JP2004232170A - ポリ乳酸仮撚糸の製造方法 - Google Patents

ポリ乳酸仮撚糸の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、工程通過性や生産性に優れ、かつ捲縮特性、寸法安定性が良く、更には毛羽や未解撚の無いポリ乳酸仮撚糸の製造方法を提供するものである。
【解決手段】50重量%以上がポリ乳酸よりなる繊維形成性重合体を溶融紡糸してなるマルチフィラメントを、引取速度4000m/分以上の速度で引き取って得られた未延伸糸を供給原糸とし、摩擦仮撚加工において仮撚ヒーターにて熱セットを行い、冷却ゾーンにて構造固定を行った後、施撚ゾーンにて撚りを施す際の加撚張力(T1)と解撚張力(T2)の比(T2/T1)を3.0以下とし、また施撚体表面速度と糸条走行速度の比(施撚体表面速度/糸条走行速度)を1.0〜2.5の範囲にすることを特徴とするポリ乳酸仮撚糸の製造方法。
【選択図】図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、工程通過性や生産性に優れ、かつ捲縮特性、寸法安定性が良く、更には毛羽や未解撚の無いポリ乳酸仮撚糸の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近、地球的規模での環境問題に対して、自然環境の中で分解するポリマー素材の開発が切望されており、脂肪族ポリエステル等、様々なポリマーの研究・開発、また実用化の試みが活発化している。そして、微生物により分解されるポリマー、すなわち生分解性ポリマーに注目が集まっている。
【0003】
一方、従来のポリマーはほとんど石油資源を原料としているが、石油資源が将来的に枯渇するのではないかということ、また石油資源を大量消費することにより、地質時代より地中に蓄えられていた二酸化炭素が大気中に放出され、さらに地球温暖化が深刻化することが懸念されている。しかし、二酸化炭素を大気中から取り込み成長する植物資源を原料としてポリマーが合成できれば、二酸化炭素循環により地球温暖化を抑制できることが期待できるのみならず、資源枯渇の問題も同時に解決できる可能性がある。このため、植物資源を原料とするポリマー、すなわちバイオマス利用ポリマーに注目が集まっている。
【0004】
上記2つの点から、バイオマス利用の生分解性ポリマーが大きな注目を集め、石油資源を原料とする従来のポリマーを代替していくことが期待されている。しかしながら、バイオマス利用の生分解性ポリマーは一般に力学特性、耐熱性が低く、また高コストとなるといった課題があった。これらを解決できるバイオマス利用の生分解性ポリマーとして、現在、最も注目されているのはポリ乳酸である。ポリ乳酸は植物から抽出したでんぷんを発酵することにより得られる乳酸を原料としたポリマーであり、バイオマス利用の生分解性ポリマーの中では力学特性、耐熱性、コストのバランスが最も優れている。そして、これを利用した繊維の開発が急ピッチで行われている。
【0005】
ポリ乳酸繊維の開発は、生分解性を活かした農業資材や土木資材等が先行しているが、それに続く大型の用途として自動車内装材や、カーテン、カーペット等のインテリア素材への応用も進められている。さらには一般衣料分野への応用も期待されている。これらへの用途展開には、嵩高性やストレッチ性を付与することが求められるが、ポリ乳酸を汎用合成繊維の仮撚加工プロセスに通すだけでは、仮撚加工温度によりポリ乳酸繊維同士が融着してしまい糸切れが多発したり、仮撚糸の断面変形が激しく、独特のぎらつきが発生するため品位が悪かった。また、仮撚加工温度を下げると、捲縮が充分に発現しない問題があった。この問題を回避するために、仮撚加工温度を下げ、解撚張力を上げると毛羽や弛みが発生してしまい、得られる仮撚加工糸の品位が悪くなってしまった。また、例えば、一旦低配向未延伸糸を紡糸し延伸熱処理を行うことで、十分に配向結晶化させた後、仮撚加工を行うことで、上記問題を回避することが提案されている(特許文献1及び特許文献2参照)。しかしながら、紡糸工程、延伸工程、仮撚工程が独立している3工程法であるためにハンドリングが煩雑になり、生産性及びコストの点から好ましくなかった。
【0006】
また、高配向未延伸糸を仮撚加工温度130℃にて仮撚加工する方法が提案されている(特許文献3参照)が、トレース実験を行った結果、仮撚加工糸には未解撚が多く存在し、最終製品の品位が悪く、満足のいくものではなかった。これら問題点により、ポリ乳酸仮撚糸の用途が非常に限られたものとなっていた。
【0007】
また、仮撚加工に供するポリ乳酸未延伸糸は、一般的に耐熱性が悪く、仮撚ヒーターの温度を100℃以上とした場合には、部分的に融着が発生し、この融着部分が未解撚として欠点になっていた。この未解撚を解撚するためには解撚張力(T2)を高くすることが必要であるが、ポリ乳酸仮撚糸に存在する未解撚を解撚する為に解撚張力を高くすると、施撚体後の繊維に損傷を与え、軽微な場合でも毛羽が発生したり、酷い場合は糸切れが発生し、安定的な生産が困難であった。
【0008】
【特許文献1】特開2000−290845号(第4−6頁)
【0009】
【特許文献2】特開2002−285438号(第3−5頁)
【0010】
【特許文献3】特開2000−303283号(第4−5頁)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、工程通過性や生産性に優れ、かつ捲縮特性、寸法安定性が良く、更には毛羽や未解撚の無いポリ乳酸仮撚糸の製造方法を提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
50重量%以上がポリ乳酸よりなる繊維形成性重合体を溶融紡糸してなるマルチフィラメントを、引取速度4000m/分以上の速度で引き取って得られる未延伸糸を供給原糸とし、摩擦仮撚加工において仮撚ヒーターにて熱セットを行い、冷却ゾーンにて構造固定を行った後、施撚ゾーンにて撚りを施す際の加撚張力(T1)と解撚張力(T2)の比(T2/T1)を3.0以下とし、また施撚体表面速度と糸条走行速度の比(施撚体表面速度/糸条走行速度)を1.0〜2.5の範囲にすることを特徴とするポリ乳酸仮撚糸の製造方法により達成される。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明でいうポリ乳酸とは乳酸を重合したものをいい、L体あるいはD体の光学純度は90%以上であると、融点が高く好ましい。また、ポリ乳酸の性質を損なわない範囲で、乳酸以外の成分を共重合していても、ポリ乳酸以外のポリマーや粒子、難燃剤、帯電防止剤等の添加物を含有していてもよい。ただし、バイオマス利用、生分解性の観点から、繊維中に存在する乳酸モノマーは50重量%以上とすることが重要である。乳酸モノマーは好ましくは75重量%以上、より好ましくは96重量%以上である。このとき、乳酸モノマー以外の部分については、ポリ乳酸の性能を損なわない範囲で、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシルブチレートなどのポリマーがブレンドされていても複合されていてもよい。更に、バイオマス、生分解性を維持する観点から、ポリブチレンサクシネートやポリヒドロキシルブチレートなどの他の生分解性ポリマーを用いることがより好ましい。ブレンドはチップブレンドでも溶融ブレンドでもよく、また複合は芯鞘複合でも、サイドバイサイド型複合でもよい。また、ポリ乳酸ポリマーの分子量は、重量平均分子量で5万〜50万であると、力学特性と製糸性のバランスが良く好ましい。
【0014】
本発明のポリ乳酸よりなる繊維形成性重合体を溶融紡糸してなるマルチフィラメント、およびポリ乳酸仮撚加工糸の製造方法を、例を挙げて説明する。
【0015】
まず、本発明の仮撚加工に供給する未延伸糸の好ましい製造方法の例を図1をもって説明する。原料である50重量%以上がポリ乳酸よりなる繊維形成性重合体を乾燥した後ホッパー1に仕込み、押出機2にて溶融、押出を行い、計量ポンプ3を通じてスピンブロック4内に設置された紡糸パック5へと溶融ポリマーを導く。その後口金6から糸条Fを紡出し、チムニー7にて均一に冷却固化し、給油装置8にて所望の紡糸油剤を付与する。糸条Fは流体処理装置9にて流体処理を施された後、第1引取ローラー10および第2引取ローラー11にて引き取られ、紡糸巻取装置12によりチーズ13に巻き取られる。このとき、第1引取ローラー10の周速(V1)と第2引取ローラー11の周速(V2)は同一の速度でもよいし、0.99≦V2/V1≦1.05の範囲であれば糸条の走行性を確保することができ、安定した巻取が可能となるため好ましい。なお、流体処理装置9は第1引取ローラー10と第2引取ローラー11の間に設置してもよいし、第2引取ローラー11と紡糸巻取装置12の間に設置してもよく、前記のいずれか、もしくは2〜3箇所に設置して流体処理を行うこともできる。
【0016】
本発明の仮撚加工に供給する未延伸糸を製造する際の引取速度、すなわち第1引取ローラー10の速度は、4000m/分以上であることが必要である。引取速度を4000m/分以上にすることで、紡糸線上での配向結晶化が促進され、耐熱性、特に90℃以上の環境下における繊維の剛性を飛躍的に高めることができる。それにより、延伸での伸長安定性、撚登りによる集束性が向上し、仮撚加工工程において延伸張力や擦過による糸切れを防止するとともに、得られる仮撚加工糸の捲縮特性、収縮特性も優れたものが得られる。引取速度は4250m/分以上であることが好ましく、4500m/分以上であればより好ましい。
【0017】
本発明の仮撚加工に供給する未延伸糸の沸騰水収縮率は30%以下であることが好ましい。沸騰水収縮率が30%以下であると高温環境下における軟化が起きにくく、ヒーター上で繊維同士もしくは繊維とヒーター表面で融着が発生することなく、糸切れせずに仮撚加工を行うことができる。沸騰水収縮率は25%以下であることがより好ましく、20%以下が更に好ましい。
【0018】
また、該未延伸糸の複屈折度は0.008以上であることが好ましい。ポリ乳酸繊維の特徴として、一度配向結晶化した繊維でも、加熱されることで更なる延伸を行うことが可能であることを筆者らは見出したのである。更に、得られた延伸糸は実用上全く問題ない強伸度特性を示し、かつ破断強度も向上するのである。
【0019】
この特性を活かすことで、配向が進んだ繊維を摩擦仮撚加工に供することができ、更には加撚張力の伝播がスムーズに行われることも見出したのである。この現象は複屈折度0.008以上のポリ乳酸繊維において確認される。これにより、例えば得られる仮撚加工糸の糸斑が少なくなったり、加熱による結晶化で一段と耐熱性が向上して未解撚が発生しにくいなど、優れた効果を示すのである。複屈折度は0.009以上が好ましく、0.010以上であればより好ましい。
【0020】
本発明の仮撚加工に供給される未延伸糸には、紡糸時に流体による交絡加工を用いることもできる。交絡加工を該原糸に施すことにより、解舒性やガイド類などへの摩耗が抑えられるため好ましい。また、摩擦仮撚加工の際に糸のこなれを良くするために、該マルチフィラメントを摩擦仮撚加工装置に供給する前に流体による交絡加工を行うこともできる。
【0021】
次に、本発明の摩擦仮撚加工の好ましい方法の例を図2をもって説明する。まず、チーズ14から糸条Fを引き出し、糸道ガイド15a〜15cを介して供給ローラー16に糸条Fを供給する。その後糸条Fは施撚体20により撚りを施されながら仮撚ヒーター17にて熱処理され、糸道ガイド18を通して冷却板19にて構造固定される。このとき、冷却板19〜施撚体20の間で測定した張力を加撚張力(T1)とし、施撚体20〜延伸ローラー21までの間で測定した張力を解撚張力(T2)とした。その後デリベリローラー22および糸道ガイド23a、23bを介して仮撚糸24として巻き取られる。なお、更に寸法安定性を付与する目的で、延伸ローラー21の後にセカンドヒーター25を設け、デリベリローラー22との間で弛緩熱処理を施すこともできる。なお、チーズ14から仮撚糸24までの間において、各種ガイド、張力制御装置、流体処理装置、給油装置などを自由に配置し、糸条Fに所望の性能を付与することもできる。
【0022】
本発明は、上記の方法にて得られるポリ乳酸未延伸糸を供給して摩擦仮撚加工する場合において、その加撚張力(T1)と解撚張力(T2)の比(T2/T1)が3.0以下であることが必要である。T2/T1が3.0以下、すなわち解撚張力(T2)が小さい場合には、毛羽・弛みの発生を抑制でき、また未解撚を少なくすることが可能となること、および施撚体後の糸切れも少なくなるため、安定した仮撚加工が可能となり、得られた仮撚糸も品位に優れたものとなる。また、T2/T1が0.1以上あれば解撚効率に優れるため好ましい。このことから、T2/T1は0.1〜2.8であることが好ましく、0.5〜2.5であればより好ましい。
【0023】
また、本発明の仮撚加工において、施撚体20の表面速度と糸条走行速度の比(施撚体20の表面速度/糸条走行速度)が1.0〜2.5の範囲であることが重要である。(施撚体20の表面速度/糸条走行速度)を1.0以上にすることで、加撚張力(T1)と解撚張力(T2)のバランスが良く、毛羽、糸切れの無い仮撚加工を行うことができる。また(施撚体20の表面速度/糸条走行速度)を2.5以下にすることで、施撚体20の表面摩耗が抑制され、数十時間に及ぶ連続運転においても糸長手方向の品質が安定する他、糸条Fと施撚体20との摩耗による糸の削れが抑制され、毛羽、糸切れのない仮撚加工が実現される。(施撚体20の表面速度/糸条走行速度)は好ましくは1.2〜2.2、より好ましくは1.25〜2.0の範囲である。
【0024】
本発明では仮撚ヒーター17に接触式ヒーターを用いることができる。本発明の摩擦仮撚加工に供する未延伸糸は、紡糸段階で充分に配向結晶化し、繊維構造が発達しているため耐熱性に優れ、接触式ヒーターを用いても、ヒーター表面と糸条との融着が無く、品位に優れた仮撚加工糸を得ることが可能となるのである。接触式ヒーターの加熱方法や表面材質は特に限定されるものではないが、仮撚加工時の摩擦抵抗低減のため、鏡面加工されていることが好ましい。ここで、鏡面加工とは表面粗度で1.5s以下のものをいう。表面粗度が1.5s以下であれば、仮撚ヒーター上での擦過抵抗を低く抑えられ、毛羽や糸切れの発生がなく仮撚加工を行うことができ好ましい。また、そのときの仮撚ヒーターの温度は90〜150℃の範囲であることが好ましい。仮撚ヒーターの温度が90℃以上であると、得られるポリ乳酸仮撚糸の沸騰水収縮率が低下し、布帛の寸法安定性が向上する。一方、150℃以下の温度にすることで、繊維間の融着が抑制され、仮撚ヒーター上で糸が軟化することなく糸切れせずに仮撚加工を行うことができる。上記理由から、接触式の仮撚ヒーターの温度は100〜145℃がより好ましく、110〜140℃であれば更に好ましい。
【0025】
また、本発明では仮撚ヒーター17に非接触式ヒーターを好ましく用いることができる。ポリ乳酸繊維は、一般的に他の汎用合成繊維と比べ、著しく耐摩耗性が低く、擦過しやすい。そのため、特に高温下で大きな変形を受けながら高速で走行する仮撚ヒーター上では、工程通過性を向上させるために摩擦抵抗を減らす工夫が必要である。但し、非接触式ヒーターはポリ乳酸糸条との摩擦擦過を低減できる点で好ましいものの、設備上の制約もあるので、接触式ヒーターと非接触式ヒーターは適宜選択すればよい。非接触式ヒーターの加熱方法や表面材質は特に限定されるものではないが、チューブ状ヒーターやスリットを有するヒーターなどを用いることができる。さらに、これら非接触ヒーター内で糸条Fのバルーニングを抑制するため、非接触ヒーター前後に糸道ガイドを設置することも好ましい。また、そのときの仮撚ヒーターの温度は150〜350℃であることが好ましい。仮撚ヒーターの温度が150℃以上であると、得られるポリ乳酸仮撚糸の沸騰水収縮率が低下して布帛の寸法安定性が向上し、さらに捲縮特性も向上するのである。一方350℃以下の温度にすることで、繊維間の融着が少なく、仮撚ヒーター上で糸の軟化を抑制しつつ、糸切れせずに仮撚加工を行うことができる。上記理由から、非接触式の仮撚ヒーターの温度は160〜320℃がより好ましく、170〜300℃であれば更に好ましい。
【0026】
また、本発明に用いられる摩擦仮撚加工装置において、施撚体20として3軸摩擦仮撚型ディスク仮撚具を好ましく用いることができる。ポリ乳酸繊維は摩擦による擦過に弱く、毛羽や削れが発生し易く、更に加熱下での応力により容易に変形が起こってしまう。この様な問題を回避するために、ディスク表面を柔軟なウレタン製にすることで、ポリ乳酸繊維の断面変形を低く抑えることが可能となる他、糸条の削れも抑制でき、毛羽や糸切れを防止できるため好ましい。ウレタンディスクの表面硬度は、JIS A スケール硬度で75〜90度の範囲のものが、断面変形抑制と糸条の削れを抑制し、またディスクの長時間使用を可能にするためにより好ましく、80〜85度の範囲であれば更に好ましい。また、3軸摩擦仮撚型ディスク仮撚具を用いた場合は、回転するディスク表面速度(D)と糸条走行速度(Y)の比(ディスク表面速度/糸条走行速度)をD/Yと表記した。
【0027】
また、本発明に用いられる摩擦仮撚加工装置において、施撚体20としてベルトニップ型摩擦仮撚具を好ましく用いることもできる。ベルトの回転方向に水平なベルト回転軸と、糸条が走行する方向に水平な糸条走行軸とのなす角度を2倍した角度を交差角度とし、この交差角度は特に限定されるものではないが、90〜120°の範囲であれば糸条に効率的に撚りを加えることができ、更にはベルトそのものの摩耗も低く抑えることが可能となるため好ましい。さらに、表面材質は特に限定されるものではないが、クロロピレンラバーやニトリルブチレンラバーを好ましく使用することができる。このときニトリルブチレンラバーであれば耐久性やコスト、柔軟性の点からより好ましい。また、ベルトニップ型摩擦仮撚具の表面硬度は60〜80度であればポリ乳酸の断面変形を低く抑え、糸条の削れを抑制することができ、ベルト本体の摩耗も改善されるためより好ましく、65〜75度の範囲であれば更に好ましい。また、ベルトニップ型摩擦仮撚具を用いた場合は、ベルト表面速度と糸条走行速度の比(ベルト表面速度/糸条走行速度)をVRと表記した。
【0028】
本発明の方法で得られるポリ乳酸仮撚糸は、捲縮特性の指標となるCR値が10%以上であることが好ましい。CR値が10%以上であれば最終製品に充分な嵩高さとふくらみを付与することが可能となる。CR値は15%以上がより好ましく、18%以上であれば更に好ましい。
【0029】
本発明の方法で得られるポリ乳酸仮撚糸の沸騰水収縮率は18%以下であることが好ましい。沸騰水収縮率が18%以下であれば、例えば織物や編み物にした場合の乾燥工程などで寸法変化を小さくすることができる。また、最終製品にした場合にも、寸法変化が少ないため、予測したとおりの外観を得ることが出来るのである。沸騰水収縮率は15%以下がより好ましく、10%以下であれば更に好ましい。
【0030】
本発明の方法で得られるポリ乳酸仮撚糸は、未解撚数が仮撚糸10m当たりで8個以下が好ましい。未解撚数を少なくすることで、最終製品にした場合に染め斑などが無く、均一なものを得ることができるのである。未解撚数は仮撚糸10m当たり3個以下がより好ましく、0個である事が更に好ましい。
【0031】
本発明の方法で得られるポリ乳酸仮撚糸の10000m当たりの毛羽数は、10個以下であることが好ましい。毛羽数を少なくすることにより、製織工程などにおいて切断された毛羽による工程不良を防止したり、最終製品の品位も向上するのである。毛羽数は5個以下であればより好ましく、1個以下であれば更に好ましい。
【0032】
【実施例】
以下、本発明を実施例を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら制限されるものではない。なお、実施例中の測定方法は以下の方法を用いた。
【0033】
A.ポリ乳酸の重量平均分子量
試料のクロロホルム溶液にTHF(テトロヒドロフラン)を混合し測定溶液とした。これをGPCで測定し、ポリスチレン換算で重量平均分子量を求めた。
【0034】
B.沸騰水収縮率
未延伸糸または仮撚加工糸をかせ取りし、初荷重0.09cN/dtex下で測定したかせの原長(L0)を測定し、その後かせを実質的に荷重フリーの状態で沸騰水中で15分間処理し、風乾後初荷重0.09cN/dtex下でのかせ長(L1)を測定し、以下の式に従って沸騰水収縮率を計算した。
【0035】
沸騰水収縮率(%)=[(L0−L1)/L0)]×100(%)
C.複屈折度
未延伸糸をサンプリングし、オリンパス社製BH−2偏光顕微鏡により、Na光源で波長589nmにてコンペンセーター法により単糸のレターデーションと糸径を測定することにより求めた。
【0036】
D.CR値
仮撚糸をかせ取りし、実質的に荷重フリーの状態で沸騰水中15分間処理し、24時間風乾した。このサンプルに0.09cN/dtex相当の荷重をかけ水中に浸漬し、2分後のかせ長(L’0)を測定した。次に、水中で0.009cN/dtex相当のかせを除き0.0018cN/dtex相当の微荷重に交換し、2分後のかせ長(L’1)を測定した。そして下式によりCR値を計算した。
【0037】
CR(%)=[(L’0−L’1)/L’0]×100(%)
E.加撚張力(T1)、解撚張力(T2)、T2/T1
仮撚加工時の冷却板18〜施撚体19間の張力を加撚張力(T1)とし、施撚体19〜延伸ローラー20間の張力を解撚張力(T2)とし、それぞれの張力を金井工機(株)製三点式張力計(CHECK MASTER)により測定し、T2/T1を求めた。
【0038】
F.D/Y,VR
仮撚加工時の施撚体20の回転数(S)をストロボにて測定し、施撚体の周長(LL)から施撚体表面速度(S×LL)を求め、延伸ローラー速度を糸条走行速度(Y)として下式にて算出した。
【0039】
3軸摩擦仮撚型ディスク仮撚具:D/Y=(S×LL)/Y
ベルトニップ型摩擦仮撚具:VR=(S×LL)/Y
G.毛羽数
東レ(株)製毛羽テスター(DT−104型)を使用し、10000m当たりの毛羽数を測定した。毛羽数が0〜1個であるものは◎、2〜5個であるものは○、6〜10個であるものは△、11個以上であるものを×とし、△以上を合格として4段階で評価した。
【0040】
H.未解撚数
仮撚糸24を10m引き出し、目視にて未解撚部分が全く存在しないものを◎、1〜3個存在するものを○、4〜8個存在するものを△、9個以上のものを×とし、△以上を合格として4段階にて評価した。
【0041】
I.総合評価
本発明の方法に従って仮撚糸24を得るに際して、そのときの仮撚糸の沸騰水収縮率、CR値、毛羽数、未解撚数より判断し、充分に生産に適用できるレベルを◎、生産に適用できるレベルを○、生産には適用できないレベルを×として3段階評価し、○以上を合格とした。
【0042】
実施例1
重量平均分子量18万、98重量%がL−ポリ乳酸である重合体チップを100℃に設定した真空乾燥機にて10時間乾燥した。チップの水分率は80ppmであった。乾燥したチップを図1に示す紡糸装置のホッパー1に仕込み、これを押出機2にて220℃の温度で溶融した後押し出して、計量ポンプ3にて58.3g/分の吐出量に計量し、240℃に加熱されたスピンブロック4内に設置された紡糸パック5へ導き、孔径0.3mm、孔深度0.5mm、孔数36の口金6から糸条Fを紡出した。この糸条Fを、チムニー7にて25m/分の速度で冷却風を糸条Fに当てて冷却固化させた後、給油装置8にて収束させ、紡糸用油剤(平滑剤として脂肪酸エステルを60重量%含有した油剤を調整し、純油分15重量%の水エマルジョンとした)を繊維重量に対して油分1.0重量%になるように計量して付与した。その後、流体処理装置9にて0.05MPaの空気流にて交絡処理を施した後、周速5000m/分の第1引取ローラー10、周速5025m/分の第2引取ローラー11をそれぞれ介して引き取り、巻取速度4925m/分で巻取装置12にてチーズ13を巻き取った。得られた未延伸糸の物性は、繊度117dtex、沸騰水収縮率15%、複屈折度0.013であり、充分な耐熱性を有していた。
【0043】
次に、図2に示す仮撚装置にて仮撚加工を行った。このとき、チーズ14から糸道ガイド15a〜15cを介し、428m/分で回転する供給ローラー16を通して、仮撚ヒーター17へと糸条Fを供給した。なお、仮撚ヒーター17には長さ1.8m、表面温度130℃、表面粗度1.0sの接触式ヒーターを用いた。その後施撚体20にて撚りを施しながら、糸条Fは仮撚ヒーター17、糸道ガイド18を介して冷却板19にて構造固定し、周速600m/分の延伸ローラー21、デリベリローラー22および糸道ガイド23a、24bを介して、仮撚糸24を得た。
【0044】
なお、施撚体20には3軸摩擦仮撚型ディスク仮撚具を用い、1〜3番目までのディスクの材質をセラミックとし、4〜12番目までのディスクの材質をJIS A スケールで82度の硬度を持つウレタンとした。また、回転するディスク表面速度(D)を900m/分とし、糸条走行速度(Y)は延伸ローラー21の速度とし、D/Yは1.5とした。このときの加撚張力(T1)と解撚張力(T2)を測定したところ、それぞれ0.15cN/dtex、0.27cN/dtexであり、T2/T1は1.8であった。
【0045】
得られた仮撚糸24の繊維物性を測定したところ、繊度84dtex、沸騰水収縮率7%、CR値24%であり、充分な寸法安定性および捲縮特性を有していることがわかった。また、仮撚糸24の毛羽数および未解撚数は0個であり、糸長手方向に均一かつ欠点のないポリ乳酸仮撚糸が得られた。更に該仮撚糸24を用いて筒状の編み地を作成し、これを浴比1:100、染色温度110℃、染料濃度1.0%owf、染色時間30分にて加圧染色を行ったところ、その品位はふくらみに優れ、かつ極めて布帛表面の均一性が高い、また染色斑も無い良好な布帛が得られた。
【0046】
実施例2
第1引取ローラーの周速度を4300m/分、第2引取ローラーの周速度を4322m/分、巻取装置の速度を4235m/分、図2の供給ローラーの周速度を414m/分、そのときのD/Yを1.5とした以外は実施例1と同様の方法で仮撚糸を得た。得られた未延伸糸の物性値は沸騰水収縮率20%、複屈折度0.012であり、充分な耐熱性を有していた。またT2/T1は1.8であった。
【0047】
得られた仮撚糸の物性は、繊度93.5dtex、沸騰水収縮率8%、CR値22%であり、良好な寸法安定性および捲縮特性を示した。このとき、仮撚糸の毛羽数および未解撚数は0個であり、欠点のないポリ乳酸仮撚糸が得られた。また、実施例1と同様にして得た筒状編み物もふくらみに富んだ表面の均一性が高い布帛が得られた。
【0048】
実施例3
第1引取ローラーの周速度を4000m/分、第2引取ローラーの周速度を4020m/分、巻取装置の速度を3940m/分とし、図2の供給ローラーの周速度を400m/分、D/Yを1.5とした以外は実施例1と同様の方法で仮撚糸を得た。得られた未延伸糸の物性値は沸騰水収縮率24%、複屈折度0.01であり、充分な耐熱性を有していた。またT2/T1は1.8であった。
【0049】
得られた仮撚糸の物性値は、繊度77.7dtex、沸騰水収縮率8%、CR値19%であり、充分な寸法安定性と捲縮特性を示した。仮撚糸の毛羽数および未解撚数は0個であり、欠点のないポリ乳酸仮撚糸が得られた。また、実施例1と同様にして得られた筒状編み物も、充分なふくらみを有する、表面の均一な布帛であった。
【0050】
実施例4
D/Yを1.1とした以外は実施例1と同様の方法で仮撚糸を得た。このとき、T2/T1は2.9であった。
得られた仮撚糸の物性値は、繊度84dtex、沸騰水収縮率7%、CR値20%であり、充分な寸法安定性、捲縮特性を示した。仮撚糸の毛羽数を測定したところ、実用上問題ないレベルの3個であった。また、未解撚数は0個であった。
【0051】
また、実施例1と同様の方法で筒状編み物を作成したところ、充分なふくらみを有する表面の均一性に優れたものであった。
【0052】
実施例5
D/Yを2.4とした以外は実施例1と同様の方法で仮撚糸を得た。このとき、T2/T1は0.6であった。
【0053】
得られた仮撚糸の物性値は、繊度84dtex、沸騰水収縮率7%、CR値18%であり、充分な寸法安定性、捲縮特性を示した。また、毛羽数は0個であったが、未解撚数は2個であり、均一性に若干劣るものであったが、実用上は問題にならないレベルであった。また、得られた仮撚糸を実施例1と同様の方法で筒状編み物を作成した。編み物は充分なふくらみを有していた。また、布帛表面の均一性も問題ないレベルであった。
【0054】
実施例6
D/Yを2.45とした以外は実施例1と同様の方法で仮撚糸を得た。このとき、T2/T1は0.1であった。
【0055】
得られた仮撚糸の物性値は、繊度84dtex、沸騰水収縮率8%、CR値17%であり、充分な寸法安定性、捲縮特性を示した。また、毛羽数は0個であったが、未解撚数は6個であり、糸長手方向の均一性が若干劣るものであったが、実用上は問題にならないレベルであった。また、得られた仮撚糸を実施例1と同様の方法で筒状編み物を作成した。編み物は充分なふくらみを有していた。さらに、布帛表面の均一性も問題ないレベルであった。
【0056】
【表1】
Figure 2004232170
【0057】
比較例1
第1引取ローラーの周速度を3500m/分、第2引取ローラーの周速度を3518m/分、巻取装置12の速度を3465m/分、供給ローラーの周速度を333m/分とした以外は実施例1と同様の方法で仮撚糸を得た。このとき、得られた未延伸糸の物性は、繊度166.6dtex、沸騰水収縮率35%、複屈折度0.007であり、耐熱性が不十分であった。更に、摩擦仮撚加工を行った際のT2/T1は1.8であった。また、得られた仮撚糸の物性は、繊度92.6dtex、沸騰水収縮率8%、CR値15%であった。寸法安定性および捲縮特性は共に充分な性能を示し、毛羽数も0個であったが、未解撚数は11個と非常に多かった。実施例1と同様の方法で筒状編み物を作成したところ、ふくらみは充分であったものの、布帛中に未解撚部分が多数存在し、染め斑が多く品位が悪かった。
【0058】
比較例2
D/Yを1.1とした以外は比較例1と同様の方法で仮撚糸を得た。このとき、T2/T1は3.2であった。仮撚糸の物性は、繊度92.6dtex、沸騰水収縮率7%、CR値12%であり、良好な寸法安定性と充分な捲縮特性を示した。しかし、未解撚数は0個であったものの、毛羽数を測定したところ15個と非常に多く、仮撚糸の品位が悪かった。また、実施例1と同様にして得られた筒状編み物も、マルチフィラメント中の単糸が布帛表面に飛び出したり、部分的に糸切れしているなど、布帛の品位に劣るものであった。
【0059】
比較例3
D/Yを0.9とした以外は実施例1と同様の方法で仮撚糸を得た。このとき、T2/T1は3.8であった。得られた仮撚糸の物性は、繊度84dtex、沸騰水収縮率7%、CR値18%であり、優れた寸法安定性と充分な捲縮特性を示した。しかし、未解撚数は0個であったものの、毛羽数は11個であったため、品位が悪かった。更に、実施例1と同様の方法で筒状編み物を作成したところ、マルチフィラメント中の単糸が布帛表面に飛び出したり、部分的に糸切れしているなど、布帛の品位に劣るものであった。
【0060】
比較例4
D/Yを2.6とした以外は実施例1と同様の方法で仮撚糸を得た。このとき、解撚張力(T2)を測定出来なかった。さらに、ディスクに糸条が巻き付き、何度も摩擦仮撚装置を停止しなければならなかった。
【0061】
得られた仮撚糸の物性は、繊度84dtex、沸騰水収縮率3%、CR値5%であり、優れた寸法安定性を示したが、捲縮特性が劣悪であった。さらに、毛羽数は0個であったが、未解撚数は20個以上とほとんど解撚されておらず、仮撚糸とは言えないレベルであった。また実施例1と同様に筒状編み物を作成したが、ふくらみが感じられない品位の劣悪なものであった。
【0062】
【表2】
Figure 2004232170
【0063】
実施例7
T2/T1を1.4とし、仮撚ヒーターの温度を95℃とした以外は実施例1と同様の方法で仮撚糸を得た。
【0064】
仮撚糸の物性値は繊度84dtex、沸騰水収縮率14%、CR値12%であり、寸法安定性がやや低いが、実用上問題ない捲縮特性を示した。さらに毛羽数および未解撚数を測定したところ0個であり、糸長手方向に欠点のないポリ乳酸仮撚糸が得られた。また、仮撚糸を実施例1と同様の方法にて筒状編み物にしたところ、良好なふくらみを有していた。
【0065】
実施例8
T2/T1を1.95とし、仮撚ヒーターの温度を145℃とした以外は実施例1と同様の方法で仮撚糸を得た。
【0066】
仮撚糸の物性値は繊度84dtex、沸騰水収縮率5%、CR値11%であり、高い寸法安定性を有し、捲縮特性も実用上問題のないレベルであった。さらに毛羽数および未解撚数を測定したところ0個であり、糸長手方向に欠点のないものであった。また、仮撚糸を実施例1と同様の方法にて筒状編み物にしたところ、ふくらみは若干劣るものの、表面の均一性に優れていた。
【0067】
実施例9
T2/T1を1.8とし、仮撚ヒーターを1m長の非接触式ヒーターとし、その温度を220℃とした以外は実施例1と同様の方法で仮撚糸を得た。
【0068】
仮撚糸の物性値は繊度84dtex、沸騰水収縮率8%、CR値25%であり、優れた寸法安定性と捲縮特性を示した。さらに、毛羽数0個、未解撚数0個であり、糸長手方向に欠点のない糸であった。また、実施例1と同様に筒状編み物を作成したところ、ふくらみに優れ、布帛表面も均一なものが得られた。
【0069】
実施例10
T2/T1を1.45とし、仮撚ヒーターを1m長の非接触式ヒーターとし、その温度を155℃とした以外は実施例1と同様の方法で仮撚糸を得た。
【0070】
仮撚糸の物性値は繊度84dtex、沸騰水収縮率15%、CR値16%であり、実用上問題ない寸法安定性と充分な捲縮特性を示した。さらに、毛羽数0個、未解撚数0個であり、糸長手方向に欠点のない糸であった。また、実施例1と同様に筒状編み物を作成したところ、充分なふくらみがあり、布帛表面も均一なものが得られた。
【0071】
実施例11
T2/T1を1.9とし、仮撚ヒーターを1m長の非接触式ヒーターとし、その温度を340℃とした以外は実施例1と同様の方法で仮撚糸を得た。
【0072】
仮撚糸の物性値は繊度84dtex、沸騰水収縮率4%、CR値11%であり、優れた寸法安定性と、実用上問題ない捲縮特性を示した。さらに、毛羽数0個、未解撚数0個であり、糸長手方向に欠点のない糸であった。また、実施例1と同様に筒状編み物を作成したところ、ふくらみがあり、布帛表面も均一なものが得られた。
【0073】
【表3】
Figure 2004232170
【0074】
比較例5
T2/T1を1.3とし、仮撚ヒーターの温度を85℃とした以外は実施例1と同様の方法にて仮撚糸を得た。得られた仮撚糸は毛羽数、未解撚数共に0個であり、糸長手方向の均一性は良好であった。しかし、仮撚糸の物性を測定したところ、繊度84dtex、沸騰水収縮率19%、CR値14%であり、捲縮特性は充分であったものの、寸法安定性が悪かった。実施例1と同様に筒状編み物を作成したところ、布帛の寸法安定性が悪く、また繊維が収縮しすぎたために粗硬感のある品位の劣悪な布帛しか得られなかった。
【0075】
比較例6
実施例1と同様の方法で、仮撚ヒーターの温度を155℃とした摩擦仮撚加工を行ったが、仮撚ヒーター上で糸切れが多発して、T2/T1は測定不可能であった。
【0076】
比較例7
T2/T1を1.3とし、仮撚ヒーターを非接触式ヒーターとし、その温度を145℃とした以外は実施例1と同様の方法で仮撚糸24を得た。得られた仮撚糸は、毛羽数、未解撚数共に0個であり、糸長手方向の均一性は良好であった。しかし、仮撚糸の物性を測定したところ、繊度84dtex、沸騰水収縮率19%、CR値15%であり、捲縮特性は充分であったものの、寸法安定性が悪かった。実施例1と同様に筒状編み物を作成したところ、布帛の寸法安定性が悪く、また繊維が収縮しすぎたために粗硬感のある品位の劣悪な布帛しか得られなかった。
【0077】
比較例8
実施例1と同様の方法で、仮撚ヒーターを非接触式ヒーターとし、その温度を355℃とした摩擦仮撚加工を行ったが、仮撚ヒーター内で糸切れが多発して、T2/T1は測定不可能であった。
【0078】
【表4】
Figure 2004232170
【0079】
実施例12
施撚体をベルトニップ式摩擦仮撚具に変更し、ベルトを硬度70度のニトリルブチレンラバー製とし、ベルトの交差角度を100°、D/YをVRとしてその値を1.5とした以外は実施例1と同様の方法で仮撚糸を得た。
【0080】
仮撚糸の物性値は繊度84dtex、沸騰水収縮率7%、CR値24%であり、優れた寸法安定性と捲縮特性を示した。さらに、毛羽数0個、未解撚数0個であり、糸長手方向に欠点のない糸であった。また、実施例1と同様に筒状編み物を作成したところ、良好なふくらみがあり、布帛表面も非常に均一なものであった。
【0081】
実施例13
施撚体を3軸摩擦仮撚型ディスク仮撚具とし、4〜12番目までのディスクの材質をJIS A スケールで76度の硬度を持つウレタンとした以外は、実施例1と同様の方法で仮撚糸を得た。
【0082】
仮撚糸の物性値は繊度84dtex、沸騰水収縮率7%、CR値24%であり、優れた寸法安定性と捲縮特性を示した。さらに、毛羽数0個、未解撚数0個であり、糸長手方向に欠点のない糸であった。また、実施例1と同様に筒状編み物を作成したところ、優れたふくらみがあり、布帛表面も非常に均一なものが得られた。しかしながら、仮撚加工を連続して行ったところ、ディスク表面の摩耗が激しく、ウレタンディスクの交換を余儀なくされた。
【0083】
実施例14
施撚体を3軸摩擦仮撚型ディスク仮撚具とし、4〜12番目までのディスクの材質をJIS A スケールで89度の硬度を持つウレタンとした以外は、実施例1と同様の方法で仮撚糸を得た。
【0084】
仮撚糸の物性値は繊度84dtex、沸騰水収縮率7%、CR値24%であり、優れた寸法安定性と捲縮特性を示した。さらに、毛羽数0個、未解撚数0個であり、糸長手方向に欠点のない糸であった。また、実施例1と同様に筒状編み物を作成したところ、良好なふくらみがあり、布帛表面も非常に均一なものであった。しかしながら、得られた仮撚糸の断面変形が大きいため、筒状編み物の表面にぎらついた光沢が見られた。
【0085】
実施例15
施撚体をベルトニップ式摩擦仮撚具とし、ベルトを硬度62度のニトリルブチレンラバー(NBR)製とし、ベルトの交差角度を100°、D/YをVRとしてその値を1.5とした以外は実施例1と同様の方法で仮撚糸を得た。
【0086】
仮撚糸の物性値は繊度84dtex、沸騰水収縮率7%、CR値24%であり、優れた寸法安定性と捲縮特性を示した。さらに、毛羽数0個、未解撚数0個であり、糸長手方向に欠点のない糸であった。また、実施例1と同様に筒状編み物を作成したところ、良好なふくらみがあり、布帛表面も非常に均一なものが得られた。しかしながら、仮撚加工を連続して行ったところ、ベルト表面の摩耗が激しく、ベルトの交換を余儀なくされた。
【0087】
実施例16
施撚体をベルトニップ式摩擦仮撚具とし、ベルトを硬度78度のニトリルブチレンラバー(NBR)製とし、ベルトの交差角度を100°、3軸摩擦仮撚型ディスク仮撚具におけるディスク表面速度(D)をベルト表面速度(V)とし、糸条走行速度(Y)との比(ベルト表面速度/糸条走行速度、VR)を1.5とした以外は実施例1と同様の方法で仮撚糸を得た。
【0088】
仮撚糸の物性値は繊度84dtex、沸騰水収縮率7%、CR値24%であり、優れた寸法安定性と捲縮特性を示した。さらに、毛羽数0個、未解撚数0個であり、糸長手方向に欠点のない糸であった。また、実施例1と同様に筒状編み物を作成したところ、良好なふくらみがあり、布帛表面も非常に均一なものが得られた。しかしながら、得られた仮撚糸の断面変形が大きいため、筒状編み物の表面にぎらついた光沢が見られた。
【0089】
【表5】
Figure 2004232170
【0090】
【発明の効果】
本発明は、工程通過性や生産性に優れ、かつ捲縮特性、寸法安定性が良く、更には毛羽や未解撚の無いポリ乳酸仮撚糸の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】好ましくポリ乳酸未延伸糸を得るための紡糸装置の概略を示したものである。
【図2】好ましくポリ乳酸仮撚糸を得るための、摩擦仮撚装置の概略を示したものである。
【符号の説明】
1:ホッパー
2:押出機
3:計量ポンプ
4:スピンブロック
5:紡糸パック
6:口金6
7:チムニー
8:給油装置
9:流体処理装置
10:第1引取ローラー
11:第2引取ローラー
12:巻取装置
13:チーズ
14:チーズ
15a〜15c:糸道ガイド
16:供給ローラー
17:仮撚ヒーター
18:糸道ガイド
19:冷却板
20:施撚体
21:延伸ローラー
22:デリベリローラー
23a〜23b:糸道ガイド
24:仮撚糸
25:セカンドヒーター

Claims (4)

  1. 50重量%以上がポリ乳酸よりなる繊維形成性重合体を溶融紡糸してなるマルチフィラメントを、引取速度4000m/分以上の速度で引き取って得られた未延伸糸を供給原糸とし、摩擦仮撚加工において仮撚ヒーターにて熱セットを行い、冷却ゾーンにて構造固定を行った後、施撚ゾーンにて撚りを施す際の加撚張力(T1)と解撚張力(T2)の比(T2/T1)を3.0以下とし、また施撚体表面速度と糸条走行速度の比(施撚体表面速度/糸条走行速度)を1.0〜2.5の範囲にすることを特徴とするポリ乳酸仮撚糸の製造方法。
  2. 仮撚ヒーターに接触式ヒーターを用い、その温度が90℃〜150℃の範囲であることを特徴とする請求項1記載のポリ乳酸仮撚糸の製造方法。
  3. 仮撚ヒーターに非接触式ヒーターを用い、その温度が150℃〜350℃の範囲であることを特徴とする請求項1記載のポリ乳酸仮撚糸の製造方法。
  4. 摩擦仮撚加工に供給する未延伸糸の沸騰水収縮率が30%以下であり、かつ複屈折度が0.008以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のポリ乳酸仮撚糸の製造方法。
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