JP2004217565A - 殺菌剤及び活性汚泥のバルキングならびにスカム解消方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】活性汚泥中の種々のタイプの糸状性細菌および放線菌に対して殺菌効果を有する殺菌剤を提供し、また該殺菌剤を使用して、活性汚泥中の微生物に悪影響を与えることなくバルキング及び又はスカムを解消する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】イミダゾール化合物、ジアルキルアミン及びエピハロヒドリンを反応させて得られる重合体であって、該重合体の主鎖中にイミダゾリウムカチオン及びアンモニウムカチオンを有する陽イオン性反応生成物を有効成分とする殺菌剤を、活性汚泥に接触させる。
【選択図】 なし
【解決手段】イミダゾール化合物、ジアルキルアミン及びエピハロヒドリンを反応させて得られる重合体であって、該重合体の主鎖中にイミダゾリウムカチオン及びアンモニウムカチオンを有する陽イオン性反応生成物を有効成分とする殺菌剤を、活性汚泥に接触させる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、廃水処理装置の活性汚泥中に発生する糸状性細菌や放線菌の殺滅に好適な殺菌剤及び該殺菌剤を活性汚泥に接触させることを特徴とする活性汚泥のバルキングならびにスカムの解消方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
下水、し尿や有機性物質を含む汚水等の廃水の処理方法として、活性汚泥法が広く採用されている。この方法は廃水と活性汚泥とを接触させて汚水を浄化する曝気工程と、処理水と活性汚泥を分離する工程から成っているが、それらの工程において活性汚泥が膨化するという現象が頻繁に発生する。
この活性汚泥の膨化は、活性汚泥中の糸状性細菌が異常繁殖することによって引き起こされるものであり、所謂バルキングと呼ばれている。そして、このようなバルキングが発生した場合には、活性汚泥がフロック(集団)を形成せず、沈降性が低下するので、沈殿槽での処理水と汚泥の分離が円滑に行えなくなり、活性汚泥が処理水と共に溢流して、放流水の水質汚染が発生するばかりか、更には廃水処理の実施自体が困難になる恐れがあった。
【0003】
また活性汚泥中に放線菌が発生すると、放線菌の代謝産物であるミコール酸によって粘性の気泡が発生し、この気泡が活性汚泥に付着することにより、沈殿槽中の活性汚泥が沈降せず、水面に浮上してスカムと呼ばれる層を形成する。そして、このような状態においてもバルキングの場合と同様に、処理水と活性汚泥の分離が困難になるという問題があった。
【0004】
バルキングを抑制する方法として、曝気槽の前段に小規模の曝気槽を配する方法(特許文献1)が提案されている。また、放線菌によるスカムを解消する方法として、曝気槽にスカム破砕装置を導入する方法が提案されている。しかしながら、これらの方法は新たな処理設備を設置する必要があり、多大な費用を要するものであった。
【0005】
活性汚泥の沈降を促進させる方法としては、ベントナイト、クリストバライト等を添加する方法(特許文献2)、あるいは塩化第二鉄、ポリ塩化アルミニウム及びカチオン系高分子等の凝集剤を添加する方法が知られている。しかしながら、これらの方法も一時的な沈降性の改善効果は期待できるものの、糸状性細菌を殺滅する訳ではないので根本的な解決方法とは言い難いものであった。
【0006】
活性汚泥のバルキング防止剤として、ジアルキルアミンとエピハロヒドリンとの反応によって得られる水溶性陽イオン重合体や(特許文献3)、ジアルキルアミン、アンモニア及びエピハロヒドリンとの反応によって得られる水溶性陽イオン重合体が提案されている(特許文献4)。
また、イミダゾール化合物とエピハロヒドリンを反応させて得られる陽イオン性反応生成物が提案されている(特許文献5)。
しかしながら、これらの殺菌剤は何れも糸状性細菌の種類によってその殺菌効果に差があるため、どのような廃水処理施設にも適応できるものとは言い難いものであった。
【0007】
また、殺菌剤としてパラヒドロキシ安息香酸エステル(特許文献6)、インダゾール誘導体(特許文献7)、ピリジントリフェニルボラン(特許文献8)等も提案されているが、薬剤コストが高価であったり、排水規制により使用できない等の問題点があった。
【0008】
前記以外のバルキングを解消する方法としては、塩素ガス、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素あるいはオゾンを添加する方法も知られている。しかしながら、塩素ガスは毒性が強く取り扱いに注意を要し、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素及びオゾン等は有効成分の安定性に問題があり、且つこれらの殺菌剤は、活性汚泥中の有用な微生物をも殺滅する恐れがあるので使用量の制御が難しく、一般的に普及するには至っていない。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−29980号公報(第2〜3頁)
【0010】
【特許文献2】
特開昭60−175599号公報(第2頁)
【0011】
【特許文献3】
特公平3−56118号公報(第2〜3頁)
【0012】
【特許文献4】
特公平3−56119号公報(第2〜3頁)
【0013】
【特許文献5】
特公平6−88889号公報(第2〜3頁)
【0014】
【特許文献6】
特許3294196号公報(第2〜3頁)
【0015】
【特許文献7】
特開平9−155376号公報(第2〜3頁)
【0016】
【特許文献8】
特開平11−123393号公報(第2頁)
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は斯かる問題点を鑑みてなされたものであって、活性汚泥中の種々のタイプの糸状性細菌及び放線菌に対して殺菌効果を有する殺菌剤を提供し、また該殺菌剤を使用して、活性汚泥中の有用な微生物に悪影響を与えることなく、活性汚泥のバルキング及びスカムを解消する方法を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前記の課題を解決すべく鋭意試験研究を行った結果、イミダゾール化合物、ジアルキルアミン及びエピハロヒドリンを反応させて得られる重合体であって、該重合体の主鎖中にイミダゾリウムカチオン及びアンモニウムカチオンを有する陽イオン性反応生成物を有効成分とする殺菌剤を、活性汚泥に接触させることにより、所期の目的を達成することを見い出し本発明を完遂するに至ったものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の殺菌剤は、イミダゾール化合物及びジアルキルアミンと適量の水を還流装置を備えた反応容器中に入れ、反応液を60℃〜環流温度の範囲に温調して攪拌しながら、エピハロヒドリンをこの反応容器内に滴下して1〜2時間反応させることにより調製することができる。
この場合、イミダゾール化合物1モルに対し、ジアルキルアミンの使用量が0.01〜0.5モル、またエピハロヒドリンの使用量は、1.01〜1.5モルの範囲が好適である。なお使用する水の量は、原料であるイミダゾール化合物の種類に応じて異なるが、通常イミダゾール化合物の2〜5倍量(重量比)が好ましい。
なお、本発明の殺菌剤に含有する有効成分は、分析データより化1の一般式で示されるイミダゾリウムカチオン及びアンモニウムカチオンを有する陽イオン性反応生成物であると推定される。
【0020】
【化1】
(但し、R1は水素原子、炭素数1〜17のアルキル基及びフェニル基、R2及びR3は水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、カルボキシル基、ジチオカルボキシル基及びアルデヒド基、R4及びR5はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基、Xはハロゲン原子を表す。m及びnは正の整数値であって、m:n=2〜100:1。lは重合度を表す。)
【0021】
イミダゾール化合物、ジアルキルアミン及びエピハロヒドリンとの反応においては、エピハロヒドリンを滴下するに従って、スラリー状の反応液が徐々に透明となり、また粘度が高くなる。所定量のエピハロヒドリンを滴下した後も、約1時間に渡って粘度上昇が継続する。従って反応時間は、エピハロヒドリンの滴下終了後約2時間とすれば十分である。
【0022】
本発明の殺菌剤を調製する際に使用される代表的なイミダゾール化合物としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール−5−ジチオカルボン酸、2−メチルイミダゾール−5−ジチオカルボン酸、2,4−ジメチルイミダゾール−5−カルボン酸、2−メチルイミダゾール−5−カルボン酸、2,4−ジメチルイミダゾール−5−アルデヒド、2−メチルイミダゾール−5−アルデヒド、4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられ、これらから選ばれる一種あるいは二種以上を併用することができる。
【0023】
また、本発明に使用される代表的なジアルキルアミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、エチルメチルアミン、メチルプロピルアミン、エチルプロピルアミン等が挙げられ、これらから選ばれる一種あるいは二種以上を併用してもよい。
【0024】
またエピハロヒドリンとしては、ハロゲン原子がフッ素、塩素、臭素あるいはヨウ素である化合物が挙げられるが、薬剤コストの点において、エピクロロヒドリンが好適である。
【0025】
本発明の殺菌剤を活性汚泥を含有する廃水に添加し、次いで濾過することにより活性汚泥と濾液に分離して該濾液を定量分析したところ、イミダゾール環は検出されなかった。即ち、本発明の殺菌剤は活性汚泥に吸着されているものと思われ、該殺菌剤を活性汚泥と接触させた場合には、放流水と共に系外に放出されることがなく、活性汚泥を余剰汚泥として系外に抜き取る場合以外には、殺菌剤が一定量の濃度で系内で循環されているので、殺菌剤の効果を長期間に渡って持続させることができる。
【0026】
活性汚泥のバルキングを解消するためには、本発明の殺菌剤をバルキングが発生している廃水に添加すればよく、より有効に作用させる為には、活性汚泥の濃度が高くなっている返送汚泥ラインに添加するのが好ましい。その際の殺菌剤の添加量は、糸状性細菌の繁殖状況により異なるが、通常は活性汚泥が滞留している曝気槽と沈殿槽を併せた容量に対して、50〜400mg/Lの割合が好適である。
【0027】
活性汚泥に繁殖した糸状性細菌に対する殺菌効果は、本発明の殺菌剤を添加した後30分〜1時間で表れて、鞘の中に規則正しく収まっている糸状性細菌の細胞が破壊される様子を観察することができ、更に時間が経過すれば鞘が各所で切断され細かな断片として遊離するのが観察できる。糸状性細菌が殺滅されバルキングが解消されるにつれて、活性汚泥の沈降性を示す汚泥指標値(SludgeVolume Index、以下SVI値という)が下がり、活性汚泥は沈降性の良い正常な状態となる。
【0028】
活性汚泥のスカムを解消するためには、本発明の殺菌剤をスカムが発生している廃水に添加すればよく、より有効に作用させるには活性汚泥の濃度が高くなっている返送汚泥ラインに添加するのが好ましい。その際の殺菌剤の添加量は、放線菌の繁殖状況により異なるが、通常は活性汚泥が滞留している曝気槽と沈殿槽を併せた容量に対して、100〜400mg/Lの割合が好適である。
【0029】
活性汚泥に繁殖した放線菌に対する殺菌効果は、本発明の殺菌剤を添加した後30分〜1時間で表れて、更に時間が経過すれば鞘が各所で切断され細かな断片として遊離するのが観察できる。放線菌が殺滅されるにつれて、浮上しているスカムも殺菌剤を添加して約1日後から減少するのが観察され、1週間経過するとスカムが大幅に減少する。そして、活性汚泥の沈降性を示すSVI値が下がり、活性汚泥は沈降性の良い正常な状態となる。
【0030】
【作用】
糸状性細菌は、その核となる鞘内細胞が鞘皮によって覆われており、一般の微生物に比べて外的な影響を受けにくいものであり、また鞘内細胞は鞘皮が破壊され外部に遊離した状態でも活発に活動し糸状体の再形成を行うので、糸状性細菌を駆逐するには核となる鞘内細胞を死滅させる必要がある。
また本発明の殺菌剤の殺菌効果は、該殺菌剤の有効成分である陽イオン性反応生成物の重合体主鎖中に存在するイミダゾリウムカチオンとアンモニウムカチオンに起因するものと考えられるが、種々のタイプの糸状性細菌や放線菌に対して優れた殺菌効果が得られる理由については明らかでない。
【0031】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例で使用した原料ならびに省略記号は次のとおりである。
【0032】
[原料]
・2−メチルイミダゾール(商品名:2MZ、四国化成工業社製)
・イミダゾール(東京化成社製)
・2−エチル4−メチルイミダゾール(商品名:2E4MZ、四国化成工業社製)
・50%ジメチルアミン水溶液(商品名:ジメチルアミン、三菱レイヨン社製)
・エピクロロヒドリン(商品名:エピクロルヒドリン、ダイソー社製)
・ジメチルアミンとエピクロロヒドリンの反応物(特公平3−56118号公報記載の合成方法に従って調製した)
・塩化セチルピリジニウム(東京化成社製)
【0033】
[省略記号]
BOD(Biochemical
Oxygen Demand):生物化学的酸素要求量
COD(Chemical
Oxygen Demand):化学的酸素要求量
MLSS(Mixed
Liquor Suspended Solids):ばっ気槽内の活性汚泥濃度
SVI(Sludge
Volume Index):活性汚泥1gあたりの容積(ml)
SV30(Sludge Volume):1lの活性汚泥を30分間静置させたときの沈降率(%)
【0034】
〔実施例1〕
<殺菌剤A〜Lの調製>
攪拌装置と還流装置を備えた500mlの反応フラスコに、表1に記載した仕込み量に従って、イミダゾール化合物、50%ジメチルアミン水溶液および水を仕込み、反応容器内の温度を70℃に温調した後、エピクロルヒドリンを20分間かけて滴下した。
滴下開始後まもなく、反応液の温度が還流温度(102〜103℃)まで上昇し、滴下終了後も反応液を加熱して環流温度に維持しながら、攪拌を2時間継続し殺菌剤を調製した。
得られた殺菌剤は、表1に示したとおりであり、何れの殺菌剤も重合物の含有量が50重量%の水溶液であった。なお、これらの殺菌剤について、コロイド滴定法により荷電量の測定を行ったところ、陽イオン性を有するものと認められた。
また、殺菌剤AのIRスペクトル及びNMRスペクトルを測定したところ、表2に示したとおりであり、重合体中にイミダゾリウムカチオンとアンモニウムカチオンの存在が認められた。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
〔実施例2〕
バルキングが発生している某廃水処理場の活性汚泥100mlを300mlの三角フラスコに入れ、実施例1で調製した殺菌剤A〜Lをそれぞれ100mg/Lの濃度になるように添加し、振盪機にて12時間攪拌した。
攪拌終了後に活性汚泥中の糸状性細菌を観察すると、タイプ021N、タイプ0041、タイプ1854、タイプ1863等の殆ど全ての糸状性細菌について、それらの鞘中の細胞が収縮し折れ曲がったり、切断している様子が見られた。
これらの試験結果は表3に示したとおりであり、本発明の殺菌剤は糸状性細菌に対して、優れた殺菌効果を有しているものと認められる。
【0038】
〔比較例1〜3〕
殺菌剤として、ジメチルアミンとエピクロロヒドリンの反応物および塩化セチルピリジニウムを用いた場合と、殺菌剤を使用しない場合について、実施例2と同様にして糸状性細菌に対する殺菌効果を評価した。
これらの試験結果は、表3に示したとおりであり、ジメチルアミンとエピクロロヒドリンの反応物は、糸状性細菌に対して十分な殺菌効果を発揮せず、また塩化セチルピリジニウムについては、殺菌効果が認められなかった。
【0039】
【表3】
【0040】
〔実施例3〕
スカムが発生している某乳製品製造工場の活性汚泥(MLSS値2400mg/L、SVI値380)100mlを300mlの三角フラスコに入れ、実施例1で調製した殺菌剤A〜Lをそれぞれ400mg/Lの濃度になるように添加し、振盪機にて12時間攪拌した。
攪拌終了後に、活性汚泥中の放線菌を観察すると、鞘中の細胞が収縮したり切断している様子が見られた。
これらの試験結果は表4に示したとおりであり、本発明の殺菌剤は放線菌に対して、優れた殺菌効果を有しているものと認められる。
【0041】
〔比較例4〜5〕
殺菌剤として、塩化セチルピリジニウムを用いた場合と、殺菌剤を使用しない場合について、実施例3と同様にして放線菌に対する殺菌効果を評価した。
これらの試験結果は表4に示したとおりであり、塩化セチルピリジニウムは放線菌に対する殺菌効果が認められなかった。
【0042】
【表4】
【0043】
〔実施例4〕
曝気槽容積10L、沈澱槽容積2Lの好気性生物処理装置にバルキングが発生している某下水処理場の活性汚泥を入れ、同処理場の流入原水(BOD:140mg/L)を用いて、容積負荷0.3kgBOD/m3・日、汚泥返送率60%の連続処理系を設定し、10日間連続運転を行った。10日後の活性汚泥の状態は、MLSS値4000mg/L、SVI値245であり、タイプ021Nの糸状性細菌が優占していた。
実施例1において調製した1.2gの殺菌剤Aを水で5倍に希釈し、この生物処理装置の曝気槽に添加した。添加終了から24時間後に活性汚泥中の糸状性細菌を観察すると、鞘中の細胞が収縮し一部の細胞は鞘から脱落している様子が見られ、糸状性細菌に対する殺菌効果が確認できた。この時のMLSS値は4000mg/L、SVI値は170であった。
また、3日後の活性汚泥の様子を観察すると、糸状性細菌は活性汚泥フロックから遊離し、糸状性細菌の鞘が各所で切断されていた。この時のMLSS値は4300mg/Lであり殺菌剤添加前と大差なく、またSVI値は120まで低下しており、バルキングが解消され沈降性の良い活性汚泥になっていた。
これらの試験結果から、本発明の殺菌剤は糸状性細菌を殺滅する効果に優れており、活性汚泥中の有用な微生物に悪影響を与えること無く、活性汚泥の沈降性を改善しバルキングを解消することができたものと認められる。
【0044】
〔実施例5〕
曝気槽容積が500m3、沈澱槽容積が120m3である、平均BOD300mg/Lの廃水を容積負荷0.15kgBOD/m3・日で処理をしている某食品工場の廃水処理場の処理装置を使用して現場試験を行った。
この処理装置の活性汚泥は、タイプ021N及びタイプ1854の糸状性細菌によるバルキングが発生しており、MLSS値は4500mg/L、SV30は100%、SVI値は222、放流水CODが27mg/Lであり、活性汚泥の沈降性不良が常時発生していた。
実施例1と同様な反応条件で量産した60kgの殺菌剤Aを、曝気槽に添加した。添加終了1日後に活性汚泥中の糸状性細菌を観察すると、タイプ021Nおよびタイプ1854の何れの糸状性細菌も鞘中の細胞が収縮し、一部の細胞は鞘から脱落して鞘の切断された様子が見られた。
更に5日後に活性汚泥の状態を観察すると、糸状性細菌は殆ど見られず、MLSS値は4600mg/Lとほぼ変化なく、SV30は80%、SVI値は173となり、活性汚泥の沈降性は著しく改善されバルキングも解消した。更に30日後には、MLSS値は4300mg/L、SV30は60%、SVI値は139となり、活性汚泥の良好な沈降性を保持することができた。
殺菌剤を投入して5日後以降の放流水の水質は、COD10mg/L以下を保っており、本発明の殺菌剤による放流水への悪影響は全く認められなかった。
【0045】
〔実施例6〕
曝気槽容積が240m3、沈澱槽容積が40m3である、平均BODが450mg/Lの廃水を容積負荷0.41kgBOD/m3・日で処理をしている某食品加工工場の廃水処理場の処理装置を使用して現場試験を行った。
この処理装置の活性汚泥は、タイプ021N細菌が異常に繁殖しておりバルキングが発生していた。MLSS値は4900mg/L、SV30は100%、SVI値は204、放流水のCODが41mg/Lであり、活性汚泥が沈降性不良のため、汚泥の流失が常時発生していた。
実施例1と同様な反応条件で量産した40kgの殺菌剤Bを曝気槽に添加した。添加終了1日後に活性汚泥中の糸状性細菌を観察すると、鞘中の細胞が収縮し、一部の細胞は鞘から脱落して鞘の切断された様子が見られた。また放流水が若干白濁したので、ポリアクリルアミド系凝集沈降剤(パワーフロックM−127、四国化成工業社製)を投入したところ、白濁を抑制することができた。
更に7日後に活性汚泥の状態を観察すると、糸状性細菌はほとんど観察されず、この時のMLSS値は5700mg/L、SV30は88%、SVI値は154となつており、活性汚泥の沈降性は著しく改善されバルキングも解消した。その後3ケ月間に渡って活性汚泥の良好な沈降性を保持することができた。
【0046】
〔実施例7〕
曝気槽容積が300m3、沈澱槽容積が150m3である、平均BOD640mg/Lの廃水を容積負荷0.30kgBOD/m3・日で処理している某住宅団地の下水処理装置を使用して現場試験を行った。
この廃水処理装置の活性汚泥は、放線菌が優占化しているため処理槽水面には発泡現象とスカムの発生があり、これらの泡やスカムが放流水と共に系外に排出されていたため、放流水の水質が悪化して悪臭もひどかった。この活性汚泥のMLSS値は1400mg/L、SVI値は714、放流水のCODは90mg/Lであった。
実施例1と同様な反応条件で量産した160kgの殺菌剤Aを曝気槽内に投入し、添加後1日経過して放線菌の様子を観察すると、放線菌は鞘から脱落していた。なお、放流水に若干の白濁が見られた。
殺菌剤を添加して1日経過後から曝気槽水面のスカムが減少し、14日後には曝気槽内の水面が見えはじめ、放流水も良好な状態となった。この時のMLSS値は2200mg/L、SVI値は270、放流水のCODは40mg/Lとなり、活性汚泥の沈降性が改善され、曝気槽水面のスカムも減少して、処理水の水質が改善されているものと認められた。
更に30日後には、曝気槽水面のスカムは消滅した。この時のMLSS値は3000mg/L、SVI値は150、放流水のCODは18mg/Lであった。
【0047】
【発明の効果】
本発明の殺菌剤は、廃水処理装置の活性汚泥中の有用な微生物に悪影響を与えることなく、バルキングやスカムの発生原因である種々のタイプの糸状性細菌及び放線菌に対する殺菌効果に優れ、バルキングやスカムを効果的に解消することができる。また、本発明の殺菌剤は活性汚泥によく吸着され、長期に渡って殺菌効果を維持することができるので、その産業上の利用効果は多大である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、廃水処理装置の活性汚泥中に発生する糸状性細菌や放線菌の殺滅に好適な殺菌剤及び該殺菌剤を活性汚泥に接触させることを特徴とする活性汚泥のバルキングならびにスカムの解消方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
下水、し尿や有機性物質を含む汚水等の廃水の処理方法として、活性汚泥法が広く採用されている。この方法は廃水と活性汚泥とを接触させて汚水を浄化する曝気工程と、処理水と活性汚泥を分離する工程から成っているが、それらの工程において活性汚泥が膨化するという現象が頻繁に発生する。
この活性汚泥の膨化は、活性汚泥中の糸状性細菌が異常繁殖することによって引き起こされるものであり、所謂バルキングと呼ばれている。そして、このようなバルキングが発生した場合には、活性汚泥がフロック(集団)を形成せず、沈降性が低下するので、沈殿槽での処理水と汚泥の分離が円滑に行えなくなり、活性汚泥が処理水と共に溢流して、放流水の水質汚染が発生するばかりか、更には廃水処理の実施自体が困難になる恐れがあった。
【0003】
また活性汚泥中に放線菌が発生すると、放線菌の代謝産物であるミコール酸によって粘性の気泡が発生し、この気泡が活性汚泥に付着することにより、沈殿槽中の活性汚泥が沈降せず、水面に浮上してスカムと呼ばれる層を形成する。そして、このような状態においてもバルキングの場合と同様に、処理水と活性汚泥の分離が困難になるという問題があった。
【0004】
バルキングを抑制する方法として、曝気槽の前段に小規模の曝気槽を配する方法(特許文献1)が提案されている。また、放線菌によるスカムを解消する方法として、曝気槽にスカム破砕装置を導入する方法が提案されている。しかしながら、これらの方法は新たな処理設備を設置する必要があり、多大な費用を要するものであった。
【0005】
活性汚泥の沈降を促進させる方法としては、ベントナイト、クリストバライト等を添加する方法(特許文献2)、あるいは塩化第二鉄、ポリ塩化アルミニウム及びカチオン系高分子等の凝集剤を添加する方法が知られている。しかしながら、これらの方法も一時的な沈降性の改善効果は期待できるものの、糸状性細菌を殺滅する訳ではないので根本的な解決方法とは言い難いものであった。
【0006】
活性汚泥のバルキング防止剤として、ジアルキルアミンとエピハロヒドリンとの反応によって得られる水溶性陽イオン重合体や(特許文献3)、ジアルキルアミン、アンモニア及びエピハロヒドリンとの反応によって得られる水溶性陽イオン重合体が提案されている(特許文献4)。
また、イミダゾール化合物とエピハロヒドリンを反応させて得られる陽イオン性反応生成物が提案されている(特許文献5)。
しかしながら、これらの殺菌剤は何れも糸状性細菌の種類によってその殺菌効果に差があるため、どのような廃水処理施設にも適応できるものとは言い難いものであった。
【0007】
また、殺菌剤としてパラヒドロキシ安息香酸エステル(特許文献6)、インダゾール誘導体(特許文献7)、ピリジントリフェニルボラン(特許文献8)等も提案されているが、薬剤コストが高価であったり、排水規制により使用できない等の問題点があった。
【0008】
前記以外のバルキングを解消する方法としては、塩素ガス、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素あるいはオゾンを添加する方法も知られている。しかしながら、塩素ガスは毒性が強く取り扱いに注意を要し、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素及びオゾン等は有効成分の安定性に問題があり、且つこれらの殺菌剤は、活性汚泥中の有用な微生物をも殺滅する恐れがあるので使用量の制御が難しく、一般的に普及するには至っていない。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−29980号公報(第2〜3頁)
【0010】
【特許文献2】
特開昭60−175599号公報(第2頁)
【0011】
【特許文献3】
特公平3−56118号公報(第2〜3頁)
【0012】
【特許文献4】
特公平3−56119号公報(第2〜3頁)
【0013】
【特許文献5】
特公平6−88889号公報(第2〜3頁)
【0014】
【特許文献6】
特許3294196号公報(第2〜3頁)
【0015】
【特許文献7】
特開平9−155376号公報(第2〜3頁)
【0016】
【特許文献8】
特開平11−123393号公報(第2頁)
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は斯かる問題点を鑑みてなされたものであって、活性汚泥中の種々のタイプの糸状性細菌及び放線菌に対して殺菌効果を有する殺菌剤を提供し、また該殺菌剤を使用して、活性汚泥中の有用な微生物に悪影響を与えることなく、活性汚泥のバルキング及びスカムを解消する方法を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前記の課題を解決すべく鋭意試験研究を行った結果、イミダゾール化合物、ジアルキルアミン及びエピハロヒドリンを反応させて得られる重合体であって、該重合体の主鎖中にイミダゾリウムカチオン及びアンモニウムカチオンを有する陽イオン性反応生成物を有効成分とする殺菌剤を、活性汚泥に接触させることにより、所期の目的を達成することを見い出し本発明を完遂するに至ったものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の殺菌剤は、イミダゾール化合物及びジアルキルアミンと適量の水を還流装置を備えた反応容器中に入れ、反応液を60℃〜環流温度の範囲に温調して攪拌しながら、エピハロヒドリンをこの反応容器内に滴下して1〜2時間反応させることにより調製することができる。
この場合、イミダゾール化合物1モルに対し、ジアルキルアミンの使用量が0.01〜0.5モル、またエピハロヒドリンの使用量は、1.01〜1.5モルの範囲が好適である。なお使用する水の量は、原料であるイミダゾール化合物の種類に応じて異なるが、通常イミダゾール化合物の2〜5倍量(重量比)が好ましい。
なお、本発明の殺菌剤に含有する有効成分は、分析データより化1の一般式で示されるイミダゾリウムカチオン及びアンモニウムカチオンを有する陽イオン性反応生成物であると推定される。
【0020】
【化1】
(但し、R1は水素原子、炭素数1〜17のアルキル基及びフェニル基、R2及びR3は水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、カルボキシル基、ジチオカルボキシル基及びアルデヒド基、R4及びR5はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基、Xはハロゲン原子を表す。m及びnは正の整数値であって、m:n=2〜100:1。lは重合度を表す。)
【0021】
イミダゾール化合物、ジアルキルアミン及びエピハロヒドリンとの反応においては、エピハロヒドリンを滴下するに従って、スラリー状の反応液が徐々に透明となり、また粘度が高くなる。所定量のエピハロヒドリンを滴下した後も、約1時間に渡って粘度上昇が継続する。従って反応時間は、エピハロヒドリンの滴下終了後約2時間とすれば十分である。
【0022】
本発明の殺菌剤を調製する際に使用される代表的なイミダゾール化合物としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール−5−ジチオカルボン酸、2−メチルイミダゾール−5−ジチオカルボン酸、2,4−ジメチルイミダゾール−5−カルボン酸、2−メチルイミダゾール−5−カルボン酸、2,4−ジメチルイミダゾール−5−アルデヒド、2−メチルイミダゾール−5−アルデヒド、4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられ、これらから選ばれる一種あるいは二種以上を併用することができる。
【0023】
また、本発明に使用される代表的なジアルキルアミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、エチルメチルアミン、メチルプロピルアミン、エチルプロピルアミン等が挙げられ、これらから選ばれる一種あるいは二種以上を併用してもよい。
【0024】
またエピハロヒドリンとしては、ハロゲン原子がフッ素、塩素、臭素あるいはヨウ素である化合物が挙げられるが、薬剤コストの点において、エピクロロヒドリンが好適である。
【0025】
本発明の殺菌剤を活性汚泥を含有する廃水に添加し、次いで濾過することにより活性汚泥と濾液に分離して該濾液を定量分析したところ、イミダゾール環は検出されなかった。即ち、本発明の殺菌剤は活性汚泥に吸着されているものと思われ、該殺菌剤を活性汚泥と接触させた場合には、放流水と共に系外に放出されることがなく、活性汚泥を余剰汚泥として系外に抜き取る場合以外には、殺菌剤が一定量の濃度で系内で循環されているので、殺菌剤の効果を長期間に渡って持続させることができる。
【0026】
活性汚泥のバルキングを解消するためには、本発明の殺菌剤をバルキングが発生している廃水に添加すればよく、より有効に作用させる為には、活性汚泥の濃度が高くなっている返送汚泥ラインに添加するのが好ましい。その際の殺菌剤の添加量は、糸状性細菌の繁殖状況により異なるが、通常は活性汚泥が滞留している曝気槽と沈殿槽を併せた容量に対して、50〜400mg/Lの割合が好適である。
【0027】
活性汚泥に繁殖した糸状性細菌に対する殺菌効果は、本発明の殺菌剤を添加した後30分〜1時間で表れて、鞘の中に規則正しく収まっている糸状性細菌の細胞が破壊される様子を観察することができ、更に時間が経過すれば鞘が各所で切断され細かな断片として遊離するのが観察できる。糸状性細菌が殺滅されバルキングが解消されるにつれて、活性汚泥の沈降性を示す汚泥指標値(SludgeVolume Index、以下SVI値という)が下がり、活性汚泥は沈降性の良い正常な状態となる。
【0028】
活性汚泥のスカムを解消するためには、本発明の殺菌剤をスカムが発生している廃水に添加すればよく、より有効に作用させるには活性汚泥の濃度が高くなっている返送汚泥ラインに添加するのが好ましい。その際の殺菌剤の添加量は、放線菌の繁殖状況により異なるが、通常は活性汚泥が滞留している曝気槽と沈殿槽を併せた容量に対して、100〜400mg/Lの割合が好適である。
【0029】
活性汚泥に繁殖した放線菌に対する殺菌効果は、本発明の殺菌剤を添加した後30分〜1時間で表れて、更に時間が経過すれば鞘が各所で切断され細かな断片として遊離するのが観察できる。放線菌が殺滅されるにつれて、浮上しているスカムも殺菌剤を添加して約1日後から減少するのが観察され、1週間経過するとスカムが大幅に減少する。そして、活性汚泥の沈降性を示すSVI値が下がり、活性汚泥は沈降性の良い正常な状態となる。
【0030】
【作用】
糸状性細菌は、その核となる鞘内細胞が鞘皮によって覆われており、一般の微生物に比べて外的な影響を受けにくいものであり、また鞘内細胞は鞘皮が破壊され外部に遊離した状態でも活発に活動し糸状体の再形成を行うので、糸状性細菌を駆逐するには核となる鞘内細胞を死滅させる必要がある。
また本発明の殺菌剤の殺菌効果は、該殺菌剤の有効成分である陽イオン性反応生成物の重合体主鎖中に存在するイミダゾリウムカチオンとアンモニウムカチオンに起因するものと考えられるが、種々のタイプの糸状性細菌や放線菌に対して優れた殺菌効果が得られる理由については明らかでない。
【0031】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例で使用した原料ならびに省略記号は次のとおりである。
【0032】
[原料]
・2−メチルイミダゾール(商品名:2MZ、四国化成工業社製)
・イミダゾール(東京化成社製)
・2−エチル4−メチルイミダゾール(商品名:2E4MZ、四国化成工業社製)
・50%ジメチルアミン水溶液(商品名:ジメチルアミン、三菱レイヨン社製)
・エピクロロヒドリン(商品名:エピクロルヒドリン、ダイソー社製)
・ジメチルアミンとエピクロロヒドリンの反応物(特公平3−56118号公報記載の合成方法に従って調製した)
・塩化セチルピリジニウム(東京化成社製)
【0033】
[省略記号]
BOD(Biochemical
Oxygen Demand):生物化学的酸素要求量
COD(Chemical
Oxygen Demand):化学的酸素要求量
MLSS(Mixed
Liquor Suspended Solids):ばっ気槽内の活性汚泥濃度
SVI(Sludge
Volume Index):活性汚泥1gあたりの容積(ml)
SV30(Sludge Volume):1lの活性汚泥を30分間静置させたときの沈降率(%)
【0034】
〔実施例1〕
<殺菌剤A〜Lの調製>
攪拌装置と還流装置を備えた500mlの反応フラスコに、表1に記載した仕込み量に従って、イミダゾール化合物、50%ジメチルアミン水溶液および水を仕込み、反応容器内の温度を70℃に温調した後、エピクロルヒドリンを20分間かけて滴下した。
滴下開始後まもなく、反応液の温度が還流温度(102〜103℃)まで上昇し、滴下終了後も反応液を加熱して環流温度に維持しながら、攪拌を2時間継続し殺菌剤を調製した。
得られた殺菌剤は、表1に示したとおりであり、何れの殺菌剤も重合物の含有量が50重量%の水溶液であった。なお、これらの殺菌剤について、コロイド滴定法により荷電量の測定を行ったところ、陽イオン性を有するものと認められた。
また、殺菌剤AのIRスペクトル及びNMRスペクトルを測定したところ、表2に示したとおりであり、重合体中にイミダゾリウムカチオンとアンモニウムカチオンの存在が認められた。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
〔実施例2〕
バルキングが発生している某廃水処理場の活性汚泥100mlを300mlの三角フラスコに入れ、実施例1で調製した殺菌剤A〜Lをそれぞれ100mg/Lの濃度になるように添加し、振盪機にて12時間攪拌した。
攪拌終了後に活性汚泥中の糸状性細菌を観察すると、タイプ021N、タイプ0041、タイプ1854、タイプ1863等の殆ど全ての糸状性細菌について、それらの鞘中の細胞が収縮し折れ曲がったり、切断している様子が見られた。
これらの試験結果は表3に示したとおりであり、本発明の殺菌剤は糸状性細菌に対して、優れた殺菌効果を有しているものと認められる。
【0038】
〔比較例1〜3〕
殺菌剤として、ジメチルアミンとエピクロロヒドリンの反応物および塩化セチルピリジニウムを用いた場合と、殺菌剤を使用しない場合について、実施例2と同様にして糸状性細菌に対する殺菌効果を評価した。
これらの試験結果は、表3に示したとおりであり、ジメチルアミンとエピクロロヒドリンの反応物は、糸状性細菌に対して十分な殺菌効果を発揮せず、また塩化セチルピリジニウムについては、殺菌効果が認められなかった。
【0039】
【表3】
【0040】
〔実施例3〕
スカムが発生している某乳製品製造工場の活性汚泥(MLSS値2400mg/L、SVI値380)100mlを300mlの三角フラスコに入れ、実施例1で調製した殺菌剤A〜Lをそれぞれ400mg/Lの濃度になるように添加し、振盪機にて12時間攪拌した。
攪拌終了後に、活性汚泥中の放線菌を観察すると、鞘中の細胞が収縮したり切断している様子が見られた。
これらの試験結果は表4に示したとおりであり、本発明の殺菌剤は放線菌に対して、優れた殺菌効果を有しているものと認められる。
【0041】
〔比較例4〜5〕
殺菌剤として、塩化セチルピリジニウムを用いた場合と、殺菌剤を使用しない場合について、実施例3と同様にして放線菌に対する殺菌効果を評価した。
これらの試験結果は表4に示したとおりであり、塩化セチルピリジニウムは放線菌に対する殺菌効果が認められなかった。
【0042】
【表4】
【0043】
〔実施例4〕
曝気槽容積10L、沈澱槽容積2Lの好気性生物処理装置にバルキングが発生している某下水処理場の活性汚泥を入れ、同処理場の流入原水(BOD:140mg/L)を用いて、容積負荷0.3kgBOD/m3・日、汚泥返送率60%の連続処理系を設定し、10日間連続運転を行った。10日後の活性汚泥の状態は、MLSS値4000mg/L、SVI値245であり、タイプ021Nの糸状性細菌が優占していた。
実施例1において調製した1.2gの殺菌剤Aを水で5倍に希釈し、この生物処理装置の曝気槽に添加した。添加終了から24時間後に活性汚泥中の糸状性細菌を観察すると、鞘中の細胞が収縮し一部の細胞は鞘から脱落している様子が見られ、糸状性細菌に対する殺菌効果が確認できた。この時のMLSS値は4000mg/L、SVI値は170であった。
また、3日後の活性汚泥の様子を観察すると、糸状性細菌は活性汚泥フロックから遊離し、糸状性細菌の鞘が各所で切断されていた。この時のMLSS値は4300mg/Lであり殺菌剤添加前と大差なく、またSVI値は120まで低下しており、バルキングが解消され沈降性の良い活性汚泥になっていた。
これらの試験結果から、本発明の殺菌剤は糸状性細菌を殺滅する効果に優れており、活性汚泥中の有用な微生物に悪影響を与えること無く、活性汚泥の沈降性を改善しバルキングを解消することができたものと認められる。
【0044】
〔実施例5〕
曝気槽容積が500m3、沈澱槽容積が120m3である、平均BOD300mg/Lの廃水を容積負荷0.15kgBOD/m3・日で処理をしている某食品工場の廃水処理場の処理装置を使用して現場試験を行った。
この処理装置の活性汚泥は、タイプ021N及びタイプ1854の糸状性細菌によるバルキングが発生しており、MLSS値は4500mg/L、SV30は100%、SVI値は222、放流水CODが27mg/Lであり、活性汚泥の沈降性不良が常時発生していた。
実施例1と同様な反応条件で量産した60kgの殺菌剤Aを、曝気槽に添加した。添加終了1日後に活性汚泥中の糸状性細菌を観察すると、タイプ021Nおよびタイプ1854の何れの糸状性細菌も鞘中の細胞が収縮し、一部の細胞は鞘から脱落して鞘の切断された様子が見られた。
更に5日後に活性汚泥の状態を観察すると、糸状性細菌は殆ど見られず、MLSS値は4600mg/Lとほぼ変化なく、SV30は80%、SVI値は173となり、活性汚泥の沈降性は著しく改善されバルキングも解消した。更に30日後には、MLSS値は4300mg/L、SV30は60%、SVI値は139となり、活性汚泥の良好な沈降性を保持することができた。
殺菌剤を投入して5日後以降の放流水の水質は、COD10mg/L以下を保っており、本発明の殺菌剤による放流水への悪影響は全く認められなかった。
【0045】
〔実施例6〕
曝気槽容積が240m3、沈澱槽容積が40m3である、平均BODが450mg/Lの廃水を容積負荷0.41kgBOD/m3・日で処理をしている某食品加工工場の廃水処理場の処理装置を使用して現場試験を行った。
この処理装置の活性汚泥は、タイプ021N細菌が異常に繁殖しておりバルキングが発生していた。MLSS値は4900mg/L、SV30は100%、SVI値は204、放流水のCODが41mg/Lであり、活性汚泥が沈降性不良のため、汚泥の流失が常時発生していた。
実施例1と同様な反応条件で量産した40kgの殺菌剤Bを曝気槽に添加した。添加終了1日後に活性汚泥中の糸状性細菌を観察すると、鞘中の細胞が収縮し、一部の細胞は鞘から脱落して鞘の切断された様子が見られた。また放流水が若干白濁したので、ポリアクリルアミド系凝集沈降剤(パワーフロックM−127、四国化成工業社製)を投入したところ、白濁を抑制することができた。
更に7日後に活性汚泥の状態を観察すると、糸状性細菌はほとんど観察されず、この時のMLSS値は5700mg/L、SV30は88%、SVI値は154となつており、活性汚泥の沈降性は著しく改善されバルキングも解消した。その後3ケ月間に渡って活性汚泥の良好な沈降性を保持することができた。
【0046】
〔実施例7〕
曝気槽容積が300m3、沈澱槽容積が150m3である、平均BOD640mg/Lの廃水を容積負荷0.30kgBOD/m3・日で処理している某住宅団地の下水処理装置を使用して現場試験を行った。
この廃水処理装置の活性汚泥は、放線菌が優占化しているため処理槽水面には発泡現象とスカムの発生があり、これらの泡やスカムが放流水と共に系外に排出されていたため、放流水の水質が悪化して悪臭もひどかった。この活性汚泥のMLSS値は1400mg/L、SVI値は714、放流水のCODは90mg/Lであった。
実施例1と同様な反応条件で量産した160kgの殺菌剤Aを曝気槽内に投入し、添加後1日経過して放線菌の様子を観察すると、放線菌は鞘から脱落していた。なお、放流水に若干の白濁が見られた。
殺菌剤を添加して1日経過後から曝気槽水面のスカムが減少し、14日後には曝気槽内の水面が見えはじめ、放流水も良好な状態となった。この時のMLSS値は2200mg/L、SVI値は270、放流水のCODは40mg/Lとなり、活性汚泥の沈降性が改善され、曝気槽水面のスカムも減少して、処理水の水質が改善されているものと認められた。
更に30日後には、曝気槽水面のスカムは消滅した。この時のMLSS値は3000mg/L、SVI値は150、放流水のCODは18mg/Lであった。
【0047】
【発明の効果】
本発明の殺菌剤は、廃水処理装置の活性汚泥中の有用な微生物に悪影響を与えることなく、バルキングやスカムの発生原因である種々のタイプの糸状性細菌及び放線菌に対する殺菌効果に優れ、バルキングやスカムを効果的に解消することができる。また、本発明の殺菌剤は活性汚泥によく吸着され、長期に渡って殺菌効果を維持することができるので、その産業上の利用効果は多大である。
Claims (3)
- イミダゾール化合物、ジアルキルアミン及びエピハロヒドリンを反応させて得られる重合体であって、該重合体の主鎖中にイミダゾリウムカチオン及びアンモニウムカチオンを有する陽イオン性反応生成物を有効成分とする殺菌剤。
- 請求項1記載の殺菌剤を活性汚泥に接触させることを特徴とする活性汚泥のバルキング解消方法。
- 請求項1記載の殺菌剤を活性汚泥に接触させることを特徴とする活性汚泥のスカム解消方法。
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