JP2004251880A - ワイヤロープ寿命判定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】使用中のワイヤロープの現在の状態から、その疲労状態及び残存寿命を高い精度で直接かつ簡単に判断すること。
【解決手段】巻き上げ装置に取付けたままのワイヤロープに縦振動を発生させ、その縦振動の固有振動数を測定する。この固有振動数測定を、ワイヤロープ取り替え直後も未使用状態と、該ワイヤロープの所定期間使用後の既使用状態でそれぞれ行い、未使用のワイヤロープ固有振動数foと既使用のワイヤロープ固有振動数fiを求め、その比であるワイヤロープ固有振動数変化率、fo/fiを用いて、予め求めておいたワイヤロープ固有振動数変化率と寿命比率との相関関係から、ワイヤロープの余寿命を判定する。
【選択図】 図1
【解決手段】巻き上げ装置に取付けたままのワイヤロープに縦振動を発生させ、その縦振動の固有振動数を測定する。この固有振動数測定を、ワイヤロープ取り替え直後も未使用状態と、該ワイヤロープの所定期間使用後の既使用状態でそれぞれ行い、未使用のワイヤロープ固有振動数foと既使用のワイヤロープ固有振動数fiを求め、その比であるワイヤロープ固有振動数変化率、fo/fiを用いて、予め求めておいたワイヤロープ固有振動数変化率と寿命比率との相関関係から、ワイヤロープの余寿命を判定する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ワイヤロープ、例えば、クレーンやエレベータ等の巻上げ装置において負荷を与えられつつ使用されるワイヤロープの寿命を判定する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
クレーンやエレベータ等の巻上げ装置に装着されて使用されているワイヤロープは、重量物を吊り下げたり吊り上げたりする際に負荷を繰り返し与えられるとともに、巻き取りドラムやシーブを通過する際に曲げ応力を受け、疲労が激しい。かかる巻上げ装置において、ワイヤロープが蓄積した疲労により折損したりすることを防止する必要がある。このため、ワイヤロープの疲労状態や残存寿命を調べ、古くなったワイヤロープを新しいものと交換している。
【0003】
従来、ワイヤロープの疲労状態や残存寿命を調べる方法として一般的に知られているもののひとつに、ワイヤロープの外観検査(従来技術1)がある。この外観検査では、検査対象のワイヤロープにおいて、1撚りの区間に外表素線の断線数が幾つ存在するかを数えるとともに、ロープ径の減少量を測定する。そして、断線数が全外表素線数の10%以上の数値となっているとき、又は、ロープ径の減少量が公称径の7%以上となっているときに
は、そのワイヤロープは残存寿命がなく交換時期にあると判断する。
【0004】
また、検査対象のワイヤロープを投光器と受光器との間に設置し、ワイヤーロープを移動させつつ、受光器で測定される受光量によりワイヤロープの損傷状態を診断するワイヤロープの診断方法(従来技術2)がある(例えば、特許文献1、2を参照)。
さらに、巻上げ装置に使用されているワイヤロープからサンプルを採取し、このサンプルの引張強さを測定し、使用前のワイヤロープの引張強さと比較して残存寿命を判定する方法(従来技術3)もある。
【0005】
また、ニーマン式によるワイヤーロープの破断寿命計算結果と、ワイヤロープの実際の曲げ回数との比率を寿命比率データとし、ワイヤロープの内のシーブを通過していない部分の素線ねじり試験結果と、ワイヤロープの内のシーブを通過している部分の素線ねじり試験結果との比率を劣化寿命データとし、これらの寿命比率データと劣化寿命データとの相関曲線を予め求めておき、寿命判定しようとする検査対象のワイヤロープの捨て巻き部の素線ねじり試験結果と、検査対象のワイヤロープのシーブを通過した部分の素線ねじり試験結果との比率を現在劣化比率として、予め求めておいた相関曲線から、現在寿命比率を求めるクレーン用ワイヤロープ寿命判定方法(従来技術4)がある(例えば、特許文献3を参照)。
【0006】
また、クレーンに使用されるワイヤロープの寿命は、ワイヤロープに加えられる負荷の大きさ、及びその負荷が加えられた状態でシーブやドラムによりワイヤロープが受ける繰り返し曲げ回数、すなわち、負荷ごとの発生頻度により決定されるといわれている。この考え方に基づき、ワイヤロープに加わる負荷の大きさ及び発生頻度を測定してワイヤロープの残存寿命を判定する方法がある。かかる方法のひとつに、負荷の大きさを歪センサーあるいはロードセルによって測定し、発生頻度をパルス発生器等で測定し、これらの積算値から残存寿命を判定する方法(従来技術5)がある(例えば、特許文献4を参照)。
【0007】
また、ワイヤロープに加わる負荷の大きさを表すパラメータとして、ワイヤロープ駆動モータの負荷電流を複数の電流値範囲に分割する形で検出し、同時に、負荷ごとの発生頻度に相当するパラメータとして、ワイヤロープ駆動モータの回転速度を検出し、回転速度の時間積分で表されるワイヤロープの移動距離を電流値範囲ごとに算出しワイヤロープの残存寿命を予測する方法(従来技術6)もある(例えば、特許文献5を参照)。
【0008】
【特許文献1】
特開平11−325841号公報
【特許文献2】
特開平11−325844号公報
【特許文献3】
特開平9−178611号公報
【特許文献4】
特開昭62−17638号公報
【特許文献5】
特開平10−7323号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した各従来技術には以下の問題点がある。すなわち、従来技術1の外観検査では、検査対象ワイヤロープの内部まで検査してはおらず、内部に素線断線が存在するか否かを判別できない。また、使用中のワイヤロープの外表にはグリスやダスト等が付着しており、外表の目視検査を行いにくい状態となっており、素線の断線数を数えることが困難である。さらに、素線が断線する時期はワイヤロープとシーブとの接触状況によってばらつき、残存寿命の判定に誤差を生じさせる。このため、外観検査により、検査対象ワイヤロープの残存寿命を正確に判定することは困難である。したがって、残存寿命がまだ充分にある場合でも、安全性を考慮して残存寿命を短めに判定し、ワイヤロープを早期に交換している。かかる早期交換によって、ワイヤロープ交換コストの増大を招くこととなってしまっている。
【0010】
従来技術2のワイヤロープの診断方法では、検査対象ワイヤロープの内部まで充分に検査することができず、また、ワイヤロープの損傷状態の発生と破断寿命との間には大きなばらつきが存在し、残存寿命を正確に判定することは困難である。したがって、ワイヤロープの残存寿命を短めに判定して早期交換することとなり、ワイヤロープ交換コストが増大する。加えて、この方法には、投光器や受光器といった特別な測定機器を設置しなければならないという問題もある。
【0011】
従来技術3の残存寿命を判定する方法では、使用されたワイヤロープの引張強さと未使用のワイヤロープの引張強さとの間には、多くのばらつきが生じ、残存寿命を正確に判定することは困難である。したがって、ワイヤロープの残存寿命を短めに判定して早期交換することとなり、ワイヤロープ交換コストが増大する。
【0012】
従来技術4のクレーン用ワイヤロープ寿命判定方法では、検査対象のワイヤロープをクレーンから取り外して素線ねじり試験を行わなければならず、作業工程が複雑となり、残存寿命の判定に時間がかかってしまう。
従来技術5の残存寿命の判定方法では、通常、クレーンにおいてワイヤロープを使用するために必要とされない検出器を設置する必要がある。さらに、これらの検出器の保守管理が必要となり、設備費や保守管理費が増加してしまう。
【0013】
従来技術6の残存寿命の判定方法では、検査対象のワイヤロープの残存寿命を間接的に評価しており、実際に検査対象のワイヤロープが有する残存寿命と、判定された残存寿命との間に乖離を生じるおそれがある。
本発明は、上記した従来の技術の問題点を除くためになされたものであり、その目的とするところは、使用中のワイヤロープの現在の状態から、その疲労状態及び残存寿命を高い精度で直接かつ簡単に判断可能なワイヤロープ寿命判定方法を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、その課題を解決するために以下のような構成をとる。請求項1の発明に係るワイヤロープ寿命判定方法は、未使用のワイヤロープについて、このワイヤロープが有する強度を反映する値を計測し、既に使用されているワイヤロープについても、この既使用のワイヤロープが有する強度を反映する値及び残存寿命を反映する値を計測し、これらの未使用のワイヤロープと既使用のワイヤロープとからそれぞれ計測された強度を反映する値の間の比を計測値比として算出し、算出した計測値比と前記残存寿命を反映する値との間に成立する相関関係を求めておき、使用中の検査対象のワイヤロープについて、この検査対象のワイヤロープが有する強度を反映する値を計測し、この計測値と未使用のワイヤロープの前記強度を反映する値との間の比を、検査対象のワイヤロープの計測値比として算出し、検査対象のワイヤロープの計測値比を前記相関関係に適用し、前記相関関係から検査対象のワイヤロープが有する残存寿命を反映する値を読み取り、検査対象のワイヤロープの残存寿命を判定する。
【0015】
請求項1の発明によると、予め、ワイヤロープが有する強度を反映する値から算出した計測値比と、残存寿命を反映する値との間に成立する相関関係を求めておき、この相関関係と、残存寿命を判定する時点で検査対象のワイヤロープが有する強度を反映する値とを用いて、残存寿命を判定している。したがって、残存寿命を判定する時点において検査対象のワイヤロープが実際に有する強度を用いて残存寿命を直接判定することとなり、検査対象のワイヤロープの使用履歴がいかなるものであるかを気にする必要はなく、判定する時点におけるワイヤロープの残存寿命を正確に判定できる。残存寿命が正確に判定されるので、各ワイヤロープについて適切な交換時期をそれぞれ知ることができる。
【0016】
また、検査対象のワイヤロープの全体について、その強度を反映する値を計測することができ、検査対象のワイヤロープの一部分の状態から全体の状態を推測するということを回避できる。
さらに、目視検査を必要とせず、検査対象のワイヤロープの異常部分を見逃すこともない。
【0017】
なお、相関関係を求めるにあたって、未使用のワイヤロープについてその強度を反映する値を計測した後、このワイヤロープに負荷を与えて疲労を蓄積させて既使用のワイヤロープとし、この既使用のワイヤロープから再びその強度を反映する値を計測し、これらの各計測値から計測値比を算出することが好ましい。このようにすると、各ワイヤロープの個体差から生じる誤差を防止できる。また、検査対象のワイヤロープについても同様であり、検査対象のワイヤロープが未使用の状態で予め強度を反映する値を計測しておき、残存寿命を判定する際に再び強度を反映する値を計測し、これらの各計測値から計測値比を算出することが好ましい。
【0018】
ただし、ワイヤロープの個体差が非常に小さな場合は、各ワイヤロープについて、それぞれが未使用状態で有する強度を反映する値を計測する代わりに、最初にひとつのワイヤロープが未使用状態で有する強度を反映する値を計測しておき、その後は、この計測値を用いて各ワイヤロープの計測値比を算出することもできる。また、最初に複数のワイヤロープが未使用状態で有する強度を反映する値を計測して平均値を算出しておき、その後は、この平均値を用いて各ワイヤロープの計測値比を算出することもできる。
【0019】
また、相関関係は、ワイヤロープの種類別に作成し、検査対象のワイヤロープの種類に対応する相関関係を用いることが好ましい。これにより、ワイヤロープは種類ごとにその性状が異なるので、かかる性状の相異に起因する誤差を防止できる。
さらに、相関関係は、相関関係図を作成することで求めても、相関式を作成して求めても良い。例えば、相関関係図から最小二乗法等によって相関式を得ることができる。
【0020】
また、ワイヤロープが有する強度を反映する値として、例えば、ワイヤロープの弾性係数の値、ワイヤロープの弾性係数を反映する値、ワイヤロープの断面形状を反映する値等を挙げることができる。ワイヤロープの断面形状を反映する値としては、断面積、断面二次モーメント等を挙げることができる。
請求項2の発明に係るワイヤロープ寿命判定方法は、請求項1に記載のワイヤロープ寿命判定方法であって、前記強度を反映する値が、弾性係数を反映する値である。
【0021】
発明者は、ワイヤロープの破断試験から、負荷を繰り返し与えられる使用中のワイヤロープにおいて、疲労が進行して蓄積し、強度が低下し、強度低下に伴って伸びも著しく低下していることを見出した。そして、ワイヤロープの伸びはその弾性係数と関連しており、未使用のワイヤロープと比べて既使用のワイヤロープでは弾性係数が著しく変化しているものと考え、ワイヤロープの弾性係数の変化を利用して使用中のワイヤロープの寿命判定を行えばよいことに想到した。したがって、使用中のワイヤロープが有する弾性係数を反映する値を計測することによって、現在の強度を知ることができ、その残存寿命を正確に判定できる。
【0022】
なお、ワイヤロープが有する弾性係数を反映する値として、ワイヤロープの縦振動の固有振動数、ワイヤロープの縦振動の振幅の減衰時間等を挙げることができる。
請求項3の発明に係るワイヤロープ寿命判定方法は、請求項2に記載のワイヤロープ寿命判定方法であって、前記弾性係数を反映する値が固有振動数であり、前記計測値比が、計測対象のワイヤロープの固有振動数を、未使用のワイヤロープの固有振動数で除して得られる固有振動数変化率である。
【0023】
発明者は、ワイヤロープが有する固有振動数はそのワイヤロープが有する弾性係数を反映していることを実験より見出した。したがって、使用中のワイヤロープの固有振動数を計測して固有振動数変化率を算出することによって、そのワイヤロープの強度変化を捉えるとともに、固有振動数を計測する時点における強度を知ることができ、その残存寿命を正確に判定できる。
【0024】
請求項4の発明に係るワイヤロープ寿命判定方法は、請求項3に記載のワイヤロープ寿命判定方法であって、前記計測対象のワイヤロープから固有振動数を計測する際に、このワイヤロープに張力を与え、さらに、軸方向に縦振動を生ぜしめて、この生じた縦振動から固有振動数を計測する。
ワイヤロープに生じる縦振動を計測する方法は特に限定されるものではないが、例えば、従来使用されている圧電型加速度センサーを振動センサーとして用いて縦振動を計測する方法を挙げることができる。
【0025】
張力を与えられたワイヤロープの軸方向に生じる縦振動と、このワイヤロープが有する固有振動数との間には、次式(1)が成立している。この(1)式を用いて縦振動から固有振動数を計測可能となる。
f=(λ/2πL)×(E/ρ)1/2 ……(1)
但し、f:固有振動数(Hz)
λ:係数(λ=1/(μ+1/3))
L:ワイヤロープ長さ(m)
E:縦弾性係数(Pa)
ρ:ワイヤロープ密度(kg/m3)
μ:ワイヤロープに働く張力/ワイヤロープに働く重力
【0026】
請求項5の発明に係るワイヤロープ寿命判定方法は、請求項4に記載のワイヤロープ寿命判定方法であって、前記計測対象のワイヤロープが、重量物を吊下する巻上げ装置に装着して使用されるワイヤロープであり、この巻上げ装置から所定荷重の吊荷を吊下した後、この吊荷を吊り上げて計測対象のワイヤロープに張力を与え、さらに、全速で吊荷を巻き下げて急停止して、前記縦振動を計測対象のワイヤロープに生ぜしめる。
【0027】
請求項5の発明によると、巻上げ装置に使用されているワイヤロープの残存寿命判定を、そのワイヤロープが巻上げ装置に装着された状態のまま直接行うことができ、残存寿命判定が簡単かつ迅速なものとなる。
請求項6の発明に係るワイヤロープ寿命判定方法は、請求項2に記載のワイヤロープ寿命判定方法であって、計測対象のワイヤロープに張力を与え、さらに、軸方向の縦振動を生ぜしめて、この生じた縦振動の振幅が所定の割合まで減衰するのに要した減衰時間が、前記弾性係数を反映する値であり、前記計測値比が、計測対象のワイヤロープの減衰時間を、未使用のワイヤロープの減衰時間で除して得られる減衰時間変化率である。
【0028】
発明者は、ワイヤロープの縦振動の振幅が減衰するのに要する減衰時間はそのワイヤロープが有する弾性係数を反映していることを実験より見出した。したがって、ワイヤロープの縦振動の振幅が所定の割合まで減衰するのに要した減衰時間を計測して減衰時間変化率を算出することによって、ワイヤロープの強度変化を捉えることができ、減衰時間を計測する時点における強度を知るとともにその残存寿命を正確に判定できる。
【0029】
なお、ワイヤロープに生じる縦振動を計測する方法は特に限定されるものではないが、例えば、従来使用されている圧電型加速度センサーを振動センサーとして用いて縦振動の振幅の減衰時間を計測する方法を挙げることができる。
また、減衰時間を計測する際に使用する振動の振幅の減衰割合は、一定の割合に限定されるものではなく、振幅を計測する機器の能力に応じてこの割合を任意に選定可能である。例えば、振幅の減衰割合を1/2とすると1/2の振幅となるまでの減衰時間が短く、減衰割合を1/3より小さくすると振幅の判別が困難となる場合には、減衰割合を1/3とすることができる。
【0030】
請求項7の発明に係るワイヤロープ寿命判定方法は、請求項6に記載のワイヤロープ寿命判定方法であって、前記計測対象のワイヤロープが、重量物を吊下する巻上げ装置に装着して使用されるワイヤロープであり、この巻上げ装置から所定荷重の吊荷を吊下した後、この吊荷を吊り上げて計測対象のワイヤロープに張力を与え、さらに、全速で吊荷を巻き下げて急停止して、前記縦振動を計測対象のワイヤロープに生ぜしめる。
【0031】
請求項7の発明によると、巻上げ装置に使用されるワイヤロープの残存寿命判定を、ワイヤロープが巻上げ装置に装着された状態のまま直接行うことができ、残存寿命判定が簡単かつ迅速なものとなる。
請求項8の発明に係るワイヤロープ寿命判定方法は、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のワイヤロープ寿命判定方法であって、前記残存寿命を反映する値が、未使用ワイヤロープの残存寿命と計測対象のワイヤロープの残存寿命との間の比からなる寿命比率である。
【0032】
請求項8の発明によると、残存寿命を無次元化した寿命比率により表しているので、寿命比率を求めてから残存寿命を算出できる。したがって、使用条件が異なる巻上げ装置に使用されるワイヤロープについても、ひとつの相関関係の図や式を共通して用いることができる。
【0033】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本実施の形態では、ワイヤロープの寿命判定を、ワイヤロープをクレーン等の巻き上げ装置に取付けたまま行う。巻き上げ装置の一例として、天井走行式クレーンの巻き上げ装置を例にして、その概略を図2に示す。
ドラム1から繰り出されたワイヤロープ2は下部シーブ3と上部シーブ4を交互に通過して、その後ロープバランス金具5に接続されている。そして、下部シーブ3を下げるに従い、ワイヤロープ2は各シーブ3,4を通過し、曲げ戻しを繰り返しうける。
【0034】
図2に示すような巻き上げ装置にワイヤロープを取付けたまま、ワイヤロープに縦振動を発生させ、該縦振動の固有振動数を計測する。縦振動の発生方法としては、例えば図2に示す巻き上げ装置のフック6に、所定荷重の吊荷を吊下して、この吊荷を吊り上げたのち、全速で巻下げ、急停止(急制動をかけて)して、発生させることが好ましい。
【0035】
ワイヤロープに発生させた縦振動の計測方法は、とくに限定されないが、例えば上部シーブ、下部シーブ等に配設した圧電型加速度センサー等からなる振動センサーを用いて振動を計測し、周波数解析により縦振動の固有振動数fを求めることが好ましい。
縦振動の固有振動数fは、前記(1)式で決定される。ワイヤロープの使用に伴い疲労が進行し、ワイヤロープの縦弾性係数Eの変化を介して、固有振動数fが大きく変化する。
【0036】
固有振動数の測定時期は、ワイヤロープ取替え直後、すなわちワイヤロープが未使用の状態にあるときと、このワイヤロープを所定期間使用して既に使用した状態にあるときである。これにより、寿命判定のためにワイヤロープを装置から取り外す必要がなく、寿命測定に要する時間が短縮できる。
まず、ワイヤロープ取替え直後の未使用のワイヤロープの固有振動数foを、上記したような方法で縦振動を発生させて計測しておく。そして、所定期間使用したのち、再び同じ条件で所定期間使用後の既使用のワイヤロープの固有振動数fiを計測する。そして、foとfiの計測値比、すなわち、fo/fiをワイヤロープ固有振動数変化率と定義する。
【0037】
上記のようにして算出した固有振動数変化率fo/fiを用いて、予め求めておいたワイヤロープ固有振動数変化率fo/fiと寿命比率の相関図あるいは相関式から、寿命比率を推定する。
予め、各種ワイヤロープの未使用品と既使用品についてワイヤロープ固有振動数変化率fo/fiと、既使用状態での残存寿命とについて計測し、ワイヤロープ固有振動数変化率と寿命比率との関係(相関図)を求めておく。
【0038】
寿命比率は、取替え直後で未使用状態のワイヤロープを0%とし、破断時を100%とする。所定期間使用後の寿命比率は、既使用のワイヤロープから素線試験片を採取し、ねじり試験を実施し、ねじり回数を求める。なお、未使用のワイヤロープについても同様のねじり試験を実施し、未使用品のねじり回数を求めておく。そして、既使用品のねじり回数と未使用品のねじり回数との比から残存寿命を算定し、所定期間使用後の寿命比率に換算する。
【0039】
このようにして得られたワイヤロープ固有振動数変化率fo/fiと寿命比率とを用いて、ワイヤロープ固有振動数変化率との寿命比率との関係(相関図、相関式)と求めておく。ワイヤロープ固有振動数変化率fo/fiと寿命比率の関係(相関図)の一例を、図1に示す。なお、ワイヤロープ固有振動数変化率fo/fiと寿命比率の関係を相関式として、表示しても良い。
【0040】
得られた寿命比率から、残存寿命が存在するワイヤロープについては、そのまま巻き上げ装置から取り外すことなく、さらに使用を継続する。所定期間使用後、同様に固有振動数fiを測定し、寿命比率を算出する。使用限界に達したのち取り替える。なお、使用限界は寿命比率:80%程度とすることが安全上好ましい。
【0041】
次に、本実施の形態の実施例について説明する。
製鉄所の製鋼工場のレードルクレーン3基、および連鋳ヤードのスラブ搬出クレーン2基について、本実施の形態の寿命判定方法を適用し、オンラインでワイヤロープに縦振動を発生させ、固有振動数fiを測定し、寿命を判定した。縦振動は、各クレーンで決められた所定荷重(レードルクレーン:400t、スラブ搬送クレーン:74t)の吊荷を吊り上げ、全速巻下げ、急制動を加えて、発生させた。発生した縦振動を上部シーブに設置した振動センサーにより測定し、図3に示すように波形から固有振動数fiを求めた。なお、取替え直後の未使用のワイヤロープについても、同様に固有振動数foを測定した。
【0042】
得られた固有振動数foとfiから、これらの比、固有振動数変化率fo/fiを算出し、予め求めたワイヤロープ固有振動数変化率との寿命比率との関係(相関図)から残存寿命をもとめ、寿命比率が80%に達するまで使用した。その結果、従来に比べ取替えまでの使用期間が30%延長できた。なお、従来の寿命判定方法は、サンプルでの寿命判定による方法とした。
【0043】
次に、本発明の第2の実施の形態を図面に基づいて説明する。
まず、図4及び図5を参照して本実施の形態に係る相関関係Cの求め方について説明する。
相関関係Cを求めるために、同一種類の健全な未使用状態のワイヤロープR1を複数本準備する。
未使用の各ワイヤロープR1に対して、第1の実施の形態で行ったのと同様のねじり試験をそれぞれ実施し、未使用の各ワイヤロープR1の残存寿命RLR1oをそれぞれ算出する。
【0044】
残存寿命RLR1oをそれぞれ算出した後、各未使用の各ワイヤロープR1を図4に示すクレーン20の巻上げ装置21にそれぞれ装着し、所定荷重Wの吊荷22をクレーン20で吊下して、それぞれの未使用ワイヤロープR1に所定の張力Fを与える。なお、クレーン20及び巻上げ装置21は、従来から使用されているものと同様のものであり、第1の実施の形態のものと同様の構成を有する。そして、全速で吊荷22を巻き下げて急停止して、未使用の各ワイヤロープR1にそれぞれ縦振動を生じさせる。未使用の各ワイヤロープR1の縦振動の振幅が1/3まで減衰する減衰時間TR1oをクレーン20に配設した圧電型加速度センサー等の振動センサーによってそれぞれ計測する。なお、この振動センサーは、従来から使用されているものと同様の構成を有する。
【0045】
その後、各ワイヤロープR1を巻上げ装置21において使用し、疲労を内部で進行させて蓄積し、各ワイヤロープR1を既に使用されている状態にする。なお、各ワイヤロープR1を使用する期間は、ワイヤロープR1ごとに異なった期間とし、各ワイヤロープR1に蓄積される疲労を相互に異なったものとする。
そして、蓄積した疲労がそれぞれ異なる既使用の各ワイヤロープR1について減衰時間TR1iを計測する。減衰時間TR1iの計測は、減衰時間TR1oを計測したのと同様の手順で行う。すなわち、所定荷重Wの吊荷22をクレーン20で吊下し、各ワイヤロープR1に張力Fを与え、全速で吊荷22を巻き下げてから急停止し、各ワイヤロープR1にそれぞれ縦振動を生じさせ、この縦振動の振幅が1/3まで減衰する減衰時間TR1iを前記振動センサーによってそれぞれ計測する。
【0046】
減衰時間TR1iを計測したら、各ワイヤロープR1を巻上げ装置21から取り外す。取り外した各ワイヤロープR1について、再び、第1の実施の形態で行ったのと同様のねじり試験をそれぞれ実施し、既使用の各ワイヤロープR1の残存寿命RLR1iをそれぞれ算出する。
各ワイヤロープR1についてそれぞれ算出した残存寿命RLR1o及びRLR1iと、次式(2)とから、各ワイヤロープR1の寿命比率RLRを算出する。
【0047】
RLR=(RLR1o−RLR1i)/RLR1o×100 ……(2)
寿命比率RLRが、ワイヤロープの全寿命の期間中でどれだけの寿命が既になくなっているかを相対的に無次元化して表している。例えば、未使用のワイヤロープR1は全寿命が残っており、その寿命比率RLRは0%である。また、破断直前の既使用のワイヤロープR1は全寿命を全うしており、その寿命比率RLRは100%である。
【0048】
また、各ワイヤロープR1についてそれぞれ測定した減衰時間TR1o及びTR1iと、次式(3)とから、既使用の各ワイヤロープR1の減衰時間変化率TRを算出する。
TR=TR1i/TR1o ……(3)
表1に、12本のワイヤロープR1からそれぞれ得られた寿命比率RLR、減衰時間TR1o、減衰時間TR1i及び減衰時間変化率TRの一例を示す。
【0049】
【表1】
【0050】
各ワイヤロープR1の寿命比率RLR及び減衰時間変化率TRの算出をしたら、寿命比率RLRと減衰時間変化率TRとの関係を相関関係図上にプロットする。相関関係図は、例えば、縦軸に減衰時間変化率TRをとり、横軸に寿命比率RLRをとってある。この相関関係図が相関関係Cを表す。図5に、表1の寿命比率RLR及び減衰時間変化率TRをプロットして作成した相関関係図の一例を示す。
【0051】
そして、同様の手順によって、異なる種類のワイヤロープについても相関関係Cをそれぞれ求めておく。
次に、このようにして得られた相関関係Cを用いて、測定対象のワイヤロープR2の残存寿命を判定する方法について説明する。
ここで、この測定対象のワイヤロープR2は、クレーン20の巻上げ装置21に装着されて使用中のものである。
【0052】
まず最初、ワイヤロープR2を巻上げ装置21に装着したときに、未使用の状態のワイヤロープR2の減衰時間TR2oを計測しておく。減衰時間TR2oの計測は、減衰時間TR1oを計測したときと同様にして実施する。すなわち、所定荷重Wの吊荷22をクレーン20で吊下し、ワイヤロープR2に張力Fを与え、全速で吊荷22を巻き下げてから急停止し、ワイヤロープR2に縦振動を生じさせ、この縦振動の振幅が1/3まで減衰する減衰時間TR2oを前記振動センサーによってそれぞれ計測する。
【0053】
減衰時間TR2oの計測を終えたら、ワイヤロープR2を巻上げ装置21にて使用する。使用開始することでワイヤロープR2は既使用のワイヤロープとなり、使用とともに内部に疲労が徐々に蓄積し、強度低下が進行し、ワイヤロープR2の弾性係数も低下していく。ある程度の期間にわたって、ワイヤロープR2を使用したら、このワイヤロープR2の残存寿命の判定を行う。この判定は、ワイヤロープR2を巻上げ装置21に装着した状態のままで直接実施する。
【0054】
減衰時間TR2oを計測したときと同様に、残存寿命判定時におけるワイヤロープR2の減衰時間TR2iを計測する。
そして、ワイヤロープR2から得られた減衰時間TR2o及びTR2iと、次式(4)とから、ワイヤロープR2の減衰時間変化率TRR2を算出する。
TRR2=TR2i/TR2o×100 ……(4)
【0055】
算出した減衰時間変化率TRR2を相関関係Cに適用して、対応する寿命比率RLRR2を読み取る。読み取った寿命比率RLRR2が、予め定められている最大寿命比率RLRMAXの値よりも大きな値となっている場合は、ワイヤロープR2が使用限界に達していると判定する。例えば、最大寿命比率RLRMAXを安全率を考慮して80%と設定する。そして、寿命比率RLRR2が最大寿命比率RLRMAXに達するか、又は、超えるかしている場合には、ワイヤロープR2が使用限界に達していると判断し、ワイヤロープR2を新しいものと交換する。
【0056】
なお、残存寿命の判定は、必要に応じて適宜行われる。例えば、寿命比率RLRR2が60ないし70%にあると考えられる時期に最初の判定を行い、以後、判定を行う間隔を次第に短くしていく。
また、寿命比率RLRR2の変化率を調べて、この変化率が急激に大きくなっている場合には、ワイヤロープR2に何らかの問題があり、強度低下が急激に進行していると判断できる。そして、ワイヤロープR2を直ちに交換するか、次回の残存寿命の判定時期を早くする。
【0057】
さらに、読み取った寿命比率RLRR2を、巻上げ装置21に装着されて使用されるワイヤロープの平均的な全寿命月数に掛け合わせることで、ワイヤロープR2が全寿命月数のうちどれだけの寿命月数が既になくなっているかを具体的に知ることもできる。
【0058】
【発明の効果】
本発明は、上記のようなワイヤロープ寿命判定方法であるので、使用中のワイヤロープの現在の状態から、その疲労状態及び残存寿命を高い精度で直接かつ簡単に判断できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態に係るワイヤロープ固有振動数変化率と寿命比率の間の相関関係の一例を示す相関関係図である。
【図2】天井走行式クレーンの巻上げ装置の一例を模式的に示す概略説明図である。
【図3】未使用ワイヤロープと使用済ワイヤロープに発生させた縦振動の振動波形の一例を示す説明図である。
【図4】第2の実施の形態に係るワイヤロープが使用されているクレーンの斜視図である。
【図5】第2の実施の形態に係るワイヤロープ減衰時間変化率と寿命比率の間の相関関係の一例を示す相関関係図である。
【符号の説明】
1 ドラム
2 ワイヤロープ
3 下部シーブ
4 上部シーブ
5 ロープバランス金属
6 フック
20 クレーン
21 巻上げ装置
22 吊荷
【発明の属する技術分野】
本発明は、ワイヤロープ、例えば、クレーンやエレベータ等の巻上げ装置において負荷を与えられつつ使用されるワイヤロープの寿命を判定する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
クレーンやエレベータ等の巻上げ装置に装着されて使用されているワイヤロープは、重量物を吊り下げたり吊り上げたりする際に負荷を繰り返し与えられるとともに、巻き取りドラムやシーブを通過する際に曲げ応力を受け、疲労が激しい。かかる巻上げ装置において、ワイヤロープが蓄積した疲労により折損したりすることを防止する必要がある。このため、ワイヤロープの疲労状態や残存寿命を調べ、古くなったワイヤロープを新しいものと交換している。
【0003】
従来、ワイヤロープの疲労状態や残存寿命を調べる方法として一般的に知られているもののひとつに、ワイヤロープの外観検査(従来技術1)がある。この外観検査では、検査対象のワイヤロープにおいて、1撚りの区間に外表素線の断線数が幾つ存在するかを数えるとともに、ロープ径の減少量を測定する。そして、断線数が全外表素線数の10%以上の数値となっているとき、又は、ロープ径の減少量が公称径の7%以上となっているときに
は、そのワイヤロープは残存寿命がなく交換時期にあると判断する。
【0004】
また、検査対象のワイヤロープを投光器と受光器との間に設置し、ワイヤーロープを移動させつつ、受光器で測定される受光量によりワイヤロープの損傷状態を診断するワイヤロープの診断方法(従来技術2)がある(例えば、特許文献1、2を参照)。
さらに、巻上げ装置に使用されているワイヤロープからサンプルを採取し、このサンプルの引張強さを測定し、使用前のワイヤロープの引張強さと比較して残存寿命を判定する方法(従来技術3)もある。
【0005】
また、ニーマン式によるワイヤーロープの破断寿命計算結果と、ワイヤロープの実際の曲げ回数との比率を寿命比率データとし、ワイヤロープの内のシーブを通過していない部分の素線ねじり試験結果と、ワイヤロープの内のシーブを通過している部分の素線ねじり試験結果との比率を劣化寿命データとし、これらの寿命比率データと劣化寿命データとの相関曲線を予め求めておき、寿命判定しようとする検査対象のワイヤロープの捨て巻き部の素線ねじり試験結果と、検査対象のワイヤロープのシーブを通過した部分の素線ねじり試験結果との比率を現在劣化比率として、予め求めておいた相関曲線から、現在寿命比率を求めるクレーン用ワイヤロープ寿命判定方法(従来技術4)がある(例えば、特許文献3を参照)。
【0006】
また、クレーンに使用されるワイヤロープの寿命は、ワイヤロープに加えられる負荷の大きさ、及びその負荷が加えられた状態でシーブやドラムによりワイヤロープが受ける繰り返し曲げ回数、すなわち、負荷ごとの発生頻度により決定されるといわれている。この考え方に基づき、ワイヤロープに加わる負荷の大きさ及び発生頻度を測定してワイヤロープの残存寿命を判定する方法がある。かかる方法のひとつに、負荷の大きさを歪センサーあるいはロードセルによって測定し、発生頻度をパルス発生器等で測定し、これらの積算値から残存寿命を判定する方法(従来技術5)がある(例えば、特許文献4を参照)。
【0007】
また、ワイヤロープに加わる負荷の大きさを表すパラメータとして、ワイヤロープ駆動モータの負荷電流を複数の電流値範囲に分割する形で検出し、同時に、負荷ごとの発生頻度に相当するパラメータとして、ワイヤロープ駆動モータの回転速度を検出し、回転速度の時間積分で表されるワイヤロープの移動距離を電流値範囲ごとに算出しワイヤロープの残存寿命を予測する方法(従来技術6)もある(例えば、特許文献5を参照)。
【0008】
【特許文献1】
特開平11−325841号公報
【特許文献2】
特開平11−325844号公報
【特許文献3】
特開平9−178611号公報
【特許文献4】
特開昭62−17638号公報
【特許文献5】
特開平10−7323号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した各従来技術には以下の問題点がある。すなわち、従来技術1の外観検査では、検査対象ワイヤロープの内部まで検査してはおらず、内部に素線断線が存在するか否かを判別できない。また、使用中のワイヤロープの外表にはグリスやダスト等が付着しており、外表の目視検査を行いにくい状態となっており、素線の断線数を数えることが困難である。さらに、素線が断線する時期はワイヤロープとシーブとの接触状況によってばらつき、残存寿命の判定に誤差を生じさせる。このため、外観検査により、検査対象ワイヤロープの残存寿命を正確に判定することは困難である。したがって、残存寿命がまだ充分にある場合でも、安全性を考慮して残存寿命を短めに判定し、ワイヤロープを早期に交換している。かかる早期交換によって、ワイヤロープ交換コストの増大を招くこととなってしまっている。
【0010】
従来技術2のワイヤロープの診断方法では、検査対象ワイヤロープの内部まで充分に検査することができず、また、ワイヤロープの損傷状態の発生と破断寿命との間には大きなばらつきが存在し、残存寿命を正確に判定することは困難である。したがって、ワイヤロープの残存寿命を短めに判定して早期交換することとなり、ワイヤロープ交換コストが増大する。加えて、この方法には、投光器や受光器といった特別な測定機器を設置しなければならないという問題もある。
【0011】
従来技術3の残存寿命を判定する方法では、使用されたワイヤロープの引張強さと未使用のワイヤロープの引張強さとの間には、多くのばらつきが生じ、残存寿命を正確に判定することは困難である。したがって、ワイヤロープの残存寿命を短めに判定して早期交換することとなり、ワイヤロープ交換コストが増大する。
【0012】
従来技術4のクレーン用ワイヤロープ寿命判定方法では、検査対象のワイヤロープをクレーンから取り外して素線ねじり試験を行わなければならず、作業工程が複雑となり、残存寿命の判定に時間がかかってしまう。
従来技術5の残存寿命の判定方法では、通常、クレーンにおいてワイヤロープを使用するために必要とされない検出器を設置する必要がある。さらに、これらの検出器の保守管理が必要となり、設備費や保守管理費が増加してしまう。
【0013】
従来技術6の残存寿命の判定方法では、検査対象のワイヤロープの残存寿命を間接的に評価しており、実際に検査対象のワイヤロープが有する残存寿命と、判定された残存寿命との間に乖離を生じるおそれがある。
本発明は、上記した従来の技術の問題点を除くためになされたものであり、その目的とするところは、使用中のワイヤロープの現在の状態から、その疲労状態及び残存寿命を高い精度で直接かつ簡単に判断可能なワイヤロープ寿命判定方法を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、その課題を解決するために以下のような構成をとる。請求項1の発明に係るワイヤロープ寿命判定方法は、未使用のワイヤロープについて、このワイヤロープが有する強度を反映する値を計測し、既に使用されているワイヤロープについても、この既使用のワイヤロープが有する強度を反映する値及び残存寿命を反映する値を計測し、これらの未使用のワイヤロープと既使用のワイヤロープとからそれぞれ計測された強度を反映する値の間の比を計測値比として算出し、算出した計測値比と前記残存寿命を反映する値との間に成立する相関関係を求めておき、使用中の検査対象のワイヤロープについて、この検査対象のワイヤロープが有する強度を反映する値を計測し、この計測値と未使用のワイヤロープの前記強度を反映する値との間の比を、検査対象のワイヤロープの計測値比として算出し、検査対象のワイヤロープの計測値比を前記相関関係に適用し、前記相関関係から検査対象のワイヤロープが有する残存寿命を反映する値を読み取り、検査対象のワイヤロープの残存寿命を判定する。
【0015】
請求項1の発明によると、予め、ワイヤロープが有する強度を反映する値から算出した計測値比と、残存寿命を反映する値との間に成立する相関関係を求めておき、この相関関係と、残存寿命を判定する時点で検査対象のワイヤロープが有する強度を反映する値とを用いて、残存寿命を判定している。したがって、残存寿命を判定する時点において検査対象のワイヤロープが実際に有する強度を用いて残存寿命を直接判定することとなり、検査対象のワイヤロープの使用履歴がいかなるものであるかを気にする必要はなく、判定する時点におけるワイヤロープの残存寿命を正確に判定できる。残存寿命が正確に判定されるので、各ワイヤロープについて適切な交換時期をそれぞれ知ることができる。
【0016】
また、検査対象のワイヤロープの全体について、その強度を反映する値を計測することができ、検査対象のワイヤロープの一部分の状態から全体の状態を推測するということを回避できる。
さらに、目視検査を必要とせず、検査対象のワイヤロープの異常部分を見逃すこともない。
【0017】
なお、相関関係を求めるにあたって、未使用のワイヤロープについてその強度を反映する値を計測した後、このワイヤロープに負荷を与えて疲労を蓄積させて既使用のワイヤロープとし、この既使用のワイヤロープから再びその強度を反映する値を計測し、これらの各計測値から計測値比を算出することが好ましい。このようにすると、各ワイヤロープの個体差から生じる誤差を防止できる。また、検査対象のワイヤロープについても同様であり、検査対象のワイヤロープが未使用の状態で予め強度を反映する値を計測しておき、残存寿命を判定する際に再び強度を反映する値を計測し、これらの各計測値から計測値比を算出することが好ましい。
【0018】
ただし、ワイヤロープの個体差が非常に小さな場合は、各ワイヤロープについて、それぞれが未使用状態で有する強度を反映する値を計測する代わりに、最初にひとつのワイヤロープが未使用状態で有する強度を反映する値を計測しておき、その後は、この計測値を用いて各ワイヤロープの計測値比を算出することもできる。また、最初に複数のワイヤロープが未使用状態で有する強度を反映する値を計測して平均値を算出しておき、その後は、この平均値を用いて各ワイヤロープの計測値比を算出することもできる。
【0019】
また、相関関係は、ワイヤロープの種類別に作成し、検査対象のワイヤロープの種類に対応する相関関係を用いることが好ましい。これにより、ワイヤロープは種類ごとにその性状が異なるので、かかる性状の相異に起因する誤差を防止できる。
さらに、相関関係は、相関関係図を作成することで求めても、相関式を作成して求めても良い。例えば、相関関係図から最小二乗法等によって相関式を得ることができる。
【0020】
また、ワイヤロープが有する強度を反映する値として、例えば、ワイヤロープの弾性係数の値、ワイヤロープの弾性係数を反映する値、ワイヤロープの断面形状を反映する値等を挙げることができる。ワイヤロープの断面形状を反映する値としては、断面積、断面二次モーメント等を挙げることができる。
請求項2の発明に係るワイヤロープ寿命判定方法は、請求項1に記載のワイヤロープ寿命判定方法であって、前記強度を反映する値が、弾性係数を反映する値である。
【0021】
発明者は、ワイヤロープの破断試験から、負荷を繰り返し与えられる使用中のワイヤロープにおいて、疲労が進行して蓄積し、強度が低下し、強度低下に伴って伸びも著しく低下していることを見出した。そして、ワイヤロープの伸びはその弾性係数と関連しており、未使用のワイヤロープと比べて既使用のワイヤロープでは弾性係数が著しく変化しているものと考え、ワイヤロープの弾性係数の変化を利用して使用中のワイヤロープの寿命判定を行えばよいことに想到した。したがって、使用中のワイヤロープが有する弾性係数を反映する値を計測することによって、現在の強度を知ることができ、その残存寿命を正確に判定できる。
【0022】
なお、ワイヤロープが有する弾性係数を反映する値として、ワイヤロープの縦振動の固有振動数、ワイヤロープの縦振動の振幅の減衰時間等を挙げることができる。
請求項3の発明に係るワイヤロープ寿命判定方法は、請求項2に記載のワイヤロープ寿命判定方法であって、前記弾性係数を反映する値が固有振動数であり、前記計測値比が、計測対象のワイヤロープの固有振動数を、未使用のワイヤロープの固有振動数で除して得られる固有振動数変化率である。
【0023】
発明者は、ワイヤロープが有する固有振動数はそのワイヤロープが有する弾性係数を反映していることを実験より見出した。したがって、使用中のワイヤロープの固有振動数を計測して固有振動数変化率を算出することによって、そのワイヤロープの強度変化を捉えるとともに、固有振動数を計測する時点における強度を知ることができ、その残存寿命を正確に判定できる。
【0024】
請求項4の発明に係るワイヤロープ寿命判定方法は、請求項3に記載のワイヤロープ寿命判定方法であって、前記計測対象のワイヤロープから固有振動数を計測する際に、このワイヤロープに張力を与え、さらに、軸方向に縦振動を生ぜしめて、この生じた縦振動から固有振動数を計測する。
ワイヤロープに生じる縦振動を計測する方法は特に限定されるものではないが、例えば、従来使用されている圧電型加速度センサーを振動センサーとして用いて縦振動を計測する方法を挙げることができる。
【0025】
張力を与えられたワイヤロープの軸方向に生じる縦振動と、このワイヤロープが有する固有振動数との間には、次式(1)が成立している。この(1)式を用いて縦振動から固有振動数を計測可能となる。
f=(λ/2πL)×(E/ρ)1/2 ……(1)
但し、f:固有振動数(Hz)
λ:係数(λ=1/(μ+1/3))
L:ワイヤロープ長さ(m)
E:縦弾性係数(Pa)
ρ:ワイヤロープ密度(kg/m3)
μ:ワイヤロープに働く張力/ワイヤロープに働く重力
【0026】
請求項5の発明に係るワイヤロープ寿命判定方法は、請求項4に記載のワイヤロープ寿命判定方法であって、前記計測対象のワイヤロープが、重量物を吊下する巻上げ装置に装着して使用されるワイヤロープであり、この巻上げ装置から所定荷重の吊荷を吊下した後、この吊荷を吊り上げて計測対象のワイヤロープに張力を与え、さらに、全速で吊荷を巻き下げて急停止して、前記縦振動を計測対象のワイヤロープに生ぜしめる。
【0027】
請求項5の発明によると、巻上げ装置に使用されているワイヤロープの残存寿命判定を、そのワイヤロープが巻上げ装置に装着された状態のまま直接行うことができ、残存寿命判定が簡単かつ迅速なものとなる。
請求項6の発明に係るワイヤロープ寿命判定方法は、請求項2に記載のワイヤロープ寿命判定方法であって、計測対象のワイヤロープに張力を与え、さらに、軸方向の縦振動を生ぜしめて、この生じた縦振動の振幅が所定の割合まで減衰するのに要した減衰時間が、前記弾性係数を反映する値であり、前記計測値比が、計測対象のワイヤロープの減衰時間を、未使用のワイヤロープの減衰時間で除して得られる減衰時間変化率である。
【0028】
発明者は、ワイヤロープの縦振動の振幅が減衰するのに要する減衰時間はそのワイヤロープが有する弾性係数を反映していることを実験より見出した。したがって、ワイヤロープの縦振動の振幅が所定の割合まで減衰するのに要した減衰時間を計測して減衰時間変化率を算出することによって、ワイヤロープの強度変化を捉えることができ、減衰時間を計測する時点における強度を知るとともにその残存寿命を正確に判定できる。
【0029】
なお、ワイヤロープに生じる縦振動を計測する方法は特に限定されるものではないが、例えば、従来使用されている圧電型加速度センサーを振動センサーとして用いて縦振動の振幅の減衰時間を計測する方法を挙げることができる。
また、減衰時間を計測する際に使用する振動の振幅の減衰割合は、一定の割合に限定されるものではなく、振幅を計測する機器の能力に応じてこの割合を任意に選定可能である。例えば、振幅の減衰割合を1/2とすると1/2の振幅となるまでの減衰時間が短く、減衰割合を1/3より小さくすると振幅の判別が困難となる場合には、減衰割合を1/3とすることができる。
【0030】
請求項7の発明に係るワイヤロープ寿命判定方法は、請求項6に記載のワイヤロープ寿命判定方法であって、前記計測対象のワイヤロープが、重量物を吊下する巻上げ装置に装着して使用されるワイヤロープであり、この巻上げ装置から所定荷重の吊荷を吊下した後、この吊荷を吊り上げて計測対象のワイヤロープに張力を与え、さらに、全速で吊荷を巻き下げて急停止して、前記縦振動を計測対象のワイヤロープに生ぜしめる。
【0031】
請求項7の発明によると、巻上げ装置に使用されるワイヤロープの残存寿命判定を、ワイヤロープが巻上げ装置に装着された状態のまま直接行うことができ、残存寿命判定が簡単かつ迅速なものとなる。
請求項8の発明に係るワイヤロープ寿命判定方法は、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のワイヤロープ寿命判定方法であって、前記残存寿命を反映する値が、未使用ワイヤロープの残存寿命と計測対象のワイヤロープの残存寿命との間の比からなる寿命比率である。
【0032】
請求項8の発明によると、残存寿命を無次元化した寿命比率により表しているので、寿命比率を求めてから残存寿命を算出できる。したがって、使用条件が異なる巻上げ装置に使用されるワイヤロープについても、ひとつの相関関係の図や式を共通して用いることができる。
【0033】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本実施の形態では、ワイヤロープの寿命判定を、ワイヤロープをクレーン等の巻き上げ装置に取付けたまま行う。巻き上げ装置の一例として、天井走行式クレーンの巻き上げ装置を例にして、その概略を図2に示す。
ドラム1から繰り出されたワイヤロープ2は下部シーブ3と上部シーブ4を交互に通過して、その後ロープバランス金具5に接続されている。そして、下部シーブ3を下げるに従い、ワイヤロープ2は各シーブ3,4を通過し、曲げ戻しを繰り返しうける。
【0034】
図2に示すような巻き上げ装置にワイヤロープを取付けたまま、ワイヤロープに縦振動を発生させ、該縦振動の固有振動数を計測する。縦振動の発生方法としては、例えば図2に示す巻き上げ装置のフック6に、所定荷重の吊荷を吊下して、この吊荷を吊り上げたのち、全速で巻下げ、急停止(急制動をかけて)して、発生させることが好ましい。
【0035】
ワイヤロープに発生させた縦振動の計測方法は、とくに限定されないが、例えば上部シーブ、下部シーブ等に配設した圧電型加速度センサー等からなる振動センサーを用いて振動を計測し、周波数解析により縦振動の固有振動数fを求めることが好ましい。
縦振動の固有振動数fは、前記(1)式で決定される。ワイヤロープの使用に伴い疲労が進行し、ワイヤロープの縦弾性係数Eの変化を介して、固有振動数fが大きく変化する。
【0036】
固有振動数の測定時期は、ワイヤロープ取替え直後、すなわちワイヤロープが未使用の状態にあるときと、このワイヤロープを所定期間使用して既に使用した状態にあるときである。これにより、寿命判定のためにワイヤロープを装置から取り外す必要がなく、寿命測定に要する時間が短縮できる。
まず、ワイヤロープ取替え直後の未使用のワイヤロープの固有振動数foを、上記したような方法で縦振動を発生させて計測しておく。そして、所定期間使用したのち、再び同じ条件で所定期間使用後の既使用のワイヤロープの固有振動数fiを計測する。そして、foとfiの計測値比、すなわち、fo/fiをワイヤロープ固有振動数変化率と定義する。
【0037】
上記のようにして算出した固有振動数変化率fo/fiを用いて、予め求めておいたワイヤロープ固有振動数変化率fo/fiと寿命比率の相関図あるいは相関式から、寿命比率を推定する。
予め、各種ワイヤロープの未使用品と既使用品についてワイヤロープ固有振動数変化率fo/fiと、既使用状態での残存寿命とについて計測し、ワイヤロープ固有振動数変化率と寿命比率との関係(相関図)を求めておく。
【0038】
寿命比率は、取替え直後で未使用状態のワイヤロープを0%とし、破断時を100%とする。所定期間使用後の寿命比率は、既使用のワイヤロープから素線試験片を採取し、ねじり試験を実施し、ねじり回数を求める。なお、未使用のワイヤロープについても同様のねじり試験を実施し、未使用品のねじり回数を求めておく。そして、既使用品のねじり回数と未使用品のねじり回数との比から残存寿命を算定し、所定期間使用後の寿命比率に換算する。
【0039】
このようにして得られたワイヤロープ固有振動数変化率fo/fiと寿命比率とを用いて、ワイヤロープ固有振動数変化率との寿命比率との関係(相関図、相関式)と求めておく。ワイヤロープ固有振動数変化率fo/fiと寿命比率の関係(相関図)の一例を、図1に示す。なお、ワイヤロープ固有振動数変化率fo/fiと寿命比率の関係を相関式として、表示しても良い。
【0040】
得られた寿命比率から、残存寿命が存在するワイヤロープについては、そのまま巻き上げ装置から取り外すことなく、さらに使用を継続する。所定期間使用後、同様に固有振動数fiを測定し、寿命比率を算出する。使用限界に達したのち取り替える。なお、使用限界は寿命比率:80%程度とすることが安全上好ましい。
【0041】
次に、本実施の形態の実施例について説明する。
製鉄所の製鋼工場のレードルクレーン3基、および連鋳ヤードのスラブ搬出クレーン2基について、本実施の形態の寿命判定方法を適用し、オンラインでワイヤロープに縦振動を発生させ、固有振動数fiを測定し、寿命を判定した。縦振動は、各クレーンで決められた所定荷重(レードルクレーン:400t、スラブ搬送クレーン:74t)の吊荷を吊り上げ、全速巻下げ、急制動を加えて、発生させた。発生した縦振動を上部シーブに設置した振動センサーにより測定し、図3に示すように波形から固有振動数fiを求めた。なお、取替え直後の未使用のワイヤロープについても、同様に固有振動数foを測定した。
【0042】
得られた固有振動数foとfiから、これらの比、固有振動数変化率fo/fiを算出し、予め求めたワイヤロープ固有振動数変化率との寿命比率との関係(相関図)から残存寿命をもとめ、寿命比率が80%に達するまで使用した。その結果、従来に比べ取替えまでの使用期間が30%延長できた。なお、従来の寿命判定方法は、サンプルでの寿命判定による方法とした。
【0043】
次に、本発明の第2の実施の形態を図面に基づいて説明する。
まず、図4及び図5を参照して本実施の形態に係る相関関係Cの求め方について説明する。
相関関係Cを求めるために、同一種類の健全な未使用状態のワイヤロープR1を複数本準備する。
未使用の各ワイヤロープR1に対して、第1の実施の形態で行ったのと同様のねじり試験をそれぞれ実施し、未使用の各ワイヤロープR1の残存寿命RLR1oをそれぞれ算出する。
【0044】
残存寿命RLR1oをそれぞれ算出した後、各未使用の各ワイヤロープR1を図4に示すクレーン20の巻上げ装置21にそれぞれ装着し、所定荷重Wの吊荷22をクレーン20で吊下して、それぞれの未使用ワイヤロープR1に所定の張力Fを与える。なお、クレーン20及び巻上げ装置21は、従来から使用されているものと同様のものであり、第1の実施の形態のものと同様の構成を有する。そして、全速で吊荷22を巻き下げて急停止して、未使用の各ワイヤロープR1にそれぞれ縦振動を生じさせる。未使用の各ワイヤロープR1の縦振動の振幅が1/3まで減衰する減衰時間TR1oをクレーン20に配設した圧電型加速度センサー等の振動センサーによってそれぞれ計測する。なお、この振動センサーは、従来から使用されているものと同様の構成を有する。
【0045】
その後、各ワイヤロープR1を巻上げ装置21において使用し、疲労を内部で進行させて蓄積し、各ワイヤロープR1を既に使用されている状態にする。なお、各ワイヤロープR1を使用する期間は、ワイヤロープR1ごとに異なった期間とし、各ワイヤロープR1に蓄積される疲労を相互に異なったものとする。
そして、蓄積した疲労がそれぞれ異なる既使用の各ワイヤロープR1について減衰時間TR1iを計測する。減衰時間TR1iの計測は、減衰時間TR1oを計測したのと同様の手順で行う。すなわち、所定荷重Wの吊荷22をクレーン20で吊下し、各ワイヤロープR1に張力Fを与え、全速で吊荷22を巻き下げてから急停止し、各ワイヤロープR1にそれぞれ縦振動を生じさせ、この縦振動の振幅が1/3まで減衰する減衰時間TR1iを前記振動センサーによってそれぞれ計測する。
【0046】
減衰時間TR1iを計測したら、各ワイヤロープR1を巻上げ装置21から取り外す。取り外した各ワイヤロープR1について、再び、第1の実施の形態で行ったのと同様のねじり試験をそれぞれ実施し、既使用の各ワイヤロープR1の残存寿命RLR1iをそれぞれ算出する。
各ワイヤロープR1についてそれぞれ算出した残存寿命RLR1o及びRLR1iと、次式(2)とから、各ワイヤロープR1の寿命比率RLRを算出する。
【0047】
RLR=(RLR1o−RLR1i)/RLR1o×100 ……(2)
寿命比率RLRが、ワイヤロープの全寿命の期間中でどれだけの寿命が既になくなっているかを相対的に無次元化して表している。例えば、未使用のワイヤロープR1は全寿命が残っており、その寿命比率RLRは0%である。また、破断直前の既使用のワイヤロープR1は全寿命を全うしており、その寿命比率RLRは100%である。
【0048】
また、各ワイヤロープR1についてそれぞれ測定した減衰時間TR1o及びTR1iと、次式(3)とから、既使用の各ワイヤロープR1の減衰時間変化率TRを算出する。
TR=TR1i/TR1o ……(3)
表1に、12本のワイヤロープR1からそれぞれ得られた寿命比率RLR、減衰時間TR1o、減衰時間TR1i及び減衰時間変化率TRの一例を示す。
【0049】
【表1】
【0050】
各ワイヤロープR1の寿命比率RLR及び減衰時間変化率TRの算出をしたら、寿命比率RLRと減衰時間変化率TRとの関係を相関関係図上にプロットする。相関関係図は、例えば、縦軸に減衰時間変化率TRをとり、横軸に寿命比率RLRをとってある。この相関関係図が相関関係Cを表す。図5に、表1の寿命比率RLR及び減衰時間変化率TRをプロットして作成した相関関係図の一例を示す。
【0051】
そして、同様の手順によって、異なる種類のワイヤロープについても相関関係Cをそれぞれ求めておく。
次に、このようにして得られた相関関係Cを用いて、測定対象のワイヤロープR2の残存寿命を判定する方法について説明する。
ここで、この測定対象のワイヤロープR2は、クレーン20の巻上げ装置21に装着されて使用中のものである。
【0052】
まず最初、ワイヤロープR2を巻上げ装置21に装着したときに、未使用の状態のワイヤロープR2の減衰時間TR2oを計測しておく。減衰時間TR2oの計測は、減衰時間TR1oを計測したときと同様にして実施する。すなわち、所定荷重Wの吊荷22をクレーン20で吊下し、ワイヤロープR2に張力Fを与え、全速で吊荷22を巻き下げてから急停止し、ワイヤロープR2に縦振動を生じさせ、この縦振動の振幅が1/3まで減衰する減衰時間TR2oを前記振動センサーによってそれぞれ計測する。
【0053】
減衰時間TR2oの計測を終えたら、ワイヤロープR2を巻上げ装置21にて使用する。使用開始することでワイヤロープR2は既使用のワイヤロープとなり、使用とともに内部に疲労が徐々に蓄積し、強度低下が進行し、ワイヤロープR2の弾性係数も低下していく。ある程度の期間にわたって、ワイヤロープR2を使用したら、このワイヤロープR2の残存寿命の判定を行う。この判定は、ワイヤロープR2を巻上げ装置21に装着した状態のままで直接実施する。
【0054】
減衰時間TR2oを計測したときと同様に、残存寿命判定時におけるワイヤロープR2の減衰時間TR2iを計測する。
そして、ワイヤロープR2から得られた減衰時間TR2o及びTR2iと、次式(4)とから、ワイヤロープR2の減衰時間変化率TRR2を算出する。
TRR2=TR2i/TR2o×100 ……(4)
【0055】
算出した減衰時間変化率TRR2を相関関係Cに適用して、対応する寿命比率RLRR2を読み取る。読み取った寿命比率RLRR2が、予め定められている最大寿命比率RLRMAXの値よりも大きな値となっている場合は、ワイヤロープR2が使用限界に達していると判定する。例えば、最大寿命比率RLRMAXを安全率を考慮して80%と設定する。そして、寿命比率RLRR2が最大寿命比率RLRMAXに達するか、又は、超えるかしている場合には、ワイヤロープR2が使用限界に達していると判断し、ワイヤロープR2を新しいものと交換する。
【0056】
なお、残存寿命の判定は、必要に応じて適宜行われる。例えば、寿命比率RLRR2が60ないし70%にあると考えられる時期に最初の判定を行い、以後、判定を行う間隔を次第に短くしていく。
また、寿命比率RLRR2の変化率を調べて、この変化率が急激に大きくなっている場合には、ワイヤロープR2に何らかの問題があり、強度低下が急激に進行していると判断できる。そして、ワイヤロープR2を直ちに交換するか、次回の残存寿命の判定時期を早くする。
【0057】
さらに、読み取った寿命比率RLRR2を、巻上げ装置21に装着されて使用されるワイヤロープの平均的な全寿命月数に掛け合わせることで、ワイヤロープR2が全寿命月数のうちどれだけの寿命月数が既になくなっているかを具体的に知ることもできる。
【0058】
【発明の効果】
本発明は、上記のようなワイヤロープ寿命判定方法であるので、使用中のワイヤロープの現在の状態から、その疲労状態及び残存寿命を高い精度で直接かつ簡単に判断できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態に係るワイヤロープ固有振動数変化率と寿命比率の間の相関関係の一例を示す相関関係図である。
【図2】天井走行式クレーンの巻上げ装置の一例を模式的に示す概略説明図である。
【図3】未使用ワイヤロープと使用済ワイヤロープに発生させた縦振動の振動波形の一例を示す説明図である。
【図4】第2の実施の形態に係るワイヤロープが使用されているクレーンの斜視図である。
【図5】第2の実施の形態に係るワイヤロープ減衰時間変化率と寿命比率の間の相関関係の一例を示す相関関係図である。
【符号の説明】
1 ドラム
2 ワイヤロープ
3 下部シーブ
4 上部シーブ
5 ロープバランス金属
6 フック
20 クレーン
21 巻上げ装置
22 吊荷
Claims (8)
- 未使用のワイヤロープについて、このワイヤロープが有する強度を反映する値を計測し、
既に使用されているワイヤロープについても、この既使用のワイヤロープが有する強度を反映する値及び残存寿命を反映する値を計測し、
これらの未使用のワイヤロープと既使用のワイヤロープとからそれぞれ計測された強度を反映する値の間の比を計測値比として算出し、
算出した計測値比と前記残存寿命を反映する値との間に成立する相関関係を求めておき、
使用中の検査対象のワイヤロープについて、この検査対象のワイヤロープが有する強度を反映する値を計測し、この計測値と未使用のワイヤロープの前記強度を反映する値との間の比を、検査対象のワイヤロープの計測値比として算出し、検査対象のワイヤロープの計測値比を前記相関関係に適用し、前記相関関係から検査対象のワイヤロープが有する残存寿命を反映する値を読み取り、検査対象のワイヤロープの残存寿命を判定することを特徴とするワイヤロープ寿命判定方法。 - 請求項1に記載のワイヤロープ寿命判定方法であって、前記強度を反映する値が、弾性係数を反映する値であることを特徴とするワイヤロープ寿命判定方法。
- 請求項2に記載のワイヤロープ寿命判定方法であって、前記弾性係数を反映する値が固有振動数であり、
前記計測値比が、計測対象のワイヤロープの固有振動数を、未使用のワイヤロープの固有振動数で除して得られる固有振動数変化率であることを特徴とするワイヤロープ寿命判定方法。 - 請求項3に記載のワイヤロープ寿命判定方法であって、前記計測対象のワイヤロープから固有振動数を計測する際に、このワイヤロープに張力を与え、さらに、軸方向に縦振動を生ぜしめて、この生じた縦振動から固有振動数を計測することを特徴とするワイヤロープ寿命判定方法。
- 請求項4に記載のワイヤロープ寿命判定方法であって、前記計測対象のワイヤロープが、重量物を吊下する巻上げ装置に装着して使用されるワイヤロープであり、
この巻上げ装置から所定荷重の吊荷を吊下した後、この吊荷を吊り上げて計測対象のワイヤロープに張力を与え、さらに、全速で吊荷を巻き下げて急停止して、前記縦振動を計測対象のワイヤロープに生ぜしめることを特徴とするワイヤロープ寿命判定方法。 - 請求項2に記載のワイヤロープ寿命判定方法であって、計測対象のワイヤロープに張力を与えて、さらに、軸方向の縦振動を生ぜしめて、この生じた縦振動の振幅が所定の割合まで減衰するのに要した減衰時間が、前記弾性係数を反映する値であり、
前記計測値比が、計測対象のワイヤロープの減衰時間を、未使用のワイヤロープの減衰時間で除して得られる減衰時間変化率であることを特徴とするワイヤロープ寿命判定方法。 - 請求項6に記載のワイヤロープ寿命判定方法であって、前記計測対象のワイヤロープが、重量物を吊下する巻上げ装置に装着して使用されるワイヤロープであり、
この巻上げ装置から所定荷重の吊荷を吊下した後、この吊荷を吊り上げて計測対象のワイヤロープに張力を与え、さらに、全速で吊荷を巻き下げて急停止して、前記縦振動を計測対象のワイヤロープに生ぜしめることを特徴とするワイヤロープ寿命判定方法。 - 請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のワイヤロープ寿命判定方法であって、前記残存寿命を反映する値が、未使用ワイヤロープの残存寿命と計測対象のワイヤロープの残存寿命との間の比からなる寿命比率であることを特徴とするワイヤロープ寿命判定方法。
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CN107727521A (zh) * | 2017-10-31 | 2018-02-23 | 西南交通大学 | 一种接触网吊弦疲劳试验方法和装置 |
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-
2003
- 2003-06-27 JP JP2003184946A patent/JP2004251880A/ja active Pending
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