JP2004245120A - 内燃機関の始動制御システム - Google Patents

内燃機関の始動制御システム Download PDF

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Abstract

【課題】内燃機関始動時の騒音と窒素酸化物の排出を大幅に低減することができるようにした内燃機関の始動制御システムを提供する。
【解決手段】内燃機関の停止と始動を自動的に行う機関制御手段と、気筒内に燃料を噴射する燃料噴射手段とを備え、機関制御手段は、燃焼ガスの一部を気筒内に残留させるとともに気筒内に所定量の新気を導入した状態で、燃料噴射を停止する気筒内燃焼済みガス保存モードと、内燃機関の再始動時に、燃焼済みガスが保存された気筒内に燃料を噴射し、燃焼済みガス雰囲気中で着火させる始動モードとを備える。
内燃機関を再始動させるとき、燃料噴射手段から気筒内に燃料が噴射され、この初回の燃焼は、燃焼済みガスと新気との混合ガス中で行われるため、始動時の騒音と、発生する窒素酸化物(NOx)が減少する。
【選択図】図14

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の始動制御システムに関し、更に詳細には内燃機関の始動と停止を自動的に行う形式のものに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の燃費改善方法については種々のものが提案されているが、エンジンを使用しない車両の停車時にエンジンを停止させるいわゆるエコノミーランニングシステムが公知である。
【0003】
これは、特にゴーストップの回数が多い都市部において、信号待ちや渋滞時に自動的にエンジンを停止させ、車両の発進時には、アクセルを踏むなどの簡単な操作によってエンジンを再始動させるような仕組みになっている。このシステムにより燃費の改善はもとより、騒音や排気ガスの低減にも寄与するとされている。
【0004】
しかし、エンジンを停止させておける時間がある程度長い場合には大きな効果が期待できるものの、エンジンの頻繁な停止と再始動を行う実走行においては、さほどの効果が期待できない場合もある。
【0005】
その理由は、エンジンの始動時にはアイドリング時よりも濃い、すなわちリッチな空燃比の混合ガスを燃焼させることになるとともに、始動直後はアイドリングよりも高い回転数となるため、エンジン騒音が大きくなることは避けられないからである。しかも、始動時は燃焼条件が悪いため窒素酸化物(NOx)の時間当たりの発生量がアイドリング時のそれ以上に多くなる。
【0006】
一方、大きな電力を消費するスターターモーターを頻繁に使用することは、電力収支の悪化を招くこととなる。
【0007】
そこで、後者の問題であるエンジン始動を容易にしたものとして特許文献1に示す筒内噴射型内燃機関の始動装置がある。これはエンジン自体に自己始動性を持たせ、スターターモーターを補助的に使用するというものである。
【0008】
その原理は、エンジンの停止時にクランク角センサとカム角センサからの信号に基づき膨張行程にある気筒を検出し、その気筒内に燃料噴射を行うとともに点火栓に通電し、気筒内燃焼を起こしてエンジンを始動するようにしたものである。なお、自己始動が不完全であればスターターモータを補助的に用いることで始動が完全に行えるようにするフェールセーフ機能を有している。
【0009】
【特許文献1】
特開2002−4985号公報
【特許文献2】
特開2001−221080号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記の従来の装置では、スターターモータの負担を軽減することは可能であるが、始動時の騒音発生と窒素酸化物(NOx)の排出について依然として改善されていない。
【0011】
本発明は、かかる従来の問題点を解決するためになされたもので、内燃機関始動時の騒音と窒素酸化物の排出とを低減できる内燃機関の始動制御システムを提供することを技術的課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の内燃機関の始動制御システムは、前述した技術的課題を解決するために、機関停止時に気筒内に燃焼ガスが残留した状態とし、機関の始動時には気筒内の新気と残留ガスとが混ざり合ったガス中に燃料噴射をして着火し、機関を始動させるものである。この場合、例えば、吸排気バルブ開閉時期または吸排気バルブのリフト量を調整することよって、気筒内に燃焼ガスを残留させることができる。
【0013】
本発明は、次のように構成されている。
【0014】
すなわち、運転状態に基づいて内燃機関の停止と始動を自動的に行う機関制御手段と、気筒内に燃料を噴射する燃料噴射手段と、を備え、
前記機関制御手段は、機関の停止時に、燃焼ガスの一部を気筒内に残留させるとともに、気筒内に所定量の新気を導入した状態で燃料噴射を停止する気筒内燃焼済みガス保存モードと、機関の再始動時に、燃焼済みガスが保存された気筒内に燃料を噴射して燃焼済みガス雰囲気中で着火させる始動モードと、を有していることを特徴とする。
【0015】
前記機関制御手段は、燃料噴射手段の制御と吸排気バルブの動作タイミングなどの制御を行うものであり、マイクロコンピュータと制御プログラムを含む構成となっている。しがって、気筒内燃焼済みガス保存モード、及び始動モードは制御プログラムによって内燃機関を制御することにより実行される。
【0016】
前記機関制御手段の具体的な構成としては、内燃機関の吸排気バルブの動作タイミング及び動作量を任意に制御できるバルブ制御手段を含み、このバルブ制御手段は気筒内燃焼済みガス保存モードでは、機関の排気タイミングにおける排気バルブの限定的解放と、吸気タイミングでは吸気バルブの解放を行い、燃焼済みガスと新気とを混合した状態で吸排気バルブを閉鎖するようにする。
【0017】
そして、内燃機関の再始動時において燃焼ガスが保存された気筒内に燃料を噴射する始動モードが起動し、燃焼済みガス雰囲気中で着火される。この後、通常の吸排気バルブの動作タイミングに移行するような構成とすることができる。
【0018】
前記バルブ制御手段としては、可変バルブタイミング機構を例示できる。この可変バルブタイミング機構は、機械式、油圧式、電子制御式などあらゆる方式が採用できるが、特に、励磁電流が印加された際に発生する電磁力を利用して吸気弁およびまたは排気弁を開閉駆動する電磁駆動式動弁機構が有用である。
【0019】
本発明では吸気バルブの制御範囲に大幅な自由度が与えられており、通常的な内燃機関に用いられる制御範囲を越えて、内燃機関を停止させまたは始動させる専用のバルブ制御モードが設定されている。
【0020】
すなわち、一般的な内燃機関では排気行程において排気バルブを大きく開き、低い抵抗で排気ガスを排出するよう設計され、その基本動作は内燃機関の停止時や始動時においても変わることはない。
【0021】
本発明における気筒内燃焼済みガス保存モードでは、排気バルブのリフト量を小さくしたり開時間を短くすることで、意図的に排気ガスを気筒内に残留させるものである。そして、吸気バルブから新気を吸入した状態で内燃機関を停止させる。内燃機関を始動させるときには、燃料噴射手段から気筒内に燃料を噴射し、混合気に着火をする。
【0022】
この場合、初回の燃焼に着目すると、燃焼は燃焼済みガスと新気との混合ガス中で行われることとなる。このため、通常の新気に燃料を噴射した場合と比較して燃焼の爆発力は弱く静かに始動させることが可能となる。同時に、燃焼済みガスが存在するため、燃焼温度を低く抑えることができる。このため窒素酸化物(NOx)の排出量を、一般的な始動方法に比較して大幅に低減させることができる。この原理は、公知の排気再循環(Exhaust Gas Recirculation、以下EGR)装置と同様である。EGRとは、内燃機関から排出された排気の一部を吸気系へ再循環させるものであり、機関の燃焼温度を低下させてNOxの発生量を低減させるものである。このようなEGR装置では内燃機関の運転状態によってEGRの実行及びEGR量を決定するが、本発明においても同様に、残留させるガス量は内燃機関の形式、周囲温度などによって適宜設定する。
【0023】
具体的には、気筒内燃焼ガス保存モードにおいて、排気タイミングにおける排気バルブのリフト量の調整及び開時間の短縮の少なくとも一方の制御を行うことで、気筒内燃焼済みガスを気筒内に任意の濃度で残留させることが可能である。
【0024】
本発明は、内燃機関の始動時における騒音と窒素酸化物(NOx)の排出とを抑えることができるため、内燃機関のみを駆動源とする車両の他、内燃機関とモーター動力とを併用したハイブリッド車のように内燃機関の停止と始動を頻繁に行うシステムにおいて特に有用である。
【0025】
また、車両の自動始動・停止を行うエコノミーランニングシステムに適用すれば、再始動時の騒音の低減や窒素酸化物(NOx)の排出の抑制により、このようなシステムを有効に活用することが可能となる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の内燃機関の始動制御システムを図1から図14に示される実施形態について更に詳細に説明する。
【0027】
図1は、4気筒の過給型ディーゼル機関に適用したシステムの概要を示し、図2は、その気筒内を構造を示している。
【0028】
内燃機関1は、4つの気筒2を有する水冷式の4サイクル・ディーゼル機関である。この内燃機関1は、各気筒3の燃焼室に直接燃料を噴射する燃料噴射弁4を備えている。各燃料噴射弁4は、燃料を所定圧まで蓄圧する蓄圧室(コモンレール)4bと接続されている。
【0029】
前記コモンレール4bは、燃料供給管22を介して燃料ポンプ4aと連通している。この燃料ポンプ4aは、内燃機関1の出力軸(クランクシャフト)の回転トルクを駆動源として作動するポンプであり、この燃料ポンプ4aの入力軸に取り付けられた図示しないポンププーリが内燃機関1の出力軸(クランクシャフト)に取り付けられたクランクプーリと連結されている。
【0030】
このように構成された燃料噴射系では、クランクシャフトの回転トルクが燃料ポンプ4aの入力軸へ伝達されると、燃料ポンプ4aは、クランクシャフトからこの燃料ポンプ4aの入力軸へ伝達された回転トルクに応じた圧力で燃料を吐出する。
【0031】
前記燃料ポンプ4aから吐出された燃料は、燃料供給管22を介してコモンレール4bへ供給され、コモンレール4bにて所定圧まで蓄圧されて各気筒3の燃料噴射弁4へ分配される。そして、燃料噴射弁4に駆動電流が印加されると、燃料噴射弁4が開弁し、その結果、燃料噴射弁4から気筒3内へ燃料が噴射される。
【0032】
次に、内燃機関1には、吸気枝管23が接続されており、吸気枝管23の各枝管は、各気筒3の燃焼室と吸気ポート24を介して連通している。
【0033】
前記吸気枝管23は吸気管25に接続されている。吸気管25には、この吸気管25内を流通する吸気の質量に対応した電気信号を出力するエアフローメータ26が取り付けられている。
【0034】
前記エアフローメータ26と前記吸気絞り弁13との間に位置する吸気管25には、排気のエネルギを駆動源として作動する遠心過給機(ターボチャージャ)13のコンプレッサハウジング13aが設けられている。
【0035】
前記吸気管25は、インタークーラー11を介して過給機13に接続されている。インタークーラー11は過給機13によって加熱された吸気を冷却して充填率を向上させるためのものである。なお、インタークーラー11の下流には絞り弁12が設けられている。
【0036】
このように構成された吸気系では、吸気は、吸気管25を介してコンプレッサハウジング13aに流入する。
【0037】
コンプレッサハウジング13aに流入した吸気は、このコンプレッサハウジング13aに内装されたコンプレッサホイールの回転によって圧縮される。前記コンプレッサハウジング13a内で圧縮された吸気は、必要に応じて吸気絞り弁12によって流量を調節されて吸気枝管23に流入する。吸気枝管23に流入した吸気は、各枝管を介して各気筒3の燃焼室へ分配され、各気筒3の燃料噴射弁4から噴射された燃料を着火源として燃焼される。
【0038】
一方、内燃機関1には、排気枝管27が接続され、排気枝管27の各枝管が排気ポート28を介して各気筒2の燃焼室と連通している。
【0039】
前記排気枝管27は、前記遠心過給機13のタービンハウジング13bと接続されている。前記タービンハウジング13bは、排気管29と接続され、この排気管29は、下流にて大気へと通じている。
【0040】
前記排気枝管27と吸気枝管23とは、排気枝管27内を流通する排気の一部を吸気枝管23へ再循環させる排気再循環通路(以下、EGR通路とする。)15を介して連通されている。このEGR通路15の途中には、電磁弁などで構成され、印加電力の大きさに応じて前記EGR通路15内を流通する排気(以下、EGRガスとする。)の流量を変更する流量調整弁(以下、EGR弁とする。)16が設けられている。
【0041】
前記EGR通路15の途中でEGR弁16より上流には、このEGR通路15内を流通するEGRガスを冷却するEGRクーラ11が設けられている。前記EGRクーラ11には、冷却水通路(図示省略)が設けられ内燃機関1を冷却するための冷却水の一部が循環する。
【0042】
このように構成された排気再循環機構では、EGR弁16が開弁されると、EGR通路15が導通状態となり、排気枝管27内を流通する排気の一部が前記EGR通路15へ流入し、EGRクーラ11を経て吸気枝管23へ導かれる。
【0043】
その際、EGRクーラ11では、EGR通路15内を流通するEGRガスと内燃機関1の冷却水との間で熱交換が行われ、EGRガスが冷却される。
【0044】
EGR通路15を介して排気枝管27から吸気枝管23へ還流されたEGRガスは、吸気枝管23の上流から流れてきた新気と混ざり合いつつ各気筒3の燃焼室へ導かれる。
【0045】
また、前記排気管29の途中には、吸蔵還元型NOx触媒18が設けられている。このNOx触媒18には、触媒温度を計測する温度センサ14が取り付けられている。
【0046】
一方、前記気筒3内には、ピストン8が内装されているとともに、気筒内に形成される燃焼室を開閉する吸気バルブ5と排気バルブ6とが、シリンダヘッドにそれぞれ設けられている。吸気バルブ5はシリンダヘッドから延出された吸気ポート24に設けられ、任意のタイミングで開閉して新気を気筒3内に導入することができるようになっている。
【0047】
前記排気バルブ6は、シリンダヘッドから延出された排気ポート28に設けられ、任意のタイミングで燃焼済みガスを排気ポート28から排気枝管27へ排出することができるように構成されている。
【0048】
シリンダヘッドには、励磁電流が印加されたときに発生する電磁力を利用して前記吸排気弁5、6を進退駆動する電磁駆動機構9、10(以下、電磁駆動機構と称する)が設けられている。各電磁駆動機構9、10には、これらの電磁駆動機構に励磁電流を印加するための駆動回路(図示せず)が電気的に接続されている。
【0049】
電磁駆動機構9、10のソレノイドには電磁コイル10aと磁性プレート10bが備えられ、電磁コイル10aに通電することで常時は閉状態にあるソレノイドが開くように構成されている。
【0050】
前記ソレノイド9、10には、バルブタイミングやリフト量を調整するためのバルブ制御手段7(図1)が接続されている。このバルブ制御手段7は電子制御ユニット(ECU)20で制御され、これらバルブ制御手段7と電子制御ユニット(ECU)20で機関制御手段2を構成している。また、電子制御ユニット20にはアクセル開度センサ21の信号が入力されており、内燃機関の再始動時期を検出することができるようになっている。
【0051】
本発明のシステムの動作について、図3から図14にしたがって説明する。
【0052】
図4はバルブタイミングを示しており、横軸はクランクシャフト角度、縦軸はバルブリフト量を夫々示す。なお、図面上下にあるグラフのうち上側(A)は定常走行時のバルブタイミングを示し、下側(B)のグラフの実線が内燃機関の自動停止始動時のものとなっている。このバルブの制御は前記バルブ制御手段7により定常走行時と内燃機関の自動停止始動時とで異なった制御がなされる。図4中、BDCはピストンの下死点、TDCはピストンの上死点を示している。そして排気行程が始まるときに内燃機関1が停止した状況を示している。
【0053】
まず、排気行程が開始されると、通常であれば(A)に示すように排気バルブ5が完全に開き上死点付近で吸気バルブ6とオーバーラップしながら閉じることとなるが、内燃機関1が停止モードに入っていると(B)に示すように下死点から38度の時点で閉じるように設定されている。なお、閉じるタイミングは、図示の他の実線で示すもの以外に、2点鎖線で示すように20度で閉じるようにしてもよい。このタイミングは残留させるEGRガス量によって任意に設定できるようになっている。
【0054】
また、燃料噴射も内燃機関1が停止モードに入った時点で停止される。
この動作を図5から図13に示すバルブ開閉動作とともに説明する。
【0055】
図5は定常走行中(図3における通常運転モード30)の燃料噴射行程を示し、図6に示すような爆発行程に移行する。ここで内燃機関1が停止モードに入ると(図3における機関停止モード31)、排気バルブ6のリフト量が少なくなるとともに、その開時間が短くなる。したがって、燃焼済みガスは図7に示すように完全には排出されなくなる。
【0056】
続いて、図8に示す吸気行程では吸気バルブ5が開き新気が気筒3内に導入される。ここで、吸排気バルブ5、6は、図9に示すように両方共閉じられ、やがて内燃機関1は停止する。この状態が図3における気筒内燃焼済みガス保存モード32となる。
【0057】
そして、次回の内燃機関始動時(図3における始動モード33)には、図10に示すように、圧縮行程において燃料噴射弁4が作動し、気筒3内に燃料が噴射される。
【0058】
次に、図11に示すように、噴射された燃料に着火して爆発する。このとき気筒3内では保存されている燃焼済みガスと燃料との混合気が爆発するため、通常のように、新気に燃焼を噴射した場合と比較して燃焼の爆発力は弱く、内燃機関1は静かに始動することとなる(図3における燃焼済みガス雰囲気中で始動34)。さらに、燃焼済みガスが存在することから燃焼温度が抑制されるので、窒素酸化物(NOx)の排出量を、一般的な始動方法に比較して大幅に低減することができる。
【0059】
続いて、燃焼済みガスは、図12に示すように完全に排気され、図13に示すように新気が導入される通常運転モード30に移行する。
【0060】
以下、動作の一例を図14のフローチャートで説明する。
【0061】
先ず、通常走行時において、ステップS101のエコノミーランニング要求がなされる。このとき再始動時の振動を発生させないために、吸気量を制限する停止準備処理を行う。その設定時間から各気筒の最終燃料噴射時期が予測可能となる。
【0062】
続いて各気筒3の最終の燃料噴射時に吸気バルブを早閉じするステップS102に移行する。
【0063】
次に、ステップS103において吸排気バルブ5、6を共に閉じる。そして運転者から発進の要求があった場合(ステップS104)、初回のサイクルのみ吸気バルブ6を開かず始動が行われる(ステップS105)。
【0064】
再始動後は、通常のバルブ動作と燃料噴射動作が行われ(ステップS106)、始動モードは解除される。
【0065】
このようにして、機関の始動時における騒音と窒素酸化物(NOx)排出の抑制が達成され、その後は、通常運転に移行するのでドライバビリティを損なうことがなく所期の目的が達成できる。
(その他の実施の形態)
なお、ステップS105において、若干の吸気が可能なように制御することは、トータルの燃焼ガス(EGR量)と新気を所定量に維持できるのであれば問題はなく、必ずしも始動時の吸気を停止する構成を採る必要はない。
【0066】
上記の実施の形態は、4気筒の内燃機関の例について説明したが、本発明は、気筒数に制限されるものではなく、2気筒、3気筒、6気筒または8気筒等の内燃機関に広く適用することが可能である。また、多気筒である場合は、一部の気筒について、燃焼ガスを残留させ、新気と混合する上記の始動制御を実施してもよい。
【0067】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、燃焼ガスの一部を気筒内に残留させるとともに気筒内に所定量の新気を導入した状態で、燃料噴射を停止して気筒内燃焼済みガスを保存し、内燃機関の再始動時に、燃焼済みガスが保存された気筒内に燃料を噴射して燃焼済みガス雰囲気中で着火させるようにしたので、内燃機関始動時の騒音と窒素酸化物の排出とを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の始動制御システムを備えた内燃機関のブロック図である。
【図2】始動制御システムを備えた内燃機関の気筒部分の構造を示す断面図である。
【図3】始動制御システムの原理的な動作を示すフローチャートである。
【図4】始動制御システムのバルブタイミングと定常走行時のバルブタイミングと比較して記述したタイムチャート図である。
【図5】始動制御システムを備えた内燃機関の動作を示す図であり、燃料噴射状態を示す。
【図6】その爆発行程を示す図である。
【図7】ぞの排気行程を示す図である。
【図8】その吸気行程を示す図である。
【図9】その吸気行程中に吸排気弁が閉じられた状態を示す図である。
【図10】その圧縮行程で燃料噴射した状態を示す図である。
【図11】その再始動時の爆発行程を示す図である。
【図12】その排気行程を示す図である。
【図13】通常運転状態に移行した後の吸気行程を示す図である。
【図14】本発明の始動制御システムによる制御のフローチャート図である。
【符号の説明】
1 内燃機関
2 機関制御手段
3 気筒
4 燃料噴射手段
5 吸気バルブ
6 排気バルブ
7 バルブ制御手段
32 気筒内燃焼済みガス保存モード
33 始動モード

Claims (3)

  1. 運転状態に基づいて内燃機関の停止と始動を自動的に行う機関制御手段と、気筒内に燃料を噴射する燃料噴射手段と、を備え、
    前記機関制御手段は、機関の停止時に、燃焼ガスの一部を気筒内に残留させるとともに、気筒内に所定量の新気を導入した状態で燃料噴射を停止する気筒内燃焼済みガス保存モードと、機関の再始動時に、燃焼済みガスが保存された気筒内に燃料を噴射して燃焼済みガス雰囲気中で着火させる始動モードと、を有していることを特徴とする内燃機関の始動制御システム。
  2. 前記機関制御手段は、内燃機関に設けた吸排気バルブの動作タイミング及び動作量を任意に制御できるバルブ制御手段を含み、このバルブ制御手段は、気筒内燃焼済みガス保存モードでは、機関の排気タイミングにおける排気バルブの限定的解放と、吸気タイミングにおける吸気バルブの解放とを行い、燃焼済みガスと新気とを混合した状態で吸排気バルブを閉鎖し、機関の再始動時に燃焼ガスが保存された気筒内に燃料を噴射して燃焼済みガス雰囲気中で着火させた後、通常の吸排気バルブの動作タイミングに移行することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の始動制御システム。
  3. 前記バルブ制御手段は、気筒内燃焼ガス保存モードでは、排気タイミングにおける排気バルブのリフト量の調整または開状態の期間短縮の少なくとも一方の制御を行うことで、気筒内燃焼済みガスを気筒内に残留させることを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の始動制御システム。
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