JP2004249267A - トラップ装置の蒸発成分付着防止方法およびトラップ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】加熱炉の排ガス中の被処理物の蒸発成分がトラップ装置の冷却面に付着するのを防止でき、この付着による蒸発成分回収能力の低下を生じることなく蒸発成分を回収できる、トラップ装置の蒸発成分付着防止方法およびトラップ装置を提供する。
【解決手段】加熱炉の排ガス管路に設置され冷却面14により排ガスGを冷却して排ガス中の蒸発成分を回収するトラップ装置5において、冷却面14の温度より低い凝固点を有する液体Qで冷却面14を覆い、排ガスGの冷却により凝縮した蒸発成分を液体Qに混入させて、トラップ装置5から排出する。
【選択図】 図2
【解決手段】加熱炉の排ガス管路に設置され冷却面14により排ガスGを冷却して排ガス中の蒸発成分を回収するトラップ装置5において、冷却面14の温度より低い凝固点を有する液体Qで冷却面14を覆い、排ガスGの冷却により凝縮した蒸発成分を液体Qに混入させて、トラップ装置5から排出する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、気体中に含まれる蒸発成分を、冷却により凝縮液化または固化させて回収するトラップ装置において、トラップ装置の冷却面に蒸発成分が付着するのを防止する方法、およびこの方法を実施するためのトラップ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
たとえば自動車のスクラップなどの廃棄物を再利用するために、廃棄物から油分などの不純物を分離回収し、この不純物を除去した上記廃棄物の金属材等を有価物として再利用に供する装置として、真空加熱炉において上記不純物を真空蒸発させ、得られた蒸発成分を真空ポンプを有する排気管路に設けた回収装置により回収する、真空蒸発回収装置が用いられるようになった。この従来の真空蒸発回収装置としては、下記各特許文献記載のものを総括図示する図12にも示すように、被処理物を収容する真空加熱炉101の排気管路102に真空ポンプ103を接続し、この真空ポンプ103と真空加熱炉101との間に、真空蒸発した蒸発成分を凝縮させて回収する回収装置104を設けたものが一般的であった(たとえば特許文献1および2および3参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平5−331564号公報(第3−4頁、図1、図2)
【特許文献2】
特開平7−26334号公報(第3頁、図1)
【特許文献3】
特開平8−188833号公報(第2−3頁、図1−図4)
【0004】
そして上記の回収装置104としては、上記特許文献1にも水冷ジャケット式のものが記載されているように、冷水や冷媒で低温にした冷却面により、流入する排ガスを冷却して凝縮・固化させて回収するコールドタイプのトラップ装置が、また真空ポンプ103としては、上記特許文献3に記載のように、ロータリーポンプと称される油回転ポンプや油拡散ポンプなどのウエットタイプの真空ポンプが、使用されている。なお図中、105は必要に応じて設けられるブースターポンプである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが上記従来の真空蒸発回収装置100においては、真空加熱炉101における自動車のシュレッダー処理品などの廃棄物の真空加熱により発生した油,水分,酸(たとえば塩酸や硫酸や有機酸)などを蒸発成分として含む排ガスが、大量に回収装置104部を流通してその冷却面に凝縮・固着するため蒸発成分回収能力が時間とともに低下して、その一部が回収されずに真空ポンプ103内へ流入し、ガス温度の降下やガス圧力の上昇により液化した上記蒸発成分がポンプ内の油に混入し、ポンプ各部の腐食による損傷や油の劣化によるポンプ運転の不調をひきおこし、さらに真空ポンプ103部を通過した未回収蒸発成分が後段側の排気管路102の腐食や大気中に放出されて異臭発生の原因となるなど、多くの問題点を有するものであった。また廃棄物中に木材やプラスチックなどを含む場合は、これらの熱分解によりタール状炭化水素を発生し、冷却面や配管内壁面に粘着性を有するタールとして付着し、蒸発成分回収能力の低下や配管の閉塞事故の原因となっていた。
【0006】
また上記特許文献1には、回収装置の冷却面(凝固室の内面)に凝固付着した被処理物の厚さが所定の厚さになったときに、回転刃により上記内面に凝固付着している被処理物を削り取る形式の回収装置が記載されているが、上記の削り取り前の状態では蒸発成分回収能力が低いため、前記したのと同様な未回収蒸発成分による問題点を生じるものである。
【0007】
この発明は上記従来の問題点を解決しようとするもので、加熱炉の排ガス中の被処理物の蒸発成分がトラップ装置の冷却面に付着するのを防止でき、この付着による蒸発成分回収能力の低下を生じることなく蒸発成分を回収できる、トラップ装置の蒸発成分付着防止方法およびトラップ装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載のトラップ装置の蒸発成分付着防止方法は、加熱炉の排ガス管路に設置され冷却面により排ガスを冷却して排ガス中の蒸発成分を回収するトラップ装置において、前記冷却面の温度より低い凝固点を有する液体で前記冷却面を覆い、排ガスの冷却により凝縮した蒸発成分を前記液体に混入させて、トラップ装置から排出することを特徴とする。
【0009】
請求項1記載の発明によれば、トラップ装置の冷却面を覆う該冷却面の温度より凝固点の低い液体により、凝縮した蒸発成分の冷却面への付着が防止され、この付着による蒸発成分回収能力の低下を防止できる。
【0010】
また請求項2記載の発明は、加熱炉の排ガス管路に設置され冷却面により排ガスを冷却して排ガス中の蒸発成分を回収するトラップ装置において、前記冷却面の温度より低い凝固点を有する液体を、前記冷却面に沿って流下させ、排ガスの冷却により凝縮した蒸発成分を前記液体と共に流下させて、トラップ装置から排出することを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、トラップ装置の冷却面に沿って流下する該冷却面の温度より凝固点の低い液体(以下、単に液体という)により、凝縮した蒸発成分の冷却面への付着が防止され、この付着による蒸発成分回収能力の低下を防止できる。
【0012】
また請求項3記載の発明は、加熱炉の排ガス管路に設置され冷却面により排ガスを冷却して排ガス中の蒸発成分を回収するトラップ装置において、前記冷却面の温度より低い凝固点を有する液体を、前記冷却面に吹付け、排ガスの冷却により凝縮した蒸発成分を前記液体と共に流下させて、トラップ装置から排出することを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、トラップ装置の冷却面に吹付けられ次いで冷却面に沿って流下する液体により、凝縮した蒸発成分の冷却面への付着が防止され、この付着による蒸発成分回収能力の低下を防止できる。
【0014】
また請求項4記載の発明は、加熱炉の排ガス管路に設置され底部に設けた水平方向に延びる冷却面により排ガスを冷却して排ガス中の蒸発成分を回収するトラップ装置において、前記冷却面の温度より低い凝固点を有する液体を、前記冷却面上に供給して該冷却面上を流動させ、排ガスの冷却により凝縮した蒸発成分を前記液体と共にトラップ装置から排出することを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、トラップ装置の水平方向に延びる冷却面上に供給され該冷却面上を流動する液体により、凝縮した蒸発成分の冷却面への付着が防止され、この付着による蒸発成分回収能力の低下を防止できる。なおこの発明における水平方向とは、水平方向に対して小角度(たとえば最大10度程度)傾斜した方向も含むものとする。
【0016】
請求項2記載の発明における液体の流下は、たとえば一定流量で連続的におこなってもよいが、請求項5記載の発明のように、前記加熱炉における蒸発成分の発生量に応じて選定した流下流量で、前記液体の流下をおこなうようにすれば、ポンプなどの液体送給用機器の動力費の節減、および新しい液体のみを使用する場合の液体使用量の節減をはかることができる。
【0017】
請求項3記載の発明における液体の吹付は、たとえば一定流量で連続的におこなってもよいが、請求項6記載の発明のように、前記加熱炉における蒸発成分の発生量に応じて選定した吹付流量で、前記液体の吹付けをおこなうようにすれば、ポンプなどの液体送給用機器の動力費の節減、および新しい液体のみを使用する場合の液体使用量の節減をはかることができる。
【0018】
また請求項7記載のトラップ装置は、加熱炉の排ガス管路に設置され冷却面により排ガスを冷却して排ガス中の蒸発成分を回収するトラップ装置において、前記冷却面の温度より低い凝固点を有する液体を前記冷却面の上部に供給する液体供給装置と、前記冷却面を流下した液体および排ガスの蒸発成分を排出する排液口とを備えたことを特徴とする。
【0019】
請求項7記載の発明によれば、トラップ装置の冷却面の上部に供給した液体を冷却面に沿って流下させることにより、凝縮した蒸発成分の冷却面への付着を防止でき、この付着による蒸発成分回収能力の低下を防止できる。
【0020】
また請求項8記載のトラップ装置は、加熱炉の排ガス管路に設置され冷却面により排ガスを冷却して排ガス中の蒸発成分を回収するトラップ装置において、前記冷却面の温度より低い凝固点を有する液体を上下複数段にわたって前記冷却面に吹付ける液体吹付装置と、前記冷却面を流下した液体および排ガスの蒸発成分を排出する排液口とを備えたことを特徴とする。
【0021】
請求項8記載の発明によれば、トラップ装置の冷却面に上下複数段にわたって液体を吹付けることにより、凝縮した蒸発成分の冷却面への付着を防止でき、この付着による蒸発成分回収能力の低下を防止できる。
【0022】
また請求項9記載のトラップ装置は、加熱炉の排ガス管路に設置され底部に設けた水平方向に延びる冷却面により排ガスを冷却して排ガス中の蒸発成分を回収するトラップ装置において、前記冷却面の温度より低い凝固点を有する液体を前記冷却面上に供給する液体供給装置と、前記冷却面上を流動した液体および排ガスの蒸発成分を排出する排液口とを備えたことを特徴とする。
【0023】
請求項9記載の発明によれば、トラップ装置の冷却面上に液体を供給し冷却面上を流動させることにより、凝縮した蒸発成分の冷却面への付着を防止でき、この付着による蒸発成分回収能力の低下を防止できる。
【0024】
請求項7記載の発明における液体供給装置は、前記液体として新しい液体のみを前記冷却面の上部に供給するものとしてもよいが、請求項10記載の発明のように、前記液体供給装置が、前記冷却面の上部に対向する供給口を有する液体供給管と、前記排液口に接続され該排液口からの排出液を貯留する貯留槽と、この貯留槽の貯留液を前記液体供給管に還流送給する還流送給手段とを備えて成るものとすれば、蒸発成分と共に排液口から流出した液体は液体供給管に還流送給されて循環使用されるため、液体の使用量が少なくて済む。
【0025】
また請求項8記載の発明における液体吹付装置は、前記液体として新しい液体のみを前記冷却面に吹付けるものとしてもよいが、請求項11記載の発明のように、前記液体吹付装置が、前記冷却面に対向する吹付口を上下複数段にわたって有する液体吹付管と、前記排液口に接続され該排液口からの排出液を貯留する貯留槽と、この貯留槽の貯留液を前記液体吹付管に還流送給する還流送給手段とを備えて成るものとすれば、蒸発成分と共に排液口から流出した液体は液体吹付管に還流送給されて循環使用されるため、液体の使用量が少なくて済む。
【0026】
請求項7乃至11記載のトラップ装置における冷却面は、たとえば金属の切削加工面や、金属管材の押出あるいは引抜加工による塑性加工面など、各種の金属面で構成することもできるが、請求項12記載の発明のように、前記冷却面が、テフロン(登録商標)やメッキ層などの難付着性被膜でコーティングされているもの、あるいは請求項13記載の発明のように、前記冷却面が、金属の研磨加工面により構成されているものとすれば、蒸発成分が冷却面に付着するのを一層確実に防止でき、好ましい。
【0027】
また請求項7乃至13記載のトラップ装置は、各種の加熱炉の排ガス管路に設置されるトラップ装置に適用できるものであるが、請求項14記載の発明のように、前記加熱炉が不活性ガス雰囲気加熱炉であり、前記排ガス管路がこの不活性ガス雰囲気加熱炉から排気口に至る排気管路であって、前記トラップ装置がこの排気管路に設置されるトラップ装置である場合には、不活性ガスを蒸発成分を回収した状態で排気放出できるとともに、回収した蒸発成分を再利用に供することができ、また請求項15記載の発明のように、前記加熱炉が不活性ガス雰囲気加熱炉であり、前記排ガス管路がこの不活性ガス雰囲気加熱炉から循環ファンを経て該加熱炉に至る循環管路であって、前記トラップ装置がこの循環管路に設置されるトラップ装置である場合には、蒸発成分を回収した不活性ガスを不活性雰囲気ガスとして循環使用できるので不活性ガス使用量が少なくて済み、また回収した蒸発成分も再利用に供することができる。
【0028】
また請求項7乃至13記載のトラップ装置は、大気圧に近い炉内圧力の加熱炉からの排ガス管路に設置されるトラップ装置にも適用できるものであるが、請求項16記載の発明のように、前記加熱炉が真空加熱炉であり、前記排ガス管路がこの真空加熱炉から真空ポンプに至る排気管路であって、前記トラップ装置がこの排気管路に設置されるトラップ装置である場合には、排ガス中の未回収蒸発成分による悪影響を受けやすい真空ポンプの損傷や性能低下を確実に防ぐことができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下図1〜図3に示す第1例により、この発明の実施の形態を説明する。図1において、1は真空蒸発回収装置で、2は被処理物を収容して真空加熱をおこなう真空加熱炉、3はその排気管路、4はこの排気管路に設けた真空ポンプ、5はこの真空ポンプ4の前段側の排気管路3に設けたトラップ装置、6はこのトラップ装置5と真空ポンプ4の間の排気管路3に設けた二次トラップ装置、7は真空ポンプ4の後段側に設けた活性炭を吸着剤として充填した吸着装置である。
【0030】
各トラップ装置のうち、先ず前段側のトラップ装置5は、ガス流入口11から流出口12に至るU字管状のガス流通管10の外周部を、U字状のジャケット13で包囲して成る水冷ジャケット形式のコールドトラップで、図示しない冷凍機により冷却されるブラインRをジャケット13内に流通させて、冷却面14(図2参照)を0℃に維持するものであり、この冷却面14への蒸発成分の付着防止機構については、後述する。
【0031】
また二次トラップ装置6は、側壁部にガス流入口41とガス流出口42を対向してそなえた有底筒状体の頂部を蓋板で閉鎖した外槽40内に、有底円筒状の内槽43を同心状に配置し、この内槽43内に、図示しない冷媒供給装置から供給される冷媒S(この例ではパーフロロポリエーテル[PFPE])を流通させてその冷却面(内槽43の外周面)を−45℃に維持する二重槽式のコールドトラップである。
【0032】
次にトラップ装置5における冷却面14への蒸発成分の付着防止機構を、図2および図3により説明すると、先ず15はガス流通管10の底部に設けた排液口で、ジャケット13を貫通して下向きに開口している。16は液体供給管で、ガス流入口11側のガス流通管10の上部を貫通して下向きに延びる主管17の下部に、この主管17に連通する8本の枝管18を放射状に設け、各枝管18の先端部に形成した供給口19を、冷却面14の上部に対向させて、ガス流通管10に固定取付けされている。この液体供給管16は、冷却面14の温度よりも凝固点の低い液体Qを、その供給口19から冷却面14の上部に供給するものであり、この液体Qとしてこの例では、凝固点が0℃より低いスピンドル油を用いる。またガス流通管10の内周面である冷却面14には、テフロン(登録商標)コーティングを施してある。
【0033】
一方21は、ガス流通管10の下部の前記排液口15に連結管22を介して接続された貯留槽で、排液口15からの排出液を一時貯留するためのもので、23はこの一時貯留した貯留液を送出する送出口、24は新液注入口、25は廃液口である。そして送出口23と液体供給管16とを還流管路26で接続し、この還流管路26にモータ27により駆動されるポンプ28とフィルタ29を設けて、貯留槽21の貯留液を液体供給管16に還流送給する還流送給手段30が構成されている。31はモータ27の運転を制御する制御装置である。
【0034】
上記各装置で構成された真空蒸発回収装置1において、自動車のシュレッダー処理品を被処理物として不純物の回収処理をおこなうには、真空加熱炉2内に被処理物を装入後、真空ポンプ4により炉内を所定の真空度まで真空引きし、真空加熱炉2の加熱装置(図示しない)により被処理物を真空加熱する。
【0035】
この真空加熱により被処理物から蒸発した蒸発成分は、排ガスとともに排気管路3内を流れ、トラップ装置5部において0℃の冷却面14により冷却されて蒸発成分中の高沸点成分である油類が凝縮・回収される。このトラップ装置5を通過して高沸点成分を回収除去された排ガスは、二次トラップ装置6に流入し、−45℃の冷却面により冷却されて、蒸発成分中の低沸点成分である水,酸類が内槽43の外周面に凝縮・付着して回収されたのち、真空ポンプ4に流入し、真空ポンプ4を流出した排ガスは、吸着装置7によりH2Sやエチルメチルカプタンなどの常温でも気化状態にある蒸発成分を回収されたのち、大気中へ放出される。
【0036】
そして上記の真空蒸発回収時に、トラップ装置5においては、前記液体Qにより冷却面14への蒸発成分(この例では上記高沸点成分である油類)の付着防止を下記のようにしておこなう。すなわち、先ず装置の新設時などで空の状態の貯留槽21には、新液注入口24から液体Qを貯留槽21内に充填しておく。真空加熱炉2からの排ガスGの流通時には、ポンプ28を運転して、貯留槽21内の貯留液を液体供給管16へ送給して各供給口19から冷却面14の上部に供給し、冷却面14に沿って流下させる。
【0037】
これによって、ブラインRのジャケット13内流通により0℃の低温に維持される冷却面14上に、液体Qの薄い流下層が形成され、ガス流通管10内を流通する排ガスGはこの流下層を介して冷却され、この冷却により凝縮した蒸発成分は、直接冷却面14に付着乃至固着することなく上記流下層と共に流下して排液口15から排出される。
【0038】
この排出された蒸発成分を含む液体Qは、貯留槽21内に一時貯留後、還流送給手段30により液体供給管16へと還流送給され、冷却面14上の上記流下層形成に循環使用される。このとき大粒子の固化乃至粘性液状となった蒸発成分はフィルタ29により除去されるので、上記流下層の形成と新たな蒸発成分の流下回収は支障なくおこなわれるが、長期間の使用により貯留槽21内の貯留液中の蒸発成分量が過大となったときは、貯留液の一部あるいは全部を新しい液体Qと交換すればよい。このように液体Qは循環使用されるので、新しい液体Qのみを使用する場合に比べて、液体Qの使用量は少なくて済む。
【0039】
上記の液体供給管16による冷却面14の上部への液体Q(詳しくは蒸発成分を含む液体Q)の供給は、一定流量で連続的におこなってもよいが、真空加熱炉2における蒸発成分の発生量に応じて液体Qの供給流量、従って流下流量を変化させることにより、ポンプ28駆動用の動力費の節減、および本例のように液体Qを循環使用せずに新しい液体Qのみを使用する場合における液体使用量の節減を図ることができる。
【0040】
この液体Qの供給流量の調節は、たとえば真空加熱炉2における被処理物の真空加熱開始から終了までの蒸発成分発生量を予め実測して得た発生量データに対して、トラップ装置5の後段側への未回収蒸発成分流出量を所定の低量に抑えることができる液体Qの必要供給流量を、制御装置31のメモリ部へ時間軸に対応するポンプ28(従ってモータ27)の回転数データとして格納しておき、制御装置31によりモータ27の回転数をプログラム制御することによって、おこなうことができるが、この他に真空加熱炉2における蒸発成分の発生量を真空計の真空度として常時検出し、この検出値に応じて液体Qの上記必要供給流量が得られるようにモータ27の回転数を制御する方法によってもよい。
【0041】
またこの例では、冷却面14にはテフロンコーティングを施してあるので、液体Qの循環使用により液体Q中の蒸発成分含有量が多くなっても、冷却面14にこの蒸発成分が直接付着するのを防止でき、また液体Qの流下を一時停止した場合でも、冷却面14上に残留付着していた蒸発成分を流下再開により容易に流下させることができるので、好ましい。なおこのテフロンコーティングの代りに、冷却面14に難付着性被膜としてたとえばクロムメッキなどのメッキを施した場合や、冷却面14を、ガス流通管10を構成する金属の研磨加工面で形成した場合にも、上記テフロンコーティングの場合と同様に良好な蒸発成分の付着防止作用が得られる。
【0042】
以上のように、冷却面14に沿って液体Q(詳しくは蒸発成分を含む液体Q。以下、他の例においても同じ。)を流下させることにより、排ガス中の蒸発成分が冷却面14に付着するのを防止でき、この付着による蒸発成分回収能力低下を生じることなく、蒸発成分をトラップ装置5で回収できるので、上記蒸発成分回収能力低下による未回収蒸発成分の後段側への排出によって二次トラップ装置6や真空ポンプ4の性能低下や損傷が発生するのを防止できるのである。
【0043】
なお上記の例における二次トラップ装置6は、蒸発成分の種類や真空ポンプ4の形式などによっては、省略したり真空ポンプ4の後段側に設けてもよく、この場合はトラップ装置5の後段側に直接真空ポンプ4が配置されるので、トラップ装置5からの未回収蒸発成分により真空ポンプ4の損傷を生じやすいが、この発明による上記の未回収蒸発成分の後段側への排出抑制作用により、上記真空ポンプ4の損傷を確実に防止できるのである。
【0044】
また上記の例では、液体供給管16はガス流通管10のガス流入口11側のみに設けたが、これに加えてガス流出口12側にも設けてもよく、また液体供給管16の供給口19は、冷却面14の上部に対向するものであれば、上下に2段以上にわたって設けてもよい。また流体供給管16の供給口19は冷却面14に対向させるかわりに、前記枝管18に相当する細管をガス流通管10の管壁外周部に接続して、該管壁を貫通して設けた冷却液Qの供給流路を冷却面14に開口させて供給口とし、この供給口から溢流させた流体Qを冷却面14に沿って流下させる形式のものとしてもよい。
【0045】
次に図4〜図6に示す第2例により、この発明の実施の形態を説明する。この例の真空蒸発回収装置51は、前記第1例の真空蒸発回収装置1におけるトラップ装置5のかわりにトラップ装置52を用い、またこのトラップ装置52は第1例のトラップ装置5における液体供給管16のかわりに後述の液体吹付管53を用いたものであり、その他は第1例と同構成を有するので、図1〜図3と同一部分には同一符号を付して図示し、それらの部分の詳細な説明は省略する。
【0046】
すなわち図5および図6に示すように、トラップ装置52は、第1例のトラップ装置5とトラップ装置本体部は同一構造を有し、第1例と同じくブラインRにより冷却面14を0℃に維持するコールドトラップであるが、そのガス流通管10の上部には液体吹付管53が取付けられている。
【0047】
この液体吹付管53は、冷却面14の温度よりも凝固点の低い液体Qとして、第1例と同じスピンドル油を冷却面14に吹付けるものであり、ガス流入口11側のガス流通管10の上部を貫通して下向きに延びる主管54に、この主管54に連通する8本の枝管55を放射状に、かつ上下に複数段(この例では7段)にわたって設け、各枝管55の先端部に形成した吹付口56を冷却面14に対向させて、ガス流通管10に固定取付けされている。
【0048】
この液体吹付管53には、第1例と同じくガス流通管10の底部に設けた排液口15に接続した貯留槽21の貯留液を、第1例と同じ還流送給手段30により還流送給する。
【0049】
上記構成の真空蒸発回収装置51において、自動車のシュレッダー処理品を被処理物として真空蒸発回収をおこなう際の、各トラップ装置および吸着装置7における回収蒸発成分は、第1例の場合と同じである。そしてトラップ装置52においては、真空加熱炉2からの排ガスGの流通時には、ポンプ28を運転して、貯留槽21内の貯留液を液体吹付管53に送給して各吹付口56から冷却面14に吹付ける。
【0050】
これによって、ブラインRにより0℃に維持される冷却面14に対して上下広範囲にわたり液体Qの吹付流が形成され、ガス流通管10内を流通する排ガスGが冷却面14により冷却されて凝縮した蒸発成分は、上記吹付流により冷却面14に付着乃至固着するのを防止され、吹付後に冷却面14に沿って流下する液体Qと共に流下して排液口15から排出される。
【0051】
この排出された蒸発成分を含む液体Qを、液体吹付管53に還流送給して上記吹付流形成に循環使用する点、および液体Qの吹付流量を制御装置31により調節(吹付流量=0とする間欠運転を含む)できる点は、第1例と同じである。
【0052】
このように冷却面14に液体Qを吹付けることにより、排ガス中の蒸発成分が冷却面14に付着するのを防止でき、この付着による蒸発成分回収能力低下を生じることなく、蒸発成分をトラップ装置52で回収できるのである。そして特に液体Qは単に冷却面14に沿って流下させるだけではなく、流下前に冷却面14に衝突させるので、蒸発成分が冷却面14に付着するのを、第1例よりも効果的に防止でき、また還流送給手段30の間欠運転などにより冷却面14に付着乃至固着した蒸発成分の除去や、冷却面14がテフロンコーティングなどの難付着性被膜を有せず、金属の研磨加工面でもない場合の蒸発成分の付着防止も、確実におこなうことができるのである。なお液体吹付管53は、ガス流出口12側にも設けてもよい。
【0053】
次に図7に示す第3例により、この発明の実施の形態を説明する。61は粉末金属焼結用の不活性ガス雰囲気加熱装置で、不活性ガス雰囲気加熱炉62の排気管路63に、第1例と同じトラップ装置5および吸着装置7を設けてある。このトラップ装置5は、第1例と同じくブラインRによりその冷却面14を10℃に維持するものであり、また第1例と同じ液体供給管16,貯留槽21,還流送給手段30等を用いて液体Qを冷却面14の上部に供給して該冷却面に沿って流下させるものであるが、この液体Qとしては、大気圧下でも蒸気圧の低い油回転ポンプ用油を使用する。
【0054】
上記の不活性ガス雰囲気加熱炉62において、焼結用の粉末金属成形品を被処理物としてN2ガス雰囲気で焼結処理をおこなうと、炉内流通後のN2ガスは蒸発成分としてワックスを含んだ排ガスとなって排気管路63を流れ、トラップ装置5部において、第1例と同様に液体供給管16により供給され冷却面14に沿って流下する液体Qの流下層により冷却されて凝縮した上記ワックスは、上記流下層と共に流下してトラップ装置5から排出される。そしてこのワックス回収後の排ガスは、吸着装置7により有臭成分が回収除去されて脱臭され、図示しない排気口から大気中へ放出される。なお貯留槽21の貯留液を上記流下層形成用に循環使用する点は第1例と同じであり、後述の第4例も同じである。
【0055】
このように冷却面14に沿って液体Qを流下させることにより、排ガス中の蒸発成分であるワックスが冷却面14に付着するのを防止して、ワックスの冷却面14への付着による蒸発成分回収能力の低下を生じることなく、ワックスを効率よく回収でき、未回収のワックスによる後段側の吸着装置7の性能低下や大気中への放出などを防止できるとともに、貯留槽21の貯留液を適時抽出して固液分離機などによりワックスと液体Q(油回転ポンプ用油)とを分離処理することにより、得られたワックスを金属粉末成形用に再利用することができるのである。
【0056】
次に図8に示す第4例により、この発明の実施の形態を説明する。71は第3例と同じく粉末金属焼結用の不活性ガス雰囲気加熱装置で、不活性ガス雰囲気加熱炉72に設けた炉内ガスの循環管路73に、循環ファン74を設けるとともに、この循環ファン74の前段側(ガス上流側)に、第1例と同じトラップ装置5を設けてある。75は炉操業中に補充供給されるN2ガス分に相当する炉内ガスを排出する排出管路で、第1例と同じ吸着装置7を脱臭用に設けてある。またトラップ装置5,液体Qおよびその冷却面14部への供給機構等は、前記第3例と同じである。
【0057】
上記の不活性ガス雰囲気加熱炉72において、循環ファン74を運転しつつ、焼結用の粉末金属成形品を被処理物としてN2ガス雰囲気で焼結処理をおこなうと、炉内の雰囲気ガスは蒸発成分としてワックスを含んだ排ガスとして循環管路73を流れ、トラップ装置5部において第3例と同様にして効率よくワックス分を回収されたのち炉内へ還流され、蒸発成分含有量の少ない不活性ガス(N2ガス)として使用できるので、この不活性ガスの循環使用により不活性ガスの使用量は少なくて済む。また回収したワックス分も、第3例と同様に液体Qから分離して再利用することができるのである。また循環管路73内の排ガスは、ワックス分を回収されたのち循環ファン74に流入するので、ワックス分の付着堆積による循環ファン74の性能低下を生じることもない。
【0058】
次に図9〜図11に示す第5例により、この発明の実施の形態を説明する。この例の真空蒸発回収装置81は、図9に示すように前記第1例の真空蒸発回収装置1における二次トラップ装置6を省略し、トラップ装置5の前段側に主にタール分を回収するタールトラップとしてトラップ装置82を設けるとともに、第1例のトラップ装置5の貯留槽21および還流送給手段30を、トラップ装置82の液体供給・排液手段としても利用したものであり、その他は第1例と同構成を有するので、図1〜図3と同一部分には同一符号を付して図示し、それらの部分の詳細な説明は省略する。
【0059】
すなわち図10および図11に示すように、前記第1例と同構成のトラップ装置5のガス流入口11に、排気管路3の構成部材である接続管83を介して接続されたトラップ装置82は、底部に浅い箱状のジャケット84をそなえ水平方向に延びる冷却面85を有する角槽状の槽体部86と、両端にガス流入口87とガス流出口88とをそなえた一部切欠円筒状の筒体部89とを、パッキン90を介してフランジ結合して成り、図示しない冷凍機により冷却されるブラインRをジャケット84内に流通させて、冷却面85を0℃に維持する水冷ジャケット形式のコールドトラップである。
【0060】
91は筒体部89の外周部に付設した電熱式のヒータ、92はこのヒータ91の上を覆う断熱材で、筒体部89の壁面を加熱して排ガス中のタール分の付着を防止するためのものであり、この筒体部89に接続された後段側の接続管83および排気管路3の構成部材である前段側の接続管93も、同様にヒータ91および断熱材92で包囲されている。
【0061】
94は槽体部86の一端部に設けた液体供給口、95は同じく他端部に設けた排液口で、前記第1例と同じトラップ装置5の還流送給手段30の還流管路26から分岐した還流管路96を、流量調節弁97を介して液体供給口94に接続し、排液口95を連結管98および連結管22を介して貯留槽21に接続してある。なお第1例におけるモータ27の制御装置31は、この例では省略してある。
【0062】
そして還流管路96を経て液体供給口94から槽体部86の冷却面85上に供給されるとともに、還流管路26を経て液体供給管16から冷却面14の上部に供給される、冷却面85,14の温度よりも凝固点の低い液体Qとしては、第1例と同じく凝固点が0℃より低いスピンドル油を用いる。また冷却面85,14には、第1例と同じくテフロン(登録商標)コーティングを施してある。
【0063】
上記構成の真空蒸発回収装置81において、木質材料およびプラスチック材料を多量に含む自動車のシュレッダー処理品を被処理物として真空蒸発回収をおこなうには、第1例と同様にして真空加熱炉2において上記被処理物を真空加熱し、真空加熱炉2からの排ガスGをトラップ装置82およびトラップ装置5により冷却して排ガスG中の蒸発成分を回収する。
【0064】
この排ガスGの流通時には、トラップ装置82および接続管83,93部のヒータ91に通電しておき、ポンプ28を定速で運転して、貯留槽21内の貯留液である液体Qを、トラップ装置82の液体供給口94から冷却面85上に供給して、冷却面85上を排液口95に向って流動させるとともに、トラップ装置5の液体供給管16へ送給して第1例と同様に冷却面14の上部に供給し、冷却面14に沿って流下させる。
【0065】
これによってトラップ装置82においては、ブラインRのジャケット84内流通により0℃の低温に維持される冷却面85上に、排液口95に向って流動する液体Qのやや厚い流動層が形成され、トラップ装置82内を流通する排ガスGは、この排ガスGに対して広い接触面積を有する上記流動層を介して冷却され、この冷却により排ガスG中に多量に含まれるタール分が凝縮して上記流動層内に混入し、液体Qと共に排液口95から排出され、連結管98を経て貯留槽21内に流入する。
【0066】
またトラップ装置82の筒体部89およびその前後の接続管83,93は、ヒータ91により加熱されているので、排ガスG中のタール分が付着堆積するのが防止され、タール分は効率よく液体Qの上記流動層により回収される。
【0067】
このようにして蒸発成分中のタール分を多量に除去された排ガスGは、トラップ装置5において第1例と同様に冷却面14上に形成された液体Qの薄い流下層を介して冷却され、排ガスG中のタール分の残部およびタール分よりは凝縮点の高い油類が、凝縮回収され、真空ポンプ4を経て吸着装置7によりアルデヒドなどの未回収蒸発成分を回収されたのち、大気中へ放出される。
【0068】
上記のようにして回収したタール分は、装置の長期間の使用により貯留槽21の底部およびトラップ装置82の槽体部86の冷却面85上に蓄積されてくるので、この蓄積量が過大とならない適宜の時点で分解清掃をおこなえばよく、このとき冷却面85にはテフロンコーティングを施してあるのでタール分は固着することなく容易に清掃できる。
【0069】
なお上記の例ではトラップ装置82の後段側に水冷ジャケット形式のトラップ装置5を設けたが、排ガスG中の蒸発成分によっては、このトラップ装置5のかわりに前記第1例の二次トラップ装置6を設けてもよく、この場合は貯留槽21および還流供給手段30等は、トラップ装置82専用のものとして用いることになる。
【0070】
この発明は上記各例に限定されるものではなく、たとえば装置各部の具体的形状や液体Qは上記以外のものを使用してもよく、またトラップ装置の前後に配置される機器は上記以外のものであってもよい。またこの発明は、上記の水冷ジャケット式のコールドトラップのほか、たとえば上記二次トラップ装置6して例示した二重槽式のコールドトラップなど、各種形式のトラップ装置に広く適用でき、また上記用途のトラップ装置のほか、たとえば真空焼結炉からの排ガス中の蒸発成分の回収用や、産業廃棄物の真空あるいは常圧加熱炉からの排ガス中の有用物質あるいは有害物質の回収用のトラップ装置など、各種用途のトラップ装置に広く適用できるものである。
【0071】
【実施例】
次にテスト装置を用いて蒸発成分の付着防止試験をおこなった結果について説明する。
〔実施例1〕 先ず実施例1として、前記第1例の装置(但し、真空加熱炉2の炉内容積=0.2m3、トラップ装置5の内径=150mm、全長=2000mm、冷却面14の表面仕上状態は下記の通り)を用いて、真空加熱炉2内で230℃,15Paの真空加熱条件で加熱蒸発物の多い木材と機械油各5Kgを被処理物として真空加熱し、上記被処理物の蒸発成分を600m3/Hの排気速度で、真空ポンプ(油回転ポンプ)4とその前段側に設けたメカニカルブースターとから成る真空ポンプユニットにより6時間加熱吸引排気し、この間前記第1例の方法で貯留槽21内の新品の液体Q(スピンドル油)をポンプ28により6リットル/分の一定流量で液体供給管16に還流送給して、冷却面14に沿って流下させた。この処理後に排気管路3の各部を分解点検して蒸発成分中の高沸点成分である油類および木材の加熱によって生じるタールの付着状態を調べたところ、トラップ装置5の冷却面14(バフ研磨加工面)には、付着物は殆んど認められず、トラップ装置5と二次トラップ装置6との間の排気管路3(以下、後段側排気管という)の内壁面(仕上加工されていない管材の素面)にも、付着物は認められなかった。
【0072】
〔実施例2〕 また実施例2として、前記第2例の装置を用い、前記第2例の方法により液体Qを液体吹付管53に還流送給する点を除けば、実施例1と同機器,同条件で、同被処理物の真空蒸発回収処理および液体Qの冷却面14への吹付けをおこなった。この処理後に各部を点検したところ、トラップ装置5の冷却面14(コーティングや仕上加工の施されていない管材の素面)には、特に付着物は認められず、後段側排気管の内壁面にも同じく付着物は認められなかった。
【0073】
〔比較例1〕 これに対して比較例として、上記実施例の装置において液体Qの流下および吹付けをおこなわずに、上記実施例と同条件で同被処理物の真空蒸発回収処理をおこなったのち各部を点検したところ、トラップ装置5の冷却面14(バフ研磨加工面)には、タールの付着が認められ、後段側排気管の内壁面にもタールの付着が僅かに認められ、冷却面14への蒸発成分付着による蒸発成分回収能力の低下を示すものであった。このタールに相当する付着物は前記の通り実施例1,2では認められなかったので、実施例1,2において貯留槽21内の液体Qを精査したところ、貯留槽21の底部にタール成分が薄い層状に沈殿しているのが検出された。
【0074】
【発明の効果】
以上説明したようにこの発明によれば、加熱炉の排ガス中の被処理物の蒸発成分がトラップ装置の冷却面に付着するのを防止でき、この付着による蒸発成分回収能力の低下を生じることなく蒸発成分を回収でき、未回収蒸発成分の流出によるトラップ装置の後段側の機器の損傷や性能低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態の第1例を示す真空蒸発回収装置の構成図である。
【図2】図1の装置におけるトラップ装置の縦断面図である。
【図3】図2のA−A線拡大断面図である。
【図4】この発明の実施の形態の第2例を示す真空蒸発回収装置の構成図である。
【図5】図4の装置におけるトラップ装置の縦断面図である。
【図6】図5のB−B線拡大断面図である。
【図7】この発明の実施の形態の第3例を示す不活性ガス雰囲気加熱装置の構成図である。
【図8】この発明の実施の形態の第4例を示す不活性ガス雰囲気加熱装置の構成図である。
【図9】この発明の実施の形態の第5例を示す真空蒸発回収装置の構成図である。
【図10】図9の装置におけるトラップ装置の縦断面図である。
【図11】図10のC−C線拡大断面図である。
【図12】従来の真空蒸発回収装置の一例を示す構成図である。
【符号の説明】
2…真空加熱炉、3…排気管路、4…真空ポンプ、5…トラップ装置、10…ガス流通管、14…冷却面、15…排液口、16…液体供給管、19…供給口、21…貯留槽、26…還流管路、27…モータ、30…還流送給手段、52…トラップ装置、53…液体吹付管、56…吹付口、62…不活性ガス雰囲気加熱炉、63…排気管路、72…不活性ガス雰囲気加熱炉、73…循環管路、74…循環ファン、81…真空蒸発回収装置、82…トラップ装置、85…冷却面、86…槽体部、89…筒体部、94…液体供給口、95…排液口、96…還流管路、98…連結管、Q…液体。
【発明の属する技術分野】
この発明は、気体中に含まれる蒸発成分を、冷却により凝縮液化または固化させて回収するトラップ装置において、トラップ装置の冷却面に蒸発成分が付着するのを防止する方法、およびこの方法を実施するためのトラップ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
たとえば自動車のスクラップなどの廃棄物を再利用するために、廃棄物から油分などの不純物を分離回収し、この不純物を除去した上記廃棄物の金属材等を有価物として再利用に供する装置として、真空加熱炉において上記不純物を真空蒸発させ、得られた蒸発成分を真空ポンプを有する排気管路に設けた回収装置により回収する、真空蒸発回収装置が用いられるようになった。この従来の真空蒸発回収装置としては、下記各特許文献記載のものを総括図示する図12にも示すように、被処理物を収容する真空加熱炉101の排気管路102に真空ポンプ103を接続し、この真空ポンプ103と真空加熱炉101との間に、真空蒸発した蒸発成分を凝縮させて回収する回収装置104を設けたものが一般的であった(たとえば特許文献1および2および3参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平5−331564号公報(第3−4頁、図1、図2)
【特許文献2】
特開平7−26334号公報(第3頁、図1)
【特許文献3】
特開平8−188833号公報(第2−3頁、図1−図4)
【0004】
そして上記の回収装置104としては、上記特許文献1にも水冷ジャケット式のものが記載されているように、冷水や冷媒で低温にした冷却面により、流入する排ガスを冷却して凝縮・固化させて回収するコールドタイプのトラップ装置が、また真空ポンプ103としては、上記特許文献3に記載のように、ロータリーポンプと称される油回転ポンプや油拡散ポンプなどのウエットタイプの真空ポンプが、使用されている。なお図中、105は必要に応じて設けられるブースターポンプである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが上記従来の真空蒸発回収装置100においては、真空加熱炉101における自動車のシュレッダー処理品などの廃棄物の真空加熱により発生した油,水分,酸(たとえば塩酸や硫酸や有機酸)などを蒸発成分として含む排ガスが、大量に回収装置104部を流通してその冷却面に凝縮・固着するため蒸発成分回収能力が時間とともに低下して、その一部が回収されずに真空ポンプ103内へ流入し、ガス温度の降下やガス圧力の上昇により液化した上記蒸発成分がポンプ内の油に混入し、ポンプ各部の腐食による損傷や油の劣化によるポンプ運転の不調をひきおこし、さらに真空ポンプ103部を通過した未回収蒸発成分が後段側の排気管路102の腐食や大気中に放出されて異臭発生の原因となるなど、多くの問題点を有するものであった。また廃棄物中に木材やプラスチックなどを含む場合は、これらの熱分解によりタール状炭化水素を発生し、冷却面や配管内壁面に粘着性を有するタールとして付着し、蒸発成分回収能力の低下や配管の閉塞事故の原因となっていた。
【0006】
また上記特許文献1には、回収装置の冷却面(凝固室の内面)に凝固付着した被処理物の厚さが所定の厚さになったときに、回転刃により上記内面に凝固付着している被処理物を削り取る形式の回収装置が記載されているが、上記の削り取り前の状態では蒸発成分回収能力が低いため、前記したのと同様な未回収蒸発成分による問題点を生じるものである。
【0007】
この発明は上記従来の問題点を解決しようとするもので、加熱炉の排ガス中の被処理物の蒸発成分がトラップ装置の冷却面に付着するのを防止でき、この付着による蒸発成分回収能力の低下を生じることなく蒸発成分を回収できる、トラップ装置の蒸発成分付着防止方法およびトラップ装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載のトラップ装置の蒸発成分付着防止方法は、加熱炉の排ガス管路に設置され冷却面により排ガスを冷却して排ガス中の蒸発成分を回収するトラップ装置において、前記冷却面の温度より低い凝固点を有する液体で前記冷却面を覆い、排ガスの冷却により凝縮した蒸発成分を前記液体に混入させて、トラップ装置から排出することを特徴とする。
【0009】
請求項1記載の発明によれば、トラップ装置の冷却面を覆う該冷却面の温度より凝固点の低い液体により、凝縮した蒸発成分の冷却面への付着が防止され、この付着による蒸発成分回収能力の低下を防止できる。
【0010】
また請求項2記載の発明は、加熱炉の排ガス管路に設置され冷却面により排ガスを冷却して排ガス中の蒸発成分を回収するトラップ装置において、前記冷却面の温度より低い凝固点を有する液体を、前記冷却面に沿って流下させ、排ガスの冷却により凝縮した蒸発成分を前記液体と共に流下させて、トラップ装置から排出することを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、トラップ装置の冷却面に沿って流下する該冷却面の温度より凝固点の低い液体(以下、単に液体という)により、凝縮した蒸発成分の冷却面への付着が防止され、この付着による蒸発成分回収能力の低下を防止できる。
【0012】
また請求項3記載の発明は、加熱炉の排ガス管路に設置され冷却面により排ガスを冷却して排ガス中の蒸発成分を回収するトラップ装置において、前記冷却面の温度より低い凝固点を有する液体を、前記冷却面に吹付け、排ガスの冷却により凝縮した蒸発成分を前記液体と共に流下させて、トラップ装置から排出することを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、トラップ装置の冷却面に吹付けられ次いで冷却面に沿って流下する液体により、凝縮した蒸発成分の冷却面への付着が防止され、この付着による蒸発成分回収能力の低下を防止できる。
【0014】
また請求項4記載の発明は、加熱炉の排ガス管路に設置され底部に設けた水平方向に延びる冷却面により排ガスを冷却して排ガス中の蒸発成分を回収するトラップ装置において、前記冷却面の温度より低い凝固点を有する液体を、前記冷却面上に供給して該冷却面上を流動させ、排ガスの冷却により凝縮した蒸発成分を前記液体と共にトラップ装置から排出することを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、トラップ装置の水平方向に延びる冷却面上に供給され該冷却面上を流動する液体により、凝縮した蒸発成分の冷却面への付着が防止され、この付着による蒸発成分回収能力の低下を防止できる。なおこの発明における水平方向とは、水平方向に対して小角度(たとえば最大10度程度)傾斜した方向も含むものとする。
【0016】
請求項2記載の発明における液体の流下は、たとえば一定流量で連続的におこなってもよいが、請求項5記載の発明のように、前記加熱炉における蒸発成分の発生量に応じて選定した流下流量で、前記液体の流下をおこなうようにすれば、ポンプなどの液体送給用機器の動力費の節減、および新しい液体のみを使用する場合の液体使用量の節減をはかることができる。
【0017】
請求項3記載の発明における液体の吹付は、たとえば一定流量で連続的におこなってもよいが、請求項6記載の発明のように、前記加熱炉における蒸発成分の発生量に応じて選定した吹付流量で、前記液体の吹付けをおこなうようにすれば、ポンプなどの液体送給用機器の動力費の節減、および新しい液体のみを使用する場合の液体使用量の節減をはかることができる。
【0018】
また請求項7記載のトラップ装置は、加熱炉の排ガス管路に設置され冷却面により排ガスを冷却して排ガス中の蒸発成分を回収するトラップ装置において、前記冷却面の温度より低い凝固点を有する液体を前記冷却面の上部に供給する液体供給装置と、前記冷却面を流下した液体および排ガスの蒸発成分を排出する排液口とを備えたことを特徴とする。
【0019】
請求項7記載の発明によれば、トラップ装置の冷却面の上部に供給した液体を冷却面に沿って流下させることにより、凝縮した蒸発成分の冷却面への付着を防止でき、この付着による蒸発成分回収能力の低下を防止できる。
【0020】
また請求項8記載のトラップ装置は、加熱炉の排ガス管路に設置され冷却面により排ガスを冷却して排ガス中の蒸発成分を回収するトラップ装置において、前記冷却面の温度より低い凝固点を有する液体を上下複数段にわたって前記冷却面に吹付ける液体吹付装置と、前記冷却面を流下した液体および排ガスの蒸発成分を排出する排液口とを備えたことを特徴とする。
【0021】
請求項8記載の発明によれば、トラップ装置の冷却面に上下複数段にわたって液体を吹付けることにより、凝縮した蒸発成分の冷却面への付着を防止でき、この付着による蒸発成分回収能力の低下を防止できる。
【0022】
また請求項9記載のトラップ装置は、加熱炉の排ガス管路に設置され底部に設けた水平方向に延びる冷却面により排ガスを冷却して排ガス中の蒸発成分を回収するトラップ装置において、前記冷却面の温度より低い凝固点を有する液体を前記冷却面上に供給する液体供給装置と、前記冷却面上を流動した液体および排ガスの蒸発成分を排出する排液口とを備えたことを特徴とする。
【0023】
請求項9記載の発明によれば、トラップ装置の冷却面上に液体を供給し冷却面上を流動させることにより、凝縮した蒸発成分の冷却面への付着を防止でき、この付着による蒸発成分回収能力の低下を防止できる。
【0024】
請求項7記載の発明における液体供給装置は、前記液体として新しい液体のみを前記冷却面の上部に供給するものとしてもよいが、請求項10記載の発明のように、前記液体供給装置が、前記冷却面の上部に対向する供給口を有する液体供給管と、前記排液口に接続され該排液口からの排出液を貯留する貯留槽と、この貯留槽の貯留液を前記液体供給管に還流送給する還流送給手段とを備えて成るものとすれば、蒸発成分と共に排液口から流出した液体は液体供給管に還流送給されて循環使用されるため、液体の使用量が少なくて済む。
【0025】
また請求項8記載の発明における液体吹付装置は、前記液体として新しい液体のみを前記冷却面に吹付けるものとしてもよいが、請求項11記載の発明のように、前記液体吹付装置が、前記冷却面に対向する吹付口を上下複数段にわたって有する液体吹付管と、前記排液口に接続され該排液口からの排出液を貯留する貯留槽と、この貯留槽の貯留液を前記液体吹付管に還流送給する還流送給手段とを備えて成るものとすれば、蒸発成分と共に排液口から流出した液体は液体吹付管に還流送給されて循環使用されるため、液体の使用量が少なくて済む。
【0026】
請求項7乃至11記載のトラップ装置における冷却面は、たとえば金属の切削加工面や、金属管材の押出あるいは引抜加工による塑性加工面など、各種の金属面で構成することもできるが、請求項12記載の発明のように、前記冷却面が、テフロン(登録商標)やメッキ層などの難付着性被膜でコーティングされているもの、あるいは請求項13記載の発明のように、前記冷却面が、金属の研磨加工面により構成されているものとすれば、蒸発成分が冷却面に付着するのを一層確実に防止でき、好ましい。
【0027】
また請求項7乃至13記載のトラップ装置は、各種の加熱炉の排ガス管路に設置されるトラップ装置に適用できるものであるが、請求項14記載の発明のように、前記加熱炉が不活性ガス雰囲気加熱炉であり、前記排ガス管路がこの不活性ガス雰囲気加熱炉から排気口に至る排気管路であって、前記トラップ装置がこの排気管路に設置されるトラップ装置である場合には、不活性ガスを蒸発成分を回収した状態で排気放出できるとともに、回収した蒸発成分を再利用に供することができ、また請求項15記載の発明のように、前記加熱炉が不活性ガス雰囲気加熱炉であり、前記排ガス管路がこの不活性ガス雰囲気加熱炉から循環ファンを経て該加熱炉に至る循環管路であって、前記トラップ装置がこの循環管路に設置されるトラップ装置である場合には、蒸発成分を回収した不活性ガスを不活性雰囲気ガスとして循環使用できるので不活性ガス使用量が少なくて済み、また回収した蒸発成分も再利用に供することができる。
【0028】
また請求項7乃至13記載のトラップ装置は、大気圧に近い炉内圧力の加熱炉からの排ガス管路に設置されるトラップ装置にも適用できるものであるが、請求項16記載の発明のように、前記加熱炉が真空加熱炉であり、前記排ガス管路がこの真空加熱炉から真空ポンプに至る排気管路であって、前記トラップ装置がこの排気管路に設置されるトラップ装置である場合には、排ガス中の未回収蒸発成分による悪影響を受けやすい真空ポンプの損傷や性能低下を確実に防ぐことができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下図1〜図3に示す第1例により、この発明の実施の形態を説明する。図1において、1は真空蒸発回収装置で、2は被処理物を収容して真空加熱をおこなう真空加熱炉、3はその排気管路、4はこの排気管路に設けた真空ポンプ、5はこの真空ポンプ4の前段側の排気管路3に設けたトラップ装置、6はこのトラップ装置5と真空ポンプ4の間の排気管路3に設けた二次トラップ装置、7は真空ポンプ4の後段側に設けた活性炭を吸着剤として充填した吸着装置である。
【0030】
各トラップ装置のうち、先ず前段側のトラップ装置5は、ガス流入口11から流出口12に至るU字管状のガス流通管10の外周部を、U字状のジャケット13で包囲して成る水冷ジャケット形式のコールドトラップで、図示しない冷凍機により冷却されるブラインRをジャケット13内に流通させて、冷却面14(図2参照)を0℃に維持するものであり、この冷却面14への蒸発成分の付着防止機構については、後述する。
【0031】
また二次トラップ装置6は、側壁部にガス流入口41とガス流出口42を対向してそなえた有底筒状体の頂部を蓋板で閉鎖した外槽40内に、有底円筒状の内槽43を同心状に配置し、この内槽43内に、図示しない冷媒供給装置から供給される冷媒S(この例ではパーフロロポリエーテル[PFPE])を流通させてその冷却面(内槽43の外周面)を−45℃に維持する二重槽式のコールドトラップである。
【0032】
次にトラップ装置5における冷却面14への蒸発成分の付着防止機構を、図2および図3により説明すると、先ず15はガス流通管10の底部に設けた排液口で、ジャケット13を貫通して下向きに開口している。16は液体供給管で、ガス流入口11側のガス流通管10の上部を貫通して下向きに延びる主管17の下部に、この主管17に連通する8本の枝管18を放射状に設け、各枝管18の先端部に形成した供給口19を、冷却面14の上部に対向させて、ガス流通管10に固定取付けされている。この液体供給管16は、冷却面14の温度よりも凝固点の低い液体Qを、その供給口19から冷却面14の上部に供給するものであり、この液体Qとしてこの例では、凝固点が0℃より低いスピンドル油を用いる。またガス流通管10の内周面である冷却面14には、テフロン(登録商標)コーティングを施してある。
【0033】
一方21は、ガス流通管10の下部の前記排液口15に連結管22を介して接続された貯留槽で、排液口15からの排出液を一時貯留するためのもので、23はこの一時貯留した貯留液を送出する送出口、24は新液注入口、25は廃液口である。そして送出口23と液体供給管16とを還流管路26で接続し、この還流管路26にモータ27により駆動されるポンプ28とフィルタ29を設けて、貯留槽21の貯留液を液体供給管16に還流送給する還流送給手段30が構成されている。31はモータ27の運転を制御する制御装置である。
【0034】
上記各装置で構成された真空蒸発回収装置1において、自動車のシュレッダー処理品を被処理物として不純物の回収処理をおこなうには、真空加熱炉2内に被処理物を装入後、真空ポンプ4により炉内を所定の真空度まで真空引きし、真空加熱炉2の加熱装置(図示しない)により被処理物を真空加熱する。
【0035】
この真空加熱により被処理物から蒸発した蒸発成分は、排ガスとともに排気管路3内を流れ、トラップ装置5部において0℃の冷却面14により冷却されて蒸発成分中の高沸点成分である油類が凝縮・回収される。このトラップ装置5を通過して高沸点成分を回収除去された排ガスは、二次トラップ装置6に流入し、−45℃の冷却面により冷却されて、蒸発成分中の低沸点成分である水,酸類が内槽43の外周面に凝縮・付着して回収されたのち、真空ポンプ4に流入し、真空ポンプ4を流出した排ガスは、吸着装置7によりH2Sやエチルメチルカプタンなどの常温でも気化状態にある蒸発成分を回収されたのち、大気中へ放出される。
【0036】
そして上記の真空蒸発回収時に、トラップ装置5においては、前記液体Qにより冷却面14への蒸発成分(この例では上記高沸点成分である油類)の付着防止を下記のようにしておこなう。すなわち、先ず装置の新設時などで空の状態の貯留槽21には、新液注入口24から液体Qを貯留槽21内に充填しておく。真空加熱炉2からの排ガスGの流通時には、ポンプ28を運転して、貯留槽21内の貯留液を液体供給管16へ送給して各供給口19から冷却面14の上部に供給し、冷却面14に沿って流下させる。
【0037】
これによって、ブラインRのジャケット13内流通により0℃の低温に維持される冷却面14上に、液体Qの薄い流下層が形成され、ガス流通管10内を流通する排ガスGはこの流下層を介して冷却され、この冷却により凝縮した蒸発成分は、直接冷却面14に付着乃至固着することなく上記流下層と共に流下して排液口15から排出される。
【0038】
この排出された蒸発成分を含む液体Qは、貯留槽21内に一時貯留後、還流送給手段30により液体供給管16へと還流送給され、冷却面14上の上記流下層形成に循環使用される。このとき大粒子の固化乃至粘性液状となった蒸発成分はフィルタ29により除去されるので、上記流下層の形成と新たな蒸発成分の流下回収は支障なくおこなわれるが、長期間の使用により貯留槽21内の貯留液中の蒸発成分量が過大となったときは、貯留液の一部あるいは全部を新しい液体Qと交換すればよい。このように液体Qは循環使用されるので、新しい液体Qのみを使用する場合に比べて、液体Qの使用量は少なくて済む。
【0039】
上記の液体供給管16による冷却面14の上部への液体Q(詳しくは蒸発成分を含む液体Q)の供給は、一定流量で連続的におこなってもよいが、真空加熱炉2における蒸発成分の発生量に応じて液体Qの供給流量、従って流下流量を変化させることにより、ポンプ28駆動用の動力費の節減、および本例のように液体Qを循環使用せずに新しい液体Qのみを使用する場合における液体使用量の節減を図ることができる。
【0040】
この液体Qの供給流量の調節は、たとえば真空加熱炉2における被処理物の真空加熱開始から終了までの蒸発成分発生量を予め実測して得た発生量データに対して、トラップ装置5の後段側への未回収蒸発成分流出量を所定の低量に抑えることができる液体Qの必要供給流量を、制御装置31のメモリ部へ時間軸に対応するポンプ28(従ってモータ27)の回転数データとして格納しておき、制御装置31によりモータ27の回転数をプログラム制御することによって、おこなうことができるが、この他に真空加熱炉2における蒸発成分の発生量を真空計の真空度として常時検出し、この検出値に応じて液体Qの上記必要供給流量が得られるようにモータ27の回転数を制御する方法によってもよい。
【0041】
またこの例では、冷却面14にはテフロンコーティングを施してあるので、液体Qの循環使用により液体Q中の蒸発成分含有量が多くなっても、冷却面14にこの蒸発成分が直接付着するのを防止でき、また液体Qの流下を一時停止した場合でも、冷却面14上に残留付着していた蒸発成分を流下再開により容易に流下させることができるので、好ましい。なおこのテフロンコーティングの代りに、冷却面14に難付着性被膜としてたとえばクロムメッキなどのメッキを施した場合や、冷却面14を、ガス流通管10を構成する金属の研磨加工面で形成した場合にも、上記テフロンコーティングの場合と同様に良好な蒸発成分の付着防止作用が得られる。
【0042】
以上のように、冷却面14に沿って液体Q(詳しくは蒸発成分を含む液体Q。以下、他の例においても同じ。)を流下させることにより、排ガス中の蒸発成分が冷却面14に付着するのを防止でき、この付着による蒸発成分回収能力低下を生じることなく、蒸発成分をトラップ装置5で回収できるので、上記蒸発成分回収能力低下による未回収蒸発成分の後段側への排出によって二次トラップ装置6や真空ポンプ4の性能低下や損傷が発生するのを防止できるのである。
【0043】
なお上記の例における二次トラップ装置6は、蒸発成分の種類や真空ポンプ4の形式などによっては、省略したり真空ポンプ4の後段側に設けてもよく、この場合はトラップ装置5の後段側に直接真空ポンプ4が配置されるので、トラップ装置5からの未回収蒸発成分により真空ポンプ4の損傷を生じやすいが、この発明による上記の未回収蒸発成分の後段側への排出抑制作用により、上記真空ポンプ4の損傷を確実に防止できるのである。
【0044】
また上記の例では、液体供給管16はガス流通管10のガス流入口11側のみに設けたが、これに加えてガス流出口12側にも設けてもよく、また液体供給管16の供給口19は、冷却面14の上部に対向するものであれば、上下に2段以上にわたって設けてもよい。また流体供給管16の供給口19は冷却面14に対向させるかわりに、前記枝管18に相当する細管をガス流通管10の管壁外周部に接続して、該管壁を貫通して設けた冷却液Qの供給流路を冷却面14に開口させて供給口とし、この供給口から溢流させた流体Qを冷却面14に沿って流下させる形式のものとしてもよい。
【0045】
次に図4〜図6に示す第2例により、この発明の実施の形態を説明する。この例の真空蒸発回収装置51は、前記第1例の真空蒸発回収装置1におけるトラップ装置5のかわりにトラップ装置52を用い、またこのトラップ装置52は第1例のトラップ装置5における液体供給管16のかわりに後述の液体吹付管53を用いたものであり、その他は第1例と同構成を有するので、図1〜図3と同一部分には同一符号を付して図示し、それらの部分の詳細な説明は省略する。
【0046】
すなわち図5および図6に示すように、トラップ装置52は、第1例のトラップ装置5とトラップ装置本体部は同一構造を有し、第1例と同じくブラインRにより冷却面14を0℃に維持するコールドトラップであるが、そのガス流通管10の上部には液体吹付管53が取付けられている。
【0047】
この液体吹付管53は、冷却面14の温度よりも凝固点の低い液体Qとして、第1例と同じスピンドル油を冷却面14に吹付けるものであり、ガス流入口11側のガス流通管10の上部を貫通して下向きに延びる主管54に、この主管54に連通する8本の枝管55を放射状に、かつ上下に複数段(この例では7段)にわたって設け、各枝管55の先端部に形成した吹付口56を冷却面14に対向させて、ガス流通管10に固定取付けされている。
【0048】
この液体吹付管53には、第1例と同じくガス流通管10の底部に設けた排液口15に接続した貯留槽21の貯留液を、第1例と同じ還流送給手段30により還流送給する。
【0049】
上記構成の真空蒸発回収装置51において、自動車のシュレッダー処理品を被処理物として真空蒸発回収をおこなう際の、各トラップ装置および吸着装置7における回収蒸発成分は、第1例の場合と同じである。そしてトラップ装置52においては、真空加熱炉2からの排ガスGの流通時には、ポンプ28を運転して、貯留槽21内の貯留液を液体吹付管53に送給して各吹付口56から冷却面14に吹付ける。
【0050】
これによって、ブラインRにより0℃に維持される冷却面14に対して上下広範囲にわたり液体Qの吹付流が形成され、ガス流通管10内を流通する排ガスGが冷却面14により冷却されて凝縮した蒸発成分は、上記吹付流により冷却面14に付着乃至固着するのを防止され、吹付後に冷却面14に沿って流下する液体Qと共に流下して排液口15から排出される。
【0051】
この排出された蒸発成分を含む液体Qを、液体吹付管53に還流送給して上記吹付流形成に循環使用する点、および液体Qの吹付流量を制御装置31により調節(吹付流量=0とする間欠運転を含む)できる点は、第1例と同じである。
【0052】
このように冷却面14に液体Qを吹付けることにより、排ガス中の蒸発成分が冷却面14に付着するのを防止でき、この付着による蒸発成分回収能力低下を生じることなく、蒸発成分をトラップ装置52で回収できるのである。そして特に液体Qは単に冷却面14に沿って流下させるだけではなく、流下前に冷却面14に衝突させるので、蒸発成分が冷却面14に付着するのを、第1例よりも効果的に防止でき、また還流送給手段30の間欠運転などにより冷却面14に付着乃至固着した蒸発成分の除去や、冷却面14がテフロンコーティングなどの難付着性被膜を有せず、金属の研磨加工面でもない場合の蒸発成分の付着防止も、確実におこなうことができるのである。なお液体吹付管53は、ガス流出口12側にも設けてもよい。
【0053】
次に図7に示す第3例により、この発明の実施の形態を説明する。61は粉末金属焼結用の不活性ガス雰囲気加熱装置で、不活性ガス雰囲気加熱炉62の排気管路63に、第1例と同じトラップ装置5および吸着装置7を設けてある。このトラップ装置5は、第1例と同じくブラインRによりその冷却面14を10℃に維持するものであり、また第1例と同じ液体供給管16,貯留槽21,還流送給手段30等を用いて液体Qを冷却面14の上部に供給して該冷却面に沿って流下させるものであるが、この液体Qとしては、大気圧下でも蒸気圧の低い油回転ポンプ用油を使用する。
【0054】
上記の不活性ガス雰囲気加熱炉62において、焼結用の粉末金属成形品を被処理物としてN2ガス雰囲気で焼結処理をおこなうと、炉内流通後のN2ガスは蒸発成分としてワックスを含んだ排ガスとなって排気管路63を流れ、トラップ装置5部において、第1例と同様に液体供給管16により供給され冷却面14に沿って流下する液体Qの流下層により冷却されて凝縮した上記ワックスは、上記流下層と共に流下してトラップ装置5から排出される。そしてこのワックス回収後の排ガスは、吸着装置7により有臭成分が回収除去されて脱臭され、図示しない排気口から大気中へ放出される。なお貯留槽21の貯留液を上記流下層形成用に循環使用する点は第1例と同じであり、後述の第4例も同じである。
【0055】
このように冷却面14に沿って液体Qを流下させることにより、排ガス中の蒸発成分であるワックスが冷却面14に付着するのを防止して、ワックスの冷却面14への付着による蒸発成分回収能力の低下を生じることなく、ワックスを効率よく回収でき、未回収のワックスによる後段側の吸着装置7の性能低下や大気中への放出などを防止できるとともに、貯留槽21の貯留液を適時抽出して固液分離機などによりワックスと液体Q(油回転ポンプ用油)とを分離処理することにより、得られたワックスを金属粉末成形用に再利用することができるのである。
【0056】
次に図8に示す第4例により、この発明の実施の形態を説明する。71は第3例と同じく粉末金属焼結用の不活性ガス雰囲気加熱装置で、不活性ガス雰囲気加熱炉72に設けた炉内ガスの循環管路73に、循環ファン74を設けるとともに、この循環ファン74の前段側(ガス上流側)に、第1例と同じトラップ装置5を設けてある。75は炉操業中に補充供給されるN2ガス分に相当する炉内ガスを排出する排出管路で、第1例と同じ吸着装置7を脱臭用に設けてある。またトラップ装置5,液体Qおよびその冷却面14部への供給機構等は、前記第3例と同じである。
【0057】
上記の不活性ガス雰囲気加熱炉72において、循環ファン74を運転しつつ、焼結用の粉末金属成形品を被処理物としてN2ガス雰囲気で焼結処理をおこなうと、炉内の雰囲気ガスは蒸発成分としてワックスを含んだ排ガスとして循環管路73を流れ、トラップ装置5部において第3例と同様にして効率よくワックス分を回収されたのち炉内へ還流され、蒸発成分含有量の少ない不活性ガス(N2ガス)として使用できるので、この不活性ガスの循環使用により不活性ガスの使用量は少なくて済む。また回収したワックス分も、第3例と同様に液体Qから分離して再利用することができるのである。また循環管路73内の排ガスは、ワックス分を回収されたのち循環ファン74に流入するので、ワックス分の付着堆積による循環ファン74の性能低下を生じることもない。
【0058】
次に図9〜図11に示す第5例により、この発明の実施の形態を説明する。この例の真空蒸発回収装置81は、図9に示すように前記第1例の真空蒸発回収装置1における二次トラップ装置6を省略し、トラップ装置5の前段側に主にタール分を回収するタールトラップとしてトラップ装置82を設けるとともに、第1例のトラップ装置5の貯留槽21および還流送給手段30を、トラップ装置82の液体供給・排液手段としても利用したものであり、その他は第1例と同構成を有するので、図1〜図3と同一部分には同一符号を付して図示し、それらの部分の詳細な説明は省略する。
【0059】
すなわち図10および図11に示すように、前記第1例と同構成のトラップ装置5のガス流入口11に、排気管路3の構成部材である接続管83を介して接続されたトラップ装置82は、底部に浅い箱状のジャケット84をそなえ水平方向に延びる冷却面85を有する角槽状の槽体部86と、両端にガス流入口87とガス流出口88とをそなえた一部切欠円筒状の筒体部89とを、パッキン90を介してフランジ結合して成り、図示しない冷凍機により冷却されるブラインRをジャケット84内に流通させて、冷却面85を0℃に維持する水冷ジャケット形式のコールドトラップである。
【0060】
91は筒体部89の外周部に付設した電熱式のヒータ、92はこのヒータ91の上を覆う断熱材で、筒体部89の壁面を加熱して排ガス中のタール分の付着を防止するためのものであり、この筒体部89に接続された後段側の接続管83および排気管路3の構成部材である前段側の接続管93も、同様にヒータ91および断熱材92で包囲されている。
【0061】
94は槽体部86の一端部に設けた液体供給口、95は同じく他端部に設けた排液口で、前記第1例と同じトラップ装置5の還流送給手段30の還流管路26から分岐した還流管路96を、流量調節弁97を介して液体供給口94に接続し、排液口95を連結管98および連結管22を介して貯留槽21に接続してある。なお第1例におけるモータ27の制御装置31は、この例では省略してある。
【0062】
そして還流管路96を経て液体供給口94から槽体部86の冷却面85上に供給されるとともに、還流管路26を経て液体供給管16から冷却面14の上部に供給される、冷却面85,14の温度よりも凝固点の低い液体Qとしては、第1例と同じく凝固点が0℃より低いスピンドル油を用いる。また冷却面85,14には、第1例と同じくテフロン(登録商標)コーティングを施してある。
【0063】
上記構成の真空蒸発回収装置81において、木質材料およびプラスチック材料を多量に含む自動車のシュレッダー処理品を被処理物として真空蒸発回収をおこなうには、第1例と同様にして真空加熱炉2において上記被処理物を真空加熱し、真空加熱炉2からの排ガスGをトラップ装置82およびトラップ装置5により冷却して排ガスG中の蒸発成分を回収する。
【0064】
この排ガスGの流通時には、トラップ装置82および接続管83,93部のヒータ91に通電しておき、ポンプ28を定速で運転して、貯留槽21内の貯留液である液体Qを、トラップ装置82の液体供給口94から冷却面85上に供給して、冷却面85上を排液口95に向って流動させるとともに、トラップ装置5の液体供給管16へ送給して第1例と同様に冷却面14の上部に供給し、冷却面14に沿って流下させる。
【0065】
これによってトラップ装置82においては、ブラインRのジャケット84内流通により0℃の低温に維持される冷却面85上に、排液口95に向って流動する液体Qのやや厚い流動層が形成され、トラップ装置82内を流通する排ガスGは、この排ガスGに対して広い接触面積を有する上記流動層を介して冷却され、この冷却により排ガスG中に多量に含まれるタール分が凝縮して上記流動層内に混入し、液体Qと共に排液口95から排出され、連結管98を経て貯留槽21内に流入する。
【0066】
またトラップ装置82の筒体部89およびその前後の接続管83,93は、ヒータ91により加熱されているので、排ガスG中のタール分が付着堆積するのが防止され、タール分は効率よく液体Qの上記流動層により回収される。
【0067】
このようにして蒸発成分中のタール分を多量に除去された排ガスGは、トラップ装置5において第1例と同様に冷却面14上に形成された液体Qの薄い流下層を介して冷却され、排ガスG中のタール分の残部およびタール分よりは凝縮点の高い油類が、凝縮回収され、真空ポンプ4を経て吸着装置7によりアルデヒドなどの未回収蒸発成分を回収されたのち、大気中へ放出される。
【0068】
上記のようにして回収したタール分は、装置の長期間の使用により貯留槽21の底部およびトラップ装置82の槽体部86の冷却面85上に蓄積されてくるので、この蓄積量が過大とならない適宜の時点で分解清掃をおこなえばよく、このとき冷却面85にはテフロンコーティングを施してあるのでタール分は固着することなく容易に清掃できる。
【0069】
なお上記の例ではトラップ装置82の後段側に水冷ジャケット形式のトラップ装置5を設けたが、排ガスG中の蒸発成分によっては、このトラップ装置5のかわりに前記第1例の二次トラップ装置6を設けてもよく、この場合は貯留槽21および還流供給手段30等は、トラップ装置82専用のものとして用いることになる。
【0070】
この発明は上記各例に限定されるものではなく、たとえば装置各部の具体的形状や液体Qは上記以外のものを使用してもよく、またトラップ装置の前後に配置される機器は上記以外のものであってもよい。またこの発明は、上記の水冷ジャケット式のコールドトラップのほか、たとえば上記二次トラップ装置6して例示した二重槽式のコールドトラップなど、各種形式のトラップ装置に広く適用でき、また上記用途のトラップ装置のほか、たとえば真空焼結炉からの排ガス中の蒸発成分の回収用や、産業廃棄物の真空あるいは常圧加熱炉からの排ガス中の有用物質あるいは有害物質の回収用のトラップ装置など、各種用途のトラップ装置に広く適用できるものである。
【0071】
【実施例】
次にテスト装置を用いて蒸発成分の付着防止試験をおこなった結果について説明する。
〔実施例1〕 先ず実施例1として、前記第1例の装置(但し、真空加熱炉2の炉内容積=0.2m3、トラップ装置5の内径=150mm、全長=2000mm、冷却面14の表面仕上状態は下記の通り)を用いて、真空加熱炉2内で230℃,15Paの真空加熱条件で加熱蒸発物の多い木材と機械油各5Kgを被処理物として真空加熱し、上記被処理物の蒸発成分を600m3/Hの排気速度で、真空ポンプ(油回転ポンプ)4とその前段側に設けたメカニカルブースターとから成る真空ポンプユニットにより6時間加熱吸引排気し、この間前記第1例の方法で貯留槽21内の新品の液体Q(スピンドル油)をポンプ28により6リットル/分の一定流量で液体供給管16に還流送給して、冷却面14に沿って流下させた。この処理後に排気管路3の各部を分解点検して蒸発成分中の高沸点成分である油類および木材の加熱によって生じるタールの付着状態を調べたところ、トラップ装置5の冷却面14(バフ研磨加工面)には、付着物は殆んど認められず、トラップ装置5と二次トラップ装置6との間の排気管路3(以下、後段側排気管という)の内壁面(仕上加工されていない管材の素面)にも、付着物は認められなかった。
【0072】
〔実施例2〕 また実施例2として、前記第2例の装置を用い、前記第2例の方法により液体Qを液体吹付管53に還流送給する点を除けば、実施例1と同機器,同条件で、同被処理物の真空蒸発回収処理および液体Qの冷却面14への吹付けをおこなった。この処理後に各部を点検したところ、トラップ装置5の冷却面14(コーティングや仕上加工の施されていない管材の素面)には、特に付着物は認められず、後段側排気管の内壁面にも同じく付着物は認められなかった。
【0073】
〔比較例1〕 これに対して比較例として、上記実施例の装置において液体Qの流下および吹付けをおこなわずに、上記実施例と同条件で同被処理物の真空蒸発回収処理をおこなったのち各部を点検したところ、トラップ装置5の冷却面14(バフ研磨加工面)には、タールの付着が認められ、後段側排気管の内壁面にもタールの付着が僅かに認められ、冷却面14への蒸発成分付着による蒸発成分回収能力の低下を示すものであった。このタールに相当する付着物は前記の通り実施例1,2では認められなかったので、実施例1,2において貯留槽21内の液体Qを精査したところ、貯留槽21の底部にタール成分が薄い層状に沈殿しているのが検出された。
【0074】
【発明の効果】
以上説明したようにこの発明によれば、加熱炉の排ガス中の被処理物の蒸発成分がトラップ装置の冷却面に付着するのを防止でき、この付着による蒸発成分回収能力の低下を生じることなく蒸発成分を回収でき、未回収蒸発成分の流出によるトラップ装置の後段側の機器の損傷や性能低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態の第1例を示す真空蒸発回収装置の構成図である。
【図2】図1の装置におけるトラップ装置の縦断面図である。
【図3】図2のA−A線拡大断面図である。
【図4】この発明の実施の形態の第2例を示す真空蒸発回収装置の構成図である。
【図5】図4の装置におけるトラップ装置の縦断面図である。
【図6】図5のB−B線拡大断面図である。
【図7】この発明の実施の形態の第3例を示す不活性ガス雰囲気加熱装置の構成図である。
【図8】この発明の実施の形態の第4例を示す不活性ガス雰囲気加熱装置の構成図である。
【図9】この発明の実施の形態の第5例を示す真空蒸発回収装置の構成図である。
【図10】図9の装置におけるトラップ装置の縦断面図である。
【図11】図10のC−C線拡大断面図である。
【図12】従来の真空蒸発回収装置の一例を示す構成図である。
【符号の説明】
2…真空加熱炉、3…排気管路、4…真空ポンプ、5…トラップ装置、10…ガス流通管、14…冷却面、15…排液口、16…液体供給管、19…供給口、21…貯留槽、26…還流管路、27…モータ、30…還流送給手段、52…トラップ装置、53…液体吹付管、56…吹付口、62…不活性ガス雰囲気加熱炉、63…排気管路、72…不活性ガス雰囲気加熱炉、73…循環管路、74…循環ファン、81…真空蒸発回収装置、82…トラップ装置、85…冷却面、86…槽体部、89…筒体部、94…液体供給口、95…排液口、96…還流管路、98…連結管、Q…液体。
Claims (16)
- 加熱炉の排ガス管路に設置され冷却面により排ガスを冷却して排ガス中の蒸発成分を回収するトラップ装置において、前記冷却面の温度より低い凝固点を有する液体で前記冷却面を覆い、排ガスの冷却により凝縮した蒸発成分を前記液体に混入させて、トラップ装置から排出することを特徴とするトラップ装置の蒸発成分付着防止方法。
- 加熱炉の排ガス管路に設置され冷却面により排ガスを冷却して排ガス中の蒸発成分を回収するトラップ装置において、前記冷却面の温度より低い凝固点を有する液体を、前記冷却面に沿って流下させ、排ガスの冷却により凝縮した蒸発成分を前記液体と共に流下させて、トラップ装置から排出することを特徴とするトラップ装置の蒸発成分付着防止方法。
- 加熱炉の排ガス管路に設置され冷却面により排ガスを冷却して排ガス中の蒸発成分を回収するトラップ装置において、前記冷却面の温度より低い凝固点を有する液体を、前記冷却面に吹付け、排ガスの冷却により凝縮した蒸発成分を前記液体と共に流下させて、トラップ装置から排出することを特徴とするトラップ装置の蒸発成分付着防止方法。
- 加熱炉の排ガス管路に設置され底部に設けた水平方向に延びる冷却面により排ガスを冷却して排ガス中の蒸発成分を回収するトラップ装置において、前記冷却面の温度より低い凝固点を有する液体を、前記冷却面上に供給して該冷却面上を流動させ、排ガスの冷却により凝縮した蒸発成分を前記液体と共にトラップ装置から排出することを特徴とするトラップ装置の蒸発成分付着防止方法。
- 前記加熱炉における蒸発成分の発生量に応じて選定した流下流量で、前記液体の流下をおこなう請求項2記載のトラップ装置の蒸発成分付着防止方法。
- 前記加熱炉における蒸発成分の発生量に応じて選定した吹付流量で、前記液体の吹付けをおこなう請求項3記載のトラップ装置の蒸発成分付着防止方法。
- 加熱炉の排ガス管路に設置され冷却面により排ガスを冷却して排ガス中の蒸発成分を回収するトラップ装置において、前記冷却面の温度より低い凝固点を有する液体を前記冷却面の上部に供給する液体供給装置と、前記冷却面を流下した液体および排ガスの蒸発成分を排出する排液口とを備えたことを特徴とするトラップ装置。
- 加熱炉の排ガス管路に設置され冷却面により排ガスを冷却して排ガス中の蒸発成分を回収するトラップ装置において、前記冷却面の温度より低い凝固点を有する液体を上下複数段にわたって前記冷却面に吹付ける液体吹付装置と、前記冷却面を流下した液体および排ガスの蒸発成分を排出する排液口とを備えたことを特徴とするトラップ装置。
- 加熱炉の排ガス管路に設置され底部に設けた水平方向に延びる冷却面により排ガスを冷却して排ガス中の蒸発成分を回収するトラップ装置において、前記冷却面の温度より低い凝固点を有する液体を前記冷却面上に供給する液体供給装置と、前記冷却面上を流動した液体および排ガスの蒸発成分を排出する排液口とを備えたことを特徴とするトラップ装置。
- 前記液体供給装置が、前記冷却面の上部に対向する供給口を有する液体供給管と、前記排液口に接続され該排液口からの排出液を貯留する貯留槽と、この貯留槽の貯留液を前記液体供給管に還流送給する還流送給手段とを備えて成る、請求項7記載のトラップ装置。
- 前記液体吹付装置が、前記冷却面に対向する吹付口を上下複数段にわたって有する液体吹付管と、前記排液口に接続され該排液口からの排出液を貯留する貯留槽と、この貯留槽の貯留液を前記液体吹付管に還流送給する還流送給手段とを備えて成る、請求項8記載のトラップ装置。
- 前記冷却面が、テフロン(登録商標)などの難付着性被膜でコーティングされている請求項7乃至11のいずれかに記載のトラップ装置。
- 前記冷却面が、金属の研磨加工面である請求項7乃至11のいずれかに記載のトラップ装置。
- 前記加熱炉が不活性ガス雰囲気加熱炉であり、前記排ガス管路がこの不活性ガス雰囲気加熱炉から排気口に至る排気管路であって、前記トラップ装置がこの排気管路に設置されるトラップ装置である請求項7乃至13のいずれかに記載のトラップ装置。
- 前記加熱炉が不活性ガス雰囲気加熱炉であり、前記排ガス管路がこの不活性ガス雰囲気加熱炉から循環ファンを経て該加熱炉に至る循環管路であって、前記トラップ装置がこの循環管路に設置されるトラップ装置である請求項7乃至13のいずれかに記載のトラップ装置。
- 前記加熱炉が真空加熱炉であり、前記排ガス管路がこの真空加熱炉から真空ポンプに至る排気管路であって、前記トラップ装置がこの排気管路に設置されるトラップ装置である請求項7乃至13のいずれかに記載のトラップ装置。
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WO2009031408A1 (ja) * | 2007-09-03 | 2009-03-12 | Sumco Techxiv Corporation | 半導体単結晶製造用の排気部材 |
KR101349921B1 (ko) * | 2012-09-28 | 2014-01-14 | 주식회사 포스코 | 응축수 제거 장치 |
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-
2003
- 2003-02-28 JP JP2003053502A patent/JP2004249267A/ja active Pending
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