JP2004215671A - レセプター型プロテインキナーゼをコードする核酸 - Google Patents
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Abstract
【課題】血液細胞疾患若しくは造血幹細胞疾患の治療のための薬剤のスクリーニングを可能にする手段並びに該疾患の細胞の増殖、免疫応答又はシグナル情報伝達の制御を可能にする手段を提供すること。
【解決手段】血液細胞疾患若しくは造血幹細胞疾患の治療のための薬剤のスクリーニングに適した材料の提供又は血液細胞疾患若しくは造血幹細胞疾患の治療のための薬剤のスクリーニングのための、膜近傍部位の塩基配列に縦列重複を有するFLT3をコードする核酸が発現している細胞の使用並びに該核酸若しくはその断片の、血液細胞疾患若しくは造血幹細胞疾患の細胞の増殖、免疫応答又はシグナル情報伝達の制御を行なうための使用。
【選択図】なし
【解決手段】血液細胞疾患若しくは造血幹細胞疾患の治療のための薬剤のスクリーニングに適した材料の提供又は血液細胞疾患若しくは造血幹細胞疾患の治療のための薬剤のスクリーニングのための、膜近傍部位の塩基配列に縦列重複を有するFLT3をコードする核酸が発現している細胞の使用並びに該核酸若しくはその断片の、血液細胞疾患若しくは造血幹細胞疾患の細胞の増殖、免疫応答又はシグナル情報伝達の制御を行なうための使用。
【選択図】なし
Description
本発明は、膜近傍部位の塩基配列に縦列重複を有する、レセプター型プロテインキナーゼをコードする核酸、ポリペプチド、該核酸の検出方法及び検出キットなどに関する。
細胞の増殖や分化、さらに種々の刺激に対する細胞側の応答は、種々の増殖因子によって厳密に制御されている。これらの増殖因子は該増殖因子に特異的なレセプターを介して作用することが知られている(非特許文献1; 非特許文献2) 。それらのレセプターの中で、チロシンキナーゼドメインを含むレセプターは、レセプター型チロシンキナーゼ(RTKs)として分類される。
RTKsは、細胞膜外領域、細胞膜貫通領域、並びに、チロシンキナーゼドメイン及び細胞膜貫通領域とチロシンキナーゼドメイン間に存在する膜近傍部位を含む細胞膜内領域よりなり、更に構造上の特徴、アミノ酸配列の相同性から4つの型に大別される。
I型レセプターは単量体の構造を有し、細胞膜外領域にはシステインに富んだ繰り返し配列が2ヵ所あり、EGF レセプター、HER2/neu等が例示される。
II型レセプターはS-S 結合によって結ばれたα、β各2個のサブユニットからなる構造で、α鎖がシステインに富んだ繰り返し配列を1つ含む細胞膜外領域であり、β鎖に細胞膜貫通領域、膜近傍部位、チロシンキナーゼドメインを有する。インスリンレセプター、IGF-1 レセプター等が例示される。
III 型レセプターは、細胞膜外領域にイムノグロブリン様のシステインに富んだ配列を5個含み、細胞膜内領域にキナーゼインサートで隔てられた2個のチロシンキナーゼドメインを含む単量体構造を有する。PDGFレセプター、fms(CSF−1レセプター)、kit(SLFレセプター)等が例示される。
IV型レセプターは、III 型レセプターと類似しているが、イムノグロブリン様の繰り返し配列は3個であり、FGFレセプター等が例示される。
白血病細胞等で発現しているfms様チロシンキナーゼ3(以下、FLT3と略す、非特許文献3; 非特許文献4)、Fetal liver kinase 2(FLK2)またはSTK−1とも呼ばれるチロシンキナーゼは、III 型レセプターとして知られている(非特許文献5; 非特許文献6; 非特許文献7; 非特許文献8) 。
これらのレセプター型チロシンキナーゼは、増殖因子等のリガンドが該細胞膜外領域に結合すると2量体化という凝集がおこり、これによりキナーゼの活性化がおこる。これらは、リガンドが先に発見され、ついでそのレセプターが発見されている場合が多いが、未だリガンドが不明なレセプターも存在する。
造血幹細胞や白血病の増殖機構で注目されているFLT3に関しては、FLT3の発見の後、FLT3のリガンドが発見された(非特許文献9; 非特許文献10) 。FLT3のリガンドはほとんど全ての白血病細胞に発現されており、白血病においてはオートクライン(autocrine)刺激によるメカニズムで細胞が増殖することが考えられている(非特許文献11) 。またFLT3mRNAは、リンパ性白血病細胞及び骨髄性白血病細胞において発現していることが報告されている(非特許文献12; 非特許文献13; 非特許文献14; 非特許文献15) が、FLT3mRNAの発現とリンパ性白血病及び骨髄性白血病の病態との関連は不明である。
ヒトFLT3のcDNAはクローニングされ、cDNAの塩基配列及びFLT3タンパクのアミノ酸配列が決定されている [非特許文献7] 。しかしながら、造血幹細胞の分化や白血病細胞への癌化の過程で、FLT3の構造と機能については十分に解析されていないのが現状である。
Nicola,N.A.Annu.Rev.Biochem.58,45,1989 Lowenberg,B. Blood 81,281,1991 Matthews,W. Cell 65,1143, 1991 Rosnet, O. Genomics 9, 380 1991 Small, D. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91, 459 1993 Lyman, S. D. Oncogene 8, 815 1993 O.Rosnet et al. Blood,Vol.82(4),1110-1119(1993) Agnes, F. Gene 145, 283 1994) Lyman, S.D. Cell 75, 1157 1993 Hannum, C. Nature 368, 643 1994 Meierhoff, G. Leukemia 9, 1368 1995 Birg, F. Blood 80, 2584 1994 Da Silva N. Leukemia 8, 885 1994 Brasel, K. Leukemia 9,1212 1995 Drexler,H. G. Leukemia 10, 588 1996
Nicola,N.A.Annu.Rev.Biochem.58,45,1989 Lowenberg,B. Blood 81,281,1991 Matthews,W. Cell 65,1143, 1991 Rosnet, O. Genomics 9, 380 1991 Small, D. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91, 459 1993 Lyman, S. D. Oncogene 8, 815 1993 O.Rosnet et al. Blood,Vol.82(4),1110-1119(1993) Agnes, F. Gene 145, 283 1994) Lyman, S.D. Cell 75, 1157 1993 Hannum, C. Nature 368, 643 1994 Meierhoff, G. Leukemia 9, 1368 1995 Birg, F. Blood 80, 2584 1994 Da Silva N. Leukemia 8, 885 1994 Brasel, K. Leukemia 9,1212 1995 Drexler,H. G. Leukemia 10, 588 1996
従って、本発明の第1の目的は、膜近傍部位の塩基配列に新規な縦列重複を有する、白血病の診断に有用なレセプター型プロテインキナーゼをコードする核酸、および該膜近傍部位をコードする核酸を提供することにある。本発明の第2の目的は、前記核酸によりコードされるポリペプチドを提供することにある。本発明の第3の目的は、膜近傍部位の塩基配列に生じた縦列重複を有する核酸によりコードされる部位に特異的に結合する抗体を提供することにある。本発明の第4の目的は、膜近傍部位の塩基配列に生じた縦列重複を有する核酸に特異的に結合する核酸を提供することにある。本発明の第5の目的は、該レセプター型プロテインキナーゼをコードする核酸の検出方法及びそのキットを提供することにある。
従来、FLT3に関しては、細胞の種類、分化に関係なく同一のレセプター型プロテインキナーゼが発現しているとされていた[O.Rosnet et al. Blood,Vol.82(4),1110-1119(1993)] 。しかし、本発明者らは、白血病細胞でのFLT3の発現を詳細に検討し鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことに、膜近傍部位に新規な縦列重複を有する、レセプター型プロテインキナーゼ遺伝子を発見し、さらに該縦列重複は体細胞性であり、かつ該縦列重複を有するFLT3の発現が白血病の悪性度、予後の悪さに関連することを見い出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の要旨は、
(1) 膜近傍部位(juxtamembrane)の塩基配列に縦列重複(tandem duplication) を有する、レセプター型プロテインキナーゼをコードする核酸、
(2) レセプター型プロテインキナーゼがレセプター型チロシンキナーゼである前記(1)記載の核酸、
(3) レセプター型チロシンキナーゼがFMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)である前記(2)記載の核酸、
(4) 膜近傍部位に配列表の配列番号:1〜5いずれかに記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む、前記(1)〜(3)いずれか記載の核酸、
(5) 膜近傍部位に配列表の配列番号:6〜15いずれかに記載の塩基配列を含む、前記(1)〜(3)いずれか記載の核酸、
(6) 配列表の配列番号:16〜20いずれかに記載のFLT3の縦列重複変異体をコードする核酸、
(7) 配列表の配列番号:21〜25いずれかに記載のFLT3の縦列重複変異体をコードする塩基配列からなる核酸、又は該核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、膜近傍部位をコードする塩基配列に縦列重複を有する核酸、
(8) 配列表の配列番号:1〜5いずれかに記載のアミノ酸配列をコードする縦列重複を含む核酸、
(9) 配列表の配列番号:6〜15いずれかに記載の核酸、又は該核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、縦列重複を含む核酸、
(10) 前記(1)〜(9)いずれかに記載の核酸によりコードされるポリペプチド、
(11) 配列表の配列番号:1〜5、16〜20いずれかに記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(12) 配列表の配列番号:1〜5、16〜20いずれかに記載のアミノ酸配列において、1又は2以上のアミノ酸残基の欠失、置換又は付加の少なくとも1つを生じさせ、かつ膜近傍部位の塩基配列に縦列重複を有する核酸によりコードされるポリペプチド、
(13) レセプター型プロテインキナーゼの膜近傍部位の塩基配列に生じた縦列重複を有する核酸によりコードされる部位に特異的に結合する抗体、
(14) レセプター型プロテインキナーゼの膜近傍部位の塩基配列に生じた縦列重複を有する核酸に特異的に結合する核酸、
(15) 工程(a) :ヒトの核酸試料を得る工程、
工程(b) :工程(a) にて得られた核酸試料を遺伝子増幅反応に付して、レセプター型プロテインキナーゼをコードする核酸に存在しうる膜近傍部位の縦列重複を含む領域が増幅された核酸断片を得る工程、及び
工程(c) :工程(b) の核酸断片について縦列重複の存在を調べる工程、
を含む膜近傍部位の塩基配列に縦列重複を有するレセプター型プロテインキナーゼをコードする核酸の検出方法、
(16) 急性骨髄性白血病のFAB(French-American-British)分類において、M2、M4又はM5の診断に供することを特徴とする、前記(15)記載の検出方法、
(17) 膜近傍部位の塩基配列に縦列重複を有するレセプター型プロテインキナーゼをコードする核酸を検出するためのキットであって、レセプター型プロテインキナーゼ遺伝子に存在しうる縦列重複を含む領域を増幅するためのプライマーを含むことを特徴とするキット、
(18) 急性骨髄性白血病のFAB(French-American-British)分類において、M2、M4又はM5の診断に供されることを特徴とする、前記(17)記載のキット、
(19) 膜近傍部位の塩基配列に縦列重複を有するレセプター型プロテインキナーゼをコードする核酸を検出するための、前記(1)〜(9)いずれかに記載の核酸の使用、に関するものである。
(1) 膜近傍部位(juxtamembrane)の塩基配列に縦列重複(tandem duplication) を有する、レセプター型プロテインキナーゼをコードする核酸、
(2) レセプター型プロテインキナーゼがレセプター型チロシンキナーゼである前記(1)記載の核酸、
(3) レセプター型チロシンキナーゼがFMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)である前記(2)記載の核酸、
(4) 膜近傍部位に配列表の配列番号:1〜5いずれかに記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む、前記(1)〜(3)いずれか記載の核酸、
(5) 膜近傍部位に配列表の配列番号:6〜15いずれかに記載の塩基配列を含む、前記(1)〜(3)いずれか記載の核酸、
(6) 配列表の配列番号:16〜20いずれかに記載のFLT3の縦列重複変異体をコードする核酸、
(7) 配列表の配列番号:21〜25いずれかに記載のFLT3の縦列重複変異体をコードする塩基配列からなる核酸、又は該核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、膜近傍部位をコードする塩基配列に縦列重複を有する核酸、
(8) 配列表の配列番号:1〜5いずれかに記載のアミノ酸配列をコードする縦列重複を含む核酸、
(9) 配列表の配列番号:6〜15いずれかに記載の核酸、又は該核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、縦列重複を含む核酸、
(10) 前記(1)〜(9)いずれかに記載の核酸によりコードされるポリペプチド、
(11) 配列表の配列番号:1〜5、16〜20いずれかに記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(12) 配列表の配列番号:1〜5、16〜20いずれかに記載のアミノ酸配列において、1又は2以上のアミノ酸残基の欠失、置換又は付加の少なくとも1つを生じさせ、かつ膜近傍部位の塩基配列に縦列重複を有する核酸によりコードされるポリペプチド、
(13) レセプター型プロテインキナーゼの膜近傍部位の塩基配列に生じた縦列重複を有する核酸によりコードされる部位に特異的に結合する抗体、
(14) レセプター型プロテインキナーゼの膜近傍部位の塩基配列に生じた縦列重複を有する核酸に特異的に結合する核酸、
(15) 工程(a) :ヒトの核酸試料を得る工程、
工程(b) :工程(a) にて得られた核酸試料を遺伝子増幅反応に付して、レセプター型プロテインキナーゼをコードする核酸に存在しうる膜近傍部位の縦列重複を含む領域が増幅された核酸断片を得る工程、及び
工程(c) :工程(b) の核酸断片について縦列重複の存在を調べる工程、
を含む膜近傍部位の塩基配列に縦列重複を有するレセプター型プロテインキナーゼをコードする核酸の検出方法、
(16) 急性骨髄性白血病のFAB(French-American-British)分類において、M2、M4又はM5の診断に供することを特徴とする、前記(15)記載の検出方法、
(17) 膜近傍部位の塩基配列に縦列重複を有するレセプター型プロテインキナーゼをコードする核酸を検出するためのキットであって、レセプター型プロテインキナーゼ遺伝子に存在しうる縦列重複を含む領域を増幅するためのプライマーを含むことを特徴とするキット、
(18) 急性骨髄性白血病のFAB(French-American-British)分類において、M2、M4又はM5の診断に供されることを特徴とする、前記(17)記載のキット、
(19) 膜近傍部位の塩基配列に縦列重複を有するレセプター型プロテインキナーゼをコードする核酸を検出するための、前記(1)〜(9)いずれかに記載の核酸の使用、に関するものである。
本発明により、膜近傍部位の塩基配列に縦列重複変異を有する新規レセプター型プロテインキナーゼ、およびその塩基配列、アミノ酸配列情報が提供される。また、本発明を利用した白血病などの病理学的診断、検査方法、及びそれに関するキット、検査試薬が提供される。さらに、本発明を利用した造血幹細胞や白血病細胞に代表される細胞の増殖分化、癌化、免疫応答、シグナル伝達の状態を制御、解析する方法およびそれに関するキット、試薬を提供できる。
以下、本発明を説明する。
本発明のレセプター型プロテインキナーゼをコードする核酸は、膜近傍部位(juxtamembrane)をコードする領域に縦列重複(tandem duplication) を有する。本発明のプロテインキナーゼをコードする核酸は、チロシンキナーゼ又はセリン・スレオニンキナーゼのいずれをコードする核酸でも構わないが、白血病の診断にはレセプター型チロシンキナーゼをコードする核酸が好ましく、FMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)をコードする核酸が好適に用いられる。
本発明において、膜近傍部位とは、レセプター型プロテインキナーゼの細胞膜貫通領域とキナーゼドメイン間に存在し、キナーゼドメインと共に細胞膜内領域を構成する(O.Rosnet,et al.,Blood,Vol.82(4),1110-1119(1993))。
本発明における縦列重複とは、膜近傍部位をコードする核酸の全部又は一部が同方向に1以上繰り返された塩基配列をいう。該繰り返し塩基配列は、直接並んでいてもよいし、繰り返し塩基配列間に任意の塩基配列を含んでいても構わない。また、重複する塩基の数は特に限定されない。さらに、対応する縦列重複間の塩基配列の部分に1又は2以上の塩基の欠失、置換又は付加の変異があっても構わないが、本発明の縦列重複においては、該縦列重複が鎖長変異として検出されればよい。例えば、膜近傍部位をコードする核酸として、配列番号:6〜10の塩基配列を有するcDNA、及び配列番号:11〜15の塩基配列を有するゲノムDNA中に縦列重複が含まれている。
FLT3の膜近傍部位の塩基配列に新規に発見された縦列重複を含む核酸(cDNA、ゲノムDNA)を、M34(配列番号:6,11)、M155(配列番号:7,12)、M162(配列番号:8,13)、M810(配列番号:9,14)及びM839(配列番号:10,15)と命名し、それらの模式図を図2に示す。尚、本発明における縦列重複は、イン・フレームで起こることが望ましく、前記配列番号:6〜10からコードされるアミノ酸配列を、配列番号:1〜5に示す。
本発明の核酸は、前記のような縦列重複を膜近傍部位の塩基配列に有するレセプター型プロテインキナーゼをコードする核酸に係わるものであり、なかでも縦列重複を膜近傍部位の塩基配列に有するFMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)変異体の核酸に係わる。この縦列重複を有する膜近傍部位のアミノ酸配列は、例えば前記のように配列番号:1〜5に記載されており、本発明の核酸は、これらのアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むものである。具体的には例えば配列番号:6〜15に記載の塩基配列を含むものである。より詳しくは、膜近傍部位の核酸を含むFLT3の縦列重複変異体の核酸として、例えば配列番号:16〜20に記載のFLT3の縦列重複変異体をコードする核酸、さらに具体的には配列番号:21〜25に記載のFLT3の縦列重複変異体をコードする塩基配列からなる核酸が挙げられる。また、この核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ膜近傍部位をコードする塩基配列に縦列重複を有する核酸であってもよい。
さらに、本発明の核酸は、縦列重複を含む膜近傍部位をコードする核酸に係わり、例えば配列番号:1〜5に記載のアミノ酸配列をコードする縦列重複を含む核酸、具体的には配列番号:6〜15に記載の核酸、又はこの核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、縦列重複を含む核酸が挙げられる。
ここで、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするとは、例えば、核酸を固定したメンブレンを0.5%SDS、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)、0.1%ポリビニルピロリドン、0.1%フィコール400、0.01%変性サケ精子DNAを含む6×SSC(1×SSCは0.15M NaCl、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0を示す)中で、50℃にて12〜20時間インキュベートすることにより、該核酸にハイブリダイズすることをいうが、この条件に限定されるものではない。
ここで、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするとは、例えば、核酸を固定したメンブレンを0.5%SDS、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)、0.1%ポリビニルピロリドン、0.1%フィコール400、0.01%変性サケ精子DNAを含む6×SSC(1×SSCは0.15M NaCl、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0を示す)中で、50℃にて12〜20時間インキュベートすることにより、該核酸にハイブリダイズすることをいうが、この条件に限定されるものではない。
本発明の核酸は、例えば以下の方法で得ることができる。
まず、種々の病理細胞、特に白血病細胞から精製したRNA を鋳型とし逆転写酵素によりcDNAを合成した後、目的とするレセプター型プロテインキナーゼの膜近傍部位をコードする領域をターゲットとしたプライマーを用いたDNA増幅反応を行い、電気泳動法により増幅DNA断片の長さを比較することにより、鎖長変異を起こしている細胞を検出する。更に、得られた増幅DNA断片の塩基配列を決定することにより、変異が縦列重複であるか否かを同定することができる。
次いで、縦列重複を起こしている細胞より得たRNAを鋳型とし、逆転写酵素によりcDNAを合成した後、目的とするレセプター型プロテインキナーゼのcDNAを特異的に増幅させるプライマーを用いたDNA増幅反応を行なう事により、本発明の新規な縦列重複を有する、レセプター型プロテインキナーゼをコードするcDNAを得ることができる。
また、本発明の核酸は、病理細胞から精製したゲノムDNAを鋳型として用いて、得ることも可能である。
本発明では、病理細胞として白血病細胞を選択し、レセプター型プロテインキナーゼは、好ましくはFLT3を対象とする。
FLT3遺伝子は21のエクソンよりなるが、膜近傍部位はエクソン10の3’側18bp及びエクソン11の5’側117bpにコードされている(O.Rosnet,et al.,Oncogene,Vol,6,1641-1650(1991)) 。DNA増幅反応に使用するプライマーは、エクソン11及びエクソン12領域をカバーするプライマーを選択すればよく、その塩基配列の例として配列番号:26及び27に示す。なお、エクソン11の3’側16bpとエクソン12はチロシンキナーゼドメインの一部をコードしている。
DNA増幅反応の鋳型としてRNAを使用した場合、配列番号:6〜10で示されるDNA増幅断片を、ゲノムDNAを使用した場合、配列番号:11〜15で示されるDNA増幅断片を得る。その結果、これらの断片は、エクソン11内又はエクソン11〜12にかけてのイン・フレーム縦列重複を有することが確認される。
一方、前記イン・フレーム縦列重複を有するFLT3全長をコードしたcDNAの塩基配列を配列番号:21〜25に示す。
本発明のポリペプチドは、前記核酸からコードされるポリペプチドである。具体的には、配列番号:1〜5のアミノ酸配列からなるポリペプチド、配列番号:16〜20で表わされるFLT3の縦列重複変異体が例示される。
本発明のポリペプチドは、該ポリペプチドを発現している細胞より精製して得ることが可能であるが、通常の遺伝子工学的手法を用いることにより得ることもできる。例えば、前記核酸を適当な発現ベクターに組み込み、適当な宿主中で発現させることによりFLT3の縦列重複変異体が得られる。また、膜近傍部位のみをコードするDNA断片を前記発現ベクターに組み込むことにより、本発明のレセプター型プロテインキナーゼの膜近傍部位のみのポリペプチドを得ることもできる。
さらに、本発明のポリペプチドは、融合タンパクとして発現させることも可能である。例えば、目的タンパク質の発現量を増加させるためにN末端に他のタンパク質由来のN末端ペプチド鎖を付加したり、目的タンパク質のN末端又はC末端に適当なペプチド鎖を付加して発現させ、このペプチド鎖に親和性を持つ担体を使用することにより目的タンパク質の精製を容易にすることなどを行うことができる。
本発明のポリペプチドのアミノ酸配列、例えば配列表の配列番号:1〜5、16〜20に記載のアミノ酸配列において、1又は2以上のアミノ酸残基の欠失、置換又は付加の少なくとも1つを生じさせ、かつ膜近傍部位の塩基配列に縦列重複を有する核酸によりコードされるポリペプチドも本発明のポリペプチドに含まれる。即ち、縦列重複した核酸によりコードされる部分にはアミノ酸配列の変異はなく、その他のアミノ酸配列においてアミノ酸残基の欠失、置換又は付加がある場合であってもよく、また縦列重複した核酸によりコードされる部分にアミノ酸残基の欠失、置換又は付加がある場合であってもよい。前記アミノ酸残基の欠失、置換又は付加の導入は、制限酵素、ヌクレアーゼ等を用いる方法や部位特異的変異導入方法(W.Ito,et al.,Gene,Vol.102,67-70(1991))等により、所望の核酸配列に変異を導入し、発現ベクターに組み込んで適当な宿主で発現させることにより、容易に実施される。
本発明において、抗体とは、レセプター型プロテインキナーゼの膜近傍部位の塩基配列に生じた縦列重複を有する核酸によりコードされる部位に特異的に結合する抗体である。該抗体を得るためには、例えば、常法により、配列番号:1〜5のアミノ酸配列を有するペプチドをアジュバントと共に動物に免疫することにより、抗血清として得られる。また、G.Galfare,et al.,Nature,Vol.266,550-552(1977) に記載の方法により、モノクローナル抗体として得ることも可能である。
本発明において、レセプター型プロテインキナーゼの膜近傍部位の塩基配列に生じた縦列重複を有する核酸に特異的に結合する核酸とは、特に限定されないが、例えば、該縦列重複を有する二本鎖DNAのアンチセンス鎖のDNA又はアンチセンス鎖のDNAに対応するRNA等が例示される。
本発明の核酸の検出方法とは、以下の工程を含む。
工程(a) :ヒトの核酸試料を得る工程、
工程(b) :工程(a) にて得られた核酸試料を遺伝子増幅反応に付して、レセプター型プロテインキナーゼをコードする核酸に存在しうる膜近傍部位の縦列重複を含む領域が増幅された核酸断片を得る工程、及び
工程(c) :工程(b) の核酸断片について縦列重複の存在を調べる工程。
工程(a) :ヒトの核酸試料を得る工程、
工程(b) :工程(a) にて得られた核酸試料を遺伝子増幅反応に付して、レセプター型プロテインキナーゼをコードする核酸に存在しうる膜近傍部位の縦列重複を含む領域が増幅された核酸断片を得る工程、及び
工程(c) :工程(b) の核酸断片について縦列重複の存在を調べる工程。
第1に、工程(a)について述べる。本発明に用いられるヒトの核酸試料としては、膜近傍部位の塩基配列に縦列重複を有するレセプター型プロテインキナーゼをコードする核酸であれば特に限定されるものではなく、ゲノムDNA、cDNA、mRNA等が挙げられる。ヒトの核酸試料の調製は、通常行われる公知の方法、例えば、モレキュラー クローニング ア ラボラトリー マニュアル、第2版(T.マニアティス他著、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー社、1989年発行)に記載の方法により行うことができる。
第2に、工程(b)について述べる。工程(a)で得られた核酸試料及び適当なプライマーを用いて、目的とするレセプター型プロテインキナーゼの膜近傍部位に存在しうる変異部位を含む領域をコードする核酸が増幅され、所望の核酸断片を得ることができる。本工程で用いられるDNA増幅反応の方法としては、該領域を増幅できる方法であれば特に限定されないが、RT−PCR法、PCR法、RNAポリメラーゼを利用した核酸増幅法(特開平2−5864号公報、特開平7−203999号公報)や鎖置換増幅法(特公平7−114718号公報、特開平7−88242号公報)のような核酸増幅法を利用することができる。なかでもRT−PCR法又はPCR法が好ましく用いられる。
増幅の対象となる、膜近傍部位の縦列重複を含むを領域としては、例えばFLT3の場合、エクソン10の3’側18bpからエクソン11の5’側117bpにかけての領域の全部又は一部を含む領域が挙げられるが、エクソン11部位が含まれていれば特に限定されない。
RT−PCR法又はPCR法で用いるプライマーとしては、上記の変異部位を含むDNA断片を増幅できるものであれば、特に限定されない。具体的には、配列表の配列番号:26及び27に示した塩基配列を有するプライマー対が例示される。また、PCRの条件も特に限定されず、通常行われる公知の条件でPCR反応が行われる。
第3に、工程(c)について述べる。本工程において、工程(b)で得られる核酸断片について縦列重複の存在が調べられる。縦列重複変異の存在の検出方法としては特に限定されないが、アガロースゲル電気泳動法による増幅DNA断片長を比較する方法が好ましく用いられる。
また、本工程に使用される変異の検出方法として、単鎖高次構造多型(SSCP)を調べる方法を使用することもできる。該方法は、一本鎖DNAが分子内の相互作用により形成する塩基配列に依存した高次構造の違いを、電気泳動での移動速度の差として調べる方法である(Proc. Natl. Acad. Sci. USA、86:2766 〜2770、1989)。工程(b)で得られる核酸断片を前記の文献に記載の条件で電気泳動に付し、その移動速度を正常レセプター型プロテインキナーゼ由来の核酸断片のものと比較することにより、変異の有無を検出することができる。
他の検出法としては、前記工程(c)をその他の変異検出方法に変更した方法がある。変異の検出には、例えば変異部位を含む適当なDNA断片をプローブに用いるハイブリダイゼーション法や、DGGE法(Val C.Sheffield et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA Vol.86,232-236(1989)) のような公知の変異検出方法が使用できる。また、MutSタンパク質を用いる変異の検出方法が知られている(特開平7−327698号公報)。
前記の方法により鎖長変異が確認されたDNA断片について、その塩基配列の決定を行うことにより、変異の同定を行うことができる。塩基配列の決定には、通常使用される方法を用いることができ、例えば、増幅DNA断片を適当なベクターにクローニングして塩基配列を決定する方法や、あるいは増幅断片そのものを鋳型としてその塩基配列を決定する方法がある。
このように、本発明は膜近傍部位の塩基配列に縦列重複を有するレセプター型プロテインキナーゼをコードする核酸を検出するための、前記の本発明の核酸の使用を提供するものである。
このように、本発明は膜近傍部位の塩基配列に縦列重複を有するレセプター型プロテインキナーゼをコードする核酸を検出するための、前記の本発明の核酸の使用を提供するものである。
本発明の核酸の検出方法は、急性骨髄性白血病(AML)のFAB(French-American-British)分類において、M2、M4及びM5の診断に供することができる。FAB(French-American-British)分類では、AMLの病型を、M1(骨髄芽球性(成熟能なし))、M2(骨髄芽球性(成熟能あり))、M3(前骨髄球性)、M4(骨髄単球性)、M5(単球性)及びM6(赤白血病)の6つに分類している(新臨床検査技師講座、10、血液学、第75頁、医学書院)。
本発明の縦列重複をもつFLT3遺伝子を有する患者は、前記M2、M4及びM5に属し、一旦症状が寛解したにもかかわらず、再発し死に至ることがわかり、その予後は悪い結果となることが示唆される。従って、本発明の検出方法によりAMLの病理学的判断に有用な検査方法が提供される。
なお、前記患者のうち、症状が寛解された時点で入手できた患者の骨髄細胞のゲノムDNAを用いた変異の検出を行ったところ、膜近傍部位での縦列重複は認められない。従って、この変異は体細胞性変異であると推定される。
また、縦列重複を有する本発明の核酸は、FAB分類におけるAMLの他、白血病の前段階である骨髄異形成症候群(MDS: Myelodysplastic Syndrome)や異形成を伴うAML(AML with dysplasia) 等のマーカーとなる。従って、本発明の検出方法は、これらの疾患の病理学的判断に有用な検査方法となる。
前記の検出方法を利用することにより、本発明の核酸を検出するためのキットを提供することができる。具体的には、前記記載の検出方法により膜近傍部位の塩基配列に縦列重複を有するレセプター型プロテインキナーゼをコードする核酸を検出するためのキットであって、レセプター型プロテインキナーゼ遺伝子に存在しうる縦列重複を含む領域を増幅するためのプライマーを含有することを特徴とするものである。
かかるキットを用いることにより、前記AML等の診断が容易に実施できる。
本発明では、さらに前記のような縦列重複を有する核酸によりコードされるポリペプチドを次のような工程により検出することができる。
工程1 :ヒトの蛋白質試料を得る工程、
工程2 :工程1にて得られたタンパク試料の膜近傍部位の塩基配列について縦列重複の存在を調べる工程、である。
工程1 :ヒトの蛋白質試料を得る工程、
工程2 :工程1にて得られたタンパク試料の膜近傍部位の塩基配列について縦列重複の存在を調べる工程、である。
第1に、工程1について述べる。ヒトの蛋白質試料の調製は、本発明のポリペプチドが発現していると考えられる細胞(例えば、FLT3の場合白血病細胞)より膜蛋白質を調製する事により実施できる。
第2に、工程2について述べる。縦列重複変異の検出方法としては特に限定されないが、縦列重複変異を含む核酸によりコードされる膜近傍部位と特異的に結合する標識抗体を用いることにより実施できる。
本工程は、例えば、工程1で得られた蛋白質試料のSDS−PAGEによるタンパク分離、続いてイムノブロッティング法による目的タンパク質の検出からなる方法より実施することが出来る。
本発明の別の態様において、前記核酸もしくはポリペプチド又はこれらに特異的に結合する核酸もしくは抗体を使用して、白血病細胞、造血幹細胞等の増殖、免疫応答ならびにシグナル情報伝達の制御を行う方法が提供される。
中でもその好ましい実施態様としては腫瘍免疫療法への応用がある。従来から癌細胞に特異的に発現される蛋白質の癌特有なペプチドは、癌細胞に対するT 細胞免疫応答の標的となることが知られており、その実施方法としては例えば以下の報告に述べられている技術が利用できる。すなわち、ヒトT 細胞において第12番アミノ酸グリシンを他のアミノ酸に置換したras ペプチドに特異的に反応し、HLA-DRの拘束性を有するCD4+T 細胞が分離され(Jung, S. J. Exp. Med. 173, 273 1991) 、61番アミノ酸に変異をもつras 蛋白質を産生できる組み替えワクシニアウイルスで免疫されたマウスから、その変異部位を含む8アミノ酸からなるペプチドに対するCTL(cytotoxic T lymphocyte) を誘導できる(Skipper, J. J. Exp. Med. 177, 1493 1993) 。さらに、遺伝子組み替えで作製した可溶性変異ras 蛋白質で免疫したマウスでは、同一変異を持った癌細胞のin vivo での増殖が抑制され(Fenton, R. G. J. Natl. Cancer Inst. 85, 1294 1993) 、変異ras ペプチドで感作した脾臓細胞から、同一の変異ras を発現している癌細胞に細胞障害活性を示すCTL が得られる(Peace,D.J. J. Exp. Med. 179, 473 1994) 。一方、慢性骨髄性白血病によく検出されるbcr-abl キメラ蛋白質は、高いチロシンキナーゼ活性を有し、白血病の発症や白血病細胞の増殖に重要な役割を演じている。この融合蛋白質の融合部位近傍のペプチドで免疫することにより、本融合蛋白質に反応性のT 細胞が得られる(Chen, W. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89, 1468 1992) 。さらに、本融合遺伝子に対するアンチセンスDNA又はRNAは、in vivoで本遺伝子発現腫瘍の増殖を抑制することができる(Skorski, T. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91 4504 1994) 。
従って、膜近傍部位の塩基配列に生じた縦列重複を有する核酸からコードされる本発明のペプチドで免疫することにより、該ペプチドを含むレセプター型プロテインキナーゼに反応性のT 細胞が得られ、該キナーゼを発現している細胞の増殖を制御することが可能となる。
また、本発明の縦列重複を有することが細胞増殖制御に関与している場合、該遺伝子に対するアンチセンスDNA又はRNAによりシグナル伝達機構を調節し、細胞増殖の制御をすることができる。
レセプター型プロテインキナーゼは、細胞膜外領域にリガンドが結合すると、コンフォメーションが変化して二量体を形成し、細胞膜内領域のキナーゼドメインの活性が上昇する。それにより、自己リン酸化が起こったり、該キナーゼの基質をリン酸化する。そこにさまざまなシグナル伝達分子が関与し、細胞内へ伝達された情報は細胞形態変化、細胞運動、形態形成、細胞増殖、癌化、分化、アポトーシスなどさまざまな生物学的現象を引き起こす。悪性度の高い急性骨髄性白血病細胞は、FLT3リガンドと強い親和性を有し、細胞増殖が促進されることが報告されており(Piacibello, W. Blood 86, 4105 1995; Lisovsky, M. Blood 86, 22a 1995; McKenna, H. J. Exp. Hematol. 24, 378 1996; Dehmel, U. Leukemia 10, 261 1996)、本発明のFLT3縦列重複変異体発現細胞では、FLT3リガンドからのシグナル伝達システムが非常に活性化されていることが予想される。従って、該変異体発現造血幹細胞は、強力な増殖能をもつ造血幹細胞の供給源として提供され、正常のFLT3発現細胞と比較することにより、種々の薬剤のスクリーニングに適した材料と方法を提供することができる。
こうして、本発明の方法を利用することにより、血液細胞疾患、造血幹細胞疾患等の検査や治療への応用も可能である。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
1)FLT 3遺伝子発現パターンの解析
急性白血病患者80例(小児ALL50 症例、成人AML30 症例)について、FLT3遺伝子の発現解析をRT-PCR法により行った。使用したプライマーは、配列表の配列番号:26及び27に示される塩基配列を有し、細胞膜貫通領域から膜近傍部位を完全にカバーし増幅できるように設計した。前記プライマー対を用いると、正常なFLT3が転写されていた場合、増幅DNA産物は366bp 長となる。
急性白血病患者80例(小児ALL50 症例、成人AML30 症例)について、FLT3遺伝子の発現解析をRT-PCR法により行った。使用したプライマーは、配列表の配列番号:26及び27に示される塩基配列を有し、細胞膜貫通領域から膜近傍部位を完全にカバーし増幅できるように設計した。前記プライマー対を用いると、正常なFLT3が転写されていた場合、増幅DNA産物は366bp 長となる。
前記患者の末梢血または骨髄細胞から、全RNA をTrizol試薬(Invitrogen社製)を用いて抽出し、RT-PCRキット(タカラバイオ社製)及びThermal Cycler (タカラバイオ社製)を用いて、以下の条件でDNA増幅反応を行った。全RNA より逆転写酵素を用いてcDNAを合成し、1μl のcDNA(40ngの全RNA に相当),200 μM のdNTP混合物,1xPCR緩衝液, 2UのTaq DNA ポリメラーゼ, 及び各20pmolの前記プライマーを含む50μl の反応液中、94℃5分で該反応液を加熱後、64℃30秒、72℃45秒、94℃30秒の温度サイクルを35回繰り返し、最後に72℃5分間処理した。尚、RNA の品質をチェックするため、β−アクチンをターゲットとして、配列表の配列番号:28及び29に示すプライマー対を用い、同様にRT-PCRを行った。こうして得られた増幅DNA産物を臭化エチジウムを含む2〜3%アガロースゲル(FMC 社製)にて電気泳動を行い、UV下検出した。図1に電気泳動パターンの1例を示し、結果を表1に示す。
表1より、ALL50 症例中39症例(78% )に、またAML30 症例中22症例(73%) にFLT 3遺伝子の転写産物が認められた。このうち、FLT3陽性の AML 22 症例中5症例(23% )において予想された366bp よりも長い増幅DNA産物が検出され、FLT 3遺伝子の鎖長変異が観察された。尚、4症例(M34,M155,M810,M839) では予想された366bp のバンドとそれより長いバンドが検出され、1症例(M162)では366bp のバンドは検出されず、それより長いバンドのみが検出された。
2)FLT3遺伝子の鎖長変異産物の塩基配列の解析
前記5症例における遺伝子の鎖長変異をさらに詳細に検討するため、アガロースゲルより増幅DNA産物を精製し、エクソン11及び12領域の塩基配列を決定した。その結果、これらの鎖長変異は、膜近傍部位の塩基配列における縦列重複に起因していることが確認された。すなわち、症例M34,M162,M839 ではエクソン11内での39bpまたは60bpの縦列重複が認められ、症例M810では4bp(GGCA)の挿入を含む26bpの縦列重複が認められた。さらに、症例M155ではエクソン11の直後にエクソン12の最初の16bp、1個のシトシン残基の挿入、更にエクソン11の後半46bpからなる63bpの縦列重複が確認された。得られた塩基配列を配列表の配列番号:6〜10に示し、これらの縦列重複の模式図を図2に示す。
前記5症例における遺伝子の鎖長変異をさらに詳細に検討するため、アガロースゲルより増幅DNA産物を精製し、エクソン11及び12領域の塩基配列を決定した。その結果、これらの鎖長変異は、膜近傍部位の塩基配列における縦列重複に起因していることが確認された。すなわち、症例M34,M162,M839 ではエクソン11内での39bpまたは60bpの縦列重複が認められ、症例M810では4bp(GGCA)の挿入を含む26bpの縦列重複が認められた。さらに、症例M155ではエクソン11の直後にエクソン12の最初の16bp、1個のシトシン残基の挿入、更にエクソン11の後半46bpからなる63bpの縦列重複が確認された。得られた塩基配列を配列表の配列番号:6〜10に示し、これらの縦列重複の模式図を図2に示す。
特徴的なことは、これらの縦列重複がイン・フレームで起こっていることであり、実際に発現されているポリペプチドにこれらの変異が反映される。これらの塩基配列からコードされるアミノ酸配列を、配列表の配列番号:1〜5に示す。
3)ゲノムDNAの塩基配列の解析
前記5症例患者の骨髄細胞由来のFLT3ゲノムDNAを鋳型としたPCR 法による増幅DNA産物を解析した。増幅条件は、50ngのゲノムDNA、、200 μM のdNTP混合液及び20pmolのプライマーを含むPCR 緩衝液に、2UのTaq DNA ポリメラーゼ(タカラバイオ社)を加えて全量50μl とし、PCR 反応を行った。エクソン10からエクソン19までを、各エクソン毎に個別に増幅DNA反応を行ったところ、配列表の配列番号30、31及び32、33のプライマーを対にして用い、エクソン11及びエクソン12を増幅した場合に、mRNAを解析した時と同様に鎖長変異が認められた。PCR 産物はQIAEXII(QIAGEN社)で精製し、pCRII ベクター(Invitrogen社)にクローニングし、塩基配列の解析を行ったところ、cDNAの塩基配列(配列番号:21〜25)と同様な結果が得られた。これらをまとめて図2に示す。
前記5症例患者の骨髄細胞由来のFLT3ゲノムDNAを鋳型としたPCR 法による増幅DNA産物を解析した。増幅条件は、50ngのゲノムDNA、、200 μM のdNTP混合液及び20pmolのプライマーを含むPCR 緩衝液に、2UのTaq DNA ポリメラーゼ(タカラバイオ社)を加えて全量50μl とし、PCR 反応を行った。エクソン10からエクソン19までを、各エクソン毎に個別に増幅DNA反応を行ったところ、配列表の配列番号30、31及び32、33のプライマーを対にして用い、エクソン11及びエクソン12を増幅した場合に、mRNAを解析した時と同様に鎖長変異が認められた。PCR 産物はQIAEXII(QIAGEN社)で精製し、pCRII ベクター(Invitrogen社)にクローニングし、塩基配列の解析を行ったところ、cDNAの塩基配列(配列番号:21〜25)と同様な結果が得られた。これらをまとめて図2に示す。
レセプター型プロテインキナーゼ膜近傍部位の変異と病理学的関係の解析
レセプター型プロテインキナーゼ膜近傍部位の変異と病理学的関係を解析するために、症状の病理学的分類とFLT3遺伝子との関係を表1に示した。膜近傍部位の塩基配列に縦列重複の認められた5例は、FAB分類におけるM2(骨髄芽球性(成熟能あり))、M4(骨髄単球性)又はM5(単球性)に属し、いずれの症例も一旦完全寛解を認めたものの再発し、死亡した症例であった。
レセプター型プロテインキナーゼ膜近傍部位の変異と病理学的関係を解析するために、症状の病理学的分類とFLT3遺伝子との関係を表1に示した。膜近傍部位の塩基配列に縦列重複の認められた5例は、FAB分類におけるM2(骨髄芽球性(成熟能あり))、M4(骨髄単球性)又はM5(単球性)に属し、いずれの症例も一旦完全寛解を認めたものの再発し、死亡した症例であった。
なお、チロシンキナーゼドメインをコードするエクソン領域の塩基配列の解析も行ったが、これらの領域には、変異は認められなかった。
従って、FLT3の膜近傍部位をコードする遺伝子領域のイン・フレーム縦列重複と、単球の増殖を伴うAMLとの関連が示唆された。
また、完全寛解した時点での3例(M34,M162,M810)の骨髄細胞からのDNA 試料においては、このような鎖長変異が検出されなかったことから、本発明の縦列重複は体細胞性変異であった。
本発明により、膜近傍部位の塩基配列に縦列重複変異を有する新規レセプター型プロテインキナーゼ、およびその塩基配列、アミノ酸配列情報が提供される。また、本発明を利用した白血病などの病理学的診断、検査方法、及びそれに関するキット、検査試薬が提供される。さらに、本発明を利用した造血幹細胞や白血病細胞に代表される細胞の増殖分化、癌化、免疫応答、シグナル伝達の状態を制御、解析する方法およびそれに関するキット、試薬を提供できる。
Claims (3)
- 血液細胞疾患又は造血幹細胞疾患の治療のための薬剤のスクリーニングに適した材料の提供のための、(A)膜近傍部位のアミノ酸配列における縦列重複の変異、又は
(B)エキソン11若しくはエキソン11〜12を含む領域の塩基配列における縦列重複の変異
を有するものであり、該縦列重複の変異が、白血病及び/又は骨髄異形成症候群で見出されるものである、FMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)をコードする縦列重複変異体の核酸が発現している細胞の使用。 - 血液細胞疾患又は造血幹細胞疾患の治療のための薬剤のスクリーニングのための、
(A)膜近傍部位のアミノ酸配列における縦列重複の変異、又は
(B)エキソン11若しくはエキソン11〜12を含む領域の塩基配列における縦列重複の変異
を有するものであり、該縦列重複の変異が、白血病及び/又は骨髄異形成症候群で見出されるものである、FMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)をコードする縦列重複変異体の核酸が発現している細胞の使用。 - (1)(A)膜近傍部位のアミノ酸配列における縦列重複の変異、又は
(B)エキソン11若しくはエキソン11〜12を含む領域の塩基配列における縦列重複の変異
を有するものであり、該縦列重複の変異が、白血病及び/又は骨髄異形成症候群で見出されるものである、FMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)をコードする縦列重複変異体の核酸、又は
(2) 前記(1)記載の核酸の断片であって、前記(A)若しくは前記(B)の変異の部位を含む核酸の、血液細胞疾患若しくは造血幹細胞疾患の細胞の増殖、免疫応答又はシグナル情報伝達の制御を行なうための使用。
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