JP2004230217A - エアフィルタ用濾材、その製造方法、およびそれを用いたエアフィルタユニット - Google Patents
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Abstract
【課題】リーク現象が抑制され、製造歩留まりが向上し、品質が安定化されたエアフィルタ濾材、その製造方法、およびそのエアフィルタ濾材を用いたエアフィルタユニットを提供する。
【解決手段】少なくとも1層のPTFE多孔質膜1と、少なくとも1層の通気性支持材2とを含む積層体であって、PTFE多孔質膜1に導電性粉体3が付着していることを特徴とする。導電性粉体3が、PTFE多孔質膜1に隣接する層とそのPTFE多孔質膜との界面に付着していることが好ましい。さらに、導電性粉体3がPTFE多孔質膜1の孔内にも付着していることが好ましい。導電性粉体3は、カーボンブラックであることが好ましい。また、本発明のエアフィルタユニットは、上記したエアフィルタユニットを用いたことを特徴としている。
【選択図】 図1
【解決手段】少なくとも1層のPTFE多孔質膜1と、少なくとも1層の通気性支持材2とを含む積層体であって、PTFE多孔質膜1に導電性粉体3が付着していることを特徴とする。導電性粉体3が、PTFE多孔質膜1に隣接する層とそのPTFE多孔質膜との界面に付着していることが好ましい。さらに、導電性粉体3がPTFE多孔質膜1の孔内にも付着していることが好ましい。導電性粉体3は、カーボンブラックであることが好ましい。また、本発明のエアフィルタユニットは、上記したエアフィルタユニットを用いたことを特徴としている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリテトラフルオロエチレン(以下「PTFE」という)多孔質膜を用いたエアフィルタ用濾材、その製造方法、およびそれを用いたエアフィルタユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】
PTFEはクリーンな材料であり、近年、PTFE多孔質膜を含む濾材が、半導体工業などのクリーンルームに用いられる高性能エアフィルタの濾材として広く使用されている。PTFE多孔質膜はコシがないため、通常、補強のために通気性支持材(通気性を有する支持材)と積層してから濾材として使用される。濾材は連続したW字状に折り畳まれ(プリーツ加工され)、さらに金属枠などで枠付けされてエアフィルタユニットとなる。
【0003】
【特許文献1】
特表平9−504737号公報(第9−10頁、第1−4図)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
PTFE多孔質膜と通気性支持材とを含む積層体であるエアフィルタ用濾材は、PTFE多孔質膜と通気性支持材とを重ね合わせ、場合によっては接着し、ロールに巻き取る工程(以下「積層工程」という)、またはエアフィルタユニットヘの加工工程において、摩擦などにより帯電しやすい。帯電した濾材に導電体が近づいたり人間が素手で触れたりすると、放電(スパーク)が発生して濾材に貫通孔が形成されることがある。貫通孔が形成されると、濾材の捕集効率が低下し、PTFE多孔質膜の孔径の短径よりも平均粒子径が小さい粒子について、捕集効率の平均粒子径依存性がなくなる、いわゆるリーク現象が発生する。特に、積層工程では、積層された濾材がロール状に幾重にも巻き取られることが多いため、電荷はほとんど消失されることなく濾材に滞留する。また、プリーツ加工自体が大きな摩擦を伴う工程であるため、プリーツ加工した濾材には多量の電荷が蓄積されていることが多い。このため、巻き取られたり折り畳まれた濾材については、特にリーク現象が発生しやすくなる。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明のエアフィルタ用濾材は、少なくとも1層のPTFE多孔質膜と、少なくとも1層の通気性支持材とを含む積層体であって、前記PTFE多孔質膜に導電性粉体が付着していることを特徴とする。
【0006】
本発明のエアフィルタユニットは、本発明のエアフィルタ用濾材を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明のエアフィルタ用濾材の製造方法は、少なくとも1層のPTFE多孔質膜と、少なくとも1層の通気性支持材とを含む積層体であるエアフィルタ用濾材の製造方法であって、帯状のPTFE多孔質膜と帯状の通気性支持材とを重ね合わせた後ロール状に巻き取る工程を含み、前記帯状のPTFE多孔質膜と前記帯状の通気性支持材とをロール状に巻き取る前に、前記帯状のPTFE多孔質膜に導電性粉体を付着させることを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
PTFE多孔質膜は誘電率が高いため、上記の積層工程およびエアフィルタユニットヘの加工工程において、摩擦などの原因で容易に帯電する。また、気孔率が極めて高いPTFE多孔質膜では、帯電した電荷が消失されづらく蓄積され易い。上記のリーク現象を解消するには、濾材、特にPTFE多孔質膜に帯電した電荷を何らかの手段で除去することが必要である。そこで、本実施の形態のエアフィルタ用濾材は、少なくとも1層のPTFE多孔質膜と、少なくとも1層の通気性支持材とを含む積層体であって、PTFE多孔質膜に導電性粉体を付着していることを特徴とする。このエアフィルタ用濾材では、PTFE多孔質膜に導電性粉体が付着しているので、積層工程やエアフィルタユニットヘの加工工程などにおいて、PTFE多孔質膜における電荷の蓄積が抑制される。したがって、リーク現象が抑制され、製造歩留まりが向上し、品質が安定化したエアフィルタ用濾材を提供できる。
【0009】
以下に、本発明のエアフィルタ用濾材の一例を、図面を参照しながら説明する。図1に示すように、エアフィルタ用濾材は、1層のPTFE多孔質膜1と1層の通気性支持材2とを含む積層体であって、PTFE多孔質膜1に導電性粉体3が付着している。このエアフィルタ用濾材は、PTFE多孔質膜1の気体の流れの上流側に通気性支持材2を配置して使用されるため、通気性支持材2は、PTFE多孔質膜1を保護および補強するとともに、プレフィルタとしても機能する。
【0010】
図1に示した例では、PTFE多孔質膜に隣接する層とそのPTFE多孔質膜との界面、すなわち、PTFE多孔質膜1の通気性支持材2と対向する面に導電性粉体3が付着している。このように、PTFE多孔質膜の隣接する層との界面に導電性粉体を付着すれば、導電性粉体が安定して保持される。また、積層工程やエアフィルタユニットヘの加工工程などにおいて、PTFE多孔質膜が、隣接する層との摩擦などの原因で帯電しても、PTFE多孔質膜における電荷の蓄積を抑制できる。
【0011】
PTFE多孔質膜1は、使用用途に応じた捕集機能が発揮されるものであれば、孔径、構造、形態などについて特に限定されず、通常、平均孔径0.01〜5μm、平均繊維径0.02〜0.3μm、厚み2〜50μm、5.3cm/sの流速で空気を透過させたときの圧力損失が50〜1000Paである膜が好適である。
【0012】
上記したPTFE多孔質膜は、従来から用いられてきた方法により作製することができる。以下にその作製方法の一例を説明する。まず、PTFEファインパウダーに液状潤滑剤を加えたペースト状の混合物を予備成形する。液状潤滑剤としては、PTFEファインパウダーの表面を濡らすことができ、抽出や加熱することより除去できるものであれば特に限定されず、例えば、ナフサ、ホワイトオイルなどの炭化水素を使用できる。液状潤滑剤の添加量は、PTFEファインパウダー100重量部に対して5〜50重量部程度が適当である。上記した予備成形は、液状潤滑剤が絞り出されない程度の圧力で行う。次に、予備成形体を押出しおよび/または圧延してシート状に成形し、このようにして得られたシート状の成形体を少なくとも一軸方向に延伸してPTFE多孔質膜を得る。尚、延伸は、液状潤滑剤を除去してから行うとよい。延伸条件は、適宜設定でき、通常、温度は30〜320℃であり、延伸倍率は、縦方向、横方向ともに2〜30倍である。また、延伸後にPTFE多孔質膜をPTFEの融点以上に加熱して焼成すれば、強度を高めることができる。
【0013】
導電性粉体3は、PTFE多孔質膜1に付着できるものであれば特に制限されず、例えば、金属粉体、導電性樹脂粉体およびカーボンブラックから選ばれる少なくとも1種である。特に、平均粒子径が数十nm程度と小さく、低コストなカーボンブラックが好ましい。金属粉体としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、鉄、ステンレスまたはニッケル、導電性樹脂粉体としては、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェンまたはポリアニリンなどが挙げられる。
【0014】
導電性粉体3は、図1に示した例では、PTFE多孔質膜1の通気性支持材2と対向する面にのみ付着しているが、PTFE多孔質膜の孔内に付着させてもよく、図2に示すように、通気性支持材2に対向する面と、PTFE多孔質膜1の孔内とに付着していることが好ましい。導電性粉体3が孔内にも付着していると、PTFE多孔質膜1の厚さ方向に導電路が形成されるため、PTFE多孔質膜2における電荷の蓄積を効果的に抑制できる。
【0015】
図1、図2に示した例の他に、図3に示すように、PTFE多孔質膜1の通気性支持材2が積層された側の反対側に、通気性支持材2’をさらに積層してもよい。図3に示した例では、PTFE多孔質膜1の通気性支持材2、2’との界面、および孔内に導電性粉体が付着している。
【0016】
図1〜図3では、いずれもPTFE多孔質膜1が1層であるが、エアフィルタ用濾材は、PTFE多孔質膜1を2層以上含んでいてもよい。また、複数のPTFE多孔質膜と複数の通気性支持材とが交互に積層されていてもよいし、PTFE多孔質膜および通気性支持材のいずれか一方もしくは両方が連続して積層されている部分があってもよい。
【0017】
導電性粉体3のPTFE多孔質膜1への付着は、粉体をそのまま吹き付けて行ってもよいが、乾燥状態では凝集する導電性粉体、例えばカーボンブラックでは、均一な散布が困難な場合があるので、導電性粉体をアルコールなどの分散媒に分散させた分散液をPTFE多孔質膜1へ吹き付け、分散媒を乾燥して除去するとよい。分散媒は、導電性粉体3として用いる材料に適したものを選択すればよい。また、導電性粉体3のPTFE多孔質膜1への付着は、導電性粉体が分散媒に分散した分散液にPTFE多孔質膜1を含浸して行ってもよい。
【0018】
導電性粉体3の粒径について特に制限はないが、0.02〜200μm、特に、0.02〜0.1μmであることが好ましい。このように平均粒子径の小さな導電性粉体3では、吹き付け時にPTFE多孔質膜1が受けるダメージも小さく好ましい。平均粒子径が、PTFE多孔質膜の平均孔径よりある程度小さい導電性粉体、例えば、PTFE多孔質膜の平均孔径が100nm〜10μmである場合に、平均粒子径が20nm〜100nmである導電性粉体であれば、PTFE多孔質膜1の孔内に導電性粉体3を付着させることができる。
【0019】
導電性粉体3の付着量は、0.05〜0.5g/m2、特に0.1〜0.25g/m2が適当である。少なすぎると帯電を十分に抑制することができず、多すぎると、PTFE多孔質膜の孔が過剰に閉塞され、フィルタ効率を低下させるおそれがあるからである。導電性粉体3の付着量が上記した範囲であれば、PTFE多孔質膜の孔が導電性粉体3によってある程度ふさがれても、フィルタ効率には影響しない。
【0020】
通気性支持材2、2’は、材質、構造、形態について特に限定されないが、PTFE多孔質膜より通気性に優れた材料、例えば、不織布、織布、メッシュ(網目状シート)、その他の多孔質材料を用いることが好ましい。特に、強度、柔軟性、作業性の点からは不織布が好ましい。通気性支持材2、2’の材料について特に制限はなく、ポリオレフィン(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)など)、ポリアミド、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)など)、芳香族ポリアミド、あるいはこれらの複合材などからなるものを用いることができる。一部または全部の繊維が芯鞘構造の複合繊維を用いることが一般的であり、芯繊維が鞘繊維より相対的に融点が高い合成繊維であることが好ましい。
【0021】
このようにして得られたPTFE多孔質膜と通気性支持材とを積層する方法、あるいは通気性支持材と通気性支持材とを積層する方法について特に制限はなく、単に重ね合わせるだけでもよいが、例えば、接着剤ラミネート、熱ラミネートなどの方法を適用することができる。特に、熱により通気性支持材の一部を溶融させ、隣接する層の対向する面に部分的に接着する熱ラミネートが好ましい。このように接着剤を用いずに接着すると、余分な重量増加がなく容易に接着することができ、接着後に行うプリーツ加工も行い易い。
【0022】
PTFE多孔質膜とPTFE多孔質膜とを積層する方法も、特に限定されるものではない。単に重ね合わせるだけでもよいし、成膜時に圧着して積層する方法や熱溶融する方法などを採用してもよい。
【0023】
図4に、図1または図2に示したエアフィルタ用濾材の作製過程を示している。ロール状巻回体8およびロール状巻回体9からそれぞれ繰り出された帯状の通気性支持材2および帯状のPTFE多孔質膜1は、ターンロール5による方向転換によって互いに重ね合わされる。そして、加熱ロール7の表面に沿って進行しながら加熱され、加熱ロール7とピンチロール6とに挟まれて通気性支持材2とPTFE多孔質膜1とが接着される。この濾材は、さらにシリコーンロール4、ターンロール5により導かれ、巻き取られて、濾材のロール状巻回体10となる。
【0024】
導電性粉体3は、帯状のPTFE多孔質膜1と帯状の通気性支持材2とをロール状に巻き取る前に、帯状のPTFE多孔質膜1に付着させればよい。PTFE多孔質膜1と通気性支持材2とを重ね合わせる前に帯状のPTFE多孔質膜1に導電性粉体3を付着させてもよいが、図4に示すように、帯状のPTFE多孔質膜1と帯状の通気性支持材2とを重ね合わせた後に、帯状のPTFE多孔質膜1に導電性粉体3を付着させることが好ましい。導電性粉体3が分散媒に分散した分散液を用いて帯状のPTFE多孔質膜1に導電性粉体3を付着させる場合、PTFE多孔質膜1と通気性支持材2とを重ね合わせる前に帯状のPTFE多孔質膜1に導電性粉体3を付着させると、PTFE多孔質膜に縮みやシワが生じるおそれがあるからである。図4に示すように、帯状のPTFE多孔質膜1と帯状の通気性支持材2とを、加熱して接着する場合、接着後に帯状のPTFE多孔質膜1に導電性粉体3を付着させてもよいが、接着前が好ましい。導電性粉体3の脱落を抑制できるからである。
【0025】
図5に、図3に示したエアフィルタ用濾材の作製過程を示している。ロール状巻回体9から、帯状のPTFE多孔質膜と帯状の通気性支持材からなる2層の濾材1’を繰り出すこと以外は、図4に示した作製過程と同様である。
【0026】
このようにして導電性粉体が付着された濾材は、必要に応じて所定の長さに切断され、連続したW字状に折り畳まれ(プリーツ加工され)る。すなわち、少なくとも1層のPTFE多孔質膜と少なくとも1層の通気性支持材とを含む積層体を形成する工程と、PTFE多孔質膜に導電性粉体を付着する工程を含むエアフィルタ用濾材の製造方法において、上記積層体を連続したW字状に折り畳む工程(プリーツ加工)をさらに含む。
【0027】
図6は、プリーツ加工されたエアフィルタ用濾材の一例の断面図である。長尺の濾材を長さ方向に所定の間隔をおいて交互に山折り/谷折りしていくと(プリーツ加工を施すと)、断面方向から見て連続したW字状の濾材を得ることができる。プリーツ加工は、例えば、外周にブレードを配置した一対の回転ドラムを回転させながら濾材をひだ折りしていくロータリー方式、濾材の移送方向に所定の間隔をおいて配置した一対のブレードを移動させながら濾材を両面から交互に折り畳んでいくレシプロ方式などが採用できる。W字状に折り畳まれたエアフィルタ用濾材は、PTFE多孔質膜と通気性支持材とが対向する面において互いに接触しないようにホットメルトなどでビードが形成され、例えば図7に示すように、アルミニウムからなる支持枠22などで枠付けされてエアフィルタユニットとなる。
【0028】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
【0029】
(実施例1)
まず、下記に示した方法によりPTFE多孔質膜を作製する。PTFEファインパウダー(旭・ICIフロロポリマーズ社製、フルオンCD−123)100重量部に対して液状潤滑剤(ナフサ)17重量部を均一に混合し、この混合物を20kg/cm2の条件で予備成形し、次いでこれをロッド状にペースト押出成形し、さらにこのロッド状成形体を1対の金属圧延ロール間に通し、厚さ250μmの長尺シートを得た。このシートを290℃の延伸温度で長手方向に10倍に延伸し、さらにテンター法により80℃の延伸温度で幅方向に30倍に延伸して、未焼成PTFE多孔質膜を得た。この未焼成PTFE多孔質膜を、熱風発生炉を用いて400℃で焼成して、帯状のPTFE多孔質膜を得た(平均孔径1.0μm、厚さ10μm)。
【0030】
カーボンブラック(東海カーボン製、トーカブラック#4500:平均粒子径40nm)をイソプロピルアルコール(IPA)中に投入し、これを超音波洗浄機に5分間かけて0.5重量%の分散液を作製した。
【0031】
帯状の通気性支持材として不織布(ユニチカ社製、エルベスTO303WDO、厚さ150μm、目付量30g/m2、鞘部PEの融点129℃、芯部PET)を用意し、この帯状の通気性支持材と上記帯状のPTFE多孔質膜と重ね合わせ、帯状のPTFE多孔質膜に、上記分散液50g/m2を吹き付け(カーボンブラックの付着量:0.25g/m2)、IPAを送風により乾燥して除去した。次に、上記と同じ帯状の通気性支持材(不織布)を帯状のPTFE多孔質膜に重ね合わせ、135℃に加熱された熱ロールで連続的に熱ラミネートして3層を接着し、2層の不織布の間にPTFE多孔質膜が介在する構成の濾材1を作製した。この濾材1(長さ20m)を外径7.6cmのポリエチレン(PE)製ロールに巻き取った。
【0032】
(実施例2)
分散液量を20g/m2(カーボンブラックの付着量:0.1g/m2)としたこと以外は実施例1と同様にして濾材2を作製し、この濾材2(長さ20m)を外径7.6cmのPE製ロールに巻き取った。
【0033】
(比較例)
帯状のPTFE多孔質膜に分散液を吹き付けないこと以外は実施例1と同様にして濾材3を作製し、この濾材3(長さ20m)を外径7.6cmのPE製ロールに巻き取った。
【0034】
上記濾材1〜3が巻き付けられたPE製ロールを、PE製ロールが回転しないようにシャフトに固定し、図8に示すように、PE製ロール11に巻き取られた濾材1〜3の最外周面13を、矢印の方向へナイロン製織布12で摩擦(速度0.5m/sec、30往復)して帯電させた。
【0035】
摩擦後の濾材および摩擦前の濾材1〜3を、除電していないゴムロール(外径40mm)3本に沿わせながら10m引き出し、それらの圧力損失、捕集効率を下記の方法により測定し、リーク試験を下記の方法で行った。また、ナイロン製織布により摩擦する前の濾材1〜3を5mに切断し、プリーツ加工機を用いてプリーツ加工(加工速度1.5m/min、折り幅30mm)したものについてもリーク試験を行った。その結果を表1に示す。
【0036】
[圧力損失] サンプルを有効面積100cm2の円形ホルダーにセットし、入口側と出口側に圧力差を与え、このサンプルを通過する空気の流速を5.3cm/sに調整したときの圧力損失を圧力計(マノメーター)で測定した。
【0037】
[捕集効率] サンプルを有効面積100cm2の円形ホルダーにセットし、入口側と出口側に圧力差を与え、このサンプルを通過する空気の流速を流速計で5.3cm/sに調整し、上流側にJIS Z 8901に規定された多分散ジオクチルフタレート(DOP)を、平均粒子径0.1〜0.2μmの粒子が4×108個/リットル、平均粒子径0.2〜0.3μmの粒子が6×107個/リットルとなるように供給し、上流側の粒子濃度とサンプルを透過してきた下流側の粒子濃度とをJIS B 9221に規定された光散乱粒子計数器で測定した。得られた下流側粒子濃度および上流側粒子濃度を下記の式に代入して捕集効率を求めた。
捕集効率(%)=(1−下流側粒子濃度/上流側粒子濃度)×100
【0038】
[リーク試験] 日本空気清浄協会のJACA No.10C「空気清浄装置性能試験基準法」の第4性能試験方法(暫定基準)に規定されているリーク試験法に準じて行った。具体的には、上記[捕集効率]の場合と同様なサンプルおよび装置を用意し、同様の条件で粒子を供給した。相対濃度計(直線目盛り)のプローブをサンプル下流面から25mm離れた所において、5cm/secの速度で走行させた。相対濃度計によって測定される下流側粒子濃度粒子が上流側粒子濃度の0.01%以上である場合、リーク有りと判断した。
【0039】
【表1】
【0040】
表1に示した結果より、PTFE多孔質膜に導電性粉体が付着していれば、リーク現象が抑制されたエアフィルタ濾材を実現できることが確認できた。
【0041】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明では、リーク現象が抑制され、製造歩留まりが向上し、品質が安定化されたエアフィルタ濾材、およびこのエアフィルタ濾材を含むエアフィルタユニットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のエアフィルタ用濾材の一例を示す断面図
【図2】本発明のエアフィルタ用濾材の他の例を示す断面図
【図3】本発明のエアフィルタ用濾材の他の例を示す断面図
【図4】本発明のエアフィルタ用濾材の製造方法の一例を説明する図
【図5】本発明のエアフィルタ用濾材の製造方法の一例を説明する図
【図6】本発明のエアフィルタ用濾材の他の例を示す断面図
【図7】本発明のエアフィルタユニットの一例を示す斜視図
【図8】PE製ロールに巻き取られたエアフィルタ用濾材の最外周面をナイロン製織布で摩擦する様子を説明する図
【符号の説明】
1 PTFE多孔質膜
2,2’ 通気性支持材
3 導電性粉体
4 シリコーンロール
5 ターンロール
6 ピンチロール
7 加熱ロール
8〜10 ロール状巻回体
11 PE製ロール
13 最外周面
12 ナイロン製織布
22 支持枠
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリテトラフルオロエチレン(以下「PTFE」という)多孔質膜を用いたエアフィルタ用濾材、その製造方法、およびそれを用いたエアフィルタユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】
PTFEはクリーンな材料であり、近年、PTFE多孔質膜を含む濾材が、半導体工業などのクリーンルームに用いられる高性能エアフィルタの濾材として広く使用されている。PTFE多孔質膜はコシがないため、通常、補強のために通気性支持材(通気性を有する支持材)と積層してから濾材として使用される。濾材は連続したW字状に折り畳まれ(プリーツ加工され)、さらに金属枠などで枠付けされてエアフィルタユニットとなる。
【0003】
【特許文献1】
特表平9−504737号公報(第9−10頁、第1−4図)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
PTFE多孔質膜と通気性支持材とを含む積層体であるエアフィルタ用濾材は、PTFE多孔質膜と通気性支持材とを重ね合わせ、場合によっては接着し、ロールに巻き取る工程(以下「積層工程」という)、またはエアフィルタユニットヘの加工工程において、摩擦などにより帯電しやすい。帯電した濾材に導電体が近づいたり人間が素手で触れたりすると、放電(スパーク)が発生して濾材に貫通孔が形成されることがある。貫通孔が形成されると、濾材の捕集効率が低下し、PTFE多孔質膜の孔径の短径よりも平均粒子径が小さい粒子について、捕集効率の平均粒子径依存性がなくなる、いわゆるリーク現象が発生する。特に、積層工程では、積層された濾材がロール状に幾重にも巻き取られることが多いため、電荷はほとんど消失されることなく濾材に滞留する。また、プリーツ加工自体が大きな摩擦を伴う工程であるため、プリーツ加工した濾材には多量の電荷が蓄積されていることが多い。このため、巻き取られたり折り畳まれた濾材については、特にリーク現象が発生しやすくなる。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明のエアフィルタ用濾材は、少なくとも1層のPTFE多孔質膜と、少なくとも1層の通気性支持材とを含む積層体であって、前記PTFE多孔質膜に導電性粉体が付着していることを特徴とする。
【0006】
本発明のエアフィルタユニットは、本発明のエアフィルタ用濾材を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明のエアフィルタ用濾材の製造方法は、少なくとも1層のPTFE多孔質膜と、少なくとも1層の通気性支持材とを含む積層体であるエアフィルタ用濾材の製造方法であって、帯状のPTFE多孔質膜と帯状の通気性支持材とを重ね合わせた後ロール状に巻き取る工程を含み、前記帯状のPTFE多孔質膜と前記帯状の通気性支持材とをロール状に巻き取る前に、前記帯状のPTFE多孔質膜に導電性粉体を付着させることを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
PTFE多孔質膜は誘電率が高いため、上記の積層工程およびエアフィルタユニットヘの加工工程において、摩擦などの原因で容易に帯電する。また、気孔率が極めて高いPTFE多孔質膜では、帯電した電荷が消失されづらく蓄積され易い。上記のリーク現象を解消するには、濾材、特にPTFE多孔質膜に帯電した電荷を何らかの手段で除去することが必要である。そこで、本実施の形態のエアフィルタ用濾材は、少なくとも1層のPTFE多孔質膜と、少なくとも1層の通気性支持材とを含む積層体であって、PTFE多孔質膜に導電性粉体を付着していることを特徴とする。このエアフィルタ用濾材では、PTFE多孔質膜に導電性粉体が付着しているので、積層工程やエアフィルタユニットヘの加工工程などにおいて、PTFE多孔質膜における電荷の蓄積が抑制される。したがって、リーク現象が抑制され、製造歩留まりが向上し、品質が安定化したエアフィルタ用濾材を提供できる。
【0009】
以下に、本発明のエアフィルタ用濾材の一例を、図面を参照しながら説明する。図1に示すように、エアフィルタ用濾材は、1層のPTFE多孔質膜1と1層の通気性支持材2とを含む積層体であって、PTFE多孔質膜1に導電性粉体3が付着している。このエアフィルタ用濾材は、PTFE多孔質膜1の気体の流れの上流側に通気性支持材2を配置して使用されるため、通気性支持材2は、PTFE多孔質膜1を保護および補強するとともに、プレフィルタとしても機能する。
【0010】
図1に示した例では、PTFE多孔質膜に隣接する層とそのPTFE多孔質膜との界面、すなわち、PTFE多孔質膜1の通気性支持材2と対向する面に導電性粉体3が付着している。このように、PTFE多孔質膜の隣接する層との界面に導電性粉体を付着すれば、導電性粉体が安定して保持される。また、積層工程やエアフィルタユニットヘの加工工程などにおいて、PTFE多孔質膜が、隣接する層との摩擦などの原因で帯電しても、PTFE多孔質膜における電荷の蓄積を抑制できる。
【0011】
PTFE多孔質膜1は、使用用途に応じた捕集機能が発揮されるものであれば、孔径、構造、形態などについて特に限定されず、通常、平均孔径0.01〜5μm、平均繊維径0.02〜0.3μm、厚み2〜50μm、5.3cm/sの流速で空気を透過させたときの圧力損失が50〜1000Paである膜が好適である。
【0012】
上記したPTFE多孔質膜は、従来から用いられてきた方法により作製することができる。以下にその作製方法の一例を説明する。まず、PTFEファインパウダーに液状潤滑剤を加えたペースト状の混合物を予備成形する。液状潤滑剤としては、PTFEファインパウダーの表面を濡らすことができ、抽出や加熱することより除去できるものであれば特に限定されず、例えば、ナフサ、ホワイトオイルなどの炭化水素を使用できる。液状潤滑剤の添加量は、PTFEファインパウダー100重量部に対して5〜50重量部程度が適当である。上記した予備成形は、液状潤滑剤が絞り出されない程度の圧力で行う。次に、予備成形体を押出しおよび/または圧延してシート状に成形し、このようにして得られたシート状の成形体を少なくとも一軸方向に延伸してPTFE多孔質膜を得る。尚、延伸は、液状潤滑剤を除去してから行うとよい。延伸条件は、適宜設定でき、通常、温度は30〜320℃であり、延伸倍率は、縦方向、横方向ともに2〜30倍である。また、延伸後にPTFE多孔質膜をPTFEの融点以上に加熱して焼成すれば、強度を高めることができる。
【0013】
導電性粉体3は、PTFE多孔質膜1に付着できるものであれば特に制限されず、例えば、金属粉体、導電性樹脂粉体およびカーボンブラックから選ばれる少なくとも1種である。特に、平均粒子径が数十nm程度と小さく、低コストなカーボンブラックが好ましい。金属粉体としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、鉄、ステンレスまたはニッケル、導電性樹脂粉体としては、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェンまたはポリアニリンなどが挙げられる。
【0014】
導電性粉体3は、図1に示した例では、PTFE多孔質膜1の通気性支持材2と対向する面にのみ付着しているが、PTFE多孔質膜の孔内に付着させてもよく、図2に示すように、通気性支持材2に対向する面と、PTFE多孔質膜1の孔内とに付着していることが好ましい。導電性粉体3が孔内にも付着していると、PTFE多孔質膜1の厚さ方向に導電路が形成されるため、PTFE多孔質膜2における電荷の蓄積を効果的に抑制できる。
【0015】
図1、図2に示した例の他に、図3に示すように、PTFE多孔質膜1の通気性支持材2が積層された側の反対側に、通気性支持材2’をさらに積層してもよい。図3に示した例では、PTFE多孔質膜1の通気性支持材2、2’との界面、および孔内に導電性粉体が付着している。
【0016】
図1〜図3では、いずれもPTFE多孔質膜1が1層であるが、エアフィルタ用濾材は、PTFE多孔質膜1を2層以上含んでいてもよい。また、複数のPTFE多孔質膜と複数の通気性支持材とが交互に積層されていてもよいし、PTFE多孔質膜および通気性支持材のいずれか一方もしくは両方が連続して積層されている部分があってもよい。
【0017】
導電性粉体3のPTFE多孔質膜1への付着は、粉体をそのまま吹き付けて行ってもよいが、乾燥状態では凝集する導電性粉体、例えばカーボンブラックでは、均一な散布が困難な場合があるので、導電性粉体をアルコールなどの分散媒に分散させた分散液をPTFE多孔質膜1へ吹き付け、分散媒を乾燥して除去するとよい。分散媒は、導電性粉体3として用いる材料に適したものを選択すればよい。また、導電性粉体3のPTFE多孔質膜1への付着は、導電性粉体が分散媒に分散した分散液にPTFE多孔質膜1を含浸して行ってもよい。
【0018】
導電性粉体3の粒径について特に制限はないが、0.02〜200μm、特に、0.02〜0.1μmであることが好ましい。このように平均粒子径の小さな導電性粉体3では、吹き付け時にPTFE多孔質膜1が受けるダメージも小さく好ましい。平均粒子径が、PTFE多孔質膜の平均孔径よりある程度小さい導電性粉体、例えば、PTFE多孔質膜の平均孔径が100nm〜10μmである場合に、平均粒子径が20nm〜100nmである導電性粉体であれば、PTFE多孔質膜1の孔内に導電性粉体3を付着させることができる。
【0019】
導電性粉体3の付着量は、0.05〜0.5g/m2、特に0.1〜0.25g/m2が適当である。少なすぎると帯電を十分に抑制することができず、多すぎると、PTFE多孔質膜の孔が過剰に閉塞され、フィルタ効率を低下させるおそれがあるからである。導電性粉体3の付着量が上記した範囲であれば、PTFE多孔質膜の孔が導電性粉体3によってある程度ふさがれても、フィルタ効率には影響しない。
【0020】
通気性支持材2、2’は、材質、構造、形態について特に限定されないが、PTFE多孔質膜より通気性に優れた材料、例えば、不織布、織布、メッシュ(網目状シート)、その他の多孔質材料を用いることが好ましい。特に、強度、柔軟性、作業性の点からは不織布が好ましい。通気性支持材2、2’の材料について特に制限はなく、ポリオレフィン(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)など)、ポリアミド、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)など)、芳香族ポリアミド、あるいはこれらの複合材などからなるものを用いることができる。一部または全部の繊維が芯鞘構造の複合繊維を用いることが一般的であり、芯繊維が鞘繊維より相対的に融点が高い合成繊維であることが好ましい。
【0021】
このようにして得られたPTFE多孔質膜と通気性支持材とを積層する方法、あるいは通気性支持材と通気性支持材とを積層する方法について特に制限はなく、単に重ね合わせるだけでもよいが、例えば、接着剤ラミネート、熱ラミネートなどの方法を適用することができる。特に、熱により通気性支持材の一部を溶融させ、隣接する層の対向する面に部分的に接着する熱ラミネートが好ましい。このように接着剤を用いずに接着すると、余分な重量増加がなく容易に接着することができ、接着後に行うプリーツ加工も行い易い。
【0022】
PTFE多孔質膜とPTFE多孔質膜とを積層する方法も、特に限定されるものではない。単に重ね合わせるだけでもよいし、成膜時に圧着して積層する方法や熱溶融する方法などを採用してもよい。
【0023】
図4に、図1または図2に示したエアフィルタ用濾材の作製過程を示している。ロール状巻回体8およびロール状巻回体9からそれぞれ繰り出された帯状の通気性支持材2および帯状のPTFE多孔質膜1は、ターンロール5による方向転換によって互いに重ね合わされる。そして、加熱ロール7の表面に沿って進行しながら加熱され、加熱ロール7とピンチロール6とに挟まれて通気性支持材2とPTFE多孔質膜1とが接着される。この濾材は、さらにシリコーンロール4、ターンロール5により導かれ、巻き取られて、濾材のロール状巻回体10となる。
【0024】
導電性粉体3は、帯状のPTFE多孔質膜1と帯状の通気性支持材2とをロール状に巻き取る前に、帯状のPTFE多孔質膜1に付着させればよい。PTFE多孔質膜1と通気性支持材2とを重ね合わせる前に帯状のPTFE多孔質膜1に導電性粉体3を付着させてもよいが、図4に示すように、帯状のPTFE多孔質膜1と帯状の通気性支持材2とを重ね合わせた後に、帯状のPTFE多孔質膜1に導電性粉体3を付着させることが好ましい。導電性粉体3が分散媒に分散した分散液を用いて帯状のPTFE多孔質膜1に導電性粉体3を付着させる場合、PTFE多孔質膜1と通気性支持材2とを重ね合わせる前に帯状のPTFE多孔質膜1に導電性粉体3を付着させると、PTFE多孔質膜に縮みやシワが生じるおそれがあるからである。図4に示すように、帯状のPTFE多孔質膜1と帯状の通気性支持材2とを、加熱して接着する場合、接着後に帯状のPTFE多孔質膜1に導電性粉体3を付着させてもよいが、接着前が好ましい。導電性粉体3の脱落を抑制できるからである。
【0025】
図5に、図3に示したエアフィルタ用濾材の作製過程を示している。ロール状巻回体9から、帯状のPTFE多孔質膜と帯状の通気性支持材からなる2層の濾材1’を繰り出すこと以外は、図4に示した作製過程と同様である。
【0026】
このようにして導電性粉体が付着された濾材は、必要に応じて所定の長さに切断され、連続したW字状に折り畳まれ(プリーツ加工され)る。すなわち、少なくとも1層のPTFE多孔質膜と少なくとも1層の通気性支持材とを含む積層体を形成する工程と、PTFE多孔質膜に導電性粉体を付着する工程を含むエアフィルタ用濾材の製造方法において、上記積層体を連続したW字状に折り畳む工程(プリーツ加工)をさらに含む。
【0027】
図6は、プリーツ加工されたエアフィルタ用濾材の一例の断面図である。長尺の濾材を長さ方向に所定の間隔をおいて交互に山折り/谷折りしていくと(プリーツ加工を施すと)、断面方向から見て連続したW字状の濾材を得ることができる。プリーツ加工は、例えば、外周にブレードを配置した一対の回転ドラムを回転させながら濾材をひだ折りしていくロータリー方式、濾材の移送方向に所定の間隔をおいて配置した一対のブレードを移動させながら濾材を両面から交互に折り畳んでいくレシプロ方式などが採用できる。W字状に折り畳まれたエアフィルタ用濾材は、PTFE多孔質膜と通気性支持材とが対向する面において互いに接触しないようにホットメルトなどでビードが形成され、例えば図7に示すように、アルミニウムからなる支持枠22などで枠付けされてエアフィルタユニットとなる。
【0028】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
【0029】
(実施例1)
まず、下記に示した方法によりPTFE多孔質膜を作製する。PTFEファインパウダー(旭・ICIフロロポリマーズ社製、フルオンCD−123)100重量部に対して液状潤滑剤(ナフサ)17重量部を均一に混合し、この混合物を20kg/cm2の条件で予備成形し、次いでこれをロッド状にペースト押出成形し、さらにこのロッド状成形体を1対の金属圧延ロール間に通し、厚さ250μmの長尺シートを得た。このシートを290℃の延伸温度で長手方向に10倍に延伸し、さらにテンター法により80℃の延伸温度で幅方向に30倍に延伸して、未焼成PTFE多孔質膜を得た。この未焼成PTFE多孔質膜を、熱風発生炉を用いて400℃で焼成して、帯状のPTFE多孔質膜を得た(平均孔径1.0μm、厚さ10μm)。
【0030】
カーボンブラック(東海カーボン製、トーカブラック#4500:平均粒子径40nm)をイソプロピルアルコール(IPA)中に投入し、これを超音波洗浄機に5分間かけて0.5重量%の分散液を作製した。
【0031】
帯状の通気性支持材として不織布(ユニチカ社製、エルベスTO303WDO、厚さ150μm、目付量30g/m2、鞘部PEの融点129℃、芯部PET)を用意し、この帯状の通気性支持材と上記帯状のPTFE多孔質膜と重ね合わせ、帯状のPTFE多孔質膜に、上記分散液50g/m2を吹き付け(カーボンブラックの付着量:0.25g/m2)、IPAを送風により乾燥して除去した。次に、上記と同じ帯状の通気性支持材(不織布)を帯状のPTFE多孔質膜に重ね合わせ、135℃に加熱された熱ロールで連続的に熱ラミネートして3層を接着し、2層の不織布の間にPTFE多孔質膜が介在する構成の濾材1を作製した。この濾材1(長さ20m)を外径7.6cmのポリエチレン(PE)製ロールに巻き取った。
【0032】
(実施例2)
分散液量を20g/m2(カーボンブラックの付着量:0.1g/m2)としたこと以外は実施例1と同様にして濾材2を作製し、この濾材2(長さ20m)を外径7.6cmのPE製ロールに巻き取った。
【0033】
(比較例)
帯状のPTFE多孔質膜に分散液を吹き付けないこと以外は実施例1と同様にして濾材3を作製し、この濾材3(長さ20m)を外径7.6cmのPE製ロールに巻き取った。
【0034】
上記濾材1〜3が巻き付けられたPE製ロールを、PE製ロールが回転しないようにシャフトに固定し、図8に示すように、PE製ロール11に巻き取られた濾材1〜3の最外周面13を、矢印の方向へナイロン製織布12で摩擦(速度0.5m/sec、30往復)して帯電させた。
【0035】
摩擦後の濾材および摩擦前の濾材1〜3を、除電していないゴムロール(外径40mm)3本に沿わせながら10m引き出し、それらの圧力損失、捕集効率を下記の方法により測定し、リーク試験を下記の方法で行った。また、ナイロン製織布により摩擦する前の濾材1〜3を5mに切断し、プリーツ加工機を用いてプリーツ加工(加工速度1.5m/min、折り幅30mm)したものについてもリーク試験を行った。その結果を表1に示す。
【0036】
[圧力損失] サンプルを有効面積100cm2の円形ホルダーにセットし、入口側と出口側に圧力差を与え、このサンプルを通過する空気の流速を5.3cm/sに調整したときの圧力損失を圧力計(マノメーター)で測定した。
【0037】
[捕集効率] サンプルを有効面積100cm2の円形ホルダーにセットし、入口側と出口側に圧力差を与え、このサンプルを通過する空気の流速を流速計で5.3cm/sに調整し、上流側にJIS Z 8901に規定された多分散ジオクチルフタレート(DOP)を、平均粒子径0.1〜0.2μmの粒子が4×108個/リットル、平均粒子径0.2〜0.3μmの粒子が6×107個/リットルとなるように供給し、上流側の粒子濃度とサンプルを透過してきた下流側の粒子濃度とをJIS B 9221に規定された光散乱粒子計数器で測定した。得られた下流側粒子濃度および上流側粒子濃度を下記の式に代入して捕集効率を求めた。
捕集効率(%)=(1−下流側粒子濃度/上流側粒子濃度)×100
【0038】
[リーク試験] 日本空気清浄協会のJACA No.10C「空気清浄装置性能試験基準法」の第4性能試験方法(暫定基準)に規定されているリーク試験法に準じて行った。具体的には、上記[捕集効率]の場合と同様なサンプルおよび装置を用意し、同様の条件で粒子を供給した。相対濃度計(直線目盛り)のプローブをサンプル下流面から25mm離れた所において、5cm/secの速度で走行させた。相対濃度計によって測定される下流側粒子濃度粒子が上流側粒子濃度の0.01%以上である場合、リーク有りと判断した。
【0039】
【表1】
【0040】
表1に示した結果より、PTFE多孔質膜に導電性粉体が付着していれば、リーク現象が抑制されたエアフィルタ濾材を実現できることが確認できた。
【0041】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明では、リーク現象が抑制され、製造歩留まりが向上し、品質が安定化されたエアフィルタ濾材、およびこのエアフィルタ濾材を含むエアフィルタユニットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のエアフィルタ用濾材の一例を示す断面図
【図2】本発明のエアフィルタ用濾材の他の例を示す断面図
【図3】本発明のエアフィルタ用濾材の他の例を示す断面図
【図4】本発明のエアフィルタ用濾材の製造方法の一例を説明する図
【図5】本発明のエアフィルタ用濾材の製造方法の一例を説明する図
【図6】本発明のエアフィルタ用濾材の他の例を示す断面図
【図7】本発明のエアフィルタユニットの一例を示す斜視図
【図8】PE製ロールに巻き取られたエアフィルタ用濾材の最外周面をナイロン製織布で摩擦する様子を説明する図
【符号の説明】
1 PTFE多孔質膜
2,2’ 通気性支持材
3 導電性粉体
4 シリコーンロール
5 ターンロール
6 ピンチロール
7 加熱ロール
8〜10 ロール状巻回体
11 PE製ロール
13 最外周面
12 ナイロン製織布
22 支持枠
Claims (13)
- 少なくとも1層のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜と、少なくとも1層の通気性支持材とを含む積層体であって、前記ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜に導電性粉体が付着していることを特徴とするエアフィルタ用濾材。
- 前記導電性粉体が、前記ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜に隣接する層と前記ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜との界面に付着している請求項1に記載のエアフィルタ用濾材。
- 前記導電性粉体が、前記ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の孔内に付着している請求項1または2に記載のエアフィルタ用濾材。
- 前記導電性粉体の付着量が、0.05〜0.5g/m2である請求項1〜3のいずれかの項に記載のエアフィルタ用濾材。
- 前記導電性粉体が、金属粉体、導電性樹脂粉体およびカーボンブラックから選ばれる少なくとも1種の粉体である請求項1〜4のいずれかの項に記載のエアフィルタ用濾材。
- 前記導電性粉体が、前記カーボンブラックである請求項5に記載のエアフィルタ用濾材。
- 前記エアフィルタ用濾材が、ロール状に巻き取られている請求項1〜6のいずれかの項に記載のエアフィルタ用濾材。
- 前記エアフィルタ用濾材が、連続したW字状に折り畳まれている請求項1〜6のいずれかの項に記載のエアフィルタ用濾材。
- 請求項1〜8のいずれかの項に記載のエアフィルタ用濾材を含むことを特徴とするエアフィルタユニット。
- 少なくとも1層のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜と、少なくとも1層の通気性支持材とを含む積層体であるエアフィルタ用濾材の製造方法であって、帯状のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜と帯状の通気性支持材とを重ね合わせた後ロール状に巻き取る工程を含み、前記帯状のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜と前記帯状の通気性支持材とをロール状に巻き取る前に、前記帯状のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜に導電性粉体を付着させることを特徴とするエアフィルタ用濾材の製造方法。
- 前記導電性粉体が分散媒に分散した分散液を用いて前記帯状のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜に前記導電性粉体を付着させ、その後前記分散媒を乾燥させる請求項10に記載のエアフィルタ用濾材の製造方法。
- 前記帯状のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜と前記帯状の通気性支持材とを重ね合わせた後に、前記帯状のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜に前記導電性粉体を付着させる請求項11に記載のエアフィルタ用濾材の製造方法。
- 重ね合わされた前記帯状のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜と前記帯状の通気性支持材とを、熱により接着してからロール状に巻き取っており、前記帯状のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜と前記帯状の通気性支持材とを重ね合わせた後、接着する前に、前記帯状のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜に前記導電性粉体を付着させる請求項12に記載のエアフィルタ用濾材の製造方法。
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20060404 |