JP2004231478A - 屈折率分布型レンズ及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】内付け法により製造された屈折率分布型レンズにおいて、屈折率の分布にセンターディップのない屈折率分布型レンズを製造する方法、及びセンターディップのない屈折率分布型レンズを提供すること。
【解決手段】石英管12内にガラス原料ガスを送り込み、石英管12内部にガラス層13を堆積させて、径方向に屈折率の分布を有する構造の外部母材14を得た後、外部母材14内部の空洞に、径方向に屈折率の分布を有する構造の挿入母材15を挿入してレンズ母材を得る。該レンズ母材に2000℃程度の熱を加えて棒状のプリフォームとし、これを線引きし、屈折率分布型レンズを得る。
【選択図】 図1
【解決手段】石英管12内にガラス原料ガスを送り込み、石英管12内部にガラス層13を堆積させて、径方向に屈折率の分布を有する構造の外部母材14を得た後、外部母材14内部の空洞に、径方向に屈折率の分布を有する構造の挿入母材15を挿入してレンズ母材を得る。該レンズ母材に2000℃程度の熱を加えて棒状のプリフォームとし、これを線引きし、屈折率分布型レンズを得る。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、波長多重光通信システムにおける光アンプの利得等化フィルタや高密度波長多重(DWDM)光通信、粗密度波長多重(CWDM)光通信に使用される屈折率分布型レンズ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の通信容量の大容量化に伴って、波長多重数の増加や光増幅器の増幅率の増大により、光ファイバ内を伝搬する光強度が増加している。このため、各部品の高強度光に対する耐性が要求されている。たとえば、数Wクラスの高エネルギーの光を光ファイバ中に伝搬させる要求がある。
光耐性は、光が光ファイバ中を伝搬しているときは、あまり問題とならない。なぜなら、光ファイバの組成が石英系であり、伝搬光の波長帯域に対して光吸収が非常に小さいためである。
これに対して、光ファイバから光が出射する場合、及び光ファイバに光が入射する場合の出射先、入射元の素材の光耐性が問題となる。特に光ファイバからの入出射端は、光ビームが集束しているため、エネルギー密度が高く、損傷を最も受けやすい。そのため、高い光耐性が要求される。
【0003】
一方、径方向に屈折率の分布を有する屈折率分布型のレンズとして、GRINレンズが知られている。GRINレンズは、平面でも屈折力を持つことや、球面収差を生じない等の特長を生かし、コピー機などに用いる読み取りレンズ、マイクロレンズなど、多様な用途に応用されている。
一般的なGRINレンズは、屈折率が大きいフリントガラスに屈折率分布を持たせた構造で、レンズ自体の光損失は、波長1.5μm帯において0.02dB/cmである。
それに対して、石英系のGRINレンズは、レンズ自体の光損失が0.00002dB/cmと桁違いに小さく、挿入損失の向上が期待できると共に高強度光が入射した場合の材料の吸収による温度上昇も桁違いに小さくなることから、高強度光の連続入射による温度上昇に伴う光学特性の劣化は言うに及はず、長期的な信頼性においても有利である。また、光ファイバと同じ石英製であるため、光ファイバと融着接続することが可能で、高強度光に対する耐性を得ることが期待できる。
【0004】
GRINレンズの製造方法としては、一般的にはイオン交換法が用いられている。その他、一般的な光ファイバの製造に用いられる方法等が利用できる。一般的な光ファイバの製造方法の1つとして、石英管を使用して、石英管内部に所望の屈折率分布のガラス層を堆積させたのち、この石英管を強熱してコラプス(中実化)する内付け法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特許第2527849号明細書
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のような内付け法では、石英管の内部にガラスを堆積させるため、最後に、中心軸方向に若干の空洞が残ってしまい、屈折率の分布にセンターディップが見られるという問題があった。
図3は、内付け法により得られる従来のGRINレンズ31の(a)概略図及び(b)径方向の屈折率nの分布を示すグラフである。従来のGRINレンズ31は、石英管32の内側にレンズ層33が形成されており、その中心部分に空洞34が残っている。そのため、図1(b)に示すように、径方向での屈折率nの分布が、中心部分(空洞部分)で落ち込んだ形状となっており、この落ち込みがセンターディップ35である。
このようなセンターディップを有するGRINレンズを用いた場合、センターディップで光が反射・散乱されてしまうため、約0.4dBの光の損失が生じてしまう。特に、コリメータに用いる場合、コリメータを対向させると約0.8dBの光の損失となってしまう。
このセンターディップの問題は、光ファイバ、例えばGIファイバを製造する場合にはあまり問題とはならない。つまり、上述のような製造方法において、石英管は、ガラス層堆積後、2000℃程度の熱が加えられる(コラプス工程)。これにより、石英ガラスの粘度が下がり、中心軸方向に押しつぶされて棒状の母材(プリフォーム)になり、空洞が狭められる。そして、さらに、光ファイバの径(125μm又は250μm)まで細径化する線引き工程を行うので、センターディップの大きさはさらに縮小され、GIファイバの特性への影響は皆無となる。
しかしながら、本発明者らは、鋭意研究を行った結果、同様の工程によって得られた母材を用いて、径の太い、例えば外径が0.3mm以上のGRINレンズを製造した場合、コラプス工程で押しつぶしをおこない、さらに線引き工程による細径化を行った後でも、依然として、約10μm程度の径の空洞が残ってしまい、屈折率分布に大きなセンターディップが見られるという問題があることがわかった。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、内付け法により製造された屈折率分布型レンズにおいて、屈折率の分布にセンターディップのない屈折率分布型レンズを製造する方法、及び、センターディップのない屈折率分布型レンズを提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の第1の発明は、石英ガラスを主成分とし、径方向に屈折率の分布を有する屈折率分布型レンズの製造方法であって、石英管内にガラス原料ガスを送り込み、石英管内部にガラス層を堆積させて、径方向に屈折率の分布を有する構造の外部母材を得る内付け工程と、前記外部母材内部の空洞に、径方向に屈折率の分布を有する構造の挿入母材を挿入してレンズ母材を得る挿入工程と、前記レンズ母材を加熱して軟化させ、棒状のプリフォームを得るコラプス工程と、前記プリフォームを線引きし、屈折率分布型レンズを得る線引き工程とを有することを特徴とするGRINレンズの製造方法である。内付け法によって得られた外部母材の内部には、軸方向に、円筒状の空洞が形成されている。この空洞に対して、最適な屈折率分布(屈折率分布が√aとなるような屈折率分布)を有する挿入母材を予め作製しておき、これを挿入して、線引きを行うことにより、センターディップのないGRINレンズを製造することができる。
【0009】
本発明の好ましい実施態様においては、前記挿入母材は、VAD法により製造されたものであることが好ましい。挿入母材をVAD法により製造することにより、ただの石英棒を挿入する場合に比べて、挿入後の母材は理想的な屈折率分布が得られ、また、光ファイバと同じ製法で研削等の工程が不要なため、高純度、低OH濃度で低光損失の母材が容易に得られるなどの利点がある。
【0010】
また、本発明の別の好ましい実施態様においては、前記挿入母材は、前記内付け工程と同様の工程により得られた母材の石英管部を除去して、又は、石英管部を除去した後線引きして、その外径を前記空洞の内径に合わせたものであることが好ましい。挿入母材を上述のようにして製造することにより、石英管部を除去する工程が必要となるが、より理想的な屈折率分布が得られるなどの利点がある。
【0011】
また、本発明においては、前記空洞の内径が75μm以上であることが好ましい。これにより、後述する挿入母材の加工及び挿入等の取扱いが容易となる。なお、空洞の内径が75μm以上の場合、従来は、センターディップのないGRINレンズを製造することは困難であった。
【0012】
また、前記挿入工程において、さらに、前記外部母材と前記挿入母材との界面部分に、低ガラス転移点材料層を形成することが好ましい。外部母材内の空洞の表面、又は、挿入母材の外表面に、ホウ素やリンなどの、ガラス転移点を降下させる不純物を添加するなどして低ガラス転移点材料層を形成することにより、屈折率を最適に保ちつつ外部母材と挿入母材と密着が良好になる。
【0013】
上記課題を解決する本発明の第2の発明は、上記製造方法によって得られたGRINレンズである。上記製造方法によって得られたGRINレンズは、中央部分に空洞がなく、屈折率の分布にセンターディップがない理想的な屈折率分布を示すため、光の反射・散乱による光の損失を低減することができる。
また、上記課題を解決する本発明の第3の発明は、石英ガラスを主成分とし、径方向に屈折率の分布を有する、センターディップのないGRINレンズであり、例えば、上述したような製造方法により製造することができる。
本発明のGRINレンズは、石英ガラスを主成分とするため、石英ガラスを主成分とする光ファイバや光導波路等と接続した場合に屈折率の差が小さく、接合面における反射減衰量を低下させることができる。また、石英ガラスを主成分とする光ファイバや光導波路等との接続が容易であると共に、接続強度を安定して維持しやすい。特に、融着接続をする際に、被接続体の一方のみが軟化しすぎて、形状が大きく崩れてしまうという問題が生じない。また、両者の線膨張係数にも差がないので、冷却時に発生する歪みによって、融着強度が低下してしまうという問題も生じない。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本実施形態のGRINレンズは、石英ガラスを主成分とし、レンズ内に屈折率分布が形成されたレンズである。このレンズにおける屈折率分布の理想的な状態は式(1)で表される。
【0015】
n2(r)=n0 2sech2(gr)=n0 2{1−(gr)2+h4(gr)4+h6(gr)6+…} (1)
【0016】
式(1)において、nは屈折率、n0はレンズ中心軸(光軸)上の屈折率、rはレンズ中心軸からの径方向位置、gは、屈折率変化の大きさ、hは高次項の係数を意味している。ここで、高次項の合わせ込みがレンズの特性を向上させるためには重要となる。
【0017】
屈折率分布を得る手法としては、石英管を使用して、石英管内部に所望の屈折率のガラスを堆積させる内付け法を用いる。内付け法としては、CVD(chemical vapor deposition)法が好ましく用いられる。
CVD法は、反応系分子の気体あるいはこれと不活性のキャリヤーとの混合気体を加熱した基板上に流し、加水分解、自己分解、光分解、酸化還元、置換などの反応による生成物を基板上に堆積させる方法である。基板上で原子やイオンを反応させて薄膜試料をつくるため、反応温度が比較的低く、膜の組成を制御しやすいという利点を有している。
CVD法としては、特に、PCVD法及びMCVD法が好ましく用いられる。中でも、PCVD法は、屈折率制御性が良いので好ましく用いられる。
PCVD法の場合、石英管内にガラス原料ガスを送り込み、プラズマにより石英管の内側にプラズマを発生させ、原料ガスを酸化反応させることによりガラス層の堆積を行う。一方、MCVD法の場合、石英管内にガラス原料ガスを送り込み、石英管をその中心軸廻りに回転させながら外部からバーナで加熱して石英管内壁にガラス層を堆積させる。
【0018】
このようなPCVD法により優れた屈折率制御性が得られる。その理由としては、まず、PCVD法は、マグネトロンからのマイクロ波電力でガラス管内にプラズマを発生させ、プラズマ中の電子と原料分子の作用により、直接酸化反応を起こさせているため、屈折率を上げるためにドープするGeを、100%に近い状態で安定して酸化反応させることができることが挙げられる。また、PCVD法では、一回のガラス堆積での堆積厚さが非常に薄くできることが挙げられる。つまり、非常に細かいステップで屈折率を制御できるので、屈折率分布の形状を理想的形状に、より近づけることが可能となるものである。
このように、屈折率制御性が良いため、屈折率分布形成後にその修正のための後加工が不必要となることから、低コスト化が達成できる。
【0019】
一方、MCVD法は、原料ガスの加熱を、ガラス管の外側からバーナによる炎で行う点が、PCVD法と異なっている。MCVD法は、例えば、以下のようにして行うことができる。まず、石英管をその中心軸廻りに回転させ、その一端部から、ガラス原料ガスであるSiCl4、GeCl4、O2などを供給する。石英管の下方にはバーナが設けられ、このバーナは石英管の長手方向に沿って往復移動(トラバース)し、石英管を加熱する。石英管内では、ガラス原料ガスが加熱されて気相酸化反応によりSiO2やGeO2などのガラス微粒子が生成し、このガラス微粒子は、石英管内壁に堆積し、ただちに透明ガラス化されガラス層となる。ガラス原料ガスの気相酸化反応により生成するCl2を主体とする排ガスを石英管の他端から排気する。ガラス層の堆積が終了すると、ガラス原料ガスの供給を停止し、バーナにより石英管を強熱し、石英管を中心軸方向につぶす(線引きする)ことにより、棒状のGRINレンズ母材とする。そして、かかる操作中において、石英管に供給するガラス原料ガスの組成を変化させることにより、所望の屈折率分布を有するGRINレンズ母材が得られることになる。
MCVD法では、管外からの熱で内部を加熱し、酸化反応を起こさせることから、熱分布が大きく酸化反応量がPCVDほど安定しない。そのため屈折率の制御性は、PCVD法よりも劣るものである。しかしながら、MCVD法によれば、原料ガスの濃度を濃くできるため、製膜を短時間で行うことが可能である。また、原料ガスの濃度を低く抑えれば、PCVD法に近い屈折率制御性を得ることも可能である。したがって、MCVD法によっても、PCVD法と同様のGRINレンズを製造することが可能である。
【0020】
以下、図1を用いて本発明の第1実施形態のGRINレンズの製造方法を詳細に説明する。図1は、本実施形態の製造方法により得られるGRINレンズ11の(a)概略図及び(b)径方向の屈折率nの分布を示すグラフである。
PCVD法による具体的な製造手順は以下の通りである。
《内付け工程》
まず、石英管12を出発管として用い、石英管12内に、石英ガラスの原料ガスである四塩化珪素(SiCl4)と屈折率を上げるための原料ガスである四塩化ゲルマニウム(GeCl4)と酸素(O2)を送り込み、プラズマを利用して石英管12の内側に気相酸化反応により所望の屈折率のガラス微粒子を生成堆積させ、ガラス層を形成する。
この場合の反応式は、式(2)で示される。
SiCl4+O2 → SiO2+2Cl2
GeCl4+O2 → GeO2+2Cl2 …(2)
【0021】
このとき、石英管12の円周方向にむら無くガラス層を堆積させるために石英管12を回転させる。さらに石英管12の長手方向にプラズマを移動させることによって、長手方向へもむらなく堆積を行う。そして、この堆積作業を、層毎に屈折率を変えて繰り返し行うことで、径方向に屈折率分布を有するガラス層13を形成することが可能となる。屈折率を変える方法として、具体的には、層毎に、原料ガス中における四塩化ゲルマニウムの比率を変化させることにより屈折率の異なる層を堆積していくことができる。
このように石英管12内にガラス層13を堆積することによって得られる外部母材14には、その中心の軸方向に空洞が形成されている。
空洞は、従来は、線引き後のセンターディップをできるだけ小さくするために、可能な限り小さくする必要があったが、本発明においては、空洞の内径が、後に挿入する挿入母材の加工が容易な径に達したところで堆積を中止する。空洞の内径は、好ましくは75μm以上、より好ましくは120μm以上とすることが望ましい。
【0022】
《挿入工程》
堆積終了後、前記外部母材14内部の空洞に、径方向に屈折率の分布を有する構造の挿入母材15を挿入してレンズ母材を得る。
用いる挿入母材は、予め、別途作製しておく。この挿入母材について、径方向の屈折率の分布を、外部母材14の径方向の屈折率の分布に合わせることにより、図1(b)に示すような、センターディップのない良好な屈折率分布(屈折率分布が、√aで表される放物線状となるような屈折率分布)を有するレンズ母材が得られる。
【0023】
挿入母材の製造方法としては、外付け法のVAD法によって作製することができる。VAD法による挿入部材の製造方法を具体的に説明すると、まず、酸水素炎中に原料ガスを供給してスートプリフォームを合成する。ついでこの得られたスートプリフォームを、透明ガラスになるまで焼結してプリフォームとし、さらに高温にして溶融延伸して、その外径を空洞の内径に合わせる。これを所定の長さに切断、研磨して挿入母材を得る。この場合、溶融延伸によってその外径を空洞の内径に厳密に合わせることができる。ただの石英棒を挿入する場合に比べて、挿入後の母材は理想的な屈折率分布が得られ、また、光ファイバと同じ製法で研削等の工程が不要なため、高密度、低OH濃度で低光損失の母材が容易に得られる等の利点がある。
また、挿入母材の製造方法としては、上記の他に、上述した内付け工程と同様の工程により得られた母材の石英管部を除去して、又は、石英管部を除去した後線引きして、その外径を前記空洞の内径に合わせ、これを所定の長さに切断、研磨してもよい。この場合、石英管部を除去する工程が必要となるが、より理想的な屈折率分布が得られる等の利点がある。
【0024】
《コラプス工程》
挿入完了後、得られたレンズ母材に軟化点以上の温度、例えば2000℃程度の熱を加えると、石英の粘度が下がり、レンズ母材が中心軸方向につぶれて、棒状のプリフォームが得られる。
【0025】
《線引き工程》
そして、このプリフォームを電気炉で2000℃程度に加熱して溶融状態とし、所望の外径となるように線引きをする。その後、線引きしたプリフォームを所定の長さに切断し端面を研磨することにより、本実施形態の屈折率分布型レンズ11が完成する。
屈折率分布型レンズ11の外径は、好ましくは0.3〜1.9mm、より好ましくは0.3〜0.8mmであることが好ましい。レンズの外径が0.3mm以上であれば、125μm外径の通常の光ファイバを2本接続することができ、レンズの外径が1.9mmであれば心線の外径が0.9mmの光ファイバであっても光学特性を損なわずに2本接続することが可能である。また、レンズの外径が1.9mm以下であれば、光部品全体の小型化の要請にも合致する。
屈折率分布型レンズ11の長さは、好ましくは1〜15mm、より好ましくは1〜8mmであることが好ましい。理想の屈折率分布は上述した式(1)で表されるので、レンズ径が決まるとレンズ長は必然的に決まる。コリメータとしてレンズを用いる場合は1/4ピッチの奇数倍{(2n−1)/4、n=1,2,3…}の長さになり、集光系では1/2ピッチの整数倍{n/2、n=1,2,3…}よりわずかに短くなる。ただし、4/4ピッチ以上は長くなるだけで利点は無い。
【0026】
このようにして得られる屈折率分布型レンズ11は、図1(b)に示すように、センターディップのない、屈折率分布の良好なものである。そのため、光の反射・散乱による光の損失を低減することができる。
すなわち、2種類の異なる波長の信号を1つのファイバに伝搬するのに1/4の奇数倍のレンズの中心軸に対して2本の光ファイバの光軸が線対称に設置されている場合、1/4の奇数倍のレンズの反対面では、光がレンズの中心軸付近を伝搬する。そのため、GRINレンズにセンターディップがあると、センターディップのある中心軸付近を光が伝搬することによって、散乱や理想的な屈折率分布からかけ離れることによる光の損失が生じてしまう。しかし、本発明の屈折率分布型レンズ11は、センターディップがないので、光の損失を低減することができる。
したがって、高精度を要求される波長多重光通信システムにおける光アンプの利得等化フィルタや高密度波長多重(DWDM)光通信における光合分波器の狭帯域バンドパスフィルタをはじめ、メトロ(都市内通信網)のようにコスト重視で光アンプを設置しないためにさらなる低損失化が要求される粗密度波長多重(CWDM)光通信に用いられる光部品の広帯域バンドパスフィルタに好適に用いることができる。
【0027】
次に、本発明の第2実施形態について、図2を用いて説明する。尚、以下に記載する実施形態において、第1実施形態に対応する構成要素には、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
図2は、本実施形態の製造方法により得られる屈折率分布型レンズ21の(a)概略図及び(b)径方向の屈折率nの分布を示すグラフである。
本実施形態の製造方法は、挿入工程において、さらに、前記外部母材14と前記挿入母材15との界面部分に、低ガラス転移点材料層22を形成する点で第1実施形態と異なっている。
低ガラス転移点材料層22は、例えば、以下のようにして形成することができる。まず、空洞の内径よりもわずかに小さい外径の挿入母材15を準備し、挿入母材15を挿入する前又は挿入した後、外部母材14内の空洞の表面又は挿入母材15の外表面に、ホウ素やリンなどの、ガラス転移点を降下させる不純物を添加する。これを1000〜1500℃程度で加熱、溶融させることにより、その周辺のガラス層13のガラス転移点が低下し、低ガラス転移点材料層22が形成される。この低ガラス転移点材料層22を設けることにより、屈折率を最適に保ちつつ外部母材と挿入母材との密着が良好になる。
【0028】
【発明の効果】
以上述べたようにこの発明によれば、センターディップのない屈折率分布型レンズの製造方法及び屈折率分布型レンズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る屈折率分布型レンズの(a)概略図及び(b)径方向の屈折率nの分布を示すグラフである。
【図2】本発明の第2実施形態に係る屈折率分布型レンズの(a)概略図及び(b)径方向の屈折率nの分布を示すグラフである。
【図3】内付け法により得られる従来のGRINレンズの(a)概略図及び(b)径方向の屈折率nの分布を示すグラフである。
【符号の説明】
11…屈折率分布型レンズ、12…石英管、13…レンズ層、14…外部母材、15…挿入母材、21…屈折率分布型レンズ、22…低ガラス転移点材料層、31…GRINレンズ、32…石英管、33…レンズ層、34…空洞、35…センターディップ
【発明の属する技術分野】
本発明は、波長多重光通信システムにおける光アンプの利得等化フィルタや高密度波長多重(DWDM)光通信、粗密度波長多重(CWDM)光通信に使用される屈折率分布型レンズ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の通信容量の大容量化に伴って、波長多重数の増加や光増幅器の増幅率の増大により、光ファイバ内を伝搬する光強度が増加している。このため、各部品の高強度光に対する耐性が要求されている。たとえば、数Wクラスの高エネルギーの光を光ファイバ中に伝搬させる要求がある。
光耐性は、光が光ファイバ中を伝搬しているときは、あまり問題とならない。なぜなら、光ファイバの組成が石英系であり、伝搬光の波長帯域に対して光吸収が非常に小さいためである。
これに対して、光ファイバから光が出射する場合、及び光ファイバに光が入射する場合の出射先、入射元の素材の光耐性が問題となる。特に光ファイバからの入出射端は、光ビームが集束しているため、エネルギー密度が高く、損傷を最も受けやすい。そのため、高い光耐性が要求される。
【0003】
一方、径方向に屈折率の分布を有する屈折率分布型のレンズとして、GRINレンズが知られている。GRINレンズは、平面でも屈折力を持つことや、球面収差を生じない等の特長を生かし、コピー機などに用いる読み取りレンズ、マイクロレンズなど、多様な用途に応用されている。
一般的なGRINレンズは、屈折率が大きいフリントガラスに屈折率分布を持たせた構造で、レンズ自体の光損失は、波長1.5μm帯において0.02dB/cmである。
それに対して、石英系のGRINレンズは、レンズ自体の光損失が0.00002dB/cmと桁違いに小さく、挿入損失の向上が期待できると共に高強度光が入射した場合の材料の吸収による温度上昇も桁違いに小さくなることから、高強度光の連続入射による温度上昇に伴う光学特性の劣化は言うに及はず、長期的な信頼性においても有利である。また、光ファイバと同じ石英製であるため、光ファイバと融着接続することが可能で、高強度光に対する耐性を得ることが期待できる。
【0004】
GRINレンズの製造方法としては、一般的にはイオン交換法が用いられている。その他、一般的な光ファイバの製造に用いられる方法等が利用できる。一般的な光ファイバの製造方法の1つとして、石英管を使用して、石英管内部に所望の屈折率分布のガラス層を堆積させたのち、この石英管を強熱してコラプス(中実化)する内付け法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特許第2527849号明細書
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のような内付け法では、石英管の内部にガラスを堆積させるため、最後に、中心軸方向に若干の空洞が残ってしまい、屈折率の分布にセンターディップが見られるという問題があった。
図3は、内付け法により得られる従来のGRINレンズ31の(a)概略図及び(b)径方向の屈折率nの分布を示すグラフである。従来のGRINレンズ31は、石英管32の内側にレンズ層33が形成されており、その中心部分に空洞34が残っている。そのため、図1(b)に示すように、径方向での屈折率nの分布が、中心部分(空洞部分)で落ち込んだ形状となっており、この落ち込みがセンターディップ35である。
このようなセンターディップを有するGRINレンズを用いた場合、センターディップで光が反射・散乱されてしまうため、約0.4dBの光の損失が生じてしまう。特に、コリメータに用いる場合、コリメータを対向させると約0.8dBの光の損失となってしまう。
このセンターディップの問題は、光ファイバ、例えばGIファイバを製造する場合にはあまり問題とはならない。つまり、上述のような製造方法において、石英管は、ガラス層堆積後、2000℃程度の熱が加えられる(コラプス工程)。これにより、石英ガラスの粘度が下がり、中心軸方向に押しつぶされて棒状の母材(プリフォーム)になり、空洞が狭められる。そして、さらに、光ファイバの径(125μm又は250μm)まで細径化する線引き工程を行うので、センターディップの大きさはさらに縮小され、GIファイバの特性への影響は皆無となる。
しかしながら、本発明者らは、鋭意研究を行った結果、同様の工程によって得られた母材を用いて、径の太い、例えば外径が0.3mm以上のGRINレンズを製造した場合、コラプス工程で押しつぶしをおこない、さらに線引き工程による細径化を行った後でも、依然として、約10μm程度の径の空洞が残ってしまい、屈折率分布に大きなセンターディップが見られるという問題があることがわかった。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、内付け法により製造された屈折率分布型レンズにおいて、屈折率の分布にセンターディップのない屈折率分布型レンズを製造する方法、及び、センターディップのない屈折率分布型レンズを提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の第1の発明は、石英ガラスを主成分とし、径方向に屈折率の分布を有する屈折率分布型レンズの製造方法であって、石英管内にガラス原料ガスを送り込み、石英管内部にガラス層を堆積させて、径方向に屈折率の分布を有する構造の外部母材を得る内付け工程と、前記外部母材内部の空洞に、径方向に屈折率の分布を有する構造の挿入母材を挿入してレンズ母材を得る挿入工程と、前記レンズ母材を加熱して軟化させ、棒状のプリフォームを得るコラプス工程と、前記プリフォームを線引きし、屈折率分布型レンズを得る線引き工程とを有することを特徴とするGRINレンズの製造方法である。内付け法によって得られた外部母材の内部には、軸方向に、円筒状の空洞が形成されている。この空洞に対して、最適な屈折率分布(屈折率分布が√aとなるような屈折率分布)を有する挿入母材を予め作製しておき、これを挿入して、線引きを行うことにより、センターディップのないGRINレンズを製造することができる。
【0009】
本発明の好ましい実施態様においては、前記挿入母材は、VAD法により製造されたものであることが好ましい。挿入母材をVAD法により製造することにより、ただの石英棒を挿入する場合に比べて、挿入後の母材は理想的な屈折率分布が得られ、また、光ファイバと同じ製法で研削等の工程が不要なため、高純度、低OH濃度で低光損失の母材が容易に得られるなどの利点がある。
【0010】
また、本発明の別の好ましい実施態様においては、前記挿入母材は、前記内付け工程と同様の工程により得られた母材の石英管部を除去して、又は、石英管部を除去した後線引きして、その外径を前記空洞の内径に合わせたものであることが好ましい。挿入母材を上述のようにして製造することにより、石英管部を除去する工程が必要となるが、より理想的な屈折率分布が得られるなどの利点がある。
【0011】
また、本発明においては、前記空洞の内径が75μm以上であることが好ましい。これにより、後述する挿入母材の加工及び挿入等の取扱いが容易となる。なお、空洞の内径が75μm以上の場合、従来は、センターディップのないGRINレンズを製造することは困難であった。
【0012】
また、前記挿入工程において、さらに、前記外部母材と前記挿入母材との界面部分に、低ガラス転移点材料層を形成することが好ましい。外部母材内の空洞の表面、又は、挿入母材の外表面に、ホウ素やリンなどの、ガラス転移点を降下させる不純物を添加するなどして低ガラス転移点材料層を形成することにより、屈折率を最適に保ちつつ外部母材と挿入母材と密着が良好になる。
【0013】
上記課題を解決する本発明の第2の発明は、上記製造方法によって得られたGRINレンズである。上記製造方法によって得られたGRINレンズは、中央部分に空洞がなく、屈折率の分布にセンターディップがない理想的な屈折率分布を示すため、光の反射・散乱による光の損失を低減することができる。
また、上記課題を解決する本発明の第3の発明は、石英ガラスを主成分とし、径方向に屈折率の分布を有する、センターディップのないGRINレンズであり、例えば、上述したような製造方法により製造することができる。
本発明のGRINレンズは、石英ガラスを主成分とするため、石英ガラスを主成分とする光ファイバや光導波路等と接続した場合に屈折率の差が小さく、接合面における反射減衰量を低下させることができる。また、石英ガラスを主成分とする光ファイバや光導波路等との接続が容易であると共に、接続強度を安定して維持しやすい。特に、融着接続をする際に、被接続体の一方のみが軟化しすぎて、形状が大きく崩れてしまうという問題が生じない。また、両者の線膨張係数にも差がないので、冷却時に発生する歪みによって、融着強度が低下してしまうという問題も生じない。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本実施形態のGRINレンズは、石英ガラスを主成分とし、レンズ内に屈折率分布が形成されたレンズである。このレンズにおける屈折率分布の理想的な状態は式(1)で表される。
【0015】
n2(r)=n0 2sech2(gr)=n0 2{1−(gr)2+h4(gr)4+h6(gr)6+…} (1)
【0016】
式(1)において、nは屈折率、n0はレンズ中心軸(光軸)上の屈折率、rはレンズ中心軸からの径方向位置、gは、屈折率変化の大きさ、hは高次項の係数を意味している。ここで、高次項の合わせ込みがレンズの特性を向上させるためには重要となる。
【0017】
屈折率分布を得る手法としては、石英管を使用して、石英管内部に所望の屈折率のガラスを堆積させる内付け法を用いる。内付け法としては、CVD(chemical vapor deposition)法が好ましく用いられる。
CVD法は、反応系分子の気体あるいはこれと不活性のキャリヤーとの混合気体を加熱した基板上に流し、加水分解、自己分解、光分解、酸化還元、置換などの反応による生成物を基板上に堆積させる方法である。基板上で原子やイオンを反応させて薄膜試料をつくるため、反応温度が比較的低く、膜の組成を制御しやすいという利点を有している。
CVD法としては、特に、PCVD法及びMCVD法が好ましく用いられる。中でも、PCVD法は、屈折率制御性が良いので好ましく用いられる。
PCVD法の場合、石英管内にガラス原料ガスを送り込み、プラズマにより石英管の内側にプラズマを発生させ、原料ガスを酸化反応させることによりガラス層の堆積を行う。一方、MCVD法の場合、石英管内にガラス原料ガスを送り込み、石英管をその中心軸廻りに回転させながら外部からバーナで加熱して石英管内壁にガラス層を堆積させる。
【0018】
このようなPCVD法により優れた屈折率制御性が得られる。その理由としては、まず、PCVD法は、マグネトロンからのマイクロ波電力でガラス管内にプラズマを発生させ、プラズマ中の電子と原料分子の作用により、直接酸化反応を起こさせているため、屈折率を上げるためにドープするGeを、100%に近い状態で安定して酸化反応させることができることが挙げられる。また、PCVD法では、一回のガラス堆積での堆積厚さが非常に薄くできることが挙げられる。つまり、非常に細かいステップで屈折率を制御できるので、屈折率分布の形状を理想的形状に、より近づけることが可能となるものである。
このように、屈折率制御性が良いため、屈折率分布形成後にその修正のための後加工が不必要となることから、低コスト化が達成できる。
【0019】
一方、MCVD法は、原料ガスの加熱を、ガラス管の外側からバーナによる炎で行う点が、PCVD法と異なっている。MCVD法は、例えば、以下のようにして行うことができる。まず、石英管をその中心軸廻りに回転させ、その一端部から、ガラス原料ガスであるSiCl4、GeCl4、O2などを供給する。石英管の下方にはバーナが設けられ、このバーナは石英管の長手方向に沿って往復移動(トラバース)し、石英管を加熱する。石英管内では、ガラス原料ガスが加熱されて気相酸化反応によりSiO2やGeO2などのガラス微粒子が生成し、このガラス微粒子は、石英管内壁に堆積し、ただちに透明ガラス化されガラス層となる。ガラス原料ガスの気相酸化反応により生成するCl2を主体とする排ガスを石英管の他端から排気する。ガラス層の堆積が終了すると、ガラス原料ガスの供給を停止し、バーナにより石英管を強熱し、石英管を中心軸方向につぶす(線引きする)ことにより、棒状のGRINレンズ母材とする。そして、かかる操作中において、石英管に供給するガラス原料ガスの組成を変化させることにより、所望の屈折率分布を有するGRINレンズ母材が得られることになる。
MCVD法では、管外からの熱で内部を加熱し、酸化反応を起こさせることから、熱分布が大きく酸化反応量がPCVDほど安定しない。そのため屈折率の制御性は、PCVD法よりも劣るものである。しかしながら、MCVD法によれば、原料ガスの濃度を濃くできるため、製膜を短時間で行うことが可能である。また、原料ガスの濃度を低く抑えれば、PCVD法に近い屈折率制御性を得ることも可能である。したがって、MCVD法によっても、PCVD法と同様のGRINレンズを製造することが可能である。
【0020】
以下、図1を用いて本発明の第1実施形態のGRINレンズの製造方法を詳細に説明する。図1は、本実施形態の製造方法により得られるGRINレンズ11の(a)概略図及び(b)径方向の屈折率nの分布を示すグラフである。
PCVD法による具体的な製造手順は以下の通りである。
《内付け工程》
まず、石英管12を出発管として用い、石英管12内に、石英ガラスの原料ガスである四塩化珪素(SiCl4)と屈折率を上げるための原料ガスである四塩化ゲルマニウム(GeCl4)と酸素(O2)を送り込み、プラズマを利用して石英管12の内側に気相酸化反応により所望の屈折率のガラス微粒子を生成堆積させ、ガラス層を形成する。
この場合の反応式は、式(2)で示される。
SiCl4+O2 → SiO2+2Cl2
GeCl4+O2 → GeO2+2Cl2 …(2)
【0021】
このとき、石英管12の円周方向にむら無くガラス層を堆積させるために石英管12を回転させる。さらに石英管12の長手方向にプラズマを移動させることによって、長手方向へもむらなく堆積を行う。そして、この堆積作業を、層毎に屈折率を変えて繰り返し行うことで、径方向に屈折率分布を有するガラス層13を形成することが可能となる。屈折率を変える方法として、具体的には、層毎に、原料ガス中における四塩化ゲルマニウムの比率を変化させることにより屈折率の異なる層を堆積していくことができる。
このように石英管12内にガラス層13を堆積することによって得られる外部母材14には、その中心の軸方向に空洞が形成されている。
空洞は、従来は、線引き後のセンターディップをできるだけ小さくするために、可能な限り小さくする必要があったが、本発明においては、空洞の内径が、後に挿入する挿入母材の加工が容易な径に達したところで堆積を中止する。空洞の内径は、好ましくは75μm以上、より好ましくは120μm以上とすることが望ましい。
【0022】
《挿入工程》
堆積終了後、前記外部母材14内部の空洞に、径方向に屈折率の分布を有する構造の挿入母材15を挿入してレンズ母材を得る。
用いる挿入母材は、予め、別途作製しておく。この挿入母材について、径方向の屈折率の分布を、外部母材14の径方向の屈折率の分布に合わせることにより、図1(b)に示すような、センターディップのない良好な屈折率分布(屈折率分布が、√aで表される放物線状となるような屈折率分布)を有するレンズ母材が得られる。
【0023】
挿入母材の製造方法としては、外付け法のVAD法によって作製することができる。VAD法による挿入部材の製造方法を具体的に説明すると、まず、酸水素炎中に原料ガスを供給してスートプリフォームを合成する。ついでこの得られたスートプリフォームを、透明ガラスになるまで焼結してプリフォームとし、さらに高温にして溶融延伸して、その外径を空洞の内径に合わせる。これを所定の長さに切断、研磨して挿入母材を得る。この場合、溶融延伸によってその外径を空洞の内径に厳密に合わせることができる。ただの石英棒を挿入する場合に比べて、挿入後の母材は理想的な屈折率分布が得られ、また、光ファイバと同じ製法で研削等の工程が不要なため、高密度、低OH濃度で低光損失の母材が容易に得られる等の利点がある。
また、挿入母材の製造方法としては、上記の他に、上述した内付け工程と同様の工程により得られた母材の石英管部を除去して、又は、石英管部を除去した後線引きして、その外径を前記空洞の内径に合わせ、これを所定の長さに切断、研磨してもよい。この場合、石英管部を除去する工程が必要となるが、より理想的な屈折率分布が得られる等の利点がある。
【0024】
《コラプス工程》
挿入完了後、得られたレンズ母材に軟化点以上の温度、例えば2000℃程度の熱を加えると、石英の粘度が下がり、レンズ母材が中心軸方向につぶれて、棒状のプリフォームが得られる。
【0025】
《線引き工程》
そして、このプリフォームを電気炉で2000℃程度に加熱して溶融状態とし、所望の外径となるように線引きをする。その後、線引きしたプリフォームを所定の長さに切断し端面を研磨することにより、本実施形態の屈折率分布型レンズ11が完成する。
屈折率分布型レンズ11の外径は、好ましくは0.3〜1.9mm、より好ましくは0.3〜0.8mmであることが好ましい。レンズの外径が0.3mm以上であれば、125μm外径の通常の光ファイバを2本接続することができ、レンズの外径が1.9mmであれば心線の外径が0.9mmの光ファイバであっても光学特性を損なわずに2本接続することが可能である。また、レンズの外径が1.9mm以下であれば、光部品全体の小型化の要請にも合致する。
屈折率分布型レンズ11の長さは、好ましくは1〜15mm、より好ましくは1〜8mmであることが好ましい。理想の屈折率分布は上述した式(1)で表されるので、レンズ径が決まるとレンズ長は必然的に決まる。コリメータとしてレンズを用いる場合は1/4ピッチの奇数倍{(2n−1)/4、n=1,2,3…}の長さになり、集光系では1/2ピッチの整数倍{n/2、n=1,2,3…}よりわずかに短くなる。ただし、4/4ピッチ以上は長くなるだけで利点は無い。
【0026】
このようにして得られる屈折率分布型レンズ11は、図1(b)に示すように、センターディップのない、屈折率分布の良好なものである。そのため、光の反射・散乱による光の損失を低減することができる。
すなわち、2種類の異なる波長の信号を1つのファイバに伝搬するのに1/4の奇数倍のレンズの中心軸に対して2本の光ファイバの光軸が線対称に設置されている場合、1/4の奇数倍のレンズの反対面では、光がレンズの中心軸付近を伝搬する。そのため、GRINレンズにセンターディップがあると、センターディップのある中心軸付近を光が伝搬することによって、散乱や理想的な屈折率分布からかけ離れることによる光の損失が生じてしまう。しかし、本発明の屈折率分布型レンズ11は、センターディップがないので、光の損失を低減することができる。
したがって、高精度を要求される波長多重光通信システムにおける光アンプの利得等化フィルタや高密度波長多重(DWDM)光通信における光合分波器の狭帯域バンドパスフィルタをはじめ、メトロ(都市内通信網)のようにコスト重視で光アンプを設置しないためにさらなる低損失化が要求される粗密度波長多重(CWDM)光通信に用いられる光部品の広帯域バンドパスフィルタに好適に用いることができる。
【0027】
次に、本発明の第2実施形態について、図2を用いて説明する。尚、以下に記載する実施形態において、第1実施形態に対応する構成要素には、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
図2は、本実施形態の製造方法により得られる屈折率分布型レンズ21の(a)概略図及び(b)径方向の屈折率nの分布を示すグラフである。
本実施形態の製造方法は、挿入工程において、さらに、前記外部母材14と前記挿入母材15との界面部分に、低ガラス転移点材料層22を形成する点で第1実施形態と異なっている。
低ガラス転移点材料層22は、例えば、以下のようにして形成することができる。まず、空洞の内径よりもわずかに小さい外径の挿入母材15を準備し、挿入母材15を挿入する前又は挿入した後、外部母材14内の空洞の表面又は挿入母材15の外表面に、ホウ素やリンなどの、ガラス転移点を降下させる不純物を添加する。これを1000〜1500℃程度で加熱、溶融させることにより、その周辺のガラス層13のガラス転移点が低下し、低ガラス転移点材料層22が形成される。この低ガラス転移点材料層22を設けることにより、屈折率を最適に保ちつつ外部母材と挿入母材との密着が良好になる。
【0028】
【発明の効果】
以上述べたようにこの発明によれば、センターディップのない屈折率分布型レンズの製造方法及び屈折率分布型レンズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る屈折率分布型レンズの(a)概略図及び(b)径方向の屈折率nの分布を示すグラフである。
【図2】本発明の第2実施形態に係る屈折率分布型レンズの(a)概略図及び(b)径方向の屈折率nの分布を示すグラフである。
【図3】内付け法により得られる従来のGRINレンズの(a)概略図及び(b)径方向の屈折率nの分布を示すグラフである。
【符号の説明】
11…屈折率分布型レンズ、12…石英管、13…レンズ層、14…外部母材、15…挿入母材、21…屈折率分布型レンズ、22…低ガラス転移点材料層、31…GRINレンズ、32…石英管、33…レンズ層、34…空洞、35…センターディップ
Claims (7)
- 石英ガラスを主成分とし、径方向に屈折率の分布を有する屈折率分布型レンズの製造方法であって、
石英管内にガラス原料ガスを送り込み、石英管内部にガラス層を堆積させて、径方向に屈折率の分布を有する構造の外部母材を得る内付け工程と、
前記外部母材内部の空洞に、径方向に屈折率の分布を有する構造の挿入母材を挿入してレンズ母材を得る挿入工程と、
前記レンズ母材を加熱して軟化させ、棒状のプリフォームを得るコラプス工程と、
前記プリフォームを線引きし、屈折率分布型レンズを得る線引き工程と
を有することを特徴とする屈折率分布型レンズの製造方法。 - 前記挿入母材が、VAD法により製造されたものである請求項1記載の製造方法。
- 前記挿入母材が、前記内付け工程と同様の工程により得られた母材の石英管部を除去して、又は、石英管部を除去した後線引きして、その外径を前記空洞の内径に合わせたものである請求項1記載の製造方法。
- 前記空洞の内径が75μm以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記挿入工程において、さらに、前記外部母材と前記挿入母材との界面部分に、低ガラス転移点材料層を形成する請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項記載の製造方法によって製造された屈折率分布型レンズ。
- 石英ガラスを主成分とし、径方向に屈折率の分布を有する、センターディップのない屈折率分布型レンズ。
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Cited By (2)
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WO2009139414A1 (ja) * | 2008-05-13 | 2009-11-19 | 住友電気工業株式会社 | 光電変換ユニット |
-
2003
- 2003-01-31 JP JP2003023435A patent/JP2004231478A/ja not_active Withdrawn
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