JP2004226587A - 画像表示システム、光学膜及び光学膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】部屋を暗くすることなく、コントラストが高く鮮明な投影画像をスクリーンに表示することができる画像表示システムを提供する。
【解決手段】プロジェクター1と、プロジェクター光の波長領域の光に対する反射率が高く、プロジェクター光以外の可視波長領域の光に対する反射率が低いスクリーン2と、プロジェクター1とスクリーン2が設置される室内の採光部の窓3に張られ、プロジェクター光の波長領域の光に対して高反射特性を有し、プロジェクター光以外の可視波長領域の光に対して高透過特性を有する光学膜4とで構成する。
【選択図】 図1
【解決手段】プロジェクター1と、プロジェクター光の波長領域の光に対する反射率が高く、プロジェクター光以外の可視波長領域の光に対する反射率が低いスクリーン2と、プロジェクター1とスクリーン2が設置される室内の採光部の窓3に張られ、プロジェクター光の波長領域の光に対して高反射特性を有し、プロジェクター光以外の可視波長領域の光に対して高透過特性を有する光学膜4とで構成する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、明光下でプロジェクターの投影画像を鮮明かつ明瞭に見ることができる画像表示システム、及びこの画像表示システム等に有効な光学膜とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、会議等において発言者が資料を提示する方法としてオーバーヘッドプロジェクターやスライドプロジェクターが広く用いられている。また、一般家庭においても液晶を用いたビデオプロジェクターや動画フィルムプロジェクターが普及しつつある。
【0003】
この種のプロジェクターとしては、例えば、光源から出射された光線を赤(R)、緑(G)、青(B)の各色の光線に分離して所定の光路に収束させる照明光学系と、RGB各色の光束をそれぞれ光変調する液晶パネル(ライトバルブ)と、光変調されたRGB各色の光束を合成する光合成部とを備え、光合成部により合成されたカラー画像を投射レンズによりスクリーンに拡大投影するものがある。
【0004】
また、最近では、光源に狭帯域三原色光源、例えばRGB各色の狭帯域光を発するレーザー発振器を使用し、液晶パネルの代わりにグレーティングライトバルブ(GLV:Grating Light Valve)を用いてRGB各色の光束を空間的に変調するプロジェクターも開発されている。
【0005】
このようなプロジェクターに対して、投影画像を表示するスクリーンには大別して透過型と反射型がある。透過型スクリーンは、スクリーン背後のプロジェクター(リアプロジェクター)から照射される画像光を透過して透過光により投影画像を見ることができるようにしたものであり、反射型スクリーンは、スクリーン前方のプロジェクター(フロントプロジェクター)から照射される画像光を反射して反射光により投影画像を見ることができるようにしたものである。
【0006】
しかしながら、透過型、反射型のいずれにしても、プロジェクターの投影画像は部屋を暗くしないとコントラストが低いものであった。これはプロジェクターでスクリーン上に投影された映像の黒レベルはスクリーンに当たっている外光のレベル、すなわち部屋の明るさで決まるからである。黒レベルを強めコントラストの高い映像を表示するためには、外光レベルを低くする、つまり部屋を暗くする必要があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
これを解決し、部屋が明るい状態でもコントラストの高い投影画像を表示することを可能とするスクリーンが、本出願人と同一の出願人より提案されている(特願2002−070799号等)。このスクリーンは、プロジェクター光の特定波長領域光に対する反射率が高く、その他の可視波長領域光に対する反射率は低く透過するような選択反射膜を用いてコントラスト向上を図ったものであり、外光の影響を低減することができるようになっている。
【0008】
しかしながら、このようなスクリーンでも、プロジェクター光の波長領域にある外光は反射されるため、室外からの太陽光などの強い外光がある環境では、反射される波長領域の外光の強度も強く、スクリーン上のノイズとなってしまう。このため、全体的に白っぽくなり、コントラストが低下し、色の変化が発生してしまい、鮮明な映像を表示することができなくなるという可能性があった。
【0009】
本発明は、このような点に対処してなされたもので、部屋を暗くすることなく、コントラストが高く鮮明な投影画像をスクリーンに表示することができる画像表示システムと、その画像表示システムを実現することができる光学膜及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
すなわち、請求項1の発明は、画像表示システムにおいて、画像光を投射する投影装置と、画像光に対応する特定波長領域の光に対して高反射特性を持ち、少なくとも特定波長領域を除く可視波長領域の光に対して高反射特性を持たない、投影装置からの画像光により画像を表示するスクリーンと、スクリーンが設置される映写環境の採光部に設けられ、少なくとも特定波長領域を除いた可視波長領域の光を採光する光学膜とを備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項1の発明においては、映写環境の外光は、映写環境に入射する際に採光部の光学膜を通ることによって、投影装置から投射される画像光と同じ特定波長領域の光が除去される。このような外光の下で投影装置から画像光がスクリーンに投射されると、スクリーンは特定波長領域の光を選択して反射するよう構成されているので、画像光を反射し、特定波長領域の成分が除かれた外光は反射しない。したがって、外光が存在する明るい環境下で、外光のノイズのない鮮明な投影画像の表示が可能になる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の画像表示システムにおいて、光学膜が、特定波長領域の光に対して高反射特性を有し、少なくとも特定波長領域を除く可視波長領域の光に対して高透過特性を有することを特徴とする。
【0013】
請求項2の発明においては、外光が光学膜に入射すると、特定波長領域の光成分は反射され、少なくとも特定波長領域を除く可視波長領域の成分は透過する。したがって、外光から特定波長領域の光成分を除去することが可能となる。
【0014】
請求項3の発明は、請求項2の画像表示システムにおいて、光学膜が、高屈折率層とこれより屈折率の低い低屈折率層を交互に積層した光学多層膜を備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明は、請求項3の画像表示システムにおいて、光学多層膜の高屈折率層が酸化ニオブ、酸化タンタルまたは酸化チタンを含有し、低屈折率層が酸化ケイ素またはフッ化マグネシウムを含有することを特徴とする。
【0016】
請求項5の発明は、請求項3の画像表示システムにおいて、光学多層膜が熱硬化性樹脂からなることを特徴とする。
【0017】
請求項3〜5の発明においては、高屈折率層と低屈折率層を交互に積層することによって、各層の膜厚設計にて特定波長領域の光を選択して反射し、それ以外の光を透過させることが可能な光学膜が得られる。このような高屈折率層及び低屈折率層には、無機材料の場合には、高屈折率層に例えばNb2O5、TiO2、Ta2O5等、低屈折率層に例えばSiO2、MgF2等が用いられる。有機材料の場合には、高屈折率層及び低屈折率層に屈折率の異なる熱硬化性樹脂等の透明樹脂が用いられる。
【0018】
請求項6の発明は、請求項3の画像表示システムにおいて、光学膜が、光学多層膜が形成される高分子基材を備えたことを特徴とする。
【0019】
請求項7の発明は、請求項6の画像表示システムにおいて、高分子基材が、ポリカーボネイト、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォンまたはポリオレフィンからなることを特徴とする。
【0020】
請求項6、7の発明においては、いろいろ形状の部位に貼付などの方法により容易に取り付け可能な光学膜を得ることが可能となる。
【0021】
請求項8の発明は、請求項1の画像表示システムにおいて、採光部が、窓及び照明機器の少なくとも1つであることを特徴とする。
【0022】
請求項8の発明においては、光学膜を窓に取り付けることにより、特定波長領域の光成分のない太陽光を採光することが可能となる。同様にして、部屋の照明機器から特定波長領域の光成分のない明かりを採光することが可能となる。
【0023】
請求項9の発明は、請求項1の画像表示システムにおいて、スクリーンが、特定波長領域の光に対して高反射特性を有し、少なくとも特定波長領域を除く可視波長領域の光に対して高透過特性を有する選択反射膜を備えたことを特徴とする。
【0024】
請求項9の発明においては、投影装置からの画像光を反射し、それ以外の波長領域の光からなる外光を透過させて反射しないスクリーンを得ることが可能となる。
【0025】
請求項10の発明は、請求項7の画像表示システムにおいて、選択反射膜が、高屈折率層とこれより屈折率の低い低屈折率層を交互に積層した光学多層膜からなることを特徴とする。
【0026】
請求項11の発明は、請求項8の画像表示システムにおいて、選択反射膜の高屈折率層が酸化ニオブ、酸化タンタルまたは酸化チタンを含有し、低屈折率層が酸化ケイ素またはフッ化マグネシウムを含有することを特徴とする。
【0027】
請求項12の発明は、請求項9の画像表示システムにおいて、選択反射膜が熱硬化性樹脂からなることを特徴とする。
【0028】
請求項10〜12の発明においては、高屈折率層と低屈折率層を交互に積層することによって、各層の膜厚設計にて特定波長領域の光を選択して反射し、それ以外の光を透過させることが可能な選択反射膜が得られる。このような高屈折率層及び低屈折率層には、無機材料の場合には、高屈折率層に例えばNb2O5、TiO2、Ta2O5等、低屈折率層に例えばSiO2、MgF2等が用いられる。有機材料の場合には、高屈折率層及び低屈折率層に屈折率の異なる熱硬化性樹脂等の透明樹脂が用いられる。
【0029】
請求項13の発明は、請求項7の画像表示システムにおいて、スクリーンが、前記選択反射膜を透過した光を吸収する吸収層を備えたことを特徴とする。
【0030】
請求項13の発明においては、特定波長領域の成分が除かれた外光をスクリーンで吸収することができ、外光が存在する明るい環境下でも、高コントラストの鮮明な投影画像を表示するスクリーンが得られる。
【0031】
請求項14の発明は、請求項1の画像表示システムにおいて、スクリーンが、特定波長領域の光に対して高透過特性を有し、少なくとも特定波長領域を除く可視波長領域の光に対して高吸収特性を有する選択吸収層と、選択吸収層を透過した光を反射する反射層とを備えたことを特徴とする。
【0032】
請求項14の発明においては、スクリーンは、選択吸収層によって投影装置から投射された画像光を反射し、特定波長領域の成分が除かれた外光を吸収する。これにより、外光が存在する明るい環境下で、高コントラストの鮮明な投影画像を表示することが可能となる。
【0033】
請求項15の発明は、請求項14の画像表示システムにおいて、選択吸収層が、特定波長領域以外の所定の波長領域の光に対して高吸収特性を有し、所定の波長領域以外の光に対して高透過特性を有する選択吸収色素を含有することを特徴とする。
【0034】
請求項15の発明においては、特定波長領域以外の所定の波長領域の光に対してのみ吸収特性を有し、それ以外の波長領域の光に対しては透過特性を有する選択吸収色素を組み合わせることで、特定波長領域の光を透過させ、それ以外の波長領域の光を吸収する選択吸収層を実現することが可能となる。
【0035】
請求項16の発明は、請求項1の画像表示システムにおいて、特定波長領域が、赤色光の波長領域、緑色光の波長領域及び青色光の波長領域を含むことを特徴とする。
【0036】
請求項16の発明においては、投影装置からスクリーンに投射される三原色波長域光によって、鮮明かつ高コントラストのカラー画像をスクリーン上に見ることが可能となる。
【0037】
請求項17の発明は、光学膜において、赤色、緑色及び青色の三原色波長領域の光に対して高反射特性を有し、少なくとも三原色波長領域を除く可視波長領域の光に対して高透過特性を有することを特徴とする。
【0038】
請求項17の発明においては、光学膜が赤色、緑色及び青色の三原色波長領域の光を選択して反射することで、高コントラストのカラー画像をスクリーン上に表示するための選択反射膜として好適な光学膜が実現し、赤色、緑色及び青色の三原色以外の波長領域の光を選択して透過させることで、赤色、緑色及び青色の三原色波長領域の光を除去するフィルターとして好適な光学膜が実現する。
【0039】
請求項18の発明は、請求項17の光学膜において、高屈折率層とこれより屈折率の低い低屈折率層を交互に積層した光学多層膜を備えたことを特徴とする。
【0040】
請求項19の発明は、請求項18の光学膜において、光学多層膜の高屈折率層が酸化ニオブ、酸化タンタルまたは酸化チタンを含有し、低屈折率層が酸化ケイ素またはフッ化マグネシウムを含有することを特徴とする。
【0041】
請求項20の発明は、請求項18の光学膜において、光学多層膜が熱硬化性樹脂からなることを特徴とする。
【0042】
請求項18〜20の発明においては、高屈折率層と低屈折率層を交互に積層することによって、各層の膜厚設計にて三原色波長領域の光を選択して反射し、それ以外の光を透過させることが可能な光学膜が得られる。このような高屈折率層及び低屈折率層には、無機材料の場合には、高屈折率層に例えばNb2O5、TiO2、Ta2O5等、低屈折率層に例えばSiO2、MgF2等が用いられる。有機材料の場合には、高屈折率層及び低屈折率層に屈折率の異なる熱硬化性樹脂等の透明樹脂が用いられる。
【0043】
請求項21の発明は、請求項18の光学膜において、光学多層膜が形成される高分子基材を備えたことを特徴とする。
【0044】
請求項22の発明は、請求項21の光学膜において、高分子基材が、ポリカーボネイト、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォンまたはポリオレフィンからなることを特徴とする。
【0045】
請求項21、22の発明においては、いろいろ形状の部位に貼付などの方法により容易に取り付け可能な光学膜を得ることが可能となる。
【0046】
請求項23の発明は、光学膜の製造方法において、基材上に、高屈折率層とこれより屈折率の低い低屈折率層を交互に積層して、赤色、緑色及び青色の三原色波長領域の光に対して高反射特性を有し、少なくとも三原色波長領域を除く可視波長領域の光に対して高透過特性を有する光学多層膜を形成する工程を含むことを特徴とする。
【0047】
請求項24の発明は、請求項23の光学膜の製造方法において、光学多層膜を形成する工程が、高屈折率層を酸化ニオブ、酸化タンタルまたは酸化チタンを用いてスパッタ法により成膜する工程と、低屈折率層を酸化ケイ素またはフッ化マグネシウムを用いて、スパッタ法により成膜する工程とを有することを特徴とする。
【0048】
請求項25の発明は、請求項23の光学膜の製造方法において、光学多層膜を形成する工程が、基材上に、樹脂材料を塗布する工程と、塗布された樹脂材料を加熱または紫外線照射により硬化させる工程とを有することを特徴とする。
【0049】
請求項23〜25の発明においては、三原色波長領域の光に対して高反射特性を有し、少なくとも三原色波長領域を除く可視波長領域の光に対して高透過特性を有する光学膜を容易に製造することが可能となる。
【0050】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の画像表示システムの一実施の形態を概略的に示すもので、投影装置であるプロジェクター1と、プロジェクター光の波長領域の光に対する反射率が高く、プロジェクター光以外の可視波長領域の光に対する反射率が低いスクリーン2と、プロジェクター1とスクリーン2が設置される室内の採光部の窓3に張られ、プロジェクター光の波長領域の光に対して高反射特性を有し、プロジェクター光以外の可視波長領域の光に対して高透過特性を有する光学膜4とで構成されている。なお、図中符号5は太陽光、6は太陽光5が光学膜4を透過した後の透過光、7は太陽光5が光学膜4で反射される反射光、8はスクリーン2に表示された映像を鑑賞する視聴者である。
【0051】
この画像表示システムでは、プロジェクター1から投射される画像光の波長領域に合わせて、スクリーン2および光学膜4が設計されるもので、プロジェクター1のタイプは限定されないが、ここでは、プロジェクター1をグレーティングライトバルブ(Grating Light Valve、以下GLVという。)を用いた回折格子型プロジェクターとした場合について説明する。
【0052】
図2に、GLVを用いた回折格子型プロジェクターを概略的に示す。図2において、プロジェクター1は、光源としてレーザー発振器10を備えている。このレーザー発振器10は、例えば、波長642nmの赤色光を出射するレーザー発振器10R、波長532nmの緑色光を出射するレーザー発振器10G、及び波長457nmの青色光を出射するレーザー発振器10Bから構成される。
【0053】
また、プロジェクター1は、レーザー発振器10から出射された光を画像光としてスクリーン2に導くための光学系として、コリメータレンズ11、シリンドリカルレンズ12、GLV13、体積型ホログラム素子14、ガルバノミラー15及び投影レンズ16を備えている。
【0054】
コリメータレンズ11は、赤色用コリメータレンズ11R、緑色用コリメータレンズ11G及び青色用コリメータレンズ11Bからなり、それぞれ各レーザー発振器10R、10G、10Bから出射され赤色光、緑色光、青色光を平行光とする。コリメータレンズ11によって平行光とされた各色光はシリンドリカルレンズ12によってGLV13に集光される。
【0055】
すなわち、この回折格子型プロジェクターでは、単一の光源からの光を利用しているのではなく、各レーザー発振器10R、10G、10Bによって3色の光をそれぞれ独立して出射する光源を備えている。また、各レーザー発振器10R、10G、10Bによって出射された光が、コリメータレンズ11を介して直接シリンドリカルレンズ12に入射するよう構成されている。
【0056】
GLV13では、各色用に複数の微小なリボンが形成されたリボン列を備えており、GLV13に集光された各色光は、画像信号に応じてGLV13のリボン列が駆動されることによって空間的に変調される。
【0057】
GLV13によって変調された各色光は、再びシリンドリカルレンズ12に入射し、平行光とされて体積型ホログラム素子14に入射する。体積型ホログラム素子14は、第1の体積型ホログラム素子14aと第2の体積型ホログラム素子14bからなり、例えば、第1の体積型ホログラム素子14aにより赤色光が回折され、第2の体積型ホログラム素子14bにより青色光が赤色光と同じ方向に回折される。また、第1の体積型ホログラム素子14a及び第2の体積型ホログラム素子14bでは、緑色光が回折されずに直進して透過し、赤色光と同じ方向に出射される。このようにして、体積型ホログラム素子14の作用により、赤、緑、青の各色光が合成されて同じ方向に出射される。すなわち、この回折格子型プロジェクターでは、第1の体積型ホログラム素子14aと第2の体積型ホログラム素子14bによって光合成部が構成されている。
【0058】
体積型ホログラム素子14によって同じ方向に出射された三原色波長域光は、ガルバノミラー15によって所定の方向に走査され、投影レンズ16を介して画像光としてスクリーン2に投射される。
【0059】
上記のように構成されたプロジェクター1に対して、スクリーン2はプロジェクター1からの画像光である三原色波長域光のみ反射するよう設計されたものが使用される。このように設計可能なスクリーン2としては、例えば、プロジェクター光の波長領域の光に対して高反射特性を有し、その他の可視波長領域の光に対して高透過特性を有する選択反射膜を備えたスクリーン(特願2002−070799号等)を挙げることができる。このスクリーンの構成例を図3に示す。
【0060】
図3において、スクリーン2は、スクリーン基板20上に高屈折率層Hと低屈折率層Lが交互に積層された選択反射膜21を備え、この選択反射膜21の上に光拡散層22を有し、その上に保護膜23が形成されている。スクリーン基板20は、スクリーン2の支持体となるとともに、選択反射膜21を透過した光を吸収するよう構成され、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂に黒色微粒子を含有させて構成することができる。また、基板中に黒色微粒子を含有させずに基板表面に黒色塗料を塗布してもよい。
【0061】
選択反射膜21は、高屈折率材料からなる高屈折率層Hと低屈折率材料からなる低屈折率層Lとを交互に積層した光学多層膜であり、プロジェクター1の画像光に合わせて、三原色波長域光に対して高反射特性を有し、少なくとも三原色波長域を除く可視波長領域の光に対して高透過特性を有するように、各層の構成がマトリクス法に基づいたシミュレーションにより膜厚設計されている。
【0062】
高屈折率層H及び低屈折率層Lは、酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化チタン(TiO2)、酸化タンタル(Ta2O5)等の高屈折率材料、及び酸化ケイ素(SiO2)、フッ化マグネシウム(MgF2)等の低屈折率材料により、蒸着やスパッタリング等の真空薄膜形成方法を用いて形成することができる。また、この外にも、高屈折率層H及び低屈折率層Lは、熱硬化性樹脂等の溶剤材料を用いて塗布方法により形成することができる。例えば、高屈折率層Hは熱硬化性樹脂JSR製オプスター(JN7102)により、低屈折率層Lは熱硬化性樹脂JSR製オプスター(JN7215)により形成することができる。
【0063】
光拡散層22は、選択反射膜21によって反射された光を散乱させるもので、これによって視野特性が大幅に改善される。保護膜23は、選択反射膜21及び光拡散層22を外部から保護するものであり、これにより水分による劣化や、擦れ、引っ掻き等による傷付きを防ぎ、耐久性及び品質を向上させることができる。
【0064】
上記のように構成されたスクリーン2は、図4にそのスクリーン光学特性を示すように、プロジェクター1の光源の光である波長642nmの赤色光、波長532nmの緑色光、波長457nmの青色光に対して特に反射率が高く、その前後の波長領域の光は反射率が低くスクリーン2に吸収されるようになっている。このように、スクリーン2は、プロジェクター1からの画像光の三原色波長域光をそれ以外の波長領域光より特に高反射率で反射することができるため、高コントラスト、高輝度で投影画像を表示することができる。
【0065】
しかしながら、窓3から太陽光5などの強い外光が室内に入射するような映写環境では、太陽光5は図5に示すようなスペクトルを有するため、スクリーン2において、図6に示すように太陽光5の三原色波長域成分が反射され、反射強度の強い部分(図中丸印で示す。)がノイズとなって、映像が全体的に白っぽくなり、コントラストが低下する。
【0066】
これを防ぐために、映写環境の採光部となる太陽光5が入射する窓3に、プロジェクター1の画像光と同じ波長域光、すなわち三原色波長域光を透過させない光学膜4がフィルターとして設置される。窓3に対する光学膜4の設置方法としては、例えば窓ガラスに貼り付ける方法が挙げられる。
【0067】
このような光学膜4としては、例えばプロジェクター1の画像光に合わせてスクリーン2で設計された選択反射膜が好ましく用いられる。光学膜4の構成例を図7に示す。図7において、フィルム基板40上に、スクリーン2の選択反射膜21と同様にして膜厚設計された高屈折率層Hと低屈折率層Lを交互に積層してなる光学多層膜41を備え、この光学多層膜41の上に透明な保護膜42が形成されている。
【0068】
フィルム基板40は、光学膜4の支持体となるものであり、透過率の高い、例えばポリカーボネイト(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリオレフィン(PO)等のポリマー材により構成することができる。
【0069】
光学多層膜41は、選択反射膜21と同様にして形成される。すなわち、蒸着やスパッタリング等の真空薄膜形成方法、又は塗布方法により、高屈折率材料により形成された薄膜である高屈折率層Hと、低屈折率材料により形成された薄膜である低屈折率層Lとを交互に重ねて得られる。真空薄膜形成方法の場合、高屈折材料はNb2O5、TiO2、Ta2O5等、低屈折率材料はSiO2、MgF2等が用いられる。塗布方法の場合、各層は溶剤材料、例えば高屈折率層Hは熱硬化型樹脂JSR製オプスター(JN7102)により成膜され、低屈折率層Lは熱硬化型樹脂JSR製オプスター(JN7215)により成膜され、加熱または紫外線照射により硬化される。いずれも各層の構成を、光学多層膜がプロジェクター1から投射される画像光の波長領域の光、すなわち三原色波長域光に対して高反射特性を有し、少なくとも三原色波長域を除く可視波長域光に対しては高透過特性を有するように膜厚設計したものであり、各層の厚みは数十nm〜数μmとされる。光学膜4の光学特性を図8に示す。この光学特性は透過特性の観点から見たものであり、選択反射膜21と同じ光学特性を有する。
【0070】
このように構成された光学膜4は、フィルム基板40の裏面に接着剤を設けて、窓ガラスに貼り付けて用いることができる。また、窓3に掛けるスクリーンタイプにして設置してもよい。この他、光学膜4を取り付ける方法としては種々考えられるが、要は光学膜4を透過した太陽光5の透過光6が室内に採りこまれるようにすればよい。
【0071】
図5に示すようなスペクトルを有する太陽光5が、図8に示すような光学特性を有する光学膜4に入射すると、スクリーン2で反射される波長域光は光学膜4で反射されて除外され、透過後の太陽光は、図9に示すようなスペクトルを有する透過光6となる。この透過光6がスクリーン2に照射されても、図4に示すようなスクリーンの反射特性により、図10に示すような低反射強度の光のみとなり、視聴者8は太陽光5の影響をほとんど受けずに、コントラストが高く、鮮明な映像を見ることができる。また、透過光6は、三原色波長域光以外の可視光を有するため、室内(映写環境)が暗くなることはない。
【0072】
上記の説明からも明らかなように、本実施の形態の画像表示システムにおいては、プロジェクター1から投射される画像光の波長領域に合わせて、画像光の波長領域の光のみ反射するよう構成されたスクリーン2に対して、画像光の波長領域の光を透過させないよう構成された光学膜4を太陽光が射し込む窓3等(採光部)に設けることにより、スクリーン2で反射してノイズとなる外光成分を予め取り除くことができ、明るい映写環境で高コントラストの鮮明な映像をスクリーン2上に見ることができる。
【0073】
なお、上記の実施の形態では、スクリーンとして選択反射膜を備えたものを例示したが、この他に、本出願人と同一の出願人により特願2002−331993号にて提案されたスクリーンも、プロジェクターに合わせて画像光の波長領域の光のみ反射するよう設計可能なスクリーンとして挙げることができる。このスクリーンは、スクリーン基板上に、画像光の波長領域の光を透過し、画像光以外の波長領域の光を吸収するよう構成された選択吸収層と、選択吸収層を透過した画像光を反射する反射層とを備えてなり、この選択吸収層は、所定の波長領域の光に対してのみ吸収特性を有し、それ以外の波長領域の光に対しては透過特性を有する選択吸収色素を組み合わせて含有させることにより形成される。
【0074】
また、画像光の波長領域の光成分を取り除く光学膜4は、室内の照明機器に取り付けることもできる。取付け方法としては、図11に示すように、照明本体50に貼付したり、直接成膜する方法がある。また、図12に示すように、照明機器の外装51の内部又は外部に設けてもよい。
【0075】
このように、光学膜4を照明機器に取り付けることにより、照明からの光は画像光の波長域である三原色波長域の光が内部に反射され、それ以外の波長領域の光が室内に照射されるため、スクリーン2で反射される外光成分はなく、高コントラストで鮮明な映像を見ることができる。また、部屋の明るさは若干暗くなる程度である。
【0076】
上記実施の形態は、フロントプロジェクター方式の場合であるが、一般的なリアプロジェクター方式においても、光学膜4により外光から三原色波長域成分を除去しておくことにより、同様にコントラストが高く鮮明な映像を表示することができる。
【0077】
【発明の効果】
上述したように、請求項1の発明によれば、映写環境の採光部にフィルターとして光学膜を設け、この光学膜の透過特性とスクリーンの反射特性を投影装置から投射される画像光の波長領域に合わせて設計することにより、外光が存在する明るい環境下で、外光のノイズのない鮮明な投影画像をスクリーンに表示して鑑賞することができる。
【0078】
請求項2の発明によれば、画像光の波長領域の光を反射し、それ以外の波長領域の光を透過する光学膜を採光部のフィルターとして設置することにより、画像光と同じ波長領域の光を除外した外光を映写環境に取り込むことができる。
【0079】
請求項3〜5の発明によれば、高屈折率層と低屈折率層を交互に積層した光学多層膜を備えることにより、画像光の波長領域の光を反射し、それ以外の波長領域の光を透過する光学膜を得ることができる。
【0080】
請求項6、7の発明によれば、高分子基材を備えることにより、いろいろ形状の部位に貼付などの方法によりフィルターとして容易に取り付け可能な光学膜を得ることができる。
【0081】
請求項9の発明によれば、選択反射膜を備えることにより、投影装置の画像光に合わせて高コントラストの画像を表示するよう設計可能なスクリーンを得ることができる。
【0082】
請求項10〜12の発明によれば、高屈折率層と低屈折率層を交互に積層した光学多層膜を備えることにより、画像光の波長領域の光を反射し、それ以外の波長領域の光を透過するスクリーン用選択反射膜を得ることができる。
【0083】
請求項13の発明によれば、選択反射膜を透過した光を吸収する吸収層を設けることにより、明光下にて高コントラストの画像を表示可能なスクリーンを得ることができる。
【0084】
請求項14の発明によれば、画像光の波長領域の光を透過し、それ以外の波長領域の光を吸収する選択吸収層を備えることにより、投影装置の画像光に合わせて高コントラストの画像を表示するよう設計可能なスクリーンを得ることができる。
【0085】
請求項15の発明によれば、選択吸収色素を含有させることにより、特定波長領域の光を透過させ、それ以外の波長領域の光を吸収する選択吸収層を得ることができる。
【0086】
請求項16の発明によれば、特定波長領域が三原色波長領域を含むことにより、外光が存在する明るい環境下で、外光のノイズのない鮮明なカラー画像をスクリーンに表示して見ることができる。
【0087】
請求項17の発明によれば、三原色波長領域の光に対して反射特性を有し、それ以外の波長領域の光に対して透過特性を有することにより、高コントラストのカラー画像を表示するためのスクリーンとして、また三原色波長領域の光を除去するフィルターとして有用な光学膜を得ることができる。
【0088】
請求項18〜20の発明によれば、高屈折率層と低屈折率層を交互に積層した光学多層膜を備えることにより、三原色波長領域の光を反射し、それ以外の波長領域の光を透過する光学膜を得ることができる。
【0089】
請求項21、22の発明によれば、いろいろ形状の部位に貼付などの方法により容易に取り付け可能な光学膜を得ることができる。
【0090】
請求項23〜25の発明によれば、三原色波長領域の光に対して高反射特性を有し、少なくとも三原色波長領域を除く可視波長領域の光に対して高透過特性を有する光学膜を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像表示システムの一実施の形態を概略的に示す図である。
【図2】GLVを用いた回折格子型プロジェクターを概略的に示す図である。
【図3】本発明にかかるスクリーンの構成例を示す断面図である。
【図4】本発明にかかるスクリーンの光学特性を示す図である。
【図5】太陽光のスペクトルを示す図である。
【図6】図4の光学特性を有するスクリーンによる、図5のスペクトルを有する太陽光の反射強度を示す図である。
【図7】本発明にかかる光学膜の構成例を示す断面図である。
【図8】本発明にかかる光学膜の光学特性を示す図である。
【図9】図8の光学特性を有する光学膜を透過した後の太陽光のスペクトルを示す図である。
【図10】図4の光学特性を有するスクリーンによる、図9に示す光の反射強度を示す図である。
【図11】光学膜を照明本体に設ける例を示す図である。
【図12】光学膜を照明機器の外装に設ける例を示す図である。
【符号の説明】
1‥‥プロジェクター、2‥‥スクリーン、3‥‥窓、4‥‥光学膜、5‥‥太陽光、6‥‥透過光、7‥‥反射光、10‥‥レーザー発振器、13‥‥GLV、14‥‥体積型ホログラム素子、20‥‥スクリーン基板、21‥‥選択反射膜、22‥‥光拡散層、23、42‥‥保護膜、40‥‥フィルム基板、41‥‥光学多層膜
【発明の属する技術分野】
本発明は、明光下でプロジェクターの投影画像を鮮明かつ明瞭に見ることができる画像表示システム、及びこの画像表示システム等に有効な光学膜とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、会議等において発言者が資料を提示する方法としてオーバーヘッドプロジェクターやスライドプロジェクターが広く用いられている。また、一般家庭においても液晶を用いたビデオプロジェクターや動画フィルムプロジェクターが普及しつつある。
【0003】
この種のプロジェクターとしては、例えば、光源から出射された光線を赤(R)、緑(G)、青(B)の各色の光線に分離して所定の光路に収束させる照明光学系と、RGB各色の光束をそれぞれ光変調する液晶パネル(ライトバルブ)と、光変調されたRGB各色の光束を合成する光合成部とを備え、光合成部により合成されたカラー画像を投射レンズによりスクリーンに拡大投影するものがある。
【0004】
また、最近では、光源に狭帯域三原色光源、例えばRGB各色の狭帯域光を発するレーザー発振器を使用し、液晶パネルの代わりにグレーティングライトバルブ(GLV:Grating Light Valve)を用いてRGB各色の光束を空間的に変調するプロジェクターも開発されている。
【0005】
このようなプロジェクターに対して、投影画像を表示するスクリーンには大別して透過型と反射型がある。透過型スクリーンは、スクリーン背後のプロジェクター(リアプロジェクター)から照射される画像光を透過して透過光により投影画像を見ることができるようにしたものであり、反射型スクリーンは、スクリーン前方のプロジェクター(フロントプロジェクター)から照射される画像光を反射して反射光により投影画像を見ることができるようにしたものである。
【0006】
しかしながら、透過型、反射型のいずれにしても、プロジェクターの投影画像は部屋を暗くしないとコントラストが低いものであった。これはプロジェクターでスクリーン上に投影された映像の黒レベルはスクリーンに当たっている外光のレベル、すなわち部屋の明るさで決まるからである。黒レベルを強めコントラストの高い映像を表示するためには、外光レベルを低くする、つまり部屋を暗くする必要があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
これを解決し、部屋が明るい状態でもコントラストの高い投影画像を表示することを可能とするスクリーンが、本出願人と同一の出願人より提案されている(特願2002−070799号等)。このスクリーンは、プロジェクター光の特定波長領域光に対する反射率が高く、その他の可視波長領域光に対する反射率は低く透過するような選択反射膜を用いてコントラスト向上を図ったものであり、外光の影響を低減することができるようになっている。
【0008】
しかしながら、このようなスクリーンでも、プロジェクター光の波長領域にある外光は反射されるため、室外からの太陽光などの強い外光がある環境では、反射される波長領域の外光の強度も強く、スクリーン上のノイズとなってしまう。このため、全体的に白っぽくなり、コントラストが低下し、色の変化が発生してしまい、鮮明な映像を表示することができなくなるという可能性があった。
【0009】
本発明は、このような点に対処してなされたもので、部屋を暗くすることなく、コントラストが高く鮮明な投影画像をスクリーンに表示することができる画像表示システムと、その画像表示システムを実現することができる光学膜及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
すなわち、請求項1の発明は、画像表示システムにおいて、画像光を投射する投影装置と、画像光に対応する特定波長領域の光に対して高反射特性を持ち、少なくとも特定波長領域を除く可視波長領域の光に対して高反射特性を持たない、投影装置からの画像光により画像を表示するスクリーンと、スクリーンが設置される映写環境の採光部に設けられ、少なくとも特定波長領域を除いた可視波長領域の光を採光する光学膜とを備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項1の発明においては、映写環境の外光は、映写環境に入射する際に採光部の光学膜を通ることによって、投影装置から投射される画像光と同じ特定波長領域の光が除去される。このような外光の下で投影装置から画像光がスクリーンに投射されると、スクリーンは特定波長領域の光を選択して反射するよう構成されているので、画像光を反射し、特定波長領域の成分が除かれた外光は反射しない。したがって、外光が存在する明るい環境下で、外光のノイズのない鮮明な投影画像の表示が可能になる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の画像表示システムにおいて、光学膜が、特定波長領域の光に対して高反射特性を有し、少なくとも特定波長領域を除く可視波長領域の光に対して高透過特性を有することを特徴とする。
【0013】
請求項2の発明においては、外光が光学膜に入射すると、特定波長領域の光成分は反射され、少なくとも特定波長領域を除く可視波長領域の成分は透過する。したがって、外光から特定波長領域の光成分を除去することが可能となる。
【0014】
請求項3の発明は、請求項2の画像表示システムにおいて、光学膜が、高屈折率層とこれより屈折率の低い低屈折率層を交互に積層した光学多層膜を備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明は、請求項3の画像表示システムにおいて、光学多層膜の高屈折率層が酸化ニオブ、酸化タンタルまたは酸化チタンを含有し、低屈折率層が酸化ケイ素またはフッ化マグネシウムを含有することを特徴とする。
【0016】
請求項5の発明は、請求項3の画像表示システムにおいて、光学多層膜が熱硬化性樹脂からなることを特徴とする。
【0017】
請求項3〜5の発明においては、高屈折率層と低屈折率層を交互に積層することによって、各層の膜厚設計にて特定波長領域の光を選択して反射し、それ以外の光を透過させることが可能な光学膜が得られる。このような高屈折率層及び低屈折率層には、無機材料の場合には、高屈折率層に例えばNb2O5、TiO2、Ta2O5等、低屈折率層に例えばSiO2、MgF2等が用いられる。有機材料の場合には、高屈折率層及び低屈折率層に屈折率の異なる熱硬化性樹脂等の透明樹脂が用いられる。
【0018】
請求項6の発明は、請求項3の画像表示システムにおいて、光学膜が、光学多層膜が形成される高分子基材を備えたことを特徴とする。
【0019】
請求項7の発明は、請求項6の画像表示システムにおいて、高分子基材が、ポリカーボネイト、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォンまたはポリオレフィンからなることを特徴とする。
【0020】
請求項6、7の発明においては、いろいろ形状の部位に貼付などの方法により容易に取り付け可能な光学膜を得ることが可能となる。
【0021】
請求項8の発明は、請求項1の画像表示システムにおいて、採光部が、窓及び照明機器の少なくとも1つであることを特徴とする。
【0022】
請求項8の発明においては、光学膜を窓に取り付けることにより、特定波長領域の光成分のない太陽光を採光することが可能となる。同様にして、部屋の照明機器から特定波長領域の光成分のない明かりを採光することが可能となる。
【0023】
請求項9の発明は、請求項1の画像表示システムにおいて、スクリーンが、特定波長領域の光に対して高反射特性を有し、少なくとも特定波長領域を除く可視波長領域の光に対して高透過特性を有する選択反射膜を備えたことを特徴とする。
【0024】
請求項9の発明においては、投影装置からの画像光を反射し、それ以外の波長領域の光からなる外光を透過させて反射しないスクリーンを得ることが可能となる。
【0025】
請求項10の発明は、請求項7の画像表示システムにおいて、選択反射膜が、高屈折率層とこれより屈折率の低い低屈折率層を交互に積層した光学多層膜からなることを特徴とする。
【0026】
請求項11の発明は、請求項8の画像表示システムにおいて、選択反射膜の高屈折率層が酸化ニオブ、酸化タンタルまたは酸化チタンを含有し、低屈折率層が酸化ケイ素またはフッ化マグネシウムを含有することを特徴とする。
【0027】
請求項12の発明は、請求項9の画像表示システムにおいて、選択反射膜が熱硬化性樹脂からなることを特徴とする。
【0028】
請求項10〜12の発明においては、高屈折率層と低屈折率層を交互に積層することによって、各層の膜厚設計にて特定波長領域の光を選択して反射し、それ以外の光を透過させることが可能な選択反射膜が得られる。このような高屈折率層及び低屈折率層には、無機材料の場合には、高屈折率層に例えばNb2O5、TiO2、Ta2O5等、低屈折率層に例えばSiO2、MgF2等が用いられる。有機材料の場合には、高屈折率層及び低屈折率層に屈折率の異なる熱硬化性樹脂等の透明樹脂が用いられる。
【0029】
請求項13の発明は、請求項7の画像表示システムにおいて、スクリーンが、前記選択反射膜を透過した光を吸収する吸収層を備えたことを特徴とする。
【0030】
請求項13の発明においては、特定波長領域の成分が除かれた外光をスクリーンで吸収することができ、外光が存在する明るい環境下でも、高コントラストの鮮明な投影画像を表示するスクリーンが得られる。
【0031】
請求項14の発明は、請求項1の画像表示システムにおいて、スクリーンが、特定波長領域の光に対して高透過特性を有し、少なくとも特定波長領域を除く可視波長領域の光に対して高吸収特性を有する選択吸収層と、選択吸収層を透過した光を反射する反射層とを備えたことを特徴とする。
【0032】
請求項14の発明においては、スクリーンは、選択吸収層によって投影装置から投射された画像光を反射し、特定波長領域の成分が除かれた外光を吸収する。これにより、外光が存在する明るい環境下で、高コントラストの鮮明な投影画像を表示することが可能となる。
【0033】
請求項15の発明は、請求項14の画像表示システムにおいて、選択吸収層が、特定波長領域以外の所定の波長領域の光に対して高吸収特性を有し、所定の波長領域以外の光に対して高透過特性を有する選択吸収色素を含有することを特徴とする。
【0034】
請求項15の発明においては、特定波長領域以外の所定の波長領域の光に対してのみ吸収特性を有し、それ以外の波長領域の光に対しては透過特性を有する選択吸収色素を組み合わせることで、特定波長領域の光を透過させ、それ以外の波長領域の光を吸収する選択吸収層を実現することが可能となる。
【0035】
請求項16の発明は、請求項1の画像表示システムにおいて、特定波長領域が、赤色光の波長領域、緑色光の波長領域及び青色光の波長領域を含むことを特徴とする。
【0036】
請求項16の発明においては、投影装置からスクリーンに投射される三原色波長域光によって、鮮明かつ高コントラストのカラー画像をスクリーン上に見ることが可能となる。
【0037】
請求項17の発明は、光学膜において、赤色、緑色及び青色の三原色波長領域の光に対して高反射特性を有し、少なくとも三原色波長領域を除く可視波長領域の光に対して高透過特性を有することを特徴とする。
【0038】
請求項17の発明においては、光学膜が赤色、緑色及び青色の三原色波長領域の光を選択して反射することで、高コントラストのカラー画像をスクリーン上に表示するための選択反射膜として好適な光学膜が実現し、赤色、緑色及び青色の三原色以外の波長領域の光を選択して透過させることで、赤色、緑色及び青色の三原色波長領域の光を除去するフィルターとして好適な光学膜が実現する。
【0039】
請求項18の発明は、請求項17の光学膜において、高屈折率層とこれより屈折率の低い低屈折率層を交互に積層した光学多層膜を備えたことを特徴とする。
【0040】
請求項19の発明は、請求項18の光学膜において、光学多層膜の高屈折率層が酸化ニオブ、酸化タンタルまたは酸化チタンを含有し、低屈折率層が酸化ケイ素またはフッ化マグネシウムを含有することを特徴とする。
【0041】
請求項20の発明は、請求項18の光学膜において、光学多層膜が熱硬化性樹脂からなることを特徴とする。
【0042】
請求項18〜20の発明においては、高屈折率層と低屈折率層を交互に積層することによって、各層の膜厚設計にて三原色波長領域の光を選択して反射し、それ以外の光を透過させることが可能な光学膜が得られる。このような高屈折率層及び低屈折率層には、無機材料の場合には、高屈折率層に例えばNb2O5、TiO2、Ta2O5等、低屈折率層に例えばSiO2、MgF2等が用いられる。有機材料の場合には、高屈折率層及び低屈折率層に屈折率の異なる熱硬化性樹脂等の透明樹脂が用いられる。
【0043】
請求項21の発明は、請求項18の光学膜において、光学多層膜が形成される高分子基材を備えたことを特徴とする。
【0044】
請求項22の発明は、請求項21の光学膜において、高分子基材が、ポリカーボネイト、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォンまたはポリオレフィンからなることを特徴とする。
【0045】
請求項21、22の発明においては、いろいろ形状の部位に貼付などの方法により容易に取り付け可能な光学膜を得ることが可能となる。
【0046】
請求項23の発明は、光学膜の製造方法において、基材上に、高屈折率層とこれより屈折率の低い低屈折率層を交互に積層して、赤色、緑色及び青色の三原色波長領域の光に対して高反射特性を有し、少なくとも三原色波長領域を除く可視波長領域の光に対して高透過特性を有する光学多層膜を形成する工程を含むことを特徴とする。
【0047】
請求項24の発明は、請求項23の光学膜の製造方法において、光学多層膜を形成する工程が、高屈折率層を酸化ニオブ、酸化タンタルまたは酸化チタンを用いてスパッタ法により成膜する工程と、低屈折率層を酸化ケイ素またはフッ化マグネシウムを用いて、スパッタ法により成膜する工程とを有することを特徴とする。
【0048】
請求項25の発明は、請求項23の光学膜の製造方法において、光学多層膜を形成する工程が、基材上に、樹脂材料を塗布する工程と、塗布された樹脂材料を加熱または紫外線照射により硬化させる工程とを有することを特徴とする。
【0049】
請求項23〜25の発明においては、三原色波長領域の光に対して高反射特性を有し、少なくとも三原色波長領域を除く可視波長領域の光に対して高透過特性を有する光学膜を容易に製造することが可能となる。
【0050】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の画像表示システムの一実施の形態を概略的に示すもので、投影装置であるプロジェクター1と、プロジェクター光の波長領域の光に対する反射率が高く、プロジェクター光以外の可視波長領域の光に対する反射率が低いスクリーン2と、プロジェクター1とスクリーン2が設置される室内の採光部の窓3に張られ、プロジェクター光の波長領域の光に対して高反射特性を有し、プロジェクター光以外の可視波長領域の光に対して高透過特性を有する光学膜4とで構成されている。なお、図中符号5は太陽光、6は太陽光5が光学膜4を透過した後の透過光、7は太陽光5が光学膜4で反射される反射光、8はスクリーン2に表示された映像を鑑賞する視聴者である。
【0051】
この画像表示システムでは、プロジェクター1から投射される画像光の波長領域に合わせて、スクリーン2および光学膜4が設計されるもので、プロジェクター1のタイプは限定されないが、ここでは、プロジェクター1をグレーティングライトバルブ(Grating Light Valve、以下GLVという。)を用いた回折格子型プロジェクターとした場合について説明する。
【0052】
図2に、GLVを用いた回折格子型プロジェクターを概略的に示す。図2において、プロジェクター1は、光源としてレーザー発振器10を備えている。このレーザー発振器10は、例えば、波長642nmの赤色光を出射するレーザー発振器10R、波長532nmの緑色光を出射するレーザー発振器10G、及び波長457nmの青色光を出射するレーザー発振器10Bから構成される。
【0053】
また、プロジェクター1は、レーザー発振器10から出射された光を画像光としてスクリーン2に導くための光学系として、コリメータレンズ11、シリンドリカルレンズ12、GLV13、体積型ホログラム素子14、ガルバノミラー15及び投影レンズ16を備えている。
【0054】
コリメータレンズ11は、赤色用コリメータレンズ11R、緑色用コリメータレンズ11G及び青色用コリメータレンズ11Bからなり、それぞれ各レーザー発振器10R、10G、10Bから出射され赤色光、緑色光、青色光を平行光とする。コリメータレンズ11によって平行光とされた各色光はシリンドリカルレンズ12によってGLV13に集光される。
【0055】
すなわち、この回折格子型プロジェクターでは、単一の光源からの光を利用しているのではなく、各レーザー発振器10R、10G、10Bによって3色の光をそれぞれ独立して出射する光源を備えている。また、各レーザー発振器10R、10G、10Bによって出射された光が、コリメータレンズ11を介して直接シリンドリカルレンズ12に入射するよう構成されている。
【0056】
GLV13では、各色用に複数の微小なリボンが形成されたリボン列を備えており、GLV13に集光された各色光は、画像信号に応じてGLV13のリボン列が駆動されることによって空間的に変調される。
【0057】
GLV13によって変調された各色光は、再びシリンドリカルレンズ12に入射し、平行光とされて体積型ホログラム素子14に入射する。体積型ホログラム素子14は、第1の体積型ホログラム素子14aと第2の体積型ホログラム素子14bからなり、例えば、第1の体積型ホログラム素子14aにより赤色光が回折され、第2の体積型ホログラム素子14bにより青色光が赤色光と同じ方向に回折される。また、第1の体積型ホログラム素子14a及び第2の体積型ホログラム素子14bでは、緑色光が回折されずに直進して透過し、赤色光と同じ方向に出射される。このようにして、体積型ホログラム素子14の作用により、赤、緑、青の各色光が合成されて同じ方向に出射される。すなわち、この回折格子型プロジェクターでは、第1の体積型ホログラム素子14aと第2の体積型ホログラム素子14bによって光合成部が構成されている。
【0058】
体積型ホログラム素子14によって同じ方向に出射された三原色波長域光は、ガルバノミラー15によって所定の方向に走査され、投影レンズ16を介して画像光としてスクリーン2に投射される。
【0059】
上記のように構成されたプロジェクター1に対して、スクリーン2はプロジェクター1からの画像光である三原色波長域光のみ反射するよう設計されたものが使用される。このように設計可能なスクリーン2としては、例えば、プロジェクター光の波長領域の光に対して高反射特性を有し、その他の可視波長領域の光に対して高透過特性を有する選択反射膜を備えたスクリーン(特願2002−070799号等)を挙げることができる。このスクリーンの構成例を図3に示す。
【0060】
図3において、スクリーン2は、スクリーン基板20上に高屈折率層Hと低屈折率層Lが交互に積層された選択反射膜21を備え、この選択反射膜21の上に光拡散層22を有し、その上に保護膜23が形成されている。スクリーン基板20は、スクリーン2の支持体となるとともに、選択反射膜21を透過した光を吸収するよう構成され、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂に黒色微粒子を含有させて構成することができる。また、基板中に黒色微粒子を含有させずに基板表面に黒色塗料を塗布してもよい。
【0061】
選択反射膜21は、高屈折率材料からなる高屈折率層Hと低屈折率材料からなる低屈折率層Lとを交互に積層した光学多層膜であり、プロジェクター1の画像光に合わせて、三原色波長域光に対して高反射特性を有し、少なくとも三原色波長域を除く可視波長領域の光に対して高透過特性を有するように、各層の構成がマトリクス法に基づいたシミュレーションにより膜厚設計されている。
【0062】
高屈折率層H及び低屈折率層Lは、酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化チタン(TiO2)、酸化タンタル(Ta2O5)等の高屈折率材料、及び酸化ケイ素(SiO2)、フッ化マグネシウム(MgF2)等の低屈折率材料により、蒸着やスパッタリング等の真空薄膜形成方法を用いて形成することができる。また、この外にも、高屈折率層H及び低屈折率層Lは、熱硬化性樹脂等の溶剤材料を用いて塗布方法により形成することができる。例えば、高屈折率層Hは熱硬化性樹脂JSR製オプスター(JN7102)により、低屈折率層Lは熱硬化性樹脂JSR製オプスター(JN7215)により形成することができる。
【0063】
光拡散層22は、選択反射膜21によって反射された光を散乱させるもので、これによって視野特性が大幅に改善される。保護膜23は、選択反射膜21及び光拡散層22を外部から保護するものであり、これにより水分による劣化や、擦れ、引っ掻き等による傷付きを防ぎ、耐久性及び品質を向上させることができる。
【0064】
上記のように構成されたスクリーン2は、図4にそのスクリーン光学特性を示すように、プロジェクター1の光源の光である波長642nmの赤色光、波長532nmの緑色光、波長457nmの青色光に対して特に反射率が高く、その前後の波長領域の光は反射率が低くスクリーン2に吸収されるようになっている。このように、スクリーン2は、プロジェクター1からの画像光の三原色波長域光をそれ以外の波長領域光より特に高反射率で反射することができるため、高コントラスト、高輝度で投影画像を表示することができる。
【0065】
しかしながら、窓3から太陽光5などの強い外光が室内に入射するような映写環境では、太陽光5は図5に示すようなスペクトルを有するため、スクリーン2において、図6に示すように太陽光5の三原色波長域成分が反射され、反射強度の強い部分(図中丸印で示す。)がノイズとなって、映像が全体的に白っぽくなり、コントラストが低下する。
【0066】
これを防ぐために、映写環境の採光部となる太陽光5が入射する窓3に、プロジェクター1の画像光と同じ波長域光、すなわち三原色波長域光を透過させない光学膜4がフィルターとして設置される。窓3に対する光学膜4の設置方法としては、例えば窓ガラスに貼り付ける方法が挙げられる。
【0067】
このような光学膜4としては、例えばプロジェクター1の画像光に合わせてスクリーン2で設計された選択反射膜が好ましく用いられる。光学膜4の構成例を図7に示す。図7において、フィルム基板40上に、スクリーン2の選択反射膜21と同様にして膜厚設計された高屈折率層Hと低屈折率層Lを交互に積層してなる光学多層膜41を備え、この光学多層膜41の上に透明な保護膜42が形成されている。
【0068】
フィルム基板40は、光学膜4の支持体となるものであり、透過率の高い、例えばポリカーボネイト(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリオレフィン(PO)等のポリマー材により構成することができる。
【0069】
光学多層膜41は、選択反射膜21と同様にして形成される。すなわち、蒸着やスパッタリング等の真空薄膜形成方法、又は塗布方法により、高屈折率材料により形成された薄膜である高屈折率層Hと、低屈折率材料により形成された薄膜である低屈折率層Lとを交互に重ねて得られる。真空薄膜形成方法の場合、高屈折材料はNb2O5、TiO2、Ta2O5等、低屈折率材料はSiO2、MgF2等が用いられる。塗布方法の場合、各層は溶剤材料、例えば高屈折率層Hは熱硬化型樹脂JSR製オプスター(JN7102)により成膜され、低屈折率層Lは熱硬化型樹脂JSR製オプスター(JN7215)により成膜され、加熱または紫外線照射により硬化される。いずれも各層の構成を、光学多層膜がプロジェクター1から投射される画像光の波長領域の光、すなわち三原色波長域光に対して高反射特性を有し、少なくとも三原色波長域を除く可視波長域光に対しては高透過特性を有するように膜厚設計したものであり、各層の厚みは数十nm〜数μmとされる。光学膜4の光学特性を図8に示す。この光学特性は透過特性の観点から見たものであり、選択反射膜21と同じ光学特性を有する。
【0070】
このように構成された光学膜4は、フィルム基板40の裏面に接着剤を設けて、窓ガラスに貼り付けて用いることができる。また、窓3に掛けるスクリーンタイプにして設置してもよい。この他、光学膜4を取り付ける方法としては種々考えられるが、要は光学膜4を透過した太陽光5の透過光6が室内に採りこまれるようにすればよい。
【0071】
図5に示すようなスペクトルを有する太陽光5が、図8に示すような光学特性を有する光学膜4に入射すると、スクリーン2で反射される波長域光は光学膜4で反射されて除外され、透過後の太陽光は、図9に示すようなスペクトルを有する透過光6となる。この透過光6がスクリーン2に照射されても、図4に示すようなスクリーンの反射特性により、図10に示すような低反射強度の光のみとなり、視聴者8は太陽光5の影響をほとんど受けずに、コントラストが高く、鮮明な映像を見ることができる。また、透過光6は、三原色波長域光以外の可視光を有するため、室内(映写環境)が暗くなることはない。
【0072】
上記の説明からも明らかなように、本実施の形態の画像表示システムにおいては、プロジェクター1から投射される画像光の波長領域に合わせて、画像光の波長領域の光のみ反射するよう構成されたスクリーン2に対して、画像光の波長領域の光を透過させないよう構成された光学膜4を太陽光が射し込む窓3等(採光部)に設けることにより、スクリーン2で反射してノイズとなる外光成分を予め取り除くことができ、明るい映写環境で高コントラストの鮮明な映像をスクリーン2上に見ることができる。
【0073】
なお、上記の実施の形態では、スクリーンとして選択反射膜を備えたものを例示したが、この他に、本出願人と同一の出願人により特願2002−331993号にて提案されたスクリーンも、プロジェクターに合わせて画像光の波長領域の光のみ反射するよう設計可能なスクリーンとして挙げることができる。このスクリーンは、スクリーン基板上に、画像光の波長領域の光を透過し、画像光以外の波長領域の光を吸収するよう構成された選択吸収層と、選択吸収層を透過した画像光を反射する反射層とを備えてなり、この選択吸収層は、所定の波長領域の光に対してのみ吸収特性を有し、それ以外の波長領域の光に対しては透過特性を有する選択吸収色素を組み合わせて含有させることにより形成される。
【0074】
また、画像光の波長領域の光成分を取り除く光学膜4は、室内の照明機器に取り付けることもできる。取付け方法としては、図11に示すように、照明本体50に貼付したり、直接成膜する方法がある。また、図12に示すように、照明機器の外装51の内部又は外部に設けてもよい。
【0075】
このように、光学膜4を照明機器に取り付けることにより、照明からの光は画像光の波長域である三原色波長域の光が内部に反射され、それ以外の波長領域の光が室内に照射されるため、スクリーン2で反射される外光成分はなく、高コントラストで鮮明な映像を見ることができる。また、部屋の明るさは若干暗くなる程度である。
【0076】
上記実施の形態は、フロントプロジェクター方式の場合であるが、一般的なリアプロジェクター方式においても、光学膜4により外光から三原色波長域成分を除去しておくことにより、同様にコントラストが高く鮮明な映像を表示することができる。
【0077】
【発明の効果】
上述したように、請求項1の発明によれば、映写環境の採光部にフィルターとして光学膜を設け、この光学膜の透過特性とスクリーンの反射特性を投影装置から投射される画像光の波長領域に合わせて設計することにより、外光が存在する明るい環境下で、外光のノイズのない鮮明な投影画像をスクリーンに表示して鑑賞することができる。
【0078】
請求項2の発明によれば、画像光の波長領域の光を反射し、それ以外の波長領域の光を透過する光学膜を採光部のフィルターとして設置することにより、画像光と同じ波長領域の光を除外した外光を映写環境に取り込むことができる。
【0079】
請求項3〜5の発明によれば、高屈折率層と低屈折率層を交互に積層した光学多層膜を備えることにより、画像光の波長領域の光を反射し、それ以外の波長領域の光を透過する光学膜を得ることができる。
【0080】
請求項6、7の発明によれば、高分子基材を備えることにより、いろいろ形状の部位に貼付などの方法によりフィルターとして容易に取り付け可能な光学膜を得ることができる。
【0081】
請求項9の発明によれば、選択反射膜を備えることにより、投影装置の画像光に合わせて高コントラストの画像を表示するよう設計可能なスクリーンを得ることができる。
【0082】
請求項10〜12の発明によれば、高屈折率層と低屈折率層を交互に積層した光学多層膜を備えることにより、画像光の波長領域の光を反射し、それ以外の波長領域の光を透過するスクリーン用選択反射膜を得ることができる。
【0083】
請求項13の発明によれば、選択反射膜を透過した光を吸収する吸収層を設けることにより、明光下にて高コントラストの画像を表示可能なスクリーンを得ることができる。
【0084】
請求項14の発明によれば、画像光の波長領域の光を透過し、それ以外の波長領域の光を吸収する選択吸収層を備えることにより、投影装置の画像光に合わせて高コントラストの画像を表示するよう設計可能なスクリーンを得ることができる。
【0085】
請求項15の発明によれば、選択吸収色素を含有させることにより、特定波長領域の光を透過させ、それ以外の波長領域の光を吸収する選択吸収層を得ることができる。
【0086】
請求項16の発明によれば、特定波長領域が三原色波長領域を含むことにより、外光が存在する明るい環境下で、外光のノイズのない鮮明なカラー画像をスクリーンに表示して見ることができる。
【0087】
請求項17の発明によれば、三原色波長領域の光に対して反射特性を有し、それ以外の波長領域の光に対して透過特性を有することにより、高コントラストのカラー画像を表示するためのスクリーンとして、また三原色波長領域の光を除去するフィルターとして有用な光学膜を得ることができる。
【0088】
請求項18〜20の発明によれば、高屈折率層と低屈折率層を交互に積層した光学多層膜を備えることにより、三原色波長領域の光を反射し、それ以外の波長領域の光を透過する光学膜を得ることができる。
【0089】
請求項21、22の発明によれば、いろいろ形状の部位に貼付などの方法により容易に取り付け可能な光学膜を得ることができる。
【0090】
請求項23〜25の発明によれば、三原色波長領域の光に対して高反射特性を有し、少なくとも三原色波長領域を除く可視波長領域の光に対して高透過特性を有する光学膜を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像表示システムの一実施の形態を概略的に示す図である。
【図2】GLVを用いた回折格子型プロジェクターを概略的に示す図である。
【図3】本発明にかかるスクリーンの構成例を示す断面図である。
【図4】本発明にかかるスクリーンの光学特性を示す図である。
【図5】太陽光のスペクトルを示す図である。
【図6】図4の光学特性を有するスクリーンによる、図5のスペクトルを有する太陽光の反射強度を示す図である。
【図7】本発明にかかる光学膜の構成例を示す断面図である。
【図8】本発明にかかる光学膜の光学特性を示す図である。
【図9】図8の光学特性を有する光学膜を透過した後の太陽光のスペクトルを示す図である。
【図10】図4の光学特性を有するスクリーンによる、図9に示す光の反射強度を示す図である。
【図11】光学膜を照明本体に設ける例を示す図である。
【図12】光学膜を照明機器の外装に設ける例を示す図である。
【符号の説明】
1‥‥プロジェクター、2‥‥スクリーン、3‥‥窓、4‥‥光学膜、5‥‥太陽光、6‥‥透過光、7‥‥反射光、10‥‥レーザー発振器、13‥‥GLV、14‥‥体積型ホログラム素子、20‥‥スクリーン基板、21‥‥選択反射膜、22‥‥光拡散層、23、42‥‥保護膜、40‥‥フィルム基板、41‥‥光学多層膜
Claims (25)
- 画像光を投射する投影装置と、
前記画像光に対応する特定波長領域の光に対して高反射特性を持ち、少なくとも前記特定波長領域を除く可視波長領域の光に対して高反射特性を持たない、前記画像光により画像を表示するスクリーンと、
前記スクリーンが設置される映写環境の採光部に設けられ、少なくとも前記特定波長領域を除いた可視波長領域の光を採光する光学膜と
を備えたことを特徴とする画像表示システム。 - 前記光学膜が、前記特定波長領域の光に対して高反射特性を有し、少なくとも前記特定波長領域を除く可視波長領域の光に対して高透過特性を有することを特徴とする請求項1記載の画像表示システム。
- 前記光学膜が、高屈折率層とこれより屈折率の低い低屈折率層を交互に積層した光学多層膜を備えたことを特徴とする請求項2記載の画像表示システム。
- 前記光学多層膜の高屈折率層が酸化ニオブ、酸化タンタルまたは酸化チタンを含有し、低屈折率層が酸化ケイ素またはフッ化マグネシウムを含有することを特徴とする請求項3記載の画像表示システム。
- 前記光学多層膜が熱硬化性樹脂からなることを特徴とする請求項3記載の画像表示システム。
- 前記光学膜が、前記光学多層膜が形成される高分子基材を備えたことを特徴とする請求項3記載の画像表示システム。
- 前記高分子基材が、ポリカーボネイト、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォンまたはポリオレフィンからなることを特徴とする請求項6記載の画像表示システム。
- 前記採光部が、窓及び照明機器の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1記載の画像表示システム。
- 前記スクリーンが、前記特定波長領域の光に対して高反射特性を有し、少なくとも前記特定波長領域を除く可視波長領域の光に対して高透過特性を有する選択反射膜を備えたことを特徴とする請求項1記載の画像表示システム。
- 前記選択反射膜が、高屈折率層とこれより屈折率の低い低屈折率層を交互に積層した光学多層膜からなることを特徴とする請求項7記載の画像表示システム。
- 前記選択反射膜の高屈折率層が酸化ニオブ、酸化タンタルまたは酸化チタンを含有し、低屈折率層が酸化ケイ素またはフッ化マグネシウムを含有することを特徴とする請求項8記載の画像表示システム。
- 前記選択反射膜が熱硬化性樹脂からなることを特徴とする請求項9記載の画像表示システム。
- 前記スクリーンが、前記選択反射膜を透過した光を吸収する吸収層を備えたことを特徴とする請求項7記載の画像表示システム。
- 前記スクリーンが、
前記特定波長領域の光に対して高透過特性を有し、少なくとも前記特定波長領域を除く可視波長領域の光に対して高吸収特性を有する選択吸収層と、
前記選択吸収層を透過した光を反射する反射層と
を備えたことを特徴とする請求項1記載の画像表示システム。 - 前記選択吸収層が、前記特定波長領域以外の所定の波長領域の光に対して高吸収特性を有し、前記所定の波長領域以外の光に対して高透過特性を有する選択吸収色素を含有することを特徴とする請求項14記載の画像表示システム。
- 前記特定波長領域が、赤色光の波長領域、緑色光の波長領域及び青色光の波長領域を含むことを特徴とする請求項1記載の画像表示システム。
- 赤色、緑色及び青色の三原色波長領域の光に対して高反射特性を有し、少なくとも前記三原色波長領域を除く可視波長領域の光に対して高透過特性を有することを特徴とする光学膜。
- 高屈折率層とこれより屈折率の低い低屈折率層を交互に積層した光学多層膜を備えたことを特徴とする請求項17記載の光学膜。
- 前記光学多層膜の高屈折率層が酸化ニオブ、酸化タンタルまたは酸化チタンを含有し、低屈折率層が酸化ケイ素またはフッ化マグネシウムを含有することを特徴とする請求項18記載の光学膜。
- 前記光学多層膜が熱硬化性樹脂からなることを特徴とする請求項18記載の光学膜。
- 前記光学多層膜が形成される高分子基材を備えたことを特徴とする請求項18記載の光学膜。
- 前記高分子基材が、ポリカーボネイト、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォンまたはポリオレフィンからなることを特徴とする請求項21記載の光学膜。
- 基材上に、高屈折率層とこれより屈折率の低い低屈折率層を交互に積層して、赤色、緑色及び青色の三原色波長領域の光に対して高反射特性を有し、少なくとも前記三原色波長領域を除く可視波長領域の光に対して高透過特性を有する光学多層膜を形成する工程を含むことを特徴とする光学膜の製造方法。
- 前記光学多層膜を形成する工程が、
前記高屈折率層を酸化ニオブ、酸化タンタルまたは酸化チタンを用いてスパッタ法により成膜する工程と、
前記低屈折率層を酸化ケイ素またはフッ化マグネシウムを用いて、スパッタ法により成膜する工程と
を有することを特徴とする請求項23記載の光学膜の製造方法。 - 前記光学多層膜を形成する工程が、
基材上に、樹脂材料を塗布する工程と、
塗布された樹脂材料を加熱または紫外線照射により硬化させる工程と
を有することを特徴とする請求項23記載の光学膜の製造方法。
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-
2003
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