JP2004254242A - 光送信機および光送信装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】光ファイバを通信線路として用いる光伝送システムにおいて、さらなる長距離伝送および大容量伝送を実現すること。
【解決手段】Data1に基づいて差動符号化信号を生成する差動符号化回路3と、差動符号化回路3から出力された差動符号化信号に応じて(0、π)の差動位相シフトキーイング(DPSK:Differential Phase Shift Keying)を行う第1の位相変調器5と、第1の位相変調器5の出力信号にビット同期させて強度変調を行う強度変調器6と、強度変調器6の出力信号にビット同期させて位相変調を行う第2の位相変調器7とを備える。
【選択図】 図1
【解決手段】Data1に基づいて差動符号化信号を生成する差動符号化回路3と、差動符号化回路3から出力された差動符号化信号に応じて(0、π)の差動位相シフトキーイング(DPSK:Differential Phase Shift Keying)を行う第1の位相変調器5と、第1の位相変調器5の出力信号にビット同期させて強度変調を行う強度変調器6と、強度変調器6の出力信号にビット同期させて位相変調を行う第2の位相変調器7とを備える。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、光ファイバを通信線路として用いる光伝送システムに用いられる光送信機および光送信装置に関するものであり、特に、長距離伝送ならびに大容量伝送を行う光送信機および光送信装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、長距離光伝送システムでは1.5μm帯の光を直接増幅できるエルビウム添加ファイバ増幅器(以下「EDFA:Erubium Doped Fiber Amplifier」という。)を利用した光中継増幅伝送方式が主流となっている。さらに最近では、広帯域に増幅可能なEDFAの実現により波長多重伝送方式を用いた大容量伝送システムが実現されている。
【0003】
さらなる大容量化と低コスト化が要求される昨今、これらの大容量化、低コスト化を実現するため、1チャネルあたりの伝送速度の増加および増幅帯域の有効利用(波長多重間隔の狭窄化)ならびに中継間隔の延伸化等が求められてきている。
【0004】
しかしながら、伝送速度を増加させ、中継間隔を延伸化させることに伴い、受信端における光信号対雑音比には過大な要求が課せられることになる。
【0005】
かかる状況の中で、従来と同じ光信号対雑音比でも受信感度を2倍向上させることが可能な変調方式として、差動位相シフトキーイング変調方式(以下「DPSK:Differential Phase Shift Keying」変調方式という。)が注目を浴びている。
【0006】
このDPSK変調方式は、オン/オフの2値信号から生成される情報データ系列間の位相変化を差動符号化し、直流光を位相変調するものである。例えば、データ間の位相変化がない(すなわち、位相変化が0)場合には“オン”信号とし、パルス間で位相変化がある(すなわち、位相変化がπ)場合には、“オフ”信号とする差動符号化信号を生成する。特に、位相変調器を用いて、この差動符号化信号の“オン”、“オフ”に基づいて(0、π)の位相変調を施したものが、NRZ(Non−Return−to−Zero)−DPSK変調方式である。
【0007】
DPSK変調方式には、前述のNRZ−DPSK変調方式の他に、このNRZ−DSPK信号をさらに強度変調を行い、RZ(Return−to−Zero)信号に変換するRZ−DPSK変調方式もある(例えば、非特許文献1を参照)。
【0008】
これらのDPSK変調方式では、DPSK信号から差動符号化信号を生成し、さらに、この差動符号化信号から元のデータ信号を復号する。DPSK変調方式では、1ビット遅延干渉計、2つのフォトディテクタ、識別器などを備えた自己遅延干渉検波器を用いて自己遅延検波と呼ばれる信号処理により、データ信号を抽出することがよく行われる。
【0009】
この自己遅延干渉検波器では、1ビット遅延干渉計における干渉結果の位相に応じて、2つのフォトディテクタを切り換えて処理する。具体的には、1ビット遅延干渉計で検出された検出信号の位相差が“0”のときには、一方のフォトディテクタで検出信号を処理し、位相差が“π”のときには他方のフォトディテクタで検出信号を処理する。さらに、いずれか一方のフォトディテクタで処理された信号を反転出力とし、両者の検出信号を後段の識別器へ入力し、データ信号を抽出する。すなわち、この検波器では、干渉結果の位相に応じてそれぞれ異なるフォトディテクタで処理するようにしている。したがって、従来の変調方式であるオン/オフキーイング変調(2値振幅変調)方式に比べて、2倍の受信感度が得られるという特徴を有している。
【0010】
このように、従来の光伝送システムに用いられてきたオン/オフキーイング変調方式に比べ2倍の受信感度が得られるDPSK変調方式は、高速光通信において長距離伝送を実現する可能性を有する変調方式である。非特許文献1においては、このDPSK変調方式を用いて5200kmの長距離伝送が達成されたことを報告している。
【0011】
【非特許文献1】
B.Zhu et al.、 “Transmission of 3.2 Tb/s (80 x 42.7 Gb/s) over 5200km of UltraWave fiber with 100−km dispersion−managed spans using RZ−DPSK format”、 Technical Digest of ECOC2002、 paper PD.4.2、 Sep. 2002.
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、DPSK変調方式を適用した光伝送システムにおいても、さらなる長距離伝送を実現するためには、さらに高い光信号対雑音比が要求される。単純な方法として、この高い光信号対雑音比を得るために、送信端から出力されるパワーを増加させることが考えられる。
【0013】
送信端から出力される光パワーを増加させると、光中継伝送システムにおける光ファイバへの入射パワーが増加する。その結果、光ファイバ伝送特有の非線形効果の影響が無視できず、この非線形効果の影響により伝送波形歪みが発生して伝送特性の劣化を招来する。
【0014】
この非線形効果の代表的なものとして、自己位相変調、相互位相変調、4光波混合などが挙げられるが、4光波混合と相互位相変調効果は波長多重伝送のときに引き起こされる現象である。
【0015】
非線形の影響を受けるこれらの現象の中で、4光波混合に関しては、波長多重間隔が均一である場合には、光ファイバのゼロ分散波長からシフトした波長帯域を使用する手法が用いられ、光ファイバのゼロ分散波長の近傍で伝送させる場合には、波長多重間隔を不等間隔に配置するといった手法が用いられ、これらの手法を用いれば伝送品質の劣化を低減できることが知られている。
【0016】
一方、相互位相変調は、2つの波長多重信号の一方の信号光の強度変化が他方の信号光の強度変化とともに作用することで光ファイバの非線形効果を介しわずかな屈折率変化を発生させる。このわずかな屈折率変化が光信号の群速度を変化させ位相変化をもたらす現象である。
【0017】
また、自己位相変調は、光カー効果に起因して光ファイバの屈折率がわずかに変化し、このわずかな屈折率変化によって光信号の群速度が変化し、同時に、位相が変化することによって波形劣化が生ずる現象である。なお、この位相変化に伴う周波数の偏移量は、次式により与えられる。
【0018】
【数1】
【0019】
(1)式において、ωは角周波数、Lは伝送距離、λは波長、Eは電界強度、n2は屈折率をそれぞれ表している。
【0020】
この光カー効果による屈折率変化は、(1)式より明らかなように、光信号の強度の増加に伴って増大するため、入力パワーの増加に伴い大きな波形劣化を招く。特に、相互位相変調の影響を被りやすい伝送システムにおいては、自己位相変調と相互位相変調との相乗効果により、信号の波形歪み量が増大するため、自己位相変調は、光ファイバ伝送システムにおいて大きな問題となる。
【0021】
また、光ファイバ伝送路を通過する光信号(光パルス)は、自己位相変調によって光パルスの立ち上がりでは、光パルスの瞬時周波数は周波数が低い方にシフト(以下「レッドチャープ」という。)され、逆に、光パルスの立ち下がりでは光パルスの瞬時周波数は周波数が高い方にシフト(以下「ブルーチャープ」という。)される特徴を有している。詳細については後述するが、自己位相変調による臨時周波数の変化は、光ファイバ伝送路の分散特性の符号により伝播の振る舞い方が異なり、パルス形状を変化させる。
【0022】
例えば、光パルスが正分散特性のファイバ内を伝送する場合には、この光パルスのパルス幅が圧縮され、逆に、負分散特性のファイバ内を伝送する場合には、パルス幅が拡張される。パルス幅が圧縮されると、パルスのピークパワーを増加させるため、前述した光カー効果による屈折率変化を増大させ、自己位相変調を拡大する方向に作用する。一方、パルス幅が拡張されると、隣接データ間における符号間干渉を拡大する方向に作用する。
【0023】
このように光ファイバ内では、自己位相変調効果と光ファイバ伝送路の分散特性に起因するパルス幅の変化とが同時に発生し、これらの現象が複雑に相互作用しながら光パルスが伝送するため、長距離伝送後には劣悪な品質劣化が生じることになる。
【0024】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであり、光ファイバを通信線路として用いる光伝送システムに用いられる光送信機および光送信装置において、自己位相変調により発生する伝送特性劣化を低減し、さらなる長距離伝送および大容量伝送の実現する光送信機および光送信装置を提供することを目的とするものである。
【0025】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる光送信機にあっては、2値データ信号に基づいて差動符号化信号を生成する差動符号化回路と、前記差動符号化回路から出力された差動符号化信号に応じて(0、π)の差動位相シフトキーイング(DPSK:Differential Phase Shift Keying)を行う第1の位相変調器と、前記第1の位相変調器の出力信号にビット同期させて強度変調を行う強度変調器と、前記強度変調器の出力信号にビット同期させて位相変調を行う第2の位相変調器とを備えたことを特徴とする。
【0026】
この発明によれば、差動符号化回路は、2値データ信号に基づいて差動符号化信号を生成し、第1の位相変調器は、差動符号化回路から出力された差動符号化信号に応じて(0、π)の位相シフトキーイングを行い、強度変調器は、第1の位相変調器の出力信号にビット同期させて強度変調を行い、第2の位相変調器は、強度変調器の出力信号にビット同期させて位相変調を行う。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、この発明にかかる光送信機および光送信装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0028】
実施の形態1.
本願発明は、DPSK信号を生成する送信機に位相変調器を具備することにより、光ファイバ伝送時に発生する自己位相変調による伝送品質劣化が低減されるように位相変調器に設定する初期位相および位相変調度の任意の設定を可能としたDPSK変調方式を用いて長距離大容量伝送を実現するものである。本願発明者は、DPSK信号が生成される際に、位相変調器によって位相変調される信号の周波数偏移に着目し、この周波数偏移が生ずる現象を詳細に考察することにより、光ファイバ伝送時に生ずる自己位相変調の影響を低減させる手段を導き出すに至ったものである。そこで、本願発明の実施の形態を説明する前に、自己位相変調が生ずる理由や自己位相変調によって光送信パルスのパルス幅が変動することなどについて説明する。
【0029】
図7は、差動符号化の原理を示す説明図である。同図において、上段に示す数字列は、位相変調される前の元情報データであり、中段に示す数字列は、元情報データ間の差分情報を符号化した差動符号化データである。また、下段に示す数字列は、差動符号化データにそれぞれ対応した対応位相変化を示したものである。
【0030】
例えば、元情報データが図7に示す数字列であるとき、差動符号化データは、左端のデータ”0”(同図に示すb1)を基準にして、元情報データの左端のデータが”1” (同図に示すa1)なので、このデータを反転させた”1”(同図に示すb2)を生成する。以下同様に、直前に生成された差動符号化データを基準にして、元情報データが”1”ならば反転データを生成し、”0”ならば非反転データを生成する。このようにして、同図中段に示す差動符号化データが生成される。なお、対応位相変化は、それぞれ、差動符号化データの”0”には”0”が対応し、差動符号化データの”1”には”π”が対応し、この対応位相変化に応じて位相変調が施された信号がDPSK信号となる。
【0031】
一方、DPSK信号を受信するためには、差動符号化されたDPSK信号から元のデータ信号を復号する必要がある。DPSK信号の復号には、上述したような、自己遅延干渉検波器が用いられる。図8(a)は、自己遅延干検波器の一般的な構成を示す図である。また、図8(b)は、この自己遅延干渉検波器の動作を説明するためのデータ列を示す図であり、図8(c)は、自己遅延干渉検波器の識別器に入力される識別器入力データを示す図である。
【0032】
図8(a)に示す自己遅延干渉検波器は、1ビットのディレイラインを備えた1ビット遅延干渉計51、2つのフォトディテクタ53a、53b、減算器55、識別器57などから構成される。いま、同図(a)に示すような、”0π00ππ0πππ0”の位相で位相変調された変調信号を搭載した送信信号が受信機に入力されると、1ビット遅延干渉計における干渉結果は”ππ0π0ππ00π”となる(同図(b)の差動位相データ参照)。このとき、干渉結果の位相差が”0”のときには、フォトディテクタ53aで受信され、位相差が”π”のときには、フォトディテクタ53bで受信される。フォトディテクタ53bで受信された信号は、減算器55でフォトディテクタ53aの出力と減算され、識別器57へ入力され(同図(c)の識別器入力データ参照)、元の情報データが復元される。DPSK信号は、隣接データ間の位相差情報が失われていなければ、この位相差情報から元の情報データを正しく再現することができる。
【0033】
図9は、光パルスによる自己位相変調の現象を示す概念図である。上述したように、自己位相変調が発生したとき、光パルスの立ち上がり部(進行方向に向かう光パルスの前縁部)では、レッドチャープと呼ばれる光パルスの瞬時周波数が低い方にシフトされ、逆に、光パルスの立ち下がり部分(進行方向に向かう光パルスの後縁部)では、ブルーチャープと呼ばれる光パルスの瞬時周波数が高い方にシフトされる。
【0034】
一方、自己位相変調による臨時周波数の変化が、光ファイバ伝送路の分散特性の符号により、パルス形状を変化させることについても上述してきた。図10は、正分散ファイバにおける伝播パルスの振る舞いを示す概念図であり、図11は、負分散ファイバにおける伝播パルスの振る舞いを示す概念図である。
【0035】
図10に示すように、正分散ファイバでは、パルスの立ち上がり部では位相速度が遅くなり、逆に、立ち下がり部では位相速度が速くなるため、パルス波形が圧縮される振る舞いを示す。このパルス圧縮はパルスのピークパワーを増加させるため、上述した光カー効果による屈折率変化を増大させ、自己位相変調を拡大する方向に作用することになる。
【0036】
一方、図11に示すように、負分散ファイバでは、パルスの立ち上がり部では位相速度が速くなり、パルスの立ち下がり部では位相速度が遅くなるため、パルス波形が広がる振る舞いを示す。そのため、自己位相変調によるパルス広がりの影響が強い場合には、隣接データ間における符号間干渉を拡大する方向に作用することになる。
【0037】
このように、光ファイバを伝送する光パルスは、自己位相変調の影響を受け、正分散の光ファイバを伝送する際には、パルス波形が圧縮され、負分散の光ファイバを伝送する際には、パルス波形が拡張されるようになる。本願発明は、このパルス圧縮/拡張によるパルス歪みの影響を低減するように、以下に詳述するような位相変調の初期位相および変調度の制御によってパルス信号のパルス幅を制御するものである。
【0038】
図1は、実施の形態1の光送信機の構成例を示した図である。この光送信機は、差動符号化回路3、レーザーダイオード4、第1の位相変調器5、強度変調器6、第2の位相変調器7、第1の移相器8a、第2の移相器8b、第1のドライバ回路9a、第2のドライバ回路9bを備えている。同図において、差動符号化回路3は、入力端子14から入力されたオン/オフ信号から形成される2値信号データであるData1をDPSK変調用データに符号化する。レーザーダイオード4は、直流光を発生させる。第1の位相変調器5は、差動符号化回路3から出力された差動符号化信号に応じてレーザーダイオード4から出力された直流光を(0、π)に位相変調する。強度変調器6は、位相変調器5から出力されたDPSK信号出力を入力端子15から入力された伝送速度に対応する正弦波クロック信号であるClock2に同期してRZ(Return−to−Zero)信号化する。第2の位相変調器7は、強度変調器6から出力されたRZ信号にビット同期して所望の初期位相ならびに位相変調の深さを設定する。第1のドライバ回路9aは、強度変調器6に入力されるClock2を所望の振幅値に増幅する、第2のドライバ回路9bは、は第2の位相変調器7に入力されるClock2を所望の振幅値に増幅する。第1の移相器8a、Clock2と第1の位相変調器5の出力信号を同期させ、第2の移相器8bは、Clock2と強度変調器6の出力信号をビット同期させる。
【0039】
つぎに、この実施の形態の動作について説明する。Data1に基づいて差動符号化回路3において生成された差動符号化信号は、第1の位相変調器5に入力される。第1の位相変調器5では、入力された差動符号化信号に基づいて、レーザーダイオード4から出力された直流光を(0、π)で位相変調することによりDPSK信号を生成する。強度変調器6では、入力されたNRZ−DPSK信号が第1のドライバ回路9aにより所望の振幅レベルに増幅されたClock2と同期して変調される強度変調によってRZ信号化され、RZ−DPSK信号を出力する。このとき、第1の移相器8aでは、強度変調器6に入力されたNRZ−DPSK信号とClock2の位相とが整合するように位相調整されるものとする。ここで生成されたRZ−DPSK信号は、第2の位相変調器7に入力され、第2のドライバ回路9bで所望の振幅レベルに増幅されたClock2と同期して位相変調が行われる。ここでも、第1の移相器8aで行われたのと同様な位相の調整が行われる。すなわち、第2の移相器8bでは、強度変調器6から出力されたRZ−DPSK信号とClock2の位相とが整合するように位相調整されるものとする。なお、第2の位相変調器7では、任意の初期位相および任意の変調度を設定することができる。
【0040】
ここで、強度変調器6から出力される信号をA(0,t)とし、この信号のパルス形状をガウス形状と仮定すると、次式で表される。
【0041】
【数2】
【0042】
(2)式において、A0は振幅、T0は最大値の半値幅をそれぞれ表している。
【0043】
また、(1)式で与えられたRZ信号波形を、第2の位相変調器7において位相変調を行った場合の信号波形B(0,t)は、次式で与えられる。
【0044】
【数3】
【0045】
(3)式において、kPは変調度、ΨCはRZ信号の初期位相、m(t)は位相変調信号である。また、この位相変調信号m(t)は次式で与えられる。
【0046】
【数4】
【0047】
(4)式において、φは位相変調信号の初期位相、fmは位相変調周波数、ωmは位相変調角周波数である。
【0048】
いま、(3)式に(2)式および(4)式を代入すると、第2の位相変調器7で位相変調された位相変調信号は、次式で表せる。
【0049】
【数5】
【0050】
図2(a)は、第2の位相変調器7から出力される信号波形の一例を示す図である。この信号波形は、最大値の半値幅がT0/4で、振幅A0=1のとき、(2)式で与えられるDPSK変調信号に初期位相φ=0、変調度kP=πの位相変調を行った場合である。また、図2(b)は、第2の位相変調器7でビット同期位相変調を行う前の差動データ位相差を示す図であり、図2(c)は、第2の位相変調器7でビット同期位相変調を行った後の差動データ位相差を示す図である。
【0051】
第2の位相変調器7では、Clock2とビット同期して位相変調が行われるため、ビットごとに同じ量の位相変調が施される。いま、DSPK信号データの位相が“0π00ππ0πππ0”のとき、初期位相0、変調度πのビット同期位相変調を行ったDPSK信号の位相は、“π0ππ00π000π”に変化する。
【0052】
ところで、DPSK信号では、受信時に自己遅延検波出力の差動データ位相差からデータ信号を復号するため隣接データ間の位相差が非常に重要となる。しかしながら、図2(b)および(c)に示すように、第2の位相変調器7でビット同期位相変調を行う前とビット同期位相変調を行った後のデータ間の位相差である差動データ位相差を比較した場合、いずれの場合にも隣接データ間の位相差は“ππ0π0π00π”であり、ビット同期位相変調を行う前と行った後では隣接データ間の位相差は変化しない。なお、ここでの図示は省略しているが、どのような変調度に設定しても、隣接データ間の位相差は、ビット同期位相変調の前後において変化することはない。
【0053】
したがって、第2の位相変調器7でビット同期位相変調が施されたDPSK信号が送信された場合であっても、ビット同期位相変調を行う前後で隣接データ間の位相差が変化しない信号が受信機において受信されるので、正しいデータ信号を復号することができる。
【0054】
つぎに、このビット同期位相変調を行った場合の効果について詳述する。図3(a)は、初期位相φ=0、変調度kP=πのときの、光電界波形および位相偏移量を示す図であり、図3(b)は、初期位相φ=0、変調度kP=πのときの、光電界波形および周波数偏移量を示す図である。
【0055】
図3(a)および(b)に示す図は、時間領域の波形であることに注意すれば、同図(b)に示すように、光電界の立ち上がり部では周波数偏移量がマイナス側に偏移しており、レッドチャープが生じていることが分かる。一方、光電界の立ち下がり部では周波数偏移量がプラス側に偏移しており、ブルーチャープが生じている。
【0056】
一方、図4(a)は、初期位相φ=π、変調度kP=πのときの、光電界波形および位相偏移量を示す図であり、図4(b)は、初期位相φ=π、変調度kP=πのときの、光電界波形および周波数偏移量を示す図である。初期位相をπだけ変化させた場合には、変化の前後でブルーチャープとレッドチャープの発生が逆転していることが分かる。すなわち、同図(b)に示すように、光電界の立ち上がり部では周波数偏移量がプラス側に偏移してブルーチャープが生じ、光電界の立ち下がり部では周波数偏移量がマイナス側に偏移してレッドチャープが生じている。このように、第2の位相変調器7において任意の初期位相ならびに変調度を設定することによりパルス波形内のチャープを制御することができる。
【0057】
なお、初期位相の制御とは別に、位相変調を行った場合には非線形な周波数変調がかけられるので、位相変調後の信号スペクトルは位相変調を行う前に比べて広がりを有することも考慮する必要がある。
【0058】
ところで、光ファイバを伝送する光信号は、光ファイバの有する分散特性によって、パルス幅が変動する。したがって、光パルスのパルス幅を制御しようとする場合には、光ファイバの分散特性についても考慮しなければならない。
【0059】
ここで、光ファイバ伝送特有の分散を表す波長分散係数をD[ps/km/nm]とするとき、このDは、群遅延時間をτ、波長をλ、群速度をVgとして、次式で与えられる。
【0060】
【数6】
【0061】
また、伝送波長の広がりを表す波長広がりδλは、波長をλ、信号の伝送速度をB、光の速度をCとして、次式で表される。
【0062】
【数7】
【0063】
さらに、分散によるパルス広がりδtは、Lは伝送距離をL、波長分散係数をD、信号占有帯域幅広がりをδλとして、次式で与えられる。
【0064】
【数8】
【0065】
伝送速度Bの増加によって信号の占有帯域幅が広くなるので、(8)式より、分散によるパルス広がりが、信号の占有帯域幅の増加に伴って増大することが分かる。
【0066】
上述したように、第2の位相変調器7において位相変調が行われた光信号は、信号占有帯域幅が広くなるため光ファイバの分散の影響を受けやすくなる。また、光ファイバの分散には、ゼロ分散波長を境に符号の異なる分散値を有し、正分散と負分散では位相変化の向きが反転する。つまり、分散の符号によりパルスの立ち上がりと立ち下がりの位相変化が逆転する。
【0067】
したがって、第2の位相変調器7において、分散により生ずる位相変化の向きと逆方向に位相変調を施した場合には、この位相変調は分散による位相変化を打ち消す方向に働き、逆に、分散により生じる位相変化の向きと同方向に位相変調を施した場合には、この位相変調は分散による位相変化を増長する方向に働くことになる。また、分散によるパルス広がりの影響は、この位相変調により占有帯域幅が広くなることでより速く発生するため、パルスのピークパワーの低下を促進する方向に寄与し、非線形効果の影響を小さくすることができる。
【0068】
つまり、位相変調器7では送信パルスにあらかじめ任意のチャープ方向とチャープ量を施すことにより、任意の分散における分散の振る舞いを制御できるため、同時に発生する非線形効果の影響を軽減させることができ、光ファイバ伝送路中における非線形効果と分散との相互作用によるパルスの振る舞いを制御することができる。
【0069】
光ファイバの任意の分散値において発生する自己位相変調による影響を打ち消すような適切な位相変調を施すことにより、自己位相変調によるパルス歪みを低減することができるため、DPSK変調信号の特徴を損なうことなく、従来のDPSK変調方式と比較して伝送距離の延伸化が可能となる。
【0070】
以上説明したように、この実施の形態の光送信機によれば、差動符号化回路は、2値データ信号に基づいて差動符号化信号を生成し、第1の位相変調器は、差動符号化回路から出力された差動符号化信号に応じて(0、π)の位相シフトキーイングを行い、強度変調器は、第1の位相変調器の出力信号にビット同期させて強度変調を行い、第2の位相変調器は、強度変調器の出力信号にビット同期させて位相変調を行い、光ファイバ伝送路の波長分散により生ずる位相変化を打ち消すように位相変調の初期位相および変調度を制御するようにしているので、自己位相変調により発生する伝送特性劣化を低減し、さらなる長距離伝送を実現することができる。
【0071】
実施の形態2.
図5は、この発明の実施の形態2の光送信機の構成例を示した図である。この光送信機は、図1に示す実施の形態1の送信機の強度変調器6を省略した構成で実現するものである。なお、その他の構成は実施の形態1と同一であり、同一構成部分には同一符号を付して示している。
【0072】
つぎに、この実施の形態の動作について説明する。Data1に基づいて差動符号化回路3において生成された差動符号化信号は、第1の位相変調器5に入力される。第1の位相変調器5では、入力された差動符号化信号に基づいて、レーザーダイオード4から出力された直流光を(0、π)で位相変調することによりDPSK信号を生成する。生成されたDPSK信号はNRZ−DPSK信号となる。このNRZ−DPSK信号は、第2の位相変調器7に入力され、ドライバ回路9で所望の振幅レベルに増幅されたClock2と同期して位相変調が行われる。なお、移相器8では、第1の位相変調器5から出力されたNRZ−DPSK信号とClock2の位相とが整合するように位相調整されるものとする。なお、第2の位相変調器7では任意に初期位相および変調度を設定することができる。
【0073】
この実施の形態では、実施の形態1と同様に最適な初期位相および変調量を設定することが可能な第2の位相変調器7を具備しているため、高い入射パワー時に発生する非線形効果と光ファイバの分散特性とによる相互作用によりもたらされる波形歪みが低減されるように位相変調を施すことが可能であり、実施の形態1と同様な効果が得られる。
【0074】
また、このように位相変調器を備えたNRZ−DPSK送信機を用いることにより、自己位相変調効果による波形歪みが低減できるため、DPSK信号の特徴を損なうことなく、従来のDPSK変調方式と比較して伝送距離の延伸化が可能となる。
【0075】
以上説明したように、この実施の形態の光送信機によれば、差動符号化回路は、2値データ信号に基づいて差動符号化信号を生成し、第1の位相変調器は、差動符号化回路から出力された差動符号化信号に応じて(0、π)の差動位相シフトキーイングを行い、第2の位相変調器は、第1の位相変調器の出力信号にビット同期させて位相変調を行い、光ファイバ伝送路の波長分散により生ずる位相変化を打ち消すように位相変調の初期位相および変調度を制御するようにしているので、自己位相変調により発生する伝送特性劣化を低減し、さらなる長距離伝送を実現するとともに、実装面積の縮小とコストの低下とを可能とする光送信機を実現することができる。
【0076】
実施の形態3.
図6は、この発明の実施の形態3の光送信装置の構成例を示した図である。この実施の形態は、異なる中心波長の直流光を発生する実施の形態1で構成した光送信機と、これらの複数の光送信機から出力される出力信号を合波する合波器とを備えた波長多重の光送信装置である。
【0077】
図6において、送信部12は、実施の形態1で示した複数の送信機11−1、11−2〜11−Nで構成されており、各送信機は、直流光を発生するレーザーダイオードの発振波長をすべて異ならせている。なお、各送信機の内部の構成は、実施の形態1で示した構成と同様であり、同一部分には同一符号を付している。送信部12のそれぞれの送信機11−1、11−2〜11−Nから出力されるDSPK信号は、合波器13で多重化され、光ファイバ伝送路16に送出される。
【0078】
光ファイバを伝送する光信号は、光ファイバの分散特性の影響で異なる伝播の振る舞いを示すことになるが、この実施の形態の光送信装置によれば、各送信機単位で波長ごとに最適な位相変調を行うことができるので、DPSK信号の特徴を損なうことなく非線形効果による波形歪みを低減するとともに、光信号の波長多重化を実現することができ、伝送距離の延伸化と伝送信号の大容量化を実現することができる。
【0079】
なお、この実施の形態では、送信部を構成する各送信機は実施の形態1で示した送信機からなる構成としたが、実施の形態2で示した送信機からなる構成としてもよく、この場合においても、送信機単位で送信波長ごとに最適な位相変調を行うことが可能であり、同様な効果を得ることができる。
【0080】
以上説明したように、この実施の形態の光送信装置によれば、実施の形態1または実施の形態2で示した中心波長の異なる光信号を出力する光送信機と、これらの複数の光送信機から出力される出力信号を合波する合波器とを備えるように構成しているので、自己位相変調により発生する伝送特性劣化を低減し、さらなる長距離伝送と大容量伝送を実現することができる。
【0081】
【発明の効果】
以上説明したとおり、この発明によれば、2値データ信号に基づいて生成された差動符号化信号に応じて(0、π)の位相シフトキーイングを行い、この位相シフトキーイングの出力信号にビット同期させて変調された強度変調信号を、さらにビット同期させて位相変調を行うようにしているので、自己位相変調により発生する伝送特性劣化を低減し、さらなる長距離伝送と大容量伝送を実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1の光送信機の構成例を示した図である。
【図2】(a)は、第2の位相変調器から出力される信号波形の一例を示す図であり、(b)は、第2の位相変調器でビット同期位相変調を行う前の差動データ位相差を示す図であり、(c)は、第2の位相変調器でビット同期位相変調を行った後の差動データ位相差を示す図である。
【図3】(a)は、初期位相φ=0、変調度kP=πのときの、光電界波形および位相偏移量を示す図であり、(b)は、初期位相φ=0、変調度kP=πのときの、光電界波形および周波数偏移量を示す図である。
【図4】(a)は、初期位相φ=π、変調度kP=πのときの、光電界波形および位相偏移量を示す図であり、(b)は、初期位相φ=π、変調度kP=πのときの、光電界波形および周波数偏移量を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態2の光送信機の構成例を示した図である。
【図6】この発明の実施の形態3の光送信装置の構成例を示した図である。
【図7】差動符号化の原理を示す説明図である。
【図8】(a)は、自己遅延干検波器の一般的な構成を示す図であり、(b)は、この自己遅延干渉検波器の動作を説明するためのデータ列を示す図であり、(c)は、自己遅延干渉検波器の識別器に入力される識別器入力データを示す図である。
【図9】光パルスによる自己位相変調の現象を示す概念図である。
【図10】正分散ファイバにおける伝播パルスの振る舞いを示す概念図である。
【図11】負分散ファイバにおける伝播パルスの振る舞いを示す概念図である。
【符号の説明】
1 Data、2 Clock、3 差動符号化回路、4 レーザーダイオード、5 第1の位相変調器、6 強度変調器、7 第2の位相変調器、8 移相器、8a 第1の移相器、8b 第2の移相器、9 ドライバ回路、9a 第1のドライバ回路、9b 第2のドライバ回路、11−1,11−2〜11−N 送信機、12 送信部、13 合波器、14 第1の入力端子、15 第2の入力端子、16 光伝送路、51 ビット遅延干渉計、53a,53b フォトディテクタ、53a,53b フォトディテクタ、55 減算器、57 識別器。
【発明の属する技術分野】
この発明は、光ファイバを通信線路として用いる光伝送システムに用いられる光送信機および光送信装置に関するものであり、特に、長距離伝送ならびに大容量伝送を行う光送信機および光送信装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、長距離光伝送システムでは1.5μm帯の光を直接増幅できるエルビウム添加ファイバ増幅器(以下「EDFA:Erubium Doped Fiber Amplifier」という。)を利用した光中継増幅伝送方式が主流となっている。さらに最近では、広帯域に増幅可能なEDFAの実現により波長多重伝送方式を用いた大容量伝送システムが実現されている。
【0003】
さらなる大容量化と低コスト化が要求される昨今、これらの大容量化、低コスト化を実現するため、1チャネルあたりの伝送速度の増加および増幅帯域の有効利用(波長多重間隔の狭窄化)ならびに中継間隔の延伸化等が求められてきている。
【0004】
しかしながら、伝送速度を増加させ、中継間隔を延伸化させることに伴い、受信端における光信号対雑音比には過大な要求が課せられることになる。
【0005】
かかる状況の中で、従来と同じ光信号対雑音比でも受信感度を2倍向上させることが可能な変調方式として、差動位相シフトキーイング変調方式(以下「DPSK:Differential Phase Shift Keying」変調方式という。)が注目を浴びている。
【0006】
このDPSK変調方式は、オン/オフの2値信号から生成される情報データ系列間の位相変化を差動符号化し、直流光を位相変調するものである。例えば、データ間の位相変化がない(すなわち、位相変化が0)場合には“オン”信号とし、パルス間で位相変化がある(すなわち、位相変化がπ)場合には、“オフ”信号とする差動符号化信号を生成する。特に、位相変調器を用いて、この差動符号化信号の“オン”、“オフ”に基づいて(0、π)の位相変調を施したものが、NRZ(Non−Return−to−Zero)−DPSK変調方式である。
【0007】
DPSK変調方式には、前述のNRZ−DPSK変調方式の他に、このNRZ−DSPK信号をさらに強度変調を行い、RZ(Return−to−Zero)信号に変換するRZ−DPSK変調方式もある(例えば、非特許文献1を参照)。
【0008】
これらのDPSK変調方式では、DPSK信号から差動符号化信号を生成し、さらに、この差動符号化信号から元のデータ信号を復号する。DPSK変調方式では、1ビット遅延干渉計、2つのフォトディテクタ、識別器などを備えた自己遅延干渉検波器を用いて自己遅延検波と呼ばれる信号処理により、データ信号を抽出することがよく行われる。
【0009】
この自己遅延干渉検波器では、1ビット遅延干渉計における干渉結果の位相に応じて、2つのフォトディテクタを切り換えて処理する。具体的には、1ビット遅延干渉計で検出された検出信号の位相差が“0”のときには、一方のフォトディテクタで検出信号を処理し、位相差が“π”のときには他方のフォトディテクタで検出信号を処理する。さらに、いずれか一方のフォトディテクタで処理された信号を反転出力とし、両者の検出信号を後段の識別器へ入力し、データ信号を抽出する。すなわち、この検波器では、干渉結果の位相に応じてそれぞれ異なるフォトディテクタで処理するようにしている。したがって、従来の変調方式であるオン/オフキーイング変調(2値振幅変調)方式に比べて、2倍の受信感度が得られるという特徴を有している。
【0010】
このように、従来の光伝送システムに用いられてきたオン/オフキーイング変調方式に比べ2倍の受信感度が得られるDPSK変調方式は、高速光通信において長距離伝送を実現する可能性を有する変調方式である。非特許文献1においては、このDPSK変調方式を用いて5200kmの長距離伝送が達成されたことを報告している。
【0011】
【非特許文献1】
B.Zhu et al.、 “Transmission of 3.2 Tb/s (80 x 42.7 Gb/s) over 5200km of UltraWave fiber with 100−km dispersion−managed spans using RZ−DPSK format”、 Technical Digest of ECOC2002、 paper PD.4.2、 Sep. 2002.
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、DPSK変調方式を適用した光伝送システムにおいても、さらなる長距離伝送を実現するためには、さらに高い光信号対雑音比が要求される。単純な方法として、この高い光信号対雑音比を得るために、送信端から出力されるパワーを増加させることが考えられる。
【0013】
送信端から出力される光パワーを増加させると、光中継伝送システムにおける光ファイバへの入射パワーが増加する。その結果、光ファイバ伝送特有の非線形効果の影響が無視できず、この非線形効果の影響により伝送波形歪みが発生して伝送特性の劣化を招来する。
【0014】
この非線形効果の代表的なものとして、自己位相変調、相互位相変調、4光波混合などが挙げられるが、4光波混合と相互位相変調効果は波長多重伝送のときに引き起こされる現象である。
【0015】
非線形の影響を受けるこれらの現象の中で、4光波混合に関しては、波長多重間隔が均一である場合には、光ファイバのゼロ分散波長からシフトした波長帯域を使用する手法が用いられ、光ファイバのゼロ分散波長の近傍で伝送させる場合には、波長多重間隔を不等間隔に配置するといった手法が用いられ、これらの手法を用いれば伝送品質の劣化を低減できることが知られている。
【0016】
一方、相互位相変調は、2つの波長多重信号の一方の信号光の強度変化が他方の信号光の強度変化とともに作用することで光ファイバの非線形効果を介しわずかな屈折率変化を発生させる。このわずかな屈折率変化が光信号の群速度を変化させ位相変化をもたらす現象である。
【0017】
また、自己位相変調は、光カー効果に起因して光ファイバの屈折率がわずかに変化し、このわずかな屈折率変化によって光信号の群速度が変化し、同時に、位相が変化することによって波形劣化が生ずる現象である。なお、この位相変化に伴う周波数の偏移量は、次式により与えられる。
【0018】
【数1】
【0019】
(1)式において、ωは角周波数、Lは伝送距離、λは波長、Eは電界強度、n2は屈折率をそれぞれ表している。
【0020】
この光カー効果による屈折率変化は、(1)式より明らかなように、光信号の強度の増加に伴って増大するため、入力パワーの増加に伴い大きな波形劣化を招く。特に、相互位相変調の影響を被りやすい伝送システムにおいては、自己位相変調と相互位相変調との相乗効果により、信号の波形歪み量が増大するため、自己位相変調は、光ファイバ伝送システムにおいて大きな問題となる。
【0021】
また、光ファイバ伝送路を通過する光信号(光パルス)は、自己位相変調によって光パルスの立ち上がりでは、光パルスの瞬時周波数は周波数が低い方にシフト(以下「レッドチャープ」という。)され、逆に、光パルスの立ち下がりでは光パルスの瞬時周波数は周波数が高い方にシフト(以下「ブルーチャープ」という。)される特徴を有している。詳細については後述するが、自己位相変調による臨時周波数の変化は、光ファイバ伝送路の分散特性の符号により伝播の振る舞い方が異なり、パルス形状を変化させる。
【0022】
例えば、光パルスが正分散特性のファイバ内を伝送する場合には、この光パルスのパルス幅が圧縮され、逆に、負分散特性のファイバ内を伝送する場合には、パルス幅が拡張される。パルス幅が圧縮されると、パルスのピークパワーを増加させるため、前述した光カー効果による屈折率変化を増大させ、自己位相変調を拡大する方向に作用する。一方、パルス幅が拡張されると、隣接データ間における符号間干渉を拡大する方向に作用する。
【0023】
このように光ファイバ内では、自己位相変調効果と光ファイバ伝送路の分散特性に起因するパルス幅の変化とが同時に発生し、これらの現象が複雑に相互作用しながら光パルスが伝送するため、長距離伝送後には劣悪な品質劣化が生じることになる。
【0024】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであり、光ファイバを通信線路として用いる光伝送システムに用いられる光送信機および光送信装置において、自己位相変調により発生する伝送特性劣化を低減し、さらなる長距離伝送および大容量伝送の実現する光送信機および光送信装置を提供することを目的とするものである。
【0025】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる光送信機にあっては、2値データ信号に基づいて差動符号化信号を生成する差動符号化回路と、前記差動符号化回路から出力された差動符号化信号に応じて(0、π)の差動位相シフトキーイング(DPSK:Differential Phase Shift Keying)を行う第1の位相変調器と、前記第1の位相変調器の出力信号にビット同期させて強度変調を行う強度変調器と、前記強度変調器の出力信号にビット同期させて位相変調を行う第2の位相変調器とを備えたことを特徴とする。
【0026】
この発明によれば、差動符号化回路は、2値データ信号に基づいて差動符号化信号を生成し、第1の位相変調器は、差動符号化回路から出力された差動符号化信号に応じて(0、π)の位相シフトキーイングを行い、強度変調器は、第1の位相変調器の出力信号にビット同期させて強度変調を行い、第2の位相変調器は、強度変調器の出力信号にビット同期させて位相変調を行う。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、この発明にかかる光送信機および光送信装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0028】
実施の形態1.
本願発明は、DPSK信号を生成する送信機に位相変調器を具備することにより、光ファイバ伝送時に発生する自己位相変調による伝送品質劣化が低減されるように位相変調器に設定する初期位相および位相変調度の任意の設定を可能としたDPSK変調方式を用いて長距離大容量伝送を実現するものである。本願発明者は、DPSK信号が生成される際に、位相変調器によって位相変調される信号の周波数偏移に着目し、この周波数偏移が生ずる現象を詳細に考察することにより、光ファイバ伝送時に生ずる自己位相変調の影響を低減させる手段を導き出すに至ったものである。そこで、本願発明の実施の形態を説明する前に、自己位相変調が生ずる理由や自己位相変調によって光送信パルスのパルス幅が変動することなどについて説明する。
【0029】
図7は、差動符号化の原理を示す説明図である。同図において、上段に示す数字列は、位相変調される前の元情報データであり、中段に示す数字列は、元情報データ間の差分情報を符号化した差動符号化データである。また、下段に示す数字列は、差動符号化データにそれぞれ対応した対応位相変化を示したものである。
【0030】
例えば、元情報データが図7に示す数字列であるとき、差動符号化データは、左端のデータ”0”(同図に示すb1)を基準にして、元情報データの左端のデータが”1” (同図に示すa1)なので、このデータを反転させた”1”(同図に示すb2)を生成する。以下同様に、直前に生成された差動符号化データを基準にして、元情報データが”1”ならば反転データを生成し、”0”ならば非反転データを生成する。このようにして、同図中段に示す差動符号化データが生成される。なお、対応位相変化は、それぞれ、差動符号化データの”0”には”0”が対応し、差動符号化データの”1”には”π”が対応し、この対応位相変化に応じて位相変調が施された信号がDPSK信号となる。
【0031】
一方、DPSK信号を受信するためには、差動符号化されたDPSK信号から元のデータ信号を復号する必要がある。DPSK信号の復号には、上述したような、自己遅延干渉検波器が用いられる。図8(a)は、自己遅延干検波器の一般的な構成を示す図である。また、図8(b)は、この自己遅延干渉検波器の動作を説明するためのデータ列を示す図であり、図8(c)は、自己遅延干渉検波器の識別器に入力される識別器入力データを示す図である。
【0032】
図8(a)に示す自己遅延干渉検波器は、1ビットのディレイラインを備えた1ビット遅延干渉計51、2つのフォトディテクタ53a、53b、減算器55、識別器57などから構成される。いま、同図(a)に示すような、”0π00ππ0πππ0”の位相で位相変調された変調信号を搭載した送信信号が受信機に入力されると、1ビット遅延干渉計における干渉結果は”ππ0π0ππ00π”となる(同図(b)の差動位相データ参照)。このとき、干渉結果の位相差が”0”のときには、フォトディテクタ53aで受信され、位相差が”π”のときには、フォトディテクタ53bで受信される。フォトディテクタ53bで受信された信号は、減算器55でフォトディテクタ53aの出力と減算され、識別器57へ入力され(同図(c)の識別器入力データ参照)、元の情報データが復元される。DPSK信号は、隣接データ間の位相差情報が失われていなければ、この位相差情報から元の情報データを正しく再現することができる。
【0033】
図9は、光パルスによる自己位相変調の現象を示す概念図である。上述したように、自己位相変調が発生したとき、光パルスの立ち上がり部(進行方向に向かう光パルスの前縁部)では、レッドチャープと呼ばれる光パルスの瞬時周波数が低い方にシフトされ、逆に、光パルスの立ち下がり部分(進行方向に向かう光パルスの後縁部)では、ブルーチャープと呼ばれる光パルスの瞬時周波数が高い方にシフトされる。
【0034】
一方、自己位相変調による臨時周波数の変化が、光ファイバ伝送路の分散特性の符号により、パルス形状を変化させることについても上述してきた。図10は、正分散ファイバにおける伝播パルスの振る舞いを示す概念図であり、図11は、負分散ファイバにおける伝播パルスの振る舞いを示す概念図である。
【0035】
図10に示すように、正分散ファイバでは、パルスの立ち上がり部では位相速度が遅くなり、逆に、立ち下がり部では位相速度が速くなるため、パルス波形が圧縮される振る舞いを示す。このパルス圧縮はパルスのピークパワーを増加させるため、上述した光カー効果による屈折率変化を増大させ、自己位相変調を拡大する方向に作用することになる。
【0036】
一方、図11に示すように、負分散ファイバでは、パルスの立ち上がり部では位相速度が速くなり、パルスの立ち下がり部では位相速度が遅くなるため、パルス波形が広がる振る舞いを示す。そのため、自己位相変調によるパルス広がりの影響が強い場合には、隣接データ間における符号間干渉を拡大する方向に作用することになる。
【0037】
このように、光ファイバを伝送する光パルスは、自己位相変調の影響を受け、正分散の光ファイバを伝送する際には、パルス波形が圧縮され、負分散の光ファイバを伝送する際には、パルス波形が拡張されるようになる。本願発明は、このパルス圧縮/拡張によるパルス歪みの影響を低減するように、以下に詳述するような位相変調の初期位相および変調度の制御によってパルス信号のパルス幅を制御するものである。
【0038】
図1は、実施の形態1の光送信機の構成例を示した図である。この光送信機は、差動符号化回路3、レーザーダイオード4、第1の位相変調器5、強度変調器6、第2の位相変調器7、第1の移相器8a、第2の移相器8b、第1のドライバ回路9a、第2のドライバ回路9bを備えている。同図において、差動符号化回路3は、入力端子14から入力されたオン/オフ信号から形成される2値信号データであるData1をDPSK変調用データに符号化する。レーザーダイオード4は、直流光を発生させる。第1の位相変調器5は、差動符号化回路3から出力された差動符号化信号に応じてレーザーダイオード4から出力された直流光を(0、π)に位相変調する。強度変調器6は、位相変調器5から出力されたDPSK信号出力を入力端子15から入力された伝送速度に対応する正弦波クロック信号であるClock2に同期してRZ(Return−to−Zero)信号化する。第2の位相変調器7は、強度変調器6から出力されたRZ信号にビット同期して所望の初期位相ならびに位相変調の深さを設定する。第1のドライバ回路9aは、強度変調器6に入力されるClock2を所望の振幅値に増幅する、第2のドライバ回路9bは、は第2の位相変調器7に入力されるClock2を所望の振幅値に増幅する。第1の移相器8a、Clock2と第1の位相変調器5の出力信号を同期させ、第2の移相器8bは、Clock2と強度変調器6の出力信号をビット同期させる。
【0039】
つぎに、この実施の形態の動作について説明する。Data1に基づいて差動符号化回路3において生成された差動符号化信号は、第1の位相変調器5に入力される。第1の位相変調器5では、入力された差動符号化信号に基づいて、レーザーダイオード4から出力された直流光を(0、π)で位相変調することによりDPSK信号を生成する。強度変調器6では、入力されたNRZ−DPSK信号が第1のドライバ回路9aにより所望の振幅レベルに増幅されたClock2と同期して変調される強度変調によってRZ信号化され、RZ−DPSK信号を出力する。このとき、第1の移相器8aでは、強度変調器6に入力されたNRZ−DPSK信号とClock2の位相とが整合するように位相調整されるものとする。ここで生成されたRZ−DPSK信号は、第2の位相変調器7に入力され、第2のドライバ回路9bで所望の振幅レベルに増幅されたClock2と同期して位相変調が行われる。ここでも、第1の移相器8aで行われたのと同様な位相の調整が行われる。すなわち、第2の移相器8bでは、強度変調器6から出力されたRZ−DPSK信号とClock2の位相とが整合するように位相調整されるものとする。なお、第2の位相変調器7では、任意の初期位相および任意の変調度を設定することができる。
【0040】
ここで、強度変調器6から出力される信号をA(0,t)とし、この信号のパルス形状をガウス形状と仮定すると、次式で表される。
【0041】
【数2】
【0042】
(2)式において、A0は振幅、T0は最大値の半値幅をそれぞれ表している。
【0043】
また、(1)式で与えられたRZ信号波形を、第2の位相変調器7において位相変調を行った場合の信号波形B(0,t)は、次式で与えられる。
【0044】
【数3】
【0045】
(3)式において、kPは変調度、ΨCはRZ信号の初期位相、m(t)は位相変調信号である。また、この位相変調信号m(t)は次式で与えられる。
【0046】
【数4】
【0047】
(4)式において、φは位相変調信号の初期位相、fmは位相変調周波数、ωmは位相変調角周波数である。
【0048】
いま、(3)式に(2)式および(4)式を代入すると、第2の位相変調器7で位相変調された位相変調信号は、次式で表せる。
【0049】
【数5】
【0050】
図2(a)は、第2の位相変調器7から出力される信号波形の一例を示す図である。この信号波形は、最大値の半値幅がT0/4で、振幅A0=1のとき、(2)式で与えられるDPSK変調信号に初期位相φ=0、変調度kP=πの位相変調を行った場合である。また、図2(b)は、第2の位相変調器7でビット同期位相変調を行う前の差動データ位相差を示す図であり、図2(c)は、第2の位相変調器7でビット同期位相変調を行った後の差動データ位相差を示す図である。
【0051】
第2の位相変調器7では、Clock2とビット同期して位相変調が行われるため、ビットごとに同じ量の位相変調が施される。いま、DSPK信号データの位相が“0π00ππ0πππ0”のとき、初期位相0、変調度πのビット同期位相変調を行ったDPSK信号の位相は、“π0ππ00π000π”に変化する。
【0052】
ところで、DPSK信号では、受信時に自己遅延検波出力の差動データ位相差からデータ信号を復号するため隣接データ間の位相差が非常に重要となる。しかしながら、図2(b)および(c)に示すように、第2の位相変調器7でビット同期位相変調を行う前とビット同期位相変調を行った後のデータ間の位相差である差動データ位相差を比較した場合、いずれの場合にも隣接データ間の位相差は“ππ0π0π00π”であり、ビット同期位相変調を行う前と行った後では隣接データ間の位相差は変化しない。なお、ここでの図示は省略しているが、どのような変調度に設定しても、隣接データ間の位相差は、ビット同期位相変調の前後において変化することはない。
【0053】
したがって、第2の位相変調器7でビット同期位相変調が施されたDPSK信号が送信された場合であっても、ビット同期位相変調を行う前後で隣接データ間の位相差が変化しない信号が受信機において受信されるので、正しいデータ信号を復号することができる。
【0054】
つぎに、このビット同期位相変調を行った場合の効果について詳述する。図3(a)は、初期位相φ=0、変調度kP=πのときの、光電界波形および位相偏移量を示す図であり、図3(b)は、初期位相φ=0、変調度kP=πのときの、光電界波形および周波数偏移量を示す図である。
【0055】
図3(a)および(b)に示す図は、時間領域の波形であることに注意すれば、同図(b)に示すように、光電界の立ち上がり部では周波数偏移量がマイナス側に偏移しており、レッドチャープが生じていることが分かる。一方、光電界の立ち下がり部では周波数偏移量がプラス側に偏移しており、ブルーチャープが生じている。
【0056】
一方、図4(a)は、初期位相φ=π、変調度kP=πのときの、光電界波形および位相偏移量を示す図であり、図4(b)は、初期位相φ=π、変調度kP=πのときの、光電界波形および周波数偏移量を示す図である。初期位相をπだけ変化させた場合には、変化の前後でブルーチャープとレッドチャープの発生が逆転していることが分かる。すなわち、同図(b)に示すように、光電界の立ち上がり部では周波数偏移量がプラス側に偏移してブルーチャープが生じ、光電界の立ち下がり部では周波数偏移量がマイナス側に偏移してレッドチャープが生じている。このように、第2の位相変調器7において任意の初期位相ならびに変調度を設定することによりパルス波形内のチャープを制御することができる。
【0057】
なお、初期位相の制御とは別に、位相変調を行った場合には非線形な周波数変調がかけられるので、位相変調後の信号スペクトルは位相変調を行う前に比べて広がりを有することも考慮する必要がある。
【0058】
ところで、光ファイバを伝送する光信号は、光ファイバの有する分散特性によって、パルス幅が変動する。したがって、光パルスのパルス幅を制御しようとする場合には、光ファイバの分散特性についても考慮しなければならない。
【0059】
ここで、光ファイバ伝送特有の分散を表す波長分散係数をD[ps/km/nm]とするとき、このDは、群遅延時間をτ、波長をλ、群速度をVgとして、次式で与えられる。
【0060】
【数6】
【0061】
また、伝送波長の広がりを表す波長広がりδλは、波長をλ、信号の伝送速度をB、光の速度をCとして、次式で表される。
【0062】
【数7】
【0063】
さらに、分散によるパルス広がりδtは、Lは伝送距離をL、波長分散係数をD、信号占有帯域幅広がりをδλとして、次式で与えられる。
【0064】
【数8】
【0065】
伝送速度Bの増加によって信号の占有帯域幅が広くなるので、(8)式より、分散によるパルス広がりが、信号の占有帯域幅の増加に伴って増大することが分かる。
【0066】
上述したように、第2の位相変調器7において位相変調が行われた光信号は、信号占有帯域幅が広くなるため光ファイバの分散の影響を受けやすくなる。また、光ファイバの分散には、ゼロ分散波長を境に符号の異なる分散値を有し、正分散と負分散では位相変化の向きが反転する。つまり、分散の符号によりパルスの立ち上がりと立ち下がりの位相変化が逆転する。
【0067】
したがって、第2の位相変調器7において、分散により生ずる位相変化の向きと逆方向に位相変調を施した場合には、この位相変調は分散による位相変化を打ち消す方向に働き、逆に、分散により生じる位相変化の向きと同方向に位相変調を施した場合には、この位相変調は分散による位相変化を増長する方向に働くことになる。また、分散によるパルス広がりの影響は、この位相変調により占有帯域幅が広くなることでより速く発生するため、パルスのピークパワーの低下を促進する方向に寄与し、非線形効果の影響を小さくすることができる。
【0068】
つまり、位相変調器7では送信パルスにあらかじめ任意のチャープ方向とチャープ量を施すことにより、任意の分散における分散の振る舞いを制御できるため、同時に発生する非線形効果の影響を軽減させることができ、光ファイバ伝送路中における非線形効果と分散との相互作用によるパルスの振る舞いを制御することができる。
【0069】
光ファイバの任意の分散値において発生する自己位相変調による影響を打ち消すような適切な位相変調を施すことにより、自己位相変調によるパルス歪みを低減することができるため、DPSK変調信号の特徴を損なうことなく、従来のDPSK変調方式と比較して伝送距離の延伸化が可能となる。
【0070】
以上説明したように、この実施の形態の光送信機によれば、差動符号化回路は、2値データ信号に基づいて差動符号化信号を生成し、第1の位相変調器は、差動符号化回路から出力された差動符号化信号に応じて(0、π)の位相シフトキーイングを行い、強度変調器は、第1の位相変調器の出力信号にビット同期させて強度変調を行い、第2の位相変調器は、強度変調器の出力信号にビット同期させて位相変調を行い、光ファイバ伝送路の波長分散により生ずる位相変化を打ち消すように位相変調の初期位相および変調度を制御するようにしているので、自己位相変調により発生する伝送特性劣化を低減し、さらなる長距離伝送を実現することができる。
【0071】
実施の形態2.
図5は、この発明の実施の形態2の光送信機の構成例を示した図である。この光送信機は、図1に示す実施の形態1の送信機の強度変調器6を省略した構成で実現するものである。なお、その他の構成は実施の形態1と同一であり、同一構成部分には同一符号を付して示している。
【0072】
つぎに、この実施の形態の動作について説明する。Data1に基づいて差動符号化回路3において生成された差動符号化信号は、第1の位相変調器5に入力される。第1の位相変調器5では、入力された差動符号化信号に基づいて、レーザーダイオード4から出力された直流光を(0、π)で位相変調することによりDPSK信号を生成する。生成されたDPSK信号はNRZ−DPSK信号となる。このNRZ−DPSK信号は、第2の位相変調器7に入力され、ドライバ回路9で所望の振幅レベルに増幅されたClock2と同期して位相変調が行われる。なお、移相器8では、第1の位相変調器5から出力されたNRZ−DPSK信号とClock2の位相とが整合するように位相調整されるものとする。なお、第2の位相変調器7では任意に初期位相および変調度を設定することができる。
【0073】
この実施の形態では、実施の形態1と同様に最適な初期位相および変調量を設定することが可能な第2の位相変調器7を具備しているため、高い入射パワー時に発生する非線形効果と光ファイバの分散特性とによる相互作用によりもたらされる波形歪みが低減されるように位相変調を施すことが可能であり、実施の形態1と同様な効果が得られる。
【0074】
また、このように位相変調器を備えたNRZ−DPSK送信機を用いることにより、自己位相変調効果による波形歪みが低減できるため、DPSK信号の特徴を損なうことなく、従来のDPSK変調方式と比較して伝送距離の延伸化が可能となる。
【0075】
以上説明したように、この実施の形態の光送信機によれば、差動符号化回路は、2値データ信号に基づいて差動符号化信号を生成し、第1の位相変調器は、差動符号化回路から出力された差動符号化信号に応じて(0、π)の差動位相シフトキーイングを行い、第2の位相変調器は、第1の位相変調器の出力信号にビット同期させて位相変調を行い、光ファイバ伝送路の波長分散により生ずる位相変化を打ち消すように位相変調の初期位相および変調度を制御するようにしているので、自己位相変調により発生する伝送特性劣化を低減し、さらなる長距離伝送を実現するとともに、実装面積の縮小とコストの低下とを可能とする光送信機を実現することができる。
【0076】
実施の形態3.
図6は、この発明の実施の形態3の光送信装置の構成例を示した図である。この実施の形態は、異なる中心波長の直流光を発生する実施の形態1で構成した光送信機と、これらの複数の光送信機から出力される出力信号を合波する合波器とを備えた波長多重の光送信装置である。
【0077】
図6において、送信部12は、実施の形態1で示した複数の送信機11−1、11−2〜11−Nで構成されており、各送信機は、直流光を発生するレーザーダイオードの発振波長をすべて異ならせている。なお、各送信機の内部の構成は、実施の形態1で示した構成と同様であり、同一部分には同一符号を付している。送信部12のそれぞれの送信機11−1、11−2〜11−Nから出力されるDSPK信号は、合波器13で多重化され、光ファイバ伝送路16に送出される。
【0078】
光ファイバを伝送する光信号は、光ファイバの分散特性の影響で異なる伝播の振る舞いを示すことになるが、この実施の形態の光送信装置によれば、各送信機単位で波長ごとに最適な位相変調を行うことができるので、DPSK信号の特徴を損なうことなく非線形効果による波形歪みを低減するとともに、光信号の波長多重化を実現することができ、伝送距離の延伸化と伝送信号の大容量化を実現することができる。
【0079】
なお、この実施の形態では、送信部を構成する各送信機は実施の形態1で示した送信機からなる構成としたが、実施の形態2で示した送信機からなる構成としてもよく、この場合においても、送信機単位で送信波長ごとに最適な位相変調を行うことが可能であり、同様な効果を得ることができる。
【0080】
以上説明したように、この実施の形態の光送信装置によれば、実施の形態1または実施の形態2で示した中心波長の異なる光信号を出力する光送信機と、これらの複数の光送信機から出力される出力信号を合波する合波器とを備えるように構成しているので、自己位相変調により発生する伝送特性劣化を低減し、さらなる長距離伝送と大容量伝送を実現することができる。
【0081】
【発明の効果】
以上説明したとおり、この発明によれば、2値データ信号に基づいて生成された差動符号化信号に応じて(0、π)の位相シフトキーイングを行い、この位相シフトキーイングの出力信号にビット同期させて変調された強度変調信号を、さらにビット同期させて位相変調を行うようにしているので、自己位相変調により発生する伝送特性劣化を低減し、さらなる長距離伝送と大容量伝送を実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1の光送信機の構成例を示した図である。
【図2】(a)は、第2の位相変調器から出力される信号波形の一例を示す図であり、(b)は、第2の位相変調器でビット同期位相変調を行う前の差動データ位相差を示す図であり、(c)は、第2の位相変調器でビット同期位相変調を行った後の差動データ位相差を示す図である。
【図3】(a)は、初期位相φ=0、変調度kP=πのときの、光電界波形および位相偏移量を示す図であり、(b)は、初期位相φ=0、変調度kP=πのときの、光電界波形および周波数偏移量を示す図である。
【図4】(a)は、初期位相φ=π、変調度kP=πのときの、光電界波形および位相偏移量を示す図であり、(b)は、初期位相φ=π、変調度kP=πのときの、光電界波形および周波数偏移量を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態2の光送信機の構成例を示した図である。
【図6】この発明の実施の形態3の光送信装置の構成例を示した図である。
【図7】差動符号化の原理を示す説明図である。
【図8】(a)は、自己遅延干検波器の一般的な構成を示す図であり、(b)は、この自己遅延干渉検波器の動作を説明するためのデータ列を示す図であり、(c)は、自己遅延干渉検波器の識別器に入力される識別器入力データを示す図である。
【図9】光パルスによる自己位相変調の現象を示す概念図である。
【図10】正分散ファイバにおける伝播パルスの振る舞いを示す概念図である。
【図11】負分散ファイバにおける伝播パルスの振る舞いを示す概念図である。
【符号の説明】
1 Data、2 Clock、3 差動符号化回路、4 レーザーダイオード、5 第1の位相変調器、6 強度変調器、7 第2の位相変調器、8 移相器、8a 第1の移相器、8b 第2の移相器、9 ドライバ回路、9a 第1のドライバ回路、9b 第2のドライバ回路、11−1,11−2〜11−N 送信機、12 送信部、13 合波器、14 第1の入力端子、15 第2の入力端子、16 光伝送路、51 ビット遅延干渉計、53a,53b フォトディテクタ、53a,53b フォトディテクタ、55 減算器、57 識別器。
Claims (5)
- 2値データ信号に基づいて差動符号化信号を生成する差動符号化回路と、
前記差動符号化回路から出力された差動符号化信号に応じて(0、π)の差動位相シフトキーイング(DPSK:Differential Phase Shift Keying)を行う第1の位相変調器と、
前記第1の位相変調器の出力信号にビット同期させて強度変調を行う強度変調器と、
前記強度変調器の出力信号にビット同期させて位相変調を行う第2の位相変調器と、
を備えたことを特徴とする光送信機。 - 前記強度変調器は、前記第1の位相変調器から出力されるNRZ(Non−Return−to−Zero)−DPSK信号をRZ(Return−to−Zero)−DPSK信号に変換することを特徴とする請求項1に記載の光送信機。
- 2値データ信号に基づいて差動符号化信号を生成する差動符号化回路と、
前記差動符号化回路から出力された差動符号化信号に応じて(0、π)の差動位相シフトキーイング(DPSK:Differential Phase Shift Keying)を行う第1の位相変調器と、
前記第1の位相変調器の出力信号にビット同期させて位相変調を行う第2の位相変調器と、
を備えたことを特徴とする光送信機。 - 前記第2の位相変調器は、光ファイバ伝送路中で発生する非線形効果の影響を低減するように位相変調の初期位相および変調度を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の光送信機。
- 中心波長の異なる光信号を出力する請求項1〜4に記載の光送信機と、これらの複数の光送信機から出力される出力信号を合波する合波器とを備えたことを特徴とする光送信装置。
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