JP2004238377A - ステロイドに対する耐性をアッセイするための方法および試薬 - Google Patents
ステロイドに対する耐性をアッセイするための方法および試薬 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004238377A JP2004238377A JP2003032117A JP2003032117A JP2004238377A JP 2004238377 A JP2004238377 A JP 2004238377A JP 2003032117 A JP2003032117 A JP 2003032117A JP 2003032117 A JP2003032117 A JP 2003032117A JP 2004238377 A JP2004238377 A JP 2004238377A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- glucocorticoid receptor
- human glucocorticoid
- monoclonal antibody
- recognizes
- human
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
- Peptides Or Proteins (AREA)
Abstract
【課題】ステロイド感受性を判定する臨床検査法として,ヒトグルココルチコイドリセプターαおよびβに対する選択性の高いモノクローナル抗体を作成して,酵素抗体法による測定系を提供すること。
【解決手段】ヒトグルココルチコイドリセプターを免疫学的にアッセイする方法であって,ヒトグルココルチコイドリセプターαおよびβを認識するモノクローナル抗体と、ヒトグルココルチコイドリセプターβを認識するがヒトグルココルチコイドリセプターαを認識しないモノクローナル抗体とを用いることを特徴とする方法。
【選択図】 なし
【解決手段】ヒトグルココルチコイドリセプターを免疫学的にアッセイする方法であって,ヒトグルココルチコイドリセプターαおよびβを認識するモノクローナル抗体と、ヒトグルココルチコイドリセプターβを認識するがヒトグルココルチコイドリセプターαを認識しないモノクローナル抗体とを用いることを特徴とする方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,ステロイド耐性を判定する方法に関する。より詳細には,本発明は,抗ヒトグルココルチコイドリセプターを認識するモノクローナル抗体,及びそのモノクローナル抗体を用いて,検体中に存在するヒトグルココルチコイドリセプターβを定量する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ステロイド剤は気管支喘息,膠原病,ネフローゼ,炎症性腸疾患,アレルギー疾患など非常に広い範囲の疾患に効果を示す抗炎症剤であり,難病といわれる特定疾患にも著効を示す場合がある。しかし,ステロイド剤は使用が長期にわたることが多く,長期使用により薬剤感受性が低下し,全く効果を示さないステロイド耐性に陥る事が少なからずある。このような場合,ステロイド剤は副作用が強いことから,投与したステロイド自体がかえって病態を悪化させる。また,特にリンパ性白血病などの血液腫瘍では,ステロイド自体が細胞殺作用を有する化学療法剤としても使われるが,投与を繰り返すうちに腫瘍細胞がステロイドに対して耐性となることもしばしば経験されている。そこで医療現場ではステロイド感受性の診断法の確立が求められている。
【0003】
ステロイドの感受性を事前に診断する臨床検査薬は現時点で販売されていない。現在医療現場ではステロイドの耐性を,ステロイド剤投与後にその効果で判断せざるを得ない状況にある。ステロイドには耐性という問題以外に,全身性の副作用が問題となる。ステロイド耐性患者ではその薬理効果が損なわれるにも係わらず,全身性の副作用は残存するという不都合な点がある。ステロイド耐性の事前診断には,不用な薬剤の投与という医療経済的な側面に加えて,無意味な副作用を抑制するという有用性もある。
【0004】
ステロイドの薬効メカニズムはステロイドが古い薬物であるにも関わらず,現在でも不明な点が多い。しかし近年の分子生物学の進歩により,図1に示すようなメカニズムが考えられている。すなわち,脂溶性の性質を有するステロイド(グルココルチコイドGC)は,細胞膜を通過して細胞質に入ると,その受容体タンパク質であるグルココルチコイドレセプターαアイソフォーム(GRα)に結合する。このGC−GRαは,ホモダイマーを形成し,(1)核に移行,サイトカイン遺伝子などの転写制御領域にあるDNA上の結合部位GRE(Glucocorticoid Responsive Element)と結合し,対象遺伝子の転写を制御する,(2)種々の遺伝子の転写を活性化する転写因子NF−κBを,その阻害因子であるI−κBの合成を亢進させて抑制し,NF−κBで活性化される遺伝子発現を抑制する,(3)同様の転写因子AP−1と結合して不活化し,AP−1によって活性化される遺伝子発現を抑制する,などの機序で,主に免疫反応を亢進させる遺伝子の発現を抑制すると考えられている。
【0005】
この機能的受容体であるGRαときわめて構造の類似したグルココルチコイドレセプターβアイソフォーム(GRβ)が存在することが知られている。このGRβはGCと結合するドメインを欠く構造をもっており,GRαと結合してヘテロダイマーを形成し,GRαホモダイマー形成を阻害する優性阻害型の拮抗作用を発揮してGCの生物活性を抑制すると考えられている(図1)。
【0006】
この2つのアイソフォームは,同一のGR遺伝子から転写されたmRNA前駆体(pre mRNA)から選択的スプライシングといわれる選択的RNAプロセシングによってGRα,GRβをコードする特異的mRNAが生成され,タンパク質合成が起こることが知られてきた(図2)。この選択的RNAプロセシングを行う酵素は未だ同定されていない。またステロイドの作用メカニズムの内,その耐性に最も関係しているものは,上述のAP−1を介したメカニズムであるとの報告もある。
【0007】
本発明者らは,ステロイド剤が治療の第一選択薬である炎症性腸疾患の一つである潰瘍性大腸炎患者において,ステロイドに反応しない症例では末梢血単核球のGRα特異的mRNA,GRβ特異的mRNAの発現及び,GRαタンパク質,GRβタンパク質の発現が容易に検出されること,一方ステロイドで症状が改善する感受性症例ではGRα特異的mRNA,GRαタンパク質のみが検出されてGRβ特異的mRNA,GRβタンパク質は検出されないこと,すなわちGRβ特異的mRNA,GRβタンパク質の出現がステロイド耐性のマーカーであることを報告した(Honda, M. et al., Gastroenterology 2000; 118:859−866)。また,その後GR mRNAについてキャピラリー PCRを用いて定量解析したところ,ステロイド耐性患者末梢血単核球では,GRα特異的mRNAの発現量は不変で,GRβ特異的mRNAの発現量の増大が認められることが明らかとなった。従ってGRβタンパク質もステロイド抵抗性症例では増加していることが考えられる。しかし,タンパク質レベルでGRα,GRβの定量を行うためには,GRα,GRβをそれぞれ選択的,特異的に認識する強い力価の抗体が必要である。GRα,GRβをそれぞれ選択的,特異的に認識する抗体は市販され,またその使用の報告もある(Hecht, K. et al., J Biol Chem 1997; 272: 26659−26664; Christodoulopoulos, P. et al. J Allerg Clin Immunol 2000; 106: 479−484; Gougat, C. et al., J. Mol. Med. 2002; 80: 309−318)。しかし、それらの抗体は力価が弱いためにウェスタンブロッティングでの使用に制限されており,実質的に酵素抗体法による定量が行えないため,これまでタンパク質レベルでの定量を行うことができなかった。
【0008】
本発明に関連する先行技術文献情報としては以下のものがある。
【特許文献1】
USP 5770176
【非特許文献1】
Honda, M. et al., Gastroenterology 2000; 118:859−866
【非特許文献2】
Hecht, K. et al., J Biol Chem 1997; 272: 26659−26664
【非特許文献3】
Christodoulopoulos, P. et al. J Allerg Clin Immunol 2000; 106: 479−484
【非特許文献4】
Gougat, C. et al., J. Mol. Med. 2002; 80: 309−318
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は,ステロイド感受性を判定する臨床検査法として,ヒトグルココルチコイドリセプターαおよびβに対する選択性の高いモノクローナル抗体を作成して,酵素抗体法による測定系を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は,ヒトグルココルチコイドリセプターを免疫学的にアッセイする方法を提供する。該方法は,ヒトグルココルチコイドリセプターαおよびβを認識するモノクローナル抗体と,ヒトグルココルチコイドリセプターβを認識するがヒトグルココルチコイドリセプターαを認識しないモノクローナル抗体とを用いることを特徴とする。好ましくは,ヒトグルココルチコイドリセプターβを認識するがヒトグルココルチコイドリセプターαを認識しないモノクローナル抗体は,ヒトグルココルチコイドリセプターβのC末端領域を認識する。
【0011】
本発明の好ましい態様においては,ヒトグルココルチコイドリセプターαおよびβを認識する上述のモノクローナル抗体は,ヒトグルココルチコイドリセプターのN端側1−367のアミノ酸配列を含むN末端領域を認識する。また好ましくは,ヒトグルココルチコイドリセプターβを認識するがヒトグルココルチコイドリセプターαを認識しない上述のモノクローナル抗体は,ヒトグルココルチコイドリセプターβのアミノ酸配列727−742を含むC末端領域を認識する。
【0012】
特に好ましくは,本発明の方法は,測定をサンドイッチ法により,酵素免疫学的に行う。
【0013】
別の観点においては,本発明は,ヒトグルココルチコイドリセプターのN端側1−367のアミノ酸配列を含むN末端領域を認識し,ヒトグルココルチコイドリセプタープロと免疫反応するモノクローナル抗体を提供する。本発明はまた,ヒトグルココルチコイドリセプターαのアミノ酸配列727−777を含むC末端領域を認識し,ヒトグルココルチコイドリセプターβと免疫反応しないモノクローナル抗体を提供する。本発明はまた,ヒトグルココルチコイドリセプターβのアミノ酸配列727−742を含むC末端領域を認識し,ヒトグルココルチコイドリセプターαと免疫反応しないモノクローナル抗体を提供する。
【0014】
好ましくは,本発明のモノクローナル抗体は,ヒトグルココルチコイドリセプターの検出限界値が0.1ng/mlであり,より好ましくは0.01ng/mlである。
【0015】
また別の観点においては,本発明は,ヒトグルココルチコイドリセプターを免疫学的にアッセイするキットであって,ヒトグルココルチコイドリセプターαおよびβを認識するモノクローナル抗体と,ヒトグルココルチコイドリセプターβを認識するがヒトグルココルチコイドリセプターαを認識しないモノクローナル抗体とを含むキットを提供する。
【0016】
本発明の方法を用いることにより,末梢血試料を用いてヒトグルココルチコイドリセプターαおよびβを定量し,臨床の現場でステロイド耐性・感受性を簡便に判定することができる。本発明のモノクローナル抗体はさらに,組織や細胞の免疫学的染色のための研究用試薬としても有用である。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明のモノクローナル抗体は,グルココルチコイドリセプターαとβとを区別して認識することができる。GRβmRNA,GRβタンパク質の出現がステロイド耐性のマーカーであることから,本発明のモノクローナル抗体を用いて,ステロイドに対する耐性・感受性を判定することができる。
【0018】
グルココルチコイドリセプターαおよびβの構造は,Hollenbergら(Nature 318, 635−641, 1985)およびEncioら(J. Biol. Cehm. 266, 7182−7188, 1991)に記載されている。αおよびβは,共通のN末端領域を有し,C末端領域においてのみ異なる。したがって,αおよびβのそれぞれのC末端領域を認識するモノクローナル抗体を用いることにより,αおよびβの存在を特異的に検出することができる。
【0019】
本発明のモノクローナル抗体は,ヒトグルココルチコイドリセプターで免疫した哺乳動物の抗体産生細胞(脾臓細胞,リンパ節等)と,ミエローマ細胞とを融合させてハイブリドーマを作製し,所望の反応特異性を有する抗体を産生するハイブリドーマを選択し,このハイブリドーマから常法により調製することができる。本発明のモノクローナル抗体を得るためには,hGRαβ共通領域,hGRαC端固有領域またはhGRβC端固有領域のそれぞれに対応するヒトグルココルチコイドリセプターフラグメントを調製し,これを免疫原として用いる。
【0020】
免疫原として用いられるヒトグルココルチコイドリセプターは,ヒトグルココルチコイドリセプターをコードする遺伝子を用いて組み換え的に製造することができる。ヒトグルココルチコイドリセプターをコードする遺伝子の既知の塩基配列にしたがい,適当なヒトcDNAをテンプレートとして用いて,PCRによりヒトグルココルチコイドリセプターの所望の領域をコードする遺伝子をクローニングすることができる。これを発現ベクターに挿入して適当な宿主に導入し,組換えヒトグルココルチコイドリセプターを発現させることができる。
【0021】
組換えタンパク質の製造および精製は,当該技術分野において知られる任意の方法を用いることができる。精製を容易にするために,適当なタグを付加した融合タンパク質として発現させてもよい。例えば,ヒトグルココルチコイドリセプターをHis−Tag融合タンパク質として発現させれば,アフィニティークロマトグラフィーを用いて容易に精製することができ,次にエンテロキナーゼ処理によりHis−Tag部分を容易に除去することができる。
【0022】
本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得るためには,上述のようにして製造した組換えヒトグルココルチコイドリセプターまたはそのフラグメントを免疫原として哺乳動物の皮下または腹腔内に注射する。免疫する動物としては,マウス,ラット,ヤギ,ヒツジ,ウサギ等の哺乳動物を用いることができる。免疫応答性を高めるために,必要に応じて完全フロインドアジュバント,RIBIアジュバントなどのアジュバントを用いてもよい。免疫した動物の抗体価をモニターし,抗体価の上昇した動物から脾臓細胞を採取し,マウスミエローマ細胞と融合させる。マウスミエローマ細胞としては,ヒポキサンチン−グアニン−ホスホリボシルトランスフェラーゼ欠損等の選択マーカーを有するものを用いる。融合は,当該技術分野において知られる方法を用いて行なうことができ,融合促進剤としてポリエチレングリコール,センダイウイルス等を用いてもよい。
【0023】
細胞融合の後,ハイブリドーマのみが生育できるHAT培地等の選択培地で培養することによりハイブリドーマを選択し,ELISA法を用いて所望の抗体を産生するか否かを測定する。ELISA法は当該技術分野においてよく知られる方法にしたがって行うことができる。免疫原として用いたヒトグルココルチコイドリセプターまたはそのフラグメントをプレート上に結合させ,ハイブリドーマの培養上清を反応させる。次に酵素等で標識した抗マウス抗体を用いて抗体を検出することにより,所望の抗体を産生するコロニーを選択する。次に得られたハイブリドーマを限界希釈法によりクローニングして,本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得ることができる。
【0024】
ヒトグルココルチコイドリセプターβ特異的モノクローナル抗体を得るためには,hGRα組換えタンパク質およびhGRβ組換えタンパク質をそれぞれプレートに固定化して各ハイブリドーマの上清を反応させ,hGRβに結合するがhGRαには結合しないハイブリドーマを選択する。同様にして,ヒトグルココルチコイドリセプターα特異的モノクローナル抗体,およびhGRαとhGRβとの両方を認識するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマをそれぞれ選択することができる。
【0025】
得られたハイブリドーマはRPMI1640培地などの適当な培養液で培養して増殖させ,その培養上清から10〜100μg/mlの濃度のモノクローナル抗体を得ることができる。また,大量に抗体を得るためには,あらかじめプリスタンを投与したマウスの腹腔にハイブリドーマを移植することにより,モノクローナル抗体を含む腹水を得ることができる。このようにして得られるモノクローナル抗体は,さらにアフィニティー精製,イオン交換クロマトグラフィー,限外濾過などにより精製してもよい。また,本発明のモノクローナル抗体から,F(ab′)2,Fab′,Fab等のフラグメントを調製して用いてもよく,あるいはキメラ抗体を作製してもよい。
【0026】
本発明のモノクローナル抗体は,ヒトグルココルチコイドリセプターαおよびβの検出に有用である。検出は例えば,当該技術分野においてよく知られるサンドイッチELISA法により行うことができる。サンドイッチ法においては,本発明のモノクローナル抗体をプレート等の表面に固定化し,これに検体中のグルココルチコイドリセプターを結合させ,次に酵素等で標識した本発明のモノクローナル抗体を用いてグルココルチコイドリセプターをサンドイッチした後に,結合した酵素の量を測定することにより検体中のグルココルチコイドリセプターを検出する。
【0027】
サンドイッチ法においては,バックグラウンドを低下させるために,固定化抗体と標識抗体とは異なるものを用いることが好ましい。すなわち,本発明の方法の好ましい態様においては,固定化抗体としてヒトグルココルチコイドリセプターのN末端領域を認識するモノクローナル抗体を用い,標識抗体としてヒトグルココルチコイドリセプターβのC末端領域を認識するモノクローナル抗体を用いる。あるいは,逆に,固定化抗体としてヒトグルココルチコイドリセプターβのC末端領域を認識するモノクローナル抗体を用い,標識抗体としてヒトグルココルチコイドリセプターのN末端領域を認識するモノクローナル抗体を用いてもよい。
【0028】
サンドイッチ法において用いるための標識としては,酵素標識(ペルオキシダーゼ,アルカリホスファターゼ等),放射性標識,蛍光標識,化学発光標識,着色コロイド標識等を利用することができる。本発明のモノクローナル抗体に標識を結合させる方法,ならびに発色試薬等を用いてこれらの標識を定量する方法は,当該技術分野においてよく知られている。
【0029】
また,本発明の方法においては,サンドイッチ法の代わりに競合法を用いてもよい。また,本発明のモノクローナル抗体をラテックス等の担体に結合させ,ラテックス凝集免疫測定法を用いてヒトグルココルチコイドリセプターを検出してもよい。あるいは,本発明のモノクローナル抗体は,カートリッジ式の簡易検出装置において用いてもよい。
【0030】
【実施例】
以下に実施例を掲げ,本発明を具体的に説明するが,本発明はこれら実施例に限定されず,様々な実施形態が可能であり,本発明は本明細書及び図面に開示の思想に従ったものであるかぎり,すべての実施形態を包含することは理解されるべきである。
【0031】
実施例1 組換え体抗原の作製
組換え体抗原の作製のために用いた種々のプラスミドを図3−7に示す。グルココルチコイドリセプターのDNA配列は,GenBank受託番号X03225(配列番号7)およびX03348(配列番号8)に基づく。
hGR 遺伝子のクローニング
ヒトリンパ球由来cDNAを鋳型に用いて,GRα遺伝子を3ブロックに分け,PCRを行い遺伝子を増幅した。すなわち,3ブロックについて各ブロック特異的なプライマーの組み合わせでPCRを実施した。なお,PCR増幅にはKOD’ DNA ポリメラーゼを使用した。得られた,増幅DNAはアガロース電気泳動で精製し,断片を制限酵素マッピング,配列確認後,断片をベクターpCR2.1に挿入し,クローニングした。得られた,クローンT1(pGR003),K2(pGR004),K3(pGR005)は制限酵素マッピングにより挿入断片を確認後,DNA シークエンシングにより全配列の確認を行った。遺伝子組換えを行ない,3ブロックに分けたグルココルチコイドリセプター遺伝子を繋ぎ合せ,T7系プローモーターを有するpET3系ベクターに挿入した。GRNdeS,BCXPAS プライマーを用いPCRによりpGR003(T1)遺伝子を増幅した。目的断片468bpは増幅され,XbaI,NdeI消化した。消化断片は1.5%アガロースゲル電気泳動上で分離され,Genecleanキットで精製した。pUC18をNdeI,XbaIで消化し,約2.5kbpのバンドをアガロースGelから精製した。この切断ベクターと上記精製断片を,TAKARA DNA ligationキットでライゲーションした。このライゲーション溶液を直接大腸菌に形質転換した。pGR007をメチラーゼ産生が無い大腸菌株Epiculian coli SCS−101に形質転換し,XbaIで消化した。その結果,目的通り切断された。非メチル化pGR007をBanIII,XbaIで消化した。pGR005(K3)をBanIII,XbaIで消化した。pGR007消化物はフェノール処理後MicrospinG25により精製した。pGR005消化物はアガロースゲルから切り出し,Genecleanにより精製した。精製した両DNAをライゲーション後,大腸菌DH5aに形質転換して,プラスミドpGR008を得た。pGR008及びpGR004(K2)をBanIII,XbaI消化し,精製,ライゲーション,形質転換を行い,HindIIIで消化したときに目的サイズ(4134,554,368bp)のバンドを与えるプラスミドpGR009を得た。pGR009および発現用ベクターpET3aをNdeI,BamHIでそれぞれ消化し,pGR009由来2.3kbp断片を精製,pET3aにライゲーションし,形質転換を行い,プラスミドpGR011を得た。順方向,逆方向から各3種のプライマーによりジデオキシ法でシークエンシングして,目的配列と一致することを確認した。
【0032】
hGR β完全長発現遺伝子の構築
次に示すプライマーGRBS,GRBASでhGRβ固有領域の遺伝子をPCR法で増幅した。
GRBS:CCTAAGGACGGTCTGAAGAGC
GRBAS:CCACGTATCCTAAAAGGGCAC
鋳型にはヒトリンパ球由来cDNAを用いた。得られた増幅産物350bpをpCR2.1ベクターにクローニングし,これをpGR006とした。PGR006およびpGR011を制限酵素EcoT22I,BamHIで消化し,PCR由来断片256bpを精製し,pGR011ベクター部分にライゲーションし,形質転換を行い,プラスミドpGR012を得た。このプラスミドをジデオキシ法によりシークエンシングして,目的配列と一致することを確認した。
【0033】
hGR α,β共通領域( N 端領域)発現遺伝子の構築
hGRα発現遺伝子pGR011のDNA結合領域より上流に5189bp目のCをTに置換し,Stopコドンを新設し,また同様に5197bp目のTをCに換え,BamHI認識配列を新設する目的で部位特異的突然変異を行った。
以下のプライマーを用いた。
STP5191S: GGTGCTAAGGATCCGGAGATGACAACTTGACTTCTCTGGG
STP5191A: GTCAAGTTGTCATCTCCGGATCCTTAGCACCTATTCCAATTT TCGG
このプラスミドをpGR015とした。このpGR015をBamHI消化し,アガロースゲル電気泳動による精製で5.5kbpのバンドを精製した。このバンドをセルフライゲーションさせて,プラスミドpGR018を得た。
【0034】
hGR αC端固有領域発現遺伝子の構築
hGRα発現遺伝子pGR011のDNA結合領域より下流5676bp目のCをAに,5679bp目のCをTに,5680bp目のCをGに置換し,NdeI認識配列を新設する目的で部位特異的突然変異を行った。
以下のプライマーを用いた。
NDE5678S:CGTTACCACAACTCACCCATATGCTGGTGTCACTGTTGGAGG
NDE5678A:CAGTGACACCAGCATATGGGTGAGTTGTGGTAACGTTGCAGG
このプラスミドをpGR016とした。このpGR016をNdeI消化し,アガロースゲル電気泳動による精製で5.5kbpのバンドを精製した。このバンドをセルフライゲーションして,プラスミドpGR019を得た。
【0035】
hGR βC端固有領域発現遺伝子の構築
pGR019制限酵素EcoT22I,BamHIで消化し,上記pGR006由来350bp断片を精製し,pGR019ベクター部分にライゲーションして,プラスミドpGR020を得た。
【0036】
His−Tag 融合タンパク質発現遺伝子の作製
His−Tag合成遺伝子は2本鎖を作るためにアニーリングし,この後NdeI消化した。このNdeI消化断片を精製し,それぞれ制限酵素NdeIで完全消化したpGR018,pGR019およびpGR020とライゲーションして,His−Tag融合タンパク質をコードするプラスミドpGR024,pGR025およびpGR026を得た。
【0037】
His−Tag−hGR αβ共通領域融合タンパク質の精製
pGR024のBL21(DE3)Codon Plus RIL形質転換体を10mlのM9ZB培地で37℃振盪培養した。約5時間後濁度を測定しそれぞれの550nmの吸光度が0.6〜0.8である事を確認し,IPTGを添加した。添加後同条件で3時間培養し,6ml分菌体を遠心分離により回収した。菌体を1mlの8M 尿素, 500mM NaCl, 20mM NaPO4 pH7.8(Buffer A)で懸濁した。懸濁液をTOMY精工社製超音波発生装置により超音波破砕し,15000rpm,5分間4℃で遠心分離し,上清を回収した。
【0038】
この上清をアフィニティークロマトグラフィーにアプライした。アフィニティークロマトグラフィーはInvitrogen社製ProBond(登録商標)Resinを使用した。予め1mlのゲルをカラムに充填し,10mlのBuffer Aで平衡化しておき,ここに上記菌体抽出液をアプライした。8mlの同バッファーで洗浄し,次いで2mlの8M 尿素, 500mM NaCl, 20mM NaPO4 pH6.5(Buffer B)で洗浄後,8M 尿素, 500mM NaCl, 20mM NaPO4 pH4.0(Buffer C)で溶出した。溶出液は1mlずつ分画した。溶出液の280nm吸光度を測定した。溶出液をSDS−PAGEで解析した。溶出液はシングルバンドであった。His−Tag−hGRαβ融合タンパク質は抽出液から1工程で精製されることが確認された。
【0039】
His−Tag 部分の切り出し
His−Tag融合タンパク質をエンテロキナーゼ処理したところ,処理物はProBondカラムを素通りし,His−Tag部分が除去されたことが確認された。
【0040】
His−Tag−hGR α,および His−Tag−hGR β融合タンパク質の精製
pGR025あるいはpGR026のHMS174(DE3)形質転換体を5ml×10本のM9ZB培地で37℃振盪培養した。約5時間後濁度を測定しそれぞれの550nmの吸光度が0.6〜0.8である事を確認し,IPTGを添加した。添加後同条件で3時間培養し,50ml分菌体を遠心分離により回収した。菌体を5mlの6M グアニジン−HCl, 500mM NaCl, 20mM NaPO4 pH7.8で懸濁した。懸濁液をTOMY精工社製超音波発生装置により超音波破砕し,15000rpm,5分間4℃で遠心分離し,上清を回収した。この上清をアフィニティークロマトグラフィーにアプライした。アフィニティークロマトグラフィーはInvitrogen社製ProBond(登録商標)Resinを使用した。予め1mlのゲルをカラムに充填し,10mlの8M 尿素, 500mM NaCl, 20mM NaPO4 pH7.8で平衡化しておき,ここに上記菌体抽出液をアプライした。8mlの同バッファーで洗浄し,次いで2mlの8M 尿素,20mM NaPO4 pH6.5(Buffer B)で洗浄後,さらに8M 尿素,20mM NaPO4 pH5.0(Buffer D)で洗浄した。この後8M 尿素,20mM NaPO4 pH5.0(Buffer C)溶出した。溶出液は1mlずつ分画した。溶出液の280nm吸光度を測定した。溶出液をSDS−PAGEで解析した。
【0041】
実施例2ヒトグルココルチコイドリセプターαβ共通領域モノクローナル抗体の作製
pGR024 組換え体の免疫
免疫には,マウス3匹(Balb/c×3)を用いた。hGR組換え体を1匹あたり50μgを腹腔内に免疫した。アジュバントとしては,RIBI杜のMPL+TDM EMULSIONを使用し,抗原とアジュバントを容量1:1で混合し,免疫した。免疫スケジュールとして5回免疫後にチェック採血を行い抗体価の上昇をELISAにて確認した。
【0042】
力価測定
5回免疫後チェック採血についてhGR組換え体抗原固相化プレートを作製し,力価測定に供した。プレートについては,抗原1μg/m1の濃度で使用した。またアッセイは室温で,血清(一次)反応1hr,標識抗体(二次)反応1hr,TMBによる発色2分で行った。各個体において力価の上昇が確認された。このうち,最も高い力価を示した個体についてアジュバントを含まない抗原(50μg)で追加免疫を行い,以下に記載するようにフュージョンを行った。
【0043】
フュージョン
マウスから脾臓を摘出し,DMEM培養液下で,ホモジネイトを行った。細胞懸濁液を遠心分離(1000回転,10分)し,上清除去後,ペレットをDMEM培養液に再懸濁した。細胞懸濁液をあらかじめ用意したマウスハイブリドーマ(P3U1)細胞懸濁液と混合し,遠心を行った(1000回転,10分間)。上清除去後,フュージョン溶液(PEG4000 1m1,DMSO 0.3m1,DMEM 1m1)下で,ピペットの撹絆操作を行い,更にDMEMを添加した。遠心分離(800回転,10分間)により得られた細胞を上清除去後,HAT培養液に懸濁した。ついで96ウエルプレート5枚に滴下し(10m1ピペット,各2滴),HAT培地下で2週間培養を行った。培養2週間後,コロニーを確認し,事前に作製したELISAプレート(pGR024組換え体抗原1μg/m1固相化)にてアッセイを行った。結果として,96ウエル×5枚のうち,5個のウエルにIgGとしての発色が確認された。
【0044】
限界希釈
発色が確認された5クローンのうち,2クローンについて限界希釈により上述のELISAでモノクローン化を行った。発色が確認されたウエルについて細胞をパスツールピペットで懸濁し,PRMI/HT培地に希釈した。希釈したハイブリドーマを96ウエルプレートに滴下し,約2週間培養を行った。コロニー確認後,上述のELISAにて発色を確認した。ウエルにおいて単一のクローンと確認されるまで,作業を繰り返し行った。ただし二回目以降の培地はRPMI/15%FCSを用い,最終的にはPRMI/10%FCSとした。最終的にクローンが単一であることが確認されたので,上述のELISAの系にて2クローンの発色を確認した。各クローンともに,高い発色が確認された。これらのクローンについて細胞ストックを行った。細胞ストックは以下の手順に従った。十分に増殖が確認された細胞を15m1チューブに移し遠心(1000回転,5分)した。上清除去後,細胞凍結保存液セルバンカー(ダイアヤトロン)中に懸濁し,5本のセラムチューブに分注を行った後,直ちに一80℃フリーザーにストックした。3日後,ストックした5本のうち,1本をRPMI/10%FCSに起こし,細胞の増殖,上清中の活性を確認した。ストック後の細胞にも活性が確認された。
【0045】
実施例3 ヒトグルココルチコイドリセプターα特異的モノクローナル抗体の作製
ヒトグルココルチコイドリセプターα特異的モノクローナル抗体作成のための免疫原としてはpGR025組換え体を使用した。免疫方法,力価測定,フュージョン,限界希釈は実施例2と同じ方法で実施した。ヒトグルココルチコイドリセプターα特異的クローンの選択には以下の方法を用いた。pGR025由来ヒトグルココルチコイドリセプターα組換え体を1μg/mlの濃度で固相化したプレートと,pGR026由来ヒトグルココルチコイドリセプターβ組換え体を1μg/mlの濃度で固相化したプレートをそれぞれ用意し,各々のプレートに選択するクローンの培養上清を反応させた。抗体の検出はHRP標識抗マウスIgG抗体で実施した。HRPの発色はTMB基質により行った。hGRα特異的抗体の選択は,hGRα組換え体プレートに陽性を示し,hGRβ組換え体プレートには陰性を示す事を指標に,クローンを限界希釈することで実施した。
【0046】
実施例4 ヒトグルココルチコイドリセプターβ特異的モノクローナル抗体の作製
ヒトグルココルチコイドリセプターβ特異的モノクローナル抗体作成のための免疫原としてはpGR026組換え体を使用した。免疫方法,力価測定,フュージョン,限界希釈は実施例2と同じ方法で実施した。ヒトグルココルチコイドリセプターβ特異的クローンの選択には以下の方法を用いた。pGR025由来ヒトグルココルチコイドリセプターα組換え体を1μg/mlの濃度で固相化したプレートと,pGR026由来ヒトグルココルチコイドリセプターβ組換え体を1μg/mlの濃度で固相化したプレートをそれぞれ用意し,各々のプレートに選択するクローンの培養上清を反応させた。抗体の検出はHRP標識抗マウスIgG抗体で実施した。HRPの発色はTMB基質により行った。hGRβ特異的抗体の選択は,hGRβ組換え体プレートに陽性を示し,hGRα組換え体プレートには陰性を示す事を指標に,クローンを限界希釈することで実施した。
【0047】
実施例5 モノクローナル抗体の精製
得られた各ハイブリドーマをRPMI1640培地で培養した。マウス(BALB/c)に1匹当たり0.5mlの腫瘍形成促進剤プリスタン(Aldrich Chem.製)を腹腔内投与した。1〜3週間後に,各ハイブリドーマ1×107 個を同じく腹腔内投与し,さらに,その1〜2週間後に4〜7mg/mlのモノクローナル抗体を含む腹水が得られた。抗体含有各腹水を,アフィゲル プロテインA MAPS−IIキット(Bio−Rad製)を用いて精製した。
【0048】
実施例6 ヒトグルココルチコイドリセプターα及びβの定量
酵素標識抗体(ヒトグルココルチコイドリセプターα及びβ−HRP)の調製上記精製抗hGRα,及びhGRβモノクローナル抗体を1.8%食塩を含む0.1M 炭酸水素ナトリウムバッファーpH9.5溶液でそれぞれ溶解し,300μg/50μlとした。このIgG溶液に1mgを50μl蒸留水に溶解したEZ−Link Activated Peroxidase (PIERCE社製)を混合した。この混合物を4℃終夜反応した後,200mM L−Lysine 30μlを添加した。室温で3時間反応した。これを0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したSuperdex75カラムを用いてゲルろ過し,Fab’−HRP複合体画分を分取後,等量のグリセロールを添加し,−20℃で保存した。
【0049】
Fab’画分の調製
精製モノクローナル抗体(IgG)を0.1M酢酸緩衝液(pH4.5)に溶解し,その溶液を以下述べるようにして固定化ペプシンで消化した。すなわち,上記IgG 4mgに対して固定化ペプシン(PIERCE社製 Immobilized Pepsin)200μlを加え,37℃,6時間消化した。遠心分離(3300回転,5分間)により固定化ペプシンを除き,蒸留水に透析し,凍結乾燥した。凍結乾燥品を0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したSuperdex75カラムを用いたゲルろ過により,F(ab’)2 画分を分取した。次に,このF(ab’)2 画分を蒸留水中で透析し,凍結乾燥した。凍結乾燥品を225μlのPBSで溶解し,25μl 200mM 2−メルカプトエチルアミンを加え37℃で90分間還元した後,5mM EDTA含有0.1Mリン酸緩衝液(pH7.6)で平衡化したPD−10カラムを用いて単純ゲルろ過し,Fab’画分を分取した。
【0050】
抗ヒトグルココルチコイドリセプターαβFab’−HRP複合体画分の調製
Fab’に対して,マレイミド標識HRPとしてEZ−Link Maleimide ActivatedHRP(PIERCE社製)を等モルになるように両者を混合し,室温で2時間反応後これを膜濃縮した。これを0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したSuperdex75カラムを用いてゲルろ過し,Fab’−HRP複合体画分を分取後,等量のグリセロールを添加し,−20℃で保存した。
【0051】
サンドイッチEIA法1( hGR α,及び hGR βの定量)
PBSで,抗hGRαβ共通領域認識抗体を5μg/mlになるよう調製し,96穴マイクロプレート(Nunc社製)に100μl加えた。4℃で終夜反応した後,液を除去し,ウェルにブロッキング液(BlockA大日本製薬社製)300μlを添加し,37℃1時間反応した。次に洗浄緩衝液で3回プレートを洗浄した。次に,各濃度の標準hGRαもしくはhGRβ組換え体,あるいは測定検体溶液をプレートに100μl添加した。組換え体,検体の希釈は希釈バッファーを用いた。プレートを37℃2時間反応させ,この後洗浄緩衝液で3回洗浄した。次に,上記HRP抗hGRαあるいは抗hGRβ抗体を200倍に反応バッファーで希釈し,100μl添加し,37℃で2時間反応した。プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した。プレートにHRP発色基質TMB(MOSS社製)を100μl加え,20分間37℃で反応した。2N硫酸100μl添加し反応を停止させた。この反応混液のA450 をマイクロプレートリーダーを用いて測定し検量線より,検体中のヒトグルココルチコイドリセプターα,及びβの濃度を求めた。本EIAにより測定したヒトグルココルチコイドリセプターα測定の結果を図8に,ヒトグルココルチコイドリセプターβ測定の結果を図9に示す。
【0052】
サンドイッチEIA法2( hGR α,及び hGR βの定量)
PBSで,抗hGRα,あるいはhGRβ抗体を5μg/mlになるよう調製し,96穴マイクロプレート(Nunc社製)に各々100μl加えた。4℃で終夜反応した後,液を除去し,ウェルにブロッキング液(BlockA大日本製薬社製)300μlを添加し,37℃1時間反応した。次に洗浄緩衝液で3回プレートを洗浄した。次に,抗hGRα抗体固相化プレートには各濃度の標準hGRα,抗hGRβ抗体固相化プレートにはhGRβ組換え体,あるいは測定検体溶液をプレートに100μl添加した。組換え体,検体の希釈は希釈バッファーを用いた。プレートを37℃2時間反応させ,この後洗浄緩衝液で3回洗浄した。次に,上記Fab’−HRP抗hGRαβ抗体を200倍に反応バッファーで希釈し,100μl添加し,37℃で2時間反応した。プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した。プレートにHRP発色基質TMB(MOSS社製)を100μl加え,20分間37℃で反応した。2N硫酸100μl添加し反応を停止させた。この反応混液のA450 をマイクロプレートリーダーを用いて測定し検量線より,検体中のヒトグルココルチコイドリセプターα,及びβの濃度を求めた。本EIAにより測定したヒトグルココルチコイドリセプターα測定の結果を図10に,ヒトグルココルチコイドリセプターβ測定の結果を図11に示す。
【0053】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は,グルココルチコイドの推定作用メカニズムを示す。
【図2】図2は,グルココルチコイドリセプターαおよびβの発現メカニズムを示す。
【図3】図3は,本発明において作製した組換えグルココルチコイドリセプターαおよびβならびに融合タンパク質の構造を示す。
【図4】図4は,本発明の実施例において作製した各種のプラスミドの構造を示す。
【図5】図5は,本発明の実施例において作製した各種のプラスミドの構造を示す。
【図6】図6は,本発明の実施例において作製した各種のプラスミドの構造を示す。
【図7】図7は,本発明の実施例において作製した各種のプラスミドの構造を示す。
【図8】図8は,本発明のモノクローナル抗体を用いるヒトグルココルチコイドリセプターαの定量を示す。
【図9】図9は,本発明のモノクローナル抗体を用いるヒトグルココルチコイドリセプターβの定量を示す。
【図10】図10は,本発明のモノクローナル抗体を用いるヒトグルココルチコイドリセプターαの定量を示す。
【図11】図11は,本発明のモノクローナル抗体を用いるヒトグルココルチコイドリセプターβの定量を示す。
【発明の属する技術分野】
本発明は,ステロイド耐性を判定する方法に関する。より詳細には,本発明は,抗ヒトグルココルチコイドリセプターを認識するモノクローナル抗体,及びそのモノクローナル抗体を用いて,検体中に存在するヒトグルココルチコイドリセプターβを定量する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ステロイド剤は気管支喘息,膠原病,ネフローゼ,炎症性腸疾患,アレルギー疾患など非常に広い範囲の疾患に効果を示す抗炎症剤であり,難病といわれる特定疾患にも著効を示す場合がある。しかし,ステロイド剤は使用が長期にわたることが多く,長期使用により薬剤感受性が低下し,全く効果を示さないステロイド耐性に陥る事が少なからずある。このような場合,ステロイド剤は副作用が強いことから,投与したステロイド自体がかえって病態を悪化させる。また,特にリンパ性白血病などの血液腫瘍では,ステロイド自体が細胞殺作用を有する化学療法剤としても使われるが,投与を繰り返すうちに腫瘍細胞がステロイドに対して耐性となることもしばしば経験されている。そこで医療現場ではステロイド感受性の診断法の確立が求められている。
【0003】
ステロイドの感受性を事前に診断する臨床検査薬は現時点で販売されていない。現在医療現場ではステロイドの耐性を,ステロイド剤投与後にその効果で判断せざるを得ない状況にある。ステロイドには耐性という問題以外に,全身性の副作用が問題となる。ステロイド耐性患者ではその薬理効果が損なわれるにも係わらず,全身性の副作用は残存するという不都合な点がある。ステロイド耐性の事前診断には,不用な薬剤の投与という医療経済的な側面に加えて,無意味な副作用を抑制するという有用性もある。
【0004】
ステロイドの薬効メカニズムはステロイドが古い薬物であるにも関わらず,現在でも不明な点が多い。しかし近年の分子生物学の進歩により,図1に示すようなメカニズムが考えられている。すなわち,脂溶性の性質を有するステロイド(グルココルチコイドGC)は,細胞膜を通過して細胞質に入ると,その受容体タンパク質であるグルココルチコイドレセプターαアイソフォーム(GRα)に結合する。このGC−GRαは,ホモダイマーを形成し,(1)核に移行,サイトカイン遺伝子などの転写制御領域にあるDNA上の結合部位GRE(Glucocorticoid Responsive Element)と結合し,対象遺伝子の転写を制御する,(2)種々の遺伝子の転写を活性化する転写因子NF−κBを,その阻害因子であるI−κBの合成を亢進させて抑制し,NF−κBで活性化される遺伝子発現を抑制する,(3)同様の転写因子AP−1と結合して不活化し,AP−1によって活性化される遺伝子発現を抑制する,などの機序で,主に免疫反応を亢進させる遺伝子の発現を抑制すると考えられている。
【0005】
この機能的受容体であるGRαときわめて構造の類似したグルココルチコイドレセプターβアイソフォーム(GRβ)が存在することが知られている。このGRβはGCと結合するドメインを欠く構造をもっており,GRαと結合してヘテロダイマーを形成し,GRαホモダイマー形成を阻害する優性阻害型の拮抗作用を発揮してGCの生物活性を抑制すると考えられている(図1)。
【0006】
この2つのアイソフォームは,同一のGR遺伝子から転写されたmRNA前駆体(pre mRNA)から選択的スプライシングといわれる選択的RNAプロセシングによってGRα,GRβをコードする特異的mRNAが生成され,タンパク質合成が起こることが知られてきた(図2)。この選択的RNAプロセシングを行う酵素は未だ同定されていない。またステロイドの作用メカニズムの内,その耐性に最も関係しているものは,上述のAP−1を介したメカニズムであるとの報告もある。
【0007】
本発明者らは,ステロイド剤が治療の第一選択薬である炎症性腸疾患の一つである潰瘍性大腸炎患者において,ステロイドに反応しない症例では末梢血単核球のGRα特異的mRNA,GRβ特異的mRNAの発現及び,GRαタンパク質,GRβタンパク質の発現が容易に検出されること,一方ステロイドで症状が改善する感受性症例ではGRα特異的mRNA,GRαタンパク質のみが検出されてGRβ特異的mRNA,GRβタンパク質は検出されないこと,すなわちGRβ特異的mRNA,GRβタンパク質の出現がステロイド耐性のマーカーであることを報告した(Honda, M. et al., Gastroenterology 2000; 118:859−866)。また,その後GR mRNAについてキャピラリー PCRを用いて定量解析したところ,ステロイド耐性患者末梢血単核球では,GRα特異的mRNAの発現量は不変で,GRβ特異的mRNAの発現量の増大が認められることが明らかとなった。従ってGRβタンパク質もステロイド抵抗性症例では増加していることが考えられる。しかし,タンパク質レベルでGRα,GRβの定量を行うためには,GRα,GRβをそれぞれ選択的,特異的に認識する強い力価の抗体が必要である。GRα,GRβをそれぞれ選択的,特異的に認識する抗体は市販され,またその使用の報告もある(Hecht, K. et al., J Biol Chem 1997; 272: 26659−26664; Christodoulopoulos, P. et al. J Allerg Clin Immunol 2000; 106: 479−484; Gougat, C. et al., J. Mol. Med. 2002; 80: 309−318)。しかし、それらの抗体は力価が弱いためにウェスタンブロッティングでの使用に制限されており,実質的に酵素抗体法による定量が行えないため,これまでタンパク質レベルでの定量を行うことができなかった。
【0008】
本発明に関連する先行技術文献情報としては以下のものがある。
【特許文献1】
USP 5770176
【非特許文献1】
Honda, M. et al., Gastroenterology 2000; 118:859−866
【非特許文献2】
Hecht, K. et al., J Biol Chem 1997; 272: 26659−26664
【非特許文献3】
Christodoulopoulos, P. et al. J Allerg Clin Immunol 2000; 106: 479−484
【非特許文献4】
Gougat, C. et al., J. Mol. Med. 2002; 80: 309−318
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は,ステロイド感受性を判定する臨床検査法として,ヒトグルココルチコイドリセプターαおよびβに対する選択性の高いモノクローナル抗体を作成して,酵素抗体法による測定系を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は,ヒトグルココルチコイドリセプターを免疫学的にアッセイする方法を提供する。該方法は,ヒトグルココルチコイドリセプターαおよびβを認識するモノクローナル抗体と,ヒトグルココルチコイドリセプターβを認識するがヒトグルココルチコイドリセプターαを認識しないモノクローナル抗体とを用いることを特徴とする。好ましくは,ヒトグルココルチコイドリセプターβを認識するがヒトグルココルチコイドリセプターαを認識しないモノクローナル抗体は,ヒトグルココルチコイドリセプターβのC末端領域を認識する。
【0011】
本発明の好ましい態様においては,ヒトグルココルチコイドリセプターαおよびβを認識する上述のモノクローナル抗体は,ヒトグルココルチコイドリセプターのN端側1−367のアミノ酸配列を含むN末端領域を認識する。また好ましくは,ヒトグルココルチコイドリセプターβを認識するがヒトグルココルチコイドリセプターαを認識しない上述のモノクローナル抗体は,ヒトグルココルチコイドリセプターβのアミノ酸配列727−742を含むC末端領域を認識する。
【0012】
特に好ましくは,本発明の方法は,測定をサンドイッチ法により,酵素免疫学的に行う。
【0013】
別の観点においては,本発明は,ヒトグルココルチコイドリセプターのN端側1−367のアミノ酸配列を含むN末端領域を認識し,ヒトグルココルチコイドリセプタープロと免疫反応するモノクローナル抗体を提供する。本発明はまた,ヒトグルココルチコイドリセプターαのアミノ酸配列727−777を含むC末端領域を認識し,ヒトグルココルチコイドリセプターβと免疫反応しないモノクローナル抗体を提供する。本発明はまた,ヒトグルココルチコイドリセプターβのアミノ酸配列727−742を含むC末端領域を認識し,ヒトグルココルチコイドリセプターαと免疫反応しないモノクローナル抗体を提供する。
【0014】
好ましくは,本発明のモノクローナル抗体は,ヒトグルココルチコイドリセプターの検出限界値が0.1ng/mlであり,より好ましくは0.01ng/mlである。
【0015】
また別の観点においては,本発明は,ヒトグルココルチコイドリセプターを免疫学的にアッセイするキットであって,ヒトグルココルチコイドリセプターαおよびβを認識するモノクローナル抗体と,ヒトグルココルチコイドリセプターβを認識するがヒトグルココルチコイドリセプターαを認識しないモノクローナル抗体とを含むキットを提供する。
【0016】
本発明の方法を用いることにより,末梢血試料を用いてヒトグルココルチコイドリセプターαおよびβを定量し,臨床の現場でステロイド耐性・感受性を簡便に判定することができる。本発明のモノクローナル抗体はさらに,組織や細胞の免疫学的染色のための研究用試薬としても有用である。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明のモノクローナル抗体は,グルココルチコイドリセプターαとβとを区別して認識することができる。GRβmRNA,GRβタンパク質の出現がステロイド耐性のマーカーであることから,本発明のモノクローナル抗体を用いて,ステロイドに対する耐性・感受性を判定することができる。
【0018】
グルココルチコイドリセプターαおよびβの構造は,Hollenbergら(Nature 318, 635−641, 1985)およびEncioら(J. Biol. Cehm. 266, 7182−7188, 1991)に記載されている。αおよびβは,共通のN末端領域を有し,C末端領域においてのみ異なる。したがって,αおよびβのそれぞれのC末端領域を認識するモノクローナル抗体を用いることにより,αおよびβの存在を特異的に検出することができる。
【0019】
本発明のモノクローナル抗体は,ヒトグルココルチコイドリセプターで免疫した哺乳動物の抗体産生細胞(脾臓細胞,リンパ節等)と,ミエローマ細胞とを融合させてハイブリドーマを作製し,所望の反応特異性を有する抗体を産生するハイブリドーマを選択し,このハイブリドーマから常法により調製することができる。本発明のモノクローナル抗体を得るためには,hGRαβ共通領域,hGRαC端固有領域またはhGRβC端固有領域のそれぞれに対応するヒトグルココルチコイドリセプターフラグメントを調製し,これを免疫原として用いる。
【0020】
免疫原として用いられるヒトグルココルチコイドリセプターは,ヒトグルココルチコイドリセプターをコードする遺伝子を用いて組み換え的に製造することができる。ヒトグルココルチコイドリセプターをコードする遺伝子の既知の塩基配列にしたがい,適当なヒトcDNAをテンプレートとして用いて,PCRによりヒトグルココルチコイドリセプターの所望の領域をコードする遺伝子をクローニングすることができる。これを発現ベクターに挿入して適当な宿主に導入し,組換えヒトグルココルチコイドリセプターを発現させることができる。
【0021】
組換えタンパク質の製造および精製は,当該技術分野において知られる任意の方法を用いることができる。精製を容易にするために,適当なタグを付加した融合タンパク質として発現させてもよい。例えば,ヒトグルココルチコイドリセプターをHis−Tag融合タンパク質として発現させれば,アフィニティークロマトグラフィーを用いて容易に精製することができ,次にエンテロキナーゼ処理によりHis−Tag部分を容易に除去することができる。
【0022】
本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得るためには,上述のようにして製造した組換えヒトグルココルチコイドリセプターまたはそのフラグメントを免疫原として哺乳動物の皮下または腹腔内に注射する。免疫する動物としては,マウス,ラット,ヤギ,ヒツジ,ウサギ等の哺乳動物を用いることができる。免疫応答性を高めるために,必要に応じて完全フロインドアジュバント,RIBIアジュバントなどのアジュバントを用いてもよい。免疫した動物の抗体価をモニターし,抗体価の上昇した動物から脾臓細胞を採取し,マウスミエローマ細胞と融合させる。マウスミエローマ細胞としては,ヒポキサンチン−グアニン−ホスホリボシルトランスフェラーゼ欠損等の選択マーカーを有するものを用いる。融合は,当該技術分野において知られる方法を用いて行なうことができ,融合促進剤としてポリエチレングリコール,センダイウイルス等を用いてもよい。
【0023】
細胞融合の後,ハイブリドーマのみが生育できるHAT培地等の選択培地で培養することによりハイブリドーマを選択し,ELISA法を用いて所望の抗体を産生するか否かを測定する。ELISA法は当該技術分野においてよく知られる方法にしたがって行うことができる。免疫原として用いたヒトグルココルチコイドリセプターまたはそのフラグメントをプレート上に結合させ,ハイブリドーマの培養上清を反応させる。次に酵素等で標識した抗マウス抗体を用いて抗体を検出することにより,所望の抗体を産生するコロニーを選択する。次に得られたハイブリドーマを限界希釈法によりクローニングして,本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得ることができる。
【0024】
ヒトグルココルチコイドリセプターβ特異的モノクローナル抗体を得るためには,hGRα組換えタンパク質およびhGRβ組換えタンパク質をそれぞれプレートに固定化して各ハイブリドーマの上清を反応させ,hGRβに結合するがhGRαには結合しないハイブリドーマを選択する。同様にして,ヒトグルココルチコイドリセプターα特異的モノクローナル抗体,およびhGRαとhGRβとの両方を認識するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマをそれぞれ選択することができる。
【0025】
得られたハイブリドーマはRPMI1640培地などの適当な培養液で培養して増殖させ,その培養上清から10〜100μg/mlの濃度のモノクローナル抗体を得ることができる。また,大量に抗体を得るためには,あらかじめプリスタンを投与したマウスの腹腔にハイブリドーマを移植することにより,モノクローナル抗体を含む腹水を得ることができる。このようにして得られるモノクローナル抗体は,さらにアフィニティー精製,イオン交換クロマトグラフィー,限外濾過などにより精製してもよい。また,本発明のモノクローナル抗体から,F(ab′)2,Fab′,Fab等のフラグメントを調製して用いてもよく,あるいはキメラ抗体を作製してもよい。
【0026】
本発明のモノクローナル抗体は,ヒトグルココルチコイドリセプターαおよびβの検出に有用である。検出は例えば,当該技術分野においてよく知られるサンドイッチELISA法により行うことができる。サンドイッチ法においては,本発明のモノクローナル抗体をプレート等の表面に固定化し,これに検体中のグルココルチコイドリセプターを結合させ,次に酵素等で標識した本発明のモノクローナル抗体を用いてグルココルチコイドリセプターをサンドイッチした後に,結合した酵素の量を測定することにより検体中のグルココルチコイドリセプターを検出する。
【0027】
サンドイッチ法においては,バックグラウンドを低下させるために,固定化抗体と標識抗体とは異なるものを用いることが好ましい。すなわち,本発明の方法の好ましい態様においては,固定化抗体としてヒトグルココルチコイドリセプターのN末端領域を認識するモノクローナル抗体を用い,標識抗体としてヒトグルココルチコイドリセプターβのC末端領域を認識するモノクローナル抗体を用いる。あるいは,逆に,固定化抗体としてヒトグルココルチコイドリセプターβのC末端領域を認識するモノクローナル抗体を用い,標識抗体としてヒトグルココルチコイドリセプターのN末端領域を認識するモノクローナル抗体を用いてもよい。
【0028】
サンドイッチ法において用いるための標識としては,酵素標識(ペルオキシダーゼ,アルカリホスファターゼ等),放射性標識,蛍光標識,化学発光標識,着色コロイド標識等を利用することができる。本発明のモノクローナル抗体に標識を結合させる方法,ならびに発色試薬等を用いてこれらの標識を定量する方法は,当該技術分野においてよく知られている。
【0029】
また,本発明の方法においては,サンドイッチ法の代わりに競合法を用いてもよい。また,本発明のモノクローナル抗体をラテックス等の担体に結合させ,ラテックス凝集免疫測定法を用いてヒトグルココルチコイドリセプターを検出してもよい。あるいは,本発明のモノクローナル抗体は,カートリッジ式の簡易検出装置において用いてもよい。
【0030】
【実施例】
以下に実施例を掲げ,本発明を具体的に説明するが,本発明はこれら実施例に限定されず,様々な実施形態が可能であり,本発明は本明細書及び図面に開示の思想に従ったものであるかぎり,すべての実施形態を包含することは理解されるべきである。
【0031】
実施例1 組換え体抗原の作製
組換え体抗原の作製のために用いた種々のプラスミドを図3−7に示す。グルココルチコイドリセプターのDNA配列は,GenBank受託番号X03225(配列番号7)およびX03348(配列番号8)に基づく。
hGR 遺伝子のクローニング
ヒトリンパ球由来cDNAを鋳型に用いて,GRα遺伝子を3ブロックに分け,PCRを行い遺伝子を増幅した。すなわち,3ブロックについて各ブロック特異的なプライマーの組み合わせでPCRを実施した。なお,PCR増幅にはKOD’ DNA ポリメラーゼを使用した。得られた,増幅DNAはアガロース電気泳動で精製し,断片を制限酵素マッピング,配列確認後,断片をベクターpCR2.1に挿入し,クローニングした。得られた,クローンT1(pGR003),K2(pGR004),K3(pGR005)は制限酵素マッピングにより挿入断片を確認後,DNA シークエンシングにより全配列の確認を行った。遺伝子組換えを行ない,3ブロックに分けたグルココルチコイドリセプター遺伝子を繋ぎ合せ,T7系プローモーターを有するpET3系ベクターに挿入した。GRNdeS,BCXPAS プライマーを用いPCRによりpGR003(T1)遺伝子を増幅した。目的断片468bpは増幅され,XbaI,NdeI消化した。消化断片は1.5%アガロースゲル電気泳動上で分離され,Genecleanキットで精製した。pUC18をNdeI,XbaIで消化し,約2.5kbpのバンドをアガロースGelから精製した。この切断ベクターと上記精製断片を,TAKARA DNA ligationキットでライゲーションした。このライゲーション溶液を直接大腸菌に形質転換した。pGR007をメチラーゼ産生が無い大腸菌株Epiculian coli SCS−101に形質転換し,XbaIで消化した。その結果,目的通り切断された。非メチル化pGR007をBanIII,XbaIで消化した。pGR005(K3)をBanIII,XbaIで消化した。pGR007消化物はフェノール処理後MicrospinG25により精製した。pGR005消化物はアガロースゲルから切り出し,Genecleanにより精製した。精製した両DNAをライゲーション後,大腸菌DH5aに形質転換して,プラスミドpGR008を得た。pGR008及びpGR004(K2)をBanIII,XbaI消化し,精製,ライゲーション,形質転換を行い,HindIIIで消化したときに目的サイズ(4134,554,368bp)のバンドを与えるプラスミドpGR009を得た。pGR009および発現用ベクターpET3aをNdeI,BamHIでそれぞれ消化し,pGR009由来2.3kbp断片を精製,pET3aにライゲーションし,形質転換を行い,プラスミドpGR011を得た。順方向,逆方向から各3種のプライマーによりジデオキシ法でシークエンシングして,目的配列と一致することを確認した。
【0032】
hGR β完全長発現遺伝子の構築
次に示すプライマーGRBS,GRBASでhGRβ固有領域の遺伝子をPCR法で増幅した。
GRBS:CCTAAGGACGGTCTGAAGAGC
GRBAS:CCACGTATCCTAAAAGGGCAC
鋳型にはヒトリンパ球由来cDNAを用いた。得られた増幅産物350bpをpCR2.1ベクターにクローニングし,これをpGR006とした。PGR006およびpGR011を制限酵素EcoT22I,BamHIで消化し,PCR由来断片256bpを精製し,pGR011ベクター部分にライゲーションし,形質転換を行い,プラスミドpGR012を得た。このプラスミドをジデオキシ法によりシークエンシングして,目的配列と一致することを確認した。
【0033】
hGR α,β共通領域( N 端領域)発現遺伝子の構築
hGRα発現遺伝子pGR011のDNA結合領域より上流に5189bp目のCをTに置換し,Stopコドンを新設し,また同様に5197bp目のTをCに換え,BamHI認識配列を新設する目的で部位特異的突然変異を行った。
以下のプライマーを用いた。
STP5191S: GGTGCTAAGGATCCGGAGATGACAACTTGACTTCTCTGGG
STP5191A: GTCAAGTTGTCATCTCCGGATCCTTAGCACCTATTCCAATTT TCGG
このプラスミドをpGR015とした。このpGR015をBamHI消化し,アガロースゲル電気泳動による精製で5.5kbpのバンドを精製した。このバンドをセルフライゲーションさせて,プラスミドpGR018を得た。
【0034】
hGR αC端固有領域発現遺伝子の構築
hGRα発現遺伝子pGR011のDNA結合領域より下流5676bp目のCをAに,5679bp目のCをTに,5680bp目のCをGに置換し,NdeI認識配列を新設する目的で部位特異的突然変異を行った。
以下のプライマーを用いた。
NDE5678S:CGTTACCACAACTCACCCATATGCTGGTGTCACTGTTGGAGG
NDE5678A:CAGTGACACCAGCATATGGGTGAGTTGTGGTAACGTTGCAGG
このプラスミドをpGR016とした。このpGR016をNdeI消化し,アガロースゲル電気泳動による精製で5.5kbpのバンドを精製した。このバンドをセルフライゲーションして,プラスミドpGR019を得た。
【0035】
hGR βC端固有領域発現遺伝子の構築
pGR019制限酵素EcoT22I,BamHIで消化し,上記pGR006由来350bp断片を精製し,pGR019ベクター部分にライゲーションして,プラスミドpGR020を得た。
【0036】
His−Tag 融合タンパク質発現遺伝子の作製
His−Tag合成遺伝子は2本鎖を作るためにアニーリングし,この後NdeI消化した。このNdeI消化断片を精製し,それぞれ制限酵素NdeIで完全消化したpGR018,pGR019およびpGR020とライゲーションして,His−Tag融合タンパク質をコードするプラスミドpGR024,pGR025およびpGR026を得た。
【0037】
His−Tag−hGR αβ共通領域融合タンパク質の精製
pGR024のBL21(DE3)Codon Plus RIL形質転換体を10mlのM9ZB培地で37℃振盪培養した。約5時間後濁度を測定しそれぞれの550nmの吸光度が0.6〜0.8である事を確認し,IPTGを添加した。添加後同条件で3時間培養し,6ml分菌体を遠心分離により回収した。菌体を1mlの8M 尿素, 500mM NaCl, 20mM NaPO4 pH7.8(Buffer A)で懸濁した。懸濁液をTOMY精工社製超音波発生装置により超音波破砕し,15000rpm,5分間4℃で遠心分離し,上清を回収した。
【0038】
この上清をアフィニティークロマトグラフィーにアプライした。アフィニティークロマトグラフィーはInvitrogen社製ProBond(登録商標)Resinを使用した。予め1mlのゲルをカラムに充填し,10mlのBuffer Aで平衡化しておき,ここに上記菌体抽出液をアプライした。8mlの同バッファーで洗浄し,次いで2mlの8M 尿素, 500mM NaCl, 20mM NaPO4 pH6.5(Buffer B)で洗浄後,8M 尿素, 500mM NaCl, 20mM NaPO4 pH4.0(Buffer C)で溶出した。溶出液は1mlずつ分画した。溶出液の280nm吸光度を測定した。溶出液をSDS−PAGEで解析した。溶出液はシングルバンドであった。His−Tag−hGRαβ融合タンパク質は抽出液から1工程で精製されることが確認された。
【0039】
His−Tag 部分の切り出し
His−Tag融合タンパク質をエンテロキナーゼ処理したところ,処理物はProBondカラムを素通りし,His−Tag部分が除去されたことが確認された。
【0040】
His−Tag−hGR α,および His−Tag−hGR β融合タンパク質の精製
pGR025あるいはpGR026のHMS174(DE3)形質転換体を5ml×10本のM9ZB培地で37℃振盪培養した。約5時間後濁度を測定しそれぞれの550nmの吸光度が0.6〜0.8である事を確認し,IPTGを添加した。添加後同条件で3時間培養し,50ml分菌体を遠心分離により回収した。菌体を5mlの6M グアニジン−HCl, 500mM NaCl, 20mM NaPO4 pH7.8で懸濁した。懸濁液をTOMY精工社製超音波発生装置により超音波破砕し,15000rpm,5分間4℃で遠心分離し,上清を回収した。この上清をアフィニティークロマトグラフィーにアプライした。アフィニティークロマトグラフィーはInvitrogen社製ProBond(登録商標)Resinを使用した。予め1mlのゲルをカラムに充填し,10mlの8M 尿素, 500mM NaCl, 20mM NaPO4 pH7.8で平衡化しておき,ここに上記菌体抽出液をアプライした。8mlの同バッファーで洗浄し,次いで2mlの8M 尿素,20mM NaPO4 pH6.5(Buffer B)で洗浄後,さらに8M 尿素,20mM NaPO4 pH5.0(Buffer D)で洗浄した。この後8M 尿素,20mM NaPO4 pH5.0(Buffer C)溶出した。溶出液は1mlずつ分画した。溶出液の280nm吸光度を測定した。溶出液をSDS−PAGEで解析した。
【0041】
実施例2ヒトグルココルチコイドリセプターαβ共通領域モノクローナル抗体の作製
pGR024 組換え体の免疫
免疫には,マウス3匹(Balb/c×3)を用いた。hGR組換え体を1匹あたり50μgを腹腔内に免疫した。アジュバントとしては,RIBI杜のMPL+TDM EMULSIONを使用し,抗原とアジュバントを容量1:1で混合し,免疫した。免疫スケジュールとして5回免疫後にチェック採血を行い抗体価の上昇をELISAにて確認した。
【0042】
力価測定
5回免疫後チェック採血についてhGR組換え体抗原固相化プレートを作製し,力価測定に供した。プレートについては,抗原1μg/m1の濃度で使用した。またアッセイは室温で,血清(一次)反応1hr,標識抗体(二次)反応1hr,TMBによる発色2分で行った。各個体において力価の上昇が確認された。このうち,最も高い力価を示した個体についてアジュバントを含まない抗原(50μg)で追加免疫を行い,以下に記載するようにフュージョンを行った。
【0043】
フュージョン
マウスから脾臓を摘出し,DMEM培養液下で,ホモジネイトを行った。細胞懸濁液を遠心分離(1000回転,10分)し,上清除去後,ペレットをDMEM培養液に再懸濁した。細胞懸濁液をあらかじめ用意したマウスハイブリドーマ(P3U1)細胞懸濁液と混合し,遠心を行った(1000回転,10分間)。上清除去後,フュージョン溶液(PEG4000 1m1,DMSO 0.3m1,DMEM 1m1)下で,ピペットの撹絆操作を行い,更にDMEMを添加した。遠心分離(800回転,10分間)により得られた細胞を上清除去後,HAT培養液に懸濁した。ついで96ウエルプレート5枚に滴下し(10m1ピペット,各2滴),HAT培地下で2週間培養を行った。培養2週間後,コロニーを確認し,事前に作製したELISAプレート(pGR024組換え体抗原1μg/m1固相化)にてアッセイを行った。結果として,96ウエル×5枚のうち,5個のウエルにIgGとしての発色が確認された。
【0044】
限界希釈
発色が確認された5クローンのうち,2クローンについて限界希釈により上述のELISAでモノクローン化を行った。発色が確認されたウエルについて細胞をパスツールピペットで懸濁し,PRMI/HT培地に希釈した。希釈したハイブリドーマを96ウエルプレートに滴下し,約2週間培養を行った。コロニー確認後,上述のELISAにて発色を確認した。ウエルにおいて単一のクローンと確認されるまで,作業を繰り返し行った。ただし二回目以降の培地はRPMI/15%FCSを用い,最終的にはPRMI/10%FCSとした。最終的にクローンが単一であることが確認されたので,上述のELISAの系にて2クローンの発色を確認した。各クローンともに,高い発色が確認された。これらのクローンについて細胞ストックを行った。細胞ストックは以下の手順に従った。十分に増殖が確認された細胞を15m1チューブに移し遠心(1000回転,5分)した。上清除去後,細胞凍結保存液セルバンカー(ダイアヤトロン)中に懸濁し,5本のセラムチューブに分注を行った後,直ちに一80℃フリーザーにストックした。3日後,ストックした5本のうち,1本をRPMI/10%FCSに起こし,細胞の増殖,上清中の活性を確認した。ストック後の細胞にも活性が確認された。
【0045】
実施例3 ヒトグルココルチコイドリセプターα特異的モノクローナル抗体の作製
ヒトグルココルチコイドリセプターα特異的モノクローナル抗体作成のための免疫原としてはpGR025組換え体を使用した。免疫方法,力価測定,フュージョン,限界希釈は実施例2と同じ方法で実施した。ヒトグルココルチコイドリセプターα特異的クローンの選択には以下の方法を用いた。pGR025由来ヒトグルココルチコイドリセプターα組換え体を1μg/mlの濃度で固相化したプレートと,pGR026由来ヒトグルココルチコイドリセプターβ組換え体を1μg/mlの濃度で固相化したプレートをそれぞれ用意し,各々のプレートに選択するクローンの培養上清を反応させた。抗体の検出はHRP標識抗マウスIgG抗体で実施した。HRPの発色はTMB基質により行った。hGRα特異的抗体の選択は,hGRα組換え体プレートに陽性を示し,hGRβ組換え体プレートには陰性を示す事を指標に,クローンを限界希釈することで実施した。
【0046】
実施例4 ヒトグルココルチコイドリセプターβ特異的モノクローナル抗体の作製
ヒトグルココルチコイドリセプターβ特異的モノクローナル抗体作成のための免疫原としてはpGR026組換え体を使用した。免疫方法,力価測定,フュージョン,限界希釈は実施例2と同じ方法で実施した。ヒトグルココルチコイドリセプターβ特異的クローンの選択には以下の方法を用いた。pGR025由来ヒトグルココルチコイドリセプターα組換え体を1μg/mlの濃度で固相化したプレートと,pGR026由来ヒトグルココルチコイドリセプターβ組換え体を1μg/mlの濃度で固相化したプレートをそれぞれ用意し,各々のプレートに選択するクローンの培養上清を反応させた。抗体の検出はHRP標識抗マウスIgG抗体で実施した。HRPの発色はTMB基質により行った。hGRβ特異的抗体の選択は,hGRβ組換え体プレートに陽性を示し,hGRα組換え体プレートには陰性を示す事を指標に,クローンを限界希釈することで実施した。
【0047】
実施例5 モノクローナル抗体の精製
得られた各ハイブリドーマをRPMI1640培地で培養した。マウス(BALB/c)に1匹当たり0.5mlの腫瘍形成促進剤プリスタン(Aldrich Chem.製)を腹腔内投与した。1〜3週間後に,各ハイブリドーマ1×107 個を同じく腹腔内投与し,さらに,その1〜2週間後に4〜7mg/mlのモノクローナル抗体を含む腹水が得られた。抗体含有各腹水を,アフィゲル プロテインA MAPS−IIキット(Bio−Rad製)を用いて精製した。
【0048】
実施例6 ヒトグルココルチコイドリセプターα及びβの定量
酵素標識抗体(ヒトグルココルチコイドリセプターα及びβ−HRP)の調製上記精製抗hGRα,及びhGRβモノクローナル抗体を1.8%食塩を含む0.1M 炭酸水素ナトリウムバッファーpH9.5溶液でそれぞれ溶解し,300μg/50μlとした。このIgG溶液に1mgを50μl蒸留水に溶解したEZ−Link Activated Peroxidase (PIERCE社製)を混合した。この混合物を4℃終夜反応した後,200mM L−Lysine 30μlを添加した。室温で3時間反応した。これを0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したSuperdex75カラムを用いてゲルろ過し,Fab’−HRP複合体画分を分取後,等量のグリセロールを添加し,−20℃で保存した。
【0049】
Fab’画分の調製
精製モノクローナル抗体(IgG)を0.1M酢酸緩衝液(pH4.5)に溶解し,その溶液を以下述べるようにして固定化ペプシンで消化した。すなわち,上記IgG 4mgに対して固定化ペプシン(PIERCE社製 Immobilized Pepsin)200μlを加え,37℃,6時間消化した。遠心分離(3300回転,5分間)により固定化ペプシンを除き,蒸留水に透析し,凍結乾燥した。凍結乾燥品を0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したSuperdex75カラムを用いたゲルろ過により,F(ab’)2 画分を分取した。次に,このF(ab’)2 画分を蒸留水中で透析し,凍結乾燥した。凍結乾燥品を225μlのPBSで溶解し,25μl 200mM 2−メルカプトエチルアミンを加え37℃で90分間還元した後,5mM EDTA含有0.1Mリン酸緩衝液(pH7.6)で平衡化したPD−10カラムを用いて単純ゲルろ過し,Fab’画分を分取した。
【0050】
抗ヒトグルココルチコイドリセプターαβFab’−HRP複合体画分の調製
Fab’に対して,マレイミド標識HRPとしてEZ−Link Maleimide ActivatedHRP(PIERCE社製)を等モルになるように両者を混合し,室温で2時間反応後これを膜濃縮した。これを0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したSuperdex75カラムを用いてゲルろ過し,Fab’−HRP複合体画分を分取後,等量のグリセロールを添加し,−20℃で保存した。
【0051】
サンドイッチEIA法1( hGR α,及び hGR βの定量)
PBSで,抗hGRαβ共通領域認識抗体を5μg/mlになるよう調製し,96穴マイクロプレート(Nunc社製)に100μl加えた。4℃で終夜反応した後,液を除去し,ウェルにブロッキング液(BlockA大日本製薬社製)300μlを添加し,37℃1時間反応した。次に洗浄緩衝液で3回プレートを洗浄した。次に,各濃度の標準hGRαもしくはhGRβ組換え体,あるいは測定検体溶液をプレートに100μl添加した。組換え体,検体の希釈は希釈バッファーを用いた。プレートを37℃2時間反応させ,この後洗浄緩衝液で3回洗浄した。次に,上記HRP抗hGRαあるいは抗hGRβ抗体を200倍に反応バッファーで希釈し,100μl添加し,37℃で2時間反応した。プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した。プレートにHRP発色基質TMB(MOSS社製)を100μl加え,20分間37℃で反応した。2N硫酸100μl添加し反応を停止させた。この反応混液のA450 をマイクロプレートリーダーを用いて測定し検量線より,検体中のヒトグルココルチコイドリセプターα,及びβの濃度を求めた。本EIAにより測定したヒトグルココルチコイドリセプターα測定の結果を図8に,ヒトグルココルチコイドリセプターβ測定の結果を図9に示す。
【0052】
サンドイッチEIA法2( hGR α,及び hGR βの定量)
PBSで,抗hGRα,あるいはhGRβ抗体を5μg/mlになるよう調製し,96穴マイクロプレート(Nunc社製)に各々100μl加えた。4℃で終夜反応した後,液を除去し,ウェルにブロッキング液(BlockA大日本製薬社製)300μlを添加し,37℃1時間反応した。次に洗浄緩衝液で3回プレートを洗浄した。次に,抗hGRα抗体固相化プレートには各濃度の標準hGRα,抗hGRβ抗体固相化プレートにはhGRβ組換え体,あるいは測定検体溶液をプレートに100μl添加した。組換え体,検体の希釈は希釈バッファーを用いた。プレートを37℃2時間反応させ,この後洗浄緩衝液で3回洗浄した。次に,上記Fab’−HRP抗hGRαβ抗体を200倍に反応バッファーで希釈し,100μl添加し,37℃で2時間反応した。プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した。プレートにHRP発色基質TMB(MOSS社製)を100μl加え,20分間37℃で反応した。2N硫酸100μl添加し反応を停止させた。この反応混液のA450 をマイクロプレートリーダーを用いて測定し検量線より,検体中のヒトグルココルチコイドリセプターα,及びβの濃度を求めた。本EIAにより測定したヒトグルココルチコイドリセプターα測定の結果を図10に,ヒトグルココルチコイドリセプターβ測定の結果を図11に示す。
【0053】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は,グルココルチコイドの推定作用メカニズムを示す。
【図2】図2は,グルココルチコイドリセプターαおよびβの発現メカニズムを示す。
【図3】図3は,本発明において作製した組換えグルココルチコイドリセプターαおよびβならびに融合タンパク質の構造を示す。
【図4】図4は,本発明の実施例において作製した各種のプラスミドの構造を示す。
【図5】図5は,本発明の実施例において作製した各種のプラスミドの構造を示す。
【図6】図6は,本発明の実施例において作製した各種のプラスミドの構造を示す。
【図7】図7は,本発明の実施例において作製した各種のプラスミドの構造を示す。
【図8】図8は,本発明のモノクローナル抗体を用いるヒトグルココルチコイドリセプターαの定量を示す。
【図9】図9は,本発明のモノクローナル抗体を用いるヒトグルココルチコイドリセプターβの定量を示す。
【図10】図10は,本発明のモノクローナル抗体を用いるヒトグルココルチコイドリセプターαの定量を示す。
【図11】図11は,本発明のモノクローナル抗体を用いるヒトグルココルチコイドリセプターβの定量を示す。
Claims (14)
- ヒトグルココルチコイドリセプターを免疫学的にアッセイする方法であって,ヒトグルココルチコイドリセプターαおよびβを認識するモノクローナル抗体と,ヒトグルココルチコイドリセプターβを認識するがヒトグルココルチコイドリセプターαを認識しないモノクローナル抗体とを用いることを特徴とする方法。
- ヒトグルココルチコイドリセプターβを認識するがヒトグルココルチコイドリセプターαを認識しないモノクローナル抗体が,ヒトグルココルチコイドリセプターβのC末端領域を認識することを特徴とする,請求項1記載の方法。
- ヒトグルココルチコイドリセプターαおよびβを認識するモノクローナル抗体が,ヒトグルココルチコイドリセプターのN端側1−367のアミノ酸配列を含むN末端領域を認識する,請求項1または2に記載の方法。
- ヒトグルココルチコイドリセプターβを認識するがヒトグルココルチコイドリセプターαを認識しないモノクローナル抗体が,ヒトグルココルチコイドリセプターβのアミノ酸配列727−742を含むC末端領域を認識する,請求項1−3のいずれかに記載の方法。
- 測定をサンドイッチ法により,酵素免疫学的に行うものであることを特徴とする請求項1−4のいずれか一記載の方法。
- ヒトグルココルチコイドリセプターのN端側1−367のアミノ酸配列を含むN末端領域を認識し,ヒトグルココルチコイドリセプタープロと免疫反応するモノクローナル抗体。
- ヒトグルココルチコイドリセプターαのアミノ酸配列727−777を含むC末端領域を認識し,ヒトグルココルチコイドリセプターβと免疫反応しないモノクローナル抗体。
- ヒトグルココルチコイドリセプターβのアミノ酸配列727−742を含むC末端領域を認識し,ヒトグルココルチコイドリセプターαと免疫反応しないモノクローナル抗体。
- ヒトグルココルチコイドリセプターの検出限界値が0.1ng/mlである,請求項6−8のいずれかに記載のモノクローナル抗体。
- ヒトグルココルチコイドリセプターの検出限界値が0.01ng/mlである,請求項6−8のいずれかに記載のモノクローナル抗体。
- ヒトグルココルチコイドリセプターを免疫学的にアッセイするキットであって,ヒトグルココルチコイドリセプターαおよびβを認識するモノクローナル抗体と,ヒトグルココルチコイドリセプターβを認識するがヒトグルココルチコイドリセプターαを認識しないモノクローナル抗体とを含むキット。
- ヒトグルココルチコイドリセプターβを認識するがヒトグルココルチコイドリセプターαを認識しないモノクローナル抗体が,ヒトグルココルチコイドリセプターβのC末端領域を認識することを特徴とする,請求項11記載のキット。
- ヒトグルココルチコイドリセプターαおよびβを認識するモノクローナル抗体が,ヒトグルココルチコイドリセプターのN端側1−367のアミノ酸配列を含むN末端領域を認識する,請求項11または12に記載のキット。
- ヒトグルココルチコイドリセプターβを認識するがヒトグルココルチコイドリセプターαを認識しないモノクローナル抗体が,ヒトグルココルチコイドリセプターβのアミノ酸配列727−742を含むC末端領域を認識する,請求項11−13のいずれかに記載のキット。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003032117A JP2004238377A (ja) | 2003-02-10 | 2003-02-10 | ステロイドに対する耐性をアッセイするための方法および試薬 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003032117A JP2004238377A (ja) | 2003-02-10 | 2003-02-10 | ステロイドに対する耐性をアッセイするための方法および試薬 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004238377A true JP2004238377A (ja) | 2004-08-26 |
Family
ID=32958470
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003032117A Pending JP2004238377A (ja) | 2003-02-10 | 2003-02-10 | ステロイドに対する耐性をアッセイするための方法および試薬 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004238377A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN112695052A (zh) * | 2020-12-25 | 2021-04-23 | 华南农业大学 | 一种重组人糖皮质激素受体GRα-His蛋白及其表达和纯化方法 |
-
2003
- 2003-02-10 JP JP2003032117A patent/JP2004238377A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN112695052A (zh) * | 2020-12-25 | 2021-04-23 | 华南农业大学 | 一种重组人糖皮质激素受体GRα-His蛋白及其表达和纯化方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP4638350B2 (ja) | ヒトまたは動物の組織、血液もしくは体液中のヘプシジンの存在または量を検出する方法 | |
US7649081B2 (en) | Diagnostic method for diseases by screening for hepcidin in human or animal tissues, blood or body fluids and therapeutic uses therefor | |
US20160084852A1 (en) | Methods of determination of activation or inactivation of atrial natriuretic peptide (anp) and brain natriuretic peptide (bnp) hormonal systems | |
CN112920275B (zh) | 可特异性结合sST2的结合蛋白、试剂和试剂盒 | |
US20210003575A1 (en) | Use of bmmfi rep protein as biomarker for colorectal cancer | |
JP2008523398A (ja) | インスリン抵抗性の標的/マーカーとしてのcd99 | |
JP3259768B2 (ja) | 腎疾患の検査方法 | |
US8114588B2 (en) | Method for detecting vesicoureteral reflux or interstitial cystitis | |
JPH03264864A (ja) | 哺乳動物系におけるcoup転写因子の相互作用の測定法 | |
JP2004238377A (ja) | ステロイドに対する耐性をアッセイするための方法および試薬 | |
JP2022521534A (ja) | 乳がんのバイオマーカとしてのbmmf1 repタンパク質の使用 | |
JP4993065B2 (ja) | 肝細胞癌の診断方法 | |
JP4829961B2 (ja) | プロスタシン部分ペプチド及び抗プロスタシン抗体 | |
TWI363763B (en) | The measuring method for human orotate phosphoribosyl transferase protein | |
JP5626681B2 (ja) | 癌の検出方法 | |
WO2018103062A1 (zh) | Cnpy2异构体2及作为肠癌分子标识物的应用 | |
JP2016526684A (ja) | アウグリン免疫学的検定 | |
CN118255880A (en) | D-dimer antibody and use thereof | |
JP2007045834A (ja) | 抗Glu17−オステオカルシン抗体 | |
KR20040022384A (ko) | 에디포넥틴에 대한 단클론 항체, 이의 제조방법 및 용도 |