JP2004222274A - アナログ/ディジタル変換器及び電子回路 - Google Patents

アナログ/ディジタル変換器及び電子回路 Download PDF

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Abstract

【課題】 比較的簡単な回路構成によって、パイプライン型ADCのステージにおけるディジタル/アナログ変換回路の出力電圧の誤差及び増幅器等のゲイン誤差を補正する。
【解決手段】 このアナログ/ディジタル変換器は、アナログ入力信号をA/D変換して変換データ及び残差信号を出力するステージと、変換データに遅延を与えるタイミング調整回路10と、ステージにおけるD/A変換の出力電圧の誤差を補正するDAC誤差補正回路20と、ステージにおける増幅器のゲイン誤差を補正するゲイン誤差補正回路30と、ゲイン誤差補正回路から出力されるディジタル出力信号に基づいてD/A変換の出力電圧の誤差及びゲイン誤差を計算してDAC誤差補正回路及びゲイン誤差補正回路に供給する誤差補正用データ生成回路40と、ステージにDAC制御信号を供給するキャリブレーション制御回路50とを備える。
【選択図】 図1

Description

本発明は、複数のステージに分けてアナログ信号をディジタル信号に変換するパイプライン型のアナログ/ディジタル変換器(ADC)及び電子回路に関する。
近年においては、LCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)、又は、PDP(Plasma Display Panel:プラズマ・ディスプレイ・パネル)等のディジタルの画像信号を入力とする画像表示装置の解像度が年々向上している。それに伴い、アナログ画像信号をディジタル画像信号に変換する画像用ADC等においても、高精度かつ高速な動作が要求されている。
基本的な構成のADCとしては、入力電圧を抵抗ラダーによって発生した複数の参照電圧と比較することにより入力電圧の値を求めるフラッシュ型ADCが用いられている。高精度のADCを実現するために、フラッシュ型ADCを2段構成とし、初段のADCにおける参照電圧の1区分を後段のADCにおいて細かく区分して入力電圧の値を求める2ステップ型ADCが開発されている。また、2ステップ型ADCと同様の動作を多数のステージにおいて行うパイプライン型ADCも実用化されている。
図29に、パイプライン型ADCの動作原理を示す。図29に示すように、パイプライン型ADCは、最初のステージにおいて、所定のダイナミックレンジを有するアナログ入力信号の電圧を複数の電圧範囲の内のいずれかに分類し、該当する電圧範囲を拡大する。さらに、次のステージにおいて、拡大された電圧範囲におけるアナログ入力信号の電圧を複数の電圧範囲の内のいずれかに分類し、該当する電圧範囲を拡大する。この動作を繰り返して行うことにより、高い精度のA/D変換を実現できる。
図30に、従来のパイプライン型ADCの1ステージ分の回路構成を示す。このステージは、当該ステージのアナログ入力信号VINをA/D変換して変換データDOUTを出力するADC201と、ADC201から出力される変換データDOUTをD/A変換するディジタル/アナログ変換器(DAC)202と、アナログ入力信号をサンプルホールドするサンプルホールド回路203と、サンプルホールド回路203においてホールドされているアナログ入力信号とDAC202から出力されるアナログ信号との差を求める減算器204と、減算器204によって求められた差を増幅して当該ステージの残差信号であるアナログ出力信号VOUTを出力する増幅器205とを含んでいる。
図31に、従来のパイプライン型ADCの全体構成を示す。このパイプライン型ADCは、図24に示すようなステージを5つ有している。ここで、ステージ1がMSB側の変換データを生成し、ステージ5がLSB側の変換データを生成する。ステージ1〜ステージ5から出力される変換データは、遅延時間T(1)〜T(5)を有する遅延素子211〜215によってそれぞれ遅延され、出力タイミングが調整される。遅延素子211〜215から出力される変換データは、加算器221〜224によって加算され、最終的なディジタル出力信号が得られる。このようなパイプライン構成をとることにより、各ステージを小規模な回路で構成すると共に、高速な動作を実現できる。
しかしながら、パイプライン型ADCの各ステージにおいて変換誤差が発生すると、高精度なA/D変換を実現することができない。A/D変換の誤差の発生原因としては、次のことが考えられる。図30に示す1ステージ分の回路について説明すると、DAC202において、アナログ信号を生成するために用いられる抵抗又はキャパシタのばらつきが、A/D変換の誤差の発生原因となる。このような受動素子がばらつくことにより、DACの出力電圧に誤差が発生し、次のステージに出力されるアナログ信号に影響を与えるため、A/D変換結果に誤差が発生する。
増幅器205は、一般的に、受動素子を用いて負帰還をかけたオペアンプによって構成される。増幅器205においては、ゲインを決定する受動素子のばらつきや増幅器に用いるオペアンプのオープンループゲインが有限であることにより発生するゲインの誤差が、A/D変換の誤差の発生原因となる。
図32に、DACの出力電圧の誤差がパイプライン型ADCの1つのステージの入出力特性に及ぼす影響を示す。図32の(a)は、DACに誤差が発生していないパイプライン型ADCの1つのステージの入出力特性を示す図であり、図32の(b)は、DACに誤差を持つパイプライン型ADCの1つのステージの入出力特性を示す図である。横軸にアナログ入力電圧VINをとり、縦軸に出力電圧VOUTをとっている。なお、VREF及び−VREFは、両端の参照電位である。このように、パイプライン型ADCの1つのステージにおいてDACに誤差が発生すると、次のステージへの出力に誤差が生じる。
図33に、増幅器のゲイン誤差がパイプライン型ADCのステージの入出力特性に及ぼす影響を示す。図33の(a)は、増幅器のゲインに誤差が無いパイプライン型ADCの1つのステージの入出力特性を示す図であり、図33の(b)は、増幅器にゲイン誤差を持つパイプライン型ADCの1つのステージの入出力特性を示す図である。横軸にアナログ入力電圧VINをとり、縦軸に出力電圧VOUTをとっている。なお、VREF及び−VREFは、A/D変換の変換範囲の基準となる両端の参照電位である。このように、パイプライン型ADCの1つのステージにおいて増幅器にゲイン誤差が発生すると、特定のコードが出力されないミスコードが発生したり、A/D変換特性の非線形性が増大したりする。
ところで、下記の特許文献1には、高速かつ高精度のパイプライン型マルチステージADCが開示されている。特許文献1によれば、第1ステージにおけるDACの出力電圧の誤差と増幅器のゲイン誤差とが、ディジタル的に補正される。しかしながら、ゲイン誤差の補正が、減算器のみを用いて行われるため、ADC全体としてのゲインの誤差が残ってしまう。
また、下記の特許文献2には、キャパシタの不整合、キャパシタの非線形性、増幅器のゲイン、及び、増幅器の非線形性を補正することができるパイプライン型ADCのためのディジタル自己較正方式が開示されている。しかしながら、この較正方式は、あるステージの誤差の補正のために、そのステージ以降の各ステージの出力に演算を施すため回路規模が増加する。
さらに、下記の特許文献3には、パイプライン型ADCの各ステージにおけるDACの出力電圧の誤差を求めるキャリブレーション用のDACを用いたキャリブレーション方法及び装置が開示されている。この方式では、1個のキャリブレーション専用のDACを用いて複数のステージのキャリブレーションを行うため、DACに求められる精度と回路規模が増加する。
米国特許第5,635,937号明細書 (第1頁、図3−図7) 特開平11−274927号公報 (第1頁、図1) 米国特許第6,384,757号明細書 (第1頁、図2)
そこで、上記の点に鑑み、本発明の目的は、比較的簡単な回路構成によって、パイプライン型ADCの少なくとも1つのステージにおけるディジタル/アナログ変換回路の出力電圧の誤差及び増幅器のゲイン誤差を補正できるアナログ/ディジタル変換器及び電子回路を提供することである。
以上の課題を解決するため、本発明に係るアナログ/ディジタル変換器は、アナログ入力信号を入力し、これをアナログ/ディジタル変換して、変換データ及び残差信号を出力するステージと、ステージから出力される変換データにそれぞれ適切なサイクル数の遅延を与えてタイミングを調整するタイミング調整回路と、ステージにおけるディジタル/アナログ変換の出力電圧の誤差を補正するDAC誤差補正回路と、ステージにおける増幅器のゲイン誤差を補正するゲイン誤差補正回路と、ゲイン誤差補正回路から出力されるディジタル出力信号に基づいてディジタル/アナログ変換の出力電圧の誤差及びゲイン誤差を計算し、DAC誤差補正回路及びゲイン誤差補正回路にそれぞれの誤差補正用データを供給する誤差補正用データ生成回路と、キャリブレーション制御信号を出力してキャリブレーション動作を制御すると共に、ステージにDAC制御信号を供給するキャリブレーション制御回路とを備える。
本発明によれば、比較的簡単な回路の追加によって、ステージのディジタル/アナログ変換回路の出力電圧の誤差、及び、増幅器のゲイン誤差を補正して、高い変換精度と低い消費電力を持つアナログ/ディジタル変換器を実現することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、その説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係るアナログ/ディジタル変換器としてパイプライン型ADCの構成を示すブロック図である。図1に示すように、このパイプライン型ADCは、A/D変換を行うステージ1〜ステージNを有している。
最初のステージ1は、他の回路から供給されるアナログ入力信号VIN(1)を入力し、これをA/D変換して、変換データDOUT(1)及び残差信号VIN(2)を出力する。次のステージ2は、前のステージの残差信号VIN(2)をアナログ入力信号として入力し、これをA/D変換して、変換データDOUT(2)及び残差信号VIN(3)を出力する。以下のステージにおいても、同様の動作を行う。ただし、最後のステージNは、前のステージの残差信号VIN(N)をアナログ入力信号として入力し、これをA/D変換して、変換データDOUT(N)のみを出力する。
さらに、このADCは、ステージ1〜ステージ(N−1)から出力される変換データDOUT(1)〜DOUT(N−1)にそれぞれ適切なクロックサイクル数の遅延を与えてタイミングを調整するタイミング調整回路10と、ステージ1〜ステージ(N−1)におけるDACの出力電圧の誤差を補正するDAC誤差補正回路20と、ステージ1〜ステージ(N−1)における増幅器のゲイン誤差を補正するゲイン誤差補正回路30と、ゲイン誤差補正回路30から出力されるディジタル出力信号に基づいてDAC誤差及びゲイン誤差を計算し、DAC誤差補正回路20及びゲイン誤差補正回路30にそれぞれの誤差補正用データを供給する誤差補正用データ生成回路40と、キャリブレーション制御信号を出力してキャリブレーション動作を制御すると共に、各ステージにDAC制御信号を供給するキャリブレーション制御回路50とを有している。
DAC誤差補正回路20は、ステージ1〜ステージ(N−1)におけるDAC誤差補正用データDE(1,k)〜DE(N−1,kN−1)を記憶するDAC誤差補正用データメモリ21と(k…kN−1は変数)、変換データDOUT(1)〜DOUT(N−1)から変換データの値に応じたDAC誤差補正用データDE(1,DOUT(1))〜DE(N−1,DOUT(N−1))をそれぞれ減算して、DAC誤差を補正した変換データD1OUT(1)〜D1OUT(N−1)を出力する(N−1)個のDAC誤差補正用演算回路22とを含んでいる。ここで、DAC誤差補正用データメモリ21は、ステージ1〜ステージ(N−1)におけるDACの各出力値に対応するDAC誤差補正用データを記憶するための、複数のメモリによって構成される。
ゲイン誤差補正回路30は、ステージ1〜ステージ(N−1)における増幅器のゲイン誤差を補正するゲイン誤差補正用データGE(1)〜GE(N−1)をそれぞれ記憶する(N−1)個のゲイン誤差補正用データメモリ31と、(N−1)個のゲイン誤差補正用演算回路32と、(N−1)個の加算器33とを含んでいる。
i=1〜(N−1)について、第i番目のゲイン誤差補正用演算回路は、変換データD2OUT(i+1)にステージiのゲイン誤差の補正用データGE(i)を掛算もしくは近似的に掛算して、ゲイン誤差を補正した変換データD3OUT(i+1)を生成する。ただし、ステージNについては、変換データD2OUT(N)=DOUT(N)とする。
また、i=1〜(N−1)について、第i番目の加算器は、第i番目のゲイン誤差補正用演算回路から出力される変換データD3OUT(i+1)に変換データD1OUT(i)を加算して、変換データD2OUT(i)を生成する。
誤差補正用データ生成回路40は、DAC誤差補正用データ生成回路41と、ゲイン誤差補正用データ生成回路42とを含んでいる。DAC誤差補正用データ生成回路41は、A/D変換器のディジタル出力信号D2OUT(1)に基づいてステージ内のDACの誤差を計算し、DACの誤差を補正するためのデータをDAC誤差補正回路20に出力する。ゲイン誤差補正用データ生成回路42は、A/D変換器のディジタル出力信号D2OUT(1)に基づいて増幅器のゲイン誤差を計算し、ゲイン誤差を補正するためのデータをゲイン誤差補正回路30に出力する。
上述したパイプライン型ADCは、複数のステージと、タイミング調整回路10と、DAC誤差補正回路20と、ゲイン誤差補正回路30とによって構成し、誤差補正用データ生成回路40とキャリブレーション制御回路50とは、ADCの外部に接続される演算・制御手段に組み込んで、全体として電子回路を構成するようにしてもよい。
図2に、誤差補正用データ生成回路、DAC誤差補正回路、及び、ゲイン誤差補正回路の構成を示す。図2において、誤差補正用データ生成回路の入力側もしくは出力側に平均化回路43、44を配置することによりノイズの影響を低減することができる。入力側に配置する誤差測定結果平均化回路43においては、A/D変換器において生成される測定値D2OUT(1)を平均化することにより、キャリブレーションにおける測定時のノイズの影響を低減することができる。一方、出力側に配置する誤差補正用データ平均化回路44においては、ゲイン誤差補正用データ生成回路もしくはDAC誤差補正用データ生成回路が出力する誤差補正用のデータを平均化することにより、キャリブレーション時の雑音の影響を低減することができる。この方法によれば、誤差補正用データのみを平均化するため、平均化のために必要なメモリの量を削減できる。
各ステージのDAC誤差補正用演算回路22及びゲイン誤差補正用演算回路32の入力にマルチプレクサ23、34をそれぞれ配置して、補正をかけない場合と等価な補正結果となるような補正用データを入力可能とする。この構成は、キャリブレーションされたデバイスを再度キャリブレーションする場合に、誤差補正用データをメモリに保持したままキャリブレーションが実行可能となる利点を有する。この構成は、例えば、誤差補正用データメモリに記憶したキャリブレーション結果を用いてキャリブレーション結果の平均化を行う際のメモリ量の削減に効果的である。
また、マルチプレクサ24をDAC誤差補正用演算回路の入力に配置することにより、ステージの出力DOUTを0として、ステージの出力がキャリブレーション時の計算結果に加算されないようにする。例えば、ステージkがキャリブレーション中の時には、ステージ1からステージkの出力DOUT(k)を0として、ステージk+1以降のステージによるA/D変換結果のみを誤差補正用データ生成回路に送る。この構成により、キャリブレーション時に各ステージ以降までのA/D変換結果D2OUTをそれぞれ誤差補正用データ生成回路に接続するための配線を削減できる。
図3は、パイプライン型ADCの他の構成例を示すブロック図である。図3に示すように、このパイプライン型ADCは、A/D変換を行うステージ1〜ステージ10を有しており、この内のステージ1のみがキャリブレーション機能を有している。キャリブレーション機能を有するステージ1は、図7から図10、もしくは図16から図17に示すような図1に示すパイプライン型ADCのキャリブレーション機能を有するステージで構成され、キャリブレーション機能を有さないステージ2〜ステージ9の各々は、図13もしくはその他の一般的なパイプライン型ADCのステージ回路で構成され、最終ステージ10は、図14に示すような回路で構成される。
DAC誤差補正用回路20は、ステージ1におけるDAC誤差補正用データDE(1,k)(k=1,2,・・・)をそれぞれ記憶するDAC誤差補正用データメモリ21と、変換データDOUT(1)からDAC誤差補正用データDE(1,k)をそれぞれ減算して、DAC誤差を補正した変換データD1OUT(1)を出力するDAC誤差補正用演算回路22とを含んでいる。
ゲイン誤差補正回路30は、ステージ1におけるゲイン誤差を補正するゲイン誤差補正用データGE(1)をそれぞれ記憶するゲイン誤差補正用データメモリ31と、ゲイン誤差補正用演算回路32と、各ステージのA/D変換結果を加算するための複数の加算器33とを含んでいる。
第9番目の加算器は、ステージ10の変換データDOUT(10)=D2OUT(10)にステージ9の変換データDOUT(9)を加算して、ステージ9以降の変換データD2OUT(9)を出力する。第8番目の加算器は、ステージ9以降の変換データD2OUT(9)にステージ8の変換データDOUT(8)を加算して、ステージ8以降の変換データD2OUT(8)を出力する。第7番目の加算器は、ステージ8以降の変換データD2OUT(8)にステージ7の変換データDOUT(7)を加算して、ステージ7以降の変換データD2OUT(7)を出力する。以下同様である。
ゲイン誤差補正用演算回路32は、ステージ2以降の変換データD2OUT(2)にステージ1のゲイン補正用データGE(1)を用いてゲイン誤差を補正して、ゲイン誤差を補正したステージ2以降の変換データD3OUT(2)を出力する。第1番目の加算器は、ゲイン誤差を補正したステージ2以降の変換データD3OUT(2)にステージ1の変換データD1OUT(1)を加算して、ADC全体のA/D変換結果D2OUT(1)を出力する。
このように、LSB側の1個以上のステージにおいてキャリブレーションを行わなくても変換精度が低下しない場合には、変換精度が低下しない範囲においてLSB側のステージをキャリブレーションを行わない構成とすることにより、パイプライン型ADC全体としての変換精度を低下させずに、回路規模を縮小することができる。
図4にゲイン誤差補正用演算回路における近似計算の方法を示す。ゲイン誤差の補正は設計上の正しいゲインをA、実際のゲインをA’とすると、測定によって求められたゲイン誤差の補正用データGE(X)=A’/AでA/D変換結果を除算することによって実現される。しかし、除算器35を用いると規模が大きくなるため、消費電力と面積が増大する。
通常、ADCは、A’とAとの間の差が小さくなるように設計されるため、ゲイン誤差の補正用データの逆数1/GE(X)は、A’=A(1+ΔA)とおくと、1/GE(X)=A/A’≒1−ΔA+ΔA…と近似することができる。ここで、ゲイン誤差の補正用データをGE’(X)=1/GE(X)≒1−ΔA+ΔA…とすると、ゲイン誤差の補正における演算を、除算から乗算に置き換えることができる。ADCのキャリブレーションにおいては、近似計算を用いることにより、除算器35を乗算器36に置き換えることにより、消費電力と面積を低減できる。
また、ゲイン誤差の補正用データをGE''(X)=A/A’−1≒−ΔA+ΔA…とすることにより、演算を加算と乗算に分解することができる。通常、ADCにおいてはA’とAとの間の誤差が小さいためΔAの値も小さく、面積と消費電力が大きい乗算器36の回路規模を抑えることができる。この構成では、乗算器37と加算器38をゲイン誤差の補正に用いることにより、さらに面積と消費電力を低減できる。
図5に、DAC誤差補正用演算回路における計算の簡略化について示す。DAC誤差補正回路においては、DAC誤差補正用データとステージのA/D変換結果の加算を行うことによってDAC誤差が補正される。DACで発生する誤差が小さいと考えられる場合には、DAC誤差補正用データDE(X)の値が小さいため、最終的なA/D変換結果の下位側のビットにしか影響を与えない。パイプライン型ADCのLSB側のA/D変換結果を決定する前半のステージでは、ステージのA/D変換結果がA/D変換結果全体の上位側のビットにしか影響を与えない。そのため、パイプラインADCの前半のステージでは、DAC誤差補正用演算回路において、ステージのA/D変換結果とDAC誤差補正用データを減算する減算器39を省略できる。
図6は、図1に示すパイプライン型ADCのステージ1〜ステージ(N−1)の各々の構成を示すブロック図である。この回路は、当該ステージのアナログ入力信号VINをA/D変換してMビットを有する変換データDOUTを出力するADC61と、マルチプレクサ62と、(M+1)ビットの変換精度を有するDAC63と、マルチプレクサ64と、サンプルホールド回路66と、サンプルホールド回路66にホールドされているアナログ信号とDAC63から出力されるアナログ信号との差を求める減算器67と、減算器67によって求められた差をゲインAで増幅して当該ステージの残差信号VOUTとして出力する増幅器68とを含んでいる。
マルチプレクサ62は、キャリブレーション制御回路50(図1)から出力されるキャリブレーション制御信号1に従って、非キャリブレーション時、又は、キャリブレーション時において当該ステージがキャリブレーションの対象となっていない場合には、ADC61から出力される変換データDOUTを選択して出力し、当該ステージがキャリブレーションの対象となっている場合には、キャリブレーション制御回路50から出力されるDAC制御信号を選択して出力する。DAC63は、マルチプレクサ62の出力をD/A変換して、アナログ信号VDAを出力する。
マルチプレクサ64は、キャリブレーション制御回路50(図1)から出力されるキャリブレーション制御信号2に従って動作する。当該ステージがキャリブレーションの対象となっていない場合には、マルチプレクサ64はアナログ入力信号VINをサンプルホールド回路66に出力する。サンプルホールド回路66は、当該ステージのアナログ入力信号VINをサンプルホールドする。当該ステージがキャリブレーションの対象となっている場合には、マルチプレクサ64はDAC63の出力をサンプルホールド回路66の入力に接続する。サンプルホールド回路66は、DAC63から出力されるアナログ信号VDAをサンプルホールドする。
ここで、図6に示す回路の動作について詳しく説明する。まず、非キャリブレーション時の通常のA/D変換の動作について説明する。なお、キャリブレーション時において当該ステージがキャリブレーションの対象となっていない場合も、これと同様である。
ADC61は、当該ステージのアナログ入力信号VINをA/D変換して、Mビットの変換データDOUTを求める。変換データDOUTは、マルチプレクサ62を介してDAC63に供給される。DAC63は、Mビットの変換ビット数で用いられ、ADC61から出力されるMビットの変換データDOUTをD/A変換して、アナログ信号VDAとして出力する。
サンプルホールド回路66は、当該ステージのアナログ入力信号VINをサンプルホールドする。減算器67は、サンプルホールド回路66にホールドされているアナログ入力信号VINとDAC63から出力されるアナログ信号VDAとの差を求める。増幅器68は、減算器67によって求められた差を増幅し、残差信号VOUTとして次のステージに出力する。
次に、キャリブレーション時に当該ステージがキャリブレーションの対象となっている場合の動作について説明する。
キャリブレーションの対象となっているステージにおいてはA/D変換を行わないため、ADC61は用いない。キャリブレーション時には、DAC63は、(M+1)ビットの変換ビット数で用いられる。まず、DAC63に、マルチプレクサ62を介して第1のDAC制御信号を与えてD/A変換を行い、第1のキャリブレーション用アナログ信号VDA1を出力する。サンプルホールド回路65は、DAC63の出力VDA1をサンプルホールドする。
次に、DAC63に、マルチプレクサ62を介して、第1のDAC制御信号に対してM+1ビットのDAC63の1LSBに相当する値を加算もしくは減算した第2のDAC制御信号を与えて、D/A変換を行い、第2のキャリブレーション用アナログ信号VDA2を出力する。減算器67は、サンプルホールド回路66にホールドされているアナログ信号VDA1とDAC63から出力されるアナログ信号VDA2との差を求める。
この差は、当該ステージのA/D変換ビット数のMビットの1/2LSBもしくは−1/2LSBに対応しており、この差が増幅器68によって、当該ステージの次のステージ以降で構成されるADCのダイナミックレンジのフルスケールに増幅される。この増幅されたアナログ信号の差は、M+1ビットのDAC63の出力電圧間の差を示しており、その差を当該ステージの次のステージ以降のADCで測定することにより、DAC63の出力電圧の誤差を求める。ここで、この差が増幅器68によって増幅され、次のステージにおけるA/D変換範囲のフルスケールを用いて測定が行われるため、精度の高いキャリブレーションが実現される。
上記のような測定を複数のDAC制御信号について繰り返すことにより、次のステージ以降のADCにおいて得られたデータに基づいて、当該ステージにおけるDAC誤差や増幅器のゲイン誤差を補正することができる。
さらに、第1及び第2のDAC制御信号を供給する順序を変えて2回の測定を行い、これらの測定値の平均を求めることにより、次のステージ以降におけるADCの誤差がキャリブレーション結果に与える影響を低減できる。
本実施形態によれば、図30に示した従来のパイプライン型ADCのステージ構成と比較して、ステージのDACの1ビット分とマルチプレクサ2個のみを追加することによりパイプライン型ADCのキャリブレーションが実現できる。ただし、M+1ビットのDAC63は、必ずしもM+1ビットの変換ビット数である必要はなく、Mビットより多い変換ビット数であれば良い。
図7は、図1に示すパイプライン型ADCのステージ1〜ステージ(N−1)の各々に用いられる具体的な回路例を示す図である。この例においては、ステージ1〜ステージ(N−1)の各々においてキャリブレーションを行うものとし、各ステージにおけるA/D変換の変換ビット数を2ビットとしている。
ADC61は、アナログ入力電圧VINと、DAC63を構成する抵抗ラダー72において生成された参照電位V、V、V、Vとをそれぞれ比較する複数のコンパレータ71と、これらのコンパレータ71から出力される比較結果に基づいてA/D変換結果を求める第1のエンコーダ75と、第1のエンコーダ75が求めたA/D変換結果を2進数のデータに変換する第2のエンコーダ76とを含んでいる。
ADC61の参照電圧V、V、V、Vを、ADC61がDAC63と共有する抵抗ラダー72で生成することにより、ハードウェア量が削減されるとともに、キャリブレーション時にコンパレータ71の参照電圧のレベルと同じレベルをDAC63で発生してキャリブレーションに用いるため、参照電圧の誤差の影響が考慮されたキャリブレーション結果を得られるという利点がある。
DAC63としては、直列接続された複数の抵抗からなる抵抗ラダー72を含み、入力されるデータに応じてこれらの抵抗の端子における電位の内から1つの電位を選択して出力する抵抗ラダー型のDACが用いられる。DAC63において、参照電位+VREF及び−VREFと、これらの参照電位間の電位差を8個の抵抗によって分割することにより生成された7つの電位との合計9つの電位V〜Vの内から、入力されるデータに応じて複数のスイッチ73のいずれか1つのみがオンすることにより、1つの電位が選択されてVDAとして出力される。
キャリブレーション時には、まず、DAC63にマルチプレクサ62を介して第1のDAC制御信号を入力することにより、ADC61の参照電圧として用いるV、V、V、Vの内のいずれかをDAC63から出力し、第1のキャリブレーション用アナログ信号VDA1とする。次に、DAC63にマルチプレクサ62を介して第2のDAC制御信号を入力することにより、非キャリブレーション時のA/D変換動作時にDAC63の出力として用いるV、V、V、V、Vの内のいずれかをDAC63から出力し、第2のキャリブレーション用アナログ信号VDA2とする。
また、図6に示すマルチプレクサ64と、サンプルホールド回路66と、減算器67と、増幅器68とは、図7においては1個のスイッチトキャパシタ回路80によって実現されている。スイッチトキャパシタ回路80は、オペアンプ81と、2つのキャパシタC1及びC2と、スイッチSW1〜SW2とを含んでいる。
非キャリブレーション時およびキャリブレーション時に当該ステージがキャリブレーション対象となっていない場合には、スイッチトキャパシタ回路80は、アナログ入力信号VINをサンプルホールドし、アナログ入力信号VINとDAC63のアナログ出力信号VDAとの差を増幅して、残差信号VOUTとして次のステージに出力する。
当該ステージがキャリブレーションの対象となっている場合には、スイッチトキャパシタ回路80は、DAC63が出力するADC61の参照電圧V、V、V、Vの内のいずれかである第1のキャリブレーション用アナログ出力信号VDA1をサンプルホールドし、このDAC63のアナログ出力信号VDA1とDAC63が出力するA/D変換時に用いられるDAC63の出力レベルV、V、V、V、Vの内のいずれかである第2のキャリブレーション用アナログ出力信号VDA2との差を増幅して、次のステージに出力する。このスイッチトキャパシタ回路80の出力を次のステージ以降でA/D変換して、VDA2とVDA1の差のディジタル値を求めることにより、DAC63が出力する各レベルの電圧値を測定してキャリブレーションを実現する。
また、第1のDAC制御信号と第2のDAC制御信号をDAC63に入力する手順を反転することにより、A/D変換時に用いられるDACの出力レベルV、V、V、V、Vの内のいずれかを第1のキャリブレーション用アナログ信号とし、ADC61の参照電圧V、V、V、Vの内のいずれか第2のキャリブレーション用アナログ信号として、DACが出力する各レベル間の電圧値を測定することも可能である。DAC制御信号の入力手順を反転することにより、スイッチトキャパシタ回路80が出力する電圧値がアナロググランドレベルを基準に反転するため、次のステージ以降でA/D変換を行って測定する時に、反転する場合と反転しない場合では、異なる電圧レベルでの測定が可能となり、反転する場合と反転しない場合の測定値を平均することにより、次のステージ以降のA/D変換の誤差のキャリブレーション結果への影響を低減できる。
本実施形態によれば、アナログ回路としては、ステージのDACに1ビット分を追加するのみで、パイプライン型ADCのキャリブレーションが可能となる。DACの変換精度を1ビット増加するために必要なコストはスイッチのみであり、ステージ外部にキャリブレーション用のDACを配置する方式と比較して、ハードウェアの量の増加が少ない。また、測定対象のDAC自身でキャリブレーション用の電圧を生成するため、ステージ外部に別のキャリブレーション用のDACを配置する構成で問題となるDAC間の特性差がない。さらに、キャリブレーション時にコンパレータの参照電圧をキャリブレーション用のアナログ信号として用いるためコンパレータの参照電圧の誤差の影響を考慮したキャリブレーションが行われる。
また、DAC63に抵抗ラダー型のDACを用いることにより、スイッチトキャパシタ型のDACを用いる場合と比較して、スイッチトキャパシタ回路において必要となるキャパシタの数を低減すると共に、スイッチトキャパシタ回路のキャパシタの容量に要求されるマッチング精度の条件を緩和することができる。さらに、ADC61において、コンパレータの参照電圧の発生に用いる抵抗ラダーをDAC63の抵抗ラダー72と共有することにより、抵抗素子の数を削減することができる。
図8は、パイプライン型ADCのステージ1〜ステージ(N−1)のいずれかに用いられる他の回路を示す図である。この回路は、ADC61とDAC63とスイッチトキャパシタ回路80とが差動構成となっており、差動入出力を行う。その他の点に関しては、先に説明した回路と同様である。
ADC61は、差動入力で動作する差動型のコンパレータ71と、これらのコンパレータの出力を受けて動作する第1のエンコーダ75と、第1のエンコーダ75の出力を受けて動作する第2のエンコーダ76とを含んでいる。第1のエンコーダ75及び第2のエンコーダ76は、一実施形態における第1のエンコーダ75及び第2のエンコーダ76と同様の動作を行う。
DAC63においては、抵抗ラダー72内の隣接する2つの抵抗の接続点、又は、参照電位と抵抗との接続点に、2つのスイッチが接続されており、マルチプレクサ62から供給されるデータに基づいてこれらのスイッチ73が選択的にオン/オフすることにより、1対の出力電圧VDA及び−VDAが生成される。
スイッチトキャパシタ回路80は、第1組のスイッチSW11及びSW12と、第2組のスイッチSW21及びSW22と、第3組のスイッチSW31及びSW32と、2組のキャパシタC1及びC2と、差動入出力型のオペアンプ81とを含んでいる。スイッチトキャパシタ回路80は、アナログ入力信号VIN及び−VINと、DAC63の出力電圧VDA及び−VDAとに基づいて、切換動作、サンプルホールド動作、減算処理、増幅動作を行い、残差信号VOUT及び−VOUTを差動出力する。
このように、各回路を差動構成とすることにより、ノイズの影響を低減することができる。また、各回路を差動構成とした上で抵抗ラダー型のDACを用いる場合には、差動構成のスイッチトキャパシタ型のDACを用いる場合と比較して、受動素子数の増加が少ないという利点を有する。
図9は、パイプライン型ADCのステージ1〜ステージ(N−1)のいずれかに用いられる他の回路例を示す図である。この回路は、図8の回路と同様に差動構成となっているが、DAC63とスイッチトキャパシタ回路80に用いるスイッチの数を削減したものである。
DAC63においては、参照電位V〜Vにそれぞれ隣接された4つのスイッチとスイッチトキャパシタ回路80のスイッチSW11に接続されたキャパシタC1との間にスイッチSW21が接続され、参照電位V〜Vにそれぞれ隣接された4つのスイッチとスイッチトキャパシタ回路80のスイッチSW11に接続されたキャパシタC1との間にスイッチSW31が接続されている。
また、参照電位V〜Vにそれぞれ隣接された4つのスイッチとスイッチトキャパシタ回路80のスイッチSW12に接続されたキャパシタC1との間にスイッチSW22が接続され、参照電位V〜Vにそれぞれ隣接された4つのスイッチとスイッチトキャパシタ回路80のスイッチSW12に接続されたキャパシタC1との間にスイッチSW32が接続されている。
このように、スイッチSW21、SW22、SW31、SW32を、DAC130とスイッチトキャパシタ回路80とにおいて共有化し、全体としてスイッチの数を減少させると共に、DAC63の出力が安定するまでの時間を短縮させることができる。
図10は、パイプライン型ADCのステージ1〜ステージ(N−1)のいずれかに用いられるさらに他の回路例を示す図である。この回路も、図8の回路と同様に差動構成となっているが、DAC63に含まれているスイッチの数を削減したものである。
本実施形態においては、マルチプレクサ62から出力されるデータは、DAC63ではなく、スイッチ制御回路100に供給される。スイッチ制御回路100は、キャリブレーション制御信号及びマルチプレクサ62から出力されるデータに基づいて、スイッチトキャパシタ回路80内のスイッチSW11及びSW12を制御するスイッチ制御信号Sを出力すると共に、DAC63内のスイッチSW21〜SW101及びSW22〜SW102を制御するスイッチ制御信号S2〜S10を出力する。全体としてスイッチの数を減少することにより、配線の簡素化やチップ面積の低減を図ることができる。
ここで、図7の回路におけるスイッチ制御回路100の動作について説明する。スイッチ制御回路100は、キャリブレーション制御信号に従って、スイッチSW1及びSW2にスイッチ制御信号S及びSをそれぞれ供給し、これらのスイッチを制御する。図11に、通常動作時におけるキャリブレーション制御信号とスイッチ制御信号S及びSの波形を示し、図12に、当該ステージがキャリブレーションの対象となっている場合におけるキャリブレーション制御信号とスイッチ制御信号S及びSの波形を示す。
非キャリブレーション時においては、図11に示すように、サンプル時にアナログ入力信号VINを、ホールド時にDAC63のアナログ出力信号VDAをスイッチトキャパシタ回路80に入力するように、スイッチSW1及びSW2が制御される。当該ステージがキャリブレーションの対象となっている場合においては、図12に示すように、サンプル時及びホールド時にDAC63のキャリブレーション用アナログ信号出力VDA1及びVDA2をスイッチトキャパシタ回路80に順次入力するように、スイッチSW1及びSW2が制御される。
なお、キャリブレーションは、パイプライン型ADCのステージ1〜ステージ(N−1)の内の少なくとも1つのステージにおいて行うようにしても良い。その場合には、他のステージにおいて、キャリブレーション機能を省略することも可能である。図13に、キャリブレーション機能を省略したステージの回路例を示す。この回路においては、図7に示す回路からマルチプレクサ62を省略すると共に、DAC63の変換精度をMビット(M=2)としている。
図14は、図1に示すパイプライン型ADCの最終ステージに用いられる回路例を示す図である。この回路は、2ビットのフラッシュ型のADC61によって構成されている。ADC61においては、参照電位+VREF及び−VREFと、これらの参照電位間の電位差を4つの抵抗によって分割することにより生成された3つの電位との合計5つの電位V、V、V、V、Vが生成される。ADC61は、アナログ入力電圧VINと、電位V、V、V、V、Vとをそれぞれ比較する複数のコンパレータ91と、これらのコンパレータから出力される比較結果に基づいてA/D変換結果を求めて2進数のデータとして出力するエンコーダ95とを含んでいる。
図15は、図1に示すパイプライン型ADCのキャリブレーション機能を有するステージ1〜ステージ(N−1)の各々に用いられる別の回路例を示す。この回路は、当該ステージのアナログ入力信号VINをA/D変換してMビットを有する変換データDOUTを出力するADC61と、マルチプレクサ62と、Mビットの変換ビット数を有する第1のDAC63と、Mビットの変換ビット数を有する第2のDAC65と、マルチプレクサ64と、サンプルホールド回路66と、サンプルホールド回路66にホールドされているアナログ信号とDAC63から出力されるアナログ信号との差を求める減算器67と、減算器67によって求められた差をゲインAで増幅して当該ステージの残差信号VOUTとして出力する増幅器68とを含んでいる。
図15に示す回路の動作について説明する。まず、通常の動作について説明する。なお、キャリブレーション動作時において当該ステージがキャリブレーションの対象となっていない場合も、これと同様である。
ADC61は、当該ステージのアナログ入力信号VINをA/D変換して、Mビットの変換データDOUTを求める。変換データDOUTは、マルチプレクサ62を介して第1のDAC63に供給される。第1のDAC63は、ADC61から出力される変換データDOUTをD/A変換して、アナログ信号VDA1を出力する。
サンプルホールド回路66は、当該ステージのアナログ入力信号VINをサンプルホールドする。減算器67は、サンプルホールド回路66にホールドされているアナログ入力信号VINと第1のDAC63から出力されるアナログ信号VDA1との差を求める。増幅器68は、減算器67によって求められた差を増幅し、残差信号VOUTとして次のステージに出力する。
次に、当該ステージがキャリブレーションの対象となっている場合の動作について説明する。キャリブレーションの対象となっているステージにおいてはA/D変換を行わないため、ADC61は用いられない。まず、第2のDAC65に、DAC制御信号2が供給される。第2のDAC65は、DAC制御信号2をD/A変換して、キャリブレーション用アナログ信号VDA2を出力する。マルチプレクサ64は第2のDAC65の出力をサンプルホールド回路の入力に接続する。サンプルホールド回路66は、第2のDAC65から出力されるキャリブレーション用アナログ信号VDA2をサンプルホールドする。
次に、第1のDAC63に、マルチプレクサ62を介して、DAC制御信号1が供給される。第1のDAC63は、DAC制御信号1をD/A変換して、キャリブレーション用アナログ信号VDA1を出力する。減算器67は、サンプルホールド回路66にホールドされているキャリブレーション用アナログ信号VDA2と第1のDAC63から出力されるキャリブレーション用アナログ信号VDA1との差を求める。増幅器68は、減算器67によって求められた差を増幅し、残差信号VOUTとして次のステージに出力する。
本実施形態によれば、図30に示す従来のパイプライン型ADCのステージ構成と比較して、ステージに1個のDACと2個のマルチプレクサとを追加することにより、パイプライン型ADCのキャリブレーションを実現することができる。ただし、第2のDAC65は、必ずしてもMビットの変換ビット数である必要はなく、MビットもしくはMビットよりも多い変換ビット数であれば良い。
図16は、図15に示すパイプライン型ADCのステージの具体的な回路例を示す図である。このステージの回路は、アナログ入力信号VINをA/D変換するMビットのADC61と、MビットのDAC65と、図15におけるMビットのDAC63とマルチプレクサ64とサンプルホールド回路66と減算器67と増幅器68との機能を備えるスイッチトキャパシタ回路110と、2つのエンコーダ77及び78と、マルチプレクサ79と、スイッチ制御回路100とによって構成される。
MビットのDAC65は、直列接続された複数の抵抗からなる抵抗ラダー72と、DAC制御信号2に応じてこれらの抵抗の端子における電位の内から1つの電位を選択して出力するスイッチ73とを含む。DAC65において、参照電位+VREF及び−VREFと、これらの参照電位間の電位差を8個の抵抗によって分割することにより生成された7つの電位との合計9つの電位V〜Vの内の電位V、V、V、Vのいずれか1つを、DAC制御信号2に応じて複数のスイッチ73のいずれか1つのみがオンすることにより、キャリブレーション用アナログ信号VDA2として選択して出力する。
ADC61は、アナログ入力電圧VINと、DAC65を構成する抵抗ラダー72において生成された参照電圧V、V、V、Vとをそれぞれ比較する複数のコンパレータ71と、これらのコンパレータ71から出力される比較結果に基づいてA/D変換結果を求めるエンコーダ77と、コンパレータ71から出力される比較結果をスイッチトキャパシタ回路110が備えるDACの機能を制御するためのデータに変換するエンコーダ78とを含んでいる。ADC61においては、DAC65と共有する抵抗ラダー72が出力する電位の内の電位V、V、V、Vを利用して、A/D変換が行われる。
図16に示す回路例においては、図15に示すDAC63と、マルチプレクサ64と、サンプルホールド回路66と、減算器67と、増幅器68とが、1個のスイッチトキャパシタ回路110によって実現されている。スイッチトキャパシタ回路110は、オペアンプ111と、複数のキャパシタ112と、スイッチ113とを含んでいる。
当該ステージが非キャリブレーション時の場合には、スイッチトキャパシタ回路110は、アナログ入力信号VINをサンプルホールドし、アナログ入力信号VINと、スイッチトキャパシタ回路110が備えるDAC機能が発生し、DAC65の抵抗ラダー72が生成する電位V、V、V、V、Vのいずれかに相当するDAC65の出力電圧VDA1との差を増幅して、それを残差信号VOUTとして次のステージに出力する。
当該ステージがキャリブレーションの対象となっている場合には、スイッチトキャパシタ回路110は、DAC制御信号2に基づいてDAC65が出力するキャリブレーション用アナログ信号VDA2をサンプルホールドし、このキャリブレーション用アナログ信号VDA2と、DAC制御信号1を入力して動作するスイッチトキャパシタ回路110が備えるDAC機能が発生するキャリブレーション用アナログ信号VDA1との差を増幅して、それを次のステージに出力する。
図17は、図16とスイッチトキャパシタ回路の構成が異なるステージの回路例を示す図である。このステージの回路は、入力信号をA/D変換するMビットのADC61と、MビットのDAC65と、図15におけるMビットのDAC63とマルチプレクサ64とサンプルホールド回路66と減算器67と増幅器68との機能を備えるスイッチトキャパシタ回路110によって構成される。図17の回路においては、図16の回路と比較して、スイッチトキャパシタ回路110に用いる容量112の数が増加するが、入力にアナロググランドレベルを必要としないという利点を有する。
以下においては、図7に示すステージ回路の構成を例として、DACの誤差と増幅器のゲインの誤差がA/D変換におよぼす影響について説明する。なお、図8から図10、図16、図17のステージの回路構成の場合においても以下の説明と同様である。
1つのステージにおけるDACの出力電圧が理想的なDACの出力電圧に対して誤差を有する場合には、次のステージに出力する残差信号に誤差が発生する。図18は、実際のDACの出力電圧V’が、理想的なDACの出力電圧Vに対して誤差を有する場合を示しており、これによりDACの出力電圧に、(V’−V)−(V−V)の誤差を生じる。
図19は、DAC63の出力電圧の誤差がステージの入出力特性およびA/D変換結果に及ぼす影響を示す。横軸にはアナログ入力信号の電圧をとり、縦軸にはそれぞれ残差信号の電圧及びADCの出力コードをとっている。ステージiにおいて、アナログ入力信号VIN(i)が−VREF(i)からVREF(i)まで変化すると、残差信号VOUT(i)は、−VREF(i+1)からVREF(i+1)までの間で変化するはずであるが、DAC63の誤差の影響を受けて、A(i)・(V3’−V)−A(i)・(V3−V)の誤差が生じる。これにより、次のステージ以降において求められるADCの出力に、次式で表される誤差E1が生じる。
E1=AD{A(i)・(V’−V)}−AD{A(i)・(V−V)}
ここで、AD{V}は、次のステージに出力される電圧VをA/D変換して得られたデータによって表される値を意味している。
1つのステージにおいてゲイン誤差が存在する場合には、次のステージに出力される残差信号の振幅が理想値と異なるため、当該ステージのDACの出力が切り替わる電圧、即ち、次のステージのA/D変換結果が切り替わる電圧におけるA/D変換特性の線形性が悪化する。
図20は、上述したスイッチトキャパシタ回路の構成例を示している。このスイッチトキャパシタ回路は、アナログ入力信号VIN及びDACの出力電圧VDAを交互に入力し、次式で表される出力電圧VOUTを発生する。
OUT=C1/C2・(VIN−VDA
即ち、理想的なゲインAは、A=C1/C2で表される。ここで、キャパシタの容量がばらつきによりC1’及びC2’になったとすると、実際のゲインA’は、A’=C1’/C2’で表される。
図21は、ゲイン誤差がA/D変換結果に及ぼす影響を示す。横軸にはアナログ入力信号の電圧をとり、縦軸には残差信号の電圧及びADCの出力コードをとっている。ステージiにおいて、アナログ入力信号VIN(i)が−VREF(i)からVREF(i)まで変化すると、残差信号VOUT(i)は、−VREF(i+1)からVREF(i+1)までの間で変化するはずであるが、ゲイン誤差の影響を受けて、VREF(i+1)・(1−A’(i)/A(i))の誤差を生じる。これにより、次のステージにおけるADC出力電圧の各ステップに、次式で表される誤差E2を生じる。
E2=AD{VREF(i+1)・(1−A’(i)/A(i))}
ここで、実際のDACにおける2つの出力電圧間の電位差のディジタル値SUB〜SUBは、次のように表される。
SUB=AD{A’(i)・(V−V)}−AD{A’(i)・(V−V)}
SUB=AD{A’(i)・(V−V)}−AD{A’(i)・(V−V)}
SUB=AD{A’(i)・(V−V)}−AD{A’(i)・(V−V)}
SUB=AD{A’(i)・(V−V)}−AD{A’(i)・(V−V)}
従って、実際のDACにおける2つの出力電圧間の電位差のディジタル値の総和S’は、次式で表される。
S’=Σ(j=1〜4){AD{A’(i)・(V2j−V2j−1)}−AD{A’(i)・(V2j−V2j+1)}}
一方、理想的なDACの2つの出力電圧間の電位差のディジタル値の総和Sは、次式で表される。
S=Σ(j=1〜4){AD{A(i)・(V2j−V2j−1)}−AD{A(i)・(V2j−V2j+1)}}
従って、これらの差(S−S’)が、ゲイン誤差の影響による差となる。
次に、本実施形態に係る半導体装置に含まれているパイプライン型ADCのキャリブレーション方法について、図22及び図23を参照しながら説明する。
図22は、パイプライン型ADCのキャリブレーション方法の手順の例を示す。図22に示すように、キャリブレーションを開始すると、ステップS11において、初期設定を行う。ここでは、任意のステージiについてキャリブレーションを行うものとし(i<N)、DACに含まれている第1番目の抵抗から測定を開始する(k=1)。なお、最後のステージについては、キャリブレーションを行わない。
ステップS12において、ステージiにおいて(M+1)ビットの変換精度を有するDACの出力電圧をV2kに設定し、スイッチトキャパシタ回路によってこの電圧をサンプリングする。ステップS13において、DACの出力電圧をV2k−1に設定し、スイッチトキャパシタ回路に入力する。
ステップS14において、スイッチトキャパシタ回路の出力電圧A(i)・(V2k−V2k−1)を次のステージ以降のADCでA/D変換した結果として、AD{A(i)・(V2k−V2k−1)}を得る。ここで、AD{V}は、次のステージに出力される電圧VをA/D変換して得られたデータによって表される値を意味している。
ステップS15において、ステージiにおいて(M+1)ビットの変換精度を有するDACの出力電圧をV2kに設定し、スイッチトキャパシタ回路によってこの電圧をサンプリングする。ステップS16において、DACの出力電圧をV2k+1に設定し、スイッチトキャパシタ回路に入力する。
ステップS17において、スイッチトキャパシタ回路の出力電圧A(i)・(V2k−V2k+1)を次のステージ以降のADCでA/D変換した結果として、AD{A(i)・(V2k−V2k+1)}を得る。
ステップS18において、ステップS14及びS17におけるA/D変換の結果から、DACにおける2つの出力電圧間の電位差のディジタル値SUB=AD{A(i)・(V2k−V2k−1)}−AD{A(i)・(V2k−V2k+1)}を、DAC誤差補正用データ生成回路において計算する。
ステップS19において、前回までのディジタル値の和と今回得られたディジタル値とを加算して、DACにおける2つの出力電圧間の電位差のディジタル値の総和ΣSUBを、j=1〜kについて求める。
ステップS20において、全ての抵抗の測定が完了したか否かを判定する。全ての抵抗の測定が完了していない場合には、ステップS21において、次の抵抗を測定するための設定を行い、kの値をインクリメントした後、ステップS12に移行する。一方、全ての抵抗の測定が完了した場合には、図13のステップS22に移行する。
図23に示すように、ステップS22において、ステップS19において得られた総和ΣSUBとその理想的な値(設計値)とから、ステージiとステージ(i+1)との間のゲイン誤差の補正用データGE(i)をゲイン誤差補正用データ生成回路において求め、ゲイン誤差補正用データメモリに記憶する。ステップS23において、DAC誤差補正用データの計算の初期化を行い、k=1とする。
ステップS24において、DACの出力電圧ステップの総和ΣSUBとゲイン誤差補正用データGE(i)との積から、DAC出力のディジタル値に相当する値GE(i)ΣSUBを、DAC誤差補正用データ生成回路において計算する。
ステップS25において、DAC出力のディジタル値GE(i)ΣSUBと理想的なDAC出力のディジタル値とから、DAC誤差補正用データ生成回路において、ステージiにおけるADCの出力DOUT(i)が(k+1)となる場合、即ち、DACの出力がV2k+1となる場合のDAC誤差補正用データDE(i,k+1)を計算し、DAC誤差補正用データメモリに記憶する。
ステップS26において、全ての補正用データの計算が完了したか否かを判定する。全ての補正用データの計算が完了していない場合には、ステップS27に移行して、次のDAC誤差補正用データを計算するための設定を行い、kの値をインクリメントした後、ステップS24に移行する。一方、全ての補正用データの計算が完了した場合には、キャリブレーションを終了する。
次に、さらに精度の高いキャリブレーション方法について、図24及び図25を参照しながら説明する。
図24に示すように、ステップS11において初期設定を行った後、ステップS31において、ステージiにおいて(M+1)ビットの変換精度を有するDACの出力電圧をV2kに設定し、スイッチトキャパシタ回路によってこの電圧をサンプリングする。ステップS32において、DACの出力電圧をV2k−1に設定し、スイッチトキャパシタ回路に入力する。
ステップS33において、スイッチトキャパシタ回路の出力電圧A(i)・(V2k−V2k−1)をステージ(i+1)のADCでA/D変換した結果として、AD{A(i)・(V2k−V2k−1)}を得る。
ステップS34において、ステージiにおいてDACの出力電圧をV2kに設定し、スイッチトキャパシタ回路によってこの電圧をサンプリングする。ステップS35において、DACの出力電圧をV2k+1に設定し、スイッチトキャパシタ回路に入力する。
ステップS36において、スイッチトキャパシタ回路の出力電圧A(i)・(V2k−V2k+1)をステージ(i+1)のADCでA/D変換した結果として、AD{A(i)・(V2k−V2k+1)}を得る。
ステップS37において、ステップS33及びS36におけるAD変換の結果から、DACにおける2つの出力電圧間の電位差のディジタル値SUB1=AD{A(i)・(V2k−V2k−1)}−AD{A(i)・(V2k−V2k+1)}を、DAC誤差補正用データ生成回路において計算する。
次に、図25に示すように、ステップS38において、ステージiにおいてDACの出力電圧をV2k−1に設定し、スイッチトキャパシタ回路によってこの電圧をサンプリングする。ステップS39において、DACの出力電圧をV2kに設定し、スイッチトキャパシタ回路に入力する。
ステップS40において、スイッチトキャパシタ回路の出力電圧A(i)・(V2k−1−V2k)をステージ(i+1)のADCでA/D変換した結果として、AD{A(i)・(V2k−1−V2k)}を得る。
ステップS41において、ステージiにおいてDACの出力電圧をV2k+1に設定し、スイッチトキャパシタ回路によってこの電圧をサンプリングする。ステップS42において、DACの出力電圧をV2kに設定し、スイッチトキャパシタ回路に入力する。
ステップS43において、スイッチトキャパシタ回路の出力電圧A(i)・(V2k+1−V2k)をステージ(i+1)のADCでA/D変換した結果として、AD{A(i)・(V2k+1−V2k)}を得る。
ステップS44において、ステップS40及びS43におけるA/D変換の結果から、DACにおける2つの出力電圧間の電位差のディジタル値SUB2=AD{A(i)・(V2k+1−V2k)}−AD{A(i)・(V2k−1−V2k)}を、DAC誤差補正用データ生成回路において計算する。
ステップS45において、2回の測定結果の平均値SUB=(SUB1+SUB2)/2を、DAC誤差補正用データ生成回路において計算する。ステップS46において、前回までの平均値の和と今回得られた平均値とを加算して、DACの出力電圧ステップの総和ΣSUBを、j=1〜kについて求める。
ステップS20において、全ての抵抗の測定が完了したか否かを判定する。以下のステップについては、図22及び図23に示すのと同様である。このキャリブレーション方法によれば、手順を変えた2度の測定により得られた結果を平均化することによって、次のステージ以降におけるADCの素子ばらつきによって発生するキャリブレーション誤差を低減することができる。
次に、キャリブレーション動作中におけるA/D変換の方法について、図26を参照しながら説明する。
図26に示すように、A/D変換を開始すると、ステップS51において、キャリブレーションの対象となるステージiのDACをキャリブレーション制御回路によって制御し、(M+1)ビットの変換精度を有するDACにおける2つの出力電圧間の電位差を増幅してステージiの出力電圧VOUT(i)として出力し、ステージ(i+1)以降において順次A/D変換を行う。
ステップS52において、図1に示すディジタル遅延回路10により、各ステージの変換データDOUT(i)に所望の遅延を与える。この変換データDOUT(i)は、キャリブレーション機能を有するステージについては、DAC誤差補正回路20に出力され、キャリブレーション機能を有しないステージについては、ゲイン誤差補正回路30に出力される。
ステップS53において、キャリブレーション機能を有するステージiについて、変換データDOUT(i)に応じたDAC誤差補正用データDE(i,DOUT(i))を、DAC誤差補正用データメモリからDAC誤差補正回路20のDAC誤差補正用演算回路22に出力する。なお、キャリブレーション機能を有しないステージについては、この操作は行わない。
ステップS54において、キャリブレーション機能を有するステージiについて、DAC誤差補正回路のDAC誤差補正用演算回路によって、DAC誤差を補正した当該ステージの変換データD1OUT(i)を求め、ゲイン誤差補正回路30に出力する。なお、キャリブレーション機能を有しないステージについては、この操作は行わない。
ステップS55において、キャリブレーション機能を有するステージiについて、LSB側のステージから順に、ステージNからステージ(i+1)までの変換データD2OUT(i+1)と、ゲイン誤差補正用データメモリから出力されるゲイン誤差の補正用データGE(i)とを用いて、ゲイン誤差補正用演算回路によりゲイン誤差を補正することにより、ゲイン誤差を補正したステージNからステージ(i+1)までの変換データD3OUT(i+1)=GE(i)×D2OUT(i+1)を得る。なお、キャリブレーション機能を有しないステージについては、この操作は行わない。
ステップS56において、キャリブレーション機能を有するステージiについて、ゲイン誤差を補正したステージNからステージ(i+1)までの変換データD3OUT(i+1)に、DAC誤差を補正した後のステージiにおける変換データD1OUT(i)を加算器により加算して、ステージNからステージiまでの変換データD2OUT(i)=D1OUT(i)+D3OUT(i+1)を得る。一方、キャリブレーション機能を有しないステージiについては、ステージNからステージ(i+1)までの変換データD2OUT(i+1)に、ステージiにおける変換データDOUT(i)を加算器により加算して、ステージNからステージiまでの変換データD2OUT(i)=DOUT(i)+D2OUT(i+1)を得る。
ステップS57において、全てのステージについて変換データの加算が終了したか否かを判定する。変換データの加算が終了していない場合には、ステップS55に移行する。一方、全てのステージについて変換データの加算が終了した場合には、A/D変換を終了する。
次に、通常動作中におけるA/D変換の方法について、図27を参照しながら説明する。ここでは、ステージ1〜ステージ(N−1)の各々がキャリブレーション機能を有するものとする。
A/D変換を開始すると、ステップS61において、パイプライン型ADCにアナログ信号VIN(1)を入力し、各ステージにおいて順次A/D変換を開始する。ステップS62において、図1に示すタイミング調整回路10により、各ステージの変換データDOUT(i)に所望の遅延を与え、DAC誤差補正回路20に出力する。
ステップS63において、ステージi=1〜(N−1)について、DAC誤差メモリから変換データDOUT(i)に応じたDAC誤差補正用データDE(i,DOUT(i))を、DAC誤差補正回路20のDAC誤差補正用演算回路22に出力する。
ステップS64において、ステージi=1〜(N−1)について、DAC誤差補正回路20のDAC誤差補正用演算回路22によって、DAC誤差を補正した当該ステージの変換データD1OUT(i)=DOUT(i)−DE(i,DOUT(i))を求め、ゲイン誤差補正回路30に出力する。
ステップS65において、LSB側のステージから順に、ステージNからステージ(i+1)までの変換データD2OUT(i+1)と、ゲイン誤差補正用データメモリから出力されるゲイン誤差の補正用データGE(i)とを用いて、ゲイン誤差補正用演算回路によりゲイン誤差を補正することにより、ゲイン誤差を補正したステージNからステージ(i+1)までの変換データD3OUT(i+1)=GE(i)×D2OUT(i+1)を得る。
ステップS66において、ゲイン誤差を補正したステージNからステージ(i+1)までの変換データD3OUT(i+1)に、DAC誤差を補正した後のステージiにおける変換データD1OUT(i)を加算器により加算して、ステージNからステージiまでの変換データD2OUT(i)=D1OUT(i)+D3OUT(i+1)を得る。
ステップS67において、全てのステージについて変換データの加算が終了したか否かを判定する。変換データの加算が終了していない場合には、ステップS65に移行する。一方、全てのステージについて変換データの加算が終了した場合には、A/D変換を終了する。
次に、本実施形態に係るパイプライン型ADCにおける誤差補正の手順について、図28を参照しながら説明する。図28は、アナログ入力信号と残差信号及びADC出力との関係を示している。
図28の(a)に示すように、パイプライン型ADCにおいて、DAC誤差と増幅器等のゲイン誤差とが発生している場合に、まず、ゲイン誤差の補正を行うことによりこれを除去して、図28の(b)に示すような特性とする。図28の(b)に示す特性においては、DAC誤差によりA/D変換特性が非直線性を示しているが、さらに、DAC誤差の補正を行うことにより、図28の(c)に示すように、A/D変換特性の非直線性が補正され、理想的なA/D変換特性を実現することができる。
以上述べたように、本発明によれば、パイプライン型ADCの少なくとも1つのステージにおいて、Mビットの変換精度を有するアナログ/ディジタル変換回路と、Mビットより高い変換精度を有するディジタル/アナログ変換回路もしくはMビットの複数のディジタル/アナログ変換回路とを用いることにより、比較的簡単な回路構成によって、当該ステージにおけるディジタル/アナログ変換回路の出力電圧の誤差及び増幅器等のゲイン誤差を補正することができる。
本発明は、複数のステージに分けてアナログ信号をディジタル信号に変換するパイプライン型のアナログ/ディジタル変換器及び電子回路において利用することが可能である。
本発明の一実施形態に係るアナログ/ディジタル変換器としてパイプライン型ADCの構成を示すブロック図である。 図1のパイプライン型ADCにおける誤差補正用データ生成回路、DAC誤差補正回路、及び、ゲイン誤差補正回路の構成例を示す図である。 パイプライン型ADCの他の構成例を示すブロック図である。 ゲイン誤差補正用演算回路における近似計算の方法を示す図である。 DAC誤差補正用演算回路における計算の簡略化について示す図である。 図1に示すパイプライン型ADCのステージ1〜ステージ(N−1)の各々の構成を示すブロック図である。 図1に示すパイプライン型ADCのステージ1〜ステージ(N−1)の各々に用いられる具体的な回路例を示す図である。 パイプライン型ADCのステージ1〜ステージ(N−1)のいずれかに用いられる他の回路を示す図である。 パイプライン型ADCのステージ1〜ステージ(N−1)のいずれかに用いられる他の回路例を示す図である。 パイプライン型ADCのステージ1〜ステージ(N−1)のいずれかに用いられるさらに他の回路例を示す図である。 非キャリブレーション時におけるキャリブレーション制御信号とスイッチ制御信号S及びSの波形を示す図である。 当該ステージがキャリブレーションの対象となっている場合におけるキャリブレーション制御信号とスイッチ制御信号S及びSの波形を示す図である。 図1に示すパイプライン型ADCのキャリブレーション機能を有さないステージの構成を示す図である。 図1に示すパイプライン型ADCの最終ステージの構成を示す図である。 図1に示すパイプライン型ADCのキャリブレーション機能を有するステージ1〜ステージ(N−1)の各々に用いられる別の構成を示す図である。 図15に示すパイプライン型ADCのステージの具体的な回路例を示す図である。 図16とスイッチトキャパシタ回路の構成が異なるステージの回路例を示す図である。 実際のDACの出力電圧V’が、理想的なDACの出力電圧Vに対して誤差を有する場合を示す図である。 DAC63の出力電圧の誤差がステージの入出力特性およびA/D変換結果に及ぼす影響を示す図である。 スイッチトキャパシタ回路の構成例を示す図である。 ゲイン誤差がA/D変換結果に及ぼす影響を示す図である。 本発明の一実施形態に係るパイプライン型ADCのキャリブレーション方法(前半)を示す図である。 本発明の一実施形態に係るパイプライン型ADCのキャリブレーション方法(後半)を示す図である。 本発明の一実施形態に係るパイプライン型ADCのさらに精度の高いキャリブレーション方法(前半)を示す図である。 本発明の一実施形態に係るパイプライン型ADCのさらに精度の高いキャリブレーション方法(後半)を示す図である。 キャリブレーション動作中におけるA/D変換の方法について説明するための図である。 通常動作中におけるA/D変換の方法について説明するための図である。 本実施形態に係るパイプライン型ADCにおける誤差補正の手順について説明するための図である。 パイプライン型ADCの動作原理を示す図である。 従来のパイプライン型ADCの1ステージ分の回路構成を示す図である。 従来のパイプライン型ADCの全体構成を示す図である。 DACの出力電圧の誤差がパイプライン型ADCのA/D変換特性に及ぼす影響を示す図である。 増幅器のゲイン誤差がパイプライン型ADCのステージの入出力特性に及ぼす影響を示す図である。
符号の説明
10 タイミング調整回路
20 DAC誤差補正回路
21 DAC誤差補正用データメモリ
22 DAC誤差補正用演算回路
23、34、62、64 マルチプレクサ
30 ゲイン誤差補正回路
31 ゲイン誤差補正用データメモリ
32 ゲイン誤差補正用演算回路
33 加算器
35 除算器
36、37 乗算器
38 加算器
39 減算器
40 誤差補正用データ生成回路
41 DAC誤差補正用データ生成回路
42 ゲイン誤差補正用データ生成回路
43 誤差測定結果平均化回路
44 誤差補正用データ平均化回路
50 キャリブレーション制御回路
61 ADC
63、65 DAC
66 サンプルホールド回路
67 減算器
68 増幅器
71、91 コンパレータ
73、113 スイッチ
75〜78 エンコーダ
80、110 スイッチトキャパシタ回路
81、111 オペアンプ
100 スイッチ制御回路
112 キャパシタ
C1、C2 キャパシタ
SW1〜SW102 スイッチ

Claims (21)

  1. アナログ入力信号を入力し、これをアナログ/ディジタル変換して、変換データ及び残差信号を出力するステージと、
    前記ステージから出力される変換データにそれぞれ適切なサイクル数の遅延を与えてタイミングを調整するタイミング調整回路と、
    前記ステージにおけるディジタル/アナログ変換の出力電圧の誤差を補正するDAC誤差補正回路と、
    前記ステージにおける増幅器のゲイン誤差を補正するゲイン誤差補正回路と、
    前記ゲイン誤差補正回路から出力されるディジタル出力信号に基づいてディジタル/アナログ変換の出力電圧の誤差及びゲイン誤差を計算し、前記DAC誤差補正回路及び前記ゲイン誤差補正回路にそれぞれの誤差補正用データを供給する誤差補正用データ生成回路と、
    キャリブレーション制御信号を出力してキャリブレーション動作を制御すると共に、ステージにDAC制御信号を供給するキャリブレーション制御回路と、
    を備えるアナログ/ディジタル変換器。
  2. 前記DAC誤差補正回路が、ステージにおけるディジタル/アナログ変換の出力電圧の誤差を補正するために用いられるDAC誤差補正用データを記憶するDAC誤差補正用データメモリと、変換データからDAC誤差補正用データをそれぞれ減算して、ディジタル/アナログ変換の出力電圧の誤差を補正した変換データを出力するDAC誤差補正用演算回路とを含む、請求項1記載のアナログ/ディジタル変換器。
  3. 前記DAC誤差補正回路が、ステージにおけるDAC誤差補正用データを記憶するDAC誤差補正用データメモリを含む、請求項1記載のアナログ/ディジタル変換器。
  4. 前記ゲイン誤差補正回路が、ステージにおける増幅器のゲイン誤差を補正するゲイン誤差補正用データをそれぞれ記憶するゲイン誤差補正用データメモリと、ゲイン誤差補正用演算回路と、加算器とを含む、請求項1記載のアナログ/ディジタル変換器。
  5. 前記誤差補正用データ生成回路が、ステージ内のディジタル/アナログ変換の出力電圧の誤差量を計算し、ディジタル/アナログ変換の出力電圧の誤差を補正するためのデータをDAC誤差補正回路に出力するDAC誤差補正用データ生成回路、及び/又は、増幅器のゲイン誤差を計算し、ゲイン誤差を補正するためのデータをゲイン誤差補正回路に出力するゲイン誤差補正用データ生成回路を含む、請求項1記載のアナログ/ディジタル変換器。
  6. 前記誤差補正用データ生成回路が、ディジタル出力信号を平均化する誤差測定結果平均化回路、及び/又は、ゲイン誤差補正用データ生成回路とDAC誤差補正用データ生成回路から出力される補正用データを平均化する誤差補正用データ生成回路を含む、請求項1記載のアナログ/ディジタル変換器。
  7. 前記DAC誤差補正回路が、キャリブレーション制御信号によってディジタル/アナログ変換誤差補正を無効にするためのマルチプレクサを含み、該マルチプレクサが、前記DAC誤差補正用データメモリとDAC誤差補正用演算回路の間に配設されている、請求項2又は3記載のアナログ/ディジタル変換器。
  8. 前記DAC誤差補正回路が、ステージからのディジタル出力信号をキャリブレーション制御信号によってゼロ信号として出力するマルチプレクサを含む、請求項2又は3記載のアナログ/ディジタル変換器。
  9. 前記ゲイン誤差補正回路が、キャリブレーション制御信号によってゲイン誤差補正を無効にするためのマルチプレクサを含み、該マルチプレクサが、前記ゲイン誤差補正用データメモリとゲイン誤差補正用演算回路の間に配設されている、請求項4記載のアナログ/ディジタル変換器。
  10. 前記ゲイン誤差補正用演算回路における誤差補正が、乗算器を用いた近似計算で行われる、請求項4記載のアナログ/ディジタル変換器。
  11. 前記ゲイン誤差補正用演算回路における誤差補正が、乗算器と加算器を用いた近似計算で行われる、請求項4記載のアナログ/ディジタル変換器。
  12. 前記キャリブレーション制御回路が、ステージのアナログ/ディジタル変換における参照電圧と非キャリブレーション時のディジタル/アナログ変換電圧との差の測定を正方向及び逆方向で行い、その測定結果を平均化する電圧測定手段を含む、請求項1記載のアナログ/ディジタル変換器。
  13. 前記ステージが多段である、請求項1記載のアナログ/ディジタル変換器。
  14. 前記ステージが、
    アナログ入力信号をアナログ/ディジタル変換することにより変換データを出力するMビットのアナログ/ディジタル変換回路と、
    キャリブレーション時にキャリブレーションに用いられる複数のデータをMビットより多い変換ビット数で複数のキャリブレーション用アナログ信号に順次変換し、非キャリブレーション時に前記アナログ/ディジタル変換回路の出力信号をアナログ信号に変換するディジタル/アナログ変換回路と、
    キャリブレーション時にDAC制御信号を前記ディジタル/アナログ変換回路に出力し、非キャリブレーション時に前記アナログ/ディジタル変換回路の出力信号を前記ディジタル/アナログ変換回路に出力する第1のマルチプレクサと、
    キャリブレーション時に前記ディジタル/アナログ変換回路の出力信号をサンプルホールド回路に出力し、非キャリブレーション時にアナログ入力信号をサンプルホールド回路に出力する第2のマルチプレクサと、
    該第2のマルチプレクサの出力信号をサンプルホールドするサンプルホールド回路と、
    該サンプルホールド回路の出力信号から前記ディジタル/アナログ変換回路の出力信号を減算する減算器と、
    該減算器からの出力信号を増幅する増幅器と、
    を含む、請求項1記載のアナログ/ディジタル変換器。
  15. 前記ステージが、
    アナログ入力信号をアナログ/ディジタル変換することにより変換データを出力するアナログ/ディジタル変換回路と、
    キャリブレーション時にディジタル/アナログ変換を行い第1のキャリブレーション用のアナログ信号を出力し、非キャリブレーション時に前記アナログ/ディジタル変換回路の変換結果をディジタル/アナログ変換する第1のディジタル/アナログ変換回路と、
    キャリブレーション時にディジタル/アナログ変換を行い第2のキャリブレーション用のアナログ信号を出力する第2のディジタル/アナログ変換回路と、
    キャリブレーション時にDAC制御信号を第1のディジタル/アナログ変換回路に出力し、非キャリブレーション時に前記アナログ/ディジタル変換回路の出力信号を第1のディジタル/アナログ変換回路に出力する第1のマルチプレクサと、
    キャリブレーション時に第2のディジタル/アナログ変換回路の出力信号をサンプルホールド回路に出力し、非キャリブレーション時にアナログ入力信号をサンプルホールド回路に出力する第2のマルチプレクサと、
    該第2のマルチプレクサの出力信号をサンプルホールドするサンプルホールド回路と、
    該サンプルホールド回路の出力信号から第1のディジタル/アナログ変換回路の出力信号を減算する減算器と、
    該減算器からの出力を増幅する増幅器と、
    を含む、請求項1記載のアナログ/ディジタル変換器。
  16. 前記ステージが、マルチプレクサと、サンプルホールド回路と、減算器と、増幅器を備えるスイッチトキャパシタ回路とによって構成される、請求項14又は15記載のアナログ/ディジタル変換器。
  17. 前記ステージが、ディジタル/アナログ変換回路と、マルチプレクサと、サンプルホールド回路と、減算器と、増幅器を備えるスイッチトキャパシタ回路とによって構成される、請求項14又は15記載のアナログ/ディジタル変換器。
  18. 前記ディジタル/アナログ変換回路が、抵抗ラダー型のディジタル/アナログ変換回路を含む、請求項14又は15記載のアナログ/ディジタル変換器。
  19. 前記アナログ/ディジタル変換回路が、直列接続された複数の抵抗を含み、該抵抗は、前記ディジタル/アナログ変換回路の抵抗として使用されると共に、該抵抗からの出力信号を前記アナログ/ディジタル変換回路の参照電圧とし、キャリブレーション時において、該参照電圧がキャリブレーション用のアナログ信号として使用される、請求項18記載のアナログ/ディジタル変換器。
  20. 前記アナログ/ディジタル変換回路と前記ディジタル/アナログ変換回路と前記信号処理回路との各々が、差動構成を有する、請求項14又は15記載のアナログ/ディジタル変換器。
  21. アナログ入力信号を入力し、これをアナログ/ディジタル変換して、変換データ及び残差信号を出力するステージと、
    前記ステージから出力される変換データにそれぞれ適切なサイクル数の遅延を与えてタイミングを調整するタイミング調整回路と、
    前記ステージにおけるディジタル/アナログ変換の出力電圧の誤差を補正するDAC誤差補正回路と、
    前記ステージにおける増幅器のゲイン誤差を補正するゲイン誤差補正回路と、
    を含むアナログ/ディジタル変換器と、
    前記ゲイン誤差補正回路から出力されるディジタル出力信号に基づいてディジタル/アナログ変換の出力電圧の誤差及びゲイン誤差を計算し、前記DAC誤差補正回路及び前記ゲイン誤差補正回路にそれぞれの誤差補正用データを供給する誤差補正用データ生成手段と、
    キャリブレーション制御信号を出力してキャリブレーション動作を制御すると共に、ステージにDAC制御信号を供給するキャリブレーション制御手段と、
    を備える電子回路。
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