JP2004254352A - 動圧気体軸受けモータ及びこれを備えた磁気ディスク駆動装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】軸受およびこの軸受を備えたモータ、さらにこのモータを備えた装置に悪影響を及ぼすことなく回転部材と静止部材とを導通させることのできる動圧気体軸受けモータおよび磁気ディスク駆動装置を提供することにある。
【解決手段】シャフトを有する静止部材2と、動圧気体軸受けとなる微小間隙を介してシャフトと対向するスリーブを有する回転部材3と、静止部材に取り付けられたステータ4と、ステータ4と対向するように回転部材3に取り付けられたマグネット5とを備えた動圧気体軸受けモータ1において、一端が静止部材2に取り付けられ、他端が電気的制御に基づいて変位して回転部材3と接触することにより前記静止部材2と回転部材3とを導通させるバイモルフ変位素子7等の導通手段を備えることを特徴とする。
【選択図】図1
【解決手段】シャフトを有する静止部材2と、動圧気体軸受けとなる微小間隙を介してシャフトと対向するスリーブを有する回転部材3と、静止部材に取り付けられたステータ4と、ステータ4と対向するように回転部材3に取り付けられたマグネット5とを備えた動圧気体軸受けモータ1において、一端が静止部材2に取り付けられ、他端が電気的制御に基づいて変位して回転部材3と接触することにより前記静止部材2と回転部材3とを導通させるバイモルフ変位素子7等の導通手段を備えることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ハードディスクなどの磁気ディスクを回転させるモータや、ポリゴンミラーを搭載したモータのような高速で高精度回転が要求される動圧気体軸受けモータ及びこれを備えた磁気ディスク駆動装置に属する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】特開平5−288214号公報
【特許文献2】特開平9−144758号公報
【特許文献3】特開2001−153125号公報
【特許文献4】特開2000−329141号公報
【特許文献5】特開2001−146915号公報
高速で高精度回転が要求されるモータとして、例えばハードディスクのような磁気ディスクを回転させるモータがある。この磁気ディスクを回転させるモータの軸受け手段として、安定した回転運動が得られる動圧流体軸受けが普及し始めている。これは、一般的に、円柱状のシャフトの一端又は両端に円板状のスラスト板を配置してなる第1の部材と、シャフトの外周面及びスラスト板の平面に各々ラジアル間隙及びスラスト間隙を介して対向して配置してなる円筒状の第2の部材とからなり、それら間隙を形成する面(軸受面という)にヘリングボーン状やスパイラル状の動圧発生用溝が形成され、それら間隙には潤滑流体が介在したものである。そして、第1及び第2の部材の何れか一方が他方に対して相対的に回転すると、上記潤滑流体が動圧発生用溝のポンプ作用でラジアル間隙とスラスト間隙のそれぞれにおいて流体圧力を増し、それとともに第1及び第2の部材の回転側が静止側に対して浮上し、回転中に両者の非接触状態が保たれる。その潤滑流体には、油のような液体が使用される場合(動圧液体軸受けという)と、空気のような気体が使用される場合(動圧気体軸受けという)とがある。
【0003】
動圧気体軸受けの場合は動圧液体軸受けの場合に比べて、油の飛散に起因する汚染の問題が無い点で優れている。反面、動圧気体軸受けは、モータの起動時(停止中のモータが回転し始めて回転部材が浮上するまでの状態)、および停止時(回転中のモータが減速して停止するまでの状態)に軸受面が摺動するときの摩擦によって発生する静電気の問題がある。
この静電気は、潤滑流体が気体であるため摺動を避けられず発生を阻止することは困難である。静電気を放置すると、回転中に回転部材が浮上して非接触状態となったときに回転部材に電荷が蓄積され、この動圧気体軸受が磁気ディスク駆動用モータに使用されると回転部材に搭載された磁気ディスクに伝わり、磁気ヘッドとの間で放電し、磁気ヘッドが破損すると同時に磁気ディスクに記録された情報を破壊したり情報の書き込みが不能となる可能性をもたらす。また、回転部材は、高速回転するため回転中に気体との摩擦により静電気を帯び、これが上記と同様に磁気ディスクへの不具合をもたらすこともある。
そこで、このような事態を防止するために回転部材に蓄積された電荷をグランドに逃がす手法として、シャフトの上端面に軸方向にへこんだ穴を設け、その穴にバネを配置し、バネの上に球状の導電体を取り付けて回転部材に付勢したモータが提案されている(特許文献1)。通常、シャフトを含む静止部材は接地されていることから、バネの弾力によって導電体を回転部材に押しつけるとともに、導電体を介してシャフトと回転部材を導通させ、回転部材の接地接続を図ったものである。バネと球状の導電体の組み合わせに代えて、バネを介した導電性ブラシを使用したり(特許文献2)、導電性のリングをその中心軸線がシャフトと直交するように配置したり、導電性の繊維の束を配置したりする構造も提案されている(いずれも特許文献3)。また、特許文献1または2と同様の位置で、導通手段に磁性流体を使用する動圧気体軸受けも提案されている(特許文献4または5)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、導電性の球、リング、繊維束などの固体を介して静止部材と回転部材を導通させる上記従来の構成では、それらの静止部材及び回転部材の互いの接触抵抗に起因する回転トルクの増加により駆動用の電流値が増加する。また、その接触面が摩耗して摩耗粉が発生すると、軸受内に蓄積され回転運動の抵抗となったり、軸受外に流出して回転部材に搭載された磁気ディスクに到達して、磁気ヘッドの情報の読み書きが不安定となる(場合によっては読み書き不能になる)。また、摩耗の進行に応じて回転部材の浮上量に影響して軸方向位置が変わり、回転部材に搭載された磁気ディスクの軸方向位置も変動するため、磁気ヘッドによる情報の読み書きが不安定となる(場合によっては読み書き不能になる)。さらに、磁性流体を介して導通させる上記従来のもう一つの構成では、温度上昇による膨張や衝撃により磁性流体の飛散の問題がある(磁性流体が磁気ディスクに付着して読み書き不能になる。また、磁性流体が軸受内に浸入して軸受性能の悪化につながることもある)。何れの手法とも、回転部材と静止部材との間に導通手段が常時接触する構成であることから発生する問題であり、磁気ディスク駆動用のように高速で回転し高精度が要求されるモータでは、致命的な不具合を引き起こす。
このような静電気の問題は、モータが磁気ディスク駆動用である場合を例に説明したが、他の用途であっても回転部材が帯電していると不具合の原因になることがあるため、できるだけ帯電しないようにすることが望ましい。
それ故、この発明の課題は、軸受およびこの軸受を備えたモータ、さらにこのモータを備えた装置に悪影響を及ぼすことなく回転部材と静止部材とを導通させることのできる動圧気体軸受けモータおよび磁気ディスク駆動装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
その課題を解決するために、この発明の動圧気体軸受けモータは、
シャフトを有する静止部材と、動圧気体軸受けとなる微小間隙を介してシャフトと対向するスリーブを有する回転部材と、静止部材に取り付けられたステータと、ステータと対向するように回転部材に取り付けられたマグネットとを備えた動圧気体軸受けモータにおいて、
一端が静止部材に取り付けられ、他端が電気的制御に基づいて変位して回転部材と接触することにより前記静止部材と回転部材とを導通させる導通手段を備えることを特徴とする。
【0006】
この発明によれば、静止部材と回転部材との導通手段を電気的制御に基づいて変位させるので、モータの動作状態に関係なく接触による導通と非接触による絶縁の切替を選択的かつ瞬時に行うことができる。従って、起動時、停止直前時、回転中における異常接触、及び回転中における回転部材と気体との摩擦発生時などのように静電気が発生して蓄積された電荷が許容限界に近くなった時に応じて導通させ、回転部材が帯びた電荷を静止部材を経てグランドに放出させることができる。換言すると、静電気が発生していない時や、回転部材が電荷を帯びていても悪影響を及ぼさない量(つまり許容限界の範囲)である時は、その導通手段を回転部材に接触させないようにすることができる。また、導通の切替は、電気的制御であるため導通手段の変位動作を瞬時に行え、変位動作の遅れにより電荷量が許容限界を超えたり、電荷が放出後であるため接触させる必要がないのにもかかわらず接触状態のままであるといった無駄な状態がない。このように、導通手段は回転部材に対して必要なときのみ接触するため、磨耗の問題や電流値の増大といった不具合を大幅に低減することができる。導通手段としては、典型的には圧電素子が好ましく挙げられる。軽量且つ小型であるうえ、電子部品であるにもかかわらず電力をあまり消費しないし、周辺部品に磁気的影響を与えないからである。特に前記回転部材が、スリーブの外側に嵌合されシャフトの自由端側の端部において閉じた円筒状のハブを有し、前記圧電素子がシャフトの自由端に取り付けられていると、シャフトが回転中心に位置することから回転部材との接触面積が最小となり、摩擦トルクが一層減る。圧電素子のなかでもバイモルフ変位素子が好ましい。素子が小さい割に変位量を大きく取ることができるからである。
以上のことから、上記の動圧気体軸受けモータと、前記回転部材に搭載された磁気ディスクと、磁気ディスクに対して情報を読み書きする磁気ヘッドとを備えることを特徴とする磁気ディスク駆動装置は、内部が常に清浄に保たれ、しかも異常に静電気を蓄積することがない。従って、情報記録の信頼性に優れる。
【0007】
【発明の実施の形態】
この発明の実施形態を図面と共に説明する。図1は、実施形態に係るハードディスク装置を模式的に示す回転中心軸方向(以下、軸方向という。)断面図である。ハードディスク装置10は、内部が清浄に保たれたハウジング11と、ハウジング11内に設置された動圧軸受けモータ(以下、単にモータという。)1及びアクチュエータ12を備えている。モータ1には複数枚(図示では4枚)の磁気ディスク6が軸方向に搭載されている。磁気ディスク6はモータ1の駆動によって所定方向に回転する。他方、アクチュエータ12には、磁気ディスク6に対して磁気ヘッド13を有するアーム14が径方向に延びるように取り付けられている。磁気ヘッド13は、この装置の非使用時はアーム14とともに磁気ディスク6から離れた位置に退避しており、モータ1の駆動とともにアクチュエータ12の作動によって旋回し、磁気ディスク6に接近して情報を読み書きする。
【0008】
図2は、そのハードディスク装置10に用いられているモータ1を示す軸方向断面図である。但し、破断線X−Xを境として一部は正面図で示す。モータ1は、ハウジング11の内面に固定された静止部材2と、後述の動圧気体軸受けを介して静止部材2に対して回転可能に支持されている回転部材3と、ステータ4と、マグネット5と、バイモルフ変位素子7とを備えている。
静止部材2は、凹部を有するほぼ円盤状のブラケット21、インナーシャフト22、アウターシャフト23、上スラスト板24及び下スラスト板25から主になる。インナーシャフト22とブラケット21は、後述する回転部材3の電荷をグランドに放出しやすくするために導電性材料である。ブラケット21の中央には図略の貫通孔が形成され、その孔の周縁が肉厚となってボス21aを形成している。また、ブラケット21は、周縁に肉厚の壁21bを有し、その壁21bの内面にステータ4が取り付けられている。ステータ4のコイルは、ブラケット21の所定部に設けられたフレキシブル回路基板(図示省略)を通じて外部電源から電流が供給される。インナーシャフト22は、円柱状で、下端が上記貫通孔に嵌合されてボス21aによって支持されている。アウターシャフト23は、円筒状で、ボス21aより露出したインナーシャフト22の外周に嵌合されている。下スラスト板25は、アウターシャフト23よりも径方向に張り出しており、アウターシャフト23の下端面とボス21aとで挟持するようにインナーシャフト22に嵌合されている。上スラスト板24もアウターシャフト23よりも径方向に張り出しており、アウターシャフト23の上端面に接してインナーシャフト22に嵌合されている。そして、インナーシャフト22の上端面にバイモルフ変位素子7が図略の導電性接着剤にて取り付けられている。
【0009】
回転部材3は、上端が閉じたほぼ円筒状で下端付近の外周面に鍔31aを有するハブ31、ハブ31の内周面に嵌合された円筒状のスリーブ32、クランパ33a及び複数(図示では4個)のスペーサ33からなる。スリーブ32は、その上下端面が微小間隙(以下、スラスト間隙という。)32a,32cを介して上下のスラスト板24,25と対向するように挟まれるとともに、その内周面が微小間隙(以下、ラジアル間隙という。)32bを介してアウターシャフト23の外周面と対向している。ハブ31は、スリーブ32の上下に露出する内周面にて上下のスラスト板24,25及びボス21aを包囲し、鍔31aより下の外周面にてマグネット5を保持している。マグネット5はステータ4と対向している。スペーサ33は、ハブ31の鍔31aより上位の外周面に各々張り出して磁気ディスク6同士の軸方向間隔を定めるものである。クランパ33aは、ハブ31に対して複数(図示では4枚)の磁気ディスク6およびスペーサ33を固定するための固定手段である。
【0010】
上スラスト板24の下面及び下スラスト板25の上面には、各々内側から外側に向かって湾曲した深さ数μmの多数の溝24a,25aが周方向に同一間隔をあけて形成されている。これらの溝24a,25aは、回転部材3の回転時にスラスト間隙32aに存在する空気を内側に向かって送るポンプ作用を生じ、それによってスラスト間隙32a,32cの動圧を発生させ、静止部材2と回転部材3との軸方向における非接触状態を保つ。また、アウターシャフト23の外周面の上半分及び下半分には、各々「く」の字状に曲がった深さ数μmの多数の溝23a,23bが周方向に同一間隔をあけて形成されている。これらの溝23a,23bは、回転部材3の回転時にラジアル間隙32bに存在する空気を各溝の折り返し点に向かって送るポンプ作用を生じ、それによってラジアル間隙32bの動圧を発生させ、静止部材2と回転部材3との径方向における非接触状態を保つ。こうしてスラスト間隙32a,32c及びラジアル間隙32bを構成する部位が、動圧気体軸受けとして機能する。
【0011】
バイモルフ変位素子7は、図3に図2のA部拡大図で示すように、ともにチタン酸ジルコン酸鉛からなる2枚の分極されたセラミックス板7a、7bを金属膜からなる共通電極7cを介して貼り合わせたものである。そして、セラミックス板7aの上面及び下面に各々上電極7d及び下電極7eがいずれもニッケル鍍金等により形成されている。上電極7dの上面、下電極7eの下面及びセラミックス板7a,7bの側面(図3の左側)には樹脂等により絶縁膜7gが形成され、さらに、絶縁膜7gの外側にニッケル鍍金等による金属膜7kが形成されている。前記導電性接着剤7hは、金属膜7kの右半分及びそれに対向するインナーシャフト22の上端面にのみ塗布されており、それによりバイモルフ変位素子7は片持ち梁式に固定されていることとなる。これにより、バイモルフ変位素子7の上面とインナーシャフト22とが導通可能な構成となっている。絶縁層7gは、バイモルフ変位素子7の導通部と、回転部材3とグランドとの導通部とがショートするのを阻止するために設けられている。金属膜7kは、ハブ31と導電性接着剤7hまたはインナーシャフト22との導通を図るためと、バイモルフ変位素子7の保護のために設けられている。
そして、共通電極7cが電源7fを介して電極7d,7eにそれぞれ接続されていて、バイモルフ変位素子7を制御する制御回路(図略)が電源7f付近に設けられる。尚、電極7cと電源7fを電気的に接続する配線は、例えば、インナーシャフト22に設けられた貫通孔に絶縁を保って通す。セラミックス板7a、7bは、変位方向が互いに異なり、それぞれに所定の電圧を加えるとセラミックス板7aは縮む方向、セラミックス板7bは伸びる方向に変位しようとする。従って、上記の電圧を加えると、バイモルフ変位素子7全体としては導電性接着剤7hで固着されていない左端が図4に示すように上方に変位するように屈曲し、左端がハブ31の下面と接触する。その電圧を解除するとそれぞれセラミック板7a,7bは原形に復帰しバイモルフ変位素子7の変位はなくなる。
【0012】
次にモータ1の動作について説明する。
ステータ4のコイルに給電 すると、ステータ4とマグネット5との間で磁力が発生し、この磁力によりハブ31がスリーブ32とともに回転し始める。すると上記の通りスラスト間隙32a,32c及びラジアル間隙32bに動圧が発生し、回転部材3が静止部材2に対して非接触状態を保って回転し続ける。
モータの動圧気体軸受けは、停止中の回転部材が浮上して定格回転するまで起動時、および回転部材が定格回転から停止するまでの停止時、さらに定格回転中に任意に外部からモータに衝撃が加わった時に、軸受面が摺動して静電気が発生し、電荷が回転部材3に蓄積されたまま回転部材3が浮上することがある。また、回転中、回転部材3は空気との摩擦によって静電気を帯びて回転部材3に蓄積されることもある。
一方、バイモルフ変位素子7の制御回路には、次の設定がされている。即ち、モータの起動時および停止時は一定時間に電圧が加えられ、定格回転中では、定期的に電圧が加えられる。電圧が加えられると、バイモルフ変位素子7は変位して金属膜7kの左上部がハブ31に接触する。回転部材3に帯電した電荷は、金属膜7kから導電性接着剤7h、インナーシャフト22を経由してグランドに放出される。バイモルフ変位素子7への電圧が解除されると、バイモルフ変位素子7はその左端が下降して再び真っ直ぐになる。
【0013】
この一連の回転部材3の電圧の推移をグラフにして示すと図5のようになる。図5の実線はこの実施形態の推移を示し、一点鎖線は従来例として回転部材と静止部材とを導通する手段がない構成の推移を示す。従来例では、起動時に軸受面の摺動により静電気が発生して回転部材が帯電する。このとき、軸受面が接触するため一部の電荷はグランドに放出されて電圧はそれ程大きくならないが(一点鎖線▲1▼に相当)、場合によっては許容限界電圧を超えてしまうこともある(一点鎖線▲2▼に相当)。定格回転時は、高速回転するため回転部材と気体との摩擦による静電気が発生し、これにより回転部材はさらに電圧が上昇する。停止時、軸受面が再び摺動することで放電し若干、電圧は下がる。このように従来例では、起動時から許容限界電圧を超えやすい状態にあり、静電気による不具合が極めて発生しやすい状況にあることがわかる。一方、この実施形態では、起動時にバイモルフ変位素子7が作動して回転部材3と静止部材2とが導通しているため、起動時の電圧は実質的にゼロとなる。定格回転時は、回転部材と気体との摩擦による静電気が回転部材に蓄積されるため電圧が上がるが、定期的にバイモルフ変位素子7が作動しているため、許容限界電圧を超えることはない。また、図示はしていないが、仮に、定格回転中に外部衝撃により軸受面が摺動して静電気が発生して電圧が上がることがあっても、バイモルフ変位素子7が定期的に作動しているため、許容限界電圧を超えることはほとんどない。この許容限界電圧を超えているときは、磁気ヘッドの破壊や磁気ディスクとの放電により情報の読み書きが不安定となる状態に相当する。なお、図5に示す実施形態および従来例とも説明のために典型的な場合を示すものであって静電気の発生の有無またはその大きさは、条件によって異なる場合がある。
【0014】
従って、この実施形態では、起動時および停止時、さらに定格回転中に回転部材3に溜まった静電気は、グランドに放出され許容限界電圧を超えることはない。起動時及び停止時に電圧をかける一定時間とは、回転部材3に静電気が発生する時間を実験等で予めある程度特定して、少なくともその摺動によって静電気が発生している間とするとよい。また、定格回転中の定期的とは任意であるが、定格回転中の回転部材における電圧の上昇傾向をある程度実験で特定し、許容限界電圧を超えるまでの時間を考慮して設定するとよい。また、外部衝撃の可能性は、例えば、磁気ディスク駆動装置が携帯型で使用される場合はそれだけ外部衝撃の可能性が高いため導通するまでの休止時間を短くして頻繁に導通させ、据え置き型で使用される場合はその可能性が低いので休止時間を長くするよい。また、磁気ディスク駆動装置の信頼性を上げるために頻繁に導通させるようにしてもよい。何れの場合も、磁気ディスク6とヘッドとの間で放電する前に静電気がグランドに移動するのは瞬間であるから、バイモルフ変位素子7の作動時間も僅かで足りる。
【0015】
このようなモータの構成であることから次のような特徴がある。
・ 電気的制御によって回転部材3の電荷を放出するため、従来のように常時接触する場合に比べて、モータの動作状態に関係なく選択的且つ瞬時に静電気による不具合を阻止することができる。
・ バイモルフ変位素子7と回転部材3と接触時間は僅かであるため、ほとんど回転部材3の回転運動の抵抗とならない(つまり、ステータへの電流値が増加しない)。
・ バイモルフ変位素子7と回転部材3と接触時間は僅かであるため、従来のように常時接触する場合に比べて、バイモルフ変位素子7の金属膜7kおよびハブ31側の接触部の磨耗がほとんど発生しない。
・ バイモルフ変位素子7が回転部材3の回転中心に位置するため、接触面積が小さくほとんど回転部材3の回転運動の抵抗とならない(つまり、ステータへの電流値が増加しないし、磨耗量も少ない)。
・ 磨耗がほとんどないため、これに起因する不具合(軸受間隙に磨耗粉が蓄積され回転不良を起こすこと、磁気ヘッドの情報の読み書きが不安定となる(場合によっては読み書き不能となる)こと、回転部材3の軸方向位置が変動すること。)が発生しにくい。
・ バイモルフ変位素子7のハブ31との接触時間は僅かであるため、その作動による消費電力は僅かである。
以上のような種々の特徴を有するモータ1を備えたハードディスク装置10では、回転部材3は常時清浄な空間で安定した回転運動をするため、磁気ヘッドの情報の読み書きが正確になされ高性能なものとなる。
【0016】
尚、この実施形態ではバイモルフ変位素子7の圧電材料としてセラミックスを示したが、バイモルフ変位素子7自体は、公知の素子であることから、同様の動作をするものであれば高分子材料といった材料、取付状態、寸法等の変更はされてもよい。また、バイモルフ変位素子7を動作させることができれば、その回路構成または配線箇所は上記に限定されない。また、バイモルフ変位素子7は、上記では制御回路を簡略化するために定型的な動作となるように制御されているが、例えば、回転部材3に蓄積された電荷を常時検出する手段を設け、その検出結果に基づいて電荷量が許容限界にあるかどうかを判別して導通の切替をするようにしてもよい。さらに、この実施形態では、モータを磁気ディスク駆動装置に適用した場合を例示したが、その他に例えば、レーザービームプリンタに使用されるポリゴンミラーを搭載したモータに適用することもできる。
【0017】
【発明の効果】
以上のように、この発明の動圧気体軸受けモータによれば、回転部材に蓄積される静電気量が許容限界を超えないようにできるので、回転部材が常時安定した回転運動をする。特に、導通手段が電気的制御に基づいて制御されるため、モータの動作状態に関係なく必要なときにのみ導通させることができ、動圧気体軸受およびモータに悪影響を及ぼすことない。
また、このモータを磁気ディスク駆動装置に適用した場合、磁気ディスクとヘッドとの間で放電することがなく情報記録の信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係るハードディスク装置を模式的に示す回転中心軸方向断面図である。
【図2】上記ハードディスク装置に用いられているモータを示す軸方向断面図である。
【図3】図2のA部拡大図である。
【図4】上記モータのバイモルフ変位素子の作動時を示す軸方向断面図である。
【図5】実施形態と従来とのモータにおいて、回転部材に帯電する電圧をモータの状態によって変化する推移を模式的に示したグラフである。
【符号の説明】
1 モータ
2 静止部材
3 回転部材
4 ステータ
5 マグネット
6 磁気ディスク
7 バイモルフ変位素子
【発明の属する技術分野】
この発明は、ハードディスクなどの磁気ディスクを回転させるモータや、ポリゴンミラーを搭載したモータのような高速で高精度回転が要求される動圧気体軸受けモータ及びこれを備えた磁気ディスク駆動装置に属する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】特開平5−288214号公報
【特許文献2】特開平9−144758号公報
【特許文献3】特開2001−153125号公報
【特許文献4】特開2000−329141号公報
【特許文献5】特開2001−146915号公報
高速で高精度回転が要求されるモータとして、例えばハードディスクのような磁気ディスクを回転させるモータがある。この磁気ディスクを回転させるモータの軸受け手段として、安定した回転運動が得られる動圧流体軸受けが普及し始めている。これは、一般的に、円柱状のシャフトの一端又は両端に円板状のスラスト板を配置してなる第1の部材と、シャフトの外周面及びスラスト板の平面に各々ラジアル間隙及びスラスト間隙を介して対向して配置してなる円筒状の第2の部材とからなり、それら間隙を形成する面(軸受面という)にヘリングボーン状やスパイラル状の動圧発生用溝が形成され、それら間隙には潤滑流体が介在したものである。そして、第1及び第2の部材の何れか一方が他方に対して相対的に回転すると、上記潤滑流体が動圧発生用溝のポンプ作用でラジアル間隙とスラスト間隙のそれぞれにおいて流体圧力を増し、それとともに第1及び第2の部材の回転側が静止側に対して浮上し、回転中に両者の非接触状態が保たれる。その潤滑流体には、油のような液体が使用される場合(動圧液体軸受けという)と、空気のような気体が使用される場合(動圧気体軸受けという)とがある。
【0003】
動圧気体軸受けの場合は動圧液体軸受けの場合に比べて、油の飛散に起因する汚染の問題が無い点で優れている。反面、動圧気体軸受けは、モータの起動時(停止中のモータが回転し始めて回転部材が浮上するまでの状態)、および停止時(回転中のモータが減速して停止するまでの状態)に軸受面が摺動するときの摩擦によって発生する静電気の問題がある。
この静電気は、潤滑流体が気体であるため摺動を避けられず発生を阻止することは困難である。静電気を放置すると、回転中に回転部材が浮上して非接触状態となったときに回転部材に電荷が蓄積され、この動圧気体軸受が磁気ディスク駆動用モータに使用されると回転部材に搭載された磁気ディスクに伝わり、磁気ヘッドとの間で放電し、磁気ヘッドが破損すると同時に磁気ディスクに記録された情報を破壊したり情報の書き込みが不能となる可能性をもたらす。また、回転部材は、高速回転するため回転中に気体との摩擦により静電気を帯び、これが上記と同様に磁気ディスクへの不具合をもたらすこともある。
そこで、このような事態を防止するために回転部材に蓄積された電荷をグランドに逃がす手法として、シャフトの上端面に軸方向にへこんだ穴を設け、その穴にバネを配置し、バネの上に球状の導電体を取り付けて回転部材に付勢したモータが提案されている(特許文献1)。通常、シャフトを含む静止部材は接地されていることから、バネの弾力によって導電体を回転部材に押しつけるとともに、導電体を介してシャフトと回転部材を導通させ、回転部材の接地接続を図ったものである。バネと球状の導電体の組み合わせに代えて、バネを介した導電性ブラシを使用したり(特許文献2)、導電性のリングをその中心軸線がシャフトと直交するように配置したり、導電性の繊維の束を配置したりする構造も提案されている(いずれも特許文献3)。また、特許文献1または2と同様の位置で、導通手段に磁性流体を使用する動圧気体軸受けも提案されている(特許文献4または5)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、導電性の球、リング、繊維束などの固体を介して静止部材と回転部材を導通させる上記従来の構成では、それらの静止部材及び回転部材の互いの接触抵抗に起因する回転トルクの増加により駆動用の電流値が増加する。また、その接触面が摩耗して摩耗粉が発生すると、軸受内に蓄積され回転運動の抵抗となったり、軸受外に流出して回転部材に搭載された磁気ディスクに到達して、磁気ヘッドの情報の読み書きが不安定となる(場合によっては読み書き不能になる)。また、摩耗の進行に応じて回転部材の浮上量に影響して軸方向位置が変わり、回転部材に搭載された磁気ディスクの軸方向位置も変動するため、磁気ヘッドによる情報の読み書きが不安定となる(場合によっては読み書き不能になる)。さらに、磁性流体を介して導通させる上記従来のもう一つの構成では、温度上昇による膨張や衝撃により磁性流体の飛散の問題がある(磁性流体が磁気ディスクに付着して読み書き不能になる。また、磁性流体が軸受内に浸入して軸受性能の悪化につながることもある)。何れの手法とも、回転部材と静止部材との間に導通手段が常時接触する構成であることから発生する問題であり、磁気ディスク駆動用のように高速で回転し高精度が要求されるモータでは、致命的な不具合を引き起こす。
このような静電気の問題は、モータが磁気ディスク駆動用である場合を例に説明したが、他の用途であっても回転部材が帯電していると不具合の原因になることがあるため、できるだけ帯電しないようにすることが望ましい。
それ故、この発明の課題は、軸受およびこの軸受を備えたモータ、さらにこのモータを備えた装置に悪影響を及ぼすことなく回転部材と静止部材とを導通させることのできる動圧気体軸受けモータおよび磁気ディスク駆動装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
その課題を解決するために、この発明の動圧気体軸受けモータは、
シャフトを有する静止部材と、動圧気体軸受けとなる微小間隙を介してシャフトと対向するスリーブを有する回転部材と、静止部材に取り付けられたステータと、ステータと対向するように回転部材に取り付けられたマグネットとを備えた動圧気体軸受けモータにおいて、
一端が静止部材に取り付けられ、他端が電気的制御に基づいて変位して回転部材と接触することにより前記静止部材と回転部材とを導通させる導通手段を備えることを特徴とする。
【0006】
この発明によれば、静止部材と回転部材との導通手段を電気的制御に基づいて変位させるので、モータの動作状態に関係なく接触による導通と非接触による絶縁の切替を選択的かつ瞬時に行うことができる。従って、起動時、停止直前時、回転中における異常接触、及び回転中における回転部材と気体との摩擦発生時などのように静電気が発生して蓄積された電荷が許容限界に近くなった時に応じて導通させ、回転部材が帯びた電荷を静止部材を経てグランドに放出させることができる。換言すると、静電気が発生していない時や、回転部材が電荷を帯びていても悪影響を及ぼさない量(つまり許容限界の範囲)である時は、その導通手段を回転部材に接触させないようにすることができる。また、導通の切替は、電気的制御であるため導通手段の変位動作を瞬時に行え、変位動作の遅れにより電荷量が許容限界を超えたり、電荷が放出後であるため接触させる必要がないのにもかかわらず接触状態のままであるといった無駄な状態がない。このように、導通手段は回転部材に対して必要なときのみ接触するため、磨耗の問題や電流値の増大といった不具合を大幅に低減することができる。導通手段としては、典型的には圧電素子が好ましく挙げられる。軽量且つ小型であるうえ、電子部品であるにもかかわらず電力をあまり消費しないし、周辺部品に磁気的影響を与えないからである。特に前記回転部材が、スリーブの外側に嵌合されシャフトの自由端側の端部において閉じた円筒状のハブを有し、前記圧電素子がシャフトの自由端に取り付けられていると、シャフトが回転中心に位置することから回転部材との接触面積が最小となり、摩擦トルクが一層減る。圧電素子のなかでもバイモルフ変位素子が好ましい。素子が小さい割に変位量を大きく取ることができるからである。
以上のことから、上記の動圧気体軸受けモータと、前記回転部材に搭載された磁気ディスクと、磁気ディスクに対して情報を読み書きする磁気ヘッドとを備えることを特徴とする磁気ディスク駆動装置は、内部が常に清浄に保たれ、しかも異常に静電気を蓄積することがない。従って、情報記録の信頼性に優れる。
【0007】
【発明の実施の形態】
この発明の実施形態を図面と共に説明する。図1は、実施形態に係るハードディスク装置を模式的に示す回転中心軸方向(以下、軸方向という。)断面図である。ハードディスク装置10は、内部が清浄に保たれたハウジング11と、ハウジング11内に設置された動圧軸受けモータ(以下、単にモータという。)1及びアクチュエータ12を備えている。モータ1には複数枚(図示では4枚)の磁気ディスク6が軸方向に搭載されている。磁気ディスク6はモータ1の駆動によって所定方向に回転する。他方、アクチュエータ12には、磁気ディスク6に対して磁気ヘッド13を有するアーム14が径方向に延びるように取り付けられている。磁気ヘッド13は、この装置の非使用時はアーム14とともに磁気ディスク6から離れた位置に退避しており、モータ1の駆動とともにアクチュエータ12の作動によって旋回し、磁気ディスク6に接近して情報を読み書きする。
【0008】
図2は、そのハードディスク装置10に用いられているモータ1を示す軸方向断面図である。但し、破断線X−Xを境として一部は正面図で示す。モータ1は、ハウジング11の内面に固定された静止部材2と、後述の動圧気体軸受けを介して静止部材2に対して回転可能に支持されている回転部材3と、ステータ4と、マグネット5と、バイモルフ変位素子7とを備えている。
静止部材2は、凹部を有するほぼ円盤状のブラケット21、インナーシャフト22、アウターシャフト23、上スラスト板24及び下スラスト板25から主になる。インナーシャフト22とブラケット21は、後述する回転部材3の電荷をグランドに放出しやすくするために導電性材料である。ブラケット21の中央には図略の貫通孔が形成され、その孔の周縁が肉厚となってボス21aを形成している。また、ブラケット21は、周縁に肉厚の壁21bを有し、その壁21bの内面にステータ4が取り付けられている。ステータ4のコイルは、ブラケット21の所定部に設けられたフレキシブル回路基板(図示省略)を通じて外部電源から電流が供給される。インナーシャフト22は、円柱状で、下端が上記貫通孔に嵌合されてボス21aによって支持されている。アウターシャフト23は、円筒状で、ボス21aより露出したインナーシャフト22の外周に嵌合されている。下スラスト板25は、アウターシャフト23よりも径方向に張り出しており、アウターシャフト23の下端面とボス21aとで挟持するようにインナーシャフト22に嵌合されている。上スラスト板24もアウターシャフト23よりも径方向に張り出しており、アウターシャフト23の上端面に接してインナーシャフト22に嵌合されている。そして、インナーシャフト22の上端面にバイモルフ変位素子7が図略の導電性接着剤にて取り付けられている。
【0009】
回転部材3は、上端が閉じたほぼ円筒状で下端付近の外周面に鍔31aを有するハブ31、ハブ31の内周面に嵌合された円筒状のスリーブ32、クランパ33a及び複数(図示では4個)のスペーサ33からなる。スリーブ32は、その上下端面が微小間隙(以下、スラスト間隙という。)32a,32cを介して上下のスラスト板24,25と対向するように挟まれるとともに、その内周面が微小間隙(以下、ラジアル間隙という。)32bを介してアウターシャフト23の外周面と対向している。ハブ31は、スリーブ32の上下に露出する内周面にて上下のスラスト板24,25及びボス21aを包囲し、鍔31aより下の外周面にてマグネット5を保持している。マグネット5はステータ4と対向している。スペーサ33は、ハブ31の鍔31aより上位の外周面に各々張り出して磁気ディスク6同士の軸方向間隔を定めるものである。クランパ33aは、ハブ31に対して複数(図示では4枚)の磁気ディスク6およびスペーサ33を固定するための固定手段である。
【0010】
上スラスト板24の下面及び下スラスト板25の上面には、各々内側から外側に向かって湾曲した深さ数μmの多数の溝24a,25aが周方向に同一間隔をあけて形成されている。これらの溝24a,25aは、回転部材3の回転時にスラスト間隙32aに存在する空気を内側に向かって送るポンプ作用を生じ、それによってスラスト間隙32a,32cの動圧を発生させ、静止部材2と回転部材3との軸方向における非接触状態を保つ。また、アウターシャフト23の外周面の上半分及び下半分には、各々「く」の字状に曲がった深さ数μmの多数の溝23a,23bが周方向に同一間隔をあけて形成されている。これらの溝23a,23bは、回転部材3の回転時にラジアル間隙32bに存在する空気を各溝の折り返し点に向かって送るポンプ作用を生じ、それによってラジアル間隙32bの動圧を発生させ、静止部材2と回転部材3との径方向における非接触状態を保つ。こうしてスラスト間隙32a,32c及びラジアル間隙32bを構成する部位が、動圧気体軸受けとして機能する。
【0011】
バイモルフ変位素子7は、図3に図2のA部拡大図で示すように、ともにチタン酸ジルコン酸鉛からなる2枚の分極されたセラミックス板7a、7bを金属膜からなる共通電極7cを介して貼り合わせたものである。そして、セラミックス板7aの上面及び下面に各々上電極7d及び下電極7eがいずれもニッケル鍍金等により形成されている。上電極7dの上面、下電極7eの下面及びセラミックス板7a,7bの側面(図3の左側)には樹脂等により絶縁膜7gが形成され、さらに、絶縁膜7gの外側にニッケル鍍金等による金属膜7kが形成されている。前記導電性接着剤7hは、金属膜7kの右半分及びそれに対向するインナーシャフト22の上端面にのみ塗布されており、それによりバイモルフ変位素子7は片持ち梁式に固定されていることとなる。これにより、バイモルフ変位素子7の上面とインナーシャフト22とが導通可能な構成となっている。絶縁層7gは、バイモルフ変位素子7の導通部と、回転部材3とグランドとの導通部とがショートするのを阻止するために設けられている。金属膜7kは、ハブ31と導電性接着剤7hまたはインナーシャフト22との導通を図るためと、バイモルフ変位素子7の保護のために設けられている。
そして、共通電極7cが電源7fを介して電極7d,7eにそれぞれ接続されていて、バイモルフ変位素子7を制御する制御回路(図略)が電源7f付近に設けられる。尚、電極7cと電源7fを電気的に接続する配線は、例えば、インナーシャフト22に設けられた貫通孔に絶縁を保って通す。セラミックス板7a、7bは、変位方向が互いに異なり、それぞれに所定の電圧を加えるとセラミックス板7aは縮む方向、セラミックス板7bは伸びる方向に変位しようとする。従って、上記の電圧を加えると、バイモルフ変位素子7全体としては導電性接着剤7hで固着されていない左端が図4に示すように上方に変位するように屈曲し、左端がハブ31の下面と接触する。その電圧を解除するとそれぞれセラミック板7a,7bは原形に復帰しバイモルフ変位素子7の変位はなくなる。
【0012】
次にモータ1の動作について説明する。
ステータ4のコイルに給電 すると、ステータ4とマグネット5との間で磁力が発生し、この磁力によりハブ31がスリーブ32とともに回転し始める。すると上記の通りスラスト間隙32a,32c及びラジアル間隙32bに動圧が発生し、回転部材3が静止部材2に対して非接触状態を保って回転し続ける。
モータの動圧気体軸受けは、停止中の回転部材が浮上して定格回転するまで起動時、および回転部材が定格回転から停止するまでの停止時、さらに定格回転中に任意に外部からモータに衝撃が加わった時に、軸受面が摺動して静電気が発生し、電荷が回転部材3に蓄積されたまま回転部材3が浮上することがある。また、回転中、回転部材3は空気との摩擦によって静電気を帯びて回転部材3に蓄積されることもある。
一方、バイモルフ変位素子7の制御回路には、次の設定がされている。即ち、モータの起動時および停止時は一定時間に電圧が加えられ、定格回転中では、定期的に電圧が加えられる。電圧が加えられると、バイモルフ変位素子7は変位して金属膜7kの左上部がハブ31に接触する。回転部材3に帯電した電荷は、金属膜7kから導電性接着剤7h、インナーシャフト22を経由してグランドに放出される。バイモルフ変位素子7への電圧が解除されると、バイモルフ変位素子7はその左端が下降して再び真っ直ぐになる。
【0013】
この一連の回転部材3の電圧の推移をグラフにして示すと図5のようになる。図5の実線はこの実施形態の推移を示し、一点鎖線は従来例として回転部材と静止部材とを導通する手段がない構成の推移を示す。従来例では、起動時に軸受面の摺動により静電気が発生して回転部材が帯電する。このとき、軸受面が接触するため一部の電荷はグランドに放出されて電圧はそれ程大きくならないが(一点鎖線▲1▼に相当)、場合によっては許容限界電圧を超えてしまうこともある(一点鎖線▲2▼に相当)。定格回転時は、高速回転するため回転部材と気体との摩擦による静電気が発生し、これにより回転部材はさらに電圧が上昇する。停止時、軸受面が再び摺動することで放電し若干、電圧は下がる。このように従来例では、起動時から許容限界電圧を超えやすい状態にあり、静電気による不具合が極めて発生しやすい状況にあることがわかる。一方、この実施形態では、起動時にバイモルフ変位素子7が作動して回転部材3と静止部材2とが導通しているため、起動時の電圧は実質的にゼロとなる。定格回転時は、回転部材と気体との摩擦による静電気が回転部材に蓄積されるため電圧が上がるが、定期的にバイモルフ変位素子7が作動しているため、許容限界電圧を超えることはない。また、図示はしていないが、仮に、定格回転中に外部衝撃により軸受面が摺動して静電気が発生して電圧が上がることがあっても、バイモルフ変位素子7が定期的に作動しているため、許容限界電圧を超えることはほとんどない。この許容限界電圧を超えているときは、磁気ヘッドの破壊や磁気ディスクとの放電により情報の読み書きが不安定となる状態に相当する。なお、図5に示す実施形態および従来例とも説明のために典型的な場合を示すものであって静電気の発生の有無またはその大きさは、条件によって異なる場合がある。
【0014】
従って、この実施形態では、起動時および停止時、さらに定格回転中に回転部材3に溜まった静電気は、グランドに放出され許容限界電圧を超えることはない。起動時及び停止時に電圧をかける一定時間とは、回転部材3に静電気が発生する時間を実験等で予めある程度特定して、少なくともその摺動によって静電気が発生している間とするとよい。また、定格回転中の定期的とは任意であるが、定格回転中の回転部材における電圧の上昇傾向をある程度実験で特定し、許容限界電圧を超えるまでの時間を考慮して設定するとよい。また、外部衝撃の可能性は、例えば、磁気ディスク駆動装置が携帯型で使用される場合はそれだけ外部衝撃の可能性が高いため導通するまでの休止時間を短くして頻繁に導通させ、据え置き型で使用される場合はその可能性が低いので休止時間を長くするよい。また、磁気ディスク駆動装置の信頼性を上げるために頻繁に導通させるようにしてもよい。何れの場合も、磁気ディスク6とヘッドとの間で放電する前に静電気がグランドに移動するのは瞬間であるから、バイモルフ変位素子7の作動時間も僅かで足りる。
【0015】
このようなモータの構成であることから次のような特徴がある。
・ 電気的制御によって回転部材3の電荷を放出するため、従来のように常時接触する場合に比べて、モータの動作状態に関係なく選択的且つ瞬時に静電気による不具合を阻止することができる。
・ バイモルフ変位素子7と回転部材3と接触時間は僅かであるため、ほとんど回転部材3の回転運動の抵抗とならない(つまり、ステータへの電流値が増加しない)。
・ バイモルフ変位素子7と回転部材3と接触時間は僅かであるため、従来のように常時接触する場合に比べて、バイモルフ変位素子7の金属膜7kおよびハブ31側の接触部の磨耗がほとんど発生しない。
・ バイモルフ変位素子7が回転部材3の回転中心に位置するため、接触面積が小さくほとんど回転部材3の回転運動の抵抗とならない(つまり、ステータへの電流値が増加しないし、磨耗量も少ない)。
・ 磨耗がほとんどないため、これに起因する不具合(軸受間隙に磨耗粉が蓄積され回転不良を起こすこと、磁気ヘッドの情報の読み書きが不安定となる(場合によっては読み書き不能となる)こと、回転部材3の軸方向位置が変動すること。)が発生しにくい。
・ バイモルフ変位素子7のハブ31との接触時間は僅かであるため、その作動による消費電力は僅かである。
以上のような種々の特徴を有するモータ1を備えたハードディスク装置10では、回転部材3は常時清浄な空間で安定した回転運動をするため、磁気ヘッドの情報の読み書きが正確になされ高性能なものとなる。
【0016】
尚、この実施形態ではバイモルフ変位素子7の圧電材料としてセラミックスを示したが、バイモルフ変位素子7自体は、公知の素子であることから、同様の動作をするものであれば高分子材料といった材料、取付状態、寸法等の変更はされてもよい。また、バイモルフ変位素子7を動作させることができれば、その回路構成または配線箇所は上記に限定されない。また、バイモルフ変位素子7は、上記では制御回路を簡略化するために定型的な動作となるように制御されているが、例えば、回転部材3に蓄積された電荷を常時検出する手段を設け、その検出結果に基づいて電荷量が許容限界にあるかどうかを判別して導通の切替をするようにしてもよい。さらに、この実施形態では、モータを磁気ディスク駆動装置に適用した場合を例示したが、その他に例えば、レーザービームプリンタに使用されるポリゴンミラーを搭載したモータに適用することもできる。
【0017】
【発明の効果】
以上のように、この発明の動圧気体軸受けモータによれば、回転部材に蓄積される静電気量が許容限界を超えないようにできるので、回転部材が常時安定した回転運動をする。特に、導通手段が電気的制御に基づいて制御されるため、モータの動作状態に関係なく必要なときにのみ導通させることができ、動圧気体軸受およびモータに悪影響を及ぼすことない。
また、このモータを磁気ディスク駆動装置に適用した場合、磁気ディスクとヘッドとの間で放電することがなく情報記録の信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係るハードディスク装置を模式的に示す回転中心軸方向断面図である。
【図2】上記ハードディスク装置に用いられているモータを示す軸方向断面図である。
【図3】図2のA部拡大図である。
【図4】上記モータのバイモルフ変位素子の作動時を示す軸方向断面図である。
【図5】実施形態と従来とのモータにおいて、回転部材に帯電する電圧をモータの状態によって変化する推移を模式的に示したグラフである。
【符号の説明】
1 モータ
2 静止部材
3 回転部材
4 ステータ
5 マグネット
6 磁気ディスク
7 バイモルフ変位素子
Claims (5)
- シャフトを有する静止部材と、動圧気体軸受けとなる微小間隙を介してシャフトと対向するスリーブを有する回転部材と、静止部材に取り付けられたステータと、ステータと対向するように回転部材に取り付けられたマグネットとを備えた動圧気体軸受けモータにおいて、
一端が静止部材に取り付けられ、他端が電気的制御に基づいて変位して回転部材と接触することにより前記静止部材と回転部材とを導通させる導通手段を備えることを特徴とする動圧気体軸受けモータ。 - 前記導通手段は、圧電素子である請求項1に記載の動圧気体軸受けモータ。
- 前記回転部材は、スリーブの外側に嵌合されシャフトの自由端側の端部において閉じた円筒状のハブを有し、前記圧電素子がシャフトの自由端に取り付けられている請求項2に記載の動圧気体軸受けモータ。
- 前記圧電素子がバイモルフ変位素子である請求項2又は3に記載の動圧気体軸受けモータ。
- 請求項1乃至4のいずれかに記載の動圧気体軸受けモータと、前記回転部材に搭載された磁気ディスクと、磁気ディスクに対して情報を読み書きする磁気ヘッドとを備えることを特徴とする磁気ディスク駆動装置。
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JP2003000917A JP2004254352A (ja) | 2003-01-07 | 2003-01-07 | 動圧気体軸受けモータ及びこれを備えた磁気ディスク駆動装置 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR101077841B1 (ko) | 2009-04-08 | 2011-10-31 | 덕산하이메탈(주) | 방향족 고리 화합물 및 이를 이용한 유기전기소자, 그 단말 |
-
2003
- 2003-01-07 JP JP2003000917A patent/JP2004254352A/ja not_active Withdrawn
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