JP2004233245A - 沈下測定方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の沈下測定方法は、レーザー光を沈下測定対象面に斜めに照射して、前記沈下測定対象面による反射光を測定することによってレーザー光が照射される測定ポイントまでの斜め距離と鉛直角をレーザー測距手段を用いて複数回測距し、複数回の測定による斜め距離と鉛直角とに基づいて前記沈下測定対象面の沈下の有無を測定する沈下測定方法において、複数回の測定毎に、前記レーザー測距手段を、沈下測定対象面外の非沈降領域に設定された前回の測定時と同一位置もしくはその近傍に配置し、レーザー光の照射方向を、前回の測定時と同じ方向に設定し、前記測定ポイントまでの斜め距離もしくは水平距離が前回の測定時と同一もしくはほぼ同じ距離である場合には、前記測定ポイントの沈下が無いと判定するか、もしくは微小であると判定する。
【選択図】 図3
Description
【産業上の利用分野】
本発明は、路面の沈下や地盤沈下等を非接触で計測する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
既に供用されている道路、鉄道等の公共交通構造物の真下を掘削して、立体交差等の新たな構造物を構築する工事において、工事中及び供用後の既存構造物の過度の不等沈下は、通過車両の安全確保に大きな影響を及ぼし、人命に関わる災害発生の原因にもなりかねないため、沈下管理及びその対応は最優先で行われなければならない。
従来、この種の管理は、既存通過交通機関に及ぼす影響を考慮して、夜間等の交通量の少ない時間帯に、一時的に交通を遮断して人海戦術で行われたり、道路では路肩、中央分離帯等の通過交通に直接影響を及ぼさない箇所に、反射プリズム等の視準点を設置して、定期的に計測を行う等で対応してきた。
【0003】
しかし、これらの方法は、計測頻度や計測箇所が限定されるという問題点を抱えており、通過交通に左右されない沈下測定方法の確立が求められていた。
【0004】
そこで、出願人は、車両が走行している道路面や軌道敷の任意の場所を、車両を走行させながら連続的に計測し、表面沈下の有無を迅速且つ正確に測定することを目的として、特願平11−248945号の発明を提案した。(特許文献1参照)
【0005】
【特許文献1】
特開平11−248945号公報
【0006】
この技術は、路面等の沈下測定方法において、レーザー光を沈下測定対象面に所定の角度で斜めに照射して、前記沈下測定対象面による反射光を測定することによってレーザー光が照射される部位までの距離の変化をレーザー測距手段を用いて測距し、このレーザー測距手段で検出した距離の変化に基づいて前記沈下測定対象面の沈下量を演算するようにしたものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、レーザー光の反射効率を高くするために、レーザー光の入射角は大きく設定されていた。
しかし、大きな入射角を確保するためには、レーザー光の照射位置が測定対象面の測定ポイントに近い場合には、低い高さから照射することも可能であるが、測定対象面が道路である場合には、通行の邪魔にならないように遠い距離からレーザー光を照射しなければならない。そのような場合には、レーザー光の照射位置は高いタワーの上に設定する必要が発生するという問題がある。
また、測定対象面が水平に沈下した場合には、前記出願の発明によって沈下量の計測は容易であるが、測定対象面が非平行に沈下した場合には前記出願の発明によっては誤差が大きくなる。
【0008】
そこで、本発明においては、レーザー測距手段の位置を、高いタワー上に設定することなく、非平行に沈下した場合でも測定対象面の沈下量を正確に計測する技術を提案するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる請求項1の沈下測定方法は、
レーザー光を沈下測定対象面に斜めに照射して、前記沈下測定対象面による反射光を測定することによってレーザー光が照射される測定ポイントまでの斜め距離と鉛直角をレーザー測距手段を用いて複数回測距し、
複数回の測定による斜め距離と鉛直角とに基づいて前記沈下測定対象面の沈下の有無を測定する沈下測定方法において、
複数回の測定毎に、
前記レーザー測距手段を、沈下測定対象面外の非沈降領域に設定された前回の測定時と同一位置もしくはその近傍に配置し、
レーザー光の照射方向を、前回の測定時と同じ方向に設定し、
前記測定ポイントまでの斜め距離もしくは水平距離が前回の測定時と同一もしくはほぼ同じ距離である場合には、前記測定ポイントの沈下が無いと判定するか、もしくは微小であると判定することを特徴としている。
請求項2の発明は、
レーザー光を沈下測定対象面に斜めに照射して、前記沈下測定対象面による反射光を測定することによってレーザー光が照射される測定ポイントまでの斜め距離と鉛直角をレーザー測距手段を用いて複数回測距し、
複数回の測定による斜め距離と鉛直角とに基づいて前記沈下測定対象面の沈下量を測定する沈下測定方法において、
複数回の測定毎に、
前記レーザー測距手段を、沈下測定対象面外の非沈降領域に設定された前回の測定時と同一位置もしくはその近傍に配置し、
レーザー光の照射方向を、前回の測定時に前記測定ポイントを視準した状態と同一もしくはほぼ同一の水平角に設定し、鉛直角は変化させ、
前記測定ポイントまでの斜め距離もしくは水平距離が前回の測定時と同一もしくはほぼ同じ距離になる状態での斜め距離と鉛直角を求め、
複数回の測定毎の斜め距離と鉛直角に基づいて、前記測定ポイントの沈下量を測定することを特徴としている。
【0010】
そして、請求項3の発明は、沈下測定対象面に斜めに照射するレーザー光の入射角は45°以下としたことを特徴とするものである。
【0011】
そして、請求項4の発明は、前記測定ポイントは、沈下測定対象面に複数個所に設定したことを特徴とするものである。
【0012】
そして、請求項5の発明は、同一のレーザー測距手段を用いて複数の測定ポイントの沈下量を計測することを特徴とするものである。
【0013】
【作用】
以上のように、前回の測定時と同一位置もしくはその近傍から、前回と同一方向に向けてレーザー光を照射すると、測定ポイントの沈下が無い場合には、前回の測定時に視準した測定ポイントと同一場所もしくはその近傍に照射されるので、得られる反射光も前回の測定時とほぼ同一のものが得られる。
しかし、測定ポイントが沈下した場合には、前回の測定時に視準した測定ポイントと異なる場所に照射されるので、斜め距離も水平距離も前回の測定時とは異なる値となる。
そこで、鉛直角を変化させて、前回の測定時の斜め距離もしくは水平距離と同じもしくはほぼ同じ距離になる状態を見つけると、その状態では前回の測定時に視準した測定ポイントと同一場所もしくはその近傍を視準していることになる。特に測定ポイント近傍が水平でない場合や、非平行に沈下した場合でも、前回の測定時に視準した測定ポイントと同一場所もしくはその近傍を視準することができるのである。
従って、前回の測定時と同一もしくはその近傍を視準した状態における斜め距離もしくは水平距離、及び鉛直角に基づいて、三角比等の演算処理を行うことにより、測定ポイントの沈下量を測定できるのである。
このように、前回の測定時と同一位置もしくはその近傍から、前回と同一方向に向けてレーザー光を照射するので、固定的に設置されたレーザー測距手段を用いる場合だけでなく、可搬式のレーザー測距手段を測定の都度設置する場合でも、精確な測定ができるのである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明にかかる沈下測定方法に用いる装置の実施の形態を、図1に基づいて詳細に説明する。
【0015】
既設の道路の地下にトンネルを掘削する場合に、その掘削による道路の路面沈下の影響を監視する場合を例にとって説明する。
図1において、Rは既設の道路であり、Tはその地下に掘削されるトンネルである。そして、トンネルTと交差する部分の路面が沈下する可能性があるので、トンネルと交差する範囲の沈下を、本発明によって監視するものとする。
【0016】
図1において、1はレーザー測距手段としての測量機であり、水平角度方向と鉛直角度方向を指定することによって、指定された方向にレーザー光線を照射して、その反射光を測定し、反射点までの距離を測定して距離信号を出力する測距機能を備えている。
また、この測量機1は、モータドライブ機構と、このモータドライブ機構を用いて、レーザー光の照射角度を後述する計測コンピュータ3から指定された水平角・鉛直角に設定する角度設定機能と、現在の照射角度を電気信号として出力する角度信号出力機能と、通信回線を介して別途設置された計測コンピュータ3との通信を行う通信機能とを備えている。
この通信機能は、必要に応じて有線通信や無線通信等で伝送する機能をも含んだものである。
【0017】
図2に示したように、レーザー測距手段1を用いて測定対象面の特定の測定ポイントAの沈下量を計測する場合を例にとって、基本的な計測方法を説明する。
まず、第1回目の測定として、レーザー測距手段1を特定の位置Pに設置し、測定ポイントAをレーザー測距手段1にて視準して、測定ポイントAまでの斜め距離Laと水平角と鉛直角θとを得る。これらの計測値に基づいて、レーザー測距手段1と測定ポイント間の水平距離Lと、レーザー測距手段1の照射点の高さHとを算出することができる。なお、このとき、信頼性を高くするために同一の測定ポイントに対して複数回の測定を行うことが好ましい。
L=La×cosθ、H=La×sinθ
【0018】
このようにして、第1回目の測定条件である、特定の位置とレーザー測距手段1の高さを記録し、計測値である斜め距離La、水平角、鉛直角θを前記計測コンピュータ3等に記憶させる。
なお、前記レーザー測距手段1を設置する位置は測定対象面以外の領域であって、沈降しない領域に設定するものとする。
【0019】
次に、次回の測定においては、前回の測定条件と同じ位置にレーザー測距手段1を設置し、その高さも前回と同じ高さに調節する。
そして、前回の計測値である斜め距離La、水平角、鉛直角θを前記計測コンピュータ3等から呼び出し、まず、水平角と鉛直角θとをレーザー測距手段1に設定して、設定された方向へレーザー光を照射する。
【0020】
測定対象面が沈下して、測定ポイントAがGの位置に変化していた場合には、前記条件で計測される斜め距離は測定ポイントAの延長線と計測対象面との交点Cまでの斜め距離Lsとなる。
【0021】
次に、計測コンピュータ3等からの信号によって、前記鉛直角θを徐々に増やし、レーザー光の照射方向を徐々に下げるように制御する。
そして、視準しているポイントFまでの斜め距離がLcで、そのときの鉛直角がθ2の場合の水平距離L2は次のように算出できる。
L2=Lc×cosθ2
【0022】
そして、鉛直角を徐々に変化させながら前記水平距離L2を算出し、前記水平距離Lとの差(L2−L)が0に近い所定の範囲内(微小値)に収まった状態を、測定ポイントAの真下のポイントGの近傍を視準している状態と見なす。
なお、鉛直角を徐々に変化させながら斜め距離Lcを計測し、1回目の斜め距離Laとの差が所定の範囲内(微小値)に収まった状態を、測定ポイントAの真下のポイントGの近傍を視準している状態と見なしてもよい。
【0023】
このときの鉛直角θ2と斜め距離Lc、そして、前回の測定値である鉛直角θと斜め距離Laとに基づいて、沈下量ΔHは次のように算出できる。
ΔH=Lc×sinθ2−La×sinθ
なお、このときも、信頼性を高くするために同一の測定ポイントに対して複数回の測定を行うことが好ましい。
【0024】
このようにして、前回と同じ位置と同じ高さからレーザー光を、同じ水平角で照射し、鉛直角を徐々に変化させながら、前回の水平距離もしくは斜め距離との差が微小になった状態における鉛直角に基づいて、測定ポイントAの沈降量(鉛直方向)を得ることができるのである。
なお、このような計測の手順は計測コンピュータ3等に予めプログラミングしておくことによって、迅速且つ手軽に実施することが可能になる。
【0025】
以上のように、入射角が小さい場合でも、前回の測定時における水平距離に近い地点を指定して測定するので、沈下量を正確に計測することができる。
また、測定ポイント近傍が水平でない場合でも、非平行に沈下した場合でも、正確に計測することができる。
【0026】
測定対象面に複数の測定ポイントを設定し、1台のレーザー測距手段で測定する場合には、1回目の測定時に、それぞれの測定ポイントを視準する方角とそのときの斜め距離とを各測定ポイント毎に記憶しておき、次回の測定時には、記憶しておいた前回の測定時の条件を読み出して、測定ポイント毎に沈下の有無、もしくは沈下量を測定するのである。
さらに広い範囲を測定する場合には、複数のレーザー測距手段に範囲を分割するとよい。
【0027】
複数の測定ポイントを計測する場合に、図3に示したように、1台のレーザー測距手段1を複数の設置位置、例えば設置位置Aと設置位置Bに順次移動させながら計測することもできる。このとき、各設置位置においては前回の水平位置と高さが同じ(3次元的に同じ位置)になるように設置する必要がある。
この場合、まず、1台のレーザー測距手段1を所定の設置位置Aに設置して、その前方の複数の測定ポイントを順次測定し、その後、同一の前記レーザー測距手段1を別の設置位置Bに移動させて設置して、その前方の複数の測定ポイントを順次測定する。
そして次回の測定時には、前回の測定に用いたものと同一のレーザー測距手段もしくは同一メーカーの同一機種を用意して、前回と同じ設置位置(例えばA)に設置して前回と同じ測定ポイントを順次測定すると安定した値が得られる。
その後、別の設置位置(例えばB)に設置して前回と同じ測定ポイントを順次測定する。
【0028】
このようにして、測定するときだけレーザー測距手段を設置することで、複数の測定ポイントの沈下量を測定できるので、交通や往来の邪魔にならず、レーザー測距手段も共用できるので経済的である。
なお、前回の測定時と同一の計測条件にできない場合でも、再度初期値設定を行い、以後は新しい計測条件(機械、位置の条件)を満足させることで計測が可能となる。
【0029】
以上のように、複数台のレーザー測距手段もしくは1台のレーザー測距手段によって、測定対象面に設定した複数の測定ポイントの沈下量を計測できるので、前記複数の測定ポイントを含む任意の鉛直面を断面とした沈下状況を把握することができる。
【0030】
なお、路面の沈下の進行と比較すると、車両の通行による瞬間的な路面の上下振動等は極めて短時間の変化であるので、計測値から短時間の変化を排除することによって、車両の通行による瞬間的な路面の上下振動等の影響を取り除いた、実際の路面の沈下量を抽出して計測することができるのである。
このように、路面の沈下量には、通過車両による弾性沈下もあるので、毎回の計測値の変化が、路面の沈下によるものか、それ以外の外乱によるものかを判定する必要がある。
【0031】
上記構成の沈下測定装置によれば、車両の通行量の多い道路であっても、通行を禁止したり制限したりすることなく、有人もしくは無人で連続的に計測できるので、車両の通行等の影響を取り除いた路面の沈下を継続して観測することができ、事故の予防や、補修時期の予測が可能となり、計画的で且つ安全な道路管理が可能となるのである。
【0032】
また、路面だけでなく、地盤の沈下や建物の沈下等を非接触で離れた位置から連続的に正確に計測することが可能となるのである。
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば、プリズムを用いることなく、レーザー測距手段で広い範囲の沈下測定ができるとともに、小さい入射角でも精度良く計測できるので、従来は連続的な計測が困難であったような計測対象面であっても、自動的な沈下量の計測が可能となった。
また、1台のレーザー測距手段で複数個所の測定ポイントの沈下量を計測できるので、経済的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる沈下測定方法を説明する側面図である。
【図2】前記計測方法における計測原理の説明図である。
【図3】本発明の沈下測定方法の別の実施例の斜視図である。
【符号の説明】
1 測量機
3 計測コンピュータ
R 既設道路
T トンネル
Claims (5)
- レーザー光を沈下測定対象面に斜めに照射して、前記沈下測定対象面による反射光を測定することによってレーザー光が照射される測定ポイントまでの斜め距離と鉛直角をレーザー測距手段を用いて複数回測距し、
複数回の測定による斜め距離と鉛直角とに基づいて前記沈下測定対象面の沈下の有無を測定する沈下測定方法において、
複数回の測定毎に、
前記レーザー測距手段を、沈下測定対象面外の非沈降領域に設定された前回の測定時と同一位置もしくはその近傍に配置し、
レーザー光の照射方向を、前回の測定時と同じ方向に設定し、
前記測定ポイントまでの斜め距離もしくは水平距離が前回の測定時と同一もしくはほぼ同じ距離である場合には、前記測定ポイントの沈下が無いと判定するか、もしくは微小であると判定することを特徴とする沈下測定方法。 - レーザー光を沈下測定対象面に斜めに照射して、前記沈下測定対象面による反射光を測定することによってレーザー光が照射される測定ポイントまでの斜め距離と鉛直角をレーザー測距手段を用いて複数回測距し、
複数回の測定による斜め距離と鉛直角とに基づいて前記沈下測定対象面の沈下量を測定する沈下測定方法において、
複数回の測定毎に、
前記レーザー測距手段を、沈下測定対象面外の非沈降領域に設定された前回の測定時と同一位置もしくはその近傍に配置し、
レーザー光の照射方向を、前回の測定時に前記測定ポイントを視準した状態と同一もしくはほぼ同一の水平角に設定し、鉛直角は変化させ、
前記測定ポイントまでの斜め距離もしくは水平距離が前回の測定時と同一もしくはほぼ同じ距離になる状態での斜め距離と鉛直角を求め、
複数回の測定毎の斜め距離と鉛直角に基づいて、前記測定ポイントの沈下量を測定することを特徴とする沈下測定方法。 - 沈下測定対象面に斜めに照射するレーザー光の入射角は45°以下としたことを特徴とする請求項1もしくは2の何れかに記載の沈下測定方法。
- 前記測定ポイントは、沈下測定対象面の複数個所に設定したことを特徴とする請求項1、2、3の何れかに記載の沈下測定方法。
- 同一のレーザー測距手段を用いて複数の測定ポイントの沈下量を計測することを特徴とする請求項4に記載の沈下測定方法。
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