JP2004251009A - 親水性一液型ポリウレタンプレポリマーから成る止水材の高圧注入止水工法及び止水材 - Google Patents
親水性一液型ポリウレタンプレポリマーから成る止水材の高圧注入止水工法及び止水材 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】本発明は、コンクリート壁1の漏水亀裂3に対してコンクリート表層から所定の角度に止水材注入孔2を削孔して漏水亀裂3を横断した状態で止水材を保留する密閉室5を形成すると共に密閉室5に亀裂補強部材11を挿入して置き、次いで、コンクリート表層の漏水亀裂3を封鎖すると共に止水材注入孔2に逆流防止弁付注入プラグ7を装着し、しかる後に注入プラグ7から親水性一液型ポリウレタンプレポリマーを主成分にする止水材4を加圧注入して密閉室内と漏水亀裂とに所定量充填し、止水材4を高分子系吸水ポリマー及び侵入水との化学反応で発泡させながら漏水亀裂内に浸透させている。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンクリート構造物におけるひび割れ部や打ち継ぎ部等の漏水亀裂を適切に止水できる親水性一液型ポリウレタンプレポリマーから成る止水材の高圧注入止水工法及び止水材に関する。
【0002】
【従来の技術】
漏水しているコンクリート壁体の止水を行うためには、以下の性能を具備したものでなければならない。
(1)打ち継ぎやひび割れの不連続部の奥深くまで注入できること(注入充填性)。
(2)湿潤コンクリート面と良く接着すること(止水接着性)。
(3)耐アルカリ性などに優れていること(耐久性)。
【0003】
このために、従来の止水方法は、コンクリート構造物おけるひび割れ部や打ち継ぎ部等の漏水亀裂に、湿気硬化型ポリウレタンプレポリマーから成る注入剤を高圧力で注入し、水との反応によって硬化させながら漏水を止めているが、単にポリウレタンプレポリマーが水と反応硬化することを利用して漏水亀裂に大量の注入剤を注入して急速に硬化させるために、注入剤中にポリウレタンプレポリマーの反応速度を高める触媒や発泡促進剤の添加が積極的に行なわれている。
【0004】
しかして、この方法は、コンクリート構造物の表層部には急速に硬化体が形成されるが、コンクリート構造物の内部にまでは浸入せずに微細な亀裂は放置されるので、コンクリート構造物中の微細なクラックの接着や、漏水で低下したコンクリート構造物自体の物理的強度及び水密性の回復は図られていなかった。
【0005】
そこで、従来の止水方法における問題点を解決して経済的で確実に止水すると共にコンクリート構造物自体の強度及び水密性をも回復するような止水方法も提供されている。
【0006】
提案された止水方法は、コンクリート構造物の漏水亀裂に沿わせて密閉室を形成し、この密閉室に親水性一液型ポリウレタンプレポリマーを主成分にする止水用注入剤を所定量注入して、その後に密閉室を閉塞して保留・放置するものであり、親水性一液型ポリウレタンプレポリマーとコンクリート構造物中の漏水とが漸次反応することで、その発泡圧及び体積膨張によって漏水亀裂の狭間中に浸入・硬化して亀裂を密封、接着している。そして、本止水方法は、止水用注入剤をコンクリート構造物の内部にまで浸入させながら微細なクラックを確実に接着することで、漏水で低下したコンクリート構造物自体の物理的強度と水密性を回復させている。(例えば、特許文献1参照)
【0007】
【特許文献1】
特公平6−78520号公報(第1頁、特許請求の範囲の項、第4頁左欄末行から9行〜第5頁左欄第7行、図1、2)
【0008】
しかして、本止水方法に用いる親水性一液型ポリウレタンプレポリマーを主成分にする止水用注入剤は、充分な圧縮強度と曲げ強さ及び硬化膜の充分な引張強さを発揮しているが、その粘度は2800mPa・s程度に調整されていることと止水用注入剤の漏水亀裂への浸入がその発泡圧と体積膨張のみによっていることから、土木系の大型コンクリート構造物におけるひび割れ部や打ち継ぎ部等の漏水亀裂に対して止水用注入剤を充分に浸入させるのには、状況によって困難さが伴っていた。
【0009】
一方、大型コンクリート構造物に対する止水方法も下記例のように提案されている。
本工法では、図7に施工の概要を示すように、コンクリート壁面20の内側から穿孔して打継ぎ部21(又はひび割れ部)による空隙部の中心部を貫通させながら、その開口位置22がコンクリート厚みの中心位置23になるような注入穴24を穿けている。(図7(A)、(B))次いで、この注入穴24の開口部25に注入具26を装着して注入穴の底部27と注入具26との間に加圧域28を形成して、この加圧域28に注入具26から充填材29を100〜350kg/cm2の注入圧力で注入している。(図7(C)、(D))
【0010】
又、充填材29は、疎水性ポリイソシアネートもしくは親水性ポリイソシアネートが採用されており、コンクリート壁面20の内側に流出する30まで注入されて、打継ぎ部21(又はひび割れ部)の空隙部に溜まっている水を排出すると共に空隙部を充填材29で置換させている。(図7(E))
【0011】
そして、注入後の充填材は、養生されることで打継ぎ部(又はひび割れ部)の空隙部で硬化するものであり、この段階に至って注入穴の開口部25から注入具26を取り外してコンクリート壁面20の仕上げ31が行われている。(図7(F))
【0012】
従って、充填材である疎水性ポリイソシアネートもしくは親水性ポリイソシアネートには、反応速度を高める触媒や硬化促進剤が添加されていることで環境問題が危惧されると共に、方法的にも以下の問題点を抱えている。
【0013】
(1)コンクリート厚みの中心位置に注入孔を設けても、打ち継ぎ部やひび割れ部を塞がずに注入するので、圧力を伴った浸入水の作用で地盤側には充填材が入り難く室内側には注入し易いために、室内側に流出しても奥の方には充填され無い場合が多くなり注入充填性が良くない。
(2)疎水性ポリイソシアネート、親水性ポリイソシアネート等のポリウレタン系充填材は、発泡圧も無く低強度で接着性と耐久性が好ましくないので、高耐久で信頼性の高い止水接着性を形成し難く再漏水の危険が大きい。(例えば、特許文献2参照)
【0014】
【特許文献2】
特許第3306375号公報(識別記号「0009」〜「0017」末行、図1、3)
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上の状況に鑑みて提案するものであり、マスコンクリートにおけるひび割れ部や打ち継ぎ部等の漏水亀裂に対しても、注入充填性、止水接着性及び長期に亘る耐久性の要求性能を確立しながら適切に止水できる親水性一液型ポリウレタンプレポリマーから成る止水材の高圧注入止水工法及び止水材を提供している。
【0016】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明である親水性一液型ポリウレタンプレポリマーから成る止水材の高圧注入止水工法は、コンクリート構造物に対する親水性一液型ポリウレタンプレポリマーを主成分にする止水材の注入止水工法において、コンクリート構造物の漏水亀裂に対してコンクリート表層から所定の角度に止水材注入孔を削孔して、漏水亀裂を横断した状態で止水材を保留する密閉室を形成すると共に密閉室に亀裂補強部材を挿入して置き、次いで、コンクリート表層の漏水亀裂を封鎖すると共に止水材注入孔に逆流防止弁付注入プラグを装着し、しかる後に注入プラグから親水性一液型ポリウレタンプレポリマーを主成分にする止水材を加圧注入して密閉室内と漏水亀裂とに所定量充填し、止水材を浸入水との化学反応で発泡させながら漏水亀裂内に浸透させることを特徴としており、大型コンクリート構造物におけるひび割れ部や打ち継ぎ部等の漏水亀裂に対しても注入充填性、止水接着性及び長期に亘る耐久性の要求性能を確立して適切に止水している。
【0017】
請求項2に記載の発明である親水性一液型ポリウレタンプレポリマーから成る止水材の高圧注入止水工法は、請求項1に記載の高圧注入止水工法において、漏水亀裂に対する注入確認孔を、コンクリート表層から所定の角度で止水材注入孔よりもコンクリート表層側に漏水亀裂を横断した状態に削孔することを特徴としており、上記機能に加えて、コンクリート表層の漏水亀裂から反応水及び止水材が流出することを観測することで、漏水亀裂中にも止水材が注入されていることを確認できる。
【0018】
請求項3に記載の発明である親水性一液型ポリウレタンプレポリマーから成る止水材の高圧注入止水工法は、請求項1又は2に記載の高圧注入止水工法において、コンクリート表層の漏水亀裂を、漏水亀裂と漏水亀裂を横断する密閉室とに止水材注入孔から反応水を加圧注入して湿潤した後に封鎖することを特徴としており、上記機能に加えて、コンクリート表層の漏水亀裂から反応水が流出することを観測することで、止水材注入孔の漏水亀裂に対する横断を確認できる。
【0019】
請求項4に記載の発明である親水性一液型ポリウレタンプレポリマーから成る止水材の高圧注入止水工法は、請求項1乃至3のいずれかに記載の高圧注入止水工法において、止水材を漏水亀裂と漏水亀裂を横断する密閉室とに反応水を加圧注入した後に加圧注入することを特徴としており、上記機能に加えて、止水材の発泡圧及び体積膨張の発生を促進して漏水亀裂の狭間中に浸入・硬化して亀裂を密封する機能を更に強化している。
【0020】
請求項5に記載の発明である親水性一液型ポリウレタンプレポリマーから成る止水材の高圧注入止水工法は、請求項1乃至4のいずれかに記載の高圧注入止水工法において、止水材を、10〜20MPaの圧力で密閉室内と漏水亀裂とに注入することを特徴としており、上記機能に加えて、発泡前の止水材を漏水亀裂の狭間中に適切に浸入させている。
【0021】
請求項6に記載の発明である親水性一液型ポリウレタンプレポリマーから成る止水材の高圧注入止水工法は、請求項1乃至5のいずれかに記載の高圧注入止水工法において、止水材の充填注入量を、浸入水との化学反応で発揮される発泡倍率を勘案して決定することを特徴としており、上記機能に加えて、止水材の使用量を適切に調整することができる。
【0022】
本発明による止水材は、上記の各高圧注入止水工法に用いるものであって、親水性一液型ポリウレタンプレポリマーを主成分にする止水材において、粘度を700〜1400mPa・sにすることを特徴としており、大型コンクリート構造物における漏水亀裂に対しても注入充填性を良くして、止水接着性や耐久性に優れた止水を確立している。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明による親水性一液型ポリウレタンプレポリマーから成る止水材の高圧注入止水工法は、コンクリート構造物の漏水亀裂に対してコンクリート表層から所定の角度に止水材注入孔を削孔して、漏水亀裂を横断した状態で止水材を保留する密閉室を形成すると共に密閉室に亀裂補強部材を挿入して置き、次いで、コンクリート表層の漏水亀裂を封鎖すると共に止水材注入孔に逆流防止弁付注入プラグを装着し、しかる後に注入プラグから親水性一液型ポリウレタンプレポリマーを主成分にする止水材を加圧注入して密閉室内と漏水亀裂とに所定量充填し、止水材を浸入水との化学反応で発泡させながら漏水亀裂内に浸透させることを基本にして、具体的には、漏水亀裂に対する注入確認孔を、コンクリート表層から所定の角度で止水材注入孔よりもコンクリート表層側に漏水亀裂を横断した状態に削孔したり、コンクリート表層の漏水亀裂を、漏水亀裂と漏水亀裂を横断する密閉室とに止水材注入孔から反応水を加圧注入して湿潤した後に封鎖したり、止水材は、漏水亀裂と漏水亀裂を横断する密閉室とに反応水を10〜20MPaの圧力で注入した後に加圧注入し、その充填注入量を、浸入水との化学反応で発揮される発泡倍率を勘案して決定することを特徴としている。
【0024】
以下に、本発明による高圧注入止水工法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0025】
図1は、大きな壁厚のコンクリート壁に本発明による高圧注入止水工法を適用する実施の形態図であり、図1(a)は、コンクリート壁面に発生しているひび割れによる漏水亀裂に止水材注入孔を削孔する工程を示している。
【0026】
コンクリート壁1の内側から行われる止水材注入孔2の削孔は、ひび割れ3の不連続面に対して約60度の角度で、直径10mmの止水注入孔2が不連続面を横断するように開けており、止水材4を保留するための密閉室5を形成している。止水材注入孔2は、本実施の形態の場合にコンクリート壁1の中心位置より奥まった壁厚の約2/3の位置に開けており、注入孔の配置は、ひび割れや打ち継ぎ面に対して千鳥状に行っている。
【0027】
尚、ドリルの削孔深さは、確実に不連続面を横断することを考慮して不連続面までの推測距離よりも、更に100mm以上奥の位置にまで削孔している。
【0028】
図1(b)は、次工程の逆流防止弁付注入プラグを装着する状態を示しているが、止水材注入孔2を削孔した後には、必要に応じて止水材注人孔2の内部に残存しているコンクリート粉をエアーブローによって入念に除去している。
【0029】
本工程では、止水材注入孔2の開口部6に逆流防止弁付注入プラグ7を装着するが、この際には、密閉室5に亀裂補強部材11を挿入して置くと共に、急結セメント8等でひび割れ3の表面を封鎖している。これによって、止水材が開口部6から注入される場合には、コンクリート壁1のひび割れ3から内側に漏洩することのないように防止することで、高圧注入されて発泡によって体積膨張した止水材が、コンクリート躯体の外側まで奥深く充填されることになる。
【0030】
又、密閉室5に挿入配置された亀裂補強部材11は、ひび割れ3の不連続面を横断するように止水材注入孔2に固着されているので、ひび割れ3の不連続面が相互に移動しようとしても亀裂補強部材11がこれを阻止するように作用することから、充填された止水材は長期の耐久性を確立することになる。
【0031】
そして、亀裂補強部材11は、以上のように機械的強度を確保できるものであれば充分であるから、全ねじボルトもしくは外周全面に多数の穴明きが形成された中空パイプであっても採用可能であり、その材質に関しても鉄鋼材、非鉄金属材等に限定されるものでなく、所望の強度を発揮できるカーボン繊維複合材やアラミド繊維等の合成樹脂であっても適応できるものである。
【0032】
図1(c)は、止水材を密閉室及びひび割れの不連続面に注入されるための前工程を示している。
本工程では、水9を逆流防止弁付注入プラグ7から圧力5〜10MPaで注入しており、密閉室5とひび割れ3の不連続面とに止水材4の発泡硬化の反応に充分な水9を予め供給している。
【0033】
尚、止水材注入孔2がひび割れ3の不連続面と接続しているか否かを確認しながら、浸入水を排水すると同時に、止水材の充填状況を確誌するための施工については、後述の他の実施形態において説明する。
【0034】
図1(d)は、止水材を密閉室及びひび割れの不連続面に注入する工程を示している。
本実施の形態では、止水材4を圧力10〜20MPaで止水材注入孔2に注入しており、所定の注入量を充填した後に以降に配置されている次の逆流防止弁付注入プラグ7に移って、順次に高圧注入をして行く。本発明による止水材4は、全ての注入が終了してひび割れ3と密閉室5に保留された後には、ひび割れ3と密閉室5とに供給されている水9やコンクリート躯体の外側から浸透してくる水と化学反応することで、硬化する前に発泡し体積膨張する。
【0035】
この体積膨張によって、止水材5はひび割れ3のコンクリート躯体外側の隅々まで確実に浸透して行き、ひび割れ3の全域を完全に止水すると同時に亀裂補強部材11をひび割れ3の不連続面を横断するように止水材注入孔2に固着するものである。
【0036】
止水材の硬化は、体積膨張の終了後に開始されるが、所定の養生期間を経て止水材が硬化した後には、図1(e)に示すように逆流防止弁付注入プラグ7の頭部を折ると共に急結セメント8も撤去して、コンクリート壁1を補修モルタル等で仕上げている。
【0037】
以上のように、本発明による高圧注入止水工法は、ひび割れのコンクリート壁内側の表面を封鎖することで、止水材は高圧注入されると共に発泡による体積膨張を発生させることによってコンクリート躯体の外側まで奥深く充填されると同時に、亀裂補強部材の挿入によって長期の耐久性を確立することになり、大型コンクリート構造物であってもひび割れ部や打ち継ぎ部等の漏水亀裂に対する注入充填性、止水接着性及び耐久性の要求性能が確立して適切な止水を達成している。
【0038】
次に、本発明による高圧注入止水工法の他の実施形態について説明する。
本実施の形態は、漏水亀裂に対する注入確認孔をコンクリート表層から所定の角度で止水材注入孔よりもコンクリート表層側に漏水亀裂を横断した状態に削孔することを特徴にしており、上記実施の形態の機能に加えて、コンクリート表層の漏水亀裂から反応水及び止水材が流出することを観測することで、漏水亀裂中にも止水材が注入されていることを確認することができる。
【0039】
図2は、コンクリート壁の漏水亀裂に注入確認孔を削孔する実施の形態図であり、図2(a)は、コンクリート壁面に発生しているひび割れに止水材注入孔と注入確認孔を削孔する工程を示している。
【0040】
本実施の形態では、上記実施の形態と同様に止水材注入孔2を削孔すると共に、注入確認孔10を止水材注入孔2よりもコンクリート表層側に位置しているひび割れ3の不連続面を横断させるように、コンクリート表層から所定の角度で開けている。注入確認孔10は、コンクリート壁1の表面から約100mm入った位置に不連続面を横断するように開けられており、注入確認孔10の不連続面との開口が、コンクリート壁1に開けられる止水材注入孔2の不連続面との開口位置よりも手前の位置に形成されている。
【0041】
これによって、ひび割れ3の不連続面に浸透している浸入水を排水すると同時に、止水材5を止水材注入孔2から注入した際の充填性を良くしつつ、充填状況を確認することも可能になるものである。
【0042】
図2(b)は、逆流防止弁付注入プラグを装着する状態を示しているが、上記実施の形態と同様に、必要に応じて止水材注人孔2の内部に残存しているコンクリート粉をエアーブローによって入念に除去している。
【0043】
止水材注入孔2の開口部6に逆流防止弁付注入プラグ7を装着する際には、ひび割れ3の表面を急結セメント8等で封鎖しているが、本工程では注入確認孔10が開放されていることで、浸入水が排水されると同時に次工程において確認されるように止水材注入孔2がひび割れ3の不連続面と接続していることと止水材の充填状況を確認できるようにしている。
【0044】
図2(c)は、止水材注入孔がひび割れの不連続面と接続していることを確認し、止水材を密閉室及びひび割れの不連続面に注入する際に止水材の充填状況を確認する工程を示している。
【0045】
本工程では、水9を逆流防止弁付注入プラグ7から圧力5〜10MPaで注入するものであり、注入された水9は、止水材注入孔2から密閉室5とひび割れ3の不連続面とに浸透して不連続面の全域に行き渡ることから、注入確認孔10からも流出することになって、止水材注入孔2がひび割れ3の不連続面と接続していることと止水材4の発泡硬化に充分な水が予め供給されたことを確認できる。
【0046】
又、本工程に次いで上記実施の形態と同様に、止水材4を圧力10〜20MPaで止水材注入孔2から注入するが、最初の注入はあくまでも止水材注入孔2がひび割れ3の不連続面と接続していることの再確認のものである。
【0047】
即ち、止水材4がひび割れ3の不連続面に高圧で注入されると、浸入水圧力が作用しているコンクリート躯体の外側よりも浸透し易い注入確認孔10から止水材4が先ず流出することになるが、これによって、ひび割れ3の不連続面が止水材によって充分に充填されることが確認されることになる。
【0048】
本実施の形態では、止水材4の流出が確認されたところで止水材4が流出しないように注入確認孔10を木綿や木品あるいはゴム栓等で塞ぐものであり、この封鎖後において所定の注入量を充填するものである。
【0049】
従って、止水材4は、上記実施の形態と同様に化学反応して発泡すると共に、必要とする充分な体積膨張でコンクリート躯体の外側まで奥深く浸透された後に硬化することになって、亀裂補強部材11をひび割れ3の不連続面を横断するように止水材注入孔2に固着すると同時に適切な止水を確立することになる。
【0050】
さらに、他の実施の形態では、止水材注入孔から漏水亀裂と漏水亀裂を横断する密閉室とに反応水を加圧注入することで湿潤させた後に、コンクリート表層の漏水亀裂を封鎖することを特徴としており、上記実施の形態の機能に加えて、コンクリート表層の漏水亀裂から反応水が流出することを観測するだけで止水材注入孔が漏水亀裂を確実に横断していることを確認できる。
【0051】
図3は、コンクリート壁の漏水亀裂を止水材注入孔が横断していることを確認する他の実施の形態図である。
【0052】
本実施の形態では、水9を逆流防止弁付注入プラグ7から圧力5〜10MPaで注入するのに、コンクリート壁の表面に現れているひび割れ3を急結セメント等で封鎖していない。従って、注入された水9は、止水材注入孔2から密閉室5とひび割れ3の不連続面とに浸透して不連続面の全域に行き渡るが、コンクリート壁の表面に現れているひび割れ3からも流出することになるので、止水材注入孔2がひび割れ3の不連続面と接続していることと止水材4の発泡硬化に充分な水が予め供給されたことを確認できる。
【0053】
そして、上記確認に次いで行われる止水材4の注入は、コンクリート壁の表面に現れているひび割れ3を急結セメント等で封鎖した後に行うものであるから、止水材4の所定量をひび割れ3の不連続面に高圧で注入すると、上記実施の形態と同様に化学反応して発泡するものであり、体積膨張でコンクリート躯体の外側まで奥深く浸透された後に硬化すると同時に、亀裂補強部材11をひび割れ3の不連続面を横断するように止水材注入孔2に固着することになる。
【0054】
以上のように、本発明による親水性一液型ポリウレタンプレポリマーから成る止水材の高圧注入止水工法は、下記のように施工性、注入充填性、止水接着性及び耐久性に優れているので、漏水しているひび割れの止水効果に優れ、亀裂補強部材の挿入によって長期の止水耐久性が期待でき、併せて、工期の短縮、美麗な仕上がりも確保されるので、大きな壁厚のコンクリート躯体への施工が容易に違成できる。
【0055】
▲1▼ ひび割れや打ち継ぎ部の表面をシールしての高圧注入なので、圧力が止水材に無駄なく伝って狭いひび割れの隅々まで注入できる。
▲2▼ 硬化反応が緩やかで高圧注入後の発泡膨張圧で浸透が行われるので狭いひび割れの隅々まで止水できる。
【0056】
次に本発明による高圧注入止水工法に用いる止水材について説明する。
本発明による止水材は、親水性一液型ポリウレタンプレポリマーを主成分にする止水材において、常温で粘度を700〜1400mPa・sにすることを特徴としており、大型コンクリート構造物における漏水亀裂に対しても注入充填性を良くして、止水接着性や耐久性に優れた止水を確立している。
【0057】
本発明による止水材は、親水性一液型ポリウレタンプレポリマーを主成分とするものであるが、この親水性一液型ポリウレタンプレポリマーは、基本的に水と反応して発泡硬化する性状を有しており、例えば、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールアリールエーテル、ポリアルキレングリコールアルキルアリールエーテル、あるいはポリアルキレングリコールとポリアルキレングリコールの有機酸エステルとの混合物と、イソシアネート基を有する有機化合物とを反応させた反応生成物である。
【0058】
ここで、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールアリールエーテル、ポリアルキレングリコールアルキルアリールエーテルはエチレンオキシド、もしくはプロピレンオキシドの重合体あるいはこれらの共重合体で、分子量は1000〜10000である。また、ポリアルキレングリコールの有機酸エステルとは、前記ポリアルキレングリコールの多価カルポン酸エステルであって、多価カルボン酸の具体例としては、マレイン酸、アジピン酸、フタール酸等が挙げられる。
【0059】
上記ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールアリールエーテル、ポリアルキレングリコールアルキルアリールエーテル、あるいはこれとポリアルキレングリコールの有機酸エステルとの混合物と反応する前記イソシアネート基を有する化合物としては、イソシアネート基を少なくとも2つ以上有する化合物であって、具体的には、トリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート(ポリメチレンポリフェニレンイソシアネート)、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。なかでも、トリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネートは硬化速度を制御するのに好ましい。
【0060】
ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールアリールエーテル、ポリアルキレングリコールアルキルアリールエーテル、あるいはポリアルキレングリコールとポリアルキレングリコールの有機酸エステルとの混合物と、イソシアネート基を有する有機化合物との割合は、前者の水酸基1個当たりイソシアネート基1〜10個となる範囲で反応させるのが好ましい。前者の水酸基を1個当たり、イソシアネート基を1個未満の割合で反応させると、重合度が低下し硬化性が劣るので好ましくない。又、10個以上では、重合速度が速くなって硬化速度のコントロールが難しい等の理由により好ましくない。
【0061】
親水性一液型ポリウレタンプレポリマーの反応方法は、一般的な公知の方法で反応させているものであり、親水性一液型ポリウレタンプレポリマー(2R−NCO)が水(H2O)と接して炭酸ガス(CO2)を発生させる化学反応を進行させて、発泡膨張しながら硬化物(R−NHCONH)に成る反応式は、以下の通りである。
2R−NCO + H2O → R−NHCONH−R + CO2
【0062】
本実施の形態では、親水性一液型ポリウレタンプレポリマーの粘度を700〜1400mPa・sに調整しており、この他にも以下の各種特性を発揮出来るように調合している。
【0063】
○ 比重 1.16 g/cm3
○ 見かけ密度 0.09 g/cm2
○ 圧縮強さ 0.15〜0.19 MPa
○ 曲げ強さ 0.41〜0.61 MPa
○ 独立気泡率 77.8〜80.2 %
○ 温度―粘度特性 図4
【0064】
従来の親水性一液型ポリウレタンプレポリマーと本発明による親水性一液型ポリウレタンプレポリマーの一般用、冬季用とを比較して示している。
【0065】
○ 発泡速度 図5 一般用(a)、冬季用(b)
親水性一液型ポリウレタンプレポリマーは、反応が高温度になるに伴って早くなるので、温度の上昇と共に発泡時間が短くなっている。
【0066】
○ 発泡倍率 図6 一般用(a)、冬季用(b)
親水性一液型ポリウレタンプレポリマーの発泡倍率は、温度が高くなるほど大きく、水の混合割合が大きいと発泡倍率が小さくなる傾向を示しており、水質による差は見られていない。
【0067】
○ 発泡を押さえた硬化物の引張強度 35〜42 MPa
【0068】
本発明による止水材は、親水性一液型ポリウレタンプレポリマーを主成分にして以上の特性を備えていることで、壁厚の大きいコンクリート構造物に発生するひび割れや打継ぎ部の不連続面に対しても、親水性一液型ポリウレタンプレポリマーを主成分にしている止水材は、止水材注入孔に装着される逆流防止弁付注入プラグから高圧で注入される際に浸透し易いように構成されているものであり、これによって、止水材は、湿潤面への接着性、硬化物の強度特性と引張強度とに優れた止水接着系を形成できるものである。
【0069】
以上、本発明を実施の形態に基づいて詳細に説明してきたが、本発明による親水性一液型ポリウレタンプレポリマーから成る止水材の高圧注入止水工法及び止水材は、上記実施の形態に何ら限定されるものでなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、出願時において既に公知のものを適用することによる種々の変更が可能であることは、当然のことである。
【0070】
【発明の効果】
請求項1に記載の親水性一液型ポリウレタンプレポリマーから成る止水材の高圧注入止水工法は、コンクリート構造物の漏水亀裂に対してコンクリート表層から所定の角度に止水材注入孔を削孔して、漏水亀裂を横断した状態で止水材を保留する密閉室を形成すると共に密閉室に亀裂補強部材を挿入して置き、次いで、コンクリート表層の漏水亀裂を封鎖すると共に止水材注入孔に逆流防止弁付注入プラグを装着し、しかる後に注入プラグから親水性一液型ポリウレタンプレポリマーを主成分にする止水材を加圧注入して密閉室内と漏水亀裂とに所定量充填し、止水材を浸入水との化学反応で発泡させながら漏水亀裂内に浸透させることを特徴としているので、下記のように漏水しているひび割れの具体的な止水効果に優れ、亀裂補強部材の挿入によって長期の止水耐久性が期待できると共に工期の短縮、美麗な仕上がりも確保されて大きな壁厚のコンクリート躯体への施工が容易に違成でき、注入充填性、止水接着性及び耐久性の要求性能を確立して適切に止水できる効果を発揮している。
【0071】
▲1▼ ひび割れや打ち継ぎ部の表面をシールしての高圧注入なので、圧力が止水材に無駄なく伝って狭いひび割れの隅々まで注入できる。
▲2▼ 硬化反応が緩やかで高圧注入後の発泡膨張圧で浸透が行われるので、狭いひび割れの隅々まで止水できる。
【0072】
請求項2に記載の親水性一液型ポリウレタンプレポリマーから成る止水材の高圧注入止水工法は、請求項1に記載の高圧注入止水工法において、漏水亀裂に対する注入確認孔を、コンクリート表層から所定の角度で止水材注入孔よりもコンクリート表層側に漏水亀裂を横断した状態に削孔することを特徴としているので、上記効果に加えて、コンクリート表層の漏水亀裂から反応水及び止水材が流出することを観測することで、漏水亀裂中にも止水材が注入されていることを確認できる効果を発揮している。
【0073】
請求項3に記載の親水性一液型ポリウレタンプレポリマーから成る止水材の高圧注入止水工法は、請求項1又は2に記載の高圧注入止水工法において、コンクリート表層の漏水亀裂を、漏水亀裂と漏水亀裂を横断する密閉室とに止水材注入孔から反応水を加圧注入して湿潤した後に封鎖することを特徴としているので、上記効果に加えて、コンクリート表層の漏水亀裂から反応水が流出することを観測することで、止水材注入孔の漏水亀裂に対する横断を確認できる効果を発揮している。
【0074】
請求項4に記載の親水性一液型ポリウレタンプレポリマーから成る止水材の高圧注入止水工法は、請求項1乃至3のいずれかに記載の高圧注入止水工法において、止水材を漏水亀裂と漏水亀裂を横断する密閉室とに反応水を加圧注入した後に加圧注入することを特徴としているので、上記効果に加えて、止水材の発泡圧及び体積膨張の発生を促進して漏水亀裂の狭間中に浸入・硬化して亀裂を密封する機能を更に強化できる効果を発揮している。
【0075】
請求項5に記載の親水性一液型ポリウレタンプレポリマーから成る止水材の高圧注入止水工法は、請求項1乃至4のいずれかに記載の高圧注入止水工法において、止水材を、10〜20MPaの圧力で密閉室内と漏水亀裂とに注入することを特徴としているので、上記効果に加えて、発泡前の止水材を漏水亀裂の狭間中に適切に浸入できる効果を発揮している。
【0076】
請求項6に記載の親水性一液型ポリウレタンプレポリマーから成る止水材の高圧注入止水工法は、請求項1乃至5のいずれかに記載の高圧注入止水工法において、止水材の充填注入量を、浸入水との化学反応で発揮される発泡倍率を勘案して決定することを特徴としているので、上記効果に加えて、止水材の使用量を適切に調整できる効果を発揮している。
【0077】
本発明による止水材は、上記の各高圧注入止水工法に用いるものであって、親水性一液型ポリウレタンプレポリマーを主成分にする止水材において、粘度を700〜1400mPa・sにすることを特徴としているので、大型コンクリート構造物における漏水亀裂に対しても注入充填性を良くして止水接着性や耐久性に優れた止水を確立でき、湿潤面への接着性、硬化物の強度特性と引張強度に優れた止水接着系を形成できる効果を発揮している。
【図面の簡単な説明】
【 図1】本発明による高圧注入止水工法を壁厚の大きなコンクリート壁に適用した実施の形態図
【 図2】本発明による高圧注入止水工法を壁厚の大きなコンクリート壁に適用した他の実施の形態図
【 図3】本発明による高圧注入止水工法を壁厚の大きなコンクリート壁に適用した他の実施の形態図
【 図4】本発明による止水材の温度―粘度特性図
【 図5】本発明による止水材の発泡速度図
【 図6】本発明による止水材の発泡倍率図
【 図7】従来の壁厚の大きなコンクリート壁に対する高圧注入止水施工図
【符号の説明】
1 コンクリート壁、 2 止水材注入孔、 3 ひび割れ、 4 止水材、
5 密閉室、 6 開口部、 7 逆流防止弁付注入プラグ、
8 急結セメント、 9 水、 10 注入確認孔、 11 亀裂補強部材、
20 コンクリート壁面、 21 打継ぎ部、 22 開口位置、
23 中心位置、 24 注入穴、 25 開口部、 26 注入具、
27 底部、 28 加圧域、 29 充填材、 30 流出、
Claims (7)
- コンクリート構造物の漏水亀裂に対してコンクリート表層から所定の角度に止水材注入孔を削孔して、該漏水亀裂を横断した状態で止水材を保留する密閉室を形成すると共に該密閉室に亀裂補強部材を挿入して置き、次いで、コンクリート表層の漏水亀裂を封鎖すると共に該止水材注入孔に逆流防止弁付注入プラグを装着し、しかる後に該注入プラグから親水性一液型ポリウレタンプレポリマーを主成分にする止水材を加圧注入して該密閉室内と漏水亀裂とに所定量充填し、該止水材を浸入水との化学反応で発泡させながら漏水亀裂内に浸透させることを特徴とする高圧注入止水工法。
- 漏水亀裂に対する注入確認孔が、コンクリート表層から所定の角度で止水材注入孔よりもコンクリート表層側に漏水亀裂を横断した状態に削孔されることを特徴とする請求項1に記載の親水性一液型ポリウレタンプレポリマーから成る止水材の高圧注入止水工法。
- コンクリート表層の漏水亀裂が、漏水亀裂と漏水亀裂を横断する密閉室とに止水材注入孔から反応水を加圧注入して湿潤された後に封鎖されることを特徴とする請求項1又は2に記載の親水性一液型ポリウレタンプレポリマーから成る止水材の高圧注入止水工法。
- 止水材が、漏水亀裂と漏水亀裂を横断する密閉室とに反応水を加圧注入した後に加圧注入されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の親水性一液型ポリウレタンプレポリマーから成る止水材の高圧注入止水工法。
- 止水材が、10〜20MPaの圧力で密閉室内と漏水亀裂とに注入されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の親水性一液型ポリウレタンプレポリマーから成る止水材の高圧注入止水工法。
- 止水材の充填注入量が、浸入水との化学反応で発揮される発泡倍率を勘案して決定されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の親水性一液型ポリウレタンプレポリマーから成る止水材の高圧注入止水工法。
- 親水性一液型ポリウレタンプレポリマーを主成分にする止水材であって、粘度が700〜1400mPa・sであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の高圧注入止水工法に用いる親水性一液型ポリウレタンプレポリマーを主成分にする止水材。
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