの一方を周方向に動かすことにより、前記ナット部材のねじ溝に対して高周波焼入れを施すようにする。
【0012】
この場合、高周波加熱コイルへの通電に伴いナット部材の内径面の表面側においてねじ溝を横切る向きに誘導電流がナット部材の内径面形状に沿って流れるので、ねじ溝の両肩部を過剰に加熱することがなく、また、ねじ溝の底まで十分に加熱することができる。これにより、ナット部材においてねじ溝およびその両肩部に、それらの表面からほぼ一定の深さの硬化層を形成できるようになる。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1から図7に本発明の一実施形態を示している。図例のボールねじ1は、ナット部材2と、ねじ軸3と、複数のボール4とを備えている。ナット部材2およびねじ軸3は、S45C,S55Cなどの炭素鋼製あるいはSAE4150鋼とされ、また、ボール4は、軸受鋼(SUJ2)とされる。
【0014】
ナット部材2には、その一方軸端から他方軸端まで連続する1条のねじ溝21が形成されている。また、ねじ軸3には、その一方軸端から他方軸端まで連続する1条のねじ溝31が形成されている。これらナット部材2のねじ溝21とねじ軸3のねじ溝31とは、互いに同じリード角に設定されている。なお、上記ねじ溝21,31の断面形状は、ゴシックアーク形状とされているが、半円形状とすることもできる。
【0015】
このナット部材2のねじ溝21とねじ軸3のねじ溝31との間に、複数のボール4が介装されている。ボール4は、例えば両ねじ溝21,31の3巻きの範囲内に所定の間隙を介して配置されるだけの数が用いられている。
【0016】
次に、上記ボールねじ1の動作を説明する。
【0017】
例えばナット部材2を回転自在に支持し、上記ねじ軸3を非回転かつ軸心方向不動に取り付けた状態において、上記ナット部材2を回転させると、このナット部材2が、図1の二点鎖線で示すようにねじ軸3上を軸方向に動くことになる。この他、ナット部材2またはねじ軸3の一方を回転させることで他方を軸心方向に移動させる使用形態、あるいはナット部材2またはねじ軸3の一方を軸心方向に移動させることで他方を回転させる使用形態にすることができる。
【0018】
この実施形態では、ねじ軸3のねじ溝31とナット部材2のねじ溝21とに対して高周波焼入れを施しているのであるが、その高周波焼入れの形態を工夫しているので、以下で説明する。
【0019】
ここでのねじ軸3は、炭素鋼S55C材をベースとしてねじ溝31を旋削加工により形成している。
【0020】
まず、図3および図4に示すように、高周波加熱コイル10においてU字形に屈曲された部分11をねじ軸3に対して対向配置させるのであるが、このU字形部分11の二つの直線部分11a,11bをねじ軸3の中心軸線に対して平行にする。高周波加熱コイル10の二つの直線部分11a,11bは、ねじ軸3の全長よりも長く設定されている。
【0021】
このような状態で、ねじ軸3を図4の矢印方向に1回転させることで、高周波加熱コイル10を、ねじ溝31の全範囲に対して順次対向させる。この過程で、高周波加熱コイル10に高周波電流を流すと、ねじ軸3の表面側には前記高周波電流と逆向きであるが、平行に誘導電流が流れる。詳しくは、図5の矢印で示すように、ねじ溝31およびその両肩部の表面形状に沿ってねじ溝31を横切る向きに誘導電流が流れる。これにより、ねじ溝31およびその両肩部が、ほぼ一定の深さまで加熱されるので、図5のクロスハッチングで示すように、深さがほぼ一定の硬化層(表面硬さHRC58〜62)35が形成される。
【0022】
次に、ナット部材2に対する焼入れ方法について、図6および図7を参照して説明する。この場合、図6に示すような高周波加熱コイル40を用いる。この高周波加熱コイル40は、波形に蛇行させつつ円筒形に形づけられることにより王冠のような形状とされている。言い換えれば、高周波加熱コイル40は、平面から見てU字形部分41を周方向隣り合わせに複数配置してそれぞれの先端側を連結したような形状になっている。この高周波加熱コイル40において、各U字形部分41の直線部分41a,41bが軸方向に沿って配置されている。また、上記直線部分41a,41bの軸方向寸法は、加熱対象となるナット部材2の軸方向寸法とほぼ同じ長さに設定されている。
【0023】
このような高周波加熱コイル40を、ナット部材2の内周に所定隙間を介して対向するように挿入する。このような状態で、ナット部材2を回転させながら、高周波加熱コイル40に高周波電流を流すと、ナット部材2の表面側には前記高周波電流の向きと逆向きであるが、平行に誘導電流が流れる。つまり、図7の矢印で示すように、ねじ溝21およびその両肩部の表面形状に沿ってねじ溝21を横切る向きに誘導電流が流れる。これにより、ねじ溝21およびその両肩部が、ほぼ一定の深さまで加熱されるので、図7のクロスハッチングで示すように、深さがほぼ一定の硬化層(表面硬さHRC58〜62)35が形成される。ところで、上記焼入れ過程で、ナット部材2と高周波加熱コイル40とを回転させなくてもよい。
【0024】
なお、上記のような高周波焼入れを施すと、ねじ溝21,31に僅かながらも熱歪が発生するので、高周波焼入れの後でねじ溝21,31に対して研磨処理を施すことにより、前記熱歪を除去するのが好ましい。
【0025】
以上説明した実施形態では、ナット部材2やねじ軸3においてねじ溝21,31の両肩部の角が過剰に加熱されずに済むとともにねじ溝21,31の底側を不足なく加熱できて、ほぼ一定深さの硬化層35を形成できるので、優れた耐摩耗性ならびに動作円滑性を確保することができる。
【0026】
なお、本発明は、上記実施形態のみに限定されない。例えば、ナット部材2とねじ軸3のいずれか一方のみに高周波焼入れを施してもよい。
【0027】
【発明の効果】
本発明では、ねじ軸やナット部材のねじ溝に対してほぼ一定深さの硬化層を簡単に形成することができる。したがって、ねじ軸やナット部材における耐摩耗性ならびに動作円滑性を向上できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るボールねじの断面図
【図2】図1のボールねじの分解斜視図
【図3】図1のねじ軸に対する高周波焼入れの様子を示す斜視図
【図4】図3の平面図
【図5】図4においてねじ軸に発生する誘導電流を示す断面図
【図6】図1のナット部材に対する高周波焼入れの様子を示す斜視図
【図7】図6においてナット部材に発生する誘導電流を示す断面図
【図8】従来例のねじ軸に対する高周波焼入れの様子を示す斜視図
【図9】図8においてねじ軸に発生する誘導電流を示す断面図
【符号の説明】
1 ボールねじ
2 ナット部材
21 ナット部材のねじ溝
3 ねじ軸
31 ねじ軸のねじ溝
4 ボール
10 高周波加熱コイル
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボールねじの焼入れ方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ボールねじに備えるS45Cなどの炭素鋼やSCM415などで造られるねじ軸あるいはナット部材のねじ溝を硬化する方法として、浸炭焼入れや高周波焼入れなどがある。
【0003】
浸炭焼入れでは、ねじ軸やナット部材の全表面を加熱するので、ねじ軸やナット部材の変形が避けられず、ねじ溝のリード精度を高くできないという問題がある。
【0004】
一方、高周波焼入れをねじ軸に対して行う方法を説明する。一般的に、ねじ軸は、その一端から他端までの全長にわたって連続する1条の螺旋形状のねじ溝が設けられている。そこで、例えば図8に示すように、螺旋形状の高周波加熱コイル80を用意し、その内部空間に例えばねじ軸81を挿入し、高周波加熱コイル80をねじ溝82に対して沿わせるように対向配置させておき、高周波加熱コイル80に高周波電流を通電することにより行う。
【0005】
この場合、高周波加熱コイル80によりねじ軸81に発生する誘導電流は、図9の矢印で示すように、ねじ溝82の長手方向に沿う向きに流れるが、ねじ溝82の両肩部の角に集中して流れる。そのため、ねじ溝82の両肩部の角が過剰に加熱される一方で、ねじ溝82の溝底側が加熱されにくくなるので、図9のクロスハッチングで示すように、ねじ溝82に所要深さの硬化層83を得るように焼入れすると、両肩部での硬化層が必要以上に深くなり、その結果、靭性が低下したり、耐衝撃荷重特性が悪くなったり、さらに極端な場合、焼割れなどが生じ、破損する場合がある。
【0006】
これに対して、螺旋形状の高周波加熱コイルをねじ軸のねじ溝内に入り込ませることにより、高周波加熱コイルとねじ溝や両肩部に対する隙間をほぼ一定にさせるような形態で行うことが考えられている(特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−326856号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来例では、ねじ軸のねじ溝内に高周波加熱コイルを所定の隙間を保った状態で入り込ませるようにしているが、ねじ溝と高周波加熱コイルとの相対位置を高精度に保つ必要があるために、均一な硬化層を得ることは困難であると言える。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るボールねじの焼入れ方法は、ナット部材の内周面に設けられるねじ溝とねじ軸の外周面に設けられるねじ溝との間に複数のボールが介装されたボールねじの前記ねじ軸を焼入れする方法であって、前記ねじ軸のねじ溝方向に対してそれを横切る姿勢で高周波加熱コイルを対向配置させた状態で、この高周波加熱コイルに高周波電流を流すことにより前記ねじ軸の表面側に前記ねじ溝およびその両肩部の表面形状に沿って当該ねじ溝を横切る向きの誘導電流を発生させつつ、前記ねじ軸または高周波加熱コイルの一方を周方向に動かすことにより、前記ねじ軸のねじ溝に対して高周波焼入れを施すようにする。
【0010】
この場合、高周波加熱コイルへの通電に伴いねじ軸の表面側においてねじ溝を横切る向きに誘導電流がねじ軸の表面形状に沿って流れるので、ねじ溝の両肩部を過剰に加熱することがなく、また、ねじ溝の底まで十分に加熱することができる。これにより、ねじ軸においてねじ溝およびその両肩部に、それらの表面からほぼ一定の深さの硬化層を形成できるようになる。
【0011】
本発明のボールねじの焼入れ方法は、ナット部材の内周面に設けられるねじ溝とねじ軸の外周面に設けられるねじ溝との間に複数のボールが介装されたボールねじの前記ナット部材を焼入れする方法であって、前記ナット部材のねじ溝方向に対してそれを横切る姿勢で高周波加熱コイルを対向配置させた状態で、この高周波加熱コイルに高周波電流を流すことにより前記ナット部材の表面側に前記ねじ溝およびその両肩部の表面形状に沿って当該ねじ溝を横切る向きの誘導電流を発生させつつ、前記ナット部材または高周波加熱コイルの一方を周方向に動かすことにより、前記ナット部材のねじ溝に対して高周波焼入れを施すようにする。
【0012】
この場合、高周波加熱コイルへの通電に伴いナット部材の内径面の表面側においてねじ溝を横切る向きに誘導電流がナット部材の内径面形状に沿って流れるので、ねじ溝の両肩部を過剰に加熱することがなく、また、ねじ溝の底まで十分に加熱することができる。これにより、ナット部材においてねじ溝およびその両肩部に、それらの表面からほぼ一定の深さの硬化層を形成できるようになる。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1から図7に本発明の一実施形態を示している。図例のボールねじ1は、ナット部材2と、ねじ軸3と、複数のボール4とを備えている。ナット部材2およびねじ軸3は、S45C,S55Cなどの炭素鋼製あるいはSAE4150鋼とされ、また、ボール4は、軸受鋼(SUJ2)とされる。
【0014】
ナット部材2には、その一方軸端から他方軸端まで連続する1条のねじ溝21が形成されている。また、ねじ軸3には、その一方軸端から他方軸端まで連続する1条のねじ溝31が形成されている。これらナット部材2のねじ溝21とねじ軸3のねじ溝31とは、互いに同じリード角に設定されている。なお、上記ねじ溝21,31の断面形状は、ゴシックアーク形状とされているが、半円形状とすることもできる。
【0015】
このナット部材2のねじ溝21とねじ軸3のねじ溝31との間に、複数のボール4が介装されている。ボール4は、例えば両ねじ溝21,31の3巻きの範囲内に所定の間隙を介して配置されるだけの数が用いられている。
【0016】
次に、上記ボールねじ1の動作を説明する。
【0017】
例えばナット部材2を回転自在に支持し、上記ねじ軸3を非回転かつ軸心方向不動に取り付けた状態において、上記ナット部材2を回転させると、このナット部材2が、図1の二点鎖線で示すようにねじ軸3上を軸方向に動くことになる。この他、ナット部材2またはねじ軸3の一方を回転させることで他方を軸心方向に移動させる使用形態、あるいはナット部材2またはねじ軸3の一方を軸心方向に移動させることで他方を回転させる使用形態にすることができる。
【0018】
この実施形態では、ねじ軸3のねじ溝31とナット部材2のねじ溝21とに対して高周波焼入れを施しているのであるが、その高周波焼入れの形態を工夫しているので、以下で説明する。
【0019】
ここでのねじ軸3は、炭素鋼S55C材をベースとしてねじ溝31を旋削加工により形成している。
【0020】
まず、図3および図4に示すように、高周波加熱コイル10においてU字形に屈曲された部分11をねじ軸3に対して対向配置させるのであるが、このU字形部分11の二つの直線部分11a,11bをねじ軸3の中心軸線に対して平行にする。高周波加熱コイル10の二つの直線部分11a,11bは、ねじ軸3の全長よりも長く設定されている。
【0021】
このような状態で、ねじ軸3を図4の矢印方向に1回転させることで、高周波加熱コイル10を、ねじ溝31の全範囲に対して順次対向させる。この過程で、高周波加熱コイル10に高周波電流を流すと、ねじ軸3の表面側には前記高周波電流と逆向きであるが、平行に誘導電流が流れる。詳しくは、図5の矢印で示すように、ねじ溝31およびその両肩部の表面形状に沿ってねじ溝31を横切る向きに誘導電流が流れる。これにより、ねじ溝31およびその両肩部が、ほぼ一定の深さまで加熱されるので、図5のクロスハッチングで示すように、深さがほぼ一定の硬化層(表面硬さHRC58〜62)35が形成される。
【0022】
次に、ナット部材2に対する焼入れ方法について、図6および図7を参照して説明する。この場合、図6に示すような高周波加熱コイル40を用いる。この高周波加熱コイル40は、波形に蛇行させつつ円筒形に形づけられることにより王冠のような形状とされている。言い換えれば、高周波加熱コイル40は、平面から見てU字形部分41を周方向隣り合わせに複数配置してそれぞれの先端側を連結したような形状になっている。この高周波加熱コイル40において、各U字形部分41の直線部分41a,41bが軸方向に沿って配置されている。また、上記直線部分41a,41bの軸方向寸法は、加熱対象となるナット部材2の軸方向寸法とほぼ同じ長さに設定されている。
【0023】
このような高周波加熱コイル40を、ナット部材2の内周に所定隙間を介して対向するように挿入する。このような状態で、ナット部材2を回転させながら、高周波加熱コイル40に高周波電流を流すと、ナット部材2の表面側には前記高周波電流の向きと逆向きであるが、平行に誘導電流が流れる。つまり、図7の矢印で示すように、ねじ溝21およびその両肩部の表面形状に沿ってねじ溝21を横切る向きに誘導電流が流れる。これにより、ねじ溝21およびその両肩部が、ほぼ一定の深さまで加熱されるので、図7のクロスハッチングで示すように、深さがほぼ一定の硬化層(表面硬さHRC58〜62)35が形成される。ところで、上記焼入れ過程で、ナット部材2と高周波加熱コイル40とを回転させなくてもよい。
【0024】
なお、上記のような高周波焼入れを施すと、ねじ溝21,31に僅かながらも熱歪が発生するので、高周波焼入れの後でねじ溝21,31に対して研磨処理を施すことにより、前記熱歪を除去するのが好ましい。
【0025】
以上説明した実施形態では、ナット部材2やねじ軸3においてねじ溝21,31の両肩部の角が過剰に加熱されずに済むとともにねじ溝21,31の底側を不足なく加熱できて、ほぼ一定深さの硬化層35を形成できるので、優れた耐摩耗性ならびに動作円滑性を確保することができる。
【0026】
なお、本発明は、上記実施形態のみに限定されない。例えば、ナット部材2とねじ軸3のいずれか一方のみに高周波焼入れを施してもよい。
【0027】
【発明の効果】
本発明では、ねじ軸やナット部材のねじ溝に対してほぼ一定深さの硬化層を簡単に形成することができる。したがって、ねじ軸やナット部材における耐摩耗性ならびに動作円滑性を向上できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るボールねじの断面図
【図2】図1のボールねじの分解斜視図
【図3】図1のねじ軸に対する高周波焼入れの様子を示す斜視図
【図4】図3の平面図
【図5】図4においてねじ軸に発生する誘導電流を示す断面図
【図6】図1のナット部材に対する高周波焼入れの様子を示す斜視図
【図7】図6においてナット部材に発生する誘導電流を示す断面図
【図8】従来例のねじ軸に対する高周波焼入れの様子を示す斜視図
【図9】図8においてねじ軸に発生する誘導電流を示す断面図
【符号の説明】
1 ボールねじ
2 ナット部材
21 ナット部材のねじ溝
3 ねじ軸
31 ねじ軸のねじ溝
4 ボール
10 高周波加熱コイル
Claims (2)
- ナット部材の内周面に設けられるねじ溝とねじ軸の外周面に設けられるねじ溝との間に複数のボールが介装されたボールねじの前記ねじ軸を焼入れする方法であって、
前記ねじ軸のねじ溝方向に対してそれを横切る姿勢で高周波加熱コイルを対向配置させた状態で、この高周波加熱コイルに高周波電流を流すことにより前記ねじ軸の表面側に前記ねじ溝およびその両肩部の表面形状に沿って当該ねじ溝を横切る向きの誘導電流を発生させつつ、前記ねじ軸または高周波加熱コイルの一方を周方向に動かすことにより、前記ねじ軸のねじ溝に対して高周波焼入れを施す、ボールねじの焼入れ方法。 - ナット部材の内周面に設けられるねじ溝とねじ軸の外周面に設けられるねじ溝との間に複数のボールが介装されたボールねじの前記ナット部材を焼入れする方法であって、
前記ナット部材のねじ溝方向に対してそれを横切る姿勢で高周波加熱コイルを対向配置させた状態で、この高周波加熱コイルに高周波電流を流すことにより前記ナット部材の表面側に前記ねじ溝およびその両肩部の表面形状に沿って当該ねじ溝を横切る向きの誘導電流を発生させつつ、前記ナット部材または高周波加熱コイルの一方を周方向に動かすことにより、前記ナット部材のねじ溝に対して高周波焼入れを施す、ボールねじの焼入れ方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003047679A JP2004256858A (ja) | 2003-02-25 | 2003-02-25 | ボールねじの焼入れ方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003047679A JP2004256858A (ja) | 2003-02-25 | 2003-02-25 | ボールねじの焼入れ方法 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006090437A (ja) * | 2004-09-24 | 2006-04-06 | Ntn Corp | 駒式ボールねじ |
JP2009174037A (ja) * | 2008-01-28 | 2009-08-06 | Fuji Electronics Industry Co Ltd | 誘導加熱装置の高周波加熱コイル |
JP2010138951A (ja) * | 2008-12-10 | 2010-06-24 | Ntn Corp | ボールねじおよびその製造方法 |
-
2003
- 2003-02-25 JP JP2003047679A patent/JP2004256858A/ja active Pending
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JP2006090437A (ja) * | 2004-09-24 | 2006-04-06 | Ntn Corp | 駒式ボールねじ |
JP2009174037A (ja) * | 2008-01-28 | 2009-08-06 | Fuji Electronics Industry Co Ltd | 誘導加熱装置の高周波加熱コイル |
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