JP2004231858A - フォトレジスト用樹脂及びフォトレジスト組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】化学増幅型レジストとして、特にKrFエキシマレーザーなどの放射線に対する透明性、解像度、感度、耐熱性、プラズマエッチング耐性に優れ、矩形なフォトレジストパターンを再現性良く形成する特徴をもつフォトレジストの製造を可能にする樹脂を提供する。
【解決手段】特定のフェノール類とアルデヒド類とを酸触媒の存在下で反応して得られるノボラック型フェノール樹脂中の水酸基の少なくとも一部を、酸の作用により脱離可能な基で保護したフォトレジスト用樹脂であって、フェノール類として、リモネンを出発原料とするテルペンジフェノール及びピロガロールを含有することが好ましい。
【選択図】 なし
【解決手段】特定のフェノール類とアルデヒド類とを酸触媒の存在下で反応して得られるノボラック型フェノール樹脂中の水酸基の少なくとも一部を、酸の作用により脱離可能な基で保護したフォトレジスト用樹脂であって、フェノール類として、リモネンを出発原料とするテルペンジフェノール及びピロガロールを含有することが好ましい。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体を製造する際のリソグラフィーに使用されるフォトレジスト用樹脂及びフォトレジスト組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般にポジ型フォトレジストには、ナフトキノンジアジド化合物等のキノンジアジド基を有する感光剤とアルカリ可溶性樹脂(例えば、ノボラック型フェノール樹脂)が用いられる。このような組成からなるポジ型フォトレジストはアルカリ溶液による現像によって高い解像力を示し、IC、LSI等の半導体製造、LCDなどの回路パターンの製造に利用されている。また、ノボラック型フェノール樹脂は、芳香環を多く持つことに起因する露光後の高いプラズマドライエッチング性と耐熱性を有しており、これまで、ノボラック型フェノール樹脂とナフトキノンジアジド系感光剤を含有する数多くのポジ型フォトレジストが開発、実用化され、2.0〜0.3μm程度までの線幅加工において大きな成果を上げてきた(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0003】
しかし、近年、半導体集積回路の製造工程において、回路パターンの細密化に伴い、高解像度でしかも高感度のフォトレジスト材料が求められている。回路パターンが微細になるほど露光源として用いる光の波長の短波長化が必要であり、光源としてより波長の短いKrF,ArF、F2などのエキシマレーザーを用いるリソグラフィーが検討されている。ところが、従来のナフトキノンジアジド化合物等のキノンジアジド基を有する感光剤とノボラック型フェノール樹脂からなるポジ型フォトレジストでは、KrFエキシマレーザー等の遠紫外領域の光に対して透過率が非常に低い。
【0004】
このような問題を解決するため、新しいポジ型レジストとして、少量の感光剤(光酸発生剤)と酸触媒反応によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大するような化合物からなる化学増幅型ポジ型フォトレジストが種々提案されている。また、これらに用いられる光源としては248、193、157nmの波長の光であるが、ノボラック型フェノール樹脂はそれ自体が有する芳香環による光の吸収により、KrFエキシマレーザー光などの遠紫外領域の光に対しては透過率が非常に低い。そのため光がレジスト底部まで到達しにくく、レジスト底部での露光量が低下して基板表面近くの光酸発生剤が十分に感光せず、現像後にテーパー等のついた不良パターンしか得られなかった。そのため、KrFレジスト用にはポリヒドロキシスチレン、ArFレジスト用にはアクリル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、F2レジスト用にはフッ素系樹脂などを用いて、化学増幅型レジストシステムが適用検討されている。
【0005】
このような理由で、248nmの波長を用いるKrFレジスト用にはポリヒドロキシスチレンを用いたものが多く適用されているが、すべてのレジスト特性を満足しているわけではなく、高解像度でしかも高感度、さらにはプラズマエッチング耐性やレジストパターンの耐熱性を有するものが求められている。
【0006】
【特許文献1】
特開平05−142770号公報
【特許文献2】
特開平11−349653号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、化学増幅型レジストとして、特にKrFエキシマレーザーなどの放射線に対する透明性、解像度、感度、耐熱性、プラズマエッチング耐性に優れ、矩形であるフォトレジストパターンを再現性良く形成する特徴をもつフォトレジストの製造を可能にする樹脂を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、以下の本発明(1)〜(11)によって達成される。
(1)フェノール類とアルデヒド類とを酸触媒の存在下で反応して得られるノボラック型フェノール樹脂中の水酸基の少なくとも一部を、酸の作用により脱離可能な基で保護したフォトレジスト用樹脂であって、前記フェノール類が、下記一般式(I)と(II)で表されるフェノール類をともに含有することを特徴とするフォトレジスト用樹脂。
【化3】
前記一般式(I)中、Xは1価または2価のモノテルペン炭化水素基を示し、R1、R2はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4の直鎖状アルキル基、又は炭素数3〜4の分岐状アルキル基である。
nは1〜3の整数、pは1または2である。
【化4】
前記一般式(II)中、mは1〜3の整数である。
(2)前記フェノール類は、前記一般式(I)で表されるフェノール類50〜90重量%を含有する上記(1)に記載のフォトレジスト用樹脂。
(3)前記フェノール類は、前記一般式(II)で表されるフェノール類10〜30重量%を含有する上記(1)ないし(2)に記載のフォトレジスト用樹脂。
(4)前記一般式(I)で表されるフェノール類が、リモネンを出発原料とするテルペンジフェノールである上記(1)ないし(3)に記載のフォトレジスト用樹脂。
(5)前記一般式(II)で表されるフェノール類が、ピロガロールである上記(1)ないし(4)に記載のフォトレジスト用樹脂。
(6)前記酸の作用により脱離可能な基が、tert−ブトキシカルボニル基、エトキシエチル基、テトラヒドロピラニル基、及びtert−ブチル基から選ばれた1種以上である上記(1)ないし(5)に記載のフォトレジスト用樹脂。
(7)前記酸の作用により脱離可能な基による前記ノボラック型フェノール樹脂中の水酸基の保護率が、5〜90モル%である上記(1)ないし(6)のいずれかに記載のフォトレジスト用樹脂。
(8)GPC測定により得られる重量平均分子量が、1000〜30000である上記(1)ないし(7)のいずれかに記載のフォトレジスト用樹脂。
(9)紫外可視分光光度計により測定される248nmにおける透過率が、30%以上である上記(1)ないし(8)のいずれかに記載のフォトレジスト用樹脂。
(10)下記(X)〜(Z)を必須成分として含有するフォトレジスト組成物。
(X)上記(1)ないし(9)のいずれかに記載のフォトレジスト用樹脂、
(Y)光の作用により酸を発生する化合物、及び
(Z)(X)及び(Y)を溶解する溶媒。
(11)前記(Y)光の作用により酸を発生する化合物が、前記(X)フォトレジスト用樹脂100重量部に対して、0.5〜5重量部である上記(10)に記載のフォトレジスト組成物。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明は、フォトレジスト用樹脂及びフォトレジスト組成物に関するものである。まず、本発明のフォトレジスト用樹脂について説明する。
【0010】
(X)フォトレジスト用樹脂
本発明のフォトレジスト用樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを酸触媒の存在下で反応して得られるノボラック型フェノール樹脂中の水酸基の少なくとも一部を、酸の作用により脱離可能な基で保護したフォトレジスト用樹脂であって、上記フェノール類が、下記一般式(I)と(II)で表されるフェノール類をともに含有することを特徴とする。
【化5】
上記一般式(I)中、Xは1価または2価のモノテルペン炭化水素基を示し、R1、R2はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4の直鎖状アルキル基、又は炭素数3〜4の分岐状アルキル基である。
【化6】
前記一般式(II)中、mは1〜3の整数である。
【0011】
上記一般式(I)で表されるフェノール類は、上記の構造を有したものであれば特に限定されないが、モノテルペン化合物1分子に対して所定のフェノール類を1分子または2分子の割合で付加させたテルペン/フェノール類付加体、すなわちテルペンフェノール類を挙げることができる。
本発明で使用されるこのようなテルペンフェノール類を製造するための原料となるテルペン化合物は、非環式もしくは単環式モノテルペンに由来するものであれば特に限定されない。例えば、非環式モノテルペンとしてはミルセン、オシメン、ゲラニオール、ネロールなどが挙げられ、単環式モノテルペンとしてはリモネン、フェランドレン、テルピネン、シルベストレン等が挙げられる。
【0012】
また、このようなテルペンフェノール類を製造するための他方の原料であるフェノール類としては、例えば、フェノール、オルソクレゾール、メタクレゾール、パラクレゾール、オルソエチルフェノール、メタエチルフェノール、パラエチルフェノール、オルソブチルフェノール、メタブチルフェノール、パラブチルフェノール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,6−キシレノール、パライソプロピルフェノール、パラターシャリーブチルフェノール、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン等が挙げられる。
上記のテルペンフェノール類は、上記のモノテルペンに上記のフェノール類を酸触媒の下で付加させることによって得ることができる。また、このように調製された市販品を用いることもできる。
【0013】
上記一般式(I)で表される上記フェノール類としては特に、リモネンを出発原料とするテルペンジフェノールを用いることが好ましい。これにより、フォトレジストとして用いたとき、透明性に優れたものとすることができる。
【0014】
上記一般式(II)で表されるフェノール類は、上記の構造を有したものであれば特に限定されないが、一価フェノール類としてフェノール、二価フェノール類としてレゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、三価フェノールとしてフロログルシノール、ピロガロール、オキシヒドロキノンが好適に使用できる。
【0015】
上記一般式(II)で表される上記フェノール類としては特に、ピロガロールを用いることが好ましい。これにより、フォトレジストとして用いたとき、現像液に対する易溶解性、耐ドライエッチング性と耐熱性を付与することができる。
【0016】
上記フェノール類の配合量としては特に限定されないが、フェノール類全体に対して、一般式(I)で表されるフェノール類は50〜90重量%であることが好ましく、さらに好ましくは60〜80重量%である。これにより、フォトレジストとして用いたとき、透明性を向上させることができる。
また同様に、一般式(II)で表されるフェノール類は10〜30重量%であることが好ましく、さらに好ましくは10〜25重量%である。これにより、フォトレジストとして用いたとき、透明性と高感度の両方を兼ね備えたものにすることができる。
【0017】
また、本発明のフォトレジスト用樹脂に用いられるフェノール類として、上記一般式(I)と(II)で表されるフェノール類以外のものを併用することもできる。
これらのフェノール類としては特に限定されないが、例えば、オルソクレゾール、パラクレゾール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,4−トリメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2,4,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、フェニルフェノールなどが挙げられる。
【0018】
本発明のフォトレジスト用樹脂に用いられるアルデヒド類としては特に限定されないが、例えば、ホルムアルデヒド(ホルマリン)、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、オクチルアルデヒドなどのアルキルアルデヒド類、アクロレイン、クロトンアルデヒドなどの不飽和アルキルアルデヒド類、サリチルアルデヒド、パラヒドロキシベンズアルデヒドなどのヒドロキシベンズアルデヒド類、ベンズアルデヒド、フタルアルデヒドなどの芳香族アルデヒド類、グリオキサ−ル、グルタルアルデヒドなどのジアルデヒド類が挙げられる。これらは、単独又は混合して使用することができる。
これらの中でも、ホルムアルデヒドが好ましい。これにより、フォトレジストとして用いたときに、透明性を維持しながら、高感度とすることができる。なお、ホルムアルデヒド源としては特に限定されないが、ホルマリン(水溶液)、パラホルムアルデヒド、アルコール類とのヘミホルマール、トリオキサンなど、ホルムアルデヒドを発生するものであれば使用できる。
【0019】
上記フェノール類とアルデヒド類との反応には、酸触媒が一般的に使用される。酸触媒としては特に限定されないが、例えば、蓚酸、酢酸などの有機カルボン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸などの有機スルホン酸、塩酸、硫酸などの無機酸などが挙げられる。これらの中から、単独あるいは2種以上を混合して使用することもできる。酸触媒の使用量は特に限定されないが、フェノール類に対して0.01〜5重量%であることが好ましく、フォトレジスト樹脂の特性のためには少量であることが好ましい。
また、反応溶媒は必要に応じて使用することができるが、種類としては特に限定されず、樹脂を溶解し、反応に寄与するものでなければ使用することができる。
【0020】
本発明のフォトレジスト用樹脂は、ノボラック型フェノール樹脂中の水酸基の少なくとも一部を酸の作用により脱離可能な基で保護した構造を有することを特徴とする。
ここで、酸の作用により脱離可能な基とは、酸が存在しない状態では安定で、かつ、酸により容易に脱離するものであり、特に限定されないが、例えば、アルキル基、アルコキシルカルボニル基、アシル基、環状エーテル基などであり、具体的には、tert−ブトキシカルボニル基、エトキシエチル基、tert−ブチル基、イソプロピルオキシエチル基、プロピルオキシエチル基、イソブチルオキシエチル基、ブチルオキシエチル基、シクロヘキシルオキシエチル基、ヒドロキシブトキシエチル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基などが挙げられる。
これらの中でも、tert−ブトキシカルボニル基、エトキシエチル基、テトラヒドロピラニル基、tert−ブチル基から選ばれた1種以上であることが好ましい。これにより、フォトレジストとして用いた場合に高感度とすることができ、透明性、耐熱性を向上させることができる。
【0021】
上記酸の作用により脱離可能な基による、ノボラック型フェノール樹脂中の水酸基の保護率としては特に限定されないが、樹脂中の水酸基全体に対して5〜90モル%であることが好ましく、さらに好ましくは10〜50モル%である。
保護率が前記下限値よりも低いと、照射光に対する透明性が低下するようになり、アルカリ水溶液に溶解しやすくなるため残膜性が低下する傾向がある。また、前記上限値よりも高いと、照射光に対する透明性や残膜性は良いものの、フォトレジストの感度低下や樹脂の軟化点が低くなることによる耐熱性の低下が起こる場合がある。
【0022】
上記保護率は、使用する保護基の特性により好ましい範囲を選択することができる。
例えば、保護基としてtert−ブチル基、tert−ブトキシカルボニル基を用いた場合は、保護率を高くしても耐熱性の低下は起こりにくい傾向がある。また、エトキシエチル基を用いた場合は、保護率を低めにすることにより、耐熱性を維持し、露光から加熱処理までの間のパターン形状の変化を抑えることができる。
酸によって脱離可能な基による保護率は、例えば、熱重量分析装置(SEIKO電子社製・「TG−DTA6300」)を使用し、得られた結果から、酸により脱離可能な各置換基に対応する重量減少により計算できる。測定条件としては例えば、昇温速度を10℃/min、窒素雰囲気下で行うことができる。
【0023】
ノボラック型フェノール樹脂中の水酸基を酸によって脱離可能な基により保護するために用いられる化合物としては特に限定されないが、例えば、保護基としてtert−ブトキシカルボニル基を導入する場合は、ジ−tert−ブチルジカルボネイト、同様にエトキシエチル基を導入する場合はエチルビニルエーテル、テトラヒドロピラニル基を導入する場合は3,4ジヒドロ−2H−ピランなどを用いることができる。
【0024】
本発明のフォトレジスト用樹脂の分子量は特に限定されないが、GPC測定による重量平均分子量(Mw)が1000〜30000であることが好ましく、さらに好ましくは2000〜20000である。これにより、アルカリ溶解性、耐熱性などのレジスト特性のバランスに優れた樹脂とすることができる。重量平均分子量が上記下限値未満であると耐熱性が低下する場合があり、上記上限値を超えるとフォトレジスト樹脂の感度が不充分になる場合がある。
この重量平均分子量をコントロールする方法としては特に限定されないが、フェノール類(P)に対するアルデヒド類(F)の反応モル比(F/P)を調整する方法が好ましい。上記重量平均分子量を有するフォトレジスト用樹脂を製造する場合は、反応モル比を0.3〜0.8とすることが好ましく、さらに好ましくは0.4〜0.7である。これにより、得られる樹脂の重量平均分子量を適正なものにでき、かつ、樹脂のアルカリ溶解性、耐熱性などを好ましいものにすることができる。
【0025】
なお、上記重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によりポリスチレン標準物質を用いて作成した検量線をもとに計算されたものである。GPC測定はテトラヒドロフランを溶出溶媒とし、流量1.0ml/min、カラム温度40℃の条件で実施した。
・本体:TOSOH社製・「HLC−8020」
・検出器:波長280nmにセットしたTOSOH社製・「UV−8011」
・分析用カラム:昭和電工社製・「SHODEX KF−802、KF−803、KF−805」
をそれぞれ使用した。
【0026】
本発明のフォトレジスト用樹脂は特に限定されないが、紫外可視分光光度計により測定される248nmにおける透過率が、30%以上であることが好ましい。さらに好ましくは40%以上である。これにより、フォトレジストとして用いたときに良好なパターンを描画することができる。透過率が上記下限値より小さいと、光源としてKrFを用いたときの透過性が小さくなり、感度が低下してパターン形成が不十分になることがある。
【0027】
上記透過率は、例えばUV分光光度計(日立製作所社製・「U−2000」)を使用し、波長が248nmの光に対する透過率の測定を行うことにより評価することができる。評価用サンプルは、石英ガラス上に溶剤に溶解した樹脂溶液をスピンコーターにより塗布し、90℃のホットプレート上で100秒間脱溶剤処理して、約0.5μmの厚みになるよう石英ガラス上に樹脂フィルムを形成して作成することができる。
【0028】
次に、本発明のフォトレジスト用樹脂を合成する手順について説明する。以下に説明する合成方法は一例であり、特にこれに限定されるものではない。
まず、ノボラック型フェノール樹脂を合成する。合成は攪拌装置、温度計、熱交換器を備えた反応容器に、フェノール類、アルデヒド類を仕込み、酸触媒を添加して行うことができる。この反応において、反応温度や時間については上記原料の反応性などによって適宜設定すればよいが、安定して経済的に合成するためには、反応時間を2〜10時間、反応温度は70〜150℃とすることが好ましい。また、必要によっては反応溶媒を使用することもできる。溶媒の種類は特に限定されないが、エチルセロソルブ、メチルエチルケトン等、反応により得られる樹脂を溶解する溶媒が好ましい。
【0029】
この反応終了後、例えば酸触媒を除去するために塩基性化合物を添加して中和し、中和塩を水洗により除去してもよい。水洗水の量と回数は特に限定されないが、水洗回数は、実質的に影響ないレベルまで樹脂中の中和塩を除去させることと経済的観点から1〜5回程度が好ましい。また、水洗温度は、特に限定されないが、中和塩の除去効率と作業性の観点から40〜95℃で行うのが好ましい。
【0030】
この反応または水洗終了後、常圧下及び/または減圧下で脱水・脱モノマーを行う。脱水・脱モノマーを行う減圧度は特に限定されないが、0.1torr〜200torr程度が好ましい。脱水・脱モノマー後の反応容器からの取り出し温度は、特に限定されないが、樹脂の特性や粘度などにより適宜設定できる。樹脂の安定性の観点からは、150〜250℃が好ましい。このようにして、本発明のフォトレジスト用樹脂のベースとなるノボラック型フェノール樹脂が得られる。
【0031】
次に、上記ノボラック型フェノール樹脂から、フォトレジスト用樹脂を製造する方法について説明する。
上記の方法で得られたノボラック型フェノール樹脂中の水酸基の少なくとも一部を酸により脱離可能な基で保護する。こうして得られたフォトレジスト用樹脂は、酸の作用によりこの保護基が容易に脱離して遊離の水酸基を生成させることができ、これにより、脱保護が起こらなかった部分との間にアルカリ現像液に対する溶解性に差を生じることにより、レジスト機能が付与される。
酸により脱離可能な基で上記ノボラック型フェノール樹脂中の水酸基を保護する方法は、この酸により脱離可能な基の種類により使用される原料及び方法が異なるため特に限定されないが、例えばtert−ブトキシカルボニル基により保護する場合は、上記のノボラック型フェノール樹脂中に所定量のジ−tert−ブチルジカルボネイトを添加して塩基性化合物の存在下で所定時間反応させて置換することができる。また、エトキシエチル基またはテトラヒドロピラニル基により保護する場合は、それぞれエチルビニルエーテル又はジヒドロピランを酸性触媒の存在下で所定時間反応させて置換することができる。
【0032】
本発明のフォトレジスト用樹脂の合成にあたって、反応容器等の装置材質は特に限定されないが、不純物の混入を防止する観点からガラスライニング製、テフロン(登録商標)製、あるいはタンタル、ハフニウム、ジルコニウム、ニオブ、チタンから選ばれた金属ないしそれらの合金からなり、実質的に他の材料を含まない腐食に強い金属材料を反応装置材料として用いた製造装置を使用することが望ましい。
【0033】
次に、本発明のフォトレジスト組成物(以下、「組成物」という)について説明する。
本発明の組成物は、上記フォトレジスト用樹脂、光の作用により酸を発生する化合物(以下、「光酸発生剤」という)、及びフォトレジスト用樹脂と光酸発生剤とを溶解する溶媒(以下、「溶媒」という)を必須成分として配合してなるものである。
本発明の組成物をフォトレジストとして使用した場合、光の照射により光酸発生剤が酸を発生し、この酸の作用により、フォトレジスト用樹脂に脱保護反応が起こる。脱保護が起こった部分のフォトレジスト用樹脂は、後の現像工程においてアルカリ現像液に溶解し、脱保護反応が起こらなかった部分のフォトレジスト用樹脂との間に明確な溶解速度差を生ずることで、目的とするパターンを現像により得ることができる。
【0034】
(Y)光酸発生剤
本発明の組成物で用いられる光酸発生剤としては特に限定されないが、スルホニウム塩誘導体[スルホン酸エステル(1,2,3−トリ(メチルスルホニルオキシ)ベンゼンなどのアリールアルカンスルホネート(特にC6−10アリールC1−2アルカンスルホネート);2,6−ジニトロベンジルトルエンスルホネート、ベンゾイントシレートナドノアリールベンゼンスルホネート(特にベンゾイル基を有していてもよいC6−10アリールトルエンホスホネート);2−ベンゾイルー2−ヒドロキシ−2−フェニルエチルトルエンスルホネートなどのアラルキルベンゼンスルホネート類(特にベンゾイル基を有していてもよいC6−10アリール―C1−4アルキルトルエンスルホネート);ジフェニルジスルホンなどのジスルホン酸;ルイス酸塩(トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモン、トリフェニルスルホニウムメタンスルホニルなどのトリアリールスルホニウム塩(特にトリフェニルスルホニウム塩)など)など)]、ホスホニウム塩誘導体、ジアリールハロニウム塩誘導体[ジアリールヨードニウム塩(ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェートなど)などのルイス酸塩など]、ジアゾニウム塩誘導体(p−ニトロフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェートなどのルイス酸塩など)、ジアゾメタン誘導体、トリアジン誘導体などが例示できる。特に、ルイス酸塩(ホスホニウム塩などのルイス酸塩)が好ましい。
【0035】
光酸発生剤の配合量は特に限定されないが、上記フォトレジスト用樹脂100重量部に対して、0.5〜5重量部であることが好ましく、さらに好ましくは1〜4重量部である。これにより、組成物の感度、解像度が良好になる。
光酸発生剤の配合量が上記下限値未満であるとフォトレジスト用樹脂の脱保護反応が進行しにくくなるため像が充分に形成されないことがある。一方、上記上限値を越えると脱保護反応が急速に進行するようになるため、現像時にフォトレジスト用樹脂が溶解しやすくなり、像を形成しにくくなったり、光酸発生剤を含有したフォトレジスト用樹脂の融点が低くなるために耐熱性が低下する原因になったりすることがある。
【0036】
(Z)溶媒
本発明の組成物に配合される溶媒としては、上記フォトレジスト用樹脂と光酸発生剤とを溶解するものであれば特に限定されないが、例えば、水、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、ケトン類、エステル類、エーテル類、アミド類、炭化水素類などを挙げることができ、具体的には、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、メトキシエチルプロピオネート、エトキシエチルプロピオネート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、メチルペンチルケトンなどが挙げられる。これらの中でも、溶解性、塗膜安定性、安全性、環境への影響、人体への影響、経済性の観点から、PGMEA、エトキシエチルプロピオネート、乳酸エチルが特に好ましい。これらは単独または2種以上混合して用いられる。
【0037】
次に、本発明の組成物の製造方法について説明する。
まず、(X)フォトレジスト用樹脂と(Y)光酸発生剤とを、(Z)溶媒に溶解する。その際、必要により、酸化防止剤などの安定剤、可塑剤、界面活性剤、密着性向上剤、溶解促進剤などの種々の添加剤を添加してもよい。溶解は、上記の各成分を任意の順で溶解してもよい。通常、室温程度の温度条件下、各成分が十分溶解する時間(例えば6〜12時間)、攪拌する事により溶解させることができる。
溶解終了後、フィルター(ろ過精度が0.1μm以下のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)フィルタ−などが好ましい)などを利用して異物を除去し、あらかじめ異物、金属不純物などが除去された容器に充填する。充填する際は、クラス100以下のクリーンルーム内で、人間が関与しない自動充填装置などを使用することが好ましい。
また、フォトレジスト用樹脂あるいは組成物については、必要により、金属不純物を除くために酸水溶液や純水などによる洗浄又はイオン交換樹脂による脱金属処理を行うことが可能である。
【0038】
【実施例】
以下本発明を実施例により詳細に説明する。ここに記載されている「部」および「%」はすべて「重量部」および「重量%」を示し、本発明はこれら実施例により何ら制約されるものではない。
【0039】
(1)ノボラック型フェノール樹脂の合成(合成例1〜10)
合成例1
攪拌装置、温度計、熱交換器を備えた3Lの4つ口フラスコに、リモネンを出発原料とするテルペンジフェノール972部、43%ホルマリン206.3部、エチルセロソルブ97.2部、蓚酸4.9部を仕込み、98〜102℃で4時間反応を行った後、ピロガロール243部を添加して98〜102℃でさらに2時間反応を行った。続けて内温170℃まで常圧下で脱水し、さらに80torrの減圧下で200℃まで脱水・脱モノマーを行い、フェノール樹脂1238部を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は7550であった。
【0040】
合成例2
攪拌装置、温度計、熱交換器を備えた3Lの4つ口フラスコに、リモネンを出発原料とするテルペンジフェノール972部、43%ホルマリン166.8部、エチルセロソルブ97.2部、蓚酸4.9部を仕込み、98〜102℃で4時間反応を行った後、ピロガロール108部を添加して98〜102℃でさらに2時間反応を行った。続けて内温170℃まで常圧下で脱水し、さらに80torrの減圧下で200℃まで脱水・脱モノマーを行い、フェノール樹脂1094部を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は7520であった。
【0041】
合成例3
攪拌装置、温度計、熱交換器を備えた3Lの4つ口フラスコに、リモネンを出発原料とするテルペンジフェノール972部、43%ホルマリン292.7部、エチルセロソルブ97.2部、蓚酸4.9部を仕込み、98〜102℃で4時間反応を行った後、ピロガロール583部、メタクレゾール388.8部を添加して98〜102℃でさらに2時間反応を行った。続けて内温170℃まで常圧下で脱水し、さらに80torrの減圧下で200℃まで脱水・脱モノマーを行い、フェノール樹脂1966部を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は7356であった。
【0042】
合成例4
攪拌装置、温度計、熱交換器を備えた3Lの4つ口フラスコに、リモネンを出発原料とするテルペンジフェノール972部、43%ホルマリン185.7部、エチルセロソルブ97.2部、蓚酸4.9部を仕込み、98〜102℃で4時間反応を行った後、ピロガロール243部を添加して98〜102℃でさらに2時間反応を行った。続けて内温170℃まで常圧下で脱水し、さらに80torrの減圧下で200℃まで脱水・脱モノマーを行い、フェノール樹脂1230部を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は2464であった。
【0043】
合成例5
攪拌装置、温度計、熱交換器を備えた3Lの4つ口フラスコに、リモネンを出発原料とするテルペンジフェノール972部、43%ホルマリン213.2部、エチルセロソルブ97.2部、蓚酸4.9部を仕込み、98〜102℃で4時間反応を行った後、ピロガロール243部を添加して98〜102℃でさらに2時間反応を行った。続けて内温170℃まで常圧下で脱水し、さらに80torrの減圧下で200℃まで脱水・脱モノマーを行い、フェノール樹脂1241部を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は12568であった。
【0044】
合成例6
攪拌装置、温度計、熱交換器を備えた3Lの4つ口フラスコに、リモネンを出発原料とするテルペンジフェノール972部、43%ホルマリン175.4部、エチルセロソルブ97.2部、蓚酸4.9部を仕込み、98〜102℃で4時間反応を行った後、ピロガロール243部を添加して98〜102℃でさらに2時間反応を行った。続けて内温170℃まで常圧下で脱水し、さらに80torrの減圧下で200℃まで脱水・脱モノマーを行い、フェノール樹脂1226部を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は1638であった。
【0045】
合成例7
攪拌装置、温度計、熱交換器を備えた3Lの4つ口フラスコに、リモネンを出発原料とするテルペンジフェノール972部、43%ホルマリン223.5部、エチルセロソルブ97.2部、蓚酸4.9部を仕込み、98〜102℃で4時間反応を行った後、ピロガロール243部を添加して98〜102℃でさらに2時間反応を行った。続けて内温170℃まで常圧下で脱水し、さらに80torrの減圧下で200℃まで脱水・脱モノマーを行い、フェノール樹脂1246部を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は19320であった。
【0046】
合成例8
攪拌装置、温度計、熱交換器を備えた3Lの4つ口フラスコに、リモネンを出発原料とするテルペンジフェノール972部、43%ホルマリン225.4部、エチルセロソルブ97.2部、蓚酸4.9部を仕込み、98〜102℃で4時間反応を行った後、レゾルシノール243部を添加して98〜102℃でさらに2時間反応を行った。続けて内温170℃まで常圧下で脱水し、さらに80torrの減圧下で200℃まで脱水・脱モノマーを行い、フェノール樹脂1323部を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は7425であった。
【0047】
合成例9
攪拌装置、温度計、熱交換器を備えた3Lの4つ口フラスコに、ゲラニオールを出発原料とするテルペンジフェノール972部、43%ホルマリン150.2部、エチルセロソルブ97.2部、蓚酸4.9部を仕込み、98〜102℃で4時間反応を行った後、ピロガロール108部を添加して98〜102℃でさらに2時間反応を行った。続けて内温170℃まで常圧下で脱水し、さらに80torrの減圧下で200℃まで脱水・脱モノマーを行い、フェノール樹脂1087部を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は7330であった。
【0048】
合成例10
攪拌装置、温度計、熱交換器を備えた3Lの4つ口フラスコに、メタクレゾール1200部、43%ホルマリン720.9部、エチルセロソルブ120部、蓚酸2.4部を仕込み、58〜62℃で2時間反応を行った後、さらに98〜102℃で4時間反応を行い、さらにエチルセロソルブ97.2部を添加して内温170℃まで常圧下で脱水し、さらに80torrの減圧下で200℃まで脱水・脱モノマーを行い、フェノール樹脂1359部を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は7420であった。
【0049】
2.フォトレジスト用樹脂の合成(実施例1〜23、比較例1〜2)
(1)エトキシエチル基の導入
攪拌装置、温度計、熱交換器を備えたフラスコに、合成例1〜10で得られた樹脂のテトラヒドロフラン溶液に、エチルビニルエーテルを適当量添加し、触媒量のパラトルエンスルホン酸を添加して40℃で4時間反応させた後、トリエチルアミンを用いて中和を行った。イオン交換水を用いて水洗した後、脱溶剤を行い、表2に示したようなフォトレジスト用樹脂を得た。
(2)tert−ブトキシカルボニル基の導入
攪拌装置、温度計、熱交換器を備えたフラスコに、合成例1〜10で得られた樹脂のテトラヒドロフラン溶液に、ジ−tert−ブチルジカルボネイトとトリエチルアミンとを適当量添加し、60℃で6時間反応させた後、酢酸で中和を行った。イオン交換水を加えて水洗を行った後、脱溶剤を行い、表2に示したようなフォトレジスト用樹脂を得た。
(3)テトラヒドロピラニル基の導入
攪拌装置、温度計、熱交換器を備えたフラスコに、合成例1で得られた樹脂のテトラヒドロフラン溶液に3,4−ジヒドロ−2H−ピランを適当量添加し、触媒量のパラトルエンスルホン酸を添加して40℃で4時間反応させた後、トリエチルアミンを用いて中和を行った。イオン交換水を用いて水洗した後、脱溶剤を行い、表2に示したようなフォトレジスト用樹脂を得た。
【0050】
3.フォトレジスト用樹脂の評価
実施例1〜23及び比較例1〜2で得られたフォトレジスト用樹脂について下記の評価を行った。
(1)保護率
熱重量分析装置(SEIKO電子社製・「TG−DTA6300」)を使用し、得られた結果から、酸により脱離可能な各置換基に対応する重量減少により計算した。測定条件としては昇温速度を10℃/min、窒素雰囲気下で行った。
(2)透過率
フォトレジスト用樹脂3gをエチルセロソルブ9gに溶解させ、0.2μmのPTFE製フィルターを用いてろ過した後、スピンコーターを使用して石英ガラス上に塗布した。ホットプレート上で90℃、60秒間ベーキングして膜厚約0.7μmのフィルム膜を形成した。この膜の吸収スペクトルを測定し、248nmにおける透過率を評価した。
(3)重量平均分子量(Mw)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によりポリスチレン標準物質を用いて作成した検量線をもとに計算した。GPC測定はテトラヒドロフランを溶出溶媒とし、流量1.0ml/min、カラム温度40℃の条件で実施した。
・本体:TOSOH社製・「HLC−8020」
・検出器:波長280nmにセットしたTOSOH社製・「UV−8011」
・分析用カラム:昭和電工社製・「SHODEX KF−802、KF−803、KF−805」
をそれぞれ使用した。
【0051】
4.フォトレジスト組成物の調製(実施例101〜123、比較例101〜102)
表3に示したように、実施例1〜23及び比較例1〜2で得られたフォトレジスト用樹脂を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解させて、15%の樹脂溶液を調製し、光酸発生剤(みどり化学社製・「DAM−301」及び「TPS−105」)を添加した後、0.2μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製フィルターを用いてろ過してフォトレジスト組成物を得た。
【0052】
5.フォトレジスト組成物の評価
(1)感度(EOP)
上記調製したフォトレジスト組成物を、スピンコーターを用いてシリコン基板上に塗布し、90℃、60秒間プリベークして、膜厚0.7μmのレジスト膜を形成した。これにKrFエキシマレーザー照射装置(レンズ開口数0.60、露光波長248nm)を用いて露光した。露光後、直ちに90℃で60秒間ベークして、2.38wt%のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイト水溶液により、23℃で60秒間現像し、水洗、乾燥を行い、ポジ型パターンを得た。その際、線幅0.18μmのラインアンドスペースパターン(ラインとスペースの比は1対1)を1対1の線幅に形成する露光量を感度とした。
(2)フォーカスマージン
焦点の位置を上下に移動させて、線幅0.18μmのラインアンドスペースパターンを再現する最小露光量で露光し、PEB及び現像を行ったときに、線幅0.18μmのラインアンドスペースパターンを再現できる許容可能な焦点の範囲を測定した。
(3)限界解像度
(1)で得られた感度に相当する露光量で露光したときに解像される最小のフォトレジストパターンの寸法を解像度とした。
(4)tanθ
横軸に露光量(mJ/cm2)、縦軸に組成物の現像速度(nm/s)をとり、種々の露光量に対するアルカリ溶解速度をプロットした識別曲線(discrimination curve)を作成した。この曲線の変曲点付近における傾きを正接(tanθ)で表した。
(5)耐熱性
本検討により得られたフォトレジスト樹脂および光酸発生剤をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解し、レジスト溶液を調合した。これらを0.2ミクロンメンブレンフィルタ−で濾過し、レジスト組成物とした。ヘキサメチルジシラザン処理したシリコンウエハ上にスピンコーターで乾燥時の膜厚が0.7μmになるように塗布し、110℃において90秒間ホットプレ−ト上で乾燥させた。その後縮小投影露光装置を用い、テストチャ−トマスクを介して露光し、現像液(2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロオキサイド水溶液)を用い、50秒間現像した。得られたシリコンウエハ−を、温度を変えたホットプレ−ト上で30分間放置し、シリコウエハ−上のレジストパタ−ンの形状を走査型電子顕微鏡で観察し、135℃でパターン変形が起こらないものを◎、125℃でパターン変形が起こらないものを○、それ以下を×とした。
(6)パターン形状
得られたポジ型パターン(線幅0.18μmのラインアンドスペースパターン)の形状を走査型電子顕微鏡を用いて観察した。パターン形状が基板から垂直に切り立った矩形であったものを○とし、テーパー状であったものを×とした。
(7)膜減り
現像による膜減りは、未露光部分における現像前後の膜厚の比(現像後/現像前)で表した。
【0053】
ノボラック型フェノール樹脂については表1、フォトレジスト用樹脂については表2、そして、フォトレジスト組成物については表3に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
実施例1〜23は、本発明のフォトレジスト用樹脂である。そして、実施例101〜111は、前記フォトレジスト用樹脂の中で、保護基としてエトキシエチル基を導入した樹脂を用いたフォトレジスト組成物であり、比較例101(ノボラック型フェノール樹脂として実施例と異なるフェノール類を用い、同様にエトキシエチル基を導入したもの)と比べて、感度、解像度に優れ、充分なフォーカスマージンを有し、パターン形状についても優れていた。また、実施例112〜122は、同様に保護基としてtert−ブトキシカルボニル基を導入した樹脂を用いたフォトレジスト組成物であり、比較例102と比べてやはり優れた結果が得られた。そして、実施例123は、保護基としてテトラヒドロピラニル基を導入した樹脂を用いたフォトレジスト組成物であり、これについても同様に良好な特性が得られた。
【0058】
【発明の効果】
本発明は、特定のフェノール類とアルデヒド類とを酸触媒の存在下で反応して得られるノボラック型フェノール樹脂中の水酸基の少なくとも一部を、酸の作用により脱離可能な基で保護したフォトレジスト用樹脂であって、これを用いた化学増幅型フォトレジスト組成物は、解像度、感度に優れ、充分なフォーカスマージンを有し、パターン形状についても優れていた。従って本発明は、特にKrFなどのエキシマレーザーを用いるリソグラフィー用途に対して有用であり、また、現行使用されているポリヒドロキシスチレンよりも簡便かつ安価に製造できることからコスト低減の効果も期待できるものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体を製造する際のリソグラフィーに使用されるフォトレジスト用樹脂及びフォトレジスト組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般にポジ型フォトレジストには、ナフトキノンジアジド化合物等のキノンジアジド基を有する感光剤とアルカリ可溶性樹脂(例えば、ノボラック型フェノール樹脂)が用いられる。このような組成からなるポジ型フォトレジストはアルカリ溶液による現像によって高い解像力を示し、IC、LSI等の半導体製造、LCDなどの回路パターンの製造に利用されている。また、ノボラック型フェノール樹脂は、芳香環を多く持つことに起因する露光後の高いプラズマドライエッチング性と耐熱性を有しており、これまで、ノボラック型フェノール樹脂とナフトキノンジアジド系感光剤を含有する数多くのポジ型フォトレジストが開発、実用化され、2.0〜0.3μm程度までの線幅加工において大きな成果を上げてきた(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0003】
しかし、近年、半導体集積回路の製造工程において、回路パターンの細密化に伴い、高解像度でしかも高感度のフォトレジスト材料が求められている。回路パターンが微細になるほど露光源として用いる光の波長の短波長化が必要であり、光源としてより波長の短いKrF,ArF、F2などのエキシマレーザーを用いるリソグラフィーが検討されている。ところが、従来のナフトキノンジアジド化合物等のキノンジアジド基を有する感光剤とノボラック型フェノール樹脂からなるポジ型フォトレジストでは、KrFエキシマレーザー等の遠紫外領域の光に対して透過率が非常に低い。
【0004】
このような問題を解決するため、新しいポジ型レジストとして、少量の感光剤(光酸発生剤)と酸触媒反応によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大するような化合物からなる化学増幅型ポジ型フォトレジストが種々提案されている。また、これらに用いられる光源としては248、193、157nmの波長の光であるが、ノボラック型フェノール樹脂はそれ自体が有する芳香環による光の吸収により、KrFエキシマレーザー光などの遠紫外領域の光に対しては透過率が非常に低い。そのため光がレジスト底部まで到達しにくく、レジスト底部での露光量が低下して基板表面近くの光酸発生剤が十分に感光せず、現像後にテーパー等のついた不良パターンしか得られなかった。そのため、KrFレジスト用にはポリヒドロキシスチレン、ArFレジスト用にはアクリル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、F2レジスト用にはフッ素系樹脂などを用いて、化学増幅型レジストシステムが適用検討されている。
【0005】
このような理由で、248nmの波長を用いるKrFレジスト用にはポリヒドロキシスチレンを用いたものが多く適用されているが、すべてのレジスト特性を満足しているわけではなく、高解像度でしかも高感度、さらにはプラズマエッチング耐性やレジストパターンの耐熱性を有するものが求められている。
【0006】
【特許文献1】
特開平05−142770号公報
【特許文献2】
特開平11−349653号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、化学増幅型レジストとして、特にKrFエキシマレーザーなどの放射線に対する透明性、解像度、感度、耐熱性、プラズマエッチング耐性に優れ、矩形であるフォトレジストパターンを再現性良く形成する特徴をもつフォトレジストの製造を可能にする樹脂を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、以下の本発明(1)〜(11)によって達成される。
(1)フェノール類とアルデヒド類とを酸触媒の存在下で反応して得られるノボラック型フェノール樹脂中の水酸基の少なくとも一部を、酸の作用により脱離可能な基で保護したフォトレジスト用樹脂であって、前記フェノール類が、下記一般式(I)と(II)で表されるフェノール類をともに含有することを特徴とするフォトレジスト用樹脂。
【化3】
前記一般式(I)中、Xは1価または2価のモノテルペン炭化水素基を示し、R1、R2はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4の直鎖状アルキル基、又は炭素数3〜4の分岐状アルキル基である。
nは1〜3の整数、pは1または2である。
【化4】
前記一般式(II)中、mは1〜3の整数である。
(2)前記フェノール類は、前記一般式(I)で表されるフェノール類50〜90重量%を含有する上記(1)に記載のフォトレジスト用樹脂。
(3)前記フェノール類は、前記一般式(II)で表されるフェノール類10〜30重量%を含有する上記(1)ないし(2)に記載のフォトレジスト用樹脂。
(4)前記一般式(I)で表されるフェノール類が、リモネンを出発原料とするテルペンジフェノールである上記(1)ないし(3)に記載のフォトレジスト用樹脂。
(5)前記一般式(II)で表されるフェノール類が、ピロガロールである上記(1)ないし(4)に記載のフォトレジスト用樹脂。
(6)前記酸の作用により脱離可能な基が、tert−ブトキシカルボニル基、エトキシエチル基、テトラヒドロピラニル基、及びtert−ブチル基から選ばれた1種以上である上記(1)ないし(5)に記載のフォトレジスト用樹脂。
(7)前記酸の作用により脱離可能な基による前記ノボラック型フェノール樹脂中の水酸基の保護率が、5〜90モル%である上記(1)ないし(6)のいずれかに記載のフォトレジスト用樹脂。
(8)GPC測定により得られる重量平均分子量が、1000〜30000である上記(1)ないし(7)のいずれかに記載のフォトレジスト用樹脂。
(9)紫外可視分光光度計により測定される248nmにおける透過率が、30%以上である上記(1)ないし(8)のいずれかに記載のフォトレジスト用樹脂。
(10)下記(X)〜(Z)を必須成分として含有するフォトレジスト組成物。
(X)上記(1)ないし(9)のいずれかに記載のフォトレジスト用樹脂、
(Y)光の作用により酸を発生する化合物、及び
(Z)(X)及び(Y)を溶解する溶媒。
(11)前記(Y)光の作用により酸を発生する化合物が、前記(X)フォトレジスト用樹脂100重量部に対して、0.5〜5重量部である上記(10)に記載のフォトレジスト組成物。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明は、フォトレジスト用樹脂及びフォトレジスト組成物に関するものである。まず、本発明のフォトレジスト用樹脂について説明する。
【0010】
(X)フォトレジスト用樹脂
本発明のフォトレジスト用樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを酸触媒の存在下で反応して得られるノボラック型フェノール樹脂中の水酸基の少なくとも一部を、酸の作用により脱離可能な基で保護したフォトレジスト用樹脂であって、上記フェノール類が、下記一般式(I)と(II)で表されるフェノール類をともに含有することを特徴とする。
【化5】
上記一般式(I)中、Xは1価または2価のモノテルペン炭化水素基を示し、R1、R2はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4の直鎖状アルキル基、又は炭素数3〜4の分岐状アルキル基である。
【化6】
前記一般式(II)中、mは1〜3の整数である。
【0011】
上記一般式(I)で表されるフェノール類は、上記の構造を有したものであれば特に限定されないが、モノテルペン化合物1分子に対して所定のフェノール類を1分子または2分子の割合で付加させたテルペン/フェノール類付加体、すなわちテルペンフェノール類を挙げることができる。
本発明で使用されるこのようなテルペンフェノール類を製造するための原料となるテルペン化合物は、非環式もしくは単環式モノテルペンに由来するものであれば特に限定されない。例えば、非環式モノテルペンとしてはミルセン、オシメン、ゲラニオール、ネロールなどが挙げられ、単環式モノテルペンとしてはリモネン、フェランドレン、テルピネン、シルベストレン等が挙げられる。
【0012】
また、このようなテルペンフェノール類を製造するための他方の原料であるフェノール類としては、例えば、フェノール、オルソクレゾール、メタクレゾール、パラクレゾール、オルソエチルフェノール、メタエチルフェノール、パラエチルフェノール、オルソブチルフェノール、メタブチルフェノール、パラブチルフェノール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,6−キシレノール、パライソプロピルフェノール、パラターシャリーブチルフェノール、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン等が挙げられる。
上記のテルペンフェノール類は、上記のモノテルペンに上記のフェノール類を酸触媒の下で付加させることによって得ることができる。また、このように調製された市販品を用いることもできる。
【0013】
上記一般式(I)で表される上記フェノール類としては特に、リモネンを出発原料とするテルペンジフェノールを用いることが好ましい。これにより、フォトレジストとして用いたとき、透明性に優れたものとすることができる。
【0014】
上記一般式(II)で表されるフェノール類は、上記の構造を有したものであれば特に限定されないが、一価フェノール類としてフェノール、二価フェノール類としてレゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、三価フェノールとしてフロログルシノール、ピロガロール、オキシヒドロキノンが好適に使用できる。
【0015】
上記一般式(II)で表される上記フェノール類としては特に、ピロガロールを用いることが好ましい。これにより、フォトレジストとして用いたとき、現像液に対する易溶解性、耐ドライエッチング性と耐熱性を付与することができる。
【0016】
上記フェノール類の配合量としては特に限定されないが、フェノール類全体に対して、一般式(I)で表されるフェノール類は50〜90重量%であることが好ましく、さらに好ましくは60〜80重量%である。これにより、フォトレジストとして用いたとき、透明性を向上させることができる。
また同様に、一般式(II)で表されるフェノール類は10〜30重量%であることが好ましく、さらに好ましくは10〜25重量%である。これにより、フォトレジストとして用いたとき、透明性と高感度の両方を兼ね備えたものにすることができる。
【0017】
また、本発明のフォトレジスト用樹脂に用いられるフェノール類として、上記一般式(I)と(II)で表されるフェノール類以外のものを併用することもできる。
これらのフェノール類としては特に限定されないが、例えば、オルソクレゾール、パラクレゾール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,4−トリメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2,4,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、フェニルフェノールなどが挙げられる。
【0018】
本発明のフォトレジスト用樹脂に用いられるアルデヒド類としては特に限定されないが、例えば、ホルムアルデヒド(ホルマリン)、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、オクチルアルデヒドなどのアルキルアルデヒド類、アクロレイン、クロトンアルデヒドなどの不飽和アルキルアルデヒド類、サリチルアルデヒド、パラヒドロキシベンズアルデヒドなどのヒドロキシベンズアルデヒド類、ベンズアルデヒド、フタルアルデヒドなどの芳香族アルデヒド類、グリオキサ−ル、グルタルアルデヒドなどのジアルデヒド類が挙げられる。これらは、単独又は混合して使用することができる。
これらの中でも、ホルムアルデヒドが好ましい。これにより、フォトレジストとして用いたときに、透明性を維持しながら、高感度とすることができる。なお、ホルムアルデヒド源としては特に限定されないが、ホルマリン(水溶液)、パラホルムアルデヒド、アルコール類とのヘミホルマール、トリオキサンなど、ホルムアルデヒドを発生するものであれば使用できる。
【0019】
上記フェノール類とアルデヒド類との反応には、酸触媒が一般的に使用される。酸触媒としては特に限定されないが、例えば、蓚酸、酢酸などの有機カルボン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸などの有機スルホン酸、塩酸、硫酸などの無機酸などが挙げられる。これらの中から、単独あるいは2種以上を混合して使用することもできる。酸触媒の使用量は特に限定されないが、フェノール類に対して0.01〜5重量%であることが好ましく、フォトレジスト樹脂の特性のためには少量であることが好ましい。
また、反応溶媒は必要に応じて使用することができるが、種類としては特に限定されず、樹脂を溶解し、反応に寄与するものでなければ使用することができる。
【0020】
本発明のフォトレジスト用樹脂は、ノボラック型フェノール樹脂中の水酸基の少なくとも一部を酸の作用により脱離可能な基で保護した構造を有することを特徴とする。
ここで、酸の作用により脱離可能な基とは、酸が存在しない状態では安定で、かつ、酸により容易に脱離するものであり、特に限定されないが、例えば、アルキル基、アルコキシルカルボニル基、アシル基、環状エーテル基などであり、具体的には、tert−ブトキシカルボニル基、エトキシエチル基、tert−ブチル基、イソプロピルオキシエチル基、プロピルオキシエチル基、イソブチルオキシエチル基、ブチルオキシエチル基、シクロヘキシルオキシエチル基、ヒドロキシブトキシエチル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基などが挙げられる。
これらの中でも、tert−ブトキシカルボニル基、エトキシエチル基、テトラヒドロピラニル基、tert−ブチル基から選ばれた1種以上であることが好ましい。これにより、フォトレジストとして用いた場合に高感度とすることができ、透明性、耐熱性を向上させることができる。
【0021】
上記酸の作用により脱離可能な基による、ノボラック型フェノール樹脂中の水酸基の保護率としては特に限定されないが、樹脂中の水酸基全体に対して5〜90モル%であることが好ましく、さらに好ましくは10〜50モル%である。
保護率が前記下限値よりも低いと、照射光に対する透明性が低下するようになり、アルカリ水溶液に溶解しやすくなるため残膜性が低下する傾向がある。また、前記上限値よりも高いと、照射光に対する透明性や残膜性は良いものの、フォトレジストの感度低下や樹脂の軟化点が低くなることによる耐熱性の低下が起こる場合がある。
【0022】
上記保護率は、使用する保護基の特性により好ましい範囲を選択することができる。
例えば、保護基としてtert−ブチル基、tert−ブトキシカルボニル基を用いた場合は、保護率を高くしても耐熱性の低下は起こりにくい傾向がある。また、エトキシエチル基を用いた場合は、保護率を低めにすることにより、耐熱性を維持し、露光から加熱処理までの間のパターン形状の変化を抑えることができる。
酸によって脱離可能な基による保護率は、例えば、熱重量分析装置(SEIKO電子社製・「TG−DTA6300」)を使用し、得られた結果から、酸により脱離可能な各置換基に対応する重量減少により計算できる。測定条件としては例えば、昇温速度を10℃/min、窒素雰囲気下で行うことができる。
【0023】
ノボラック型フェノール樹脂中の水酸基を酸によって脱離可能な基により保護するために用いられる化合物としては特に限定されないが、例えば、保護基としてtert−ブトキシカルボニル基を導入する場合は、ジ−tert−ブチルジカルボネイト、同様にエトキシエチル基を導入する場合はエチルビニルエーテル、テトラヒドロピラニル基を導入する場合は3,4ジヒドロ−2H−ピランなどを用いることができる。
【0024】
本発明のフォトレジスト用樹脂の分子量は特に限定されないが、GPC測定による重量平均分子量(Mw)が1000〜30000であることが好ましく、さらに好ましくは2000〜20000である。これにより、アルカリ溶解性、耐熱性などのレジスト特性のバランスに優れた樹脂とすることができる。重量平均分子量が上記下限値未満であると耐熱性が低下する場合があり、上記上限値を超えるとフォトレジスト樹脂の感度が不充分になる場合がある。
この重量平均分子量をコントロールする方法としては特に限定されないが、フェノール類(P)に対するアルデヒド類(F)の反応モル比(F/P)を調整する方法が好ましい。上記重量平均分子量を有するフォトレジスト用樹脂を製造する場合は、反応モル比を0.3〜0.8とすることが好ましく、さらに好ましくは0.4〜0.7である。これにより、得られる樹脂の重量平均分子量を適正なものにでき、かつ、樹脂のアルカリ溶解性、耐熱性などを好ましいものにすることができる。
【0025】
なお、上記重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によりポリスチレン標準物質を用いて作成した検量線をもとに計算されたものである。GPC測定はテトラヒドロフランを溶出溶媒とし、流量1.0ml/min、カラム温度40℃の条件で実施した。
・本体:TOSOH社製・「HLC−8020」
・検出器:波長280nmにセットしたTOSOH社製・「UV−8011」
・分析用カラム:昭和電工社製・「SHODEX KF−802、KF−803、KF−805」
をそれぞれ使用した。
【0026】
本発明のフォトレジスト用樹脂は特に限定されないが、紫外可視分光光度計により測定される248nmにおける透過率が、30%以上であることが好ましい。さらに好ましくは40%以上である。これにより、フォトレジストとして用いたときに良好なパターンを描画することができる。透過率が上記下限値より小さいと、光源としてKrFを用いたときの透過性が小さくなり、感度が低下してパターン形成が不十分になることがある。
【0027】
上記透過率は、例えばUV分光光度計(日立製作所社製・「U−2000」)を使用し、波長が248nmの光に対する透過率の測定を行うことにより評価することができる。評価用サンプルは、石英ガラス上に溶剤に溶解した樹脂溶液をスピンコーターにより塗布し、90℃のホットプレート上で100秒間脱溶剤処理して、約0.5μmの厚みになるよう石英ガラス上に樹脂フィルムを形成して作成することができる。
【0028】
次に、本発明のフォトレジスト用樹脂を合成する手順について説明する。以下に説明する合成方法は一例であり、特にこれに限定されるものではない。
まず、ノボラック型フェノール樹脂を合成する。合成は攪拌装置、温度計、熱交換器を備えた反応容器に、フェノール類、アルデヒド類を仕込み、酸触媒を添加して行うことができる。この反応において、反応温度や時間については上記原料の反応性などによって適宜設定すればよいが、安定して経済的に合成するためには、反応時間を2〜10時間、反応温度は70〜150℃とすることが好ましい。また、必要によっては反応溶媒を使用することもできる。溶媒の種類は特に限定されないが、エチルセロソルブ、メチルエチルケトン等、反応により得られる樹脂を溶解する溶媒が好ましい。
【0029】
この反応終了後、例えば酸触媒を除去するために塩基性化合物を添加して中和し、中和塩を水洗により除去してもよい。水洗水の量と回数は特に限定されないが、水洗回数は、実質的に影響ないレベルまで樹脂中の中和塩を除去させることと経済的観点から1〜5回程度が好ましい。また、水洗温度は、特に限定されないが、中和塩の除去効率と作業性の観点から40〜95℃で行うのが好ましい。
【0030】
この反応または水洗終了後、常圧下及び/または減圧下で脱水・脱モノマーを行う。脱水・脱モノマーを行う減圧度は特に限定されないが、0.1torr〜200torr程度が好ましい。脱水・脱モノマー後の反応容器からの取り出し温度は、特に限定されないが、樹脂の特性や粘度などにより適宜設定できる。樹脂の安定性の観点からは、150〜250℃が好ましい。このようにして、本発明のフォトレジスト用樹脂のベースとなるノボラック型フェノール樹脂が得られる。
【0031】
次に、上記ノボラック型フェノール樹脂から、フォトレジスト用樹脂を製造する方法について説明する。
上記の方法で得られたノボラック型フェノール樹脂中の水酸基の少なくとも一部を酸により脱離可能な基で保護する。こうして得られたフォトレジスト用樹脂は、酸の作用によりこの保護基が容易に脱離して遊離の水酸基を生成させることができ、これにより、脱保護が起こらなかった部分との間にアルカリ現像液に対する溶解性に差を生じることにより、レジスト機能が付与される。
酸により脱離可能な基で上記ノボラック型フェノール樹脂中の水酸基を保護する方法は、この酸により脱離可能な基の種類により使用される原料及び方法が異なるため特に限定されないが、例えばtert−ブトキシカルボニル基により保護する場合は、上記のノボラック型フェノール樹脂中に所定量のジ−tert−ブチルジカルボネイトを添加して塩基性化合物の存在下で所定時間反応させて置換することができる。また、エトキシエチル基またはテトラヒドロピラニル基により保護する場合は、それぞれエチルビニルエーテル又はジヒドロピランを酸性触媒の存在下で所定時間反応させて置換することができる。
【0032】
本発明のフォトレジスト用樹脂の合成にあたって、反応容器等の装置材質は特に限定されないが、不純物の混入を防止する観点からガラスライニング製、テフロン(登録商標)製、あるいはタンタル、ハフニウム、ジルコニウム、ニオブ、チタンから選ばれた金属ないしそれらの合金からなり、実質的に他の材料を含まない腐食に強い金属材料を反応装置材料として用いた製造装置を使用することが望ましい。
【0033】
次に、本発明のフォトレジスト組成物(以下、「組成物」という)について説明する。
本発明の組成物は、上記フォトレジスト用樹脂、光の作用により酸を発生する化合物(以下、「光酸発生剤」という)、及びフォトレジスト用樹脂と光酸発生剤とを溶解する溶媒(以下、「溶媒」という)を必須成分として配合してなるものである。
本発明の組成物をフォトレジストとして使用した場合、光の照射により光酸発生剤が酸を発生し、この酸の作用により、フォトレジスト用樹脂に脱保護反応が起こる。脱保護が起こった部分のフォトレジスト用樹脂は、後の現像工程においてアルカリ現像液に溶解し、脱保護反応が起こらなかった部分のフォトレジスト用樹脂との間に明確な溶解速度差を生ずることで、目的とするパターンを現像により得ることができる。
【0034】
(Y)光酸発生剤
本発明の組成物で用いられる光酸発生剤としては特に限定されないが、スルホニウム塩誘導体[スルホン酸エステル(1,2,3−トリ(メチルスルホニルオキシ)ベンゼンなどのアリールアルカンスルホネート(特にC6−10アリールC1−2アルカンスルホネート);2,6−ジニトロベンジルトルエンスルホネート、ベンゾイントシレートナドノアリールベンゼンスルホネート(特にベンゾイル基を有していてもよいC6−10アリールトルエンホスホネート);2−ベンゾイルー2−ヒドロキシ−2−フェニルエチルトルエンスルホネートなどのアラルキルベンゼンスルホネート類(特にベンゾイル基を有していてもよいC6−10アリール―C1−4アルキルトルエンスルホネート);ジフェニルジスルホンなどのジスルホン酸;ルイス酸塩(トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモン、トリフェニルスルホニウムメタンスルホニルなどのトリアリールスルホニウム塩(特にトリフェニルスルホニウム塩)など)など)]、ホスホニウム塩誘導体、ジアリールハロニウム塩誘導体[ジアリールヨードニウム塩(ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェートなど)などのルイス酸塩など]、ジアゾニウム塩誘導体(p−ニトロフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェートなどのルイス酸塩など)、ジアゾメタン誘導体、トリアジン誘導体などが例示できる。特に、ルイス酸塩(ホスホニウム塩などのルイス酸塩)が好ましい。
【0035】
光酸発生剤の配合量は特に限定されないが、上記フォトレジスト用樹脂100重量部に対して、0.5〜5重量部であることが好ましく、さらに好ましくは1〜4重量部である。これにより、組成物の感度、解像度が良好になる。
光酸発生剤の配合量が上記下限値未満であるとフォトレジスト用樹脂の脱保護反応が進行しにくくなるため像が充分に形成されないことがある。一方、上記上限値を越えると脱保護反応が急速に進行するようになるため、現像時にフォトレジスト用樹脂が溶解しやすくなり、像を形成しにくくなったり、光酸発生剤を含有したフォトレジスト用樹脂の融点が低くなるために耐熱性が低下する原因になったりすることがある。
【0036】
(Z)溶媒
本発明の組成物に配合される溶媒としては、上記フォトレジスト用樹脂と光酸発生剤とを溶解するものであれば特に限定されないが、例えば、水、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、ケトン類、エステル類、エーテル類、アミド類、炭化水素類などを挙げることができ、具体的には、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、メトキシエチルプロピオネート、エトキシエチルプロピオネート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、メチルペンチルケトンなどが挙げられる。これらの中でも、溶解性、塗膜安定性、安全性、環境への影響、人体への影響、経済性の観点から、PGMEA、エトキシエチルプロピオネート、乳酸エチルが特に好ましい。これらは単独または2種以上混合して用いられる。
【0037】
次に、本発明の組成物の製造方法について説明する。
まず、(X)フォトレジスト用樹脂と(Y)光酸発生剤とを、(Z)溶媒に溶解する。その際、必要により、酸化防止剤などの安定剤、可塑剤、界面活性剤、密着性向上剤、溶解促進剤などの種々の添加剤を添加してもよい。溶解は、上記の各成分を任意の順で溶解してもよい。通常、室温程度の温度条件下、各成分が十分溶解する時間(例えば6〜12時間)、攪拌する事により溶解させることができる。
溶解終了後、フィルター(ろ過精度が0.1μm以下のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)フィルタ−などが好ましい)などを利用して異物を除去し、あらかじめ異物、金属不純物などが除去された容器に充填する。充填する際は、クラス100以下のクリーンルーム内で、人間が関与しない自動充填装置などを使用することが好ましい。
また、フォトレジスト用樹脂あるいは組成物については、必要により、金属不純物を除くために酸水溶液や純水などによる洗浄又はイオン交換樹脂による脱金属処理を行うことが可能である。
【0038】
【実施例】
以下本発明を実施例により詳細に説明する。ここに記載されている「部」および「%」はすべて「重量部」および「重量%」を示し、本発明はこれら実施例により何ら制約されるものではない。
【0039】
(1)ノボラック型フェノール樹脂の合成(合成例1〜10)
合成例1
攪拌装置、温度計、熱交換器を備えた3Lの4つ口フラスコに、リモネンを出発原料とするテルペンジフェノール972部、43%ホルマリン206.3部、エチルセロソルブ97.2部、蓚酸4.9部を仕込み、98〜102℃で4時間反応を行った後、ピロガロール243部を添加して98〜102℃でさらに2時間反応を行った。続けて内温170℃まで常圧下で脱水し、さらに80torrの減圧下で200℃まで脱水・脱モノマーを行い、フェノール樹脂1238部を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は7550であった。
【0040】
合成例2
攪拌装置、温度計、熱交換器を備えた3Lの4つ口フラスコに、リモネンを出発原料とするテルペンジフェノール972部、43%ホルマリン166.8部、エチルセロソルブ97.2部、蓚酸4.9部を仕込み、98〜102℃で4時間反応を行った後、ピロガロール108部を添加して98〜102℃でさらに2時間反応を行った。続けて内温170℃まで常圧下で脱水し、さらに80torrの減圧下で200℃まで脱水・脱モノマーを行い、フェノール樹脂1094部を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は7520であった。
【0041】
合成例3
攪拌装置、温度計、熱交換器を備えた3Lの4つ口フラスコに、リモネンを出発原料とするテルペンジフェノール972部、43%ホルマリン292.7部、エチルセロソルブ97.2部、蓚酸4.9部を仕込み、98〜102℃で4時間反応を行った後、ピロガロール583部、メタクレゾール388.8部を添加して98〜102℃でさらに2時間反応を行った。続けて内温170℃まで常圧下で脱水し、さらに80torrの減圧下で200℃まで脱水・脱モノマーを行い、フェノール樹脂1966部を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は7356であった。
【0042】
合成例4
攪拌装置、温度計、熱交換器を備えた3Lの4つ口フラスコに、リモネンを出発原料とするテルペンジフェノール972部、43%ホルマリン185.7部、エチルセロソルブ97.2部、蓚酸4.9部を仕込み、98〜102℃で4時間反応を行った後、ピロガロール243部を添加して98〜102℃でさらに2時間反応を行った。続けて内温170℃まで常圧下で脱水し、さらに80torrの減圧下で200℃まで脱水・脱モノマーを行い、フェノール樹脂1230部を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は2464であった。
【0043】
合成例5
攪拌装置、温度計、熱交換器を備えた3Lの4つ口フラスコに、リモネンを出発原料とするテルペンジフェノール972部、43%ホルマリン213.2部、エチルセロソルブ97.2部、蓚酸4.9部を仕込み、98〜102℃で4時間反応を行った後、ピロガロール243部を添加して98〜102℃でさらに2時間反応を行った。続けて内温170℃まで常圧下で脱水し、さらに80torrの減圧下で200℃まで脱水・脱モノマーを行い、フェノール樹脂1241部を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は12568であった。
【0044】
合成例6
攪拌装置、温度計、熱交換器を備えた3Lの4つ口フラスコに、リモネンを出発原料とするテルペンジフェノール972部、43%ホルマリン175.4部、エチルセロソルブ97.2部、蓚酸4.9部を仕込み、98〜102℃で4時間反応を行った後、ピロガロール243部を添加して98〜102℃でさらに2時間反応を行った。続けて内温170℃まで常圧下で脱水し、さらに80torrの減圧下で200℃まで脱水・脱モノマーを行い、フェノール樹脂1226部を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は1638であった。
【0045】
合成例7
攪拌装置、温度計、熱交換器を備えた3Lの4つ口フラスコに、リモネンを出発原料とするテルペンジフェノール972部、43%ホルマリン223.5部、エチルセロソルブ97.2部、蓚酸4.9部を仕込み、98〜102℃で4時間反応を行った後、ピロガロール243部を添加して98〜102℃でさらに2時間反応を行った。続けて内温170℃まで常圧下で脱水し、さらに80torrの減圧下で200℃まで脱水・脱モノマーを行い、フェノール樹脂1246部を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は19320であった。
【0046】
合成例8
攪拌装置、温度計、熱交換器を備えた3Lの4つ口フラスコに、リモネンを出発原料とするテルペンジフェノール972部、43%ホルマリン225.4部、エチルセロソルブ97.2部、蓚酸4.9部を仕込み、98〜102℃で4時間反応を行った後、レゾルシノール243部を添加して98〜102℃でさらに2時間反応を行った。続けて内温170℃まで常圧下で脱水し、さらに80torrの減圧下で200℃まで脱水・脱モノマーを行い、フェノール樹脂1323部を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は7425であった。
【0047】
合成例9
攪拌装置、温度計、熱交換器を備えた3Lの4つ口フラスコに、ゲラニオールを出発原料とするテルペンジフェノール972部、43%ホルマリン150.2部、エチルセロソルブ97.2部、蓚酸4.9部を仕込み、98〜102℃で4時間反応を行った後、ピロガロール108部を添加して98〜102℃でさらに2時間反応を行った。続けて内温170℃まで常圧下で脱水し、さらに80torrの減圧下で200℃まで脱水・脱モノマーを行い、フェノール樹脂1087部を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は7330であった。
【0048】
合成例10
攪拌装置、温度計、熱交換器を備えた3Lの4つ口フラスコに、メタクレゾール1200部、43%ホルマリン720.9部、エチルセロソルブ120部、蓚酸2.4部を仕込み、58〜62℃で2時間反応を行った後、さらに98〜102℃で4時間反応を行い、さらにエチルセロソルブ97.2部を添加して内温170℃まで常圧下で脱水し、さらに80torrの減圧下で200℃まで脱水・脱モノマーを行い、フェノール樹脂1359部を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は7420であった。
【0049】
2.フォトレジスト用樹脂の合成(実施例1〜23、比較例1〜2)
(1)エトキシエチル基の導入
攪拌装置、温度計、熱交換器を備えたフラスコに、合成例1〜10で得られた樹脂のテトラヒドロフラン溶液に、エチルビニルエーテルを適当量添加し、触媒量のパラトルエンスルホン酸を添加して40℃で4時間反応させた後、トリエチルアミンを用いて中和を行った。イオン交換水を用いて水洗した後、脱溶剤を行い、表2に示したようなフォトレジスト用樹脂を得た。
(2)tert−ブトキシカルボニル基の導入
攪拌装置、温度計、熱交換器を備えたフラスコに、合成例1〜10で得られた樹脂のテトラヒドロフラン溶液に、ジ−tert−ブチルジカルボネイトとトリエチルアミンとを適当量添加し、60℃で6時間反応させた後、酢酸で中和を行った。イオン交換水を加えて水洗を行った後、脱溶剤を行い、表2に示したようなフォトレジスト用樹脂を得た。
(3)テトラヒドロピラニル基の導入
攪拌装置、温度計、熱交換器を備えたフラスコに、合成例1で得られた樹脂のテトラヒドロフラン溶液に3,4−ジヒドロ−2H−ピランを適当量添加し、触媒量のパラトルエンスルホン酸を添加して40℃で4時間反応させた後、トリエチルアミンを用いて中和を行った。イオン交換水を用いて水洗した後、脱溶剤を行い、表2に示したようなフォトレジスト用樹脂を得た。
【0050】
3.フォトレジスト用樹脂の評価
実施例1〜23及び比較例1〜2で得られたフォトレジスト用樹脂について下記の評価を行った。
(1)保護率
熱重量分析装置(SEIKO電子社製・「TG−DTA6300」)を使用し、得られた結果から、酸により脱離可能な各置換基に対応する重量減少により計算した。測定条件としては昇温速度を10℃/min、窒素雰囲気下で行った。
(2)透過率
フォトレジスト用樹脂3gをエチルセロソルブ9gに溶解させ、0.2μmのPTFE製フィルターを用いてろ過した後、スピンコーターを使用して石英ガラス上に塗布した。ホットプレート上で90℃、60秒間ベーキングして膜厚約0.7μmのフィルム膜を形成した。この膜の吸収スペクトルを測定し、248nmにおける透過率を評価した。
(3)重量平均分子量(Mw)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によりポリスチレン標準物質を用いて作成した検量線をもとに計算した。GPC測定はテトラヒドロフランを溶出溶媒とし、流量1.0ml/min、カラム温度40℃の条件で実施した。
・本体:TOSOH社製・「HLC−8020」
・検出器:波長280nmにセットしたTOSOH社製・「UV−8011」
・分析用カラム:昭和電工社製・「SHODEX KF−802、KF−803、KF−805」
をそれぞれ使用した。
【0051】
4.フォトレジスト組成物の調製(実施例101〜123、比較例101〜102)
表3に示したように、実施例1〜23及び比較例1〜2で得られたフォトレジスト用樹脂を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解させて、15%の樹脂溶液を調製し、光酸発生剤(みどり化学社製・「DAM−301」及び「TPS−105」)を添加した後、0.2μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製フィルターを用いてろ過してフォトレジスト組成物を得た。
【0052】
5.フォトレジスト組成物の評価
(1)感度(EOP)
上記調製したフォトレジスト組成物を、スピンコーターを用いてシリコン基板上に塗布し、90℃、60秒間プリベークして、膜厚0.7μmのレジスト膜を形成した。これにKrFエキシマレーザー照射装置(レンズ開口数0.60、露光波長248nm)を用いて露光した。露光後、直ちに90℃で60秒間ベークして、2.38wt%のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイト水溶液により、23℃で60秒間現像し、水洗、乾燥を行い、ポジ型パターンを得た。その際、線幅0.18μmのラインアンドスペースパターン(ラインとスペースの比は1対1)を1対1の線幅に形成する露光量を感度とした。
(2)フォーカスマージン
焦点の位置を上下に移動させて、線幅0.18μmのラインアンドスペースパターンを再現する最小露光量で露光し、PEB及び現像を行ったときに、線幅0.18μmのラインアンドスペースパターンを再現できる許容可能な焦点の範囲を測定した。
(3)限界解像度
(1)で得られた感度に相当する露光量で露光したときに解像される最小のフォトレジストパターンの寸法を解像度とした。
(4)tanθ
横軸に露光量(mJ/cm2)、縦軸に組成物の現像速度(nm/s)をとり、種々の露光量に対するアルカリ溶解速度をプロットした識別曲線(discrimination curve)を作成した。この曲線の変曲点付近における傾きを正接(tanθ)で表した。
(5)耐熱性
本検討により得られたフォトレジスト樹脂および光酸発生剤をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解し、レジスト溶液を調合した。これらを0.2ミクロンメンブレンフィルタ−で濾過し、レジスト組成物とした。ヘキサメチルジシラザン処理したシリコンウエハ上にスピンコーターで乾燥時の膜厚が0.7μmになるように塗布し、110℃において90秒間ホットプレ−ト上で乾燥させた。その後縮小投影露光装置を用い、テストチャ−トマスクを介して露光し、現像液(2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロオキサイド水溶液)を用い、50秒間現像した。得られたシリコンウエハ−を、温度を変えたホットプレ−ト上で30分間放置し、シリコウエハ−上のレジストパタ−ンの形状を走査型電子顕微鏡で観察し、135℃でパターン変形が起こらないものを◎、125℃でパターン変形が起こらないものを○、それ以下を×とした。
(6)パターン形状
得られたポジ型パターン(線幅0.18μmのラインアンドスペースパターン)の形状を走査型電子顕微鏡を用いて観察した。パターン形状が基板から垂直に切り立った矩形であったものを○とし、テーパー状であったものを×とした。
(7)膜減り
現像による膜減りは、未露光部分における現像前後の膜厚の比(現像後/現像前)で表した。
【0053】
ノボラック型フェノール樹脂については表1、フォトレジスト用樹脂については表2、そして、フォトレジスト組成物については表3に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
実施例1〜23は、本発明のフォトレジスト用樹脂である。そして、実施例101〜111は、前記フォトレジスト用樹脂の中で、保護基としてエトキシエチル基を導入した樹脂を用いたフォトレジスト組成物であり、比較例101(ノボラック型フェノール樹脂として実施例と異なるフェノール類を用い、同様にエトキシエチル基を導入したもの)と比べて、感度、解像度に優れ、充分なフォーカスマージンを有し、パターン形状についても優れていた。また、実施例112〜122は、同様に保護基としてtert−ブトキシカルボニル基を導入した樹脂を用いたフォトレジスト組成物であり、比較例102と比べてやはり優れた結果が得られた。そして、実施例123は、保護基としてテトラヒドロピラニル基を導入した樹脂を用いたフォトレジスト組成物であり、これについても同様に良好な特性が得られた。
【0058】
【発明の効果】
本発明は、特定のフェノール類とアルデヒド類とを酸触媒の存在下で反応して得られるノボラック型フェノール樹脂中の水酸基の少なくとも一部を、酸の作用により脱離可能な基で保護したフォトレジスト用樹脂であって、これを用いた化学増幅型フォトレジスト組成物は、解像度、感度に優れ、充分なフォーカスマージンを有し、パターン形状についても優れていた。従って本発明は、特にKrFなどのエキシマレーザーを用いるリソグラフィー用途に対して有用であり、また、現行使用されているポリヒドロキシスチレンよりも簡便かつ安価に製造できることからコスト低減の効果も期待できるものである。
Claims (11)
- 前記フェノール類は、前記一般式(I)で表されるフェノール類50〜90重量%を含有する請求項1に記載のフォトレジスト用樹脂。
- 前記フェノール類は、前記一般式(II)で表されるフェノール類10〜30重量%を含有する請求項1ないし2に記載のフォトレジスト用樹脂。
- 前記一般式(I)で表されるフェノール類が、リモネンを出発原料とするテルペンジフェノールである請求項1ないし3に記載のフォトレジスト用樹脂。
- 前記一般式(II)で表されるフェノール類が、ピロガロールである請求項1ないし4に記載のフォトレジスト用樹脂。
- 前記酸の作用により脱離可能な基が、tert−ブトキシカルボニル基、エトキシエチル基、テトラヒドロピラニル基、及びtert−ブチル基から選ばれた1種以上である請求項1ないし5に記載のフォトレジスト用樹脂。
- 前記酸の作用により脱離可能な基による前記ノボラック型フェノール樹脂中の水酸基の保護率が、5〜90モル%である請求項1ないし6のいずれかに記載のフォトレジスト用樹脂。
- GPC測定により得られる重量平均分子量が、1000〜30000である請求項1ないし7のいずれかに記載のフォトレジスト用樹脂。
- 紫外可視分光光度計により測定される248nmにおける透過率が、30%以上である請求項1ないし8のいずれかに記載のフォトレジスト用樹脂。
- 下記(X)〜(Z)を必須成分として含有するフォトレジスト組成物。
(X)請求項1ないし9のいずれかに記載のフォトレジスト用樹脂、
(Y)光の作用により酸を発生する化合物、及び
(Z)(X)及び(Y)を溶解する溶媒。 - 前記(Y)光の作用により酸を発生する化合物が、前記(X)フォトレジスト用樹脂100重量部に対して、0.5〜5重量部である請求項10に記載のフォトレジスト組成物。
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