JP2004228265A - 研磨パッドの品質管理方法,研磨パッドの動的粘弾性測定装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】被研磨物を研磨する研磨パッドの品質管理方法において,研磨パッド16上に載置された動的粘弾性測定装置50により,研磨装置に装着された状態の研磨パッド16に対して動的粘弾性測定を行うことを特徴とする,研磨パッドの品質管理方法が提供される。かかる構成により,研磨装置に装着されたままの状態の研磨パッドの動的粘弾性を容易かつ迅速に測定できる。かかる動的粘弾性は,実際に研磨加工に使用されている状態の研磨パッドの品質(研磨特性)と密接な相関がある。このため,かかる動的粘弾性測定によって,研磨パッドの品質を正確に把握,評価できるので,交換時期の適正化などが図れ,研磨パッドの品質管理を好適に実行できる。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は,研磨パッドの品質管理方法および研磨パッドの動的粘弾性測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来,半導体ウェハ等の被研磨物を研磨加工するためには,例えば不織布製あるいは発泡ウレタン製等の研磨パッドが用いられている。かかる研磨パッドは,樹脂材料などが使用されており温度依存性が高いので,研磨中の加工熱により研磨パッドの特性が変化し,研磨品質に影響を及ぼすことがある。また,研磨パッドは,研磨工程において長時間使用されることが多いため,疲労により研磨パッドの研磨特性が経時的に劣化してしまう。このため,研磨工程では,品質(研磨特性)が劣化した研磨パッドを,随時,交換する必要があるが,この交換時期が早すぎれば,研磨工程のコストアップを引き起こしてしまう一方,遅すぎれば,研磨品質の低下を招き不良品を生ずることとなってしまう。
【0003】
従って,研磨工程中に研磨パッドの劣化状態を的確に把握して,研磨パッドの品質を管理する必要がある。特に,近年では,研磨品質の向上および安定性の要求が強いため,研磨パッドの品質管理をより高いレベルで行うことが求められている。
【0004】
従来では,研磨パッドの品質管理のために,研磨パッドの硬度測定などが行われていた。しかし,略同一の硬度値を示す研磨パッドを用いて研磨しても,被研磨物の研磨品質にバラツキが生じることがあり,かかる硬度測定では研磨パッドの品質を正確に把握できなかった。
【0005】
このような問題を解決する方法として,研磨パッドの弾性率を測定することによって,研磨パッドの劣化状態を把握し,研磨パッドの交換時期を判断することが提案されている(例えば,特許文献1参照)。しかしながら,この方法では,研磨パッドを弾性体と捉えているために,研磨パッドの状態を十分に把握しているとは言えなかった。これは,研磨パッドは,実際には,弾性体というよりもむしろ粘弾性体としての物理的性質を有していると考えられるからである。
【0006】
そこで,このような研磨パッドの物理的性質に着目し,研磨パッドの粘弾性を測定して研磨パッドの品質を評価する手法が提案されている(例えば,特許文献2および3参照)。これらの方法では,研磨パッドの粘弾性のうち,静的粘弾性を測定している。即ち,研磨パッドに対して所定の応力又は歪みを加えて長時間の変化をみるというクリープ試験又は応力緩和試験により,研磨パッドの静的粘弾性を測定している。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−315116号公報
【特許文献2】
特開平8−94508号公報
【特許文献3】
特開平10−288579号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら,上記従来の研磨パッドの品質管理方法は,研磨パッドの静的粘弾性を評価基準とするので,研磨加工に実際に使用されている状態の研磨パッドの品質を評価するものではなかった。即ち,実際の研磨工程においては,例えば,研磨パッドは,その一部に被研磨物が押圧された状態で回転するため,押圧された被研磨物と干渉する部分が周期的に変化している。このように研磨加工時には研磨パッドは動的に状態変化しているので,研磨パッドの静的粘弾性を測定したとしても,研磨加工に実際に使用されている状態における研磨パッドの研磨特性を正確に判断できないという問題があった。
【0009】
本発明は,上記従来の研磨パッドの品質管理方法が有する上記問題点に鑑みてなされたものであり,本発明の目的は,研磨工程中に容易かつ正確に研磨パッドの品質を管理することの可能な,新規かつ改良された研磨パッドの品質管理方法,およびこれを実現するための研磨パッドの動的粘弾性測定装置を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため,本発明の第1の観点によれば,被研磨物を研磨する研磨パッドの品質管理方法が提供される。この研磨パッドの品質管理方法は,研磨パッドに対して動的粘弾性測定を行うことを特徴とする。
【0011】
かかる構成により,研磨パッドについて動的粘弾性に関する物性値を取得できる。かかる動的粘弾性に関する物性値は,実際に研磨加工に使用されている状態の研磨パッドの品質(研磨特性)と密接な相関がある。このため,かかる動的粘弾性を測定することによって,研磨パッドの品質を正確に把握,評価できる。従って,研磨パッドの交換時期や,不良品であるか否かなどを的確に判断できるので,研磨パッドの品質管理を好適に実行できる。よって,研磨パッドによって研磨される被研磨物の研磨品質を安定的に確保することができる。
【0012】
また,上記動的粘弾性測定は,少なくとも,動的弾性率または損失弾性率のいずれか一方若しくは双方を測定する,ように構成してもよい。かかる構成により,動的粘弾性を表す好適な物性値である動的弾性率及び/又は損失弾性率を測定して,研磨パッドの品質を正確に把握,評価できる。
【0013】
また,上記研磨パッドは,研磨装置に装着された状態で測定される,ように構成してもよい。かかる構成により,研磨加工の途中で,研磨パッドを研磨装置から取り外すことなく,研磨パッドの動的粘弾性を容易かつ迅速に測定できる。なお,この研磨装置は,装着された研磨パッドと被研磨物とを相互に押圧しながら相対運動させて,被研磨物を研磨加工する装置である。
【0014】
また,上記動的粘弾性測定は,研磨パッド上に載置された動的粘弾性測定装置によって行われる,ように構成してもよい。かかる構成により,研磨工程の途中で,研磨パッド上に動的粘弾性測定装置を載置するだけで,研磨パッドの動的粘弾性を容易かつ迅速に測定できる。
【0015】
また,上記課題を解決するため,本発明の別の観点によれば,研磨パッドの動的粘弾性測定装置が提供される。この研磨パッドの動的粘弾性測定装置は,被研磨物を研磨する研磨パッド上に載置され;研磨パッドに対して周期的な振動を加えることにより,研磨パッドの動的粘弾性を測定することを特徴とする。
【0016】
かかる構成により,上記のような研磨パッドの動的粘弾性測定方法を好適に実現可能な研磨パッドの動的粘弾性測定装置を提供できる。この動的粘弾性測定装置は,研磨パッドに対して周期的振動(例えば正弦波振動)を与えることにより,当該研磨パッドに作用している周期的な応力及び/又は周期的な歪みを検出することができる。かかる動的粘弾性測定装置を研磨パッド上に載置するだけで,簡便かつ正確に研磨パッドの動的粘弾性を測定できる。これにより,実際に研磨加工に使用されている状態の研磨パッドの品質を正確に把握することができる。
【0017】
また,上記研磨パッドの動的粘弾性測定装置は,研磨パッド上に載置される筐体と;筐体内に配され,研磨パッドに対して周期的な振動を加える加振装置と;加振装置の振動によって研磨パッドに生じた歪み変形量を検出する変位センサと;を備える,ように構成してもよい。かかる構成により,筐体は,動的粘弾性測定装置の各装置を収納することができる。また,加振装置は,研磨パッドに対して周期的振動(例えば正弦波振動)を与えることにより,当該研磨パッドに対して周期的な応力を作用させ,周期的な歪みを生じさせることができる。また,変位センサは,研磨パッドに生じた周期的な歪み変形量を検出して,動的粘弾性を表す物性値の算出に必要なデータを出力することができる。
【0018】
また,上記研磨パッドは,研磨装置に装着されているように構成してもよい。かかる構成により,研磨工程の途中で,研磨パッド上に動的粘弾性測定装置を載置するだけで,研磨パッドの動的粘弾性を容易かつ迅速に測定できる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0020】
(第1の実施の形態)
まず,図1に基づいて,本発明の第1の実施形態にかかる研磨装置の概容について説明する。なお,図1は,本実施形態にかかる研磨装置10,および研磨パッドの品質管理装置40の概略的な構成を示す斜視図である。
【0021】
図1に示すように,本実施形態にかかる研磨装置10は,例えば,研磨テーブル14と,研磨パッド16と,基板保持部駆動手段18と,基板保持部20と,研磨剤供給ノズル24と,から構成されている。
【0022】
研磨テーブル14は,例えば,ステンレス鋼,セラミックスなどで形成された略円盤状のテーブルであり,上面に例えば平滑な水平面を有する。かかる研磨テーブル14は,例えばその下方の装置内に設けられたモータ12によって回転可能である。即ち,モータ12の駆動力がスピンドル26,変速機(図示せず。)等を介して伝達されると,研磨テーブル14は,例えば図1の太矢印の方向に所定の回転速度(例えば40rpm)で回転する。
【0023】
また,研磨パッド16は,例えば,表面の研磨布とその下側の弾力層などから構成された2層構造を有する。この研磨布は,例えば,不織布や発泡ウレタン等を材料とする人工皮革様の布であり,所定の摩擦抵抗と適度な硬さを有し,親水性,粘弾性,耐薬品性にも優れる。また,弾力層は,弾力性に富む材料で構成されており,基板30全体を略均一に研磨するため,押圧された基板30全体を弾力的に研磨布と接触させる機能を有する。なお,研磨パッド16は,かかる弾力層を必ずしも具備しなくてもよい。
【0024】
このような構成の研磨パッド16は,例えば,研磨テーブル14上に極力平坦になるように貼り付けるなどして装着される。このため,研磨パッド16は,研磨テーブル14の回転に伴って回転運動し,基板30に対して相対運動することができる。これにより,研磨パッド16は,被研磨物である半導体ウェハ等の基板30を研磨することができる。即ち,研磨パッド16は,例えばスラリー25を供給されながら,後述する基板保持部20によって押圧された基板30と機械的に干渉することにより,基板30の被研磨面を平坦加工または鏡面加工することができる。
【0025】
また,通常は,かかる研磨パッド16一枚で複数枚の基板30を研磨加工できる。しかし,研磨パッド16は,研磨する基板30の枚数が増加するにつれ経時的に疲労して,研磨特性が劣化してしまう。従って,基板30の研磨品質を維持するためには,研磨特性が所定基準以下に劣化した研磨パッド16を,随時交換する必要がある。
【0026】
基板保持部駆動手段18は,ロッド28を介して基板保持部20を加圧しながら回転させる機構であり,例えばモータおよびシリンダ(図示せず。)等からなる。即ち,例えば,加圧機構であるシリンダにより,基板30を保持した基板保持部20を研磨パッド16に対し例えば垂直方向に押圧するとともに,回転機構であるモータにより基板保持部20を,例えば図1の細矢印の方向に回転させることができる。
【0027】
また,基板保持部20は,例えば,全体が略円柱形状を有し,研磨テーブル14の上方に回転可能に設置される。かかる基板保持部20は,例えば,ロッド28を介して基板保持部駆動手段18に連結され,下面には基板30を保持するためのリング22を備えている。このため,基板保持部20は,例えば,被研磨面が研磨パッド16と対向するように基板30を保持することができる。さらに,基板保持部20は,このように保持した基板30の被研磨面を,回転させながら研磨パッド16に押圧することができる。これにより,研磨パッド16と基板30の被研磨面とが相互に干渉しながら相対運動するので,当該被研磨面が研磨される。このとき,例えば,基板30および研磨パッド16の双方が回転運動しているため,両者は複合的な方向にバランス良く擦り合わせられるので,被研磨面全体が均等に研磨される。
【0028】
また,研磨剤供給ノズル24は,基板30の研磨加工時に,例えば,回転する研磨パッド16上にスラリー25を供給することができる。スラリー25は,化学反応性物質を含む研磨剤であり,被研磨物に応じて多様な化学溶液や研磨砥粒が用いられる。具体的には,このスラリー25は,例えば,SiO2系の超微粒子を純水に懸濁させたコロイダルシリカとアルカリ性溶液(例えばpH9〜11.5)で調合して構成できる。かかるスラリー25は,研磨加工時に基板30と研磨パッド16の間に入り込んで砥粒として機能して,基板30の被研磨面を高精度に平滑化する。
【0029】
また,かかる研磨装置10は,例えば,図1には示していないが,基板30を安定的に研磨するために,研磨パッド16の表面性状を常に同じ状態に保つ目的で当該表面の目立てを行うコンディショニング機構や,ダイヤモンド砥石やナイロンブラシ等で研磨パッド16の表面を擦るドレッシング機構などを具備してもよい。また,基板保持部20を上下移動させる昇降機構や,基板30を研磨パッド16に均等に加圧接触させるための加圧ポンプ,基板30を吸着保持するための減圧ポンプなどが設けられてもよい。
【0030】
以上のような構成の研磨装置10は,例えば,ウェハ製造工程において,基板30である半導体ウェハの被研磨面を高精度に研磨して鏡面化(即ち,ポリシング)することが可能である。また,研磨装置10は,例えば,ウェハ処理工程において,半導体デバイスの多層構造化に伴って半導体ウェハ表面に形成された凹凸面を,化学機械研磨(CMP:Chemical mechanical polishing)法により,化学作用と機械的研磨の複合作用により研磨して平滑化することも可能である。
【0031】
次に,さらに図1に基づいて,本実施形態にかかる特徴である研磨パッドの品質管理装置40について説明する。この研磨パッドの品質管理装置40は,例えば,研磨加工に用いられる研磨パッド16の品質を測定,評価および管理するための装置であり,かかる評価指標として動的粘弾性を測定することを特徴とする。
【0032】
ここで,この動的粘弾性について説明する。動的粘弾性は,物体に周期的に変化する歪みまたは応力を加えたときに観測される粘弾性である。この動的粘弾性は,例えば,弾性に相当する実数部と,粘性に相当する虚数部とを有する複素数として表され,それぞれ動的弾性率(貯蔵弾性率)E’,損失弾性率E’’とよばれる。また,これらの動的弾性率E’および損失弾性率E’’の和を複素数表示したものを複素弾性率E*(=E’+E’’i)という。また,この損失弾性率E’’と動的弾性率E’との比(E’’/E’)を損失正接(tanδ)といい,例えばゴム材料における転がり抵抗,制振材における振動減衰性能などの評価に重要な物理量である。
【0033】
この動的粘弾性の測定において,被測定材料の温度の変化(温度分散)や,加える歪みまたは応力の周波数の変化(周波数分散)に応じた挙動を解析することにより,被測定材料の力学的性質を解明する多くの情報を得ることができる。このため,かかる動的粘弾性の測定は,実際の製造工程,加工工程中における被測定材料の評価手段,品質管理の手段として有効である。
【0034】
かかる観点から,本実施形態にかかる研磨パッドの品質管理装置40は,研磨パッド16に対して動的粘弾性測定を行うことにより,実際に使用されている研磨パッド16の状態を正確に評価しようとするものである。より詳細には,図1に示したような研磨装置10による研磨加工では,例えば,回転する研磨パッド16に対して,その全体ではなく部分的にのみ基板30が押圧される。このため,研磨加工中の研磨パッド16は,部分的に基板30が押圧・非押圧される状態が周期的に繰り返されて,動的に状態変化していることになる。従って,上記のような動的粘弾性は,このような研磨加工に実際に使用されている研磨パッド16の状態に好適に対応しているので,研磨加工に実際に使用されている状態における研磨パッド16の研磨特性を評価するための指標としては,従来のような静的粘弾性よりも優れる。
【0035】
そこで,本実施形態にかかる研磨パッドの品質管理装置40は,例えば,研磨装置10に装着されている状態の研磨パッド16に対して,動的粘弾性測定を行い,例えば,動的弾性率E’および損失弾性率E’’を測定する。一方で,予め,例えば,研磨パッド16の良好状態(交換が不要な状態),あるいは不良状態(交換が必要な状態)を示す動的弾性率E’および損失弾性率E’’の範囲(以下では,基準動的粘弾性値の範囲という場合もある。)を設定しておく。これにより,上記測定した動的弾性率E’または損失弾性率E’’の一方若しくは双方の値が,上記基準動的粘弾性値の範囲から外れる,あるいは含まれるか否かを判断することにより,研磨パッド16の状態が良好であるか,または不良であるかを評価することができる。この結果,研磨パッド16の交換時期を正確に判断することが可能となる。
【0036】
かかる動的粘弾性測定に基づく研磨パッドの品質管理を実現すべく,研磨パッドの品質管理装置40は,図1に示すように,例えば,研磨パッドの動的粘弾性測定装置50(以下では,測定装置50と略称する。)と,制御解析装置60と,情報処理装置70と,を備える。
【0037】
測定装置50は,例えば,研磨装置10が静止状態(即ち,回転テーブル14の回転が停止し研磨加工が行われていない状態)にあるときに,研磨装置10の研磨パッド16上に載置され,研磨パッド16の動的粘弾性を測定することができる。換言すると,測定装置50は,研磨装置10に常設されるのではなく,研磨パッド16の動的粘弾性を測定するときにだけ,研磨パッド16上にオプション的に取り付けられるものである。
【0038】
一方,制御解析装置60および情報処理装置70は,例えば,研磨装置10とは離隔して配置されており,ケーブル62などで接続された測定装置50との間で,各種の制御信号および測定データ等を送受信することができる。この制御解析装置60および情報処理装置70は,例えば協働して,上記測定装置50を制御するとともに,測定装置50の測定データを解析,表示等することができる。
【0039】
このように,研磨パッドの品質管理装置40は,例えば,測定装置50と,制御解析装置60および情報処理装置70とが,独立した構成となっており,比較的小型の測定装置50のみを研磨パッド16上に載置することができる。以下に,これらの各装置の詳細について説明する。
【0040】
まず,図2に基づいて,本実施形態にかかる特徴である研磨パッドの動的粘弾性測定装置50について詳細に説明する。なお,図2は,本実施形態にかかる研磨パッドの動的粘弾性測定装置50の概略的な構成を示す断面図である。また,図3は,本実施形態にかかる押圧棒54の先端部の形状例を示す断面図である。
【0041】
図2に示すように,測定装置50は,例えば,筐体51と,加振器52と,押圧棒54と,変位センサ56と,温度センサ58と,を主に備える。
【0042】
筐体51は,例えば150mm角の略立方体形状などを有し,例えば金属または合成樹脂などで形成されている。この筐体51の内部には,測定装置50の各機器が設置される。かかる筐体51は,測定時においては,例えば,その下面が研磨パッド16と直接接触するようにして研磨パッド16上に載置される。なお,この筐体51は,研磨装置10の研磨パッド16上に好適に載置できるように,その大きさ,形状等が設計されている。
【0043】
加振器52は,例えば基台部53を介して筐体51に固定されている。この加振器52は,内部にモータなどを備えており,例えば,制御解析装置60などからの制御信号に基づいて,周期的な振動を発生することができる。この加振器52が発した振動は,加振器52の例えば下部に取り付けられた押圧棒54に伝達される。本実施形態では,かかる加振器52が発生する周期的な振動は,例えば正弦波振動となるように構成されている。かかる正弦波振動を採用することで,研磨パッド16の動的粘弾性の測定処理および解析処理が,簡便かつ正確となる。
【0044】
押圧棒54は,例えば,研磨パッド16を押圧するための略棒状の押圧部材(治具)であり,例えば硬質な金属等で形成されている。かかる押圧棒54の先端部は,図3に示すように,例えば,略半球形状(図3(a)),略コーン形状(図3(b)),略平面形状(図3(c))などとすることができる。この先端部の形状は,例えば,研磨パッド16の材質,硬度,厚さなどに応じて決定される。かかる押圧棒54は,上記加振器52によって例えば研磨パッド16に対して略垂直方向(例えば上下方向)に周期的に振動させられる。この結果,押圧棒54は,例えば筐体51下面に設けられた貫通孔55から突出して,研磨パッド16の一部を周期的に押圧して変形させることができる。
【0045】
このような加振器52および押圧棒54は,本実施形態にかかる加振装置として構成されており,研磨パッド16に対して例えば正弦波振動を加えることができる。さらに,本実施形態では,かかる正弦波振動は,研磨パッド16に対して例えば正弦波応力が与えられるように制御される。これにより,加振器52および押圧棒54は,研磨パッド16に対して周期的に変化する例えば正弦波応力を加えることができ,この結果,例えば,研磨パッド16に部分的な正弦波歪みを生じさせることができる。
【0046】
変位センサ56は,例えば,押圧棒54の近傍に設置された非接触型の変位計などで構成される。この変位センサ56は,上記押圧棒54の例えば略垂直方向の変位量を検出することができる。これにより,変位センサ56は,例えば,上記押圧棒54の押圧によって研磨パッド16に生じた歪み変形量を検出することができる。
【0047】
温度センサ58は,例えば,筐体51下面の内側に設置される温度計などである。この温度センサ58は,例えば,研磨パッド16に対して正弦波振動が加えられる付近の温度を検出することができる。なお,この温度センサ58は,必ずしも具備されなくともよい。
【0048】
上記のような構成の測定装置50は,研磨パッド16に対して例えば正弦波振動(正弦波応力)を加えることにより,研磨パッド16に動的に変化する歪み(正弦波歪み)を生じさせ,さらに,かかる歪みを検出することにより,研磨パッド16の動的粘弾性を測定することができる。このとき,研磨装置10に装着されたままの状態の研磨パッド16上に,測定装置50を載置して動作させることで,当該研磨パッド16の動的粘弾性を測定できる。このため,研磨パッド16を研磨装置10から取り外すことなく迅速かつ容易に測定できるので,測定作業が効率的になる。
【0049】
次に,図4に基づいて,本実施形態にかかる制御解析装置60について詳細に説明する。なお,図4は,本実施形態にかかる制御解析装置60の概略的な構成を示すブロック図である。
【0050】
図4に示すように,制御解析装置60は,例えば,正弦波発生器61と,増幅器62と,応力検出回路63と,変位検出回路64と,振幅比較回路65と,位相差回路66と,温度検出回路67と,を備える。
【0051】
正弦波発生器61および増幅器62は,例えば,上記測定装置50の加振器52の動作を制御する制御部として機能する。
【0052】
詳細には,正弦波発生器61は,例えば,情報処理措置70からの制御指示信号に基づいて,例えば特定の周波数の正弦波信号を発生する。また,増幅器62は,この正弦波発生器61の出力である正弦波信号の振幅を調整した上で,加振器52に対して制御信号として出力する。これにより,加振器52は,入力された正弦波信号に応じた正弦波振動を発生することができる。この加振器52が発生した正弦波振動は,押圧棒54を介して研磨パッド16に正弦波応力として作用する。
【0053】
また,応力検出回路63,変位検出回路64,振幅比較回路65,位相差回路66および温度検出回路67は,例えば,測定装置50の測定データを解析する解析部として機能する。この解析処理は,例えば,研磨パッド16の動的弾性率E’および損失弾性率E’’などを算出するために必要な,研磨パッド16に作用する正弦波応力と正弦波歪みとの相関データを得る処理や,研磨パッド16の温度を得る処理などである。
【0054】
より詳細には,応力検出回路63は,例えば,増幅器52の出力である正弦波信号に基づいて,研磨パッド16に作用している正弦波応力を検出し,当該正弦波応力に相当する応力検出信号を生成する。一方,変位検出回路64は,例えば,変位センサ56が検出した押圧棒54の変位に基づいて,研磨パッド16に生じている正弦波歪みを検出し,当該正弦波歪みに相当する変位検出信号を生成する。これらの応力検出信号および変位検出信号は,それぞれ振幅比較回路65および位相差検出回路66に入力される。振幅比較回路65は,例えば,応力検出信号および変位検出信号の振幅を比較して,両者の振幅比に相当する振幅比較信号を生成する。また,位相差回路66は,例えば,略同一の周期で増減する応力検出信号および変位検出信号の位相を比較して,両者の位相差に相当する位相差信号を生成する。かかる振幅比較信号は動的弾性率E’を表し,位相差信号は損失弾性率と動的弾性率との比(E”/E’)である損失正接(tanδ)を表している。このため,情報処理装置70は,これらの振幅比較信号および位相差信号に基づいて,研磨パッド16の動的弾性率E’および損失弾性率E’’を得ることができる。また,温度検出回路67は,例えば,温度センサ58の検出データに基づいて,正弦波応力が加えられている付近の研磨パッド16の温度を表す温度検出信号を生成して,情報処理装置70に出力する。
【0055】
次に,本実施形態にかかる情報処理装置70について詳細に説明する。
【0056】
情報処理装置70は,図1に示したように,例えば,パーソナルコンピュータなどで構成される。この,情報処理装置70は,例えば,測定装置50および制御解析装置60に対する制御信号の発信処理や,制御解析装置60から入力された測定データおよび解析データ等に関する計算処理,作図,作表などの表示処理,記録処理など,研磨パッド16の動的粘弾性測定に関する各種処理を実行する。
【0057】
具体例を挙げると,この情報処理装置70は,例えば,オペレータ入力などに基づいて,研磨パッド16に加える正弦波振動の周期,振幅等を設定し,測定装置50および制御解析装置60の動作を指示することができる。また,この情報処理装置70は,例えば,上記制御解析装置60から入力された振幅比較信号および位相差信号に基づいて,研磨パッド16の動的弾性率E’および損失弾性率E’’を算出し,これらの経時変化をモニタなどにグラフ表示することもできる。
【0058】
なお,上記のような情報処理装置70の各種処理機能は,例えば,一般的なPCである情報処理装置70に対して,動的粘弾性測定に関する上記各種処理を規定するプログラムをインストールすることによって,実現可能に構成してもよい。
【0059】
次に,図5に基づいて,本実施形態にかかる研磨パッドの品質管理方法について説明する。なお,図5は,本実施形態にかかる研磨パッドの品質管理方法を示すフローチャートである。
【0060】
図5に示すように,まず,ステップS10では,研磨装置10により半導体ウェハなどの基板30が,例えば所定枚数だけ研磨加工される(ステップS10)。この研磨加工時には,研磨パッド16は,例えば,所定の複数枚数の基板30を研磨するまでは交換されることなく同一のものが継続して使用される。なお,このように所定の複数枚数の基板30の研磨加工が完了した場合だけではなく,例えば,研磨加工中にオペレータが研磨品質等の不良,異常を発見した場合などにも,ステップS12に進むようにしてもよい。即ち,本ステップで研磨加工される基板30の枚数は,必ずしも所定の枚数に固定されるものではなく,研磨パッド16の測定の必要性に応じて任意の枚数に変更することもできる。
【0061】
次いで,ステップS12では,上記測定装置50が研磨パッド16上に載置される(ステップS12)。このとき,例えば,研磨装置10は上記静止状態にあり,研磨加工は中断している。また,研磨パッド16は,例えば,研磨装置10の研磨テーブル14に装着されたままの状態である。
【0062】
さらに,ステップS14では,測定装置50によって研磨パッド16の動的粘弾性が測定される(ステップS14)。より詳細には,例えば,オペレータが上記情報処理装置70に測定条件を入力し測定開始を指示すると,例えば上記制御解析装置60が測定装置50の測定動作を開始するよう制御する。これにより,測定装置50は,例えば,研磨装置10に装着されている状態の研磨パッド16に対して正弦波応力を加えながら,かかる応力によって研磨パッド16に生じた正弦波歪みを検出する。このようにして,測定装置50は,研磨パッド16の動的粘弾性の算出に必要なデータを測定しながら,かかる測定データを制御解析装置60に出力する。さらに,制御解析装置60および情報処理装置70が,例えば,かかる測定データを解析,計算することにより,当該研磨パッド16の動的粘弾性を表す物性値である動的弾性率E’および損失弾性率E’’を得る。また,かかる動的粘弾性の測定中に,例えば,温度センサ58等により研磨パッド16の温度を測定することもできる。
【0063】
その後,ステップS16では,上記測定された動的粘弾性値に基づいて,研磨パッド16の品質の劣化具合が判断され,当該研磨パッド16の交換が必要であるか否かが判断される(ステップS16)。この交換の要否の判断は,例えば,測定された動的弾性率E’または損失弾性率E’’の一方若しくは双方が,予め設定された研磨パッド16の良好状態を示す動的弾性率E’または損失弾性率E’’の範囲(上記基準動的粘弾性値の範囲)内にあるか否かなどを判断基準とすることができる。より具体的には,例えば,動的弾性率E’の測定値が例えば1000[MPa]以下である場合には,当該研磨パッド16は不良状態にあり,交換が必要であると判断するように設定してもよい。
【0064】
また,かかる研磨パッド16交換の要否の判断は,例えば,オペレータにより行われても良いし,或いは情報処理装置70などが上記基準動的粘弾性値と測定した動的粘弾性値とを比較して,自動的に行うようにしてもよい。上記のような判断の結果,当該研磨パッド16の交換が必要であると判断された場合にはステップS18に進み,一方,必要でないと判断された場合にはステップS20に進む。
【0065】
次いで,ステップS18では,研磨パッド16が,交換される(ステップS18)。即ち,不良状態にあると判断された研磨パッド16が研磨装置10の研磨テーブル14から取り外され,良好状態にある新たな研磨パッド16が当該研磨テーブル14に装着される。
【0066】
さらに,ステップS20では,基板30の研磨加工を終了するか否かが判断される(ステップS20)。研磨加工を終了しない場合には,ステップS10に戻り,上記と同様にして,例えば所定枚数の基板30を研磨した後,測定装置50により研磨パッド16の動的粘弾性を測定して,品質評価が行われる。このようなフローを繰り返すことにより,研磨工程において研磨パッド16の品質を定期的に評価できる。一方,研磨加工を終了する場合には,研磨パッドの品質管理方法の全工程が終了する。
【0067】
以上のような,本実施形態にかかる研磨パッドの品質管理装置50および品質管理方法によれば,研磨パッド16に対して動的粘弾性測定を行うので,実際に研磨加工に使用されている状態の研磨パッド16の研磨特性(品質)を,正確に測定して,把握できる。
【0068】
また,かかる動的粘弾性の測定は,測定装置50を研磨パッド16上に載置するだけで実行可能であり,従来のように研磨パッド16を測定用試料室に入る程度の大きさの小片に加工する必要がない。このため,オペレータは,例えば,研磨加工途中において研磨パッド16の動的粘弾性を容易かつ迅速に測定して,研磨パッド16の研磨特性を正確に把握できる。この結果,当該研磨パッド16によって研磨された基板30の研磨品質等をも正確に把握できる。
【0069】
さらに,研磨パッド16の品質の適否基準として予め設定してある基準動的粘弾性値と,測定した動的粘弾性値とを比較することにより,当該研磨パッド16の交換の要否を客観的に判断することができる。即ち,研磨パッド16の交換時期を適正に判断できる。このため,交換時期が早すぎて,研磨パッド16の浪費によるコストアップを誘発することや,逆に,交換時期が遅すぎて,基板30の研磨品質が低下して不良品を生ずることを,好適に防止できる。
【0070】
また,研磨加工中に加工熱等により研磨パッド16の温度が変化した場合でも,温度センサ58の検出結果と研磨パッドの温度依存性を解析することにより,研磨パッド16の研磨特性等を正確に把握して対応することができる。このため,温度変化にも対応した研磨パッド16の品質管理を実現できる。
【0071】
このように本実施形態によれば,例えば,研磨工程において,実際に研磨加工に使用されている状態の研磨パッド16の品質を容易,迅速かつ正確に管理することができる。この結果,基板30などの被研磨物の研磨品質が所定レベル以上で安定的に確保され,歩留まりが向上する。
【0072】
【実施例】
次に,上記実施形態に基づいて,研磨パッド16の動的粘弾性を測定する実験等を行った結果について説明する。
【0073】
まず,上記動的粘弾性の測定実験の予備実験として,研磨パッド16の反応率と研磨レート(研磨効率)との相関を求めるために行った研磨実験結果について,図6に基づいて説明する。なお,図6は,本実施例にかかる研磨実験結果として,研磨パッド16の反応率と研磨レートとの相関を示すグラフである。
【0074】
研磨パッド16の不良原因の1つとしては,例えば,研磨パッド16の成型時における材料の反応不全が挙げられる。そこで,良品の研磨パッド16(反応率100%)と,不良品の研磨パッド16(反応率90%,80%,70%)とを用いて,基板30の研磨実験を行った。この結果,図6に示すように,良品の研磨パッド16の研磨レートが約0.27[μm/mim]と比較的高いのに対し,不良品の研磨パッド16の研磨レートは,いずれも0.10[μm/mim]以下であり,反応率が低いほど研磨パッド16の研磨レートが低下(即ち,研磨パッド16の研磨性能が悪化)することが分かった。
【0075】
次に,表1および図7に基づいて,上記測定装置50を用いた研磨パッド16の動的粘弾性等の測定実験結果について,説明する。なお,表1は,本実施例にかかる測定実験結果として,研磨パッド16の反応率と,研磨パッド16の硬度,静的弾性率,動的弾性率および損失弾性率との関係を示す表である。また,図7は,本実施例にかかる測定実験結果として,研磨パッド16の反応率と,研磨パッド16の硬度,静的弾性率,動的弾性率および損失弾性率との相関を示すグラフである。
【0076】
本実験では,研磨パッド16の硬度を略同一となるようにし,成型時の反応率を変えて,意図的に,3つの不良品の研磨パッド16(反応率90,80,70%)と,1つの良品の研磨パッド16(反応率100%)を製造した。さらに,これら4つの研磨パッド16に対して,静的粘弾性を表す静的弾性率(ヤング率)と,動的粘弾性を表す動的弾性率E’および損失弾性率E’’をそれぞれ測定し,各測定結果を比較した。なお,硬度測定はJISK6253‐1997/IS07619で規定するシヨアD硬度計を用いた。また,動的粘弾性の測定では,研磨パッド16の温度が30℃となるようにし,研磨パッド16に加える正弦波応力の周波数を5Hzとした。
【0077】
【表1】
【0078】
かかる測定実験によれば,表1および図7に示すように,静的弾性率は,良品である反応率100%の場合には,1400[MPa]であるのに対し,不良品である反応率90,80%の場合には,それぞれ1000[MPa],800[MPa]であり,両者の差は約1.4〜1.75倍程度で大差はない。ただし,反応率70%の場合には,10[MPa]であり良品との差は大きいが,これは不良の度合いが静的弾性率でも検知可能な程度に過度に大きいためと考えられる。
【0079】
これに対し,動的弾性率E’は,良品である反応率100%の場合には,2400[MPa]であるのに対し,不良品である反応率90,80%の場合には,それぞれ810[MPa],740[MPa]であり,両者の差は約3〜3.4倍程度で顕著な差が見られる。また,損失弾性率E’’は,良品である反応率100%の場合には,86.0[MPa]であるのに対し,不良品である反応率90,80%の場合には,それぞれ260[MPa],290[MPa]であり,両者の差は約3.3〜3.6倍程度で顕著な差が見られる。
【0080】
このように,良品と不良品との間で,静的弾性率には大きな差異が見られないのに対し,動的弾性率E’および損失弾性率E”には,大きな差異が見られることが分かる。従って,動的粘弾性測定を行うことによって,硬度や静的弾性率では評価不能な研磨パッド16の品質を評価できることが明らかになった。よって,研磨パッド16の品質管理をするために,動的粘弾性を測定することが有効な手段であることが実証された。
【0081】
さらに,上記実験結果に基づいて,研磨パッド16の良否判断の基準となる基準動的粘弾性値について考察すると,例えば,動的弾性率E’が1000[MPa]以下であれば不良であると判断することができる。また,例えば,損失弾性率E’’が100[MPa]以上であれば不良であると判断することもできる。しかし,この基準動的粘弾性値は,かかる例に限定されず,例えば,研磨パッド16の硬度に応じて適切に増減させてよく,研磨パッド16の硬度毎に動的弾性率E’または損失弾性率E’’の上限または下限などを設定してもよい。また,例えば,動的弾性率E’および損失弾性率E’’の双方の基準値を設定して,良否判断することも可能である。
【0082】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0083】
例えば,上記実施形態では,測定装置50が研磨パッド16に対して与える振動は正弦波振動であったが,本発明はかかる例に限定されず,任意の周期的な振動であってもよい。
【0084】
また,上記実施形態では,研磨パッド16に対して正弦波応力を与えたときの正弦波歪みを検出して,研磨パッド16の動的粘弾性測定を行ったが,本発明はかかる例に限定されない。例えば,研磨パッド16に周期的な歪み(正弦波歪み等)を加えたときの動的に変化する応力を検出して,研磨パッド16の動的粘弾性を測定してもよい。なお,この場合には,制御解析装置60の回路構成などを適宜変更してもよい。
【0085】
また,上記実施形態では,研磨パッドの品質管理装置40は,測定装置50と,制御解析装置60と,情報処理装置70とを備えたが,本発明はかかる例に限定されない。例えば,制御解析装置60は必ずしも具備されなくてもよく,この場合には,制御解析装置60の構成を,測定装置50または情報処理装置70が備えるようにしてもよい。
【0086】
また,上記実施形態では,測定装置50と制御解析装置60などは,ケーブル62などによって有線で接続されていたが,本発明はかかる例に限定されず,例えば,相互に無線で接続されていてもよい。
【0087】
また,上記実施形態では,動的弾性率E’および損失弾性率E’’の双方を測定したが,本発明はかかる例に限定されない。例えば,動的弾性率E’または損失弾性率E’’のいずれか一方のみを測定してもよく,また,研磨パッド16の動的粘弾性を表すその他の物性値を測定するようにしてもよい。
【0088】
また,上記実施形態にかかる測定装置50では,加振装置は,加振器52と押圧棒54とから構成されていたが,本発明はかかる例に限定されない。例えば,加振装置は,研磨パッド16に対して周期的な振動を加えることが可能であれば,任意の構成に変更することができる。また,押圧棒54の形状も上記例に限定されるものではない。
【0089】
また,上記実施形態にかかる研磨パッドの品質管理方法では,研磨装置10に取り付けられている状態の研磨パッド16を測定したが,本発明はかかる例に限定されない。例えば,研磨工程途中に研磨パッド16を研磨装置10から取り外した上で,動的粘弾性を測定してもよい。また,例えば,製造した直後の新品の研磨パッド16に対して動的粘弾性を測定して,研磨パッド16の出荷前検査などに利用してもよい。
【0090】
また,上記実施形態にかかる研磨パッドの品質管理方法では,所定枚数の基板30を研磨する毎に研磨パッド16の動的粘弾性を測定して,定期的に品質管理を行ったが,本発明はかかる例に限定されない。例えば,研磨加工を任意のタイミングで中断して単発的に研磨パッド16の動的粘弾性を測定してもよい。
【0091】
【発明の効果】
以上説明したように,本発明によれば,研磨パッドに対して動的粘弾性測定を行うことにより,研磨パッドの品質を正確に把握できる。また,研磨工程中に随時,研磨パッドの動的粘弾性を測定できるので,実際に研磨加工に使用されている状態の研磨パッドの品質を容易かつ正確に評価,管理できる。このため,研磨パッドの交換時期が好適となるので,被研磨物の研磨品質を安定して確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は,第1の実施形態にかかる研磨装置,および研磨パッドの品質管理装置の概略的な構成を示す斜視図である。
【図2】図2は,第1の実施形態にかかる研磨パッドの動的粘弾性測定装置の概略的な構成を示す断面図である。
【図3】図3は,第1の実施形態にかかる押圧棒の先端部の形状例を示す断面図である。
【図4】図4は,第1の実施形態にかかる制御解析装置の概略的な構成を示すブロック図である。
【図5】図5は,第1の実施形態にかかる研磨パッドの品質管理方法を示すフローチャートである。
【図6】図6は,実施例にかかる研磨実験結果として,研磨パッドの反応率と研磨レートとの相関を示すグラフである。
【図7】図7は,実施例にかかる測定実験結果として,研磨パッドの反応率と,研磨パッドの硬度,静的弾性率,動的弾性率および損失弾性率との相関を示すグラフである。
【符号の説明】
10 : 研磨装置
14 : 研磨テーブル
16 : 研磨パッド
30 : 基板
40 : 研磨パッドの品質管理装置
50 : 研磨パッドの動的粘弾性測定装置
51 : 筐体
52 : 加振器
54 : 押圧棒
56 : 変位センサ
58 : 温度センサ
60 : 制御解析装置
70 : 情報処理装置
Claims (7)
- 被研磨物を研磨する研磨パッドの品質管理方法において:
前記研磨パッドに対して動的粘弾性測定を行うことを特徴とする,研磨パッドの品質管理方法。 - 前記動的粘弾性測定は,少なくとも,動的弾性率または損失弾性率のいずれか一方若しくは双方を測定することを特徴とする,請求項1に記載の研磨パッドの品質管理方法。
- 前記研磨パッドは,研磨装置に装着された状態で測定されることを特徴とする,請求項1または2のいずれかに記載の研磨パッドの品質管理方法。
- 前記動的粘弾性測定は,前記研磨パッド上に載置された動的粘弾性測定装置によって行われることを特徴とする,請求項1,2または3のいずれかに記載の研磨パッドの品質管理方法。
- 被研磨物を研磨する研磨パッド上に載置され;
前記研磨パッドに対して周期的な振動を加えることにより,前記研磨パッドの動的粘弾性を測定することを特徴とする,研磨パッドの動的粘弾性測定装置。 - 前記研磨パッドの動的粘弾性測定装置は,
前記研磨パッド上に載置される筐体と;
前記筐体内に配され,前記研磨パッドに対して周期的な振動を加える加振装置と;
前記加振装置の振動によって前記研磨パッドに生じた歪み変形量を検出する変位センサと;
を備えることを特徴とする,請求項5に記載の研磨パッドの動的粘弾性測定装置。 - 前記研磨パッドは,研磨装置に装着されていることを特徴とする,請求項5または6のいずれかに記載の研磨パッドの動的粘弾性測定装置。
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