JP2004217974A - アルカリ液のリサイクル法 - Google Patents
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Abstract
【課題】金属表面に付着している潤滑剤の脱脂、洗浄に使用したアルカリ液中の油分等を効率よく除去し、アルカリ液をリサイクルする方法を提供する。
【解決手段】金属を加工する際に使用した潤滑剤を除去し、金属加工品を洗浄するためのアルカリ液のリサイクル法であって、下記▲1▼および▲2▼の工程を有する方法。▲1▼の工程で、使用済みアルカリ液の温度を30℃以下にし、▲2▼の工程で石鹸分を除去したアルカリ液のアルカリ度を6%以上とすれば、石鹸分の除去効率を一層高めることができ、好ましい。
▲1▼使用済みアルカリ液に含まれる石鹸分を固形化し、除去する工程
▲2▼前記石鹸分を除去したアルカリ液にアルカリを加え、油分を分離する工程
【選択図】なし
【解決手段】金属を加工する際に使用した潤滑剤を除去し、金属加工品を洗浄するためのアルカリ液のリサイクル法であって、下記▲1▼および▲2▼の工程を有する方法。▲1▼の工程で、使用済みアルカリ液の温度を30℃以下にし、▲2▼の工程で石鹸分を除去したアルカリ液のアルカリ度を6%以上とすれば、石鹸分の除去効率を一層高めることができ、好ましい。
▲1▼使用済みアルカリ液に含まれる石鹸分を固形化し、除去する工程
▲2▼前記石鹸分を除去したアルカリ液にアルカリを加え、油分を分離する工程
【選択図】なし
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、金属表面の洗浄等に使用したアルカリ液、特に金属の圧延、抽伸等の塑性加工時に用いる潤滑剤の脱脂、洗浄に使用したアルカリ液のリサイクル法に関する。
【0002】
【従来の技術】
鉄鋼、非鉄金属をはじめ、多くの産業分野で、金属表面の脱脂、洗浄等の処理が行われている。例えば、金属の圧延、抽伸等の塑性加工時には、油、金属石鹸等の潤滑剤を使用するが、その加工工程を終了して次の工程に移行する前に、金属表面に付着している潤滑剤を除去する脱脂、洗浄工程が必須である。その際、洗浄液としては、強力な洗浄力を有する水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ洗浄液が主として用いられている。
【0003】
具体的な例をあげると、ステンレス鋼の継目無鋼管を製造する際、例えば、素材鋼(丸ビレット)は、熱間押出工程、冷却後の曲取り工程を経た後、弗硫酸および弗硝酸による酸洗処理を施され、次いで、口絞り他の必要な前処理がなされた後、「蓚酸下地(蓚酸塩水溶液への浸漬処理)」+「潤滑油塗布またはナトリウム石鹸液浸漬」の潤滑処理が施される。続いて、冷間引抜(抽伸)、熱処理、曲取り、切断等の工程を経て所定の外径および肉厚を有する鋼管となるのであるが、前記の冷間引抜工程の後に、管の表面に付着している潤滑剤等を除去するためのアルカリ脱脂、および弗硝酸洗浄処理が施される。
【0004】
前記のアルカリ脱脂では、一般に、4〜5%の水酸化ナトリウム水溶液に界面活性剤を添加した液が使用される。このアルカリ液は繰り返し使用されるが、その間に、潤滑油が変質した油汚れや、下地の蓚酸塩、金属イオン、アルカリ液などの間の反応により生じる固形物(スラッジ)による汚れ(これらの汚れを、ここでは「油分等の不純物」または単に「油分等」ともいう)の濃度が徐々に増大し、それに伴って洗浄力が徐々に低下する。そのため、アルカリ液中の油分等の不純物の濃度がある一定値以上になると、「使用済みアルカリ液」として廃却処分せざるを得なくなる。
【0005】
廃却処分する使用済みアルカリ液量が少ない場合は、中和を主体とする処理を行えばよく、その処理は可能であるが、設備が大型化し、廃液量が多量になると、処理は極めて困難である。そのため、使用済みアルカリ液を静置することにより油分を分離、除去した後、アルカリ液として再利用(リサイクル)する再生装置を設置して、廃液量の減少を図る方法が採用され、ある程度の効果が得られている。
【0006】
しかしながら、使用済みアルカリ液量がさらに多量になると、再生装置の能力が追いつかず、前記装置から除去される油分より脱脂処理によりアルカリ脱脂槽内に持ち込まれる油分の方が多くなり、アルカリ液中の油分濃度が増大し、脱脂性能が低下するという問題がある。
【0007】
この問題を解決するため、特許文献1に記載されるように、油分や固形汚れを含むアルカリ洗浄液(この洗浄液には界面活性剤が添加されており、油分は界面活性剤が形成するミセルに取り込まれている)に、界面活性剤が塩析分離する限度以上にアルカリ成分(苛性ソーダ、苛性カリなど)を添加して油相、水相、固相に分離し、水相だけを取り出してリサイクルする方法が提案され、実用されている。この方法によれば、アルカリ洗浄液の寿命を従来よりも数倍に延長させることができるとされている。
【0008】
しかし、この方法は、アルカリ洗浄液中の石鹸分の濃度が高い場合には効果が少なく、油分が分離除去されずに残り、前記と同様に、アルカリ洗浄量が過大になると除去される油分よりもアルカリ脱脂槽内に持ち込まれる油分の方が多くなり、油分濃度が上昇してくる場合もある。石鹸分を分離除去するためには、多量のアルカリの添加が必要になるが、薬品コストが高く、また、高濃度のアルカリを扱うため、安全性にも問題がある。
【0009】
【特許文献1】
特開平7−286290号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来の技術における問題を解決するためになされたものであって、金属表面の洗浄等に使用したアルカリ液、特に金属の圧延、抽伸等の塑性加工時に用いる潤滑剤の脱脂、洗浄に繰り返し使用することにより油分等の不純物の濃度が増大した使用済みのアルカリ液中の油分等を効率よく除去し、アルカリ液の寿命の延長を図るとともに、薬品コストおよび廃液処理コストを低減することができるアルカリ液のリサイクル法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前述したように、油分を含むアルカリ液にアルカリ成分を添加すると、油相と水相が分離する(特許文献1)。しかし、アルカリ液中の石鹸分の濃度が高い場合は油分の分離効率が低下するので、この石鹸分も同時に除去しようとすると、多量のアルカリ成分の添加が必要になる。
【0012】
そこで、本発明者は、前記の石鹸分をあらかじめ除去しておき、その後アルカリ成分を添加する、という考えの基に検討を重ねた。すなわち、「アルカリ成分添加」→「油分の塩析分離」という工程の前段に、さらに「石鹸分の除去」という工程を付加して、油分の塩析分離効果を高め、それにより油分等の除去の効率化を図ろうとするものである。
【0013】
石鹸分を除去する方法としては、石鹸分の溶解度が高温におけるほど高くなるので、使用済みアルカリ液の温度を低下させ、石鹸分を浮上分離させる方法を試みた。その結果、後述するように、アルカリ液中の石鹸分の濃度を油分の塩析分離に支障のない濃度にまで低下させ得ることが判明し、さらに、前記アルカリ液のアルカリ度を適切に調整することによって石鹸分の除去効率を一層高め得ることを知見した。
【0014】
本発明はこのような知見に基づいてなされたもので、その要旨は、下記のアルカリ液のリサイクル法にある。
【0015】
金属を加工する際に使用した潤滑剤を除去し、金属加工品を洗浄するためのアルカリ液のリサイクル法であって、下記の▲1▼および▲2▼の工程を有するアルカリ液のリサイクル法。
▲1▼使用済みアルカリ液に含まれる石鹸分を固形化し、除去する工程
▲2▼前記石鹸分を除去したアルカリ液にアルカリを加え、油分を分離する工程
前記▲1▼の工程で、使用済みアルカリ液の温度を30℃以下にし、前記▲2▼の工程で石鹸分を除去したアルカリ液のアルカリ度を6%以上とすれば、石鹸分の除去効率を高め、油分の除去効率を格段に高めることができ、好ましい。
【0016】
前記の「アルカリ液」とは、後述するが、潤滑剤の除去、洗浄に用いる、おもに水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物の水溶液であり、「使用済みアルカリ液」とは、先にも述べたように、アルカリ液中の油分等の不純物濃度がある一定値以上になり、廃却処分せざるを得なくなったアルカリ液をいう。
【0017】
前記の「アルカリ」とは、「使用済みアルカリ液」の回収の際に使用する、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属元素の水酸化物、またはその水溶液をいう。
【0018】
また、「アルカリ液のアルカリ度」とは、アルカリ液における水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の濃度(質量%)で、例えば、アルカリ液を、フェノールフタレインを指示薬として、1規定の硫酸で中和滴定することにより求めることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のアルカリ液のリサイクル法(以下、「本発明の方法」ともいう)を詳細に説明する。
【0020】
本発明のアルカリ液のリサイクル法は、上記のように、金属を加工する際に使用した潤滑剤を除去し、金属加工品を洗浄するためのアルカリ液のリサイクル法であって、
▲1▼使用済みアルカリ液に含まれる石鹸分を固形化し、除去する工程
▲2▼前記石鹸分を除去したアルカリ液にアルカリを加え、油分を分離する工程
の各工程を有するアルカリ液のリサイクル法である。
【0021】
アルカリ液は、金属を加工する際に用いた潤滑剤を除去し、その面を洗浄するためのもので、金属の種類、用いる潤滑剤等によって異なるが、一般的には、高濃度(アルカリ度4〜5%)の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等、おもにアルカリ金属元素の水酸化物の水溶液が使用される。潤滑剤除去(脱脂)効果を高めるために、この水溶液に界面活性剤などが添加された水溶液が使用される場合もある。
【0022】
潤滑剤としては、通常、RCOOR′(R、R′はアルキル基)の組成を有するものが用いられ、石鹸(RCOONa)が用いられる場合もある。
【0023】
この潤滑剤は、アルカリ液(例えば、NaOH)と混合すると、下式に示すけん化反応が起こり、加水分解される。なお、この反応で生成するRCOONaは石鹸であり、水溶液中では、RCOO−となっている。−Rは親油基、−COO−は親水基なので、RCOO−は油、水の両方に親和性を有している。
RCOOR′+NaOH→RCOONa+R′OH
前記のアルカリ液は、金属表面に付着している潤滑剤等の除去、洗浄のために繰り返し使用され、使用済みアルカリ液となる。この使用済みアルカリ液中には、水(アルカリ水)、油分、前記の反応で生じた石鹸(潤滑剤として石鹸が用いられた場合はその石鹸)が混じり合った状態で含まれており、これを静置するか、アルカリを加えると、油層(上層)と水層(下層)に塩析分離する。
【0024】
この油層と水層のうち、油層は廃棄され、水層は回収されてアルカリ液として再利用(リサイクル)されるのであるが、石鹸は、前記のように油、水の両方に親和性を有しているので、回収されるアルカリ液にも石鹸分が混在することとなる。そのため、アルカリ液の脱脂性能が低下する。
【0025】
この石鹸分は、アルカリを多量に加えれば油分と同様に分離できるが、薬品コストが増大し、また、多量のアルカリを扱うので、安全性における配慮も必要になる。
【0026】
そこで、本発明の方法においては、アルカリ液にアルカリ(すなわち、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属元素の水酸化物、またはその水溶液)を加えて油分を分離する工程(前記▲2▼の工程)の前段に、前記▲1▼に記載の工程を付加して、使用済みアルカリ液に含まれる石鹸分を固形化し、除去する。
【0027】
前記石鹸分の除去に、特別の装置等は必要ではない。石鹸分はアルカリ液の温度を低下させると固形化して浮上するので、適当な治具で取り除くだけでよい。
【0028】
後述する実施例に示すように、アルカリ脱脂槽から取り出した直後の使用済みアルカリ液の温度は85℃、石鹸分の濃度は1.35%であるが、アルカリ液の温度の低下に伴い、石鹸分が浮上、除去されるので、その濃度は、例えば30℃では0.77%で、石鹸分の45%程度が除去される。その結果、▲2▼の工程における油分の除去効率が高くなる。
【0029】
前記の「石鹸分の濃度」とは、RCOONaの組成を有する成分のアルカリ液における含有量(質量%)をいう。
【0030】
石鹸分を固形化し、除去する工程では、アルカリ液のアルカリ度の影響が大きく、アルカリ度を高くすると、油分の除去効率が向上する。後述する実施例に示すように、アルカリ度を6%以上とすると、アルカリ脱脂槽から取り出したままの石鹸分の濃度の高い使用済みアルカリ液(油分の濃度:0.6%)であっても、油分を75%程度除去することができる。
【0031】
前記の「油分の濃度」とは、アルカリ液中に含まれる総油分(石鹸分と油分を加えたすべての油分をいう)の含有量から石鹸分の含有量を差し引くことにより求められる油分の含有量(質量%)をいう。
【0032】
なお、「石鹸分の濃度」および「油分の濃度」は、例えば、以下のように測定することができる。
【0033】
油分の濃度の測定では、まず、ロートに脱脂綿を詰め、その上に総油分(すなわち、石鹸分+油分)の含有量の約30倍の活性アルミナを載せる。そこに50mlの10%エタノール/クロロホルム溶液を入れ、ロートより滴下した10%エタノール/クロロホルム溶液をビーカーに採取する。この工程は、活性アルミナを洗浄するために行う。続いて、30mlのアルカリ液を採取し、これに対して10%エタノール/クロロホルム溶液を適量追加し、溶解させた後、活性アルミナ上へ静かに注ぎ込む。これは、アルカリ液中の石鹸分のみを活性アルミナに吸着させるためである。さらに、約100mlの10%エタノール/クロロホルム溶液を活性アルミナ上へ加えて、油分を流出させる。この後、10%エタノール/クロロホルム溶液を100℃以下で加熱し、蒸発させることにより、アルカリ液中の油分の含有量を測定することができる。油分の濃度は、この油分の含有量と、使用した30mlのアルカリ液の質量から計算することができる。
【0034】
一方、石鹸分の濃度は、総油分(石鹸分+油分)の含有量を測定し、その値から前記油分の含有量を差し引くことにより求めることができる。
【0035】
総油分の含有量の測定においては、まず、アルカリ液100gを分液ロートに採取し、37%の塩酸20mlを加え、振とうする。この混合液について、pH試験紙を用いて酸性になったか否かを確認し、酸性となっていれば、n−ヘキサンを200ml加えて振とうし、静置することにより水相とヘキサン相に分離する。続いて、ヘキサン相を取り出し、水相にはさらに100mlのn−ヘキサンを加え、同様にヘキサン相を取り出す。このようにアルカリ液から分離されたヘキサン相には水が含まれているため、今度は、50〜100mlの飽和硫酸ナトリウム溶液を加えて振とうし、静置分離する操作を3回繰り返して、水が含まれないヘキサン相を得る。さらに、ヘキサン相に無水硫酸ナトリウムを適量加えて脱水し、ろ過後、ヘキサン相を100℃以下で加熱してヘキサンを蒸発させることにより、アルカリ液中の総油分の含有量を測定する。
【0036】
このようにして測定した総油分(石鹸分+油分)の含有量から油分の含有量を差し引いて石鹸分の含有量を求める。石鹸分の濃度は、この石鹸分の含有量と、使用したアルカリ液の質量(100g)から計算することができる。
【0037】
前述した本発明の方法によるアルカリ液のリサイクルは、例えば次のようにして行うことができる。
【0038】
金属加工品、例えば、冷間引抜工程を終了した管の表面に付着している潤滑剤等を除去するためのアルカリ脱脂は、通常、アルカリ液を収容した脱脂槽(タンク)に前記の管を浸漬することにより行われる。
【0039】
アルカリ液は繰り返し使用されるが、油分等の不純物濃度が増大して使用できなくなったアルカリ液(使用済みアルカリ液)は、別に設けてあるサブタンク内へ移送される。リサイクル装置を設けている場合は、そのリサイクルタンク内へ移送される。
【0040】
これらタンク内で留め置くことにより使用済みアルカリ液を冷却し、液面に浮上した石鹸分を除去する(前記▲1▼の工程)。なお、油分の除去は、上層の油分のみ吸引除去する方法により行うことができる。
【0041】
続いて、前記石鹸分を除去したアルカリ液にアルカリを加え、上層に塩析分離した油分を取り除く(前記▲2▼の工程)。前記のアルカリは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物(固形物)のまま添加してもよいが、あらかじめその水溶液を調製しておき、液状で添加するのが、アルカリ液との混合が容易で好ましい。添加量は、前述したように、添加後のアルカリ液のアルカリ度が6%以上となるようにするのがよい。
【0042】
このようにして油分が除去され、再生されたアルカリ液は、脱脂槽(タンク)へ戻され、冷間引抜工程を終了した管の脱脂に供される。
【0043】
以上述べた本発明の方法によれば、金属表面の洗浄等に使用したアルカリ液、特に金属の圧延、抽伸等の塑性加工時に用いる潤滑剤の脱脂、洗浄に繰り返し使用して油分等の不純物濃度が増大した使用済みのアルカリ液中の油分等を効率よく除去し、リサイクルすることができる。アルカリ液の寿命が延長しするので、薬品コストを最小限に抑え、また、廃液量が減少するのでその処理コストを低減することもできる。
【0044】
【実施例】
SUS316のステンレス鋼の素管(直径40mm、肉厚4mm)に、「蓚酸塩水溶液への浸漬処理(蓚酸下地)」+「ナトリウム石鹸液浸漬」の潤滑処理を施した後、冷間引抜加工を行い、加工後の鋼管をアルカリ液(5%水酸化ナトリウム溶液)で脱脂した。
【0045】
脱脂、洗浄に繰り返し使用した後のアルカリ液(使用済みアルカリ液)の一部を脱脂槽から取り出し、保持温度を変化させて石鹸分を固形化、除去した後のアルカリ液中の石鹸分の濃度および油分の濃度を測定した。なお、油分の濃度および石鹸分の濃度の測定は、前述した方法により行った。
【0046】
表1に測定結果を示す。前記脱脂槽から取り出したままの使用済みアルカリ液は、表1の測定結果の最上欄に示すように、温度が85℃、油分の濃度が0.6%、石鹸分の濃度が1.35%であった。
【0047】
【表1】
【0048】
表1の結果から明らかなように、使用済みアルカリ液の保持温度を低下させるに伴い、アルカリ液中の石鹸分の濃度は低下した。一方、油分の濃度は変化せず、0.6%のままであった。
【0049】
次に、アルカリ液の温度を85℃に戻し、表1に示した濃度の石鹸分および油分を含むこととなったそれぞれのアルカリ液に、液状のアルカリを添加してアルカリ液中の油分を塩析分離し、油分除去率を求めた。
【0050】
図1にその結果を示す。図1において、破線はアルカリ液のアルカリ度を4%から5%に高めた場合であり、実線は同じくアルカリ度を4%から6%に高めた場合である。なお、アルカリ度を5%または6%にしたのは、いずれもアルカリ液の温度を85℃に戻してからである。
【0051】
図1の結果から明らかなように、前記脱脂槽から取り出したままの使用済みアルカリ液の場合(図1の横軸<石鹸分の濃度>が1.35%の場合)は、アルカリ度を6%にすれば、油分除去率が75%程度の高い値になったが、アルカリ度を5%にした程度では、油分除去率は10%程度で、油分除去はほとんどできなかった。
【0052】
一方、表1に示したように、使用済みアルカリ液の保持温度を70℃として、石鹸分の濃度を1.17%に低下させた場合(図1の横軸<石鹸分の濃度>が1.17%の場合)は、アルカリ度を5%にしただけでも、油分除去率を60%近くまで高めることができ、アルカリ度を6%にすれば、油分除去率は90%の高い値に達した。
【0053】
特に、使用済みアルカリ液の保持温度を30℃として、石鹸分の濃度を0.77%まで低下させた場合、アルカリ度を6%にすれば、油分除去率は100%で、使用済みアルカリ液中の油分を完全に除去することができた。
【0054】
【発明の効果】
本発明のアルカリ液のリサイクル法によれば、金属表面の洗浄等に使用したアルカリ液、特に金属の圧延、抽伸等の塑性加工時に用いる潤滑剤の脱脂、洗浄に繰り返し使用して油分等の不純物の濃度が増大した使用済みのアルカリ液中の油分等を効率よく除去し、リサイクルすることができる。これにより、アルカリ液の寿命が延長するので、薬品コストを最小限に抑え、また、廃液量が減少するのでその処理コストを低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の結果を示す図で、アルカリ液中の石鹸分の濃度と油分除去率の関係をアルカリ液のアルカリ度をパラメータとして示した図である。
【産業上の利用分野】
本発明は、金属表面の洗浄等に使用したアルカリ液、特に金属の圧延、抽伸等の塑性加工時に用いる潤滑剤の脱脂、洗浄に使用したアルカリ液のリサイクル法に関する。
【0002】
【従来の技術】
鉄鋼、非鉄金属をはじめ、多くの産業分野で、金属表面の脱脂、洗浄等の処理が行われている。例えば、金属の圧延、抽伸等の塑性加工時には、油、金属石鹸等の潤滑剤を使用するが、その加工工程を終了して次の工程に移行する前に、金属表面に付着している潤滑剤を除去する脱脂、洗浄工程が必須である。その際、洗浄液としては、強力な洗浄力を有する水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ洗浄液が主として用いられている。
【0003】
具体的な例をあげると、ステンレス鋼の継目無鋼管を製造する際、例えば、素材鋼(丸ビレット)は、熱間押出工程、冷却後の曲取り工程を経た後、弗硫酸および弗硝酸による酸洗処理を施され、次いで、口絞り他の必要な前処理がなされた後、「蓚酸下地(蓚酸塩水溶液への浸漬処理)」+「潤滑油塗布またはナトリウム石鹸液浸漬」の潤滑処理が施される。続いて、冷間引抜(抽伸)、熱処理、曲取り、切断等の工程を経て所定の外径および肉厚を有する鋼管となるのであるが、前記の冷間引抜工程の後に、管の表面に付着している潤滑剤等を除去するためのアルカリ脱脂、および弗硝酸洗浄処理が施される。
【0004】
前記のアルカリ脱脂では、一般に、4〜5%の水酸化ナトリウム水溶液に界面活性剤を添加した液が使用される。このアルカリ液は繰り返し使用されるが、その間に、潤滑油が変質した油汚れや、下地の蓚酸塩、金属イオン、アルカリ液などの間の反応により生じる固形物(スラッジ)による汚れ(これらの汚れを、ここでは「油分等の不純物」または単に「油分等」ともいう)の濃度が徐々に増大し、それに伴って洗浄力が徐々に低下する。そのため、アルカリ液中の油分等の不純物の濃度がある一定値以上になると、「使用済みアルカリ液」として廃却処分せざるを得なくなる。
【0005】
廃却処分する使用済みアルカリ液量が少ない場合は、中和を主体とする処理を行えばよく、その処理は可能であるが、設備が大型化し、廃液量が多量になると、処理は極めて困難である。そのため、使用済みアルカリ液を静置することにより油分を分離、除去した後、アルカリ液として再利用(リサイクル)する再生装置を設置して、廃液量の減少を図る方法が採用され、ある程度の効果が得られている。
【0006】
しかしながら、使用済みアルカリ液量がさらに多量になると、再生装置の能力が追いつかず、前記装置から除去される油分より脱脂処理によりアルカリ脱脂槽内に持ち込まれる油分の方が多くなり、アルカリ液中の油分濃度が増大し、脱脂性能が低下するという問題がある。
【0007】
この問題を解決するため、特許文献1に記載されるように、油分や固形汚れを含むアルカリ洗浄液(この洗浄液には界面活性剤が添加されており、油分は界面活性剤が形成するミセルに取り込まれている)に、界面活性剤が塩析分離する限度以上にアルカリ成分(苛性ソーダ、苛性カリなど)を添加して油相、水相、固相に分離し、水相だけを取り出してリサイクルする方法が提案され、実用されている。この方法によれば、アルカリ洗浄液の寿命を従来よりも数倍に延長させることができるとされている。
【0008】
しかし、この方法は、アルカリ洗浄液中の石鹸分の濃度が高い場合には効果が少なく、油分が分離除去されずに残り、前記と同様に、アルカリ洗浄量が過大になると除去される油分よりもアルカリ脱脂槽内に持ち込まれる油分の方が多くなり、油分濃度が上昇してくる場合もある。石鹸分を分離除去するためには、多量のアルカリの添加が必要になるが、薬品コストが高く、また、高濃度のアルカリを扱うため、安全性にも問題がある。
【0009】
【特許文献1】
特開平7−286290号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来の技術における問題を解決するためになされたものであって、金属表面の洗浄等に使用したアルカリ液、特に金属の圧延、抽伸等の塑性加工時に用いる潤滑剤の脱脂、洗浄に繰り返し使用することにより油分等の不純物の濃度が増大した使用済みのアルカリ液中の油分等を効率よく除去し、アルカリ液の寿命の延長を図るとともに、薬品コストおよび廃液処理コストを低減することができるアルカリ液のリサイクル法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前述したように、油分を含むアルカリ液にアルカリ成分を添加すると、油相と水相が分離する(特許文献1)。しかし、アルカリ液中の石鹸分の濃度が高い場合は油分の分離効率が低下するので、この石鹸分も同時に除去しようとすると、多量のアルカリ成分の添加が必要になる。
【0012】
そこで、本発明者は、前記の石鹸分をあらかじめ除去しておき、その後アルカリ成分を添加する、という考えの基に検討を重ねた。すなわち、「アルカリ成分添加」→「油分の塩析分離」という工程の前段に、さらに「石鹸分の除去」という工程を付加して、油分の塩析分離効果を高め、それにより油分等の除去の効率化を図ろうとするものである。
【0013】
石鹸分を除去する方法としては、石鹸分の溶解度が高温におけるほど高くなるので、使用済みアルカリ液の温度を低下させ、石鹸分を浮上分離させる方法を試みた。その結果、後述するように、アルカリ液中の石鹸分の濃度を油分の塩析分離に支障のない濃度にまで低下させ得ることが判明し、さらに、前記アルカリ液のアルカリ度を適切に調整することによって石鹸分の除去効率を一層高め得ることを知見した。
【0014】
本発明はこのような知見に基づいてなされたもので、その要旨は、下記のアルカリ液のリサイクル法にある。
【0015】
金属を加工する際に使用した潤滑剤を除去し、金属加工品を洗浄するためのアルカリ液のリサイクル法であって、下記の▲1▼および▲2▼の工程を有するアルカリ液のリサイクル法。
▲1▼使用済みアルカリ液に含まれる石鹸分を固形化し、除去する工程
▲2▼前記石鹸分を除去したアルカリ液にアルカリを加え、油分を分離する工程
前記▲1▼の工程で、使用済みアルカリ液の温度を30℃以下にし、前記▲2▼の工程で石鹸分を除去したアルカリ液のアルカリ度を6%以上とすれば、石鹸分の除去効率を高め、油分の除去効率を格段に高めることができ、好ましい。
【0016】
前記の「アルカリ液」とは、後述するが、潤滑剤の除去、洗浄に用いる、おもに水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物の水溶液であり、「使用済みアルカリ液」とは、先にも述べたように、アルカリ液中の油分等の不純物濃度がある一定値以上になり、廃却処分せざるを得なくなったアルカリ液をいう。
【0017】
前記の「アルカリ」とは、「使用済みアルカリ液」の回収の際に使用する、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属元素の水酸化物、またはその水溶液をいう。
【0018】
また、「アルカリ液のアルカリ度」とは、アルカリ液における水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の濃度(質量%)で、例えば、アルカリ液を、フェノールフタレインを指示薬として、1規定の硫酸で中和滴定することにより求めることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のアルカリ液のリサイクル法(以下、「本発明の方法」ともいう)を詳細に説明する。
【0020】
本発明のアルカリ液のリサイクル法は、上記のように、金属を加工する際に使用した潤滑剤を除去し、金属加工品を洗浄するためのアルカリ液のリサイクル法であって、
▲1▼使用済みアルカリ液に含まれる石鹸分を固形化し、除去する工程
▲2▼前記石鹸分を除去したアルカリ液にアルカリを加え、油分を分離する工程
の各工程を有するアルカリ液のリサイクル法である。
【0021】
アルカリ液は、金属を加工する際に用いた潤滑剤を除去し、その面を洗浄するためのもので、金属の種類、用いる潤滑剤等によって異なるが、一般的には、高濃度(アルカリ度4〜5%)の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等、おもにアルカリ金属元素の水酸化物の水溶液が使用される。潤滑剤除去(脱脂)効果を高めるために、この水溶液に界面活性剤などが添加された水溶液が使用される場合もある。
【0022】
潤滑剤としては、通常、RCOOR′(R、R′はアルキル基)の組成を有するものが用いられ、石鹸(RCOONa)が用いられる場合もある。
【0023】
この潤滑剤は、アルカリ液(例えば、NaOH)と混合すると、下式に示すけん化反応が起こり、加水分解される。なお、この反応で生成するRCOONaは石鹸であり、水溶液中では、RCOO−となっている。−Rは親油基、−COO−は親水基なので、RCOO−は油、水の両方に親和性を有している。
RCOOR′+NaOH→RCOONa+R′OH
前記のアルカリ液は、金属表面に付着している潤滑剤等の除去、洗浄のために繰り返し使用され、使用済みアルカリ液となる。この使用済みアルカリ液中には、水(アルカリ水)、油分、前記の反応で生じた石鹸(潤滑剤として石鹸が用いられた場合はその石鹸)が混じり合った状態で含まれており、これを静置するか、アルカリを加えると、油層(上層)と水層(下層)に塩析分離する。
【0024】
この油層と水層のうち、油層は廃棄され、水層は回収されてアルカリ液として再利用(リサイクル)されるのであるが、石鹸は、前記のように油、水の両方に親和性を有しているので、回収されるアルカリ液にも石鹸分が混在することとなる。そのため、アルカリ液の脱脂性能が低下する。
【0025】
この石鹸分は、アルカリを多量に加えれば油分と同様に分離できるが、薬品コストが増大し、また、多量のアルカリを扱うので、安全性における配慮も必要になる。
【0026】
そこで、本発明の方法においては、アルカリ液にアルカリ(すなわち、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属元素の水酸化物、またはその水溶液)を加えて油分を分離する工程(前記▲2▼の工程)の前段に、前記▲1▼に記載の工程を付加して、使用済みアルカリ液に含まれる石鹸分を固形化し、除去する。
【0027】
前記石鹸分の除去に、特別の装置等は必要ではない。石鹸分はアルカリ液の温度を低下させると固形化して浮上するので、適当な治具で取り除くだけでよい。
【0028】
後述する実施例に示すように、アルカリ脱脂槽から取り出した直後の使用済みアルカリ液の温度は85℃、石鹸分の濃度は1.35%であるが、アルカリ液の温度の低下に伴い、石鹸分が浮上、除去されるので、その濃度は、例えば30℃では0.77%で、石鹸分の45%程度が除去される。その結果、▲2▼の工程における油分の除去効率が高くなる。
【0029】
前記の「石鹸分の濃度」とは、RCOONaの組成を有する成分のアルカリ液における含有量(質量%)をいう。
【0030】
石鹸分を固形化し、除去する工程では、アルカリ液のアルカリ度の影響が大きく、アルカリ度を高くすると、油分の除去効率が向上する。後述する実施例に示すように、アルカリ度を6%以上とすると、アルカリ脱脂槽から取り出したままの石鹸分の濃度の高い使用済みアルカリ液(油分の濃度:0.6%)であっても、油分を75%程度除去することができる。
【0031】
前記の「油分の濃度」とは、アルカリ液中に含まれる総油分(石鹸分と油分を加えたすべての油分をいう)の含有量から石鹸分の含有量を差し引くことにより求められる油分の含有量(質量%)をいう。
【0032】
なお、「石鹸分の濃度」および「油分の濃度」は、例えば、以下のように測定することができる。
【0033】
油分の濃度の測定では、まず、ロートに脱脂綿を詰め、その上に総油分(すなわち、石鹸分+油分)の含有量の約30倍の活性アルミナを載せる。そこに50mlの10%エタノール/クロロホルム溶液を入れ、ロートより滴下した10%エタノール/クロロホルム溶液をビーカーに採取する。この工程は、活性アルミナを洗浄するために行う。続いて、30mlのアルカリ液を採取し、これに対して10%エタノール/クロロホルム溶液を適量追加し、溶解させた後、活性アルミナ上へ静かに注ぎ込む。これは、アルカリ液中の石鹸分のみを活性アルミナに吸着させるためである。さらに、約100mlの10%エタノール/クロロホルム溶液を活性アルミナ上へ加えて、油分を流出させる。この後、10%エタノール/クロロホルム溶液を100℃以下で加熱し、蒸発させることにより、アルカリ液中の油分の含有量を測定することができる。油分の濃度は、この油分の含有量と、使用した30mlのアルカリ液の質量から計算することができる。
【0034】
一方、石鹸分の濃度は、総油分(石鹸分+油分)の含有量を測定し、その値から前記油分の含有量を差し引くことにより求めることができる。
【0035】
総油分の含有量の測定においては、まず、アルカリ液100gを分液ロートに採取し、37%の塩酸20mlを加え、振とうする。この混合液について、pH試験紙を用いて酸性になったか否かを確認し、酸性となっていれば、n−ヘキサンを200ml加えて振とうし、静置することにより水相とヘキサン相に分離する。続いて、ヘキサン相を取り出し、水相にはさらに100mlのn−ヘキサンを加え、同様にヘキサン相を取り出す。このようにアルカリ液から分離されたヘキサン相には水が含まれているため、今度は、50〜100mlの飽和硫酸ナトリウム溶液を加えて振とうし、静置分離する操作を3回繰り返して、水が含まれないヘキサン相を得る。さらに、ヘキサン相に無水硫酸ナトリウムを適量加えて脱水し、ろ過後、ヘキサン相を100℃以下で加熱してヘキサンを蒸発させることにより、アルカリ液中の総油分の含有量を測定する。
【0036】
このようにして測定した総油分(石鹸分+油分)の含有量から油分の含有量を差し引いて石鹸分の含有量を求める。石鹸分の濃度は、この石鹸分の含有量と、使用したアルカリ液の質量(100g)から計算することができる。
【0037】
前述した本発明の方法によるアルカリ液のリサイクルは、例えば次のようにして行うことができる。
【0038】
金属加工品、例えば、冷間引抜工程を終了した管の表面に付着している潤滑剤等を除去するためのアルカリ脱脂は、通常、アルカリ液を収容した脱脂槽(タンク)に前記の管を浸漬することにより行われる。
【0039】
アルカリ液は繰り返し使用されるが、油分等の不純物濃度が増大して使用できなくなったアルカリ液(使用済みアルカリ液)は、別に設けてあるサブタンク内へ移送される。リサイクル装置を設けている場合は、そのリサイクルタンク内へ移送される。
【0040】
これらタンク内で留め置くことにより使用済みアルカリ液を冷却し、液面に浮上した石鹸分を除去する(前記▲1▼の工程)。なお、油分の除去は、上層の油分のみ吸引除去する方法により行うことができる。
【0041】
続いて、前記石鹸分を除去したアルカリ液にアルカリを加え、上層に塩析分離した油分を取り除く(前記▲2▼の工程)。前記のアルカリは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物(固形物)のまま添加してもよいが、あらかじめその水溶液を調製しておき、液状で添加するのが、アルカリ液との混合が容易で好ましい。添加量は、前述したように、添加後のアルカリ液のアルカリ度が6%以上となるようにするのがよい。
【0042】
このようにして油分が除去され、再生されたアルカリ液は、脱脂槽(タンク)へ戻され、冷間引抜工程を終了した管の脱脂に供される。
【0043】
以上述べた本発明の方法によれば、金属表面の洗浄等に使用したアルカリ液、特に金属の圧延、抽伸等の塑性加工時に用いる潤滑剤の脱脂、洗浄に繰り返し使用して油分等の不純物濃度が増大した使用済みのアルカリ液中の油分等を効率よく除去し、リサイクルすることができる。アルカリ液の寿命が延長しするので、薬品コストを最小限に抑え、また、廃液量が減少するのでその処理コストを低減することもできる。
【0044】
【実施例】
SUS316のステンレス鋼の素管(直径40mm、肉厚4mm)に、「蓚酸塩水溶液への浸漬処理(蓚酸下地)」+「ナトリウム石鹸液浸漬」の潤滑処理を施した後、冷間引抜加工を行い、加工後の鋼管をアルカリ液(5%水酸化ナトリウム溶液)で脱脂した。
【0045】
脱脂、洗浄に繰り返し使用した後のアルカリ液(使用済みアルカリ液)の一部を脱脂槽から取り出し、保持温度を変化させて石鹸分を固形化、除去した後のアルカリ液中の石鹸分の濃度および油分の濃度を測定した。なお、油分の濃度および石鹸分の濃度の測定は、前述した方法により行った。
【0046】
表1に測定結果を示す。前記脱脂槽から取り出したままの使用済みアルカリ液は、表1の測定結果の最上欄に示すように、温度が85℃、油分の濃度が0.6%、石鹸分の濃度が1.35%であった。
【0047】
【表1】
【0048】
表1の結果から明らかなように、使用済みアルカリ液の保持温度を低下させるに伴い、アルカリ液中の石鹸分の濃度は低下した。一方、油分の濃度は変化せず、0.6%のままであった。
【0049】
次に、アルカリ液の温度を85℃に戻し、表1に示した濃度の石鹸分および油分を含むこととなったそれぞれのアルカリ液に、液状のアルカリを添加してアルカリ液中の油分を塩析分離し、油分除去率を求めた。
【0050】
図1にその結果を示す。図1において、破線はアルカリ液のアルカリ度を4%から5%に高めた場合であり、実線は同じくアルカリ度を4%から6%に高めた場合である。なお、アルカリ度を5%または6%にしたのは、いずれもアルカリ液の温度を85℃に戻してからである。
【0051】
図1の結果から明らかなように、前記脱脂槽から取り出したままの使用済みアルカリ液の場合(図1の横軸<石鹸分の濃度>が1.35%の場合)は、アルカリ度を6%にすれば、油分除去率が75%程度の高い値になったが、アルカリ度を5%にした程度では、油分除去率は10%程度で、油分除去はほとんどできなかった。
【0052】
一方、表1に示したように、使用済みアルカリ液の保持温度を70℃として、石鹸分の濃度を1.17%に低下させた場合(図1の横軸<石鹸分の濃度>が1.17%の場合)は、アルカリ度を5%にしただけでも、油分除去率を60%近くまで高めることができ、アルカリ度を6%にすれば、油分除去率は90%の高い値に達した。
【0053】
特に、使用済みアルカリ液の保持温度を30℃として、石鹸分の濃度を0.77%まで低下させた場合、アルカリ度を6%にすれば、油分除去率は100%で、使用済みアルカリ液中の油分を完全に除去することができた。
【0054】
【発明の効果】
本発明のアルカリ液のリサイクル法によれば、金属表面の洗浄等に使用したアルカリ液、特に金属の圧延、抽伸等の塑性加工時に用いる潤滑剤の脱脂、洗浄に繰り返し使用して油分等の不純物の濃度が増大した使用済みのアルカリ液中の油分等を効率よく除去し、リサイクルすることができる。これにより、アルカリ液の寿命が延長するので、薬品コストを最小限に抑え、また、廃液量が減少するのでその処理コストを低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の結果を示す図で、アルカリ液中の石鹸分の濃度と油分除去率の関係をアルカリ液のアルカリ度をパラメータとして示した図である。
Claims (2)
- 金属を加工する際に使用した潤滑剤を除去し、金属加工品を洗浄するためのアルカリ液のリサイクル法であって、下記の▲1▼および▲2▼の工程を有することを特徴とするアルカリ液のリサイクル法。
▲1▼使用済みアルカリ液に含まれる石鹸分を固形化し、除去する工程
▲2▼前記石鹸分を除去したアルカリ液にアルカリを加え、油分を分離する工程 - 前記▲1▼の工程で、使用済みアルカリ液の温度を30℃以下にし、前記▲2▼の工程で石鹸分を除去したアルカリ液のアルカリ度を6%以上とすることを特徴とする請求項1に記載のアルカリ液のリサイクル法。
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