JP2004219605A - 履歴表示付きワイヤロ−プ - Google Patents
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Abstract
【構成】履歴表示付きワイヤロ−プは、ワイヤロ−プ外周面に巻き付けた履歴表記票が、それを覆ってワイヤロ−プ外周面に強固に固着される透明プラスチック短管によって保持される履歴表示を備えている。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ワイヤロ−プの履歴を明瞭に視認可能で、ワイヤロ−プの使用経過後にあって破断及び廃棄の時期予測に有効な情報を得ることができる履歴表示付きワイヤロ−プに関する。
【0002】
【従来の技術】
ワイヤロ−プは、玉掛け等の事故が発生し作業に使用されるところから、構成、寸法、外観、材料、機械的強度、製造法及び試験法等が、JISによって決められて品質が保証されて(JISG3525、JISG3535、JISG3540、JISG3546を参照)、出荷に際しても、ワイヤロ−プの1条ごとに、履歴情報を記録した製品ラベル等の取り付けることが義務付けられている(JISG3525を参照)。履歴情報は、製造業者名、製造年月日、略号、種別、荷重、公称径及び長さ等である(JISG3525を参照)。
【0003】
しかも、玉掛への使用に際しては、ロ−プ構成、ロ−プ径及び破断荷重等の情報を製品ラベル等から確認することが強調されている(日本鋼索工業会監修:「玉掛け索の正しい取扱い方」日本ワイヤロ−プロック加工協同組合発行、第27頁、平成14年9月を参照)。ただし、ワイヤロ−プの履歴情報の表示法は、JISG3525において、「適正な方法で表示する」と規定されているだけで、しかも、違反した場合の罰則が規定されていない。
【0004】
そのために、玉掛けワイヤロ−プ及び台付けワイヤロ−プは、出荷に際して、布荷札若しくは紙荷札が、ワイヤロ−プの2本若しくは1束毎に1枚程度取り付けられるにすぎなかった。しかも、それら荷札には、ロ−プ径及び長さの記載が存在すれば程度が良いされるのが一般的で、後日のワイヤロ−プの安全確認のための情報として不可欠とされる、安全使用荷重、製造年月日及び製造メ−カの記載を欠くものが殆どであって、しかも、荷札は、製品納入時点でワイヤロ−プから離脱するのが一般的であった。
従って、つぶれ(扁平化)、摩耗、腐食、うねり、きず若しく断線等によるワイヤロ−プの強度低下及び不測の破断事故に備える点検は、ワイヤロ−プ使用者の自己努力にゆだねられている。ワイヤロ−プの点検は、断線、腐食、摩耗及び形くずれを含む7つの項目を点検対象とし、腐食以外を目視により日常的及び定期定的に点検する方法が一応規定されている(JISB8817を参照)。しかし、目視による点検が、一般的には履行されていないのが実情である。
【0005】
ワイヤロ−プは、用途、使用頻度、保管、グリ−ス塗布回数、取扱いの粗雑の程度等が著しく相違するので経時的強度低下が著しく相違して、かつ、日常的及び定期定的な目視による点検が履行されない実情からは、少なくとも、ワイヤロ−プ1条毎の安全使用荷重、製造年月日及び製造メ−カに関する情報をワイヤロ−プ使用の安全性確保に必要である。しかし、今日的にも工業的実施に有効なワイヤロ−プ1条毎の履歴表示手段が存在しないところから、ワイヤロ−プの不測の破断事故の防止手段が設けられないまま放置されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ワイヤロ−プに関する従来の提案は、殆どが、ワイヤロ−プの構造の改善についてであって、ワイヤロ−プの履歴情報の表示に関する提案(特に、ワイヤロ−プ1条ごとの履歴情報の長期にわたって表示する提案)が実質的に行われていないのが実情である。そこで、ワイヤロ−プ1条ごとの履歴情報を長期わたり表示する方法について様々な検討が本発明者により行われて、履歴表記票(情報記載紙片その他)を透明プラスチックによりワイヤロ−プ表面に固定する方法が検討された。
【0007】
しかし、履歴表記票を透明プラスチックによりワイヤロ−プ外周面に固定する方法には、下記(イ)〜(ト)に代表される様々な問題点が存在していた。
(イ)ワイヤロ−プ外周面(表面)は、ワイヤロ−プ素線集合によ凹凸面がねりを形成していて(図6を参照)、履歴表記票とワイヤロ−プ外周面とは、線の集合で接触し、接着剤によっても両者を接着させるのが困難で、履歴表記票が紙の場合には、透明プラスチック皮膜若しくは透明プラスチックフィルムにより紙をワイヤロ−プ外周面に押し付けると容易に破れるという問題点が存在していた。
(ロ)ワイヤロ−プ外周面は、ロ−プ油・ロ−プグリ−ス及びそれを含む汚れからなる付着層が存在している場合が多く、履歴表記票及び透明プラスチックフィルムをそれらの付着層に固定するのが困難であった。
(ハ)金属平面と透明プラスチックフィルムとの接着には、エポキシ樹脂接着剤が有効ではあるが、ワイヤロ−プ外周面には、その凹凸面に起因してエポキシ樹脂接着剤でも接着が困難で、エポキシ樹脂接着剤の使用がコストを著しく高騰させるという問題点が存在していた。
(ニ)ワイヤロ−プ外周面への透明プラスチックフィルムへの固定にホッメルト接着剤を使用すると、ホッメルト接着剤施工時の加熱により履歴表記票(記載紙面)が変形及び印刷文字が毀損するとの問題点が存在していた。
(ホ)透明プラスチックフイルムにより履歴表記票を覆ってワイヤロ−プ外周面に固着しても、ワイヤロ−プが地面にほり投げられる等の一般的な取扱いによっても、透明プラスチックフイルムが容易に破損・離脱するという問題点があった。
(ヘ)ワイヤロ−プ外周面を覆うプラスチックフイルムの破損・離脱を防止するには、プラスチックフイルムの厚みを大きくして、ワイヤロ−プ外周面に強固に固定する必要があって、しかも、その固定手段が未知であるとの問題点があった。
(ト)プラスチックフイルムの厚みを大きくすると、プラスチックフイルムをワイヤロ−プ外周面に固着するのが、著しく困難になるとの問題点があった。
そこで、そられの問題点の解決が本発明者により実験主体に検討されて本発明が見いだされた。
【0008】
本発明は、ワイヤロ−プ1条ごとに履歴表示をその外周面に固着して、履歴表示の内容が容易・明瞭に視認可能にして、しかも、ワイヤロ−プの使用においても固着が長期に維持される履歴表示付きワイヤロ−プを提供すること、を目的とする。
本発明は、ワイヤロ−プの使用状況に関係なく容易に履歴の視認を可能にする履歴表示付きワイヤロ−プを提供すること、をも目的とする。
本発明は、ワイヤロ−プの形態及び直径が相違する場合であっても、設けることが容易である履歴表示付きワイヤロ−プを提供すること、をも目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明による履歴表示付きワイヤロ−プは、ワイヤロ−プ外周面に巻き付けた履歴表記票と、その表面を覆ってワイヤロ−プ外周面に固着された透明プラスチック短管とからなる履歴表示が、下記(1)〜(3)の条件でワイヤロ−プに設けられていること、を特徴とする。
(1)前記履歴表示は、ワイヤロ−プ使用に際しての曲がりが小さい箇所若しくは直線状態が維持される箇所に配置されている。
(2)前記履歴表記票は、幅方向がワイヤロ−プ外周に巻き付けられて、その幅長さがワイヤロ−プ外周の55〜93%の長さにされている。
(3)前記透明プラスチック短管は、その内面が極性を有する熱可塑性プラスチックから構成されて、履歴表記票の上端部及び後端部の周辺の固着領域と履歴表記票の両側端間の間隙からなる立体面状の固着領域でワイヤロ−プ外周面に固着されている。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図1〜図5に基づいて具体的に説明する。各図に示す実施の形態は、本発明の好適な実施の形態の具体例ではあるが、本発明に包含される多様な実施の形態の例示の一部である。以下の各図において、同一符号を付したものは同一若しくは同等のものを示している。
【0011】
〈本発明の履歴表示付きワイヤロ−プ〉:
図1は、本発明による履歴表示付きワイヤロ−プの好適な具体例を示す説明図であって、履歴表示付きワイヤロ−プ1は、圧縮止め2によるシンブル3をワイヤロ−プ4の一端に有して、履歴表示5が圧縮止め3の近くの位置(すなわち、ワイヤロ−プの使用に際しての曲がりが小さい配置)に設けられている。履歴表示5は、ワイヤロ−プ4の使用に際しての曲がり生成が少ない配置であれば、図1以外の配置であってもよく、例えば、直線状若しくはそれに近似の状態を維持可能な配置であってもよい。
【0012】
なお、ワイヤロ−プは、ストランドロ−プの使用量が多いことから「ストランドロ−プ」の同義語として使用されることがある。しかし、本発明の「ワイヤロ−プ」は、ワイヤロ−プの本来的な技術用語としての語義(すなわち、ストランドロ−プ以外の各種のワイヤロ−プ(例えば、平行線ワイヤロ−プ、スパイラルロ−ル、ケ−ブルレイワイヤロ−プ、フラットワイヤロ−プ及びプレ−トワイヤロ−プ)を含む語義)で使用している。
【0013】
履歴表示5は、履歴表記票(例えば、履歴を表記の紙)がワイヤロ−プ4に巻き付けられてそれを覆って透明プラスチック短管がワイヤロ−プ4の外周面に固着されている。履歴表記票は、その表面を覆う透明プラスチック短管を損傷しない程度の剛性を有して、透明プラスチック短管による履歴表記票を覆う作業においても熱変形(例えば、延伸熱可塑性プラスチックチュ−ブの熱収縮温度での熱変形)しない素材の面からなる。履歴表記票は、ある程度の剛性の面であることによって履歴の明瞭な表記が可能になり、耐熱変形性を有することによって加熱処理による透明プラスチック短管のワイヤロ−プ外周面への固着が容易になる。履歴表記票としては、例えば、紙、合成紙、布、金属片、プラスチックフィルム及びプラスチックシ−ト等が可能である。なお、フィルムとシ−トの厚みの境界が明確でなく(JISK6900を参照)、履歴表記票がそれらのいずれでも可能であるところから、本発明では、「プラスチックフィルム及びプラスチックシ−ト」と併記している。
【0014】
履歴表記票は、製造業者名、製造年月日、略号、種別、荷重、公称径及び長さ等が印刷その他の手段により表記される。玉掛けワイヤロ−プ及び台付けワイヤロ−プにあっては、例えば、安全使用荷重(t、KN)、ワイヤロ−プ径(mm)及び長さ(m)等が表記される。なお、履歴表記票は、ワイヤロ−プの用途等に応じて表記内容を変えることが可能であって、ワイヤロ−プ径毎に色分け若しくはマ−ク付をする等して視認の明瞭化を向上させることも可能である。
【0015】
図2は、履歴表記票20を巻き付けた部分のワイヤロ−プ4の部分拡大説明図であって、履歴表記票20には、文字及び数字等の記号21、…21によってワイヤロ−プ4の履歴が表記される。
【0016】
図3は、図2の履歴表記票20を透明プラスチック短管22により覆った状態の部分拡大説明図であって、図4は、図3のワイヤロ−プ4を図3の反対側から視た部分拡大説明図である。
図4において、履歴表記票20は、その幅長さ(すなわち、ワイヤロ−プ外周面への巻き付け方向長さ)が、ワイヤロ−プ外周の55〜93%の長さ(好ましくは、ワイヤロ−プ外周の70〜90%の長さ)にされている。本発明での実験主体の検討によれば、履歴表記票20幅長さが、ワイヤロ−プ外周の55%未満では、履歴表記票20を視認性が低下して(すなわち、一定方向から視た場合に視認可能となる)、表記する履歴の内容が不十分となり、ワイヤロ−プ外周の93%を越えると、本発明で使用する素材の透明プラスチック短管22であってもワイヤロ−プ外周面に固着させるのが困難になる。
そして、ワイヤロ−プ外周面に巻き付けた履歴表記票20の両側端40、40の間に間隙41が生じて、その間隙41が透明プラスチック短管22とワイヤロ−プ外周面との固着領域になって、履歴表記票20の上端及び後端の近傍の固着領域42、43と間隙41とが連通した立体面状の固着領域にして、透明プラスチック短管22がワイヤロ−プ外周面に強固に固着(特に、熱収縮性チュ−ブによる固着)されている。次に、立体面状の固着領域と透明プラスチック短管22の内面を構成する熱可塑性プラスチックとの関係を説明する。
【0017】
〈立体面状の固着領域〉:
透明プラスチック短管22は、特定の立体面状固着領域と透明プラスチック短管内面の特性とによって、プラスチックの粘弾性による物理的接触の固着(特に、熱収縮性チュ−ブの熱収縮による固着)であっても、ワイヤロ−プ外周面に長期に固定されて、しかも、履歴表記票20をして視認性が有効な平面を維持してワイヤロ−プ外周面に固定する。
【0018】
図5は、図4からワイヤロ−プ4の図示を省略し、立体面状の固着領域に斜線を施して、履歴表記票20が占める領域が白い面で表示されているワイヤロ−プ4の部分拡大説明図である。
透明プラスチック短管22は、その内面が極性を有する熱可塑性プラスチックから構成されて、その極性及び立体面状の固着領域とによって、直接的にワイヤロ−プ外周面に接触する場合及びロ−プ油(アスファルト、ペトログラム、ゴム、金属石けん等を鉱油に混合してなる潤滑油)・ロ−プグリ−ス(アスファルト、ペトログラム等を鉱油に混合してなる一種のコンパウンド)及びそれを含む汚れからなる付着層を介してワイヤロ−プ外周面に接触する場合であっても、長期に維持可能な固着を可能にしている。なお、透明プラスチック短管22が、単層の透明プラスチック層からなる場合は全体が極性を有する熱可塑性プラスチック層に構成されて、積層の透明プラスチック層からなる場合は少なくとも内面(ワイヤロ−プ外周面に直接的に対向する面)が極性を有する熱可塑性プラスチック層に構成されていればよい。
【0019】
極性を有する熱可塑性プラスチックとしては、例えば、(イ)側鎖に極性基を有する熱可塑性プラスチック、(ロ)非極性の熱可塑性プラスチックを活性化処理して極性を付与した熱可塑性プラスチック、(ハ)主鎖の炭素−水素結合がハロゲン原子によって分極した熱可塑性プラスチック、(ニ)非極性の熱可塑性プラスチックに共重合・ブレンド等の処理をして極性を付与した熱可塑性プラスチック等がある。それらの熱可塑性プラスチックであれば、経年使用時にワイヤロ−プ表面に滲みだロ−プ油の皮膜が介在していても透明プラスチック短管22をして強固にワイヤロ−プ外周面に固着(特に、熱収縮性チュ−ブの熱収縮による固着)させることができる。
(イ)の例示としては、側鎖として、ハロゲン原子、ヘテロ原子(例えば、チッソ原子、酸素原子等)、カルボニル基(−CO)、カルボキシル基(−COOH)、アミノ基(H2 N−)、水酸基(−OH)等を有するものがある。(ロ)の例示としては、非極性の熱可塑性プラスチック(代表的には、ポリエチレン、ポリプロピレン)をスルフォン化、ハロゲン化、酸化若しくは放射線照射等して極性したものがある。(ハ)の例示としては、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、弗化ビニル樹脂、四弗化エチレン樹脂等がある。(ニ)の例示としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体等がある。
【0020】
透明プラスチック短管22は、単層若しくは積層のいずれから形成されたものでもよく、少なくとも内面(すなわち、ワイヤロ−プ外周面と接する面)が、極性を有する熱可塑性プラスチックから構成されることによって本発明による効果の享受が可能である。
透明プラスチック短管22は、厚みをある程度に大きくしても、その透明プラスチック短管22の内面の構成と特徴的な立体面状の固着領域と内面の極性によってワイヤロ−プ外周面との固着(特に、熱収縮による固着)が容易である。
【0021】
透明プラスチック短管22は、例えば、0.30〜1.40mmの厚みの範囲であっても、ワイヤロ−プ外周面に強固に固着(特に、熱収縮により強固に固着)して、各種用途のワイヤロ−プの長期使用に耐えることが本発明での実験による検討によって見いだされている。ただし、透明プラスチック短管22が、0.30未満の厚みであると、透明プラスチック短管22の長期使用が困難になり、1.40mmを越えると、透明プラスチック短管22をワイヤロ−プ外周面への固着(特に、熱収縮による固着)が困難になる。
透明プラスチック短管22は、熱収縮性チュ−ブにより形成するのが形成操作上から好ましく、透明性に優れて、剛性及び柔軟性がバランスして、衝撃強度及び破断強度に優れて、比較的に低温でも高収縮性を有する熱収縮性チュ−ブにより形成するのが好ましい。熱収縮性チュ−ブは、本発明の目的に合わせて新たに調製したものが適していて、場合によっては、既存の熱収縮性チュ−ブの利用も可能である。
【0022】
既存の熱収縮性チュ−ブは、殆どの場合、収縮包装の使用に適する物性になっていて、熱収縮性チュ−ブにより被包装物の平坦面を被覆するの適する物性になっている。従って、既存の熱収縮性チュ−ブが極性を有する熱可塑性プラスチックからなるものであっても、極性密度が不十分であってワイヤロ−プ外周面への固着には不十分であることが多い。その場合は、熱可塑性プラスチックをブレンド等により改質する、延伸及び熱収縮の条件を変える等して本発明の目的に適合させることが必要である。
熱収縮性チュ−ブは、例えば、分子構造・結晶性・共重合性その他によって、剛性、柔軟性、収縮性(特に、低温収縮性)、機械的物性(特に、衝撃強度及び破断強度)が変わり、それによってワイヤロ−プ外周面への固着性も変わるので、それらを調整することも必要である。
熱収縮性チュ−ブは、その特性に応じて、熱収縮に要する温度と時間が調整されてる。熱収縮性チュ−ブが、塩化ビニル系樹脂若しくはポリオレフィン系樹脂からなる場合には、例えば、熱収縮温度を例えば100〜200℃にして、熱収縮時間が、例えば、30秒〜15分にして行うと強固にワイヤロ−プ外周面に固着させてその状態を長期に保持可能である。
【0023】
熱収縮性チュ−ブは、その製造法において制約がなく、例えば、ロ−ル式延伸、タンタ−式延伸及びチュ−ブラ−式延伸のいずれによることも可能である。なお、既存の熱収縮性チュ−ブは、包装材面に収縮固着させる目的で使用されることを前提とする物性・収縮条件を有しているところから、一般的には、横収縮率をワイヤロ−プ外周面への固着に適するものにする必要がある。横収縮率は、例えば、40〜80%の大きいものが適している。
【0024】
熱収縮性チュ−ブとしては、例えば、塩化ビニル系樹脂及びポリオレフィン系樹脂からなるものが適していて、塩化ビニル系樹脂は、例えば、塩化ビニル樹脂若しくは塩化ビニル−エチレン共重合樹脂の使用が有効であって、衝撃強度及び破断強度の向上のためにゴム弾性を有する粒状体を分散させる等してもよい。ポリオレフィン系樹脂は、例えば、エチレン−プロピレン共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂及び不飽和カルボン酸若しくはその無水物(例えば、無水マレイン酸)により変性のエチレン単独重合樹脂、ポリエチレン樹脂と塩化ビニル樹脂との混合物若しくはプロピレンと塩化ビニル樹脂との混合物等の使用が有効である。
熱収縮性チュ−ブは、塩化ビニル系樹脂若しくはポリオレフィン系樹脂からなる場合には、横方向及び縦方向の収縮率が近似の範囲にあるもの、若しくは横方向の収縮率が縦方向の収縮率よりも大きい場合には、履歴表記票20を変形させることなく優良な視認性を保持してワイヤロ−プ外周面に熱収縮性チュ−ブを強固に固着させることが可能である。横方向の収縮率が縦方向の収縮率よりも大きい場合としては、例えば、1.2(横方向収縮率)/1.0(縦方向収縮率)〜8.0(横方向収縮率)/1.0(縦方向収縮率)であれば本発明の効果を得るのに適している。
【0025】
〈ワイヤロ−プ〉:
本発明のワイヤロ−プは、その種類において制約がなく、例えば、ストランドロ−プ、スパイラルロ−ル、ケ−ブルレイロ−プ若しくはプレ−トロ−プ等であることが可能であって、構成・素材・製造法等においても制約がない。
【0026】
〈ワイヤロ−プとその端末加工部〉:
本発明のワイヤロ−プは、代表的には、ワイヤロ−プの少なくとも一つの端末が、ワイヤロ−プをしてアイ形若しくは近似の形状に加工された加工部を有するものである。端末の加工手段は任意であって、例えば、プレスロック(ダブルプ形プレスロック、シングル形プレスロック)、アイスプライス(巻き差し法、かご差し方法)、クリップ止め、ソケット止め及びシ−ジング等を用いることが可能である。
【0027】
なお、本発明には、前述の具体例以外に多様な具体例が包含されていて、そのいくかを下記(a)〜(g)に例示する。
(a)履歴表記票は、不織布その他の薄いクッション性を有する素材を介してワイヤロ−プ外周面に巻き付けて、履歴表記票20の表面を平たんにして取扱に際しての損傷を防止することが可能である。
(b)履歴表記票は、蓄光性塗料に文字等を表示して、昼間の光エネルギ−により夜間で文字等を発光させて、夜間でのワイヤロ−プの履歴点検を可能にしてもよい。
(c)透明プラスチック短管は、ワイヤロ−プ外周面と接する面を極性密度が大きい透明熱可塑性プラスチック層(例えば、軟質塩化ビニル樹脂層)にして外層を衝撃強度の大きい透明熱可塑性プラスチック層の積層にしてもよい。
(d)履歴表示は、ワイヤロ−プの複数の配置で設けて過酷な取扱に際しての残存性を高めてもよい。
(e)履歴表示は、透明プラスチック短管の上に衝突に際しての接触防止手段を設けて長期の使用に耐えるにようにしてもよい。接触防止手段は、例えば、強度の大きいプラスチック等によるリングを透明プラスチック短管に嵌める等である。リングは、例えば、エンジニアリングプラスチックであれば、接触を防止する強度を有している。
(f)ワイヤロ−プ外周面の大きな凹部を埋めて略多角形状断面にしてそこに履歴表記票を巻き付けて、表記の視認性と固着性を向上させてもよい。図6は、ワイヤロ−プの断面図であって、凹部60、…60が埋められている。
(g)透明プラスチック短管は、熱収縮と接着剤との併用によってワイヤロ−プ外周面に固着させてもよい。
【0028】
なお、本発明においては、本発明の目的に沿うものであって、本発明の効果を特に害さない限りにおいては、本発明の改変あるいは部分的な変更及び付加は任意であって、いずれも本発明の範囲である。
【0029】
【発明の効果】
本発明による履歴表示付きワイヤロ−プによれば、下記(i)〜(iv)に代表される様々な効果が得られる。
(i)視認容易で耐久性に優れる履歴表示をワイヤロ−プ1本毎に備えて、後日においてワイヤロ−プに対する目視による点検であっても、その履歴表示の情報による補完によって、ワイヤロ−プの強度低下及び廃棄時期等の判断が正確になる。
(ii)履歴表示のみを視ることによって、おおよそのワイヤロ−プの強度低下及び廃棄時期等を予測することが可能になる。そのために、従来において発生している破断事故が相当の確率をもって防止できる。
(iii)履歴表示は、その構成から直径及び形態が相違するワイヤロ−プにも容易に設けることができる。
(iv)履歴表示は、構造が簡単であるところから、ワイヤロ−プの目的・用途に応じて必要な事項を付加することが容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】ワイヤロ−プの具体例の説明図である。
【図2】ワイヤロ−プの具体例の部分拡大説明図である。
【図3】ワイヤロ−プの具体例の部分拡大説明図である。
【図4】ワイヤロ−プの具体例の部分拡大説明図である。
【図5】ワイヤロ−プの具体例の部分拡大説明図である。
【図6】ワイヤロ−プの断面図である。
【符号の説明】
1 履歴表示付きワイヤロ−プ
2 シンブル
3 圧縮止め
4 ワイヤロ−プ
5 履歴表示
20 履歴表記票
22 透明プラスチック短管
40 履歴表記票の幅方向の側端
41 間隙
42 周辺固着領域
43 周辺固着領域
50 立体面状の固着領域

Claims (3)
- ワイヤロ−プ外周面に巻き付けた履歴表記票と、その表面を覆ってワイヤロ−プ外周面に固着された透明プラスチック短管とからなる履歴表示が、下記(1)〜(3)の条件でワイヤロ−プに設けられていること、を特徴とする履歴表示付きワイヤロ−プ。
(1)前記履歴表示は、ワイヤロ−プ使用に際しての曲がりが小さい箇所若しくは直線状態が維持される箇所に配置されている。
(2)前記履歴表記票は、幅方向がワイヤロ−プ外周に巻き付けられて、その幅長さがワイヤロ−プ外周の55〜93%の長さにされている。
(3)前記透明プラスチック短管は、その内面が極性を有する熱可塑性プラスチックから構成されて、履歴表記票の上端部及び後端部の周辺の固着領域と履歴表記票の両側端間の間隙からなる立体面状の固着領域でヤイヤロ−プ外周面に固着されている。 - ワイヤロ−プ外周面に巻き付けた履歴表記票と、その表面を覆ってワイヤロ−プ外周面に固着された透明プラスチック短管とからなる履歴表示が、下記(i)〜(iii)の条件でワイヤロ−プに設けられていること、を特徴とする履歴表示付きワイヤロ−プ。
(i)前記履歴表示は、ワイヤロ−プの末端加工部の近くに配置されている。
(ii)前記履歴表記票は、幅方向がワイヤロ−プ外周に巻き付けられて、その幅長さがワイヤロ−プ外周の70〜90%の長さにされている。
(iii)前記透明プラスチック短管は、その内面が極性を有する熱可塑性プラスチックから構成されて、熱収縮により、履歴表記票の上端部及び後端部の周辺の固着領域及び履歴表記票の両側端間の間隙からなる立体面状の固着領域でワイヤロ−プ外周面に固着されている。 - 下記(a)〜(j)の特徴の一つ若しくは複数を有すること、を特徴とする請求項1若しくは2に記載の履歴表示付きワイヤロ−プ。
(a)履歴表記票が、紙、合成紙、布、金属薄片、プラスチックフィルム若しくはプラスチックシ−トからなる。
(b)履歴表記票が、色分けまたは/及びはマ−クによるワイヤロ−プ径の表示を有してなる。
(c)透明プラスチック短管が、0.30〜1.40mmの厚みからなる。
(e)透明プラスチック短管が、単層若しくは積層の透明プラスチック層の短管からなる。
(f)透明プラスチック短管が、側鎖に極性基を有する熱可塑性プラスチックからなる。
(g)透明プラスチック短管が、非極性の熱可塑性プラスチックを活性化処理して極性を付与した熱可塑性プラスチックからなる。
(h)透明プラスチック短管が、主鎖の炭素−水素結合をハロゲン原子によって分極した熱可塑性プラスチックからなる。
(i)透明プラスチック短管が、非極性の熱可塑性プラスチックに極性付与処理を施した熱可塑性プラスチックからなる。
(j)透明プラスチック短管が、塩化ビニル系樹脂若しくはポリオレフィン系樹脂の熱収縮性チュ−ブから形成される。
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