JP2004249190A - 塗布装置および塗布液の塗布方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ノズルから吐出されたマット化液を適切な固形分濃度に調整することにより、最適形状のマットを被塗布物に形成することを課題とする。
【解決手段】マット化液室16にはマット化液が貯留されており、塗布ヘッド本体12に接続された電源28によって、マット化液室16のマット化液に負の電圧が印加される。このマット化液がノズル18から液滴36となって吐出される。液滴36は、被塗布物20に付着するまでの飛行中にノズル18と被塗布物20との間に設けられたヒーターユニット22によって加熱される。これによって、液滴36中の水分が蒸発して固形分濃度が調整され、被塗布物20の塗布面20Aへの付着後の変形が抑えられ、被塗布物20に最適な形状のマット32を形成する。
【選択図】 図1
【解決手段】マット化液室16にはマット化液が貯留されており、塗布ヘッド本体12に接続された電源28によって、マット化液室16のマット化液に負の電圧が印加される。このマット化液がノズル18から液滴36となって吐出される。液滴36は、被塗布物20に付着するまでの飛行中にノズル18と被塗布物20との間に設けられたヒーターユニット22によって加熱される。これによって、液滴36中の水分が蒸発して固形分濃度が調整され、被塗布物20の塗布面20Aへの付着後の変形が抑えられ、被塗布物20に最適な形状のマット32を形成する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被塗布物に塗布液を塗布する塗布装置及び塗布液の塗布方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図6に示すように、マット化液を貯留したマット化液室102と、マット化液(塗布液)が塗布される被塗布物104とに、正または負の電圧を印加して、ノズル106から被塗布物104に向かってマット化液108を一定間隔で放出して、被塗布物104にマット化液108を付着させる静電塗布装置100が用いられている(特許文献1)。
【0003】
しかし、この静電塗布装置100の場合、ノズル106から放出されたマット化液が被塗布物104へ付着するまでの時間が短く乾燥しにくいので、マット化液108の付着時の固形分濃度が低い。このため、マット化液108が被塗布物104に付着してから乾燥するまでの間において、図5(B)または(D)に示すように、マット107が凹んだり、高さが低いマットとなるなど、被塗布物104の表面に最適なマットを形成することができなかった。
【0004】
【特許文献1】
特願2001−211120号(第1図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事実を考慮し、ノズルから吐出されたマット化液(塗布液)を適切な固形分濃度に調整することにより、最適形状のマットを被塗布物に形成することができる塗布装置および塗布液の塗布方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の本発明の塗布装置は、塗布液を内部に貯留する塗布液室と、前記塗布液室に設けられ、前記塗布液を被塗布物に向かって液滴として吐出する吐出口と、前記吐出口と前記被塗布物との間に設けられ、飛行中の前記液滴の溶媒分を調整する溶媒分調整手段と、を備えたことを特徴としている。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、吐出口から塗布液室に貯留された塗布液を液滴として被塗布物に向かって吐出する。この液滴は、被塗布物に付着するまでの飛行中に吐出口と被塗布物との間に設けられた溶媒分調整手段によって溶媒量が調整される。
【0008】
溶媒分調整手段は、液滴中に含まれる溶媒量を調整することで、被塗布物に付着したときの液滴の固形分濃度を適度な状態にするだけでなく、高粘度の液滴の場合には液滴に溶媒分を付与して、適度な状態にすることができる。
【0009】
これによって、被塗布物のマット化に使用されるマット化液などのように高粘度であっても、液滴の固形分濃度を調整することができるので、この塗布装置を被塗布物のマット化に使用すれば、液滴の被塗布物への付着後の変形を抑え、最適なマット形状を得ることができる。
【0010】
請求項2に記載の本発明の塗布装置は、前記塗布液室と前記被塗布物に対して、正または負の電圧を印加する電圧印加手段が設けられたことを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、電圧印加手段によって液滴に正または負の電圧を印加することで、液滴と被塗布物との間に電圧差が生じ、液滴がクーロン力を受けて被塗布物の塗布面に向かって飛行して付着する。
【0012】
請求項3に記載の本発明の塗布装置は、前記吐出手段はノズルであることを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、吐出口としてノズルを使用することで、吐出口での液滴の濡れ広がりが防止できる。
【0014】
請求項4に記載の本発明の塗布装置は、前記溶媒分調整手段がヒーターユニットであることを特徴としている。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、ヒーターユニットによってノズルと被塗布物との間を飛行中の液滴を加熱し、溶媒分を蒸発させ液滴の固形分濃度を調整する。これによって、被塗布物には均一な形状のマットが形成できる。
【0016】
請求項5に記載の本発明の塗布装置は、前記ヒーターユニットのノズル側端部には、遮熱板が設けられたことを特徴としている。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、ヒーターユニットのノズル側端部に遮熱板を設けたことで、ヒーターユニットの熱がノズルに伝わるのを防ぎ、ノズル内で塗布液が加熱されることによるノズル詰まりが防止できる。
【0018】
請求項6に記載の本発明の塗布装置は、前記ヒーターユニットは絶縁体で覆われていることを特徴としている。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、ヒーターユニットは絶縁体で覆われているため、電気的に中性となっており、帯電した液滴がノズルから吐出され、ヒーターユニットに付着することがない。
【0020】
請求項7に記載の本発明の塗布装置は、前記ヒーターユニットで加熱が開始される位置は、前記ノズルの先端部から1mm〜10mm離れていることを特徴としている。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、ノズルから吐出された液滴が、ノズル先端部から1mm〜10mmの位置において加熱が開始される。これによって、液滴の固形分濃度が最適な状態に調整できる。
【0022】
請求項8に記載の本発明の塗布装置は、前記ヒーターユニットは、各ノズルから吐出される液滴が通過する複数の筒部材からなることを特徴としている。
【0023】
請求項8に記載の発明によれば、ヒーターユニットは筒部材とされ、各ノズルに対応して設けられており、その筒部材の内側を各ノズルから吐出される液滴が通過する。
【0024】
筒部材の内側部分を通過する液滴は、通過方向に対して側面となる面全体にヒーターユニットからの熱が伝わるので、短い時間で液滴の固形分濃度の調整が行える。
【0025】
請求項9に記載の本発明の塗布装置は、前記筒部材の軸線と、前記ノズルの軸線とが、同一直線上にあることを特徴としている。
【0026】
請求項9に記載の発明によれば、筒部材の軸線とノズルの軸線とが同一直線上にあることで、ノズルから吐出された液滴の側面から筒部材の内側までの距離が等しくなり、液滴は均等に加熱されることになる。
【0027】
請求項10に記載の本発明の塗布装置は、前記筒部材の内径寸法が、前記ノズルのノズル径の20倍以上であることを特徴としている。
【0028】
請求項10に記載の発明によれば、筒部材の内径寸法をノズル径の20倍未満としたとき、塗布液の固形分濃度を制御することが難しい。このため、筒部材の内径寸法をノズル径の20倍以上とすることで、塗布液の固形分濃度の制御が容易となる。
【0029】
請求項11に記載の本発明の塗布装置は、前記ヒーターユニットは、それぞれのノズルからの液滴が通過する通路を形成する二枚のパネルヒーターで構成されたことを特徴としている。
【0030】
請求項11に記載の発明によれば、ノズルを複数備えたとき、二枚のパネルヒーターをノズルからの液滴が通過する通路を形成するように備えることで、いずれのノズルから吐出された液滴にも、まんべんなく熱がいきとどくようにされている。
【0031】
請求項12に記載の本発明の塗布装置は、前記ヒーターユニットは、熱媒体が循環するヒータであることを特徴としている。
【0032】
請求項12に記載の発明によれば、ヒーターユニットは電気によって熱を発生するヒーターユニットだけでなく、ガスヒーターや温水、オイル等の熱媒体を循環させるヒーターを用いることもできる。これにより、液滴の飛行ルートに影響を与える電磁波を発生させる恐れがなくなる。
【0033】
請求項13に記載の本発明の塗布液の塗布方法は、塗布液が塗布される被塗布物と塗布液室に貯留された前記塗布液とに対して正または負の電圧を印加し、前記塗布液を前記被塗布物に向かって前記塗布液室のノズルから滴状に吐出させ、前記被塗布物に付着するまでの飛行中に、前記塗布液中の水分を調整することを特徴としている。
【0034】
請求項13に記載の発明によれば、ノズルから被塗布物に向かって、塗布液が吐出され、被塗布物に向かって飛行して付着する。
【0035】
この塗布方法で塗布液を被塗布物に塗布することで、高粘度なマット化液であっても、液滴の固形分濃度を調整することができる。
【0036】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の実施形態に係る塗布装置としてのマット化装置10について説明する。
【0037】
図1に示すように、マット化装置10は、有底筒状の塗布ヘッド12を備えている。この塗布ヘッド12の開口部12Aは、塗布ヘッド12の底部とほぼ同形状のノズルプレート14に覆われ、ノズルプレート14と塗布ヘッド12とで、マット化液(塗布液)が貯留されるマット化液室16を形成している。
【0038】
マット化液室16内に貯留されるマット化液は、後述する被塗布物20に塗布できるものであれば特に制限はないが、たとえば、静電塗装に使用される溶剤形塗料やエマルジョン型塗料のように比較的低粘度のものから、マット化液やハイソリッド型塗料のように粘度が数100mPa・sと高粘度のものまで包含される。
【0039】
ノズルプレート14には、マット化液を滴状にして液滴36を吐出するノズル18が、被塗布物20の幅方向に沿って、一列に一定の間隔で配列されている。
【0040】
マット化液室16およびノズル18は、ステンレス製もしくは鉄製で形成されており、他に真鍮、銅等の金属製を用いてもよい。マット化液室16およびノズル18をこれらの導電性材料で形成することで、マット化液室16およびノズル18に電圧を印加するだけで、マット化液室16内のマット化液が帯電する。
【0041】
被塗布物20は、ノズル18の先端から被塗布物20の塗布面20Aまでの距離Bを10mm以上とされているが、好ましくは10mm〜100mmの間がよい。
【0042】
なお、本実施形態では、被塗布物20を所定の大きさに裁断したシート状として、図1の矢印H方向に搬送しながら一枚ずつマット化するようにしたが、長尺帯状の被塗布物を矢印H方向に連続搬送してもよい。
【0043】
ノズル18と被塗布物20との間には、筒状のヒーターユニット22がその軸線をノズル18の軸線と一致するように、ノズル18の数と同数配置されている。
【0044】
ヒーターユニット22は、全体がセラミック樹脂の絶縁体22で覆われており、内側には加熱コイル24が組み込まれている。加熱コイル24はオイル加熱器29に接続されており、オイル加熱器29によって加熱コイル24の中を高温のオイルが循環して、ヒーターユニット22の内側へ熱が放射される。また、ヒーターユニット22の塗布ヘッド12側には、絶縁体からなる遮熱板26が取付けられている。なお、絶縁体22はセラミック樹脂の他にも、陶器や、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)等の樹脂を用いることもできる。
【0045】
ヒーターユニット22は、ノズル18側の端部22A(加熱開始位置)とノズル18先端部との距離Aが3mm〜6mmの範囲となるように配置されている。なお、この距離Aは1mm〜10mmの範囲であればよく、3mm〜6mmに限定されるものではない。なお、この距離Aが1mm以下であると、ヒーターユニット22からの熱によって、ノズル18先端でマット化液の固形分濃度が上昇し、液詰まりが生じる。また、距離Aが10mm以上になると、ノズル18から吐出された液滴36は、ヒーターユニット22通過前に溶媒分が減少し、ヒーターユニット22を通過したときに必要以上に固形分濃度が上昇して、被塗布物20に最適なマットを形成することができない。
【0046】
また、ヒーターユニット22の被塗布物20側の端部22B(加熱完了位置)と被塗布物20の塗布面20Aとの距離Cは、1mm〜10mmの範囲とされ、好ましくは2〜5mmがよい。
【0047】
さらに、ヒーターユニット22の内径Mは、塗布ヘッド12のノズル18の内径Lの約20倍以上とされ、特に、直径Lの30〜60倍の大きさが好ましい。
【0048】
塗布ヘッド12の外側には、塗布ヘッド本体12に電圧を印加する電源28が設けられている。この電源28は、負極が塗布ヘッド12に接続され、正極が接地されているので、塗布ヘッド12には負の電圧が印加される。なお、塗布ヘッド12に印加する電圧は負の電圧である必要はなく、電源28の正極を塗布ヘッド12のいずれかの部分に接続して負極を接地し、塗布ヘッド12には正の電圧を印加するようにしてもよい。
【0049】
ノズル18は、導電性材料からなるノズルプレート14を介して塗布ヘッド12と電気的に接続されているので、電源28から塗布ヘッド12に印加される電圧と同一の大きさの電圧が、ノズル18にも印加される。
【0050】
一方、被塗布物20は導電性材料であり、一端が接地されたリード線30の他端が電気的に接触している。これによって被塗布物20はアースされた状態となり、電位は常にゼロとなって、矢印H方向に移動できる。
【0051】
電源28から塗布ヘッド12に付加される電圧の大きさは、ノズル18の先端から被塗布物20までの距離との関係で、ノズル18から吐出される液滴の1秒間の個数が所望の範囲内になるように定めることができるが、通常は、1〜120kVの範囲であり、好ましくは3〜60kVの範囲である。
【0052】
次に、第1の実施形態に係る作用について説明する。
【0053】
図1に示すように、マット化液室16にはマット化液が貯留されており、塗布ヘッド本体12に接続された電源28によって、マット化液室16のマット化液に負の電圧が印加される。このマット化液がノズル18から液滴36となって吐出される。ここで、液滴36は帯電しており、液滴36と被塗布物20との間に電圧差が生じている。これによって、液滴36はクーロン力を受けて被塗布物20の塗布面20Aに向かって飛行する。
【0054】
液滴36は、被塗布物20に付着するまでの飛行中にノズル18と被塗布物20との間に設けられたヒーターユニット22によって加熱される。これによって、液滴36中の水分が蒸発して固形分濃度が調整され、被塗布物20の塗布面20Aへの付着後の変形が抑えられ、被塗布物20に最適な形状のマット32を形成する。
【0055】
ここで、ヒーターユニット22は絶縁体27で覆われており、電気的に中性となっている。このため、マット化液室16で電圧を印加されたマット化液が、ノズル18から液滴36として吐出され、被塗布物20へ向かって飛行する間にヒーターユニット22に引き付けられて付着することがない。
【0056】
さらに、ヒーターユニット22のノズル18側端部に遮熱板26を設けたことで、ヒーターユニット22からの熱がノズル18に伝わり、ノズル18内でマット化液が加熱されることが防げる。これによって、ノズル18詰まり等が防止できる。
【0057】
次に、第2の実施形態に係る静電塗布装置について説明する。なお、第1の実施形態と共通する部分の説明は割愛する。
【0058】
図2および図3に示すように、ノズル18と被塗布物20との間に、ノズル18が並べられた一方向に対して平行となるように、かつノズル18から吐出された液滴36が通過できる通路を形成するようにして、二枚の電熱式のパネルヒーター48、50が配設されている。なお、パネルヒーター48とパネルヒーター50の間隔L1は、ノズル18の内径の20倍以上とされ、好ましくは30〜60倍である。
【0059】
また、図4に示すように、パネルヒーター48、50には、それぞれ発熱体49、52が組み込まれており、この発熱体49、52には図示しない電源が接続されている。電源から発熱体49、52に電圧が印加されると、発熱体49、52が加熱され、パネルヒーター48、50間が温められる。
【0060】
次に、第2の実施形態の作用について説明する。
【0061】
ノズル18から吐出された液滴36が通過できる通路を、二枚のヒーターユニット48、50で形成することで、いずれのノズル18から吐出された液滴36にも、まんべんなく熱がいきとどくようにされている。これによって、ノズル18から吐出された液滴36は、被塗布物20に付着するまでの飛行中に、液滴36中の水分が蒸発して固形分濃度が調整され、被塗布物20の塗布面20Aへの付着後の変形が抑えられ、被塗布物20に最適な形状のマット32を形成する。
【0062】
また、二枚のパネルヒーター48、50を設けるだけで、複数のノズル18から吐出される液滴36を同時に加熱することができるので、構造が簡単である。
【0063】
なお、本発明の実施形態においては、パネルヒーター48、50を用いて液滴36の固形分濃度を調整したが、電気式のパネルヒーター48、50に限らず、熱媒体を循環させるものであれば、第1の実施形態と同様に、ガスヒーターや温水、オイル等の熱媒体を循環させるヒーターを用いることもできる。これにより、液滴36の飛行ルートに影響を与える電磁波が発生する恐れがなくなる。
【0064】
また、塗布ヘッド12、マット化液室16、ノズル18を絶縁性材料で形成して、これらのいずれかに電極を設置し、外部から電圧を印加するようにしてもよい。
【0065】
さらに、マット化液室16の内壁面を導電性材料で内張りし、導電性の内張りを電極として使用することもできる。
【0066】
電源(電圧印加手段)は、直流を印加することが好ましいが、通常の商用交流のような正弦波を印加してもよく、矩形波および台形波など、各種の波形を形成する交番電流を印加してもよい。交番電流を印加する場合には、交番電流の波形を制御することにより、ノズル18から吐出される液滴36の粒径を制御できる。
【0067】
被塗布物としては、塗布液を静電塗布できるシート状またはフィルム状の、アルミニウム薄板、薄鋼鈑などの導電性シート材、プラスチックシート、プラスチックフィルム、紙、各種ラミネート紙などの絶縁性シート材が挙げられる。また、この被塗布物の用途としては、磁気記録材料、平板印刷材料等の記録材料、反射防止フィルムや視野角改善フィルムなどの光学材料等に用いることができ、また、これに限定されるものではない。
【0068】
また、ヒーターユニット22又は48、50で液滴36を加熱して液滴36中に含まれる水分を蒸発させることで、被塗布物に付着した液滴36の固形分濃度を適度な状態にするだけでなく、加湿器を用いて液滴に水分を付与し、高粘度の液滴の固形分濃度をマット化に最適な状態にすることもできる。
【0069】
さらに、本発明の塗布装置は、被塗布物20をマット化するための塗布装置としてだけでなく、塗布液をスプレーして被塗布物に塗布する方法に用いることも可能である。
【0070】
ここで、実施例として、ノズル18と被塗布物20との間にヒーターユニット22を設けたマット化装置10を用い、被塗布物20の塗布面20Aをマット化する試験を行った。なお、被塗布物20としては、アクリル塗料を塗布したアルミニウム板を用いた。
【0071】
マット化装置10において、ノズル18と被塗布物20との距離を30mmmとし、−25kVの直流電圧を印加した。マット化液室16には、メチルメタクリレート/エチルアルコール/アクリル酸ソーダを68:20:12の仕込重量比で共重合して得られた共重合ポリマー水溶液を、固形分濃度18%にして調整を行ったマット化液を貯留した。
【0072】
ここで、ヒーターユニット22の温度を30℃〜200℃とし、被塗布物20に形成されたマット形状を観察した。
【0073】
結果を表1に示す。
【0074】
【表1】
表1に示すように、30〜60℃の間では、液滴36の形状は、図5(B)に示すように円盤状であったが、60℃から液滴36の形状が良化し、80℃のときには図5(A)に示すような半球状のマット32が得られた。120℃においても、半球状のマット32が得られたが、150℃以上になると固形分濃度が高くなりすぎて図5(C)に示すような球状となり、マットとしては適していない。
【0075】
以上のように、本発明では、マット化に最適な半球状のマットが形成されることがわかる。
【0076】
【発明の効果】
本発明は上記構成としたので、ノズルから吐出されたマット化液を適切な濃度に調整することにより、最適形状のマットを被塗布物に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る塗布装置の概略を示す側面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る塗布装置の概略を示す側面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る塗布装置の概略を示す平面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る塗布装置のノズルとヒーターユニットを、ノズルの軸線方向から見た図である。
【図5】(A)被塗布物に付着したマット形状が半球状を示す図であり、(B)マット形状が円盤状を示す図であり、(C)マット形状が球状を示す図であり、(D)マット形状が変形した状態を示す説明図である。
【図6】従来の実施形態に係る塗布装置の概略を示す平面図である。
【符号の簡単な説明】
10 マット化装置(塗布装置)
16 マット化液室(塗布液室)
18 ノズル(吐出口)
20 被塗布物
22 ヒーターユニット(溶媒分調整手段)(筒部材)
26 遮熱板
28 電源(電圧印加手段)
36 液滴
48 パネルヒーター(溶媒分調整手段)
50 パネルヒーター(溶媒分調整手段)
【発明の属する技術分野】
本発明は、被塗布物に塗布液を塗布する塗布装置及び塗布液の塗布方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図6に示すように、マット化液を貯留したマット化液室102と、マット化液(塗布液)が塗布される被塗布物104とに、正または負の電圧を印加して、ノズル106から被塗布物104に向かってマット化液108を一定間隔で放出して、被塗布物104にマット化液108を付着させる静電塗布装置100が用いられている(特許文献1)。
【0003】
しかし、この静電塗布装置100の場合、ノズル106から放出されたマット化液が被塗布物104へ付着するまでの時間が短く乾燥しにくいので、マット化液108の付着時の固形分濃度が低い。このため、マット化液108が被塗布物104に付着してから乾燥するまでの間において、図5(B)または(D)に示すように、マット107が凹んだり、高さが低いマットとなるなど、被塗布物104の表面に最適なマットを形成することができなかった。
【0004】
【特許文献1】
特願2001−211120号(第1図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事実を考慮し、ノズルから吐出されたマット化液(塗布液)を適切な固形分濃度に調整することにより、最適形状のマットを被塗布物に形成することができる塗布装置および塗布液の塗布方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の本発明の塗布装置は、塗布液を内部に貯留する塗布液室と、前記塗布液室に設けられ、前記塗布液を被塗布物に向かって液滴として吐出する吐出口と、前記吐出口と前記被塗布物との間に設けられ、飛行中の前記液滴の溶媒分を調整する溶媒分調整手段と、を備えたことを特徴としている。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、吐出口から塗布液室に貯留された塗布液を液滴として被塗布物に向かって吐出する。この液滴は、被塗布物に付着するまでの飛行中に吐出口と被塗布物との間に設けられた溶媒分調整手段によって溶媒量が調整される。
【0008】
溶媒分調整手段は、液滴中に含まれる溶媒量を調整することで、被塗布物に付着したときの液滴の固形分濃度を適度な状態にするだけでなく、高粘度の液滴の場合には液滴に溶媒分を付与して、適度な状態にすることができる。
【0009】
これによって、被塗布物のマット化に使用されるマット化液などのように高粘度であっても、液滴の固形分濃度を調整することができるので、この塗布装置を被塗布物のマット化に使用すれば、液滴の被塗布物への付着後の変形を抑え、最適なマット形状を得ることができる。
【0010】
請求項2に記載の本発明の塗布装置は、前記塗布液室と前記被塗布物に対して、正または負の電圧を印加する電圧印加手段が設けられたことを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、電圧印加手段によって液滴に正または負の電圧を印加することで、液滴と被塗布物との間に電圧差が生じ、液滴がクーロン力を受けて被塗布物の塗布面に向かって飛行して付着する。
【0012】
請求項3に記載の本発明の塗布装置は、前記吐出手段はノズルであることを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、吐出口としてノズルを使用することで、吐出口での液滴の濡れ広がりが防止できる。
【0014】
請求項4に記載の本発明の塗布装置は、前記溶媒分調整手段がヒーターユニットであることを特徴としている。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、ヒーターユニットによってノズルと被塗布物との間を飛行中の液滴を加熱し、溶媒分を蒸発させ液滴の固形分濃度を調整する。これによって、被塗布物には均一な形状のマットが形成できる。
【0016】
請求項5に記載の本発明の塗布装置は、前記ヒーターユニットのノズル側端部には、遮熱板が設けられたことを特徴としている。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、ヒーターユニットのノズル側端部に遮熱板を設けたことで、ヒーターユニットの熱がノズルに伝わるのを防ぎ、ノズル内で塗布液が加熱されることによるノズル詰まりが防止できる。
【0018】
請求項6に記載の本発明の塗布装置は、前記ヒーターユニットは絶縁体で覆われていることを特徴としている。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、ヒーターユニットは絶縁体で覆われているため、電気的に中性となっており、帯電した液滴がノズルから吐出され、ヒーターユニットに付着することがない。
【0020】
請求項7に記載の本発明の塗布装置は、前記ヒーターユニットで加熱が開始される位置は、前記ノズルの先端部から1mm〜10mm離れていることを特徴としている。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、ノズルから吐出された液滴が、ノズル先端部から1mm〜10mmの位置において加熱が開始される。これによって、液滴の固形分濃度が最適な状態に調整できる。
【0022】
請求項8に記載の本発明の塗布装置は、前記ヒーターユニットは、各ノズルから吐出される液滴が通過する複数の筒部材からなることを特徴としている。
【0023】
請求項8に記載の発明によれば、ヒーターユニットは筒部材とされ、各ノズルに対応して設けられており、その筒部材の内側を各ノズルから吐出される液滴が通過する。
【0024】
筒部材の内側部分を通過する液滴は、通過方向に対して側面となる面全体にヒーターユニットからの熱が伝わるので、短い時間で液滴の固形分濃度の調整が行える。
【0025】
請求項9に記載の本発明の塗布装置は、前記筒部材の軸線と、前記ノズルの軸線とが、同一直線上にあることを特徴としている。
【0026】
請求項9に記載の発明によれば、筒部材の軸線とノズルの軸線とが同一直線上にあることで、ノズルから吐出された液滴の側面から筒部材の内側までの距離が等しくなり、液滴は均等に加熱されることになる。
【0027】
請求項10に記載の本発明の塗布装置は、前記筒部材の内径寸法が、前記ノズルのノズル径の20倍以上であることを特徴としている。
【0028】
請求項10に記載の発明によれば、筒部材の内径寸法をノズル径の20倍未満としたとき、塗布液の固形分濃度を制御することが難しい。このため、筒部材の内径寸法をノズル径の20倍以上とすることで、塗布液の固形分濃度の制御が容易となる。
【0029】
請求項11に記載の本発明の塗布装置は、前記ヒーターユニットは、それぞれのノズルからの液滴が通過する通路を形成する二枚のパネルヒーターで構成されたことを特徴としている。
【0030】
請求項11に記載の発明によれば、ノズルを複数備えたとき、二枚のパネルヒーターをノズルからの液滴が通過する通路を形成するように備えることで、いずれのノズルから吐出された液滴にも、まんべんなく熱がいきとどくようにされている。
【0031】
請求項12に記載の本発明の塗布装置は、前記ヒーターユニットは、熱媒体が循環するヒータであることを特徴としている。
【0032】
請求項12に記載の発明によれば、ヒーターユニットは電気によって熱を発生するヒーターユニットだけでなく、ガスヒーターや温水、オイル等の熱媒体を循環させるヒーターを用いることもできる。これにより、液滴の飛行ルートに影響を与える電磁波を発生させる恐れがなくなる。
【0033】
請求項13に記載の本発明の塗布液の塗布方法は、塗布液が塗布される被塗布物と塗布液室に貯留された前記塗布液とに対して正または負の電圧を印加し、前記塗布液を前記被塗布物に向かって前記塗布液室のノズルから滴状に吐出させ、前記被塗布物に付着するまでの飛行中に、前記塗布液中の水分を調整することを特徴としている。
【0034】
請求項13に記載の発明によれば、ノズルから被塗布物に向かって、塗布液が吐出され、被塗布物に向かって飛行して付着する。
【0035】
この塗布方法で塗布液を被塗布物に塗布することで、高粘度なマット化液であっても、液滴の固形分濃度を調整することができる。
【0036】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の実施形態に係る塗布装置としてのマット化装置10について説明する。
【0037】
図1に示すように、マット化装置10は、有底筒状の塗布ヘッド12を備えている。この塗布ヘッド12の開口部12Aは、塗布ヘッド12の底部とほぼ同形状のノズルプレート14に覆われ、ノズルプレート14と塗布ヘッド12とで、マット化液(塗布液)が貯留されるマット化液室16を形成している。
【0038】
マット化液室16内に貯留されるマット化液は、後述する被塗布物20に塗布できるものであれば特に制限はないが、たとえば、静電塗装に使用される溶剤形塗料やエマルジョン型塗料のように比較的低粘度のものから、マット化液やハイソリッド型塗料のように粘度が数100mPa・sと高粘度のものまで包含される。
【0039】
ノズルプレート14には、マット化液を滴状にして液滴36を吐出するノズル18が、被塗布物20の幅方向に沿って、一列に一定の間隔で配列されている。
【0040】
マット化液室16およびノズル18は、ステンレス製もしくは鉄製で形成されており、他に真鍮、銅等の金属製を用いてもよい。マット化液室16およびノズル18をこれらの導電性材料で形成することで、マット化液室16およびノズル18に電圧を印加するだけで、マット化液室16内のマット化液が帯電する。
【0041】
被塗布物20は、ノズル18の先端から被塗布物20の塗布面20Aまでの距離Bを10mm以上とされているが、好ましくは10mm〜100mmの間がよい。
【0042】
なお、本実施形態では、被塗布物20を所定の大きさに裁断したシート状として、図1の矢印H方向に搬送しながら一枚ずつマット化するようにしたが、長尺帯状の被塗布物を矢印H方向に連続搬送してもよい。
【0043】
ノズル18と被塗布物20との間には、筒状のヒーターユニット22がその軸線をノズル18の軸線と一致するように、ノズル18の数と同数配置されている。
【0044】
ヒーターユニット22は、全体がセラミック樹脂の絶縁体22で覆われており、内側には加熱コイル24が組み込まれている。加熱コイル24はオイル加熱器29に接続されており、オイル加熱器29によって加熱コイル24の中を高温のオイルが循環して、ヒーターユニット22の内側へ熱が放射される。また、ヒーターユニット22の塗布ヘッド12側には、絶縁体からなる遮熱板26が取付けられている。なお、絶縁体22はセラミック樹脂の他にも、陶器や、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)等の樹脂を用いることもできる。
【0045】
ヒーターユニット22は、ノズル18側の端部22A(加熱開始位置)とノズル18先端部との距離Aが3mm〜6mmの範囲となるように配置されている。なお、この距離Aは1mm〜10mmの範囲であればよく、3mm〜6mmに限定されるものではない。なお、この距離Aが1mm以下であると、ヒーターユニット22からの熱によって、ノズル18先端でマット化液の固形分濃度が上昇し、液詰まりが生じる。また、距離Aが10mm以上になると、ノズル18から吐出された液滴36は、ヒーターユニット22通過前に溶媒分が減少し、ヒーターユニット22を通過したときに必要以上に固形分濃度が上昇して、被塗布物20に最適なマットを形成することができない。
【0046】
また、ヒーターユニット22の被塗布物20側の端部22B(加熱完了位置)と被塗布物20の塗布面20Aとの距離Cは、1mm〜10mmの範囲とされ、好ましくは2〜5mmがよい。
【0047】
さらに、ヒーターユニット22の内径Mは、塗布ヘッド12のノズル18の内径Lの約20倍以上とされ、特に、直径Lの30〜60倍の大きさが好ましい。
【0048】
塗布ヘッド12の外側には、塗布ヘッド本体12に電圧を印加する電源28が設けられている。この電源28は、負極が塗布ヘッド12に接続され、正極が接地されているので、塗布ヘッド12には負の電圧が印加される。なお、塗布ヘッド12に印加する電圧は負の電圧である必要はなく、電源28の正極を塗布ヘッド12のいずれかの部分に接続して負極を接地し、塗布ヘッド12には正の電圧を印加するようにしてもよい。
【0049】
ノズル18は、導電性材料からなるノズルプレート14を介して塗布ヘッド12と電気的に接続されているので、電源28から塗布ヘッド12に印加される電圧と同一の大きさの電圧が、ノズル18にも印加される。
【0050】
一方、被塗布物20は導電性材料であり、一端が接地されたリード線30の他端が電気的に接触している。これによって被塗布物20はアースされた状態となり、電位は常にゼロとなって、矢印H方向に移動できる。
【0051】
電源28から塗布ヘッド12に付加される電圧の大きさは、ノズル18の先端から被塗布物20までの距離との関係で、ノズル18から吐出される液滴の1秒間の個数が所望の範囲内になるように定めることができるが、通常は、1〜120kVの範囲であり、好ましくは3〜60kVの範囲である。
【0052】
次に、第1の実施形態に係る作用について説明する。
【0053】
図1に示すように、マット化液室16にはマット化液が貯留されており、塗布ヘッド本体12に接続された電源28によって、マット化液室16のマット化液に負の電圧が印加される。このマット化液がノズル18から液滴36となって吐出される。ここで、液滴36は帯電しており、液滴36と被塗布物20との間に電圧差が生じている。これによって、液滴36はクーロン力を受けて被塗布物20の塗布面20Aに向かって飛行する。
【0054】
液滴36は、被塗布物20に付着するまでの飛行中にノズル18と被塗布物20との間に設けられたヒーターユニット22によって加熱される。これによって、液滴36中の水分が蒸発して固形分濃度が調整され、被塗布物20の塗布面20Aへの付着後の変形が抑えられ、被塗布物20に最適な形状のマット32を形成する。
【0055】
ここで、ヒーターユニット22は絶縁体27で覆われており、電気的に中性となっている。このため、マット化液室16で電圧を印加されたマット化液が、ノズル18から液滴36として吐出され、被塗布物20へ向かって飛行する間にヒーターユニット22に引き付けられて付着することがない。
【0056】
さらに、ヒーターユニット22のノズル18側端部に遮熱板26を設けたことで、ヒーターユニット22からの熱がノズル18に伝わり、ノズル18内でマット化液が加熱されることが防げる。これによって、ノズル18詰まり等が防止できる。
【0057】
次に、第2の実施形態に係る静電塗布装置について説明する。なお、第1の実施形態と共通する部分の説明は割愛する。
【0058】
図2および図3に示すように、ノズル18と被塗布物20との間に、ノズル18が並べられた一方向に対して平行となるように、かつノズル18から吐出された液滴36が通過できる通路を形成するようにして、二枚の電熱式のパネルヒーター48、50が配設されている。なお、パネルヒーター48とパネルヒーター50の間隔L1は、ノズル18の内径の20倍以上とされ、好ましくは30〜60倍である。
【0059】
また、図4に示すように、パネルヒーター48、50には、それぞれ発熱体49、52が組み込まれており、この発熱体49、52には図示しない電源が接続されている。電源から発熱体49、52に電圧が印加されると、発熱体49、52が加熱され、パネルヒーター48、50間が温められる。
【0060】
次に、第2の実施形態の作用について説明する。
【0061】
ノズル18から吐出された液滴36が通過できる通路を、二枚のヒーターユニット48、50で形成することで、いずれのノズル18から吐出された液滴36にも、まんべんなく熱がいきとどくようにされている。これによって、ノズル18から吐出された液滴36は、被塗布物20に付着するまでの飛行中に、液滴36中の水分が蒸発して固形分濃度が調整され、被塗布物20の塗布面20Aへの付着後の変形が抑えられ、被塗布物20に最適な形状のマット32を形成する。
【0062】
また、二枚のパネルヒーター48、50を設けるだけで、複数のノズル18から吐出される液滴36を同時に加熱することができるので、構造が簡単である。
【0063】
なお、本発明の実施形態においては、パネルヒーター48、50を用いて液滴36の固形分濃度を調整したが、電気式のパネルヒーター48、50に限らず、熱媒体を循環させるものであれば、第1の実施形態と同様に、ガスヒーターや温水、オイル等の熱媒体を循環させるヒーターを用いることもできる。これにより、液滴36の飛行ルートに影響を与える電磁波が発生する恐れがなくなる。
【0064】
また、塗布ヘッド12、マット化液室16、ノズル18を絶縁性材料で形成して、これらのいずれかに電極を設置し、外部から電圧を印加するようにしてもよい。
【0065】
さらに、マット化液室16の内壁面を導電性材料で内張りし、導電性の内張りを電極として使用することもできる。
【0066】
電源(電圧印加手段)は、直流を印加することが好ましいが、通常の商用交流のような正弦波を印加してもよく、矩形波および台形波など、各種の波形を形成する交番電流を印加してもよい。交番電流を印加する場合には、交番電流の波形を制御することにより、ノズル18から吐出される液滴36の粒径を制御できる。
【0067】
被塗布物としては、塗布液を静電塗布できるシート状またはフィルム状の、アルミニウム薄板、薄鋼鈑などの導電性シート材、プラスチックシート、プラスチックフィルム、紙、各種ラミネート紙などの絶縁性シート材が挙げられる。また、この被塗布物の用途としては、磁気記録材料、平板印刷材料等の記録材料、反射防止フィルムや視野角改善フィルムなどの光学材料等に用いることができ、また、これに限定されるものではない。
【0068】
また、ヒーターユニット22又は48、50で液滴36を加熱して液滴36中に含まれる水分を蒸発させることで、被塗布物に付着した液滴36の固形分濃度を適度な状態にするだけでなく、加湿器を用いて液滴に水分を付与し、高粘度の液滴の固形分濃度をマット化に最適な状態にすることもできる。
【0069】
さらに、本発明の塗布装置は、被塗布物20をマット化するための塗布装置としてだけでなく、塗布液をスプレーして被塗布物に塗布する方法に用いることも可能である。
【0070】
ここで、実施例として、ノズル18と被塗布物20との間にヒーターユニット22を設けたマット化装置10を用い、被塗布物20の塗布面20Aをマット化する試験を行った。なお、被塗布物20としては、アクリル塗料を塗布したアルミニウム板を用いた。
【0071】
マット化装置10において、ノズル18と被塗布物20との距離を30mmmとし、−25kVの直流電圧を印加した。マット化液室16には、メチルメタクリレート/エチルアルコール/アクリル酸ソーダを68:20:12の仕込重量比で共重合して得られた共重合ポリマー水溶液を、固形分濃度18%にして調整を行ったマット化液を貯留した。
【0072】
ここで、ヒーターユニット22の温度を30℃〜200℃とし、被塗布物20に形成されたマット形状を観察した。
【0073】
結果を表1に示す。
【0074】
【表1】
表1に示すように、30〜60℃の間では、液滴36の形状は、図5(B)に示すように円盤状であったが、60℃から液滴36の形状が良化し、80℃のときには図5(A)に示すような半球状のマット32が得られた。120℃においても、半球状のマット32が得られたが、150℃以上になると固形分濃度が高くなりすぎて図5(C)に示すような球状となり、マットとしては適していない。
【0075】
以上のように、本発明では、マット化に最適な半球状のマットが形成されることがわかる。
【0076】
【発明の効果】
本発明は上記構成としたので、ノズルから吐出されたマット化液を適切な濃度に調整することにより、最適形状のマットを被塗布物に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る塗布装置の概略を示す側面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る塗布装置の概略を示す側面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る塗布装置の概略を示す平面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る塗布装置のノズルとヒーターユニットを、ノズルの軸線方向から見た図である。
【図5】(A)被塗布物に付着したマット形状が半球状を示す図であり、(B)マット形状が円盤状を示す図であり、(C)マット形状が球状を示す図であり、(D)マット形状が変形した状態を示す説明図である。
【図6】従来の実施形態に係る塗布装置の概略を示す平面図である。
【符号の簡単な説明】
10 マット化装置(塗布装置)
16 マット化液室(塗布液室)
18 ノズル(吐出口)
20 被塗布物
22 ヒーターユニット(溶媒分調整手段)(筒部材)
26 遮熱板
28 電源(電圧印加手段)
36 液滴
48 パネルヒーター(溶媒分調整手段)
50 パネルヒーター(溶媒分調整手段)
Claims (13)
- 塗布液を内部に貯留する塗布液室と、
前記塗布液室に設けられ、前記塗布液を被塗布物に向かって液滴として吐出する吐出口と、
前記吐出口と前記被塗布物との間に設けられ、飛行中の前記液滴の溶媒量を調整する溶媒分調整手段と、
を備えたことを特徴とする塗布装置。 - 前記塗布液室と前記被塗布物に対して、正または負の電圧を印加する電圧印加手段が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
- 前記吐出口はノズルであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の塗布装置。
- 前記溶媒分調整手段がヒーターユニットであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の塗布装置。
- 前記ヒーターユニットのノズル側端部には、遮熱板が設けられたことを特徴とする請求項4に記載の塗布装置。
- 前記ヒーターユニットは絶縁体で覆われていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の塗布装置。
- 前記ヒーターユニットで加熱が開始される位置は、前記ノズルの先端部から1mm〜10mm離れていることを特徴とする請求項4〜請求項6のいずれかに記載の塗布装置。
- 前記ヒーターユニットは、各ノズルから吐出される液滴が通過する複数の筒部材からなることを特徴とする請求項4〜請求項7のいずれかに記載の塗布装置。
- 前記筒部材の軸線と、前記ノズルの軸線とが、同一直線上にあることを特徴とする請求項8に記載の塗布装置。
- 前記筒部材の内径寸法が、前記ノズルのノズル径の20倍以上であることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の塗布装置。
- 前記ヒーターユニットは、それぞれのノズルからの液滴が通過する通路を形成する二枚のパネルヒーターで構成されたことを特徴とする請求項4〜請求項7のいずれかに記載の塗布装置。
- 前記ヒーターユニットは、熱媒体が循環するヒータであることを特徴とする請求項4に記載の塗布装置。
- 塗布液が塗布される被塗布物と塗布液室に貯留された前記塗布液とに対して正または負の電圧を印加し、前記塗布液を前記被塗布物に向かって前記塗布液室のノズルから滴状に吐出させ、前記被塗布物に付着するまでの飛行中に、前記塗布液中の溶媒分を調整することを特徴とする塗布液の塗布方法。
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JP2009233957A (ja) * | 2008-03-26 | 2009-10-15 | Dainippon Printing Co Ltd | 離型紙の製造方法および離型紙の製造装置 |
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-
2003
- 2003-02-19 JP JP2003040903A patent/JP2004249190A/ja active Pending
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