前述したように従来においては、木粉と熱可塑性樹脂成形材の馴染みを改善することは依然として課題であった。
また、木粉と熱可塑性樹脂成形材を粉状あるいはペレット状のものとして押出機のホッパに直接投入し、あるいは木粉と熱可塑性樹脂成形材とをブレンダー、加圧ニーター、バンバリー等の混練装置をもって練込み、練込まれた生地をホッパによって押出機に案内する際、木粉はすでに粒径80〜300メッシュに別途破砕、微粉末化されたものを使用しており、木粉の摩擦抵抗が与える影響すなわち成形押出し時における焦げつき、成形板の組織に粗密を生じさせ、反り歪み等の変形を生じさせるなどの影響により、大きな粒径の木粉を使用することはできなかった。しかも、木粉を微粉末化するには時間がかかり、一方、木粉を必要以上に微粉末化すると熱可塑性樹脂成形材との馴染みが悪くなるという問題点があった。
従来の木質合成板の成形工程においては、以下の問題点があった。
〔カレンダー成形法の問題点〕
(1)木粉が流動時における摩擦抵抗が大きいことや、樹脂素材との馴染みが悪いことに起因する成形時の問題は、成形ダイを割愛し、開口部54と熱ロール52間を連結するガイド55を設け且つガイド55を流動する押出し成形生地を加熱保温することにより、木粉の流動時における摩擦抵抗を減じている。さらに、熱ロール52,52間による圧延成形とすることにより、押出機によって押出された押出し成形生地が熱ロール52,52間を通過する距離が短くなるため、すなわち押出し成形生地が熱ロール52,52の表面に接触する距離が短くなるので、結果として木粉と熱ロールとの摩擦を最小限に押さえることになり、成形された木質合成板の組織が粗密になることを回避したものである。しかしながら、カレンダー成形法では、前記押出し成形生地に押圧力が加わって成形されるのではなく、単に押出し成形生地が熱ロールの回転に応じて流動し引出されるので木質合成板を高密度に成形するには限界があった。
(2)特公平4−7283号公報に示されたように押出機と熱ロールとをガイドで連結したものでは、単軸スクリュー51ないしは二軸スクリューの押出機に連結するので、ガイドの幅に限界があり幅広の木質合成板を成形できないという問題点があった。
(3)熱ロール52で転圧、圧延され引出された成形板は、補正ロール53によって転圧時における組織密度の粗密を是正され、成形板の反りの発生を防止し、さらに前記成形板の表裏面を適宜間隔をおいて交互に押圧する複数のロールにより成形板の反りや撓みを矯正するので、実際には成形板の反りや歪みを充分に矯正することは不可能であり、しかも成形板に内部残留応力を生じさせるものであった。この内部残留応力は成形後の経年的な収縮ないしは温度変化に伴う膨縮において成形板に反りやねじれ等の歪みを生じさせる原因となった。また、成形板に二次的な加工を施した場合、例えばホットプレス成形法などによりプレス加工を加えた場合は特にその加工品に予想以上の歪みを生じさせる原因となった。
(4)カレンダー成形は、他の成形機と違ってかなり多くの関連設備との組み合せが必要であるので、高速で量産性が高いとはいえ、押出成形による生産設備と比べると、大幅に設備費がかかるという問題点があった。
〔従来の押出成形法の問題点〕
(1)摩擦抵抗が大きい木粉を多量に混入する成形板を成形ダイを介して押出機により直接成形することは、押出時における摩擦抵抗により殆ど不可能とされたものであったが、特公平3−59804号公報に示された押出成形法は、成形ダイが肉厚のチューブ状に素材の押出しをなすものであるので、成形ダイのダイ出口が円形であり、このダイ出口と押出機の吐出口間の流路は比較的短いので、押出時における摩擦抵抗を極力減じ、円滑且つ迅速な樹脂の押出成形を意図して前記成形ダイの流路を形成することができたのであった。しかし、成形ダイより直接、幅広の成形板を成形するTダイ式の成形ダイを用いて木質合成板の押出成形をすることは、木粉の摩擦抵抗が大きいので押出し成形生地を幅広でしかも狭い成形ダイ内へ比較的長い距離を満遍なく均一に流動させることが極めて難しいという問題点があった。
(2)特公平3−59804号公報に示された押出成形法は、拡開生地を成形熱ロール間に介装、押圧した後、補正ロールをもって押出チューブ形状に復する応力に起因する反り出しを除去しなければならないので、上述したカレンダー成形法と同様に、実際には成形板の反りや歪みを充分に矯正することは不可能であり、成形板に内部残留応力を生じさせるものでり、経年的な反りやねじれ等の歪みを生じさせ、またホットプレス成形法などのプレス加工において予想以上の歪みを生じさせる原因となった。
(3)特公平3−59804号公報に示された押出成形法は、押出成形であるとはいえ、上記(2)項で述べたように補正ロールをもって押出チューブ形状に復する応力に起因する反り出しを除去しなければならず、一般の押出成形による生産設備と比べると、大幅に設備費がかかるという問題点があった。
(4)特公平3−59804号公報に示された押出成形法は、押出チューブ形状に成形することと補正ロールをもって板状に展開して成形することから、一般の樹脂フィルム等の成形とは異なり木質合成板の成形であるので、厚肉の板状に成形することは難しいという問題点があった。
(5)なお、Tダイ式の成形ダイを用いて肉厚12mmなどの厚肉の木質合成板の押出成形をすると、成形ダイ内で押出し成形生地の流動状態が悪くなり、成形板の密度が不均一になり、ついには成形板が波打ちあるいは不定形にくずれ、製品とはならないものになるという問題点があった。
(6)Tダイ式の成形ダイを用いて木質合成板の押出成形をしたところ、通常の木質合成板はねずみ色であるが成形ダイ内に設けたヒータの熱で押出し成形生地内の木粉が焼けるためこげ茶色に変色するので、外観上の問題もさることながら木粉が焼けることから耐衝撃性など品質・特性の低下を来すという問題点があった。
本発明は叙上の問題点を解決するために開発されたもので、熱可塑性樹脂成形材が熱的、化学的に安定した木粉粒に固定化された状態を定常的に維持し得るようにして木粉と熱可塑性樹脂成形材との混合、分散状態を定常的に維持すべく、良好なる流動性を与える木質合成粉を製造する装置を提供し、さらに前記木質合成粉を用いて押出成形時、木粉と樹脂との馴染みを良好に保ち、木粉周辺に、気泡、巣等の発生を抑え、木粉間の密度を均一でしかも高密度な薄板から厚板の広範囲に及ぶ肉厚を有する木質合成板を製造する、当該木質合成板の押出成形装置を提供し、特に、10mm以上の肉厚を有する木質合成板並びに当該木質合成板を成形する押出成形装置を提供することを目的とする。また、内部残留応力が少ない幅広の木質合成板を成形する押出成形装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の木質合成粉の製造装置は、セルロース系破砕物と熱可塑性樹脂成形材をともに混合して、摩擦熱によりゲル化混練して前記セルロース系破砕物の個々の単体表面全体に熱可塑性樹脂成形材を付着させる、攪拌衝撃翼を備える流動混合混練手段と、上記ゲル化した混練材料を冷却造粒する内部に攪拌破砕翼を有し、ジャケットに冷却水の入口および出口を備える冷却造粒手段と、上記冷却造粒した造粒木粉を整粒する整粒手段とから成ることを特徴とする(請求項1)。
なお、熱可塑性樹脂成形材はPVC(ポリ塩化ビニル)、PET(ポリエステル)、PP(ポリプロピレン)等の樹脂で、廃棄樹脂成形品から回収したプラスチックを全部、あるいはこれらの回収樹脂にバージンのプラスチックペレットを半量づつ混合して用いることもあり、これら熱可塑性樹脂成形材とセルロース系の破砕物の混合割合は、
(1) 熱可塑性樹脂成形材がPPの場合、前記セルロース系の破砕物は最大で75wt%まで混入され、セルロース系の破砕物を混入する割合の範囲は20〜75wt%好ましくは30〜70wt%相当であるが、好ましくは30〜65wt%である。
(2) 熱可塑性樹脂成形材がPETの場合、セルロース系の破砕物は最大で75wt%まで混入され、セルロース系の破砕物の混入割合は20〜60wt%が良い。好ましくは35〜50wt%である。
(3) 熱可塑性樹脂成形材がPVCのとき、木粉の混入割合は30〜60wt%、好ましくは45wt%である。
前記構成の木質合成粉の製造装置において、前記流動混合混練手段は、前記セルロース系破砕物を攪拌衝撃翼の回転による摩擦熱により含有水分量0.1〜0.3wt%に乾燥する手段を含むものとすることができる(請求項2)。
また、本発明の木質合成板の押出成形装置は、前述の木質合成粉の製造装置により製造された木質合成粉を加熱、練成し、スクリューをもって押出す押出機と、該押出機の押出ダイ78に連結された成形ダイ10を備え、
前記成形ダイ10に、前記押出ダイ78より吐出された押出し生地79を加熱する導入部11と、この導入部11から押出された押出し生地を所定の肉厚に成形する成形室22を備えた成型部21を設けると共に、前記成形部21の内壁面にポリフルオルエチレン(本明細書において、単に「フッ素樹脂」という。)のシート24を貼設又はフッ素樹脂をコーティングし且つ成形室22を冷却する冷却手段を成形ダイ10に設けたことを特徴とする(請求項3)。
上記木質合成板の押出成形装置に設けられた木質合成粉の製造装置の前記流動混合混練手段として、前述の木質合成粉の製造装置における説明と同様に、前記セルロース系破砕物を攪拌衝撃翼の回転による摩擦熱により含有水分量0.1〜0.3wt%に乾燥する手段を含めるものとすることができる。
さらに、上記構成の木質合成板の押出成形装置において、前記押出機の押出ダイ78より吐出された押出し生地79を加熱する前記成形ダイ10の導入部11に該導入部11の幅方向の全長の70〜95%の全長を有し、且つ該導入部の高さの70%以下の高さの案内板を設けることができ(請求項4)、
この案内板の表面には、好ましくはフッ素樹脂のシートを貼設又はフッ素樹脂をコーティングする(請求項5)。
なお、前記フッ素樹脂にはポリ四フッ化エチレン〔テフロン(登録商標、以下同じ)TFE;デュポン社〕、フッ化エチレン−プロピレンコポリマ(テフロンFEP)、ポリ三フッ化塩化エチレン(テフロンCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(テフロンVdF)等を用いることができる。
なお、前記成形室22の内壁面及び前記案内板の表面のフッ素樹脂によるコーティング方法は、特に、交換が容易であり、加工が容易であるので耐久性に優れているという点で、ガラス織布の表面にフッ素樹脂のフィルムをコーティングしたシート24を貼設することが好ましい。また、前記ガラス織布はガラス繊維の不織布でもよい。
また、前記成形室22の内壁面のフッ素樹脂によるコーティングは、成形板の表裏面を形成する面に相当する成形室22の内壁面に施すことができるが、成形室22の上下左右の内壁面全体にフッ素樹脂の加工を施すことが望ましい。
また、成形室22を冷却する冷却手段は、成形室22の周囲の成形ダイ10内に冷却水を循環する冷却管25を配管することができるが、成形室22内の押出し生地79の徐冷効果を向上するという点で、成形部21の押出し方向に向けて冷却管25の間隔を次第に狭くするように設けるとよい。しかしながら、この構造に限定されるものではない。
また、上記構成の木質合成板の押出成形装置には、前記成形ダイ10より押出された成形板29の押出し力に抗する抑制力を加えるブレーキ手段30を設けることができる(請求項6)。
このブレーキ手段30として、成形板29の表裏面を挟持して圧接する一対を成すピンチローラ31を設け、このピンチローラ31の軸端にブレーキドラム33を設け、このブレーキドラム33の回転を抑制するブレーキベルト35などの摩擦体を前記ブレーキドラム33に圧接した構成とすることができる(請求項7)。
また、前記ブレーキ手段30は、成形板29の表裏面を挟持して圧接する上下一対を成すピンチローラを複数対設け、上部のピンチローラの両軸端に前記ピンチローラを回転自在にエアシリンダのロッド先端を連結し、成形板を介して下部のピンチローラに対して押圧力を調整自在に設けることができる(請求項8)。
さらに、前記ブレーキ手段30は、成形板の表裏面を挟持して圧接する上下一対を成すピンチローラを複数対設け、一のピンチローラの軸端をパウダブレーキの入力軸に連結すると共に、各ピンチローラの軸端に設けた歯車を噛合せしめたものとすることができる(請求項9)。
また、前記ブレーキ手段30は、成形板29の幅方向全長に及ぶ長さのゴムや樹脂などの弾性体でなるブレーキ板を、成形板29の表裏面に圧接することもできる。さらに、必要に応じて前記ブレーキ手段30を複数設けることができる。
なお、前述の成型ダイ10の導入部は、成形ダイ内に成形ダイ幅方向に形成され、縦断面が楕円形に膨出形成され導入孔を有するものとすることができる(請求項10)。
さらに、前記導入部には、成型ダイ幅方向に湾曲し、両端が成形室入口長手方向の両端に及ぶコート・ハンガー型に形成し、且つ、前記導入孔から成形室入口間は、成形室に向かって縦断面が徐々に狭くなる方向に断面三角形を成す導入室を有するものとして構成しても良い(請求項11)。
さらに、前記一の押出機の押出ダイに、二の成形ダイを連通するよう設けることもでき(請求項12)、
前記押出機の押出ダイは、成形ダイの成形部の成形室の高さと同等以下の高さを有する方形の射出口を形成し、この射出口に向けて徐々に狭く断面変化するよう形成することもできる(請求項13)。
作用
上記木質合成粉の製造装置の流動混合混練手段に投入される原料は、木粉の粒径を熱可塑性樹脂成形材とのなじみを良好とし、ゲル化混練及び成形押し出し時における木粉の摩擦抵抗を減じ成形機の損耗、毀損の防止を図るため、平均粒径20メッシュ以下とする顆粒ないし粉末状とし、ゲル化混練及び成形時における木酸ガスを揮散し、水蒸気あるいは気泡発生を減少し、表面の肌荒れを防止する意図からその含有水分量を15wt%以内、好ましくは11wt%以内、理想的には8wt%の範囲内とするものである。
原材料の全体の20〜75wt%好ましくは30〜70wt%相当より好ましくは、35〜65wt%のセルロース系破砕物例えば木粉と残りの熱可塑性樹脂成形材とする配合は、木粉が20%以下となると、流動混合混練手段において、熱可塑性樹脂成形材との混合により、被混練材料たる上記混合物が大きな塊となって固化し、ゲル化しないためであり、10mm以下に整粒するのは、成形押し出し時における焦げつきを防止し、また、木質合成粉の摩擦抵抗を減じ成形機の損耗、毀損の防止を図るためである。
上記流動混合混練手段において、セルロース系破砕物例えば木粉は、攪拌衝撃翼により破砕、且つ、攪拌衝撃翼及び原料自体の摩擦熱により乾燥され、含有水分が0.3%程度まで乾燥され、また熱可塑性樹脂成形材は、攪拌衝撃翼により前記セルロース系破砕物と混練され、原料自体の摩擦熱により約180〜200°Cで混合分散に際しても凝集したりせずに混練されゲル化し、且つ含有水分が約0.3wt%に乾燥され、ついで、冷却造粒手段によりジャケット内の混練材料は、前記原材料中の熱可塑性樹脂成形材の凝固点すなわち融点近傍(融点+10°C)まで冷却されながら乾燥され、攪拌破砕翼により粒径25mm程度以下に造粒されて固化させた造粒木粉と成る。
さらに、前記造粒木粉は、例えば8mmのスクリーンを有するカッターミル等の粉砕機から成る整粒手段により、粒径(短径)10mm以下、好ましくは、3〜5mmの米粒大に整粒されて木質合成粉となる。以上のようにしていわゆる熱可塑性樹脂成形材が熱的、化学的に安定した木粉粒に固定化された状態を定常的に維持し得るようにして木粉と熱可塑性樹脂成形材との混合、分散状態を定常的に維持すべく、良好なる流動性を与える木質合成粉が形成され、且つ冷却による凝縮、縮小作用とも相まって、化学的な反応とか接着によらない木質合成粉が形成される。
そして、この木質合成粉の製造装置により製造された木質合成粉は、押出機で加熱、混練されスクリューで押出ダイ78から押出し生地79となって成形ダイ10の導入部11へ押出される。
まず、押出し生地79は導入部11で加熱保温されて流動性を維持され良好な混練状態を保ちながら、案内板15を設けた場合には、該案内板により導入部11内で、原料によっては、押出し生地79が押し出し方向で、中央部と端部で異なる線膨張をして分子配向を異にすることを防ぎ、線膨張の均質化を図り、分子配向を制御して、成形部21の成形室22内へ均等に拡散され、均一な密度で押出される。成形室22の内壁面は摩擦係数が小さいフッ素樹脂のシート24を貼設又はフッ素樹脂をコーティングされているので、この内壁面を通過する押出し生地79内のセルロース系破砕物は大きな抵抗を受けることなく円滑に流動するので、均一で高密度の混練状態を保ちながら押出される。この成形室22内を押出される過程で押出し生地79が常温ないし60℃から90℃の水または油などの冷却媒体により徐冷・冷却され成形板29が成形される。フッ素樹脂は金属に比べ熱伝導係数が低いので、押出し生地79は徐冷され、冷却による歪みが少なくなり、歪みの少ない均一で高密度の製品としての成形板29である木質合成板が成形される。
さらに、押出機により加えられる成形板29への押出し力に、ブレーキ手段30により抑制力を加え、この成形板29を介して成形室22内の押出し生地79に対して前記押出し力に対する抗力を加える。例えば、成形板29の表裏面を挟持して圧接する一対を成すピンチローラ31の一方の軸端に設けたブレーキドラム33に摩擦体を圧接することにより、このブレーキドラム33の回転を抑制し、成形板29の押出し力により回転するピンチローラ31の回転が抑制され、このピンチローラ31は成形板29にその押出し力に抗する抑制力を加える。
また、成形板の表裏面を挟持して圧接する上下一対を成すピンチローラを複数対設け、上部のピンチローラの両軸端に前記ピンチローラを回転自在にエアシリンダのロッド先端を連結し、成形板を介して下部のピンチローラに対して押圧力を調整自在に設けたブレーキ手段は、成形板に対して6,000kgの荷重を懸けており、また、一のピンチローラの軸端をパウダブレーキの入力軸に連結すると共に、各ピンチローラの軸端に設けた歯車を噛合せしめ、板厚30mmの均一高密度な木質合成板を成形できる。
前記抑制力は成形板29を介して成形部21及び導入部11内の押出し生地79に、押出機により加えられる成形室22内の押出し生地79の押出し力に対して抗力を与えることにより、前述したような成形板29に抑制力を加えない場合と比べると、成形室22内の押出し生地79の全体がより一層密度が均一で高密度になる。したがって、多量のセルロース系破砕物を含んだより一層均一高密度な木質合成板が成形される。
また、上記理由で、押出ダイ78を通常のノズル状のダイと異なり、成形板29の厚み例えば12mmと同様の高さ12mmで、幅50〜150mmの方形に射出口を形成し、多量の溶融木質合成粉を吐出し、圧密を促進可能であり、且つ、ダイの目詰まりを防ぐことができる。
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
(1)本発明の木質合成粉の製造装置は、セルロース系破砕物と熱可塑性樹脂成形材をともに混合して、攪拌衝撃翼を備える流動混合混練手段において原材料による摩擦熱により熱可塑性樹脂成形材が個々のセルロース系破砕物の個々の単体表面全体に付着して比較的小さな状態でゲル化混練でき、内部に攪拌破砕翼を有し、ジャケットに冷却水の入口および出口を備える冷却造粒手段において前記ゲル化した混練材料を効率良く冷却し造粒し、整粒手段において前記冷却造粒した造粒木粉を整粒することにより、いわゆる熱可塑性樹脂成形材が熱的、化学的に安定した木粉粒に固定化された状態を定常的に維持し得るようにして木粉と熱可塑性樹脂成形材との混合、分散状態を定常的に維持し、良好なる流動性を与える木質合成粉を得ることができた。且つ冷却による凝縮、縮小作用とも相まって、化学的な反応とか接着によらない木質合成粉が形成され、この木質合成粉を用いて押出機では良好な混練状態の押出し生地が形成され、成形押し出し時におけるセルロース系破砕物の摩擦抵抗を減じ、成形機の損耗、毀損の防止を図ることができ、且つ均一で高密度の木質合成板を成形することに寄与するものであった。しかも、従来においては粒径80〜300メッシュに破砕、微粉末化されたセルロース系破砕物を使用していたが、本発明においてはセルロース系破砕物の平均粒径を20メッシュ以下という広範囲な粒径のセルロース系破砕物を使用できる木質合成粉を提供できた。
さらに、本発明の製造装置により得られた木質合成粉に含まれるセルロース系破砕物は、乾燥した状態でその個々の単体表面全体に熱可塑性樹脂成形材が付着していることから、含有水分量が低い状態を維持し、成形時における木酸ガスを揮散し、水蒸気あるいは気泡発生を減少し、表面の肌荒れを防止することができた。
また、本発明による木質合成粉は、整粒しているので、成形押し出し時における焦げつきを防止でき、また木質合成粉の摩擦抵抗を減じ成形機の損耗、毀損の防止を図ることができた。
また、本発明の木質合成板の製造装置は、前記木質合成粉の製造装置の構成に加え、木質合成粉を加熱、練成し、スクリューをもって押出す押出機の吐出口に、前記吐出口より吐出された押出し生地を加熱する導入部と、この導入部から押出された押出し生地を所定の肉厚に成形する成形部から成る成形ダイを連結すると共に、前記成形部の内壁面にフッ素樹脂のシートを貼設又はフッ素樹脂をコーティングし且つ成形部を冷却する冷却手段を成形ダイに設けたので、良好な混練状態で成形ダイより押出して直接、幅広で均一な高密度でしかも表面が平滑な品質の良い木質合成板を成形する木質合成板の押出成形装置を提供することができた。
(2)フッ素樹脂は摩擦係数が小さいので、押出し生地のセルロース系破砕物に対する抵抗力を小さくでき、セルロース系破砕物と熱可塑性樹脂成形材との混練状態が良好な状態で流れる。したがって良好な混練状態で成形ダイより押出して直接、幅広で均一な高密度の品質の良い木質合成板を成形することができた。この理由から、厚肉の木質合成板を成形ダイより直接、押出し成形することができた。
また、セルロース系破砕物の流れが良好であるので、従来のようにセルロース系破砕物の流れが遅くなるためにセルロース系破砕物が成形ダイのヒータの熱で焼けるということがない。したがって、成形された木質合成板はこげ茶色に変色することがなく、また、従来のような耐衝撃性など品質特性の低下を防ぐことができた。
(3)フッ素樹脂は摩擦係数が小さいため、セルロース系破砕物と熱可塑性樹脂成形材との混練状態が良好な状態で流動するので、製品としての成形板である木質合成板の表面に肌荒れが生ずることなく、平滑な表面を有する木質合成板を成形できた。
(4)成形ダイより押出された成形板に、成形板の押出し力に抗する抑制力を加えて成形ダイの成形部内の押出し生地の密度を高くしたので、より一層密度が均一で高密度の木質合成板を押出成形することができた。
(5)押出し生地を成形ダイの導入部で加熱して成形ダイの成形部へ押出したので、押出し生地の流動性を維持し、すなわち混練状態を良好に保ちながら押出し生地を成形ダイの成形部へ円滑に押出すことができた。
(6)前記押出機の押出ダイより吐出された押出し生地を加熱する前記成形ダイの導入部に該導入部の幅方向の全長の70〜95%の全長を有し、且つ該導入部の高さの70%以下の高さの案内板を設けたので、押出し生地は前記案内板により導入部内で、成形部の成形室内へ均等に拡散され、原料によっては、押出し生地79が押し出し方向で、中央部と端部で異なる線膨張をして分子配向を異にすることを防ぎ、線膨張の均質化を図り、分子配向を制御して、成形部21の成形室22内へ均等に拡散され、均一な密度で押出され、且つ前記案内板の表面にフッ素樹脂のシートを貼設又はフッ素樹脂をコーティングしたので、この案内板の表面を通過する押出し生地内のセルロース系破砕物は大きな抵抗を受けることなく円滑に流動し、均一で高密度の木質合成板を成形できた。
(7)さらに、前記成形ダイより押出された成形板の押出し力に抗する抑制力を加えるブレーキ手段を設ければ、前記抑制力により成形ダイの成形部内の押出し生地の密度を高くするため、より一層密度が均一で高密度の木質合成板を押出成形する木質合成板の押出成形装置を提供することができた。
(8)ブレーキ手段は、成形板の表裏面を挟持して圧接する一対を成すピンチローラを設け、このピンチローラの軸端にブレーキドラムを設け、このブレーキドラムの回転を抑制する摩擦体を前記ブレーキドラムに常時圧接したので、成形板の幅方向全体に、成形板の押出し力に抗する均一な抑制力を与えることができた。
(9)前記ブレーキ手段は、成形板の表裏面を挟持して圧接する上下一対を成すピンチローラを複数対設け、上部のピンチローラの両軸端に前記ピンチローラを回転自在にエアシリンダのロッド先端を連結し、成形板を介して下部のピンチローラに対して押圧力を調整自在に設けたので、成形板の板厚に応じて成形板に対する押圧力を簡単に調整できた。
(10)前記ブレーキ手段は、成形板の表裏面を挟持して圧接する上下一対を成すピンチローラを複数対設け、一のピンチローラの軸端をパウダブレーキの入力軸に連結すると共に、各ピンチローラの軸端に設けた歯車を噛合せしめたので、複数対のピンチローラに対して同一の回転抑制力を与えることができ、ピンチローラの成形板の一部分に押圧力をかけるのではなく成形板に大きな面に押圧力を与えることができ、成形ダイ内の押出し生地の押出力に抗する均等な抑制力を与えることができ、前記押出し生地を均一で高密度にできた。しかも、前記抑制力を成形板の板厚に応じた生産効率の良い抑制力に容易に微調整できた。
(11)本発明の木質合成板の押出成形装置により、コンクリートバネルや家屋の床材(フロアリングブロック)、室内の壁面の化粧板などの各種建築材料、あるいは家具材料、電気機器のボックスパネルなどの各種機器パーツ、自動車の車内の化粧板など各種車内の内装材料等として広範囲な使用目的に向けた素材を提供できた。
(12)本発明の押出成形装置により高密度の木質合成板を成形できるので、単位重量当りの木粉の量を多量に混入することができるため、安価で高品質の木質合成板を成形できた。
(13)前記押出機の押出ダイは、成形ダイの成形部の成形室の高さと同等以下の高さを有する方形の射出口を形成し、この射出口に向けて徐々に狭く断面変化するよう形成したので、多量の溶融木質合成粉を吐出し、圧密を促進可能であり、且つ、ダイの目詰まりを防ぐことができた。
実施形態について図面を参照して説明する。
1.木質合成粉の製造装置
1−1.〔流動混合混練手段〕
図1において、80は原材料を混合し混練して「混練材料」を形成する流動混合混練手段で、本実施例おいて、便宜上「ミキサー」という。
81はミキサー本体で、上面開口を有する円筒形を成し容量が300リットルのケーシングであり、前記開口はミキサー本体81内に原材料を投入する投入口94で、この投入口94を開閉自在な上蓋82で被蓋する。上蓋82には、ミキサー本体81内で木粉から発生した多量の水蒸気ないしは木酸ガスを排出するガス排出管95を連通している。さらに、ミキサー本体81の底面付近の外周面に1ヶ所の排出口88を設け、この排出口88を被蓋する蓋89をシリンダ91のロッド先端に設け、シリンダ91の作動により前記排出口88を開閉自在に設けている。93は排出ダクトで、前記排出口88に連通している。
さらに、ミキサー本体81の底面の中心には図示せざるモータ37KW(DC)の回転駆動手段により820rpm/maxで高速回転する軸83をミキサー本体81内の上方に向けて軸承し、この軸83に下から上方へ順にスクレイパー84、撹拌衝撃翼85,86,87を装着し、軸83の先端から締付ナット92で締め付けている。なお、前記各撹拌衝撃翼85,86,87の形状は特に限定されないが、本実施例では軸83を中心に対称を成す2枚羽根である。図1のように3個の撹拌衝撃翼を重ねた場合は全部で6枚の羽根で成り、これら6枚の羽根は平面で360度を6等分した等分角(60度)を成すように互いに交叉した状態で重ねている。なお、複数個の撹拌衝撃翼を設けた場合、撹拌衝撃翼の合計の羽根数で360度を等分した角度で互いに交叉して重ねることは原材料を効率良く混練する点で好ましい。
なお、前記スクレイパー84はミキサー本体81の底面を僅かに摺接して回転し、ミキサー本体81内で混練された原材料をミキサー本体81の底面に残留しないよう掻き出し、且つ原材料を循環するものである。
前記上蓋82を開放して投入口94から投入する原材料は、セルロース系の破砕物である木粉、熱可塑性樹脂成形材、尿素、炭酸カルシウム、酸化チタン、顔料等の添加物で成る。
また、前記炭酸カルシウムは、本発明の木質合成板に良好な寸法安定性をもたらし、温度変化に伴う膨張収縮を著しく少なくすることに寄与するもので、押出加工における成形品の変形を防止し、且つそれ自体安価である。
また、前記酸化チタンは、流動性、溶液中における分散性が良好であり、本発明の木質合成板に対して温度変化に伴う膨張収縮を著しく少なくすることに寄与する。
熱可塑性樹脂成形材は、前述廃棄された各種の樹脂成形品をそのままもしくは表面樹脂塗膜を形成した樹脂成形品を複数の各小片に破砕し、前記破砕された個々の各小片に対して、圧縮研削作用を付加して樹脂塗膜を研削、剥離し、前記研削された個々の各小片に対して、微振動に基づいた圧縮衝撃力を付加して圧潰粉砕させ、かつ圧潰粉砕によって剥離された樹脂塗膜を随時に除去し熱可塑性樹脂成形材として素材化した、PVC(ポリ塩化ビニル)、PET(ポリエステル)、PP(ポリプロピレン)、PC(ポリカーボネート)、ナイロン等の樹脂の一種又はこれらの数種の混合したものを用いることができる。
なお、熱可塑性樹脂成形材は、熱可塑性合成樹脂製品の廃材から得られた回収熱可塑性樹脂成形材を再利用したもの、あるいはバージンの熱可塑性樹脂を投入し、あるいはバージンの熱可塑性樹脂と前記回収熱可塑性樹脂成形材をそれぞれ、例えば50%ずつ用いることもできる。
以下、各熱可塑性樹脂成形材におけるゲル化可能な木粉の量の範囲を以下に示す。熱可塑性樹脂成形材がPPの場合、木粉は35〜75wt%、PPの量は25〜65wt%で、好ましくは、木粉は60〜75wt%、PPの量は25〜40wt%であり、熱可塑性樹脂成形材がPETの場合、上記のPPの場合と同じであり、熱可塑性樹脂成形材がPCの場合、木粉は40〜70wt%で、PCの量は30〜60wt%で、好ましくは、木粉は60〜65wt%、PCの量は35〜40wt%であり、木粉が64wt%で、PCが36wt%のときが、特に好ましい。熱可塑性樹脂成形材がPVCの場合、木粉は30〜65wt%で、PVCの量は35〜70wt%で、好ましくは、木粉は45〜55wt%、PVCの量は45〜55wt%であり、熱可塑性樹脂成形材がナイロンの場合、上記のPCの場合と同じである。
1−2.〔冷却造粒手段〕
図2において、100は前述した混練材料を混合し撹拌して「造粒木粉」を形成する冷却造粒手段であり、本実施例では「クーリングミキサー」という。
101はミキサー本体で、逆円錐形状を成すケーシングであり上面を被蓋し、一方、下端に排出口107を設け、この排出口107をバルブ106で開閉自在に設けている。ミキサー本体101の外周壁内にジャケット102を形成し、このジャケット102内に給水管108から排水管109へ常時、冷却水を供給し、クーリングミキサー100内の原材料の温度を熱可塑性樹脂成形材の融点近傍まで冷却するよう保持される。なお、ミキサー本体101の上壁面にはクーリングミキサー100内で発生した水蒸気ないしは木酸ガスを排出する図示せざる排出ダクトを連通している。
前記ミキサー本体101の上壁内の略中心にはアーム103が略水平方向に回動可能に軸支され、このアーム103は減速装置112を介してモータ111により約3rpmの速度で回転駆動される。さらに、前記アーム103の回転軸は中空軸であり、この中空軸内に独立して回転する他の回転軸を設け、この回転軸にモータ105の出力軸を連結している。一方、前記アーム103の先端には撹拌破砕翼104を軸承し、この撹拌破砕翼104は本実施例ではスクリュー型を成すものであり、該撹拌破砕翼104の回転軸線方向をミキサー本体101の内周壁面に沿って略平行に下方へミキサー本体101の下端付近まで延長している。撹拌破砕翼104はアーム103内に設けた歯車等による回転伝達手段を介して前記モータ105の出力軸に連結する回転軸に連結され90rpmの速度で回転駆動される。
なお、ミキサー本体101の上壁には投入口113を設け、この投入口113に前述したミキサー80の排出ダクト93を連通する。
前述したミキサー80で形成された混練材料は排出ダクト93を経てクーリングミキサー100の投入口113からミキサー本体101内へ投入される。撹拌破砕翼104はモータ105により90rpmの速度で回転し、しかも、アーム103が減速装置112を介して減速されたモータ111の回転力により3rpmの速度で水平方向に回転するので、前記撹拌破砕翼104はミキサー本体101の内周壁面に沿って円錐を描くように回転し、アーム103内の混練材料を撹拌する。混練材料はジャケット102内の冷却水により冷却されたミキサー本体101の内周壁面で冷却され、直径約25mm以下に造粒された「造粒木粉」が形成され、この造粒木粉はバルブ106を開放して排出口107より排出される。
なお、クーリングミキサー100で冷却される混練材料は、原材料中の熱可塑性樹脂成形材の凝固点すなわち融点以下に冷却されることが望ましいが、木粉を混合しているので熱可塑性樹脂成形材の融点以下にまで下げる必要はなく、実際には造粒木粉が排出口107より排出可能な温度まで冷却されれば良く、混練材料内の熱可塑性樹脂成形材の融点より約10℃高い温度まで冷却すれば良い。
ちなみに、熱可塑性樹脂成形材がPPのとき、PPの融点は165℃であり、本実施例では前述したミキサー80内で180℃にゲル化した混練材料をクーリングミキサー100へ投入してから10〜15分程度で、90〜100℃まで冷却され、このクーリングミキサーによる冷却造粒は効率の良いものである。このときのジャケット102内の冷却水については、給水管108から供給する冷却水の温度は30℃であったが、排水管109より排水される冷却水の温度は40℃であった。
なお、冷却造粒手段は上記のクーリングミキサーのような装置に限定されるものではなく、ミキサー本体内の混練材料を撹拌する撹拌羽根を設け且つミキサー本体の外周壁面に前述したようなジャケットを設け、このジャケット内を流れる冷却水でミキサー本体内の混練材料を冷却するものであれば良い。
なお、ミキサー80で形成された混練材料は前記ジャケット102を備えてない一般的なミキサーを用いて撹拌のみを行なって冷却することも可能であるが、この場合は混練材料内の熱可塑性樹脂成形材の融点より約10℃程度高い温度まで冷却するとしても約30分かかるので、本実施例のようなクーリングミキサーの冷却造粒手段で造粒木粉を形成することが望ましい。
1−3.〔整粒手段〕
前記冷却造粒手段で形成された造粒木粉は、さらに整粒手段を使用して粒径10mm以下に整粒し、「木質合成粉」を形成する。
図3において、120は前述した造粒木粉を整粒する整粒手段であり、本実施例では「カッタミル」を用いている。
121はカッタミル本体で、上面開口を有する円筒形を成すケーシングであり、前記開口を開閉自在な蓋122で被蓋する。前記蓋122はカッタミル本体121内に造粒木粉を投入する投入口123を備えている。
また、前記カッタミル本体121内にはカッタミル本体121の底面に軸承されて図示せざる回転駆動手段で水平方向に回転するカッタ支持体124を設け、このカッタ支持体124の外周に上下方向に長い回転刃125を3枚を設け、これらの3枚の回転刃125はカッタ支持体124の回転方向で120度の等角度を成すように配設し、3枚の回転刃125の刃先は同一の回転軌跡上に位置している。さらに、前記3枚の回転刃125の刃先の回転軌跡に対して僅かな隙間を介して二の固定刃126を回転刃125の刃先の回転軌跡の略対称位置にカッタミル本体121に固定し、二の固定刃126とカッタ支持体124と回転刃125とでカッタミル本体121内を二分し、投入室127と整粒室128を形成する。前記蓋122の投入口123は前記投入室127に連通する。なお、二の固定刃126と回転刃125との隙間は造粒木粉を所望の大きさに整粒できるよう自在に調整できる。また、整粒室128は前記二の固定刃126間を回転刃125の回転軌跡の周囲を囲むようにスクリーン129で仕切っている。なお、スクリーン129は、本実施例では8mm程度の大きさの整粒された「木質合成粉」である整粒物が通過できるメッシュで形成している。また、整粒室128のカッタミル本体121の下端にはカッタミル120で前記整粒物を排出する排出口131を設けている。
以上のカッタミル120において、蓋122の投入口123から前述したクーリングミキサー100で形成した造粒木粉を投入し、図示せざる回転駆動手段でカッタ支持体124を回転すると、造粒木粉はカッタ支持体124の回転刃125と固定刃126間で約0.1〜8mmに粉砕され「木質合成粉」が形成され、いわゆる熱可塑性樹脂成形材が熱的、化学的に安定した木粉粒に固定化された状態を定常的に維持し得るようにして木粉と熱可塑性樹脂成形材との混合、分散状態を定常的に維持すべく、良好なる流動性を与える木質合成粉が形成され、且つ冷却による凝縮、縮小作用とも相まって、化学的な反応とか接着によらない木質合成粉が形成され、整粒室128のスクリーン129のメッシュを通過して排出口131より排出され次工程の押出機70へ送られる。
2.木質合成板の製造装置
2−1.〔押出機70〕
図4において、70は単軸押出機であるが、一般に押出機は通常スクリュー形であり、単軸押出機と多軸押出機があり、この変形又はこれらが組み合わさった構造を持つものがあり、本発明にはいずれの押出機をも使用することができる。
71はスクリューで、単軸型であり、このスクリュー71はギヤ減速機72を介して図示せざるモータによって駆動され、バレル74内で回転する。この回転するスクリュー71でホッパ73から前述の木質合成粉の状態で投入されたセルロース系破砕物と熱可塑性樹脂成形材が混練されながらスクリュー71の前方へ押出される。バレル74の外面にはバンドヒータ75を設けており、このバンドヒータ75によりバレル74内のセルロース系破砕物と樹脂が加熱されスクリュー71の溝に沿って前方へ輸送されながら漸次溶融しセルロース系破砕物と樹脂が練成される。そしてスクリーン76及びアダプタ77を経てアダプタ77の押出ダイ78から成形ダイ10へ押出し生地79として押出される。
ホッパ73内に投入する原材料はセルロース系破砕物と熱可塑性樹脂成形材を含む前述の木質合成粉であり、特に木粉の粒径を熱可塑性樹脂成形材とのなじみを良好とし、成形押し出し時における木粉の摩擦抵抗を減じ成形機の損耗、毀損の防止を図ることより、50〜300メッシュ、好ましくは、60(篩下)〜150メッシュ(篩上)とする微細な粉末状とし、成形時における木酸ガスを揮散し、水蒸気あるいは気泡発生のおそれをなくし、表面の肌荒れを防止する意図からその含有水分量を15wt%以内、好ましくは11wt%以内、理想的には3〜5wt%の範囲内としたものである。
なお、かかる木粉の特性をさらに向上させるため尿素系樹脂接着剤に木材チップ等の素材を浸漬あるいはこれに添加し、加熱硬化した後50〜300メッシュに破砕、微粉末化することが可能であり、かかる木粉の成形手段に於ては、充分な加熱硬化、特に尿素系樹脂接着剤による中和しながらの加熱硬化によって木粉内の木酸は、中和と揮散とにより急速に除去されると共に木粉周面に硬化接着面が設けられ、木粉の含有水分が高められることを有効に防止でき、さらに木粉の滑動性を高め、成形押出し時に於ける摩擦抵抗を特に減じることができる。
熱可塑性樹脂成形材は、木質合成粉の製造実施例における説明の通り、前述廃棄された各種の樹脂成形品をそのままもしくは表面樹脂塗膜を形成した樹脂成形品を複数の各小片に破砕し、前記破砕された個々の各小片に対して、圧縮研削作用を付加して樹脂塗膜を研削、剥離し、前記研削された個々の各小片に対して、微振動に基づいた圧縮衝撃力を付加して圧潰粉砕させ、かつ圧潰粉砕によって剥離された樹脂塗膜を随時に除去し熱可塑性樹脂成形材として素材化した、PVC(ポリ塩化ビニル)、PET(ポリエステル)、PP(ポリプロピレン)等の樹脂である。
熱可塑性樹脂成形材は、PPの場合、前記木粉は最大で75wt%まで混入される。木粉を混入する割合の範囲は20〜75wt%相当であるが、好ましくは30〜70wt%である。
混入容量は、目的とする耐摩耗特性などの諸特性に合わせて適宜決定されるものであるが、本発明においては、前述の成形時における種々の弊害が除去されることから多量に混入することができる。
PETの場合は、木粉は最大で60wt%まで混入されるが、木粉の混入割合は20〜60wt%が良い。
熱可塑性樹脂成形材がPVCのとき、木粉の混入割合は30〜60wt%、好ましくは45wt%である。
なお、押出成形においては、熱可塑性合成樹脂製品の廃材から得られた回収熱可塑性樹脂成形材を再利用して前記押出機内へ投入し、あるいはバージンの熱可塑性樹脂を投入し、あるいはバージンの熱可塑性樹脂と前記回収熱可塑性樹脂成形材をそれぞれ、例えば50%ずつ投入することもできる。
尚、使用目的に応じて、顔料を添加し、製品に着色することもできる。
また、前述したように、流動混合混練手段でゲル化混練し、前記ゲル化した混練材料を冷却造粒手段で冷却造粒し、さらに前記冷却造粒した造粒木粉を粒径10mm以下に整粒して得た本発明による木質合成粉を前記押出機70のホッパ73内に投入すると、木粉と熱可塑性樹脂成形材との馴染みがより一層良好であり、木粉の摩擦抵抗を減じ得る良好な混練状態の生地が形成される。
2−1−1.〔押出ダイ〕
図9において、17はアダプタで、押出機70で練成された押出し生地79を流入する流入口18と押出し生地79を後述する成形ダイ10aへ吐出する押出ダイ19とを備えている。さらに、アダプタ17の先端に断面矩形状を成す突部を設けている。前記押出ダイ19は前記突部の先端に約8mmの肉厚を形成するように幅50mm、高さ12mmの細長の矩形状を成し(図10を参照)、前記流入口18はアダプタ17の後端面に直径50mmの円形を成し、この流入口18から前記押出ダイ19に向けて徐々に断面変形する連通孔を形成している。なお、流入口18は押出機70の断面円形の吐出口と同じ大きさに形成し、一方、押出ダイ19の矩形の幅は流入口18の直径と同じ寸法に形成し、高さは後述する成形ダイ10aの成形室22の高さと同じ寸法に形成することが好ましい。
なお、アダプタ17は押出機70の大きさに応じて種々の大きさに形成でき、例えば、流入口18の直径を150mmである場合は押出ダイ19の矩形の幅を150mm、高さを成形室22の高さと同じ12mmとすることができる。
前記アダプタ17の後端は該17の外周に嵌着した取付具28を介して押出機70のスクリーン76を備えたスクリーン部16の先端面にボルトなどの取付具で連結してアダプタ17の流入口18と押出機70のスクリーン部16の出口とを連通し、一方、成形ダイ10aの後端面の略中央位置に断面矩形状の凹部を形成し、この凹部にアダプタ17の先端の断面矩形状の突部を装着して押出ダイ19と成形ダイ10aの導入孔12aを連通する。
なお、前記アダプタ17の連通孔の周壁内には加熱手段たるヒータ14aを埋設している。
〔押出ダイ内の作用〕
押出機70のスクリーン部16の出口より押し出された押出し生地79は、アダプタ17の流入口18から流入し、ヒータ14aで加熱保温されながら連通孔を経て押出ダイ19から成形ダイ10aの導入孔12a内へ流動する。流入口18から押出ダイ19への連通孔の断面変化は比較的急激に狭くなっているが、この断面変化は高さ方向の変化のみであるので、押出し生地79の流動状態は複雑ではなく良好である。しかも、前記押出ダイ19は通常の一般的なダイとは異なり、射出口が大きいため多量の溶融木質合成粉を吐出し、且つ圧密を促進可能な形状に形成されているので、通常のダイで生じていたようなダイの目詰まりが生じない。
2−2.〔成形ダイ10〕
図6において、10は成形ダイで、いわゆるTダイ式の成形ダイに類似の形状を成しており、押出機70の断面円形の押出ダイ78から吐出された押出し生地79を加熱保温して押出し生地79の流動性を維持しながら押出す導入部11と、導入部11から押出された押出し生地79を幅広で所定の肉厚の板状に成形する成形室22(図8)を有する成形部21から成る。
前記導入部11は、導入孔12および導入室13を備え、直径約65mmの断面円形を成す押出ダイ78から幅910mm、高さ12mmの細長の矩形状の断面を成す成形室22の入口へと急激に断面変形している。そして押出ダイ78から成形室22の入口までの距離(導入部11の押出し方向の距離)は約200mmである。
12は導入孔で、成形ダイ10内に成形ダイ10の幅方向に形成され、縦断面を図5に示すように断面楕円形に膨出形成され、前記押出ダイ78とほぼ同等もしくは若干大きく形成し、横断面の形状は図6に示すように成形ダイ10の幅方向に湾曲しており、その両端が成形室22の入口の矩形状の断面の長手方向の両端に及んで、いわゆるコート・ハンガー型に形成されており、この導入孔12の長手方向の略中央位置で押出機70の押出ダイ78に連通している。また、前記導入孔12から成形室22の入口までの間は、縦断面が徐々に狭くなる方向に断面三角形を成す導入室13で連通している。
なお、前記導入孔12は、横断面で押出機70の押出ダイ78から成形室22の入口の矩形状の断面の長手方向の両端を直線で結ぶようなコート・ハンガー型に形成してもよく、或いは成形ダイ10の幅方向に直線状に形成するいわゆるストレイト・マニホールド型に形成してもよいが、導入孔12及び導入室13内を流動する押出し生地79の流動性が優れているという点で、前述した湾曲形状のコート・ハンガー型の導入孔12が特に好ましい。
又、前記導入孔12及び導入室13を断面楕円形に膨出形成することなく、押出ダイ78から成形室に向かって、縦断面が徐々に狭くなる方向に縦断面三角形に形成し、あるいは、図8(B)に示すように、前記導入孔12及び導入室13の構成を簡略化して、押出ダイ78の内径と共に前記導入孔12及び導入室13を成形室22の高さと同等に形成し、導入孔12及び導入室13にも後述のフッ素樹脂でなるシート24を貼設してもよい。
14はヒータで、電熱ヒータ等の加熱手段で前記導入孔12と導入室13の周壁外周に設けてもよいが、実施例では、加熱効果に優れているという点で、前記周壁内に設けられ、導入孔12及び導入室13内を流動する押出し生地79を加熱保温し、押出し生地79の流動性を維持する。
なお、前記成形室22は、加熱及び冷却手段をそれぞれ備える上下2枚の金属板を両側縁に配置した金属製の図示せざるスペーサで、断面方形に形成したもので、前記スペーサの交換により2以上の目的とする木質合成板の肉厚が得られるように調整する。
成形ダイ10の幅方向の縦断面で幅910mm、高さ12mmの細長の矩形状の断面を成し、成形室22の入口からダイ出口23までの距離(成形部21の押出し方向の距離)は500mmである。
2−2−1.〔成形ダイ10a〕
10aは成形ダイで、前述した実施例の成形ダイ10と同様の形状を成すもので、押出し生地79を加熱保温して押出し生地79の流動性を維持しながら押し出す導入部11aと、前述した成形ダイ10と同様の成形部21とから成る。前記導入部11aは、幅50mm、高さ12mmの矩形状を成す押出ダイ19から、幅900mm、高さ12mmの細長の矩形状の断面を成す成形室22の入口へと急激に断面変形するコートハンガー型の導入孔12aを備えたもので、この導入孔12aは前述した成形ダイ10の導入孔12と導入室13を成形室22の高さと同等に形成したものである。他は前述実施例の成形ダイ10と同様である。
2−2−2.成形ダイ内の構造
前記成形室22の上下左右の四方の内壁面は厚さ0.25mmのフッ素樹脂でなるシート24を貼設している。この他に、成形室22の上下左右の四方の内壁面にフッ素樹脂を直接表面コーティングすることもできるが、交換が容易でありフッ素樹脂のコーティング加工が容易で耐久性に富むという点で、フッ素樹脂のシート24を貼設することが特に好ましい。
前記シート24は特に好ましくは、ガラス織布の表面にフッ素樹脂のフィルムをコーティングしたものであり、フッ素樹脂には上述のように、テフロンTFE、テフロンFEP、テフロンCTFE、テフロンVdF等がある。なお、前記ガラス織布はガラス繊維の不織布でもよい。
なお、前述のフッ素樹脂のコーティング加工は、成形室22の上下の内壁面、すなわち成形板の表裏面を形成する面に相当する内壁面に施すこともできるが、前述したように成形室22の上下左右の内壁面全体に施すことが望ましい。
また、25は冷却管で、成形ダイ10の成形部11を冷却する冷却手段の一例を示すもので、成形室22の上下の成形ダイ10内に成形部21の押出し方向に適当な間隔毎に挿通して配管し、この冷却管25に常温の水又は70〜80℃程度までの水あるいは油等の冷却媒体たる冷却液を供給して成形室22内の押出し生地79を冷却する。この冷却管の配管は成形室22内の押出し生地79の徐冷効果を向上するために成形室22の入口付近からダイ出口23の方向に向けて冷却管25の間隔を次第に狭くするように設けることもでき、あるいは冷却管25を成形ダイ10の成形部11の外壁に配設することもできるが、成形室22内の押出し生地79を冷却できればよいので、この実施例の構造に限定されない。
2−2−3.〔案内板〕
15は案内板で、本実施例では図12に示すように、平面で短辺約200mm、長辺約850mm、高さ約100mmの左右対称の台形形状を成す厚さ7mmの板であり、この案内板15の全外表面に0.1〜0.5mm厚のテフロン等のフッ素樹脂でなるシートを貼設したものである。なお、案内板15の外表面にフッ素樹脂を直接コーティングしても良く、フッ素樹脂のシートを貼設又はフッ素樹脂をコーティングする方法は、前述した成形ダイ10の成形室22内に設けたシート24と同様である。この案内板15を高さ12mm、幅900mmを成す前記導入孔12a内に、該導入孔12aの幅方向で両端に25mmづつの間隔を有するよう略中央に位置させ、さらに案内板15の後端縁を導入孔12aの後端壁面に略平行間隔を有するように位置させ、この案内板15を成形ダイ10aに図12に示すように4個のボルト27で導入孔12aの下面に固定する。したがって案内板15の上面と導入孔12aの上面との間に5mmの隙間が形成される。
なお、案内板15は、その板厚を導入孔12aの高さに応じて導入孔12aの高さの70%以下の寸法に形成し、案内板15の幅は導入孔12aの幅の約70〜95%の長さを有するよう形成することが好ましい。
また、案内板15は、案内板15の上下面に導入孔12aの上下面と同程度の隙間を設けるよう導入孔12aの高さ方向の略中央に位置させることもできる。本実施例の案内板15を導入孔12aの高さ方向の略中央に位置させるとすれば、高さ方向で上下に2.5mmづつの隙間を成すよう導入孔12aの高さ方向の略中央に位置させ、この案内板15を成形ダイ10aに4個の段付きピンで螺着、固定する。
2−2−4.成形ダイ内の作用
〔成形ダイ10内の作用〕
押出機70の押出ダイ78より押出された押出し生地79は、導入孔12に沿って成形ダイ10の幅方向へ流動すると同時に、導入室13を経て成形室22内の押出し方向へ流れる。いわば、図6の二点鎖線に示すように、押出機70の押出ダイ78を中心に輪を拡げるような方向に流れる。
このとき導入部11においては、ヒータ14で加熱しているので、押出し生地79の流動性は維持されており、導入孔12及び導入室13は高さが高い上に幅が急に拡がっているので、導入孔12及び導入室13内を流れる押出し生地79は良好な混練状態を保ちながら押出される。押出し生地79は、断面の長さ910mm、高さ12mmの細長の矩形状を成す成形室22内を押出され、この成形室22内を通過する過程で冷却管25内を流れる冷却水により冷却されて固形化され12mmの肉厚の製品としての成形板29である木質合成板が成形される。
なお、押出し生地79が成形室22を流動する過程において、成形室22の上下左右の四方の内壁面には、フッ素樹脂で成るシート24を貼設しているので、押出し生地79は徐冷されながら円滑に押出される。
フッ素樹脂は、(i)約300℃の耐熱性を有し、(ii)表面が平滑であり摩擦係数が小さく、(iii)金属に比べて熱伝導係数が低いという性質を有しているので、押出し生地79に対して以下に示すような作用をする。
(1)フッ素樹脂は表面が平滑であり摩擦係数は小さいので、成形室22内を通過する押出し生地79内の特に木粉は大きな抵抗を受けずに流動する。そのため押出し生地79の混練状態は良好な状態を維持して、結果として密度が均一で巣ができずしかも表面が平滑な高品質の木質合成板が生成される。
成形部21では押出し生地79が冷却されるので押出し生地79の流動性が悪くなる上、押出し生地79内の木粉は樹脂に比べて摩擦抵抗が大きく、従来のTダイ式の成形ダイにおいては、成形ダイの内壁面も摩擦抵抗が大きいので、成形ダイの内壁面を接触して流動する木粉は大きな抵抗を受けることになり円滑に流動しないため押出し生地79の混練状態を粗密にし巣を形成するなどの悪影響を及ぼすものであったが、本発明の成形ダイ10においては成形室22の内壁面に表面が平滑で摩擦係数の小さいフッ素樹脂のシート24を設けたことにより、押出し生地79の木粉は成形室22の内壁面から大きな抵抗を受けることなく円滑に流動するので、押出し生地79に前述したような悪影響を及ぼすことなく押出し生地79は均一・高密度の良好な混練状態で成形室22内を押出される。
また、上述したように押出し生地79の木粉に対する抵抗力が少なくなり押出し生地79は均一な密度で成形されるので、製品としての成形板29である木質合成板の表面にはいわゆる肌荒れが生じることなく平滑な面に仕上がる。
また、従来は、押出し生地79の木粉が成形ダイ内で円滑に流動しないために成形ダイのヒータの熱で木粉が焼けてこげ茶色に変色したが、本発明は上述したように押出し生地79の木粉が円滑に流動するので、木粉が焼けることなく耐衝撃性など品質特性の低下が生じない。
(2)フッ素樹脂は金属に比べて熱伝導係数が低いので、徐冷効果があり、押出し生地79の冷却時の歪みを抑える作用をする。
成形ダイ10の成形室22は冷却管25内を流れる冷却水により冷却されるが、フッ素樹脂は金属に比べて熱伝導係数が低いので、成形室22の冷却温度が成形室22の内壁面に直接的に急速に熱伝導されないため、成形室22内の押出し生地79は急冷されず徐冷されることになる。したがって押出し生地79が急冷されるときに生じる大きな歪みの発生は防止され、製品としての成形板29である木質合成板の歪みが少なくなると同時に、表面が平滑となる。
さらに加えて、成形ダイ10の成形部21に冷却管25などの冷却手段を設けたので、従来の押出成形法やカレンダー成形法のように成形後、成形板を冷却ロール等で冷却したり補正ロール等で歪みを取る必要がなく、押出し生地79が成形ダイ10のダイ出口23から押出されたときに内部残留応力の少ない木質合成板の完成品が成形される。したがって、本発明の木質合成板の押出成形装置は、従来の押出成形法やカレンダー成形法で成形された木質合成板のような経年的な反りやねじれ等の歪みが生じない。
なお、いわゆるTダイ式の成形ダイによる押出成形法においては、押出機で混練された押出し生地79が比較的小径の押出ダイ78から幅狭で細長な矩形状を成す成形部へと急激な断面変化をする導入部内を流動し次いで幅狭な成形部内を比較的長い距離を流動するので、従来のいわゆるTダイ式の成形ダイによる押出成形法では、木粉を多量に混入した樹脂の成形は不可能であったが、本発明は、上述したようにフッ素樹脂の優れた性質を充分に活かしていわゆるTダイ式の成形ダイによる多量の木粉を含有した木質合成板の押出成形を行うことができる。
〔成形ダイ10a内の作用〕
前述した押出ダイ19を成形ダイ10aの導入孔12aに連通した場合、押出機70のスクリーン部16の出口より押し出された押出し生地79は、アダプタ17のヒータ14aで加熱保温されながら連通孔を経て押出ダイ19から成形ダイ10aの導入孔12a内へ流動する。前記連通孔の断面変化は高さ方向のみであるので、押出し生地79の流動状態は複雑ではない。次いで、導入孔12aの高さが成形室22の高さと同じで、導入孔12a内での断面変化は幅方向への変化のみであるので、成形ダイ10aの導入孔12a内の押出し生地79の流動状態は、前述実施例の成形ダイ10のように高さ方向と幅方向の両方で断面変化を有する導入孔12及び導入室13に比較して複雑ではない。したがって押出ダイ19および成形ダイ10aの導入孔12a内の押出し生地79の流動状態はより一層良好である。他は前述した成形ダイ10の作用と同様である。
〔案内板を設けた成形ダイ内の作用〕
さらに、導入孔12a内に案内板15を設けた場合、アダプタ17の押出ダイ19から吐出した押出し生地79の流れは図12の矢印に示すように、案内板15の後方端面に当り、次いで押出し生地79は案内板15の後方縁と導入孔12aの後方壁面との間に形成された流路を経て導入孔12aの幅方向の両側へと進行し、この流路内の押出し生地79の一部は案内板15と導入孔12aの上壁面との隙間を経て成形室22の方向へ進行する。したがって、導入孔12a内に案内板15を設けたことによって押出し生地79の流動状態が比較的単純な流れになり、原料によっては、押出し生地79が押し出し方向で、中央部と端部で異なる線膨張をして分子配向を異にすることを防ぎ、線膨張の均質化を図り、分子配向を制御して、成形部21の成形室22内へ均等に拡散され、均一な密度で押出される成形ダイ11a内で成形部21の成形室22内へ均等に拡散され、より一層均一な密度で押し出される。
また、案内板15の表面にはフッ素樹脂のシートを貼設しているので案内板15の表面を通過する押出し生地79に対する抵抗は小さいので、押出し生地79内の特に摩擦抵抗の大きい木粉は案内板15の表面で大きな抵抗を受けることなく円滑に流動するので、押出し生地79は均一で高密度の混練状態を保ちながら成形ダイの成形室22へ押し出される。
特に、本発明の木質合成粉を用いて本発明の押出成形を行なった場合は、木質合成粉は個々の木粉の全表面に樹脂が付着したものであるので、押出機70内では個々の木粉間に樹脂が満遍なく浸透した良い混練状態の押出し生地79が形成されるため、この押出し生地内の特に木粉が押出機内及び成形ダイ内の壁面で大きな抵抗を受けずに円滑に流動し、より一層均一で高密度の木質合成板が形成される。
さらに、後述実施例のブレーキ手段により、成形ダイのダイ出口23より押出された成形板29に対して押出し方向と反対方向へ抵抗力を加えているので、高密度で均一な木質合成板が成形される。
2−3.成形板の押出しの抑制
2−3−1.〔ブレーキ手段30〕
前述した成形ダイ10のダイ出口23より押出された成形板29に対してブレーキ手段30により押出し方向と反対方向へ抵抗力を加えて、成形板29の押出し力を抑制する。以下に、ブレーキ手段30の実施例を図を参照して説明する。
図6において、31はピンチローラで、ゴム製のローラで成り、成形板29の表裏面の幅全長を一対の固定ピンチローラ31a、自在ピンチローラ31bで挟持した状態で当接している。固定ピンチローラ31a,自在ピンチローラ31bはそれぞれ、軸32の両端が図6に示すように、軸受34、34で軸承されている。
固定ピンチローラ31aの両端の軸受34、34は軸受固定フレーム36に固定されており、軸受34の両側にはそれぞれ図7に示すように2本のガイドシャフト38、38が前記軸受固定フレーム36に立設している。これらのガイドシャフト38、38にそれぞれバネ43、43を嵌挿する。
そして、自在ピンチローラ31bの両端の軸受34、34は移動自在な軸受自在フレーム37に固定され、軸受自在フレーム37の両端には貫通孔が設けられ、この貫通孔内にガイドシャフト38、38を挿通して軸受自在フレーム37を前記バネ43、43に当接する。
なお、固定ピンチローラ31aの軸心と自在ピンチローラ31bの軸心はそれぞれ前記ガイドシャフト38、38と平行線上に位置し、成形板29が自在ピンチローラ31bの外周面と固定ピンチローラ31aの外周面の略接線方向に位置するように、自在ピンチローラ31bが固定ピンチローラ31aに接離可能に設けられている。
なお、バネ43、43は圧縮バネであり、このバネ43、43により固定ピンチローラ31aと自在ピンチローラ31b間に成形板29を挿通可能な間隙を形成する方向に軸受自在フレーム37を付勢する。さらに、ガイドシャフト38、38の先端からそれぞれ前記バネ43の強さより大きい強さを有する圧縮バネ44、44を嵌挿し、このバネ44、44を押圧するようにガイドシャフト38、38の先端にナット49、49を螺合し、軸受自在フレーム37すなわち自在ピンチローラ31bを固定ピンチローラ31aに圧接する方向に付勢する。このように自在ピンチローラ31bは固定ピンチローラ31aに圧接離自在に設けられる。なお、前記バネ44を設けずにナット49、49で直接軸受自在フレーム37を押圧してもよい。
さらに、固定ピンチローラ31aの軸32の両端には、外周にブレーキベルト35に嵌合するV溝を備えたブレーキドラム33を設け、このブレーキドラム33の外周のV溝にブレーキベルト35などの摩擦体を半周ほど巻回する。ブレーキベルト35はその一端に設けたブレーキベルトホルダ39を軸受固定フレーム36の固定盤42に固定したシャフト41に軸承し、ブレーキベルト35の他端にフランジ付きのブレーキテンショナー40を設け、このブレーキテンショナー40の先端を固定盤42に固定されたテンションブラケット46の貫通孔に挿通し、ブレーキテンショナー40の先端にはレバー48を備えたテンショナー47を偏心軸承する。
なお、前記ブレーキテンショナー40のフランジとテンションブラケット46との間には、ブレーキドラム33に巻回したブレーキベルト35を緩める方向に付勢するバネ45を設けている。前記レバー48を図7の反時計回り方向に回動してテンショナー47を回動すると、テンショナー47は偏心軸承されているので、バネ45の付勢力に抗してブレーキテンショナー40を介してブレーキベルト35を図7の紙面下方へ引張る。
すなわち、ブレーキベルト35はブレーキドラム33のV溝内に嵌合する方向に引張られるので、ブレーキベルト35がブレーキドラム33のV溝内に嵌合してブレーキドラム33の回転力を抑制する。また、前記レバー48でテンショナー47を図7の時計回り方向に回動すると、バネ45の付勢力によりブレーキテンショナー40はブレーキベルト35を図7の紙面上方へ押し上げ、ブレーキベルト35をブレーキドラム33のV溝から離反させ、ブレーキドラム33の回転力の抑制を解除する。
なお、テンショナー47の回動停止位置に応じてブレーキドラム33のV溝とブレーキベルト35の嵌合状態が緩く或いはきつくなりブレーキドラム33の回転力を抑制する力が調整される。
なお、前記テンショナー47に換えて、前記ブレーキテンショナー40の先端に締付ナットを螺合し、この締付ナットを回してブレーキドラム33のV溝とブレーキベルト35との嵌合状態を調整しブレーキドラム33の回転力の抑制力を調整することもできる。
本実施例では、以上の一対の固定ピンチローラ31a、自在ピンチローラ31bでなるピンチローラ31を、図6に示すように、成形板29の押出し方向に適宜間隔をおいて3対のピンチローラ31を設けているが、この数に限定されず、機能を達成すれば何対でもよい。
また、本実施例では、固定ピンチローラ31aの両端に前述したブレーキ手段30を設けているが、固定ピンチローラ31aの一方端のみに設けることもできる。しかし固定ピンチローラ31aの回転力を確実に抑制するという点で、固定ピンチローラ31aの両端にブレーキ手段30を設けることが好ましい。
また、ブレーキ手段30に他の実施例として、成形板29の幅方向全長に及ぶ長さのブレーキ板を、成形板29の表裏面に圧接離自在に設け、一対の前記ブレーキ板で成形板29の表裏面を圧接して成形板29の押出し力を抑制することができる。なお、前記ブレーキ板は、例えば鉄製あるいは木製のフレームに板状のゴムや樹脂などの弾性体を固定し、この弾性体の表面を成形板29に当接させることができる。なお、これらの一対のブレーキ板でなるブレーキ手段30を何対設けてもよい。
〔成形板の押出しの抑制による作用〕
バネ43,43の付勢力に抗してナット49,49を締めて、バネ44,44を介して軸受自在フレーム37を図7の紙面下方へ押圧し、自在ピンチローラ31bを成形板29を介して固定ピンチローラ31aへ圧接する。固定ピンチローラ31aと自在ピンチローラ31bは成形板29の押出し力により図4の矢印の方向に回転する。この固定ピンチローラ31aの回転に伴ってブレーキドラム33が回転する。
前記レバー48を図7の反時計回り方向に回動してテンショナー47を回動し、バネ45の付勢力に抗してブレーキテンショナー40を介してブレーキベルト35を図7の紙面下方へ引張り、ブレーキドラム33の回転力を抑制することにより、成形ダイ10のダイ出口23より押出された成形板29をピンチローラ31の固定ピンチローラ31aと自在ピンチローラ31b間に挿入され、固定ピンチローラ31aと自在ピンチローラ31b間に挟持された成形板29の押出し力が抑制される。
図4及び図6の二点鎖線の矢印で示すように固定ピンチローラ31aと自在ピンチローラ31bから成形板29の押出し力に抗する抑制力が発生し、この抑制力は成形ダイ10の成形部21及び導入部11内の押出し生地79に対して押出し方向と反対方向の力を与える。押出し生地79は冷却される前の流動性に富む状態であるので、前記抑制力により、図6の一点鎖線に示すように押出ダイ78より吐出した押出し生地79が、その押出し方向よりむしろ成形ダイ10の幅方向へ拡げられた状態で、しかも木粉の密度が極めて高くされた状態で押出される。
前述したような本発明の木質合成板の押出成形装置による成形板29に前記抑制力を加えない場合は、図6の二点鎖線に示すように押出し生地79の押出し方向に流動する割合が大きいのであり、このように成形板29に抑制力を加えない場合と上記のように成形板29に抑制力を加えた場合とを比較すると、両者の押出し生地79の流動する状態に顕著な違いがみられることが分かる。
成形板29に抑制力を加えた場合の本発明の木質合成板の成形装置は、成形板29に抑制力を加えない場合の本発明の木質合成板の成形手段に比較して、押出し生地79内の木粉の密度がさらにより一層高くなり、成形ダイ10の幅方向の全域に及んでより一層均一な高密度の製品としての成形板29である木質合成板が成形される。なお、成形板29に抑制力を加えた場合の押出し速度は1時間当り4〜5mである。
したがって、従来、比較的小径の押出ダイ78から幅広で細長の矩形状の断面を成す成形室22内へ急激な断面変化を成す成形ダイ10内に押出し生地79を高密度で均一な混練状態で押出すことは難しい問題であったが、本発明の木質合成板の成形装置手段においては成形板29に抑制力を加えない場合もさることながら、前記ブレーキ手段30により成形板29に押出し方向と反対方向の抑制力を加える手段によって、より一層高密度で均一な木質合成板を成形することが可能になったのである。
2−3−2.〔ブレーキ手段30a〕
ブレーキ手段の他の実施例について、前述したブレーキ手段30の実施例と同じ部材は同符号として以下に説明する。
図13及び図14において、3本の自在ピンチローラ31bの軸の両端を軸承する軸受34aをそれぞれ、軸受固定フレーム36に固定し、固定ピンチローラ31aを各軸に設けた歯車116と、この歯車116に噛合する歯車117で連動し、3本の固定ピンチローラ31aのうち1本の固定ピンチローラ31aの軸にパウダブレーキ115の入力軸を連結する。パウダブレーキ115は、いわゆる電磁ブレーキであり、摩擦トルクを電気的に微妙に調整できるものである。
さらに、軸受固定フレーム36にフレーム114を立設し、このフレーム114の壁面にガイド溝を備えたブロック状のガイド体119を2本をそれぞれ、該119の軸線方向を上下方向に向けて略平行に設け、各3本の自在ピンチローラ31bの軸の両端を軸承する軸受34bを前記ガイド体119のガイド溝に沿って上下動自在に設け、前記軸受34bをそれぞれ、フレーム114の上面に設けた3本のエアシリンダ118のロッドの先端に連結する。
したがって、シリンダ118の作動により、3本の自在ピンチローラ31bをそれぞれ、成形板29を介して固定ピンチローラ31aに加圧し、3本の固定ピンチローラ31aの内1本の固定ピンチローラ31aの軸はパウダブレーキ115により回転を抑制され、この固定ピンチローラ31aの軸に設けた歯車116が他の2本の固定ピンチローラ31a,31aの軸に設けた歯車116,116に歯車117,117を介して噛合しているので、3本の固定ピンチローラ31aにはパウダブレーキ115の摩擦トルクによる同一の回転抑制力が作用する。
ちなみに、各固定ピンチローラ31aに加えるシリンダ118の圧力は、成形する成形板29の板厚により調整する。同様に、パウダブレーキ115により固定ピンチローラ31aの回転を抑制する摩擦トルクも、成形する成形板29の板厚により調整する。
例えば、本実施例では成形板29の板厚が12mmのとき、シリンダ118のエア圧力は3.5〜4kg/cm2で、1本の自在ピンチローラ31bが成形板29を介して固定ピンチローラ31aに加わる荷重は約1,000kgとなる。したがって、3本の自在ピンチローラ31bで合計3,000kgの荷重が成形板29に加わることになり、また、パウダブレーキ115の摩擦トルクは10kg/mである。
成形板29の板厚が30mmのとき、シリンダ118のエア圧力は8〜10kg/cm2で、1本の自在ピンチローラ31bが固定ピンチローラ31aに加わる荷重は約2,000kgとなる。したがって、3本の自在ピンチローラ31bで合計6,000kgの荷重が成形板29に加わることになり、また、パウダブレーキ115の摩擦トルクは20kg/mである。
したがって、パウダブレーキ115の摩擦トルクは成形板29の押出し力に対する抑制力と成り、成形ダイ10及び10aの導入部11内の押出し生地79をより一層高密度で均一な状態にし、この均一で高密度の押出し生地79は押出機70による押出し生地79の押出し力により前記ブレーキ手段30aの抑制力に抗して前進し、成形室22内で冷却され成形板29が成形される。この成形板29はパウダブレーキ115の抑制力に抗して前記固定ピンチローラ31a及び自在ピンチローラ31bを回転させながら前進する。
以上のように本実施例のブレーキ手段30aは、成形する成形板29の板厚に応じて、シリンダ118により自在ピンチローラ31bの加圧力を簡単に調整でき、また、パウダブレーキ115により固定ピンチローラ31aの抑制力を簡単に調整できるという点で、前述実施例のブレーキ手段30より好ましい。
この後、前記製品としての成形板29である木質合成板をカッター、シャーリング、鋸盤等の切断機で所望の長さで切断する。薄肉の成形板29であればカッターなどの切断機を使用し、12mmなどの厚肉の成形板29であればシャーリング、鋸盤等の切断機で切断する。
図8(B)は、生産能力の向上を意図した本発明のさらに他の実施例を示すもので、一の押出機70からの押出ダイ78に対して図8(A)と略同様の構成の成形ダイ10,10を連通したものである。
3.製造例
3−1.木質合成粉の製造例
本例では、原材料の55wt%は平均粒径20メッシュ以下で嵩比重が0.2の木粉を30kg(このときの木粉は水分を約8wt%含む)および木酸ガスの中和剤となるアンモニア、フェノール、メラミン等の尿素の40%濃度の水溶液を0.3kg(木粉に対する尿素の割合は1wt%である)、炭酸カルシウムを3kgで成り、残りの45wt%は熱可塑性樹脂成形材のPP(ポリプロピレン)を27kgで成る。
なお、前記木粉の平均粒径とは、当該木粉の累積重量パーセント分布の50重量パーセントの粒子径を意味する。
上記のミキサー80で混練する工程を以下に詳しく説明する。
(1)モータを回して撹拌衝撃翼85,86,87およびスクレイパー84を高速回転し、上蓋82を開放して投入口94から木粉30kgを投入し、前記尿素0.3kgを少量づつ添加する。
(2)約1分後、5〜10wt%の炭酸カルシウムを3kgを添加し、10〜20分程度混練する。これらの炭酸カルシウム及び酸化チタンを添加すると原材料の比重が重くなるので、高速回転する撹拌衝撃翼による剪断力が高くなるため剪断力による摩擦熱の発生が向上し、ミキサー80内の温度は180〜190℃になり乾燥され原材料の水分を1wt%以下、好ましくは0.3wt%以下に減少させる。ちなみに、本実施例では前記木粉を投入してから17分09秒後にミキサー本体81内の温度は、190℃で、原材料の水分が0.1wt%であった。なお、木粉は撹拌衝撃翼85,86,87の高速回転により破砕され、このとき木粉から発生した多量の水蒸気ないしは木酸ガスは上蓋82に設けたガス排出管95より排出される。
(3)次いで、熱可塑性樹脂成形材のPP(ポリプロピレン)25kgをミキサー本体81内に投入し、5〜8分間混練する(本実施例では約8分間混練した)。なお、熱可塑性樹脂成形材の形態は、本実施例では直径3mm程度の大きさの粒状から成るペレットを使用している。
なお、熱可塑性樹脂成形材のPPの融点は165℃であり、この工程におけるミキサー本体80内の温度は186℃であった。
この工程で、原材料内の木粉によりPPは大きな塊とはならず、混合分散に際しても凝集したりせずに粘土状にゲル化して直径約10〜100mmの塊状の「混練材料」となった。つまり、この塊とは、個々の木粉がその木粉個々の単体の表面全体に熱可塑性樹脂を付着した状態に形成され、これらの個々の木粉が集合した塊であるため、木粉単体間の密着性がなく塊そのものは脆いものである。したがって、この工程により形成された混練材料は、後述する後工程の押出機70でより一層効率良く混練され得る良好な材料であり、押出し成形時において特に木粉の摩擦抵抗を減じる良好な材料である。
また、熱可塑性樹脂成形材がPPの本製造例の場合、木粉が原材料の全体量の35wt%以下になると熱可塑性樹脂成形材がミキサー80内で大きな塊となるので、木粉の量は35wt%より多くする必要がある。また、木粉が75wt%までは原材料のゲル化が可能であり、木粉が75wt%より多くなると、木粉が焼けるので不可能である。
(4)前記モータを低速にし、シリンダ91を作動して蓋89を後退して排出口88を開放する。ミキサー本体81内のゲル化した原材料は排出口88から排出ダクト93を経て、次工程へ排出される。排出時の温度は186℃、原材料を投入してから排出するまでの全工程は26分54秒で処理された。
なお、前記モータを低速にして原材料内の熱可塑性樹脂成形材の融点より10℃程度高い温度にまで下げれば、ミキサー80内の混練材料は冷却され、直径約25mm以下の大きさの塊に造粒され造粒木粉が形成される。この場合、次工程の冷却造粒手段での処理を省略して、後工程の整粒手段により粒径10mm以下に整粒して木質合成粉を形成しても良い。
他の製造例として以下に示す。原材料としては、原材料の64wt%は平均粒径20メッシュ以下で嵩比重が0.2の木粉を26kgおよび尿素の40%濃度の水溶液を0.3kg、5〜20wt%の酸化チタンを3kgで成り、残りの36wt%は熱可塑性樹脂成形材のPC(ポリカーボネート)を16kgで成る。この原材料を上記のミキサー80で混練する場合、前述実施例と同様の工程を行ない、木粉をミキサー本体81内へ投入してから17分30秒後、159℃で、PCを投入し約26分14秒後、223℃でゲル化した混練材料を排出した。
(5)冷却造粒前述したミキサー80で形成された混練材料は排出ダクト93を経てクーリングミキサー100の投入口113からミキサー本体101内へ投入される。撹拌破砕翼104はモータ105により90rpmの速度で回転し、アーム103が3rpmの速度で水平方向に回転している。
混練材料はジャケット102内の冷却水により冷却されたミキサー本体101の内周壁面で冷却され、直径約25mm以下に造粒された「造粒木粉」が形成され、この造粒木粉はバルブ106を開放して排出口107より排出される。
PPの融点は165℃であり、本製造例では前述したミキサー80内で180℃にゲル化した混練材料をクーリングミキサー100へ投入してから10〜15分程度で、90〜100℃まで冷却され、このクーリングミキサーによる冷却造粒は効率が良い。このときのジャケット102内の冷却水については、給水管108から供給する冷却水の温度は30℃で、排水管109より排水される冷却水の温度は40℃。
(6)整粒前記冷却造粒手段で形成された造粒木粉は、さらにカッタミルを使用して粒径10mm以下に整粒し、「木質合成粉」を形成する。
造粒木粉はカッタ支持体124の回転刃125と固定刃126間で約0.1〜8mmの木質合成粉に切断され「木質合成粉」が形成され、整粒室128のスクリーン129のメッシュを通過して排出口131より排出される。
3−2.木質合成粉を用いた木質合成板の比較例
木粉を50%、PPの樹脂を50%で成る本願の木質合成板(板厚12.0mm)(以下、「本願例A」という)と、3層の木板を貼合わせた合板A(板厚11.2mm)と、5層の木板を貼合わせた合板B(板厚11.6mm)と、7層の木板を貼合わせた合板C(板厚15.3mm)に対して以下の物性試験を行なった。
(1)曲げ弾性率及び曲げ強度試験
試験条件 支点間隔;100mm, 試験速度;5mm/min
以上のことから、本願例Aは、合板A、合板Bの縦方向及び横方向の曲げ弾性率及び曲げ強度と比較すると、いずれも合板A、合板Bより低い値であるが、合板Cと比較すると、合板C の曲げ強度(縦方向)が29.1MPaであるのに対し、本願例Aの曲げ強度(縦方向)が27.5MPaと若干低いが、本願例Aは合板Cに比較的近い値を示しており、合板C の曲げ弾性率(縦方向)が1.98GPaであるのに対し、本願例Aの曲げ弾性率(縦方向)が2.73GPaであり、合板C の曲げ弾性率(横方向)が1.64GPaであるのに対し、本願例Aの曲げ弾性率(横方向)が2.51GPaであり、合板C の曲げ強度(横方向)が27.5MPaであるのに対し、本願例Aの曲げ強度(横方向)が28.2MPaであり、いずれも本願例Aは合板Cに対しては高い数値を示している。
したがって、本願の木質合成板はある種の合板と同等の曲げ弾性率及び曲げ強度を示すという、良好な結果を得た。
(2)面衝撃試験
試験条件; 10m/sec
以上のことから、本願例Aの面衝撃値は、合板A、合板B、合板Cのいずれより高い値を示した。
(3)硬度試験
試験条件 ロックウェル硬度の圧子;径12.700mmの鋼球
試験荷重;60kgf
以上のことから、本願例Aのロックウェル硬度は、合板A、合板B、合板Cのいずれより高い値を示した。本発明の木質合成板は合板Aに対して約1.4倍、合板Bに対して約1.93倍、合板Cに対して約3.34倍という優れた硬さを有する。
(4)含水性試験
試験条件 各試験片を純水に浸漬し、25℃で24時間放置後の質量変化率(=含水率)を測定した。
以上のことから、本願例Aの含水率は、合板A、合板B、合板Cのいずれより極めて低い値を示した。含水率が変化しやすいことは、板の膨張、収縮の変化率が大きくなり、つまり湿度などの環境変化により板の寸法変化が大きくなり、板の割れや寸法の狂いが生じやすくなる要因になる。
本発明の木質合成板は、上記3種の合板のうちでも含水率が最も低い合板Aに対してでさえ、1/153という極めて低い含水率を示していることから、湿度等の環境変化に左右されず寸法の安定性が極めて高いものである。
(5)釘引き抜き強度試験
試験条件 試験速度;5mm/min
以上のことから、本願例Aの釘引き抜き強度は、合板A、合板B、合板Cのいずれより低い値を示した。一般的に木質合成板の釘引き抜き強度が低いことは木質合成板の特有の弱点である。釘の引き抜き強度は釘の周囲への板の組織の摩擦力が釘を引き抜くときの引き抜き強度となって表れると考えられ、木質合成板の場合は釘の引き抜き強度を弱める作用をする摩擦抵抗の小さい樹脂が含まれているので、摩擦抵抗の大きい木材板でなる合板の釘の引き抜き強度より低い値を示すことは当然考えられることである。しかし、本願例Aは合板Cの釘引き抜き強度の約72%の強度を有するという、良好な結果を得た。
木質合成板の場合は個々の木粉間の密度を高くすることにより釘の引き抜き強度を高くすることになり、本願例Aは高密度であるので上記のように良好な結果を得たと考えられる。
(6)木ネジ試験
試験条件 試験速度;5mm/min
以上のことから、本願例Aの木ネジの引き抜き強度は、合板A、合板B、合板Cのいずれより高い値を示した。また、本願例Aの木ネジの引っかけ強度は、縦方向および横方向のいずれにおいても合板A、合板B、合板Cより高い値を示した。
木ネジの引き抜き強度の場合は釘の引き抜き強度の場合のように釘の周囲への板の組織の摩擦力と異なり、板の組織の剪断力と関係があると考えられる。つまり、木質合成板の場合は、ネジ内に食い込んだ部分の板の組織と他の組織との密着性が木ネジの引く抜き強度の強さに反映すると考えられる。
本発明の木質合成板は木粉が均一で高密度であるため個々の木粉間の密着性が強く、本願例Aが示すように木ネジの引き抜き強度及び木ネジの引っかけ強度が各合板より高いという優れた結果を得た。
以上の各試験の結果で示すように、本発明の木質合成板は曲げ弾性率、曲げ強度、釘の引き抜き強度において、幾種類かの合板のうちの一部の種類の合板に近い特性を有するという優れた特性を示し、且つ面衝撃値、含水性、木ネジの引き抜き強度及び木ネジの引っかけ強度においては合板より優れた特性を示すという良好なものである。
3−3.その他の木質合成板の製造例
以上の製品としての成形板29である木質合成板 W:910mm、H:12mmを鋸盤により1820mm毎に切断し、重量18kgのベージュ色のコクリートパネルとして用いる木質合成板を得た。なお、肉厚10〜12mm程度の木質合成板は、机やテーブル、食器棚等の家具材料など他の用途にも使用される。
なお、成形ダイ10の高さを20〜30mmとすることによって、肉厚20〜30mmの木質合成板が成形され、この木質合成板はまな板や他の用途の板材として使用される。したがって、成形される木質合成板の肉厚は上記の実施例に限定されない。
以上の製品としての成形板29である木質合成板 W:910mm、H:3mmをシャーリングにより1820mm毎に切断し、重量4.5kgの木質合成板を得る。
このような薄板は、各種建築材料、家具材料、機器パーツ等として広範囲な使用目的に向けた素材となる。例えば、上記の薄板の木質合成板は、家屋の室内装飾用の化粧板などの建築材として使用され、あるいは約300mm四方の大きさに加工してフロアリングブロックなどの床材として使用される。さらに、他の用途として、自動車の車内の内装材として、例えば、運転席のメータパネル周りの化粧板、トランスミッション周囲の化粧板、その他の車内の壁面の化粧板として使用され、高級感を得ることができる。機器パーツとしては電気機器等のボックスパネルや他の機器の化粧板として使用される。
したがって、本発明の押出成形装置は、薄板から厚板に及ぶ広範囲な肉厚の木質合成板を成形可能であり、広範囲な使用目的に向けた素材が成形される。
なお、本発明の押出成形装置により成形される木質合成板は高密度であるので多量の木粉を混入でき、木粉は熱可塑性樹脂より半値以下で遥かに安価であるため安価な木質合成板が成形される。また、多量の木粉を混入される木質合成板は天然の木材パネルに近い性質を有する優れた板材である。
なお、本発明の木質合成板はホットプレス成形において再度押圧加熱−冷却脱型による型付け成形をすることができる。しかし、本発明の押出成形装置による木質合成板は、従来のカレンダー成形法や押出成形法に比べて内部残留応力が少ないので、予想以上の歪みを生じさせることがない。
〔本発明の態様〕
以下は、これに限定されるものではないが、本発明を構成するその他の態様を示す。前記導入孔は、横断面で押出機吐出口から成形室入口の矩形状の断面の長手方向の両端を成形ダイ幅方向に直線状に形成するいわゆるストレイト・マニホールド型である押出機。前記成形室は、加熱及び冷却手段をそれぞれ備える上下2枚の金属板を両側縁に配置した金属製スペーサを介して断面方形に形成した成形ダイから構成される。
ガラス繊維の不織布又は、ガラス織布の表面にフッ素樹脂のフィルムをコーティングしたシートを前記成形室の内壁面に貼設した押出機。