JP2004243159A - 電気集塵機 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】この発明による電気集塵機1は、従来例に対して、集塵ユニット3に堆積した塵埃を洗浄する洗浄水8を供給する水洗浄ユニットに、それぞれの集塵ユニット3の上方に配置するようにした水洗浄ユニット4のみを用いることが異なっている。この水洗浄ユニット4は、高圧の洗浄水8を下向きに吐出する複数の洗浄水ノズル5を装着した5本のノズル用管体41と、この5本のノズル用管体41に共通に洗浄水8を供給するヘッダー管43とを備えている。
【選択図】図3
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動車トンネル内などの空気の清浄化に用いられる電気集塵機に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば自動車トンネル内の空気は、自動車から排出される煤塵,自動車の走 行
に伴って生じるタイヤや道路アスファルトの摩耗粉塵などのサブミクロンオーダーの浮遊微粒子を主体とする塵埃で汚染されている。このように塵埃で汚染されている空気からこの塵埃を除去するために、近年、自動車トンネルや換気所などに電気集塵機が設置されて空気の清浄化が図られている。そうして電気集塵機の電気集塵作用により捕集された塵埃はいったん集塵ユニットが持つ極板に堆積されるが、極板に堆積された塵埃は、高圧水による水洗浄により適時に極板から除去されている(例えば、特許文献1参照。)。なお、集塵ユニットが持つ高電圧充電部を電気絶縁する絶縁碍子はその表面に空気中の前記塵埃が付着し易いので、極板と同様に水洗浄を行い、必要な電気絶縁性が常に保持されるように配慮されているのが一般である。
また、極板や絶縁碍子を洗浄するための高圧の洗浄水を吐出する洗浄水ノズルの複数を備えた水洗浄ユニットは、電気集塵機の集塵ユニット(前記極板,碍子が含まれる)群の上面側,前面側(前記空気の流入側)および後面側(前記空気の流出側)のそれぞれに対向させて配置されているのが一般である(例えば、特許文献2参照。)。なお特許文献2に例示された電気集塵機は、放電極などから構成されて電気集塵機に流入した空気に含まれる塵埃に電荷を与える帯電部分と,帯電された塵埃を吸着する極板などからなる集塵部分とが一体に構成された集塵ユニット(特許文献2では電極ユニットと名付けられている。)が用いられており、1段式電気集塵機と呼ばれている。
しかし、自動車トンネル内などの空気の清浄化に用いられる電気集塵機には、空気に含まれる塵埃に電荷を与える帯電部分がユニット化されて構成された帯電部ユニットと、帯電された塵埃を吸着する極板などからなる集塵部分がユニット化されて構成された集塵部ユニットとを組み合わせて形成された集塵ユニットを持ち、2段式電気集塵機と呼ばれている電気集塵機も使用されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平10−328578号公報(第2,3頁、第1,2図)
【特許文献2】
特開平11−90264号公報(第2頁、第5図)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前述した従来技術による電気集塵機では、次記する問題点が有り、その解決が望まれている。すなわち、
▲1▼電気集塵作用により極板に堆積された塵埃は、集塵ユニット群の上面側,前面側および後面側のそれぞれに対向配置された水洗浄ユニットの洗浄水ノズルから吐出された洗浄水により除去される。しかし、前面側および後面側の水洗浄ユニットから水平方向に吐出された洗浄水による塵埃の除去は、極板の端部では洗浄水の流速がさして減速していないので強力に行われるが、端部から離れて極板の中央部に近づくのにつれて洗浄水の流速が低下することなどにより塵埃の除去能力が低下してしまうため、極板の中央部付近に堆積された塵埃には洗い残しが発生し易い。
放電現象の面からは極板に堆積した塵埃が電極として働くことを考慮すると、極板に堆積した塵埃の洗い残しの発生は、極板の塵埃堆積量が局部的ではあるが漸増し、これに伴って放電間隔がしだいに狭くなることを意味する。そうして、放電間隔の短縮は火花放電の発生頻度の増加を招き、火花放電の発生過多は電気集塵機の故障と判定されるので、電気集塵機の故障を発生させる要因の一つになっている。また、火花放電の発生頻度の増加は電気集塵機に集塵効率の低下をもたらすし、極板に残留した塵埃は電気集塵機の集塵能力の低下の原因になるので、これ等の点からも塵埃の洗い残しが問題にされている。また、
▲2▼自動車トンネル内などの塵埃を含有する空気の処理に用いられる電気集塵
機では、電気集塵機に通流する空気流速の高速化を図ることが,電気集塵機の含塵空気の処理能力の増大を図る上で有効である。電気集塵機に通流する空気流速の高速化を図るために、電気集塵機の空気通路の圧力損失の低減が要望されるようになってきているが、集塵ユニット群の前面側および後面側の水洗浄ユニットは空気通路内に配置されているので、空気通路の圧力損失の低減を図る上での阻害要因の一つになっている。また、
▲3▼集塵機の前面側扉および後面側扉は、集塵ユニットなどの保守作業を容易
に行えるようにするために中央部を回動中心とした両開き扉とされている。そうして、集塵ユニット群の前面側または後面側に対向配置される水洗浄ユニットは、構成の簡易化などのために前面側扉または後面側扉のそれぞれの前記回動中心部付近に装着されて保持されている。このために、前記水洗浄ユニットに洗浄水を給水する配管には、可動部〔例えば、スイベルジョイント(回動自在の管接ぎ手の一種)とフレキシブルチューブとの組み合わせ〕の使用が不可欠である。しかしながら、特に塵埃の含有量の多い空気が通流する部位に装着される前面側水洗浄ユニットへの給水系統では、スイベルジョイントなどの回動部に塵埃が侵入してしまうと前面側扉に回動不良などが発生する懸念が有るので、塵埃を含有する空気の処理に用いられる電気集塵機の長期信頼性を確保する立場から可動部の削減が求められている。さらにまた、
▲4▼水洗浄ユニットは、電気集塵機の集塵ユニット群の上面側,前面側および
後面側の3面に対向配置されているが、前記▲3▼項でも述べたように前面側と後面側の水洗浄ユニットには可動部を介しての給水を要するので、上面側の水洗浄ユニットとは別系統の給水系統を設ける必要がある。このように多数の給水系統が必要なことは電気集塵機の製造原価の低減努力の阻害要因になっており、給水系統数の削減が望まれている。
【0005】
この発明は前述の従来技術の問題点に鑑みなされ、その目的は、塵埃の洗い残しを生じない極板の洗浄構成、含塵空気の通路の圧力損失の低減、低コスト化などを総合的に図ることができる電気集塵機を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明では前述の目的は、
1)筐体内の空気流路中に設置された集塵ユニットと、この集塵ユニットの極板などに堆積された塵埃を水洗浄により除去するための洗浄水を吐出する水洗浄ユニットとを備える電気集塵機において、
前記筐体内に設置される前記集塵ユニットは複数台であり、これ等集塵ユニットは前記空気の通流方向に対しほぼ直交する平面に関して左右方向および/または上下方向に複数台が設置され、前記水洗浄ユニットは、筐体内に設置される複数台のそれぞれの前記集塵ユニットの上方に配置されて、前記洗浄水を下向きに吐出すること、または、
2)前記1項に記載の手段において、前記水洗浄ユニットは洗浄水を吐出する複数の洗浄水ノズルを装着した管状のノズル用管体と,このノズル用管体の複数に共通に洗浄水を供給するヘッダー管とを備え、それぞれの前記ノズル用管体は管の中心軸線をほぼ同一平面上に位置させると共に洗浄水を洗浄水ノズルに通流させるための通路が前記平面にほぼ平行させて設けられ、それぞれの洗浄水ノズルはL字状の接ぎ手を介して前記通路から洗浄水を流入させ,この洗浄水を前記平面にほぼ直交する方向に吐出することにより達成される。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下この発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。図1はこの発明の実施の形態の一例による電気集塵機を示すその正面図であり、図2は図1による電気集塵機の側面断面図であり、図3は図2のR部の一部破断した要部の詳細図であり、図4は図3のS部の断面図である。図1〜図4において、1は、筐体2,集塵ユニット3,水洗浄ユニット4,下部ドレンパン洗浄ユニット29、絶縁碍子部水洗浄部(図示せず)などを備えた、この発明による電気集塵機である。筐体2は下部筐体22と,この下部筐体22の上部に取り付けられた上部筐体21とを有し、上部筐体21および下部筐体22には、空気9(図2に白抜きの矢印で示す)の流入側と流出側のそれぞれにダンパーが取り付けられた両開きの扉23,23が設置されている。なお以降では、空気9の流入側を前面側と、また、空気9の流出側を後面側と呼ぶことがある。
下部筐体22にはその底部に下部ドレンパン24が、また、底部の後面側には下部ドレンパン24に連通させて排水口25が設けられている。上部筐体21および下部筐体22のそれぞれの内部の空気9の流路中には、前面側および後面側から見て、左右方向に2台,上下方向に2段の計4台の集塵ユニット3が設置されており、扉23を開くことで、集塵ユニット3を上部筐体21または下部筐体22から引き出すことができる。それぞれの集塵ユニット3は、空気9に含まれる塵埃に電荷を与える帯電部分がユニット化されて構成された帯電部ユニット31と、帯電された塵埃を吸着する極板などからなる集塵部分がユニット化されて構成された集塵部ユニット32とを組み合わせて形成されている。したがって集塵ユニット3の構成形式からは、電気集塵機1は2段式電気集塵機に属しており、この集塵ユニット3の構成・仕様などは従来技術の2段式電気集塵機で使用されているものと同一である。
それぞれの集塵ユニット3では、帯電部ユニット31は空気9の流入側に配置され、集塵部ユニット32は空気9の流出側に配置されている。この発明の場合の水洗浄ユニット4はそれぞれの集塵ユニット3の上方に配置されており、高圧の洗浄水8を吐出する複数の洗浄水ノズル5を装着した複数(この事例の場合には5本)のノズル用管体41と、この複数のノズル用管体41に共通に洗浄水8を供給するヘッダー管43とを備えている。ノズル用管体41とヘッダー管43はこの事例の場合には共に円管であり、接着法や溶接法などの適宜の接合方法によって水密に接合されている。ノズル用管体41には洗浄水ノズル5を装着する部位にボス42が適宜の接合方法により水密に接合されている。このボス42の中心部には、ねじ孔421がその中心軸線を、この事例の場合には、5本のノズル用管体41の中心軸線を連ねる平面X―Xに合致させて形成されている。
このねじ孔421は洗浄水8をノズル用管体41から洗浄水ノズル5に通流させる通路の役目と、洗浄水ノズル5をノズル用管体41に装着する役目とを兼ねている。洗浄水ノズル5はこの事例の場合にはアングル接ぎ手(L字状の接ぎ手の一種)付きの洗浄水ノズルであり、ねじ孔421にアングル接ぎ手部のおねじをねじ込むことで、ノズル用管体41に装着される。そうして、ねじ孔421から洗浄水ノズル5に流入した洗浄水8は、洗浄水ノズル5のアングル接ぎ手部で通流方向を90度変えて、図4の矢印で示したように平面X―Xに直交する方向に吐出される。
【0008】
上部筐体21内に上下2段に設置された集塵ユニット3,3のそれぞれの上方に配置された水洗浄ユニット4,4には、給水配管7などを介して高圧の洗浄水8が供給される(図3参照)。なお、洗浄水ノズル5のアングル接ぎ手部を除いたノズル本体部の構造,形状,仕様は、従来技術の電気集塵機で使用されている洗浄水ノズルと基本的に同一である。なおまた、水洗浄ユニット4への洗浄水8の供給構成は、下部筐体22内に設置された集塵ユニット3,3の場合も、前記した上部筐体21内の場合と同様である。
ここで、電気集塵機1の洗浄水ノズル5に関して、集塵ユニット3を電気集塵機1と同等の左右方向に2台,上下方向に4段,合計8台を設置する従来技術の電気集塵機の場合と比較してみる。比較対象の従来技術の電気集塵機は、電気集塵機1と同様に上部筐体と下部筐体とを備え、それぞれの上部筐体および下部筐体内に4台の集塵ユニット3が設置されると共に、水洗浄ユニットがそれぞれの集塵ユニット群の上面側,前面側および後面側に、前記特許文献2に示された電気集塵機の場合と同様に配置されているものとする。
そうした場合この事例の電気集塵機1では、洗浄水ノズル5の1個当たりの洗浄水8の吐出量は、従来技術の電気集塵機の洗浄水ノズルの場合と同等であり、また、1台の水洗浄ユニット4が持つ洗浄水ノズル5の個数は、従来技術の上面側水洗浄ユニットが持つ洗浄水ノズルの個数の大略2倍に近い個数である。また、この電気集塵機1では、1回の洗浄時に1台の水洗浄ユニット4から1台の集塵ユニット3に供給する洗浄水8の吐出量は、従来技術の電気集塵機が備えた集塵ユニット3の上面側,前面側および後面側に配置された各1台の水洗浄ユニットから集塵ユニット3の1台当たりに供給される洗浄水8の吐出量よりもやや少ない量で済んでいる。
集塵ユニット3が持つ絶縁碍子(図示せず)に付着した塵埃の除去用の高圧の洗浄水8を絶縁碍子部に吐出するために、洗浄水ノズルを備えた絶縁碍子部水洗浄部(図示せず)がこの電気集塵機1にも備えられている。この絶縁碍子部水洗浄部は従来技術の電気集塵機で使用されていたものと基本的に同等なので、その説明を省略する。また、下部ドレンパン洗浄ユニット29も従来技術の電気集塵機で使用されていたものと基本構成は同一であり、複数の洗浄水ノズル(図示せず)を備えている。集塵ユニット3を洗浄しつつ流れ下って下部ドレンパン24に集まってきた塵埃を含む洗浄水は、下部ドレンパン洗浄ユニット29の洗浄水ノズルから吐出された高圧の洗浄水8により押し流され、排水口25から電気集塵機1の外部に確実に排出される。なお、下部ドレンパン洗浄ユニット29の洗浄水ノズルからの洗浄水8の吐出方向は、図2にPを付した矢印が示す方向である。そうして電気集塵機1では、下部ドレンパン洗浄ユニット29への洗浄水8の供給と,絶縁碍子部水洗浄部への洗浄水8の供給とは、同一の給水系統から行われている。
【0009】
図1〜図4に示すこの発明の実施の形態の一例による電気集塵機1では前述の構成としたので、それぞれの集塵ユニット3の極板などに堆積された塵埃は、その上方に配置された水洗浄ユニット4が持つ洗浄水ノズル5から吐出された高圧の洗浄水8により次記のようにして洗浄される。すなわち、水洗浄ユニット4が集塵ユニット3の上方に配置されているので、洗浄水ノズル5から吐出される洗浄水8は、自由落下時の重力による加速度の増加作用を利用できることで空気の抵抗の影響を低減でき、各集塵ユニット3はその下部部分であっても高圧の洗浄水8の速度水頭による塵埃の除去効果を利用できる。また水洗浄ユニット4がそれぞれの集塵ユニット3の上方に配置されているので、集塵ユニット3の上下方向の設置台数がどのような場合であっても、それぞれの集塵ユニット3は、洗浄水ノズル5からの洗浄水8の供給をほぼ同一の条件で受けられる。
さらに、集塵ユニット3の上面面積〔集塵ユニット3の左右方向寸法×集塵ユニット3の長手方向(空気9の通流方向)寸法〕当たりの洗浄水ノズルの設置個数を従来技術の場合よりも前記のように増加させたことにより、集塵ユニット3の各部は従来技術の場合よりも多量でしかもより均等な洗浄水8によって洗浄を受ける。図5,図6を用いて、集塵ユニット3に供給される洗浄水8の状況をさらに詳細に説明する。ここで図5はこの発明の電気集塵機の集塵ユニット群に対する洗浄水分布試験結果例の説明図で、図6は従来技術の電気集塵機の集塵ユニット群に対する洗浄水分布試験結果例の説明図である。図5,図6を用いる説明においては、図1〜図4に示した電気集塵機1と同一部分には同じ符号を付し、その説明を省略する。なお、この試験に用いられた電気集塵機は、この発明の場合も,従来技術の場合も電気集塵機1の上部筐体21に設置されたものと同一の集塵ユニット3の構成を持っている。
【0010】
また、従来技術の場合は集塵ユニット群を洗浄する洗浄水8は前面側および後面側の水洗浄ユニットから供給されるものが主体なので、図6の試験結果を得た試験時には上面側の水洗浄ユニットは配置していない。図5,図6において6は直方体状の外形を持つ試験用容器であり、図示のように多数の仕切板61が等間隔で配置されており、試験用容器6の壁板と仕切板61とで区切られた多数の空間が形成されている。そうして、この空間の上面開口面積と容積とは全て同一である。この試験用容器6を図5,図6に示すように集塵ユニット3の下側にセットし、各水洗浄ユニットから洗浄水8を適宜の時間だけ吐出させ、その際に試験用容器6のそれぞれの前記空間に溜まった洗浄水8の水位を計測すれば、集塵ユニット3に供給された洗浄水8の分布状況を明確に把握できる。
図5,図6の試験用容器6の図には、このような試験により得られた試験用容器6のそれぞれの空間に溜まった洗浄水8の水位の事例がハッチングを付して示されている。図5,図6において、試験用容器6のそれぞれの空間に溜まった洗浄水8の水位を視察すれば、図6による従来技術の場合には、集塵ユニット3の極板の端部付近に対し極板の中央部付近では洗浄水8の水量が極めて少なく、最悪の部位では水量が零になっていることが分かる。これに対し図5によるこの発明の場合には、極板の両端部から中央部にわたり、場所による変動は有るもののどの部位でもほぼ一様な水量になっており、洗浄水8の分布状態が従来技術の場合よりも大幅に改善されていることが分かる。なお、図5における試験用容器6に溜まった洗浄水8の水量の変動は洗浄水ノズル5の設置位置にほぼ対応している。
集塵ユニット3の極板に堆積した塵埃の洗浄に関しては、洗浄水8の水量と共に堆積した塵埃に加えられる洗浄水8の速度水頭の効果が加わる。前記したように自由落下時の重力による加速度の増加作用を利用できるこの発明の電気集塵機1の場合には、極板の全面において洗浄水8の速度水頭をかなり均等化できることで、極板に堆積した塵埃は、極板のどの部位であっても、水洗浄ユニット4の洗浄水ノズル5から吐出された洗浄水8によって確実に除去することができる。このことにより、電気集塵機1の場合には、極板への塵埃の堆積が原因での火花放電の発生頻度が大幅に低減されることで、火花放電の発生が原因での電気集塵機の故障を実質的に無くすことができると共に、電気集塵機の集塵効率の低下の問題も解消でき、また、電気集塵機1の集塵能力も向上できる。
【0011】
また電気集塵機1では集塵ユニット3の極板に堆積した塵埃の洗浄は、集塵ユニット3の上方に配置された水洗浄ユニット4だけで実施でき、この水洗浄ユニット4は空気9の通路の外に配置されているので、空気9の通流に関する圧力損失の増加要因にはならない。したがって、従来技術の電気集塵機の問題の一つとされていた前面側および後面側の水洗浄ユニットが空気9の通路内に配置されることで、空気9の通路の圧力損失の低減を図る上での阻害要因になっているという問題も、この発明の電気集塵機1の水洗浄ユニット4の配置構成により解消できる。
また電気集塵機1ではそれぞれの水洗浄ユニット4は、集塵ユニット3の周辺付近で上部筐体21または下部筐体22に保持されるので、前面側および後面側の扉23に保持される水洗浄ユニットは全く無い。したがって、電気集塵機1のどの扉23にも、従来技術の電気集塵機の場合には有ったスイベルジョイントなどは装着されない。このことにより、従来技術の電気集塵機の問題の一つとされていたスイベルジョイントなどの回動部に塵埃が侵入してしまうことに起因する扉の回動不良の問題も、この発明の電気集塵機1の水洗浄ユニット4の配置構成により解消できる。また、電気集塵機1では扉23には水洗浄ユニットの重量などが加わらないのでその分だけ扉23に加わる荷重が軽減されるために、扉23自体の経年的な変形,扉23のヒンジなどの変形が軽減されることから、電気集塵機1の保守時の扉23の開閉操作を長期間にわたりスムースに行うことができるなどの望外の効果も得られる。
さらにまた、電気集塵機1では集塵ユニット3の極板などの水洗浄に使用される水洗浄ユニットは、従来技術の電気集塵機の場合とは異なり水洗浄ユニット4だけなので、水洗浄ユニット4への洗浄水8の供給系統を容易に1系統に集約できる。したがって、従来技術の電気集塵機の問題の一つとされていた集塵ユニット3の極板などの水洗浄に使用される洗浄水の供給に複数の供給系統が必要なために、電気集塵機の製造原価の低減努力の阻害要因になっているという問題も、この発明の電気集塵機1の水洗浄ユニット4の配置構成により同時に解消できる。
【0012】
ところで、電気集塵機1の水洗浄ユニット4に関して、集塵ユニット3を電気集塵機1と同一の、左右方向および上下方向に各2台,合計4台を収容した上部筐体と下部筐体とで構成され、合計8台の集塵ユニット3を収容した従来技術の電気集塵機の場合と比較してみる。従来技術の電気集塵機の場合には、上部筐体および下部筐体の集塵ユニットの上方に配置される水洗浄ユニットは、上下方向に2台の集塵ユニット3に対して1台である。これに対して、この発明の電気集塵機1の場合には、上下方向に2台の集塵ユニット3に対して合計2台である。したがって、電気集塵機1の上部筐体および下部筐体は、何らの対策も施さなければ、従来技術の電気集塵機の場合よりも1台の水洗浄ユニットが余分に配置される分だけ、その高さ寸法が増大してしまうことになる。電気集塵機1は、寸法制約が極めて厳しいトンネル内などに設置される装置なので、外形寸法の増大は大きな課題になる。電気集塵機1はこの課題に対して次記の対処を行うことで、従来技術の電気集塵機の場合と同等の高さ寸法を獲得できている。
【0013】
電気集塵機1の筐体2の高さ寸法を従来技術の電気集塵機の場合と同等寸法にするための主体となる手段は、図4を用いて先に説明した水洗浄ユニット4の構造である。まず、従来技術の電気集塵機の洗浄水ノズルとノズル用管体との関係を述べる。従来技術の場合の洗浄水ノズルはこの発明の場合の洗浄水ノズル5とは異なり、ノズル用管体から流入してきた洗浄水8を、その流入方向と合致させたままで吐出する一般的な構成の洗浄水ノズルである。また、ノズル用管体は、図4を流用して説明すると、その中心軸線の直下に洗浄水ノズルを装着するボスが設けられ、このボスの中心部に平面X―Xに直交する方向に、洗浄水ノズルに洗浄水8を通流させる通路と,洗浄水ノズルのノズル用管体への装着部とを兼ねるねじ孔が形成されている。
したがって、洗浄水ノズルの先端部とノズル用管体の下端部との間隔(図4におけるA寸法に対応)はノズル用管体の外形のほぼ1/2程度の寸法になっていた。他方、この発明の場合には図4を用いて説明した水洗浄ユニット4の構成とすることで、洗浄水ノズル5の先端部とノズル用管体41の下端部との間隔;A寸法を、従来技術の場合よりもかなり短くすることができている。このA寸法の短縮は、電気集塵機1の上部筐体21および下部筐体22の高さ寸法の削減に極めて有効で、これにより電気集塵機1の筐体2の高さ寸法を、従来技術の電気集塵機の筐体の高さ寸法とほぼ同等レベルにすることができる。
電気集塵機1では、筐体2の高さ寸法を従来技術の電気集塵機の筐体の高さ寸法と確実に同等にできるようにするために、下部ドレンパン24の高さ寸法にも検討を加えている。すなわち、従来技術の電気集塵機の場合には、洗浄水8を電気集塵機へ取り入れる給水口の位置を、上部と下部のどちらにでも選択できるよう配慮しており、このために、下部ドレンパンの高さ寸法は、下部ドレンパンが配置されている部位に下部給水口を設置できる余裕を持った寸法にしていた。しかしながら最近では、電気集塵機の処理能力が増大されてきたことにより、下部給水口を設ける必要がほとんど無くなっている。
発明者らはこのことに着眼して、この発明の下部ドレンパン24では給水口を設けるためのスペースを削除し、その高さ寸法を縮小させた。下部ドレンパン24での高さ寸法の縮小は、下部筐体22の高さ寸法の削減に有効であり、この下部ドレンパン24を水洗浄ユニット4と併用することで、電気集塵機1は、その筐体2の高さ寸法を従来技術の電気集塵機の筐体の高さ寸法と確実に同等にすることができている。
【0014】
前述の説明では、電気集塵機1は2段式電気集塵機であるとしてきたが、これに限定されるものではなく、前記1段式電気集塵機であってもよいことは勿論のことである。また前述の説明では、水洗浄ユニット4のボス42に形成されるねじ孔421は、その中心軸線を前記平面X―Xに合致させて形成されるとしてきたが、これに限定されるものではなく、例えばねじ孔421は、その中心軸線が前記平面X―Xから離れると共に平面X―Xにほぼ平行させるようにして形成されてもよい。
【0015】
【発明の効果】
この発明による電気集塵機では、前記課題を解決するための手段の項で述べた構成とすることで、次記する効果を得られる。
▲1▼前記課題を解決するための手段の項の第(1)項による構成とし、水洗浄
ユニット4をそれぞれの集塵ユニット3の上方に配置して、極板などを水洗浄する洗浄水8を下向きに吐出することで、極板のどのような部位に堆積した塵埃あっても洗浄水8によって確実に除去することが可能になり、電気集塵機の集塵効率の低下の解消および、電気集塵機の集塵能力の向上が可能になる。またこれと同時に、電気集塵機に通流する空気9の通路内に水洗浄ユニットを配置する必要が無くなることで、空気9の通路の圧力損失が低減され、電気集塵機に通流する空気9の高速化とこれに伴う電気集塵機の処理能力の増大が可能になる。
またこれと同時に、電気集塵機の扉23には従来技術の場合に存在していたスイベルジョイントなどの回動部の取り付けが不要になることなどで、この回動部に塵埃が侵入することに起因する扉の回動不良などの保守上の問題も解消され、電気集塵機の保守性の改善が可能になる。さらにこれと同時に、集塵ユニット3の極板の水洗浄に用いられる水洗浄ユニットが水洗浄ユニット4の1種類だけになり、集塵ユニット3の上方の部位に集約して配置されることで、水洗浄ユニット4への洗浄水8の供給系統を1系統に集約することが可能になる。これにより、洗浄水8の供給系統に関わる電気集塵機の製造原価の低減が可能になる。また、▲2▼前記課題を解決するための手段の項の第(2)項による構成とすることで、前記▲1▼項による効果が得られるこの発明の電気集塵機の筐体2の高さ寸法を、従来技術の電気集塵機の筐体の高さ寸法と同等にすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態の一例による電気集塵機を示すその正面図
【図2】図1による電気集塵機の側面断面図
【図3】図2のR部の一部破断した要部の詳細図
【図4】図3のS部の断面図
【図5】この発明の電気集塵機の集塵ユニット群に対する洗浄水分布試験結果例の説明図
【図6】従来技術の電気集塵機の集塵ユニット群に対する洗浄水分布試験結果例の説明図
【符号の説明】
1 電気集塵機
3 集塵ユニット
4 水洗浄ユニット
41 ノズル用管体
43 ヘッダー管
5 洗浄水ノズル
8 洗浄水
Claims (2)
- 筐体内の空気流路中に設置された集塵ユニットと、この集塵ユニットの極板などに堆積された塵埃を水洗浄により除去するための洗浄水を吐出する水洗浄ユニットとを備える電気集塵機において、
前記筐体内に設置される前記集塵ユニットは複数台であり、これ等集塵ユニットは前記空気の通流方向に対しほぼ直交する平面に関して左右方向および/または上下方向に複数台が設置され、前記水洗浄ユニットは、筐体内に設置される複数台のそれぞれの前記集塵ユニットの上方に配置されて、前記洗浄水を下向き吐出することを特徴とする電気集塵機。 - 請求項1に記載の電気集塵機において、前記水洗浄ユニットは洗浄水を吐出する複数の洗浄水ノズルを装着した管状のノズル用管体と,このノズル用管体の複数に共通に洗浄水を供給するヘッダー管とを備え、それぞれの前記ノズル用管体は管の中心軸線をほぼ同一平面上に位置させると共に洗浄水を洗浄水ノズルに通流させるための通路が前記平面にほぼ平行させて設けられ、それぞれの洗浄水ノズルはL字状の接ぎ手を介して前記通路から洗浄水を流入させ,この洗浄水を前記平面にほぼ直交する方向に吐出することを特徴とする電気集塵機。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003033165A JP2004243159A (ja) | 2003-02-12 | 2003-02-12 | 電気集塵機 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR101867373B1 (ko) * | 2015-06-25 | 2018-06-15 | 한국기계연구원 | 집진판 세정 장치 및 이를 구비한 습식 전기집진기 |
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2003
- 2003-02-12 JP JP2003033165A patent/JP2004243159A/ja not_active Withdrawn
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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KR101867373B1 (ko) * | 2015-06-25 | 2018-06-15 | 한국기계연구원 | 집진판 세정 장치 및 이를 구비한 습식 전기집진기 |
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