JP2004233217A - Dnaチップ,dnaチップの製造方法及びこれを用いた検出システム - Google Patents
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Abstract
【課題】安価な材料を用い、製造も容易で、DNAプローブ分子のスポット密度を向上し得るDNAチップと、その製造および検出方法などを提供する。
【解決手段】微細な空孔が3次元的に網目状に連なる板状の多孔質体2に、塑性加工の方法で独立した多孔質体部3をマトリックス状に形成し、この多孔質体部3を担体として反応性DNAプローブ分子を固定化して保持し、多孔質体として発泡金属または金属焼結体を用いることで経済化を図る。空孔配置が3次元的なのでプローブ分子を安定に保持することができ、DNA試料とのハイブリダイゼーション(反応)も迅速化できる。
【選択図】 図1
【解決手段】微細な空孔が3次元的に網目状に連なる板状の多孔質体2に、塑性加工の方法で独立した多孔質体部3をマトリックス状に形成し、この多孔質体部3を担体として反応性DNAプローブ分子を固定化して保持し、多孔質体として発泡金属または金属焼結体を用いることで経済化を図る。空孔配置が3次元的なのでプローブ分子を安定に保持することができ、DNA試料とのハイブリダイゼーション(反応)も迅速化できる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ハイブリダイゼーション(Hybridization)法を利用したDNA(デオキシリボ核酸)の塩基配列の決定による遺伝子診断、さらには抗原−抗体反応や酵素反応を利用した生理機能診断等に用いて好適なDNAチップ,DNAチップの製造方法及びこれを用いた検出システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、生体試料の検出および化学合成等を行なうことを目的としたチップについては、種々の提案がなされている。前者の代表例はハイブリダイゼーション法を利用したDNAチップまたは反応性プローブチップであり、後者はマイクロリアクタチップが代表的である。
DNAは4種類の塩基(アデニン(A),グアニン(G),シトシン(S),チミン(T))から構成され、これら塩基は結合する塩基が決まっており、ハイブリダイゼーション法ではこの原理を利用してかかる塩基配列の解析が実行される。すなわち、検査対象となる塩基の配列が未知のDNAを、比較対象となる塩基の配列が既知の複数種類のDNAと混合し、検査対象のDNAと比較対象のDNAとが結合しているか否かを調べることで、検査対象のDNAと結合し得るDNAを特定する。
【0003】
従来利用されてきたDNAチップ(例えばAffymetrix社のGeneChip(R)など)は通常、シリコンまたはガラス基板上にフォトリソグラフィー技術を用いて1cm角当たり1万以上のオリゴDNA断片(DNAプローブ)を作り込んだものである。このDNAチップ上に、例えば蛍光標識した、調べたいDNA試料を流すと、DNAチップ上のプローブと相補的な配列を有するDNA断片はプローブと結合し、その部分だけが蛍光により識別でき、DNA試料中のDNA断片の特定配列を認識・定量することができる。
【0004】
具体的には、複数種類の比較対象となる反応性DNAプローブ分子を含む溶液を、スライドガラス上にドット状に付着させ(これをスポッティングという)固定する。この反応性DNAプローブ分子を付着させたスライドガラス(=DNAチップ)に、検査対象となるDNAを含む溶液を滴下した後、DNAの結合反応が起こり得る所定の条件下においてハイブリダイズさせる。DNAチップはその後に洗浄され、反応性DNAプローブ分子と結合しなかったDNA溶液が洗い流される。未知の検査対象となるDNAは予め蛍光標識されているため、この検査対象のDNAと比較対象となる反応性DNAプローブ分子が結合している部分のみが蛍光標識された状態になる。
【0005】
したがって、その後、DNAチップをレーザ光でスキャニングしてスライドガラス上の各位置における蛍光量を測定することにより、各反応性DNAプローブ分子について、検査対象となるDNAと結合したか否かを迅速に判定することができ、この判定結果に基づいて検査対象のDNAの塩基配列を解析できることになる。
【0006】
ハイブリダイゼーション法で用いられるDNAチップは、所定の大きさ(例えば25mm×75mm)のチップ基板(例えばスライドガラス)上に多数(数十個から数万個)の反応性DNAプローブ分子をスポッティング(担持した状態)することにより作成される。
ハイブリダイゼーション法を効率的に行なうためには、スポット密度(単位面積当たりにスポッティングされる反応性DNAプローブ分子の数)を増加し、DNAチップ基板上の反応性DNAプローブ分子の数を増加させる必要がある。
【0007】
従来、市販されている一般的なDNAチップでは、チップ基板の表面に単一のシリカコートが施されており、このシリカコートの表面張力で液滴の広がり具合を調節することで、基板上のスポット数を増加させている。
しかし、チップ基板に単一のコーティング処理を施すだけでは、反応性DNAプローブ分子が周囲に広がることを十分に規制できず、1スポット当たりの反応性DNAプローブ分子の大きさ(以下、スポット面積ともいう)が比較的大きなものになってしまう。このため、隣り合う反応性DNAプローブ分子の距離を狭めてスポット密度を増加させるには限界がある。
【0008】
スポット密度を増加させる方法としては、ガラス,シリコン等の平面状の基板表面に感光性樹脂を用いて、反応性DNAプローブ分子を収容するための枠体を形成するものが知られている。反応性DNAプローブ分子を枠体内に収容させることにより、スポット面積を規制することができるので、隣り合う反応性DNAプローブ分子間の距離を狭めることができ、スポット密度を増加させることができる。
【0009】
その具体的な例として、例えば特許文献1,2のように、チップ基板表面にコートした樹脂上にフォトレジストをコートし、パターニングの後に樹脂をエッチング等の工程で処理を行ない、枠体構造を有するマトリックスパターンを形成するものがある。また、特許文献3には、石英ガラスなどのチップ基板に複数の貫通穴を設け、この貫通穴に多孔質の膜や不織布または多孔質ガラス粉末を充填し、これに反応性DNAプローブ分子溶液を注入して固定化し、担体とする方法が開示されている。
【0010】
【特許文献1】
特開平11−099000号公報(第6−7頁、図1)
【特許文献2】
特開平11−187900号公報(第15頁、図5)
【特許文献3】
特開平14−218974号公報(第3頁、図1)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1,2では、DNAチップの枠体形成のためにフォトレジストやフォトリソグラフィー技術を用いており、これを行なうためには樹脂コート,パターニングおよびエッチング等に関する高価な装置設備類が必要であり、製造工程も煩雑であるという問題がある。
また、特許文献3では、硼珪酸ガラスまたは石英ガラスに直径0.5〜1mmの貫通穴を多数,精度良く加工する必要があるので、製造コストが上がる。さらに、例えば長さ70mm,幅25mm,厚さ0.5mmの石英ガラス基板に直径1mmの貫通穴が50ケ程度しか配置されておらず、反応性DNAプローブ分子間の距離を狭めてスポット密度を増加させたいという要求には対応が難しいという問題がある。
したがって、この発明の課題は、安価な材料を用い製造工程を簡素化して経済性を向上させることができ、かつ、反応性DNAプローブ分子のスポット密度を増加させることができるDNAチップ,DNAチップの製造方法およびDNAチップを用いた検出システムを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
このような課題を解決するため、請求項1の発明では、微細な空孔が3次元的に網目状で連なる板状の多孔質体に、独立した多孔質体部をマトリックス状に形成し、この多孔質体部を担体として反応性DNAプローブ分子を固定化して保持することを特徴とする。
この請求項1の発明においては、前記多孔質体は、単体金属,合金のいずれかを原料とする発泡金属または金属焼結体からなることができる(請求項2の発明)。また、これら請求項1または2の発明においては、前記多孔質体部の空孔率は40〜90%、平均空孔径は5〜300μmの範囲であることができる(請求項3の発明)。
【0013】
上記請求項1ないし3のいずれかの発明のDNAチップは、前記板状の多孔質体に、塑性加工法により独立した多孔質体部をマトリックス状に形成することができ(請求項4の発明)、この請求項4の発明においては、前記塑性加工法は、転造加工,プレス加工または絞り加工のいずれかであることができる(請求項5の発明)。これら請求項4または5の発明においては、前記板状の多孔質体を塑性加工した後、真空雰囲気,不活性ガス雰囲気,還元性ガス雰囲気のいずれかで熱処理することができる(請求項6の発明)。
また、上記請求項1〜3のいずれかの発明のDNAチップは、その前記多孔質体部に、検出対象である蛍光標識したDNA等の試料溶液を投入することにより、反応性DNAプローブ分子と結合させ、これを蛍光検出器により検出することができる(請求項7の発明)。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明者等は、高価な設備を必要とし、かつ手間の掛る工程でチップ基板表面に枠体を形成するフォトリソグラフィー技術や、石英ガラス基板に特別に貫通穴を加工してその貫通穴に担体となる材料を充填保持させる方法よりも、簡素で経済的な材質や形態について種々検討した。
その結果、単体金属,合金のいずれかの粉末を原料とした板状で薄板の発泡金属または金属焼結体からなる多孔質体を用意し、それに塑性加工の方法で独立(孤立)した多孔質体部を形成し、その独立した多孔質体部を担体として、それぞれに異なったDNAの反応性プローブ分子を固定化すれば、従来のフォトリソグラフィー技術による枠体や貫通穴を利用した方法の問題点を解消できることに着眼して、発明を完成させた。
【0015】
単体金属または各種の合金粉末を原料として製作される多孔質体は、無数の空孔が3次元的に網目状に連なる構造であり、その空孔率,空孔径を調整することで、これに注入された溶液類を毛細管力によって保持できる特性を持つ。金属であるが故に溶剤,薬品等に対する化学的耐性に優れ、耐熱性および取扱い時の機械的強度などの面においてもDNAチップ基板として十分な特性を有している。その材質は各種金属,合金類から用途目的に応じて幅広く選択できるが、DNAチップ基板としての使用環境,条件等を考慮した場合にはニッケルとその合金,ステンレス,チタンとその合金等が特に好ましいものとして推奨できる。
【0016】
多孔質体は種々の方法,条件で製作され種々な形状,特性で提供されているが、この発明では発泡金属または金属焼結体がその目的に合致している。
発泡金属は、一般的には樹脂粉末の表面に目的とする金属または合金元素を電解メッキなどの手法で付着させ、成形して形状を付与した後、樹脂粉末を特定の条件で飛散除去せしめ、金属または合金元素のみを骨格として残し、空孔が3次元的に網目状に連なった構造とするものである。発泡金属としての空孔率,空孔径は、使用する樹脂粉末の粒径,成形条件および樹脂粉末を飛散させた後の後加工条件等を組み合わせることで、任意に制御することができる。
【0017】
金属焼結体の最も簡便な作成方法は、単体金属または合金粉末を所定の条件で粉末形成体とし、これをそれぞれの材質に応じた条件で燒結することである。金属焼結体の空孔率と空孔径は、使用する樹脂粉末の粒径,粒度分布および成形,焼結と焼結後の後加工等の条件組み合わせによって制御できる。なお、単体金属または合金粉末に有機系バインダーや木材パルプ等を添加混合してスラリーを作り、これを原料としてシート状の薄板を成形し、これを所要の条件で燒結して金属多孔質体を作るようにしても良い。
【0018】
DNAチップ基板としての空孔率は40〜90%、平均空孔径は5〜300μmの範囲である。この範囲の下限値以下では溶液類の保持特性は向上するものの、溶液類の保持量が少なくかつ溶液類の浸透性能が低下してしまう。また、上記範囲の上限値以上になると、溶液類の浸透はし易くなるものの溶液類を保持できず、例えば反応性DNAプローブ分子などの溶液類が外部に流出するという問題を、試験研究で確認することで特定した。
【0019】
試験研究により、DNAチップ基板として最も好ましい空孔率は50〜85%、平均空孔径は10〜150μmの範囲であった。この範囲であれば、種々の条件に対応できる。また、DNAチップ基板としての厚さは製作可能な限り薄い方が好ましく、特に0.1〜1.5mmが好適である。
以上のような空孔率,空孔径および板厚範囲の多孔質体であれば、特に材質,製造方法などの条件の相違に係わらず、この発明のDNAチップ基板として適用することができる。
【0020】
ところで、板状で薄板の多孔質体をDNAチップ基板として用いるには、従来技術で説明した枠体または貫通穴の効用と同様に、それぞれに独立した部分を形成せしめる必要がある。すなわち、仕切り(境界層)を設け相隣り合う反応部(この発明にいう多孔質体)での干渉,ストローク等を防止せねばならない。
この発明では、いわゆる仕切り(境界層)は、多孔質体の一部を塑性加工の方法で加圧変形して密封することで達成している。
【0021】
図1はこの発明の第1の実施の形態を示す構成図で、図1(a)はその平面図、図1(b)は同じくその断面図である。
同図からも明らかなように、DNAチップ基板1は、多孔質体2よりなる多孔質体部3と、仕切り(境界層)となる塑性加工部4とから構成される。多孔質体部3が独立した反応部となり、塑性加工部4が仕切り(境界層)で、従来技術での枠体に相当する。塑性加工部4は加工時の応力によって空孔が変形圧接されて閉孔状態となったもので、隣り合う多孔質体部3同士での溶液のクロストーク等を防止する役割を担っている。
【0022】
塑性加工方法によっては、図2にその断面図を示すDNAチップ基板1のようにすることができる。図2の突起部5は図2に示す塑性加工部4と同様の役割を担うものであるが、平面より突き出た形状であるため図1とは区別している。図2のDNAチップ基板1は、この発明によって従来技術での枠体により近い形状を簡便な方法で形成できることを示していると言える。多孔質体2に塑性加工の方法で閉孔した塑性加工部4または突起部5を、破断などの欠陥が無く安定に形成できるのは、この発明で選択した発泡金属または金属焼結体が大きな塑性変形能を有するためで、その特性を最大限に活用したことによる。多孔質体2の塑性加工部4または突起部5は転造加工,プレス加工,絞り加工のいずれかの方法によって形成できる。
【0023】
図3は転造加工の一例を示す斜視図である。
これは、定盤6に多孔質体2を置き、平形ダイス7を多孔質体2に押しつけた状態で往復動させて、図1に示すような塑性加工部4を形成する。多孔質体部3のピッチ,塑性加工部4の変形幅などは、平形ダイス7の先端刃先形状を調整することで任意に加工することができる。
図4は転造加工の別の例を示す斜視図である。
ここでは、定盤6に置かれた多孔質体2にローラダイス8を押しつけた状態で往復動させ、塑性加工部4を形成する方法である。塑性加工部4の幅は、ローラダイス8の先端形状を選択することで目的とする形状に加工することができる。また、複数のローラダイス8を用いて加工効率を向上させることもできる。
【0024】
図5はプレス加工の例で、図示されないプレス装置上の定盤6に多孔質体2を置き、プレス装置に取り付けられたポンチ9を多孔質体2に加圧圧入させることで、塑性加工部4を形成する例である。多孔質体部3のピッチ,塑性加工部4の変形幅などは、ポンチ9の先端形状と移動ピッチなどで制御できる。
図6は図5と同様プレス装置を用いたものであるが、定盤6に目的とする形状の凹部10を設け、この凹部10に多孔質体2をポンチ9で圧入変形して所要の突起部5を得る例である。
図7は絞り加工の例を示す斜視図である。
目的とする突起部5と同様の形状の孔を有するダイス12に多孔質体2を置き、図示されない加圧装置に取り付けられたポンチ9を多孔質体2に押しつけ、絞り加工によって突起部5を得るものである。
【0025】
次に、この発明によるDNAチップ基板を用いた検出システムについて説明する。
いま、図1に示す多孔質体部3に既知の反応性DNAプローブ分子溶液を注入すると、多孔質体部3の空孔が3次元的に網目状に連なった中に反応可能なプローブ分子が固定,保持された状態となる。このようにして作成したDNAチップ基板1の多孔質体部3に、検査対象となる蛍光標識されたDNA試料溶液サンプルを投入して反応性DNAプローブ分子が保持された部分を通過させると、反応性DNAプローブ分子と相補的な配列である検査対象のDNA溶液であれば、そのプローブ分子とハイブリダイズする。その後、DNAチップ基板1を蛍光検出器に装着し紫外線を照射すると、ハイブリダイズしたDNAチップ基板1の多孔質体部3は強い蛍光を発するので、DNA試料中のDNA断片の配列を解析できることになる。
以下、この発明の実施の形態について、実施例を挙げて説明する。
【0026】
<第1実施例>
材質がニッケルで長さ72mm,幅40mm,厚さ1.2mmで空孔率が78%,平均空孔径が85μmの発泡金属を多孔質体2として用意し、これに図3で説明した転造加工により塑性加工部4を形成した。平形ダイス7の先端形状は0.1mmRとし、塑性加工部4の幅は0.2mmでその残り厚さは0.5mmとなるまで平形ダイス7を圧入加工した。この条件で多孔質体2に60ケ×30ケ=1800ケの多孔質体部3をもつDNAチップ基板1を作製した。その後、多孔質体部3の清浄性と濡れ性確保のために水素等の還元性ガス雰囲気で450℃×0.5時間の熱処理を行なった。この第1実施例で得たDNAチップ基板1は反応性DNAプローブ分子の保持,検査対象となるDNA試料溶液の投入の際にも、隣り合う多孔質体部3でのクロストークもなく、ハイブリダイズも問題無く遂行でき、蛍光検出器にてDNA試料中のDNA断片の配列を解析できることを確認した。還元性ガス雰囲気とする代わりに、アルゴン,窒素等の不活性ガス雰囲気としても良い。
【0027】
<第2実施例>
平均粒径が8.5μmのカーボニルニッケル粉末を深さ1mmの黒鉛鋳型に充填し、これを水素等の還元性ガス雰囲気中780℃×1時間の焼結を行なって、長さ100mm,幅50mm,厚さ0.85mmのニッケル多孔質体を作製し、多孔質体2として用意した。このニッケル多孔質体の空孔率は73%,平均空孔径は11.5μmである。この多孔質体に、図5のプレス加工法により塑性加工部4を形成した。プレス加工に用いたポンチ9の先端形状は0.2mmRとし、塑性加工部4の幅は0.5mm、残り厚さは0.45mmになるまで変形加工して密封した。多孔質体2には、多孔質体部3を40ケ×20ケ=800ケ形成した。この第2実施例に基づくDNAチップ基板1も、第1実施例と同様の結果を確認できた。還元性ガス雰囲気とする代わりに、アルゴン,窒素等の不活性ガス雰囲気でも良い。
【0028】
<第3実施例>
材質がステンレス(R:例えばSUS304)で長さ100mm,幅50mm,厚さ1.2mmで空孔率が80%,平均空孔径が55μmの発泡金属を多孔質体2として用意し、これに図7で説明した絞り加工により突起部5を形成した。ポンチ9の先端形状は0.2mmRとし、その加工幅は0.5mmとし、突起部5は表面より1mm突き出る形状まで絞り加工した。この方法で多孔質体部3が40ケ×20ケ=800ケ配置されたDNAチップ基板1を得た。その後、1.33×10−2pa以下の真空雰囲気にて650℃×1時間の熱処理を行ない、多孔質体部3の清浄性と濡れ性を確保した。この第3実施例に基づくDNAチップ基板1も、第1実施例と同様の結果を確認できた。
【0029】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、微細な空孔が3次元的に網目状で連なる構造の板状の多孔質体に独立した多孔質体部をマトリックス状に形成し、その独立した多孔質体部を担体として反応性DNAプローブ分子を固定化して保持している。そのため、多孔質体部に注入された反応性DNAプローブ分子を毛細管力で安定に保持でき、DNA試料溶液類とのハイブリダイズも迅速に遂行するDNAチップを提供することができる。
請求項2の発明によれば、多孔質体を単体金属,合金のいずれかを原料とする発泡金属または金属焼結体とすることで、シリコンや石英ガラス等に比べて経済的で、化学的耐性,耐熱性および機械的強度を備えたDNAチップを提供することができる。
【0030】
請求項3の発明によれば、多孔質体の空孔率を40〜90%、平均空孔径を5〜300μmの範囲とし空孔率,空孔径を特定したため、反応性DNAプローブ分子を安定に保持でき、反応性DNAプローブ分子とDNA試料溶液類とのハイブリダイズも迅速に遂行できる、信頼性に優れたDNAチップを提供することができる。
請求項4の発明によれば、板状の多孔質体に塑性加工の方法で独立した多孔質体をマトリックス状に形成することで、手軽な装置と簡単な工程で独立した多孔質体部を形成できるので、経済性に優れたDNAチップの製造方法を提供することができる。
【0031】
請求項5の発明によれば、塑性加工の方法としてプレス加工,転造加工,絞り加工のいずれかの方法により、簡単に独立した多孔質体部を形成できるので、経済性に優れたDNAチップの製造方法を提供することができる。
請求項6の発明によれば、塑性加工後に、多孔質体を真空雰囲気,不活性雰囲気,還元性雰囲気のいずれかの条件で熱処理し、塑性加工時に発生した酸化,汚染等を除去できるので、常に清浄性と濡れ性に優れた多孔質体部を有するDNAチップの製造方法を提供することができる。
【0032】
請求項7の発明によれば、検出対象である蛍光標識したDNA等の試料溶液を板状の多孔質体の独立した多孔質体部に投入することにより、反応性DNAプローブ分子と結合させ、これを蛍光検出器にて検出する。独立した多孔質体部は網目状の3次元構造であるため、注入された反応性DNAプローブ分子を安定に保持でき、DNA試料溶液と反応性DNAプローブ分子との結合も迅速に遂行するので、信頼性に優れたDNAチップの検出システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態を示すDNAチップの構成図
【図2】この発明の別の方法により作製したDNAチップ基板の断面図
【図3】この発明の転造加工による塑性加工部の形成方法説明図
【図4】この発明の転造加工による塑性加工部の他の形成方法説明図
【図5】この発明のプレス加工による塑性加工部の形成方法説明図
【図6】この発明のプレス加工による塑性加工部の他の形成方法説明図
【図7】この発明の絞り加工による塑性加工部の形成方法説明図
【符号の説明】
1…DNAチップ基板、2…多孔質体、3…多孔質体部、4…塑性加工部、5…突起部、6…定盤、7…平形ダイス、8…ローラダイス、9…ポンチ、10…凹部、12…ダイス。
【発明の属する技術分野】
この発明は、ハイブリダイゼーション(Hybridization)法を利用したDNA(デオキシリボ核酸)の塩基配列の決定による遺伝子診断、さらには抗原−抗体反応や酵素反応を利用した生理機能診断等に用いて好適なDNAチップ,DNAチップの製造方法及びこれを用いた検出システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、生体試料の検出および化学合成等を行なうことを目的としたチップについては、種々の提案がなされている。前者の代表例はハイブリダイゼーション法を利用したDNAチップまたは反応性プローブチップであり、後者はマイクロリアクタチップが代表的である。
DNAは4種類の塩基(アデニン(A),グアニン(G),シトシン(S),チミン(T))から構成され、これら塩基は結合する塩基が決まっており、ハイブリダイゼーション法ではこの原理を利用してかかる塩基配列の解析が実行される。すなわち、検査対象となる塩基の配列が未知のDNAを、比較対象となる塩基の配列が既知の複数種類のDNAと混合し、検査対象のDNAと比較対象のDNAとが結合しているか否かを調べることで、検査対象のDNAと結合し得るDNAを特定する。
【0003】
従来利用されてきたDNAチップ(例えばAffymetrix社のGeneChip(R)など)は通常、シリコンまたはガラス基板上にフォトリソグラフィー技術を用いて1cm角当たり1万以上のオリゴDNA断片(DNAプローブ)を作り込んだものである。このDNAチップ上に、例えば蛍光標識した、調べたいDNA試料を流すと、DNAチップ上のプローブと相補的な配列を有するDNA断片はプローブと結合し、その部分だけが蛍光により識別でき、DNA試料中のDNA断片の特定配列を認識・定量することができる。
【0004】
具体的には、複数種類の比較対象となる反応性DNAプローブ分子を含む溶液を、スライドガラス上にドット状に付着させ(これをスポッティングという)固定する。この反応性DNAプローブ分子を付着させたスライドガラス(=DNAチップ)に、検査対象となるDNAを含む溶液を滴下した後、DNAの結合反応が起こり得る所定の条件下においてハイブリダイズさせる。DNAチップはその後に洗浄され、反応性DNAプローブ分子と結合しなかったDNA溶液が洗い流される。未知の検査対象となるDNAは予め蛍光標識されているため、この検査対象のDNAと比較対象となる反応性DNAプローブ分子が結合している部分のみが蛍光標識された状態になる。
【0005】
したがって、その後、DNAチップをレーザ光でスキャニングしてスライドガラス上の各位置における蛍光量を測定することにより、各反応性DNAプローブ分子について、検査対象となるDNAと結合したか否かを迅速に判定することができ、この判定結果に基づいて検査対象のDNAの塩基配列を解析できることになる。
【0006】
ハイブリダイゼーション法で用いられるDNAチップは、所定の大きさ(例えば25mm×75mm)のチップ基板(例えばスライドガラス)上に多数(数十個から数万個)の反応性DNAプローブ分子をスポッティング(担持した状態)することにより作成される。
ハイブリダイゼーション法を効率的に行なうためには、スポット密度(単位面積当たりにスポッティングされる反応性DNAプローブ分子の数)を増加し、DNAチップ基板上の反応性DNAプローブ分子の数を増加させる必要がある。
【0007】
従来、市販されている一般的なDNAチップでは、チップ基板の表面に単一のシリカコートが施されており、このシリカコートの表面張力で液滴の広がり具合を調節することで、基板上のスポット数を増加させている。
しかし、チップ基板に単一のコーティング処理を施すだけでは、反応性DNAプローブ分子が周囲に広がることを十分に規制できず、1スポット当たりの反応性DNAプローブ分子の大きさ(以下、スポット面積ともいう)が比較的大きなものになってしまう。このため、隣り合う反応性DNAプローブ分子の距離を狭めてスポット密度を増加させるには限界がある。
【0008】
スポット密度を増加させる方法としては、ガラス,シリコン等の平面状の基板表面に感光性樹脂を用いて、反応性DNAプローブ分子を収容するための枠体を形成するものが知られている。反応性DNAプローブ分子を枠体内に収容させることにより、スポット面積を規制することができるので、隣り合う反応性DNAプローブ分子間の距離を狭めることができ、スポット密度を増加させることができる。
【0009】
その具体的な例として、例えば特許文献1,2のように、チップ基板表面にコートした樹脂上にフォトレジストをコートし、パターニングの後に樹脂をエッチング等の工程で処理を行ない、枠体構造を有するマトリックスパターンを形成するものがある。また、特許文献3には、石英ガラスなどのチップ基板に複数の貫通穴を設け、この貫通穴に多孔質の膜や不織布または多孔質ガラス粉末を充填し、これに反応性DNAプローブ分子溶液を注入して固定化し、担体とする方法が開示されている。
【0010】
【特許文献1】
特開平11−099000号公報(第6−7頁、図1)
【特許文献2】
特開平11−187900号公報(第15頁、図5)
【特許文献3】
特開平14−218974号公報(第3頁、図1)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1,2では、DNAチップの枠体形成のためにフォトレジストやフォトリソグラフィー技術を用いており、これを行なうためには樹脂コート,パターニングおよびエッチング等に関する高価な装置設備類が必要であり、製造工程も煩雑であるという問題がある。
また、特許文献3では、硼珪酸ガラスまたは石英ガラスに直径0.5〜1mmの貫通穴を多数,精度良く加工する必要があるので、製造コストが上がる。さらに、例えば長さ70mm,幅25mm,厚さ0.5mmの石英ガラス基板に直径1mmの貫通穴が50ケ程度しか配置されておらず、反応性DNAプローブ分子間の距離を狭めてスポット密度を増加させたいという要求には対応が難しいという問題がある。
したがって、この発明の課題は、安価な材料を用い製造工程を簡素化して経済性を向上させることができ、かつ、反応性DNAプローブ分子のスポット密度を増加させることができるDNAチップ,DNAチップの製造方法およびDNAチップを用いた検出システムを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
このような課題を解決するため、請求項1の発明では、微細な空孔が3次元的に網目状で連なる板状の多孔質体に、独立した多孔質体部をマトリックス状に形成し、この多孔質体部を担体として反応性DNAプローブ分子を固定化して保持することを特徴とする。
この請求項1の発明においては、前記多孔質体は、単体金属,合金のいずれかを原料とする発泡金属または金属焼結体からなることができる(請求項2の発明)。また、これら請求項1または2の発明においては、前記多孔質体部の空孔率は40〜90%、平均空孔径は5〜300μmの範囲であることができる(請求項3の発明)。
【0013】
上記請求項1ないし3のいずれかの発明のDNAチップは、前記板状の多孔質体に、塑性加工法により独立した多孔質体部をマトリックス状に形成することができ(請求項4の発明)、この請求項4の発明においては、前記塑性加工法は、転造加工,プレス加工または絞り加工のいずれかであることができる(請求項5の発明)。これら請求項4または5の発明においては、前記板状の多孔質体を塑性加工した後、真空雰囲気,不活性ガス雰囲気,還元性ガス雰囲気のいずれかで熱処理することができる(請求項6の発明)。
また、上記請求項1〜3のいずれかの発明のDNAチップは、その前記多孔質体部に、検出対象である蛍光標識したDNA等の試料溶液を投入することにより、反応性DNAプローブ分子と結合させ、これを蛍光検出器により検出することができる(請求項7の発明)。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明者等は、高価な設備を必要とし、かつ手間の掛る工程でチップ基板表面に枠体を形成するフォトリソグラフィー技術や、石英ガラス基板に特別に貫通穴を加工してその貫通穴に担体となる材料を充填保持させる方法よりも、簡素で経済的な材質や形態について種々検討した。
その結果、単体金属,合金のいずれかの粉末を原料とした板状で薄板の発泡金属または金属焼結体からなる多孔質体を用意し、それに塑性加工の方法で独立(孤立)した多孔質体部を形成し、その独立した多孔質体部を担体として、それぞれに異なったDNAの反応性プローブ分子を固定化すれば、従来のフォトリソグラフィー技術による枠体や貫通穴を利用した方法の問題点を解消できることに着眼して、発明を完成させた。
【0015】
単体金属または各種の合金粉末を原料として製作される多孔質体は、無数の空孔が3次元的に網目状に連なる構造であり、その空孔率,空孔径を調整することで、これに注入された溶液類を毛細管力によって保持できる特性を持つ。金属であるが故に溶剤,薬品等に対する化学的耐性に優れ、耐熱性および取扱い時の機械的強度などの面においてもDNAチップ基板として十分な特性を有している。その材質は各種金属,合金類から用途目的に応じて幅広く選択できるが、DNAチップ基板としての使用環境,条件等を考慮した場合にはニッケルとその合金,ステンレス,チタンとその合金等が特に好ましいものとして推奨できる。
【0016】
多孔質体は種々の方法,条件で製作され種々な形状,特性で提供されているが、この発明では発泡金属または金属焼結体がその目的に合致している。
発泡金属は、一般的には樹脂粉末の表面に目的とする金属または合金元素を電解メッキなどの手法で付着させ、成形して形状を付与した後、樹脂粉末を特定の条件で飛散除去せしめ、金属または合金元素のみを骨格として残し、空孔が3次元的に網目状に連なった構造とするものである。発泡金属としての空孔率,空孔径は、使用する樹脂粉末の粒径,成形条件および樹脂粉末を飛散させた後の後加工条件等を組み合わせることで、任意に制御することができる。
【0017】
金属焼結体の最も簡便な作成方法は、単体金属または合金粉末を所定の条件で粉末形成体とし、これをそれぞれの材質に応じた条件で燒結することである。金属焼結体の空孔率と空孔径は、使用する樹脂粉末の粒径,粒度分布および成形,焼結と焼結後の後加工等の条件組み合わせによって制御できる。なお、単体金属または合金粉末に有機系バインダーや木材パルプ等を添加混合してスラリーを作り、これを原料としてシート状の薄板を成形し、これを所要の条件で燒結して金属多孔質体を作るようにしても良い。
【0018】
DNAチップ基板としての空孔率は40〜90%、平均空孔径は5〜300μmの範囲である。この範囲の下限値以下では溶液類の保持特性は向上するものの、溶液類の保持量が少なくかつ溶液類の浸透性能が低下してしまう。また、上記範囲の上限値以上になると、溶液類の浸透はし易くなるものの溶液類を保持できず、例えば反応性DNAプローブ分子などの溶液類が外部に流出するという問題を、試験研究で確認することで特定した。
【0019】
試験研究により、DNAチップ基板として最も好ましい空孔率は50〜85%、平均空孔径は10〜150μmの範囲であった。この範囲であれば、種々の条件に対応できる。また、DNAチップ基板としての厚さは製作可能な限り薄い方が好ましく、特に0.1〜1.5mmが好適である。
以上のような空孔率,空孔径および板厚範囲の多孔質体であれば、特に材質,製造方法などの条件の相違に係わらず、この発明のDNAチップ基板として適用することができる。
【0020】
ところで、板状で薄板の多孔質体をDNAチップ基板として用いるには、従来技術で説明した枠体または貫通穴の効用と同様に、それぞれに独立した部分を形成せしめる必要がある。すなわち、仕切り(境界層)を設け相隣り合う反応部(この発明にいう多孔質体)での干渉,ストローク等を防止せねばならない。
この発明では、いわゆる仕切り(境界層)は、多孔質体の一部を塑性加工の方法で加圧変形して密封することで達成している。
【0021】
図1はこの発明の第1の実施の形態を示す構成図で、図1(a)はその平面図、図1(b)は同じくその断面図である。
同図からも明らかなように、DNAチップ基板1は、多孔質体2よりなる多孔質体部3と、仕切り(境界層)となる塑性加工部4とから構成される。多孔質体部3が独立した反応部となり、塑性加工部4が仕切り(境界層)で、従来技術での枠体に相当する。塑性加工部4は加工時の応力によって空孔が変形圧接されて閉孔状態となったもので、隣り合う多孔質体部3同士での溶液のクロストーク等を防止する役割を担っている。
【0022】
塑性加工方法によっては、図2にその断面図を示すDNAチップ基板1のようにすることができる。図2の突起部5は図2に示す塑性加工部4と同様の役割を担うものであるが、平面より突き出た形状であるため図1とは区別している。図2のDNAチップ基板1は、この発明によって従来技術での枠体により近い形状を簡便な方法で形成できることを示していると言える。多孔質体2に塑性加工の方法で閉孔した塑性加工部4または突起部5を、破断などの欠陥が無く安定に形成できるのは、この発明で選択した発泡金属または金属焼結体が大きな塑性変形能を有するためで、その特性を最大限に活用したことによる。多孔質体2の塑性加工部4または突起部5は転造加工,プレス加工,絞り加工のいずれかの方法によって形成できる。
【0023】
図3は転造加工の一例を示す斜視図である。
これは、定盤6に多孔質体2を置き、平形ダイス7を多孔質体2に押しつけた状態で往復動させて、図1に示すような塑性加工部4を形成する。多孔質体部3のピッチ,塑性加工部4の変形幅などは、平形ダイス7の先端刃先形状を調整することで任意に加工することができる。
図4は転造加工の別の例を示す斜視図である。
ここでは、定盤6に置かれた多孔質体2にローラダイス8を押しつけた状態で往復動させ、塑性加工部4を形成する方法である。塑性加工部4の幅は、ローラダイス8の先端形状を選択することで目的とする形状に加工することができる。また、複数のローラダイス8を用いて加工効率を向上させることもできる。
【0024】
図5はプレス加工の例で、図示されないプレス装置上の定盤6に多孔質体2を置き、プレス装置に取り付けられたポンチ9を多孔質体2に加圧圧入させることで、塑性加工部4を形成する例である。多孔質体部3のピッチ,塑性加工部4の変形幅などは、ポンチ9の先端形状と移動ピッチなどで制御できる。
図6は図5と同様プレス装置を用いたものであるが、定盤6に目的とする形状の凹部10を設け、この凹部10に多孔質体2をポンチ9で圧入変形して所要の突起部5を得る例である。
図7は絞り加工の例を示す斜視図である。
目的とする突起部5と同様の形状の孔を有するダイス12に多孔質体2を置き、図示されない加圧装置に取り付けられたポンチ9を多孔質体2に押しつけ、絞り加工によって突起部5を得るものである。
【0025】
次に、この発明によるDNAチップ基板を用いた検出システムについて説明する。
いま、図1に示す多孔質体部3に既知の反応性DNAプローブ分子溶液を注入すると、多孔質体部3の空孔が3次元的に網目状に連なった中に反応可能なプローブ分子が固定,保持された状態となる。このようにして作成したDNAチップ基板1の多孔質体部3に、検査対象となる蛍光標識されたDNA試料溶液サンプルを投入して反応性DNAプローブ分子が保持された部分を通過させると、反応性DNAプローブ分子と相補的な配列である検査対象のDNA溶液であれば、そのプローブ分子とハイブリダイズする。その後、DNAチップ基板1を蛍光検出器に装着し紫外線を照射すると、ハイブリダイズしたDNAチップ基板1の多孔質体部3は強い蛍光を発するので、DNA試料中のDNA断片の配列を解析できることになる。
以下、この発明の実施の形態について、実施例を挙げて説明する。
【0026】
<第1実施例>
材質がニッケルで長さ72mm,幅40mm,厚さ1.2mmで空孔率が78%,平均空孔径が85μmの発泡金属を多孔質体2として用意し、これに図3で説明した転造加工により塑性加工部4を形成した。平形ダイス7の先端形状は0.1mmRとし、塑性加工部4の幅は0.2mmでその残り厚さは0.5mmとなるまで平形ダイス7を圧入加工した。この条件で多孔質体2に60ケ×30ケ=1800ケの多孔質体部3をもつDNAチップ基板1を作製した。その後、多孔質体部3の清浄性と濡れ性確保のために水素等の還元性ガス雰囲気で450℃×0.5時間の熱処理を行なった。この第1実施例で得たDNAチップ基板1は反応性DNAプローブ分子の保持,検査対象となるDNA試料溶液の投入の際にも、隣り合う多孔質体部3でのクロストークもなく、ハイブリダイズも問題無く遂行でき、蛍光検出器にてDNA試料中のDNA断片の配列を解析できることを確認した。還元性ガス雰囲気とする代わりに、アルゴン,窒素等の不活性ガス雰囲気としても良い。
【0027】
<第2実施例>
平均粒径が8.5μmのカーボニルニッケル粉末を深さ1mmの黒鉛鋳型に充填し、これを水素等の還元性ガス雰囲気中780℃×1時間の焼結を行なって、長さ100mm,幅50mm,厚さ0.85mmのニッケル多孔質体を作製し、多孔質体2として用意した。このニッケル多孔質体の空孔率は73%,平均空孔径は11.5μmである。この多孔質体に、図5のプレス加工法により塑性加工部4を形成した。プレス加工に用いたポンチ9の先端形状は0.2mmRとし、塑性加工部4の幅は0.5mm、残り厚さは0.45mmになるまで変形加工して密封した。多孔質体2には、多孔質体部3を40ケ×20ケ=800ケ形成した。この第2実施例に基づくDNAチップ基板1も、第1実施例と同様の結果を確認できた。還元性ガス雰囲気とする代わりに、アルゴン,窒素等の不活性ガス雰囲気でも良い。
【0028】
<第3実施例>
材質がステンレス(R:例えばSUS304)で長さ100mm,幅50mm,厚さ1.2mmで空孔率が80%,平均空孔径が55μmの発泡金属を多孔質体2として用意し、これに図7で説明した絞り加工により突起部5を形成した。ポンチ9の先端形状は0.2mmRとし、その加工幅は0.5mmとし、突起部5は表面より1mm突き出る形状まで絞り加工した。この方法で多孔質体部3が40ケ×20ケ=800ケ配置されたDNAチップ基板1を得た。その後、1.33×10−2pa以下の真空雰囲気にて650℃×1時間の熱処理を行ない、多孔質体部3の清浄性と濡れ性を確保した。この第3実施例に基づくDNAチップ基板1も、第1実施例と同様の結果を確認できた。
【0029】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、微細な空孔が3次元的に網目状で連なる構造の板状の多孔質体に独立した多孔質体部をマトリックス状に形成し、その独立した多孔質体部を担体として反応性DNAプローブ分子を固定化して保持している。そのため、多孔質体部に注入された反応性DNAプローブ分子を毛細管力で安定に保持でき、DNA試料溶液類とのハイブリダイズも迅速に遂行するDNAチップを提供することができる。
請求項2の発明によれば、多孔質体を単体金属,合金のいずれかを原料とする発泡金属または金属焼結体とすることで、シリコンや石英ガラス等に比べて経済的で、化学的耐性,耐熱性および機械的強度を備えたDNAチップを提供することができる。
【0030】
請求項3の発明によれば、多孔質体の空孔率を40〜90%、平均空孔径を5〜300μmの範囲とし空孔率,空孔径を特定したため、反応性DNAプローブ分子を安定に保持でき、反応性DNAプローブ分子とDNA試料溶液類とのハイブリダイズも迅速に遂行できる、信頼性に優れたDNAチップを提供することができる。
請求項4の発明によれば、板状の多孔質体に塑性加工の方法で独立した多孔質体をマトリックス状に形成することで、手軽な装置と簡単な工程で独立した多孔質体部を形成できるので、経済性に優れたDNAチップの製造方法を提供することができる。
【0031】
請求項5の発明によれば、塑性加工の方法としてプレス加工,転造加工,絞り加工のいずれかの方法により、簡単に独立した多孔質体部を形成できるので、経済性に優れたDNAチップの製造方法を提供することができる。
請求項6の発明によれば、塑性加工後に、多孔質体を真空雰囲気,不活性雰囲気,還元性雰囲気のいずれかの条件で熱処理し、塑性加工時に発生した酸化,汚染等を除去できるので、常に清浄性と濡れ性に優れた多孔質体部を有するDNAチップの製造方法を提供することができる。
【0032】
請求項7の発明によれば、検出対象である蛍光標識したDNA等の試料溶液を板状の多孔質体の独立した多孔質体部に投入することにより、反応性DNAプローブ分子と結合させ、これを蛍光検出器にて検出する。独立した多孔質体部は網目状の3次元構造であるため、注入された反応性DNAプローブ分子を安定に保持でき、DNA試料溶液と反応性DNAプローブ分子との結合も迅速に遂行するので、信頼性に優れたDNAチップの検出システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態を示すDNAチップの構成図
【図2】この発明の別の方法により作製したDNAチップ基板の断面図
【図3】この発明の転造加工による塑性加工部の形成方法説明図
【図4】この発明の転造加工による塑性加工部の他の形成方法説明図
【図5】この発明のプレス加工による塑性加工部の形成方法説明図
【図6】この発明のプレス加工による塑性加工部の他の形成方法説明図
【図7】この発明の絞り加工による塑性加工部の形成方法説明図
【符号の説明】
1…DNAチップ基板、2…多孔質体、3…多孔質体部、4…塑性加工部、5…突起部、6…定盤、7…平形ダイス、8…ローラダイス、9…ポンチ、10…凹部、12…ダイス。
Claims (7)
- 微細な空孔が3次元的に網目状で連なる板状の多孔質体に、独立した多孔質体部をマトリックス状に形成し、この多孔質体部を担体として反応性DNAプローブ分子を固定化して保持することを特徴とするDNAチップ。
- 前記多孔質体は、単体金属,合金のいずれかを原料とする発泡金属または金属焼結体からなることを特徴とする請求項1に記載のDNAチップ。
- 前記多孔質体部の空孔率は40〜90%、平均空孔径は5〜300μmの範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載のDNAチップ。
- 前記板状の多孔質体に、塑性加工法により独立した多孔質体部をマトリックス状に形成することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のDNAチップの製造方法。
- 前記塑性加工法は、転造加工,プレス加工または絞り加工のいずれかであることを特徴とする請求項4に記載のDNAチップの製造方法。
- 前記板状の多孔質体を塑性加工した後、真空雰囲気,不活性ガス雰囲気,還元性ガス雰囲気のいずれかで熱処理することを特徴とする請求項4または5に記載のDNAチップの製造方法。
- 前記多孔質体部に、検出対象である蛍光標識したDNA等の試料溶液を投入することにより、反応性DNAプローブ分子と結合させ、これを蛍光検出器により検出することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のDNAチップを用いた検出システム。
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JP2003022601A JP2004233217A (ja) | 2003-01-30 | 2003-01-30 | Dnaチップ,dnaチップの製造方法及びこれを用いた検出システム |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2006093157A1 (ja) * | 2005-02-28 | 2006-09-08 | Tokyo Institute Of Technology | オリゴヌクレオチド誘導体、遺伝子検出用プローブ及びdnaチップ |
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2003
- 2003-01-30 JP JP2003022601A patent/JP2004233217A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2006093157A1 (ja) * | 2005-02-28 | 2006-09-08 | Tokyo Institute Of Technology | オリゴヌクレオチド誘導体、遺伝子検出用プローブ及びdnaチップ |
US7851157B1 (en) | 2005-02-28 | 2010-12-14 | Tokyo Institute Of Technology | Oligonucleotide derivative, probe for detection of gene, and DNA chip |
JP4882074B2 (ja) * | 2005-02-28 | 2012-02-22 | 国立大学法人東京工業大学 | オリゴヌクレオチド誘導体、遺伝子検出用プローブ及びdnaチップ |
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