JP2004244413A - 抗腫瘍剤、健康食品及び味噌のエタノール抽出物 - Google Patents
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Abstract
【課題】 味噌の抽出物を有効成分とする抗腫瘍剤及び健康食品を提供すること。
【解決手段】 味噌のエタノール抽出物及び可溶化剤を含有する抗腫瘍剤及び健康食品を提供する。又、炭素数8〜26の不飽和脂肪酸及び/又はその低級アルキルエステル及び可溶化剤であるリン脂質を含有する抗腫瘍剤を提供する。又、味噌の水抽出残渣のエタノール抽出物であって、2900cm-1付近、1750cm-1付近、1160cm-1付近に特徴的な赤外線吸収スペクトルを有し、癌細胞増殖抑制効果を示す味噌のエタノール抽出物を提供する。
【選択図】 図2
【解決手段】 味噌のエタノール抽出物及び可溶化剤を含有する抗腫瘍剤及び健康食品を提供する。又、炭素数8〜26の不飽和脂肪酸及び/又はその低級アルキルエステル及び可溶化剤であるリン脂質を含有する抗腫瘍剤を提供する。又、味噌の水抽出残渣のエタノール抽出物であって、2900cm-1付近、1750cm-1付近、1160cm-1付近に特徴的な赤外線吸収スペクトルを有し、癌細胞増殖抑制効果を示す味噌のエタノール抽出物を提供する。
【選択図】 図2
Description
本発明は、味噌のエタノール抽出物を有効成分とする、制癌剤として有用な抗腫瘍剤、癌予防健康食品、および癌の予防または治療に効果のある味噌のエタノール抽出物に関する。
食生活の欧米化に伴う偏食やカロリーの過剰摂取は、「がん」を引き起こす原因であるとされている。癌による死亡率は年間30万人と病気死亡原因の第一位を座している。このような癌細胞による死亡率を低減するには、従来に無い癌の予防および治療薬が望まれている。
例えば、このような画期的な癌の治療薬としては、リン脂質と界面活性剤と抗癌剤とを含む、癌細胞の増殖抑制に効果のあるリポソームが知られている(例えば、特許文献1参照)、また、リン脂質、ミセル系界面活性剤及び脂溶性抗癌剤の3成分を含有してなる脳腫瘍治療用ハイリッド型リポソーム製剤(例えば、特許文献2参照)や、リン脂質、非糖ミセル系界面活性剤及び糖ミセル系界面活性剤の3成分よりなる癌治療用ハイブリッド型リポソーム(例えば、特許文献3参照)なども知られ、効果を上げている。
例えば、このような画期的な癌の治療薬としては、リン脂質と界面活性剤と抗癌剤とを含む、癌細胞の増殖抑制に効果のあるリポソームが知られている(例えば、特許文献1参照)、また、リン脂質、ミセル系界面活性剤及び脂溶性抗癌剤の3成分を含有してなる脳腫瘍治療用ハイリッド型リポソーム製剤(例えば、特許文献2参照)や、リン脂質、非糖ミセル系界面活性剤及び糖ミセル系界面活性剤の3成分よりなる癌治療用ハイブリッド型リポソーム(例えば、特許文献3参照)なども知られ、効果を上げている。
ところで、国立がんセンター研究所・平山雄疫学部長(1981年当時)による調査結果によると、味噌汁の摂取頻度によって胃がん標準死亡率に差があることが発表されており、味噌汁をまったく摂取しない人に比べ、味噌汁を毎日摂取する人の胃がんによる死亡率が低く抑えられていることが明らかとされた(例えば、非特許文献1参照)。このため、味噌そのものに、癌を抑制する働きがあるとする考えが一般に広まった。例えば、このような知見を踏まえて、九州に野生する熊笹のエキスを焼酎により抽出し、この熊笹エキスに麹味噌、砂糖、味醂を混ぜて味噌を調合し、この味噌に魚や野菜等を漬け、制癌効果を期待した漬物を開発した例がある(例えば、特許文献4参照)。
その一方で、従来の味噌の機能を高め、より積極的に味噌に癌予防や治療の能力を持たせようとする高度な研究も行われている。例えば、癌に対する免疫能を高める目的で、エノキタケを原料としたキノコ味噌の製造方法が知られている(例えば、特許文献5参照)。
また、熊本県工業技術センターの林田、西村らは、抗腫瘍活性の期待される4−ヒドロキシ−5−エチル−2−メチル−3−フラノン(HEMF)を高濃度で産生する酵母、チゴサッカロミセス・ルーキシー株を用いる味噌の製造方法を開発している(例えば、特許文献6参照)。HEMFは、米味噌や日本酒などに含まれることが知られる香気成分である(例えば、非特許文献2参照)。しかし、味噌にはHEMF以外にも種々の成分が存在するため、味噌に存在するとされる制癌成分の本体がHEMFかどうかについては、明確でない。
このような中で、味噌から取り出したエタノール抽出物と、リン脂質やその他の界面活性剤等の可溶化剤とを組み合わせて、癌予防食品や制癌剤として用いることについては、従来全く知られていなかった。
また、熊本県工業技術センターの林田、西村らは、抗腫瘍活性の期待される4−ヒドロキシ−5−エチル−2−メチル−3−フラノン(HEMF)を高濃度で産生する酵母、チゴサッカロミセス・ルーキシー株を用いる味噌の製造方法を開発している(例えば、特許文献6参照)。HEMFは、米味噌や日本酒などに含まれることが知られる香気成分である(例えば、非特許文献2参照)。しかし、味噌にはHEMF以外にも種々の成分が存在するため、味噌に存在するとされる制癌成分の本体がHEMFかどうかについては、明確でない。
このような中で、味噌から取り出したエタノール抽出物と、リン脂質やその他の界面活性剤等の可溶化剤とを組み合わせて、癌予防食品や制癌剤として用いることについては、従来全く知られていなかった。
本発明の第1の目的は、味噌の抽出物を有効成分とする抗腫瘍剤を提供することにある。
本発明の第2の目的は、味噌の抽出物を有効成分とする癌予防効果のある健康食品を提供することにある。
本発明の第3の目的は、腫瘍の予防または治療に効果のある、味噌の抽出物を提供することにある。
本発明の第2の目的は、味噌の抽出物を有効成分とする癌予防効果のある健康食品を提供することにある。
本発明の第3の目的は、腫瘍の予防または治療に効果のある、味噌の抽出物を提供することにある。
発明者らは、味噌のエタノール抽出物が、特に可溶化剤を加えたことにより、効果的に腫瘍細胞に働き、腫瘍細胞の増殖を特異的に抑制することができることを初めて見いだして、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、味噌のエタノール抽出物及び可溶化剤を含有することを特徴とする抗腫瘍剤を提供する。
本発明は、又、味噌のエタノール抽出物及び可溶化剤を含有することを特徴とする健康食品を提供する。
本発明は、又、炭素数8〜26の不飽和脂肪酸及び/又はその低級アルキルエステル及び可溶化剤であるリン脂質を含有することを特徴とする抗腫瘍剤又は健康食品を提供する。
本発明は、又、味噌の水抽出残渣のエタノール抽出物であって、2900cm-1付近、1750cm-1付近、1160cm-1付近に特徴的な赤外線吸収スペクトルを有し、癌細胞増殖抑制効果を示すことを特徴とする、味噌のエタノール抽出物を提供する。
本発明は、又、上記エタノール抽出物及び医薬上許容されている担体及び/又は希釈剤を含有する抗腫瘍剤を提供する。
すなわち、本発明は、味噌のエタノール抽出物及び可溶化剤を含有することを特徴とする抗腫瘍剤を提供する。
本発明は、又、味噌のエタノール抽出物及び可溶化剤を含有することを特徴とする健康食品を提供する。
本発明は、又、炭素数8〜26の不飽和脂肪酸及び/又はその低級アルキルエステル及び可溶化剤であるリン脂質を含有することを特徴とする抗腫瘍剤又は健康食品を提供する。
本発明は、又、味噌の水抽出残渣のエタノール抽出物であって、2900cm-1付近、1750cm-1付近、1160cm-1付近に特徴的な赤外線吸収スペクトルを有し、癌細胞増殖抑制効果を示すことを特徴とする、味噌のエタノール抽出物を提供する。
本発明は、又、上記エタノール抽出物及び医薬上許容されている担体及び/又は希釈剤を含有する抗腫瘍剤を提供する。
本発明の味噌のエタノール抽出物は、可溶化剤によりミセル内部に取りこまれて水性媒体中に可溶化し、がん細胞に対して高い増殖抑制効果を示す。特に通常、水に溶解しない脂溶性成分を含有することでクリアな溶液を調製できる可溶化剤、即ち複合脂質膜を用いることで、味噌から、効果的に腫瘍の予防および治療に有効な成分 (薬)が開発された。
本発明に用いられる味噌のエタノール抽出物は、味噌を原料として用い、エタノールにより成分抽出を行うのであれば、どのような方法により得られてもよい。原料として用いる味噌としては、一般的に、通常、味噌として取り扱われている味噌であるならば、自家製のものであっても、市販のものであっても、どのような味噌であってもよく、例えば米味噌、麦味噌、調合味噌などを好ましく使用することができ、特に好ましくは、米味噌であれば「特選赤だし(商品名、山内本店株式会社)」、麦味噌であれば「まぼろしの味噌とっておき(商品名、山内本店株式会社)」、調合味噌であれば「とっておき米・麦合わせ味噌(商品名、山内本店株式会社)」などを挙げることができる。
味噌のエタノール抽出物を得る方法としては、天然食物などから食品成分を分離して得るときに用いられる、通常よく知られたエタノール抽出法を用いるのであれば、どのような方法により得られてもよく、例えば、本発明の味噌のエタノール抽出物を得る方法としては、味噌を水で抽出し得られた残渣をエタノールで抽出するのがよい。より具体的には、味噌を熱水、例えば、70〜100℃の温度の熱水、に加え、これを遠心分離して得た沈殿物をエタノール抽出して得ることができ、より好ましくは、次に示される(1)〜(4)の工程により行うこともできる。
(1)試料(100g)に約80℃の熱水を加え約10分間撹拌した後、4000rpm×10分の条件下で遠心分離機(KUBOTA 5100)を用いて上澄み液と沈殿物に分離する。
(2)上澄み液と沈殿物をそれぞれ凍結乾燥機(EYELA FREEZE DRYER FDU-830)を用いて乾燥し、水抽出物と水抽出残渣を得る。
(3)水抽出残渣(5g)にエタノールを加え約40℃で4時間温浸した後、吸引ろ過によりろ液と残渣に分離する。
(4)ろ液と残渣からそれぞれ減圧乾燥機(EYELA VACUUM OVEN VOC−300SD)を用いてエタノールを留去し、エタノール抽出物とエタノール抽出残渣を得る。
尚、前記(1)〜(4)の工程に示した、操作条件の詳細については、試料や用いる装置の状態により、適切に変更してもよいことは言うまでもない。また、前記(1)〜(4)の工程は、図1(Fig.1)に示したスキームにより、モデル化して示すこともできる。
(2)上澄み液と沈殿物をそれぞれ凍結乾燥機(EYELA FREEZE DRYER FDU-830)を用いて乾燥し、水抽出物と水抽出残渣を得る。
(3)水抽出残渣(5g)にエタノールを加え約40℃で4時間温浸した後、吸引ろ過によりろ液と残渣に分離する。
(4)ろ液と残渣からそれぞれ減圧乾燥機(EYELA VACUUM OVEN VOC−300SD)を用いてエタノールを留去し、エタノール抽出物とエタノール抽出残渣を得る。
尚、前記(1)〜(4)の工程に示した、操作条件の詳細については、試料や用いる装置の状態により、適切に変更してもよいことは言うまでもない。また、前記(1)〜(4)の工程は、図1(Fig.1)に示したスキームにより、モデル化して示すこともできる。
前記(1)〜(4)の工程では、味噌のエタノール抽出物を得るための前処理として、工程(1)で熱水中で味噌を撹拌、工程(2)で遠心分離後、上澄みを凍結乾燥して水抽出物を得ている。本発明に用いることのできる味噌のエタノール抽出物を得るためには、必ずしもこの工程は必須のものではないが、味噌のエタノール抽出物の純度を高める理由から、好ましく行われる。水抽出物を得るには、特に記すまでもないが、抽出溶媒としてイオン交換水等を用いるのが好ましい。水抽出物は、味噌中の水溶性成分からなる。
前記(3)及び(4)の工程がエタノール抽出の工程であり、使用するエタノールとしては、濃度95重量%以上のものが好ましく、より好ましくは99重量%以上のものであるが、目的に応じて食品や医薬品にも使用できるグレードのエタノールを用いて行うのも好ましい。この工程において、味噌中の脂溶性成分が溶出され、エタノール抽出物として成分抽出がなされる。
このようにして得られる味噌のエタノール抽出物は、IR分析により、2900cm-1付近、1750cm-1付近、1160cm-1付近に特徴的な赤外線吸収スペクトルを有することが観察される。前記IR分析は、赤外線吸収スペクトルを観測するための市販される装置を用いて行い、通常の分析条件により行われればよいが、例えば、赤外分光光度計(日本分光 FT/IR−7000)を用い、neat法を用いて測定でき、これにより油状の試料をKBr板の間に挟んで薄膜をつくり測定することができる。尚、一般的には、2900cm-1付近のピークはC−H伸縮振動であり、1750cm-1はC=O伸縮振動、1160cm-1はC−O伸縮振動のピークであると解釈されている。
このようにして得られる味噌のエタノール抽出物は、IR分析により、2900cm-1付近、1750cm-1付近、1160cm-1付近に特徴的な赤外線吸収スペクトルを有することが観察される。前記IR分析は、赤外線吸収スペクトルを観測するための市販される装置を用いて行い、通常の分析条件により行われればよいが、例えば、赤外分光光度計(日本分光 FT/IR−7000)を用い、neat法を用いて測定でき、これにより油状の試料をKBr板の間に挟んで薄膜をつくり測定することができる。尚、一般的には、2900cm-1付近のピークはC−H伸縮振動であり、1750cm-1はC=O伸縮振動、1160cm-1はC−O伸縮振動のピークであると解釈されている。
また、このようにして得られる味噌のエタノール抽出物は、水不溶性の油状物質であって、可溶化剤を加えて用いることにより癌細胞増殖抑制効果を示す性質を有している。癌細胞増殖抑制効果は、例えば、ヒト肺腺がん(RERF−LC−OK)細胞やヒト胃がん(GT3TKB)細胞などの培養癌細胞を使用して、WST−1 assay法(M.Ishiyama,M.Shiga,K.Sasamota,M.Mizoguchi,P−G.He,Chem.Pharm.Bull,.41,1118(1993).)により、分光光度計により450nmにおけるWST−1 formazanの吸光度を測定する方法などを用いて評価することができる。
本発明では、さらに、味噌のエタノール抽出物中の上記癌細胞増殖抑制効果を示す成分が、炭素数14〜22の不飽和脂肪酸及びその低級アルキルエステルからなる群から選ばれる1種又は2種以上の混合物であることを見出した。ここで、低級アルキルエステルにおけるアルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基があげられ、好ましくは炭素数1〜3、特に好ましくは炭素数2のエチル基である。炭素数14〜22の不飽和脂肪酸としては、特に炭素数18のものがあげられる。これらのうち、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸及びそのエチルエステルの1種又は2種以上の混合物が好ましく、特にオレイン酸及びリノレン酸エチルが好ましい。
本発明で可溶化剤としては、リン脂質(A成分)が好ましく用いられ、場合により追加の(B)成分としてリン脂質以外のその他の界面活性剤をA成分と共に組み合わせて用いることもできる。特に、リン脂質(A成分)を用いると、味噌のエタノール抽出物とともに複合脂質膜が形成されるので好ましい。
前記(A)成分のリン脂質としては、天然リン脂質、高純度リン脂質、またはそれらの誘導体など、一般にリン脂質として知られるものであれば目的に応じて本発明に用いることができる。通常知られるリン脂質とは、グリセリンエステルにおいて、グリセリンとエステルを形成する酸のうち2つが、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の炭素数8〜26、好ましくは炭素数10〜20の飽和高級脂肪酸、またはリノール酸、リノレン酸、オレイン酸、アラキドン酸等の炭素数8〜26、好ましくは炭素数10〜20の不飽和高級脂肪酸であり残りの一つがリン酸を介してコリン、エタノールアミン、セリン、イノシトール等のアルコールが結合されている化合物で、具体的には、例えば、フォスファチジルコリン、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルグリセロール、フォスファチジルセリン、フォスファチジン酸、フォスファチジルイノシトールなどのリン脂質が好ましく用いられる。
前記(A)成分のリン脂質としては、天然リン脂質、高純度リン脂質、またはそれらの誘導体など、一般にリン脂質として知られるものであれば目的に応じて本発明に用いることができる。通常知られるリン脂質とは、グリセリンエステルにおいて、グリセリンとエステルを形成する酸のうち2つが、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の炭素数8〜26、好ましくは炭素数10〜20の飽和高級脂肪酸、またはリノール酸、リノレン酸、オレイン酸、アラキドン酸等の炭素数8〜26、好ましくは炭素数10〜20の不飽和高級脂肪酸であり残りの一つがリン酸を介してコリン、エタノールアミン、セリン、イノシトール等のアルコールが結合されている化合物で、具体的には、例えば、フォスファチジルコリン、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルグリセロール、フォスファチジルセリン、フォスファチジン酸、フォスファチジルイノシトールなどのリン脂質が好ましく用いられる。
前記フォスファチジルコリンとしては、例えば、卵黄レシチン、大豆レシチン、水添卵黄レシチン、水添大豆レシチン、大豆由来フォスファチジルコリン、大豆由来水添フォスファチジルコリン等の天然系フォスファチジルコリン;ジオクタノイルホスファチジルコリン、ジノナノイルホスファチジルコリン、ジデカノイルホスファチジルコリン、ジウンデカノイルホスファチジルコリン、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアリルホスファチジルコリン、ジパルミトオレイルホスファチジルコリン、ジオレイルホスファチジルコリン、ジリノレイルホスファチジルコリン、ジエイコサペンタノイルホスファチジルコリン、ジドコサヘキサノイルホスファチジルコリン等の高純度ジアシルフォスファチジルコリンが好ましく挙げられる。
前記フォスファチジルエタノールアミンとしては、例えば、大豆由来フォスファチジルエタノールアミン、大豆由来水添フォスファチジルエタノールアミン等の天然系フォスファチジルエタノールアミン;ジオクタノイルホスファチジルエタノールアミン、ジノナノイルホスファチジルエタノールアミン、ジデカノイルホスファチジルエタノールアミン、ジウンデカノイルホスファチジルエタノールアミン、ジラウロイルホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジステアリルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトオレイルホスファチジルエタノールアミン、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン、ジリノレイルホスファチジルエタノールアミン、ジエイコサペンタノイルホスファチジルエタノールアミン、ジドコサヘキサノイルホスファチジルエタノールアミン等の高純度ジアシルフォスファチジルコリンが好ましく挙げられる。
前記フォスファチジルグリセロールとしては、例えば、ジオクタノイルホスファチジルグリセロール、ジノナノイルホスファチジルグリセロール、ジデカノイルホスファチジルグリセロール、ジウンデカノイルホスファチジルグリセロール、ジラウロイルホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジステアリルホスファチジルグリセロール、ジパルミトオレイルホスファチジルグリセロール、ジオレイルホスファチジルグリセロール、ジリノレイルホスファチジルグリセロール、ジエイコサペンタノイルホスファチジルグリセロール、ジドコサヘキサノイルホスファチジルグリセロール等の、天然由来もしくは精製して得られたジアシルフォスファチジルグリセロールが好ましく挙げられる。
前記フォスファチジルセリンとしては、例えば、ジオクタノイルホスファチジルセリン、ジノナノイルホスファチジルセリン、ジデカノイルホスファチジルセリン、ジウンデカノイルホスファチジルセリン、ジラウロイルホスファチジルセリン、ジミリストイルホスファチジルセリン、ジパルミトイルホスファチジルセリン、ジステアリルホスファチジルセリン、ジパルミトオレイルホスファチジルセリン、ジオレイルホスファチジルセリン、ジリノレイルホスファチジルセリン、ジエイコサペンタノイルホスファチジルセリン、ジドコサヘキサノイルホスファチジルセリン等の、天然由来もしくは精製して得られたジアシルフォスファチジルセリンが好ましく挙げられる。
前記フォスファチジン酸としては、例えば、ジオクタノイルホスファチジン酸、ジノナノイルホスファチジン酸、ジデカノイルホスファチジン酸、ジウンデカノイルホスファチジン酸、ジラウロイルホスファチジン酸、ジミリストイルホスファチジン酸、ジパルミトイルホスファチジン酸、ジステアリルホスファチジン酸、ジパルミトオレイルホスファチジン酸、ジオレイルホスファチジン酸、ジリノレイルホスファチジン酸、ジエイコサペンタノイルホスファチジン酸、ジドコサヘキサノイルホスファチジン酸等の、天然由来もしくは精製して得られたジアシルフォスファチジン酸が好ましく挙げられる。
前記フォスファチジルイノシトールとしては、例えば、大豆由来フォスファチジルイノシトール、大豆由来水添フォスファチジルイノシトール等の天然系フォスファチジルイノシトール;ジオクタノイルホスファチジルイノシトール、ジノナノイルホスファチジルイノシトール、ジデカノイルホスファチジルイノシトール、ジウンデカノイルホスファチジルイノシトール、ジラウロイルホスファチジルイノシトール、ジミリストイルホスファチジルイノシトール、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール、ジステアリルホスファチジルイノシトール、ジパルミトオレイルホスファチジルイノシトール、ジオレイルホスファチジルイノシトール、ジリノレイルホスファチジルイノシトール、ジエイコサペンタノイルホスファチジルイノシトール、ジドコサヘキサノイルホスファチジルイノシトール等の高純度ジアシルフォスファチジルイノシトールが好ましく挙げられる。
上記リン脂質におけるアシル基としては、炭素数8〜26のものが好ましい。
以上、本発明に用いられるリン脂質としては、前記したリン脂質以外のリン脂質も広く用いることができ、医薬品として用いるなどの特殊な場合によっては、例えば、前記したリン脂質を原料として、酵素処理の上、アシル基組成を操作したような、合成系もしくは、半合成系のリン脂質などを本発明のリン脂質として利用することも一向にかまわないが、取扱い安さの点からは、アシル基部分の炭素数は約10〜22のものがより好ましい。特に好ましいのは、アシル基の炭素数が12〜18のジアシルホスファチジルコリン及びジアシルホスファチジルグリセロールであり、これらの中でもL−α−ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)またはL−α−ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)である。これらの中では、下記に示す式(1)
以上、本発明に用いられるリン脂質としては、前記したリン脂質以外のリン脂質も広く用いることができ、医薬品として用いるなどの特殊な場合によっては、例えば、前記したリン脂質を原料として、酵素処理の上、アシル基組成を操作したような、合成系もしくは、半合成系のリン脂質などを本発明のリン脂質として利用することも一向にかまわないが、取扱い安さの点からは、アシル基部分の炭素数は約10〜22のものがより好ましい。特に好ましいのは、アシル基の炭素数が12〜18のジアシルホスファチジルコリン及びジアシルホスファチジルグリセロールであり、これらの中でもL−α−ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)またはL−α−ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)である。これらの中では、下記に示す式(1)
で表される、L−α−ジミリストイルホスファチジルコリン(以下、DMPCと略すこともある)が、分散性能に優れているため、リン脂質として最も好ましく用いられる。
本発明では、前記(B)成分としてリン脂質以外のその他の界面活性剤を用いる。
本発明で用いられるその他の界面活性剤としては、たとえばミセル系界面活性剤などが好ましく用いられ、通常知られるミセルを形成しうる界面活性剤であれば、いかなる界面活性剤であっても使用することができるが、好ましくは、生体親和性などの点から、制癌剤に使用する場合には、公知の非イオン性界面活性剤、例えば高級脂肪酸高級アルコールエステル、ソルビタン高級脂肪酸部分エステル、グリセリン高級脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン高級アルキルエーテル等を挙げることができる。これらの中では、ソルビタン高級脂肪酸部分エステル、なかでも低HLBの非イオン性界面活性剤を用いるのが好ましく、下記式(2)
本発明で用いられるその他の界面活性剤としては、たとえばミセル系界面活性剤などが好ましく用いられ、通常知られるミセルを形成しうる界面活性剤であれば、いかなる界面活性剤であっても使用することができるが、好ましくは、生体親和性などの点から、制癌剤に使用する場合には、公知の非イオン性界面活性剤、例えば高級脂肪酸高級アルコールエステル、ソルビタン高級脂肪酸部分エステル、グリセリン高級脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン高級アルキルエーテル等を挙げることができる。これらの中では、ソルビタン高級脂肪酸部分エステル、なかでも低HLBの非イオン性界面活性剤を用いるのが好ましく、下記式(2)
のポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(TWEEN20)やポリオキシエチレンソルビタンモノオレート(TWEEN80)などのポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル(アルキル基の炭素数としては10〜18が好ましい)あるいは重合度が10から30のポリオキシエチレンラウリルアルコールエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル(アルキル基の炭素数としては、10〜18が好ましい)が、HLBが高くO/Wを形成するミセル系界面活性剤であることから、最も好ましく用いることができる。また、健康食品に用いる場合には、食品添加物として一般に使用されている界面活性剤を適宜選択して用いればよい。
本発明では、味噌のエタノール抽出物と可溶化剤の比率は、味噌のエタノール抽出物を可溶化できる任意の割合とすることができるが、0.1/99.9〜10/90(重量比)であるのが好ましく、より好ましくは0.5/99.5〜5/95(重量比)である。又、可溶化剤(A)を単独で用いることができるが、(A)/(B)を99/1〜50/50(重量比)でもちいるのが好ましく、より好ましくは98/2〜70/30(重量比)である。これらの比率は、味噌のエタノール抽出物の代わりに、炭素数8〜26の不飽和脂肪酸及び/又はその低級アルキルエステルを用いる場合も同様である(以下同じ)。
この他、(A)リン脂質と(B)その他の界面活性剤以外の可溶化成分として、本発明の目的を損なわない限りにおいて、公知の物質を添加することは自由に行われて良い。但し、コレステロール、シトステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロールなどのステロール類に関しては、癌細胞の抑制効果を低める場合があるので含まない方が良い。
この他、(A)リン脂質と(B)その他の界面活性剤以外の可溶化成分として、本発明の目的を損なわない限りにおいて、公知の物質を添加することは自由に行われて良い。但し、コレステロール、シトステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロールなどのステロール類に関しては、癌細胞の抑制効果を低める場合があるので含まない方が良い。
本発明の味噌のエタノール抽出物を、単独で又は可溶化剤と共に含有する本件発明の抗腫瘍剤は、さらに、それ自体公知の薬理的に許容される担体、賦形剤、崩壊剤、矯正剤、増量剤、希釈剤、溶解補助剤などと混合し、公知の方法に従って抗腫瘍剤とすることができる。但し、味噌のエタノール抽出物に可溶化剤を加えたものを経口投与する場合、味噌のエタノール抽出物に可溶化剤を加えたものは、抗腫瘍剤全体に対して2重量%以上、好ましくは10重量%となるよう配合するのがよい。
このような抗腫瘍剤は、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、粉末剤、丸剤、溶剤、ドリンク剤、注射剤、点滴剤、座剤などの形態に製剤化することができる。このような製剤は経口的もしくは非経口的に投与することができる。本発明の医薬組成物を疾患の予防・治療等に使用する場合の投与量は、投与対象、投与経路、症状などによっても異なるが、通常、経口的に投与する場合、成人の場合、1日の投与量が50mg/日〜500g/日となるよう、1日1〜3回程度投与するのがよい。これにより、癌に対し、顕著な予防・治療効果が得られる。
また、本発明の味噌のエタノール抽出物に可溶化剤を加えたことを特徴とする健康食品は、それ自体公知の食品的に許容される食材、防腐剤、増粘剤、着色料、酸化防止剤、添加剤、調味料等の素材と混合し、公知の方法に従って健康食品とすることができる。本発明でいう健康食品とは、本発明における癌の予防または治療の効果を持つ味噌のエタノール抽出物に可溶化剤を加えたもの、そのものであっても良いが、好ましくは従来公知の食品または健康食品に、本発明における味噌のエタノール抽出物に可溶化剤を加えたものを配合してなるものである。
但し、味噌のエタノール抽出物に可溶化剤を加えたものを摂取する場合、味噌のエタノール抽出物に可溶化剤を加えたものは、健康食品全体に対して2重量%以上、好ましくは10重量%となるよう配合するのがよい。
但し、味噌のエタノール抽出物に可溶化剤を加えたものを摂取する場合、味噌のエタノール抽出物に可溶化剤を加えたものは、健康食品全体に対して2重量%以上、好ましくは10重量%となるよう配合するのがよい。
このような健康食品は、通常の方法により、例えば錠剤、ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤、顆粒剤、固形剤、散剤、粉末剤、丸剤、溶剤、チュアブル剤、ドリンク剤、ドレッシング類、菓子類などの形態に製造することができる。
また、これらの形態にとらわれることなく、本発明の健康食品は、広く一般の食品形態に加工・配合して提供しても良い。このような健康食品は、例えば、天ぷら、お好み焼き、たこ焼き、焼きイモ、大学イモ、加工肉、おでん、ハンバーガー、肉まん、ギョウザ、ホットドック、サンドイッチ、カレー、ハヤシライス、海苔、漬物、キムチ等の通常の食品はもちろん、お茶、コーヒー、ココア、野菜ジュース、青汁、味噌汁、スープ等の液状飲食品や、本発明における味噌のエタノール抽出物に可溶化剤を加えたものを添加・配合できるものであれば、うどん、焼きそば、おそば、ラーメンなどの麺類や、パン、ビスケット、パスタ、マカロニ、加工米、加工豆、せんべい等の澱粉系食品、あるいはキャンデー、ガム、チョコレート、ケーキ、ショートクリーム、アイスクリーム、和菓子等の甘味菓子類、加工牛乳、ヨーグルト等の乳製品や醤油、ソース、食酢、ラー油、タバスコ、洋風ドレッシング、和風ドレッシング、青じそドレッシング、味噌、ニョクマム、マヨネーズ等の調味料などのいかなる飲食品にも用いることができる。
また、これらの形態にとらわれることなく、本発明の健康食品は、広く一般の食品形態に加工・配合して提供しても良い。このような健康食品は、例えば、天ぷら、お好み焼き、たこ焼き、焼きイモ、大学イモ、加工肉、おでん、ハンバーガー、肉まん、ギョウザ、ホットドック、サンドイッチ、カレー、ハヤシライス、海苔、漬物、キムチ等の通常の食品はもちろん、お茶、コーヒー、ココア、野菜ジュース、青汁、味噌汁、スープ等の液状飲食品や、本発明における味噌のエタノール抽出物に可溶化剤を加えたものを添加・配合できるものであれば、うどん、焼きそば、おそば、ラーメンなどの麺類や、パン、ビスケット、パスタ、マカロニ、加工米、加工豆、せんべい等の澱粉系食品、あるいはキャンデー、ガム、チョコレート、ケーキ、ショートクリーム、アイスクリーム、和菓子等の甘味菓子類、加工牛乳、ヨーグルト等の乳製品や醤油、ソース、食酢、ラー油、タバスコ、洋風ドレッシング、和風ドレッシング、青じそドレッシング、味噌、ニョクマム、マヨネーズ等の調味料などのいかなる飲食品にも用いることができる。
健康食品に用いる場合、味噌のエタノール抽出物に可溶化剤を加えたものは、各食品、飲食品の特性、目的に応じ、適当な製造工程の段階で、適宜配合すればよい。本発明の健康食品を提供する場合、かかる食品、飲食品全体に対して味噌のエタノール抽出物に可溶化剤を加えたものを2重量%以上、好ましくは10重量%以上配合して提供されるのが、癌の予防・治療の点から好ましい。
本発明の健康食品の形態は、これらの態様に限定されず、製造方法も限定されないが、しいて具体例を挙げるとすれば、味噌のエタノール抽出物に可溶化剤を加えたものを5〜30重量部(以下、単に部と略称する)、食用精製魚油を5〜30部、醸造酢5〜25部、果糖ぶどう糖液糖5〜15部、食塩0.5〜5部、砂糖0.2〜3部、キサンタンガム0.1〜2部、グルタミン酸ソーダ0.1〜2部、香辛料0.05〜3部、バランスとして水を20〜50部を原料として加え常法に従って混合しドレッシングとすることができる。また、味噌のエタノール抽出物に可溶化剤を加えたものを5〜150部、カカオマスを20〜60部、カカオバター20〜60部、砂糖70〜110部、牛乳1〜5部、ショートニング3〜20部を原料として加え常法に従ってチョコレートとすることができる。
また、味噌のエタノール抽出物に可溶化剤を加えたものを1〜50部、小麦粉100〜600部、砂糖50〜350部、マーガリン50〜300部、全卵粉20〜100部、バニラエッセンス0.5〜8部、水70〜250部を原料として加え常法に従ってクッキーとすることができる。また味噌のエタノール抽出物に可溶化剤を加えたもの0.1〜8部、ココアパウダー0.5〜8部、砂糖0.5〜8部、脱脂粉乳0.1〜3部、乳化剤0.05〜2部、食塩0.01〜0.5部、バニラフレーバー0.01〜0.5部、処理水70〜150部を原料として加え、常法に従ってココア飲料とすることができる。
また、味噌のエタノール抽出物に可溶化剤を加えたものを1〜50部、小麦粉100〜600部、砂糖50〜350部、マーガリン50〜300部、全卵粉20〜100部、バニラエッセンス0.5〜8部、水70〜250部を原料として加え常法に従ってクッキーとすることができる。また味噌のエタノール抽出物に可溶化剤を加えたもの0.1〜8部、ココアパウダー0.5〜8部、砂糖0.5〜8部、脱脂粉乳0.1〜3部、乳化剤0.05〜2部、食塩0.01〜0.5部、バニラフレーバー0.01〜0.5部、処理水70〜150部を原料として加え、常法に従ってココア飲料とすることができる。
本発明における味噌のエタノール抽出物は、人体に対して無毒性であるから、健康食品としたとき、その摂取量に特に制限はないが、実際に健康食品として摂取する場合には、成人の場合、1日の摂取量が1〜1000mg/kg体重/日となるよう、1日1〜3回程度摂取するのがよい。これにより、癌に対し、顕著な予防・治療効果が得られる。
また、本発明の味噌のエタノール抽出物に可溶化剤を加えたことを特徴とする抗腫瘍剤または健康食品は、水分散化させて提供されてもよい。味噌のエタノール抽出物に可溶化剤を加えたものは、注射剤または点滴剤として非経口的に投与される抗腫瘍剤とするとき、もしくはドリンク剤などの健康食品とするときなど、液体状で提供されるとき、味噌のエタノール抽出物に可溶化剤を加えたものを少なくとも50%以上の水に、なるべく室温以上の温度で適宜処理し均一分散させ、水溶液中で分子集合体を形成せしめることができる。
また、本発明の味噌のエタノール抽出物に可溶化剤を加えたことを特徴とする抗腫瘍剤または健康食品は、水分散化させて提供されてもよい。味噌のエタノール抽出物に可溶化剤を加えたものは、注射剤または点滴剤として非経口的に投与される抗腫瘍剤とするとき、もしくはドリンク剤などの健康食品とするときなど、液体状で提供されるとき、味噌のエタノール抽出物に可溶化剤を加えたものを少なくとも50%以上の水に、なるべく室温以上の温度で適宜処理し均一分散させ、水溶液中で分子集合体を形成せしめることができる。
味噌のエタノール抽出物に可溶化剤を加えたものからなる分子集合体の例としては、エマルジョン、リポソーム、複合脂質膜などが挙げられるが、味噌のエタノール抽出物に可溶化剤を加えたものを水に分散させると、自然にリポソームや複合脂質膜が形成されるなどの点から、リポソームまたは複合脂質膜が最も好ましく挙げられる。このとき味噌のエタノール抽出物に可溶化剤を加えたものを水分散液とするために使用される水性溶媒としては、単なる水を用いても良いし、少量のエタノールなどを含む水性混合溶媒であってもよく、また血漿などであってもよいが、好ましくは局方注射用水や蒸留水、超純水などが用いられる。この時、水性溶媒に公知の生理活性物質や、蛋白質、緩衝物質や各種の塩、血漿、糖などを溶解させ、溶液状としてもよく、例えば生理的食塩水;PBS(−);リン酸緩衝液、炭酸緩衝液、トリス緩衝液、酢酸緩衝液、ブドウ糖液等の緩衝水溶液などの溶液は、味噌のエタノール抽出物に可溶化剤を加えたものを水分散させる為の分散媒体として、好ましく用いることができる。
エマルジョン、複合脂質膜またはリポソーム溶液からなる水分散液は、公知のいかなる方法によって形成してもよい。例えば複合脂質膜またはリポソーム溶液であれば、薄膜法、逆相蒸発法、凍結融解法、エタノール注入法、高圧乳化法、超音波分散法、透析法、エクストルージョン法、ボルテックスミキサー法、界面活性剤除去法、プレベシクル法、フレンチプレス法、W/O/Wエマルジョン法、アニーリング法など、公知の製造方法を適宜利用することができ、更には特開平9−87168号公報に記載される方法などを利用してもよい。これらの公知のリポソーム製造法の種類、及び可溶化剤成分の配合割合を適宜選択することにより、多重層リポソーム、小さな一枚膜リポソーム、大きな一枚膜リポソームなど、種々の大きさや形態を有するリポソームあるいは複合脂質膜として製造することができる、どの形態のリポソームおよび複合脂質膜でも使用することができる。
特に抗腫瘍剤として調製される複合脂質膜またはリポソーム溶液における、複合脂質膜またはリポソームの直径は、医学的に許容される範囲内でいかなる直径であってもよいが、20nm〜1μm程度がよく、好ましくは30nm〜300nm程度、さらに好ましくは制癌活性を高めるなどの理由から40nm〜180nm程度がよい。複合脂質膜またはリポソームは、水性溶媒中に均一に分散するよう調製されるのがよく、沈殿、凝集などが見られる場合、主に物理的な理由から制癌剤として用いるのが困難になるので好ましくない。
このようにして得られる水分散液は、限外濾過、遠心分離、ゲル濾過等の方法によって精製してよく、また濃縮や希釈、殺菌等の操作を自由に行ってもよく、注射剤や点滴剤として調製され抗腫瘍剤として用いられる他、ドリンク剤として健康食品に用いることができる。
水分散液を抗腫瘍剤として用い、注射剤または点滴剤として投与する場合、一回量として例えば、可溶化剤に含まれるリン脂質を目安とすると、リン脂質の量を1×10-1〜1×10-6Mの濃度で含む溶液0.01〜100ml/kg体重、好ましくは5×10-2〜5×10-4Mの濃度で含む溶液1〜50ml/kg体重を1日1〜3回程度投与するのがよい。水分散液をドリンク剤として抗腫瘍剤もしくは健康食品として用いる場合は、味噌のエタノール抽出物の1日の摂取量が1〜1000mg/kg体重/日となるよう、1日1〜3回程度摂取するのがよい。
水分散液を抗腫瘍剤として用い、注射剤または点滴剤として投与する場合、一回量として例えば、可溶化剤に含まれるリン脂質を目安とすると、リン脂質の量を1×10-1〜1×10-6Mの濃度で含む溶液0.01〜100ml/kg体重、好ましくは5×10-2〜5×10-4Mの濃度で含む溶液1〜50ml/kg体重を1日1〜3回程度投与するのがよい。水分散液をドリンク剤として抗腫瘍剤もしくは健康食品として用いる場合は、味噌のエタノール抽出物の1日の摂取量が1〜1000mg/kg体重/日となるよう、1日1〜3回程度摂取するのがよい。
本発明でいう腫瘍細胞とは、いわゆる癌や腫瘍などを構成する、またはそれに関わる細胞であって、一般に癌細胞と見なされる細胞であるなら特に限定されず、例えば急性白血病、慢性白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、マクログロブリン血症などの造血器腫瘍や、脳腫瘍、頭頸部癌、乳癌、肺癌、食道癌、胃癌、大腸癌、肝癌、胆嚢・胆管癌、膵癌、膵島細胞癌、腎細胞癌、副腎皮質癌、膀胱癌、前立腺癌、睾丸腫瘍、卵巣癌、子宮癌、絨毛癌、甲状腺癌、悪性カルチノイド腫瘍、皮膚癌、悪性黒色腫、骨肉腫、軟部組織肉腫、神経芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、胎児性横紋筋肉腫、網膜芽細胞腫などの固形腫瘍を形成する、またはそれらに由来・関連する細胞であって、疾患として器官組織内にある細胞だけでなく、ホモジネートした組織から分離したり、また試験用細胞として一般に供される培養細胞や、これら腫瘍細胞由来のハイブリドーマなども含み、ヒト細胞だけに限定されるわけでもない。
本発明の味噌のエタノール抽出物に可溶化剤を加えたものは、このような癌細胞に効果的に作用することにより、急性白血病、慢性白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、マクログロブリン血症などの造血器腫瘍や、脳腫瘍、頭頸部癌、乳癌、肺癌、食道癌、胃癌、大腸癌、肝癌、胆嚢・胆管癌、膵癌、膵島細胞癌、腎細胞癌、副腎皮質癌、膀胱癌、前立腺癌、睾丸腫瘍、卵巣癌、子宮癌、絨毛癌、甲状腺癌、悪性カルチノイド腫瘍、皮膚癌、悪性黒色腫、骨肉腫、軟部組織肉腫、神経芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、胎児性横紋筋肉腫、網膜芽細胞腫などの固形腫瘍の予防または治療に対して有効である。本発明の抗腫瘍剤の対象疾患は、いわゆる癌であるならばこれらに限定されないが、上記、造血器腫瘍や固形腫瘍に分類される癌の予防または治療に対して本発明の抗腫瘍剤は特に優れており、本発明の健康食品にも同様の効果が期待される。
本発明では、味噌を熱水に加え、これを遠心分離して得た沈殿物をエタノール抽出したときに得られ、2900cm-1付近、1750cm-1付近、1160cm-1付近に特徴的な赤外線吸収スペクトルを有する水不溶性の油状物質であって、可溶化剤を加えて用いることにより癌細胞増殖抑制効果を示すことを特徴とする、味噌のエタノール抽出物が提供される。
このとき、癌細胞増殖抑制効果を示すことが本発明の味噌のエタノール抽出物の特徴となるが、癌細胞増殖抑制効果を検討するための条件として、癌細胞と味噌のエタノール抽出物に可溶化剤を加えたものを一緒にして培養するのがよい。
このとき、味噌のエタノール抽出物に可溶化剤を加えたものを癌細胞の細胞膜に選択的に融合させるため、培養する温度及び時間は、通常、常温、好ましくは15〜35℃で1〜10時間程度が好ましい。このようにして、味噌のエタノール抽出物に可溶化剤を加えたものが癌に対し、効果的に融合・蓄積して、癌細胞を抑制することができるが、良性腫瘍もしくは正常細胞に対しては、味噌のエタノール抽出物に可溶化剤を加えたものの融合・蓄積が生じない。癌細胞増殖抑制効果を検討するための方法としては、公知のいかなる方法を用いてもよいが、好ましくはWST−1 assay法などが用いられる。
次に実施例を挙げて本発明につき、さらに詳しく説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
このとき、味噌のエタノール抽出物に可溶化剤を加えたものを癌細胞の細胞膜に選択的に融合させるため、培養する温度及び時間は、通常、常温、好ましくは15〜35℃で1〜10時間程度が好ましい。このようにして、味噌のエタノール抽出物に可溶化剤を加えたものが癌に対し、効果的に融合・蓄積して、癌細胞を抑制することができるが、良性腫瘍もしくは正常細胞に対しては、味噌のエタノール抽出物に可溶化剤を加えたものの融合・蓄積が生じない。癌細胞増殖抑制効果を検討するための方法としては、公知のいかなる方法を用いてもよいが、好ましくはWST−1 assay法などが用いられる。
次に実施例を挙げて本発明につき、さらに詳しく説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
1.<試料溶液の調製と分析方法>
1−1.試料
味噌は、下記に示した3種類の味噌を使用した。
1.特選赤だし(商品名;山内本店株式会社製、米味噌)
2.まぼろしの味噌とっておき(商品名;山内本店株式会社製、麦味噌)
3.とっておき米・麦合わせ味噌(商品名;山内本店株式会社製、調合味噌)
1−1.試料
味噌は、下記に示した3種類の味噌を使用した。
1.特選赤だし(商品名;山内本店株式会社製、米味噌)
2.まぼろしの味噌とっておき(商品名;山内本店株式会社製、麦味噌)
3.とっておき米・麦合わせ味噌(商品名;山内本店株式会社製、調合味噌)
1−2.試薬
下記の市販品をそのまま使用した。
1)99.5%特級エタノール ナカライテスク(株)製
2)L-α-Dimyristylphosphatidilcholine (DMPC) 日本油脂(株)製
3)Polyoxyethlenesorbitan monolaurate (Tween20) ナカライテスク(株)製
下記の市販品をそのまま使用した。
1)99.5%特級エタノール ナカライテスク(株)製
2)L-α-Dimyristylphosphatidilcholine (DMPC) 日本油脂(株)製
3)Polyoxyethlenesorbitan monolaurate (Tween20) ナカライテスク(株)製
1−3.味噌からの成分抽出
図1(Fig.1)のスキームに従い、抽出溶媒として水溶性成分はイオン交換水、脂溶性成分は食品にも使用できるエタノールを用いて成分抽出を行った。
(i)試料(100g)に約80℃の熱水を加え約10分間撹拌した後、4000rpm×10分の条件下で遠心分離機 (KUBOTA 5100)を用いて上澄み液と沈殿物に分離した。
(ii)上澄み液と沈殿物をそれぞれ凍結乾燥機(EYELA FREEZE DRYER FDU-830)を用いて乾燥し、水抽出物と水抽出残渣を得た。
(iii)水抽出残渣(5g)にエタノールを加え約40℃で4時間温浸した後、吸引ろ過によりろ液と残渣に分離した。
(iv)ろ液と残渣からそれぞれ減圧乾燥機(EYELA VACUUM OVEN VOC-300SD)を用いてエタノールを留去し、エタノール抽出物とエタノール抽出残渣を得た。
図1(Fig.1)のスキームに従い、抽出溶媒として水溶性成分はイオン交換水、脂溶性成分は食品にも使用できるエタノールを用いて成分抽出を行った。
(i)試料(100g)に約80℃の熱水を加え約10分間撹拌した後、4000rpm×10分の条件下で遠心分離機 (KUBOTA 5100)を用いて上澄み液と沈殿物に分離した。
(ii)上澄み液と沈殿物をそれぞれ凍結乾燥機(EYELA FREEZE DRYER FDU-830)を用いて乾燥し、水抽出物と水抽出残渣を得た。
(iii)水抽出残渣(5g)にエタノールを加え約40℃で4時間温浸した後、吸引ろ過によりろ液と残渣に分離した。
(iv)ろ液と残渣からそれぞれ減圧乾燥機(EYELA VACUUM OVEN VOC-300SD)を用いてエタノールを留去し、エタノール抽出物とエタノール抽出残渣を得た。
1−4.赤外線吸収スペクトルの測定
赤外線吸収スペクトルの測定は、赤外分光光度計(日本分光 FT/IR-7000)を用いて水抽出物はKBr法、エタノール抽出物はneat法により測定した。KBr法は、試料とKBr(IR用臭化カリウムクリスタルブロック 和光純薬工業(株))をめのう乳鉢の中で十分粉砕し、錠剤成型器でプレスして円盤状に成型して測定した。Neat法は、油状の試料をKBr板の間に挟んで薄膜をつくり測定した。
赤外線吸収スペクトルの測定は、赤外分光光度計(日本分光 FT/IR-7000)を用いて水抽出物はKBr法、エタノール抽出物はneat法により測定した。KBr法は、試料とKBr(IR用臭化カリウムクリスタルブロック 和光純薬工業(株))をめのう乳鉢の中で十分粉砕し、錠剤成型器でプレスして円盤状に成型して測定した。Neat法は、油状の試料をKBr板の間に挟んで薄膜をつくり測定した。
1−5.試料溶液の調製
水抽出物は、そのままPBS(-)に溶解したものと、可溶化剤の90mol%DMPC/10mol%Tween20ハイブリッド型リポソーム(複合脂質膜)に含有させた2種類を試料溶液とした。図2(Fig.2)に可溶化剤(複合脂質膜)と組み合わせるときの模式図を示した。また、エタノール抽出物は、そのままではPBS(-)に溶解しないため、可溶化剤である複合脂質膜に含有させたものを試料溶液とした。さらに、通常細胞実験に用いるPBS(-)の塩分濃度は約0.45wt%であるが、水抽出物を溶解すると塩分濃度は約0.50wt%となる。そこで、塩分濃度が増殖抑制効果に影響するか検討するために、塩分濃度0.50wt%のPBS(-)を調製し、試料溶液とした。なお、抽出物を溶解したPBS(-)の塩分濃度は約0.45wt%である。
水抽出物は、そのままPBS(-)に溶解したものと、可溶化剤の90mol%DMPC/10mol%Tween20ハイブリッド型リポソーム(複合脂質膜)に含有させた2種類を試料溶液とした。図2(Fig.2)に可溶化剤(複合脂質膜)と組み合わせるときの模式図を示した。また、エタノール抽出物は、そのままではPBS(-)に溶解しないため、可溶化剤である複合脂質膜に含有させたものを試料溶液とした。さらに、通常細胞実験に用いるPBS(-)の塩分濃度は約0.45wt%であるが、水抽出物を溶解すると塩分濃度は約0.50wt%となる。そこで、塩分濃度が増殖抑制効果に影響するか検討するために、塩分濃度0.50wt%のPBS(-)を調製し、試料溶液とした。なお、抽出物を溶解したPBS(-)の塩分濃度は約0.45wt%である。
1−6.膜サイズの測定
抽出物含有複合脂質膜の膜サイズは、電気泳動光散乱光度計(OTSUKA ERECTRONIC, Photal ELS-8000)を用いて動的光散乱法により測定した。光源は、He-Neレーザーを用い、出力10mWで使用した。散乱角90°で測定し、得られた拡散係数(D)を次式、Stokes-Einstienの式(1)に代入して膜の直径(dhy)を求めた。dhy = kT/3πηD (1) (式中、kはBoltzmann定数、Tは絶対温度、ηは溶媒の粘度である。)
抽出物含有複合脂質膜の膜サイズは、電気泳動光散乱光度計(OTSUKA ERECTRONIC, Photal ELS-8000)を用いて動的光散乱法により測定した。光源は、He-Neレーザーを用い、出力10mWで使用した。散乱角90°で測定し、得られた拡散係数(D)を次式、Stokes-Einstienの式(1)に代入して膜の直径(dhy)を求めた。dhy = kT/3πηD (1) (式中、kはBoltzmann定数、Tは絶対温度、ηは溶媒の粘度である。)
1−7.細胞実験
細胞実験には、ヒト肺腺がん(RERF-LC-OK)細胞およびヒト胃がん(GT3TKB)細胞を使用した。
WST-1 assay法(M. Ishiyama, M. Shiga, K. Sasamota, M. Mizoguchi, P-G. He, Chem. Pharm. Bull., 41, 1118 (1993).)による抗腫瘍効果は、分光光度計(EIR READER)により450nmにおけるWST-1 formazanの吸光度を測定し、コントロール(AControl)に対する試料を添加した場合の吸光度(AMean)の比(AMean/Acontrol)を算出し、次式の式(2)に代入して評価した。増殖抑制率(%) = 1−(AMean/Acontrol) ×100 (2)
細胞実験には、ヒト肺腺がん(RERF-LC-OK)細胞およびヒト胃がん(GT3TKB)細胞を使用した。
WST-1 assay法(M. Ishiyama, M. Shiga, K. Sasamota, M. Mizoguchi, P-G. He, Chem. Pharm. Bull., 41, 1118 (1993).)による抗腫瘍効果は、分光光度計(EIR READER)により450nmにおけるWST-1 formazanの吸光度を測定し、コントロール(AControl)に対する試料を添加した場合の吸光度(AMean)の比(AMean/Acontrol)を算出し、次式の式(2)に代入して評価した。増殖抑制率(%) = 1−(AMean/Acontrol) ×100 (2)
2.<味噌抽出物の分析及び制癌効果>
2−1.味噌抽出物の収量
表1(Table 1)に得られた抽出物の収量を示した。ここで、水抽出物および水抽出残渣は、味噌100gから得られた収量であり、エタノール抽出物およびエタノール抽出残渣は、水抽出残渣5gから得られた収量である。水抽出物は約25〜35%の収率であり、形状はすべてのサンプルにおいて粉末結晶であり、吸湿性が強く、味噌特有の芳香があった。エタノール抽出物は約30%の収率であり、形状はすべてのサンプルにおいて黄色の油状液体であり、少量の沈殿物が観察された。
2−1.味噌抽出物の収量
表1(Table 1)に得られた抽出物の収量を示した。ここで、水抽出物および水抽出残渣は、味噌100gから得られた収量であり、エタノール抽出物およびエタノール抽出残渣は、水抽出残渣5gから得られた収量である。水抽出物は約25〜35%の収率であり、形状はすべてのサンプルにおいて粉末結晶であり、吸湿性が強く、味噌特有の芳香があった。エタノール抽出物は約30%の収率であり、形状はすべてのサンプルにおいて黄色の油状液体であり、少量の沈殿物が観察された。
2−2.味噌抽出物に関する情報
図3(Fig.3)および図4(Fig.4)に味噌抽出物の赤外線吸収スペクトルを示した。なお、味噌の種類によって相違が見られなかったので、山内本店(株)の麦味噌のスペクトルを用いて検討した。水抽出物における3400cm-1付近のピークはO-H伸縮振動を表し、1080cm-1付近の幅広い吸収帯はC-Oの伸縮振動を表しており糖の存在を支持している。さらに、1650cm-1付近はアミドのC=O伸縮振動、その変角振動が1540cm-1付近に見られ、タンパク質、アミノ酸あるいは糖タンパク複合体の存在が示唆された。
また、エタノール抽出物においては、2900cm-1付近のピークはC-H伸縮振動を表し、1750cm-1にC=O伸縮振動、1160cm-1にC-O伸縮振動が見られた。これは、脂肪酸であるオレイン酸のピークと類似しており、脂肪酸類が含まれている可能性が示唆された。
図3(Fig.3)および図4(Fig.4)に味噌抽出物の赤外線吸収スペクトルを示した。なお、味噌の種類によって相違が見られなかったので、山内本店(株)の麦味噌のスペクトルを用いて検討した。水抽出物における3400cm-1付近のピークはO-H伸縮振動を表し、1080cm-1付近の幅広い吸収帯はC-Oの伸縮振動を表しており糖の存在を支持している。さらに、1650cm-1付近はアミドのC=O伸縮振動、その変角振動が1540cm-1付近に見られ、タンパク質、アミノ酸あるいは糖タンパク複合体の存在が示唆された。
また、エタノール抽出物においては、2900cm-1付近のピークはC-H伸縮振動を表し、1750cm-1にC=O伸縮振動、1160cm-1にC-O伸縮振動が見られた。これは、脂肪酸であるオレイン酸のピークと類似しており、脂肪酸類が含まれている可能性が示唆された。
2−3.抽出物含有複合脂質膜の膜サイズ経時変化
図5(Fig.5)に味噌抽出物含有複合脂質膜の膜サイズ経時変化を示した。可溶化剤のみからなる複合脂質膜のみでは、緩衝水溶液中で約300nmの単一サイズ分布を示し、約1ヶ月間安定な膜を形成していた。水抽出物含有複合脂質膜も同様に安定であった。また、通常では水に溶解しないエタノール抽出物も複合脂質膜に含有させることでクリアな溶液を得ることができ、約60nmの膜を形成していた。複合脂質膜のみと比較して膜サイズが約1/5に減少していることから、エマルジョンが形成されているか、もしくはエタノール抽出物中にくさび形(V字型)の成分が含まれていることも示唆された。
図5(Fig.5)に味噌抽出物含有複合脂質膜の膜サイズ経時変化を示した。可溶化剤のみからなる複合脂質膜のみでは、緩衝水溶液中で約300nmの単一サイズ分布を示し、約1ヶ月間安定な膜を形成していた。水抽出物含有複合脂質膜も同様に安定であった。また、通常では水に溶解しないエタノール抽出物も複合脂質膜に含有させることでクリアな溶液を得ることができ、約60nmの膜を形成していた。複合脂質膜のみと比較して膜サイズが約1/5に減少していることから、エマルジョンが形成されているか、もしくはエタノール抽出物中にくさび形(V字型)の成分が含まれていることも示唆された。
2−4.培養がん細胞に対する味噌抽出物の細胞増殖抑制効果
表2(Table 2)および図6(Fig.6)にヒト肺腺がん(RERF-LC-OK)細胞およびヒト胃がん(GT3TKB)細胞に対する味噌抽出物の in vitro におけるがん細胞増殖抑制効果を示した。
下記に実験結果をまとめた。
(i)通常より塩分濃度の高いPBS(-)(0.50wt%)は、腫瘍細胞に対して増殖抑制効果を示さず、今回の実験においては、塩分による影響はないものと考えられる。
(ii)水抽出物は、腫瘍細胞に対して増殖抑制効果を示さなかった。
(iii)エタノール抽出物は、腫瘍細胞に対して高い抑制効果を示した。特に、ヒト肺腺がん細胞に対して顕著であり、約95%の増殖抑制効果を示した。
表2(Table 2)および図6(Fig.6)にヒト肺腺がん(RERF-LC-OK)細胞およびヒト胃がん(GT3TKB)細胞に対する味噌抽出物の in vitro におけるがん細胞増殖抑制効果を示した。
下記に実験結果をまとめた。
(i)通常より塩分濃度の高いPBS(-)(0.50wt%)は、腫瘍細胞に対して増殖抑制効果を示さず、今回の実験においては、塩分による影響はないものと考えられる。
(ii)水抽出物は、腫瘍細胞に対して増殖抑制効果を示さなかった。
(iii)エタノール抽出物は、腫瘍細胞に対して高い抑制効果を示した。特に、ヒト肺腺がん細胞に対して顕著であり、約95%の増殖抑制効果を示した。
さらに、表3(Table 3)および図7(Fig.7)に、同様の実験を製造日の異なる味噌を用いて行った結果を示した。ここで、水抽出物については、濃度を5000μg/mlとし、複合脂質膜に含有させた試料溶液についても検討した。
下記に実験結果をまとめた。
(i)通常より塩分濃度の高いPBS(-)(0.50wt%)は、腫瘍細胞に対して増殖抑制効果を示さず、今回の実験においては、塩分による影響はないものと考えられる。
(ii)水抽出物は、腫瘍細胞に対して増殖抑制効果を示さなかった。また、複合脂質膜に含有させることでの相乗効果は観察できなかった。
(iii)エタノール抽出物は、腫瘍細胞に対して高い抑制効果を示した。特に、ヒト肺腺がん細胞に対して顕著であり、約93%の増殖抑制効果を示した。
以上の結果は、味噌の製造日が異なっても腫瘍細胞に対する増殖抑制効果は変化しておらず、前の実験と同様の結果を再現していた。
下記に実験結果をまとめた。
(i)通常より塩分濃度の高いPBS(-)(0.50wt%)は、腫瘍細胞に対して増殖抑制効果を示さず、今回の実験においては、塩分による影響はないものと考えられる。
(ii)水抽出物は、腫瘍細胞に対して増殖抑制効果を示さなかった。また、複合脂質膜に含有させることでの相乗効果は観察できなかった。
(iii)エタノール抽出物は、腫瘍細胞に対して高い抑制効果を示した。特に、ヒト肺腺がん細胞に対して顕著であり、約93%の増殖抑制効果を示した。
以上の結果は、味噌の製造日が異なっても腫瘍細胞に対する増殖抑制効果は変化しておらず、前の実験と同様の結果を再現していた。
そこで、培養がん細胞に対するエタノール抽出物の細胞増殖抑制効果の平均を算出し、表4(Table 4)および図8(Fig.8)に示した。結果から明らかなように、味噌のエタノール抽出物を可溶化剤である複合脂質膜に含有させることで高い増殖抑制効果を示したことから、エタノール抽出物中に抗腫瘍活性成分があり、それが可溶化剤の働きにより効果を発揮することが示唆された。
味噌は、日本人にとって醤油とならんでなじみの深い調味料である。おふくろの味として子供の頃から慣れ親しんだ香りや味は、味噌汁や田楽、味噌ラーメンや肉の味噌いためなどの食品として反映されている。
本実験では、味噌のエタノール抽出物を可溶化剤と組み合わせたものは、がん細胞に対して高い増殖抑制効果を示すことが始めて明らかとなった。このことは、味噌がおいしく、最もなじみのある健康食品であることを認識すると共に、通常、水に溶解しない脂溶性成分を含有することでクリアな溶液を調製できる可溶化剤、即ち複合脂質膜を用いることで、味噌からがんの予防および治療に有効な成分 (薬)が開発できることが示された。
今回実験に使用した味噌は、山内本店株式会社より恵贈して頂いたことを付記する。
本実験では、味噌のエタノール抽出物を可溶化剤と組み合わせたものは、がん細胞に対して高い増殖抑制効果を示すことが始めて明らかとなった。このことは、味噌がおいしく、最もなじみのある健康食品であることを認識すると共に、通常、水に溶解しない脂溶性成分を含有することでクリアな溶液を調製できる可溶化剤、即ち複合脂質膜を用いることで、味噌からがんの予防および治療に有効な成分 (薬)が開発できることが示された。
今回実験に使用した味噌は、山内本店株式会社より恵贈して頂いたことを付記する。
実施例1で用いたのと同じまぼろしの味噌とっておき(商品名;山内本店株式会社製、麦味噌)を用い、実施例1と同様の条件で、図1(Fig.1)のスキームに従い、水抽出物とエタノール抽出物を得た。
1)エタノール抽出物の物性
(i)赤外線吸収スペクトルを測定
実施例1と同様にして赤外線吸収スペクトルを測定した。
図9に、エタノール抽出物 (Extract E) (D)および市販のリノレン酸(E)、リノレン酸エチル(F)のIRスペクトルを示す。エタノール抽出物のIRスペクトルは、脂肪酸や脂肪酸エステルのスペクトルと類似しており、1744cm-1に見られるC=O伸縮振動は、エステルの存在を示唆している。また、1715cm-1にも同様のピークが見られ、リノレン酸などの不飽和脂肪酸の存在が示唆された。
(ii)ガスクロマトグラフィー(Gas Chromatography:GC)の測定
ガスクマロトグラフ(HITACHI,Ltd,G-3000)を用いて、エタノール抽出物中に含まれる脂肪酸および脂肪酸エチルの定性分析を行った。測定条件を下記の表5に示した。
表5
試料 カラム カラム温度 流速 検出器
脂肪酸 UltraALLOY(8H) 210℃ 24ml/min FID
脂肪酸エチルエステル UltraALLOY(8H) 170℃ 3.5ml/min FID
1)エタノール抽出物の物性
(i)赤外線吸収スペクトルを測定
実施例1と同様にして赤外線吸収スペクトルを測定した。
図9に、エタノール抽出物 (Extract E) (D)および市販のリノレン酸(E)、リノレン酸エチル(F)のIRスペクトルを示す。エタノール抽出物のIRスペクトルは、脂肪酸や脂肪酸エステルのスペクトルと類似しており、1744cm-1に見られるC=O伸縮振動は、エステルの存在を示唆している。また、1715cm-1にも同様のピークが見られ、リノレン酸などの不飽和脂肪酸の存在が示唆された。
(ii)ガスクロマトグラフィー(Gas Chromatography:GC)の測定
ガスクマロトグラフ(HITACHI,Ltd,G-3000)を用いて、エタノール抽出物中に含まれる脂肪酸および脂肪酸エチルの定性分析を行った。測定条件を下記の表5に示した。
表5
試料 カラム カラム温度 流速 検出器
脂肪酸 UltraALLOY(8H) 210℃ 24ml/min FID
脂肪酸エチルエステル UltraALLOY(8H) 170℃ 3.5ml/min FID
結果を図10に示す。Aのスペクトルよりエタノール抽出物中にパルミチン酸(Palmitic Acid)、ステアリン酸(Stearic Acid)、オレイン酸(Oleic Acid)、リノール酸(Linoleic Acid)、リノレン酸(Linolenic Acid)が含まれていることが明らかとなった。また、鎖長の長いものほど、同じ鎖長の脂肪酸では二重結合が多いほど保持時間が長い傾向にあった。さらに、2〜4分に確認した脂肪酸以外のピークが観察された。ピーク面積から考察すると、確認した脂肪酸より多量に含まれていることが考えられ、適切な分析条件で検討したところ、Bのスペクトルより脂肪酸エチルの存在が明らかとなった。
図10に表れる脂肪酸の構造式を表6に示す。
表6
Palmitic Acid 16:0 CH3(CH2)14COOH
Stearic Acid 18:0 CH3(CH2)16COOH
Oleic Acid 18:1 n-9 CH3(CH3)7CH=CH(CH2)7COOH
Linoleic Acid 18:2 n-6 CH3(CH2)4(CH=CHCH2)2(CH2)6COOH
Linolenic Acid 18:3 n-3 CH3CH2(CH=CHCH2)3(CH2)6COOH
図10に表れる脂肪酸の構造式を表6に示す。
表6
Palmitic Acid 16:0 CH3(CH2)14COOH
Stearic Acid 18:0 CH3(CH2)16COOH
Oleic Acid 18:1 n-9 CH3(CH3)7CH=CH(CH2)7COOH
Linoleic Acid 18:2 n-6 CH3(CH2)4(CH=CHCH2)2(CH2)6COOH
Linolenic Acid 18:3 n-3 CH3CH2(CH=CHCH2)3(CH2)6COOH
2)試料溶液の調製
臨床応用を想定し、リン脂質(DMPC)、界面活性剤(Tween 20又は80)および種々の脂肪酸あるいは脂肪酸エチルを5%ブドウ糖溶液中で超音波照射した後、0.20μmフィルターでろ過滅菌し、試料溶液とした。
3)抽出物含有複合脂質膜の膜サイズ経時変化
図11に抽出物含有複合脂質膜の膜サイズ経時変化を示した。DMPC/10mol%Tween 20複合脂質膜は、緩衝水溶液中で約300nmの単一サイズ分布を示し、約1ケ月間安定な膜を形成していた。また、通常では水に溶解しないエタノール抽出物(Extract E)も複合脂質膜に含有することでクリアな溶液を得ることができ、約60〜70nmの膜を形成していた。図中、Extract Wは、水抽出物である。
4)抽出物含有複合脂質膜のがん細胞増殖抑制効果
図12にヒト肺腺がん(RERF-LC-OK)細胞およびヒト胃がん(GT3TKB)細胞に対する抽出物含有複合脂質膜のがん細胞増殖抑制効果を示した。通常より塩分濃度の高いPBS(-)(0.50wt%)は培養がん細胞に対して抑制効果を示さず、本実験において塩分の影響はないものと考えられる。Extract Wは、培養がん細胞に対して抑制効果を示さず、複合脂質膜に含有させることによる相乗効果は得られなかった。それに対して、Extract Eを含有させた複合脂質膜は培養がん細胞に対して高い増殖抑制効果を示した。特にRERF-LC-OK細胞に対して顕著であり、93%の増殖抑制効果を示した。
以上の実験結果より、味噌の脂溶性成分(Extract E)を複合脂質膜に含有することでGT3TKB細胞およびRERF-LC-OK細胞の増殖を顕著に抑制することが初めて明らかとなった。
臨床応用を想定し、リン脂質(DMPC)、界面活性剤(Tween 20又は80)および種々の脂肪酸あるいは脂肪酸エチルを5%ブドウ糖溶液中で超音波照射した後、0.20μmフィルターでろ過滅菌し、試料溶液とした。
3)抽出物含有複合脂質膜の膜サイズ経時変化
図11に抽出物含有複合脂質膜の膜サイズ経時変化を示した。DMPC/10mol%Tween 20複合脂質膜は、緩衝水溶液中で約300nmの単一サイズ分布を示し、約1ケ月間安定な膜を形成していた。また、通常では水に溶解しないエタノール抽出物(Extract E)も複合脂質膜に含有することでクリアな溶液を得ることができ、約60〜70nmの膜を形成していた。図中、Extract Wは、水抽出物である。
4)抽出物含有複合脂質膜のがん細胞増殖抑制効果
図12にヒト肺腺がん(RERF-LC-OK)細胞およびヒト胃がん(GT3TKB)細胞に対する抽出物含有複合脂質膜のがん細胞増殖抑制効果を示した。通常より塩分濃度の高いPBS(-)(0.50wt%)は培養がん細胞に対して抑制効果を示さず、本実験において塩分の影響はないものと考えられる。Extract Wは、培養がん細胞に対して抑制効果を示さず、複合脂質膜に含有させることによる相乗効果は得られなかった。それに対して、Extract Eを含有させた複合脂質膜は培養がん細胞に対して高い増殖抑制効果を示した。特にRERF-LC-OK細胞に対して顕著であり、93%の増殖抑制効果を示した。
以上の実験結果より、味噌の脂溶性成分(Extract E)を複合脂質膜に含有することでGT3TKB細胞およびRERF-LC-OK細胞の増殖を顕著に抑制することが初めて明らかとなった。
次に、分析結果に基づきExtract Eに含まれる脂肪酸および脂肪酸エチルに注目し、市販品の試薬を用いた培養がん細胞に対する増殖抑制効果について検討した。オレイン酸は、人間が生体内で作ることのできる代表的な不飽和脂肪酸であり、リノール酸やα−リノレン酸等の不飽和脂肪酸は人間には生合成することのできない必須脂肪酸として知られている。特にオレイン酸は血液中のコレステロール値や血糖値を下げる効果が明らかとなっており栄養学的観点からも評価が高まっている。そこで、まず始めにオレイン酸含有複合脂質膜の培養がん細胞に対する増殖抑制効果について検討した。
1)オレイン酸含有複合脂質膜の膜サイズ経時変化
図13にオレイン酸含有複合脂質膜の膜サイズ経時変化を示した。DMPC/10mol%Tween 20複合脂質膜の膜サイズは、5%ブドウ糖溶液中で約500nmであり、約1ケ月間安定な膜を形成していた。また、通常では水に溶解しないオレイン酸も複合脂質膜に含有することでクリアな溶液を得ることができ、約100〜150nmの膜を形成していた。
1)オレイン酸含有複合脂質膜の膜サイズ経時変化
図13にオレイン酸含有複合脂質膜の膜サイズ経時変化を示した。DMPC/10mol%Tween 20複合脂質膜の膜サイズは、5%ブドウ糖溶液中で約500nmであり、約1ケ月間安定な膜を形成していた。また、通常では水に溶解しないオレイン酸も複合脂質膜に含有することでクリアな溶液を得ることができ、約100〜150nmの膜を形成していた。
2)オレイン酸含有複合脂質膜のがん細胞増殖抑制効果
図14にRERF-LC-OK細胞およびGT3TKB細胞に対するオレイン酸含有複合脂質膜のがん細胞増殖抑制効果を示した。オレイン酸含有複合脂質膜の培養がん細胞に対する増殖抑制効果に濃度依存性が見られ、濃度282μg/mlでGT3TKB細胞に対して87%、RERF-LC-OK細胞に対して72%の増殖抑制効果を示した。
以上の実験から、オレイン酸を複合脂質膜に含有することで水に可溶化でき、1カ月以上安定なサンプルを調製することができた。さらに、GT3TKB細胞およびRERF-LC-OK細胞に対して高い増殖抑制効果を示すことが明らかとなった。
そこで、分析結果に基づき、次に各種脂肪酸および脂肪酸エチルの濃度を100μg/mlに統一し、増殖抑制効果の差を検討した。臨床応用を想定し、界面活性剤に薬局方にあるTween 80を使用し、DMPC/10mol%Tween 80複合脂質膜のみでも増殖抑制効果を示さない濃度(〔DMPC〕=1.0×10-3M、〔Tween80〕=1.1×10-4M)で評価した。
3)種々の脂肪酸および脂肪酸エチル含有複合脂質膜の膜サイズ経時変化
図15に抽出物含有複合脂質膜の膜サイズ経時変化を示した。ここで用いたExtract Eは、実施例2で調製したエタノール抽出物である。DMPC/10mol%Tween 80複合脂質膜の膜サイズは、ブドウ糖溶液中で約300nmであり、約1ケ月間安定な膜を形成していた。また、通常では水に溶解しない種々の脂肪酸および脂肪酸エチルも複合脂質膜に含有することでクリアな溶液を得ることができ、約100〜200nmの膜を形成していた。
図14にRERF-LC-OK細胞およびGT3TKB細胞に対するオレイン酸含有複合脂質膜のがん細胞増殖抑制効果を示した。オレイン酸含有複合脂質膜の培養がん細胞に対する増殖抑制効果に濃度依存性が見られ、濃度282μg/mlでGT3TKB細胞に対して87%、RERF-LC-OK細胞に対して72%の増殖抑制効果を示した。
以上の実験から、オレイン酸を複合脂質膜に含有することで水に可溶化でき、1カ月以上安定なサンプルを調製することができた。さらに、GT3TKB細胞およびRERF-LC-OK細胞に対して高い増殖抑制効果を示すことが明らかとなった。
そこで、分析結果に基づき、次に各種脂肪酸および脂肪酸エチルの濃度を100μg/mlに統一し、増殖抑制効果の差を検討した。臨床応用を想定し、界面活性剤に薬局方にあるTween 80を使用し、DMPC/10mol%Tween 80複合脂質膜のみでも増殖抑制効果を示さない濃度(〔DMPC〕=1.0×10-3M、〔Tween80〕=1.1×10-4M)で評価した。
3)種々の脂肪酸および脂肪酸エチル含有複合脂質膜の膜サイズ経時変化
図15に抽出物含有複合脂質膜の膜サイズ経時変化を示した。ここで用いたExtract Eは、実施例2で調製したエタノール抽出物である。DMPC/10mol%Tween 80複合脂質膜の膜サイズは、ブドウ糖溶液中で約300nmであり、約1ケ月間安定な膜を形成していた。また、通常では水に溶解しない種々の脂肪酸および脂肪酸エチルも複合脂質膜に含有することでクリアな溶液を得ることができ、約100〜200nmの膜を形成していた。
4)種々の脂肪酸および脂肪酸エチル含有複合脂質膜のがん細胞増殖抑制効果
図16にRERF-LC-OK細胞およびGT3TKB細胞に対する種々の脂肪酸および脂肪酸エチル含有複合脂質膜のがん細胞増殖抑制効果を示した。濃度を100μg/mlに統一することで増殖抑制効果の差が観察された。RERF-LC-OK細胞に対してオレイン酸0%、リノール酸36%、リノレン酸21%、オレイン酸エチル0%、リノール酸エチル25%、リノレン酸エチル65%の増殖抑制効果を示した。また、GT3TKB細胞に対しては、リノレン酸エチルが14%の増殖抑制効果を示したが、他のサンプルではほとんど増殖抑制効果を示さなかった。さらに、脂肪酸エチルでは、鎖長が長いほど、二重結合が増加するほど高い増殖抑制効果を示す傾向がみられ、味噌の脂溶性成分に含まれる抗腫瘍性成分として脂肪酸および脂肪酸エチルが示唆された。
図16にRERF-LC-OK細胞およびGT3TKB細胞に対する種々の脂肪酸および脂肪酸エチル含有複合脂質膜のがん細胞増殖抑制効果を示した。濃度を100μg/mlに統一することで増殖抑制効果の差が観察された。RERF-LC-OK細胞に対してオレイン酸0%、リノール酸36%、リノレン酸21%、オレイン酸エチル0%、リノール酸エチル25%、リノレン酸エチル65%の増殖抑制効果を示した。また、GT3TKB細胞に対しては、リノレン酸エチルが14%の増殖抑制効果を示したが、他のサンプルではほとんど増殖抑制効果を示さなかった。さらに、脂肪酸エチルでは、鎖長が長いほど、二重結合が増加するほど高い増殖抑制効果を示す傾向がみられ、味噌の脂溶性成分に含まれる抗腫瘍性成分として脂肪酸および脂肪酸エチルが示唆された。
以上の実験結果から以下のことが明らかとなった。
(i) 味噌から有効成分を抽出し、機器分析による解析を行なったところ、水抽出物(Extract W)中に糖類、アミノ酸、たんぱく質、糖タンパク複合体の存在が示唆された。
(ii) 味噌から有効成分を抽出し、機器分析による解析を行なったところ、エタノール抽出物(Extract E)中にパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの脂肪酸の存在を確認した。さらに、パルミチン酸エチル、ステアリン酸エチル、オレイン酸エチル、リノール酸エチル、リノレン酸エチルなどの脂肪酸エチルの存在を確認した。
(iii) 通常では水に溶解しないExtract E、脂肪酸および脂肪酸エチルも複合脂質膜に含有することでクリアな溶液を得ることができ、約1ケ月間安定な膜を形成していた。
(iv) 抽出した成分を複合脂質膜に含有させ、培養がん細胞に対する増殖抑制効果について検討したところ、Extract Wは、培養がん細胞に対して抑制効果を示さず、複合脂質膜に含有させることによる相乗効果は得られなかった。それに対して、Extract Eを含有させた複合脂質膜は培養がん細胞に対して高い増殖抑制効果を示した。特にヒト肺腺がん(RERF-LC-OK)細胞に対して顕著であり、93%の増殖抑制効果を示した。
(i) 味噌から有効成分を抽出し、機器分析による解析を行なったところ、水抽出物(Extract W)中に糖類、アミノ酸、たんぱく質、糖タンパク複合体の存在が示唆された。
(ii) 味噌から有効成分を抽出し、機器分析による解析を行なったところ、エタノール抽出物(Extract E)中にパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの脂肪酸の存在を確認した。さらに、パルミチン酸エチル、ステアリン酸エチル、オレイン酸エチル、リノール酸エチル、リノレン酸エチルなどの脂肪酸エチルの存在を確認した。
(iii) 通常では水に溶解しないExtract E、脂肪酸および脂肪酸エチルも複合脂質膜に含有することでクリアな溶液を得ることができ、約1ケ月間安定な膜を形成していた。
(iv) 抽出した成分を複合脂質膜に含有させ、培養がん細胞に対する増殖抑制効果について検討したところ、Extract Wは、培養がん細胞に対して抑制効果を示さず、複合脂質膜に含有させることによる相乗効果は得られなかった。それに対して、Extract Eを含有させた複合脂質膜は培養がん細胞に対して高い増殖抑制効果を示した。特にヒト肺腺がん(RERF-LC-OK)細胞に対して顕著であり、93%の増殖抑制効果を示した。
(v) オレイン酸含有複合脂質膜の培養がん細胞に対する増殖抑制効果に濃度依存性が見られ、濃度282μg/mlでGT3TKB細胞に対して87%、RERF-LC-OK細胞に対して72%の増殖抑制効果を示した。
(vi) 各種脂肪酸および脂肪酸エチルの濃度を100μg/mlに統一し、増殖抑制効果の差を検討したところ、リノレン酸エチルがGT3TKB細胞に対して14%、RERF-LC-OK細胞に対して65%と最も高い増殖抑制効果を示した。
以上の実験結果より、味噌から抽出した脂溶性成分を複合脂質膜に含有することで培養がん細胞に対する増殖抑制効果が認められ、抗腫瘍性成分として脂肪酸および脂肪酸エチルが示唆された。特に、リノレン酸エチルは100μg/mlと少量で高い増殖抑制効果を示していることから、今後、リノレン酸エチルと複合脂質膜を組み合わせた副作用のない制癌剤の開発が期待できる。
(vi) 各種脂肪酸および脂肪酸エチルの濃度を100μg/mlに統一し、増殖抑制効果の差を検討したところ、リノレン酸エチルがGT3TKB細胞に対して14%、RERF-LC-OK細胞に対して65%と最も高い増殖抑制効果を示した。
以上の実験結果より、味噌から抽出した脂溶性成分を複合脂質膜に含有することで培養がん細胞に対する増殖抑制効果が認められ、抗腫瘍性成分として脂肪酸および脂肪酸エチルが示唆された。特に、リノレン酸エチルは100μg/mlと少量で高い増殖抑制効果を示していることから、今後、リノレン酸エチルと複合脂質膜を組み合わせた副作用のない制癌剤の開発が期待できる。
Claims (17)
- 味噌のエタノール抽出物及び可溶化剤を含有することを特徴とする抗腫瘍剤。
- 水に分散化させた形態に有る請求項1記載の抗腫瘍剤。
- 味噌のエタノール抽出物が、味噌の水抽出残渣のエタノール抽出物である請求項1又は2に記載の抗腫瘍剤。
- 可溶化剤がリン脂質である請求項1〜3のいずれか1項記載の抗腫瘍剤。
- 可溶化剤がリン脂質とその他の界面活性剤の組み合わせである1〜3のいずれか1項記載の抗腫瘍剤。
- 味噌のエタノール抽出物が、炭素数14〜22の不飽和脂肪酸及び/又はその低級アルキルエステルを含有する請求項1〜5のいずれか1項記載の抗腫瘍剤。
- 炭素数8〜26の不飽和脂肪酸及び/又はその低級アルキルエステル及び可溶化剤であるリン脂質を含有することを特徴とする抗腫瘍剤。
- 味噌のエタノール抽出物及び可溶化剤を含有することを特徴とする健康食品。
- 水に分散化させた形態に有る請求項8記載の健康食品。
- 味噌のエタノール抽出物が、味噌の水抽出残渣のエタノール抽出物である請求項8又は9に記載の健康食品。
- 可溶化剤がリン脂質である請求項8〜10のいずれか1項記載の健康食品。
- 可溶化剤がリン脂質とその他の界面活性剤の組み合わせである請求項8〜11のいずれか1項記載の健康食品。
- 味噌のエタノール抽出物が、炭素数14〜22の不飽和脂肪酸及び/又はその低級アルキルエステルを含有する請求項8〜12のいずれか1項記載の健康食品。
- 炭素数8〜26の不飽和脂肪酸及び/又はその低級アルキルエステル及び可溶化剤であるリン脂質を含有することを特徴とする健康食品。
- 味噌の水抽出残渣のエタノール抽出物であって、2900cm-1付近、1750cm-1付近、1160cm-1付近に特徴的な赤外線吸収スペクトルを有し、癌細胞増殖抑制効果を示すことを特徴とする、味噌のエタノール抽出物。
- 味噌の水抽出残渣のエタノール抽出物が、味噌を熱水に加え、これを遠心分離して得た沈殿物をエタノール抽出て得られたものである請求項15記載のエタノール抽出物。
- 請求項15又は16記載のエタノール抽出物及び医薬上許容されている担体及び/又は希釈剤を含有する抗腫瘍剤。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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Cited By (4)
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---|---|---|---|---|
JP2008136435A (ja) * | 2006-12-04 | 2008-06-19 | Sendai Miso Shoyu Kk | 味噌加工品の製造方法、味噌加工品、味噌抽出液、味噌抽出脱臭剤および味噌抽出食肉軟化剤 |
JP2012039889A (ja) * | 2010-08-12 | 2012-03-01 | Oku Tain | 茶茎葉及び/又はサツマイモ茎葉を用いた発酵食品及びその製造方法 |
WO2015076182A1 (ja) * | 2013-11-21 | 2015-05-28 | マルサ商事株式会社 | 味噌およびその抽出物 |
CN113382773A (zh) * | 2019-02-01 | 2021-09-10 | 达芬奇环球有限公司 | 控制生物功能的新成分 |
-
2003
- 2003-10-31 JP JP2003373242A patent/JP2004244413A/ja active Pending
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