JP2004256666A - 含フッ素重合体、その製造方法および電気絶縁材料 - Google Patents

含フッ素重合体、その製造方法および電気絶縁材料 Download PDF

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Abstract

【課題】絶縁性及び低波長領域における透明性に優れた含フッ素合体、並びに該含フッ素重合体を製造する方法を提供する。
【解決手段】分子内に、下記の式(1)で表される繰り返し単位(A)を、重合体全体に対して1〜100モル%含有してなる含フッ素重合体であって、該重合体のフッ素原子含有量が50重量%以上、比誘電率が2.5以下であり、かつ厚さ1mmの成形体を成形したときの100μm以上の異物の個数が10mm当たり5個以下であることを特徴とする含フッ素重合体、その製造方法及び前記含フッ素重合体を用いた電気絶縁材料。
【化1】
Figure 2004256666

(式中、R、R、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または塩素原子を表す。但し、R〜Rの少なくとも一つはフッ素原子である。nは1〜4の整数を表す。また、nが2以上のとき、(CR)で表される基は同一でも相異なっていてもよい。)
【選択図】 なし。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フッ素原子含有量が多く、誘電率が低い含フッ素重合体、該含フッ素重合体の製造方法および該含フッ素重合体を用いた電気絶縁材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
主鎖に多数のフッ素原子を有する環状構造を有する含フッ素重合体は、撥水性に富み、低屈折率でかつ透明なフィルムまたはコーティング膜を形成するため、電子部材、光学部材、建築部材などの保護膜、機能性膜として有用であることが知られている(特許文献1)。
【0003】
また、このような含フッ素重合体を製造する方法としては、分子内にフッ素原子を有する含フッ素環状単量体を、通常の無機系あるいは有機系の過酸化物の存在下に加熱して重合する方法が知られている(特許文献1,2)。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−122928号公報
【特許文献2】
特開2001−330955号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの公報に記載されている含フッ素重合体を、電気絶縁材料、特に液晶ディスプレイの層間絶縁膜などに用いると、絶縁性に不具合がおこったり、液晶ディスプレイの表示ムラなどが発生したりすることがわかった。
【0006】
本発明は、かかる従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、絶縁性や液晶ディスプレイの表示ムラのない含フッ素重合体を提供すること、及び該含フッ素重合体を製造する方法を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、含フッ素重合体中の異物を減らすことが有効であることがわかった。そして、さらに特定の含フッ素過酸化物の存在下で、特定の温度範囲で含フッ素環状単量体を重合することにより、上記課題を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして本発明の第1によれば、分子内に、式(1)
【0009】
【化2】
Figure 2004256666
【0010】
(式中、R、R、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または塩素原子を表す。但し、R〜Rの少なくとも一つはフッ素原子である。nは1〜4の整数を表す。また、nが2以上のとき、(CR)で表される基は同一でも相異なっていてもよい。)で表される繰り返し単位(A)を、重合体全体に対して1〜100モル%含有してなる含フッ素重合体であって、該重合体のフッ素原子含有量が50重量%以上、比誘電率が2.5以下であり、かつ厚さ1mmの成形体を成形したときの100μm以上の異物の個数が10mm当たり5個以下であることを特徴とする含フッ素重合体が提供される。
本発明の含フッ素重合体は、前記R〜Rの全てがフッ素原子であるものが好ましい。
【0011】
本発明の第2によれば、重合することにより前記繰り返し単位(A)を与える含フッ素単量体(B)を、含フッ素ジアシルパーオキサイドの存在下、温度0〜50℃で重合することを特徴とする本発明の含フッ素重合体の製造方法が提供される。
本発明の第3によれば、本発明の含フッ素重合体を用いた電気絶縁材料が提供される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の含フッ素重合体、その製造方法及び電気絶縁材料を詳細に説明する。
1)含フッ素重合体
本発明の含フッ素重合体は、分子内に、式(1)
【0013】
【化3】
Figure 2004256666
【0014】
(式中、R、R、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または塩素原子を表す。但し、R〜Rの少なくとも一つはフッ素原子である。nは1〜4の整数を表す。また、nが2以上のとき、(CR)で表される基は同一でも相異なっていてもよい。)で表される繰り返し単位(A)を有することを特徴とする。
【0015】
式(1)で表される繰り返し単位(A)は3〜6員の環状構造を有する。前記環状構造中のフッ素原子数は少なくとも一つであれば特に制限されないが、好ましくは4以上、より好ましくは5以上であり、前記R〜Rの全てがフッ素原子であるのが特に好ましい。
【0016】
本発明の含フッ素重合体のフッ素原子含有量は、該重合体全体に対して50重量%以上であることを第1の特徴とする。
重合体中のフッ素原子含有量は、公知の方法で測定することができる。例えば、炭酸カリウムカプセル分解法、ピロヒドリシス燃焼法などで求めることができる。
【0017】
本発明の含フッ素重合体は、比誘電率が2.5以下であることを第2の特徴とする。本発明の含フッ素重合体は、10Hz、10Hz、10Hzのいずれの周波数においても、その比誘電率が2.5以下と低いものであるので、電気絶縁材料として好適である。比誘電率は、JIS K−6911に準じて測定することができる。
【0018】
本発明の含フッ素重合体は、該重合体を厚さ1mmの成形体を成形したときの100μm以上の異物の個数が10mm当たり5個以下であることを第3の特徴とする。本発明において、異物とは含フッ素単量体を重合する際に生成するゲル状物質のことをいう。重合体中の100μm以上の異物の個数は、例えば、以下に記載する方法により測定することができる。
(i)含フッ素重合体を厚さ1mmの成形体に成形する。
(ii)次いで、得られた成形体を550nmの光を透過するバンドパスフィルターを介した光を透過させ、目視により異物の数を特定する。
(iii)さらに、得られた成形体を偏光顕微鏡を用いて異物を観察し、異物ゲージとの比較でサイズを測定する。
なお、異物ゲージは市販されているものを用いればよい。
【0019】
本発明の含フッ素重合体は、分子内に、前記繰り返し単位(A)を、重合体全体に対して1〜100モル%含有するものであればよく、前記繰り返し単位(A)のみからなる単独重合体であっても、繰り返し単位(A)と他の繰り返し単位からなる共重合体であってもよい。また、共重合体としては、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。
本発明の含フッ素重合体においては、前記繰り返し単位(A)を、重合体全体に対して、好ましくは30〜100モル%、より好ましくは50〜100モル%含有することが好ましい。
前記他の繰り返し単位としては、後述する含フッ素単量体(B)と共重合して得られるものであれば特に制限されない。
【0020】
本発明の含フッ素重合体の分子量は、使用目的に応じて適宜選定することができる。分子量の測定方法としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)、溶液粘度法、浸透圧測定法などが挙げられ、通常はGPC、溶融粘度法が用いられる。溶融粘度法で測定した場合は、溶融温度200〜300℃の範囲で、100〜100,000Pa・sである。GPCの場合は、重量平均分子量で3,000〜600,000、好ましくは5,000〜500,000である。
【0021】
本発明の含フッ素重合体中に含まれる分子量2,000未満の低分子量成分の含有量は、通常30重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは2重量%以下である。分子量2,000未満の低分子量成分の含有量が少ない含フッ素重合体を用いる場合には、機械的強度、透明性、電気絶縁性などの諸物性に優れる成形体を得ることができる。低分子量成分は、得られた重合体の一定量を低分子量成分は溶解するが含フッ素重合体は溶解しない有機溶媒で抽出し、抽出物から溶媒を留去した残留物の量をGPCで測定することで、得られた含フッ素重合体中に含まれる低分子量成分の含有量を求めることができる。
【0022】
本発明の含フッ素重合体は熱可塑性であり、使用目的、使用形状に応じて所望の形状に成形することができる。成形法や成形条件などは特に限定されず、重合体の融点やTg、使用目的、使用形状などに応じて成形方法を選択すればよい。例えば、射出成形法、プレス成形法、溶液流延法、ブロー成形法、押し出し成形法などを用いることができる。また、本発明の含フッ素重合体の成形物の形状は特に制限されず、フィルム状、シート状、板状、柱状などいかなる形状であってもよい。
【0023】
また、得られる含フッ素重合体成形物の体積固有抵抗値は1016Ω・cm以上、好ましくは5×1016Ω・cm以上、より好ましくは5×1017Ω・cm以上であり、良好な絶縁性を示す。また、誘電正接は、10Hz、10Hz、10Hzのいずれの周波数においても、10−3以下、好ましくは7×10−4以下であって、特に高周波特性に優れるため、高周波回路基板などに適した性能を有する。
【0024】
本発明の含フッ素重合体は、主鎖に環構造を有していることから、非晶質で、多くの溶媒に可溶なフッ素樹脂であって、高い耐熱性、機械的強度、化学的安定性、撥水性、低屈折率、透明性なども備えている。
【0025】
2)含フッ素重合体の製造方法
本発明の製造方法は、本発明の含フッ素重合体の製造方法であって、重合することにより前記繰り返し単位(A)を与える含フッ素単量体(B)を、含フッ素ジアシルパーオキサイドの存在下、温度0〜50℃で重合することを特徴とする。
【0026】
本発明に用いる含フッ素単量体(B)は、重合することにより前記繰り返し単位(A)を与える重合性モノマーであり、分子内に少なくともフッ素原子を一つ有する、3〜6員環構造をもつ化合物である。
【0027】
用いる含フッ素単量体(B)の具体例としては、テトラフルオロシクロプロペンなどの3員環化合物;ヘキサフルオロシクロブテンなどの4員環化合物;1−フルオロシクロペンテン、1,2,3,4,5−ペンタクロロ−3,4,5−トリフルオロシクロペンテン、1,2,4,4−テトラクロロ−3,3,5,5−テトラフルオロシクロペンテン、1,3,4,5−テトラクロロ−2,3,4,5−テトラフルオロシクロペンテン、1,2,3,4,5−ペンタフルオロシクロペンテン、1,3,4,5,5−ペンタフルオロシクロペンテン、3,4,5−トリクロロ−1,2,3,4,5−ペンタフルオロシクロペンテン、1,2,4−トリクロロ−3,3,4,5,5−ペンタフルオロシクロペンテン、1,2,3,3,4,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、1,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、1,3,3,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、1,3,3,4,4,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、1,2−ジクロロ−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン、1,2,3,3,4,4,5−ヘプタフルオロシクロペンテン、1,2,3,3,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン、1−クロロ−2,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン、オクタフルオロシクロペンテンなどの5員環化合物;デカフルオロシクロヘキセンなどの6員環化合物;などが挙げられる。
【0028】
これらの中でも、優れた電気特性を有する含フッ素重合体が得られる点から、炭素数3〜6のシクロアルケンの全ての水素原子がフッ素原子に置換された化合物、すなわち、テトラフルオロシクロプロペン、ヘキサフルオロシクロブテン、オクタフルオロシクロペンテンおよびデカフルオロシクロヘキセンがより好ましく、ヘキサフルオロシクロブテン、オクタフルオロシクロペンテンおよびデカフルオロシクロヘキセンが更に好ましく、オクタフルオロシクロペンテンが特に好ましい。
【0029】
本発明の製造方法においては、重合開始剤として含フッ素ジアシルパーオキサイドを用いる。含フッ素ジアシルパーオキサイドを重合開始剤として使用することで、重合活性の低い含フッ素単量体(B)の重合反応性を高め、副反応である重合停止反応を起こりにくくし、フッ素原子含有量が多く、異物や低分子量成分の含有量の少ない含フッ素重合体を効率よく得ることができる。
【0030】
用いる含フッ素ジアシルパーオキサイドとしては、例えば、(CFCOO)、(n−CCOO)、(n−C13COO)、(n−C15COO)、(COCF(CF)COO)、(CCOO)、(CC(CHCOO)、(CFOCFCOO)、(CFCHCOO)、((CFCCOO)などが挙げられる。
【0031】
これらの含フッ素ジアシルパーオキサイドの多くは公知であり、市販品、あるいは、例えば、J.Org.Chem.,47,2009−2013(1982)などの文献に記載の方法により合成したものを使用することができる。
有機過酸化物の使用量は、用いる含フッ素単量体1モルに対して、通常0.000001〜1モル、好ましくは0.0001〜0.1モルである。
【0032】
本発明の製造方法においては、前記含フッ素単量体を重合させるに際し、該含フッ素単量体と共重合可能な他の単量体を反応系に添加することができる。他の単量体を添加する場合には、含フッ素単量体と他の単量体との共重合体を得ることができる。本発明に用いる他の単量体としては、例えば、次の(a)〜(h)で示すものが挙げられる。
【0033】
(a)式:CX =CXで表されるオレフィン化合物。
このものを共重合させると、式:−(CX −CX)−で表される繰り返し単位を有する含フッ素共重合体が得られる。
【0034】
式中、X、Xはそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子を表す。Rは、水素原子;ハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基などの炭素数1〜20のアルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの炭素数3〜8のシクロアルキル基;フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基などの炭素数1〜20のフルオロアルキル基;フルオロシクロプロピル基、ジフルオロシクロプロピル基、ジフルオロシクロペンチル基、テトラフルオロシクロペンチル基、オクタフルオロシクロペンチル基、ジフルオロシクロヘキシル基、テトラフルオロシクロヘキシル基、デカフルオロシクロヘキシル基などの炭素数3〜8のフルオロシクロアルキル基;フェニル基;1−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基などのフルオロフェニル基;を表す。また、前記シクロアルキル基、フェニル基およびフルオロフェニル基は、メチル基などのアルキル基、トリフルオロメチル基などのフルオロアルキル基などの置換基を有していてもよい。
【0035】
前記(a)で表されるオレフィン化合物の具体例としては、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、ヘキサフルオロプロペン、1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロペン、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1,1,2−トリフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロプロペン、ヘキサフルオロイソブテン、クロロトリフルオロエチレン、1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレン、1,1−ジクロロ−2,2−ジフルオロエチレンなどのフルオロオレフィン類;エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンなどのα−オレフィン類;アリルエーテル;塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのクロロレフィン類;臭化ビニルなどのブロモオレフィン類;等が挙げられる。
【0036】
(b)式:CH=CH(OR)で表されるビニルエーテル化合物
このものを共重合させると、式:−(CH−CH(OR))−で表される繰り返し単位を有する含フッ素共重合体が得られる。
【0037】
式中、Rは、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、フェニル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、炭素数3〜8のフルオロシクロアルキル基またはフルオロフェニル基を表す。前記アルキル基、シクロアルキル基、フルオロアルキル基、フルオロシクロアルキル基およびフルオロフェニル基は、上記Rで列記したものと同様のものが挙げられる。また、Rのアルキル基、シクロアルキル基、フルオロアルキル基、フルオロシクロアルキル基、フェニル基およびフルオロフェニル基は、メチル基などのアルキル基;トリフルオロメチル基などのハロアルキル基;ヒドロキシル基;トリメチルシリル基などの加水分解性有機ケイ素基;エポキシ基等の置換基を有していてもよい。
【0038】
前記(b)で表されるビニルエーテル化合物の具体例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、β−クロロエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、sec−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、イソアミルシクロヘキシルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、メチルシクロヘキシルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、フェネチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、トルイルビニルエーテル等が挙げられる。
【0039】
(c)式:CF=CF(ORf)で表されるパーフルオロビニルエーテル化合物
このものを共重合させると、式:−(CF−CF(ORf))−で表される繰り返し単位を有する含フッ素共重合体が得られる。
式中、Rfは、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基等のパーフルオロアルキル基を表す。
【0040】
前記(c)で表されるパーフルオロビニルエーテル化合物の具体例としては、1,1,1−トリフルオロエチルビニルエーテル、2,2−ジフルオロエチルビニルエーテル、テトラフルオロエチルビニルエーテル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルビニルエーテル、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルビニルエーテル、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ヘキサデカフルオロノニルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0041】
(d)式:CH=CH(CHOR)で表されるアリルエーテル化合物
このものを共重合させると、式:−(CH−CH(OR))−で表される繰り返し単位を有する含フッ素共重合体が得られる。
【0042】
式中、Rは、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、フェニル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、炭素数3〜8のフルオロシクロアルキル基、フェニル基またはフルオロフェニル基を表す。アルキル基、シクロアルキル基、フルオロアルキル基、フルオロシクロアルキル基およびフルオロフェニル基は、上記Rで列記したものと同様のものが挙げられる。
【0043】
前記(d)で表されるアリルエーテル化合物の具体例としては、メチルアリルエーテル、エチルアリルエーテル、プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ベンジルアリルエーテル、シクロヘキシルアリルエーテルなどが挙げられる。
【0044】
(e)式:CF=CF(CFORf’)で表されるパーフルオロアリルエーテル化合物
このものを共重合させると、式:−(CF−CF(CFORf’)−)で表される繰り返し単位を有する含フッ素共重合体が得られる。
式中、Rf’はパーフルオロアルキル基を表す。Rf’の具体例としては、前記Rfと同様のものが挙げられる。
【0045】
前記(e)で表されるパーフルオロアリルエーテル化合物の具体例としては、パーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロエチルビニルエーテル、パーフルオロプロピルビニルエーテル、パーフルオロブチルビニルエーテル、パーフルオロペンチルビニルエーテル、パーフルオロヘキシルビニルエーテル、パーフルオロオクチルビニルエーテル、パーフルオロドデシルビニルエーテルなどを挙げることができる。
【0046】
(f)式:CH=CH(OCOR)で表されるビニルエステル化合物
このものを共重合させると、式:−(CH−CH(OCOR))−で表される繰り返し単位を有する含フッ素共重合体が得られる。
【0047】
式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、フェニル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、炭素数3〜8のフルオロシクロアルキル基、フェニル基またはフルオロフェニル基を表す。アルキル基、シクロアルキル基、フルオロアルキル基、フルオロシクロアルキル基およびフルオロフェニル基は、上記Rで列記したものと同様のものが挙げられる。
【0048】
前記(f)で表されるビニルエステル化合物の具体例としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、ジクロロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、クロトン酸ビニル、トリメチル酢酸ビニル、カプロン酸ビニル、イソカプロン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ペラルゴン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル、バーサチック9酸ビニル(ベオバ9(シェル化学(株)製)、バーサチック10酸ビニル(ベオバ10(シェル化学(株)製)、シクロヘキサン酸ビニル、安息香酸ビニル、p−トルイル酸ビニル、p−tert−ブチル安息香酸ビニル等の官能基をもたないビニルエステル化合物;クロトン酸ヒドロキシエチル、クロトン酸ヒドロキシブチルなどのカルボン酸エステル、コハク酸モノビニル、アジピン酸モノビニル、セバシン酸モノビニルシクロヘキサンジカルボン酸モノビニルなどのジカルボン酸モノビニルなどの官能基を有するビニルエステル化合物;などが挙げられる。
【0049】
(g)式:CH=CR(COOR10)で表される(メタ)アクリル酸化合物
このものを共重合させると、式:−(CH−CR(COOR10))−で表される繰り返し単位を有する含フッ素共重合体が得られる。
【0050】
式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、R10は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、フェニル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、炭素数3〜8のフルオロシクロアルキル基、フェニル基、フルオロフェニル基またはグリシジル基を表す。アルキル基、シクロアルキル基、フルオロアルキル基、フルオロシクロアルキル基およびフルオロフェニル基は、上記Rで列記したものと同様のものが挙げられる。
【0051】
前記(g)で表される(メタ)アクリル酸化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸グリシジルなどが挙げられる。
【0052】
(h)式:CH=CR11(CONR12)で表される(メタ)アクリルアミド化合物
このものを共重合させると、式:−(CH−CR11(CONR12))−で表される繰り返し単位を有する含フッ素共重合体が得られる。
【0053】
式中、R11は水素原子またはメチル基を表し、R12は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、炭素数3〜8のフルオロシクロアルキル基、フェニル基またはフルオロフェニル基を表す。アルキル基、シクロアルキル基、フルオロアルキル基、フルオロシクロアルキル基およびフルオロフェニル基は、上記Rで列記したものと同様のものが挙げられる。
【0054】
前記(h)で表される(メタ)アクリル酸アミド化合物の具体例としては、(メタ)アクリルアミド;N−メチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルキル誘導体;N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のN−アルキロール誘導体;N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルコキシ誘導体等が挙げられる。
これら(a)〜(h)で示す他の単量体は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0055】
本発明においては、これらの他の単量体の中でも、フッ素原子含有量が多く、誘電率が低い含フッ素共重合体を得ることができる点から、フルオロオレフィン類、パーフルオロビニルエーテル化合物、パーフルオロアリルエーテル化合物などの、分子内に多くのフッ素原子を有する単量体の使用が好ましい。
【0056】
これらの含フッ素単量体(B)と共重合可能な他の単量体の使用量は、得られる含フッ素重合体のフッ素原子の含有量が50重量%以上となる量であれば時に制限されない。他の単量体の使用量は、前記含フッ素単量体(A)1モルに対して、好ましくは0〜2モル、より好ましくは0〜1モルである。
【0057】
本発明の含フッ素重合体は、適当な溶媒中、前記含フッ素単量体または含フッ素単量体とこれと共重合可能な他の単量体とを含む単量体組成物に、含フッ素有機過酸化物を加えて重合反応を行うことにより製造する。重合形態としては溶液重合、懸濁重合が可能である。
【0058】
また、重合反応は、酸素ガスが存在すると副反応である重合停止反応が起きやすくなるため、不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。例えば、反応系内を凍結脱気し、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガスで置換した後に重合を行う。
【0059】
重合反応に用いる溶媒としては、重合反応に不活性であって、含フッ素重合体を溶解できるものであれば特に制限されないが、分子内にフッ素原子を有する有機溶媒の使用が好ましい。例えば、パーフルオロベンゼン、ペンタフルオロベンゼン、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンなどの含フッ素芳香族炭化水素類;パーフルオロデカリン、パーフルオロシクロヘキサン、パーフルオロ−1,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどの含フッ素脂環式炭化水素類;パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロトリプロピルアミンなどの含フッ素アルキルアミン類;パーフルオロテトラヒドロフラン、パーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフランなどの含フッ素環状エーテル類;フッ素含有低分子量ポリエーテルなどの含フッ素ポリエーテル類;ビス(ヘプタフルオロイソプロピル)ケトンなどの含フッ素ケトン類;パーフルオロヘキサン、パーフルオロオクタン、パーフルオロドデカン、ペンタフルオロ−2,7−ジメチルオクタン、3,3−ジクロロ−1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、パーフルオロ−1,2−ジメチルヘキサン、パーフルオロ−1,3−ジメチルヘキサン、2H,3H−パーフルオロペンタン、1H−パーフルオロヘキサン、1H−パーフルオロオクタン、1H−パーフルオロデカン、1H,1H,1H,2H,2H−パーフルオロヘキサン、1H,1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクタン、1H,1H,1H,2H,2H−パーフルオロデカン、3H,4H−パーフルオロ−2−メチルペンタン、2H,3H−パーフルオロ−2−メチルペンタンなどの含フッ素脂肪族炭化水素類;等が挙げられる。
【0060】
溶媒の使用量は均一反応で重合を行うことができる量であれば特に制約されないが、含フッ素単量体1重量部に対し、通常0.01〜100重量部、好ましくは0.1〜10重量部である。
本発明の製造方法では、温度0〜50℃で重合反応を行う。重合温度が前記範囲をはずれると、重合体中の100μm以上の異物が多くなる傾向にある。
【0061】
本発明の製造方法においては、前記含フッ素単量体(B)または含フッ素単量体(B)と、これと共重合可能な他の単量体とを含む単量体混合物、および所定量の含フッ素ジアシルパーオキサイドを反応器に仕込んで重合して(前段階)、重合転化率が10〜50重量%になった時点で、前記含フッ素単量体(B)、他の共重合可能な単量体またはこれらの混合物を前記反応器に添加して更に重合を続行する(後段階)のが好ましい。このように操作することにより、高い重合転化率で、低分子量成分含有量の少ない含フッ素重合体を高収率で得ることができる。また、後から前記含フッ素単量体(B)、他の共重合可能な単量体またはこれらの混合物を添加する際に、含フッ素ジアシルパーオキサイドをさらに添加してもよい。
【0062】
後段階において、添加する含フッ素単量体(B)、他の共重合可能な単量体又はこれらの混合物の量は、最初に仕込んだ含フッ素単量体(B)、単量体混合物の全量に対して、好ましくは1〜40重量%とするのが好ましい。含フッ素単量体(B)の重合転化率は、反応溶液を少量サンプリングして、ガスクロマトグラフィーなどの公知の分析手段により測定することができる。
【0063】
重合時間は、反応規模にも依存するが、通常1時間から数十時間、好ましくは数時間から数十時間である。前段階および後段階ともに、重合時間は、通常1時間から10時間程度である。
【0064】
重合終了後は、反応液を適当な溶媒で希釈し、得られた希釈液をメタノールなどの不溶性溶媒中に注入して、目的とする含フッ素重合体を単離することができる。
【0065】
また本発明においては、官能基を有する重合性単量体を使用して架橋部位が導入された含フッ素共重合体に、適宜架橋剤を組み合わせて硬化性樹脂を得ることもできる。架橋部位を有する含フッ素共重合体は硬化性塗料として有用である。架橋剤としては、メラミン硬化剤、尿素樹脂硬化剤、多塩基酸硬化剤、イソシアネート硬化剤、エポキシ硬化剤などが使用できる。
【0066】
本発明の製造方法によれば、繰り返し単位(A)を、重合体全体に対して1〜100モル%含有してなる含フッ素重合体であって、該重合体のフッ素原子含有量が50重量%以上、比誘電率が2.5以下であり、かつ厚さ1mmの成形体を成形したときの100μm以上の異物の個数が10mm当たり5個以下である含フッ素重合体を効率よく得ることができる。
【0067】
3)電気絶縁材料
本発明の電気絶縁材料は、本発明の含フッ素重合体を用いることを特徴とする。本発明の電気絶縁材料はフッ素原子含有量が高く、誘電率が低く、かつ電気絶縁性に優れる本発明の含フッ素重合体を用いるものであるため、電気絶縁材料として優れた性能を有する。
【0068】
本発明の含フッ素重合体を電気絶縁材料として用いる場合には、所望により、各種添加剤を添加してもよい。用いる添加剤としては、例えば、フェノール系やリン系などの酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、ゴム質重合体、石油樹脂、異種熱可塑性樹脂などが挙げられる。また、成形性、物性などを改良する目的で、例えば、ガラスファイバー、カーボンファイバーなどの繊維状充填剤;シリカ、アルミナ、タルク、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウムなどの微粒子状充填剤;テトラキス〔2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート〕メタン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールなどの酸化防止剤;などが添加できるほか、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、顔料、染料、アンチブロッキング剤などを添加しても良い。一般に、重合体からの溶出をさけるため、これらの添加剤は、分子量の大きいものほど好ましく、また、添加量が少ないほど好ましい。添加剤の添加量は特に限定されず、目的に応じた範囲で添加することができる。
【0069】
本発明の電気絶縁材料は、例えば、電線・ケーブル用被覆材料や、民生用・産業用電子機器、複写機・コンピューター・プリンター等のOA機器、計器類などの一般絶縁材料;硬質プリント基板、フレキシブルプリント基板、多層プリント配線板などの回路基板、特に高周波特性が要求される、衛星通信機器用などの高周波回路基板;液晶ディスプレイの層間絶縁膜・液晶基板・光メモリー・自動車や航空機のデフロスタなどの面発熱体などの透明導電性フィルムの基材;トランジスタ・IC・LSI・LEDなどの半導体封止材や部品;モーター・コンクター・スイッチ・センサーなどの電気・電子部品の封止材料;テレビやビデオカメラなどのボディ材料;パラボラアンテナ・フラットアンテナ・レーダードームの構造部材;などに好適に用いることができる。
【0070】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。これらの例中の[部]及び[%]は、特に断りのない限り重量基準である。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
本実施例における評価は、以下の方法によって行なった。
1.重合体の溶融粘度
JIS K−7199に基づき、280℃で測定した。
2.誘電率及び誘電正接
JIS K−6911に基づき、LCRメータ(ヒューレットパッカード社製、商品名「LCRメータ4284A」)を用いて測定した。
3.異物個数
重合体をクラス1000のクリーンルーム内で、表面をチタン処理したプレス板を用いて180℃でプレスして面積10mm、厚さ1mmの試験板を作製した。次いで、その試験板を550nmの光を透過するバンドパスフィルターを介した光を透過させ、目視により異物の数を特定した。さらに得られた試験板を偏光顕微鏡を用いて異物を観察し、異物ゲージとの比較で異物の大きさを測定した。
【0071】
4.体積固有抵抗
JIS K−7199に基づき、エレクトロメータ(アドバンテスト社製、商品名「デジタル超高抵抗/微少電流計R8340A」を用いて測定した。
5.透過光観察
重合体をパーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフランに溶解させ、固形分濃度20重量%の溶液を調製した。次いで、その溶液をギャップ200μmのアプリケータを用いて、ガラス板に塗布し、室温で1日乾燥した。さらに乾燥機で60℃で1日乾燥して、ガラス板から剥離して厚さ40μmのキャスト膜を得た。そのキャスト膜を10mm×10mmに切り出して、オーバーヘッドプロジェクタを用いてスクリーンにその透過光を投影させて透過光にムラがあるかどうか観察した。
【0072】
実施例1
オクタフルオロシクロペンテン(以下、「FCPE」という)20部、パーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフラン5部、及びパーフルオロジプロピロイルパーオキサイドの5%トリクロロトリフルオロエタン溶液0.7部を内容量100mlのステンレス製オートクレーブに仕込み、系内を凍結脱気した後、窒素ガスでオートクレーブ内を置換する作業を3回繰り返し、水浴中で20℃、24時間重合を行なった。得られた溶液をトリクロロトリフルオロエタンで希釈し、メタノールに投入し、沈殿物を80℃で乾燥することにより、5.2部の含フッ素重合体1を得た。得られた重合体1のフッ素原子含有量は70.6重量%であり、280℃における溶融粘度は300Pa・sであった。
【0073】
得られた重合体1を用いて試験板を作製し、この試験板の10mmあたりの大きさ100μm以上の異物の数を測定したところ、100μm以上の異物は確認されなかった。また、この試験板の体積固有抵抗値は5×1017Ω・cm以上であり、比誘電率は10Hz、10Hz、10Hzいずれの周波数においても2.01であり、誘電正接は10Hz、10Hz、10Hzいずれの周波数においても4×10−4であり、電気絶縁材料として好適であることが確認された。さらに、得られた重合体1を用いて厚さ50μmのキャスト膜を作製し、そのキャスト膜の透過光を観察したところ、透過光が均一であることが確認された。
【0074】
実施例2
FCPE20部、パーフルオロプロピルビニルエーテル25部、パーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフラン5部、及びパーフルオロジプロピロイルパーオキサイドの5%トリクロロトリフルオロエタン溶液1部をステンレス製オートクレーブに仕込み、系内を凍結脱気した後、窒素ガスでオートクレーブ内を置換する作業を3回繰り返し、水浴中で20℃、16時間重合を行った。得られた溶液をトリクロロトリフルオロエタンで希釈し、メタノールに投入し、沈殿物を80℃で乾燥することにより、38.5部の含フッ素重合体2を得た。得られた重合体2のフッ素原子含有量は70.2重量%であり、280℃における溶融粘度は1,200Pa・sであった。
【0075】
得られた重合体2を用いて試験板を作製し、この試験板の10mmあたりの大きさ100μm以上の異物の数を測定したところ、100μm以上の異物は確認されなかった。また、この試験板の体積固有抵抗値は5×1017Ω・cm以上であり、比誘電率は10Hz、10Hz、10Hzいずれの周波数においても2.00であり、誘電正接は10Hz、10Hz、10Hzいずれの周波数においても4×10−4であり、電気絶縁材料として好適であることが確認された。さらに、得られた重合体2を用いて厚さ50μmのキャスト膜を作製し、そのキャスト膜の透過光を観察したところ、透過光が均一であることが確認された。
【0076】
実施例3
FCPE20部、パーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフラン5部、及びパーフルオロジプロピロイルパーオキサイドの5%トリクロロトリフルオロエタン溶液0.9部をステンレス製オートクレーブに仕込み、系内を凍結脱気した後、窒素ガスでオートクレーブ内を置換する作業を3回繰り返し、水浴中で20℃、8時間重合を行った。その後、メタクリル酸2部を系中に加え、40℃まで昇温し、2時間重合を行った。得られた溶液をトリクロロトリフルオロエタンで希釈し、メタノールに投入し、沈殿物を80℃で乾燥することにより、7.5部の含フッ素重合体3を得た。得られた重合体3のフッ素原子含有量は62.4重量%であり、280℃における溶融粘度は310Pa・sであった。
【0077】
得られた重合体3を用いて試験板を作製し、この試験板の10mmあたりの大きさ100μm以上の異物の数を測定したところ、100μm以上の異物は確認されなかった。また、この試験板の体積固有抵抗値は5×1017Ω・cm以上であり、比誘電率は10Hz、10Hz、10Hzいずれの周波数においても2.00であり、誘電正接は10Hz、10Hz、10Hzいずれの周波数においても4×10−4であり、電気絶縁材料として好適であることが確認された。さらに、得られた重合体3を用いて厚さ50μmのキャスト膜を作製し、そのキャスト膜の透過光を観察したところ、透過光が均一であることが確認された。
【0078】
比較例1
FCPE20部、パーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフラン5部、及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.6部をステンレス製オートクレーブに仕込み、系内を凍結脱気した後、窒素ガスでオートクレーブ内を置換する作業を3回繰り返し、60℃、15時間重合を行った。得られた溶液をトリクロロトリフルオロエタンで希釈し、メタノールに投入したが重合体は得られなかった。
【0079】
比較例2
FCPE20部、パーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフラン5部、及びパーフルオロジプロピロイルパーオキサイドの5%トリクロロトリフルオロエタン溶液0.9部をステンレス製オートクレーブに仕込み、系内を凍結脱気した後、窒素ガスでオートクレーブ内を置換する作業を3回繰り返し、水浴中で60℃、8時間内容物を撹拌した。その後、メタクリル酸2部を反応系に加え、2時間重合を行った。得られた溶液をトリクロロトリフルオロエタンで希釈し、メタノールに投入し、沈殿物を80℃で乾燥することにより、比較例2の含フッ素重合体4を6.5部得た。得られた重合体4のフッ素原子含有量は55.9重量%であり、280℃における溶融粘度は400Pa・sであった。
【0080】
得られた重合体4を用いて試験板を作製し、この試験板の10mmあたりの大きさ100μm以上の異物の数を測定したところ、100μm以上の異物が12個確認された。また、この試験板の体積固有抵抗値は5×1017Ω・cm以上であり、比誘電率は10Hz、10Hz、10Hzいずれの周波数においても2.29であり、誘電正接は10Hz、10Hz、10Hzいずれの周波数においても4×10−4であり、電気絶縁材料として好適であることが確認された。さらに、得られた重合体4を用いて厚さ50μmのキャスト膜を作製し、そのキャスト膜の透過光を観察したところ、スクリーンに投影された透過光にムラが見られた。
【0081】
比較例3
FCPE35部、エチルビニルエーテル12部、t−ブチルパーオキシピバレート0.2部および酢酸ブチル28部をステンレス製オートクレーブに仕込み、系内を凍結脱気した後、窒素ガスでオートクレーブ内を置換する作業を3回繰り返し、55℃、13時間内容物を撹拌した。その後、得られた溶液をメタノールに投入し、沈殿物を80℃で乾燥することにより、30部の含フッ素重合体5を得た。得られた重合体5のフッ素原子含有量は52.4重量%であり、280℃における溶融粘度は400Pa・sであった。
【0082】
得られた重合体5を用いて試験板を作製し、この試験板の10mmあたりの大きさ100μm以上の異物の数を測定したところ、100μm以上の異物が8個確認された。また、この試験板の体積固有抵抗値は5×1017Ω・cm以上であり、比誘電率は10Hz、10Hz、10Hzいずれの周波数においても2.52であり、誘電正接は10Hz、10Hz、10Hzいずれの周波数においても5×10−4であった。さらに、得られた重合体5を用いて厚さ50μmのキャスト膜を作製し、そのキャスト膜の透過光を観察したところ、スクリーンに投影された透過光にムラが見られた。
【0083】
実施例1〜3においては、重合開始剤として含フッ素ジアシルパーオキサイドを用いて、かつ重合温度が0〜50℃なので、得られた重合体のフッ素原子含有量が高く、比誘電率および誘電正接も低く、重合体中の100μm以上の異物も見られなかった。さらに、これらの重合体を用いてキャスト法により作製した膜の透過光を観察したところ、透過光にムラはなかった。
【0084】
一方、重合開始剤としてAIBNを用いた比較例1では、目的とする含フッ素重合体を得ることができなかった。
重合開始剤として含フッ素ジアシルパーオキサイドを用い、重合温度が60℃である比較例2では、得られた重合体のフッ素原子含有量が高く、比誘電率および誘電正接も低いが、重合体中の100μm以上の異物が確認された。そのため、これらの重合体を用いてキャスト法により作製した膜の透過光を観察したところ、透過光にムラが見られた。
重合開始剤として他のものを用いている比較例3では、得られた重合体のフッ素原子含有量が高いが、比誘電率および誘電正接が高くなり、かつ重合体中の100μm以上の異物が確認された。そのため、これらの重合体を用いてキャスト法により作製した膜の透過光を観察したところ、透過光にムラが見られた。
【0085】
【発明の効果】
本発明の含フッ素重合体は、所定量以上のフッ素原子を含有し、比誘電率が低く、かつ厚さ1mmの成形体を成形したときの100μm以上の異物の個数が少ないものであり、電気絶縁材料として適した物性を有する。本発明の製造方法によれば、所定量以上のフッ素原子含有量を有し、比誘電率が2.5以下であり、かつ厚さ1mmの成形体を成形したときの100μm以上の異物の個数が10mm当たり5個以下の含フッ素重合体を効率よく製造することができる。また、本発明の電気絶縁材料は、本発明の含フッ素重合体を用いるものであり、電気絶縁材料として優れた性能を有する。

Claims (4)

  1. 分子内に、式(1)
    Figure 2004256666
    (式中、R、R、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または塩素原子を表す。但し、R〜Rの少なくとも一つはフッ素原子である。nは1〜4の整数を表す。また、nが2以上のとき、(CR)で表される基は同一でも相異なっていてもよい。)で表される繰り返し単位(A)を、重合体全体に対して1〜100モル%含有してなる含フッ素重合体であって、該重合体のフッ素原子含有量が50重量%以上、比誘電率が2.5以下であり、かつ厚さ1mmの成形体を成形したときの100μm以上の異物の個数が10mm当たり5個以下であることを特徴とする含フッ素重合体。
  2. 前記R〜Rの全てがフッ素原子である請求項1に記載の含フッ素重合体。
  3. 重合することにより前記繰り返し単位(A)を与える含フッ素単量体(B)を、含フッ素ジアシルパーオキサイドの存在下、温度0〜50℃で重合することを特徴とする請求項1又は2に記載の含フッ素重合体の製造方法。
  4. 請求項1又は2に記載の含フッ素重合体を用いた電気絶縁材料。
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