JP2004227970A - 封着金属箔の製造方法および高圧放電ランプ - Google Patents
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Abstract
【課題】良好な電界研磨を行って封着金属箔脇クラックや段差、凹み、箔切れなどの不具合を低減した封着金属箔の製造方法および得られた封着金属箔を用いて製造された高圧放電ランプを提供する。
【解決手段】モリブデンからなる金属箔片の縁辺を予めモリブデンを5.0mg/ml以上の割合で融解した硫酸系電解研磨液中で電界研磨して封着金属箔20を製造する。
金属箔片は、両側縁にナイフエッジ21、22を形成したモリブデンからなる長尺のリボン状の金属箔材料を所定の長さに切断して金属箔片を得ることができ、また金属箔片の切断により形成された両端部の少なくとも一方の縁辺を上記硫酸系電解研磨液中で電界研磨してナイフエッジ22を形成することができる。
【選択図】図1
【解決手段】モリブデンからなる金属箔片の縁辺を予めモリブデンを5.0mg/ml以上の割合で融解した硫酸系電解研磨液中で電界研磨して封着金属箔20を製造する。
金属箔片は、両側縁にナイフエッジ21、22を形成したモリブデンからなる長尺のリボン状の金属箔材料を所定の長さに切断して金属箔片を得ることができ、また金属箔片の切断により形成された両端部の少なくとも一方の縁辺を上記硫酸系電解研磨液中で電界研磨してナイフエッジ22を形成することができる。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、管球類の封止部に用いる封着金属箔の製造方法および封着金属箔を用いた高圧放電ランプに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、投光照明および画像表示装置などが広く普及しているが、その光源として高圧放電ランプが多くの場合に採用されている。その中にあっても、特に点光源に近く、配光制御が容易な短アーク形の高圧放電ランプ、例えばキセノンランプ、メタルハライドランプなどは、最近普及めざましい液晶プロジェクタ用の光源として多用されつつある。
【0003】
液晶プロジェクタは、画像を投影する装置であり、静止画はもちろんのこと動画においても投影することができ、ビデオ信号またはパーソナルコンピュータの画像信号を入力することにより、様々な画像を投影することができる。このため、プレゼンテーション用のツールとして用いられたり、簡易的なシアター用または大画面テレビジョンモニタとして用いられたり、多様な分野で使用されている。
【0004】
しかし、このような液晶プロジェクタは、各会議室へ据え付けられるほど普及していないことから、持ち運びされることが多く、小形軽量化が重要な課題となっている。
【0005】
小形軽量化のために、液晶プロジェクタ用の液晶パネルは、年々小形化されてきており、1.3インチの大きさまでになってきた。これに伴って、光源も小形化された液晶パネルへ効率よく集光するために、小形化が要請されてきている。このような小形化に応える高圧放電ランプは、電極間距離が2mm以下で、放電媒体が希ガス、石英ガラスの包囲部の内容積に対して0.2mg/mm3以上の水銀および10×10−3μmol以上のハロゲンを少なくとも含み、点灯時の水銀蒸気の圧力が10MPa以上になるように構成されている(例えば特許文献1参照。)。
【0006】
【特許文献1】特開2002−93365号公報
【発明が解決しようとする課題】
光源の小形化に伴う封止部の温度上昇により、埋設されている封着金属箔脇を起点とするクラック(以下、便宜上「封着金属箔脇クラック」という。)などの不具合が発生しやすくなっている。この一要因として封着金属箔の端部に、その切断時に生じたバリを起点としたものが挙げられる。なお、「クラック」とは、石英ガラス放電容器の封止部の内部に発生するひび割れを意味する。
【0007】
そこで、封着金属箔の端部を電界研磨して整形することが考えられる。ところが、電界研磨の条件設定によっては最適な研磨状態が得られず、図7に示すような不具合が発生することが分かった。
【0008】
図7は、封着金属箔の電界研磨による不具合を示し、図7(a)は封着金属箔端部の正面図、図7(b)は封着金属箔の端部の肉厚を誇張して示した側面図、図7(c)は封着金属箔端部の正面図である。
【0009】
すなわち、図7(a)の場合は、封着金属箔の端部における電解液の表層部に浸漬された部位が過度に研磨されて幅寸法が急激に小さくなり、非浸漬部との間に段差を生じている。また、図7(b)の場合は、封着金属箔の端部にナイフエッジを形成した際に、電解液の表層部に浸漬された部位が極度に研磨されて非浸漬部との間に凹みが形成されている。図7(c)の場合は、電解液の表層部に浸漬された境界部に箔切れが発生している。
【0010】
本発明は、良好な電界研磨を行って封着金属箔脇クラックや段差、凹み、箔切れなどの不具合を低減した封着金属箔の製造方法および得られた封着金属箔を用いて製造された高圧放電ランプを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を達成するための手段】
請求項1の発明の封着金属箔の製造方法は、モリブデンからなる金属箔片の縁辺を予めモリブデンを5.0mg/ml以上の割合で融解した硫酸系電解研磨液中で電界研磨することを特徴としている。
【0012】
本発明および以下の各発明において、特に指定しない限り用語の定義および技術的意味は次による。
【0013】
封着金属箔は、そのサイズを使用する管球類の大きさなどに伴う要求に応じて適宜設定し得る。また、電界研磨による金属箔片の整形は、ナイフエッジ形成およびバリ取りのいずれを目的とするものであってもよい。なお、「管球類」とは、石英ガラス容器中に電気的作動部が封入されてなる製品を意味し、その電気的作動部は白熱フィラメントや放電機構などの電気発光作用を呈するものばかりでなく、あらゆる電気的な作用を行うものを含む広い概念である。また、管球類は、その電気的作動部と外部との間の通電を行うために、封着金属箔を埋設した封止部を備えている。
【0014】
また、封着金属箔は、石英ガラスとの馴染みをよくするために、その両側縁にナイフエッジを形成するのが一般的である。これに対して、封着金属箔の端部には、所望によりナイフエッジやバリ取りが行われる。当該端部には、切断時にバリが生じやすいので、ナイフエッジやバリ取りが行われることによって、このバリが除去される。なお、端部にナイフエッジを形成することにより、石英ガラスとの馴染みがさらによくなる。特に投射用小形高圧水銀ランプの場合には、その封止部に用いる封着金属箔の電極側の端部にナイフエッジを形成したものを用いることにより、封着金属箔脇クラックが顕著に低減する。また、金属箔片の両端の縁辺をともに電界研磨することができるが、高圧放電ランプに封着金属箔を用いる場合には、少なくとも電極側の端部が電極からの伝熱などによりかなりの高温になるために、封着金属箔脇クラックが発生しやすいので、当該端部を電界研磨するのが効果的である。
【0015】
本発明において用いる電界研磨液は、硫酸系であり、予めモリブデン(Mo)を5.0mg/ml以上の割合で融解しているように管理された状態で用いるのが特徴的構成である。電界研磨液を上記のように管理するには、例えば以下のように行うことにより実現できる。すなわち、予めモリブデンが高濃度に溶解した原液を作成しておき、この原液を所定量計量して硫酸(H2SO4)水溶液に添加してモリブデンを5.0mg/ml以上の割合で融解しているように管理された電界研磨液を得る。
【0016】
モリブデンの融解割合は、5.0mg/ml以上であれば、比較的広範囲にわたる割合において良好な電界研磨を行うことができることが分かった。しかし、モリブデンの融解割合が60mg/ml以上になると、最早所望の電界研磨を行うことができなくなることも分かった。したがって、モリブデンMoの実際的な融解割合は、5.0〜60mg/mlの範囲である。
【0017】
なお、モリブデンの融解割合は、誘導結合高周波プラズマ分光分析(ICP分光分析)により定量測定することが可能である。
【0018】
そうして、本発明においては、上記の方法により電界研磨液の表層領域附近に浸漬された金属箔片の部位に生じやすい過度の研磨による段差、凹みおよび箔切れなどが形成されることなく、金属箔片の縁片に対して所望のナイフエッジ形成やバリ取りの研磨処理を行うことができる。このため、得られた封着金属箔を用いて製造された管球類は、例えば小形化などにより、作動中に封着金属箔が高温になっても、封着金属箔脇クラックが発生しにくくなる。
【0019】
請求項2の発明の封着金属箔の製造方法は、両側縁にナイフエッジを形成したモリブデンからなる長尺のリボン状の金属箔材料を所定の長さに切断して金属箔片を得る第1の工程と;金属箔片の切断により形成された両端部の少なくとも一方の縁辺を予めモリブデンを5.0mg/ml以上の割合で融解した硫酸系電解研磨液中で電界研磨してナイフエッジを形成する第2の工程と;を具備していることを特徴としている。
【0020】
本発明は、両側面および少なくとも一方の端面にナイフエッジを備えた封着金属箔を製造するのに好適な封着金属箔の製造方法を規定している。
【0021】
第1の工程においては、予め両側縁にナイフエッジを形成した長尺のリボン状の金属箔材料を用いて所望長さの金属箔片を得る。このような長尺のリボン状の金属箔材料は、金属箔製造業者から比較的容易に調達することができる。そして、長尺のリボン状の金属箔材料を所望の長さに切断して金属箔片を形成する。切断のための手段および金属箔片に形成された切断の切り口の態様は問わない。
【0022】
第2の工程においては、金属箔片の両端部の少なくとも一方の縁辺を電界研磨液に浸漬して電界研磨を行う。電界研磨液は、請求項1の発明におけるのと同様の構成のものを用いる。そして、電界研磨により端部の縁辺にナイフエッジを形成する。
【0023】
そうして、本発明によって製造された封着金属箔は、予め両側縁に形成されたナイフエッジと、少なくとも一方の端部に第2の工程における電界研磨により形成されたナイフエッジとを備えている。しかも、後者のナイフエッジは、予めモリブデンの融解割合が所定値範囲内に管理された硫酸系電界研磨液を用いて形成されているので、過度な電界研磨による段差、凹みまたは箔切れなどの不具合のない良好な封着金属箔を製造することができる。
【0024】
また、本発明により製造された封着金属箔は、その両側縁および一方の端部における封着部の石英ガラスとの封着の馴染みが良好になり、封止に高い信頼性が得られる。
【0025】
さらに、本発明により製造された封着金属箔は、そのナイフエッジが形成された端部に電極の基端を溶接して、さらに電極間距離が2mm以下で、放電媒体が希ガス、石英ガラスの包囲部の内容積に対して0.2mmg/mm3以上の水銀および10×10−3μmol以上のハロゲンを少なくとも含み、点灯時の水銀蒸気の圧力が10MPa以上になる小形の高圧放電ランプ(以下、便宜上「投射用小形高圧水銀ランプ」という。)を構成した場合に特に効果的で、封着金属箔脇クラックが顕著に低減する。
【0026】
請求項3の発明の封着金属箔の製造方法は、請求項2記載の封着金属箔の製造方法において、金属箔片の端部における電界研磨部分の長さを2aとしたとき、当該端部のナイフエッジ先端からの距離aにおける肉厚tが非電界研磨部分の肉厚t0の65〜85%であることを特徴としている。
【0027】
本発明は、電界研磨によって封着金属箔の端部に形成するナイフエッジの好適な構造を規定している。
【0028】
すなわち、ナイフエッジは、電界研磨部分の長さ2aの半分の位置における肉厚tが、電界研磨していない未電界研磨部分の肉厚t0の65〜85%であれば、良好な封止を行うことができる。これに対して、上記肉厚tが65%未満になると、電界研磨が過度になり、電界研磨部分と未電界研磨部分との境界部に不連続な段差、凹みまたは箔切れなどの不具合が生じやすくなって良好な封止が困難になる。また、肉厚tが85%を超えると、ナイフエッジの形成が不十分になる。
【0029】
そうして、本発明においては、封着金属箔の端部のナイフエッジにおける肉厚tが上記の構成を備えていることにより、良好な封止を行うことが容易になる。その結果、封着金属箔脇クラックの発生が低減する。
【0030】
請求項4の発明の封着金属箔の製造方法は、両側縁にナイフエッジを形成したモリブデンからなる長尺のリボン状の金属箔材料を所定の長さに切断して金属箔片を得る第1の工程と;金属箔片の切断により形成された端面の少なくとも一方の縁辺を予めモリブデンを5.0mg/ml以上の割合で融解した硫酸系電解研磨液中で電界研磨してバリ取りする第2の工程と;を具備していることを特徴としている。
【0031】
本発明は、両側面にナイフエッジが形成されるとともに、少なくとも一方の端面がバリ取りされた封着金属箔を製造するのに好適な封着金属箔の製造方法を規定している。
【0032】
第1の工程は、請求項3の発明と同様である。
【0033】
第2の工程においては、金属箔片の両端部の少なくとも一方の縁辺を電界研磨液に浸漬して電界研磨を行う。電界研磨液は、請求項1の発明におけるのと同様の構成のものを用いる。そして、電界研磨により端部の縁辺のバリ取りを行う。なお、本発明において、「バリ取り」とは、切断時に生じたバリを除去することを意味し、その結果端部にナイフエッジが形成されてもよいし、ナイフエッジが形成されていないもののバリは除去されている状態であってもよい。また、電界研磨において、バリ取りのみを行う場合と、ナイフエッジを形成する場合とは、電界研磨の処理時間およびまたは通電電流値などを制御することで区別することができる。
【0034】
そうして、本発明によって製造された封着金属箔は、予め両側縁に形成されたナイフエッジと、少なくとも一方の端部に電界研磨によりバリ取りが行われている。しかも、バリ取りは、予めモリブデンの融解割合が所定値範囲内に管理された硫酸系電界研磨液を用いて形成されているので、過度な電界研磨による段差、凹みまたは箔切れなどの不具合のない良好な封着金属箔を製造することができる。
【0035】
また、封着金属箔の端部のバリに起因する封着金属箔脇クラックが生じにくくなる。
【0036】
請求項5の発明の高圧放電ランプは、放電空間を包囲する包囲部および包囲部の両端に一体化された一対の封止部を備えている石英ガラス放電容器と;石英ガラス放電容器の一対の封止部に気密に埋設された請求項1ないし4のいずれか一記載の封着金属箔の製造方法により製造された封着金属箔と;基端部が封着金属箔に溶接され、中間部が封止部の石英ガラスにくわえ込まれ、先端部が包囲部の内部に突出した一対の電極と;石英ガラス放電容器の包囲部内に封入された放電媒体と;を具備していることを特徴としている。
【0037】
<石英ガラス放電容器について> 石英ガラス放電容器は、石英ガラスによって構成された放電容器であり、必要に応じて、透光性石英ガラス放電容器の内面に耐ハロゲン性または耐金属性の透明被膜を形成するか、内面を改質することが許容される。
【0038】
また、石英ガラス放電容器は、長手方向の中間部に包囲部、包囲部の両端に一対の封止部が一体に形成されている。包囲部は、内部に放電空間を包囲する空間を形成している。そして、当該空間は、好適には球体、回転楕円体または紡錘体形状のような形状に形成することができる。一対の封止部は、包囲部から棒状に延在し、内部に後述する電極を支持するとともに、石英ガラス放電容器の両端を封止し、さらに電極に対して導入導体を介しての給電を気密に行うことを可能にしている。これを実現するために、封着金属箔を中間に介在させて電極と導入導体とを接続し、かつ封着金属箔に封止部の石英ガラスを気密に密着させて石英ガラス放電容器を封止する。この場合の封止には、減圧封止法を用いることにより、耐圧性を高めることができる。しかし、所望によりピンチシールなどによる封止法を採用することもできる。
【0039】
<封着金属箔について> 封着金属箔は、石英ガラス放電容器の一対の封止部に気密に埋設されて、気密の導入部を形成する。また、封着金属箔は、請求項1ないし4のいずれかの製造方法により製造されたものであって、少なくとも一端部の縁片が電界研磨により整形されて、ナイフエッジが形成されているか、またはバリ取りのみが行われている。そして、当該端部に電極の基端が溶接されている。しかし、投射用小形高圧水銀ランプの場合、請求項2または3により製造された封着金属箔を上記のように用いて電極を溶接するのが特に好適である。
【0040】
<一対の電極について> 一対の電極は、その構成材料、電極軸径および電極間距離などが特段限定されない。そして、電極は、その中間部が封止部の石英ガラスにくわえ込まれて支持される。
【0041】
しかしながら、投射用小形高圧水銀ランプの場合、一対の電極は、好適には以下のように構成される。すなわち、電極の構成材料は、純タングステンによって形成され、それぞれ細長い電極軸および電極軸の先端部に巻装されたコイル部を備えている。なお、「純タングステン」とは、純度99.9%以上のタングステンをいう。そして、電極軸は、その直径が0.40〜0.55mmの範囲内に入るように設定されている必要がある。なお、電極軸の直径は、好適には0.45〜0.5mmである。
【0042】
また、一対の電極は、その電極間距離が2.0mm以下に設定されることから明らかなように、いわゆる短アーク形の放電が生起するような関係に封装されている。短アーク形は、透光性放電容器内に形成される電極間距離を小さくすることにより、アーク放電を電極によって安定させるいわゆる電極安定形である。このため、高圧放電ランプの発光をなるべく点光源に近付けることができるので、反射鏡またはレンズなどの光学系による集光を効率よく行うことができる。なお、電極間距離は、好適には1.5mm以下である。
【0043】
さらに、電極軸の中間部が封止部の石英ガラスにくわえ込まれることによって、電極を所定の位置に支持する。しかし、電極軸の中間部が石英ガラスに溶着すると、両者の熱膨張係数の相違によって石英ガラスにクラックが生じやすくなるが、特に電極軸が純タングステンからなることによって、電極と石英ガラスとの熱膨張係数の相違によるクラックが発生する。これを防止するため、電極軸に純タングステンの細線を比較的大きい適当なピッチで巻き付け、その上から石英ガラスが緩く当接するように構成することができる。
【0044】
<放電媒体について> 本発明において、石英ガラス放電容器の包囲部内に封入される放電媒体は、その高圧放電により所望の放射を生起すればよく、特段限定されない。
【0045】
しかしながら、投射用小形高圧水銀ランプの場合、放電媒体は、以下のように構成される。すなわち、放電媒体は、希ガス、水銀およびハロゲンを少なくとも含んでいる。また、所望により発光金属を含むことができる。
【0046】
希ガスは、アルゴン、クリプトン、キセノンなどを用いることができる。
【0047】
水銀は、所望のランプ電圧が得られるように、石英ガラス放電容器の内容積に対して0.2mg/mm3以上封入する。
【0048】
ハロゲンは、I、BrおよびClのいずれか一種または複数種、好適にはBrからなり、石英ガラス放電容器の内容積に対して1.0×10− 3μmol/mm3以上の量が封入される。ハロゲンの封入量が上記下限未満であると、アークが不安定になりやすい。なお、本発明においては、ハロゲンの封入量の上限を規定していないが、電極の腐食などの不都合がなるべく生じにくい値にすることは賢明なことであり、この場合1.0×10−2μmol/mm3程度を目安にすることができる。
【0049】
発光金属を所望により含める場合、発光金属としては、アルカリ金属が好適である。そして、その中でも赤色光成分を多くし、かつ照度維持率を向上する場合にはLiを含むようにすればよい。また、Liに加えてNaなどの金属を含むことが許容される。なお、Liの封入量は、比較的微量であるため、直接的に封入量を規定するより、高圧放電ランプの発光スペクトルによって規定することができる。
【0050】
<本発明の作用について> 本発明においては、請求項1ないし4のいずれか一記載の製造方法により製造された封着金属を用いて封止を行っているので、封着金属箔脇クラックが低減した高圧放電ランプを得ることができる。
【0051】
また、投射用小形高圧水銀ランプの場合には、請求項2または3記載の製造方法により製造された封着金属を用いて封止を行うことにより、封着金属箔脇クラックが顕著に低減する。
【0052】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0053】
図1ないし図3は、本発明の封着金属箔の製造方法における第1の実施の形態を示し、図1は製造された封着金属箔の肉厚方向のサイズを誇張して示した側断面図、図2は図1において封着金属箔を長手方向の右側から見た拡大端面図、図3は電界研磨装置の模式図である。
【0054】
図1において、20は封着金属箔であり、モリブデン(Mo)からなる。そして、長手方向の両側縁および図1において右端部の縁辺にそれぞれナイフエッジ21、22が形成されている。また、封着金属箔20は、電界研磨部分23および未電界研磨部分24に分かれる。
【0055】
封着金属箔20の両側縁のナイフエッジ21は、長尺のリボン状をなす金属箔材料を調達したときに既に形成されている。右端部の縁辺のナイフエッジ22は、長尺のリボン状をなす金属箔材料を所定の長さに切断して、金属箔片を得てから、後述する電界研磨工程において電界研磨により形成される。また、右端部の縁辺のナイフエッジ22は、電界研磨部分23の長さを2aとしたとき、ナイフエッジ22先端からの距離aにおける肉厚をt、未電界研磨部分24の肉厚をt0としたとき、肉厚tは、肉厚t0の65〜85%に形成されている。
【0056】
封着金属箔20のナイフエッジ22を形成するための電界研磨工程は、図3に示す電界研磨装置30を用いて以下のように行われる。すなわち、電界研磨装置30は、電界研磨槽31、直流電流源32、陰極33および陽極34からなる。
【0057】
電界研磨槽31は、内部に電界研磨液31aを収容している。電界研磨液31aは、予めモリブデンが5.0mg/ml以上の割合で融解している硫酸水溶液からなる。電界研磨液31aを調整するには、モリブデンを高濃度に融解し、かつ、その融解割合が所定の原液を作成し、原液を計量してその所定量を硫酸水溶液に混合する。なお、原液は、モリブデンを硫酸などの水溶液に長時間電気溶融して得る。また、融解割合は、誘導結合高周波プラズマ分光分析(ICP分光分析)によりモリブデン濃度を測定することができる。そうすれば、所望の割合でモリブデンが融解した電界研磨液を得ることができる。
直流電流源32は、電界研磨に必要な直流電流を供給する。陰極33は、モリブデンからなり、電界研磨液31a中に浸漬され、かつ、直流電流源32の負極に接続する。陽極34は、電界研磨しようとする金属箔片の資料片からなり、電界研磨部23が電界研磨液31aに浸漬され、未電界研磨部分24が直流電流源32の正極に接続する。
【0058】
そうして、電界研磨槽31中の電界研磨液31aに浸漬している陰極33と陽極34との間に直流電流源32を接続すると、陽極34を構成する金属箔片の浸漬部が電界研磨されて電界研磨部分23となり、図1に示すように、不具合のないナイフエッジ22が陽極34を構成する金属箔片の右端部に形成され、封着金属箔20が製造される。
【0059】
次に、一端部の縁片にナイフエッジ22を形成した封着金属箔を製造する際に、電界研磨液中のモリブデンの融解割合を種々変えて封着金属箔を製造した場合の品質評価結果を表1に示す。なお、品質評価結果は、○が効果あり、×が効果なしである。表中の「No.」は資料の番号、「電界研磨液」はモリブデンの融解割合(mg/ml)を示す。なお、資料No.1は電界研磨してない金属箔片である。
【0060】
【表1】
図4は、本発明の封着金属箔の製造方法における第2の実施の形態により製造された封着金属箔の電界研磨部分を点線で示し、電界研磨前の状態を実線で示す肉厚方向のサイズを誇張して示した側面図である。
【0061】
本実施の形態は、バリ取りのみを目的として電界研磨を行って封着金属箔20を製造する態様である。バリ25は、長尺のリボン状金属箔材料を所定の長さに切断して金属箔片を得る際に切断部に生じている。なお、バリは、端部をナイフエッジ状に形成したときにも生じ得るので、このような場合にもバリ取りを目的とする電界研磨を行うことが有意義である。
【0062】
図5は、本発明の高圧放電ランプにおける第1の実施の形態を示す正面図である。
【0063】
図において、1は石英ガラス放電容器、2、2は一対の電極、20は封着金属箔、4は導入導体、5は口金、6は接続導体である。
【0064】
石英ガラス放電容器1は、石英ガラスからなり、中央の包囲部1aおよび両端の一対の封止部1b、1bからなる。包囲部1aは、内容積が0.10mlであり、最大径が9mmの外径がほぼ球体に近い回転楕円体形状をなしているが、内面が軸方向に細長い回転楕円体形状をなしている。一対の封止部1b、1bは、長さが約20mmで、包囲部1aの両端にシールチューブ接続構造により包囲部1aに一体化されている。
【0065】
電極2は、電極軸2a、コイル部2bおよびくわえ込みコイル2cを備えている。電極軸2aは、0.45mmの純タングステン棒である。コイル部2bは、0.15mmの純タングステン線を電極軸2aの先端部に密巻により2重に巻装されている。くわえ込みコイル2cは、0.075mmの純タングステン細線を電極軸の中間部の少なくとも封止部1bの石英ガラスによるくわえ込み部1b1に対向する部位に150%ピッチで巻装されている。なお、電極間距離は、1.4mmである。
【0066】
封着金属箔20は、モリブデンからなり、図1および図2に示すようなナイフエッジ21、22が形成されている。封着金属箔20は、未電界研磨部分24の厚さt0が20μmであり、全体の幅1.5mm、長さ17mmである。そして、封着金属箔20は、そのナイフエッジ22(図1参照。)が形成された一端部に電極軸2aを、他端部に導入導体5を、それぞれ溶接した状態で、透光性石英ガラス放電容器1の両端に一体化された一対の封止部1b、1bの内部に気密に埋設されている。また、封止部1bと封着金属箔20との気密な封止は、減圧封止法により得ている。なお、所望により、導入導体4側にもナイフエッジを形成することができる。
【0067】
これに対して、封止部1bと電極2の電極軸2aとの間は、くわえ込みコイル2cの介在により石英ガラス溶着することなく、緩く接触して電極2を支持している。
【0068】
封入媒体は、水銀、アルゴン、ハロゲンおよび少なくともLiを含むアルカリ金属である。水銀は、ランプ電圧が80V以上になるように15.0mg、ハロゲンとしてBrが1.3μmol、をそれぞれ含み、石英ガラス放電容器1の包囲部1a内に封入されている。希ガスは、アルゴン(Ar)である。
【0069】
導入導体4は、モリブデン線からなり、封着金属箔3に先端が溶接し、基端が封止部1bから外部に露出している。なお、導入導体4は、図において左右対称構造であるが、左側の導入導体は後述する口金5内に位置しているため外部から見えない。
【0070】
口金5は、筒体5aおよびねじ端子5bを備えている。筒体5aは、黄銅などの金属からなり、その一端部が一方の封止部1bの端部に口金セメントによって固着されている。ねじ端子5bは、周囲にねじ溝が形成され、基端が筒体5aに固着されて筒体5aから外部へ突出しているとともに、その内部で対応する導入導体4と接続している。
【0071】
接続導体6は、ニッケル線からなり、その先端が他方の封止部1bから外部へ突出している導入導体4に先端が溶接している。
【0072】
そうして、本実施形態の高圧放電ランプは、ランプ電力100〜150Wで点灯される。そして、点灯中水銀蒸気圧は15MPaを超え、スクリーン到達光量が10lm/Wを超えるような発光効率が得られる。
【0073】
次に、上記の実施の形態において、表1に示した各資料を用いて製作した高圧放電ランプの1000時間点灯後の封着金属箔脇クラックの発生状況を調査した結果について表2に示す。
【0074】
【表2】
図6は、本発明の高圧放電ランプにおける第2の実施の形態を示す一部正面断面図である。図において、11は発光管、12は凹形反射鏡、13は無機質接着剤、14は中継端子、15はワイヤハーネス、16は前面カバーである。発光管11は、図1に示すのと同一構造である。凹形反射鏡12は、内面が凹形をなすガラス基体12a、可視光反射・熱線透過膜12bおよび筒状部12cからなる。ガラス基体12aは、内面の凹形部が回転放物面を基本とする曲面に形成され、頂部の外側に筒部12cが一体に突出して形成されている。可視光反射・熱線透過膜12bは、ダイクロイック反射膜からなる。
【0075】
発光管11を凹形反射鏡12に取り付けるには、口金5を筒状部12cに挿入し、高圧放電ランプ11の発光中心を凹形反射鏡12の焦点に合致させて口金5と筒状部12cとの間に無機質接着剤13を介在させて両者を固着する。
【0076】
発光管11の一方の電極2側の導入導体5に接続導体6を溶接して凹形反射鏡12の背面側へ導出させている。すなわち、接続導体6は、鏡面の一部に形成した通孔12dを通って凹形反射鏡12の背面側へ導出されている。
【0077】
中継端子14は、凹形反射鏡13の外面の通孔12dの近傍に固着されている。そして、発光管11に接続している接続導体6とワイヤハーネス15との接続を中継している。
【0078】
ワイヤハーネス15は、コネクタ15aおよび一対の絶縁被覆導線15b、15cからなる。コネクタ15は、図示を省略している点灯装置の出力端のコネクタに着脱可能に結合して接続するとともに、絶縁被覆導線15b、15cの一端に接続している。絶縁被覆導線15bは、その他端が中継端子14に接続している。絶縁被覆導線15cは、その他端が口金5のねじ端子5bにローレット付きナット5cによって締め付けられて接続している。
【0079】
前面カバー16は、透明ガラス板からなり、凹形反射鏡12の前面開口端に接着されている。
【0080】
そうして、ワイヤハーネス15のコネクタ15aを点灯装置に接続して、発光管11を点灯すると、発光管11から発生した光線は、凹形反射鏡12の可視光反射・熱線反射膜12bに入射し、そのうち可視光は反射して光軸と平行に出射し、前面カバー16を通過して照明に利用される。これに対して、熱線は可視光反射・熱線透過膜12bを透過し、さらにガラス基体12aを透過して凹形反射鏡12の背面側へ放散されるので、液晶表示体などの温度上昇を抑制することができる。
【0081】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、モリブデンからなる金属箔片の縁辺を予めモリブデンを5.0mg/ml以上の割合で融解した硫酸系電解研磨液中で電界研磨することにより、良好な電界研磨を行って封着金属箔脇クラックや段差、凹み、箔切れなどの不具合を低減した封着金属箔を製造することができる。
【0082】
請求項2の発明によれば、両側縁にナイフエッジを形成したモリブデンの長尺リボン状の金属箔材料を所定の長さに切断して得た金属箔片の両端部の少なくとも一方の縁辺を予めモリブデンを5.0mg/ml以上の割合で融解した硫酸系電解研磨液中で電界研磨してナイフエッジを形成することにより、封着金属箔を製造することができる。
【0083】
請求項3の発明によれば、加えて金属箔片の端部における電界研磨部分の長さ2aに対してナイフエッジ先端からの距離aにおける肉厚tが非電界研磨部分の肉厚t0の65〜85%であることにより、良好な封止を行うことが容易で、封着金属箔脇クラックの発生が低減する封着金属箔を製造することができる。
【0084】
請求項4の発明によれば、両側縁にナイフエッジを形成したモリブデンの長尺リボン状の金属箔材料を所定の長さに切断して得た金属箔片の両端部の少なくとも一方の縁辺を予めモリブデンを5.0mg/ml以上の割合で融解した硫酸系電解研磨液中で電界研磨してバリ取りすることにより、両側縁にナイフエッジが形成されるとともに、少なくとも一方の端部のバリ取りが行われていて、封過度な電界研磨による段差、凹みまたは箔切れなどの不具合がなくて、端部のバリに起因する封着金属箔脇クラックが生じにくい封着金属箔を製造することができる。
【0085】
請求項5の発明によれば、石英ガラス放電容器と、その一対の封止部に気密に埋設された請求項1ないし4のいずれか一記載の封着金属箔の製造方法により製造された封着金属箔と、基端部が封着金属箔に溶接された一対の電極と、放電媒体とを具備していることにより、請求項1ないし4の効果を有する高圧放電ランプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の封着金属箔の製造方法における第1の実施の形態の製造された封着金属箔の肉厚方向のサイズを誇張して示した側面図
【図2】同じく図1において封着金属箔を長手方向の右側から見た拡大端面図
【図3】同じく電界研磨装置の模式図
【図4】本発明の封着金属箔の製造方法における第2の実施の形態により製造された封着金属箔の電界研磨部分を点線で示し、電界研磨前の状態を実線で示す肉厚方向のサイズを誇張して示した側面図
【図5】本発明の高圧放電ランプにおける第1の実施の形態を示す正面図
【図6】本発明の高圧放電ランプにおける第2の実施の形態を示す一部正面断面図
【図7】封着金属箔の電界研磨による不具合を示し、図7(a)は封着金属箔端部の正面図、図7(b)は封着金属箔の端部の肉厚を誇張して示した側面図、図7(c)は封着金属箔端部の正面図
【符号の説明】
20…封着金属箔、22…ナイフエッジ、23…電界研磨部分、24…非電界研磨部分、a…ナイフエッジからの距離、2a…電界研磨部分の長さ、t…距離aにおける肉厚、t0…非電界研磨部分の肉厚
【発明の属する技術分野】
本発明は、管球類の封止部に用いる封着金属箔の製造方法および封着金属箔を用いた高圧放電ランプに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、投光照明および画像表示装置などが広く普及しているが、その光源として高圧放電ランプが多くの場合に採用されている。その中にあっても、特に点光源に近く、配光制御が容易な短アーク形の高圧放電ランプ、例えばキセノンランプ、メタルハライドランプなどは、最近普及めざましい液晶プロジェクタ用の光源として多用されつつある。
【0003】
液晶プロジェクタは、画像を投影する装置であり、静止画はもちろんのこと動画においても投影することができ、ビデオ信号またはパーソナルコンピュータの画像信号を入力することにより、様々な画像を投影することができる。このため、プレゼンテーション用のツールとして用いられたり、簡易的なシアター用または大画面テレビジョンモニタとして用いられたり、多様な分野で使用されている。
【0004】
しかし、このような液晶プロジェクタは、各会議室へ据え付けられるほど普及していないことから、持ち運びされることが多く、小形軽量化が重要な課題となっている。
【0005】
小形軽量化のために、液晶プロジェクタ用の液晶パネルは、年々小形化されてきており、1.3インチの大きさまでになってきた。これに伴って、光源も小形化された液晶パネルへ効率よく集光するために、小形化が要請されてきている。このような小形化に応える高圧放電ランプは、電極間距離が2mm以下で、放電媒体が希ガス、石英ガラスの包囲部の内容積に対して0.2mg/mm3以上の水銀および10×10−3μmol以上のハロゲンを少なくとも含み、点灯時の水銀蒸気の圧力が10MPa以上になるように構成されている(例えば特許文献1参照。)。
【0006】
【特許文献1】特開2002−93365号公報
【発明が解決しようとする課題】
光源の小形化に伴う封止部の温度上昇により、埋設されている封着金属箔脇を起点とするクラック(以下、便宜上「封着金属箔脇クラック」という。)などの不具合が発生しやすくなっている。この一要因として封着金属箔の端部に、その切断時に生じたバリを起点としたものが挙げられる。なお、「クラック」とは、石英ガラス放電容器の封止部の内部に発生するひび割れを意味する。
【0007】
そこで、封着金属箔の端部を電界研磨して整形することが考えられる。ところが、電界研磨の条件設定によっては最適な研磨状態が得られず、図7に示すような不具合が発生することが分かった。
【0008】
図7は、封着金属箔の電界研磨による不具合を示し、図7(a)は封着金属箔端部の正面図、図7(b)は封着金属箔の端部の肉厚を誇張して示した側面図、図7(c)は封着金属箔端部の正面図である。
【0009】
すなわち、図7(a)の場合は、封着金属箔の端部における電解液の表層部に浸漬された部位が過度に研磨されて幅寸法が急激に小さくなり、非浸漬部との間に段差を生じている。また、図7(b)の場合は、封着金属箔の端部にナイフエッジを形成した際に、電解液の表層部に浸漬された部位が極度に研磨されて非浸漬部との間に凹みが形成されている。図7(c)の場合は、電解液の表層部に浸漬された境界部に箔切れが発生している。
【0010】
本発明は、良好な電界研磨を行って封着金属箔脇クラックや段差、凹み、箔切れなどの不具合を低減した封着金属箔の製造方法および得られた封着金属箔を用いて製造された高圧放電ランプを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を達成するための手段】
請求項1の発明の封着金属箔の製造方法は、モリブデンからなる金属箔片の縁辺を予めモリブデンを5.0mg/ml以上の割合で融解した硫酸系電解研磨液中で電界研磨することを特徴としている。
【0012】
本発明および以下の各発明において、特に指定しない限り用語の定義および技術的意味は次による。
【0013】
封着金属箔は、そのサイズを使用する管球類の大きさなどに伴う要求に応じて適宜設定し得る。また、電界研磨による金属箔片の整形は、ナイフエッジ形成およびバリ取りのいずれを目的とするものであってもよい。なお、「管球類」とは、石英ガラス容器中に電気的作動部が封入されてなる製品を意味し、その電気的作動部は白熱フィラメントや放電機構などの電気発光作用を呈するものばかりでなく、あらゆる電気的な作用を行うものを含む広い概念である。また、管球類は、その電気的作動部と外部との間の通電を行うために、封着金属箔を埋設した封止部を備えている。
【0014】
また、封着金属箔は、石英ガラスとの馴染みをよくするために、その両側縁にナイフエッジを形成するのが一般的である。これに対して、封着金属箔の端部には、所望によりナイフエッジやバリ取りが行われる。当該端部には、切断時にバリが生じやすいので、ナイフエッジやバリ取りが行われることによって、このバリが除去される。なお、端部にナイフエッジを形成することにより、石英ガラスとの馴染みがさらによくなる。特に投射用小形高圧水銀ランプの場合には、その封止部に用いる封着金属箔の電極側の端部にナイフエッジを形成したものを用いることにより、封着金属箔脇クラックが顕著に低減する。また、金属箔片の両端の縁辺をともに電界研磨することができるが、高圧放電ランプに封着金属箔を用いる場合には、少なくとも電極側の端部が電極からの伝熱などによりかなりの高温になるために、封着金属箔脇クラックが発生しやすいので、当該端部を電界研磨するのが効果的である。
【0015】
本発明において用いる電界研磨液は、硫酸系であり、予めモリブデン(Mo)を5.0mg/ml以上の割合で融解しているように管理された状態で用いるのが特徴的構成である。電界研磨液を上記のように管理するには、例えば以下のように行うことにより実現できる。すなわち、予めモリブデンが高濃度に溶解した原液を作成しておき、この原液を所定量計量して硫酸(H2SO4)水溶液に添加してモリブデンを5.0mg/ml以上の割合で融解しているように管理された電界研磨液を得る。
【0016】
モリブデンの融解割合は、5.0mg/ml以上であれば、比較的広範囲にわたる割合において良好な電界研磨を行うことができることが分かった。しかし、モリブデンの融解割合が60mg/ml以上になると、最早所望の電界研磨を行うことができなくなることも分かった。したがって、モリブデンMoの実際的な融解割合は、5.0〜60mg/mlの範囲である。
【0017】
なお、モリブデンの融解割合は、誘導結合高周波プラズマ分光分析(ICP分光分析)により定量測定することが可能である。
【0018】
そうして、本発明においては、上記の方法により電界研磨液の表層領域附近に浸漬された金属箔片の部位に生じやすい過度の研磨による段差、凹みおよび箔切れなどが形成されることなく、金属箔片の縁片に対して所望のナイフエッジ形成やバリ取りの研磨処理を行うことができる。このため、得られた封着金属箔を用いて製造された管球類は、例えば小形化などにより、作動中に封着金属箔が高温になっても、封着金属箔脇クラックが発生しにくくなる。
【0019】
請求項2の発明の封着金属箔の製造方法は、両側縁にナイフエッジを形成したモリブデンからなる長尺のリボン状の金属箔材料を所定の長さに切断して金属箔片を得る第1の工程と;金属箔片の切断により形成された両端部の少なくとも一方の縁辺を予めモリブデンを5.0mg/ml以上の割合で融解した硫酸系電解研磨液中で電界研磨してナイフエッジを形成する第2の工程と;を具備していることを特徴としている。
【0020】
本発明は、両側面および少なくとも一方の端面にナイフエッジを備えた封着金属箔を製造するのに好適な封着金属箔の製造方法を規定している。
【0021】
第1の工程においては、予め両側縁にナイフエッジを形成した長尺のリボン状の金属箔材料を用いて所望長さの金属箔片を得る。このような長尺のリボン状の金属箔材料は、金属箔製造業者から比較的容易に調達することができる。そして、長尺のリボン状の金属箔材料を所望の長さに切断して金属箔片を形成する。切断のための手段および金属箔片に形成された切断の切り口の態様は問わない。
【0022】
第2の工程においては、金属箔片の両端部の少なくとも一方の縁辺を電界研磨液に浸漬して電界研磨を行う。電界研磨液は、請求項1の発明におけるのと同様の構成のものを用いる。そして、電界研磨により端部の縁辺にナイフエッジを形成する。
【0023】
そうして、本発明によって製造された封着金属箔は、予め両側縁に形成されたナイフエッジと、少なくとも一方の端部に第2の工程における電界研磨により形成されたナイフエッジとを備えている。しかも、後者のナイフエッジは、予めモリブデンの融解割合が所定値範囲内に管理された硫酸系電界研磨液を用いて形成されているので、過度な電界研磨による段差、凹みまたは箔切れなどの不具合のない良好な封着金属箔を製造することができる。
【0024】
また、本発明により製造された封着金属箔は、その両側縁および一方の端部における封着部の石英ガラスとの封着の馴染みが良好になり、封止に高い信頼性が得られる。
【0025】
さらに、本発明により製造された封着金属箔は、そのナイフエッジが形成された端部に電極の基端を溶接して、さらに電極間距離が2mm以下で、放電媒体が希ガス、石英ガラスの包囲部の内容積に対して0.2mmg/mm3以上の水銀および10×10−3μmol以上のハロゲンを少なくとも含み、点灯時の水銀蒸気の圧力が10MPa以上になる小形の高圧放電ランプ(以下、便宜上「投射用小形高圧水銀ランプ」という。)を構成した場合に特に効果的で、封着金属箔脇クラックが顕著に低減する。
【0026】
請求項3の発明の封着金属箔の製造方法は、請求項2記載の封着金属箔の製造方法において、金属箔片の端部における電界研磨部分の長さを2aとしたとき、当該端部のナイフエッジ先端からの距離aにおける肉厚tが非電界研磨部分の肉厚t0の65〜85%であることを特徴としている。
【0027】
本発明は、電界研磨によって封着金属箔の端部に形成するナイフエッジの好適な構造を規定している。
【0028】
すなわち、ナイフエッジは、電界研磨部分の長さ2aの半分の位置における肉厚tが、電界研磨していない未電界研磨部分の肉厚t0の65〜85%であれば、良好な封止を行うことができる。これに対して、上記肉厚tが65%未満になると、電界研磨が過度になり、電界研磨部分と未電界研磨部分との境界部に不連続な段差、凹みまたは箔切れなどの不具合が生じやすくなって良好な封止が困難になる。また、肉厚tが85%を超えると、ナイフエッジの形成が不十分になる。
【0029】
そうして、本発明においては、封着金属箔の端部のナイフエッジにおける肉厚tが上記の構成を備えていることにより、良好な封止を行うことが容易になる。その結果、封着金属箔脇クラックの発生が低減する。
【0030】
請求項4の発明の封着金属箔の製造方法は、両側縁にナイフエッジを形成したモリブデンからなる長尺のリボン状の金属箔材料を所定の長さに切断して金属箔片を得る第1の工程と;金属箔片の切断により形成された端面の少なくとも一方の縁辺を予めモリブデンを5.0mg/ml以上の割合で融解した硫酸系電解研磨液中で電界研磨してバリ取りする第2の工程と;を具備していることを特徴としている。
【0031】
本発明は、両側面にナイフエッジが形成されるとともに、少なくとも一方の端面がバリ取りされた封着金属箔を製造するのに好適な封着金属箔の製造方法を規定している。
【0032】
第1の工程は、請求項3の発明と同様である。
【0033】
第2の工程においては、金属箔片の両端部の少なくとも一方の縁辺を電界研磨液に浸漬して電界研磨を行う。電界研磨液は、請求項1の発明におけるのと同様の構成のものを用いる。そして、電界研磨により端部の縁辺のバリ取りを行う。なお、本発明において、「バリ取り」とは、切断時に生じたバリを除去することを意味し、その結果端部にナイフエッジが形成されてもよいし、ナイフエッジが形成されていないもののバリは除去されている状態であってもよい。また、電界研磨において、バリ取りのみを行う場合と、ナイフエッジを形成する場合とは、電界研磨の処理時間およびまたは通電電流値などを制御することで区別することができる。
【0034】
そうして、本発明によって製造された封着金属箔は、予め両側縁に形成されたナイフエッジと、少なくとも一方の端部に電界研磨によりバリ取りが行われている。しかも、バリ取りは、予めモリブデンの融解割合が所定値範囲内に管理された硫酸系電界研磨液を用いて形成されているので、過度な電界研磨による段差、凹みまたは箔切れなどの不具合のない良好な封着金属箔を製造することができる。
【0035】
また、封着金属箔の端部のバリに起因する封着金属箔脇クラックが生じにくくなる。
【0036】
請求項5の発明の高圧放電ランプは、放電空間を包囲する包囲部および包囲部の両端に一体化された一対の封止部を備えている石英ガラス放電容器と;石英ガラス放電容器の一対の封止部に気密に埋設された請求項1ないし4のいずれか一記載の封着金属箔の製造方法により製造された封着金属箔と;基端部が封着金属箔に溶接され、中間部が封止部の石英ガラスにくわえ込まれ、先端部が包囲部の内部に突出した一対の電極と;石英ガラス放電容器の包囲部内に封入された放電媒体と;を具備していることを特徴としている。
【0037】
<石英ガラス放電容器について> 石英ガラス放電容器は、石英ガラスによって構成された放電容器であり、必要に応じて、透光性石英ガラス放電容器の内面に耐ハロゲン性または耐金属性の透明被膜を形成するか、内面を改質することが許容される。
【0038】
また、石英ガラス放電容器は、長手方向の中間部に包囲部、包囲部の両端に一対の封止部が一体に形成されている。包囲部は、内部に放電空間を包囲する空間を形成している。そして、当該空間は、好適には球体、回転楕円体または紡錘体形状のような形状に形成することができる。一対の封止部は、包囲部から棒状に延在し、内部に後述する電極を支持するとともに、石英ガラス放電容器の両端を封止し、さらに電極に対して導入導体を介しての給電を気密に行うことを可能にしている。これを実現するために、封着金属箔を中間に介在させて電極と導入導体とを接続し、かつ封着金属箔に封止部の石英ガラスを気密に密着させて石英ガラス放電容器を封止する。この場合の封止には、減圧封止法を用いることにより、耐圧性を高めることができる。しかし、所望によりピンチシールなどによる封止法を採用することもできる。
【0039】
<封着金属箔について> 封着金属箔は、石英ガラス放電容器の一対の封止部に気密に埋設されて、気密の導入部を形成する。また、封着金属箔は、請求項1ないし4のいずれかの製造方法により製造されたものであって、少なくとも一端部の縁片が電界研磨により整形されて、ナイフエッジが形成されているか、またはバリ取りのみが行われている。そして、当該端部に電極の基端が溶接されている。しかし、投射用小形高圧水銀ランプの場合、請求項2または3により製造された封着金属箔を上記のように用いて電極を溶接するのが特に好適である。
【0040】
<一対の電極について> 一対の電極は、その構成材料、電極軸径および電極間距離などが特段限定されない。そして、電極は、その中間部が封止部の石英ガラスにくわえ込まれて支持される。
【0041】
しかしながら、投射用小形高圧水銀ランプの場合、一対の電極は、好適には以下のように構成される。すなわち、電極の構成材料は、純タングステンによって形成され、それぞれ細長い電極軸および電極軸の先端部に巻装されたコイル部を備えている。なお、「純タングステン」とは、純度99.9%以上のタングステンをいう。そして、電極軸は、その直径が0.40〜0.55mmの範囲内に入るように設定されている必要がある。なお、電極軸の直径は、好適には0.45〜0.5mmである。
【0042】
また、一対の電極は、その電極間距離が2.0mm以下に設定されることから明らかなように、いわゆる短アーク形の放電が生起するような関係に封装されている。短アーク形は、透光性放電容器内に形成される電極間距離を小さくすることにより、アーク放電を電極によって安定させるいわゆる電極安定形である。このため、高圧放電ランプの発光をなるべく点光源に近付けることができるので、反射鏡またはレンズなどの光学系による集光を効率よく行うことができる。なお、電極間距離は、好適には1.5mm以下である。
【0043】
さらに、電極軸の中間部が封止部の石英ガラスにくわえ込まれることによって、電極を所定の位置に支持する。しかし、電極軸の中間部が石英ガラスに溶着すると、両者の熱膨張係数の相違によって石英ガラスにクラックが生じやすくなるが、特に電極軸が純タングステンからなることによって、電極と石英ガラスとの熱膨張係数の相違によるクラックが発生する。これを防止するため、電極軸に純タングステンの細線を比較的大きい適当なピッチで巻き付け、その上から石英ガラスが緩く当接するように構成することができる。
【0044】
<放電媒体について> 本発明において、石英ガラス放電容器の包囲部内に封入される放電媒体は、その高圧放電により所望の放射を生起すればよく、特段限定されない。
【0045】
しかしながら、投射用小形高圧水銀ランプの場合、放電媒体は、以下のように構成される。すなわち、放電媒体は、希ガス、水銀およびハロゲンを少なくとも含んでいる。また、所望により発光金属を含むことができる。
【0046】
希ガスは、アルゴン、クリプトン、キセノンなどを用いることができる。
【0047】
水銀は、所望のランプ電圧が得られるように、石英ガラス放電容器の内容積に対して0.2mg/mm3以上封入する。
【0048】
ハロゲンは、I、BrおよびClのいずれか一種または複数種、好適にはBrからなり、石英ガラス放電容器の内容積に対して1.0×10− 3μmol/mm3以上の量が封入される。ハロゲンの封入量が上記下限未満であると、アークが不安定になりやすい。なお、本発明においては、ハロゲンの封入量の上限を規定していないが、電極の腐食などの不都合がなるべく生じにくい値にすることは賢明なことであり、この場合1.0×10−2μmol/mm3程度を目安にすることができる。
【0049】
発光金属を所望により含める場合、発光金属としては、アルカリ金属が好適である。そして、その中でも赤色光成分を多くし、かつ照度維持率を向上する場合にはLiを含むようにすればよい。また、Liに加えてNaなどの金属を含むことが許容される。なお、Liの封入量は、比較的微量であるため、直接的に封入量を規定するより、高圧放電ランプの発光スペクトルによって規定することができる。
【0050】
<本発明の作用について> 本発明においては、請求項1ないし4のいずれか一記載の製造方法により製造された封着金属を用いて封止を行っているので、封着金属箔脇クラックが低減した高圧放電ランプを得ることができる。
【0051】
また、投射用小形高圧水銀ランプの場合には、請求項2または3記載の製造方法により製造された封着金属を用いて封止を行うことにより、封着金属箔脇クラックが顕著に低減する。
【0052】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0053】
図1ないし図3は、本発明の封着金属箔の製造方法における第1の実施の形態を示し、図1は製造された封着金属箔の肉厚方向のサイズを誇張して示した側断面図、図2は図1において封着金属箔を長手方向の右側から見た拡大端面図、図3は電界研磨装置の模式図である。
【0054】
図1において、20は封着金属箔であり、モリブデン(Mo)からなる。そして、長手方向の両側縁および図1において右端部の縁辺にそれぞれナイフエッジ21、22が形成されている。また、封着金属箔20は、電界研磨部分23および未電界研磨部分24に分かれる。
【0055】
封着金属箔20の両側縁のナイフエッジ21は、長尺のリボン状をなす金属箔材料を調達したときに既に形成されている。右端部の縁辺のナイフエッジ22は、長尺のリボン状をなす金属箔材料を所定の長さに切断して、金属箔片を得てから、後述する電界研磨工程において電界研磨により形成される。また、右端部の縁辺のナイフエッジ22は、電界研磨部分23の長さを2aとしたとき、ナイフエッジ22先端からの距離aにおける肉厚をt、未電界研磨部分24の肉厚をt0としたとき、肉厚tは、肉厚t0の65〜85%に形成されている。
【0056】
封着金属箔20のナイフエッジ22を形成するための電界研磨工程は、図3に示す電界研磨装置30を用いて以下のように行われる。すなわち、電界研磨装置30は、電界研磨槽31、直流電流源32、陰極33および陽極34からなる。
【0057】
電界研磨槽31は、内部に電界研磨液31aを収容している。電界研磨液31aは、予めモリブデンが5.0mg/ml以上の割合で融解している硫酸水溶液からなる。電界研磨液31aを調整するには、モリブデンを高濃度に融解し、かつ、その融解割合が所定の原液を作成し、原液を計量してその所定量を硫酸水溶液に混合する。なお、原液は、モリブデンを硫酸などの水溶液に長時間電気溶融して得る。また、融解割合は、誘導結合高周波プラズマ分光分析(ICP分光分析)によりモリブデン濃度を測定することができる。そうすれば、所望の割合でモリブデンが融解した電界研磨液を得ることができる。
直流電流源32は、電界研磨に必要な直流電流を供給する。陰極33は、モリブデンからなり、電界研磨液31a中に浸漬され、かつ、直流電流源32の負極に接続する。陽極34は、電界研磨しようとする金属箔片の資料片からなり、電界研磨部23が電界研磨液31aに浸漬され、未電界研磨部分24が直流電流源32の正極に接続する。
【0058】
そうして、電界研磨槽31中の電界研磨液31aに浸漬している陰極33と陽極34との間に直流電流源32を接続すると、陽極34を構成する金属箔片の浸漬部が電界研磨されて電界研磨部分23となり、図1に示すように、不具合のないナイフエッジ22が陽極34を構成する金属箔片の右端部に形成され、封着金属箔20が製造される。
【0059】
次に、一端部の縁片にナイフエッジ22を形成した封着金属箔を製造する際に、電界研磨液中のモリブデンの融解割合を種々変えて封着金属箔を製造した場合の品質評価結果を表1に示す。なお、品質評価結果は、○が効果あり、×が効果なしである。表中の「No.」は資料の番号、「電界研磨液」はモリブデンの融解割合(mg/ml)を示す。なお、資料No.1は電界研磨してない金属箔片である。
【0060】
【表1】
図4は、本発明の封着金属箔の製造方法における第2の実施の形態により製造された封着金属箔の電界研磨部分を点線で示し、電界研磨前の状態を実線で示す肉厚方向のサイズを誇張して示した側面図である。
【0061】
本実施の形態は、バリ取りのみを目的として電界研磨を行って封着金属箔20を製造する態様である。バリ25は、長尺のリボン状金属箔材料を所定の長さに切断して金属箔片を得る際に切断部に生じている。なお、バリは、端部をナイフエッジ状に形成したときにも生じ得るので、このような場合にもバリ取りを目的とする電界研磨を行うことが有意義である。
【0062】
図5は、本発明の高圧放電ランプにおける第1の実施の形態を示す正面図である。
【0063】
図において、1は石英ガラス放電容器、2、2は一対の電極、20は封着金属箔、4は導入導体、5は口金、6は接続導体である。
【0064】
石英ガラス放電容器1は、石英ガラスからなり、中央の包囲部1aおよび両端の一対の封止部1b、1bからなる。包囲部1aは、内容積が0.10mlであり、最大径が9mmの外径がほぼ球体に近い回転楕円体形状をなしているが、内面が軸方向に細長い回転楕円体形状をなしている。一対の封止部1b、1bは、長さが約20mmで、包囲部1aの両端にシールチューブ接続構造により包囲部1aに一体化されている。
【0065】
電極2は、電極軸2a、コイル部2bおよびくわえ込みコイル2cを備えている。電極軸2aは、0.45mmの純タングステン棒である。コイル部2bは、0.15mmの純タングステン線を電極軸2aの先端部に密巻により2重に巻装されている。くわえ込みコイル2cは、0.075mmの純タングステン細線を電極軸の中間部の少なくとも封止部1bの石英ガラスによるくわえ込み部1b1に対向する部位に150%ピッチで巻装されている。なお、電極間距離は、1.4mmである。
【0066】
封着金属箔20は、モリブデンからなり、図1および図2に示すようなナイフエッジ21、22が形成されている。封着金属箔20は、未電界研磨部分24の厚さt0が20μmであり、全体の幅1.5mm、長さ17mmである。そして、封着金属箔20は、そのナイフエッジ22(図1参照。)が形成された一端部に電極軸2aを、他端部に導入導体5を、それぞれ溶接した状態で、透光性石英ガラス放電容器1の両端に一体化された一対の封止部1b、1bの内部に気密に埋設されている。また、封止部1bと封着金属箔20との気密な封止は、減圧封止法により得ている。なお、所望により、導入導体4側にもナイフエッジを形成することができる。
【0067】
これに対して、封止部1bと電極2の電極軸2aとの間は、くわえ込みコイル2cの介在により石英ガラス溶着することなく、緩く接触して電極2を支持している。
【0068】
封入媒体は、水銀、アルゴン、ハロゲンおよび少なくともLiを含むアルカリ金属である。水銀は、ランプ電圧が80V以上になるように15.0mg、ハロゲンとしてBrが1.3μmol、をそれぞれ含み、石英ガラス放電容器1の包囲部1a内に封入されている。希ガスは、アルゴン(Ar)である。
【0069】
導入導体4は、モリブデン線からなり、封着金属箔3に先端が溶接し、基端が封止部1bから外部に露出している。なお、導入導体4は、図において左右対称構造であるが、左側の導入導体は後述する口金5内に位置しているため外部から見えない。
【0070】
口金5は、筒体5aおよびねじ端子5bを備えている。筒体5aは、黄銅などの金属からなり、その一端部が一方の封止部1bの端部に口金セメントによって固着されている。ねじ端子5bは、周囲にねじ溝が形成され、基端が筒体5aに固着されて筒体5aから外部へ突出しているとともに、その内部で対応する導入導体4と接続している。
【0071】
接続導体6は、ニッケル線からなり、その先端が他方の封止部1bから外部へ突出している導入導体4に先端が溶接している。
【0072】
そうして、本実施形態の高圧放電ランプは、ランプ電力100〜150Wで点灯される。そして、点灯中水銀蒸気圧は15MPaを超え、スクリーン到達光量が10lm/Wを超えるような発光効率が得られる。
【0073】
次に、上記の実施の形態において、表1に示した各資料を用いて製作した高圧放電ランプの1000時間点灯後の封着金属箔脇クラックの発生状況を調査した結果について表2に示す。
【0074】
【表2】
図6は、本発明の高圧放電ランプにおける第2の実施の形態を示す一部正面断面図である。図において、11は発光管、12は凹形反射鏡、13は無機質接着剤、14は中継端子、15はワイヤハーネス、16は前面カバーである。発光管11は、図1に示すのと同一構造である。凹形反射鏡12は、内面が凹形をなすガラス基体12a、可視光反射・熱線透過膜12bおよび筒状部12cからなる。ガラス基体12aは、内面の凹形部が回転放物面を基本とする曲面に形成され、頂部の外側に筒部12cが一体に突出して形成されている。可視光反射・熱線透過膜12bは、ダイクロイック反射膜からなる。
【0075】
発光管11を凹形反射鏡12に取り付けるには、口金5を筒状部12cに挿入し、高圧放電ランプ11の発光中心を凹形反射鏡12の焦点に合致させて口金5と筒状部12cとの間に無機質接着剤13を介在させて両者を固着する。
【0076】
発光管11の一方の電極2側の導入導体5に接続導体6を溶接して凹形反射鏡12の背面側へ導出させている。すなわち、接続導体6は、鏡面の一部に形成した通孔12dを通って凹形反射鏡12の背面側へ導出されている。
【0077】
中継端子14は、凹形反射鏡13の外面の通孔12dの近傍に固着されている。そして、発光管11に接続している接続導体6とワイヤハーネス15との接続を中継している。
【0078】
ワイヤハーネス15は、コネクタ15aおよび一対の絶縁被覆導線15b、15cからなる。コネクタ15は、図示を省略している点灯装置の出力端のコネクタに着脱可能に結合して接続するとともに、絶縁被覆導線15b、15cの一端に接続している。絶縁被覆導線15bは、その他端が中継端子14に接続している。絶縁被覆導線15cは、その他端が口金5のねじ端子5bにローレット付きナット5cによって締め付けられて接続している。
【0079】
前面カバー16は、透明ガラス板からなり、凹形反射鏡12の前面開口端に接着されている。
【0080】
そうして、ワイヤハーネス15のコネクタ15aを点灯装置に接続して、発光管11を点灯すると、発光管11から発生した光線は、凹形反射鏡12の可視光反射・熱線反射膜12bに入射し、そのうち可視光は反射して光軸と平行に出射し、前面カバー16を通過して照明に利用される。これに対して、熱線は可視光反射・熱線透過膜12bを透過し、さらにガラス基体12aを透過して凹形反射鏡12の背面側へ放散されるので、液晶表示体などの温度上昇を抑制することができる。
【0081】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、モリブデンからなる金属箔片の縁辺を予めモリブデンを5.0mg/ml以上の割合で融解した硫酸系電解研磨液中で電界研磨することにより、良好な電界研磨を行って封着金属箔脇クラックや段差、凹み、箔切れなどの不具合を低減した封着金属箔を製造することができる。
【0082】
請求項2の発明によれば、両側縁にナイフエッジを形成したモリブデンの長尺リボン状の金属箔材料を所定の長さに切断して得た金属箔片の両端部の少なくとも一方の縁辺を予めモリブデンを5.0mg/ml以上の割合で融解した硫酸系電解研磨液中で電界研磨してナイフエッジを形成することにより、封着金属箔を製造することができる。
【0083】
請求項3の発明によれば、加えて金属箔片の端部における電界研磨部分の長さ2aに対してナイフエッジ先端からの距離aにおける肉厚tが非電界研磨部分の肉厚t0の65〜85%であることにより、良好な封止を行うことが容易で、封着金属箔脇クラックの発生が低減する封着金属箔を製造することができる。
【0084】
請求項4の発明によれば、両側縁にナイフエッジを形成したモリブデンの長尺リボン状の金属箔材料を所定の長さに切断して得た金属箔片の両端部の少なくとも一方の縁辺を予めモリブデンを5.0mg/ml以上の割合で融解した硫酸系電解研磨液中で電界研磨してバリ取りすることにより、両側縁にナイフエッジが形成されるとともに、少なくとも一方の端部のバリ取りが行われていて、封過度な電界研磨による段差、凹みまたは箔切れなどの不具合がなくて、端部のバリに起因する封着金属箔脇クラックが生じにくい封着金属箔を製造することができる。
【0085】
請求項5の発明によれば、石英ガラス放電容器と、その一対の封止部に気密に埋設された請求項1ないし4のいずれか一記載の封着金属箔の製造方法により製造された封着金属箔と、基端部が封着金属箔に溶接された一対の電極と、放電媒体とを具備していることにより、請求項1ないし4の効果を有する高圧放電ランプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の封着金属箔の製造方法における第1の実施の形態の製造された封着金属箔の肉厚方向のサイズを誇張して示した側面図
【図2】同じく図1において封着金属箔を長手方向の右側から見た拡大端面図
【図3】同じく電界研磨装置の模式図
【図4】本発明の封着金属箔の製造方法における第2の実施の形態により製造された封着金属箔の電界研磨部分を点線で示し、電界研磨前の状態を実線で示す肉厚方向のサイズを誇張して示した側面図
【図5】本発明の高圧放電ランプにおける第1の実施の形態を示す正面図
【図6】本発明の高圧放電ランプにおける第2の実施の形態を示す一部正面断面図
【図7】封着金属箔の電界研磨による不具合を示し、図7(a)は封着金属箔端部の正面図、図7(b)は封着金属箔の端部の肉厚を誇張して示した側面図、図7(c)は封着金属箔端部の正面図
【符号の説明】
20…封着金属箔、22…ナイフエッジ、23…電界研磨部分、24…非電界研磨部分、a…ナイフエッジからの距離、2a…電界研磨部分の長さ、t…距離aにおける肉厚、t0…非電界研磨部分の肉厚
Claims (5)
- モリブデンからなる金属箔片の縁辺を予めモリブデンを5.0mg/ml以上の割合で融解した硫酸系電解研磨液中で電界研磨することを特徴とする封着金属箔の製造方法。
- 両側縁にナイフエッジを形成したモリブデンからなる長尺のリボン状の金属箔材料を所定の長さに切断して金属箔片を得る第1の工程と;
金属箔片の切断により形成された両端部の少なくとも一方の縁辺を予めモリブデンを5.0mg/ml以上の割合で融解した硫酸系電解研磨液中で電界研磨してナイフエッジを形成する第2の工程と;
を具備していることを特徴とする封着金属箔の製造方法。 - 金属箔片の端部における電界研磨部分の長さを2aとしたとき、当該端部のナイフエッジ先端からの距離aにおける肉厚tが非電界研磨部分の肉厚t0の65〜85%であることを特徴とする請求項2記載の封着金属箔の製造方法。
- 両側縁にナイフエッジを形成したモリブデンからなる長尺のリボン状の金属箔材料を所定の長さに切断して金属箔片を得る第1の工程と;
金属箔片の切断により形成された両端部の少なくとも一方の縁辺を予めモリブデンを5.0mg/ml以上の割合で融解した硫酸系電解研磨液中で電界研磨してバリ取りする第2の工程と;
を具備していることを特徴とする封着金属箔の製造方法。 - 放電空間を包囲する包囲部および包囲部の両端に一体化された一対の封止部を備えている石英ガラス放電容器と;
石英ガラス放電容器の一対の封止部に気密に埋設された請求項1ないし4のいずれか一記載の封着金属箔の製造方法により製造された封着金属箔と;
基端部が封着金属箔に溶接され、中間部が封止部の石英ガラスにくわえ込まれ、先端部が包囲部の内部に突出した一対の電極と;
石英ガラス放電容器の包囲部内に封入された放電媒体と;
を具備していることを特徴とする高圧放電ランプ。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2008129745A1 (ja) * | 2007-04-05 | 2008-10-30 | Harison Toshiba Lighting Corp. | 箔シールランプ |
JP2011049136A (ja) * | 2009-07-29 | 2011-03-10 | Panasonic Corp | 高圧放電ランプ用金属箔の製造方法、高圧放電ランプ及び表示装置 |
-
2003
- 2003-01-24 JP JP2003015656A patent/JP2004227970A/ja active Pending
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