JP2004241721A - 低融点金属シート及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】低融点金属シート1は、Bi−Sn−In系の合金(融点=60℃〜100℃)をシート状に成形した基材3中に、有機系ポリマー(12ナイロン,66ナイロン,6ナイロン,PES等)の粒子5が分散した構成を有している。上記合金のような低融点金属は、融解した場合に有機系ポリマーの粒子5に対してある程度の濡れ性を有している。このため、上記合金で構成される基材3が融解しても、基材3中に分散した粒子5によって液ダレが防止される。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、低融点金属からなる基材をシート状に成形した低融点金属シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、シリコーン等の基材に熱伝導フィラーを充填し、混練・成形してなる熱伝導シートが考えられている。この種の熱伝導シートは、電気・電子装置の内部において、例えば、発熱源となる電子部品と、放熱板や筐体パネル等といったヒートシンクとなる部品(以下、単にヒートシンクという)との間に介在させるように配置して使用される。このように熱伝導シートを配置した場合、電子部品等が発生する熱をヒートシンク側へ比較的良好に逃がすことができる。このため、この種の熱伝導シートは、例えばCPUの高速化等のために不可欠な素材として注目を集めている。
【0003】
しかしながら、上記のような熱伝導シートでは、熱伝導性を向上させるために基材に多量の熱伝導フィラーを充填する必要があり、シリコーン等の有機材料を基材とした熱伝導シートには熱伝導性向上に限界があった。そこで、ヒートシンクと電子部品との間に低融点合金を配設し、これによってヒートシンク−電子部品間の熱伝導性を向上させる試みがなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−257298号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、ヒートシンクと電子部品との間に低融点合金を挟んで使用する場合、低融点合金が融解して滴下するいわゆる液ダレが発生する可能性があった。特に、近年のパソコンでは、マザーボードを縦横どちらにでも配置できるような設計がなされており、基板が鉛直方向に配置される場合は液ダレを一層確実に防止する必要が生じる。そこで、本発明は、熱伝導材として使用可能な低融点金属シートにおいて、液ダレを良好に防止することを目的としてなされた。
【0006】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
上記目的を達するためになされた請求項1記載の発明は、低融点金属をシート状に成形した基材中に、有機系ポリマーの粒子または繊維が分散したことを特徴とする低融点金属シートを要旨としている。
【0007】
このように構成された本発明では、融解した低融点金属は有機系ポリマーの粒子または繊維に対して濡れ性を有するため、基材を構成する低融点金属が融解しても、基材中に分散した有機系ポリマーの粒子または繊維によって液ダレが防止される。従って、本発明の低融点金属シートは、熱伝導材として使用した場合にも、液ダレを良好に防止することができる。また、本発明では、副次的な効果として、有機系ポリマーを混入したことにより、低融点金属シートを低融点金属のみで構成した場合に比べてコストダウンを図ることができるといった効果が生じる。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の構成に加え、上記有機系ポリマーの粒子または繊維が、上記基材中に1〜50重量%分散したことを特徴としている。有機系ポリマーの粒子または繊維が1重量%未満では液ダレ防止効果が充分に発揮されない可能性があり、50重量%を超えると熱伝導性が低下してしまう可能性がある。本発明では1〜50重量%の有機系ポリマーの粒子または繊維を分散させているので、請求項1記載の発明の効果に加えて、熱伝導性と液ダレ防止とを一層良好に両立することができるといった効果が生じる。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の構成に加え、上記低融点金属が、Snを5〜30重量%含むBi−Sn−In系合金であることを特徴としている。
低融点金属を上記組成で構成した場合、融点を60℃〜100℃に調整することが容易にでき、次のような効果が生じる。すなわち、融点が100℃を超える場合は、ソルトバス等を使用する必要が生じるが、融点が100℃以下であると、湯煎等によって容易に低融点金属を融解させることができ、有機系ポリマーの粒子または繊維を分散させたりシート状に成形したりする作業が極めて容易になる。一方、融点が60℃未満であると、夏場の輸送時等に融解し、シート形状が変形する可能性がある。本発明では、低融点金属を上記組成で構成することによって融点を60℃〜100℃に容易に調整することができるので、請求項1または2記載の発明の効果に加えて、熱伝導材として良好な機能を発揮すると共に、製造が容易であるといった効果が生じる。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の構成に加え、上記低融点金属の融点が、60℃〜100℃であることを特徴としている。
低融点金属の融点を60℃〜100℃に調整する方法としては、上記組成以外にも種々の組成が考えられ、また、何らかの添加物を添加することによって上記融点に調整することも考えられる。本発明では、低融点金属の融点を60℃〜100℃としているので、請求項3に関連して説明したのと同様の理由により、請求項1〜3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、熱伝導材として良好な機能を発揮すると共に、製造が容易であるといった効果が生じる。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の構成に加え、上記有機系ポリマーがナイロン系の樹脂であることを特徴とする。
ナイロン系の樹脂は低融点金属に対する濡れ性が良好である。本発明では、有機系ポリマーをナイロン系の樹脂としているので、請求項1〜4のいずれかに記載の発明の効果に加えて、上記粒子または繊維に対する低融点金属の濡れ性を向上させて、一層良好に液ダレを防止することができるといった効果が生じる。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の構成に加え、上記有機系ポリマーの粒子内に、熱伝導フィラーが充填されたことを特徴としている。本発明では、有機系ポリマーが粒子である場合において、その内部に熱伝導フィラーが充填されているので、低融点金属シート全体としての熱伝導性を一層良好に向上させることができる。従って、本発明では、請求項1〜5のいずれかに記載の発明の効果に加えて、低融点金属シート全体としての熱伝導性を一層向上させることにより、熱伝導材として一層良好な機能を発揮することができるといった効果が生じる。
【0013】
請求項7記載の発明は、Snを5〜30重量%含むBi−Sn−In系合金を、60℃〜100℃に加熱して融解させ、該融解した合金中に有機系ポリマーの粒子または繊維を分散させた後、シート状に成形することを特徴とする低融点金属シートの製造方法を要旨としている。
【0014】
前述のように、Snを5〜30重量%含むBi−Sn−In系合金は、60℃〜100℃に加熱することによって容易に融解させることができる。こうして融解された上記合金中に有機系ポリマーの粒子または繊維を分散させた後、シート状に成形すれば、請求項3記載の低融点金属シートが得られる。従って、本発明では、請求項3記載の低融点金属シートを容易に製造することができるといった効果が生じる。
【0015】
請求項8記載の発明は、請求項7記載の構成に加え、上記加熱を湯煎によって行うことを特徴としている。
本発明では、請求項7における加熱(60℃〜100℃)を、湯煎によって行っている。湯煎による加熱は極めて容易である。従って、本発明では、請求項7記載の発明の効果に加えて、請求項3記載の低融点金属シートを一層容易に製造することができるといった効果が生じる。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を図面と共に説明する。図1は、本発明が適用された低融点金属シート1の構成を模式的に表す説明図である。図1に示すように、本実施の形態の低融点金属シート1は、Snを5〜30重量%含むBi−Sn−In系合金(融点=60℃〜100℃)をシート状に成形した基材3中に、有機系ポリマー(12ナイロン,66ナイロン,6ナイロン,PES等:融点=200℃以上)の粒子5が分散した構成を有している。
【0017】
上記合金のような低融点金属は、融解した場合に有機系ポリマーの粒子5に対してある程度の濡れ性を有している。このため、上記合金で構成される基材3が融解しても、基材3中に分散した粒子5によって液ダレが防止される。従って、低融点金属シート1は、熱伝導材として使用した場合にも、液ダレを良好に防止することができる。また、低融点金属シート1では、副次的な効果として、粒子5を混入したことにより、低融点金属シート1を低融点金属のみで構成した場合に比べて材料費のコストダウンを図ることができる。
【0018】
【実施例】
次に、低融点金属シート1を実際に製造し、異なる条件で製造された低融点金属シート(比較例)とその物性を比較した。
(実施例1)
Bi30g、In50g、Sn20gをそれぞれ秤量し、500℃の電気炉内で混練することにより合金化を行った。続いて、合金化によって得られたインゴットを坩堝に入れて100℃の湯煎に挿入し、有機系ポリマーの粒子5と混練した。なお、本実施例では、有機系ポリマーとして球状の12ナイロン製粒子(アトフィナ製、商品名「オルガソール」)を用いた。更に、合金に対する粒子5の割合は、重量比で95:5(99:1〜50:50の範囲で変更可能)、体積比で80:20(90:10〜20:80の範囲で変更可能)とした。
【0019】
上記のようにして得られた混練物をカレンダロールによりシート化し、100mm×100mm×0.2mmの低融点金属シート1を得た。なお、カレンダロールによるシート化は、ロール温度を常温に保ったままで行った。
(実施例2)
実施例1と同様にして得られた混練物を、100℃×2〜3分のプレス成形にかけることにより、シート化して100mm×100mm×0.2mmの低融点金属シート1を得た。
(実施例3)
実施例1における有機系ポリマーの粒子5の代わりに、熱伝導フィラーとしての窒化硼素が充填された有機系ポリマーの粒子を使用し、他は実施例1と同様の製造方法で低融点金属シートを得た。なお、上記粒子は、次のようにして構成した。
【0020】
先ず、2軸押出混練機にて12ナイロンの樹脂と窒化硼素粒子とを混練し、φ3〜5mmに押し出してペレタイザにより数ミリにカットした。それを冷凍粉砕機にて数十μmに粉砕し、メッシュにて粒径調整して、上記熱伝導フィラー入りの有機系ポリマー粒子を得た。
(比較例1)
実施例1と同様にして得られた合金のインゴットを、粒子5を混練することなくそのままカレンダロールによりシート化し、100mm×100mm×0.2mmの低融点金属シートを得た。
(比較例2)
実施例1と同様にして得られた合金のインゴットを、粒子5を混練することなくそのまま100℃×2〜3分のプレス成形にかけることにより、シート化して100mm×100mm×0.2mmの低融点金属シートを得た。
【0021】
以上のようにして製造された実施例及び比較例に対し、ASTMD5470の規格に沿った周知の方法で熱抵抗を測定した。また、各実施例及び比較例に対して、次のように液ダレの防止効果を評価した。すなわち、試料を80℃に加熱した上で100g/cm2 の圧力を30分間印加した後の液ダレの有無を、目視にて観察し、液ダレ有りを「×」、液ダレなしを「○」とした。結果を表1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
表1に示すように、各実施例の低融点金属シート1では、極めて低い熱抵抗を確保すると共に、液ダレを良好に防止することができた。また、粒子5の中に熱伝導フィラーを充填した実施例3では、熱抵抗を一層低下させることができた。なお、熱伝導フィラーとしては、実施例3のものの他、アルミナ,炭化珪素,グラファイト等を使用することができる。このため、各実施例の低融点金属シート1は、電子部品等とヒートシンクとの間に挟んで熱伝導材として使用する場合、極めて顕著な効果を発揮する。また、上記各実施例では、基材3を構成する低融点金属の融点を60℃〜100℃に調整したので、熱伝導材として使用する際にも融点が低過ぎることはなく、しかも、湯煎等を利用した製造が可能となって製造が極めて容易になる。
【0024】
なお、本発明は上記実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。例えば、シート状に成形する際の成形方法としては、上記の他にもコータ等の各種方法が適用でき、低融点金属としては、上記の他、Bi,In,Sn,Zn合金等を使用することができる。
【0025】
また、有機系ポリマーとしても、融解した低融点金属に対する濡れ性が良好なものであれば種々のものを使用することができる。また、粒子5の表面にプラズマ等による処理を施して濡れ性を向上させてもよい。更に、粒子状ではなく、同様の有機系ポリマーで繊維状に形成したものを使用してもよい。なお、粒子5として、金属製の球等を有機系ポリマーで被覆したものを使用しても同様の効果が得られる。すなわち、本発明における「有機系ポリマーの粒子」とは、少なくとも表面が有機系ポリマーで構成されていればよい。
【0026】
更に、製造方法としても、上記各実施例で挙げたもの以外に種々の方法を利用することができる。例えば、低融点金属と粒子5とを混練する場合、低融点金属も粒子状に形成しておき、両粒子を撹拌しながら加熱してもよい。この場合、粒子5を構成する有機系ポリマーと低融点金属との間に比重差がある場合でも、基材3中に均一に粒子5を分散させることができる。また、撹拌時の温度を、低融点金属が完全に融解しない程度の温度とすれば、基材3中に一層均一に粒子5を分散させることができ、脱気しながら撹拌を行えば気泡が混入して熱抵抗が下がるのを防止することができる。
【0027】
更に、図2に示すように、低融点金属を多数の箔33としておき、その箔33の間に粒子5を挟んだ上で圧延することによっても、図1に示したような低融点金属シート1を製造することができる。この場合も、上記各実施例の製造方法によって製造した場合と同様に、粒子5の周りで低融点金属がくっつき合い、得られた低融点金属シート1は上記各実施例と同様の特性を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用された低融点金属シートの構成を模式的に表す説明図である。
【図2】その低融点金属シートの製造方法の変形例を表す説明図である。
【符号の説明】
1…低融点金属シート 3…基材 5…粒子 33…箔
Claims (8)
- 低融点金属をシート状に成形した基材中に、有機系ポリマーの粒子または繊維が分散したことを特徴とする低融点金属シート。
- 上記有機系ポリマーの粒子または繊維が、上記基材中に1〜50重量%分散したことを特徴とする請求項1記載の低融点金属シート。
- 上記低融点金属が、Snを5〜30重量%含むBi−Sn−In系合金であることを特徴とする請求項1または2記載の低融点金属シート。
- 上記低融点金属の融点が、60℃〜100℃であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の低融点金属シート。
- 上記有機系ポリマーがナイロン系の樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の低融点金属シート。
- 上記有機系ポリマーの粒子内に、熱伝導フィラーが充填されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の低融点金属シート。
- Snを5〜30重量%含むBi−Sn−In系合金を、60℃〜100℃に加熱して融解させ、
該融解した合金中に有機系ポリマーの粒子または繊維を分散させた後、シート状に成形することを特徴とする低融点金属シートの製造方法。 - 上記加熱を湯煎によって行うことを特徴とする請求項7記載の低融点金属シートの製造方法。
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