JP2004238719A - 成膜装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】陰極ロッドの材質によらず一様かつ適正な厚さの薄膜を形成することが可能であり、かつ、航空機のキャノピーのような曲面を有する物体の成膜にも適した成膜装置を提供する。
【解決手段】真空チャンバ1とこのチャンバ1内に配設した陰極ロッド3との間におけるアーク放電によって陰極ロッド3の周囲にリング状のアーク15を形成するとともに、陰極ロッド3の電気抵抗に基づく電位差によりアーク15を陰極ロッド3に沿って自己移動させ、この移動アーク15に基づいて陰極ロッド3の表面から飛び出す原料物質を物体19の表面に堆積させて薄膜を形成するようにした成膜装置であって、真空チャンバ1と陰極ロッド3間に印加する電圧を制御して、アーク15の移動速度を変化させる制御手段7を設けている。
【選択図】 図1
【解決手段】真空チャンバ1とこのチャンバ1内に配設した陰極ロッド3との間におけるアーク放電によって陰極ロッド3の周囲にリング状のアーク15を形成するとともに、陰極ロッド3の電気抵抗に基づく電位差によりアーク15を陰極ロッド3に沿って自己移動させ、この移動アーク15に基づいて陰極ロッド3の表面から飛び出す原料物質を物体19の表面に堆積させて薄膜を形成するようにした成膜装置であって、真空チャンバ1と陰極ロッド3間に印加する電圧を制御して、アーク15の移動速度を変化させる制御手段7を設けている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アーク放電を利用して原料物質をスパッタリングする成膜装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
真空チャンバとこのチャンバ内に配設した陰極ロッドとの間におけるアーク放電によって該陰極ロッドの周囲にリング状のアークを形成するとともに、前記陰極ロッドの電気抵抗に基づく電位差により前記アークを該陰極ロッドに沿って自己移動させ、この移動アークに基づいて前記陰極ロッドの表面から飛び出す原料物質を物体の表面に堆積させて薄膜を形成するようにした成膜装置が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
この成膜装置によれば、簡易かつ安価な手段を用いて大面積の物体に薄膜を効率よく形成することができる。
【0003】
【非特許文献1】
A.P.Sokolov and V.V.Perekatov. 「Application of Vacuum Plantsfor Deposition of Metal−Nitride and Metal−Oxide Films」. Ministry of Economic Affairs of the Russian Federation. 1999. p.3−10
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記成膜装置における上記リング状アークの移動速度は、上記陰極ロッドの電気抵抗に依存する。すなわち、電気抵抗の高い材料からなる陰極ロッドの方が電気抵抗の低い材料からなる陰極ロッドよりも上記アークの移動速度が高くなる。上記陰極ロッドは、コーティング物質(原料物質)の種類に応じてその電気抵抗が変化する。それゆえ、コーティング物質の異なる陰極ロッドが選択的に使用される上記成膜装置においては、陰極ロッドの種類が変化する度に上記リング状アークの移動速度が変化することになる。
【0005】
アークの1回の移動期間中において物体表面に堆積するコーティング物質の量は、上記アークの移動速度の影響を受け、該移動速度が低いほど多くなる傾向を示す。
このため、上記成膜装置では、電極の選択に伴ってコーティング物質の厚みにバラツキを生じるという問題を生じていた。
【0006】
一方、上記成膜装置では、上記アークの移動速度が管理されないので、陰極ロッドの材質等によっては、このアークの移動速度が異常になって、以下のような不都合を生じる恐れがある。
すなわち、上記アークの異常高速移動により、放電が不安定になる現象や、陰極ロッドの周囲全体に上記リング状アークが形成されなくなる現象等を生じる恐れがあり、また、上記アークの異常低速移動により、陰極ロッドにおける放電部位が局所的に過熱されて、異常放電や陰極ロッドの部分的損傷を生じる恐れがある。
更に、上記成膜装置は、ガラス板等の平板状物体に対する成膜には適しているものの、航空機のキャノピーのような曲面を有する物体に一様な厚さの薄膜を形成することが困難であるという欠点がある。
【0007】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、陰極ロッドの材質によらず一様かつ適正な厚さの薄膜を形成することが可能であり、かつ、航空機のキャノピーのような曲面を有する物体の成膜にも適した成膜装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、真空チャンバとこのチャンバ内に配設した陰極ロッドとの間におけるアーク放電によって該陰極ロッドの周囲にリング状のアークを形成するとともに、前記陰極ロッドの電気抵抗に基づく電位差により前記アークを該陰極ロッドに沿って自己移動させ、この移動アークに基づいて前記陰極ロッドの表面から飛び出す原料物質を物体の表面に堆積させて薄膜を形成するようにした成膜装置であって、前記陰極ロッドへの印加電圧を制御して、前記アークの移動速度を変化させる制御手段を設けたことを特徴としている。
【0009】
この成膜装置によれば、上記アークの移動速度を制御することができるので、コーティング物質の異なる陰極ロッド、つまり、電気抵抗の異なる陰極ロッドが選択的に使用される場合においても、上記リング状アークの移動速度を適正目標速度に設定することが可能になる。つまり、陰極ロッドを構成する原料物質がどのような種類であっても、適正な厚さの薄膜を形成することが可能になる。
また、上記アークの移動速度を適正化して、不安定放電や陰極ロッドの損傷等を回避することも可能になる。
更に、上記成膜装置によれば、上記物体の形状に起因して陰極ロッドと物体の表面との間の距離が該陰極ロッドの長手方向に一定でない場合でも、その距離変化に応じてアークの移動速度を変化させることができるので、航空機のキャノピー等の物体の表面に対しても一様な厚さの薄膜を形成することが可能になる。
【0010】
前記制御手段は、前記陰極ロッドを構成する原料物質の材質および/または前記物体の表面の形状に適応した前記アークの移動速度変化パターンを予め設定し、このパターンに基づいて前記電圧を変化させるように構成することができる。
【0011】
また、本発明は、真空チャンバとこのチャンバ内に配設した陰極ロッドとの間におけるアーク放電によって該陰極ロッドの周囲にリング状のアークを形成するとともに、前記陰極ロッドの電気抵抗に基づく電位差により前記アークを該陰極ロッドに沿って自己移動させ、この移動アークに基づいて前記陰極ロッドの表面から飛び出す原料物質を物体の表面に堆積させて薄膜を形成するようにした成膜装置であって、前記陰極ロッドを、成膜すべき前記物体の面に倣うように形成したことを特徴としている。
【0012】
前記したように、上記薄膜の厚さは、上記陰極ロッドと上記物体の表面との間の距離が大きくなるほど小さくなる傾向を示す。この発明によれば、前記陰極ロッドと前記物体の表面との間の距離が該陰極ロッドの長手方向に沿って一様になるので、成膜すべき上記物体の表面が例えば曲面であっても、該表面に一様な厚さの薄膜を形成することが可能になる。
【0013】
前記陰極ロッドは、前記物体の面の形状に倣わせるために、例えば、曲げ加工しても良く、あるいは、長手方向に沿ってその径を変化させても良い。
【0014】
前記陰極ロッドと真空チャンバとの間で初期アーク放電を発生させる放電発生手段を設け設けても良い。上記放電発生手段は、所定の時間間隔で作動するように、あるいは、アーク電流の停止に基づいて作動するように構成することができる。この構成によれば、1つの物体に対して上記アークの移動操作を複数回繰り返して実施する場合に有利となる。
【0015】
前記陰極ロッドは、その全体を前記原料物質(ターゲット物質)で形成しても良いが、廉価な鋼等の材料からなる芯材の表面を上記原料物質で被覆した構造を持たせても良い。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明に係る成膜装置の好ましい実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る成膜装置を概念的に示す縦断面図である。また図2は、図1のA−A線による断面図である。
【0017】
これらの図において、真空チャンバ1は、金属製の円筒体によって形成されている。このチャンバ1の内部には、当初、ターボ分子ポンプ等によって0.01Pa程度の初期真空度が与えられ、ついで、希薄ガスの雰囲気(例えば、1〜2Pa程度のArガス雰囲気)が形成される。
【0018】
陰極ロッド(ターゲット電極)3は、例えば、チタン、アルミニウム、タングステン、ITO等のスパッタリング用原料物質で形成され、チャンバ1の軸線に沿って配置されている。
可変直流電源5は、正側がチャンバ1に接続されるとともに、負側が陰極ロッド3の一端に接続されている。また、この可変直流電源5には、該電源5の出力電圧の制御等を実行するコントローラ7が接続されている。
【0019】
上記陰極ロッド3の他端部近傍には初期放電発生機構9が配設されている。この初期放電発生機構9は、昇降用アクチュエータ9aと、一端がチャンバ1に電気的に接続された電磁コイル9bと、この電磁コイル9bの他端に電気的に接続され、該電磁コイル9bの電磁力によって上方に吸引される可動子9cとを備えている。
この初期放電発生装置9において、コントローラ7からの駆動信号によりアクチュエータ9aが作動すると、電磁コイル9bおよび可動子9cからなる電磁石が下降されて、該可動子9cの先端が陰極ロッド3の他端部周面に接触し、その結果、陰極ロッド3、可動子9cおよび電磁コイル9bからなる電路が形成される。
【0020】
チャンバ1と陰極ロッド3との間には、上記直流電源7の出力電圧が印加されているので、上記電路の形成に伴って電磁コイル9bが付勢される。その結果、可動子9cが吸引されてその先端が陰極ロッド3の他端部周面から離れ、その際、電磁コイル9bに蓄えられた電気エネルギーに基づくマイクロアーク放電(初期アーク放電)が両者間に発生する。チャンバ1と陰極ロッド3との間には、上記直流電源7の出力電圧に基づく電界が作用しているので、上記マイクロアーク放電の発生に伴って、陰極ロッド3の他端部周辺にリング状のアーク15が形成されることになる。
【0021】
上記陰極ロッド3の下方には、該ロッド3に平行する導電性のワーク置台17が設けられ、このワーク置台17上に被処理物体であるワーク19が配置されている。なお、図示したワーク19は、曲面を有した航空機の窓(キャノピー)であり、その内面が上に向く態様で配置されている。
【0022】
ところで、上記リング状のアーク15が形成されると、陰極ロッド3にアーク電流が流れる。陰極ロッド3は、電気抵抗を持つので、上記アーク電流が流れた場合に電圧降下を生じる。すなわち、図1に示すように、陰極ロッド3の他端部周辺にリング状のアーク15が形成された時点では、陰極ロッド3の一端からこのアーク15の形成位置に至る部位において電圧降下を生じる。
【0023】
このことは、陰極ロッド3におけるアーク15の形成位置の電圧に比してそれよりも右方の部位の電圧が低いこと、換言すれば、該アーク15の形成位置における陰極ロッド3とアノード(チャンバ1あるいはワーク置台17)との間の電界強度に比して、このアーク形成位置よりも右方の部位における同電界強度が高いことを意味している。
【0024】
上記初期放電に基づいて陰極ロッド3の他端部周辺に形成されたリング状アーク15は、電界強度の高い方に引かれることから、陰極ロッド3の一端(右端)に向かって移動を開始する。そして、その移動の途中においても、その移動位置より右方の部位の電界強度が高くなるので、その移動が継続されることになる。そして、アーク15が陰極ロッド3の一端部に被覆された電気絶縁性のキャップ21に到達する位置まで移動すると、このキャップ21の電界遮蔽作用によってアーク15が消失する。
【0025】
アーク15の移動に要する時間は、陰極ロッド3の材質、大きさ、電源5の出力電圧等に基づいて予め知られる。そこで、コントローラ7は、上記所用移動時間が十分確保される周期で上記初期放電発生機構9に駆動信号を出力し、その結果、陰極ロッド3に沿ったアーク15の移動が繰り返されることになる。
なお、前記キャップ21の電界遮蔽作用によるアーク15の消失、つまり、アーク電流の消失を検出し、その検出時点で上記初期放電発生機構9に駆動信号を与えるようにしても良い。電流センサ23は、上記アーク電流を検出するために設けたものである。
上記初期放電発生機構9の駆動回数、つまり、アーク15の移動回数は、コントローラ7においてカウントされ、そのカウント数が目標値に達した時点で上記初期放電発生機構9の駆動が停止される。
【0026】
アーク15は、チャンバ1内の希薄ガスをプラズマ化する。そして、プラズマ化したガスのイオンは、陰極ロッド3とアノード間の電界によって加速されて該陰極ロッド3の周面に衝突する。その結果、ターゲットたる陰極ロッド3がスパッタリングされて、その原料物質の原子がワーク19の内表面に到達して堆積する。
したがって、上記陰極ロッド3に沿ったアーク15の移動に伴って、ワーク19の内表面に陰極ロッド3の原料物質と同一成分の薄膜が形成される。なお、形成される薄膜の厚さは、上記アーク15の移動の繰り返し数が多いほど大きくなる。
【0027】
次に、コントローラ7による電源5の制御について説明する。
上記アーク15の移動速度は、陰極ロッド3の電気抵抗に依存する。すなわち、電気抵抗の高い原料物質からなる陰極ロッドの方が電気抵抗の低い原料物質からなる陰極ロッドよりも上記アークの移動速度が高くなる。
そして、アーク15の1回の移動期間中においてワーク19の表面に堆積する原料物質の量は、上記アーク15の移動速度の影響を受け、該移動速度が低いほど多くなる傾向を示す。すなわち、移動速度が低いほど、スパッタリング時間が長くなって、原料物質の堆積量が多くなる。
それゆえ、上記原料物質の堆積量を該原料物質の種類によらず一定にするためには、上記アーク15の移動速度を管理する必要がある。
【0028】
一方、ワーク19が、例えば、平板状物体(例えば、ガラス板)である場合には、アーク15を一定な速度で移動させることにより一様な厚みの薄膜を形成することができる。
しかし、ワーク19が例えば図1に示したような曲面を有する航空機のキャノピーである場合、陰極ロッド3から離れた(アーク15から離れた)中間部おける原料物質の堆積効率が該ロッド3に近い両端部におけるそれよりも低くなる。
【0029】
所定の成膜区間を考えると、前述したように、上記アーク15の移動速度が低いほど、その区間におけるスパッタリング時間が長くなって、該区間での原料物質の堆積量が多くなる。したがって、上記曲面状ワーク19の長手方向全域にわたって一様な厚みの薄膜を形成するためには、該ワーク19の中間部区間におけるアーク15の移動速度が低下されるように上記アーク15の移動速度を管理する必要がある。
【0030】
上記アーク15の移動速度は、電源5の出力電圧の調整によって変化させることができる。例えば、上記出力電圧を上昇させれば、陰極ロッド3による電圧降下が大きくなるのでアーク15の移動速度が高くなり、逆に、上記出力電圧を下降させれば、陰極ロッド3による電圧降下が小さくなるのでアーク15の移動速度が低くなる。
【0031】
そこで、コントローラ7は、陰極ロッド3を構成する原料物質の各材質およびワーク19の表面の各種形状に適応した複数のアーク移動速度変化パターンを図示していないメモリに格納し、このパターンが実現されるように可変直流電源5の出力電圧を制御する。
上記アーク15の移動速度変化パターンは、シミュレーションや実験等によって予め得ることができる。なお、この実施の形態の成膜装置を平板状のワークのみに適用する場合には、陰極ロッド3を構成する原料物質の各材質に適応したアーク移動速度変化パターンのみを上記メモリに記憶させておけばよい。
上記コントローラ7には、上記移動速度変化パターンを選択するために、原料物質の各材質を指定する情報(例えば、陰極ロッド3の番号や)、ワーク19の形状を指定する情報がキーボード等を介して入力される。
【0032】
このように、この実施の形態によれば、陰極ロッド3を構成する原料物質の材質およびワーク19の表面形状に適応したアーク15の移動速度変化パターンが自動的に設定されるので、平板状のワークはもちろん、陰極ロッド3の長手方向に沿う曲面を有した上記キャノピー等のワーク19に対しても一様かつ適正な厚みの薄膜を形成することができる。
【0033】
以上においては、ワーク19の内面に薄膜を形成する場合を説明したが、上記実施の形態の成膜装置は、該ワーク19の外面に薄膜を形成する場合にも有効である。この場合、ワーク19を内面が下方に向くようにワーク置台17に配置すればよい。なお、短手方向の断面が略半円状をなすキャノピー等の外面に薄膜を形成する場合や、平板ガラス等を含む広面積のワークに薄膜を形成する場合等においては、複数本の陰極ロッド3を所定間隔で平行配置するようにしても良い。この場合、個々の陰極ロッド3においてアーク15を同じ側からスタートさせる必要はない。
【0034】
図3および図4は、本発明の別の実施の形態において使用する陰極ロッド3を示している。
図3に示す陰極ロッド3は、ワーク19の曲面に沿わせるために曲げ加工を施してある。また、図4に示す陰極ロッド3は、同様の目的で、中央部の径が両端部の径よりも大きくなるような形状を持たせてある。
これらの陰極ロッド3を使用する場合には、ワーク19の長手方向全域における原料物質堆積効率がほぼ一定化されるので、直線状の電極ロッドを用いて平板状ワークに成膜を施す場合と同様に、陰極ロッド3を構成する原料物質の各材質に適応したアーク移動速度が得られるように上記電源5の出力電圧を制御すればよい。
【0035】
なお、ワーク19の形状が複雑な場合には、陰極ロッド3をワーク19に充分沿わせるように形成することが困難な場合もあり得る。この場合には、上記原料物質の材質およびワーク19の表面形状に適応したアーク15の移動速度変化パターンにしたがって上記電源5の出力電圧を制御すればよい。
【0036】
上記各実施の形態において使用される陰極ロッド3は、その全体を前記原料物質(ターゲット物質)で形成しても良いが、廉価な鋼等の材料からなる芯材の表面を原料物質で被覆した構造を持たせても良い。また、陰極ロッド3をITOで形成する場合には、必要に応じて、水冷することができる。その場合、陰極ロッド3の軸線に沿う通水路が貫通形成される。
【0037】
なお、上記各実施の形態に係る成膜装置は、大形状の曲面を有した物品に薄膜を容易かつ低コストに形成する手段として特に有効であるが、多数の小物物品に対しての薄膜形成手段としても有効に適用することができる。その場合、上記多数の小物物品がアークの移動方向に沿って配列設置される。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、陰極ロッドへの印加電圧を制御して、アークの移動速度を変化させる制御手段を設けているので、コーティング物質(原料物質)の異なる陰極ロッド、つまり、電気抵抗の異なる陰極ロッドが選択的に使用される場合においても、アークの移動速度を適正目標速度に設定することが可能になる。つまり、陰極ロッドを構成する原料物質がどのような種類であっても、適正な厚さの薄膜を形成することが可能になる。
また、上記アークの移動速度を適正化して、不安定放電や陰極ロッドの損傷等を回避することも可能になる。更に、上記物体の形状に起因して陰極ロッドと物体の表面との間の距離が該陰極ロッドの長手方向に一定でない場合でも、その距離変化に応じてアークの移動速度を変化させることができるので、航空機のキャノピー等の物体の表面に対しても一様な厚さの薄膜を形成することが可能になる。
【0039】
また、本発明によれば、陰極ロッドを成膜すべき物体の面に倣うように形成しているので、該物体の表面が曲面であっても、該表面に一様な厚さの薄膜を形成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る成膜装置の実施の形態を示す概略縦断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】ワークの形状に沿わせるために曲げ加工を施した陰極ロッドの一例を示す概念図である。
【図4】ワークの形状に沿わせるために径を変化させた陰極ロッドの一例を示す概念図である。
【符号の説明】
1 チャンバ
3 陰極ロッド
5 可変直流電源
7 コントローラ
9 初期放電発生装置
15 アーク放電
17 ワーク置台
19 ワーク
【発明の属する技術分野】
本発明は、アーク放電を利用して原料物質をスパッタリングする成膜装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
真空チャンバとこのチャンバ内に配設した陰極ロッドとの間におけるアーク放電によって該陰極ロッドの周囲にリング状のアークを形成するとともに、前記陰極ロッドの電気抵抗に基づく電位差により前記アークを該陰極ロッドに沿って自己移動させ、この移動アークに基づいて前記陰極ロッドの表面から飛び出す原料物質を物体の表面に堆積させて薄膜を形成するようにした成膜装置が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
この成膜装置によれば、簡易かつ安価な手段を用いて大面積の物体に薄膜を効率よく形成することができる。
【0003】
【非特許文献1】
A.P.Sokolov and V.V.Perekatov. 「Application of Vacuum Plantsfor Deposition of Metal−Nitride and Metal−Oxide Films」. Ministry of Economic Affairs of the Russian Federation. 1999. p.3−10
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記成膜装置における上記リング状アークの移動速度は、上記陰極ロッドの電気抵抗に依存する。すなわち、電気抵抗の高い材料からなる陰極ロッドの方が電気抵抗の低い材料からなる陰極ロッドよりも上記アークの移動速度が高くなる。上記陰極ロッドは、コーティング物質(原料物質)の種類に応じてその電気抵抗が変化する。それゆえ、コーティング物質の異なる陰極ロッドが選択的に使用される上記成膜装置においては、陰極ロッドの種類が変化する度に上記リング状アークの移動速度が変化することになる。
【0005】
アークの1回の移動期間中において物体表面に堆積するコーティング物質の量は、上記アークの移動速度の影響を受け、該移動速度が低いほど多くなる傾向を示す。
このため、上記成膜装置では、電極の選択に伴ってコーティング物質の厚みにバラツキを生じるという問題を生じていた。
【0006】
一方、上記成膜装置では、上記アークの移動速度が管理されないので、陰極ロッドの材質等によっては、このアークの移動速度が異常になって、以下のような不都合を生じる恐れがある。
すなわち、上記アークの異常高速移動により、放電が不安定になる現象や、陰極ロッドの周囲全体に上記リング状アークが形成されなくなる現象等を生じる恐れがあり、また、上記アークの異常低速移動により、陰極ロッドにおける放電部位が局所的に過熱されて、異常放電や陰極ロッドの部分的損傷を生じる恐れがある。
更に、上記成膜装置は、ガラス板等の平板状物体に対する成膜には適しているものの、航空機のキャノピーのような曲面を有する物体に一様な厚さの薄膜を形成することが困難であるという欠点がある。
【0007】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、陰極ロッドの材質によらず一様かつ適正な厚さの薄膜を形成することが可能であり、かつ、航空機のキャノピーのような曲面を有する物体の成膜にも適した成膜装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、真空チャンバとこのチャンバ内に配設した陰極ロッドとの間におけるアーク放電によって該陰極ロッドの周囲にリング状のアークを形成するとともに、前記陰極ロッドの電気抵抗に基づく電位差により前記アークを該陰極ロッドに沿って自己移動させ、この移動アークに基づいて前記陰極ロッドの表面から飛び出す原料物質を物体の表面に堆積させて薄膜を形成するようにした成膜装置であって、前記陰極ロッドへの印加電圧を制御して、前記アークの移動速度を変化させる制御手段を設けたことを特徴としている。
【0009】
この成膜装置によれば、上記アークの移動速度を制御することができるので、コーティング物質の異なる陰極ロッド、つまり、電気抵抗の異なる陰極ロッドが選択的に使用される場合においても、上記リング状アークの移動速度を適正目標速度に設定することが可能になる。つまり、陰極ロッドを構成する原料物質がどのような種類であっても、適正な厚さの薄膜を形成することが可能になる。
また、上記アークの移動速度を適正化して、不安定放電や陰極ロッドの損傷等を回避することも可能になる。
更に、上記成膜装置によれば、上記物体の形状に起因して陰極ロッドと物体の表面との間の距離が該陰極ロッドの長手方向に一定でない場合でも、その距離変化に応じてアークの移動速度を変化させることができるので、航空機のキャノピー等の物体の表面に対しても一様な厚さの薄膜を形成することが可能になる。
【0010】
前記制御手段は、前記陰極ロッドを構成する原料物質の材質および/または前記物体の表面の形状に適応した前記アークの移動速度変化パターンを予め設定し、このパターンに基づいて前記電圧を変化させるように構成することができる。
【0011】
また、本発明は、真空チャンバとこのチャンバ内に配設した陰極ロッドとの間におけるアーク放電によって該陰極ロッドの周囲にリング状のアークを形成するとともに、前記陰極ロッドの電気抵抗に基づく電位差により前記アークを該陰極ロッドに沿って自己移動させ、この移動アークに基づいて前記陰極ロッドの表面から飛び出す原料物質を物体の表面に堆積させて薄膜を形成するようにした成膜装置であって、前記陰極ロッドを、成膜すべき前記物体の面に倣うように形成したことを特徴としている。
【0012】
前記したように、上記薄膜の厚さは、上記陰極ロッドと上記物体の表面との間の距離が大きくなるほど小さくなる傾向を示す。この発明によれば、前記陰極ロッドと前記物体の表面との間の距離が該陰極ロッドの長手方向に沿って一様になるので、成膜すべき上記物体の表面が例えば曲面であっても、該表面に一様な厚さの薄膜を形成することが可能になる。
【0013】
前記陰極ロッドは、前記物体の面の形状に倣わせるために、例えば、曲げ加工しても良く、あるいは、長手方向に沿ってその径を変化させても良い。
【0014】
前記陰極ロッドと真空チャンバとの間で初期アーク放電を発生させる放電発生手段を設け設けても良い。上記放電発生手段は、所定の時間間隔で作動するように、あるいは、アーク電流の停止に基づいて作動するように構成することができる。この構成によれば、1つの物体に対して上記アークの移動操作を複数回繰り返して実施する場合に有利となる。
【0015】
前記陰極ロッドは、その全体を前記原料物質(ターゲット物質)で形成しても良いが、廉価な鋼等の材料からなる芯材の表面を上記原料物質で被覆した構造を持たせても良い。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明に係る成膜装置の好ましい実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る成膜装置を概念的に示す縦断面図である。また図2は、図1のA−A線による断面図である。
【0017】
これらの図において、真空チャンバ1は、金属製の円筒体によって形成されている。このチャンバ1の内部には、当初、ターボ分子ポンプ等によって0.01Pa程度の初期真空度が与えられ、ついで、希薄ガスの雰囲気(例えば、1〜2Pa程度のArガス雰囲気)が形成される。
【0018】
陰極ロッド(ターゲット電極)3は、例えば、チタン、アルミニウム、タングステン、ITO等のスパッタリング用原料物質で形成され、チャンバ1の軸線に沿って配置されている。
可変直流電源5は、正側がチャンバ1に接続されるとともに、負側が陰極ロッド3の一端に接続されている。また、この可変直流電源5には、該電源5の出力電圧の制御等を実行するコントローラ7が接続されている。
【0019】
上記陰極ロッド3の他端部近傍には初期放電発生機構9が配設されている。この初期放電発生機構9は、昇降用アクチュエータ9aと、一端がチャンバ1に電気的に接続された電磁コイル9bと、この電磁コイル9bの他端に電気的に接続され、該電磁コイル9bの電磁力によって上方に吸引される可動子9cとを備えている。
この初期放電発生装置9において、コントローラ7からの駆動信号によりアクチュエータ9aが作動すると、電磁コイル9bおよび可動子9cからなる電磁石が下降されて、該可動子9cの先端が陰極ロッド3の他端部周面に接触し、その結果、陰極ロッド3、可動子9cおよび電磁コイル9bからなる電路が形成される。
【0020】
チャンバ1と陰極ロッド3との間には、上記直流電源7の出力電圧が印加されているので、上記電路の形成に伴って電磁コイル9bが付勢される。その結果、可動子9cが吸引されてその先端が陰極ロッド3の他端部周面から離れ、その際、電磁コイル9bに蓄えられた電気エネルギーに基づくマイクロアーク放電(初期アーク放電)が両者間に発生する。チャンバ1と陰極ロッド3との間には、上記直流電源7の出力電圧に基づく電界が作用しているので、上記マイクロアーク放電の発生に伴って、陰極ロッド3の他端部周辺にリング状のアーク15が形成されることになる。
【0021】
上記陰極ロッド3の下方には、該ロッド3に平行する導電性のワーク置台17が設けられ、このワーク置台17上に被処理物体であるワーク19が配置されている。なお、図示したワーク19は、曲面を有した航空機の窓(キャノピー)であり、その内面が上に向く態様で配置されている。
【0022】
ところで、上記リング状のアーク15が形成されると、陰極ロッド3にアーク電流が流れる。陰極ロッド3は、電気抵抗を持つので、上記アーク電流が流れた場合に電圧降下を生じる。すなわち、図1に示すように、陰極ロッド3の他端部周辺にリング状のアーク15が形成された時点では、陰極ロッド3の一端からこのアーク15の形成位置に至る部位において電圧降下を生じる。
【0023】
このことは、陰極ロッド3におけるアーク15の形成位置の電圧に比してそれよりも右方の部位の電圧が低いこと、換言すれば、該アーク15の形成位置における陰極ロッド3とアノード(チャンバ1あるいはワーク置台17)との間の電界強度に比して、このアーク形成位置よりも右方の部位における同電界強度が高いことを意味している。
【0024】
上記初期放電に基づいて陰極ロッド3の他端部周辺に形成されたリング状アーク15は、電界強度の高い方に引かれることから、陰極ロッド3の一端(右端)に向かって移動を開始する。そして、その移動の途中においても、その移動位置より右方の部位の電界強度が高くなるので、その移動が継続されることになる。そして、アーク15が陰極ロッド3の一端部に被覆された電気絶縁性のキャップ21に到達する位置まで移動すると、このキャップ21の電界遮蔽作用によってアーク15が消失する。
【0025】
アーク15の移動に要する時間は、陰極ロッド3の材質、大きさ、電源5の出力電圧等に基づいて予め知られる。そこで、コントローラ7は、上記所用移動時間が十分確保される周期で上記初期放電発生機構9に駆動信号を出力し、その結果、陰極ロッド3に沿ったアーク15の移動が繰り返されることになる。
なお、前記キャップ21の電界遮蔽作用によるアーク15の消失、つまり、アーク電流の消失を検出し、その検出時点で上記初期放電発生機構9に駆動信号を与えるようにしても良い。電流センサ23は、上記アーク電流を検出するために設けたものである。
上記初期放電発生機構9の駆動回数、つまり、アーク15の移動回数は、コントローラ7においてカウントされ、そのカウント数が目標値に達した時点で上記初期放電発生機構9の駆動が停止される。
【0026】
アーク15は、チャンバ1内の希薄ガスをプラズマ化する。そして、プラズマ化したガスのイオンは、陰極ロッド3とアノード間の電界によって加速されて該陰極ロッド3の周面に衝突する。その結果、ターゲットたる陰極ロッド3がスパッタリングされて、その原料物質の原子がワーク19の内表面に到達して堆積する。
したがって、上記陰極ロッド3に沿ったアーク15の移動に伴って、ワーク19の内表面に陰極ロッド3の原料物質と同一成分の薄膜が形成される。なお、形成される薄膜の厚さは、上記アーク15の移動の繰り返し数が多いほど大きくなる。
【0027】
次に、コントローラ7による電源5の制御について説明する。
上記アーク15の移動速度は、陰極ロッド3の電気抵抗に依存する。すなわち、電気抵抗の高い原料物質からなる陰極ロッドの方が電気抵抗の低い原料物質からなる陰極ロッドよりも上記アークの移動速度が高くなる。
そして、アーク15の1回の移動期間中においてワーク19の表面に堆積する原料物質の量は、上記アーク15の移動速度の影響を受け、該移動速度が低いほど多くなる傾向を示す。すなわち、移動速度が低いほど、スパッタリング時間が長くなって、原料物質の堆積量が多くなる。
それゆえ、上記原料物質の堆積量を該原料物質の種類によらず一定にするためには、上記アーク15の移動速度を管理する必要がある。
【0028】
一方、ワーク19が、例えば、平板状物体(例えば、ガラス板)である場合には、アーク15を一定な速度で移動させることにより一様な厚みの薄膜を形成することができる。
しかし、ワーク19が例えば図1に示したような曲面を有する航空機のキャノピーである場合、陰極ロッド3から離れた(アーク15から離れた)中間部おける原料物質の堆積効率が該ロッド3に近い両端部におけるそれよりも低くなる。
【0029】
所定の成膜区間を考えると、前述したように、上記アーク15の移動速度が低いほど、その区間におけるスパッタリング時間が長くなって、該区間での原料物質の堆積量が多くなる。したがって、上記曲面状ワーク19の長手方向全域にわたって一様な厚みの薄膜を形成するためには、該ワーク19の中間部区間におけるアーク15の移動速度が低下されるように上記アーク15の移動速度を管理する必要がある。
【0030】
上記アーク15の移動速度は、電源5の出力電圧の調整によって変化させることができる。例えば、上記出力電圧を上昇させれば、陰極ロッド3による電圧降下が大きくなるのでアーク15の移動速度が高くなり、逆に、上記出力電圧を下降させれば、陰極ロッド3による電圧降下が小さくなるのでアーク15の移動速度が低くなる。
【0031】
そこで、コントローラ7は、陰極ロッド3を構成する原料物質の各材質およびワーク19の表面の各種形状に適応した複数のアーク移動速度変化パターンを図示していないメモリに格納し、このパターンが実現されるように可変直流電源5の出力電圧を制御する。
上記アーク15の移動速度変化パターンは、シミュレーションや実験等によって予め得ることができる。なお、この実施の形態の成膜装置を平板状のワークのみに適用する場合には、陰極ロッド3を構成する原料物質の各材質に適応したアーク移動速度変化パターンのみを上記メモリに記憶させておけばよい。
上記コントローラ7には、上記移動速度変化パターンを選択するために、原料物質の各材質を指定する情報(例えば、陰極ロッド3の番号や)、ワーク19の形状を指定する情報がキーボード等を介して入力される。
【0032】
このように、この実施の形態によれば、陰極ロッド3を構成する原料物質の材質およびワーク19の表面形状に適応したアーク15の移動速度変化パターンが自動的に設定されるので、平板状のワークはもちろん、陰極ロッド3の長手方向に沿う曲面を有した上記キャノピー等のワーク19に対しても一様かつ適正な厚みの薄膜を形成することができる。
【0033】
以上においては、ワーク19の内面に薄膜を形成する場合を説明したが、上記実施の形態の成膜装置は、該ワーク19の外面に薄膜を形成する場合にも有効である。この場合、ワーク19を内面が下方に向くようにワーク置台17に配置すればよい。なお、短手方向の断面が略半円状をなすキャノピー等の外面に薄膜を形成する場合や、平板ガラス等を含む広面積のワークに薄膜を形成する場合等においては、複数本の陰極ロッド3を所定間隔で平行配置するようにしても良い。この場合、個々の陰極ロッド3においてアーク15を同じ側からスタートさせる必要はない。
【0034】
図3および図4は、本発明の別の実施の形態において使用する陰極ロッド3を示している。
図3に示す陰極ロッド3は、ワーク19の曲面に沿わせるために曲げ加工を施してある。また、図4に示す陰極ロッド3は、同様の目的で、中央部の径が両端部の径よりも大きくなるような形状を持たせてある。
これらの陰極ロッド3を使用する場合には、ワーク19の長手方向全域における原料物質堆積効率がほぼ一定化されるので、直線状の電極ロッドを用いて平板状ワークに成膜を施す場合と同様に、陰極ロッド3を構成する原料物質の各材質に適応したアーク移動速度が得られるように上記電源5の出力電圧を制御すればよい。
【0035】
なお、ワーク19の形状が複雑な場合には、陰極ロッド3をワーク19に充分沿わせるように形成することが困難な場合もあり得る。この場合には、上記原料物質の材質およびワーク19の表面形状に適応したアーク15の移動速度変化パターンにしたがって上記電源5の出力電圧を制御すればよい。
【0036】
上記各実施の形態において使用される陰極ロッド3は、その全体を前記原料物質(ターゲット物質)で形成しても良いが、廉価な鋼等の材料からなる芯材の表面を原料物質で被覆した構造を持たせても良い。また、陰極ロッド3をITOで形成する場合には、必要に応じて、水冷することができる。その場合、陰極ロッド3の軸線に沿う通水路が貫通形成される。
【0037】
なお、上記各実施の形態に係る成膜装置は、大形状の曲面を有した物品に薄膜を容易かつ低コストに形成する手段として特に有効であるが、多数の小物物品に対しての薄膜形成手段としても有効に適用することができる。その場合、上記多数の小物物品がアークの移動方向に沿って配列設置される。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、陰極ロッドへの印加電圧を制御して、アークの移動速度を変化させる制御手段を設けているので、コーティング物質(原料物質)の異なる陰極ロッド、つまり、電気抵抗の異なる陰極ロッドが選択的に使用される場合においても、アークの移動速度を適正目標速度に設定することが可能になる。つまり、陰極ロッドを構成する原料物質がどのような種類であっても、適正な厚さの薄膜を形成することが可能になる。
また、上記アークの移動速度を適正化して、不安定放電や陰極ロッドの損傷等を回避することも可能になる。更に、上記物体の形状に起因して陰極ロッドと物体の表面との間の距離が該陰極ロッドの長手方向に一定でない場合でも、その距離変化に応じてアークの移動速度を変化させることができるので、航空機のキャノピー等の物体の表面に対しても一様な厚さの薄膜を形成することが可能になる。
【0039】
また、本発明によれば、陰極ロッドを成膜すべき物体の面に倣うように形成しているので、該物体の表面が曲面であっても、該表面に一様な厚さの薄膜を形成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る成膜装置の実施の形態を示す概略縦断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】ワークの形状に沿わせるために曲げ加工を施した陰極ロッドの一例を示す概念図である。
【図4】ワークの形状に沿わせるために径を変化させた陰極ロッドの一例を示す概念図である。
【符号の説明】
1 チャンバ
3 陰極ロッド
5 可変直流電源
7 コントローラ
9 初期放電発生装置
15 アーク放電
17 ワーク置台
19 ワーク
Claims (9)
- 真空チャンバとこのチャンバ内に配設した陰極ロッドとの間におけるアーク放電によって該陰極ロッドの周囲にリング状のアークを形成するとともに、前記陰極ロッドの電気抵抗に基づく電位差により前記アークを該陰極ロッドに沿って自己移動させ、この移動アークに基づいて前記陰極ロッドの表面から飛び出す原料物質を物体の表面に堆積させて薄膜を形成するようにした成膜装置であって、
前記真空チャンバと陰極ロッド間に印加する電圧を制御して、前記アークの移動速度を変化させる制御手段を設けたことを特徴とする成膜装置。 - 前記制御手段は、前記陰極ロッドを構成する原料物質の材質および/または前記物体の表面の形状に適応した前記アークの移動速度変化パターンを予め設定し、このパターンに基づいて前記電圧を変化させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
- 真空チャンバとこのチャンバ内に配設した陰極ロッドとの間におけるアーク放電によって該陰極ロッドの周囲にリング状のアークを形成するとともに、前記陰極ロッドの電気抵抗に基づく電位差により前記アークを該陰極ロッドに沿って自己移動させ、この移動アークに基づいて前記陰極ロッドの表面から飛び出す原料物質を物体の表面に堆積させて薄膜を形成するようにした成膜装置であって、
前記陰極ロッドを、成膜すべき前記物体の面に倣うように形成したことを特徴とする成膜装置。 - 前記陰極ロッドは、成膜すべき前記物体の面に倣わせるために曲げ加工されていることを特徴とする請求項3に記載の成膜装置。
- 前記陰極ロッドは、成膜すべき前記物体の面に倣わせるために、長手方向に沿ってその径を変化させたことを特徴とする請求項3に記載の成膜装置。
- 前記陰極ロッドと真空チャンバとの間で初期アーク放電を発生させる放電発生手段を設けたことを特徴とする請求項1または3に記載の成膜装置。
- 前記放電発生手段は、所定の時間間隔で作動するように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の成膜装置。
- 前記放電発生手段は、アーク電流の停止に基づいて作動するように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の成膜装置。
- 前記陰極ロッドが前記原料物質で表面を被覆した構造を有することを特徴とする請求項1または3に記載の成膜装置。
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