JP2004219133A - 沸騰水型原子炉の炉心 - Google Patents
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Abstract
【課題】装荷燃料集合体数500体以下の中型の沸騰水型原子炉の炉心において、熱的余裕を確保しつつ出力を増大し、大型炉と同等の経済性を実現できる構成を提供する。
【解決手段】複数の燃料棒9とこれらを取り囲むチャンネルボックス15とを備えた燃料集合体8を300体以上500体以下備えた沸騰水型原子炉の炉心であって、各燃料集合体8について、炉心水平横断面におけるチャンネルボックス15中心から炉心中心点までの距離をLとし、炉心最外層に配置される最外層燃料集合体8Aそれぞれの上記Lのうち最短のものをLmin、最長のものをLmaxとしたとき、0.8≦Lmin/Lmax≦0.85とし、かつL≧Lminとなる外層部燃料集合体8Bの数が全燃料集合体数に占める割合を25%以上40%以下とする。
【選択図】 図1
【解決手段】複数の燃料棒9とこれらを取り囲むチャンネルボックス15とを備えた燃料集合体8を300体以上500体以下備えた沸騰水型原子炉の炉心であって、各燃料集合体8について、炉心水平横断面におけるチャンネルボックス15中心から炉心中心点までの距離をLとし、炉心最外層に配置される最外層燃料集合体8Aそれぞれの上記Lのうち最短のものをLmin、最長のものをLmaxとしたとき、0.8≦Lmin/Lmax≦0.85とし、かつL≧Lminとなる外層部燃料集合体8Bの数が全燃料集合体数に占める割合を25%以上40%以下とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は沸騰水型原子炉に関わり、特に装荷燃料集合体数500体以下の中型原子炉の炉心に関する。
【0002】
【従来の技術】
(1)炉心の構成
沸騰水型原子炉の炉心は、格子状に等間隔に配置された多数の燃料集合体と、この燃料集合体の相互間のギャップ水領域に挿入される制御棒と、炉内計装系とから構成される。炉心外部には反射体水領域があり、その外側にはシュラウドが配置され、内側(炉心部)を上方に向かって流れる冷却水と外側を下方に向かって流れる再循環水を分離している。再循環水は、圧力容器とシュラウドの間に配置された再循環ポンプによって強制循環される。
【0003】
燃料集合体は、略四角筒形状のチャンネルボックスと、このチャンネルボックスに取り囲まれた燃料バンドルからなる。燃料バンドルは、正方格子状に規則正しく配列された複数本の燃料棒と、中性子減速棒である水ロッドとから構成される。一方、チャンネルボックスの周囲には制御棒、あるいは、炉内計装系が挿入できるよう飽和水の領域であるギャップ水が満たされる。燃料棒の間には冷却水がチャンネルボックス下方から上方に向かって流れており、中性子減速材としての役割とともに、燃料棒で発生した熱エネルギーをタービン機器側に伝達し電気エネルギーへ変換する役割を担っている。
【0004】
(2)炉心の出力密度
一般に、炉心において、単位時間、炉心の単位体積あたりに発生する熱エネルギーは炉心の出力密度と称される。炉心の体積とは、燃料棒のうち発熱に寄与する部分の長さ(=燃料棒有効長)、燃料集合体の配列ピッチの二乗(=単位格子面積)、および装荷燃料集合体数の積で定義される。
【0005】
近年、原子炉の経済性向上を目的として、単位発電量あたりの発電コスト(=発電単価)を低減するために原子炉出力を増大する傾向がある。原子炉構造を大きく変更せずに出力を増大するためには、炉心の出力密度を増大するのが有効な手段である。例えば米国のクリントン原子力発電所は、従来の炉心出力密度52.4kW/lから20%出力を増大させ約62.9kW/lとすることについて、米国原子力規制委員会(NRC)より既に承認されたことが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
(3)熱的余裕と炉停止余裕
このとき、炉心設計の観点から、炉心出力密度をどこまで増大できるかは、主に原子炉運転中や過渡時における燃料の健全性を保証する熱的余裕、および原子炉が安全に停止できることを示す指標である炉停止余裕を、定められた設計基準に従って保てるかどうかで決まる。
【0007】
熱的余裕は最大線出力密度(MLHGR)および最小限界出力比(MCPR)によって表される。最大線出力密度は、燃料棒単位長さあたりの最大発熱量によって定義され、設計基準によって決められた値を運転中に超えないようにする必要がある。また、最小限界出力比は、燃料棒被覆管表面において冷却水が膜沸騰状態に遷移し除熱効率が著しく低下し始める燃料棒出力、すなわち限界出力を実際の出力で割った値で定義され、設計基準で決められた値を運転中および過渡時に下回らない様にする必要がある。熱的余裕は、炉心出力密度を増大することで減少していく。
【0008】
また、炉停止余裕についても、以下のような理由で炉心出力密度を増大するにつれ減少していく。一般に、沸騰水型原子炉では、炉心の冷却水が沸騰して中性子の減速効果が小さくなる原子炉運転時よりも、冷却水が飽和水となる原子炉停止時の方が、炉心からの中性子漏れが減少する効果、並びに中性子減速効果が増大する効果により、炉心反応度が大きくなる傾向がある。この原子炉運転時と停止時の反応度の差(ホット・コールドスイングと呼ばれる)が大きいほど炉停止余裕が小さくなる。このとき、出力密度を増大した場合は、運転時に冷却水が燃料集合体高さ方向においてより低い位置から沸騰を開始するため、冷却水を水蒸気が占める割合(ボイド率)が大きくなる。ボイド率が大きくなるほど上記効果が増大し、結果として出力密度を増大するほどホット・コールドスィングが大きくなり、炉停止余裕がより減少することになる。
【0009】
【非特許文献1】
World Nuclear Industry Handbook 2001
(Nuclear Engineering International誌)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
近年、電力需要増加割合の鈍化や分散電源志向の強まりなどに対応し、発電容量を小規模とする代わりに、発電に必要な設備物量を低減することで建設コストを抑えた中小型原子炉(例えば、装荷燃料集合体数を300ないし500程度としたもの)のニーズが高まっている。一般に、発電容量を小さくしても、それと同等な割合で設備コストを低減することはできないため、中型炉の発電単価は大型炉(例えば、装荷燃料集合体が600体を超え電気出力が100万kW以上であるような原子炉)と比較すると割高になる傾向がある(=スケール効果)。スケール効果による経済性悪化を克服するため、同規模の設備でできるだけ出力を増大することが、中型炉ではいっそう重要となる。
【0011】
しかしながら、上述したような出力増大に伴う熱的余裕の低下を防止し、経済性を良好とできる中型炉は従来存在しなかった。
【0012】
一方、中型炉の場合は炉心サイズが小さいことから、大型炉と比較して中性子が炉心から漏れる割合が大きくなり反応度が減少する。この中性子漏れによる中型炉と大型炉の反応度差は、冷却水のボイド率が大きくなり中性子減速効果が小さくなる運転時に相対的に大きくなり、冷却水が飽和水となる運転停止時には差が小さくなる。すなわち、中型炉の方が相対的にホット・コールドスイングが大きくなって炉停止余裕が小さくなる。このように、出力増大に伴う炉停止余裕の低下を防止し、経済性を良好とできる中型炉も従来は存在しなかった。
【0013】
本発明の第1の目的は、装荷燃料集合体数500体以下の中型の沸騰水型原子炉の炉心において、熱的余裕を確保しつつ出力を増大し、大型炉と同等の経済性を実現できる構成を提供することにある。
【0014】
本発明の第2の目的は、装荷燃料集合体数500体以下の中型の沸騰水型原子炉の炉心において、炉停止余裕を確保しつつ出力を増大し、大型炉と同等の経済性を実現できる構成を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、複数の燃料棒とこれらを取り囲むチャンネルボックスとを備えた燃料集合体を300体以上500体以下備えた沸騰水型原子炉の炉心であって、各燃料集合体について、炉心水平横断面におけるチャンネルボックス中心から炉心中心点からまでの距離をLとし、炉心最外層に配置される最外層燃料集合体それぞれの上記Lのうち最短のものをLmin、最長のものをLmaxとしたとき、0.8≦Lmin/Lmax≦0.85とし、かつL≧Lminとなる外層部燃料集合体の数が全燃料集合体数に占める割合を25%以上40%以下とする。
【0016】
単位発電量あたりのコストを低減するために、所定容積の圧力容器内に略円形状に配置した従来炉心よりも燃料集合体数を増加し出力を増大することを目的として、所定容積の圧力容器内に例えば再循環ポンプ等を配置しつつ、この再循環ポンプを避けるように外周側凹凸状に燃料集合体を増加配置し、全燃料集合体数に占める外層部燃料集合体数の割合を増加させていく(燃料集合体の配置形状の指標となる最外層燃料集合体の炉心中心からの最短距離Lminと最長距離Lmaxとの比Lmin/Lmaxを減少させていく)場合、基本的には相対的に低出力の外層部燃料集合体が増加することで炉心の径方向出力ピーキングは増大していく傾向となる。しかしながら、Lmin/Lmax≧0.8の範囲では、全燃料集合体数に占める最外層燃料集合体数の割合が小さくなることで炉心の径方向出力ピーキングを低減する作用がこれを相殺する結果、炉心の径方向出力ピーキングを上記従来炉心程度に抑えることができる。このとき、外層部燃料集合体の占める割合が40%以上となるとLmin/Lmax<0.8となるため、外層部燃料集合体の占める割合が40%以下であることも必要である。
【0017】
一方、発電コスト低減を図る場合に、通常、300体以上500体以下の燃料集合体を備えた中型炉においては、いわゆるスケール効果(例えば0.7乗則)により発電量を小さくしても発電単価は大型炉と比較すると割高になる傾向がある(例えば376体炉心の場合、現行ABWRよりも発電単価が29%高くなる)。これを補って大型炉心と同程度の発電単価とするためには、少なくとも外層部燃料割合25%程度まで炉心形状を凹凸にして燃料集合体を詰める必要がある。また、外層部燃料集合体割合を25%以上とする場合、Lmin/Lmax>0.85とするのは困難なため、Lmin/Lmax≦0.85となる。
【0018】
本発明においては、以上に基づき、0.8≦Lmin/Lmax≦0.85、かつ25%≦外層部燃料集合体の占める割合≦40%とする。これにより、所定容積の圧力容器内に熱的余裕を確保しつつ燃料集合体を増加し出力を増大することができ、発電コストを抑えることができるので、大型炉と同等の経済性を実現することができる。
【0019】
(2)上記(1)において、好ましくは、各燃料集合体の前記チャンネルボックス外幅をW、隣接する燃料集合体のチャンネルボックスどうしのギャップ幅をDとしたとき、少なくとも一部の燃料集合体について、D/W≧0.13とする。
【0020】
これにより、燃料集合体の相互間のギャップ水領域が拡大して、冷却水のボイド率が小さくなり運転時の中性子減速効果を増大するので、冷温時との反応度差(ホットコールドスイング)が小さくなり炉停止余裕が約1.3%増大し、出力密度を20%増大した場合でも炉停止余裕を同程度に確保できる。すなわち、所定容積の圧力容器内に炉停止余裕を確保しつつ燃料集合体を増加し出力を増大することができる。
【0021】
(3)上記(2)において、好ましくは、冷却材流入口にオリフィスを備え前記燃料集合体を載置する複数の燃料支持金具をさらに有し、これら複数の燃料支持金具は、前記最外層燃料集合体を載置する第1燃料支持金具、前記外層部燃料集合体のうち前記最外層燃料集合体を除く燃料集合体を載置する第2燃料支持金具、前記外層部燃料集合体よりも炉心中心側に位置する内周部燃料集合体を載置する第3燃料支持金具を含んでおり、全ての前記第1燃料支持金具におけるオリフィスの圧力損失の平均値をPloss1、全ての前記第2燃料支持金具におけるオリフィスの圧力損失の平均値をPloss2、全ての前記第3燃料支持金具におけるオリフィスの圧力損失の平均値をPloss3としたとき、Ploss1≧Ploss2>Ploss3である。
【0022】
一般に、炉心内各領域に配置された燃料集合体の冷却水配分を考えるとき、▲1▼冷却水流量が相対的に大きいほど中性子減速効果が増大して出力が増大するので熱的余裕を小さくする作用となる一方で、▲2▼冷却水流量が増えることで冷却効果が向上することは熱的余裕を大きくする作用とより、これらのバランスに基づき冷却水の流量配分が適正かどうかが決められる。ここで、上記(2)で説明したように、燃料集合体の相互間のギャップ水領域が拡大した場合、中性子の減速は主としてその広いギャップ水領域で行われるようになるため、上記▲1▼の作用が▲2▼に比べて相対的に小さくなり、▲2▼の作用が大きくなる。本発明では、このことに鑑み、最外層燃料集合体と、外層部燃料集合体のうち最外層燃料集合体を除く燃料集合体と、内周部燃料集合体とについて、出力が大きいものほど大きな冷却水流量が流れるようにして冷却効果を向上させる。これにより、燃料棒の限界出力を大きくすることができるので、全体として炉心出力の増大を図ることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
本発明の第1実施形態を図1〜図16により説明する。
【0024】
図2は、本発明の適用対象となる沸騰水型原子炉の全体構造を表す垂直縦断面図である。
【0025】
この図2において、沸騰水型原子炉は、圧力容器1内に設置されたシュラウド2と、このシュラウド2内部に格納された炉心3と、シュラウド2の上部に配設された気水分離器4と、この気水分離器4のさらに上部に配設された蒸気乾燥器5とを備えている。
【0026】
圧力容器1内の冷却水は、圧力容器1とシュラウド2との間に配設された再循環ポンプ6によって炉心3下部の下部プレナム7に流入し、上昇して炉心3内に流入するようになっている。炉心3内には多数の燃料集合体8(図2中では、便宜的に4体のみ図示)が格子状に所定間隔で配置されており、この燃料集合体8に備えられた燃料棒9(後述の図3参照)の核分裂性物質の核分裂反応により冷却水が加熱されて沸騰し、水と蒸気の二相混合流となってシュラウドヘッド10に流入する。その後、気水分離器4によって水と分離された蒸気は蒸気乾燥器5で乾燥され、圧力容器1の主蒸気ノズル(図示せず)から流出してタービン(図示せず)に供給されるようになっている。
【0027】
図3は、上記燃料集合体8の詳細構造を表す垂直縦断面図である。
【0028】
この図3において、燃料集合体8は、例えば10×10の正方格子状に配列された92本の上記燃料棒9と、中性子減速棒である2本の水ロッド11と、これら燃料棒9及び水ロッド11の軸方向複数箇所を束ねて燃料バンドルとする複数のスペーサ12と、燃料バンドルの上部及び下部をそれぞれ支持する上部タイプレート13及び下部タイプレート14と、燃料バンドルの周囲を取り囲み燃料集合体8の外壁を形成する略四角筒形状のチャンネルボックス15とを備えている。
【0029】
燃料棒9は、詳細は図示しないが、例えばジルコニウム製の被覆管に核分裂性物質(U−235やU−238等を含むウラン燃料ペレット等)が充填されており、燃料棒有効長(燃料ペレットが存在する部分)が通常の長さである78本の燃料棒9Aと燃料棒有効長が燃料棒9Aよりも短い14本の短尺燃料棒(部分長燃料棒)9Bとで構成されている。
【0030】
このような燃料集合体8は、4体を1組として後述する燃料支持金具16(図5参照)に載置されている。図4は、隣接する4つの燃料集合体8の詳細構造を表す水平横断面図であり、図5は、上記燃料支持金具16の全体構造を表す斜視図である。
【0031】
これら図4及び図5において、隣接する燃料集合体8の間(隣接するチャンネルボックス15の外幅Wの間のギャップ幅D)には飽和水であるギャップ水17が満たされ、このギャップ水17領域には圧力容器1下部の制御棒駆動機構18(前述の図2参照)で駆動される横断面十字形の制御棒19が制御棒案内管20(前述の図2参照)をガイドにして上下方向(図4中紙面に向かって手前・奥方向)に挿抜可能に配置されており、これにより炉心3の出力が制御されるようになっている。また、図示しないが、炉心出力を測定する炉内計装系が別途設けられている。
【0032】
燃料支持金具16は、上記制御棒19挿通用の略十字形の貫通孔21と、上記燃料集合体8の下部タイプレート14を挿入して支持するための4つの支持孔22と、この支持孔22に対応して側面下部に設けた4つの冷却材流入口23と、これら支持孔22及び冷却材流入口23の間にそれぞれ形成される4つの冷却材流路(図示せず)と、冷却材流入口23にそれぞれ設けられ冷却水流量を調節するための4つのオリフィス(図示せず)とを備えている。
【0033】
ここで、本実施形態の大きな特徴としては、沸騰水型原子炉の単位発電量あたりのコストを低減するために、所定容積の上記圧力容器1に対し炉心出力が増大するようになっている。一般に所定容積の圧力容器1に対し増出力する方法の1つとして例えば炉心の出力密度を増大する方法があるが、300体以上500体以下の燃料集合体8を備えた中型炉の場合、炉停止余裕の観点からその出力増加幅は比較的少ない。そこで、本実施形態では、炉心流量が一定でも燃料集合体8の数が増加することで炉心出力が増大する(なお、このとき燃料集合体8の増加により燃料集合体8一体あたりの流量が減少して最小限界出力比は減少するが、例えば出力密度を燃料集合体8の数の平方根に反比例するように減少させる等をすれば、結果として最小限界出力比を一定としたまま炉心出力が増大する)ことに着目し、上記炉心3は、所定容積の圧力容器1内に略円形状に配置した従来炉心よりも、圧力容器1内の再循環ポンプ6を避けるように外周側凹凸状に燃料集合体8を増加配置している。その詳細を以下に説明する。
【0034】
図1は、本実施形態による炉心3の燃料集合体8配置を表す水平横断面図であり、図6は、本実施形態による炉心3の燃料集合体8配置を表す1/4炉心配置図である。
【0035】
これら図1及び図6において、炉心3には496体(図6中124体を図示)の上記燃料集合体8が配置され、最外層(外周側)に配置される燃料集合体(言い換えれば、炉心3外部の反射体水領域24に少なくとも1つのチャンネルボックス15側面を接する燃料集合体)8Aを76体(図6中19体を太枠部で図示)とし、これら最外層燃料集合体8Aの炉心中心からの距離(詳細には、炉心中心点からチャンネルボックス15中心までの水平距離)Lのうちの最短距離Lminを約10.6(D+W)としている。
【0036】
また、炉心3は、炉心中心から最短距離Lminにある燃料集合体8Aと同円周上及び外周側に配置される(言い換えれば、L≧Lmin)外層部燃料集合体(最外層燃料集合体8Aを含む)8Bが148体(図6中37体を図示)と、炉心中心から最短距離Lminにある最外層燃料集合体8Aより内周側に配置される(言い換えれば、L<Lmin)内周部燃料集合体8Cが348体(図6中87体を図示)とで構成されている。
【0037】
このように構成された炉心3は、外層部燃料集合体8Bの数が全燃料集合体数に占める割合は30%程度(=148体/496体)となり、最外層燃料集合体8Aの数が全燃料集合体数に占める割合は15%程度(=76体/496体)となる。また、最外層燃料集合体8Aの炉心中心からの距離Lのうちの最長距離Lmaxは約12.7(D+W)であり、最短距離Lminと最長距離Lmaxとの比Lmin/Lmaxは約0.83(=10.6/12.7)となる。
【0038】
次に、本実施形態の動作を説明する。
再循環ポンプ6の駆動により下部プレナム7内に流入した冷却水は、上昇して燃料支持金具16の冷却材流入口23に流入する。冷却水は燃料支持金具16内でオリフィスを介し冷却材流路を上方に流れ、下部タイプレート14から燃料集合体8のチャンネルボックス15内に流入し、燃料棒9の核分裂性物質の核分裂反応により加熱されて沸騰しながら燃料棒9の間を上方に流れ、水と蒸気の二相混合流となってシュラウドヘッド10に流入する。その後、気水分離器4によって水と分離された蒸気が蒸気乾燥器5を介しタービンに送られ発電を行う。
【0039】
次に、本実施形態による上記炉心3の作用効果を、所定容積の圧力容器1内に略円形状に配置した従来炉心と比較しながら以下に詳細に説明する。
【0040】
図7は、従来炉心の燃料集合体8配置を表す水平横断面図であり、図8は、従来炉心の燃料集合体8配置を表す1/4炉心配置図である。これら図7及び図8において、上記炉心3と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0041】
図7及び図8において、従来炉心25は、圧力容器1内の再循環ポンプ6を避けるように(上記炉心3の最外層燃料集合体8Aの一部をそのまま最外層燃料集合体8Aとしながら)略円形状に376体(図8中94体を図示)の燃料集合体8が配置されており、最外層燃料集合体8Aを60体(図8中15体を太枠部で図示)としている。また、従来炉心25は、外層部燃料集合体8Bが60体(図8中15体を図示、最外層燃料集合体8Aと同数)と、内周部燃料集合体8Cが316体(図8中79体を図示)とで構成されている。
【0042】
このように構成された従来炉心25は、外層部燃料集合体8Bの数が全燃料集合体数に占める割合は16%程度(=60体/376体)となり、最外層燃料集合体8Aの数が全燃料集合体数に占める割合も16%程度(=60体/376体)となる。また、最外層燃料集合体8Aの炉心中心からの最短距離Lminは約10.1(D+W)、最長距離Lmaxは約10.8(D+W)であり、Lmin/Lmaxは約0.94(=10.1/10.8)となる。
【0043】
図9は、略円形状に配置された従来炉心において外層部燃料集合体8Bが占める割合を表す特性図である。この図9において、横軸は燃料集合体8の装荷数をとって表しており、縦軸は外層部燃料集合体8Bの数が全燃料集合体数に占める割合をとって表している。
【0044】
図9において、例えば368体の燃料体集合体8が略円形状に配置された従来炉心では外層部燃料集合体8Bの占める割合が23%と比較的高くなり、燃料集合体8の装荷数が増加するに従って外層部燃料集合体8Bの占める割合が減少している。また、円面積と円周との関係からも明らかなように、燃料集合体8の装荷数が増加するに従って最外層燃料集合体8Aの占める割合も同様に減少する。
【0045】
図10は、本実施形態による上記炉心3の径方向出力ピーキングを上記従来炉心25とともに表す特性図である。この図10において、横軸は最短距離Lminと最長距離Lmaxとの比Lmin/Lmaxをとって表しており、縦軸は径方向出力ピーキングをとって表している。
【0046】
径方向出力ピーキングは、この種のものとして公知の方法により算出され(ただし、最外層燃料集合体8Aの燃焼度及び冷却水配分等の条件によって各燃料集合体8の相対出力が変化し、径方向出力ピーキングの算出値は若干変化する)、炉心3(Lmin/Lmax=0.83)では約1.583となり、従来炉心25(Lmin/Lmax=0.95)では約1.578となる。
【0047】
以上のように、本実施形態の炉心3は、相対的に低出力の外層部燃料集合体8Bの割合が従来炉心25の16%から30%まで増加し径方向出力ピーキングが増大する傾向となるものの、中性子漏れが大きい(また一般に燃焼の進んだ)最外層部燃料集合体8Aの割合が従来炉心25の16%から15%まで減少し径方向出力ピーキングを低減する作用がこれを相殺する結果、その径方向出力ピーキングを従来炉心25程度に抑えることができる。
【0048】
次に、上記炉心3と同様の燃料集合体8の装荷数としながら、燃料集合体8配置形状が異なる比較例について説明する。
【0049】
図11は、第1の比較例による炉心の燃料集合体8配置を表す水平横断面図であり、図12は、第1の比較例による炉心の燃料集合体8配置を表す1/4炉心配置図であり、図13は、第2の比較例による炉心の燃料集合体8配置を表す水平横断面図であり、図14は、第2の比較例による炉心の燃料集合体8配置を表す1/4炉心配置図であり、図15は、第3の比較例による炉心の燃料集合体8配置を表す水平横断面図であり、図16は、第3の比較例による炉心の燃料集合体8配置を表す1/4炉心配置図である。これら図11、図12、図13、図14、図15、及び図16において、上記炉心3と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0050】
図11、図12、図13、図14、図15、及び図16において、第1の比較例による炉心26は、上記炉心3同様、496体(図12中124体を図示)の燃料集合体8が配置され、最外層燃料集合体8Aを76体(図12中19体を太枠部で図示)としている。また、炉心26は、上記炉心3同様、外層部燃料集合体8Bが148体(図12中37体を図示)と、内周部燃料集合体8Cが348体(図12中87体を図示)とで構成されている。これにより、上記炉心3同様、外層部燃料集合体8Bの数が全装荷体数に占める割合は30%程度(=148体/496体)となり、最外層燃料集合体8Aの数が全装荷体数に占める割合は15%程度(=76体/496体)となる。また、最外層燃料集合体8Aの炉心中心からの最短距離Lminは約10.6(D+W)、最長距離Lmaxは約13.0(D+W)であり、Lmin/Lmaxは約0.82(=10.6/13.0)となる。
【0051】
第2の比較例による炉心27は、上記炉心3,26同様、496体(図14中124体を図示)の燃料集合体8が配置され、最外層燃料集合体8Aを76体(図14中19体を太枠部で図示)としている。また、炉心27は、上記炉心3,26同様、外層部燃料集合体8Bが148体(図14中37体を図示)と、内周部燃料集合体8Cが348体(図14中87体を図示)とで構成されている。これにより、上記炉心3,26同様、外層部燃料集合体8Bの数が全装荷体数に占める割合は30%程度(=148体/496体)となり、最外層燃料集合体8Aの数が全装荷体数に占める割合は15%程度(=76体/496体)となる。また、最外層燃料集合体8Aの炉心中心からの最短距離Lminは約10.6(D+W)、最長距離Lmaxは約13.3(D+W)であり、Lmin/Lmaxは約0.80(=10.6/13.3)となる。
【0052】
第3の比較例による炉心28は、496体(図16中124体を図示)の燃料集合体8が配置され、最外層燃料集合体8Aを92体(図16中23体を太枠部で図示)としている。また、炉心28は、外層部燃料集合体8Bが140体(図16中35体を図示)と、内周部燃料集合体8Cが356体(図16中89体を図示)とで構成されている。これにより、外層部燃料集合体8Bの数が全装荷体数に占める割合は28%程度(=140体/496体)となり、最外層燃料集合体8Aの数が全装荷体数に占める割合は19%程度(=92体/496体)となる。また、最外層燃料集合体8Aの炉心中心からの最短距離Lminは約9.92(D+W)、最長距離Lmaxは約13.7(D+W)であり、Lmin/Lmaxは約0.72(=9.92/13.7)となる。
【0053】
前述の図10に示すように、算出した上記第1の比較例による炉心26(Lmin/Lmax=0.82)の径方向出力ピーキングは1.587となり、算出した上記第2の比較例による炉心27(Lmin/Lmax=0.80)の径方向出力ピーキングは1.594となり、算出した上記第3の比較例による炉心28(Lmin/Lmax=0.72)の径方向出力ピーキングは1.660となる。
【0054】
以上のことから、本実施形態においては、単位発電量あたりのコストを低減するために、例えば所定容積の圧力容器1内に略円形状に配置した従来炉心25よりも燃料集合体8を増加し出力を増大することを目的として、圧力容器1内の再循環ポンプ6を避けるように外周側凹凸状に燃料集合体8を増加配置し、全燃料集合体数に占める外層部燃料集合体数8Bの割合を増加させていく(言い換えれば、燃料集合体8の配置形状の指標となるLmin/Lmaxを減少させていく)場合、基本的には相対的に低出力の外層部燃料集合体8Bが増加することで炉心の径方向出力ピーキングは増大していく傾向となる。
【0055】
しかしながら、Lmin/Lmax≧0.8の範囲の上記炉心3,26,27では、全燃料集合体数に占める最外層燃料集合体8Aの割合が小さくなることで炉心の径方向出力ピーキングを低減する作用がこれを相殺する結果、炉心の径方向出力ピーキングを従来炉心25程度に抑えることができる。このとき、外層部燃料集合体8Bの占める割合が40%以上となるとLmin/Lmax<0.8となるため、外層部燃料集合体8Bの占める割合が40%以下であることも必要である。
【0056】
一方、発電コスト低減を図る場合に、通常、300体以上500体以下の燃料集合体を備えた中型炉においては、いわゆるスケール効果(例えば0.7乗則)により発電量を小さくしても発電単価は大型炉と比較すると割高になる傾向がある(例えば376体炉心の場合、現行ABWRよりも発電単価が29%高くなる)。これを補って大型炉心と同程度の発電単価とするためには、少なくとも外層部燃料集合体8Bの割合を25%程度まで炉心形状を凹凸にして燃料集合体8を詰める必要がある。
【0057】
図17は、外層部燃料集合体8Bの占める割合を25%程度とする第4の比較例による炉心の燃料集合体8配置を表す水平横断面図であり、図18は第4の比較例による炉心の燃料集合体8配置を表す1/4炉心配置図である。この図17及び図18において、上記炉心3と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0058】
図17及び図18において、炉心29は、444体(図18中111体を図示)の燃料集合体8が配置され、最外層燃料集合体8Aを68体(図18中17体を太枠部で図示)としている。また、炉心34は、外層部燃料集合体8Bが112体(図18中28体を図示)と、内周部燃料集合体8Cが332体(図18中83体を図示)とで構成されている。これにより、外層部燃料集合体8Bの数が全装荷体数に占める割合は25%程度(=112体/444体)となり、最外層燃料集合体8Aの数が全装荷体数に占める割合は15%程度(=68体/444体)となる。また、最外層燃料集合体8Aの炉心中心からの最短距離Lminは約10.5(D+W)、最長距離Lmaxは約12.3(D+W)であり、Lmin/Lmaxは約0.85(=10.5/12.3)となる。
【0059】
前述の図10に示すように、算出した上記炉心29(Lmin/Lmax=0.85)の径方向出力ピーキングは1.574であり、従来炉心25程度に抑えることができる。また、炉心29のように外層部燃料集合体8Bの占める割合を25%以上とする場合、Lmin/Lmax>0.85となるように燃料集合体8を配置するのは困難であるからLmin/Lmax≦0.85となる。
【0060】
本実施形態においては、以上に基づき、0.8≦Lmin/Lmax≦0.85、かつ25%≦外層部燃料集合体の占める割合≦40%とする。これにより、所定容積の圧力容器1内に熱的余裕を確保しつつ燃料集合体を増加し出力を増大することができ、発電コストを抑えることができるので、大型炉と同等の経済性を実現することができる。また、炉心の燃料集合体8配置を凹凸形状とすることにより、所定容積の圧力容器1内に再循環ポンプ6等の設置スペースを確保しながら燃料集合体8を増加して出力を増大することができる。
【0061】
なお、上記実施形態では、300体以上500体以下の燃料集合体8を備えた中型炉の場合について説明してきたが、これに限らない。すなわち、例えば500体以上の燃料集合体8を備えた大型炉においても、例えば略円形状に燃料集合体8が配置された従来炉心に対し外層部燃料集合体8Bを増加させていくときに、0.8≦Lmin/Lmax≦0.85、かつ25%≦外層部燃料集合体の占める割合≦40%とする。このような場合にも、上記実施形態同様の効果を得ることができる。また、300体以下の小型炉においては、外層部燃料集合体の増大に伴って出力ピーキングの絶対値が大きくなり、熱的余裕を設計基準に従って確保することは困難となるため、上記実施形態の適用対象にはならない。
【0062】
本発明の第2実施形態を図19により説明する。
本実施形態は、隣接する燃料集合体8におけるチャンネルボックス15どうしのギャップ幅Dを拡大した実施形態である。
【0063】
図19は、本実施形態による炉停止余裕の変化率を表す特性図である。横軸は上記チャンネルボックス15のギャップ幅Dと外幅Wとの比D/Wをとって表しており、縦軸は炉停止余裕の従来からの変化率をとって表している。
【0064】
本実施形態においては、少なくとも一対の燃料集合体8において、上記チャンネルボックス15の外幅W(前述の図4参照)を例えば139mmとし、チャンネルボックス15どうしのギャップ幅D(前述の図4参照)を従来の15.8mmから例えば18.3mmに拡大することで、ギャップ幅Dと外幅Wとの比D/Wを従来の約0.114から約0.132まで増加する。これにより、燃料集合体8の相互間のギャップ水17領域が拡大し、冷却水のボイド率が小さくなり運転時の中性子減速効果を増大するので、冷温時との反応度差(ホット・コールドスイング)が小さくなり、従来のギャップ幅Dと外幅Wとの比D/Wを0.114とする場合よりも、炉停止余裕を1.5%程度増大させることができる。また、図示のように、炉停止余裕を1.3%程度増大させるには、ギャップ幅Dと外幅Wとの比D/Wを≧0.13とすればよいことがわかった。
【0065】
この結果より、例えば出力密度を20%程度増大した場合でも、ギャップ幅Dと外幅Wとの比をD/W≧0.13とすることで炉停止余裕を確保できる(言い換えれば、出力密度20%増大による炉停止余裕の減少分1.3%を補うことができる)。すなわち、所定容積の圧力容器1内に炉停止余裕を確保しつつ燃料集合体8を増加し出力を増大することができる。
【0066】
本発明の第3実施形態を図20及び図21により説明する。
本実施形態は、各燃料集合体8の冷却水配分を適正化した実施形態である。
【0067】
一般に、上記炉心3内各領域に配置された燃料集合体8の冷却水配分を考えるとき、冷却水流量が相対的に大きいほど中性子減速効果が増大して出力が増大する作用(熱的余裕が小さくなる作用)と、冷却水流量が増えることで冷却効果が向上する作用(熱的余裕が大きくなる作用)とのバランスに基づき冷却水の流量配分が適正かどうかが決められる。ここで、上記第2実施形態で説明したように、燃料集合体8の相互間のギャップ水17領域が拡大した場合、中性子の減速は主としてその広いギャップ水17領域で行われるようになるため、上記した中性子減速効果が増大して出力が増大する作用が上記冷却効果に比べて相対的に小さくなり、冷却効果が向上する作用が大きくなる。
【0068】
図20は、上記炉心3の各燃料集合体8の出力分布を表す1/4炉心配置図であり、図21は、上記炉心3の燃料集合体8を載置する燃料支持金具16における各オリフィスの圧力損失の平均値分布を表す1/4炉心配置図である。
【0069】
本実施形態においては、比較的低出力(図示のように出力範囲0.19〜0.45、出力平均値0.29)の最外層燃料集合体8Aを載置する全ての第1燃料支持金具16におけるオリフィスの圧力損失の平均値をPloss1とし、最外層燃料集合体8Aより若干出力の高い(図示のように出力範囲0.44〜0.84、出力平均値0.64)外層部燃料集合体8B(ただし、最外層燃料集合体8Aを除く)を載置する全ての第2燃料支持金具16におけるオリフィスの圧力損失の平均値をPloss2とし、比較的高出力(図示のように出力範囲0.74〜1.58、出力平均値1.23)の内周部燃料集合体8Cを載置する全ての第3燃料支持金具16におけるオリフィスの圧力損失の平均値をPloss3とする場合、Ploss1≧Ploss2>Ploss3の関係となるようにそれぞれ設定する。
【0070】
これにより、最外層燃料集合体8Aと、この最外層燃料集合体8Aを除いた外層部燃料集合体8Bと、内周部燃料集合体8Cとについて、出力が大きいものほど(最外層燃料集合体8Aの平均出力>最外層燃料集合体8Aを除いた外層部燃料集合体8Bの平均出力>内周部燃料集合体8Cの平均出力)大きな冷却水流量が流れるようにして炉心3全体の冷却効果を向上させることができる。この結果、上記燃料棒9の限界出力を大きくすることができるので、全体として炉心3出力の増大を図ることができる。
【0071】
なお、上記第3実施形態においては、上記第1実施形態で説明した炉心3を例に取り説明したが、これに限らない。すなわち、例えば上記第1実施形態で説明した炉心26,27,29等に適用してもよい。この場合も上記同様の効果を得ることができる。
【0072】
【発明の効果】
請求項1記載の本発明によれば、装荷燃料集合体数500体以下の中型の沸騰水型原子炉の炉心において、熱的余裕を確保しつつ出力を増大し、大型炉と同等の経済性を実現できる。
【0073】
請求項2記載の本発明によれば、装荷燃料集合体数500体以下の中型の沸騰水型原子炉の炉心において、炉停止余裕を確保しつつ出力を増大し、大型炉と同等の経済性を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の沸騰水型原子炉の炉心の第1実施形態の燃料集合体配置を表す水平横断面図である。
【図2】本発明の沸騰水型原子炉の炉心の適用対象となる沸騰水型原子炉の全体構造を表す垂直縦断面図である。
【図3】本発明の沸騰水型原子炉の炉心の第1実施形態を構成する燃料集合体の詳細構造を表す垂直縦断面図である。
【図4】本発明の沸騰水型原子炉の炉心の第1実施形態を構成する燃料集合体8の詳細構造を表す水平横断面図である。
【図5】本発明の沸騰水型原子炉の炉心の第1実施形態を構成する燃料支持金具の全体構造を表す斜視図である。
【図6】本発明の沸騰水型原子炉の炉心の第1実施形態の燃料集合体配置を表す1/4炉心配置図である。
【図7】本発明の沸騰水型原子炉の炉心の従来例の燃料集合体配置を表す水平横断面図である。
【図8】本発明の沸騰水型原子炉の炉心の従来例の燃料集合体配置を表す1/4炉心配置図である。
【図9】本発明の沸騰水型原子炉の炉心の従来例における外層部燃料集合体の占める割合を表す特性図である。
【図10】本発明の沸騰水型原子炉の炉心の第1実施形態の径方向出力ピーキングを従来例及び比較例とともに表す特性図である。
【図11】本発明の沸騰水型原子炉の炉心の第1の比較例の燃料集合体配置を表す水平横断面図である。
【図12】本発明の沸騰水型原子炉の炉心の第1の比較例の燃料集合体配置を表す1/4炉心配置図である。
【図13】本発明の沸騰水型原子炉の炉心の第2の比較例の燃料集合体配置を表す水平横断面図である。
【図14】本発明の沸騰水型原子炉の炉心の第2の比較例の燃料集合体配置を表す1/4炉心配置図である。
【図15】本発明の沸騰水型原子炉の炉心の第3の比較例の燃料集合体配置を表す水平横断面図である。
【図16】本発明の沸騰水型原子炉の炉心の第3の比較例の燃料集合体配置を表す1/4炉心配置図である。
【図17】本発明の沸騰水型原子炉の炉心の第4の比較例の燃料集合体配置を表す水平横断面図である。
【図18】本発明の沸騰水型原子炉の炉心の第4の比較例の燃料集合体配置を表す1/4炉心配置図である。
【図19】本発明の沸騰水型原子炉の炉心の第2実施形態の炉停止余裕の変化率を表す特性図である。
【図20】本発明の沸騰水型原子炉の炉心の第3実施形態の各燃料集合体の出力分布を表す1/4炉心配置図である。
【図21】本発明の沸騰水型原子炉の炉心の第3実施形態を構成する燃料支持金具の各オリフィスの圧力損失の平均値分布を表す1/4炉心配置図である。
【符号の説明】
3 炉心
8 燃料集合体
8A 最外層燃料集合体
8B 外層部燃料集合体
8C 内周部燃料集合体
9 燃料棒
15 チャンネルボックス
16 燃料支持金具
23 冷却材流入口
D チャンネルボックスどうしのギャップ幅
L 燃料集合体の炉心中心からの距離
Lmin 最外層燃料集合体の炉心中心からの最短距離
Lmax 最外層燃料集合体の炉心中心からの最長距離
Ploss1 第1燃料支持金具におけるオリフィスの圧力損失の平均値
Ploss2 第2燃料支持金具におけるオリフィスの圧力損失の平均値
Ploss3 第3燃料支持金具におけるオリフィスの圧力損失の平均値
W チャンネルボックス外幅
【発明の属する技術分野】
本発明は沸騰水型原子炉に関わり、特に装荷燃料集合体数500体以下の中型原子炉の炉心に関する。
【0002】
【従来の技術】
(1)炉心の構成
沸騰水型原子炉の炉心は、格子状に等間隔に配置された多数の燃料集合体と、この燃料集合体の相互間のギャップ水領域に挿入される制御棒と、炉内計装系とから構成される。炉心外部には反射体水領域があり、その外側にはシュラウドが配置され、内側(炉心部)を上方に向かって流れる冷却水と外側を下方に向かって流れる再循環水を分離している。再循環水は、圧力容器とシュラウドの間に配置された再循環ポンプによって強制循環される。
【0003】
燃料集合体は、略四角筒形状のチャンネルボックスと、このチャンネルボックスに取り囲まれた燃料バンドルからなる。燃料バンドルは、正方格子状に規則正しく配列された複数本の燃料棒と、中性子減速棒である水ロッドとから構成される。一方、チャンネルボックスの周囲には制御棒、あるいは、炉内計装系が挿入できるよう飽和水の領域であるギャップ水が満たされる。燃料棒の間には冷却水がチャンネルボックス下方から上方に向かって流れており、中性子減速材としての役割とともに、燃料棒で発生した熱エネルギーをタービン機器側に伝達し電気エネルギーへ変換する役割を担っている。
【0004】
(2)炉心の出力密度
一般に、炉心において、単位時間、炉心の単位体積あたりに発生する熱エネルギーは炉心の出力密度と称される。炉心の体積とは、燃料棒のうち発熱に寄与する部分の長さ(=燃料棒有効長)、燃料集合体の配列ピッチの二乗(=単位格子面積)、および装荷燃料集合体数の積で定義される。
【0005】
近年、原子炉の経済性向上を目的として、単位発電量あたりの発電コスト(=発電単価)を低減するために原子炉出力を増大する傾向がある。原子炉構造を大きく変更せずに出力を増大するためには、炉心の出力密度を増大するのが有効な手段である。例えば米国のクリントン原子力発電所は、従来の炉心出力密度52.4kW/lから20%出力を増大させ約62.9kW/lとすることについて、米国原子力規制委員会(NRC)より既に承認されたことが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
(3)熱的余裕と炉停止余裕
このとき、炉心設計の観点から、炉心出力密度をどこまで増大できるかは、主に原子炉運転中や過渡時における燃料の健全性を保証する熱的余裕、および原子炉が安全に停止できることを示す指標である炉停止余裕を、定められた設計基準に従って保てるかどうかで決まる。
【0007】
熱的余裕は最大線出力密度(MLHGR)および最小限界出力比(MCPR)によって表される。最大線出力密度は、燃料棒単位長さあたりの最大発熱量によって定義され、設計基準によって決められた値を運転中に超えないようにする必要がある。また、最小限界出力比は、燃料棒被覆管表面において冷却水が膜沸騰状態に遷移し除熱効率が著しく低下し始める燃料棒出力、すなわち限界出力を実際の出力で割った値で定義され、設計基準で決められた値を運転中および過渡時に下回らない様にする必要がある。熱的余裕は、炉心出力密度を増大することで減少していく。
【0008】
また、炉停止余裕についても、以下のような理由で炉心出力密度を増大するにつれ減少していく。一般に、沸騰水型原子炉では、炉心の冷却水が沸騰して中性子の減速効果が小さくなる原子炉運転時よりも、冷却水が飽和水となる原子炉停止時の方が、炉心からの中性子漏れが減少する効果、並びに中性子減速効果が増大する効果により、炉心反応度が大きくなる傾向がある。この原子炉運転時と停止時の反応度の差(ホット・コールドスイングと呼ばれる)が大きいほど炉停止余裕が小さくなる。このとき、出力密度を増大した場合は、運転時に冷却水が燃料集合体高さ方向においてより低い位置から沸騰を開始するため、冷却水を水蒸気が占める割合(ボイド率)が大きくなる。ボイド率が大きくなるほど上記効果が増大し、結果として出力密度を増大するほどホット・コールドスィングが大きくなり、炉停止余裕がより減少することになる。
【0009】
【非特許文献1】
World Nuclear Industry Handbook 2001
(Nuclear Engineering International誌)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
近年、電力需要増加割合の鈍化や分散電源志向の強まりなどに対応し、発電容量を小規模とする代わりに、発電に必要な設備物量を低減することで建設コストを抑えた中小型原子炉(例えば、装荷燃料集合体数を300ないし500程度としたもの)のニーズが高まっている。一般に、発電容量を小さくしても、それと同等な割合で設備コストを低減することはできないため、中型炉の発電単価は大型炉(例えば、装荷燃料集合体が600体を超え電気出力が100万kW以上であるような原子炉)と比較すると割高になる傾向がある(=スケール効果)。スケール効果による経済性悪化を克服するため、同規模の設備でできるだけ出力を増大することが、中型炉ではいっそう重要となる。
【0011】
しかしながら、上述したような出力増大に伴う熱的余裕の低下を防止し、経済性を良好とできる中型炉は従来存在しなかった。
【0012】
一方、中型炉の場合は炉心サイズが小さいことから、大型炉と比較して中性子が炉心から漏れる割合が大きくなり反応度が減少する。この中性子漏れによる中型炉と大型炉の反応度差は、冷却水のボイド率が大きくなり中性子減速効果が小さくなる運転時に相対的に大きくなり、冷却水が飽和水となる運転停止時には差が小さくなる。すなわち、中型炉の方が相対的にホット・コールドスイングが大きくなって炉停止余裕が小さくなる。このように、出力増大に伴う炉停止余裕の低下を防止し、経済性を良好とできる中型炉も従来は存在しなかった。
【0013】
本発明の第1の目的は、装荷燃料集合体数500体以下の中型の沸騰水型原子炉の炉心において、熱的余裕を確保しつつ出力を増大し、大型炉と同等の経済性を実現できる構成を提供することにある。
【0014】
本発明の第2の目的は、装荷燃料集合体数500体以下の中型の沸騰水型原子炉の炉心において、炉停止余裕を確保しつつ出力を増大し、大型炉と同等の経済性を実現できる構成を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、複数の燃料棒とこれらを取り囲むチャンネルボックスとを備えた燃料集合体を300体以上500体以下備えた沸騰水型原子炉の炉心であって、各燃料集合体について、炉心水平横断面におけるチャンネルボックス中心から炉心中心点からまでの距離をLとし、炉心最外層に配置される最外層燃料集合体それぞれの上記Lのうち最短のものをLmin、最長のものをLmaxとしたとき、0.8≦Lmin/Lmax≦0.85とし、かつL≧Lminとなる外層部燃料集合体の数が全燃料集合体数に占める割合を25%以上40%以下とする。
【0016】
単位発電量あたりのコストを低減するために、所定容積の圧力容器内に略円形状に配置した従来炉心よりも燃料集合体数を増加し出力を増大することを目的として、所定容積の圧力容器内に例えば再循環ポンプ等を配置しつつ、この再循環ポンプを避けるように外周側凹凸状に燃料集合体を増加配置し、全燃料集合体数に占める外層部燃料集合体数の割合を増加させていく(燃料集合体の配置形状の指標となる最外層燃料集合体の炉心中心からの最短距離Lminと最長距離Lmaxとの比Lmin/Lmaxを減少させていく)場合、基本的には相対的に低出力の外層部燃料集合体が増加することで炉心の径方向出力ピーキングは増大していく傾向となる。しかしながら、Lmin/Lmax≧0.8の範囲では、全燃料集合体数に占める最外層燃料集合体数の割合が小さくなることで炉心の径方向出力ピーキングを低減する作用がこれを相殺する結果、炉心の径方向出力ピーキングを上記従来炉心程度に抑えることができる。このとき、外層部燃料集合体の占める割合が40%以上となるとLmin/Lmax<0.8となるため、外層部燃料集合体の占める割合が40%以下であることも必要である。
【0017】
一方、発電コスト低減を図る場合に、通常、300体以上500体以下の燃料集合体を備えた中型炉においては、いわゆるスケール効果(例えば0.7乗則)により発電量を小さくしても発電単価は大型炉と比較すると割高になる傾向がある(例えば376体炉心の場合、現行ABWRよりも発電単価が29%高くなる)。これを補って大型炉心と同程度の発電単価とするためには、少なくとも外層部燃料割合25%程度まで炉心形状を凹凸にして燃料集合体を詰める必要がある。また、外層部燃料集合体割合を25%以上とする場合、Lmin/Lmax>0.85とするのは困難なため、Lmin/Lmax≦0.85となる。
【0018】
本発明においては、以上に基づき、0.8≦Lmin/Lmax≦0.85、かつ25%≦外層部燃料集合体の占める割合≦40%とする。これにより、所定容積の圧力容器内に熱的余裕を確保しつつ燃料集合体を増加し出力を増大することができ、発電コストを抑えることができるので、大型炉と同等の経済性を実現することができる。
【0019】
(2)上記(1)において、好ましくは、各燃料集合体の前記チャンネルボックス外幅をW、隣接する燃料集合体のチャンネルボックスどうしのギャップ幅をDとしたとき、少なくとも一部の燃料集合体について、D/W≧0.13とする。
【0020】
これにより、燃料集合体の相互間のギャップ水領域が拡大して、冷却水のボイド率が小さくなり運転時の中性子減速効果を増大するので、冷温時との反応度差(ホットコールドスイング)が小さくなり炉停止余裕が約1.3%増大し、出力密度を20%増大した場合でも炉停止余裕を同程度に確保できる。すなわち、所定容積の圧力容器内に炉停止余裕を確保しつつ燃料集合体を増加し出力を増大することができる。
【0021】
(3)上記(2)において、好ましくは、冷却材流入口にオリフィスを備え前記燃料集合体を載置する複数の燃料支持金具をさらに有し、これら複数の燃料支持金具は、前記最外層燃料集合体を載置する第1燃料支持金具、前記外層部燃料集合体のうち前記最外層燃料集合体を除く燃料集合体を載置する第2燃料支持金具、前記外層部燃料集合体よりも炉心中心側に位置する内周部燃料集合体を載置する第3燃料支持金具を含んでおり、全ての前記第1燃料支持金具におけるオリフィスの圧力損失の平均値をPloss1、全ての前記第2燃料支持金具におけるオリフィスの圧力損失の平均値をPloss2、全ての前記第3燃料支持金具におけるオリフィスの圧力損失の平均値をPloss3としたとき、Ploss1≧Ploss2>Ploss3である。
【0022】
一般に、炉心内各領域に配置された燃料集合体の冷却水配分を考えるとき、▲1▼冷却水流量が相対的に大きいほど中性子減速効果が増大して出力が増大するので熱的余裕を小さくする作用となる一方で、▲2▼冷却水流量が増えることで冷却効果が向上することは熱的余裕を大きくする作用とより、これらのバランスに基づき冷却水の流量配分が適正かどうかが決められる。ここで、上記(2)で説明したように、燃料集合体の相互間のギャップ水領域が拡大した場合、中性子の減速は主としてその広いギャップ水領域で行われるようになるため、上記▲1▼の作用が▲2▼に比べて相対的に小さくなり、▲2▼の作用が大きくなる。本発明では、このことに鑑み、最外層燃料集合体と、外層部燃料集合体のうち最外層燃料集合体を除く燃料集合体と、内周部燃料集合体とについて、出力が大きいものほど大きな冷却水流量が流れるようにして冷却効果を向上させる。これにより、燃料棒の限界出力を大きくすることができるので、全体として炉心出力の増大を図ることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
本発明の第1実施形態を図1〜図16により説明する。
【0024】
図2は、本発明の適用対象となる沸騰水型原子炉の全体構造を表す垂直縦断面図である。
【0025】
この図2において、沸騰水型原子炉は、圧力容器1内に設置されたシュラウド2と、このシュラウド2内部に格納された炉心3と、シュラウド2の上部に配設された気水分離器4と、この気水分離器4のさらに上部に配設された蒸気乾燥器5とを備えている。
【0026】
圧力容器1内の冷却水は、圧力容器1とシュラウド2との間に配設された再循環ポンプ6によって炉心3下部の下部プレナム7に流入し、上昇して炉心3内に流入するようになっている。炉心3内には多数の燃料集合体8(図2中では、便宜的に4体のみ図示)が格子状に所定間隔で配置されており、この燃料集合体8に備えられた燃料棒9(後述の図3参照)の核分裂性物質の核分裂反応により冷却水が加熱されて沸騰し、水と蒸気の二相混合流となってシュラウドヘッド10に流入する。その後、気水分離器4によって水と分離された蒸気は蒸気乾燥器5で乾燥され、圧力容器1の主蒸気ノズル(図示せず)から流出してタービン(図示せず)に供給されるようになっている。
【0027】
図3は、上記燃料集合体8の詳細構造を表す垂直縦断面図である。
【0028】
この図3において、燃料集合体8は、例えば10×10の正方格子状に配列された92本の上記燃料棒9と、中性子減速棒である2本の水ロッド11と、これら燃料棒9及び水ロッド11の軸方向複数箇所を束ねて燃料バンドルとする複数のスペーサ12と、燃料バンドルの上部及び下部をそれぞれ支持する上部タイプレート13及び下部タイプレート14と、燃料バンドルの周囲を取り囲み燃料集合体8の外壁を形成する略四角筒形状のチャンネルボックス15とを備えている。
【0029】
燃料棒9は、詳細は図示しないが、例えばジルコニウム製の被覆管に核分裂性物質(U−235やU−238等を含むウラン燃料ペレット等)が充填されており、燃料棒有効長(燃料ペレットが存在する部分)が通常の長さである78本の燃料棒9Aと燃料棒有効長が燃料棒9Aよりも短い14本の短尺燃料棒(部分長燃料棒)9Bとで構成されている。
【0030】
このような燃料集合体8は、4体を1組として後述する燃料支持金具16(図5参照)に載置されている。図4は、隣接する4つの燃料集合体8の詳細構造を表す水平横断面図であり、図5は、上記燃料支持金具16の全体構造を表す斜視図である。
【0031】
これら図4及び図5において、隣接する燃料集合体8の間(隣接するチャンネルボックス15の外幅Wの間のギャップ幅D)には飽和水であるギャップ水17が満たされ、このギャップ水17領域には圧力容器1下部の制御棒駆動機構18(前述の図2参照)で駆動される横断面十字形の制御棒19が制御棒案内管20(前述の図2参照)をガイドにして上下方向(図4中紙面に向かって手前・奥方向)に挿抜可能に配置されており、これにより炉心3の出力が制御されるようになっている。また、図示しないが、炉心出力を測定する炉内計装系が別途設けられている。
【0032】
燃料支持金具16は、上記制御棒19挿通用の略十字形の貫通孔21と、上記燃料集合体8の下部タイプレート14を挿入して支持するための4つの支持孔22と、この支持孔22に対応して側面下部に設けた4つの冷却材流入口23と、これら支持孔22及び冷却材流入口23の間にそれぞれ形成される4つの冷却材流路(図示せず)と、冷却材流入口23にそれぞれ設けられ冷却水流量を調節するための4つのオリフィス(図示せず)とを備えている。
【0033】
ここで、本実施形態の大きな特徴としては、沸騰水型原子炉の単位発電量あたりのコストを低減するために、所定容積の上記圧力容器1に対し炉心出力が増大するようになっている。一般に所定容積の圧力容器1に対し増出力する方法の1つとして例えば炉心の出力密度を増大する方法があるが、300体以上500体以下の燃料集合体8を備えた中型炉の場合、炉停止余裕の観点からその出力増加幅は比較的少ない。そこで、本実施形態では、炉心流量が一定でも燃料集合体8の数が増加することで炉心出力が増大する(なお、このとき燃料集合体8の増加により燃料集合体8一体あたりの流量が減少して最小限界出力比は減少するが、例えば出力密度を燃料集合体8の数の平方根に反比例するように減少させる等をすれば、結果として最小限界出力比を一定としたまま炉心出力が増大する)ことに着目し、上記炉心3は、所定容積の圧力容器1内に略円形状に配置した従来炉心よりも、圧力容器1内の再循環ポンプ6を避けるように外周側凹凸状に燃料集合体8を増加配置している。その詳細を以下に説明する。
【0034】
図1は、本実施形態による炉心3の燃料集合体8配置を表す水平横断面図であり、図6は、本実施形態による炉心3の燃料集合体8配置を表す1/4炉心配置図である。
【0035】
これら図1及び図6において、炉心3には496体(図6中124体を図示)の上記燃料集合体8が配置され、最外層(外周側)に配置される燃料集合体(言い換えれば、炉心3外部の反射体水領域24に少なくとも1つのチャンネルボックス15側面を接する燃料集合体)8Aを76体(図6中19体を太枠部で図示)とし、これら最外層燃料集合体8Aの炉心中心からの距離(詳細には、炉心中心点からチャンネルボックス15中心までの水平距離)Lのうちの最短距離Lminを約10.6(D+W)としている。
【0036】
また、炉心3は、炉心中心から最短距離Lminにある燃料集合体8Aと同円周上及び外周側に配置される(言い換えれば、L≧Lmin)外層部燃料集合体(最外層燃料集合体8Aを含む)8Bが148体(図6中37体を図示)と、炉心中心から最短距離Lminにある最外層燃料集合体8Aより内周側に配置される(言い換えれば、L<Lmin)内周部燃料集合体8Cが348体(図6中87体を図示)とで構成されている。
【0037】
このように構成された炉心3は、外層部燃料集合体8Bの数が全燃料集合体数に占める割合は30%程度(=148体/496体)となり、最外層燃料集合体8Aの数が全燃料集合体数に占める割合は15%程度(=76体/496体)となる。また、最外層燃料集合体8Aの炉心中心からの距離Lのうちの最長距離Lmaxは約12.7(D+W)であり、最短距離Lminと最長距離Lmaxとの比Lmin/Lmaxは約0.83(=10.6/12.7)となる。
【0038】
次に、本実施形態の動作を説明する。
再循環ポンプ6の駆動により下部プレナム7内に流入した冷却水は、上昇して燃料支持金具16の冷却材流入口23に流入する。冷却水は燃料支持金具16内でオリフィスを介し冷却材流路を上方に流れ、下部タイプレート14から燃料集合体8のチャンネルボックス15内に流入し、燃料棒9の核分裂性物質の核分裂反応により加熱されて沸騰しながら燃料棒9の間を上方に流れ、水と蒸気の二相混合流となってシュラウドヘッド10に流入する。その後、気水分離器4によって水と分離された蒸気が蒸気乾燥器5を介しタービンに送られ発電を行う。
【0039】
次に、本実施形態による上記炉心3の作用効果を、所定容積の圧力容器1内に略円形状に配置した従来炉心と比較しながら以下に詳細に説明する。
【0040】
図7は、従来炉心の燃料集合体8配置を表す水平横断面図であり、図8は、従来炉心の燃料集合体8配置を表す1/4炉心配置図である。これら図7及び図8において、上記炉心3と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0041】
図7及び図8において、従来炉心25は、圧力容器1内の再循環ポンプ6を避けるように(上記炉心3の最外層燃料集合体8Aの一部をそのまま最外層燃料集合体8Aとしながら)略円形状に376体(図8中94体を図示)の燃料集合体8が配置されており、最外層燃料集合体8Aを60体(図8中15体を太枠部で図示)としている。また、従来炉心25は、外層部燃料集合体8Bが60体(図8中15体を図示、最外層燃料集合体8Aと同数)と、内周部燃料集合体8Cが316体(図8中79体を図示)とで構成されている。
【0042】
このように構成された従来炉心25は、外層部燃料集合体8Bの数が全燃料集合体数に占める割合は16%程度(=60体/376体)となり、最外層燃料集合体8Aの数が全燃料集合体数に占める割合も16%程度(=60体/376体)となる。また、最外層燃料集合体8Aの炉心中心からの最短距離Lminは約10.1(D+W)、最長距離Lmaxは約10.8(D+W)であり、Lmin/Lmaxは約0.94(=10.1/10.8)となる。
【0043】
図9は、略円形状に配置された従来炉心において外層部燃料集合体8Bが占める割合を表す特性図である。この図9において、横軸は燃料集合体8の装荷数をとって表しており、縦軸は外層部燃料集合体8Bの数が全燃料集合体数に占める割合をとって表している。
【0044】
図9において、例えば368体の燃料体集合体8が略円形状に配置された従来炉心では外層部燃料集合体8Bの占める割合が23%と比較的高くなり、燃料集合体8の装荷数が増加するに従って外層部燃料集合体8Bの占める割合が減少している。また、円面積と円周との関係からも明らかなように、燃料集合体8の装荷数が増加するに従って最外層燃料集合体8Aの占める割合も同様に減少する。
【0045】
図10は、本実施形態による上記炉心3の径方向出力ピーキングを上記従来炉心25とともに表す特性図である。この図10において、横軸は最短距離Lminと最長距離Lmaxとの比Lmin/Lmaxをとって表しており、縦軸は径方向出力ピーキングをとって表している。
【0046】
径方向出力ピーキングは、この種のものとして公知の方法により算出され(ただし、最外層燃料集合体8Aの燃焼度及び冷却水配分等の条件によって各燃料集合体8の相対出力が変化し、径方向出力ピーキングの算出値は若干変化する)、炉心3(Lmin/Lmax=0.83)では約1.583となり、従来炉心25(Lmin/Lmax=0.95)では約1.578となる。
【0047】
以上のように、本実施形態の炉心3は、相対的に低出力の外層部燃料集合体8Bの割合が従来炉心25の16%から30%まで増加し径方向出力ピーキングが増大する傾向となるものの、中性子漏れが大きい(また一般に燃焼の進んだ)最外層部燃料集合体8Aの割合が従来炉心25の16%から15%まで減少し径方向出力ピーキングを低減する作用がこれを相殺する結果、その径方向出力ピーキングを従来炉心25程度に抑えることができる。
【0048】
次に、上記炉心3と同様の燃料集合体8の装荷数としながら、燃料集合体8配置形状が異なる比較例について説明する。
【0049】
図11は、第1の比較例による炉心の燃料集合体8配置を表す水平横断面図であり、図12は、第1の比較例による炉心の燃料集合体8配置を表す1/4炉心配置図であり、図13は、第2の比較例による炉心の燃料集合体8配置を表す水平横断面図であり、図14は、第2の比較例による炉心の燃料集合体8配置を表す1/4炉心配置図であり、図15は、第3の比較例による炉心の燃料集合体8配置を表す水平横断面図であり、図16は、第3の比較例による炉心の燃料集合体8配置を表す1/4炉心配置図である。これら図11、図12、図13、図14、図15、及び図16において、上記炉心3と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0050】
図11、図12、図13、図14、図15、及び図16において、第1の比較例による炉心26は、上記炉心3同様、496体(図12中124体を図示)の燃料集合体8が配置され、最外層燃料集合体8Aを76体(図12中19体を太枠部で図示)としている。また、炉心26は、上記炉心3同様、外層部燃料集合体8Bが148体(図12中37体を図示)と、内周部燃料集合体8Cが348体(図12中87体を図示)とで構成されている。これにより、上記炉心3同様、外層部燃料集合体8Bの数が全装荷体数に占める割合は30%程度(=148体/496体)となり、最外層燃料集合体8Aの数が全装荷体数に占める割合は15%程度(=76体/496体)となる。また、最外層燃料集合体8Aの炉心中心からの最短距離Lminは約10.6(D+W)、最長距離Lmaxは約13.0(D+W)であり、Lmin/Lmaxは約0.82(=10.6/13.0)となる。
【0051】
第2の比較例による炉心27は、上記炉心3,26同様、496体(図14中124体を図示)の燃料集合体8が配置され、最外層燃料集合体8Aを76体(図14中19体を太枠部で図示)としている。また、炉心27は、上記炉心3,26同様、外層部燃料集合体8Bが148体(図14中37体を図示)と、内周部燃料集合体8Cが348体(図14中87体を図示)とで構成されている。これにより、上記炉心3,26同様、外層部燃料集合体8Bの数が全装荷体数に占める割合は30%程度(=148体/496体)となり、最外層燃料集合体8Aの数が全装荷体数に占める割合は15%程度(=76体/496体)となる。また、最外層燃料集合体8Aの炉心中心からの最短距離Lminは約10.6(D+W)、最長距離Lmaxは約13.3(D+W)であり、Lmin/Lmaxは約0.80(=10.6/13.3)となる。
【0052】
第3の比較例による炉心28は、496体(図16中124体を図示)の燃料集合体8が配置され、最外層燃料集合体8Aを92体(図16中23体を太枠部で図示)としている。また、炉心28は、外層部燃料集合体8Bが140体(図16中35体を図示)と、内周部燃料集合体8Cが356体(図16中89体を図示)とで構成されている。これにより、外層部燃料集合体8Bの数が全装荷体数に占める割合は28%程度(=140体/496体)となり、最外層燃料集合体8Aの数が全装荷体数に占める割合は19%程度(=92体/496体)となる。また、最外層燃料集合体8Aの炉心中心からの最短距離Lminは約9.92(D+W)、最長距離Lmaxは約13.7(D+W)であり、Lmin/Lmaxは約0.72(=9.92/13.7)となる。
【0053】
前述の図10に示すように、算出した上記第1の比較例による炉心26(Lmin/Lmax=0.82)の径方向出力ピーキングは1.587となり、算出した上記第2の比較例による炉心27(Lmin/Lmax=0.80)の径方向出力ピーキングは1.594となり、算出した上記第3の比較例による炉心28(Lmin/Lmax=0.72)の径方向出力ピーキングは1.660となる。
【0054】
以上のことから、本実施形態においては、単位発電量あたりのコストを低減するために、例えば所定容積の圧力容器1内に略円形状に配置した従来炉心25よりも燃料集合体8を増加し出力を増大することを目的として、圧力容器1内の再循環ポンプ6を避けるように外周側凹凸状に燃料集合体8を増加配置し、全燃料集合体数に占める外層部燃料集合体数8Bの割合を増加させていく(言い換えれば、燃料集合体8の配置形状の指標となるLmin/Lmaxを減少させていく)場合、基本的には相対的に低出力の外層部燃料集合体8Bが増加することで炉心の径方向出力ピーキングは増大していく傾向となる。
【0055】
しかしながら、Lmin/Lmax≧0.8の範囲の上記炉心3,26,27では、全燃料集合体数に占める最外層燃料集合体8Aの割合が小さくなることで炉心の径方向出力ピーキングを低減する作用がこれを相殺する結果、炉心の径方向出力ピーキングを従来炉心25程度に抑えることができる。このとき、外層部燃料集合体8Bの占める割合が40%以上となるとLmin/Lmax<0.8となるため、外層部燃料集合体8Bの占める割合が40%以下であることも必要である。
【0056】
一方、発電コスト低減を図る場合に、通常、300体以上500体以下の燃料集合体を備えた中型炉においては、いわゆるスケール効果(例えば0.7乗則)により発電量を小さくしても発電単価は大型炉と比較すると割高になる傾向がある(例えば376体炉心の場合、現行ABWRよりも発電単価が29%高くなる)。これを補って大型炉心と同程度の発電単価とするためには、少なくとも外層部燃料集合体8Bの割合を25%程度まで炉心形状を凹凸にして燃料集合体8を詰める必要がある。
【0057】
図17は、外層部燃料集合体8Bの占める割合を25%程度とする第4の比較例による炉心の燃料集合体8配置を表す水平横断面図であり、図18は第4の比較例による炉心の燃料集合体8配置を表す1/4炉心配置図である。この図17及び図18において、上記炉心3と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0058】
図17及び図18において、炉心29は、444体(図18中111体を図示)の燃料集合体8が配置され、最外層燃料集合体8Aを68体(図18中17体を太枠部で図示)としている。また、炉心34は、外層部燃料集合体8Bが112体(図18中28体を図示)と、内周部燃料集合体8Cが332体(図18中83体を図示)とで構成されている。これにより、外層部燃料集合体8Bの数が全装荷体数に占める割合は25%程度(=112体/444体)となり、最外層燃料集合体8Aの数が全装荷体数に占める割合は15%程度(=68体/444体)となる。また、最外層燃料集合体8Aの炉心中心からの最短距離Lminは約10.5(D+W)、最長距離Lmaxは約12.3(D+W)であり、Lmin/Lmaxは約0.85(=10.5/12.3)となる。
【0059】
前述の図10に示すように、算出した上記炉心29(Lmin/Lmax=0.85)の径方向出力ピーキングは1.574であり、従来炉心25程度に抑えることができる。また、炉心29のように外層部燃料集合体8Bの占める割合を25%以上とする場合、Lmin/Lmax>0.85となるように燃料集合体8を配置するのは困難であるからLmin/Lmax≦0.85となる。
【0060】
本実施形態においては、以上に基づき、0.8≦Lmin/Lmax≦0.85、かつ25%≦外層部燃料集合体の占める割合≦40%とする。これにより、所定容積の圧力容器1内に熱的余裕を確保しつつ燃料集合体を増加し出力を増大することができ、発電コストを抑えることができるので、大型炉と同等の経済性を実現することができる。また、炉心の燃料集合体8配置を凹凸形状とすることにより、所定容積の圧力容器1内に再循環ポンプ6等の設置スペースを確保しながら燃料集合体8を増加して出力を増大することができる。
【0061】
なお、上記実施形態では、300体以上500体以下の燃料集合体8を備えた中型炉の場合について説明してきたが、これに限らない。すなわち、例えば500体以上の燃料集合体8を備えた大型炉においても、例えば略円形状に燃料集合体8が配置された従来炉心に対し外層部燃料集合体8Bを増加させていくときに、0.8≦Lmin/Lmax≦0.85、かつ25%≦外層部燃料集合体の占める割合≦40%とする。このような場合にも、上記実施形態同様の効果を得ることができる。また、300体以下の小型炉においては、外層部燃料集合体の増大に伴って出力ピーキングの絶対値が大きくなり、熱的余裕を設計基準に従って確保することは困難となるため、上記実施形態の適用対象にはならない。
【0062】
本発明の第2実施形態を図19により説明する。
本実施形態は、隣接する燃料集合体8におけるチャンネルボックス15どうしのギャップ幅Dを拡大した実施形態である。
【0063】
図19は、本実施形態による炉停止余裕の変化率を表す特性図である。横軸は上記チャンネルボックス15のギャップ幅Dと外幅Wとの比D/Wをとって表しており、縦軸は炉停止余裕の従来からの変化率をとって表している。
【0064】
本実施形態においては、少なくとも一対の燃料集合体8において、上記チャンネルボックス15の外幅W(前述の図4参照)を例えば139mmとし、チャンネルボックス15どうしのギャップ幅D(前述の図4参照)を従来の15.8mmから例えば18.3mmに拡大することで、ギャップ幅Dと外幅Wとの比D/Wを従来の約0.114から約0.132まで増加する。これにより、燃料集合体8の相互間のギャップ水17領域が拡大し、冷却水のボイド率が小さくなり運転時の中性子減速効果を増大するので、冷温時との反応度差(ホット・コールドスイング)が小さくなり、従来のギャップ幅Dと外幅Wとの比D/Wを0.114とする場合よりも、炉停止余裕を1.5%程度増大させることができる。また、図示のように、炉停止余裕を1.3%程度増大させるには、ギャップ幅Dと外幅Wとの比D/Wを≧0.13とすればよいことがわかった。
【0065】
この結果より、例えば出力密度を20%程度増大した場合でも、ギャップ幅Dと外幅Wとの比をD/W≧0.13とすることで炉停止余裕を確保できる(言い換えれば、出力密度20%増大による炉停止余裕の減少分1.3%を補うことができる)。すなわち、所定容積の圧力容器1内に炉停止余裕を確保しつつ燃料集合体8を増加し出力を増大することができる。
【0066】
本発明の第3実施形態を図20及び図21により説明する。
本実施形態は、各燃料集合体8の冷却水配分を適正化した実施形態である。
【0067】
一般に、上記炉心3内各領域に配置された燃料集合体8の冷却水配分を考えるとき、冷却水流量が相対的に大きいほど中性子減速効果が増大して出力が増大する作用(熱的余裕が小さくなる作用)と、冷却水流量が増えることで冷却効果が向上する作用(熱的余裕が大きくなる作用)とのバランスに基づき冷却水の流量配分が適正かどうかが決められる。ここで、上記第2実施形態で説明したように、燃料集合体8の相互間のギャップ水17領域が拡大した場合、中性子の減速は主としてその広いギャップ水17領域で行われるようになるため、上記した中性子減速効果が増大して出力が増大する作用が上記冷却効果に比べて相対的に小さくなり、冷却効果が向上する作用が大きくなる。
【0068】
図20は、上記炉心3の各燃料集合体8の出力分布を表す1/4炉心配置図であり、図21は、上記炉心3の燃料集合体8を載置する燃料支持金具16における各オリフィスの圧力損失の平均値分布を表す1/4炉心配置図である。
【0069】
本実施形態においては、比較的低出力(図示のように出力範囲0.19〜0.45、出力平均値0.29)の最外層燃料集合体8Aを載置する全ての第1燃料支持金具16におけるオリフィスの圧力損失の平均値をPloss1とし、最外層燃料集合体8Aより若干出力の高い(図示のように出力範囲0.44〜0.84、出力平均値0.64)外層部燃料集合体8B(ただし、最外層燃料集合体8Aを除く)を載置する全ての第2燃料支持金具16におけるオリフィスの圧力損失の平均値をPloss2とし、比較的高出力(図示のように出力範囲0.74〜1.58、出力平均値1.23)の内周部燃料集合体8Cを載置する全ての第3燃料支持金具16におけるオリフィスの圧力損失の平均値をPloss3とする場合、Ploss1≧Ploss2>Ploss3の関係となるようにそれぞれ設定する。
【0070】
これにより、最外層燃料集合体8Aと、この最外層燃料集合体8Aを除いた外層部燃料集合体8Bと、内周部燃料集合体8Cとについて、出力が大きいものほど(最外層燃料集合体8Aの平均出力>最外層燃料集合体8Aを除いた外層部燃料集合体8Bの平均出力>内周部燃料集合体8Cの平均出力)大きな冷却水流量が流れるようにして炉心3全体の冷却効果を向上させることができる。この結果、上記燃料棒9の限界出力を大きくすることができるので、全体として炉心3出力の増大を図ることができる。
【0071】
なお、上記第3実施形態においては、上記第1実施形態で説明した炉心3を例に取り説明したが、これに限らない。すなわち、例えば上記第1実施形態で説明した炉心26,27,29等に適用してもよい。この場合も上記同様の効果を得ることができる。
【0072】
【発明の効果】
請求項1記載の本発明によれば、装荷燃料集合体数500体以下の中型の沸騰水型原子炉の炉心において、熱的余裕を確保しつつ出力を増大し、大型炉と同等の経済性を実現できる。
【0073】
請求項2記載の本発明によれば、装荷燃料集合体数500体以下の中型の沸騰水型原子炉の炉心において、炉停止余裕を確保しつつ出力を増大し、大型炉と同等の経済性を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の沸騰水型原子炉の炉心の第1実施形態の燃料集合体配置を表す水平横断面図である。
【図2】本発明の沸騰水型原子炉の炉心の適用対象となる沸騰水型原子炉の全体構造を表す垂直縦断面図である。
【図3】本発明の沸騰水型原子炉の炉心の第1実施形態を構成する燃料集合体の詳細構造を表す垂直縦断面図である。
【図4】本発明の沸騰水型原子炉の炉心の第1実施形態を構成する燃料集合体8の詳細構造を表す水平横断面図である。
【図5】本発明の沸騰水型原子炉の炉心の第1実施形態を構成する燃料支持金具の全体構造を表す斜視図である。
【図6】本発明の沸騰水型原子炉の炉心の第1実施形態の燃料集合体配置を表す1/4炉心配置図である。
【図7】本発明の沸騰水型原子炉の炉心の従来例の燃料集合体配置を表す水平横断面図である。
【図8】本発明の沸騰水型原子炉の炉心の従来例の燃料集合体配置を表す1/4炉心配置図である。
【図9】本発明の沸騰水型原子炉の炉心の従来例における外層部燃料集合体の占める割合を表す特性図である。
【図10】本発明の沸騰水型原子炉の炉心の第1実施形態の径方向出力ピーキングを従来例及び比較例とともに表す特性図である。
【図11】本発明の沸騰水型原子炉の炉心の第1の比較例の燃料集合体配置を表す水平横断面図である。
【図12】本発明の沸騰水型原子炉の炉心の第1の比較例の燃料集合体配置を表す1/4炉心配置図である。
【図13】本発明の沸騰水型原子炉の炉心の第2の比較例の燃料集合体配置を表す水平横断面図である。
【図14】本発明の沸騰水型原子炉の炉心の第2の比較例の燃料集合体配置を表す1/4炉心配置図である。
【図15】本発明の沸騰水型原子炉の炉心の第3の比較例の燃料集合体配置を表す水平横断面図である。
【図16】本発明の沸騰水型原子炉の炉心の第3の比較例の燃料集合体配置を表す1/4炉心配置図である。
【図17】本発明の沸騰水型原子炉の炉心の第4の比較例の燃料集合体配置を表す水平横断面図である。
【図18】本発明の沸騰水型原子炉の炉心の第4の比較例の燃料集合体配置を表す1/4炉心配置図である。
【図19】本発明の沸騰水型原子炉の炉心の第2実施形態の炉停止余裕の変化率を表す特性図である。
【図20】本発明の沸騰水型原子炉の炉心の第3実施形態の各燃料集合体の出力分布を表す1/4炉心配置図である。
【図21】本発明の沸騰水型原子炉の炉心の第3実施形態を構成する燃料支持金具の各オリフィスの圧力損失の平均値分布を表す1/4炉心配置図である。
【符号の説明】
3 炉心
8 燃料集合体
8A 最外層燃料集合体
8B 外層部燃料集合体
8C 内周部燃料集合体
9 燃料棒
15 チャンネルボックス
16 燃料支持金具
23 冷却材流入口
D チャンネルボックスどうしのギャップ幅
L 燃料集合体の炉心中心からの距離
Lmin 最外層燃料集合体の炉心中心からの最短距離
Lmax 最外層燃料集合体の炉心中心からの最長距離
Ploss1 第1燃料支持金具におけるオリフィスの圧力損失の平均値
Ploss2 第2燃料支持金具におけるオリフィスの圧力損失の平均値
Ploss3 第3燃料支持金具におけるオリフィスの圧力損失の平均値
W チャンネルボックス外幅
Claims (3)
- 複数の燃料棒とこれらを取り囲むチャンネルボックスとを備えた燃料集合体を300体以上500体以下備えた沸騰水型原子炉の炉心であって、
各燃料集合体について、炉心水平横断面におけるチャンネルボックス中心から炉心中心点までの距離をLとし、炉心最外層に配置される最外層燃料集合体それぞれの上記Lのうち最短のものをLmin、最長のものをLmaxとしたとき、
0.8≦Lmin/Lmax≦0.85とし、かつ
L≧Lminとなる外層部燃料集合体の数が全燃料集合体数に占める割合を25%以上40%以下としたことを特徴とする沸騰水型原子炉の炉心。 - 請求項1記載の沸騰水型原子炉の炉心において、各燃料集合体の前記チャンネルボックス外幅をW、隣接する燃料集合体のチャンネルボックスどうしのギャップ幅をDとしたとき、
少なくとも一部の燃料集合体について、D/W≧0.13としたことを特徴とする沸騰水型原子炉の炉心。 - 請求項2記載の沸騰水型原子炉の炉心において、冷却材流入口にオリフィスを備え前記燃料集合体を載置する複数の燃料支持金具をさらに有し、
これら複数の燃料支持金具は、前記最外層燃料集合体を載置する第1燃料支持金具、前記外層部燃料集合体のうち前記最外層燃料集合体を除く燃料集合体を載置する第2燃料支持金具、前記外層部燃料集合体よりも炉心中心側に位置する内周部燃料集合体を載置する第3燃料支持金具を含んでおり、
全ての前記第1燃料支持金具におけるオリフィスの圧力損失の平均値をPloss1、全ての前記第2燃料支持金具におけるオリフィスの圧力損失の平均値をPloss2、全ての前記第3燃料支持金具におけるオリフィスの圧力損失の平均値をPloss3としたとき、
Ploss1≧Ploss2>Ploss3
であることを特徴とする沸騰水型原子炉の炉心。
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---|---|---|---|
JP2003004051A JP2004219133A (ja) | 2003-01-10 | 2003-01-10 | 沸騰水型原子炉の炉心 |
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JP2013050401A (ja) * | 2011-08-31 | 2013-03-14 | Hitachi-Ge Nuclear Energy Ltd | 原子炉の初装荷炉心 |
-
2003
- 2003-01-10 JP JP2003004051A patent/JP2004219133A/ja active Pending
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