JP2004235201A - 基板の乾式化学機械研磨方法および乾式化学機械研磨装置 - Google Patents

基板の乾式化学機械研磨方法および乾式化学機械研磨装置 Download PDF

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山田  勉
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Abstract

【課題】乾式化学機械研磨方法でマイクロスクラッチのない無攪乱・無欠陥の加工基板を提供する。
【解決手段】インゴットをスライスして薄い基板となし、ついで、研削砥石を用いて基板表裏面を研削した後、研削基板wをpHが12以上のアルカリ洗浄液液中に浸漬し、この洗浄液に超音波を照射することにより研削基板の溝や研削条痕に挟まれている加工屑や残滓を除去した後、該研削基板w表面に、該基板のモ−ス硬度と同等または柔らかいモ−ス硬度を有する固型砥粒を結合材で結合してなる研磨加工具1を押し付け、研磨加工具1および研削基板wを相対運動させて研削基板表面を平坦化することを特徴とする乾式研磨方法。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体シリコン基板、シリコンベアウエハ、窒化珪素基板、GaAs基板、LiTaO基板、AlTiC基板等の基板表面を乾式(遊離砥粒である研磨剤スラリ−を用いない)で研磨する化学機械研磨方法およびそれに用いる乾式化学機械研磨装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
インゴットをスライスして得られたシリコン基板やGaAs基板等の基板(ウエハ)の両面を研削加工し、必要によりラップ加工し、この加工面に研磨剤スラリ−を供給しつつ、研磨パッドを基板の研削加工面に押圧し、基板と研磨パッドの両者または一方を回転させて摺動することにより基板表面を鏡面に研磨加工することは行なわれている。また、半導体基板の裏面シリコン板を研削、研磨して鏡面化、または薄膜化することも行なわれている。
【0003】
これら基板表面ないし裏面を研磨する湿式研磨方法は、大量の研磨剤スラリ−を用いるので、砥粒を砥石やパッドに固定した研磨加工具を用い、研磨剤スラリ−を用いることなく乾式で基板を研磨する方法が提案されている。
乾式化学機械研磨砥石(CMG)の研磨加工具部材は砥粒を結合材で結合したもので、かかる砥粒としては、シリカ、酸化セリウム、アルミナ、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化マンガン等が、結合材としては、フェノ−ル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が提案されている。
【0004】
具体的には、シリカ、酸化セリウム、アルミナ等の粒径1〜100nmの超微細砥粒を1000個以上凝集させた粒径1〜20μmの凝集砥粒を液状樹脂で結合させた樹脂に対する凝集砥粒の体積比率が15〜70容量%の研磨加工具部材を、環状の硬質アルミニウム基台上に間隔を置いて多数、環状に並べて貼付したカップ型研磨加工具が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、研磨加工具として、羊毛を圧縮して嵩密度0.20cm以上、硬度30以上のフェルトとなし、これに固型砥粒を含有する液状樹脂を含侵し、乾燥させてフェルトのファイバ−に固型砥粒を仮固着したのち、硬化性エポキシ樹脂を含侵し、硬化させてファイバ−に固型砥粒を強固に固着させた平板状の固型砥粒含有パッドも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−198073号公報(第1〜2頁、図2、図4)
【特許文献2】
US2002/0173244A1公報(p1、p4、図2、図9)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
これら従来提案されたシリコン基板のモ−ス硬度より低いモ−ス硬度を有する固型砥粒を含有する乾式研磨加工具は、マクロ的には目視する限りにおいてはシリコン基板の条痕跡を消滅させ、鏡面を呈しているシリコン基板を提供すると報告されている。
しかし、セミコン ジャパン2001、セミコン ジャパン2002などの展示会で展示された加工シリコン基板に輝度の高いLED項線を照射して観察すると、マイクロスクラッチが見受けられ、無攪乱・無欠陥の鏡面光沢を有する加工シリコン基板は得られていないことが判明した。
【0008】
本発明者等は、シリコンインゴットをスライスし、この両面を研削加工し、さらに一方の面を精研削加工した旋条痕を有する市販のシリコン基板、各社から裏面研削を依頼された半導体基板を各社から取り寄せて乾式研磨加工したところ、同一の化学機械研磨砥石(CMG)を用いたにも係わらず、加工シリコン基板の鏡面に発生したマイクロスクラッチの数が異なったり、長いスクラッチ傷が発生することを見出した。
【0009】
マイクロスクラッチが発生した基板の研磨状態を顕微鏡で観察、および乾式研磨される前の同種類の基板表面を顕微鏡で観察したところ、乾式研磨される前の基板の研削旋条痕内に挟まれている加工屑や残滓が乾式研磨により鏡面化された加工基板の表面にマイクロスクラッチを発生させる原因となることを見出した。
【0010】
本発明の目的は、基板の種類、加工履歴に限定されず、基板、例えばシリコン基板、GaAs基板、LiTaO基板、デバイスウエハなどを乾式で化学機械研磨加工して、LED光線を照射して観察してもマイクロスクラッチ傷の無い無攪乱・無欠陥の鏡面光沢を有する加工基板を製造する方法を提供するものである。本発明の別の目的は、かかる無攪乱・無欠陥の鏡面光沢を有する加工基板を製造する装置の提供にある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、インゴットをスライスして得られた基板を砥石で研削して得られた研削基板を、pHが12以上のアルカリ洗浄液に浸漬し、次いで超音波を照射してアルカリ洗浄・超音波洗浄することにより研削基板の溝や研削条痕に挟まれている加工屑や残滓を除去した後、該基板表面に、該基板のモ−ス硬度と同等または柔らかいモ−ス硬度を有する固型砥粒を結合材で結合してなる研磨加工具を押し付け、研削基板および研磨加工具を相対運動させて基板表面を平坦化することを特徴とする乾式化学機械研磨方法を提供するものである。
【0012】
アルカリ洗浄と超音波洗浄を併用することにより、研削基板からの加工屑や残滓の除去に要する洗浄時間を短縮できる。乾式化学機械研磨する前に基板の旋条痕の溝に挟まっていた加工屑や残滓を除去することにより、鏡面加工された基板表面にマイクロスクラッチが発生することがなく、無攪乱・無欠陥の鏡面を有する加工基板を乾式化学機械研磨方法で製造可能である。
【0013】
請求項2の発明は、前記乾式化学機械研磨方法において、研磨加工具は、固型砥粒を平均重合度50〜400、平均粒径5〜150μmの結晶セルロ−スよりなる結合材を含有する混合物を型内に充填し、常温で加圧成形して化学機械研磨加工具部材に賦型したものであることを特徴とする。
【0014】
結合材の結晶セルロ−スは、耐熱性が800℃以上あり、耐熱性が約400℃の樹脂結合材と較べると砥石の耐熱性が優れる。また、結晶セルロ−スに残されていた繊維の絡みにより研磨加工具部材に気孔が形成され、エア−ポケットを有するので研磨時に脱落した砥粒や研磨屑の避難場所となり、マイクロスクラッチは発生しない。
【0015】
請求項3の発明は、pHが12以上のアルカリ洗浄液を収納する貯槽内に超音波照射手段を具備させた超音波洗浄機構、第1ダブルア−ム搬送ロボット、基板ホルダ−、基板ホルダ−の回転機構、基板ホルダ−の上方に設けられた研磨される基板のモ−ス硬度と同等または柔らかいモ−ス硬度を有する固型砥粒を結合材で結合してなる研磨加工具を備える研磨ヘッド、該研磨ヘッドの昇降機構並びに回転機構、第2ダブルア−ム搬送ロボット、ならびに、基板洗浄スピナを具備する、乾式化学機械研磨装置を提供するものである。
【0016】
研磨剤スラリ−を用いることなく、乾式で基板を化学機械研磨加工できる装置である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明する。
図1は、化学機械研磨加工具部材を底部に備えた研磨加工具の斜視図、図2は乾式化学機械研磨装置の断面図、および図3は乾式化学機械研磨装置の部分平面図である。
【0018】
図1において、1は研磨加工具、2は化学機械研磨加工具部材、3は硬質基台で、その底部に化学機械研磨加工具部材2を複数環状に固着している。
化学機械研磨加工具部材2は、固型砥粒および結合材を必須成分とし、必要により融点もしくは分解温度が60〜400℃の研磨促進剤を配合した混合物を、型内に充填し、次いで、硬化または常温で圧縮成形(打錠剤成型)して得られる。また、固型砥粒を分散したポリウレタンパッド、固型砥粒を硬化性液状樹脂で固定した研磨加工具、前記固型砥粒をフェルトのファイバ−に固着した研磨パッドも研磨加工具として使用できる。
【0019】
固型砥粒は、研磨される基板のモ−ス硬度と同等、またはそれより低いモ−ス硬度を有する砥粒が使用される。具体的には酸化珪素、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、酸化セリウム、アルミナ、酸化マンガン等の金属酸化物、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ニッケル、炭酸マンガン等の金属炭酸塩、ゼオライト等の固型砥粒が単独で、または2種以上混合して使用される。特にIIa金属の炭酸塩が最適である。
シリコン基板(モ−ス硬度は約6)研磨に対する好ましい砥粒は、炭酸カルシウム(モ−ス硬度は約3)、酸化セリウム、炭酸マグネシウム、ゼオライト、炭酸バリウム、炭酸ニッケル、炭酸マンガン、酸化錫、アナタ−ゼ型酸化チタン、酸化珪素、酸化亜鉛、アルミナである。炭酸カルシウムは重質炭酸カルシウム、例えば白石工業株式会社のWhiton P−10(商品名)であっても軽質炭酸カルシウム、例えば白石工業株式会社の白艶華U(商品名)、Brilliant 1500(商品名)であってもよい。
【0020】
砥粒の粒径は、0.2nm〜10μmが好ましく、二次凝集していてもよい。砥粒のモ−ス硬度が基板のモ−ス硬度と同一、またはそれより低いので基板にスクラッチ傷を付けないので巨大凝集粒子が存在していてもよい。
【0021】
砥粒のモ−ス硬度が基板のモ−ス硬度と同等、またはそれより硬度が低いにもかかわらず、基板の研磨が進行するのは、メカニカルな研磨のみでなく、ケミカルな研磨も行われているものと推測される。
【0022】
必要に応じて添加される研磨促進剤は、20〜30℃の雰囲気で固体を呈し、融点(または熱分解温度)が60〜400℃、好ましくは150〜300℃である塩素基またはブロム基を有する化合物、Ia金属と炭酸基または重炭酸基を有する化合物、アンモニウム基と炭酸基または重炭酸基を有する化合物、塩素酸ソ−ダ、次亜塩素酸ソ−ダ、塩素酸カリ、次亜塩素酸カリ、過硫酸アンモニウムより選ばれた化合物が使用される。
【0023】
塩素基またはブロム基を有する化合物としては、例えば、塩化アンモニウム(融点184℃)、二塩化ヨ−素アンモニウム(融点162℃)、二塩化ヨ−素セシウム(融点229℃)、塩化タングステン(融点275℃)、塩化錫(融点246℃)等の無機塩素化塩、、塩素化イソシアヌル酸、塩素化イソシアヌル酸塩などのハロゲン基含有化合物が挙げられる。
【0024】
研磨促進剤として特に好ましいものは、安価な塩化アンモニウム(塩安)、塩素化イソシアヌル酸およびその塩(Na,K,Mg,Ca)、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ソ−ダ、炭酸水素ナトリウム、塩素酸ソ−ダ、次亜塩素酸ソ−ダ、塩素酸カリ、次亜塩素酸カリ、過硫酸アンモニウムである。塩素化イソシアヌル酸としてはトリクロロイソシアヌル酸(有効塩素含量90.4%、熱分解温度225〜300℃)、ジクロロイソシアヌル酸(有効塩素含量63.5%、熱分解温度240〜250℃)が挙げられる。
【0025】
結合材としては、従来乾式砥石の結合材として提案されているエポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、レゾ−ル樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の常温硬化性樹脂もしくは加熱硬化型樹脂、ポリビニ−ルアルコ−ル繊維あるいは光重合性アクリル樹脂でもよいが、研磨加工具部材の耐熱性、気孔率の調整の面から、平均重合度50〜400、平均粒径5〜150μmの結晶セルロ−ス(耐熱性800℃)が好ましい。
【0026】
結合材として例示した前記の微粉結晶セルロ−スとしては、パルプセルロ−スやコットンリンタ−の粉砕物、平均重合度が50〜400、平均粒径が30〜150μmの結晶セルロ−スが挙げられる。特に、非晶物を除いた結晶セルロ−スが硬度の高い研磨加工具部材を与えるので好ましい。
【0027】
結晶セルロ−スは、製紙パルプ、溶解パルプ、コットンリンタ−等のセルロ−ス質を鉱酸またはアルカリの作用で加水分解し、パルプの非結晶セルロ−ス領域を溶解除去、ついで洗浄して結晶部分のみを取得し、これを機械粉砕して微結晶のセルロ−ス集合物をほぐし、乾燥することにより製造される(米国特許第2,978,446号、特開平6−316535号)。
重合度は、セルロ−ス分子を構成する基本分子(C10)の数であり、結晶セルロ−スは加水分解により重合度の異なったセルロ−スの混合物であるので、平均重合度はこれら結晶セルロ−ス混合物の重合度の平均を示す。平均重合度は、INDUSTRIAL AND ENGINEERING CHEMISTRY Vol.42,No.3,頁502〜507(1950年)に記載された銅安溶液粘度法により測定する。
【0028】
このような結晶セルロ−スは、真比重が約1.55、見掛比重が約0.15〜0.3、平均粒径30〜150μmの白色の粉末で、繊維が粉砕された構造を示し、フィブリル状構造を残している。この結晶セルロ−ス1g当りの水飽和度(JIS−K5101に準拠)は2〜3ml/gである。
【0029】
市販の結晶セルロ−スとしては、旭化成株式会社から販売されている結晶セルロ−ス アビセル(登録商標) PH−101、FD−F20(商品名)、セオラス ST−01(商品名)、米国FMC社の結晶セルロ−ス アビセル(登録商標) FD−101、PH−102、PH−103、PH−F20(商品名)等が利用できる。また、結晶セルロ−ス表面がCMCや天然多糖類で被覆されている旭化成株式会社から販売されている結晶セルロ−ス アビセル(登録商標)RC−N30、RC−N81、RC−591、CL−611(商品名)等も利用できる。平均重合度が高いほど加工具部材の硬度はより高くなる。
【0030】
結合材の結晶セルロ−スを用い、基板のモ−ス硬度と同等、またはそれより低いモ−ス硬度を有する砥粒を含む混合物を化学機械研磨加工具を打錠法で成型するには、平均重合度50〜400、平均粒径5〜150μmの結晶セルロ−ス 5〜50重量%、基板のモ−ス硬度と同等、またはそれより低いモ−ス硬度を有する砥粒 88.5〜49.5重量%、および融点が60〜400℃の研磨促進剤 0〜10重量%を含有する混合物を型内に充填し、100〜3,000kgf/cm、好ましくは200〜1,000kgf/cmの圧力で該混合物を常温で加圧して化学機械研磨加工具部材に賦型する。
【0031】
例えば、型として気体は透過するが固体は透過しない型を用い、粒径0.5〜500μmの微粉セルロ−ス、砥粒、研磨促進剤およびその他の添加物を含む均一混合物を型内に充填し、加熱することなく混合物を加圧して微粉セルロ−ス間の気体を型外へ逸散させつつ混合物を圧縮して厚み5〜30mmの円盤状、楕円板状、方角板状または長尺板状に賦型する。
【0032】
微粉セルロ−ス間および微粉セルロ−スと砥粒間の強固な結合は、微粉セルロ−ス固有の繊維の絡みおよび微粉セルロ−スが含有する水分および大気中の湿気が寄与しているものと推測される。よって、予め、微粉セルロ−スの表面に水を霧吹き(微粉セルロ−スに対し、水量は10重量%以下)した後、砥粒、研磨促進剤等と混合し、型内に充填し、常温で圧縮成型してもよい。
【0033】
必要により、滑剤を混合物組成中、0.05〜1重量%となる割合で配合して微粉セルロ−スの圧縮時の滑りを向上させて成型時間を短縮させてもよい。滑剤としては、酸化モリブテン、硫化モリブテン、ステアリン酸マグウネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、メラミン、尿素、メラミン・イソシアヌレ−ト付加物等が挙げられる。
【0034】
型は、雌型(固定型)と昇降高さを調整できる雄型(移動型)よりなる圧縮金型が使用される(例えば、特開2001−9731号)。雌型と雄型から形成されるキャビティ内に充填ガンで、ジェットミルで混合された混合物を充填し、雄型を移動(型締め)させてキャビティ容積を減少させて空気を一部追い出しながら、圧力が100〜1,000kgf/cmとなったところで該圧力を維持した状態で10〜60分間放置して賦型をなし、ついで雄型を移動(型開き)させて成型された加工具を取り出す。
型は、薬錠剤の打錠成型に用いる雌型(移動型)と雄型(移動型)よりなる圧縮金型を使用してもよい。
【0035】
賦型された化学機械研磨加工具部材2は、厚み5〜30mm、好ましくは5〜10mmの円盤状、楕円板状、方角板状または長尺板状である。円盤状物であるときの直径は、5〜30mmが好ましい。
【0036】
この化学機械研磨加工具部材2の複数を、3〜25mmの間隔を置いて硬質基台3に接着剤あるいは粘着剤を用いて貼付して基板用化学機械研磨加工具1を作成する。
硬質基台3としては、アルミニウム剛板、ステンレス板、セラミック板、低熱膨張ガラス板等の剛性の高い板が使用できる。硬質基台の形状は円盤状、楕円板状、角方板状、長尺状板などが挙げられる。
【0037】
乾式化学機械研磨装置10は、図2、図3に示すように、研磨装置の上側を構成する研磨手段10aと、下側に設けられた基板wを保持するホルダ−機構10b、pH12以上、好ましくは、12.5〜13.5のアルカリ洗浄液を収納する貯槽30内に超音波照射手段を備えた超音波洗浄機構10c、化学機械研磨加工具1と基板表面が接触する加工点に冷却流体を供給するノズル10d、第1ダブルア−ム搬送ロボット10e、第2ダブルア−ム搬送ロボット10f、および基板洗浄スピナ10g、収納カセット10h、基板乾燥スピナ10iを備える。
【0038】
アルカリ洗浄液は、苛性カリ、苛性ソ−ダ、アンモニア水、エタノ−ルアミン等のアルカリ物質を純水、超純水、脱イオン水で希釈したものが使用される。
【0039】
研磨手段10aは、化学機械研磨加工具1を備える研磨ヘッド6を備え、この研磨ヘッドは研磨装置10の上側のスピンドル4に水平方向に回転自在に軸承される。このヘッド6は、基台7上に立設した支持枠8の上部に設けたレ−ル9上を滑走するスライド部材を下面に有する函体に固定され、紙面に向かって前後方向に移動可能となっている。また、ヘッド6は、シリンダ22により昇降自在となっており、化学機械研磨加工具1が基板wを定寸切り込み研削することを可能としている。スピンドル4は、モ−タ5の回転力をモ−タ軸5aに固定された滑車5b、プ−リ−5c、スピンドル4に固定された滑車5dを介して伝達する。
【0040】
研削基板wを保持するホルダ−機構10bは、モ−タ13により回転駆動されるスピンドル14に軸承された吸着板12上に基板wをバキュ−ム吸着させる。吸着板12は樹脂板に孔12aを多数穿孔したものであってもよいし、ポ−ラスセラミック板であってもよい。吸着板12下面にはチャンバ−15が設けられ、三方切替弁16の切り替えで流体、例えば空気、窒素ガスが自由に出入りする。チャンバ−15を減圧することにより研削基板wは吸着板12に固定される。チャンバ−15に加圧流体を供給することにより研削基板wは吸着板より押し上げられる。
吸着板12を冷却するためにポンプ17を用いて冷却水を吸着板12側壁の周りに供給する。
モ−タ13の駆動力は、クラッチ18を介してスピンドル14に伝達される。純水、空気等の用役の供給管19,19’はロ−タリ−バルブ20,21でスピンドル14内の管に結合される。
【0041】
この吸着板12は、インデックステ−ブル40の回転軸を中心に等間隔に3基設けられ、インデックステ−ブル40を回転軸中心に時計逆廻り方向に120度、120度、−240度回転させることにより元の位置に戻る。これら3基の吸着板は、インデックステ−ブル40上でロ−ディングゾ−ン、研磨ゾ−ン、アンロ−ディングゾ−ンに区分される。
【0042】
超音波洗浄機構10cは、貯槽30内に昇降可能なカセット31を備え、貯槽の底部に超音波発生器32が備えられている。貯槽30内には、アルカリ洗浄液が収納される。
基板25枚を収納したカセット31を下降させてアルカリ洗浄液に研削基板を浸漬させ、異なった周波数の超音波を交互に照射してアルカリ洗浄液および研削基板を振動させ、加工屑や残滓を研削基板表面から除去する。
【0043】
比較的低い周波数(15〜50キロヘルツ)の振動は高いエネルギ−を有するので、粒径の大きい屑、残滓の除去に、比較的高い周波数(51〜150キロヘルツ)の振動は低いエネルギ−を有するので、粒径の小さい屑、残滓の除去に有効である。よって、少なくとも2つの異なった周波数の超音波を同時または交互に照射する。
【0044】
好ましい態様は、超音波の周波数として、15〜25キロヘルツの超音波、30〜60キロヘルツの超音波、および80〜120キロヘルツの超音波の3つの域の超音波を交互に0.1〜2分づつ、0.5〜2キロワットの強度で照射時間が全体で3〜15分間となるよう照射する。超音波の用いる周波数、照射時間は、研削基板表面に挟まれている加工屑、残滓に依存するので、研削基板の径や種類が変る度ごとに適宜、実験で確認する。
【0045】
貯槽30内のアルカリ洗浄液にノニオン系界面活性剤を0.3〜2重量%含有させることは、超音波照射による屑、残滓の除去を促進させる上で有効である。ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエ−テル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエ−テル、プルオニック系非イオン性界面活性剤(エチレンオキシドとプロピレンオキシドの付加反応物)、脂肪酸ポリオキシエチレンエステル、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタンエステル、ポリオキシエチレンひまし油、脂肪酸蔗糖エステル、ポリオキシエチレン・オキシプロピレンアルキルエ−テル等が挙げられる。
具体的には、ジラウリン酸ポリエチレングリコ−ルエステル、トリデシルポリオキシエチレンエ−テル、ノニルフェニルポリオキシエチレンエ−テル、モノステアリン酸ポリエチレングリコ−ル、等が挙げられる。好ましくは、HLBが10以上の化合物が好ましい。
【0046】
研削基板がアルカリ洗浄・超音波洗浄された後、カセット31を貯槽30より上昇させ、第1ダブルア−ム搬送ロボット10eの一方のア−ムにより洗浄された研削基板を乾燥スピナ10iの回転板上に移送し、スピン乾燥させたのち、乾燥した基板を第1ダブルア−ム搬送ロボット10eの他方のア−ムによりホルダ−機構10bのロ−ディングゾ−ン位置にある吸着板12上に移送する。
【0047】
前記洗浄・乾燥をされた研削基板は、第1ダブルア−ム式搬送ロボッド10eの他方のア−ムによりロ−ディングゾ−ン位置にある吸着板12に載置された後、インデックステ−ブル40を時計逆廻り方向に120度回転させることにより研磨ゾ−ンに移動される。そこで、スピンドル14を回転することにより基板は回転される。一方、スピンドル4を回転させることにより砥石1を回転させつつスピンドル4を下降させ、基板wに切り込みをかけながら基板と化学機械研磨加工具とを摺擦させる乾式化学機械研磨を行う。
【0048】
スピンドル14の回転数は10〜400rpm、スピンドル4の回転数は100〜3000rpm、砥石1の基板wへの押圧は50〜300gf/cmが適している。基板の研磨時、基板と化学機械研磨加工具1との摩擦熱による基板の過加熱を防止するため、加工点に流体供給ノズル10dより50〜150℃の冷却空気を吹き付けるとよい。
乾式化学機械研磨を行った後、スピンドル4を上昇させて化学機械研磨加工具1を基板より遠ざけるとともに、スピンドル4およびスピンドル14の回転を止める。
【0049】
乾式化学機械研磨された基板は、第2ダブルア−ム搬送ロボット10fの一方のア−ムによりよりスピナ10gの回転板41上に移送され、回転板の回転により回転されつつ上方より洗浄水をノズル42から吹きつけられ、スピン洗浄される。ついで、洗浄水の供給が止められ、ノズルより空気が基板面に吹き付けるとともに回転板が回転されて基板はスピン乾燥される。スピン乾燥された加工基板は、第2ダブルア−ム搬送ロボット10fの他方のア−ムにより把持され、収納カセット10hの棚内に搬送される。
【0050】
このように洗浄、乾燥、乾式化学機械研磨および水洗された加工基板は、LED光線を照射して目視で観察してもマイクロスクラッチが全くない無攪乱・無欠陥の鏡面光沢を有する基板である。
【0051】
【実施例】
実施例1
旭化成株式会社製結晶セルロ−ス粉末 アビセル FD−101(平均重合度175、平均粒径30μm、真比重1.55、見掛比重0.3) 10重量部、ジクロロイソシアヌル酸Na 10重量部、および白石工業株式会社の炭酸カルシウム粒子 白艶華U 80重量部を10分かけて混合し、この混合物を相対湿度55%、温度30℃の部屋に30分間放置した。
【0052】
ついで、この混合物を気体は透過するが固体は透過しない株式会社菊水機械の手動型単発打錠機のキャビティ(温度30℃)内に充填し、雄型をゆっくりと移動させて圧力を叙々に高めてキャビティ内の空気を型外へ逃がした。型締圧力が600kgf/cmとなった時点で雄型の移動を停止し、該圧力下に20分間保ち、賦型を終了した。
雄型を移動することにより型開きし、気孔を有する厚み10mm、直径10mmの円柱状成型体(研磨加工具部材)を複数得た。
【0053】
これら円柱状成型体複数を厚み5mmアルミニウム製環状リング表面に5mmの等間隔で並べてエポキシ樹脂接着剤で貼付し、アルミニウム製環状リングを円盤状支持板に固定し、カップ型研磨砥石1(研磨加工具)を作成した。
【0054】
300mm径、厚み約600μmの両面が研削加工されたベアシリコンウエハ(Ra 128オングストロ−ム)25枚を収納するカセットを超音波洗浄機構の貯槽内に貯蔵されたジラウリン酸ポリエチレングリコ−ルエステル1重量%含有させたpH12.5の苛性カリ水溶液内に浸漬し、周波数20キロヘルツの超音波、50キロヘルツの超音波、および100キロヘルツの超音波を交互に0.5分づつ、1.0キロワットの強度で照射時間が全体で12分間となるよう照射して超音波洗浄を行った。
【0055】
ついで、カセットを水槽より上昇させ、第1ダブルア−ム搬送ロボット10eの一方のア−ムにより洗浄された基板をスピナ10gの回転板上に移送し、スピン乾燥させたのち、乾燥した基板を第1ダブルア−ム搬送ロボット10eの他方のア−ムによりホルダ−機構10bのロ−ディングゾ−ン位置にある吸着板12上に移送し、チャック機構を減圧吸引して基板を固定した。
【0056】
インデックステ−ブル40を時計逆廻り方向に120度回転して基板を研磨ゾ−ンに移動し、研磨装置の前記カップ型研磨砥石を軸承したスピンドルを500rpmで回転させながら1.70μmの定寸切り込みの下降をさせ、300gf/cmの圧で押し当てながら、前記チャック機構の回転数を100rpmで回転(回転方向は逆方向)させつつ、前後方向に20mm幅揺動させる摺動を180秒行ってベアシリコンウエハ表面を研磨した後、カップ型研磨砥石1を軸承するスピンドル4を上昇させた。
この乾式化学機械研磨中に、加工点に80℃の空気をノズル10dより吹き続けた。
【0057】
チャック機構のスピンドル14の回転を停止し、チャック機構のチャンバ−の減圧を停止した後、チャンバ−に圧空を供給し、研磨加工したシリコンウエハの取り外しを容易とした。
【0058】
第2ダブルア−ム搬送ロボット10fの一方のア−ムで基板を把持し、スピナ10g上に移送させ、純水で洗浄、ついでスピン乾燥した。ついで、第2ダブルア−ム搬送ロボット10fの他方のア−ムでスピナ上の基板を把持し、収納カセット10hの棚内へと移送させた。
【0059】
得られた研磨加工シリコンウエハ表面は、ベアウエハの渦巻状研削跡が消滅し、鏡面光沢を呈する表面粗さRaが13.0オングストロ−ムのものであった。また、LED光線を照射して目視で観察したところ、マイクロスクラッチ傷、大スクラッチ傷とも見受けられない、無攪乱・無欠陥のものであった。
【0060】
実施例2〜4
混合物の組成を表1に変更する(実施例2の砥粒は、白石工業株式会社のWhiton P−10、実施例3はBriliant−1500、実施例4はニッキ株式会社のHK−1)ほかは実施例1と同様にしてカップ型研磨砥石を成形し、シリコンベアウエハを研磨した。
得られた研磨加工シリコンウエハ表面は、ベアウエハの渦巻状研削跡が消滅し、LED光線を照射して目視で観察してもマイクロスクラッチ傷、大スクラッチ傷とも見受けられない無攪乱・無欠陥の鏡面を呈していた。得られた研磨加工シリコンウエハ表面平均粗さ(Ra)を同表に示す。
【0061】
【表1】
Figure 2004235201
【0062】
参考例
300mm径、厚み約550μmのベアシリコンウエハを株式会社 岡本工作機械製作所の研磨装置SPP801ATの基板キャリアに減圧吸引して固定し、ロデ−ルの研磨布”SUBA#800(商品名)を表面に貼った研磨プラテンに300gf/cmの圧で押し当てながら、かつ、研磨布表面にデュポン株式会社のシリコン研磨剤スラリ− MAZIN(登録商標)SRS3(商品名)を200cc/分の量供給しつつ、前記キャリアの回転数を60rpm、研磨プラテンの回転数を60rpmで回転(回転方向は逆方向)させ、300秒摺動させることによりシリコンウエハ表面を研磨した。
研磨速度は0.74μm/分であり、得られた研磨加工シリコンウエハ表面にはマイクロスクラッチ傷、大スクラッチ傷とも見受けられない、無攪乱・無欠陥の鏡面を呈していた。表面粗さRaは、39.2オングストロ−ムであった。
【0063】
比較例1
実施例1において、基板のアルカリ洗浄・超音波洗浄を行わない他は同様にして乾式化学機械研磨加工を行ったところ、得られた研磨加工シリコンウエハ表面には大スクラッチ傷とも見受けられなかったが、4箇所にマイクロスクラッチ傷が見受けられた。表面粗さRaは、13.8オングストロ−ムであった。
【0064】
【発明の効果】
本発明の研削基板を乾式化学機械研磨加工する方法は、研削基板表面の研削旋条痕の溝に挟まっている肉眼では見えない程度の研削屑や残滓を予めアルカリ洗浄と超音波洗浄を併用して行って取り除いた後、該研削基板を乾式化学機械研磨加工するので、得られた乾式研磨基板は、マイクロスクラッチ傷のない、無攪乱・無欠陥の鏡面光沢を有する加工基板である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の研磨加工具の斜視図である。
【図2】研磨装置の正面図である。
【図3】研磨装置の部分平面図である。
【符号の説明】
1 研磨加工具(カップ型砥石)
w 基板
2 化学機械研磨加工具部材
3 硬質基台
10a 研磨手段
10b 基板保持機構
10c 超音波洗浄機構

Claims (3)

  1. インゴットをスライスして得られた基板を砥石で研削して得られた研削基板を、pHが12以上のアルカリ洗浄液に浸漬し、次いで超音波を照射してアルカリ洗浄・超音波洗浄することにより研削基板の溝や研削条痕に挟まれている加工屑や残滓を除去した後、該基板表面に、該基板のモ−ス硬度と同等または柔らかいモ−ス硬度を有する固型砥粒を結合材で結合してなる研磨加工具を押し付け、研削基板および研磨加工具を相対運動させて基板表面を平坦化することを特徴とする乾式化学機械研磨方法。
  2. 研磨加工具は、固型砥粒を平均重合度50〜400、平均粒径5〜150μmの結晶セルロ−スよりなる結合材を含有する混合物を型内に充填し、常温で加圧成形して化学機械研磨加工具部材に賦型したものであることを特徴とする請求項1に記載の基板の乾式化学機械研磨方法。
  3. pHが12以上のアルカリ洗浄液を収納する貯槽内に超音波照射手段を具備させた超音波洗浄機構、第1ダブルア−ム搬送ロボット、基板ホルダ−、基板ホルダ−の回転機構、基板ホルダ−の上方に設けられた研磨される基板のモ−ス硬度と同等または柔らかいモ−ス硬度を有する固型砥粒を結合材で結合してなる研磨加工具を備える研磨ヘッド、該研磨ヘッドの昇降機構並びに回転機構、第2ダブルア−ム搬送ロボット、ならびに、基板洗浄スピナを具備する、乾式化学機械研磨装置。
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