JP2004224593A - テトラヒドロホウ酸塩の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】テトラヒドロホウ酸塩の製造方法において製造コストを低く抑えること。また温和な反応条件で製造すること。
【解決手段】ホウ酸塩を含む原料を水素化してテトラヒドロホウ酸塩を製造する際に、原料に対して例えば一酸化炭素及び/又は炭素数が5以下の炭化水素である酸素受容成分のガス、水素ガスおよび酸素ガスを含むガスを供給する構成とする。この場合、酸素受容成分がホウ酸塩の酸素イオンを受容して例えば二酸化炭素などの揮発性ガスと水が生成される。従って生成物の処理が簡単になり、製造コストの低コスト化を図ることができる。また酸素ガスを供給することで温和な条件下において自発的に反応を進行させることができる。供給するガスにコークス炉ガスを用いてもよく、またニッケル等の水素化触媒を混合してもよい。
【解決手段】ホウ酸塩を含む原料を水素化してテトラヒドロホウ酸塩を製造する際に、原料に対して例えば一酸化炭素及び/又は炭素数が5以下の炭化水素である酸素受容成分のガス、水素ガスおよび酸素ガスを含むガスを供給する構成とする。この場合、酸素受容成分がホウ酸塩の酸素イオンを受容して例えば二酸化炭素などの揮発性ガスと水が生成される。従って生成物の処理が簡単になり、製造コストの低コスト化を図ることができる。また酸素ガスを供給することで温和な条件下において自発的に反応を進行させることができる。供給するガスにコークス炉ガスを用いてもよく、またニッケル等の水素化触媒を混合してもよい。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属のホウ酸塩を水素化してテトラヒドロホウ酸塩を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
テトラヒドロホウ酸塩、例えば水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)は還元剤あるいは水素化剤として広く用いられているが、近年これを水素発生剤あるいは燃料電池の燃料として用いることが検討されている。
【0003】
従来、ホウ酸塩を原料としてテトラヒドロホウ酸塩を製造する方法としては、例えばホウ酸塩と、水素化アルカリ金属又は水素化アルカリ土類金属の混合物を加熱雰囲気にて所定の水素圧下におくことにより、このホウ酸塩を水素化せしめてテトラヒドロホウ酸塩を得る手法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この手法について簡単に述べておくと、例えば原料のホウ酸塩にメタホウ酸ナトリウム(NaBO2)と、水素化アルカリ金属である水素化カルシウム(CaH2)との混合物を加熱雰囲気にて所定の水素圧下におくと反応式1に示す反応によりメタホウ酸ナトリウムが水素化されて水素化ホウ素ナトリウムが生成すると共に水素化カルシウムが酸化されて酸化カルシウムが生成する。また水素化カルシウムに代えてカーバイト(CaC2)を混合した場合、反応式2に示すようなカーバイトの水素化反応が先行して進行し、水素化カルシウムが生成する。次いで上記の反応式1の反応が進行して水素化ホウ素ナトリウムが生成する。更にカーバイトに代えてアルカリ土類金属であるマグネシウムを用いることができ、この場合には水素化マグネシウムが先行して生成し、次いでメタホウ酸ナトリウムの水素化反応が進行する。
CaH2+(1/2)NaBO2→CaO+(1/2)NaBH4…(1)
2CaC2+10H2→2CaH2+4CH4…(2)
【0004】
前記した製造手法においては、収率を高めるためには反応条件を高温、高圧に設定しなければならないといった問題点が指摘がされており、それを解決するために例えば原料のメタホウ酸ナトリウムの粉末と、金属水素化物例えば水素化マグネシウムの粉末とからなる混合物に対してボールミルを用いて機械的エネルギーを供給してメカノケミカル作用を利用することにより、例えば大気圧において加温をせずに反応を進行させる手法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特公昭33−10788号公報(第3−4頁)
【特許文献2】
特開2002−173306号公報(第3頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上述の製造方法においては、前記したように反応時に水素化カルシウムがメタホウ酸ナトリウム中の酸素イオン(O2−)を受容して酸化物である酸化カルシウムとなり、その後は反応に寄与しなくなることから使用済みの酸化カルシウムを分離して処理する必要があるが、当該酸化カルシウムを廃棄物として処理するとその処理コストが嵩み、結果として製造コストが高くなってしまう場合がある。また酸化カルシウムを再生して水素化カルシウムとし、再使用する手法が検討されているがいずれにしても再生するための設備や再生コストが必要であり、かえって製造コストが高くなってしまう懸念がある。
【0007】
更に上述の製造方法においては、目的とする反応が比較的進行し難い反応であるために、前記したように反応収率を高めるために高温、高圧の反応条件に設定しなくてはならず、そのため加熱および加圧するための機器が大型化する懸念がある。またメカノケミカル作用を利用するためには機械的エネルギーを供給するための設備を必要とするのでコスト的に割高となる懸念がある。
【0008】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は製造コストを低く抑えることのできるテトラヒドロホウ酸塩の製造方法を提供することにある。また他の目的は、温和な反応条件下で製造できるテトラヒドロホウ酸塩の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のテトラヒドロホウ酸塩の製造方法は、ホウ酸塩を含む原料を水素化する反応において、酸素受容成分のガスと、水素ガスと、酸素ガスと、を含むガスを該ホウ酸塩に供給することを特徴とする。
【0010】
本発明のテトラヒドロホウ酸塩の製造方法によれば、原料であるホウ酸塩に対して、水素ガス、酸素受容成分のガスおよび酸素ガスを供給することにより、温和な反応条件下でホウ酸塩の水素化反応を自発的に促進させることができ、更に目的物であるテトラヒドロホウ酸塩と共に生成する生成物が例えば二酸化炭素などの揮発性ガスと水であることからその処理が簡単である。このため製造コストの低コスト化を図ることができる。
【0011】
前記酸素受容成分は例えば一酸化炭素及び/又は炭素数が5以下の炭化水素であってもよく、このなかの酸素受容成分のガスと、水素ガスと、を含むガスが例えばコークス炉ガスであってもよい。また原料には水素化触媒が混合されていてもよく、水素化触媒には、例えばNi、Co、Fe、Pt、Cu、Pd、Ru及びRhの少なくとも一つを用いるようにしてもよい。
【0012】
また前記ホウ酸塩は例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属のメタホウ酸塩であってもよい。更にテトラヒドロホウ酸塩は例えば水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、水素化ホウ素リチウム(LiBH4)又は水素化ホウ素カリウム(KBH4)であってもよい。更にまた、ホウ酸塩が例えばテトラヒドロホウ酸塩を利用した燃料電池の使用済みの燃料から分離されたものであってもよい。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態は、原料であるホウ酸塩を水素化する反応において、酸素受容成分のガスと、水素ガスと、酸素ガスと、を含むガスを該ホウ酸塩に供給することによりテトラヒドロホウ酸塩を製造する手法であり、更に必要ならば当該反応をより確実に進行させるための水素化触媒を原料に添加することができる。
【0014】
前記原料であるホウ酸塩としては、例えばメタホウ酸塩、四ホウ酸塩、五ホウ酸塩などのホウ酸塩が用いられる。メタホウ酸塩としては例えばNaBO2、KBO2、LiBO2、Ca(BO2)2、Mg(BO2)2などが具体例として挙げられる。また四ホウ酸塩としては例えばNa2B4O7、Na2O・2BO3、K2O・B2O3、Li2B4O7、Mg3B4O9などが具体例として挙げられる。更に五ホウ酸塩としては例えばNaB5O8、Na2O・5B2O3、KB5O8、K2O・5B2O9、LiB5O8などが具体例として挙げられる。また天然のホウ酸塩鉱物であってもよく、例えばNa2B4O7・10H2O、Na2B4O7・4H2O、Ca2B6O11・5H2O、CaNaB5O9・6H2O、Mg7Cl2B17O30などを原料とすることができる。またホウ酸塩は、平均粒径が例えば200μm、好ましくは50μm以下の粉末状にして用いることが反応率を向上するために好ましい。
【0015】
前記水素化触媒は、後述するように、予定とする水素化反応の進行をより確実に促進させるために原料のホウ酸塩と混合される触媒であり、この水素化反応時において分子状の水素を解離させて原子状の水素をその表面に形成し、この原子状の水素とメタホウ酸ナトリウムとの反応を促進させる機能を有している。例えばNi、Co、Fe、Pt、Cu、Pd、Ru、Rhなどの金属が用いられ、特にNiが好ましい。この水素化触媒の添加量は、混合粉全体に対して50重量%以下、一般に5〜30重量%であればよい。更に前記したホウ酸塩の粉末と充分に混合するために、平均粒径が例えば100μm以下、好ましくは30μm以下の粉末状にして用いることが反応率を向上するために好ましい。
【0016】
前記酸素受容成分のガスは、例えば一酸化炭素(CO)及び/又は炭素数が例えば5以下の低級の炭化水素を含んでいる。この炭化水素は、例えばメタン(CH4)、エタン(C2H6)などのパラフィン炭化水素(CnH2n+2)、エチレン(C2H4)などのオレフィン炭化水素(CnH2n)、アセチレン系炭化水素(CnH2n−2)のなかの少なくとも一つであり、特にメタンが好ましい。なお、炭素数が6以上になると、後述する反応時に複雑な有機物を生成するため、その分離が困難になるといった理由から上記のような低級の炭化水素が好ましい。
【0017】
また酸素受容成分のガスおよび水素ガスとしては、例えばコークス炉ガスを用いることができる。このコークス炉ガスについて簡単に述べておくと、コークス炉ガスは原料である例えば石炭を蒸し焼き(乾留)してコークスを製造する際に発生するガスであり、水素成分の他に、ガス化時に生成したメタン、一酸化炭素、その他不純物が含まれている。一般的には、例えば52体積%の水素と、38体積%の一酸化炭素が含まれる水性ガス、あるいは例えば35体積%の水素と、32体積%の一酸化炭素と、23体積%のメタンが含まれる増熱水性ガスと呼ばれるものなどがあるが、本発明においては、例えば上記に相応する程度に一酸化炭素及び/又は低級の炭化水素が含まれていれば特にガス化する手法やガス種が限定されることはない。
【0018】
更に酸素ガスとしては、酸素が含まれているガスであれば酸素ガスに限られず例えば空気を用いるようにしてもよい。またこの酸素ガスは、前記した酸素受容成分のガス及び/又は水素ガスと混合されてから原料のホウ酸塩に供給してもよく、あるいは別の場所から供給してもよい。
【0019】
続いて本発明の実施の形態についてより具体的な説明する。ここでは一例として原料にメタホウ酸ナトリウム(NaBO2)、水素化触媒にニッケル(Ni)を用いた例を説明する。メタホウ酸ナトリウムの粉末およびニッケルの粉末は、必要に応じて例えばアセトンなどの有機媒体中でボールミル等により撹拌・粉砕しながら例えば100〜450℃の温度で真空処理することにより脱水および加熱乾燥させて、ホウ酸塩の結晶水を除去する。そして混合および水分除去が充分になされた後、反応器内に充填される。この反応器としては、例えば固定床反応器、移動床反応器などを用いることができる。更に本例の反応は固体−気体の反応系であるため、固体と気体の接触効率を高めるために混合粉を撹拌しながら前記した各ガスを供給するのが好ましく、例えばロータリーキルンなどが反応器の一例として挙げられる。
【0020】
前記混合粉が反応器に充填されると、例えば原料に対して水素過剰となり、かつ例えば原料に対して、一酸化炭素が1mol以上及び/又はメタンが1mol以上となるように流量が設定された例えばコークス炉ガスが反応器に導入される。いずれかの成分が条件に満たない場合には、別の場所から適宜その成分を補充供給するようにしてもよい。一方、酸素ガスは、酸素が原料に対して1mol以上となるように流量が設定されるが、爆発の危険を避けるために1mol以下、好ましくは0.1mol以下に分割されて反応器内に導入される。なおコークス炉ガスには、前記した不純物として窒素(N2)、高沸点の炭化水素例えばベンゼン(C6H6)やタールなど、硫黄化合物例えば硫化水素(H2S)、窒素化合物例えばアンモニア(NH3)、タールスラッジを含んでいることがあり、これらの成分の濃度が高いと触媒被毒となって水素化触媒の活性を低下させてしまうので、予め分離除去してから供給するのが望ましい。
【0021】
酸素受容成分のガス、水素ガスおよび酸素ガスを含むガスが反応器内に導入されると、次いで反応器が所定の反応温度および反応圧力に設定される。このとき反応温度が高すぎると生成したテトラヒドロホウ酸ナトリウムが熱分解してしまい、また反応温度が低すぎるとニッケルの表面の活性点が触媒被毒である例えばコークで覆われて触媒活性が低下する。従って反応温度、反応圧力は目的とするテトラヒドロホウ酸塩が熱分解されるのを抑え、かつ水素化触媒の表面に付着するコークを燃焼させる温度と圧力に設定する。この例においては例えば400〜800℃、特に500〜700℃に加熱し、0.1〜30MPa、特に1MPa以上の水素圧に設定するのが好ましい。
【0022】
ここで反応温度および反応圧力が所定の設定値に設定されると、全体反応として例えば反応式3に示すような反応が促進されて水素化ホウ素ナトリウムが生成する。この反応についてより詳しく推察すると、先ずニッケルの触媒作用により、その表面において水素ガス(水素分子)が解離されて原子状の水素が生成する。この原子状の水素はメタホウ酸ナトリウムと選択的に反応し、当該原子状の水素と、メタホウ酸ナトリウムの酸素イオンとが置換されて水素化ホウ素ナトリウムが生成する。この反応によりニッケルの表面に残った原子状の酸素は、酸素ガスの酸素を取り込みながらメタンおよび一酸化炭素と選択的に反応して揮発性ガスである二酸化炭素と、水(水蒸気)とを生成する。そして生成した二酸化炭素と水蒸気は排ガスと共に反応器から排出されることとなる。
NaBO2+H2+CH4+CO+O2→NaBH4+2CO2+H2O…(3)
【0023】
しかる後、例えば予定とする反応時間が経過すると、加熱を停止し、必要に応じて水素雰囲気を例えば窒素で置換した後、反応生成物を取り出して抽出工程が行われる。この抽出工程の一例を挙げると、先ず一般にカセイソーダなどのアルカリ水溶液により水素化ホウ素ナトリウムと未反応のメタホウ酸ナトリウムを抽出し、次いで再結晶法により水素化ホウ素ナトリウムを結晶化させることで水素化ホウ素ナトリウムの結晶体を得る。再結晶法に代えて、例えば無水のエチレンジアミン、液体アンモニアなどを用いる溶媒抽出法を用いるようにしてもよい。
【0024】
上述の実施の形態においては、原料であるホウ酸塩に対して、水素ガスと、酸素受容成分のガスと、酸素ガスを供給することにより、水素原子と置換されたホウ酸塩の酸素イオンを素早く酸素受容成分が受け取り、揮発性ガス例えば二酸化炭素と、水(水蒸気)とになって排ガスと共に反応装置から排出される。このため例えば「従来の技術」に記載の手法のように、金属からなる酸素受容物質を必要とせず、また生成物が例えば二酸化炭素と水であるので分離等の後処理が簡単であり、更にこの目的外の生成物は順次排出され反応器内に残ることがないか、極めて少ない。その結果、製造コストの低コスト化を図ることができる。
【0025】
更に上述の実施の形態においては、既述したようにホウ酸塩の水素化反応は比較的反応が進行し難い反応であるが、酸素を供給することにより反応式3における生成系(右辺)の化学的なポテンシャル例えば理論の上では自由ギブスエネルギーと呼ばれるポテンシャルが反応系(左辺)のポテンシャルよりも小さくなる。即ち、一酸化炭素及び/又は低級の炭化水素を酸素受容成分に用いることに着目し、酸化性ガスである酸素ガスを導入することにより、温和な反応温度および反応圧力の条件下において、目的とする水素化反応を概ね自発的に促進させることを実現したものである。なお本発明者らは5時間の反応により概ね70%の高い収率が得られたことを確認している。
【0026】
更に上述の実施の形態においては、水素成分、酸素受容成分および酸素成分などの反応消費物を反応開始前に予め原料に混合しておく必要がなく、反応器内のメタホウ酸ナトリウムの水素化の反応状況(転化率)を順次確認にながら供給して反応を進行させることができるのでプロセス制御が簡単である点で有利である。
【0027】
また酸素受容成分のガスと、水素ガスと、を含むガスにコークス炉ガスを用いた場合には、これらのガスを別々に準備する手間が省ける点で有利であり、更にコークス炉から例えば750℃の高温で排出される当該コークス炉ガスの顕熱を反応温度の設定(加温)に利用することができるので得策である。
【0028】
更に上述の例では水素化触媒を原料に混合しているが、水素化触媒を混合しない場合であっても既述の圧力、温度において自発的に反応が進行し、上述の場合と同様の効果を得ることができる。
【0029】
更に上述の例においては、その分子中に水素成分を有する炭化水素の方が一酸化炭素に比して酸素受容成分として好適である、といった理由から例えばコークス炉ガスに含まれる一酸化炭素を予め分離してから供給するようにしてもよい。このような構成であっても反応式4に示すような反応が促進されて、メタンがメタホウ酸ナトリウム中の酸素イオンを受容するので、上述の場合と同様の効果を得ることができる。
NaBO2+H2+CH4+O2→NaBH4+CO2+2H2O…(4)
【0030】
更に本発明においては、原料のホウ酸塩は、例えば水素化ホウ酸ナトリウム(NaBH4)などのテトラヒドロホウ酸塩から水素を放出させた後の、例えばメタホウ酸塩ナトリウム(NaBO2)を分離して水素化ホウ酸ナトリウムに再生するために用いてもよい。このようなテトラヒドロホウ酸塩としては、例えば燃料電池の燃料液、例えば水素化ホウ素ナトリウムをアルカリ溶液に溶解せしめた溶液に用いられる。このシステムの一例について図1を参照しながら簡単に述べておく。図中10は燃料電池を駆動力として走行する電気自動車である。また11は上述の反応器を備えた燃料液製造ステーションである。更に12は例えば町中に設置され、前記電気自動車に新しい燃料を補給するための補給ステーションである。このような構成においては、走行して燃料が減った電気自動車10は新しい燃料を補給するために補給ステーション12に立ち寄り、ここで先ず使用済みの燃料が回収され、次いで新しい燃料が例えばリザーブタンクに補給される。一方、補給ステーション12では回収した使用済みの燃料を燃料液製造ステーション11に例えばトラック輸送し、当該燃料液製造ステーション11にてアルカリ溶液からホウ酸塩が抽出された後、既述の手法により水素化されてテトラヒドロホウ酸塩に再生される。しかる後、このテトラヒドロホウ酸塩はアルカリ溶液に溶解された後、補給ステーション12に移送されて再び電気自動車10の燃料として使用されることとなる。
【0031】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、原料であるホウ酸塩に対して、酸素受容成分のガスと、水素ガスと、酸素ガスを供給することにより、温和な反応条件下でホウ酸塩の水素化反応を自発的に促進させることができ、更に目的物であるテトラヒドロホウ酸塩と共に生成するのが例えば二酸化炭素などの揮発性ガスと水であるのでその処理が簡単である。その結果、従来技術のようにアルカリ金属又はアルカリ土類金属を使用しないために、製造コストの低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のテトラヒドロホウ酸塩の製造方法を燃料電池の燃料液を再生するシステムに適用した例を示す説明図である。
【符号の説明】
10 電気自動車
11 燃料液製造ステーション
12 補給ステーション
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属のホウ酸塩を水素化してテトラヒドロホウ酸塩を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
テトラヒドロホウ酸塩、例えば水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)は還元剤あるいは水素化剤として広く用いられているが、近年これを水素発生剤あるいは燃料電池の燃料として用いることが検討されている。
【0003】
従来、ホウ酸塩を原料としてテトラヒドロホウ酸塩を製造する方法としては、例えばホウ酸塩と、水素化アルカリ金属又は水素化アルカリ土類金属の混合物を加熱雰囲気にて所定の水素圧下におくことにより、このホウ酸塩を水素化せしめてテトラヒドロホウ酸塩を得る手法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この手法について簡単に述べておくと、例えば原料のホウ酸塩にメタホウ酸ナトリウム(NaBO2)と、水素化アルカリ金属である水素化カルシウム(CaH2)との混合物を加熱雰囲気にて所定の水素圧下におくと反応式1に示す反応によりメタホウ酸ナトリウムが水素化されて水素化ホウ素ナトリウムが生成すると共に水素化カルシウムが酸化されて酸化カルシウムが生成する。また水素化カルシウムに代えてカーバイト(CaC2)を混合した場合、反応式2に示すようなカーバイトの水素化反応が先行して進行し、水素化カルシウムが生成する。次いで上記の反応式1の反応が進行して水素化ホウ素ナトリウムが生成する。更にカーバイトに代えてアルカリ土類金属であるマグネシウムを用いることができ、この場合には水素化マグネシウムが先行して生成し、次いでメタホウ酸ナトリウムの水素化反応が進行する。
CaH2+(1/2)NaBO2→CaO+(1/2)NaBH4…(1)
2CaC2+10H2→2CaH2+4CH4…(2)
【0004】
前記した製造手法においては、収率を高めるためには反応条件を高温、高圧に設定しなければならないといった問題点が指摘がされており、それを解決するために例えば原料のメタホウ酸ナトリウムの粉末と、金属水素化物例えば水素化マグネシウムの粉末とからなる混合物に対してボールミルを用いて機械的エネルギーを供給してメカノケミカル作用を利用することにより、例えば大気圧において加温をせずに反応を進行させる手法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特公昭33−10788号公報(第3−4頁)
【特許文献2】
特開2002−173306号公報(第3頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上述の製造方法においては、前記したように反応時に水素化カルシウムがメタホウ酸ナトリウム中の酸素イオン(O2−)を受容して酸化物である酸化カルシウムとなり、その後は反応に寄与しなくなることから使用済みの酸化カルシウムを分離して処理する必要があるが、当該酸化カルシウムを廃棄物として処理するとその処理コストが嵩み、結果として製造コストが高くなってしまう場合がある。また酸化カルシウムを再生して水素化カルシウムとし、再使用する手法が検討されているがいずれにしても再生するための設備や再生コストが必要であり、かえって製造コストが高くなってしまう懸念がある。
【0007】
更に上述の製造方法においては、目的とする反応が比較的進行し難い反応であるために、前記したように反応収率を高めるために高温、高圧の反応条件に設定しなくてはならず、そのため加熱および加圧するための機器が大型化する懸念がある。またメカノケミカル作用を利用するためには機械的エネルギーを供給するための設備を必要とするのでコスト的に割高となる懸念がある。
【0008】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は製造コストを低く抑えることのできるテトラヒドロホウ酸塩の製造方法を提供することにある。また他の目的は、温和な反応条件下で製造できるテトラヒドロホウ酸塩の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のテトラヒドロホウ酸塩の製造方法は、ホウ酸塩を含む原料を水素化する反応において、酸素受容成分のガスと、水素ガスと、酸素ガスと、を含むガスを該ホウ酸塩に供給することを特徴とする。
【0010】
本発明のテトラヒドロホウ酸塩の製造方法によれば、原料であるホウ酸塩に対して、水素ガス、酸素受容成分のガスおよび酸素ガスを供給することにより、温和な反応条件下でホウ酸塩の水素化反応を自発的に促進させることができ、更に目的物であるテトラヒドロホウ酸塩と共に生成する生成物が例えば二酸化炭素などの揮発性ガスと水であることからその処理が簡単である。このため製造コストの低コスト化を図ることができる。
【0011】
前記酸素受容成分は例えば一酸化炭素及び/又は炭素数が5以下の炭化水素であってもよく、このなかの酸素受容成分のガスと、水素ガスと、を含むガスが例えばコークス炉ガスであってもよい。また原料には水素化触媒が混合されていてもよく、水素化触媒には、例えばNi、Co、Fe、Pt、Cu、Pd、Ru及びRhの少なくとも一つを用いるようにしてもよい。
【0012】
また前記ホウ酸塩は例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属のメタホウ酸塩であってもよい。更にテトラヒドロホウ酸塩は例えば水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、水素化ホウ素リチウム(LiBH4)又は水素化ホウ素カリウム(KBH4)であってもよい。更にまた、ホウ酸塩が例えばテトラヒドロホウ酸塩を利用した燃料電池の使用済みの燃料から分離されたものであってもよい。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態は、原料であるホウ酸塩を水素化する反応において、酸素受容成分のガスと、水素ガスと、酸素ガスと、を含むガスを該ホウ酸塩に供給することによりテトラヒドロホウ酸塩を製造する手法であり、更に必要ならば当該反応をより確実に進行させるための水素化触媒を原料に添加することができる。
【0014】
前記原料であるホウ酸塩としては、例えばメタホウ酸塩、四ホウ酸塩、五ホウ酸塩などのホウ酸塩が用いられる。メタホウ酸塩としては例えばNaBO2、KBO2、LiBO2、Ca(BO2)2、Mg(BO2)2などが具体例として挙げられる。また四ホウ酸塩としては例えばNa2B4O7、Na2O・2BO3、K2O・B2O3、Li2B4O7、Mg3B4O9などが具体例として挙げられる。更に五ホウ酸塩としては例えばNaB5O8、Na2O・5B2O3、KB5O8、K2O・5B2O9、LiB5O8などが具体例として挙げられる。また天然のホウ酸塩鉱物であってもよく、例えばNa2B4O7・10H2O、Na2B4O7・4H2O、Ca2B6O11・5H2O、CaNaB5O9・6H2O、Mg7Cl2B17O30などを原料とすることができる。またホウ酸塩は、平均粒径が例えば200μm、好ましくは50μm以下の粉末状にして用いることが反応率を向上するために好ましい。
【0015】
前記水素化触媒は、後述するように、予定とする水素化反応の進行をより確実に促進させるために原料のホウ酸塩と混合される触媒であり、この水素化反応時において分子状の水素を解離させて原子状の水素をその表面に形成し、この原子状の水素とメタホウ酸ナトリウムとの反応を促進させる機能を有している。例えばNi、Co、Fe、Pt、Cu、Pd、Ru、Rhなどの金属が用いられ、特にNiが好ましい。この水素化触媒の添加量は、混合粉全体に対して50重量%以下、一般に5〜30重量%であればよい。更に前記したホウ酸塩の粉末と充分に混合するために、平均粒径が例えば100μm以下、好ましくは30μm以下の粉末状にして用いることが反応率を向上するために好ましい。
【0016】
前記酸素受容成分のガスは、例えば一酸化炭素(CO)及び/又は炭素数が例えば5以下の低級の炭化水素を含んでいる。この炭化水素は、例えばメタン(CH4)、エタン(C2H6)などのパラフィン炭化水素(CnH2n+2)、エチレン(C2H4)などのオレフィン炭化水素(CnH2n)、アセチレン系炭化水素(CnH2n−2)のなかの少なくとも一つであり、特にメタンが好ましい。なお、炭素数が6以上になると、後述する反応時に複雑な有機物を生成するため、その分離が困難になるといった理由から上記のような低級の炭化水素が好ましい。
【0017】
また酸素受容成分のガスおよび水素ガスとしては、例えばコークス炉ガスを用いることができる。このコークス炉ガスについて簡単に述べておくと、コークス炉ガスは原料である例えば石炭を蒸し焼き(乾留)してコークスを製造する際に発生するガスであり、水素成分の他に、ガス化時に生成したメタン、一酸化炭素、その他不純物が含まれている。一般的には、例えば52体積%の水素と、38体積%の一酸化炭素が含まれる水性ガス、あるいは例えば35体積%の水素と、32体積%の一酸化炭素と、23体積%のメタンが含まれる増熱水性ガスと呼ばれるものなどがあるが、本発明においては、例えば上記に相応する程度に一酸化炭素及び/又は低級の炭化水素が含まれていれば特にガス化する手法やガス種が限定されることはない。
【0018】
更に酸素ガスとしては、酸素が含まれているガスであれば酸素ガスに限られず例えば空気を用いるようにしてもよい。またこの酸素ガスは、前記した酸素受容成分のガス及び/又は水素ガスと混合されてから原料のホウ酸塩に供給してもよく、あるいは別の場所から供給してもよい。
【0019】
続いて本発明の実施の形態についてより具体的な説明する。ここでは一例として原料にメタホウ酸ナトリウム(NaBO2)、水素化触媒にニッケル(Ni)を用いた例を説明する。メタホウ酸ナトリウムの粉末およびニッケルの粉末は、必要に応じて例えばアセトンなどの有機媒体中でボールミル等により撹拌・粉砕しながら例えば100〜450℃の温度で真空処理することにより脱水および加熱乾燥させて、ホウ酸塩の結晶水を除去する。そして混合および水分除去が充分になされた後、反応器内に充填される。この反応器としては、例えば固定床反応器、移動床反応器などを用いることができる。更に本例の反応は固体−気体の反応系であるため、固体と気体の接触効率を高めるために混合粉を撹拌しながら前記した各ガスを供給するのが好ましく、例えばロータリーキルンなどが反応器の一例として挙げられる。
【0020】
前記混合粉が反応器に充填されると、例えば原料に対して水素過剰となり、かつ例えば原料に対して、一酸化炭素が1mol以上及び/又はメタンが1mol以上となるように流量が設定された例えばコークス炉ガスが反応器に導入される。いずれかの成分が条件に満たない場合には、別の場所から適宜その成分を補充供給するようにしてもよい。一方、酸素ガスは、酸素が原料に対して1mol以上となるように流量が設定されるが、爆発の危険を避けるために1mol以下、好ましくは0.1mol以下に分割されて反応器内に導入される。なおコークス炉ガスには、前記した不純物として窒素(N2)、高沸点の炭化水素例えばベンゼン(C6H6)やタールなど、硫黄化合物例えば硫化水素(H2S)、窒素化合物例えばアンモニア(NH3)、タールスラッジを含んでいることがあり、これらの成分の濃度が高いと触媒被毒となって水素化触媒の活性を低下させてしまうので、予め分離除去してから供給するのが望ましい。
【0021】
酸素受容成分のガス、水素ガスおよび酸素ガスを含むガスが反応器内に導入されると、次いで反応器が所定の反応温度および反応圧力に設定される。このとき反応温度が高すぎると生成したテトラヒドロホウ酸ナトリウムが熱分解してしまい、また反応温度が低すぎるとニッケルの表面の活性点が触媒被毒である例えばコークで覆われて触媒活性が低下する。従って反応温度、反応圧力は目的とするテトラヒドロホウ酸塩が熱分解されるのを抑え、かつ水素化触媒の表面に付着するコークを燃焼させる温度と圧力に設定する。この例においては例えば400〜800℃、特に500〜700℃に加熱し、0.1〜30MPa、特に1MPa以上の水素圧に設定するのが好ましい。
【0022】
ここで反応温度および反応圧力が所定の設定値に設定されると、全体反応として例えば反応式3に示すような反応が促進されて水素化ホウ素ナトリウムが生成する。この反応についてより詳しく推察すると、先ずニッケルの触媒作用により、その表面において水素ガス(水素分子)が解離されて原子状の水素が生成する。この原子状の水素はメタホウ酸ナトリウムと選択的に反応し、当該原子状の水素と、メタホウ酸ナトリウムの酸素イオンとが置換されて水素化ホウ素ナトリウムが生成する。この反応によりニッケルの表面に残った原子状の酸素は、酸素ガスの酸素を取り込みながらメタンおよび一酸化炭素と選択的に反応して揮発性ガスである二酸化炭素と、水(水蒸気)とを生成する。そして生成した二酸化炭素と水蒸気は排ガスと共に反応器から排出されることとなる。
NaBO2+H2+CH4+CO+O2→NaBH4+2CO2+H2O…(3)
【0023】
しかる後、例えば予定とする反応時間が経過すると、加熱を停止し、必要に応じて水素雰囲気を例えば窒素で置換した後、反応生成物を取り出して抽出工程が行われる。この抽出工程の一例を挙げると、先ず一般にカセイソーダなどのアルカリ水溶液により水素化ホウ素ナトリウムと未反応のメタホウ酸ナトリウムを抽出し、次いで再結晶法により水素化ホウ素ナトリウムを結晶化させることで水素化ホウ素ナトリウムの結晶体を得る。再結晶法に代えて、例えば無水のエチレンジアミン、液体アンモニアなどを用いる溶媒抽出法を用いるようにしてもよい。
【0024】
上述の実施の形態においては、原料であるホウ酸塩に対して、水素ガスと、酸素受容成分のガスと、酸素ガスを供給することにより、水素原子と置換されたホウ酸塩の酸素イオンを素早く酸素受容成分が受け取り、揮発性ガス例えば二酸化炭素と、水(水蒸気)とになって排ガスと共に反応装置から排出される。このため例えば「従来の技術」に記載の手法のように、金属からなる酸素受容物質を必要とせず、また生成物が例えば二酸化炭素と水であるので分離等の後処理が簡単であり、更にこの目的外の生成物は順次排出され反応器内に残ることがないか、極めて少ない。その結果、製造コストの低コスト化を図ることができる。
【0025】
更に上述の実施の形態においては、既述したようにホウ酸塩の水素化反応は比較的反応が進行し難い反応であるが、酸素を供給することにより反応式3における生成系(右辺)の化学的なポテンシャル例えば理論の上では自由ギブスエネルギーと呼ばれるポテンシャルが反応系(左辺)のポテンシャルよりも小さくなる。即ち、一酸化炭素及び/又は低級の炭化水素を酸素受容成分に用いることに着目し、酸化性ガスである酸素ガスを導入することにより、温和な反応温度および反応圧力の条件下において、目的とする水素化反応を概ね自発的に促進させることを実現したものである。なお本発明者らは5時間の反応により概ね70%の高い収率が得られたことを確認している。
【0026】
更に上述の実施の形態においては、水素成分、酸素受容成分および酸素成分などの反応消費物を反応開始前に予め原料に混合しておく必要がなく、反応器内のメタホウ酸ナトリウムの水素化の反応状況(転化率)を順次確認にながら供給して反応を進行させることができるのでプロセス制御が簡単である点で有利である。
【0027】
また酸素受容成分のガスと、水素ガスと、を含むガスにコークス炉ガスを用いた場合には、これらのガスを別々に準備する手間が省ける点で有利であり、更にコークス炉から例えば750℃の高温で排出される当該コークス炉ガスの顕熱を反応温度の設定(加温)に利用することができるので得策である。
【0028】
更に上述の例では水素化触媒を原料に混合しているが、水素化触媒を混合しない場合であっても既述の圧力、温度において自発的に反応が進行し、上述の場合と同様の効果を得ることができる。
【0029】
更に上述の例においては、その分子中に水素成分を有する炭化水素の方が一酸化炭素に比して酸素受容成分として好適である、といった理由から例えばコークス炉ガスに含まれる一酸化炭素を予め分離してから供給するようにしてもよい。このような構成であっても反応式4に示すような反応が促進されて、メタンがメタホウ酸ナトリウム中の酸素イオンを受容するので、上述の場合と同様の効果を得ることができる。
NaBO2+H2+CH4+O2→NaBH4+CO2+2H2O…(4)
【0030】
更に本発明においては、原料のホウ酸塩は、例えば水素化ホウ酸ナトリウム(NaBH4)などのテトラヒドロホウ酸塩から水素を放出させた後の、例えばメタホウ酸塩ナトリウム(NaBO2)を分離して水素化ホウ酸ナトリウムに再生するために用いてもよい。このようなテトラヒドロホウ酸塩としては、例えば燃料電池の燃料液、例えば水素化ホウ素ナトリウムをアルカリ溶液に溶解せしめた溶液に用いられる。このシステムの一例について図1を参照しながら簡単に述べておく。図中10は燃料電池を駆動力として走行する電気自動車である。また11は上述の反応器を備えた燃料液製造ステーションである。更に12は例えば町中に設置され、前記電気自動車に新しい燃料を補給するための補給ステーションである。このような構成においては、走行して燃料が減った電気自動車10は新しい燃料を補給するために補給ステーション12に立ち寄り、ここで先ず使用済みの燃料が回収され、次いで新しい燃料が例えばリザーブタンクに補給される。一方、補給ステーション12では回収した使用済みの燃料を燃料液製造ステーション11に例えばトラック輸送し、当該燃料液製造ステーション11にてアルカリ溶液からホウ酸塩が抽出された後、既述の手法により水素化されてテトラヒドロホウ酸塩に再生される。しかる後、このテトラヒドロホウ酸塩はアルカリ溶液に溶解された後、補給ステーション12に移送されて再び電気自動車10の燃料として使用されることとなる。
【0031】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、原料であるホウ酸塩に対して、酸素受容成分のガスと、水素ガスと、酸素ガスを供給することにより、温和な反応条件下でホウ酸塩の水素化反応を自発的に促進させることができ、更に目的物であるテトラヒドロホウ酸塩と共に生成するのが例えば二酸化炭素などの揮発性ガスと水であるのでその処理が簡単である。その結果、従来技術のようにアルカリ金属又はアルカリ土類金属を使用しないために、製造コストの低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のテトラヒドロホウ酸塩の製造方法を燃料電池の燃料液を再生するシステムに適用した例を示す説明図である。
【符号の説明】
10 電気自動車
11 燃料液製造ステーション
12 補給ステーション
Claims (8)
- ホウ酸塩を含む原料を水素化する反応において、酸素受容成分のガスと、水素ガスと、酸素ガスと、を含むガスを該ホウ酸塩に供給することを特徴とするテトラヒドロホウ酸塩の製造方法。
- 酸素受容成分が一酸化炭素及び/又は炭素数が5以下の炭化水素であることを特徴とする請求項1記載のテトラヒドロホウ酸塩の製造方法。
- 酸素受容成分のガスと、水素ガスと、を含むガスがコークス炉ガスであることを特徴とする請求項2記載のテトラヒドロホウ酸塩の製造方法。
- 原料には水素化触媒が混合されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のテトラヒドロホウ酸塩の製造方法。
- 水素化触媒は、Ni、Co、Fe、Pt、Cu、Pd、Ru及びRhの少なくとも一つであることを特徴とする請求項4記載のテトラヒドロホウ酸塩の製造方法。
- ホウ酸塩がアルカリ金属又はアルカリ土類金属のメタホウ酸塩であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のテトラヒドロホウ酸塩の製造方法。
- テトラヒドロホウ酸塩が、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、水素化ホウ素リチウム(LiBH4)又は水素化ホウ素カリウム(KBH4)であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のテトラヒドロホウ酸塩の製造方法。
- ホウ酸塩が燃料電池の使用済みの燃料から分離されたものであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のテトラヒドロホウ酸塩の製造方法。
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