JP2004255800A - インクジェット記録装置のメンテナンス方法及びそれを用いたインクジェット記録装置 - Google Patents
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Abstract
【目的】色材の水への溶解性或は分散性が低下することなく、且つ、記録装置に大型化、高コスト化を招くことなく、安定的な記録状態を長期間好維持することが可能であるインクジェット記録装置のメンテナンス方法を提供すること。
【構成】揮発性のカウンターイオンを有し該カウンターイオンが揮発することによって水への溶解性或は分散性が低下する色材を含有するインク(A)と、少なくともインクAを吐出する吐出口を覆うためのキャップ(A)とを用いるインクジェット記録装置のメンテナンス方法において、キャップAに少なくとも揮発性成分を含有する成分を付与する方法を含むことを特徴とする。
【選択図】 図1
【構成】揮発性のカウンターイオンを有し該カウンターイオンが揮発することによって水への溶解性或は分散性が低下する色材を含有するインク(A)と、少なくともインクAを吐出する吐出口を覆うためのキャップ(A)とを用いるインクジェット記録装置のメンテナンス方法において、キャップAに少なくとも揮発性成分を含有する成分を付与する方法を含むことを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録装置のメンテナンス方法及びこれを用いたインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、インクジェット記録方法は、低騒音である、コストが低い、装置が小型化である、記録画像のカラー化が容易である等の理由から、プリンターやファクシミリ、複写機等において広く利用されている。
【0003】
従来、インクジェット記録装置においては、装置が長時間使用されずにいた場合等に、インク吐出口のインクの水分や他の揮発性成分が蒸発する等してインクの粘度が上昇したり、気泡がノズル内やインク流路に混入する等して、インクが良好に吐出するのが困難な状態となり印字不良となることがある。このような状態を元の良好なインク吐出状態に回復させるためのメンテナンス方法として、インクジェット記録装置に何らかの回復装置を設けて回復させる方法が知られている。
【0004】
その回復装置の1つとして、キャップがノズルを覆っているときにノズルからインクを吸引し、インクタンク側から新しいインクをヘッドの方へ供給するための吸引装置を挙げることができる。この吸引装置を構成する代表的な要素として、シリンダとピストンとの相対移動を利用して圧力変化を発生するシリンダポンプや、チューブをしごくことによって圧力変化を発生するチューブポンプ等を挙げることができる。
【0005】
或は、別の回復装置として、或るタイミングで記録ヘッドを非記録領域に移動し、所定個所にインク吐出を行って吐出口内部の増粘したインクを除去する、所謂予備吐出装置を挙げることができる。例えば、記録動作の際、各記録ヘッドの複数の吐出口の中には、記録する文字、画像等によってインクが吐出されない吐出口も存在する。そのため、このインクが吐出されない吐出口では、インクの成分である水分が吐出口から蒸発し、インクが増粘することがあり、このような場合、吐出が不安定となることがあり、更に最悪の場合、不吐出となる場合がある。このような吐出不良を防止するため、予備吐出装置による予備吐出が従来より行われている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、揮発性のカウンターイオンを有し該カウンターイオンが揮発することによって水への溶解性或は分散性が低下する色材を含有するインクを用いるインクジェット記録装置においては、従来から行われているメンテナンス方法だけでは、長時間使用されずにいた場合等に、前記色材のカウンターイオンが揮発し色材の水への溶解性或は分散性が低下することにより、良好に吐出するのが困難な状態になり印字不良となることがあり、回復させるためには、より複雑で強力な回復系等が必要になることがある。
【0007】
本発明は上述したような問題に鑑みてなされたもので、揮発性のカウンターイオンを有し該カウンターイオンが揮発することによって水への溶解性或は分散性が低下する色材を含有するインクを用いるインクジェット記録装置において、例えば、長時間使用されずにいた場合等に、前記色材の水への溶解性或は分散性が低下することなく、且つ、記録装置に大型化、高コスト化を招くことなく、安定的な記録状態を長期間好維持することが可能であるインクジェット記録装置のメンテナンス方法及びそれを用いたインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明は、揮発性のカウンターイオンを有し該カウンターイオンが揮発することによって水への溶解性或は分散性が低下する色材を含有するインク(A)と、インクAを吐出する吐出口を覆うためのキャップ(A)とを用いるインクジェット記録装置のメンテナンス方法において、キャップAに、少なくとも揮発性成分を含有する成分を付与する方法を含むインクジェット記録装置のメンテナンス方法及び前記メンテナンス方法を含むインクジェット記録装置であることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、揮発性のカウンターイオンを有し該カウンターイオンが揮発することによって水への溶解性或は分散性が低下する色材を含有するインクを用いるインクジェット記録装置において、例えば、長時間使用されずにいた場合等に、前記色材の水への溶解性或は分散性が低下することなく、且つ、記録装置に大型化、高コスト化を招くことなく、安定的な記録状態を長期間好維持することが可能となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について詳述する。
【0011】
先ず、インクジェット記録装置の一例について説明する。
【0012】
図1において、61はワイピング部材としてのブレードであり、その一端はブレード保持部材によって保持固定されており、カンチレバーの形態を成す。ブレード61は、記録ヘッド65による記録領域に隣接した位置に配置され、又、本例の場合、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。
【0013】
62は記録ヘッド65の突出口面のキャップであり、ブレード61に隣接するホームポジションに配置され、記録ヘッド65の移動方向と垂直な方向に移動して、インク吐出口面と当接し、キャッピングを行う構成を備える。更に、63はブレード61に隣接して設けられるインク吸収体であり、ブレード61と同様、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。上記ブレード61、キャップ62及びインク吸収体63によって吐出回復部64が構成され、ブレード61及びインク吸収体63によって吐出口面の水分、塵埃等の除去が行われる。
【0014】
65は吐出エネルギー発生手段を有し、吐出口を配した吐出口面に対向する被記録材にインクを吐出して記録を行う記録ヘッド、66は記録ヘッド65を搭載して記録ヘッド65の移動を行うためのキャリッジである。キャリッジ66はガイド軸67と摺動可能に係合し、キャリッジ66の一部はモーター68によって駆動されるベルト69と接続(不図示)している。これによりキャリッジ66はガイド軸67に沿った移動が可能となり、記録ヘッド65による記録領域及びその隣接した領域の移動が可能となる。51は被記録材を挿入するための給紙部、52は不図示のモーターにより駆動される紙送りローラである。
【0015】
これらの構成により記録ヘッド65の吐出口面と対向する位置へ被記録材が給紙され、記録が進行するに連れて排紙ローラ53を配した排紙部へ排紙される。
【0016】
以上の構成において記録ヘッド65が記録終了してホームポジションへ戻る際、吐出回復部64のキャップ62は記録ヘッド65の移動経路から退避しているが、ブレード61は移動経路中に突出している。その結果、記録ヘッド65の吐出口がワイピングされる。
【0017】
尚、キャップ62が記録ヘッド65の吐出面に当接してキャッピングを行う場合、キャップ62は記録ヘッド65の移動経路中に突出するように移動する。記録ヘッド65がホームポジションから記録開始位置へ移動する場合、キャップ62及びブレード61は、上述したワイピングの時の位置と同一の位置に存在する。この結果、この移動においても記録ヘッド65の吐出口面はワイピングされる。
【0018】
上述の記録ヘッド65のホームポジションへの移動は、記録終了時や吐出回復時ばかりでなく、記録ヘッド65が記録のために記録領域を移動する間に所定の間隔で記録領域に隣接したホ−ムポジションへ移動し、この移動に伴って上記ワイピングが行われる。
【0019】
図2は記録ヘッドカートリッジの一例を示す斜視図および分解斜視図、図3は図2に示される記録ヘッドの構成を示す分解斜視図、図4はそのヘッドの底面側から眺めた斜視図である。以下、これらの図面を参照して各構成要素の説明を行う。
【0020】
記録ヘッドH1001は、記録ヘッドカートリッジH1000を構成する一構成要素であり、記録ヘッドカートリッジH1000は、記録ヘッドH1001と、記録ヘッドH1001に着脱自在に設けられたインクタンクH1900(H1901,H1902,H1903,H1904)とから構成されている。記録ヘッドH1001は、インクタンクH1900から供給されるインク(記録液)を、記録情報に応じて吐出口から吐出する。
【0021】
この記録ヘッドカートリッジH1000は、インクジェット記録装置本体に載設されているキャリッジ(不図示)の位置決め手段及び電気的接点によって固定支持されると共に、キャリッジに対して着脱可能となっている。インクタンクH1901はブラック(黒)のインク用、インクタンクH1902はシアンのインク用、インクタンクH1903はマゼンタのインク用、インクタンクH1904はイエローのインク用である。このようにインクタンクH1901,H1902,H1903,H1904のそれぞれが記録ヘッドH1001に対して着脱自在であり、それぞれのインクタンクが交換可能となっていることにより、インクジェット記録装置における印刷のランニングコストが低減される。
【0022】
記録ヘッドH1001は、電気信号に応じて膜沸騰をインクに対して生じさせるための熱エネルギーを生成する電気熱変換体(記録素子)を用いて記録を行うバブルジェット方式のサイドシュータ型の記録ヘッドである。
【0023】
記録ヘッドH1001は、図3の分解斜視図に示すように、記録素子ユニットH1002とインク供給ユニットH1003とタンクホルダH2000から構成されている。この図3に示した通り、記録ヘッドH1001は、記録素子ユニットH1002をビスH2400によりインク供給ユニットH1003に結合し、更に、タンクホルダH2000と結合することにより完成する。その完成図を図4に示している。記録素子ユニットH1002をインク供給ユニットH1003に結合する際には、記録素子ユニットH1002のインク連通口とインク供給ユニットH1003のインク連通口とを、インクがリークしないように連通させるため、ジョイントシール部材H2300を介してそれぞれの部材を圧着するようビスH2400で固定する。
【0024】
そして、記録素子ユニットH1002の電気コンタクト基板H2200はインク供給ユニットH1003の一側面に、インク供給ユニットH1003の端子位置決めピン(2箇所)と電気コンタクト基板H2200の端子位置決め穴(2ヶ所)により位置決めされ、固定される。固定方法としては、例えば、インク供給ユニットH1003に設けられた端子結合ピンを、加締めることにより固定されるが、その他の固定手段を用いて固定しても良い。更に、インク供給ユニットH1003のタンクホルダとの結合穴及び結合部をタンクホルダH2000に嵌合させ結合することにより、記録ヘッドH1001が完成する。
【0025】
記録素子ユニットH1002には、図3及び図4に示すように、インクタンクH1901から供給されたブラック(黒)インクを吐出する吐出口列H1011、インクタンクH1902から供給されたシアンインクを吐出する吐出口列H1012、インクタンクH1903から供給されたマゼンタインクを吐出する吐出口列H1013及びインクタンクH1904から供給されたイエローインクを吐出する吐出口列H1014が設けられている。吐出口列H1011,H1012,H1013,H1014は、互いに平行な状態でその順番で並んでいる。
【0026】
前述の図2(a),(b)は、記録ヘッドカートリッジH1000を構成する記録ヘッドH1001とインクタンクH1901,H1902,H1903,H1904の装着を説明する図であり、インクタンクH1901,H1902,H1903,H1904の内部には、上述したように対応する色のインクが収納されている。それぞれのインクタンクには、インクタンク内のインクを記録ヘッドH1001に供給するためのインク連通口が形成されている。例えばインクタンクH1901が記録ヘッドH1001に装着されると、インクタンクH1901のインク連通口が記録ヘッドH1001のジョイント部に設けられたフィルターと圧接され、インクタンクH1901内の黒インクがそのインク連通口から記録ヘッドH1001のインク流路を介して吐出口列H1011のそれぞれの吐出口に向けて供給される。
【0027】
そして、電気熱変換素子と吐出口のある発泡室にインクが供給され、電気熱変換素子に与えられる熱エネルギーによって被記録媒体である記録用紙に向けてインクが吐出される。
【0028】
又、本発明に好適に使用できる、吐出時に気泡を大気と連通する吐出方式の記録ヘッドの他の実施態様として、例えば日本特許登録第2783647号公報に記載のように、所謂エッジシュータータイプが挙げられる。
【0029】
その代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4723129号明細書、同第4740796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。この方式は、所謂オンデマンド型、コンティニュアス型の何れにも適用可能であるが、特に、オンデマンド型の場合には、液体(インク)が保持されているシートや液流路に対応して配置されている電気熱変換体に、記録情報に対応していて核沸騰を超える急速な温度上昇を与える少なくとも1つの駆動信号を印加することによって、電気熱変換体に熱エネルギーを発生せしめ、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさせて、結果的にこの駆動信号に1対1で対応した液体(インク)内の気泡を形成できるので有効である。この気泡の成長、収縮により吐出用開口を介して液体(インク)を吐出させて、少なくとも1つの滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長・収縮が行なわれるので、特に応答性に優れた液体(インク)の吐出が達成でき、より好ましいと言える。
【0030】
このパルス形状の駆動信号としては、米国特許第4463359号明細書、同第4345262号明細書に記載されているようなものが適している。
【0031】
尚、上記熱作用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第4313124号明細書に記載されている条件を採用すると、更に優れた記録を行うことができる。
【0032】
記録ヘッドの構成としては、上述の各明細書に開示されているような吐出口、液流路、電気熱変換体の組み合わせ構成(直線状液流路又は直角液流路)の他に、熱作用部が屈曲する領域に配置されている構成を開示する米国特許第4558333号明細書、米国特許第4459600号明細書を用いた構成も本発明に含まれるものである。
【0033】
加えて、複数の電気熱変換体に対して、共通するスリットを電気熱変換体の吐出部とする構成を開示する特開昭59−123670号公報や熱エネルギーの圧力波を吸収する開孔を吐出部に対応させる構成を開示する特開昭59−138461号公報に基づいた構成としても本発明は有効である。
【0034】
更に、記録装置が記録できる最大記録媒体の幅に対応した長さを有するフルラインタイプの記録ヘッドとしては、上述した明細書に開示されているような複数記録ヘッドの組み合わせによってその長さを満たす構成や、一体的に形成された1個の記録ヘッドとしての構成の何れでも良い。
【0035】
更に加えて、装置本体に装着されることで、装置本体との電気的な接続や装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチップタイプの記録ヘッド、或は記録ヘッド自体に一体的にインクタンクが設けられたカートリッジタイプの記録ヘッドを用いることもできる。
【0036】
その他、インクカートリッジとしては、記録ヘッドにインク供給部材、例えば、チューブを介して供給されるインクを収容したものも用いられる。
【0037】
又、本発明で使用されるインクジェット記録装置としては、上述のようにヘッドとインクカートリッジとが別体となったものに限らず、それらが一体になったものにも好適に用いられる。
【0038】
又、インク吸収体を用いず、例えばインク収容部が内部にバネ等を仕込んだインク袋であるような構造でも良い。
【0039】
次に、第2の力学的エネルギーを利用したインクジェット記録装置の形態として、複数のノズルを有するノズル形成基板と、ノズルに対向して配置される圧電材料と導電材料から成る圧力発生素子と、この圧力発生素子の周囲を満たすインクを備え、印加電圧により圧力発生素子を変位させ、インクの小液滴をノズルから吐出させるオンデマンドインクジェット記録ヘッドを挙げることができる。
【0040】
ヘッドは、インク室に連通したインク流路と、所望の体積のインク滴を吐出するためのオリフィスプレートと、インクに直接圧力を作用させる振動板と、この振動板に接合され、電気信号により変位する圧電素子と、オリフィスプレート、振動板等を指示固定するための基板とから構成されている。
【0041】
以上のような構成の記録ヘッドは、圧電素子にパルス状の電圧を与え、歪(ひずみ)応力を発生させ、そのエネルギーが圧電素子に接合された振動板を変形させ、インク流路内のインクを垂直に加圧しインク滴をオリフィスプレートの吐出口より吐出して記録を行うように動作する。
【0042】
このような記録ヘッドは図1に示したものと同様な記録装置に組み込んで使用される。記録装置の細部の動作は前述と同様に行うもので差し支えない。
【0043】
又、本発明の記録装置の構成として設けられる、記録ヘッドに対しての従来公知の回復手段、予備的な補助手段等を付加する構成としても勿論構わない。
【0044】
これらを具体的に挙げれば、記録ヘッドに対してのキャッピング手段、クリーニング手段、加圧或は吸引手段、電気熱変換体、或はこれとは別の加熱素子、或はこれらの組み合わせによる予備加熱手段、記録とは別の吐出を行う予備吐出モードを用いても構わない。
【0045】
更に、記録装置の記録モードとしては黒色等の主流色のみの記録モードだけではなく、記録ヘッドを一体的に構成するか複数個の組み合わせによってでも良いが、異なる色の複色カラー又は混色によるフルカラーの少なくとも1つを備えた装置にも、本発明は極めて有効である。
【0046】
更に加えて、本発明に係る記録装置の形態としては、ワードプロセッサやコンピュータ等の情報処理機器の画像出力端末として一体又は別体に設けられるものの他、リーダと組み合せた複写装置、更には送受信機能を有するファクシミリ装置の形態を採るものであっても良い。
【0047】
次に、本発明のインクジェット記録装置のメンテナンス方法について、一例を挙げて説明する。
【0048】
インクジェット記録装置は長時間使用されずにいた場合等に、インク吐出口へ埃等の異物の付着、或はインク吐出口からインクの水分や他の揮発性成分が蒸発する等してインクの粘度が上昇する等して、インクが良好に吐出するのが困難な状態となることを防止するために、インクジェット記録装置の未使用時にはインク吐出口をキャップで覆う。より長期間の放置でも保湿された状態を保つために、キャップ内にはキャップに付与されたインクを保持するためのインク吸収体を具備した構成としても良い。
【0049】
インクジェット記録装置の構成は、一例として、揮発性のカウンターイオンを有し該カウンターイオンが揮発することによって水への溶解性或は分散性が低下する色材を含有するインク(A)と、揮発性成分を含有する成分として、インクAに溶解した結果、インクAが含有する該色材のカウンターイオンとして作用する揮発性成分を含有するインク(B)から成るインクセットを用い、且つ、少なくともインクAを吐出する吐出口を覆うためのキャップ(A)を用いた構成とする。
【0050】
ここで、本発明におけるインクジェット記録装置は、次のようなメンテナンスを行う。つまり、インクジェット記録装置は、吐出或は吸引、その他の方法により、インクAの吐出口を覆うためのキャップAにインクBを付与し、インクBが付与されたキャップAにて、インクジェット記録装置の未使用時にインクAの吐出口を覆う。
【0051】
又、本発明のインクジェット記録装置のメンテナンス方法には、吸引装置、予備吐出装置等の従来公知の回復装置を用いたメンテナンス方法を併用することが出来る。
【0052】
上記のメンテナンス方法によりインクの吐出を良好に維持できる理由は以下のように考えられる。
【0053】
即ち、揮発性のカウンターイオンを有し該カウンターイオンが揮発することによって水への溶解性或は分散性が低下する色材を含有するインクAを用いるインクジェット記録装置では、従来から行われているメンテナンス方法だけでは、長時間使用されずにいた場合等に、前記色材のカウンターイオンが揮発し色材の水への溶解性或は分散性が低下することにより、良好に吐出するのが困難な状態になることがある。
【0054】
しかし、上記した本発明のメンテナンス方法の一例、つまり記録装置の未使用時にインクAの吐出口を覆うキャップAに、インクAに溶解した結果、インクAが含有する該色材のカウンターイオンとして作用する揮発性成分を含有するインク(B)を付与するメンテナンス方法を実施することにより、記録装置の未使用時にインクBから揮発した揮発性成分がインクAの吐出口から溶解し、インクAの色材のカウンターイオンが補充され色材の溶解性、或は分散安定性の低下を抑えられるために、インクAの吐出を良好に維持できるものと考えられる。
【0055】
又、特開平09−030004号公報に示されている、インクAの予備吐出によってキャップ内に生じた堆積物を落とすために、キャップAにインクAを吐出する方法をインクジェット記録装置のメンテナンス方法として用いた場合にも、本発明と同様の効果が得られることがある。
【0056】
しかし、キャップAにインクAのみを付与しただけでは、インクAから揮発し、インクAの吐出口から補充されるカウンターイオンの量が不十分で、インクAの吐出を良好に維持することが十分にできないことがある。これに対し、本発明における好ましい実施の形態の一例として、キャップAに付与されたインクBから揮発する揮発性成分の量が、インクAから揮発する揮発性カウンターイオンの量よりも多くなるように調整されたインクBを、キャップAに付与することにより、キャップAにインクAのみを付与した場合には得ることのできない、より良好な結果を得ることができる。
【0057】
次に、本発明に用いられるインクセットについて説明する。
【0058】
本発明に用いられるインクセットの色材としては、一般的に用いられている染料や顔料等の公知の色材であっても新規に合成された色材であっても、本発明の範囲内で適宜選択して用いることができる。インク中に含有させる色材の含有量としては、インク全質量に対して0.1〜15質量%とすることが好ましい。又、インク中に含有させる色材は単独でも、或は2種以上を混合して用いることも可能である。
【0059】
下記に、本発明に用いることのできる色材の一例として染料の具体例を色調別に例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(イエロー用の色材)
C.I.ダイレクトイエロー:8、11、12、27、28、33、39、44、50、58、85、86、87、88、89、98、100、110、132
C.I.アシッドイエロー:1、3、7、11、17、23、25、29、36、38、40、42、44、76、98、99
C.I.リィアクティブイエロー:2、3、17、25、37、42
C.I.フードイエロー:3
(レッド用の色材)
C.I.ダイレクトレッド:2、4、9、11、20、23、24、31、39、46、62、75、79、80、83、89、95、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229、230
C.I.アシッドレッド:6、8、9、13、14、18、26、27、32、35、42、51、52、80、83、87、89、92、106、114、115、133、134、145、158、198、249、265、289
C.I.リィアクティブレッド:7、12、13、15、17、20、23、24、31、42、45、46、59
C.I.フードレッド:87、92、94
(ブルー用の色材)
C.I.ダイレクトブルー:1、15、22、25、41、76、77、80、86、90、98、106、108、120、158、163、168、199、226
C.I.アシッドブルー:1、7、9、15、22、23、25、29、40、43、59、62、74、78、80、90、100、102、104、117、127、138、158、161
C.I.リィアクティブブルー:4、5、7、13、14、15、18、19、21、26、27、29、32、38、40、44、100
(ブラック用色材)
C.I.ダイレクトブラック:17、19、22、31、32、51、62、71、74、112、113、154、168、195
C.I.アシッドブラック:2、48、51、52、110、115、156C.I.フードブラック1、2
次に、本発明に用いることができ顔料として、カーボンブラックや有機顔料を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
カーボンブラックとしては例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料で、例えば、レイヴァン(Raven)7000、レイヴァン5750、レイヴァン5250、レイヴァン5000、レイヴァン3500、レイヴァン2000、レイヴァン1500、レイヴァン1250、レイヴァン1200、レイヴァン1190ULTRA−II、レイヴァン1170、レイヴァン1255(以上コロンビア社製)、ブラックパールズ(Black Pearls)L、リーガル(Regal)400R、リーガル330R、リーガル660R、モウグル(Mogul)L、モナク(Monarch)700、モナク800、モナク880、モナク900、モナク1000、モナク1100、モナク1300、モナク1400、ヴァルカン(Valcan)XC−72R(以上キャボット社製)、カラーブラック(Color Black)FW1、カラーブラックFW2、カラーブラックFW2V、カラーブラックFW18、カラーブラックFW200、カラーブラックS150、カラーブラックS160、カラーブラックS170、プリンテックス(Printex)35、プリンテックスU、プリンテックスV、プリンテックス140U、プリンテックス140V、スペシャルブラック(SpecialBlack)6、スペシャルブラック5、スペシャルブラック4A、スペシャルブラック4(以上デグッサ社製)、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上三菱化学社製)等を使用することができる。又、マグネタイト、フェライト等の磁性体微粒子やチタンブラック等を黒色顔料として用いても良い。
【0061】
有機顔料として具体的には,トルイジンレッド,トルイジンマルーン,ハンザエロー,ベンジジンエロー,ピラゾロンレッド等の不溶性アゾ顔料,リトールレッド,ヘリオボルドー,ピグメントスカーレット,パーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料,アリザリン,インダントロン,チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体,フタロシアニンブルー,フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料,キナクリドンレッド,キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系顔料,ペリレンレッド,ペリレンスカーレット等のペリレン系顔料,イソインドリノンエロー,イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系顔料,ベンズイミダゾロンエロー,ベンズイミダゾロンオレンジ,ベンズイミダゾロンレッド等のイミダゾロン系顔料,ピランスロンレッド,ピランスロンオレンジ等のピランスロン系顔料,チオインジゴ系顔料,縮合アゾ系顔料,チオインジゴ系顔料,フラバンスロンエロー,アシルアミドエロー,キノフタロンエロー,ニッケルアゾエロー,銅アゾメチンエロー,ペリノンオレンジ,アンスロンオレンジ,ジアンスラキノニルレッド,ジオキサジンバイオレット等のその他の顔料を使用することができる。
【0062】
又、有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーにて示すと、C.Iピグメントエロー12,13,14,17,20、24、74,83,86 93、109、110、117、120,125、137、138、147、148、151,153、154、166、168、C.I.ピグメントオレンジ16,36、43、51、55、59、61、C.I.ピグメントレッド9、48,49,52,53,57,97、122、123、149、168、175,176,177、180、192、215、216、217、220、223、224、226、227、228,238、240、C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、C.I.ピグメントブルー15,15:3、15:1,15:4,15:6,22、60、64、C.I.ピグメントグリーン7、36、C.I.ピグメントブラウン23、25、26等が例示できる。
【0063】
上記したカーボンブラックや有機顔料を用いる場合には分散剤を併用することが好ましい。分散剤としては、アニオン性基の作用によって上記の顔料を水性媒体に安定に分散させることのできるものが好適に用いられる。
【0064】
又、色材として、顔料表面にイオン性基(アニオン性基)を結合させることによって分散剤無しで水性媒体に分散させることのできる顔料、所謂自己分散型顔料を用いることもでき、このような顔料の一例として例えば、自己分散型カーボンブラックを挙げることができる。
【0065】
自己分散型カーボンブラックとしては、例えばアニオン性基がカーボンブラック表面に結合したものを挙げることができる。
【0066】
次に、色材のカウンターイオンであり、揮発することによって該色材の水への溶解性や分散性が低下する揮発性カウンターイオンについて説明する。
【0067】
揮発性カウンターイオンとしては、アンモニウムイオン、有機アンモニウムイオンが記録画像の耐水性をより向上させることができ、この点において特に好適に用いることのできるものである。これは当該インクが記録媒体上に付与されると、アンモニウムが分解し、アンモニアが蒸発する影響によるものと考えられる。有機アンモニウムの具体例としては、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、メタノールアンモニウム、ジメタノールアンモニウム、トリメタノールアンモニウム等が挙げられる。
【0068】
次に、揮発性のカウンターイオンを有し該カウンターイオンが揮発することによって水への溶解性、或は分散性が低下する色材(A)を含有するインク(A)を吐出する吐出口を覆うためのキャップ(A)に付与する、揮発性成分について説明する。
【0069】
揮発性成分としては、インクAに溶解した結果、前記色材Aの溶解性や分散安定性を維持、或は向上させるものが好ましい。例えば、色材AがインクAのpHがアルカリ性で良好な溶解性、分散安定性が得られる場合、インクAのpHをアルカリ性にする揮発性成分、例えばアンモニア、有機アミン等、又、色材Aが酸性で良好な溶解性、分散安定性が得られる場合、インクAのpHを酸性にする揮発性成分、例えば酢酸、塩酸等を用いることができる。
【0070】
別の揮発性成分の例として、揮発性の溶剤が挙げられる。例えば色材Aがインク中にアルコール類が存在するときに、良好な溶解性、分散安定性が得られる場合、揮発性成分として揮発性のアルコール類、例えばイソプロピルアルコール、メタノール等を用いることができる。勿論、この場合のアルコール類というのは一例に過ぎず、色材Aの良好な溶解性、分散安定性を得られるものであれば、その他の揮発性溶剤を用いることができる。
【0071】
更に、別の揮発性成分の例として、インクAに溶解した結果、インクAが含有する色材Aのカウンターイオンとして作用する揮発性成分を用いることができる。
【0072】
この場合、揮発性成分としては、インクAに溶解した結果、インクAが含有する色材Aのカウンターイオンとなり、且つ、記録画像の耐水性を向上させる点から特に、アンモニア、有機アミンを好適に用いることができる。有機アミンの具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、メタノールアミン、ジメタノールアミン、トリメタノールアミン等が挙げられる。これら揮発性成分は水溶液中で解離平衡状態を取り、水溶液中にイオンとしても存在することができる。
【0073】
そのため、揮発性成分を水溶液中に含有させる形態としては、アンモニウム、或は有機アンモニウムの塩として含有させることもできる。具体的には、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、或はアンモニウム塩型の色材などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。又、水溶液からアンモニアの揮発を促進させるために、水溶液をアルカリ性、具体的にはpHを9以上に調整することが好ましい。
【0074】
アルカリ性に調整する方法としては、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の水酸化物や各種pH調整剤等を用いた一般的な方法を用いることができる。上記した揮発性成分を含有する成分の形態としては、色材を有するインク形態、或は色材を含まない形態のどちらでも本発明の効果を得ることができる。
【0075】
又、先に述べた、インクAから揮発する揮発性カウンターイオンの量よりも、キャップBに付与するインクBから揮発する揮発性成分の量が多くなるように、インクBを調整する方法としては、一例として、インクAとインクBに同じ揮発性成分、例えばアンモニウムイオンを用いた場合、インク中に含有するアニモニア量を、インクA<インクB、インクのpHをインクA<インクBで且つインクBのpHを9以上にする方法が挙げられる。
【0076】
更に、本発明においては、揮発性成分として、インク作成直後は揮発性成分として作用しないが、例えば、物流期間中に成分の分解等により揮発性成分を生じるような成分を用いることができる。具体例としては、尿素、尿素誘導体等が挙げられる。これらを用いる場合、作製直後のインクでも本発明の効果を得るために、インク作成直後から揮発性成分として作用する上記揮発性成分と併用することが望ましい。
【0077】
本発明に係るインクセットを構成するインクは、本発明に用いられる色材を溶解或は分散させる液状媒体として、水を主体とする水性媒体が利用される。この水性媒体としては、水単独、或は水と水溶性有機溶剤を含むものが利用できる。
【0078】
この水溶性有機溶剤としては、水溶性を示すものであれば特に制限はなく、アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、グリコールエーテル、含窒素極性溶媒、含硫黄極性溶媒、尿素類、糖類等が挙げられる。これらの溶剤はインクの保湿性維持や色材の溶解性向上、インクの記録紙への浸透剤等の用途として用いられる。
【0079】
水溶性有機溶剤の含有量は、一般にはインク全体の1〜50質量%の範囲が好ましく、より好ましくは3〜40質量%の範囲である。又、インク中の水の含有量は、色材の溶解性やインクの吐出安定性を良好に保つために、30〜95質量%の範囲が好ましい。
【0080】
更に、本発明のインクには上記成分以外にも必要に応じて界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防カビ剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、水溶性ポリマー等、種々の添加剤を含有させても良い。
【0081】
[実施例]
以下、実施例及び比較例を用いて更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記実施例により限定されるものではない。
【0082】
尚、以下の記載で「%」「部」とあるものは、特に断りのない限り質量基準である。
(顔料分散体1)
比表面積が230m2 /gでDBP吸油量が70mL/100gのカーボンブラック10gとp−アミノ−N−安息香酸3.41gを水72gに良く混合した後、これに硝酸1.62gを滴下して攪拌した。ここに更に数分後、5gの水に1.07gの亜硝酸ナトリウムを溶かした溶液を加え、更に1時間攪拌した。得られスラリーを濾紙( 商品名:東洋濾紙No.2;アドバンティス社製) で濾過し、濾取した顔料粒子を十分に水洗し、オーブンで乾燥させ、更に、この顔料に水を足して顔料濃度10質量%の顔料水溶液を作製した。
【0083】
以上の方法によりカーボンブラックの表面に下記化学式に示される基を導入した。最後に、イオン交換法によりカウンターイオンとしてアンモニウムイオンを導入し、顔料分散体1を得た。
【0084】
次に、以下に示す成分を混合し、十分に攪拌してブラックインク1を得た。
【0085】
次に、以下に示す成分を混合し、十分に攪拌して溶解した後、ポアサイズ0.2μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過し、イエローインク1、マゼンタインク1、シアンインク1を得た。
尚、この場合、ブラックインク1は、揮発性のカウンターイオンを有し該カウンターイオンが揮発することによって水への溶解性或は分散性が低下する色材を含有するインクであり、イエローインク1は、ブラックインク1へ溶解した結果、ブラックインク1の色材のカウンターイオンとして作用する揮発性成分(アンモニア)を含有するインクであり、マゼンタインク1、シアンインク1は他のインクである。
【0086】
以上のようなインクセットと、インクジェット記録装置及としてキャノン(株)製BJS−600の改造機(タイマー等により自動で行われる吸引動作を全てカットし、本発明者が任意に吸引動作を行えるように改造)を用いて、以下の手順で本体放置試験を行った。
【0087】
本実施例におけるインクジェット記録装置は、ブラックインク1の吐出口のみをキャップAで覆い、イエローインク1、マゼンタインク1、シアンインク1の吐出口3箇所を同一のキャップBで覆い、又、キャップAでブラックインク1、キャップBでイエローインク1、マゼンタインク1、シアンインク1の3インクを同時に、吸引する回復装置を有する。
【0088】
各インクをインクタンクに充填し記録ヘッドに装着、吸引回復動作後に印字を行い、これを初期印字とした。
【0089】
その後、各実施例、比較例において以下の操作を行った。
【0090】
[実施例1]
初期印字後、イエローインク1を1吐出口につき2000発をブラックインク1のキャップに吐出を行い、その後、キャッピングを行った。
【0091】
[実施例2]
初期印字後、ブラックインク1のキャップでイエローインク1を吸引した状態を擬似的に再現するため、イエローインク1をブラックインク1のキャップに0.5ml滴下し、その後、キャッピングを行った。
【0092】
<比較例1>
初期印字後、そのままキャッピングを行った(ブラックインク1のキャップにはブラックインク1が付与されている)。
【0093】
<比較例2>
初期印字後、マゼンタインク1を1吐出口につき2000発をブラックインク1のキャップに吐出を行い、その後空吸引を行った。ブラックキャップへのマゼンタインクの吐出、空吸引の一連の操作を3サイクル繰り返した後、キャッピングを行なった(ブラックインク1のキャップには、主にマゼンタインクが付与されている)。
【0094】
実施例、比較例の各操作後、温度30℃、相対湿度10%の環境下に放置した。放置期間は1週間、2週間、1箇月で行った。
【0095】
それぞれの放置期間後、再び印字を行い初期印字と比較した。尚、実施例、比較例の何れにおいても、放置後の印字の前に、従来から行われている回復操作として、1吐出口につき100発の予備吐出を行った。
【0096】
結果は、ブラックキャップにイエローインク1を付与してキャップした実施例では、1箇月の放置でも印字不良が発生することはなかった。しかし、比較例2では1週間程度で印字不良が発生し、ブラックインク1をキャップに付与した比較例2では、2週間程度で印字不良が発生した。
【0097】
以上の結果は、実施例では、放置期間中にキャップ内のイエローインクからアンモニアが十分に補充され、ブラックインク1の色材が安定なまま維持されたためと考えられる。これに対し、比較例2では、放置期間中にブラックインク1の吐出口からブラックインク1のカウンターイオンのアンモニアが揮発し、ブラックインク1の色材が不安定になり、従来から行われている予備吐出だけでは回復できなかったために印字不良が発生したものと考えられる。又、キャップにブラックインク1を付与した比較例1では、ブラックインク1からカウンターイオンが補充されるため比較例2よりは良好な結果を示しているが、ブラックインク1から補充されるカウンターイオンだけでは不十分なため、実施例ほどの十分な効果が得られなかったものと考えられる。
【0098】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、揮発性のカウンターイオンを有し該カウンターイオンが揮発することによって水への溶解性あるいは分散性が低下する色材を含有するインクを用いるインクジェット記録装置において、例えば、長時間使用されずにいた場合等に、前記色材の水への溶解性或は分散性が低下することなく、且つ、記録装置に大型化、高コスト化を招くことなく、安定的な記録状態を長期間好維持することが可能であるインクジェット記録装置のメンテナンス方法及びそれを用いたインクジェット記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るインクジェット記録装置の一例を示す概略斜視図である。
【図2】(a)は本発明に係る実施例におけるカラーインクジェット記録方法が実施若しくは適用されるインクジェット記録装置に好適な記録ヘッドカートリッジの斜視図、(b)はその分解斜視図である。
【図3】図2に示す記録ヘッドカートリッジの構成を示す分解斜視図である。
【図4】図2に示した記録ヘッドカートリッジを底面側から眺めた斜視図である。
【符号の説明】
51 給紙部
52 紙送りローラ
53 排紙ローラ
61 ブレード
62 キャップ
63 インク吸収体
64 吐出回復部
65 記録ヘッド
66 キャリッジ
67 ガイド軸
68 モータ
69 ベルト
H1000 記録ヘッドカートリッジ
H1001 記録ヘッド
H1002 記録素子ユニット
H1003 インク供給ユニット
H1900 インクタンク
H2000 タンクホルダ
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録装置のメンテナンス方法及びこれを用いたインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、インクジェット記録方法は、低騒音である、コストが低い、装置が小型化である、記録画像のカラー化が容易である等の理由から、プリンターやファクシミリ、複写機等において広く利用されている。
【0003】
従来、インクジェット記録装置においては、装置が長時間使用されずにいた場合等に、インク吐出口のインクの水分や他の揮発性成分が蒸発する等してインクの粘度が上昇したり、気泡がノズル内やインク流路に混入する等して、インクが良好に吐出するのが困難な状態となり印字不良となることがある。このような状態を元の良好なインク吐出状態に回復させるためのメンテナンス方法として、インクジェット記録装置に何らかの回復装置を設けて回復させる方法が知られている。
【0004】
その回復装置の1つとして、キャップがノズルを覆っているときにノズルからインクを吸引し、インクタンク側から新しいインクをヘッドの方へ供給するための吸引装置を挙げることができる。この吸引装置を構成する代表的な要素として、シリンダとピストンとの相対移動を利用して圧力変化を発生するシリンダポンプや、チューブをしごくことによって圧力変化を発生するチューブポンプ等を挙げることができる。
【0005】
或は、別の回復装置として、或るタイミングで記録ヘッドを非記録領域に移動し、所定個所にインク吐出を行って吐出口内部の増粘したインクを除去する、所謂予備吐出装置を挙げることができる。例えば、記録動作の際、各記録ヘッドの複数の吐出口の中には、記録する文字、画像等によってインクが吐出されない吐出口も存在する。そのため、このインクが吐出されない吐出口では、インクの成分である水分が吐出口から蒸発し、インクが増粘することがあり、このような場合、吐出が不安定となることがあり、更に最悪の場合、不吐出となる場合がある。このような吐出不良を防止するため、予備吐出装置による予備吐出が従来より行われている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、揮発性のカウンターイオンを有し該カウンターイオンが揮発することによって水への溶解性或は分散性が低下する色材を含有するインクを用いるインクジェット記録装置においては、従来から行われているメンテナンス方法だけでは、長時間使用されずにいた場合等に、前記色材のカウンターイオンが揮発し色材の水への溶解性或は分散性が低下することにより、良好に吐出するのが困難な状態になり印字不良となることがあり、回復させるためには、より複雑で強力な回復系等が必要になることがある。
【0007】
本発明は上述したような問題に鑑みてなされたもので、揮発性のカウンターイオンを有し該カウンターイオンが揮発することによって水への溶解性或は分散性が低下する色材を含有するインクを用いるインクジェット記録装置において、例えば、長時間使用されずにいた場合等に、前記色材の水への溶解性或は分散性が低下することなく、且つ、記録装置に大型化、高コスト化を招くことなく、安定的な記録状態を長期間好維持することが可能であるインクジェット記録装置のメンテナンス方法及びそれを用いたインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明は、揮発性のカウンターイオンを有し該カウンターイオンが揮発することによって水への溶解性或は分散性が低下する色材を含有するインク(A)と、インクAを吐出する吐出口を覆うためのキャップ(A)とを用いるインクジェット記録装置のメンテナンス方法において、キャップAに、少なくとも揮発性成分を含有する成分を付与する方法を含むインクジェット記録装置のメンテナンス方法及び前記メンテナンス方法を含むインクジェット記録装置であることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、揮発性のカウンターイオンを有し該カウンターイオンが揮発することによって水への溶解性或は分散性が低下する色材を含有するインクを用いるインクジェット記録装置において、例えば、長時間使用されずにいた場合等に、前記色材の水への溶解性或は分散性が低下することなく、且つ、記録装置に大型化、高コスト化を招くことなく、安定的な記録状態を長期間好維持することが可能となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について詳述する。
【0011】
先ず、インクジェット記録装置の一例について説明する。
【0012】
図1において、61はワイピング部材としてのブレードであり、その一端はブレード保持部材によって保持固定されており、カンチレバーの形態を成す。ブレード61は、記録ヘッド65による記録領域に隣接した位置に配置され、又、本例の場合、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。
【0013】
62は記録ヘッド65の突出口面のキャップであり、ブレード61に隣接するホームポジションに配置され、記録ヘッド65の移動方向と垂直な方向に移動して、インク吐出口面と当接し、キャッピングを行う構成を備える。更に、63はブレード61に隣接して設けられるインク吸収体であり、ブレード61と同様、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。上記ブレード61、キャップ62及びインク吸収体63によって吐出回復部64が構成され、ブレード61及びインク吸収体63によって吐出口面の水分、塵埃等の除去が行われる。
【0014】
65は吐出エネルギー発生手段を有し、吐出口を配した吐出口面に対向する被記録材にインクを吐出して記録を行う記録ヘッド、66は記録ヘッド65を搭載して記録ヘッド65の移動を行うためのキャリッジである。キャリッジ66はガイド軸67と摺動可能に係合し、キャリッジ66の一部はモーター68によって駆動されるベルト69と接続(不図示)している。これによりキャリッジ66はガイド軸67に沿った移動が可能となり、記録ヘッド65による記録領域及びその隣接した領域の移動が可能となる。51は被記録材を挿入するための給紙部、52は不図示のモーターにより駆動される紙送りローラである。
【0015】
これらの構成により記録ヘッド65の吐出口面と対向する位置へ被記録材が給紙され、記録が進行するに連れて排紙ローラ53を配した排紙部へ排紙される。
【0016】
以上の構成において記録ヘッド65が記録終了してホームポジションへ戻る際、吐出回復部64のキャップ62は記録ヘッド65の移動経路から退避しているが、ブレード61は移動経路中に突出している。その結果、記録ヘッド65の吐出口がワイピングされる。
【0017】
尚、キャップ62が記録ヘッド65の吐出面に当接してキャッピングを行う場合、キャップ62は記録ヘッド65の移動経路中に突出するように移動する。記録ヘッド65がホームポジションから記録開始位置へ移動する場合、キャップ62及びブレード61は、上述したワイピングの時の位置と同一の位置に存在する。この結果、この移動においても記録ヘッド65の吐出口面はワイピングされる。
【0018】
上述の記録ヘッド65のホームポジションへの移動は、記録終了時や吐出回復時ばかりでなく、記録ヘッド65が記録のために記録領域を移動する間に所定の間隔で記録領域に隣接したホ−ムポジションへ移動し、この移動に伴って上記ワイピングが行われる。
【0019】
図2は記録ヘッドカートリッジの一例を示す斜視図および分解斜視図、図3は図2に示される記録ヘッドの構成を示す分解斜視図、図4はそのヘッドの底面側から眺めた斜視図である。以下、これらの図面を参照して各構成要素の説明を行う。
【0020】
記録ヘッドH1001は、記録ヘッドカートリッジH1000を構成する一構成要素であり、記録ヘッドカートリッジH1000は、記録ヘッドH1001と、記録ヘッドH1001に着脱自在に設けられたインクタンクH1900(H1901,H1902,H1903,H1904)とから構成されている。記録ヘッドH1001は、インクタンクH1900から供給されるインク(記録液)を、記録情報に応じて吐出口から吐出する。
【0021】
この記録ヘッドカートリッジH1000は、インクジェット記録装置本体に載設されているキャリッジ(不図示)の位置決め手段及び電気的接点によって固定支持されると共に、キャリッジに対して着脱可能となっている。インクタンクH1901はブラック(黒)のインク用、インクタンクH1902はシアンのインク用、インクタンクH1903はマゼンタのインク用、インクタンクH1904はイエローのインク用である。このようにインクタンクH1901,H1902,H1903,H1904のそれぞれが記録ヘッドH1001に対して着脱自在であり、それぞれのインクタンクが交換可能となっていることにより、インクジェット記録装置における印刷のランニングコストが低減される。
【0022】
記録ヘッドH1001は、電気信号に応じて膜沸騰をインクに対して生じさせるための熱エネルギーを生成する電気熱変換体(記録素子)を用いて記録を行うバブルジェット方式のサイドシュータ型の記録ヘッドである。
【0023】
記録ヘッドH1001は、図3の分解斜視図に示すように、記録素子ユニットH1002とインク供給ユニットH1003とタンクホルダH2000から構成されている。この図3に示した通り、記録ヘッドH1001は、記録素子ユニットH1002をビスH2400によりインク供給ユニットH1003に結合し、更に、タンクホルダH2000と結合することにより完成する。その完成図を図4に示している。記録素子ユニットH1002をインク供給ユニットH1003に結合する際には、記録素子ユニットH1002のインク連通口とインク供給ユニットH1003のインク連通口とを、インクがリークしないように連通させるため、ジョイントシール部材H2300を介してそれぞれの部材を圧着するようビスH2400で固定する。
【0024】
そして、記録素子ユニットH1002の電気コンタクト基板H2200はインク供給ユニットH1003の一側面に、インク供給ユニットH1003の端子位置決めピン(2箇所)と電気コンタクト基板H2200の端子位置決め穴(2ヶ所)により位置決めされ、固定される。固定方法としては、例えば、インク供給ユニットH1003に設けられた端子結合ピンを、加締めることにより固定されるが、その他の固定手段を用いて固定しても良い。更に、インク供給ユニットH1003のタンクホルダとの結合穴及び結合部をタンクホルダH2000に嵌合させ結合することにより、記録ヘッドH1001が完成する。
【0025】
記録素子ユニットH1002には、図3及び図4に示すように、インクタンクH1901から供給されたブラック(黒)インクを吐出する吐出口列H1011、インクタンクH1902から供給されたシアンインクを吐出する吐出口列H1012、インクタンクH1903から供給されたマゼンタインクを吐出する吐出口列H1013及びインクタンクH1904から供給されたイエローインクを吐出する吐出口列H1014が設けられている。吐出口列H1011,H1012,H1013,H1014は、互いに平行な状態でその順番で並んでいる。
【0026】
前述の図2(a),(b)は、記録ヘッドカートリッジH1000を構成する記録ヘッドH1001とインクタンクH1901,H1902,H1903,H1904の装着を説明する図であり、インクタンクH1901,H1902,H1903,H1904の内部には、上述したように対応する色のインクが収納されている。それぞれのインクタンクには、インクタンク内のインクを記録ヘッドH1001に供給するためのインク連通口が形成されている。例えばインクタンクH1901が記録ヘッドH1001に装着されると、インクタンクH1901のインク連通口が記録ヘッドH1001のジョイント部に設けられたフィルターと圧接され、インクタンクH1901内の黒インクがそのインク連通口から記録ヘッドH1001のインク流路を介して吐出口列H1011のそれぞれの吐出口に向けて供給される。
【0027】
そして、電気熱変換素子と吐出口のある発泡室にインクが供給され、電気熱変換素子に与えられる熱エネルギーによって被記録媒体である記録用紙に向けてインクが吐出される。
【0028】
又、本発明に好適に使用できる、吐出時に気泡を大気と連通する吐出方式の記録ヘッドの他の実施態様として、例えば日本特許登録第2783647号公報に記載のように、所謂エッジシュータータイプが挙げられる。
【0029】
その代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4723129号明細書、同第4740796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。この方式は、所謂オンデマンド型、コンティニュアス型の何れにも適用可能であるが、特に、オンデマンド型の場合には、液体(インク)が保持されているシートや液流路に対応して配置されている電気熱変換体に、記録情報に対応していて核沸騰を超える急速な温度上昇を与える少なくとも1つの駆動信号を印加することによって、電気熱変換体に熱エネルギーを発生せしめ、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさせて、結果的にこの駆動信号に1対1で対応した液体(インク)内の気泡を形成できるので有効である。この気泡の成長、収縮により吐出用開口を介して液体(インク)を吐出させて、少なくとも1つの滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長・収縮が行なわれるので、特に応答性に優れた液体(インク)の吐出が達成でき、より好ましいと言える。
【0030】
このパルス形状の駆動信号としては、米国特許第4463359号明細書、同第4345262号明細書に記載されているようなものが適している。
【0031】
尚、上記熱作用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第4313124号明細書に記載されている条件を採用すると、更に優れた記録を行うことができる。
【0032】
記録ヘッドの構成としては、上述の各明細書に開示されているような吐出口、液流路、電気熱変換体の組み合わせ構成(直線状液流路又は直角液流路)の他に、熱作用部が屈曲する領域に配置されている構成を開示する米国特許第4558333号明細書、米国特許第4459600号明細書を用いた構成も本発明に含まれるものである。
【0033】
加えて、複数の電気熱変換体に対して、共通するスリットを電気熱変換体の吐出部とする構成を開示する特開昭59−123670号公報や熱エネルギーの圧力波を吸収する開孔を吐出部に対応させる構成を開示する特開昭59−138461号公報に基づいた構成としても本発明は有効である。
【0034】
更に、記録装置が記録できる最大記録媒体の幅に対応した長さを有するフルラインタイプの記録ヘッドとしては、上述した明細書に開示されているような複数記録ヘッドの組み合わせによってその長さを満たす構成や、一体的に形成された1個の記録ヘッドとしての構成の何れでも良い。
【0035】
更に加えて、装置本体に装着されることで、装置本体との電気的な接続や装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチップタイプの記録ヘッド、或は記録ヘッド自体に一体的にインクタンクが設けられたカートリッジタイプの記録ヘッドを用いることもできる。
【0036】
その他、インクカートリッジとしては、記録ヘッドにインク供給部材、例えば、チューブを介して供給されるインクを収容したものも用いられる。
【0037】
又、本発明で使用されるインクジェット記録装置としては、上述のようにヘッドとインクカートリッジとが別体となったものに限らず、それらが一体になったものにも好適に用いられる。
【0038】
又、インク吸収体を用いず、例えばインク収容部が内部にバネ等を仕込んだインク袋であるような構造でも良い。
【0039】
次に、第2の力学的エネルギーを利用したインクジェット記録装置の形態として、複数のノズルを有するノズル形成基板と、ノズルに対向して配置される圧電材料と導電材料から成る圧力発生素子と、この圧力発生素子の周囲を満たすインクを備え、印加電圧により圧力発生素子を変位させ、インクの小液滴をノズルから吐出させるオンデマンドインクジェット記録ヘッドを挙げることができる。
【0040】
ヘッドは、インク室に連通したインク流路と、所望の体積のインク滴を吐出するためのオリフィスプレートと、インクに直接圧力を作用させる振動板と、この振動板に接合され、電気信号により変位する圧電素子と、オリフィスプレート、振動板等を指示固定するための基板とから構成されている。
【0041】
以上のような構成の記録ヘッドは、圧電素子にパルス状の電圧を与え、歪(ひずみ)応力を発生させ、そのエネルギーが圧電素子に接合された振動板を変形させ、インク流路内のインクを垂直に加圧しインク滴をオリフィスプレートの吐出口より吐出して記録を行うように動作する。
【0042】
このような記録ヘッドは図1に示したものと同様な記録装置に組み込んで使用される。記録装置の細部の動作は前述と同様に行うもので差し支えない。
【0043】
又、本発明の記録装置の構成として設けられる、記録ヘッドに対しての従来公知の回復手段、予備的な補助手段等を付加する構成としても勿論構わない。
【0044】
これらを具体的に挙げれば、記録ヘッドに対してのキャッピング手段、クリーニング手段、加圧或は吸引手段、電気熱変換体、或はこれとは別の加熱素子、或はこれらの組み合わせによる予備加熱手段、記録とは別の吐出を行う予備吐出モードを用いても構わない。
【0045】
更に、記録装置の記録モードとしては黒色等の主流色のみの記録モードだけではなく、記録ヘッドを一体的に構成するか複数個の組み合わせによってでも良いが、異なる色の複色カラー又は混色によるフルカラーの少なくとも1つを備えた装置にも、本発明は極めて有効である。
【0046】
更に加えて、本発明に係る記録装置の形態としては、ワードプロセッサやコンピュータ等の情報処理機器の画像出力端末として一体又は別体に設けられるものの他、リーダと組み合せた複写装置、更には送受信機能を有するファクシミリ装置の形態を採るものであっても良い。
【0047】
次に、本発明のインクジェット記録装置のメンテナンス方法について、一例を挙げて説明する。
【0048】
インクジェット記録装置は長時間使用されずにいた場合等に、インク吐出口へ埃等の異物の付着、或はインク吐出口からインクの水分や他の揮発性成分が蒸発する等してインクの粘度が上昇する等して、インクが良好に吐出するのが困難な状態となることを防止するために、インクジェット記録装置の未使用時にはインク吐出口をキャップで覆う。より長期間の放置でも保湿された状態を保つために、キャップ内にはキャップに付与されたインクを保持するためのインク吸収体を具備した構成としても良い。
【0049】
インクジェット記録装置の構成は、一例として、揮発性のカウンターイオンを有し該カウンターイオンが揮発することによって水への溶解性或は分散性が低下する色材を含有するインク(A)と、揮発性成分を含有する成分として、インクAに溶解した結果、インクAが含有する該色材のカウンターイオンとして作用する揮発性成分を含有するインク(B)から成るインクセットを用い、且つ、少なくともインクAを吐出する吐出口を覆うためのキャップ(A)を用いた構成とする。
【0050】
ここで、本発明におけるインクジェット記録装置は、次のようなメンテナンスを行う。つまり、インクジェット記録装置は、吐出或は吸引、その他の方法により、インクAの吐出口を覆うためのキャップAにインクBを付与し、インクBが付与されたキャップAにて、インクジェット記録装置の未使用時にインクAの吐出口を覆う。
【0051】
又、本発明のインクジェット記録装置のメンテナンス方法には、吸引装置、予備吐出装置等の従来公知の回復装置を用いたメンテナンス方法を併用することが出来る。
【0052】
上記のメンテナンス方法によりインクの吐出を良好に維持できる理由は以下のように考えられる。
【0053】
即ち、揮発性のカウンターイオンを有し該カウンターイオンが揮発することによって水への溶解性或は分散性が低下する色材を含有するインクAを用いるインクジェット記録装置では、従来から行われているメンテナンス方法だけでは、長時間使用されずにいた場合等に、前記色材のカウンターイオンが揮発し色材の水への溶解性或は分散性が低下することにより、良好に吐出するのが困難な状態になることがある。
【0054】
しかし、上記した本発明のメンテナンス方法の一例、つまり記録装置の未使用時にインクAの吐出口を覆うキャップAに、インクAに溶解した結果、インクAが含有する該色材のカウンターイオンとして作用する揮発性成分を含有するインク(B)を付与するメンテナンス方法を実施することにより、記録装置の未使用時にインクBから揮発した揮発性成分がインクAの吐出口から溶解し、インクAの色材のカウンターイオンが補充され色材の溶解性、或は分散安定性の低下を抑えられるために、インクAの吐出を良好に維持できるものと考えられる。
【0055】
又、特開平09−030004号公報に示されている、インクAの予備吐出によってキャップ内に生じた堆積物を落とすために、キャップAにインクAを吐出する方法をインクジェット記録装置のメンテナンス方法として用いた場合にも、本発明と同様の効果が得られることがある。
【0056】
しかし、キャップAにインクAのみを付与しただけでは、インクAから揮発し、インクAの吐出口から補充されるカウンターイオンの量が不十分で、インクAの吐出を良好に維持することが十分にできないことがある。これに対し、本発明における好ましい実施の形態の一例として、キャップAに付与されたインクBから揮発する揮発性成分の量が、インクAから揮発する揮発性カウンターイオンの量よりも多くなるように調整されたインクBを、キャップAに付与することにより、キャップAにインクAのみを付与した場合には得ることのできない、より良好な結果を得ることができる。
【0057】
次に、本発明に用いられるインクセットについて説明する。
【0058】
本発明に用いられるインクセットの色材としては、一般的に用いられている染料や顔料等の公知の色材であっても新規に合成された色材であっても、本発明の範囲内で適宜選択して用いることができる。インク中に含有させる色材の含有量としては、インク全質量に対して0.1〜15質量%とすることが好ましい。又、インク中に含有させる色材は単独でも、或は2種以上を混合して用いることも可能である。
【0059】
下記に、本発明に用いることのできる色材の一例として染料の具体例を色調別に例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(イエロー用の色材)
C.I.ダイレクトイエロー:8、11、12、27、28、33、39、44、50、58、85、86、87、88、89、98、100、110、132
C.I.アシッドイエロー:1、3、7、11、17、23、25、29、36、38、40、42、44、76、98、99
C.I.リィアクティブイエロー:2、3、17、25、37、42
C.I.フードイエロー:3
(レッド用の色材)
C.I.ダイレクトレッド:2、4、9、11、20、23、24、31、39、46、62、75、79、80、83、89、95、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229、230
C.I.アシッドレッド:6、8、9、13、14、18、26、27、32、35、42、51、52、80、83、87、89、92、106、114、115、133、134、145、158、198、249、265、289
C.I.リィアクティブレッド:7、12、13、15、17、20、23、24、31、42、45、46、59
C.I.フードレッド:87、92、94
(ブルー用の色材)
C.I.ダイレクトブルー:1、15、22、25、41、76、77、80、86、90、98、106、108、120、158、163、168、199、226
C.I.アシッドブルー:1、7、9、15、22、23、25、29、40、43、59、62、74、78、80、90、100、102、104、117、127、138、158、161
C.I.リィアクティブブルー:4、5、7、13、14、15、18、19、21、26、27、29、32、38、40、44、100
(ブラック用色材)
C.I.ダイレクトブラック:17、19、22、31、32、51、62、71、74、112、113、154、168、195
C.I.アシッドブラック:2、48、51、52、110、115、156C.I.フードブラック1、2
次に、本発明に用いることができ顔料として、カーボンブラックや有機顔料を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
カーボンブラックとしては例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料で、例えば、レイヴァン(Raven)7000、レイヴァン5750、レイヴァン5250、レイヴァン5000、レイヴァン3500、レイヴァン2000、レイヴァン1500、レイヴァン1250、レイヴァン1200、レイヴァン1190ULTRA−II、レイヴァン1170、レイヴァン1255(以上コロンビア社製)、ブラックパールズ(Black Pearls)L、リーガル(Regal)400R、リーガル330R、リーガル660R、モウグル(Mogul)L、モナク(Monarch)700、モナク800、モナク880、モナク900、モナク1000、モナク1100、モナク1300、モナク1400、ヴァルカン(Valcan)XC−72R(以上キャボット社製)、カラーブラック(Color Black)FW1、カラーブラックFW2、カラーブラックFW2V、カラーブラックFW18、カラーブラックFW200、カラーブラックS150、カラーブラックS160、カラーブラックS170、プリンテックス(Printex)35、プリンテックスU、プリンテックスV、プリンテックス140U、プリンテックス140V、スペシャルブラック(SpecialBlack)6、スペシャルブラック5、スペシャルブラック4A、スペシャルブラック4(以上デグッサ社製)、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上三菱化学社製)等を使用することができる。又、マグネタイト、フェライト等の磁性体微粒子やチタンブラック等を黒色顔料として用いても良い。
【0061】
有機顔料として具体的には,トルイジンレッド,トルイジンマルーン,ハンザエロー,ベンジジンエロー,ピラゾロンレッド等の不溶性アゾ顔料,リトールレッド,ヘリオボルドー,ピグメントスカーレット,パーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料,アリザリン,インダントロン,チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体,フタロシアニンブルー,フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料,キナクリドンレッド,キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系顔料,ペリレンレッド,ペリレンスカーレット等のペリレン系顔料,イソインドリノンエロー,イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系顔料,ベンズイミダゾロンエロー,ベンズイミダゾロンオレンジ,ベンズイミダゾロンレッド等のイミダゾロン系顔料,ピランスロンレッド,ピランスロンオレンジ等のピランスロン系顔料,チオインジゴ系顔料,縮合アゾ系顔料,チオインジゴ系顔料,フラバンスロンエロー,アシルアミドエロー,キノフタロンエロー,ニッケルアゾエロー,銅アゾメチンエロー,ペリノンオレンジ,アンスロンオレンジ,ジアンスラキノニルレッド,ジオキサジンバイオレット等のその他の顔料を使用することができる。
【0062】
又、有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーにて示すと、C.Iピグメントエロー12,13,14,17,20、24、74,83,86 93、109、110、117、120,125、137、138、147、148、151,153、154、166、168、C.I.ピグメントオレンジ16,36、43、51、55、59、61、C.I.ピグメントレッド9、48,49,52,53,57,97、122、123、149、168、175,176,177、180、192、215、216、217、220、223、224、226、227、228,238、240、C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、C.I.ピグメントブルー15,15:3、15:1,15:4,15:6,22、60、64、C.I.ピグメントグリーン7、36、C.I.ピグメントブラウン23、25、26等が例示できる。
【0063】
上記したカーボンブラックや有機顔料を用いる場合には分散剤を併用することが好ましい。分散剤としては、アニオン性基の作用によって上記の顔料を水性媒体に安定に分散させることのできるものが好適に用いられる。
【0064】
又、色材として、顔料表面にイオン性基(アニオン性基)を結合させることによって分散剤無しで水性媒体に分散させることのできる顔料、所謂自己分散型顔料を用いることもでき、このような顔料の一例として例えば、自己分散型カーボンブラックを挙げることができる。
【0065】
自己分散型カーボンブラックとしては、例えばアニオン性基がカーボンブラック表面に結合したものを挙げることができる。
【0066】
次に、色材のカウンターイオンであり、揮発することによって該色材の水への溶解性や分散性が低下する揮発性カウンターイオンについて説明する。
【0067】
揮発性カウンターイオンとしては、アンモニウムイオン、有機アンモニウムイオンが記録画像の耐水性をより向上させることができ、この点において特に好適に用いることのできるものである。これは当該インクが記録媒体上に付与されると、アンモニウムが分解し、アンモニアが蒸発する影響によるものと考えられる。有機アンモニウムの具体例としては、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、メタノールアンモニウム、ジメタノールアンモニウム、トリメタノールアンモニウム等が挙げられる。
【0068】
次に、揮発性のカウンターイオンを有し該カウンターイオンが揮発することによって水への溶解性、或は分散性が低下する色材(A)を含有するインク(A)を吐出する吐出口を覆うためのキャップ(A)に付与する、揮発性成分について説明する。
【0069】
揮発性成分としては、インクAに溶解した結果、前記色材Aの溶解性や分散安定性を維持、或は向上させるものが好ましい。例えば、色材AがインクAのpHがアルカリ性で良好な溶解性、分散安定性が得られる場合、インクAのpHをアルカリ性にする揮発性成分、例えばアンモニア、有機アミン等、又、色材Aが酸性で良好な溶解性、分散安定性が得られる場合、インクAのpHを酸性にする揮発性成分、例えば酢酸、塩酸等を用いることができる。
【0070】
別の揮発性成分の例として、揮発性の溶剤が挙げられる。例えば色材Aがインク中にアルコール類が存在するときに、良好な溶解性、分散安定性が得られる場合、揮発性成分として揮発性のアルコール類、例えばイソプロピルアルコール、メタノール等を用いることができる。勿論、この場合のアルコール類というのは一例に過ぎず、色材Aの良好な溶解性、分散安定性を得られるものであれば、その他の揮発性溶剤を用いることができる。
【0071】
更に、別の揮発性成分の例として、インクAに溶解した結果、インクAが含有する色材Aのカウンターイオンとして作用する揮発性成分を用いることができる。
【0072】
この場合、揮発性成分としては、インクAに溶解した結果、インクAが含有する色材Aのカウンターイオンとなり、且つ、記録画像の耐水性を向上させる点から特に、アンモニア、有機アミンを好適に用いることができる。有機アミンの具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、メタノールアミン、ジメタノールアミン、トリメタノールアミン等が挙げられる。これら揮発性成分は水溶液中で解離平衡状態を取り、水溶液中にイオンとしても存在することができる。
【0073】
そのため、揮発性成分を水溶液中に含有させる形態としては、アンモニウム、或は有機アンモニウムの塩として含有させることもできる。具体的には、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、或はアンモニウム塩型の色材などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。又、水溶液からアンモニアの揮発を促進させるために、水溶液をアルカリ性、具体的にはpHを9以上に調整することが好ましい。
【0074】
アルカリ性に調整する方法としては、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の水酸化物や各種pH調整剤等を用いた一般的な方法を用いることができる。上記した揮発性成分を含有する成分の形態としては、色材を有するインク形態、或は色材を含まない形態のどちらでも本発明の効果を得ることができる。
【0075】
又、先に述べた、インクAから揮発する揮発性カウンターイオンの量よりも、キャップBに付与するインクBから揮発する揮発性成分の量が多くなるように、インクBを調整する方法としては、一例として、インクAとインクBに同じ揮発性成分、例えばアンモニウムイオンを用いた場合、インク中に含有するアニモニア量を、インクA<インクB、インクのpHをインクA<インクBで且つインクBのpHを9以上にする方法が挙げられる。
【0076】
更に、本発明においては、揮発性成分として、インク作成直後は揮発性成分として作用しないが、例えば、物流期間中に成分の分解等により揮発性成分を生じるような成分を用いることができる。具体例としては、尿素、尿素誘導体等が挙げられる。これらを用いる場合、作製直後のインクでも本発明の効果を得るために、インク作成直後から揮発性成分として作用する上記揮発性成分と併用することが望ましい。
【0077】
本発明に係るインクセットを構成するインクは、本発明に用いられる色材を溶解或は分散させる液状媒体として、水を主体とする水性媒体が利用される。この水性媒体としては、水単独、或は水と水溶性有機溶剤を含むものが利用できる。
【0078】
この水溶性有機溶剤としては、水溶性を示すものであれば特に制限はなく、アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、グリコールエーテル、含窒素極性溶媒、含硫黄極性溶媒、尿素類、糖類等が挙げられる。これらの溶剤はインクの保湿性維持や色材の溶解性向上、インクの記録紙への浸透剤等の用途として用いられる。
【0079】
水溶性有機溶剤の含有量は、一般にはインク全体の1〜50質量%の範囲が好ましく、より好ましくは3〜40質量%の範囲である。又、インク中の水の含有量は、色材の溶解性やインクの吐出安定性を良好に保つために、30〜95質量%の範囲が好ましい。
【0080】
更に、本発明のインクには上記成分以外にも必要に応じて界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防カビ剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、水溶性ポリマー等、種々の添加剤を含有させても良い。
【0081】
[実施例]
以下、実施例及び比較例を用いて更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記実施例により限定されるものではない。
【0082】
尚、以下の記載で「%」「部」とあるものは、特に断りのない限り質量基準である。
(顔料分散体1)
比表面積が230m2 /gでDBP吸油量が70mL/100gのカーボンブラック10gとp−アミノ−N−安息香酸3.41gを水72gに良く混合した後、これに硝酸1.62gを滴下して攪拌した。ここに更に数分後、5gの水に1.07gの亜硝酸ナトリウムを溶かした溶液を加え、更に1時間攪拌した。得られスラリーを濾紙( 商品名:東洋濾紙No.2;アドバンティス社製) で濾過し、濾取した顔料粒子を十分に水洗し、オーブンで乾燥させ、更に、この顔料に水を足して顔料濃度10質量%の顔料水溶液を作製した。
【0083】
以上の方法によりカーボンブラックの表面に下記化学式に示される基を導入した。最後に、イオン交換法によりカウンターイオンとしてアンモニウムイオンを導入し、顔料分散体1を得た。
【0084】
次に、以下に示す成分を混合し、十分に攪拌してブラックインク1を得た。
【0085】
次に、以下に示す成分を混合し、十分に攪拌して溶解した後、ポアサイズ0.2μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過し、イエローインク1、マゼンタインク1、シアンインク1を得た。
尚、この場合、ブラックインク1は、揮発性のカウンターイオンを有し該カウンターイオンが揮発することによって水への溶解性或は分散性が低下する色材を含有するインクであり、イエローインク1は、ブラックインク1へ溶解した結果、ブラックインク1の色材のカウンターイオンとして作用する揮発性成分(アンモニア)を含有するインクであり、マゼンタインク1、シアンインク1は他のインクである。
【0086】
以上のようなインクセットと、インクジェット記録装置及としてキャノン(株)製BJS−600の改造機(タイマー等により自動で行われる吸引動作を全てカットし、本発明者が任意に吸引動作を行えるように改造)を用いて、以下の手順で本体放置試験を行った。
【0087】
本実施例におけるインクジェット記録装置は、ブラックインク1の吐出口のみをキャップAで覆い、イエローインク1、マゼンタインク1、シアンインク1の吐出口3箇所を同一のキャップBで覆い、又、キャップAでブラックインク1、キャップBでイエローインク1、マゼンタインク1、シアンインク1の3インクを同時に、吸引する回復装置を有する。
【0088】
各インクをインクタンクに充填し記録ヘッドに装着、吸引回復動作後に印字を行い、これを初期印字とした。
【0089】
その後、各実施例、比較例において以下の操作を行った。
【0090】
[実施例1]
初期印字後、イエローインク1を1吐出口につき2000発をブラックインク1のキャップに吐出を行い、その後、キャッピングを行った。
【0091】
[実施例2]
初期印字後、ブラックインク1のキャップでイエローインク1を吸引した状態を擬似的に再現するため、イエローインク1をブラックインク1のキャップに0.5ml滴下し、その後、キャッピングを行った。
【0092】
<比較例1>
初期印字後、そのままキャッピングを行った(ブラックインク1のキャップにはブラックインク1が付与されている)。
【0093】
<比較例2>
初期印字後、マゼンタインク1を1吐出口につき2000発をブラックインク1のキャップに吐出を行い、その後空吸引を行った。ブラックキャップへのマゼンタインクの吐出、空吸引の一連の操作を3サイクル繰り返した後、キャッピングを行なった(ブラックインク1のキャップには、主にマゼンタインクが付与されている)。
【0094】
実施例、比較例の各操作後、温度30℃、相対湿度10%の環境下に放置した。放置期間は1週間、2週間、1箇月で行った。
【0095】
それぞれの放置期間後、再び印字を行い初期印字と比較した。尚、実施例、比較例の何れにおいても、放置後の印字の前に、従来から行われている回復操作として、1吐出口につき100発の予備吐出を行った。
【0096】
結果は、ブラックキャップにイエローインク1を付与してキャップした実施例では、1箇月の放置でも印字不良が発生することはなかった。しかし、比較例2では1週間程度で印字不良が発生し、ブラックインク1をキャップに付与した比較例2では、2週間程度で印字不良が発生した。
【0097】
以上の結果は、実施例では、放置期間中にキャップ内のイエローインクからアンモニアが十分に補充され、ブラックインク1の色材が安定なまま維持されたためと考えられる。これに対し、比較例2では、放置期間中にブラックインク1の吐出口からブラックインク1のカウンターイオンのアンモニアが揮発し、ブラックインク1の色材が不安定になり、従来から行われている予備吐出だけでは回復できなかったために印字不良が発生したものと考えられる。又、キャップにブラックインク1を付与した比較例1では、ブラックインク1からカウンターイオンが補充されるため比較例2よりは良好な結果を示しているが、ブラックインク1から補充されるカウンターイオンだけでは不十分なため、実施例ほどの十分な効果が得られなかったものと考えられる。
【0098】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、揮発性のカウンターイオンを有し該カウンターイオンが揮発することによって水への溶解性あるいは分散性が低下する色材を含有するインクを用いるインクジェット記録装置において、例えば、長時間使用されずにいた場合等に、前記色材の水への溶解性或は分散性が低下することなく、且つ、記録装置に大型化、高コスト化を招くことなく、安定的な記録状態を長期間好維持することが可能であるインクジェット記録装置のメンテナンス方法及びそれを用いたインクジェット記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るインクジェット記録装置の一例を示す概略斜視図である。
【図2】(a)は本発明に係る実施例におけるカラーインクジェット記録方法が実施若しくは適用されるインクジェット記録装置に好適な記録ヘッドカートリッジの斜視図、(b)はその分解斜視図である。
【図3】図2に示す記録ヘッドカートリッジの構成を示す分解斜視図である。
【図4】図2に示した記録ヘッドカートリッジを底面側から眺めた斜視図である。
【符号の説明】
51 給紙部
52 紙送りローラ
53 排紙ローラ
61 ブレード
62 キャップ
63 インク吸収体
64 吐出回復部
65 記録ヘッド
66 キャリッジ
67 ガイド軸
68 モータ
69 ベルト
H1000 記録ヘッドカートリッジ
H1001 記録ヘッド
H1002 記録素子ユニット
H1003 インク供給ユニット
H1900 インクタンク
H2000 タンクホルダ
Claims (14)
- 揮発性のカウンターイオンを有し該カウンターイオンが揮発することによって水への溶解性或は分散性が低下する色材を含有するインク(A)と、少なくともインクAを吐出する吐出口を覆うためのキャップ(A)とを用いるインクジェット記録装置のメンテナンス方法において、
キャップAに少なくとも揮発性成分を含有する成分を付与する方法を含むことを特徴とするインクジェット記録装置のメンテナンス方法。 - 前記インクAの色材が有する揮発性カウンターイオンは、アンモニウムイオン又は有機アンモニウムイオンであることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置のメンテナンス方法。
- 前記キャップAに付与する揮発性成分は、アンモニア又は有機アミンであることを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット記録装置のメンテナンス方法。
- 前記揮発性成分がインクAに溶解した結果、インクAが含有する該色材のカウンターイオンとして作用する成分であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のインクジェット記録装置のメンテナンス方法。
- 前記キャップAへの、揮発性成分を含有する成分の付与方法が吐出であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のインクジェット記録装置のメンテナンス方法。
- 前記キャップAへの、揮発性成分を含有する成分の付与方法が吸引であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のインクジェット記録装置のメンテナンス方法。
- 揮発性のカウンターイオンを有し、該カウンターイオンが揮発することによって水への溶解性或は分散性が低下する色材を含有するインク(A)と、インクAに溶解した結果、インクAが含有する該色材のカウンターイオンとして作用する揮発性成分を含有するインク(B)から成るインクセットを少なくとも用い、且つ、少なくともインクAを吐出する吐出口を覆うためのキャップ(A)を用いたインクジェット記録装置のメンテナンス方法において、
キャップAに少なくともインクBを付与する方法を含むことを特徴とするインクジェット記録装置のメンテナンス方法。 - 揮発性のカウンターイオンを有し、該カウンターイオンが揮発することによって水への溶解性或は分散性が低下する色材を含有するインク(A)と、少なくともインクAを吐出する吐出口を覆うためのキャップ(A)とを用いるインクジェット記録装置において、
キャップAに、少なくとも揮発性成分を含有する成分を付与するメンテナンス方法を含むことを特徴とするインクジェット記録装置。 - 前記インクAの色材が有する揮発性カウンターイオンは、アンモニウムイオン又は有機アンモニウムイオンであることを特徴とする請求項8記載のインクジェット記録装置。
- 前記キャップAに付与する揮発性成分は、アンモニア又は有機アミンであることを特徴とする請求項8又は9記載のインクジェット記録装置。
- 前記揮発性成分がインクAに溶解した結果、インクAが含有する該色材のカウンターイオンとして作用する成分であることを特徴とする請求項8〜10の何れかに記載のインクジェット記録装置。
- 前記キャップAへの、揮発性成分を含有する成分の付与方法が吐出であることを特徴とする請求項8〜11の何れかに記載のインクジェット記録装置。
- 前記キャップAへの、揮発性成分を含有する成分の付与方法が吸引であることを特徴とする請求項8〜11の何れかに記載のインクジェット記録装置。
- 揮発性のカウンターイオンを有し該カウンターイオンが揮発することによって水への溶解性或は分散性が低下する色材を含有するインク(A)と、インクAに溶解した結果、インクAが含有する該色材のカウンターイオンとして作用する揮発性成分を含有するインク(B)から成るインクセットを少なくとも用い、且つ、少なくともインクAを吐出する吐出口を覆うためのキャップ(A)を用いたインクジェット記録装置において、
キャップAに少なくともインクBを付与するメンテナンス方法を含むことを特徴とするインクジェット記録装置。
Priority Applications (1)
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JP2003050943A JP2004255800A (ja) | 2003-02-27 | 2003-02-27 | インクジェット記録装置のメンテナンス方法及びそれを用いたインクジェット記録装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2003050943A JP2004255800A (ja) | 2003-02-27 | 2003-02-27 | インクジェット記録装置のメンテナンス方法及びそれを用いたインクジェット記録装置 |
Publications (1)
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JP2004255800A true JP2004255800A (ja) | 2004-09-16 |
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Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2003050943A Withdrawn JP2004255800A (ja) | 2003-02-27 | 2003-02-27 | インクジェット記録装置のメンテナンス方法及びそれを用いたインクジェット記録装置 |
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Country | Link |
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2003
- 2003-02-27 JP JP2003050943A patent/JP2004255800A/ja not_active Withdrawn
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