JP2004238230A - ふく射性ガスの選択的加熱による改質反応促進の方法、波長選択性熱放射材料及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】周期的な表面微細凹凸パターンを形成する多数のマイクロキャビティ5が二次元配列された熱放射面7を有する波長選択性熱放射材料8を準備し、波長選択性熱放射材料8にエネルギを投入し、ふく射性ガス分子の特定の光吸収帯の波長領域に対応する熱ふく射電磁波を熱放射面7から選択的に放射させ、この熱ふく射電磁波をメタン等のふく射性ガス分子に印加することにより、該ふく射性ガスの温度を上昇させ改質反応を促進させる。
【選択図】 図8
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、天然ガスやメタンガス等の炭化水素系ガスから水素を生成する炭化水素ガス改質システム、水分子を効率的に加熱する融雪装置、あるいは自動車用などの塗料の乾燥装置に利用可能なふく射性ガスの選択的加熱による改質反応促進の方法、波長選択性熱放射材料及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
水素ガスはクリーンでエネルギ密度が高い燃料であるため、その製造方法は重要な技術であり、従来から種々の提案がなされている。水素ガス製造方法のうちの一つとして、天然ガス等に含まれる炭化水素ガスを改質する方法がある。
【0003】
現在、炭化水素ガス改質法の主流となっているのは水蒸気改質法である。しかし、水蒸気改質法では反応が吸熱であり、ガスおよび触媒表面の加熱に大きなエネルギが必要になる。
【0004】
天然ガスの改質温度は部分酸化反応や水蒸気改質において600〜800℃程度であり、この温度域においては熱ふく射による触媒などの固体表面からのエネルギ損失が大きい。このため従来の水蒸気改質法(例えば非特許文献1)は単位エネルギ当りの水素ガス回収効率が低く、エネルギコストが高いものとなる。
【0005】
しかし、燃料ガスであるメタンなどは、ごく限られた波長領域の熱ふく射のみを吸収し、その他の大部分の波長領域の熱ふく射を吸収しないものであるため、通常の平坦な表面をもつ金属板(フラットエミッタ)を用いてガスを加熱したとしても、その熱ふく射のうち大部分の光はガス分子の加熱にほとんど寄与しない。
【0006】
また、降雪地域では除雪のために多大な熱エネルギが毎年消費されている。これまでにも種々の融雪方法(例えば特許文献1)が提案されているが、熱ふく射を利用する方法は他の融雪方法に比べて熱効率が低いために採用されていない。例えば、平坦表面のホットプレートを用いて雪をふく射加熱したとしても、その熱ふく射のうち大部分の光エネルギは水分子に吸収されず、加熱にほとんど寄与しない。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−069961「遠赤外線融雪装置」
【0008】
【非特許文献1】
市川勝監修 「天然ガスの高度利用技術」 出版社:エヌ・ティー・エス 2001年4月10日発行、 413項 図5)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、投入エネルギの無駄な消費を抑え、炭化水素系ガス分子や水分子などを効率的に加熱することができるふく射性ガスの選択的加熱による改質反応促進の方法、波長選択性熱放射材料およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
メタンガスの改質反応の例を次に示す。
【0011】
CH4+H2O→CO+3H2 …(1)
CO+H2O→CO2+H2 …(2)
上式(1)は800〜900℃の温度域で反応が進行する吸熱反応(ΔH=206.1kJ/mol)である。この第1段階の反応では多量の水素が生成される。
【0012】
上式(2)は800〜900℃の温度域で反応が進行する発熱反応(ΔH=−41.6kJ/mol)である。この第2段階の反応でも水素が生成される。
【0013】
したがって、メタンガスの第1段階の反応(上式(1)の吸熱反応)を促進させるためには、外部からガス分子に熱エネルギを補給する必要がある。ところで、図1および図10に示すようにガス分子には固有の吸収帯があるので、ふく射エネルギの一部のみが改質反応に寄与するにすぎない。このため加熱器の出力を単に増大させたとしても、その放射エネルギの大部分は無駄に消費される。そこで、本発明では、以下に述べる波長選択性熱放射材料から波長選択的に熱放射させ、ガス分子に熱エネルギを効率的に供給するようにしている。
【0014】
本発明に係るふく射性ガスの選択的加熱による改質反応促進の方法は、(i)周期的な表面微細凹凸パターンを形成する多数のマイクロキャビティが二次元配列された熱放射面を有する波長選択性熱放射材料を準備し、(ii)前記波長選択性熱放射材料にエネルギを投入し、ふく射性ガス分子の特定の光吸収帯の波長領域に対応する熱ふく射電磁波を前記熱放射面から選択的に放射させ、(iii)この熱ふく射電磁波を前記ふく射性ガス分子に印加することにより、該ふく射性ガスの温度を上昇させることを特徴とする。
【0015】
ここで「ふく射性ガス」とは、赤外領域(波長1〜10μm)に強い吸収をもつ気体または気液混合体をいう。具体的には、ふく射性ガスは、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、ブチレン、アセチレン、天然ガス等の炭化水素系ガス、およびメタノール、エタノール、ブチルアルコール等のアルコール類、及びLPG、ガソリン、ナフサなど高級炭化水素を含み、さらに水蒸気も含むものである。なお、ふく射性ガスに気液混合体も含ませるようにしたのは、水蒸気はドライな状態だけでなく、過飽和蒸気のようにウェットな状態が存在するからである。
【0016】
ふく射性ガスは、炭素に対する水の質量比率(Steam/Carbon ratio:S/C比)が1以上になるように、水蒸気を炭化水素系ガスに添加混合した湿炭化水素系ガスとすることが好ましい。S/C比を1以上にすると、炭化水素系ガスの改質反応(加水分解反応)が促進されると共に、炭素析出の抑制が可能となり、効率よく水素ガスが生成されるからである。S/C比が1を下回る場合は、炭素析出が顕著になる場合が多く、反応速度の低下により反応が完了するまでに長時間を要する。このためS/C比の下限値は1とすることが好ましい。なお、ふく射性ガスが過度に多湿状態になると、燃料濃度の低下による転換率の低下や、水蒸気の加熱に必要以上のエネルギが必要となるなどの不都合を生じるので、S/C比の上限値は5程度とすることが望ましい。
【0017】
本発明に係る波長選択性熱放射材料は、特定の光吸収帯を持つふく射性ガス分子を効率良く加熱するために用いられる波長選択性熱放射材料であって、平面上に周期的に繰り返される微細凹凸パターンを形成するように、実質的に二次元配列された多数のマイクロキャビティと、前記マイクロキャビティを覆う被覆層を有し、前記ふく射性ガス分子の特定の光吸収帯の波長領域に対応する熱ふく射電磁波を選択的に放射する熱放射面と、を具備することを特徴とする。
【0018】
本発明材料の熱放射面には表面テクスチャー化(surface texturing)された多数のマイクロキャビティが存在する。これらのマイクロキャビティは、ふく射性ガス分子の特定の光吸収帯波長と実質的に同じ周期か又は1μm短い周期に形成され、矩形状または円形状に開口し、所定の開口比および所定のアスペクト比を有する。
【0019】
マイクロキャビティをふく射性ガス分子の特定の光吸収帯波長と実質的に同じ周期にすると、その周期構造と熱放射光の電磁場とで表面プラズモン共鳴を生じるので、対象ガスの光吸収帯波長域で放射率が増加する(共鳴効果)。
【0020】
また、マイクロキャビティをふく射性ガス分子の特定の光吸収帯波長よりも1μm短い周期にすると、マイクロキャビティ内に閉じ込められた電磁波のなかで最も強い強度を持つモードの波長とガス分子の特定の光吸収帯波長とを一致させることが出来る。その結果、対象ガスの光吸収帯波長域で放射率が増加する(キャビティ効果)。
【0021】
また、マイクロキャビティは、平面視野において放射面に格子状に配列されていることが好ましい。格子状の配列は熱エネルギ線の放射率を効率よく増加させる。なお、本発明は格子状配列のみに限定されるものではなく、ハニカム構造などの他の配列としてもよい。
【0022】
また、被覆層(マイクロキャビティの表面物質)は、波長1〜10μmの赤外領域の放射率が0.4以下の金属材料からなることが好ましい。赤外領域の放射率が0.4を超えると、選択放射特性が低下する不都合を生じるからである。
【0023】
また、マイクロキャビティの周期を2〜4μmとし、ふく射性ガスとして炭化水素系ガスまたは水蒸気を加熱することが好ましい。水分子のエネルギ吸収帯は2.6〜2.8μmの波長域にあり、メタンガス分子などの炭素と水素が結合した分子のエネルギ吸収帯は3.1〜3.7μmの波長域にあるからである。
【0024】
また、マイクロキャビティのアスペクト比d/aを0.8〜3.0の範囲とすることが好ましい。アスペクト比d/aが0.8を下回ると選択放射強度が低下するという不都合を生じるからである。一方、アスペクト比d/aが3.0を上回ると材料の制作上著しい困難を伴うという不都合を生じるからである。
【0025】
さらに、キャビティの開口比a/Λを0.5〜0.9の範囲とすることが好ましい。開口比a/Λが0.5を下回ると熱放射の選択性が低下する不都合を生じるからである。一方、開口比a/Λが0.9を上回ると微細構造の熱安定性が低下する不都合を生じるからである。
【0026】
半導体基板は、シリコンSi、ゲルマニウムGeなどの単体半導体、あるいはガリウム砒素GaAsなどの化合物半導体、あるいはタングステンW、モリブデンMo、タンタルTa、ニオブNbなどの高融点金属、あるいはFeCrNi系ステンレス鋼、FeCr系ステンレス鋼などの合金のいずれであってもよい。Si等の半導体やタングステン等の金属は可視光および近赤外線領域において固有の熱放射バンドを有するからである。
【0027】
なお、金属基板を微細表面加工する場合は、高速原子線(Fast Atom Beam)エッチング技術を用いる。高速原子線エッチング技術はY.Kanamori,K.Hane,H.Sai and H.Yugami,100nm period silicon antireflection structures fabricated using a porous alumina membrane mask, Appl.Phys.Lett.78 (2001) 142−143などの文献に記載されている。
【0028】
被覆層は、Pt,Au,Ag,Cr,Cuなどの電気伝導性に優れた低抵抗率の金属、あるいはこれらの金属を主成分とする合金を用いることが好ましい。なお、炭化水素系ガスの改質温度は600〜800℃の高温域であるため、Al,Zn,Pbなどの低融点金属を被覆層に用いることは好ましくない。
【0029】
本発明に係る波長選択性熱放射材料の製造方法は、特定の光吸収帯を持つふく射性ガス分子を効率良く加熱するために用いられる波長選択性熱放射材料を製造する方法において、
(a)フォトリソグラフィプロセスを用いて金属薄膜シートに開口する多数の周期配列孔を開口形成し、これにより多孔金属マスクを得る工程と、
(b)半導体基板にレジストを塗布し、このレジスト塗膜と向き合うように前記多孔金属マスクを配置し、前記周期配列孔を介して前記レジスト塗膜に所定波長の光を照射してパターン露光する工程と、
(c)前記レジスト塗膜に現像液を接触させ、該レジスト塗膜中のパターン露光潜像を現像する工程と、
(d)所定のエッチング法を用いて前記半導体基板をパターンエッチングし、これにより該半導体基板の表面に微細凹凸パターンを形成する工程と、
(e)前記半導体基板から前記レジスト塗膜を除去し、物理的気相成長法または化学的気相成長法を用いて前記半導体基板表面の微細凹凸パターンの上に金属被覆膜を積層し、これにより前記半導体基板の上に周期的に二次元配列されたマイクロキャビティを得る工程と、を具備することを特徴とする。
【0030】
上記工程(a)において、多孔金属マスクの周期配列孔は、前記ふく射性ガス分子の特定の光吸収帯波長と実質的に同じ周期か又は1μm短く形成されていることが好ましい。このような周期配列孔をもつマスクを用いてマイクロキャビティを形成すると、上述の共鳴効果とキャビティ効果とにより特定波長の熱ふく射を発現させることができる。
【0031】
図1は、横軸に波長(μm)をとり、縦軸に分光スペクトルエネルギEgyをとって、各種気体の放射エネルギ吸収を示すスペクトル特性線図である。図中にて特性線A(破線)はメタンを含まない気体の吸収スペクトル線を示し、特性線B(実線)はメタンを含む気体の吸収スペクトル線を示す。図示のように、COは波長2.3〜2.4μm、H2Oは波長2.6〜2.8μm、CH4は波長3.1〜3.7μm、CO2は波長4.2〜4.4μmにエネルギ吸収帯がそれぞれ存在する。特に、メタンガス(CH4)と水蒸気(H2O)は顕著なエネルギ吸収を示す。このように「ふく射性ガス」は特定の波長域にふく射エネルギを吸収するエネルギ吸収帯を有することが判明している。
【0032】
図2中の特性線Cは波長選択性熱放射材料(選択エミッタ)の熱放射特性を模式的に示したものであり、ある特定の波長域では選択エミッタの熱エネルギ放射率が急激に増加する。例えば、選択エミッタの放射率は、特定波長域において金属の放射率(0.15〜0.25)を大きく超え、SiCの放射率(0.9)と同等か又はそれ以上に達する。このような波長選択的な熱放射特性は、放射面の微細な周期構造(マイクロキャビティ)に起因するものである。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0034】
マイクロキャビティ周期構造の熱放射特性をシミュレーションするために、RCWA(Rigorous Coupled−Wave Analysis)法に基づく数値解析を実施した。その結果はマイクロキャビティ周期構造がガス改質のための熱放射に適したスペクトル選択性を有することを示すことが実証された。観測された放射バンドは、電磁界間の定常波反響およびマイクロキャビティ内で発生する定常波モードから始まると推察される。
【0035】
次に、RCWA法に基づく数値解析の概要について説明する。
【0036】
(数値解析)
周期的な表面微細構造により波長選択的な吸収特性が得られる現象は、周期構造により誘起される表面プラズモンによる吸収やキャビティ構造による定在波モードの吸収などで説明されているが、材料物性も関係してくる複雑な事象であるため、定量的な説明はまだなされておらず、解析的に特性を評価することは困難である。
【0037】
そこで本発明者らは、マクスウェル方程式の厳密解法であるRigorous Coupled−Wave Analysis(以下、RCWA法という)を用いてマイクロキャビティ周期構造の最適形状モデルの決定を行った。図3に示すように、最適形状モデル8は、開口径aと深さdを有する矩形のマイクロキャビティ5が、周期Λで縦横に二次元配列された構造である。これらのマイクロキャビティ5はシリコン基板2の片面に形成され、これを白金Pt7が被覆している。
【0038】
このような構造モデルを用いてRCWA法に基づく数値解析を行い、表面にサブミクロン周期構造を持つ材料の光学特性をシミュレーション評価した。RCWA法では材料の誘電率分布をフーリエ級数展開により表現するため、任意の周期構造の解析が可能である。幾何形状及び材料の光学定数(複素屈折率)を入力し、マクスウェル方程式を厳密に解くことにより入射波の応答を求めることができる。RCWA法は一般的な三次元の回折格子問題を分析する方法である。微細構造領域での誘電率分布は、フーリエ展開によって表現される。解析精度は電磁場の空間的な調和展開項の数に依存する。本発明では2次元周期構造が解析対象であるが、x軸とy軸方向にそれぞれプラスマイナス7次まで、合計で225個の回折波を考慮して計算を行い、解が十分収束することを確認した。
【0039】
プラスマイナス7次までの回折次数はx軸およびy軸方向に考慮され、従って、本発明では225個の各回折次数についての回折効率を各波長について計算した。本発明者らはこれらの条件で解が充分収束することを確認した。入力データには、入射波の条件、構造上のプロファイル、および材料の光学定数(n, k)の状態のみが含まれ、可変パラメータは計算に用いない。各回折次数のための回折効率は、D.W.Lynch and W.R.Hunter, Handbook of Optical Constants of SolidsI,E.D.Palik, ed.(Academic Press, New York, 1985), pp.333−341、及びD.F.Edwards, Handbook of Optical Constants of SolidsI, E.D.Palik, ed.(AcademicPress, New York, 1985), pp.547−569、においてそれぞれ報告された室温での白金及びSiの光学定数を用いて計算される。その計算は、本発明者が先の特願2002−131833の出願明細書に開示した手順に従う。
【0040】
図4は、横軸に波長λ(μm)をとり、縦軸にスペクトル放射率Rsをとって、図3に示す構造モデルをRCWA法で数値解析した結果を示すスペクトル放射特性線図である。スペクトル放射率Rsは、矩形マイクロキャビティの周期Λ、開口径a、Pt膜厚tを下記の値に固定し、開口深さdを種々変えてシミュレーションした。
【0041】
Λ=2.0μm
a=1.6μm
t=25.5nm
図中にて、特性線D1は開口深さdを0.211μmとしたときの結果を、特性線D2は開口深さdを0.851μmとしたときの結果を、特性線D3は開口深さdを1.651μmとしたときの結果を、特性線D4は開口深さdを6.451μmとしたときの結果をそれぞれ示す。
【0042】
図から明らかなように、スペクトル放射率Rsは、アスペクト比d/aを0.53から1.03まで増加させた場合には、赤外領域(波長λ=1〜10μm)で顕著に上昇することが認められた。一方、アスペクト比d/aを1.03から4.03まで増加させたとしても、スペクトル放射率Rsは僅かに変化するだけであり、スペクトル放射率Rsの上昇は実質的に飽和している。さらに、より短い波長でのいくつかのピークは、開口深さdが大きくなると共により鈍い傾向となった。
【0043】
図5は、横軸に波長λ(μm)をとり、縦軸にスペクトル放射率Rsをとって、図3に示す構造モデル8をRCWA法で数値解析した結果を示すスペクトル放射特性線図である。スペクトル放射率Rsは、開口径/波長比(a/λ)、開口深さ/波長比(d/λ)、Pt膜厚tを下記のように固定し、周期Λを種々変えてシミュレーションした。
【0044】
a/λ=0.8
d/λ=0.8
t=51nm
図中にて、特性線E1は周期Λを2.0μmとしたときの結果を、特性線E2は周期Λを2.6μmとしたときの結果を、特性線E3は周期Λを3.0μmとしたときの結果をそれぞれ示す。図から明らかなように、周期Λが大きくなるにしたがってスペクトル放射率のピークが長波長のほうにシフトした。
【0045】
[実施例]
(マスクの作製)
次に、図6を参照して波長選択性熱放射材料(選択エミッタ)の製造に用いるマスク(レチクル)の作製方法について説明する。
【0046】
先ず、図6の(a)に示すように、膜厚70〜80nmのクロム膜42が片面にコーティングされたアルミノケイ酸ガラス基板41を準備し、クロム膜42の上にネガ型レジストであるSALをスピンコーティング法により塗布した(工程S1)。このとき基板の回転速度および塗布時間は次の3つの条件(i)〜(iii)で逐次行った。これによりレジスト膜43の平均膜厚を約2μmとした。
【0047】
(i)基板の回転速度;1000rpm
レジスト塗布時間;5秒
(ii)基板の回転速度;2500rpm
レジスト塗布時間;30秒
(iii)基板の回転速度;2000rpm
レジスト塗布時間;0.5秒
レジスト塗布後、レジスト膜43に含まれる有機溶剤を揮発させるために、加熱装置(オーブン)によりレジスト膜43を90℃の温度でプリベークした。
【0048】
プリベーク後、基板41を室温まで冷却し、電子線描画装置(日立HL−700)を用いて、図6の(b)に示すように、電子線44によりレジスト膜42に直接パターンを描画していく(工程S2)。パターニング後、オーブンによりレジスト膜43を90℃の温度で再度プリベークした。
【0049】
次いで、図6の(c)に示すように、基板41を現像液中に漬ける浸漬法により現像を行った(工程S3)。本実施例で用いた現像液はMF−312(シブレイ・ファーイースト株式会社の商品名)である。
【0050】
現像後、基板41をオーブンに装入し、レジスト膜43を150℃の温度でポストベークする。これにより現像で吸収された溶媒を揮発させ、膨張したレジスト像を収縮させる。また、ポストベークすることによりクロム膜42に対するレジスト膜43の密着性が改善される。
【0051】
次いで、現像法と同様に、図6の(d)に示すように、パターニング後のマスク基板をCrエッチャント液に浸漬してクロム膜42をエッチングした(工程S4)。エッチングによりパターン化した開口44が形成され、開口44をもつマスク4が得られる。
【0052】
最後に、図6の(e)に示すように、濃硫酸に過酸化水素水を加えた混酸によりマスク4から残留レジスト43aを剥離させた(工程S5)。また、周期Λや開口径aの大きさの異なる選択エミッタを同時に作製できるように、単一のマスク4上に複数の種類のパターンを作製した。
【0053】
本実施例では2枚のマスクを作製したが、それぞれに含まれるパターン(周期Λと開口径a)を表1に示す。本実施例に用いた装置では、マスク4を使用して露光する場合、パターンは縮小投影されるので、マスク4上のパターンの実寸は表1中の値を5倍にした長さである。
【0054】
【表1】
【0055】
なお、高速原子線(Fast Atom Beam)エッチング技術により、バルクのCr基板上のサブミクロンの孔を用いて二次元表面微細構造を作製するようにしてもよい。高速原子線エッチング技術はY.Kanamori,K.Hane,H.Sai and H.Yugami,100nmperiod silicon antireflection structures fabricated using a porous alumina membrane mask, Appl.Phys.Lett.78 (2001) 142−143などの文献に記載されている。
【0056】
高速電子線は電気的に中性な原子または分子の線であるため、試料上に蓄積された電荷のために、エッチング形を変形させることなく、ナノメートル級の微細なパターンを得ることが可能である。エッチング・マスクとして、H.Masuda,K.Yada and A.Osaka, Self−ordering of cell configuration of anodic porous alumina with large−size pores in phosphoric acid, Jpn.J.Appl.Phys.37(1998)L1340−L1342)などの文献に記載されている高度な周期性をもつポーラスクロム膜を使用してもよい。
【0057】
(選択エミッタの作製)
上記のマスク(レチクル)を用いて波長選択性熱放射材料(選択エミッタ)を作製する方法について図7の(a)〜(e)を参照しながら説明する。
【0058】
先ず、HF溶液を用いてSiウエハ2の表面から自然酸化膜を除去した。Siウエハ2はボロン等のp型不純物がドープされ、面抵抗値が8〜12Ωcmの範囲にある。スピンコーティング法を用いて、図7の(a)に示すように、Siウエハ2の表面にフォトレジストを平均膜厚2μmの厚さに塗布した(工程S11)。
【0059】
レジストにはポジ型のPFI89B8(住友化学株式会社の商品名)を使用した。レジスト塗布後、Siウエハ2をオーブンに入れ、約90℃の加熱温度でプリベークを行い、レジスト膜3に含まれる有機溶剤を揮発させた。
【0060】
プリベーク後、水銀ランプの光を用いてレジスト膜3を露光した。水銀は、原子核の周りに80個の電子が存在し、基底状態では最外殻の6s軌道に2個の電子が存在する。この最外殻の6s軌道にある2個の電子が励起準位に遷移する過程によって、種種の線スペクトルからなる光放射が発生する。本実施例で使用した装置(日本光学株式会社製;ニコンNSR−2205i12D)では波長365nmのi線光を用いてレジスト膜3を露光した。露光時間は400ミリ秒とした。
【0061】
マスク4のパターンは縮小投影レンズにより1/5倍に縮小投影されることにより、表1に示した周期パターンが基板上に転写される。真空チャックでSiウエハ2をXYステージに固定し、露光とステージ移動を繰り返しながらレジスト膜3を約3cm×3cmの範囲でパターニングした(工程S12)。
【0062】
レジスト膜3とSiウエハ2との密着性を向上させるために、パターニング後にSiウエハ2を100℃のホットプレート上でベークした。その後、現像液(NMD3)を使用し、図7の(c)に示すように、浸漬法により現像時間を65秒とする現像を行った(工程S13)。これによりレジスト膜3の一部が除去され、パターン化された開口5が形成される。開口5のところにはSiウエハ2の表面が露出している。
【0063】
現像後、Siウエハ2を150℃のオーブンでポストベークし、現像工程S13で吸収した溶媒をレジスト膜3から揮発させた。次いで、実際にSiウエハ2の表面にマイクロキャビティ周期構造を形成するために、Siウエハ2をエッチングした(工程S14)。本実施例では、反応性イオンエッチング(RIE)法を用いてSiウエハ2をパターンエッチングすることにより、図7の(d)に示すように、マイクロキャビティの周期構造を形成した。エッチングガスイオン6にはSF6またはHBrを用いた。Siウエハ2のドライエッチングは開口5が所定の深さになるまで続けた。エッチング後、残留レジスト膜3をSiウエハ2の上から除去した。
【0064】
次いで、図7の(e)に示すように、高周波スパッタリング装置によりSiウエハ2の上に金属薄膜7を成膜した(工程S15)。成膜中のArガス流量は、コーティング金属に応じて種々変えることが望ましい。例えば、Ptコーティングの場合は、成膜室内へのArガス流量を50sccmとする。また、Tiコーティングの場合は、成膜室内へのArガス流量を40sccmとする。
【0065】
金属薄膜7とSiウエハ2との密着性を増進させるために、Siウエハ2の上に厚さ40nmのTiを予めコートした後に、他の金属(Pt,Au,Ag,Cr,Cu)を厚さ100nmだけコーティングした。
【0066】
下記構造のマイクロキャビティ(MC)をもつ選択エミッタが得られた。
【0067】
実施例1の選択エミッタ
1)MC形成面積;3cm×3cm
2)MC開口形状;矩形
3)周期Λ;平均2.6μm
4)開口径a;平均2.3μm×2.3μm
5)深さd;最大1.9μm
6)Pt膜厚t;平均100nm
実施例2の選択エミッタ
1)MC形成面積;3cm×3cm
2)MC開口形状;矩形
3)周期Λ;平均3.0μm
4)開口径a;平均2.4μm×2.4μm
5)深さd;最大2.2μm
6)Pt膜厚t;平均50nm
図8は、上記実施例1の選択エミッタの表面を約一万倍の倍率(1×104)に拡大して示す走査型電子顕微鏡写真である。マイクロキャビティは、ほぼ矩形の形状をなし、縦横格子状に周期配列されている。
【0068】
図9は、横軸に波長λ(μm)をとり、縦軸にスペクトル放射率Rsをとって、実施例の波長選択性熱放射材料(選択エミッタ)の放射率と比較例の平坦熱放射材料(フラットエミッタ)の放射率とを比較して示す特性線図である。図中にて特性線F1は比較例のフラットエミッタのスペクトル放射特性を、特性線F2は実施例1の選択エミッタのスペクトル放射特性を、特性線F3は実施例2の選択エミッタのスペクトル放射特性をそれぞれ示す。スペクトル放射率Rsの測定は、本発明者が先の特願2002−131833の出願明細書に開示した手順に従う。なお、比較例のフラットエミッタとして平坦表面のSi基板上に厚さ100nmのPt膜を被覆したものを用いた。
【0069】
図から明らかなように、比較例のフラットエミッタではスペクトル放射率Rsがほとんど変化しないでピークが出現しないのに対して、実施例1の選択エミッタでは波長3.5μmのところに、実施例2の選択エミッタでは波長4.0μmのところにそれぞれ顕著なスペクトル放射率Rsのピークが出現した。
【0070】
図10は、横軸に波長λ(μm)をとり、縦軸にスペクトル放射率Rsおよびガス吸収率GAをとって、実施例の波長選択性熱放射材料(選択エミッタ)の放射率と比較例の平坦熱放射材料(フラットエミッタ)の放射率とを比較するとともに、各種ふく射性ガスのガス吸収率を併せて示す特性線図である。図中にて特性線G1は比較例のフラットエミッタのスペクトル放射特性を、特性線G2は実施例1の選択エミッタのスペクトル放射特性を、特性線G3はCO,H2O,CH4のガス吸収特性をそれぞれ示す。
【0071】
図から明らかなように、実施例1の選択エミッタはメタン(CH4)の吸収帯(波長3.2〜3.5μm)にスペクトル放射率Rsのピークを有するので、メタン(CH4)ガスの改質反応を促進させるのに最適であることが判明した。
【0072】
(選択エミッタのスペクトル放射率Rsの評価)
次に、図11および図12を参照して、上記の選択エミッタ(実施例1,2)およびフラットエミッタ(比較例)によるメタン及び水蒸気の加熱、及び選択放射材料による加熱のメタン水蒸気改質反応への影響を測定して評価するために使用した実験装置10について説明する。
【0073】
実験装置10は、測定セル20、ガス供給手段、スペクトル分光分析手段およびガス分析手段を具備するものであり、測定セル20の一端側には給気管18bが連通し、測定セル20の他端側には排気管18bが連通し、測定セル20内をふく射性ガスとしての湿メタンガス(CH4+H2O)25が通流できるようになっている。給気管18bは水槽13と流量計12を介してメタン供給源11に連通している。排気管18cはガス分析手段としてのガスクロマトグラフ16に連通している。
【0074】
メタン供給源11には純度99.99%のCH4が収容され、配管18aに設けた流量計12を通って所定流量のメタンガスが水槽13内の水14に導入されるようになっている。水槽13内の水14は図示しないヒータで約83℃に温調加熱されている。給気管18bは水槽13内の水14の水面よりも上方にて開口している。この給気管18bを通ってメタンガスに水蒸気が添加された湿メタンガス(CH4+H2O)25が測定セル20内に導入され、排気管18cを通ってガスクロマトグラフ16に排気され、成分分析されるようになっている。本実験装置10では湿メタンガス(CH4+H2O)25のS/C比が約1になるように設定されている。ガスクロマトグラフ16には、島津製作所製GC−9Aを使用した。
【0075】
図12に示すように、測定セル20内のガス通路は、金ミラー26と一対の円盤状サファイア窓23とにより形成されている。一対のサファイア窓23は、互いに向き合うように金ミラー26の2つの円形開口に嵌め込まれている。これら一対のサファイア窓23の間を通過するように干渉計15から検出器17に向けて測定光27が出射されるようになっている。干渉計15には赤外線波長に対応するフーリエ変換分光器(Perkin−Elmer(GX2000))を使用した。検出器17として、赤外領域ではTGS及びInSb検出器を用いた。前者は広い範囲の波長を検出するのに適しており、後者は高感度の検出に適している。
【0076】
測定対象となる選択エミッタ8は図示しない扉を開けて測定セル20内に装入され、ステージ22の上に載置される。選択エミッタ8はステージ22の内蔵ヒータにより約800℃に加熱され、これにより特定波長の熱線が選択的に放射されるようになっている。選択エミッタ8の表面温度は熱電対(図示せず)を用いて測定した。なお、本実験装置10では選択エミッタ8をヒータ加熱により熱放射するようにしているが、選択エミッタ8の被覆金属層7に電極を接続し、選択エミッタ8そのものを通電発熱させるようにしてもよい。
【0077】
上記の実験装置10を用いて湿メタンガス(CH4+H2O)25を加熱し、ガスクロマトグラフ16により排出ガス成分を調べた。その結果を図13に示す。図13は横軸にエミッタ表面からの熱放射強度を観測波長全体で積分した「積分放射強度」(kW/m2)をとり、縦軸に水素生成量(mol/dm3)をとって、実施例1の選択エミッタの測定結果と比較例のフラットエミッタの測定結果を比較して示す特性線図である。図中にて特性線H1はフラットエミッタの測定結果(白三角プロット)を結んで得られたもの、特性線H2は選択エミッタの測定結果(黒丸プロット)を結んで得られたものである。
【0078】
図から明らかなように、全熱放射エネルギが同じとした場合に、後者(実施例1)は前者(比較例)に対して最大で約5.2倍もの水素生成量が得られた。
【0079】
本実験では、エミッタ表面にガスが直接触れないように、図12に示すように、サファイア窓23を介して加熱しており、触媒効果は改質反応に寄与していないと考えられる。実際に、水素発生量の活性化エネルギは、波長選択放射加熱と非選択放射加熱とで変化しておらず、水素生成量の変化を触媒能の変化では説明できない。
【0080】
また、サファイア窓23の温度は選択放射加熱でも非選択放射加熱でも、ほとんど変化していない。したがって、サファイア表面での熱伝達量の差によって、水素生成量が変化したとは考えられない。
【0081】
図14の(a)及び(b)は、比較例および実施例において、それぞれフラットエミッタ及び選択エミッタを用いたときのガスクロマトグラフ分析装置の出力信号の時間依存性を示す信号特性図である。短時間側が水素からの信号であり、800秒付近の信号がメタンからの信号である。前者はガス温度313.5℃の測定結果を、後者はガス温度321.5℃の測定結果をそれぞれ示す。両図から明らかなように前者に比べて後者は水素ガスに対応する信号の面積が約5.2倍になることが確認された。
【0082】
図15は、横軸にエミッタ表面温度(℃)をとり、縦軸に気体の温度(℃)をとって、実施例1の選択エミッタの測定結果と比較例のフラットエミッタの測定結果を比較して示す特性線図である。図中にて特性線Jは選択エミッタの測定結果(黒三角プロット)を結んで得られたもの、特性線Kはフラットエミッタの測定結果(黒四角プロット)を結んで得られたものである。図から明らかなように、前者のほうが後者よりもガスを効率よく加熱することが確認された。
【0083】
図16は、横軸に温度の逆数1000/T(K−1)をとり、縦軸に相対水素生成量をとって、水素生成に及ぼす触媒の影響について調べた結果を示す特性線図である。縦軸の「相対水素生成量」は、ガスクロマトグラフ出力の面積を対数表示したものである。図中にて特性線Mは選択エミッタ(実施例1)の活性化エネルギの結果(黒三角プロット)を結んで得られたもの、特性線Nはフラットエミッタ(比較例)の活性化エネルギの結果(黒四角プロット)を結んで得られたものをそれぞれ示す。両者の活性化エネルギがほぼ同一であることから、水素生成量の増加に対する触媒の効果は小さいことが判明した。
【0084】
以上詳述したように、本発明者らは、二次元表面微細構造(マイクロキャビティ)がガス分子の吸収帯波長域で選択的に熱線を放射することを実証した。また、RCWAアルゴリズムに基づく数値解析により、矩形マイクロキャビティを有する表面微細構造が良好なスペクトル選択性を有することが確認された。
【0085】
【発明の効果】
本発明によれば、材料の物性に依存しないで表面の形状をデザインすることにより、その熱放射特性を制御することができ、幅広い技術分野への応用が期待される。具体的には次にあげるような用途に最適である。
【0086】
(1)天然ガスの改質効率の向上により、よりコンパクトで高効率の水素製造技術に結びつけられ、家庭用燃料電池の普及などに大きく貢献できる。
【0087】
(2)融雪装置や塗料乾燥装置などの民生産業部門において、エネルギ利用効率の向上が見込まれ、二酸化炭素(CO2)排出削減に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】種々の気体における熱放射エネルギ吸収を示すスペクトル特性線図。
【図2】波長選択性熱放射の原理を説明するための模式図。
【図3】コンピュータシミュレーション数値解析法(RCWA法)に用いた解析モデル図。
【図4】矩形キャビティの深さdを種々変えたときの解析モデルについて数値解析して得た波長/スペクトル放射率の相関をそれぞれ示す特性線図。
【図5】周期Λを種々変えたときの解析モデルについて数値解析して得た波長/スペクトル放射率の相関をそれぞれ示す特性線図。
【図6】(a)〜(e)はマスクの製造方法を示す工程図。
【図7】(a)〜(e)は本発明の波長選択性熱放射材料の製造方法を示す工程図。
【図8】本発明の波長選択性熱放射材料(選択エミッタ)の表面を拡大して示す走査型電子顕微鏡(SEM;倍率10000倍)写真。
【図9】本発明の波長選択性熱放射材料(選択エミッタ)の放射率と比較例の平坦熱放射材料(フラットエミッタ)の放射率とを比較して示す特性線図。
【図10】実施例(選択エミッタ)と比較例(フラットエミッタ)とについて放射率およびガス吸収率を比較して示す特性線図。
【図11】評価装置の概要を示す構成ブロック図。
【図12】評価装置のセルの概要を示す内部透視断面図。
【図13】積分熱放射エネルギと水素ガス生成量との相関を示す特性線図。
【図14】(a)は比較例の平坦熱放射材料(フラットエミッタ)を用いたときのガスクロマトグラフ分析装置の出力信号図、(b)は本発明の波長選択性熱放射材料(選択エミッタ)を用いたときのガスクロマトグラフ分析装置の出力信号図。
【図15】エミッタ温度と気体温度との相関を示す特性線図。
【図16】水素生成に及ぼす触媒の影響について調べた結果を示す特性線図。
【符号の説明】
2…シリコン基板、
3…レジスト膜、
4…マスク、
5…開口(マイクロキャビティ、周期構造)、
6…イオン、
7…金属膜(被覆層、熱放射面)、
8…波長選択性熱放射材料(選択エミッタ、構造モデル)、
11…メタン供給源、
12…流量計、
13…水槽、
15…干渉計、
16…ガスクロマトグラフ、
17…検出器、
18b…給気管、
18c…排気管、
20…測定セル、
21…チャンバ、
22…ヒータ、
23…サファイア窓、
25…メタンガス(ふく射性ガス)、
26…金ミラー、
27…光、
Λ…周期、
a…開口径、
d…開口深さ。
Claims (11)
- (i)周期的な表面微細凹凸パターンを形成する多数のマイクロキャビティが二次元配列された熱放射面を有する波長選択性熱放射材料を準備し、(ii)前記波長選択性熱放射材料にエネルギを投入し、ふく射性ガス分子の特定の光吸収帯の波長領域に対応する熱ふく射電磁波を前記熱放射面から選択的に放射させ、(iii)この熱ふく射電磁波を前記ふく射性ガス分子に印加することにより、該ふく射性ガスの温度を上昇させることを特徴とするふく射性ガスの選択的加熱による改質反応促進の方法。
- 前記ふく射性ガスは、炭素に対する水の質量比率が1以上になるように水蒸気を炭化水素系ガスに添加した湿炭化水素系ガスからなることを特徴とする請求項1記載の方法。
- 特定の光吸収帯を持つふく射性ガス分子を効率良く加熱するために用いられる波長選択性熱放射材料であって、
平面上に周期的に繰り返される微細凹凸パターンを形成するように、実質的に二次元配列された多数のマイクロキャビティと、
前記マイクロキャビティを覆う被覆層を有し、前記ふく射性ガス分子の特定の光吸収帯の波長領域に対応する熱ふく射電磁波を選択的に放射する熱放射面と、を具備することを特徴とする波長選択性熱放射材料。 - 前記マイクロキャビティは、前記ふく射性ガス分子の特定の光吸収帯波長と実質的に同じ周期か又は1μm短い周期に形成され、矩形状または円形状に開口し、所定の開口比および所定のアスペクト比を有することを特徴とする請求項3記載の熱放射材料。
- 前記マイクロキャビティは、平面視野において放射面に格子状に配列されていることを特徴とする請求項3または4のいずれか一方に記載の熱放射材料。
- 前記被覆層は、波長1〜10μmの赤外領域の放射率が0.4以下の金属材料からなることを特徴とする請求項3乃至5のうちのいずれか1記載の熱放射材料。
- 前記マイクロキャビティの周期を2〜4μmとし、前記ふく射性ガスとして炭化水素系ガスまたは水蒸気を加熱することを特徴とする請求項3乃至6のうちのいずれか1記載の熱放射材料。
- 前記マイクロキャビティのアスペクト比を0.8〜3.0の範囲とすることを特徴とする請求項3乃至7のうちのいずれか1記載の熱放射材料。
- 前記マイクロキャビティの開口比を0.5〜0.9の範囲とすることを特徴とする請求項3乃至8のうちのいずれか1記載の熱放射材料。
- 特定の光吸収帯を持つふく射性ガス分子を効率良く加熱するために用いられる波長選択性熱放射材料を製造する方法において、
(a)フォトリソグラフィプロセスを用いて金属薄膜シートに開口する多数の周期配列孔を開口形成し、これにより多孔金属マスクを得る工程と、
(b)半導体基板にレジストを塗布し、このレジスト塗膜と向き合うように前記多孔金属マスクを配置し、前記周期配列孔を介して前記レジスト塗膜に所定波長の光を照射してパターン露光する工程と、
(c)前記レジスト塗膜に現像液を接触させ、該レジスト塗膜中のパターン露光潜像を現像する工程と、
(d)所定のエッチング法を用いて前記半導体基板をパターンエッチングし、これにより該半導体基板の表面に微細凹凸パターンを形成する工程と、
(e)前記半導体基板から前記レジスト塗膜を除去し、物理的気相成長法または化学的気相成長法を用いて前記半導体基板表面の微細凹凸パターンの上に金属被覆膜を積層し、これにより前記半導体基板の上に周期的に二次元配列されたマイクロキャビティを得る工程と、
を具備することを特徴とする波長選択性熱放射材料の製造方法。 - 前記工程(a)において、多孔金属マスクの周期配列孔は、前記ふく射性ガス分子の特定の光吸収帯波長と実質的に同じ周期か又は1μm短い周期に形成されていることを特徴とする請求項10記載の製造方法。
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