JP2004245785A - 質量測定用圧電振動子、質量測定装置および質量測定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】所定温度下において質量測定を行うことにより、測定精度を向上させることが可能な、質量測定用圧電振動子を提供する。
【解決手段】圧電振動片20における一方面側の励振電極22aの表面に感応膜を塗布し、その一方面側の励振電極22aに検体溶液を接触させて、検体溶液中の特定物質の質量測定を行う質量測定用圧電振動子3であって、圧電振動片20における一方面側の表面に装着した温度検出器30と、圧電振動片20における他方面側の表面に装着した第1温度調節手段31とを有する構成とした。感応膜と特定物質との結合に適した所定温度と、温度検出器30による検出温度とを比較して、圧電振動片20における一方面側の表面温度を前記所定温度に保持すべく、第1温度調節手段31を駆動する。
【選択図】 図1
【解決手段】圧電振動片20における一方面側の励振電極22aの表面に感応膜を塗布し、その一方面側の励振電極22aに検体溶液を接触させて、検体溶液中の特定物質の質量測定を行う質量測定用圧電振動子3であって、圧電振動片20における一方面側の表面に装着した温度検出器30と、圧電振動片20における他方面側の表面に装着した第1温度調節手段31とを有する構成とした。感応膜と特定物質との結合に適した所定温度と、温度検出器30による検出温度とを比較して、圧電振動片20における一方面側の表面温度を前記所定温度に保持すべく、第1温度調節手段31を駆動する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、質量測定用圧電振動子、質量測定装置および質量測定方法に係り、特に圧電振動片を用いて検体溶液中の特定物質の濃度等を測定する質量測定用圧電振動子、質量測定装置および質量測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
食品や生化学、環境などの分野で、特定物質の有無や濃度等を測定するため、水晶振動子マイクロバランス法が利用されている。その具体的な方法は、まず圧電振動片における一方面側の励振電極の表面に、特定物質の感応膜を塗布する。そして、特定物質を含む検体溶液中にその圧電振動片を浸漬する。すると、検体溶液中の特定物質が感応膜と結合し、励振電極の質量が増加する。この励振電極の質量増加にともなって、圧電振動片の共振周波数が低下する。これにより、検体溶液中の特定物質の有無を判断することができる。
【0003】
ところで、圧電振動片を検体溶液中に浸漬する際に、その両面に形成した励振電極が相互に短絡すると、圧電振動片を発振させることができなくなる。そこで、感応膜を塗布しない他方面側の励振電極を被覆部材等で覆うことにより、当該励振電極を検体溶液から封止して、電極間の短絡を防止する必要がある。
【0004】
図5に、特許文献1に記載された質量測定用圧電振動子の説明図を示す。なお、図5(1)は平面図であり、図5(2)は図5(1)のG−G線における側面断面図である。この質量測定用圧電振動子503は、矩形状の圧電平板の両面に円形状の励振電極522a,522bを形成した圧電振動片520を備えている。また、圧電振動片520の一方面側には、絶縁性薄板からなる被覆部材550が接着剤558によって接着されている。これにより、一方面側の励振電極522bが検体溶液から封止され、電極間の短絡が防止されている。さらに、各励振電極にはリード線524が取り付けられ、リード線524の検体溶液に浸漬する部分は接着剤558によって被覆されている。
【0005】
図6に、従来の質量測定装置の説明図を示す。質量測定装置501において、上述した質量測定用圧電振動子503は外部の発振回路540に接続されている。質量測定は、励振電極522aの表面に上述した感応膜(不図示)を塗布した上で、質量測定用圧電振動子503を検体溶液7中に浸漬して行う。まず、発振回路540により質量測定用圧電振動子503の圧電振動片を発振させ、周波数カウンタ5により圧電振動片の共振周波数を測定する。上述したように、検体溶液中の特定物質が感応膜と結合し、励振電極の質量が増加すると、圧電振動片の共振周波数が低下する。そこで、コンピュータ6によりこの共振周波数の低下量等を解析して、検体溶液中の特定物質の有無および濃度等を算出する。
【0006】
ところで、水晶振動子マイクロバランス法は、感応膜と特定物質との結合に適した所定の温度下で実施する必要がある。そこで、質量測定用圧電振動子503および検体溶液7を前記所定温度に保持する温度調節機構が設けられている。温度調節機構は、検体溶液槽561の内部に配置した温度計562と、検体溶液槽561の底部に配置したヒータ563とによって構成されている。そして、温度計562によって検出した検体溶液7の温度が、感応膜と特定物質との結合に適した所定温度となるように、ヒータ563を運転する。このようにして、質量測定用圧電振動子503および検体溶液7を所定温度に管理しようとしている。
【0007】
【特許文献1】特開平6−138125号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の質量測定方法では、質量測定用圧電振動子を検体溶液に浸漬すると同時に質量測定が開始される。ところが、検体溶液に浸漬した直後の質量測定用圧電振動子の温度は、一般に検体溶液の温度とは異なっている。すなわち、感応膜の温度が、特定物質との結合に適した所定温度になっていないのである。この場合における感応膜と特定物質との反応速度は、前記所定温度における反応速度と異なるため、共振周波数の低下速度に差が生じる。したがって、質量測定の初期段階において測定精度を向上させることができないという問題がある。
【0009】
また、質量測定中において、検体溶液中の特定物質が感応膜と結合する際に、反応熱を発生する場合がある。この場合、検体溶液が所定温度であっても、質量測定用圧電振動子の温度は異なることになる。すなわち、感応膜の温度が、特定物質との結合に適した所定温度になっていないのである。この場合における感応膜と特定物質との反応速度は、前記所定温度における反応速度と異なるため、共振周波数の低下速度に差が生じる。したがって、質量測定中においても測定精度を向上させることができないという問題がある。
【0010】
本発明は上記問題点に着目し、所定温度下において質量測定を行うことにより、測定精度を向上させることが可能な、質量測定用圧電振動子、質量測定装置および質量測定方法の提供を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る質量測定用圧電振動子は、圧電振動片における一方面側の励振電極の表面に感応膜を塗布し、前記一方面側の励振電極に検体を接触させて、前記検体中の特定物質の質量測定を行う質量測定用圧電振動子であって、前記圧電振動片における一方面側の表面に装着した温度検出器と、前記圧電振動片の表面に装着した温度調節手段と、を有する構成とした。
【0012】
これにより、質量測定用圧電振動子を検体溶液に浸漬する前から、質量測定用圧電振動子における圧電振動片の温度を、感応膜と特定物質との結合に適した所定温度に保持することができる。したがって、質量測定の初期段階における測定精度を向上させることができる。また、検体溶液中の特定物質が感応膜と結合して反応熱が発生しても、質量測定用圧電振動子における圧電振動片の温度を、感応膜と特定物質との結合に適した所定温度に保持することができる。したがって、質量測定中における測定精度を向上させることができる。
【0013】
また、前記温度調節手段を、前記圧電振動片における一方面側の表面に装着した構成とした。温度調節を行うべき圧電振動片の一方面側の表面に温度調節手段を装着するので、温度調節を迅速に行うことができる。これにより、質量測定の初期段階および質量測定中において、測定精度を向上させることができる。
【0014】
なお、前記圧電振動片は、逆メサ型圧電振動片であって、前記圧電振動片における周縁の厚肉部に、前記温度調節手段を装着してもよい。逆メサ型圧電振動片による高い共振周波数を使用することにより、質量測定用圧電振動子を高感度化することができる。また、逆メサ型圧電振動片における周縁の厚肉部に温度調節手段を装着することにより、圧電振動片における中央の薄肉部に形成される振動部は、温度調節手段と干渉することがない。したがって、測定精度を向上させることができる。
【0015】
なお、前記温度調節手段は、ペルチェ素子により構成してもよい。ペルチェ素子は、構造が簡単で小型化が容易であり、しかも印加電圧の正負を切り替えるだけで冷却・加熱を切り替えることができる。したがって、製造コストを低減することができる。
【0016】
一方、本発明にかかる質量測定装置は、上述した質量測定用圧電振動子と、あらかじめ入力された設定温度と前記温度検出器による検出温度とを比較して、前記圧電振動片における一方面側の表面温度を前記設定温度に保持すべく前記温度調節手段を駆動する温度制御部と、を有する構成とした。これにより、質量測定の初期段階および質量測定中において、測定精度を向上させることができる。
【0017】
一方、本発明に係る質量測定方法は、圧電振動片における一方面側の励振電極の表面に感応膜を塗布し、前記一方面側の励振電極に検体を接触させて、前記検体中の特定物質の質量測定を行う方法であって、前記圧電振動片における一方面側の表面温度を検出し、前記検出温度と、あらかじめ入力された設定温度とを比較して、前記圧電振動片における一方面側の表面温度を前記設定温度に保持すべく、前記圧電振動片の温度調節を行う構成とした。これにより、質量測定の初期段階および質量測定中において、測定精度を向上させることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明に係る質量測定用圧電振動子、質量測定装置および質量測定方法の好ましい実施の形態を、添付図面に従って詳細に説明する。なお、以下に記載するのは本発明の実施形態の一態様にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
図1に、第1実施形態に係る質量測定用圧電振動子の説明図を示す。なお、図1(1)は平面図であり、図1(2)は図1(1)のA−A線における側面断面図である。第1実施形態に係る質量測定用圧電振動子3は、圧電振動片20における一方面側の励振電極22aの表面に感応膜を塗布し、その一方面側の励振電極22aに検体溶液を接触させて、検体溶液中の特定物質の質量測定(本実施形態では質量測定)を行う質量測定用圧電振動子3であって、圧電振動片20における一方面側の表面に装着した温度検出器30と、前記圧電振動片における他方面側の表面に装着した第1温度調節手段31とを有するものである。
【0020】
第1実施形態では、圧電振動片20として、いわゆる逆メサ型圧電振動片を使用する。質量測定用圧電振動子の感度は、次式で表すことができる。
【数1】
ただし、dfは圧電振動片の共振周波数の変化量、f0は圧電振動片の共振周波数の初期値、ρは圧電材料の密度、μは圧電材料のせん断応力、dmは励振電極に結合した特定物質の質量、Aは励振電極の面積である。上式からわかるように、圧電振動片の共振周波数の初期値f0が高いほど、その変化量dfが大きくなり、質量測定用圧電振動子が高感度化する。例えば、f0を従来の27MHzから150MHzまで高周波化すれば、感度を30倍にすることができる。そして圧電振動片を高周波化するには、圧電振動片の振動部における肉厚を薄くすればよい。
【0021】
逆メサ型圧電振動片20は、水晶等の圧電材料を平板状に切り出し、その両面中央部に凹部を形成して薄肉化し、その薄肉部の両面に励振電極22a,22bを形成したものである。圧電振動片20の周縁の厚肉部には、励振電極22a,22bと導通する接続電極24a,24bを形成する。なお、圧電振動片20の上面側の接続電極24aは、圧電振動片20の側面および下面に延長形成する。そして、圧電振動片20の下面には、上面側の接続電極24aと下面側の接続電極24bとを並べて配置する。なお、各電極はAu/CrまたはAg/Crの2層によって構成する。このような逆メサ型圧電振動片では、周縁の厚肉部により中央の薄肉振動部が保護されるので、外力による振動部の破壊を防止することができる。これにより、高周波の圧電振動片が利用可能となり、質量測定用圧電振動子を高感度化することができる。なお本発明には、逆メサ型以外のATカット圧電振動片を使用することも可能である。
【0022】
そして、圧電振動片20における上面の励振電極22aの表面に感応膜を塗布する。感応膜は、検出すべき特定物質の分子のみと結合する物質であり、特定物質に対応して選択する。
【0023】
一方、その圧電振動片の下方に第1温度調節手段31を配置する。第1温度調節手段31として、ペルチェ素子を使用する。図2に、ペルチェ素子の基本構成図を示す。ペルチェ素子を構成するには、まずセラミック等からなる一対の絶縁伝熱板39,39を対向配置する。また、一方の絶縁伝熱板の内側表面にn側電極36とp側電極38とを並べて配置し、他方の絶縁伝熱板の内側表面に中間電極34を配置する。さらに、中間電極34とn側電極36との間にn型半導体35を配置し、中間電極34とp側電極38との間にp型半導体37を配置する。
【0024】
いま、n側電極36に正電圧を印加し、p側電極38に負電圧を印加する場合を考える。この場合、n型半導体35では中間電極34からn側電極36に向かって電子が移動し、p型半導体37では中間電極34からp側電極38に向かって正孔が移動する。ここで、n型半導体35における電子およびp型半導体37における正孔は、熱を運ぶ働きをする。これにより、中間電極34側が冷却され、n側電極36およびp側電極38側が加熱される。なお、印加電圧の正負を逆転すれば、冷却・加熱を逆転することができる。また、印加電圧の大きさを調整すれば、冷却・加熱の強度を調整することができる。
【0025】
このようなペルチェ素子からなる第1温度調節手段31を、図1に示すように、圧電振動片20の下面側における周縁の厚肉部に装着する。これにより、圧電振動片20における中央の厚肉部に形成される振動部と、第1温度調節手段31との干渉を回避することが可能となり、質量測定精度を向上させることができる。なお、圧電振動片20に対して、第1温度調節手段31を着脱自在に装着してもよい。この場合には、質量測定に使用済みの圧電振動片のみを廃棄して、第1温度調節手段31を再利用することが可能となり、製造コストを低減することができる。
【0026】
なお、第1温度調節手段31の上面は、上述したようにセラミック等からなる絶縁伝熱板39で構成されている。そこで、この絶縁伝熱板39の表面に配線パターン26を形成する。そしてこの配線パターン26と、圧電振動片20の下面に形成した接続電極24a,24bとを接続しつつ、第1温度調節手段31を圧電振動片20に装着する。なお、第1温度調節手段31の装着は、Agペースト等の導電性接着剤を使用して行う。これにより、質量測定用圧電振動子3の外部端子(不図示)から、配線パターン26を介して、圧電振動片20の励振電極22a,22bに通電可能となる。
【0027】
そして、圧電振動片20および第1温度調節手段31の側方を、封止部材50によって気密封止する。これにより、圧電振動片20の電極間の短絡を防止することが可能になるので、質量測定用圧電振動子3を検体溶液中に浸漬して使用することができる。なお、第1温度調節手段31の下方には、熱伝達の性能を確保するため、封止部材50を配置しない。
【0028】
なお、ペルチェ素子のn側電極およびp側電極に対する電圧の印加は、図3に示す温度制御部60においてコントロールする。そこで、第1温度調節手段31と温度制御部60とを電気的に接続する。
【0029】
一方、圧電振動片20の上面における励振電極22aの側方に、温度検出器30を装着する。温度検出器30は、熱電対等によって構成する。熱電対は、2種の異なった導体の両端部を接合したものである。この両端部のうち、一方の接点を測定対象物に接触させ、他方の接点を既知の温度に保持する。すると、この2接点間の温度差に比例して、2接点間に熱電圧が発生する。そこで、この熱電圧を測定することにより、測定対象物の温度を検出するものである。本実施形態では、上述した一方の接点を圧電振動片20の上面における励振電極22aの側方に装着する。また、温度検出器30による検出結果を温度制御部60に入力するため、温度検出器30と温度制御部60とを接続する。
【0030】
図3に、質量測定装置の説明図を示す。上記のように構成した質量測定用圧電振動子3は、ホルダ4の先端に装着し、さらに外部の発振回路40に接続する。発振回路40は、圧電振動片20の励振電極に通電して圧電振動片20を発振させるものである。また、発振回路40は周波数カウンタ5に接続する。周波数カウンタ5は、圧電振動片20の共振周波数を測定するものである。また、周波数カウンタ5はコンピュータ6に接続する。コンピュータ6は、周波数カウンタ5が測定した共振周波数から、圧電振動片20の励振電極22bに付着した特定物質の質量、例えば質量を算出するものである。加えて、特定物質の付着量の系時変化から検体溶液中の特定物質の濃度等を解析し得るようにコンピュータ6を構成する。
【0031】
なお、質量測定用圧電振動子3における温度検出器30および第1温度調節手段31(図1参照)は、ホルダ4を介して温度制御部60に接続する。なお、温度制御部60には、感応膜と特定物質との結合に適した所定の温度が、設定温度として記憶させてある。そこで、温度制御部60は、温度検出器30による検出温度と、前記設定温度とを比較して、圧電振動片における一方面側の表面温度を前記設定温度に保持すべく、第1温度調節手段31を駆動する。
【0032】
一方、質量測定用圧電振動子3を検体溶液中に浸漬して質量測定を行う場合には、検体溶液7を充填する検体溶液槽61を設ける。また、検体溶液槽61の内部に温度計62を配置する。さらに、検体溶液槽61の下部には、ヒータ等の第3温度調節手段63を設ける。なお第3温度調節手段として、検体溶液槽全体を収容可能な恒温槽を採用してもよい。そして、この第3温度調節手段63および温度計62を、温度制御部60に接続する。温度制御部60は、温度計62による検出温度と前記設定温度とを比較して、検体溶液7の温度を前記設定温度に保持すべく、第3温度調節手段63を駆動する。
【0033】
次に、第1実施形態に係る質量測定用圧電振動子および質量測定装置を用いて、質量測定を行う方法について説明する。
まず、圧電振動片および検体溶液を所定の温度に保持する。そのため、図3に示す温度制御部60を動作させる。なお温度制御部60には、感応膜と特定物質との結合に適した所定の温度を、設定温度としてあらかじめ入力しておく。温度制御部60は、温度検出器30による検出温度と前記設定温度とを比較して、圧電振動片20の上面の温度を前記設定温度に保持すべく、第1温度調節手段31を駆動する(図1参照)。また、温度計62による検出温度と前記設定温度とを比較して、検体溶液7の温度を前記設定温度に保持すべく、第3温度調節手段63を駆動する。これにより、圧電振動片の上面および検体溶液7が設定温度に保持される。なお、質量測定中も温度制御部60による温度制御を継続する。
【0034】
温度制御部60では、以下のように第1温度調節手段を駆動する。すなわち、温度検出器による検出温度が設定温度より低い場合には、第1温度調節手段の上面を加熱する方向に電圧を印加し、検出温度が設定温度より高い場合には、第1温度調節手段の上面を冷却する方向に電圧を印加する。なお、検出温度が設定温度に一致している場合には、電圧を印加しない。さらに、電圧印加のON/OFFだけでなく、印加電圧の大きさ調整を併用するのが好ましい。すなわち、検出温度と設定温度との差が大きい場合には印加電圧を大きくし、温度差が小さい場合には印加電圧を小さくする。これにより、精度良くかつ迅速に、圧電振動片の上面の温度を設定温度に一致させることができる。なお、第3温度調節手段に対する制御も同様に行う。
【0035】
質量の1つである質量を測定するには、まず発振回路40から圧電振動片に通電して圧電振動片を発振させる。また、周波数カウンタ5により圧電振動片の共振周波数を連続的に計測しておく。次に、質量測定用圧電振動子3を検体溶液7中に浸漬し、図1に示す圧電振動片20の上側の励振電極22aに検体溶液を接触させる。検体溶液が励振電極22aに接触すると、検体溶液中の特定物質が励振電極22a表面の感応膜と結合する。これにより、励振電極22aの質量が増加して、圧電振動片20の共振周波数が低下する。この共振周波数の低下量および低下速度をコンピュータ6で解析することにより、特定物質の有無および濃度等を算出することができる。
【0036】
以上に詳述した第1実施形態に係る質量測定用圧電振動子、質量測定装置および質量測定方法により、所定温度下において質量などの質量の測定を行うことが可能となり、測定精度を向上させることができる。
【0037】
すなわち、第1実施形態に係る質量測定用圧電振動子は、圧電振動片における上面側の励振電極の表面に感応膜を塗布し、前記励振電極に検体溶液を接触させて、検体溶液中の特定物質の質量測定を行う質量測定用圧電振動子であって、圧電振動片の上面に装着した温度検出器と、圧電振動片の下面に装着した第1温度調節手段とを有する構成とした。また、第1実施形態に係る質量測定装置は、温度検出器による検出温度と、あらかじめ入力された設定温度とを比較して、圧電振動片における一方面側の表面温度を設定温度に保持すべく、温度調節手段を駆動する温度制御部を有する構成とした。
【0038】
これにより、質量測定用圧電振動子を検体溶液に浸漬する前から、質量測定用圧電振動子における圧電振動片の温度を、感応膜と特定物質との結合に適した所定温度に保持することができる。したがって、質量測定用圧電振動子を検体溶液に浸漬した直後の質量測定の初期段階において、測定精度を向上させることができる。また、検体溶液中の特定物質が感応膜と結合して反応熱が発生しても、質量測定用圧電振動子における圧電振動片の温度を、感応膜と特定物質との結合に適した所定温度に保持することができる。したがって、質量測定中における測定精度を向上させることができる。
【0039】
なお、圧電振動片の共振周波数は、圧電振動片の温度変化にともなってシフトする。このような圧電振動片の温度特性により、質量測定の精度が低下する場合がある。この点、第1実施形態では圧電振動片を所定温度に保持することができるので、温度による圧電振動片の共振周波数のシフトを抑えることができる。したがって、測定精度を向上させることができる。
【0040】
なお、第1実施形態では質量測定用圧電振動子を検体溶液中に浸漬して使用する場合について説明したが、質量測定用圧電振動子に検体溶液を滴下して使用することも可能である。この場合には、第3温度調節手段として、検体溶液の滴下手段および質量測定用圧電振動子を収容可能な恒温槽を設ける。これにより、滴下後の検体溶液も所定温度に保持することができるので、測定精度を向上させることができる。また、質量測定用圧電振動子を検体ガスに暴露して使用することにより、検体ガス中の特定物質の質量を測定することも可能である。この場合には、第3温度調節手段として質量測定用圧電振動子を収容可能な恒温槽を設け、その恒温槽内に検体ガスを注入して所定温度に保持すればよい。
【0041】
次に、第2実施形態について説明する。
図4に、第2実施形態に係る質量測定用圧電振動子の側面断面図を示す。第2実施形態に係る質量測定用圧電振動子103は、圧電振動片120における一方面側の表面に温度検出器130を装着し、圧電振動片120における他方面側の表面に第1温度調節手段131を装着し、さらに圧電振動片120における一方面側の表面に第2温度調節手段132を装着したものである。なお、第1実施形態と同様の構成となる部分については、その説明を省略する。
【0042】
第2実施形態では、平板部材110の中央部に、第2温度調節手段132を配置する。第2温度調節手段132は、第1実施形態で説明したペルチェ素子によって構成する。なお、ペルチェ素子に対する電圧の印加は、図3に示す温度制御部60においてコントロールする。そこで、第2温度調節手段132と温度制御部60とを電気的に接続する。また、第2温度調節手段132の中央部に貫通孔112を形成する。貫通孔112は、矩形や円形など任意の形状に形成すればよいが、少なくとも圧電振動片120の上面側における励振電極122aの全体が、貫通孔112を通して平板部材110の上面側に露出する大きさに形成する。なお、平板部材110の下面上には配線パターン114を形成する。
【0043】
そして、第2温度調節手段132の下面側に圧電振動片120を配置する。圧電振動片120は、励振電極122aの全体が貫通孔112を通して第2温度調節手段132の上面側に露出するように配置する。そして、圧電振動片120の周縁厚肉部を、第2温度調節手段132の貫通孔112の周辺部に対して、接着剤118により接合する。なお、貫通孔112を密閉封止すべく、貫通孔112の周辺部の全周を接着剤118により接合する。ここで、Agペースト等の導電性接着剤を使用することにより、圧電振動片120の上面側の接続電極124aと配線パターン114とを電気的に接続する。
【0044】
一方、第2実施形態では、図3に示す発振回路40の代わりに、発振回路を構成する集積回路素子(IC)140を使用する。IC140は、平板部材110の下面側に接着剤を介して接合する。また、IC140と配線パターン114との間、およびIC140と圧電振動片120の下面側の接続電極124bとの間を、ワイヤボンディングにより電気的に接続する。このように、同一の平板部材に圧電振動片およびICを実装することにより、圧電振動片とICとの電気長が短くなって、伝送経路の損失が小さくなる。よって、高周波の圧電振動片を検体溶液中で安定して発振させることが可能となり、質量測定用圧電振動子を高感度化することができる。
【0045】
さらに、圧電振動片120の下面に第1温度調節手段131を装着する。第1温度調節手段131の具体的な構成および圧電振動片120への装着方法は、第1実施形態と同様である。また、圧電振動片120の上面における励振電極122aの側方に、温度検出器130を装着する。なお、温度検出器130の具体的な構成については、第1実施形態と同様である。そして、圧電振動片120の上面における励振電極22aの表面に感応膜を塗布する。
【0046】
一方、平板部材110の下面に筐体150を設ける。筐体150はプラスチック材料等によって構成し、平板部材110の下面全体を被覆できる大きさに形成する。なお、IC140から周波数カウンタ5(図3参照)への配線は、ビニルチューブ152等で被覆する。この筐体150により、圧電振動片120の上下面に形成した電極相互の短絡を防止することが可能となり、質量測定用圧電振動子103を検体溶液に浸漬して使用することができる。
【0047】
次に、第2実施形態に係る質量測定用圧電振動子の使用方法について説明する。
質量測定を行う前に、圧電振動片および検体溶液を所定の温度に保持する。そのため、図3に示す温度制御部60を動作させる。なお温度制御部60には、感応膜と特定物質との結合に適した所定の温度を、設定温度としてあらかじめ入力しておく。温度制御部60は、温度検出器30による検出温度と前記設定温度とを比較して、圧電振動片120の上面の温度を設定温度に保持すべく、図4に示す第1温度調節手段131および第2温度調節手段132を同時に駆動する。具体的な制御の方法は、第1実施形態と同様である。なお、質量測定中も温度制御部60による温度制御を継続する。
【0048】
上述したように、第2実施形態では、圧電振動片の上面に第2温度調節手段を装着した構成とした。温度調節を行うべき圧電振動片の上面に第2温度調節手段を装着したので、温度調節を迅速に行うことができる。これにより、質量測定の初期段階および質量測定中において、測定精度を向上させることができる。
【0049】
なお、上述した各実施形態では、本発明に係る質量測定装置を検体溶液中の特定物質の質量を検出する装置として使用する方法について説明したが、本発明に係る質量測定装置は、例えば、においセンサや水分センサ、メッキ膜厚モニタ、イオンセンサ、粘度/密度計などとして使用することも可能である。まず、においセンサとして使用する場合には、におい物質を選択的に吸着する感応膜を励振電極の表面に塗布すればよい。また、水分センサとして使用する場合には吸水膜を塗布すればよい(特開平7−209165号公報参照)。
【0050】
一方、メッキ膜厚モニタとして使用する場合には、メッキ対象物とともに質量測定用圧電振動子をメッキ液中に浸漬する。この場合、励振電極の表面に付着したメッキ膜厚の増加とともに、圧電振動片の共振周波数が低下する。したがって、メッキ対象物のメッキ膜厚を検知することができる。また、イオンセンサとして使用する場合には、感応膜としてイオン吸着物質を塗布すればよい。そして、感応膜にイオンを吸着させて圧電振動片の周波数変化量を測定することにより、検体溶液中のイオンの定量分析を行うことができる。
【0051】
一方、本発明に係る質量測定用圧電振動子ないし質量装置により、質量以外の微少物理量を測定することも可能である。以下に、本発明に係る質量測定用圧電振動子ないし質量測定装置を、粘度/密度計として使用する場合の測定原理を説明する。ATカット圧電振動子は、その表面に沿って厚み滑り振動する。このATカット圧電振動子を液体中に浸漬して発振させると、液体との間にせん断応力を生じる。そこで、ニュートンの粘性の式と水晶振動子の振動の式とから、液体の粘性による周波数変化量を表す次式が導かれる。
【数2】
ただし、dfは圧電振動片の共振周波数の変化量、f0は圧電振動片の共振周波数の初期値、ηは液体の粘度、ρLは液体の密度、μは圧電材料の弾性率である。上式において、液体の粘度ηまたは液体の密度ρLのいずれか一方を一定とすれば、いずれか他方と共振周波数の変化量とが一対一に対応する。したがって、共振周波数の変化量を測定することにより、液体の粘度変化または液体の密度変化を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係る質量測定用圧電振動子の説明図である。
【図2】ペルチェ素子の基本的構成の説明図である。
【図3】第1実施形態に係る質量測定装置の説明図である。
【図4】第2実施形態に係る質量測定用圧電振動子の説明図である。
【図5】従来の質量測定用圧電振動子の説明図である。
【図6】従来の質量測定装置の説明図である。
【符号の説明】
3………質量測定用圧電振動子、20………圧電振動片、22a,22b………励振電極、24a,24b………接続電極、26………配線パターン、30………温度検出器、31………第1温度調節手段、39………絶縁伝熱板、50………筐体。
【発明の属する技術分野】
本発明は、質量測定用圧電振動子、質量測定装置および質量測定方法に係り、特に圧電振動片を用いて検体溶液中の特定物質の濃度等を測定する質量測定用圧電振動子、質量測定装置および質量測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
食品や生化学、環境などの分野で、特定物質の有無や濃度等を測定するため、水晶振動子マイクロバランス法が利用されている。その具体的な方法は、まず圧電振動片における一方面側の励振電極の表面に、特定物質の感応膜を塗布する。そして、特定物質を含む検体溶液中にその圧電振動片を浸漬する。すると、検体溶液中の特定物質が感応膜と結合し、励振電極の質量が増加する。この励振電極の質量増加にともなって、圧電振動片の共振周波数が低下する。これにより、検体溶液中の特定物質の有無を判断することができる。
【0003】
ところで、圧電振動片を検体溶液中に浸漬する際に、その両面に形成した励振電極が相互に短絡すると、圧電振動片を発振させることができなくなる。そこで、感応膜を塗布しない他方面側の励振電極を被覆部材等で覆うことにより、当該励振電極を検体溶液から封止して、電極間の短絡を防止する必要がある。
【0004】
図5に、特許文献1に記載された質量測定用圧電振動子の説明図を示す。なお、図5(1)は平面図であり、図5(2)は図5(1)のG−G線における側面断面図である。この質量測定用圧電振動子503は、矩形状の圧電平板の両面に円形状の励振電極522a,522bを形成した圧電振動片520を備えている。また、圧電振動片520の一方面側には、絶縁性薄板からなる被覆部材550が接着剤558によって接着されている。これにより、一方面側の励振電極522bが検体溶液から封止され、電極間の短絡が防止されている。さらに、各励振電極にはリード線524が取り付けられ、リード線524の検体溶液に浸漬する部分は接着剤558によって被覆されている。
【0005】
図6に、従来の質量測定装置の説明図を示す。質量測定装置501において、上述した質量測定用圧電振動子503は外部の発振回路540に接続されている。質量測定は、励振電極522aの表面に上述した感応膜(不図示)を塗布した上で、質量測定用圧電振動子503を検体溶液7中に浸漬して行う。まず、発振回路540により質量測定用圧電振動子503の圧電振動片を発振させ、周波数カウンタ5により圧電振動片の共振周波数を測定する。上述したように、検体溶液中の特定物質が感応膜と結合し、励振電極の質量が増加すると、圧電振動片の共振周波数が低下する。そこで、コンピュータ6によりこの共振周波数の低下量等を解析して、検体溶液中の特定物質の有無および濃度等を算出する。
【0006】
ところで、水晶振動子マイクロバランス法は、感応膜と特定物質との結合に適した所定の温度下で実施する必要がある。そこで、質量測定用圧電振動子503および検体溶液7を前記所定温度に保持する温度調節機構が設けられている。温度調節機構は、検体溶液槽561の内部に配置した温度計562と、検体溶液槽561の底部に配置したヒータ563とによって構成されている。そして、温度計562によって検出した検体溶液7の温度が、感応膜と特定物質との結合に適した所定温度となるように、ヒータ563を運転する。このようにして、質量測定用圧電振動子503および検体溶液7を所定温度に管理しようとしている。
【0007】
【特許文献1】特開平6−138125号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の質量測定方法では、質量測定用圧電振動子を検体溶液に浸漬すると同時に質量測定が開始される。ところが、検体溶液に浸漬した直後の質量測定用圧電振動子の温度は、一般に検体溶液の温度とは異なっている。すなわち、感応膜の温度が、特定物質との結合に適した所定温度になっていないのである。この場合における感応膜と特定物質との反応速度は、前記所定温度における反応速度と異なるため、共振周波数の低下速度に差が生じる。したがって、質量測定の初期段階において測定精度を向上させることができないという問題がある。
【0009】
また、質量測定中において、検体溶液中の特定物質が感応膜と結合する際に、反応熱を発生する場合がある。この場合、検体溶液が所定温度であっても、質量測定用圧電振動子の温度は異なることになる。すなわち、感応膜の温度が、特定物質との結合に適した所定温度になっていないのである。この場合における感応膜と特定物質との反応速度は、前記所定温度における反応速度と異なるため、共振周波数の低下速度に差が生じる。したがって、質量測定中においても測定精度を向上させることができないという問題がある。
【0010】
本発明は上記問題点に着目し、所定温度下において質量測定を行うことにより、測定精度を向上させることが可能な、質量測定用圧電振動子、質量測定装置および質量測定方法の提供を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る質量測定用圧電振動子は、圧電振動片における一方面側の励振電極の表面に感応膜を塗布し、前記一方面側の励振電極に検体を接触させて、前記検体中の特定物質の質量測定を行う質量測定用圧電振動子であって、前記圧電振動片における一方面側の表面に装着した温度検出器と、前記圧電振動片の表面に装着した温度調節手段と、を有する構成とした。
【0012】
これにより、質量測定用圧電振動子を検体溶液に浸漬する前から、質量測定用圧電振動子における圧電振動片の温度を、感応膜と特定物質との結合に適した所定温度に保持することができる。したがって、質量測定の初期段階における測定精度を向上させることができる。また、検体溶液中の特定物質が感応膜と結合して反応熱が発生しても、質量測定用圧電振動子における圧電振動片の温度を、感応膜と特定物質との結合に適した所定温度に保持することができる。したがって、質量測定中における測定精度を向上させることができる。
【0013】
また、前記温度調節手段を、前記圧電振動片における一方面側の表面に装着した構成とした。温度調節を行うべき圧電振動片の一方面側の表面に温度調節手段を装着するので、温度調節を迅速に行うことができる。これにより、質量測定の初期段階および質量測定中において、測定精度を向上させることができる。
【0014】
なお、前記圧電振動片は、逆メサ型圧電振動片であって、前記圧電振動片における周縁の厚肉部に、前記温度調節手段を装着してもよい。逆メサ型圧電振動片による高い共振周波数を使用することにより、質量測定用圧電振動子を高感度化することができる。また、逆メサ型圧電振動片における周縁の厚肉部に温度調節手段を装着することにより、圧電振動片における中央の薄肉部に形成される振動部は、温度調節手段と干渉することがない。したがって、測定精度を向上させることができる。
【0015】
なお、前記温度調節手段は、ペルチェ素子により構成してもよい。ペルチェ素子は、構造が簡単で小型化が容易であり、しかも印加電圧の正負を切り替えるだけで冷却・加熱を切り替えることができる。したがって、製造コストを低減することができる。
【0016】
一方、本発明にかかる質量測定装置は、上述した質量測定用圧電振動子と、あらかじめ入力された設定温度と前記温度検出器による検出温度とを比較して、前記圧電振動片における一方面側の表面温度を前記設定温度に保持すべく前記温度調節手段を駆動する温度制御部と、を有する構成とした。これにより、質量測定の初期段階および質量測定中において、測定精度を向上させることができる。
【0017】
一方、本発明に係る質量測定方法は、圧電振動片における一方面側の励振電極の表面に感応膜を塗布し、前記一方面側の励振電極に検体を接触させて、前記検体中の特定物質の質量測定を行う方法であって、前記圧電振動片における一方面側の表面温度を検出し、前記検出温度と、あらかじめ入力された設定温度とを比較して、前記圧電振動片における一方面側の表面温度を前記設定温度に保持すべく、前記圧電振動片の温度調節を行う構成とした。これにより、質量測定の初期段階および質量測定中において、測定精度を向上させることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明に係る質量測定用圧電振動子、質量測定装置および質量測定方法の好ましい実施の形態を、添付図面に従って詳細に説明する。なお、以下に記載するのは本発明の実施形態の一態様にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
図1に、第1実施形態に係る質量測定用圧電振動子の説明図を示す。なお、図1(1)は平面図であり、図1(2)は図1(1)のA−A線における側面断面図である。第1実施形態に係る質量測定用圧電振動子3は、圧電振動片20における一方面側の励振電極22aの表面に感応膜を塗布し、その一方面側の励振電極22aに検体溶液を接触させて、検体溶液中の特定物質の質量測定(本実施形態では質量測定)を行う質量測定用圧電振動子3であって、圧電振動片20における一方面側の表面に装着した温度検出器30と、前記圧電振動片における他方面側の表面に装着した第1温度調節手段31とを有するものである。
【0020】
第1実施形態では、圧電振動片20として、いわゆる逆メサ型圧電振動片を使用する。質量測定用圧電振動子の感度は、次式で表すことができる。
【数1】
ただし、dfは圧電振動片の共振周波数の変化量、f0は圧電振動片の共振周波数の初期値、ρは圧電材料の密度、μは圧電材料のせん断応力、dmは励振電極に結合した特定物質の質量、Aは励振電極の面積である。上式からわかるように、圧電振動片の共振周波数の初期値f0が高いほど、その変化量dfが大きくなり、質量測定用圧電振動子が高感度化する。例えば、f0を従来の27MHzから150MHzまで高周波化すれば、感度を30倍にすることができる。そして圧電振動片を高周波化するには、圧電振動片の振動部における肉厚を薄くすればよい。
【0021】
逆メサ型圧電振動片20は、水晶等の圧電材料を平板状に切り出し、その両面中央部に凹部を形成して薄肉化し、その薄肉部の両面に励振電極22a,22bを形成したものである。圧電振動片20の周縁の厚肉部には、励振電極22a,22bと導通する接続電極24a,24bを形成する。なお、圧電振動片20の上面側の接続電極24aは、圧電振動片20の側面および下面に延長形成する。そして、圧電振動片20の下面には、上面側の接続電極24aと下面側の接続電極24bとを並べて配置する。なお、各電極はAu/CrまたはAg/Crの2層によって構成する。このような逆メサ型圧電振動片では、周縁の厚肉部により中央の薄肉振動部が保護されるので、外力による振動部の破壊を防止することができる。これにより、高周波の圧電振動片が利用可能となり、質量測定用圧電振動子を高感度化することができる。なお本発明には、逆メサ型以外のATカット圧電振動片を使用することも可能である。
【0022】
そして、圧電振動片20における上面の励振電極22aの表面に感応膜を塗布する。感応膜は、検出すべき特定物質の分子のみと結合する物質であり、特定物質に対応して選択する。
【0023】
一方、その圧電振動片の下方に第1温度調節手段31を配置する。第1温度調節手段31として、ペルチェ素子を使用する。図2に、ペルチェ素子の基本構成図を示す。ペルチェ素子を構成するには、まずセラミック等からなる一対の絶縁伝熱板39,39を対向配置する。また、一方の絶縁伝熱板の内側表面にn側電極36とp側電極38とを並べて配置し、他方の絶縁伝熱板の内側表面に中間電極34を配置する。さらに、中間電極34とn側電極36との間にn型半導体35を配置し、中間電極34とp側電極38との間にp型半導体37を配置する。
【0024】
いま、n側電極36に正電圧を印加し、p側電極38に負電圧を印加する場合を考える。この場合、n型半導体35では中間電極34からn側電極36に向かって電子が移動し、p型半導体37では中間電極34からp側電極38に向かって正孔が移動する。ここで、n型半導体35における電子およびp型半導体37における正孔は、熱を運ぶ働きをする。これにより、中間電極34側が冷却され、n側電極36およびp側電極38側が加熱される。なお、印加電圧の正負を逆転すれば、冷却・加熱を逆転することができる。また、印加電圧の大きさを調整すれば、冷却・加熱の強度を調整することができる。
【0025】
このようなペルチェ素子からなる第1温度調節手段31を、図1に示すように、圧電振動片20の下面側における周縁の厚肉部に装着する。これにより、圧電振動片20における中央の厚肉部に形成される振動部と、第1温度調節手段31との干渉を回避することが可能となり、質量測定精度を向上させることができる。なお、圧電振動片20に対して、第1温度調節手段31を着脱自在に装着してもよい。この場合には、質量測定に使用済みの圧電振動片のみを廃棄して、第1温度調節手段31を再利用することが可能となり、製造コストを低減することができる。
【0026】
なお、第1温度調節手段31の上面は、上述したようにセラミック等からなる絶縁伝熱板39で構成されている。そこで、この絶縁伝熱板39の表面に配線パターン26を形成する。そしてこの配線パターン26と、圧電振動片20の下面に形成した接続電極24a,24bとを接続しつつ、第1温度調節手段31を圧電振動片20に装着する。なお、第1温度調節手段31の装着は、Agペースト等の導電性接着剤を使用して行う。これにより、質量測定用圧電振動子3の外部端子(不図示)から、配線パターン26を介して、圧電振動片20の励振電極22a,22bに通電可能となる。
【0027】
そして、圧電振動片20および第1温度調節手段31の側方を、封止部材50によって気密封止する。これにより、圧電振動片20の電極間の短絡を防止することが可能になるので、質量測定用圧電振動子3を検体溶液中に浸漬して使用することができる。なお、第1温度調節手段31の下方には、熱伝達の性能を確保するため、封止部材50を配置しない。
【0028】
なお、ペルチェ素子のn側電極およびp側電極に対する電圧の印加は、図3に示す温度制御部60においてコントロールする。そこで、第1温度調節手段31と温度制御部60とを電気的に接続する。
【0029】
一方、圧電振動片20の上面における励振電極22aの側方に、温度検出器30を装着する。温度検出器30は、熱電対等によって構成する。熱電対は、2種の異なった導体の両端部を接合したものである。この両端部のうち、一方の接点を測定対象物に接触させ、他方の接点を既知の温度に保持する。すると、この2接点間の温度差に比例して、2接点間に熱電圧が発生する。そこで、この熱電圧を測定することにより、測定対象物の温度を検出するものである。本実施形態では、上述した一方の接点を圧電振動片20の上面における励振電極22aの側方に装着する。また、温度検出器30による検出結果を温度制御部60に入力するため、温度検出器30と温度制御部60とを接続する。
【0030】
図3に、質量測定装置の説明図を示す。上記のように構成した質量測定用圧電振動子3は、ホルダ4の先端に装着し、さらに外部の発振回路40に接続する。発振回路40は、圧電振動片20の励振電極に通電して圧電振動片20を発振させるものである。また、発振回路40は周波数カウンタ5に接続する。周波数カウンタ5は、圧電振動片20の共振周波数を測定するものである。また、周波数カウンタ5はコンピュータ6に接続する。コンピュータ6は、周波数カウンタ5が測定した共振周波数から、圧電振動片20の励振電極22bに付着した特定物質の質量、例えば質量を算出するものである。加えて、特定物質の付着量の系時変化から検体溶液中の特定物質の濃度等を解析し得るようにコンピュータ6を構成する。
【0031】
なお、質量測定用圧電振動子3における温度検出器30および第1温度調節手段31(図1参照)は、ホルダ4を介して温度制御部60に接続する。なお、温度制御部60には、感応膜と特定物質との結合に適した所定の温度が、設定温度として記憶させてある。そこで、温度制御部60は、温度検出器30による検出温度と、前記設定温度とを比較して、圧電振動片における一方面側の表面温度を前記設定温度に保持すべく、第1温度調節手段31を駆動する。
【0032】
一方、質量測定用圧電振動子3を検体溶液中に浸漬して質量測定を行う場合には、検体溶液7を充填する検体溶液槽61を設ける。また、検体溶液槽61の内部に温度計62を配置する。さらに、検体溶液槽61の下部には、ヒータ等の第3温度調節手段63を設ける。なお第3温度調節手段として、検体溶液槽全体を収容可能な恒温槽を採用してもよい。そして、この第3温度調節手段63および温度計62を、温度制御部60に接続する。温度制御部60は、温度計62による検出温度と前記設定温度とを比較して、検体溶液7の温度を前記設定温度に保持すべく、第3温度調節手段63を駆動する。
【0033】
次に、第1実施形態に係る質量測定用圧電振動子および質量測定装置を用いて、質量測定を行う方法について説明する。
まず、圧電振動片および検体溶液を所定の温度に保持する。そのため、図3に示す温度制御部60を動作させる。なお温度制御部60には、感応膜と特定物質との結合に適した所定の温度を、設定温度としてあらかじめ入力しておく。温度制御部60は、温度検出器30による検出温度と前記設定温度とを比較して、圧電振動片20の上面の温度を前記設定温度に保持すべく、第1温度調節手段31を駆動する(図1参照)。また、温度計62による検出温度と前記設定温度とを比較して、検体溶液7の温度を前記設定温度に保持すべく、第3温度調節手段63を駆動する。これにより、圧電振動片の上面および検体溶液7が設定温度に保持される。なお、質量測定中も温度制御部60による温度制御を継続する。
【0034】
温度制御部60では、以下のように第1温度調節手段を駆動する。すなわち、温度検出器による検出温度が設定温度より低い場合には、第1温度調節手段の上面を加熱する方向に電圧を印加し、検出温度が設定温度より高い場合には、第1温度調節手段の上面を冷却する方向に電圧を印加する。なお、検出温度が設定温度に一致している場合には、電圧を印加しない。さらに、電圧印加のON/OFFだけでなく、印加電圧の大きさ調整を併用するのが好ましい。すなわち、検出温度と設定温度との差が大きい場合には印加電圧を大きくし、温度差が小さい場合には印加電圧を小さくする。これにより、精度良くかつ迅速に、圧電振動片の上面の温度を設定温度に一致させることができる。なお、第3温度調節手段に対する制御も同様に行う。
【0035】
質量の1つである質量を測定するには、まず発振回路40から圧電振動片に通電して圧電振動片を発振させる。また、周波数カウンタ5により圧電振動片の共振周波数を連続的に計測しておく。次に、質量測定用圧電振動子3を検体溶液7中に浸漬し、図1に示す圧電振動片20の上側の励振電極22aに検体溶液を接触させる。検体溶液が励振電極22aに接触すると、検体溶液中の特定物質が励振電極22a表面の感応膜と結合する。これにより、励振電極22aの質量が増加して、圧電振動片20の共振周波数が低下する。この共振周波数の低下量および低下速度をコンピュータ6で解析することにより、特定物質の有無および濃度等を算出することができる。
【0036】
以上に詳述した第1実施形態に係る質量測定用圧電振動子、質量測定装置および質量測定方法により、所定温度下において質量などの質量の測定を行うことが可能となり、測定精度を向上させることができる。
【0037】
すなわち、第1実施形態に係る質量測定用圧電振動子は、圧電振動片における上面側の励振電極の表面に感応膜を塗布し、前記励振電極に検体溶液を接触させて、検体溶液中の特定物質の質量測定を行う質量測定用圧電振動子であって、圧電振動片の上面に装着した温度検出器と、圧電振動片の下面に装着した第1温度調節手段とを有する構成とした。また、第1実施形態に係る質量測定装置は、温度検出器による検出温度と、あらかじめ入力された設定温度とを比較して、圧電振動片における一方面側の表面温度を設定温度に保持すべく、温度調節手段を駆動する温度制御部を有する構成とした。
【0038】
これにより、質量測定用圧電振動子を検体溶液に浸漬する前から、質量測定用圧電振動子における圧電振動片の温度を、感応膜と特定物質との結合に適した所定温度に保持することができる。したがって、質量測定用圧電振動子を検体溶液に浸漬した直後の質量測定の初期段階において、測定精度を向上させることができる。また、検体溶液中の特定物質が感応膜と結合して反応熱が発生しても、質量測定用圧電振動子における圧電振動片の温度を、感応膜と特定物質との結合に適した所定温度に保持することができる。したがって、質量測定中における測定精度を向上させることができる。
【0039】
なお、圧電振動片の共振周波数は、圧電振動片の温度変化にともなってシフトする。このような圧電振動片の温度特性により、質量測定の精度が低下する場合がある。この点、第1実施形態では圧電振動片を所定温度に保持することができるので、温度による圧電振動片の共振周波数のシフトを抑えることができる。したがって、測定精度を向上させることができる。
【0040】
なお、第1実施形態では質量測定用圧電振動子を検体溶液中に浸漬して使用する場合について説明したが、質量測定用圧電振動子に検体溶液を滴下して使用することも可能である。この場合には、第3温度調節手段として、検体溶液の滴下手段および質量測定用圧電振動子を収容可能な恒温槽を設ける。これにより、滴下後の検体溶液も所定温度に保持することができるので、測定精度を向上させることができる。また、質量測定用圧電振動子を検体ガスに暴露して使用することにより、検体ガス中の特定物質の質量を測定することも可能である。この場合には、第3温度調節手段として質量測定用圧電振動子を収容可能な恒温槽を設け、その恒温槽内に検体ガスを注入して所定温度に保持すればよい。
【0041】
次に、第2実施形態について説明する。
図4に、第2実施形態に係る質量測定用圧電振動子の側面断面図を示す。第2実施形態に係る質量測定用圧電振動子103は、圧電振動片120における一方面側の表面に温度検出器130を装着し、圧電振動片120における他方面側の表面に第1温度調節手段131を装着し、さらに圧電振動片120における一方面側の表面に第2温度調節手段132を装着したものである。なお、第1実施形態と同様の構成となる部分については、その説明を省略する。
【0042】
第2実施形態では、平板部材110の中央部に、第2温度調節手段132を配置する。第2温度調節手段132は、第1実施形態で説明したペルチェ素子によって構成する。なお、ペルチェ素子に対する電圧の印加は、図3に示す温度制御部60においてコントロールする。そこで、第2温度調節手段132と温度制御部60とを電気的に接続する。また、第2温度調節手段132の中央部に貫通孔112を形成する。貫通孔112は、矩形や円形など任意の形状に形成すればよいが、少なくとも圧電振動片120の上面側における励振電極122aの全体が、貫通孔112を通して平板部材110の上面側に露出する大きさに形成する。なお、平板部材110の下面上には配線パターン114を形成する。
【0043】
そして、第2温度調節手段132の下面側に圧電振動片120を配置する。圧電振動片120は、励振電極122aの全体が貫通孔112を通して第2温度調節手段132の上面側に露出するように配置する。そして、圧電振動片120の周縁厚肉部を、第2温度調節手段132の貫通孔112の周辺部に対して、接着剤118により接合する。なお、貫通孔112を密閉封止すべく、貫通孔112の周辺部の全周を接着剤118により接合する。ここで、Agペースト等の導電性接着剤を使用することにより、圧電振動片120の上面側の接続電極124aと配線パターン114とを電気的に接続する。
【0044】
一方、第2実施形態では、図3に示す発振回路40の代わりに、発振回路を構成する集積回路素子(IC)140を使用する。IC140は、平板部材110の下面側に接着剤を介して接合する。また、IC140と配線パターン114との間、およびIC140と圧電振動片120の下面側の接続電極124bとの間を、ワイヤボンディングにより電気的に接続する。このように、同一の平板部材に圧電振動片およびICを実装することにより、圧電振動片とICとの電気長が短くなって、伝送経路の損失が小さくなる。よって、高周波の圧電振動片を検体溶液中で安定して発振させることが可能となり、質量測定用圧電振動子を高感度化することができる。
【0045】
さらに、圧電振動片120の下面に第1温度調節手段131を装着する。第1温度調節手段131の具体的な構成および圧電振動片120への装着方法は、第1実施形態と同様である。また、圧電振動片120の上面における励振電極122aの側方に、温度検出器130を装着する。なお、温度検出器130の具体的な構成については、第1実施形態と同様である。そして、圧電振動片120の上面における励振電極22aの表面に感応膜を塗布する。
【0046】
一方、平板部材110の下面に筐体150を設ける。筐体150はプラスチック材料等によって構成し、平板部材110の下面全体を被覆できる大きさに形成する。なお、IC140から周波数カウンタ5(図3参照)への配線は、ビニルチューブ152等で被覆する。この筐体150により、圧電振動片120の上下面に形成した電極相互の短絡を防止することが可能となり、質量測定用圧電振動子103を検体溶液に浸漬して使用することができる。
【0047】
次に、第2実施形態に係る質量測定用圧電振動子の使用方法について説明する。
質量測定を行う前に、圧電振動片および検体溶液を所定の温度に保持する。そのため、図3に示す温度制御部60を動作させる。なお温度制御部60には、感応膜と特定物質との結合に適した所定の温度を、設定温度としてあらかじめ入力しておく。温度制御部60は、温度検出器30による検出温度と前記設定温度とを比較して、圧電振動片120の上面の温度を設定温度に保持すべく、図4に示す第1温度調節手段131および第2温度調節手段132を同時に駆動する。具体的な制御の方法は、第1実施形態と同様である。なお、質量測定中も温度制御部60による温度制御を継続する。
【0048】
上述したように、第2実施形態では、圧電振動片の上面に第2温度調節手段を装着した構成とした。温度調節を行うべき圧電振動片の上面に第2温度調節手段を装着したので、温度調節を迅速に行うことができる。これにより、質量測定の初期段階および質量測定中において、測定精度を向上させることができる。
【0049】
なお、上述した各実施形態では、本発明に係る質量測定装置を検体溶液中の特定物質の質量を検出する装置として使用する方法について説明したが、本発明に係る質量測定装置は、例えば、においセンサや水分センサ、メッキ膜厚モニタ、イオンセンサ、粘度/密度計などとして使用することも可能である。まず、においセンサとして使用する場合には、におい物質を選択的に吸着する感応膜を励振電極の表面に塗布すればよい。また、水分センサとして使用する場合には吸水膜を塗布すればよい(特開平7−209165号公報参照)。
【0050】
一方、メッキ膜厚モニタとして使用する場合には、メッキ対象物とともに質量測定用圧電振動子をメッキ液中に浸漬する。この場合、励振電極の表面に付着したメッキ膜厚の増加とともに、圧電振動片の共振周波数が低下する。したがって、メッキ対象物のメッキ膜厚を検知することができる。また、イオンセンサとして使用する場合には、感応膜としてイオン吸着物質を塗布すればよい。そして、感応膜にイオンを吸着させて圧電振動片の周波数変化量を測定することにより、検体溶液中のイオンの定量分析を行うことができる。
【0051】
一方、本発明に係る質量測定用圧電振動子ないし質量装置により、質量以外の微少物理量を測定することも可能である。以下に、本発明に係る質量測定用圧電振動子ないし質量測定装置を、粘度/密度計として使用する場合の測定原理を説明する。ATカット圧電振動子は、その表面に沿って厚み滑り振動する。このATカット圧電振動子を液体中に浸漬して発振させると、液体との間にせん断応力を生じる。そこで、ニュートンの粘性の式と水晶振動子の振動の式とから、液体の粘性による周波数変化量を表す次式が導かれる。
【数2】
ただし、dfは圧電振動片の共振周波数の変化量、f0は圧電振動片の共振周波数の初期値、ηは液体の粘度、ρLは液体の密度、μは圧電材料の弾性率である。上式において、液体の粘度ηまたは液体の密度ρLのいずれか一方を一定とすれば、いずれか他方と共振周波数の変化量とが一対一に対応する。したがって、共振周波数の変化量を測定することにより、液体の粘度変化または液体の密度変化を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係る質量測定用圧電振動子の説明図である。
【図2】ペルチェ素子の基本的構成の説明図である。
【図3】第1実施形態に係る質量測定装置の説明図である。
【図4】第2実施形態に係る質量測定用圧電振動子の説明図である。
【図5】従来の質量測定用圧電振動子の説明図である。
【図6】従来の質量測定装置の説明図である。
【符号の説明】
3………質量測定用圧電振動子、20………圧電振動片、22a,22b………励振電極、24a,24b………接続電極、26………配線パターン、30………温度検出器、31………第1温度調節手段、39………絶縁伝熱板、50………筐体。
Claims (6)
- 圧電振動片における一方面側の励振電極の表面に感応膜を塗布し、前記一方面側の励振電極に検体を接触させて、前記検体中の特定物質の質量測定を行う質量測定用圧電振動子であって、
前記圧電振動片における一方面側の表面に装着した温度検出器と、
前記圧電振動片の表面に装着した温度調節手段と、
を有することを特徴とする質量測定用圧電振動子。 - 請求項1に記載の質量測定用圧電振動子において、
前記温度調節手段を、前記圧電振動片における一方面側の表面に装着したことを特徴とする質量測定用圧電振動子。 - 請求項1または2に記載の質量測定用圧電振動子において、
前記圧電振動片は、逆メサ型圧電振動片であって、
前記圧電振動片における周縁の厚肉部に、前記温度調節手段を装着したことを特徴とする質量測定用圧電振動子。 - 請求項1ないし3のいずれかに記載の質量測定用圧電振動子において、
前記温度調節手段は、ペルチェ素子により構成したことを特徴とする質量測定用圧電振動子。 - 請求項1ないし4のいずれかに記載の質量測定用圧電振動子と、
前記温度検出器による検出温度とあらかじめ入力された設定温度とを比較して、前記圧電振動片における一方面側の表面温度を前記設定温度に保持すべく前記温度調節手段を駆動する温度制御部と、
を有することを特徴とする質量測定装置。 - 圧電振動片における一方面側の励振電極の表面に感応膜を塗布し、前記一方面側の励振電極に検体を接触させて、前記検体中の特定物質の質量測定を行う方法であって、
前記圧電振動片における一方面側の表面温度を検出し、
前記検出温度と、あらかじめ入力された設定温度とを比較して、
前記圧電振動片における一方面側の表面温度を前記設定温度に保持すべく、前記圧電振動片の温度調節を行うことを特徴とする質量測定方法。
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