JP2004240203A - 液晶表示素子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】コレステリック液晶を含む液晶材料を液晶セルに封入する工程と、前記液晶材料を、コレステリック液晶の液晶相−等方相間の相転移温度以上の温度に加熱して等方相液体の状態にする加熱工程と、該加熱工程ののち、前記等方相液体の状態にある液晶材料を前記相転移温度以下の温度にまで冷却する冷却工程と、該冷却工程により液晶材料を室温付近まで冷却したのち、前記液晶セルに設けた電極に電圧を印加して短絡を検査する工程と、該検査工程ののち所定時間の経過後、前記液晶材料を前記相転移温度よりも−12〜−40℃の間の温度でエージングする工程と、を備えた液晶表示素子の製造方法。
【選択図】 図5
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示素子の製造方法、特に、コレステリック液晶を含む液晶材料を用いた液晶表示素子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術と課題】
近年、デジタル情報を可視情報に再生する媒体として、室温でコレステリック液晶相を示す液晶(主として、カイラルネマチック液晶)を用いた反射型の液晶表示素子が、電圧無印加状態で表示を維持し得ることから電力消費が少なく、また、安価に製作できる利点に着目して種々開発、研究されている。
【0003】
そして、この種の液晶表示素子では、液晶を液晶セルに封入する際の封入むらを解消するために、封入後に液晶をその相転移温度以上の温度に加熱して等方相液体の状態にしていた。
【0004】
しかし、前記加熱工程の終了からあまり時間を経ないうちに、液晶をプレーナ状態とフォーカルコニック状態を混在させて表示を行わせると、それらの表示状態が半永久的に消えない、焼付き(残像)現象が発生してしまう。そこで、この種の液晶表示素子では前記加熱工程から1ヶ月程度は放置し、その後出荷するという無駄な時間を要していた。
【0005】
なお、コレステリック液晶を含む液晶材料を備えた液晶表示素子に関して、前記焼付き(残像)現象の解消に関する先行技術文献として、特許文献1が知られている。特許文献1では、液晶材料中に、液晶性を示さない材料を残像防止あるいは粘性低下するのに必要な量だけ添加することで、焼付き現象を解消することを教えている。しかし、本発明者らの追試によると、特許文献1による方法では実用上において満足できるレベルに焼付き現象を解消することはできなかった。
【特許文献1】米国特許第6,366,330号
【0006】
そこで、本発明の目的は、焼付き(残像)現象をエージング処理によって効果的に防止することができ、製造後早期に出荷が可能な液晶表示素子の製造方法を提供することにある。
【0007】
【発明の構成、作用及び効果】
以上の目的を達成するため、本発明に係る液晶表示素子の製造方法は、コレステリック液晶を含む液晶材料を液晶セルに封入する工程と、前記液晶材料を、コレステリック液晶の液晶相−等方相間の相転移温度以上の温度に加熱して等方相液体の状態にする加熱工程と、前記加熱工程ののち、前記等方相液体の状態にある液晶材料を前記相転移温度以下の温度にまで冷却する冷却工程と、前記冷却工程により液晶材料を室温付近まで冷却したのち、前記液晶セルに設けた電極に電圧を印加して短絡を検査する工程と、前記検査工程ののち所定時間の経過後、前記液晶材料を前記相転移温度よりも−12〜−40℃の間の温度でエージングする工程と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る前記液晶表示素子の製造方法においては、液晶セルに封入された液晶材料を等方相液体の状態にする加熱工程ののち、該液晶材料を相転移温度以下の温度にまで冷却して室温付近まで冷却したのち、駆動用の電極に電圧を印加して短絡を検査し、そののち所定時間経過後に液晶材料を相転移温度よりも−12〜−40℃の間の温度でエージングするようにしたため、エージング工程ののち比較的短い時間をおいて、例えば、24時間後に、液晶をプレーナ状態とフォーカルコニック状態を混在させて表示を行ったとしても、それらの表示状態が半永久的に消えないという焼付き(残像)現象が発生することがない。従って、従来の如く液晶表示素子を製造してから1ヶ月程度は放置する必要はなく、前記エージング工程ののち少なくとも24時間後には使用が可能である、即ち、出荷することが可能になる。
【0009】
本発明に係る液晶表示素子において、液晶材料を液晶セルに封入する工程は、真空注入方法、エアー吸引方法又は液晶セルを構成する基板を貼り合わせる際に液晶材料を充填する方法のいずれか、あるいはそれ以外の封入方法を採用することができる。
【0010】
また、前記エージング工程に要する時間は24時間以上であることが好ましい。このようなエージング工程は液晶セルの表示面全体をフォーカルコニック状態又はプレーナ状態のいずれかにすることにより行ってもよい。
【0011】
また、前記検査工程の終了から前記エージング工程を開始するまでの所定時間は24時間以上であることが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る液晶表示素子の製造方法の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0013】
(液晶表示素子の構成と表示動作、図1参照)
図1に本発明の一実施形態である液晶表示素子10を示す。この液晶表示素子10は、青色と白色によるモノカラー表示を行うようにしたものである。即ち、図1(A)は液晶に高電圧パルスを印加したときのプレーナ状態(白色状態)を示し、図1(B)は液晶に低電圧パルスを印加したときにフォーカルコニック状態(透明/青色表示状態)を示す。この液晶はメモリ性を有しており、プレーナ状態、フォーカルコニック状態及びこれらの混在状態(中間調表示状態)は、パルス電圧の印加を停止した後も維持される。
【0014】
液晶表示素子10は、それぞれ透明電極13,14を形成した樹脂やガラス等からなる透明基板11,12の間に液晶21及びスペーサ18を挟持し、両基板11,12を樹脂製柱状構造物20で接着したものである。透明電極13,14上には必要に応じて絶縁性薄膜15、配向制御膜16が設けられる。また、基板11,12の外周部(表示領域外)には液晶21を封止するためのシール材24が設けられる。液晶21を封入するためのこのような構造体を液晶セルと称する。
【0015】
また、光を入射させる側(矢印A方向)とは反対側の基板12の外側面(背面)には、光吸収層17が設けられている。青色表示をするために、この光吸収層17のピーク反射波長は450〜480nmの範囲が適当である。
【0016】
透明電極13,14はそれぞれ図2に示す走査駆動IC131、信号駆動IC132に接続されており、透明電極13,14にそれぞれ所定のパルス電圧が印加される。この印加電圧に応答して、液晶21が可視光を透過する透明状態と特定波長の可視光を選択的に反射する選択反射状態との間で表示が切り換えられる。
【0017】
透明電極13,14は、それぞれ微細な間隔を保って平行に並べられた複数の帯状電極よりなり、その帯状電極の並ぶ向きが平面から見て互いに直角方向となるように対向させてある。これら上下の帯状電極に順次通電が行われる。即ち、各液晶21に対してマトリクス状に順次電圧が印加されて表示が行われる。これをマトリクス駆動と称し、電極13,14が交差する部分が各画素を構成することになる。
【0018】
詳しくは、2枚の基板間にコレステリック液晶相を示す液晶を含む液晶材料を挟持した液晶表示素子では、液晶の状態をプレーナ状態とフォーカルコニック状態に切り換えて表示を行う。液晶がプレーナ状態の場合、コレステリック液晶の螺旋ピッチをP、液晶の平均屈折率をnとすると、波長λ=P・nの光が選択的に反射される。また、フォーカルコニック状態では、コレステリック液晶の選択反射波長が赤外光域にある場合には入射光を散乱し、それよりも短い場合には散乱が弱くなり実質的に可視光を透過する。
【0019】
そのため、本液晶表示素子10では、プレーナ状態でピーク反射波長590nmの選択反射特性を示し、フォーカルコニック状態で可視光を実質的に透過する液晶を用いている。そして、素子10の観察側とは反対側に青色の光吸収層17を設けることにより、図3に示すように、プレーナ状態で分光反射特性曲線Bで示される白色の表示が、フォーカルコニック状態で分光反射特性曲線Cで示される青色の表示が可能になる。さらに、中間の選択反射状態(フォーカルコニック状態とプレーナ状態との混在状態)を選択することにより中間調の表示が可能である。
【0020】
液晶としては、室温でコレステリック液晶相を示すものが好ましく、特に、ネマチック液晶にコレステリック液晶相を示すのに十分な量のカイラル材を添加することによって得られるカイラルネマチック液晶が好適である。また、この種の液晶は液晶相から温度を上げていくと、液状の等方相になる。液晶が液晶相−等方相間で相転移する温度を相転移温度という。
【0021】
カイラル材は、ネマチック液晶に添加された場合にネマチック液晶の分子を捩る作用を有する添加剤である。カイラル材をネマチック液晶に添加することにより、所定の捩れ間隔を有する液晶分子の螺旋構造が生じ、これによりコレステリック液晶相を示す。
【0022】
また、この種のカイラルネマチック液晶を表示媒体として利用することにより、電圧無印加状態で表示状態を半永久的に保つことができる、いわゆるメモリ性を有する液晶表示パネルを得ることができる。
【0023】
なお、液晶表示素子10は必ずしも前述の構成に限定されるわけではなく、樹脂製構造物が堰状になったものや、樹脂製構造物を省略したものであってもよい。また、従来知られている高分子の3次元網目構造のなかに液晶が分散された、あるいは、液晶中に高分子の3次元網目構造が形成された、いわゆる高分子分散型の液晶複合膜として液晶表示層を構成することも可能である。
【0024】
基板11,12としては、ガラス基板やポリカーボネート等の樹脂基板を用いることができる。電極13,14としては、ITO(インジウム錫酸化物)等の透明導電膜を用いることができる。
【0025】
絶縁性薄膜15としては、酸化シリコン等の無機材料、ポリイミド樹脂等の有機材料を用いることができる。絶縁性薄膜15には色素を添加してもよい。配向制御膜16としてはポリイミド樹脂等の有機材料、酸化アルミニウム等の無機材料を用いることができ、ラビング処理を施してもよい。絶縁性薄膜15と配向制御膜16とを兼用することもできる。
【0026】
(駆動回路、図2参照)
前記液晶表示素子10の画素構成は、図2に示すように、それぞれ複数本の走査電極R1,R2〜Rmと信号電極C1,C2〜Cn(m,nは自然数)とのマトリクスで表される。走査電極R1,R2〜Rmは走査駆動IC131の出力端子に接続され、信号電極C1,C2〜Cnは信号駆動IC132の出力端子に接続されている。
【0027】
走査駆動IC131は、走査電極R1,R2〜Rmのうち所定のものに選択信号を出力して選択状態とする一方、その他の電極には非選択信号を出力して非選択状態とする。走査駆動IC131は、所定の時間間隔で電極を切り換えながら順次各走査電極R1,R2〜Rmに選択信号を印加してゆく。一方、信号駆動IC132は、選択状態にある走査電極R1,R2〜Rm上の各画素を書き換えるべく、画像データに応じた信号を各信号電極C1,C2〜Cnに同時に出力する。例えば、走査電極Raが選択されると(aはa≦mを満たす自然数)、この走査電極Raと各信号電極C1,C2〜Cnとの交差部分の画素LRa−C1〜LRa−Cnが同時に書き換えられる。これにより、各画素における走査電極と信号電極との電圧差が画素の書換え電圧となり、各画素がこの書換え電圧に応じて書き換えられる。
【0028】
画像の書換えは全ての走査ラインを順次選択して行う。部分的に書換える場合は、書き換えたい部分を含むように特定の走査ラインのみを順次選択するようにすればよい。これにより、必要な部分のみを短時間で書き換えることができる。
【0029】
制御部は、全体の制御を行う中央処理装置(CPU)135、前記駆動IC131,132を制御するLCDコントローラ136、画像データに各種の処理を施す画像処理装置137、画像データを記憶する画像メモリ138にて構成されている。CPU135には、制御プログラムや各種データを記憶したROM、各種データを記憶するためのRAMが内蔵されている。
【0030】
駆動IC131,132へは電源140から電力が供給される。画像メモリ138に記憶された画像データに基づいてLCDコントローラ136が駆動IC131,132を制御し、液晶表示素子10の各走査電極及び信号電極間に順次電圧を印加し、画像を書き込む。
【0031】
(駆動原理及び基本駆動波形、図4参照)
ここで、前記液晶表示素子10の駆動方法の原理について説明する。なお、ここで示す基本駆動波形は、走査駆動IC131の発生する波形として正極性のパルス波形を、信号駆動IC132の発生する波形として交流化されたパルス波形を用いている。しかし、液晶表示素子10の駆動波形は、これに限るものではなく、例えば、走査駆動IC131の発生するパルスが負極性であってもよく、正極性と負極性を交互に(例えば、フレームごとに)印加してもよく、あるいは交流化されたパルス波形を用いてもよい。直流パルスである場合は消費電力の低減に有利であり、交流パルスである場合は液晶の劣化防止に有利である。
【0032】
走査パルス波形は走査駆動IC131から各走査電極に出力される基本駆動波形である。信号パルス波形は信号駆動IC132から各信号電極に出力される画像データに基づいた駆動波形である。この駆動方法において、トータルの駆動期間Tは、大きく分けて、リセット期間Trsと選択期間Tsと維持期間Trtとから構成されている。維持期間Trtののちは表示期間Ti(クロストーク期間とも称する)である。
【0033】
選択期間Tsは、さらに、選択パルス印加期間Tspと、前選択期間Tsz及び後選択期間Tsz’とを含む。信号パルスが印加される走査期間Tssは、Tss=Tsp×2であって、Tss=Ts−(Tsz+Tsz’)である。
【0034】
走査駆動IC131からは、リセット期間Trsでは電圧V1のリセットパルスが印加される。選択期間Tsにおいては、選択パルス印加期間Tspで電圧V2の選択パルスが印加される。前選択期間Tsz及び後選択期間Tsz’は電圧ゼロの期間である。さらに、維持期間Trtでは電圧V3の維持パルスが印加される。信号駆動IC132からは、走査期間Tssでは画像データに基づいて電圧±V4の信号パルスが印加される。このように、リセット、選択、維持という複数種類のパルスからなるパルス群が走査駆動IC131から印加され、信号駆動IC132からは信号パルス(クロストークを生じないような小さい電圧値の交流パルスが好ましい)が印加される。
【0035】
液晶の動作は以下のとおりである。まず、リセット期間Trsで電圧V1のリセットパルスが印加されると、液晶はホメオトロピック状態にリセットされる。次に、前選択期間Tszを経て(液晶は捩れが少しだけ戻る)走査期間Tssに到る。ここで印加される選択パルスの波形と信号パルスの波形が重畳することにより、各画素において液晶を最終的にプレーナ状態(白色表示)とフォーカルコニック状態(青色表示)と両者の混在状態(中間調表示)のいずれかを選択することができる。
【0036】
まず、プレーナ状態を選択する場合を説明する。この場合には、走査期間Tssで選択パルスと信号パルスが重畳された比較的大きなエネルギーのパルスを印加し、再び液晶をホメオトロピック状態にする。その後、後選択期間Tsz’で液晶は捩れが少しだけ戻った状態になる。その後、維持期間Trtで電圧V3の維持パルスを印加すると、先の後選択期間Tsz’で捩れが少しだけ戻った状態になった液晶は、維持パルスが印加されることにより再び捩れが解け、ホメオトロピック状態になる。ここで、ホメオトロピック状態の液晶は電圧をゼロにすることによりプレーナ状態となり、プレーナ状態のまま固定される。
【0037】
一方、最終的にフォーカルコニック状態を選択する場合には、走査期間Tssで前記プレーナ状態を選択する場合よりも小さいエネルギーのパルスを印加する。そして、後選択期間Tsz’では、液晶は捩れが戻ってヘリカルピッチが2倍程度に広がった状態になる。
【0038】
その後、維持期間Trtで電圧V3の維持パルスを印加する。後選択期間Tsz’で捩れが戻ってきた液晶は、この維持パルスを印加することにより、フォーカルコニック状態へと遷移する。ここで、フォーカルコニック状態の液晶は電圧をゼロにしても、フォーカルコニック状態のまま固定される。
【0039】
前述のように、走査期間Tssに印加する選択パルス及び信号パルスのエネルギーに基づいて最終的な液晶の表示状態が選択できる。具体的には、信号パルスの位相を変化させることで液晶の表示状態を選択している。また、選択パルスの電圧V2及び選択パルス印加期間Tsp(選択パルスの幅)を変更することにより、液晶の温度変化に対応した温度補償制御を実現することができる。
【0040】
(液晶表示素子の具体例及び製造工程、図5参照)
次に、本発明者らが以下に示す工程で製造した液晶表示素子の具体例について説明する。
【0041】
上下の基板共に厚さ0.7mmのガラス基板を使用し、基板間ギャップを5.5μmとした。電極は抵抗値10Ω/□のITO膜を使用した。配向制御膜はJSR社製AL−8044(可溶性ポリイミド樹脂)を800オングストロームの厚さに塗布した。シール材は住友ベークライト社製スミライトERS−2400(主剤)、ERS−2840(硬化剤)を使用した。スペーサは粒径5.5μmの積水ファインケミカル社製ミクロパールを使用した。
【0042】
液晶材料としては、液晶MLC6436−000(メルク社製)にカイラル材S−811(メルク社製)を23wt%添加し、選択反射波長が590nmのピーク値を示すように調製した。誘電率異方性は17.6であり、相転移温度は79.2℃である。
【0043】
製造工程としては、図5に示すように、まず、基板上に電極をパターニングし、その上に配向制御膜を形成し、一方の基板にスペーサを散布すると共に、他方の基板にシール材を形成する。次に、前記基板を貼り合わせて液晶セルとし、該液晶セルに真空注入方法にて液晶材料を封入する。
【0044】
その後、液晶材料を、液晶相−等方相間の相転移温度である79.2℃以上の温度に加熱して等方相液体の状態にする。次に、等方相液体の状態にある液晶材料を相転移温度79.2℃以下の温度にまで冷却する。この冷却処理は液晶表示素子を室温で放置することにより行われる。液晶材料が室温付近の温度まで冷却されると、走査電極及び信号電極に電圧を印加してそれらの短絡を検査する。
【0045】
前記検査処理が終了したのち所定時間(以下、期間1と記す)の経過後、エージング処理を行う。ここでのエージング処理は、液晶材料を相転移温度79.2℃よりも−12〜―40℃の間の温度で行う(エージング処理に要する時間を、以下期間2と記す)。エージング処理後は液晶表示素子をオーブンから取り出して室温で放置して冷却する。なお、室温放置による冷却に代えて、オーブンをオフ状態にしてオーブン内で放置冷却してもよい。
【0046】
なお、前記エージング処理では、液晶セルの表示面全体をフォーカルコニック状態又はプレーナ状態のいずれかに設定してもよい。以下に述べる表示実験では、その準備段階として、前記の短絡検査後に液晶セルの表面全体をフォーカルコニック状態に設定してエージング処理を行った。
【0047】
ところで、本発明者らは前記エージング処理が終了した液晶表示素子に対して所定時間(以下、期間3と記す)の経過後、表示試験を行った。この表示試験は、まず、図6(A)に示すように、表示面を上下に分けて上半分にプレーナ状態を表示すると共に下半分にフォーカルコニック状態を表示する表示1を行った。そして、所定時間(以下、期間4と記す)の経過後、図6(B)に示すように、表示面を左右に分けて右半分にプレーナ状態を表示すると共に左半分にフォーカルコニック状態を表示する表示2を行った。表示2を行った段階で、表示面の各1/4部分(a),(b),(c),(d)ごとに反射率を測定し、a−bの反射率差Δ%RFC、c−dの反射率差Δ%RPLを算出し、評価を行った。その結果を以下の表1に示す。
【0048】
表示1,2における駆動条件は、環境温度が25℃の場合、図4に示した駆動波形において、リセット期間Trsは50ms、リセットパルス電圧V1は40Vとした。選択期間Tsは0.7ms、選択パルス電圧V2はプレーナ表示を行う場合は35Vとし、フォーカルコニック表示を行う場合は10Vとした。そのうち前選択期間Tszは0.28ms、選択パルス印加期間Tspは0.07ms、後選択期間Tsz’は0.35msである。維持期間Trtは24ms、維持パルス電圧V3は28Vとした。一方、信号パルス電圧±V4は±4.5Vとした。
【0049】
【表1】
【0050】
表1に示した、比較例及び各実験例は、期間1,2,3を48時間を基準として可変し、エージング温度を60℃を基準として可変し、期間4を24時間で固定したものである。比較例はエージング温度を室温(25℃)として表示結果を評価した。実験例1〜5はエージング温度を40℃、50℃、60℃、65℃、70℃に変えて表示結果を評価した。実験例6〜8は期間1を0時間、24時間、72時間に変えて表示結果を評価した。実験例9,10は期間2を72時間、24時間に変えて表示結果を評価した。さらに、実験例11,12は期間3を24時間、0時間に変えて表示結果を評価した。
【0051】
反射率差Δ%RPL、Δ%RFCはいずれも値が大きいほど焼付き(残像)現象が大きいことを示している。実験例1〜12での表示結果において、Δ%RPL、Δ%RFCが0.5以下の場合が焼付き(残像)現象のない良好な表示結果であって、好ましいエージング処理が行われたものとして評価した。実験例1〜4,7〜11がこれに相当する。より好ましいエージング処理はΔ%RPL、Δ%RFCが0.4である実験例4,10,11であり、最も好ましいエージング処理はΔ%RPL、Δ%RFCが0.3である実験例3,8,9である。
【0052】
以上の実験による表示結果から明らかなように、実験例1〜4,7〜11での条件でエージング処理を実施すれば、エージング処理後少なくとも24時間を経過したのちに液晶表示素子を駆動することにより、焼付き現象のない良好な表示を維持することが可能になる。換言すれば、出荷直後にユーザーの手に渡ると想定しても、エージング処理から24時間後に出荷することで何ら差し支えないことになる。
【0053】
(他の実施形態)
なお、本発明に係る液晶表示素子の製造方法は前記実施形態に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。
【0054】
例えば、液晶表示素子の構成、材料等は図1に示したもの以外に任意である。また、2層以上の液晶表示層を積層して液晶表示素子を構成してもよい。
【0055】
また、図5に示した製造工程に関して、電圧印加(短絡検査)処理までの製造工程は任意であり、特に、液晶セルに液晶材料を封入する工程は、真空注入方法以外にもエアー吸引方法を採用することができ、あるいは、基板を貼り合わせる際に液晶材料を滴下して貼り合わされる基板の圧力で引き延ばして充填する方法であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る製造方法にて製造された液晶表示素子の一例を示す断面図。
【図2】前記液晶表示素子の制御部を示すブロック図。
【図3】カイラルネマチック液晶のプレーナ状態及びフォーカルコニック状態での分光反射率特性を示すグラフ。
【図4】前記液晶表示素子に対する駆動パルスの波形を示すチャート図。
【図5】前記液晶表示素子の製造工程を示すチャート図。
【図6】前記液晶表示素子におけるエージング処理後の表示試験での表示状態を示す説明図。
【符号の説明】
10…液晶表示素子
11,12…基板
13,14…電極
21…カイラルネマチック液晶
131…走査駆動IC
132…信号駆動IC
Claims (5)
- コレステリック液晶を含む液晶材料を液晶セルに封入する工程と、
前記液晶材料を、コレステリック液晶の液晶相−等方相間の相転移温度以上の温度に加熱して等方相液体の状態にする加熱工程と、
前記加熱工程ののち、前記等方相液体の状態にある液晶材料を前記相転移温度以下の温度にまで冷却する冷却工程と、
前記冷却工程により液晶材料を室温付近まで冷却したのち、前記液晶セルに設けた電極に電圧を印加して短絡を検査する工程と、
前記検査工程ののち所定時間の経過後、前記液晶材料を前記相転移温度よりも−12〜−40℃の間の温度でエージングする工程と、
を備えたことを特徴とする液晶表示素子の製造方法。 - 前記液晶材料を液晶セルに封入する工程は、真空注入方法、エアー吸引方法又は液晶セルを構成する基板を貼り合わせる際に液晶材料を充填する方法のいずれかによることを特徴とする請求項1記載の液晶表示素子の製造方法。
- 前記エージング工程は液晶セルの表示面全体をフォーカルコニック状態又はプレーナ状態のいずれかにすることにより行うことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の液晶表示素子の製造方法。
- 前記エージング工程に要する時間は24時間以上であることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3記載の液晶表示素子の製造方法。
- 前記検査工程の終了から前記エージング工程を開始するまでの所定時間は24時間以上であることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4記載の液晶表示素子の製造方法。
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2003
- 2003-02-06 JP JP2003029707A patent/JP2004240203A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN103454787A (zh) * | 2012-05-31 | 2013-12-18 | 海洋王(东莞)照明科技有限公司 | 快速检测液晶显示屏液晶泄漏缺陷的方法 |
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