JP2004240245A - 顕微鏡用液浸油 - Google Patents
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Abstract
【課題】それ自体の蛍光性が低く、屈折率、アッベ数、粘度、解像力など顕微鏡用液浸油に要求される諸性質も良好であり、特に蛍光顕微鏡用として好適な顕微鏡用液浸油を提供すること。
【解決手段】(A)液状ジエン系共重合体100質量部に対して、(B)フタル酸エステル2〜20質量部及び(C1)流動パラフィン及び/又は(C2)ハロゲン化パラフィン5〜50質量部を配合する顕微鏡用液浸油である。
【選択図】 なし
【解決手段】(A)液状ジエン系共重合体100質量部に対して、(B)フタル酸エステル2〜20質量部及び(C1)流動パラフィン及び/又は(C2)ハロゲン化パラフィン5〜50質量部を配合する顕微鏡用液浸油である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、顕微鏡用液浸油に関し、詳しくは低蛍光性を有し、特に蛍光顕微鏡用として好適な液浸油に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、顕微鏡分野において液浸油は極めて一般的に用いられている。液浸油を光学的に使用すると、液浸油を使用しない場合とくらべて、実質的に少ない面収差が得られるだけでなく、対物レンズの開口数を大きくして、顕微鏡の倍率を高めることができる。
この場合に用いる液浸油として、フタル酸ベンジルブチルと塩素化パラフィンとからなるもの(例えば、特許文献1参照)、液状ジエン系重合体と流動パラフィンからなるもの(例えば、特許文献2参照)などが知られている。
しかしながら、これらの液浸油は屈折率、アッベ数、粘度、解像力など顕微鏡用液浸油に要求される諸性質をほぼ充分そなえているものの、分光光度計などによる測定においてその蛍光性が比較的強いなどの欠点を有している。
一般に蛍光を発する物体などの観察に用いられる蛍光顕微鏡は、紫外線などの励起光を検査体に照射し、検査体の発する蛍光を観察するものであり、生物学などの広い分野において利用されている。特に最近は非常に少量の蛍光を検出する蛍光顕微鏡の技術が研究されており、このような非常に弱い蛍光を検出する場合に、蛍光顕微鏡の光学系に用いられる液浸油が紫外線励起により発する蛍光が大きいと、検出時のノイズとなって、検出精度が低下する。この点に関して液浸油に関する改良研究が行われているものの、前述のように、昨今のニーズでは液浸油の更なる低蛍光化が求められており、このニーズを充分に満足するものではなかった。
【0003】
【特許文献1】
米国特許第4465621号明細書
【特許文献2】
特公平4−13687号公報(第1頁)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記問題点を解消し、それ自体の蛍光性が低く、屈折率、アッベ数、粘度、解像力など顕微鏡用液浸油に要求される他の諸性質も良好であり、特に蛍光顕微鏡用として好適な顕微鏡用液浸油を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記状況に鑑み、低蛍光性でかつ他の諸特性にも優れた液浸油を開発すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の液状ジエン系重合体、フタル酸エステル及びパラフィン類を、それぞれ特定量配合することによって、その目的を達成しえることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)(A)液状ジエン系共重合体100質量部に対して、(B)フタル酸エステル2〜20質量部及び(C1)流動パラフィン及び/又は(C2)ハロゲン化パラフィン5〜50質量部を配合することを特徴とする顕微鏡用液浸油、
(2)前記液状ジエン系重合体(A)の数平均分子量が、300〜25000である上記(1)の顕微鏡用液浸油、
(3)前記フタル酸エステル(B)が、液状フタル酸エステルである上記(1)または(2)の顕微鏡用液浸油、
(4)前記液状フタル酸エステル(B)が、1,2−ベンゼンジカルボン酸エステルである上記(3)の顕微鏡用液浸油、及び
(5)前記ハロゲン化パラフィン(C2)が、塩素化パラフィンである上記(1)〜(4)の顕微鏡用液浸油、
を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の顕微鏡用液浸油は、液状ジエン系重合体(A)100質量部に対して、フタル酸エステル(B)2〜20質量部及び(C1)流動パラフィン及び/又は(C2)ハロゲン化パラフィンを5〜50質量部配合することを特徴とする。
本発明に用いられる(A)成分の液状ジエン系重合体としては、特に制限はないが、数平均分子量が300〜25000、好ましくは500から10000の液状ジエン系重合体が用いられる。
これらの液状ジエン系重合体としては、炭素数4〜12のジエンモノマーからなるジエン単独重合体、ジエン共重合体、及びこれらジエンモノマーと炭素数2〜22のα−オレフィン付加重合性モノマーとの共重合体などがある。例えば、ブタジエンホモポリマー、イソプレンホモポリマー、クロロプレンホモポリマー、ブタジエン−イソプレンコポリマー、ブタジエン−アクリロニトリルコポリマー、ブタジエン−2−ヘキシルアクリレートコポリマーなどが挙げられる。
また、液状ジエン系重合体は水酸基などの官能基を分子内及び/又は分子末端に有してもよい。あるいは官能基を持たない液状ジエン系重合体との混合物であってもよい。なお、これらの液状ジエン系重合体は、一種単独でも二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0008】
また、本発明で用いられる(B)成分であるフタル酸エステルは、常温、常圧で液状であるフタル酸エステル若しくは常温、常圧で液状である混合フタル酸エステルであれば特に制限はない。
好ましいフタル酸エステルとして例えば、1,2−ベンゼンジカルボン酸ジメチル、1,2−ベンゼンジカルボン酸ジエチル、1,2−ベンゼンジカルボン酸ジn−ブチル、1,2−ベンゼンジカルボン酸ジイソブチル、1,2−ベンゼンジカルボン酸ベンジルメチル、1,2−ベンゼンジカルボン酸ベンジルエチル、1,2−ベンゼンジカルボン酸ベンジルn−ブチル及び1,2−ベンゼンジカルボン酸ベンジルイソブチルなどを挙げることができる。なお、これらフタル酸エステル類は、常温、常圧で液状であるならば一種単独でも二種以上の混合物としても使用することができる。
【0009】
また、本発明で用いられる(C1)成分である流動パラフィンは、いわゆる流動パラフィンであれば特に制限はないが主としてアルキルナフテン類からなる液状炭化水素油が特に好適である。具体的には工業用流動パラフィン、薬局方流動パラフィンなどをあげることができる。
更に、本発明で用いられる(C2)成分であるハロゲン化パラフィンは、液状ハロゲン化パラフィン及び液状の混合ハロゲン化パラフィンを用いる。具体的には、フッ素化パラフィン、塩素化パラフィン、臭素化パラフィン及びヨウ素化パラフィンなどの液状ハロゲン化パラフィン又は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素の中から選ばれる少なくとも二種のハロゲン原子を含有する、液状の混合ハロゲン化パラフィンを挙げることができる。
これらの中でも塩素化パラフィンが好ましい。なお、上記ハロゲン化パラフィンは、通常ハロゲン含有量が、10〜80重量%、好ましくは20〜70重量%、酸化が0.01〜0.50KOHmg/g、粘度が0.05〜4000Pa・s(25℃)、比重が1.10〜1.80(25℃)、及び色度が50〜350(APHA)であるものが好適に用いられ、特に、これらの性状をもつ液状塩素化パラフィンが好ましい。
なお、前記塩素化パラフィンなどのハロゲン化パラフィン又はこれらの混合物の特性値が上記の範囲内から逸脱すると、得られる液浸油の蛍光性が高くなったり、屈折率、アッベ数、動粘度、透明度、色度、などの諸特性が不良となる場合がある。
【0010】
本発明の顕微鏡用液浸油は、(A)成分である液状ジエン系重合体、(B)成分であるフタル酸エステル及び(C1)成分である流動パラフィン及び/又は(C2)成分であるハロゲン化パラフィンを特定の割合で配合することで得ることができる。
すなわち、(A)成分,(B)成分及び(C1)成分及び/又は(C2)成分の配合割合は、(A)成分100質量部に対し、(B)成分2〜20質量部、好ましくは5〜15質量部、さらに、(C1)成分及び/又は(C2)成分10〜50質量部、好ましくは10〜30質量部である。(A)成分,(B)成分及び(C1)成分及び/又は(C2)成分の配合割合を前記配合割合の範囲から逸脱すると、得られる液浸油の蛍光性が高くなったり、屈折率、アッベ数、動粘度、透明度、色度、などやその他の諸特性が不良となる場合がある。
ここで、液浸油に要求されるその他の特性としては、不乾性、外観、耐候性、耐蝕性、コントラスト、解像力、色収差、などが挙げられる。
【0011】
また、(A)成分,(B)成分及び(C1)成分及び/又は(C2)成分の配合の順序には特に制限はなく、同時にあるいは段階的にさまざまな順序で配合することができる。
また、配合の方法についても特に制限はなく、通常、常温付近で攪拌混合することによって配合する方法が好適に用いられる。
さらにまた、本発明の顕微鏡用液浸油には、本来の液浸油としての効果を損なわない限りにおいて、通常の蛍光顕微鏡用液浸油などの顕微鏡液浸油に用いられる添加剤、配合剤を用いることができる。
このようにして得られた本発明の顕微鏡用液浸油は、通常の顕微鏡用の液浸油、特に蛍光顕微鏡用の液浸油として好適に使用することができる。
【0012】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
なお、顕微鏡用液浸油の各種評価は下記の方法を用いて行った。
(1)低蛍光性
蛍光顕微鏡は、光源として蛍光を励起させる紫外線を発する超高圧水銀ランプを使用した。この場合に用いられる励起光としては、波長の長さにより、U励起、V励起、B励起、G励起があり、各励起において蛍光発生量の少ない液浸油が、蛍光顕微鏡にとって望ましい。(日立製作所(株)製 分光蛍光光度計 F−2000によって測定した。)
(2)屈折率(n23 D)及びアッベ数(ν23 D)
いずれもJIS K2101に準拠した。顕微鏡用液浸油として好ましい屈折率の範囲は、1.5140〜1.5160であり、又アッベ数の範囲は40〜46である。
(3)動粘度
JISK2283に準拠した。顕微鏡用液浸油として好ましい動粘度の範囲は、120〜600cSt(25℃)である。
(4)不乾性
JISC2201「電気絶縁油」蒸発量試験に準じ、30℃×24時間で試験を行い、次の二段階で評価した。
良好 (○):蒸発量1重量%未満 不良 (×):1重量%以上
(5)外観
試料を清浄なガラス容器に採り、濁りの有無を確認した。
にごり無し:(○) 濁り若干あり:(△)
(6)耐候性
次の(7)、(8)項記載の評価法である光照射試験及び熱劣化試験の結果ならびに当該試験前後での屈折率、アッベ数、色相の変化により次の二段階で評価した。
良好(○):屈折率、アッベ数、色相共に変化無し。
不良(×):屈折率、アッベ数、色相のいずれかに変化あり。
(7)光照射試験
一定量(40±0.5g)の試料をシャーレーに採り、光を一定時間(24,72,120時間)照射後の屈折率の変化を測定した。変化無しを良好(○)とした。
(8)加熱劣化試験
一定量(40±0.5g)の試料を50mlの共栓付三角フラスコに採り、一定温度(40,70℃)の恒温槽中で24時間保ち、その後の屈折率、アッベ数、色相の変化を観察した。 変化無しを良好(○)とした。
(9)耐蝕性
全酸価(JISK2501)及び塗抹標本用染料への影響(JISK2400)の測定により腐食性有無を調べた。腐蝕無しを(○)、有りを(×)とした。
(10)コントラスト
当該液浸油を用いた顕微鏡において、クロム蒸着をした白黒のプレートに刻んだ白黒の線を見ることにより、次の二段階により評価した。
良好(○):明瞭 不良(×):やや不鮮明
(11)解像力
屈折率により次の二段階で評価した。
良好(○):1.5140〜1.5160 不良(×):左記範囲外
(12)色収差
アッベ数により、次の2段階で評価した。
良好(○):40〜46 不良(×):左記範囲外
(13)透明度
透過率(JISK0115)により、次の二段階で評価した。
良好(○):95%以上 不良(×)95%未満
【0013】
実施例1〜4及び比較例1〜3
第表1に示した各成分をそれぞれ表示量で配合し、25℃で10分間攪拌混合して顕微鏡用液浸油を調製し、これらの液浸油について前記評価方法によって試験を行った。評価結果を第1表に示す。第1表中、評価欄の○印は、良好又は好適、×印は不良もしくは不適当を表す。ただし、低蛍光性の評価について○印は、蛍光性が低いことを示し、△印は、蛍光性が若干高いことを示す。また、外観の評価について○印は、濁り無し、△印は濁り若干ありを示す。
また、各励起光における蛍光強度(相対強度)を第2表に示す。
【0014】
【表1】
【0015】
*1:液状ポリブタジエン 数平均分子量1600
*2:水酸基含有液状ポリブタジエン 出光石油化学(株)社製 商品名「Polybd R−45HT」 数平均分子量2800
*3:水酸基含有液状ポリイソプレン 数平均分子量2500
*4:流動パラフィン 出光興産(株)社製 商品名「ダフニーオイルCP」
*5:塩素化パラフィン 東ソー(株)社製 商品名「トヨパラックス」 塩素含有量50重量%
【0016】
【表2】
【0017】
第1表及び第2表の結果から顕微鏡用液浸油として必要な諸特性を充分維持し、低蛍光性が改良されている。
【0018】
【発明の効果】
本発明の顕微鏡用液浸油は、低蛍光性であり、かつ屈折率、アッベ数、粘度、解像力など液浸油として必要な他の諸特性を高度に維持し、特に蛍光顕微鏡用の液浸油として著しく優れた顕微鏡用液浸油を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、顕微鏡用液浸油に関し、詳しくは低蛍光性を有し、特に蛍光顕微鏡用として好適な液浸油に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、顕微鏡分野において液浸油は極めて一般的に用いられている。液浸油を光学的に使用すると、液浸油を使用しない場合とくらべて、実質的に少ない面収差が得られるだけでなく、対物レンズの開口数を大きくして、顕微鏡の倍率を高めることができる。
この場合に用いる液浸油として、フタル酸ベンジルブチルと塩素化パラフィンとからなるもの(例えば、特許文献1参照)、液状ジエン系重合体と流動パラフィンからなるもの(例えば、特許文献2参照)などが知られている。
しかしながら、これらの液浸油は屈折率、アッベ数、粘度、解像力など顕微鏡用液浸油に要求される諸性質をほぼ充分そなえているものの、分光光度計などによる測定においてその蛍光性が比較的強いなどの欠点を有している。
一般に蛍光を発する物体などの観察に用いられる蛍光顕微鏡は、紫外線などの励起光を検査体に照射し、検査体の発する蛍光を観察するものであり、生物学などの広い分野において利用されている。特に最近は非常に少量の蛍光を検出する蛍光顕微鏡の技術が研究されており、このような非常に弱い蛍光を検出する場合に、蛍光顕微鏡の光学系に用いられる液浸油が紫外線励起により発する蛍光が大きいと、検出時のノイズとなって、検出精度が低下する。この点に関して液浸油に関する改良研究が行われているものの、前述のように、昨今のニーズでは液浸油の更なる低蛍光化が求められており、このニーズを充分に満足するものではなかった。
【0003】
【特許文献1】
米国特許第4465621号明細書
【特許文献2】
特公平4−13687号公報(第1頁)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記問題点を解消し、それ自体の蛍光性が低く、屈折率、アッベ数、粘度、解像力など顕微鏡用液浸油に要求される他の諸性質も良好であり、特に蛍光顕微鏡用として好適な顕微鏡用液浸油を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記状況に鑑み、低蛍光性でかつ他の諸特性にも優れた液浸油を開発すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の液状ジエン系重合体、フタル酸エステル及びパラフィン類を、それぞれ特定量配合することによって、その目的を達成しえることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)(A)液状ジエン系共重合体100質量部に対して、(B)フタル酸エステル2〜20質量部及び(C1)流動パラフィン及び/又は(C2)ハロゲン化パラフィン5〜50質量部を配合することを特徴とする顕微鏡用液浸油、
(2)前記液状ジエン系重合体(A)の数平均分子量が、300〜25000である上記(1)の顕微鏡用液浸油、
(3)前記フタル酸エステル(B)が、液状フタル酸エステルである上記(1)または(2)の顕微鏡用液浸油、
(4)前記液状フタル酸エステル(B)が、1,2−ベンゼンジカルボン酸エステルである上記(3)の顕微鏡用液浸油、及び
(5)前記ハロゲン化パラフィン(C2)が、塩素化パラフィンである上記(1)〜(4)の顕微鏡用液浸油、
を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の顕微鏡用液浸油は、液状ジエン系重合体(A)100質量部に対して、フタル酸エステル(B)2〜20質量部及び(C1)流動パラフィン及び/又は(C2)ハロゲン化パラフィンを5〜50質量部配合することを特徴とする。
本発明に用いられる(A)成分の液状ジエン系重合体としては、特に制限はないが、数平均分子量が300〜25000、好ましくは500から10000の液状ジエン系重合体が用いられる。
これらの液状ジエン系重合体としては、炭素数4〜12のジエンモノマーからなるジエン単独重合体、ジエン共重合体、及びこれらジエンモノマーと炭素数2〜22のα−オレフィン付加重合性モノマーとの共重合体などがある。例えば、ブタジエンホモポリマー、イソプレンホモポリマー、クロロプレンホモポリマー、ブタジエン−イソプレンコポリマー、ブタジエン−アクリロニトリルコポリマー、ブタジエン−2−ヘキシルアクリレートコポリマーなどが挙げられる。
また、液状ジエン系重合体は水酸基などの官能基を分子内及び/又は分子末端に有してもよい。あるいは官能基を持たない液状ジエン系重合体との混合物であってもよい。なお、これらの液状ジエン系重合体は、一種単独でも二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0008】
また、本発明で用いられる(B)成分であるフタル酸エステルは、常温、常圧で液状であるフタル酸エステル若しくは常温、常圧で液状である混合フタル酸エステルであれば特に制限はない。
好ましいフタル酸エステルとして例えば、1,2−ベンゼンジカルボン酸ジメチル、1,2−ベンゼンジカルボン酸ジエチル、1,2−ベンゼンジカルボン酸ジn−ブチル、1,2−ベンゼンジカルボン酸ジイソブチル、1,2−ベンゼンジカルボン酸ベンジルメチル、1,2−ベンゼンジカルボン酸ベンジルエチル、1,2−ベンゼンジカルボン酸ベンジルn−ブチル及び1,2−ベンゼンジカルボン酸ベンジルイソブチルなどを挙げることができる。なお、これらフタル酸エステル類は、常温、常圧で液状であるならば一種単独でも二種以上の混合物としても使用することができる。
【0009】
また、本発明で用いられる(C1)成分である流動パラフィンは、いわゆる流動パラフィンであれば特に制限はないが主としてアルキルナフテン類からなる液状炭化水素油が特に好適である。具体的には工業用流動パラフィン、薬局方流動パラフィンなどをあげることができる。
更に、本発明で用いられる(C2)成分であるハロゲン化パラフィンは、液状ハロゲン化パラフィン及び液状の混合ハロゲン化パラフィンを用いる。具体的には、フッ素化パラフィン、塩素化パラフィン、臭素化パラフィン及びヨウ素化パラフィンなどの液状ハロゲン化パラフィン又は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素の中から選ばれる少なくとも二種のハロゲン原子を含有する、液状の混合ハロゲン化パラフィンを挙げることができる。
これらの中でも塩素化パラフィンが好ましい。なお、上記ハロゲン化パラフィンは、通常ハロゲン含有量が、10〜80重量%、好ましくは20〜70重量%、酸化が0.01〜0.50KOHmg/g、粘度が0.05〜4000Pa・s(25℃)、比重が1.10〜1.80(25℃)、及び色度が50〜350(APHA)であるものが好適に用いられ、特に、これらの性状をもつ液状塩素化パラフィンが好ましい。
なお、前記塩素化パラフィンなどのハロゲン化パラフィン又はこれらの混合物の特性値が上記の範囲内から逸脱すると、得られる液浸油の蛍光性が高くなったり、屈折率、アッベ数、動粘度、透明度、色度、などの諸特性が不良となる場合がある。
【0010】
本発明の顕微鏡用液浸油は、(A)成分である液状ジエン系重合体、(B)成分であるフタル酸エステル及び(C1)成分である流動パラフィン及び/又は(C2)成分であるハロゲン化パラフィンを特定の割合で配合することで得ることができる。
すなわち、(A)成分,(B)成分及び(C1)成分及び/又は(C2)成分の配合割合は、(A)成分100質量部に対し、(B)成分2〜20質量部、好ましくは5〜15質量部、さらに、(C1)成分及び/又は(C2)成分10〜50質量部、好ましくは10〜30質量部である。(A)成分,(B)成分及び(C1)成分及び/又は(C2)成分の配合割合を前記配合割合の範囲から逸脱すると、得られる液浸油の蛍光性が高くなったり、屈折率、アッベ数、動粘度、透明度、色度、などやその他の諸特性が不良となる場合がある。
ここで、液浸油に要求されるその他の特性としては、不乾性、外観、耐候性、耐蝕性、コントラスト、解像力、色収差、などが挙げられる。
【0011】
また、(A)成分,(B)成分及び(C1)成分及び/又は(C2)成分の配合の順序には特に制限はなく、同時にあるいは段階的にさまざまな順序で配合することができる。
また、配合の方法についても特に制限はなく、通常、常温付近で攪拌混合することによって配合する方法が好適に用いられる。
さらにまた、本発明の顕微鏡用液浸油には、本来の液浸油としての効果を損なわない限りにおいて、通常の蛍光顕微鏡用液浸油などの顕微鏡液浸油に用いられる添加剤、配合剤を用いることができる。
このようにして得られた本発明の顕微鏡用液浸油は、通常の顕微鏡用の液浸油、特に蛍光顕微鏡用の液浸油として好適に使用することができる。
【0012】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
なお、顕微鏡用液浸油の各種評価は下記の方法を用いて行った。
(1)低蛍光性
蛍光顕微鏡は、光源として蛍光を励起させる紫外線を発する超高圧水銀ランプを使用した。この場合に用いられる励起光としては、波長の長さにより、U励起、V励起、B励起、G励起があり、各励起において蛍光発生量の少ない液浸油が、蛍光顕微鏡にとって望ましい。(日立製作所(株)製 分光蛍光光度計 F−2000によって測定した。)
(2)屈折率(n23 D)及びアッベ数(ν23 D)
いずれもJIS K2101に準拠した。顕微鏡用液浸油として好ましい屈折率の範囲は、1.5140〜1.5160であり、又アッベ数の範囲は40〜46である。
(3)動粘度
JISK2283に準拠した。顕微鏡用液浸油として好ましい動粘度の範囲は、120〜600cSt(25℃)である。
(4)不乾性
JISC2201「電気絶縁油」蒸発量試験に準じ、30℃×24時間で試験を行い、次の二段階で評価した。
良好 (○):蒸発量1重量%未満 不良 (×):1重量%以上
(5)外観
試料を清浄なガラス容器に採り、濁りの有無を確認した。
にごり無し:(○) 濁り若干あり:(△)
(6)耐候性
次の(7)、(8)項記載の評価法である光照射試験及び熱劣化試験の結果ならびに当該試験前後での屈折率、アッベ数、色相の変化により次の二段階で評価した。
良好(○):屈折率、アッベ数、色相共に変化無し。
不良(×):屈折率、アッベ数、色相のいずれかに変化あり。
(7)光照射試験
一定量(40±0.5g)の試料をシャーレーに採り、光を一定時間(24,72,120時間)照射後の屈折率の変化を測定した。変化無しを良好(○)とした。
(8)加熱劣化試験
一定量(40±0.5g)の試料を50mlの共栓付三角フラスコに採り、一定温度(40,70℃)の恒温槽中で24時間保ち、その後の屈折率、アッベ数、色相の変化を観察した。 変化無しを良好(○)とした。
(9)耐蝕性
全酸価(JISK2501)及び塗抹標本用染料への影響(JISK2400)の測定により腐食性有無を調べた。腐蝕無しを(○)、有りを(×)とした。
(10)コントラスト
当該液浸油を用いた顕微鏡において、クロム蒸着をした白黒のプレートに刻んだ白黒の線を見ることにより、次の二段階により評価した。
良好(○):明瞭 不良(×):やや不鮮明
(11)解像力
屈折率により次の二段階で評価した。
良好(○):1.5140〜1.5160 不良(×):左記範囲外
(12)色収差
アッベ数により、次の2段階で評価した。
良好(○):40〜46 不良(×):左記範囲外
(13)透明度
透過率(JISK0115)により、次の二段階で評価した。
良好(○):95%以上 不良(×)95%未満
【0013】
実施例1〜4及び比較例1〜3
第表1に示した各成分をそれぞれ表示量で配合し、25℃で10分間攪拌混合して顕微鏡用液浸油を調製し、これらの液浸油について前記評価方法によって試験を行った。評価結果を第1表に示す。第1表中、評価欄の○印は、良好又は好適、×印は不良もしくは不適当を表す。ただし、低蛍光性の評価について○印は、蛍光性が低いことを示し、△印は、蛍光性が若干高いことを示す。また、外観の評価について○印は、濁り無し、△印は濁り若干ありを示す。
また、各励起光における蛍光強度(相対強度)を第2表に示す。
【0014】
【表1】
【0015】
*1:液状ポリブタジエン 数平均分子量1600
*2:水酸基含有液状ポリブタジエン 出光石油化学(株)社製 商品名「Polybd R−45HT」 数平均分子量2800
*3:水酸基含有液状ポリイソプレン 数平均分子量2500
*4:流動パラフィン 出光興産(株)社製 商品名「ダフニーオイルCP」
*5:塩素化パラフィン 東ソー(株)社製 商品名「トヨパラックス」 塩素含有量50重量%
【0016】
【表2】
【0017】
第1表及び第2表の結果から顕微鏡用液浸油として必要な諸特性を充分維持し、低蛍光性が改良されている。
【0018】
【発明の効果】
本発明の顕微鏡用液浸油は、低蛍光性であり、かつ屈折率、アッベ数、粘度、解像力など液浸油として必要な他の諸特性を高度に維持し、特に蛍光顕微鏡用の液浸油として著しく優れた顕微鏡用液浸油を提供することができる。
Claims (5)
- (A)液状ジエン系共重合体100質量部に対して、(B)フタル酸エステル2〜20質量部及び(C1)流動パラフィン及び/又は(C2)ハロゲン化パラフィン5〜50質量部を配合することを特徴とする顕微鏡用液浸油。
- 前記液状ジエン系重合体(A)の数平均分子量が、300〜25000である請求項1記載の顕微鏡用液浸油。
- 前記フタル酸エステル(B)が、液状フタル酸エステルである請求項1又は2記載の顕微鏡用液浸油。
- 前記液状フタル酸エステル(B)が、1,2−ベンゼンジカルボン酸エステルである請求項3記載の顕微鏡用液浸油。
- 前記ハロゲン化パラフィン(C2)が、塩素化パラフィンである請求項1〜4いずれかに記載の顕微鏡用液浸油。
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-
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CN101495560B (zh) * | 2006-08-04 | 2011-07-13 | 出光兴产株式会社 | 显微镜浸油 |
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