JP2004218967A - 不定形耐火物のマイクロ波乾燥装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】マイクロ波の放出口31を天井部17又は側壁部18、19に備えた地上型の乾燥炉本体15の側部に開放部14を形成し、開放部14を開閉可能な扉16と、扉16を乾燥炉本体15に押付け可能な押付け手段32、33とを有し、使用にあっては乾燥炉本体15内に乾燥対象物11を装入した後、開放部14に扉16を配置し、押付け手段32、33により扉16を乾燥炉本体15の開放部14の周縁46に押付け乾燥炉本体15を密閉する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、所定形状の型枠に流し込んで成形し、プレキャストブロック化した不定形耐火物のマイクロ波乾燥装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば製鉄工場で使用する耐火物として、施工が容易で、かつ安価な不定形耐火物が積極的に使用されており、この不定形耐火物においても、予め混練した不定形耐火物を型枠に流し込んで成型したプレキャストブロックの使用が推進され、しかもこのプレキャストブロックの大型化が図られている。
このプレキャストブロックの乾燥方法としては、例えばガスバーナー加熱や電気炉加熱等の電導加熱が挙げられるが、この乾燥方法では、表面からの熱伝導によって内部が加熱されるため、乾燥対象物であるプレキャストブロックに必然的に温度勾配が発生する。このように温度勾配が生じると、背面側ほど発生蒸気圧が大きくなり、それによって組織が粗くなり、従来品に対して品質を向上させることができない。特に、大型、厚肉のプレキャストブロックの場合、割れや水蒸気爆裂が発生する恐れがあり、品質のバラツキが発生する問題がある。
【0003】
そこで、マイクロ波を用いた乾燥装置を使用し、プレキャストブロック内の水や耐火性骨材、耐火性微粉といった誘電体を直接誘電加熱する乾燥方法が提案されていた。
このマイクロ波乾燥装置に使用するマイクロ波は、例えば人体に悪影響を及ぼし、作業環境を悪くして、安全上問題となるため、図5に示すように、地面80に穴を掘り、この穴の内部に上方に開放部81を備えた乾燥炉本体82を配置したピット型のマイクロ波乾燥装置83が提案されていた。この乾燥炉本体82の上端部には、地面に沿って横移動可能な蓋84がシール部85を介して配置され、乾燥炉本体82の密閉状態が維持される。なお、乾燥炉本体82内へのプレキャストブロック86の搬入、及び乾燥炉本体82内からのプレキャストブロック86の搬出は、プレキャストブロック86を載置する台車87を、乾燥炉本体82の上方に配置されたレール88に沿って移動可能なフック89によって行われる。これにより、使用にあっては乾燥炉本体82内からマイクロ波が漏洩することを防止でき、人体に及ぼす悪影響を抑制、更には防止でき、作業環境の改善を図ることができる。
しかし、ピット型のマイクロ波乾燥装置83は、地上型のマイクロ波乾燥装置と比較してその建設コストが高いため経済的でなく、しかも乾燥炉本体82に対するプレキャストブロック86の搬入搬出作業が難しいため作業性が良好でなかった。
【0004】
このため、ピット型のマイクロ波乾燥装置よりも建設コストを低減できる地上型のマイクロ波乾燥装置や、地上で乾燥を行う乾燥方法が種々提案されてきた。
例えば、特許文献1には、内部にマイクロ波を導入するための導波管と、内部を減圧状態にするための排気管とを備えた乾燥炉本体の開放部に、乾燥炉本体内の気密状態を維持するシール構造を有する蓋を配置したマイクロ波乾燥装置が記載されている。なお、マイクロ波乾燥装置を構成する材料として、マイクロ波を透過しにくい金属材料を使用し、また乾燥炉本体と蓋との間には、Oリング及びOリングの焼付け防止のための金網を配置して、乾燥炉本体内からのマイクロ波の漏洩を防止している。
また、特許文献2には、トピードカーの受銑口からマイクロ波の導波管を装入し、この受銑口に金属製の蓋を配置し、更に蓋の周囲に金網を配置して、トピードカー内に照射されたマイクロ波の漏洩を防止すると共に、トピードカーに内張りした不定形耐火物の乾燥を行う方法が記載されている。
【0005】
そして、特許文献3及び特許文献4には、乾燥炉本体の側部に、乾燥炉本体内へのプレキャストブロックの搬入、及び乾燥炉本体内からのプレキャストブロックの搬出を行うための開放部が設けられ、この開放部に開閉扉を配置し、乾燥炉本体の内部に設けられた導波管からマイクロ波を照射してプレキャストブロックを乾燥する方法が記載されている。
更に、特許文献5には、マイクロ波を照射して加熱する不定形耐火物の乾燥室を一列方向に複数室設け、この複数の乾燥室(加熱室)を順次通過させることにより、不定形耐火物を均一に乾燥する方法が記載されている。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−167567号公報
【特許文献2】
特開2001−115206号公報
【特許文献3】
特開2002−22364号公報
【特許文献4】
特開2002−39690号公報
【特許文献5】
特開平3−75485号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記したマイクロ波乾燥装置及び乾燥方法には、以下の問題がある。
特許文献1に記載された乾燥装置は、乾燥炉本体の開放部に対して、金網を介して蓋が取付けられ、実質的に開放部を蓋のみでシールしたメタルタッチ構造が採用されているため、乾燥炉本体と蓋との間に僅かな隙間が形成され、この隙間からマイクロ波が漏洩する恐れがある。
また、特許文献2に記載された乾燥方法も、トピードカーの受銑口に蓋を配置してシールしたメタルタッチ構造が採用され、更に受銑口の周囲に金網が配置されているため、やはり僅かな隙間が形成され、この隙間からマイクロ波が漏洩する恐れがある。
そして、特許文献3及び特許文献4に記載された乾燥方法では、乾燥炉本体の側部に設けられた開放部が、プレキャストブロックの搬入搬出を行うためのものであるため、開放部の開口部分が大きくなり、例え扉と開放部の隙間が極小になるように設計及び製作しても、使用にあっては乾燥炉本体及び開閉扉の熱変形などにより隙間が大きくなり、乾燥炉本体の内部で発生し乱反射した方向性が様々なマイクロ波の漏洩を防止することが困難である。
更に、特許文献5に記載された方法では、複数の乾燥室を一列に配置し、この乾燥室にマイクロ波を照射した状態で、順次不定形耐火物を通過させて乾燥するため、不定形耐火物や乾燥室に照射して反射したマイクロ波が開口部から外部に漏洩する。
【0008】
即ち、大きな開放部に蓋や扉を配置する場合は勿論、トピードカー等のように小さい受銑口に蓋を配置した場合でも隙間が生じる。そこで、この隙間からのマイクロ波の漏洩を防止するため、隙間が無くなるように開放部及び扉の設計及び製作を厳密に行っても、構造上隙間を小さくすること自体限界がある。また、受銑口に蓋を配置し、その周囲に金網を配置したシール構造を使用しているが、やはり隙間からマイクロ波が漏洩する恐れがある。
このように、隙間からマイクロ波が漏洩することで、このマイクロ波が人体や周辺の作業環境を悪化させ、安全性が十分に確保できないなどの問題が発生する。本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、地上型の乾燥炉本体を用いた場合でもマイクロ波の漏洩を抑制、更には防止し、人体に及ぼす悪影響を抑制でき、作業環境の改善を図り、しかも安全性を十分に確保できる不定形耐火物のマイクロ波乾燥装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記目的に沿う本発明に係る不定形耐火物のマイクロ波乾燥装置は、マイクロ波の放出口を天井部又は側壁部に備えた地上型の乾燥炉本体の側部に開放部を形成し、開放部を開閉可能な扉と、扉を乾燥炉本体に押付け可能な押付け手段とを有し、使用にあっては乾燥炉本体内に乾燥対象物を装入した後、開放部に扉を配置し、押付け手段により扉を乾燥炉本体の開放部の周縁に押付け乾燥炉本体を密閉する。これにより、乾燥炉本体と扉との間に生じる隙間、例えば、機械工作上の寸法誤差により発生する隙間や、乾燥時における熱などによる歪みにより生じる隙間を最小限にできるので、マイクロ波乾燥装置の使用時に、隙間から漏洩するマイクロ波を抑制できる。また、乾燥炉本体を地上型とすることで、従来のピット型のマイクロ波乾燥装置のように、地面に穴を掘ることなくマイクロ波乾燥装置を製造でき、しかも乾燥炉本体内への乾燥対象物の搬入や、乾燥炉本体内からの乾燥対象物の搬出も容易に行うことができる。
ここで、本発明に係る不定形耐火物のマイクロ波乾燥装置において、乾燥炉本体の開放部の周縁をラビリンス構造にすることが好ましい。これにより、乾燥炉本体の内部に照射されたマイクロ波の乱反射をラビリンス構造により減衰できるので、乾燥炉本体と扉との間に生じる隙間からのマイクロ波の漏洩を抑制、更には防止できる。
【0010】
本発明に係る不定形耐火物のマイクロ波乾燥装置において、乾燥炉本体の開放部の周縁には、拡縮自在な中空のチューブが配置されていることが好ましい。これにより、乾燥炉本体内に乾燥対象物を装入した後、乾燥炉本体に中空のチューブを介して扉を配置し、例えば、押付け手段によって扉を乾燥炉本体に押付け、その後チューブ内に気体を供給してチューブを拡張させることで、乾燥炉本体の対向部と扉との間に生じる隙間をチューブによって完全に閉鎖し、乾燥時に照射するマイクロ波の漏洩を確実に防止できる。
本発明に係る不定形耐火物のマイクロ波乾燥装置において、乾燥炉本体の内部に、放出口から照射されたマイクロ波を反射する反射部材を配置し、更に乾燥炉本体に、乾燥炉本体の内部に熱風を供給する熱風供給手段を設けることが好ましい。このように、乾燥炉本体の内部に反射部材を配置することで、乾燥対象物の全周から均一に加熱でき、また乾燥炉本体に熱風供給手段を設けることで、乾燥炉本体内に発生した水蒸気が乾燥対象物の外部に拡散して放出することを促進できるので、乾燥対象物の乾燥効率を向上し、水蒸気爆裂を安定して防止できる。
【0011】
本発明に係る不定形耐火物のマイクロ波乾燥装置において、乾燥炉本体は、乾燥中の乾燥対象物の重量を計測可能な秤量器と、乾燥対象物の温度を測定可能な温度計と、乾燥炉本体内部の雰囲気中の水蒸気量を測定可能なセンサーとを備えていることが好ましい。これにより、乾燥対象物の乾燥状況及び乾燥状態を把握でき、乾燥終了を確実に判定できるので、過剰加熱の防止や乾燥時間の適正化が可能になる。
【0012】
【発明の実施の形態】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここに、図1は本発明の一実施の形態に係る不定形耐火物のマイクロ波乾燥装置の説明図、図2(A)、(B)はそれぞれ同マイクロ波乾燥装置に使用する押付け手段の説明図、図3は同マイクロ波乾燥装置の乾燥炉本体の対向部の部分拡大断面図、図4(A)、(B)はそれぞれ同マイクロ波乾燥装置に使用する扉開閉手段の側面図、正面図である。
【0013】
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る不定形耐火物のマイクロ波乾燥装置(以降、単にマイクロ波乾燥装置とも言う)10は、不定形耐火物を所定形状の型枠に流し込んで成型した乾燥対象物の一例であるプレキャストブロック11を、マイクロ波を用いて乾燥する装置である。以下、詳しく説明する。
【0014】
マイクロ波乾燥装置10は、その床面12が外部の地面13と同一レベルに配置され、側部に開放部14を備える断面矩形状となった地上型の乾燥炉本体15と、開放部14を開閉可能な扉16とを有している。乾燥炉本体15の天井部17、両側壁部18、19、及び背壁部20は、外側から内側へかけて順次配置された鉄板21、耐火断熱材22、反射部材の一例であるステンレス鋼板23で構成されている。ここで、耐火断熱材22としては、マイクロ波の吸収能を小さくするため、ボード状のものとして0.1kcal/m・hr・℃以下、煉瓦状のものとして0.2kcal/m・hr・℃以下の熱伝導率を備えたものを使用することが望ましい。なお、扉16も、外部(一方側)から開放部14側(他方側)へかけて順次配置された鉄板24、耐火断熱材25(前記した耐火断熱材22と同一材質)、反射部材の一例であるステンレス鋼板26で構成されている。また、乾燥炉本体15の床部27は、耐火煉瓦で構成されているが、その表面に反射部材の一例であるステンレス鋼板を配置することも可能である。この床部27の床面12には、例えばフォークリフト(搬送手段の一例)によって搬送可能なパレット28上に載置されたプレキャストブロック11が複数個(この実施の形態では、乾燥炉本体15の開放部14側から背壁部20側へかけて4列、乾燥炉本体15の両側壁部18、19の間に5列、合計20個)配置されている。
【0015】
乾燥炉本体15の天井部17の上端には、マイクロ波を発生するマイクロ波発生部29が配置されている。このマイクロ波発生部29の仕様は、プレキャストブロック11の総重量によって大きく異なるが、マイクロ波を加熱に使用するときには、電波法でISM周波数帯として、915MHz、2450MHzを含む4種類が割り当てられている。ここで、周波数が大きいほどプレキャストブロック11内部に浸透する深さは浅くなるので、厚み方向の均一加熱性を考慮して、915MHz、2450MHzを使用することが好ましい。
従って、例えば、プレキャストブロックの総重量が10トン以下の場合、30kWもあれば出力的に十分であるため、発振管にマグネトロン管を使用した915MHz−30kW装置、2450MHz−30kW装置等で対応できる。しかしながら、マグネトロン管によるマイクロ波発生原理より、発振管内部の冷却能不足が起こり、30kW以上の出力を発生するものは製造できないことが知られている。このため、プレキャストブロックの総重量が10トン以上の場合は、周波数を2450MHzとし、最大出力を120kWにできるクライストロン管を使用することが好ましい。
【0016】
このマイクロ波発生部29には、複数本(この実施の形態では2本)に分岐した導波管30の基端部が接続され、導波管30の各先端部に設けられた放出口31が乾燥炉本体15の天井部17を貫入して設けられている。
これにより、マイクロ波発生部29により発生したマイクロ波は、導波管30を介して放出口31から乾燥炉本体15内に照射され、乾燥炉本体15の内側及び扉16の開放部14側にそれぞれ配置されたステンレス鋼板23、26によって乱反射する。
【0017】
図1、図2(A)、(B)に示すように、マイクロ波乾燥装置10には、扉16を乾燥炉本体15に押付け、乾燥炉本体15を密閉するための押付け手段32、33が設けられている。この押付け手段32は、乾燥炉本体15の両側にそれぞれ複数台(この実施の形態では2台ずつ)、また押付け手段33は、乾燥炉本体15の開放部14の下側前方に設けられた溝部34に複数台(この実施の形態では3台)、それぞれ略均等な間隔で配置されている。
図2(A)に示すように、押付け手段32は、乾燥炉本体15の両側壁部18、19にそれぞれ取付けられた固定部35と、扉16の前側両端部に設けられた穴36に嵌入可能な押圧部37と、固定部35に対して押圧部37を動作させるカム機構38と、カム機構38の操作を行う操作部39とを有している。
ここで、乾燥炉本体15へ扉16を押付ける場合は、押圧部37を穴36近傍に配置した後、操作部39を二点鎖線の位置から実線の位置まで移動させることでカム機構38を動作させる。これにより、押圧部37を所定の力で扉16に押付けることができる。また、押付け状態を解除する場合は、操作部39を実線の位置から二点鎖線の位置まで移動させることでカム機構38を動作させ、押圧部37に付与していた力を除去し、押圧部37を実線の位置から二点鎖線の位置まで移動させる。
【0018】
また、図2(B)に示すように、溝部34に設けられた押付け手段33は、油圧シリンダー40と、油圧シリンダー40のシリンダー本体41の中央部を溝部34の底部42に対して傾動自在に支持する支持台43と、油圧シリンダー40のピストンロッド44の先端部と溝部34の底部42とを連結する連結部45とを有している。この連結部45は、その一端部がピストンロッド44の先端部に回動自在に取付けられ、その他端部が溝部34の底部42に回動自在に取付けられているので、油圧シリンダー40の作動時において、ピストンロッド44の先端部が一定の軌道上を移動し、扉16の表面側の略同じ位置に当接可能となっている。
【0019】
ここで、乾燥炉本体15へ扉16を押付ける場合は、油圧シリンダー40を作動させ、ピストンロッド44をシリンダー本体41から突出させることで、シリンダー本体41を支持台43によって二点鎖線の位置から実線の位置へ移動させると共に、ピストンロッド44の先端部を連結部45によって一定の軌道上を移動させながら扉16の表面側に当接させる。これにより、ピストンロッド44の先端部を所定の力で扉16に押付けることができる。また、押付け状態を解除する場合は、油圧シリンダー40を作動させ、ピストンロッド44をシリンダー本体41内に引込むことで、シリンダー本体41を支持台43によって実線の位置から二点鎖線の位置へ移動させると共に、ピストンロッド44の先端部を連結部45によって一定の軌道上を移動させながら実線の位置から二点鎖線の位置まで移動させる。
なお、各押付け手段には、例えば空気圧を使用したシリンダー、クランプ等を使用することも勿論可能である。
【0020】
図3に示すように、乾燥炉本体15の開放部14の周縁46で、扉16の裏面と対向する対向部47をラビリンス構造48にしている。このラビリンス構造48は、扉16の周縁46に複数設けた凹凸により、扉16の裏面との間隔を変化させた狭い通路を意味し、この狭い通路によってマイクロ波の減衰が行われる。なお、対向部47に設けられた凹部の深さdは、乾燥炉本体15の長期間の使用にも耐え得るように、例えば20〜50mmにすることが好ましく、更には凸部の厚みに応じて設定することが好ましい。また、凹部の深さは、全て同じ深さとすることなく、異なる深さとすることも可能であり、また凸部の高さは、全て同じ高さとすることなく、異なる高さとすることも可能である。
【0021】
また、図1、図3に示すように、乾燥炉本体15の開放部14の周縁46で、扉16の裏面と対向する対向部47には、ラビリンス構造48を囲んだ状態の溝部49が設けられ、この溝部49に拡縮自在な中空のチューブ50が配置されている。また、乾燥炉本体15の開放部14の周縁46で、扉16の下面と対向する扉受け部51には、扉16の配置位置に対応して溝部52が設けられ、この溝部52に拡縮自在な中空のチューブ53が配置されている。この扉受け部51は、床部27の前側の下側端部に突出した状態で設けられている。なお、対向部47に設けられた溝部49は連続しているため、チューブ50は環状となった1本のチューブであり、また、扉受け部51の溝部52は直線状となっているため、チューブ53は直線状となった1本のチューブである。
このチューブ50、53は、例えば50〜100℃の温度でも使用可能な耐熱性のゴム(例えば、シリコンゴム等)で構成され、その外部に金属製の網等が巻かれた構成となっている。この各チューブ50、53は、使用にあっては、例えば空気供給手段(例えばポンプ等)を用いて、チューブ50、53の内部に空気を供給することで拡張でき、また各チューブ50、53に設けられた空気排出部(図示しない)から空気を排気することにより収縮できる。
【0022】
図1に示すように、乾燥炉本体15には、乾燥炉本体15内に気化した水分が再凝結することを防止するため、乾燥炉本体15の内部に熱風を供給する熱風供給手段54が設けられている。この熱風供給手段54は、熱風を製造する熱風製造部55と、熱風製造部55で製造された熱風を、乾燥炉本体15の背壁部20の上部側から乾燥炉本体15内に供給可能な供給管56とを有している。
また、背壁部20の下部側には、乾燥炉本体15内の蒸気を外部へ排出するための排気ダクト57の基端部が接続されている。これにより、乾燥中にプレキャストブロック11から発生する水蒸気を、排気ダクト57を介して連続的に乾燥炉本体15の外部へ排気できると共に、プレキャストブロック11表面からの抜熱も抑制できる。
【0023】
乾燥炉本体15の床部27で、乾燥炉本体15の背壁部20側の中央部には、底部27の他の部分から分断された受け部58が設けられ、この受け部58の下端に形成された空洞部59内に、乾燥中のプレキャストブロック11の重量を計測可能な秤量器60が配置されている。受け部58の上端はパレット28を載置可能な構成となっており、床部27の他の部分よりも、僅かに乾燥炉本体15内へ突出した状態で設けられ、受け部58が載置されたパレット28が、床部27の他の部分に接触することを予め防止している。
受け部58の下端に設置された秤量器60は、空気バネを使用したものであり、受け部58の上端に載置されるプレキャストブロック11の重量を電気信号により測定するものである。なお、乾燥炉本体15は密閉状態にあるため、1つのパレット28上に載置されたプレキャストブロック11の重量で、乾燥炉本体15内の他のプレキャストブロック11のそれぞれの重量を代表することができるので、秤量器60を複数設ける必要がなく経済的である。
乾燥炉本体15には、乾燥炉本体15内部の雰囲気中の水蒸気量を測定可能なセンサー61が設けられている。このセンサー61としては、例えばセラミック材料を用いた従来公知のセンサーを使用できる。
【0024】
乾燥炉本体15内には、乾燥炉本体15内の炉内温度を計測する温度計62が設けられ、この温度計62により乾燥中のプレキャストブロック11の温度が測定可能になっている。このような、マイクロ波を用いた乾燥において、表面温度の時間当りの温度変動を高精度に制御するためには、電磁界の影響を避ける必要があるので、温度計62として光ファイバー式温度計を使用する。この光ファイバー式温度計は、通常400℃程度に耐えることができる光ファイバーの端面に接着された半導体結晶の光吸収作用を利用して温度を測定するものである。使用する光ファイバー温度計としては、例えばCanada NORTECH FIBRONIC INC.社のNoEMI−TSシリーズ、USA LUXTRONCORP.社のフロロプチック光ファイバー方式温度計、Canada FISO TECHNOLOGIESINC.社の白色光ファブリーペローファイバーセンサー等を使用することができる。なお、センサー部分は、通常、直径1〜2mm、長さ50〜100mm程度である。
【0025】
図4(A)、(B)に示すように、扉16には、扉16を乾燥炉本体15に対して上下動させるための扉開閉手段63が設けられている。この扉開閉手段63は、乾燥炉本体15の開放部14の両側部に配置された一対のガイド部64、65によって構成されており、扉16の両側であって上端部及び下端部にそれぞれ設けられた合計4個のガイドローラ66〜69を上下方向にガイドするものである。なお、扉開閉手段63は一対のガイド部64、65によって構成されているため、以下、一方のガイド部65についてのみ説明する。
ガイド部65は、扉16の上端部に設けられたガイドローラ67を上下方向にガイドする上ガイド部70と、扉16の下端部に設けられたガイドローラ69を上下方向にガイドする下ガイド部71とを有しており、上ガイド部70及び下ガイド部71はそれぞれ支持部材(図示しない)により地面13に立設されている。この上ガイド部70と下ガイド部71は、それぞれ側面視して下端部のみが開放部14側へ湾曲した形状となっており、しかもガイドローラ67、69の走行部分の形状が実質的に同一形状となっている。なお、ガイドローラ67、69がそれぞれ走行する上ガイド部70及び下ガイド部71の走行部分には、扉16が乾燥炉本体15側へ移動できる程度の隙間が設けられている。
【0026】
これにより、開放部14を閉状態にするため、開放部14の前方に扉16を配置する場合は、乾燥炉本体15の前端部と所定の距離を開けた状態で扉16が下降し、扉16の下端が扉受け部51に当接する前に、扉16が乾燥炉本体15側へ移動しながら開放部14を閉じる。ここで、乾燥炉本体15の前端と扉16との距離は、例えば10〜60mm程度である。また、開放部14を開状態にするため、開放部14の上方に扉16を配置する場合は、扉16の下端が扉受け部51から離れながら扉16が外部側へ移動し、その後は乾燥炉本体15の前端部と前記した所定の距離を開けた状態で扉16が上昇しながら開放部14を開ける。
このように、扉16は、乾燥炉本体15の前端との距離を狭くしながら開放部14の前方に配置されるので、乾燥炉本体15の前端と扉16との間に生じる隙間を予め狭くできる。これにより、乾燥炉本体15に対する扉16の押付け距離も短くなるので、押付け手段32、33の能力を必要以上に大きくする必要性がなくなり経済的である。
【0027】
なお、扉16の上下動は、扉16の両側上端部にそれぞれ設けられた係止部72を、昇降手段73である例えば電気チェーンブロック、電気ホイスト等のチェーン74に取付けることで行う。
上記したマイクロ波発生部29、油圧シリンダー40、熱風製造部55、及び昇降手段73の各動作は、制御部によって制御される。また、秤量器60、センサー61、温度計62の各データはコンピュータによって処理され、この処理したデータに基づいて制御部によりマイクロ波乾燥装置10を稼働する。
【0028】
続いて、前記した本発明の一実施の形態に係る不定形耐火物のマイクロ波乾燥装置10の使用方法について、図1〜図4を参照しながら説明する。
まず、昇降手段73によって、扉16を乾燥炉本体15の上方まで上げる。
溝部34の上方に鉄板等で構成された渡し部材(図示しない)を配置し、パレット28上に載置されたプレキャストブロック11を、例えばフォークリフトによって順次乾燥炉本体15内に搬入する。
搬入作業が終了した後、渡し部材を撤去して昇降手段73を作動させ、扉16を各ガイド部64、65に沿って下降させて、開放部14の前方に配置する。
【0029】
開放部14の前方に扉16が配置された後、複数の押付け手段32、33によって扉16を乾燥炉本体15の前端に押付け、押付けが終了した後、チューブ50、53に空気を供給し、扉16と乾燥炉本体15の前端との間に生じた隙間を塞ぐ。
そして、マイクロ波発生部29からマイクロ波を発生させ、乾燥炉本体15内のプレキャストブロック11に照射して、プレキャストブロック11の乾燥を行う。
秤量器60、センサー61、及び温度計62により、プレキャストブロック11の乾燥状況及び乾燥状態を確認して、乾燥終了時間を判定する。
乾燥が終了した後は、チューブ50、53内の空気を抜き、複数の押付け手段32、33の扉16に対する押圧状態を解除する。そして、昇降手段73を作動させ、ガイド部64、65に沿って扉16を上昇させ、溝部34の上方に渡し部材を配置した後、フォークリフトを用いて、乾燥炉本体15内から乾燥させたプレキャストブロック11をパレット28上に載置した状態で順次搬出する。
【0030】
【実施例】
前記実施の形態に係る不定形耐火物のマイクロ波乾燥装置10を使用し、プレキャストブロック11の乾燥を行った結果について説明する。
混練したアルミナ系の不定形耐火物を、厚み300mm、幅900mm、長さ1500mmの型枠に流し込み、所定時間の養生を行ってから脱型してパレット28に載置し、フォークリフトによって乾燥炉本体15内に搬送した。そして、乾燥炉本体15の開放部14に扉16を配置した後、各押付け手段32、33によって扉16を乾燥炉本体15の前端に押付け、更に各チューブ50、53にそれぞれ空気を流し込んで、乾燥炉本体15を密閉した。
次に、マイクロ波発生部29によりマイクロ波の出力を120kWに設定して乾燥炉本体15内にマイクロ波を照射し、熱風供給手段54により乾燥炉本体15内に60℃の熱風を36Nm3 /minで供給して、プレキャストブロック11の乾燥を行った。
【0031】
24時間後、秤量器60によってプレキャストブロック11の重量変化が殆ど無くなったことを確認した時点で乾燥が終了したと判断し、扉16を開けた後、製品(乾燥させたプレキャストブロック11)を乾燥炉本体15内から搬出した。製造した製品には、亀裂や爆裂が無く、十分に乾燥されており、この製品を取鍋の底部に使用したが耐食性が良好であった。
また、マイクロ波による乾燥中、乾燥炉本体15と扉16との間からのマイクロ波の漏洩が全く無く、作業環境が良好であり、扉16の開閉作業も容易に行うことができ、地上型のマイクロ波乾燥装置10を実用化できることが明らかとなった。
【0032】
以上、本発明を、一実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の不定形耐火物のマイクロ波乾燥装置を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
また、前記実施の形態においては、乾燥炉本体内へのプレキャストブロックの搬入、及び乾燥炉本体内からのプレキャストブロックの搬出を、パレットを用いてフォークリフトにより行った場合について説明したが、予め乾燥炉本体内にガイドレールを布設し、このガイドレール上を走行する台車によって、プレキャストブロックの搬入及び搬出を行うことも可能である。
【0033】
そして、前記実施の形態においては、乾燥炉本体に対して扉を上下動させた場合について説明したが、横方向に扉開閉手段を設け、扉を横方向に移動させることも勿論可能である。
更に、前記実施の形態においては、マイクロ波の放出口を天井部に備えた乾燥炉本体について説明したが、マイクロ波の放出口を側壁部に備えた乾燥炉本体をマイクロ波乾燥装置に使用することもできる。
【0034】
【発明の効果】
請求項1〜5記載の不定形耐火物のマイクロ波乾燥装置においては、乾燥炉本体の開放部に配置された扉を、押付け手段により乾燥炉本体に押付けることで、乾燥炉本体と扉との間に生じる隙間を最小限にできるので、マイクロ波乾燥装置の使用時に、隙間から漏洩するマイクロ波を抑制できる。これにより、従来の地上型のマイクロ波乾燥装置と異なり、人体に及ぼす悪影響を抑制でき、作業環境の改善を図ることができ、しかも安全性を十分に確保できる。なお、乾燥炉本体と扉との接触部分の製作精度を厳密にする必要性も緩和され、しかも熱歪みなどの考慮条件の許容範囲も緩和されるので、メンテナンス作業を低減できマイクロ波乾燥装置を安定して長期間使用することが可能になる。
また、乾燥炉本体を地上型とすることで、従来のピット型のマイクロ波乾燥装置のように、地面に穴を掘ることなくマイクロ波乾燥装置を製造でき、ピット型のマイクロ波乾燥装置の製造で必要となる設備費用を削減でき経済的である。なお、乾燥炉本体内への乾燥対象物の搬入や、乾燥炉本体内からの乾燥対象物の搬出も容易に行うことができるので、乾燥対象物の搬入搬出作業を効率的に行うことができる。
【0035】
特に、請求項2記載の不定形耐火物のマイクロ波乾燥装置においては、乾燥炉本体の開放部の周縁をラビリンス構造にするので、乾燥炉本体の内部に照射されたマイクロ波の乱反射をラビリンス構造により減衰させることができ、乾燥炉本体と扉との間に生じる隙間からのマイクロ波の漏洩を抑制、更には防止できる。このため、人体に及ぼす悪影響を防止でき、作業環境の改善を図ることができる。請求項3記載の不定形耐火物のマイクロ波乾燥装置においては、乾燥炉本体内に乾燥対象物を装入した後、乾燥炉本体に中空のチューブを介して扉を配置し、乾燥炉本体の対向部と扉との間に生じる隙間をチューブによって完全に閉鎖できるので、乾燥時に照射するマイクロ波の漏洩を確実に防止でき、人体に及ぼす悪影響を防止でき、作業環境の改善を図ることができ、しかも安全性を確保できる。
【0036】
請求項4記載の不定形耐火物のマイクロ波乾燥装置においては、乾燥炉本体の内部に反射部材を配置することで、乾燥対象物の全周から均一に加熱でき、また乾燥炉本体に熱風供給手段を設けることで、乾燥炉本体内に発生した水蒸気が乾燥対象物の外部に拡散して放出することを促進できるので、乾燥対象物の乾燥効率を向上し、水蒸気爆裂を安定して防止できる。これにより、乾燥対象物の内部に発生する亀裂などの欠陥も防止できるので、安定した品質を備える製品を製造できる。
請求項5記載の不定形耐火物のマイクロ波乾燥装置においては、乾燥炉本体が、秤量器と、水蒸気量を測定するセンサーと、乾燥対象物の温度を測定する温度計とを備えているので、乾燥対象物の乾燥状況及び乾燥状態を把握でき、しかも乾燥終了を確実に判定できる。これにより、過剰加熱の防止や乾燥時間の適正化が可能になるので、安定した品質を備える製品を経済的に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る不定形耐火物のマイクロ波乾燥装置の説明図である。
【図2】(A)、(B)はそれぞれ同マイクロ波乾燥装置に使用する押付け手段の説明図である。
【図3】同マイクロ波乾燥装置の乾燥炉本体の対向部の部分拡大断面図である。
【図4】(A)、(B)はそれぞれ同マイクロ波乾燥装置に使用する扉開閉手段の側面図、正面図である。
【図5】従来例に係る不定形耐火物のピット型のマイクロ波乾燥装置である。
【符号の説明】
10:不定形耐火物のマイクロ波乾燥装置、11:プレキャストブロック(乾燥対象物)、12:床面、13:地面、14:開放部、15:乾燥炉本体、16:扉、17:天井部、18、19:側壁部、20:背壁部、21:鉄板、22:耐火断熱材、23:ステンレス鋼板(反射部材)、24:鉄板、25:耐火断熱材、26:ステンレス鋼板(反射部材)、27:床部、28:パレット、29:マイクロ波発生部、30:導波管、31:放出口、32、33:押付け手段、34:溝部、35:固定部、36:穴、37:押圧部、38:カム機構、39:操作部、40:油圧シリンダー、41:シリンダー本体、42:底部、43:支持台、44:ピストンロッド、45:連結部、46:周縁、47:対向部、48:ラビリンス構造、49:溝部、50:チューブ、51:扉受け部、52:溝部、53:チューブ、54:熱風供給手段、55:熱風製造部、56:供給管、57:排気ダクト、58:受け部、59:空洞部、60:秤量器、61:センサー、62:温度計、63:扉開閉手段、64、65:ガイド部、66〜69:ガイドローラ、70:上ガイド部、71:下ガイド部、72:係止部、73:昇降手段、74:チェーン
Claims (5)
- マイクロ波の放出口を天井部又は側壁部に備えた地上型の乾燥炉本体の側部に開放部を形成し、該開放部を開閉可能な扉と、該扉を前記乾燥炉本体に押付け可能な押付け手段とを有し、使用にあっては前記乾燥炉本体内に乾燥対象物を装入した後、前記開放部に前記扉を配置し、前記押付け手段により前記扉を前記乾燥炉本体の前記開放部の周縁に押付け該乾燥炉本体を密閉することを特徴とする不定形耐火物のマイクロ波乾燥装置。
- 請求項1記載の不定形耐火物のマイクロ波乾燥装置において、前記乾燥炉本体の前記開放部の周縁をラビリンス構造にすることを特徴とする不定形耐火物のマイクロ波乾燥装置。
- 請求項1及び2のいずれか1項に記載の不定形耐火物のマイクロ波乾燥装置において、前記乾燥炉本体の前記開放部の周縁には、拡縮自在な中空のチューブが配置されていることを特徴とする不定形耐火物のマイクロ波乾燥装置。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の不定形耐火物のマイクロ波乾燥装置において、前記乾燥炉本体の内部に、前記放出口から照射されたマイクロ波を反射する反射部材を配置し、更に前記乾燥炉本体に、前記乾燥炉本体の内部に熱風を供給する熱風供給手段を設けることを特徴とする不定形耐火物のマイクロ波乾燥装置。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の不定形耐火物のマイクロ波乾燥装置において、前記乾燥炉本体は、乾燥中の前記乾燥対象物の重量を計測可能な秤量器と、前記乾燥対象物の温度を測定可能な温度計と、前記乾燥炉本体内部の雰囲気中の水蒸気量を測定可能なセンサーとを備えていることを特徴とする不定形耐火物のマイクロ波乾燥装置。
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