JP2004226098A - 流体変調式測定装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】流体変調式測定装置に関し、低濃度測定における校正を容易にして測定精度の高い測定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】試料流体を精製し測定成分を除去した流体を流体変調の基準流体とし、かつ該基準流体に高濃度流体を添加して流体をスパン流体として、装置の校正を行うことを特徴とする。ここで、高濃度流体の添加量を独立的に調整可能とすることが好適である。また、高濃度流体を、常温常圧下において安定な所定濃度の物質あるいは純物質から作製することが好適である。さらに、スパン流体を複数種有することが好ましい。
【選択図】 図1
【解決手段】試料流体を精製し測定成分を除去した流体を流体変調の基準流体とし、かつ該基準流体に高濃度流体を添加して流体をスパン流体として、装置の校正を行うことを特徴とする。ここで、高濃度流体の添加量を独立的に調整可能とすることが好適である。また、高濃度流体を、常温常圧下において安定な所定濃度の物質あるいは純物質から作製することが好適である。さらに、スパン流体を複数種有することが好ましい。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、流体変調式測定装置に関するもので、特に、装置校正時のスパン流体が入手困難な大気中の低濃度成分の測定装置として有用である。
【0002】
【従来の技術】
一般に、各種試料中の特定成分の測定においては、ダストフィルタを用いた粉塵の除去や除湿器を用いた水分の除去によって、クリーンな状態で試料を測定部に導入することで、ダストの付着や凝縮水の発生に伴う測定部での腐食や汚染を防止し、長期間安定した条件で測定できるようにしている。また、定期的に測定部にゼロ流体およびスパン流体を導入し、計器校正をすることで、測定値の信頼性を維持している。
【0003】
以下、こうした測定装置の具体例として、大気中における窒素酸化物(以下「NOx」という。)測定装置の従来技術について述べる。大気中のNOx測定技術は、わが国JIS規格により概略が示され、自動計測器として、吸光光度法および化学発光法(以下「CLD法」という。)が挙げられているが、ここでは、CLD法による大気中のNOx測定装置について説明する(例えば非特許文献1等)。
【0004】
図6に、CLD法による大気中NOx自動計測器の構成例を示す。試料大気入口61から吸引採取された試料は、測定部(反応槽)5の後段に設けられた吸引ポンプ(試料大気吸引ポンプ)6によって吸引され、ダストフィルタ62によって清浄にした後、流量制御部63、電磁弁(切換弁)64を経由して測定部5に導入される。電磁弁64と測定部5の中間にはコンバータ65が設けられており、大気中の二酸化窒素(以下「NO2 」という。)を一酸化窒素(以下「NO 」という。)に変換しトータルNOxとして測定する場合に接続され、NOのみの測定時には流路抵抗66に接続される。このように流路を切換える構成によって、NO、NO2 およびNOxの測定が可能となる。ここで、測定部5には、別途オゾン(以下「O3 」という。)源ガスがオゾン発生器67を経由して導入 される。測定部5を通過したガスは必要な処理、例えば残留オゾンを分解処理する(分解器は図示せず)、等を行った後排気ダクトなどに排出される。測定部5では、以下の反応によって生じる光量(hν)を光電測光部(測光部)68によって検知することで、試料中のNO濃度を測定することができる。
NO + O3 → NO2 * + O2
NO2 * → NO2 + hν
測光部68の出力は増幅器69を経由して指示記録計70によって明示される。この測定法は、広い濃度範囲で濃度−出力の関係が直線になるという優れた特性を有することが1つの特長である。
【0005】
このとき、計測器のゼロ点の校正用としてゼロガスを測定部5に導入してゼロ調整を行い、検出感度の校正用として所定濃度のスパンガスを測定部5に導入して予め設定された所定濃度に対応する出力値になるようにスパン調整を行っている。校正用ガス導入口は開示されていないが、一般に図5では、(a)部や(b)部から導入される。JIS規格にも示されるようにゼロガスは計測器の測定濃度範囲(以下「測定レンジ」という。)の最大目盛値(以下「FS」という。)の0%(NOを含まないガス)、スパンガスは測定レンジの80〜100%の濃度のNOを含むガスを用いることが一般的である。
【0006】
また、大気中の二酸化硫黄(以下「SO2 」という。)測定装置についても、わが国JIS規格により概略が示され、自動計測器として、溶液導電率法および紫外線蛍光方式(以下「UVF法」という。)が挙げられている。図7に、UVF法による大気中二酸化硫黄自動計測器の構成例を示す(例えば非特許文献2等)。基本的な構成は上記と同様であるが、試料大気入口61から吸引採取された試料は、ダストフィルタ62でダストをほぼ取り除き、流量計71、スクラバー72を経由して測定部(蛍光室)5に導入される。スクラバー72は、試料中の芳香族炭化水素を除去するためのもので、必要に応じて用いられる。測定部5内では、放電等によって光源部73から発せられた紫外線を受けた試料が励起状態になった後、基底状態に戻るときに発せられる紫外線領域の光(hν’)を、測光部68で検出する。
SO2 + hν → SO2 *
SO2 * → SO2 + hν’
このときも、上記同様、ゼロガスおよびスパンガスを測定部5に導入してゼロ調整およびスパン調整を行っている。
【0007】
また、測定装置の長期安定性を担保すべく、近年、流体変調式分析法が多用されている。流体切換機構を用いて試料流体と基準(比較)流体を一定周期で切換えて変調させる測定器で、試料セル内での光の吸収量の変化分のみを交流信号として取り出すことができことからゼロ点の変動が原理的にもなく指示の高い安定性と光学的ロスが少なく高感度であることが知られている。具体的にCLDを例にとると、図8に例示するように、測定部5に繋がる電磁弁3に試料流体と基準流体を接続し、一定周期で該電磁弁3をON−OFFすることで、試料流体と基準流体が交互断続的に測定部5に導入されることになる。このとき、測光部67は、両流体の測定部5内での発光量の差のみを検出することになり、バックグランドからの迷光やダークカレントの変化は感知しないため、光学的なオフセットの発生がなく原理的にもゼロ点の変化がない。通常変調周期は0.5〜10Hzが多く用いられている。
【0008】
なお、上記においては、大気中のNOx測定装置およびSO2 測定装置を例示したが、アンモニア(NH3 )や塩化水素(HCl)など他の成分の測定装置についても同様の校正方法が用いられる。
【0009】
【非特許文献1】
日本工業規格「JIS B7953−1997」
【非特許文献2】
日本工業規格「JIS B7952−1996」
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記測定装置では、以下のような課題が生じることがある。
【0010】
通常、大気中に存在するNOx濃度は10〜100ppb程度(車道付近は、その10〜100倍程度になることがある。)、SO2 濃度は1〜10ppb程度といわれ、測定レンジとしては、「0−50ppbレンジ」や「0−100ppbレンジ」などが多く用いられているが、こうした低濃度の測定レンジに対応する校正流体、特にスパン流体の作製は非常に困難である。現状、10〜100倍の作製可能な濃度のスパン流体を用いて、そのスパン流体濃度に合った測定レンジで校正し、実測時に低濃度レンジに切換えて測定する方法が採用されている。しかしながら、測定装置の測定精度を確保するためには、実測の測定レンジと校正時の測定レンジが同じであることが望ましく、かかる状態を如何に確保できるかが課題の1つとなっている。
【0011】
また、NH3 やNO2 のように吸着性の強い成分については、濃度だけでなく、例えば高圧ガス容器から校正ガスを導入するまでの圧力調整部や配管での残留成分によるオーバーシュートあるいは応答遅れによる校正の再現性不良による測定誤差の発生が無視できない。特に、低濃度の高圧ガスを用いた場合における影響が大きく、実質的に低濃度の校正ガスは使用できないという課題がある。さらに、HClや塩素(Cl2 )のように測定対象物質自体の反応性が高く安定性が悪い成分の場合などにおいては、ガス化した状態で長期間同一濃度を維持することはできず、実質的に校正ガスは使用できないという課題がある。
【0012】
なお、ここで、低濃度とは、上記のように高圧ガスや標準溶液として作製可能かつ3〜6月間程度濃度の安定性を維持できる下限界程度の濃度をいい、高濃度とは、その濃度の10〜100倍程度の濃度をいう。
【0013】
以上のような課題に対して、例えば、別途標準流体発生器を設けることも考えられるが、長期安定な発生器は高価であり付帯設備を必要とする場合もあり装置の煩雑さや保守面の負担増加といった別の問題の発生の可能性も大きく、装置の総合性能の面からは、新たな課題を抱えることとなる。
【0014】
特に、測定部に吸光式分析法を用いた場合にあっては、標準流体のベース成分(例えば、大気測定装置の場合における窒素(以下「N2 」という。)ガスが相当する。)と試料流体のベース成分(例えば、大気測定装置の場合における空気が相当する。)が異なると検出感度が変化する場合があることが知られており、厳しい測定精度の要求される測定装置にあっては無視できない誤差を生み出すこととなる。こうした誤差の低減も大きな課題といえる。
【0015】
以上、大気中の成分測定装置を中心に説明したが、近年、半導体産業では、ウエハ表面の汚染防止のためにクリーンルーム内においてもでも高精度の成分測定装置、特に被毒作用の強いS分やCl分については、非常に低濃度での管理を必要とすることから同様に精度の高い測定装置が要求されている。
【0016】
そこで本発明は、前記問題点を解決し、極力追加的な要素なく、低濃度測定における校正を容易にして測定精度の高い測定装置を提供することを目的とする。特に、大気中のNOxやSO2 測定装置のようにスパン流体が入手困難な場合における実測レンジでの校正手段を確保することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、以下に示す測定装置により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0018】
流体変調式の試料中の成分濃度測定装置であって、試料流体を精製し測定成分を除去した流体を流体変調の基準流体とし、かつ該基準流体に高濃度流体を添加して流体をスパン流体として、装置の校正を行うことを特徴とする。本発明を用いることで、追加的な要素なく、低濃度測定における校正を容易にして測定精度の高い測定装置を提供することができる。
【0019】
また、前記装置の校正において、前記高濃度流体の添加量を独立的に調整可能とすることが好適である。試料中の測定成分濃度の変化に対応したスパン流体の作製を行い、より実測条件に近い測定レンジでの校正・計測を可能とすることができ、測定精度の高い測定装置を提供することができる。
【0020】
さらに、前記装置の校正において、前記高濃度流体を常温常圧下において安定な所定濃度の物質あるいは純物質から作製することが好適である。安定な物質あるいは純物質から作製した高純度流体を希釈して所望の濃度のスパン流体を装置内で作製することで、従来長期安定性の確保が困難であった測定対象を精度よく測定することができる。
【0021】
また、前記装置の校正において、前記スパン流体を複数種有することが好適である。測定レンジに対応したスパン流体を準備するとともに、基準流体自体の精製状態を確認することができ、より測定精度の高い測定装置を提供することができる。
【0022】
【発明の実施の態様】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明は、流体変調式の試料中の成分濃度測定装置であって、試料流体を精製し測定成分を除去した流体を流体変調の基準流体とし、かつ該基準流体に高濃度流体を添加して流体をスパン流体として、装置の校正を行うことを特徴とする。特に、本発明は、大気中のNOxやSO2 測定装置のようにスパン流体が入手 困難な場合における実測レンジでの校正手段を確保する場合に適している。以下、具体的な実施態様として、CLD法による大気中のNOx測定装置に本発明を適用した場合を、その一例として説明する。
【0023】
つまり、大気中のNOx自動計測器において、
(1)流体変調式のCLD法を採用する。
(2)基準ガスとして、試料中のNOを除去あるいはNO2 等CLD法では検 出できない他の物質に変換処理したガスを用いる。
(3)スパンガスとして、上記基準ガスに高濃度のNOを所定量添加して作製したガスを用いる。
(4)通常の測定時は、試料ガスと基準ガスの切換を行う。
(5)ゼロ校正時は、ゼロガスと基準ガスの切換、または切換を停止し基準ガスを連続的に測定部に導入する。
(6)スパン校正時は、(3)において作製したスパンガスと基準ガスの切換を行う。
ことで、追加的な要素なく、低濃度測定における校正を容易にして測定精度の高い測定装置が可能となる。
【0024】
図1(A)は、本発明の実施態様の一例を示すもので、既述の図5〜7を基本として、本願に必要な要素を中心に試料を含む各流体の流れを示している。ダストフィルタやコンバータなど(図示せず)で処理された試料は、校正用切換弁2および電磁弁10のOFF状態において、校正用切換弁2、電磁弁3および絞り4を介して、上述同様、測定部5の後段の設けられた吸引ポンプ6および圧力調整部7によって一定流量吸引されて測定部(CLD)5に導入される。一方、測定部5を排出したガスの一部は、電磁弁3のON状態において、精製器8、電磁弁3および絞り4を介して基準ガスとして測定部5に導入される。また、校正用切換弁2がON状態かつ電磁弁10のON状態においては、上記試料ガスの代わりにスパンガス11が、電磁弁10および絞り9を経由して(a)で希釈され、校正用切換弁2、電磁弁3および絞り4を介して、測定部5に導入されることになる。
【0025】
上記の構成を採ることで、基準流体によって希釈されたスパン流体は、常圧に近い条件で測定部5に導入されることとなり、配管系での吸着や残留による悪影響を受けることがなくなり、測定精度の向上を図ることができる。また、既述のように、測定部5に吸光式分析法を用いた場合には、標準流体と試料流体のベース成分の相違によって検出感度が変化する場合があることが知られているが、上記構成の測定装置にあっては、基準流体、試料流体および校正流体のすべてが、同一成分をベースとしており、こうした問題の発生はない。従って、本発明に係る測定装置では、こうした誤差を除去することができることから、厳しい測定精度の要求される場合であっても、十分対応することができる。
【0026】
このときの各弁の動作と測定部5の内部に存在するガスの状態をまとめると表1のようになる。
【表1】
通常の測定時は、校正用切換弁2および電磁弁10をOFFとし、電磁弁3を一定周期でON−OFFすることで(状態1と状態2)、基準ガスと試料ガスが交互に測定部に導入されることになり、試料中のNOによる測定部5内での発光に基づく一定周期の変調信号を取り出すことができることとなる。
また、ゼロ校正時は、校正用切換弁2をON、電磁弁10をOFFとし、電磁弁3を一定周期でON−OFFするが(状態3と状態4)、基準ガスが別流路を介して交互に測定部に導入されることになり、測定部5内での発光はなく、ゼロ信号を取り出すことができることとなる。
さらに、スパン校正時は、校正用切換弁2および電磁弁10をONとし、電磁弁3を一定周期でON−OFFすることで(状態5と状態6)、基準ガスとスパンガスが交互に測定部に導入されることになり、スパンガス中のNOの発光に基づく一定周期の変調信号を取り出すことができることとなる。
【0027】
ここで、測定部5への導入ガス流量は、一般に、0.5〜3l/min程度に制御すべく圧力調整部7と絞り4との組合せで決定されるが、これに限定されるものでないことはいうまでもない。また、精製器8としては、一般には、活性炭や活性シリカ系あるいは活性アルミナ系などの物理吸着剤、共存する酸性あるいはアルカリ性成分と反応する化学吸着剤、共存成分と酸化あるいは還元反応を生じせしめる触媒や還元性物質あるいは酸化性物質、所定の容量の空間における熱あるいは紫外線などの電磁波の付加手段などが用いられるが、当然のことながら、目的とする測定成分の除去が可能であれば手段を問うものではない。
【0028】
なお、校正用流体の流量や装置配管構成上の関係などの理由によりスパン流体添加後の流体中での混合が不十分な場合は、図1(B)に示すように、(a)部と校正用切換弁2との間に、別途混合部12を設けることも有効である。ただし、一般には吸引ポンプの吐出側に脈動が生じることから、この脈流を利用して強制的に混合を図ることも可能であり、かかる場合には混合部12は省略が可能である。
【0029】
また、スパン流体の添加については、図1(A)に示す位置に限られず、図2(A)ないしは(C)に示す位置とすることも可能である。この場合、図1に示す校正用切換弁2が不要となるとともに、測定部5により近接することでスパン校正時の応答性がよくなるというメリットも生じる。このときの各弁の動作と測定部5の内部に存在するガスの状態をまとめると表2のようになる。
【表2】
各弁の校正時の動作が表1と異なるが、測定部5における状態は同等であり、図1と同じ校正が可能となる。
【0030】
また、前記装置の校正において、前記高濃度流体の添加量を独立的に調整可能とすることが好適である。試料中の測定成分濃度の変化に対応したスパン流体の作製を行い、より実測条件に近い測定レンジでの校正・計測を可能とすることができ、測定精度の高い測定装置を提供することができる。特に、本発明は、車道周辺における大気中のNOx測定装置のように、車輌の通行状態によって短時間でNOx濃度が大きく変化する試料ガスを測定する場合に適している。かかる場合にあっては、NOx濃度によって測定レンジを変更することがあり、各測定レンジに対応したスパン流体を準備することができる。
【0031】
図3は、本発明の別の実施態様の一例を示すもので、既述の図1と基本的に同様であるが、高濃度NOxの添加ラインに外部制動式圧力調整器13を設け、添加量を独立的に調整可能とした点が特徴である。当初の圧力設定条件で添加して校正を行った後に、所望の濃度となるように異なる圧力に設定し、次回以降の校正を該条件にて行うことができる。制御部14には測定器5の出力が入力されており、前記所望の濃度値を制御部14に入力すれば、測定器5の出力を基準に圧力調整器13を制御し添加量を増減させることで所望のスパン流体を測定部5に供給することができる。
【0032】
さらに、前記装置の校正において、前記高濃度流体を常温常圧下において安定な所定濃度の物質あるいは純物質から作製することが好適である。特に、本発明は、HClやCl2 のように測定対象物質自体の反応性が高く安定性が悪い成分の場合に適している。かかる場合にあっては、安定な物質あるいは純物質を希釈してスパン流体を作製することで、従来長期安定性の確保が困難であった測定対象を精度よく測定することができる。
【0033】
本発明の別の実施態様の一例の一部を図4に示す。他の構成は、既述の図1と基本的に同様であるが、HClのように通常液体で安定的に取り扱われる物質を恒温槽15に貯留しておき、予備管16を介して導入されるパーメイションチューブ17内に浸透したHClを所定濃度含む流体を高濃度流体として基準流体に添加し、スパン流体を作製する点が特徴である。一般に、パーメイションチューブ17内の特定物質の濃度は、温度・流量・圧力によって定まるものであり、所望の濃度の高濃度流体は、恒温槽15の温度、基準流体の流量および圧力を調整して作製される。このような構成により、安定したスパン流体を測定器5に導入することができ、従来困難であった校正を精度よく行うことができる。
【0034】
また、前記装置の校正において、前記スパン流体を複数種有することが好適である。特に、本発明は、車道周辺における大気中のNOx測定装置のように、車輌の走行状態によってNOx濃度が大きく変化する試料ガスを測定する場合に適している。かかる場合にあっては、NOx濃度によって測定レンジを変更することがあり、各測定レンジに対応したスパン流体を準備することができる。また、2種類以上の既知の希釈率によるスパン流体の測定出力から基準流体自体の精製状態を確認することができ、精製器の保守の必要性あるいは配管系のリークなどの不具合を検知することができる。
【0035】
図5(A)は、本発明の別の実施態様の一例を示すもので、既述の図1と基本的に同様であるが、高濃度NOxの添加ラインを複数設けた点が特徴である。上述の(a)点だけでなく、(b)点・・(n)点から添加されることで複数のスパン流体を測定部5に供給することができる。これによって、複数の測定レンジに対応したスパン流体によってスパン校正を行うことができる。なお、このとき、必ずしも各ラインの電磁弁10、10’・・・10(n) を各レンジに対応させて独立的にONにする必要はなく、ある測定レンジでは、電磁弁10と10’、あるいは、他の2以上を組合せて同時にONにすることができる。
【0036】
また、例えば、図5(B)に示すように、(a)と(b)の2種類の既知の希釈率によるスパン流体を測定部5に導入した場合には、その測定出力から現状のゼロ点を外挿することができる。つまり、測定部5が直線性を有しており、本来基準流体中にNOが存在していなければ、両方のスパン流体に対する出力を直線で結ぶとゼロ流体に相当する添加量ゼロの時の出力はゼロとなるべきである。しかし、基準流体中にNOが存在していると、図5(B)のように、その濃度pに相当する出力が生じる。逆に、スパン校正用の配管系にリークがあれば、指示は負方向の出力となる場合があり、不具合を検知することができる。
【0037】
別途純粋のゼロ流体を準備しゼロ校正時に測定すれば、基準流体に残留しているNO成分つまり基準流体の精製状態を確認することができるが、本発明では、こうしたゼロ流体の準備を必要とせずに精製器の保守の必要性あるいは配管系のリークなどの不具合を検知することができる。
【0038】
以上は、大気中のNOx測定装置について述べたが、同様の技術は、大気中の他の成分測定装置のみならず、各種プラントやプロセスについても適用されるものであり、また、測定部もCLD法に限定されるものでもない。例えば、燃焼炉の排ガス中のHClやCl2 あるいは二酸化窒素(NO2 )測定装置として、測定部に非分散紫外線吸収法(NDUV)や非分散赤外線吸収法(NDIR)を用いた場合にも、本発明の適用が可能である。
【0039】
また、本発明は、上記のような気体の測定だけでなく、液体等の成分測定や、また、各種測定原理にも適用の可能性があり、上記に限定されるものでないことはいうまでもない。
【0040】
【発明の効果】
以上のように、本発明を適用した流体変調式の試料中の成分濃度測定装置であっては、追加的な要素なく、低濃度測定における校正を容易にして測定精度の高い測定装置を提供することができる。
【0041】
また、このとき、高濃度流体の添加量を独立的に調整可能とし、試料中の測定成分濃度の変化に対応したスパン流体の作製を行うことで、より実測条件に近い測定レンジでの校正・計測を可能とすることができ、測定精度の高い測定装置を提供することができる。
【0042】
さらに、安定な物質あるいは純物質から作製した高純度流体を希釈して所望の濃度のスパン流体を装置内で作製することで、従来長期安定性の確保が困難であった測定対象を精度よく測定することができる。
【0043】
また、スパン流体を複数種有することによって、測定レンジに対応したスパン流体を準備するとともに、基準流体自体の精製状態を確認することができ、より測定精度の高い測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施態様の一例を示す説明図
【図2】本発明の別の実施態様の一例を示す説明図
【図3】本発明の別の実施態様の一例を示す説明図
【図4】本発明の別の実施態様の一例の一部を示す説明図
【図5】本発明の別の実施態様の一例を示す説明図
【図6】従来技術の実施態様の一例を示す説明図
【図7】従来技術の他の実施態様の一例を示す説明図
【図8】従来技術の他の実施態様の一例を示す説明図
【符号の説明】
2 校正用切換弁
3、10 電磁弁
4、9 絞り
5 測定部
6 吸引ポンプ
8 精製器
11 高濃度流体(スパンガス)
【発明の属する技術分野】
本発明は、流体変調式測定装置に関するもので、特に、装置校正時のスパン流体が入手困難な大気中の低濃度成分の測定装置として有用である。
【0002】
【従来の技術】
一般に、各種試料中の特定成分の測定においては、ダストフィルタを用いた粉塵の除去や除湿器を用いた水分の除去によって、クリーンな状態で試料を測定部に導入することで、ダストの付着や凝縮水の発生に伴う測定部での腐食や汚染を防止し、長期間安定した条件で測定できるようにしている。また、定期的に測定部にゼロ流体およびスパン流体を導入し、計器校正をすることで、測定値の信頼性を維持している。
【0003】
以下、こうした測定装置の具体例として、大気中における窒素酸化物(以下「NOx」という。)測定装置の従来技術について述べる。大気中のNOx測定技術は、わが国JIS規格により概略が示され、自動計測器として、吸光光度法および化学発光法(以下「CLD法」という。)が挙げられているが、ここでは、CLD法による大気中のNOx測定装置について説明する(例えば非特許文献1等)。
【0004】
図6に、CLD法による大気中NOx自動計測器の構成例を示す。試料大気入口61から吸引採取された試料は、測定部(反応槽)5の後段に設けられた吸引ポンプ(試料大気吸引ポンプ)6によって吸引され、ダストフィルタ62によって清浄にした後、流量制御部63、電磁弁(切換弁)64を経由して測定部5に導入される。電磁弁64と測定部5の中間にはコンバータ65が設けられており、大気中の二酸化窒素(以下「NO2 」という。)を一酸化窒素(以下「NO 」という。)に変換しトータルNOxとして測定する場合に接続され、NOのみの測定時には流路抵抗66に接続される。このように流路を切換える構成によって、NO、NO2 およびNOxの測定が可能となる。ここで、測定部5には、別途オゾン(以下「O3 」という。)源ガスがオゾン発生器67を経由して導入 される。測定部5を通過したガスは必要な処理、例えば残留オゾンを分解処理する(分解器は図示せず)、等を行った後排気ダクトなどに排出される。測定部5では、以下の反応によって生じる光量(hν)を光電測光部(測光部)68によって検知することで、試料中のNO濃度を測定することができる。
NO + O3 → NO2 * + O2
NO2 * → NO2 + hν
測光部68の出力は増幅器69を経由して指示記録計70によって明示される。この測定法は、広い濃度範囲で濃度−出力の関係が直線になるという優れた特性を有することが1つの特長である。
【0005】
このとき、計測器のゼロ点の校正用としてゼロガスを測定部5に導入してゼロ調整を行い、検出感度の校正用として所定濃度のスパンガスを測定部5に導入して予め設定された所定濃度に対応する出力値になるようにスパン調整を行っている。校正用ガス導入口は開示されていないが、一般に図5では、(a)部や(b)部から導入される。JIS規格にも示されるようにゼロガスは計測器の測定濃度範囲(以下「測定レンジ」という。)の最大目盛値(以下「FS」という。)の0%(NOを含まないガス)、スパンガスは測定レンジの80〜100%の濃度のNOを含むガスを用いることが一般的である。
【0006】
また、大気中の二酸化硫黄(以下「SO2 」という。)測定装置についても、わが国JIS規格により概略が示され、自動計測器として、溶液導電率法および紫外線蛍光方式(以下「UVF法」という。)が挙げられている。図7に、UVF法による大気中二酸化硫黄自動計測器の構成例を示す(例えば非特許文献2等)。基本的な構成は上記と同様であるが、試料大気入口61から吸引採取された試料は、ダストフィルタ62でダストをほぼ取り除き、流量計71、スクラバー72を経由して測定部(蛍光室)5に導入される。スクラバー72は、試料中の芳香族炭化水素を除去するためのもので、必要に応じて用いられる。測定部5内では、放電等によって光源部73から発せられた紫外線を受けた試料が励起状態になった後、基底状態に戻るときに発せられる紫外線領域の光(hν’)を、測光部68で検出する。
SO2 + hν → SO2 *
SO2 * → SO2 + hν’
このときも、上記同様、ゼロガスおよびスパンガスを測定部5に導入してゼロ調整およびスパン調整を行っている。
【0007】
また、測定装置の長期安定性を担保すべく、近年、流体変調式分析法が多用されている。流体切換機構を用いて試料流体と基準(比較)流体を一定周期で切換えて変調させる測定器で、試料セル内での光の吸収量の変化分のみを交流信号として取り出すことができことからゼロ点の変動が原理的にもなく指示の高い安定性と光学的ロスが少なく高感度であることが知られている。具体的にCLDを例にとると、図8に例示するように、測定部5に繋がる電磁弁3に試料流体と基準流体を接続し、一定周期で該電磁弁3をON−OFFすることで、試料流体と基準流体が交互断続的に測定部5に導入されることになる。このとき、測光部67は、両流体の測定部5内での発光量の差のみを検出することになり、バックグランドからの迷光やダークカレントの変化は感知しないため、光学的なオフセットの発生がなく原理的にもゼロ点の変化がない。通常変調周期は0.5〜10Hzが多く用いられている。
【0008】
なお、上記においては、大気中のNOx測定装置およびSO2 測定装置を例示したが、アンモニア(NH3 )や塩化水素(HCl)など他の成分の測定装置についても同様の校正方法が用いられる。
【0009】
【非特許文献1】
日本工業規格「JIS B7953−1997」
【非特許文献2】
日本工業規格「JIS B7952−1996」
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記測定装置では、以下のような課題が生じることがある。
【0010】
通常、大気中に存在するNOx濃度は10〜100ppb程度(車道付近は、その10〜100倍程度になることがある。)、SO2 濃度は1〜10ppb程度といわれ、測定レンジとしては、「0−50ppbレンジ」や「0−100ppbレンジ」などが多く用いられているが、こうした低濃度の測定レンジに対応する校正流体、特にスパン流体の作製は非常に困難である。現状、10〜100倍の作製可能な濃度のスパン流体を用いて、そのスパン流体濃度に合った測定レンジで校正し、実測時に低濃度レンジに切換えて測定する方法が採用されている。しかしながら、測定装置の測定精度を確保するためには、実測の測定レンジと校正時の測定レンジが同じであることが望ましく、かかる状態を如何に確保できるかが課題の1つとなっている。
【0011】
また、NH3 やNO2 のように吸着性の強い成分については、濃度だけでなく、例えば高圧ガス容器から校正ガスを導入するまでの圧力調整部や配管での残留成分によるオーバーシュートあるいは応答遅れによる校正の再現性不良による測定誤差の発生が無視できない。特に、低濃度の高圧ガスを用いた場合における影響が大きく、実質的に低濃度の校正ガスは使用できないという課題がある。さらに、HClや塩素(Cl2 )のように測定対象物質自体の反応性が高く安定性が悪い成分の場合などにおいては、ガス化した状態で長期間同一濃度を維持することはできず、実質的に校正ガスは使用できないという課題がある。
【0012】
なお、ここで、低濃度とは、上記のように高圧ガスや標準溶液として作製可能かつ3〜6月間程度濃度の安定性を維持できる下限界程度の濃度をいい、高濃度とは、その濃度の10〜100倍程度の濃度をいう。
【0013】
以上のような課題に対して、例えば、別途標準流体発生器を設けることも考えられるが、長期安定な発生器は高価であり付帯設備を必要とする場合もあり装置の煩雑さや保守面の負担増加といった別の問題の発生の可能性も大きく、装置の総合性能の面からは、新たな課題を抱えることとなる。
【0014】
特に、測定部に吸光式分析法を用いた場合にあっては、標準流体のベース成分(例えば、大気測定装置の場合における窒素(以下「N2 」という。)ガスが相当する。)と試料流体のベース成分(例えば、大気測定装置の場合における空気が相当する。)が異なると検出感度が変化する場合があることが知られており、厳しい測定精度の要求される測定装置にあっては無視できない誤差を生み出すこととなる。こうした誤差の低減も大きな課題といえる。
【0015】
以上、大気中の成分測定装置を中心に説明したが、近年、半導体産業では、ウエハ表面の汚染防止のためにクリーンルーム内においてもでも高精度の成分測定装置、特に被毒作用の強いS分やCl分については、非常に低濃度での管理を必要とすることから同様に精度の高い測定装置が要求されている。
【0016】
そこで本発明は、前記問題点を解決し、極力追加的な要素なく、低濃度測定における校正を容易にして測定精度の高い測定装置を提供することを目的とする。特に、大気中のNOxやSO2 測定装置のようにスパン流体が入手困難な場合における実測レンジでの校正手段を確保することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、以下に示す測定装置により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0018】
流体変調式の試料中の成分濃度測定装置であって、試料流体を精製し測定成分を除去した流体を流体変調の基準流体とし、かつ該基準流体に高濃度流体を添加して流体をスパン流体として、装置の校正を行うことを特徴とする。本発明を用いることで、追加的な要素なく、低濃度測定における校正を容易にして測定精度の高い測定装置を提供することができる。
【0019】
また、前記装置の校正において、前記高濃度流体の添加量を独立的に調整可能とすることが好適である。試料中の測定成分濃度の変化に対応したスパン流体の作製を行い、より実測条件に近い測定レンジでの校正・計測を可能とすることができ、測定精度の高い測定装置を提供することができる。
【0020】
さらに、前記装置の校正において、前記高濃度流体を常温常圧下において安定な所定濃度の物質あるいは純物質から作製することが好適である。安定な物質あるいは純物質から作製した高純度流体を希釈して所望の濃度のスパン流体を装置内で作製することで、従来長期安定性の確保が困難であった測定対象を精度よく測定することができる。
【0021】
また、前記装置の校正において、前記スパン流体を複数種有することが好適である。測定レンジに対応したスパン流体を準備するとともに、基準流体自体の精製状態を確認することができ、より測定精度の高い測定装置を提供することができる。
【0022】
【発明の実施の態様】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明は、流体変調式の試料中の成分濃度測定装置であって、試料流体を精製し測定成分を除去した流体を流体変調の基準流体とし、かつ該基準流体に高濃度流体を添加して流体をスパン流体として、装置の校正を行うことを特徴とする。特に、本発明は、大気中のNOxやSO2 測定装置のようにスパン流体が入手 困難な場合における実測レンジでの校正手段を確保する場合に適している。以下、具体的な実施態様として、CLD法による大気中のNOx測定装置に本発明を適用した場合を、その一例として説明する。
【0023】
つまり、大気中のNOx自動計測器において、
(1)流体変調式のCLD法を採用する。
(2)基準ガスとして、試料中のNOを除去あるいはNO2 等CLD法では検 出できない他の物質に変換処理したガスを用いる。
(3)スパンガスとして、上記基準ガスに高濃度のNOを所定量添加して作製したガスを用いる。
(4)通常の測定時は、試料ガスと基準ガスの切換を行う。
(5)ゼロ校正時は、ゼロガスと基準ガスの切換、または切換を停止し基準ガスを連続的に測定部に導入する。
(6)スパン校正時は、(3)において作製したスパンガスと基準ガスの切換を行う。
ことで、追加的な要素なく、低濃度測定における校正を容易にして測定精度の高い測定装置が可能となる。
【0024】
図1(A)は、本発明の実施態様の一例を示すもので、既述の図5〜7を基本として、本願に必要な要素を中心に試料を含む各流体の流れを示している。ダストフィルタやコンバータなど(図示せず)で処理された試料は、校正用切換弁2および電磁弁10のOFF状態において、校正用切換弁2、電磁弁3および絞り4を介して、上述同様、測定部5の後段の設けられた吸引ポンプ6および圧力調整部7によって一定流量吸引されて測定部(CLD)5に導入される。一方、測定部5を排出したガスの一部は、電磁弁3のON状態において、精製器8、電磁弁3および絞り4を介して基準ガスとして測定部5に導入される。また、校正用切換弁2がON状態かつ電磁弁10のON状態においては、上記試料ガスの代わりにスパンガス11が、電磁弁10および絞り9を経由して(a)で希釈され、校正用切換弁2、電磁弁3および絞り4を介して、測定部5に導入されることになる。
【0025】
上記の構成を採ることで、基準流体によって希釈されたスパン流体は、常圧に近い条件で測定部5に導入されることとなり、配管系での吸着や残留による悪影響を受けることがなくなり、測定精度の向上を図ることができる。また、既述のように、測定部5に吸光式分析法を用いた場合には、標準流体と試料流体のベース成分の相違によって検出感度が変化する場合があることが知られているが、上記構成の測定装置にあっては、基準流体、試料流体および校正流体のすべてが、同一成分をベースとしており、こうした問題の発生はない。従って、本発明に係る測定装置では、こうした誤差を除去することができることから、厳しい測定精度の要求される場合であっても、十分対応することができる。
【0026】
このときの各弁の動作と測定部5の内部に存在するガスの状態をまとめると表1のようになる。
【表1】
通常の測定時は、校正用切換弁2および電磁弁10をOFFとし、電磁弁3を一定周期でON−OFFすることで(状態1と状態2)、基準ガスと試料ガスが交互に測定部に導入されることになり、試料中のNOによる測定部5内での発光に基づく一定周期の変調信号を取り出すことができることとなる。
また、ゼロ校正時は、校正用切換弁2をON、電磁弁10をOFFとし、電磁弁3を一定周期でON−OFFするが(状態3と状態4)、基準ガスが別流路を介して交互に測定部に導入されることになり、測定部5内での発光はなく、ゼロ信号を取り出すことができることとなる。
さらに、スパン校正時は、校正用切換弁2および電磁弁10をONとし、電磁弁3を一定周期でON−OFFすることで(状態5と状態6)、基準ガスとスパンガスが交互に測定部に導入されることになり、スパンガス中のNOの発光に基づく一定周期の変調信号を取り出すことができることとなる。
【0027】
ここで、測定部5への導入ガス流量は、一般に、0.5〜3l/min程度に制御すべく圧力調整部7と絞り4との組合せで決定されるが、これに限定されるものでないことはいうまでもない。また、精製器8としては、一般には、活性炭や活性シリカ系あるいは活性アルミナ系などの物理吸着剤、共存する酸性あるいはアルカリ性成分と反応する化学吸着剤、共存成分と酸化あるいは還元反応を生じせしめる触媒や還元性物質あるいは酸化性物質、所定の容量の空間における熱あるいは紫外線などの電磁波の付加手段などが用いられるが、当然のことながら、目的とする測定成分の除去が可能であれば手段を問うものではない。
【0028】
なお、校正用流体の流量や装置配管構成上の関係などの理由によりスパン流体添加後の流体中での混合が不十分な場合は、図1(B)に示すように、(a)部と校正用切換弁2との間に、別途混合部12を設けることも有効である。ただし、一般には吸引ポンプの吐出側に脈動が生じることから、この脈流を利用して強制的に混合を図ることも可能であり、かかる場合には混合部12は省略が可能である。
【0029】
また、スパン流体の添加については、図1(A)に示す位置に限られず、図2(A)ないしは(C)に示す位置とすることも可能である。この場合、図1に示す校正用切換弁2が不要となるとともに、測定部5により近接することでスパン校正時の応答性がよくなるというメリットも生じる。このときの各弁の動作と測定部5の内部に存在するガスの状態をまとめると表2のようになる。
【表2】
各弁の校正時の動作が表1と異なるが、測定部5における状態は同等であり、図1と同じ校正が可能となる。
【0030】
また、前記装置の校正において、前記高濃度流体の添加量を独立的に調整可能とすることが好適である。試料中の測定成分濃度の変化に対応したスパン流体の作製を行い、より実測条件に近い測定レンジでの校正・計測を可能とすることができ、測定精度の高い測定装置を提供することができる。特に、本発明は、車道周辺における大気中のNOx測定装置のように、車輌の通行状態によって短時間でNOx濃度が大きく変化する試料ガスを測定する場合に適している。かかる場合にあっては、NOx濃度によって測定レンジを変更することがあり、各測定レンジに対応したスパン流体を準備することができる。
【0031】
図3は、本発明の別の実施態様の一例を示すもので、既述の図1と基本的に同様であるが、高濃度NOxの添加ラインに外部制動式圧力調整器13を設け、添加量を独立的に調整可能とした点が特徴である。当初の圧力設定条件で添加して校正を行った後に、所望の濃度となるように異なる圧力に設定し、次回以降の校正を該条件にて行うことができる。制御部14には測定器5の出力が入力されており、前記所望の濃度値を制御部14に入力すれば、測定器5の出力を基準に圧力調整器13を制御し添加量を増減させることで所望のスパン流体を測定部5に供給することができる。
【0032】
さらに、前記装置の校正において、前記高濃度流体を常温常圧下において安定な所定濃度の物質あるいは純物質から作製することが好適である。特に、本発明は、HClやCl2 のように測定対象物質自体の反応性が高く安定性が悪い成分の場合に適している。かかる場合にあっては、安定な物質あるいは純物質を希釈してスパン流体を作製することで、従来長期安定性の確保が困難であった測定対象を精度よく測定することができる。
【0033】
本発明の別の実施態様の一例の一部を図4に示す。他の構成は、既述の図1と基本的に同様であるが、HClのように通常液体で安定的に取り扱われる物質を恒温槽15に貯留しておき、予備管16を介して導入されるパーメイションチューブ17内に浸透したHClを所定濃度含む流体を高濃度流体として基準流体に添加し、スパン流体を作製する点が特徴である。一般に、パーメイションチューブ17内の特定物質の濃度は、温度・流量・圧力によって定まるものであり、所望の濃度の高濃度流体は、恒温槽15の温度、基準流体の流量および圧力を調整して作製される。このような構成により、安定したスパン流体を測定器5に導入することができ、従来困難であった校正を精度よく行うことができる。
【0034】
また、前記装置の校正において、前記スパン流体を複数種有することが好適である。特に、本発明は、車道周辺における大気中のNOx測定装置のように、車輌の走行状態によってNOx濃度が大きく変化する試料ガスを測定する場合に適している。かかる場合にあっては、NOx濃度によって測定レンジを変更することがあり、各測定レンジに対応したスパン流体を準備することができる。また、2種類以上の既知の希釈率によるスパン流体の測定出力から基準流体自体の精製状態を確認することができ、精製器の保守の必要性あるいは配管系のリークなどの不具合を検知することができる。
【0035】
図5(A)は、本発明の別の実施態様の一例を示すもので、既述の図1と基本的に同様であるが、高濃度NOxの添加ラインを複数設けた点が特徴である。上述の(a)点だけでなく、(b)点・・(n)点から添加されることで複数のスパン流体を測定部5に供給することができる。これによって、複数の測定レンジに対応したスパン流体によってスパン校正を行うことができる。なお、このとき、必ずしも各ラインの電磁弁10、10’・・・10(n) を各レンジに対応させて独立的にONにする必要はなく、ある測定レンジでは、電磁弁10と10’、あるいは、他の2以上を組合せて同時にONにすることができる。
【0036】
また、例えば、図5(B)に示すように、(a)と(b)の2種類の既知の希釈率によるスパン流体を測定部5に導入した場合には、その測定出力から現状のゼロ点を外挿することができる。つまり、測定部5が直線性を有しており、本来基準流体中にNOが存在していなければ、両方のスパン流体に対する出力を直線で結ぶとゼロ流体に相当する添加量ゼロの時の出力はゼロとなるべきである。しかし、基準流体中にNOが存在していると、図5(B)のように、その濃度pに相当する出力が生じる。逆に、スパン校正用の配管系にリークがあれば、指示は負方向の出力となる場合があり、不具合を検知することができる。
【0037】
別途純粋のゼロ流体を準備しゼロ校正時に測定すれば、基準流体に残留しているNO成分つまり基準流体の精製状態を確認することができるが、本発明では、こうしたゼロ流体の準備を必要とせずに精製器の保守の必要性あるいは配管系のリークなどの不具合を検知することができる。
【0038】
以上は、大気中のNOx測定装置について述べたが、同様の技術は、大気中の他の成分測定装置のみならず、各種プラントやプロセスについても適用されるものであり、また、測定部もCLD法に限定されるものでもない。例えば、燃焼炉の排ガス中のHClやCl2 あるいは二酸化窒素(NO2 )測定装置として、測定部に非分散紫外線吸収法(NDUV)や非分散赤外線吸収法(NDIR)を用いた場合にも、本発明の適用が可能である。
【0039】
また、本発明は、上記のような気体の測定だけでなく、液体等の成分測定や、また、各種測定原理にも適用の可能性があり、上記に限定されるものでないことはいうまでもない。
【0040】
【発明の効果】
以上のように、本発明を適用した流体変調式の試料中の成分濃度測定装置であっては、追加的な要素なく、低濃度測定における校正を容易にして測定精度の高い測定装置を提供することができる。
【0041】
また、このとき、高濃度流体の添加量を独立的に調整可能とし、試料中の測定成分濃度の変化に対応したスパン流体の作製を行うことで、より実測条件に近い測定レンジでの校正・計測を可能とすることができ、測定精度の高い測定装置を提供することができる。
【0042】
さらに、安定な物質あるいは純物質から作製した高純度流体を希釈して所望の濃度のスパン流体を装置内で作製することで、従来長期安定性の確保が困難であった測定対象を精度よく測定することができる。
【0043】
また、スパン流体を複数種有することによって、測定レンジに対応したスパン流体を準備するとともに、基準流体自体の精製状態を確認することができ、より測定精度の高い測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施態様の一例を示す説明図
【図2】本発明の別の実施態様の一例を示す説明図
【図3】本発明の別の実施態様の一例を示す説明図
【図4】本発明の別の実施態様の一例の一部を示す説明図
【図5】本発明の別の実施態様の一例を示す説明図
【図6】従来技術の実施態様の一例を示す説明図
【図7】従来技術の他の実施態様の一例を示す説明図
【図8】従来技術の他の実施態様の一例を示す説明図
【符号の説明】
2 校正用切換弁
3、10 電磁弁
4、9 絞り
5 測定部
6 吸引ポンプ
8 精製器
11 高濃度流体(スパンガス)
Claims (4)
- 流体変調式の試料中の成分濃度測定装置であって、試料流体を精製し測定成分を除去した流体を流体変調の基準流体とし、かつ該基準流体に高濃度流体を添加して流体を検出感度校正用流体(以下「スパン流体」という。)として、装置の校正を行うことを特徴とする流体変調式測定装置。
- 前記装置の校正において、前記高濃度流体の添加量を独立的に調整可能とすることを特徴とする請求項1に記載の流体変調式測定装置。
- 前記装置の校正において、前記高濃度流体を、常温常圧下において安定な所定濃度の物質あるいは純物質から作製することを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の流体変調式測定装置。
- 前記装置の校正において、前記スパン流体を複数種有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の流体変調式測定装置。
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Cited By (4)
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-
2003
- 2003-01-20 JP JP2003011003A patent/JP2004226098A/ja not_active Withdrawn
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