JP2008228621A - びまん性大細胞性リンパ腫をサブタイプ分けする方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】
本発明の方法は、
びまん性大細胞性リンパ腫に罹患した患者由来の生体試料中のゲノムDNA若しくはcDNA中の、Notch2タンパク質のTAD、PESTおよびそのC末端側をコードする核酸領域中において、1又は複数のアミノ酸配列の変異を生じさせるような、1又は複数の塩基の欠失、置換若しくは付加の塩基変異を有するタイプと、塩基変異を有しないタイプとを分類する
ことを特徴とする。
【選択図】なし
Description
血液中の白血球は骨髄球系の細胞とリンパ球系の細胞に大まかに分類される。リンパ球系の細胞は成熟すると血管、リンパ管を通ってリンパ節に移動する。悪性リンパ腫はリンパ球の悪性腫瘍(すなわちリンパ球がクローン性に異常増殖する疾患)であり、リンパ節あるいはそのほかの様々なところに塊(しこり)を作る。
という場合にDLBCLであると判断される。
Immunoblastic(免疫芽球性)
T cell/histiocyte rich(T細胞/組織球に富む)
Anaplastic(アナプラスティック)
Notchタンパク質は、ヘテロ二量体構造の細胞表面受容体である。Notchは、複数の器官における発生細胞運命決定づけを指示するために繰り返し使用される。血球新生及び免疫系の発生の際に、Notchは、T細胞/B細胞系列の特定及び脾臓の辺縁帯(marginal zone)B細胞の形成に重要な役割を果たす。初期の胚発生においては、Notchは造血幹細胞の形成に必須である。Notchシグナルは、進化的に保存されてきた経路であり、発生及び組織造血形成の多様な側面を制御する。
Maillard et al., Immunity, Vol.19, 781-791, 2003 Ellisen et al., Cell, Vol.66, 649-, 1991 Radtke et al., Immunity Vol.10, 547-558, 1999 Weng et al., Science, Vol.306, 269-271, 2004 Lee et al., Leukemia, Vol.19, 1841-1843, 2005 Saito et al., Immunity, Vol.18, 675-685, 2003 Witt et al., Journal of Immunology, Vol.171, 2783-2788, 2003 Maillard, et al., Annu. Rev. Immunol. Vol.23, 945-74, 2005 Y. Nannya et al., Cancer Res. Vol.65, 6071, 2005 L. Wang et al., Blood, Vol.102, 2597, 2003
本発明は、びまん性大細胞性リンパ腫をサブタイプ分けするための新規な方法を提供する。
びまん性大細胞性リンパ腫に罹患した患者由来の生体試料中のゲノムDNA若しくはcDNA中の、Notch2タンパク質のTAD、PESTおよびそのC末端側(PEST周辺領域)をコードする核酸領域中において、1又は複数のアミノ酸配列の変異を生じさせるような、1又は複数の塩基の欠失、置換若しくは付加の塩基変異を有するタイプと、塩基変異を有しないタイプとを分類する、ことを含む
ことを特徴とする。
PEST周辺領域、特にPESTドメインはNotch2タンパク質の安定性に寄与すると考えられている。本発明者らは、病理診断でびまん性大細胞性リンパ腫と診断された患者63名のうち5名(7.9%)において1又は複数のアミノ酸配列の変異を生じさせるような、1つ(又は複数)の塩基の欠失、置換若しくは付加の塩基変異を有することを見出した。これらのサブタイプでは、塩基変異によりNotch2タンパク質がPESTドメイン中で未成熟のまま終始する、あるいは、アミノ酸変異を生じ、その結果、Notch2タンパク質の半減期の増加、及び/又は生物活性の亢進が生じることが見出された。
本発明において、塩基変異を検出するための方法は特に限定されず、単一の塩基若しくは複数の塩基の変異を検出するための公知の方法を使用することができる。
PCR−SSCP法は、点突然変異を含む塩基変異による、一本鎖DNAの高次構造変異のゲル移動度の差を検出するものである。具体的には、一本鎖DNAは分子内水素結合などにより、その塩基配列に特異的な高次構造をとるため互いに相補的な一本鎖DNAアリルを電気泳動すると異なる位置に泳動される。DNA断片内の一塩基置換によってもこの一本鎖DNAの高次構造は変化し、電気泳動の際変化のないものとこの成る移動を示す。このような多型を一本鎖DNA高次構造多型(single−strand conformation polymorphism:SSCP)という。
1)各プライマーの長さが15−30塩基であること;
2)各プライマーの塩基配列中のG+Cの割合が30−70%であること;
3)各プライマーの塩基配列中のA、T、GおよびCの分布が部分的に大きく偏らないこと;
4)プライマー対によって増幅される核酸増幅産物の長さが40−2000塩基、好ましくは150−400塩基であること;そして
5)各プライマー自身の塩基配列中、又はプライマー同士の塩基配列間に相補的な配列部分が存在しないこと
を満たすように、PEST周辺領域の塩基配列と同じ塩基配列若しくは上記領域に相補的な塩基配列を有する一本鎖DNAを製造し、または、必要であればPEST周辺領域の塩基配列に対する結合特異性を失わないように修飾した上記一本鎖DNAを製造する
ことを含む方法により、プライマー対を作成できる。
SSCP法と同様に、点突然変異を含む塩基変異による、一本鎖DNAの高次構造変異を検出するための方法として、dHPLC(denaturing high performance liquid chromatography(dHPLC))も知られている。dHPLCは、PCR産物を一本鎖とした後、SSCP法のアクリルアミドゲルの代わりにHPLCに供するものである。dHPLC法は放射性同位元素(RI)を使用しない、という点において臨床検査での使用に好ましい。近年、特にPCR−dHPLC法などで簡便に変異を検出する機器が改良されている。
PCR−APLP法は、塩基変異に基づくPCR産物の鎖長の差異を検出する方法である。塩基の点突然変異ではなく、塩基変異により複数の塩基が欠失または付加されているような領域が存在する場合、塩基変異の有無が直接PCR産物の鎖長の差異(APLP(amplicon length polymorphism))として表われるので、アガロースゲル又はアクリルアミドゲルにおける電気泳動における移動度の差異として検出することが可能である。
PCR増幅後、塩基変異部位を制限酵素により変異部位を認識・切断し、制限酵素断片長の多型(restriction fragment length polymorphism;RFLP)またはCAPS(cleaved amplified polymorphic sequences)をアガロースゲル又はアクリルアミドゲルにおける電気泳動における移動度の差異として検出する方法である。検出の簡便さ・明確さから優れているが、SSCP法と異なり既知の塩基変異しか検出できない。
特に1塩基の変異の検出を含む塩基変異の検出に、DNAアレイを利用してもよい。DNAアレイは、ガラス基板上に数千〜数満のDNA分子を高密度に配列したデバイスであり、その利用によりcDNAやcRNA,あるいはゲノムDNAとのハイブリダイゼーションによって、遺伝子多型(疾患と関連する塩基変異を含む)をゲノムスケールでの解析が可能である。現在ではcDNAを固定化したDNAマイクロアレイ(狭義の「DNAアレイ」と、オリゴヌクレオチドをチップ上で合成するオリゴ型のDNAチップが知られている。例えば、後者では25塩基ないし80塩基の長さのcDNAを各スポットに固定化することが可能である。例えば、アフィメトリックス社のオリゴアレイのプローブは、一般に25塩基である。
本発明はまた、びまん性大細胞性リンパ腫をサブタイプ分けする方法に使用するためのキットを提供する。本発明のキットは、塩基変異の検出を例えばPCR−SSCP法、PCR−dHPLC法、PCR−APLP法、PCR−RFLP法等を用いて行う場合に、PCR反応に使用するためのプライマー対を含む。
1)各プライマーの長さが15−30塩基であること;
2)各プライマーの塩基配列中のG+Cの割合が30−70%であること;
3)各プライマーの塩基配列中のA、T、GおよびCの分布が部分的に大きく偏らないこと;
4)プライマー対によって増幅される核酸増幅産物の長さが、PCRに続く各工程での検出に適した長さであること;そして
5)各プライマー自身の塩基配列中、又はプライマー同士の塩基配列間に相補的な配列部分が存在しないこと
満たすように、PEST周辺領域の塩基配列と同じ塩基配列若しくは上記ドメインに相補的な塩基配列を有する一本鎖DNAを製造し、または、必要であればPESTドメインの塩基配列に対する結合特異性を失わないように修飾した(例えば、1ないし3塩基の塩基変異(欠失、置換又は付加)を施した)上記一本鎖DNAを製造する
ことを含む方法により、プライマー対を作成できる。
限定されるわけではないが、本発明は下記の実施態様(1)−(9)を含む。
態様(1)
びまん性大細胞性リンパ腫をサブタイプ分けする方法であって、
びまん性大細胞性リンパ腫に罹患した患者由来の生体試料中のゲノムDNA若しくはcDNA中の、Notch2タンパク質のTAD、PESTおよびそのC末端側をコードする核酸領域中において、1又は複数のアミノ酸配列の変異を生じさせるような、1又は複数の塩基の欠失、置換若しくは付加の塩基変異を有するタイプと、塩基変異を有しないタイプとを分類する
ことを含む、前記方法。
Notch2のTAD、PESTおよびそのC末端側をコードする核酸領域が、配列番号1の塩基6371−7669の塩基配列からなる、態様(1)に記載の方法。
Notch2のTAD、PESTおよびそのC末端側をコードする核酸領域のうち、配列番号1の塩基7120、7454及び/又は7614に相当する塩基を含む領域において、1又は複数の塩基の欠失、置換若しくは付加の塩基変異を有するタイプと、塩基変異を有しないタイプとを分類する、態様(1)又は(2)に記載の方法。
Notch2のTAD、PESTおよびそのC末端側をコードする核酸領域のうち、配列番号1の塩基7120、7454及び/又は7614に相当する塩基が、欠失又は置換されている塩基変異を有するタイプと、塩基変異を有しないタイプとを分類する、態様(3)に記載の方法。
Notch2タンパク質のTAD、PESTおよびそのC末端側をコードする核酸領域中の塩基変異によって、Notch2タンパク質の生物活性が亢進している、態様(1)ないし(4)のいずれか1項に記載の方法。
PCR−SSCP法、dHPLC法、PCR−APLP法、PCR−RFLP法、DNAアレイからなるグループから選択される手法を用いて塩基変異を検出する、態様(1)ないし(5)のいずれか1項に記載の方法。
配列番号3と4の塩基配列からなるプライマー対、配列番号7と8の塩基配列からなるプライマー対、配列番号9と10の塩基配列からなるプライマー対、並びに配列番号7と10の塩基配列からなるプライマー対、から成るグループから選択されるプライマー対を用いたPCR工程を含む手法を用いて塩基変異を検出する、態様(6)に記載の方法。
配列番号1の塩基7120、7454及び/又は7614に相当する塩基を含む40−2000塩基の長さの核酸領域をPCR反応により増幅するためのプライマー対を含む、びまん性大細胞性リンパ腫をサブタイプ分けする方法に使用するためのキット。
配列番号3と4の塩基配列からなるプライマー対、配列番号7と8の塩基配列からなるプライマー対、配列番号9と10の塩基配列からなるプライマー対、並びに配列番号7と10の塩基配列からなるプライマー対から成るグループから選択されるプライマー対を含む、態様(8)に記載のキット。
本実施例では、生体試料(腫瘍摘出試料)中の、塩基変異をPolymerase chain reaction−Single Strand Conformational Polymorphism (PCR−SSCP)を用いて検出した。
GTTCTCTGCTTCCCCTTACCT (配列番号11)
N2Exon26RV:
GCCTTGAAGTTCAGAAACCAA (配列番号12)
エキソン27は、膜貫通サブユニットのN端に存在するHDドメイン(HDTMドメイン)をコードする。エキソン27を以下のプライマーを用いて増幅した。
N2Exon27FW:
TACCCCCATCTCTCCTCCTC (配列番号13)
N2Exon27RV:
AATTGTTCCCCCAATTGACA. (配列番号14)
エキソン34は、転写活性化ドメイン(TADドメイン)およびC末端のPESTドメインをコードする。TADドメインとPESTドメインを5つに分けて(TAD領域1つ、PEST領域4つ)アンプリコンを得た。
TADドメインコード領域
N2TADFW:
TCCCCTGTTGATTCCCTAGA (配列番号15)
N2TADRV:
CACAATGTGGTGGTGGGATA (配列番号16)
PESTドメイン
N2PEST−1FW:
GCACTGTGCTTCCCTCAGT (配列番号3)
N2PEST−1RV:
CTGCCTTTAGGGATGAGCTG (配列番号4)
N2PEST−2FW:
ACCCATCCTGGCATAGCTC (配列番号5)
N2PEST−2RV:
TAGGCTGGGAGAATGGTCTG (配列番号6)
N2PEST−3FW:
TTTGCCCAGTGTGGCTTT (配列番号7)
N2PEST−3RV:
GGTGATGAACTTGACCACTG, (配列番号8)
N2PEST−4FW:
ACACCCAGTCACAGTGGTCA (配列番号9)
N2PEST−4RV:
TGTCTCTACACTGGAGGTGGA (配列番号10)
本実施例では実施例1において、配列番号1の塩基7454において塩基CがTに変異していた検体を使用して、高密度オリゴヌクレオチドマイクロアレイを用いたゲノムコピー数の決定を行った。
本実施例では実施例1の実施例1において、配列番号1の塩基7454において塩基CがTに変異していた検体(検体番号W109539)を使用して、FISH(Fluorescence in situ hybridization)分析行った。
公知のルシフェラーゼ感受性アッセイを使用して、Notch2の転写活性を調べた。
具体的には、先ず、野生型Notch2(wtN2)及び配列番号1の塩基7454において塩基CがTに変異していたノンセンス突然変異を有するNotch2(nsmN2)を発現する1×105個のCHO(r)細胞(wtN2/CHO(r)及びnsmN2/CHO(r))を6ウェル ディッシュ中に調製した。次の日に、pGa981−6ルシフェラーゼレポータープラスミドをSuperfectTMトランスフェクション試薬(QIAGEN,Hilden,Germany)を用いてトランスフェクトした。
本実施例では、実施例1の実施例1において、配列番号1の塩基7454において塩基CをTに変異させたcDNA(Mut.ahNotch2)を使用して、[S]標識パルスチェイス分析を行い、塩基変異によるNotch2タンパク質の半減期の変化を調べた。使用した3*Flag/Mut.ahNotch2ペプチドの構造、及び対照の3*Flag/Wild.ahNotch2ペプチドの構造を図6に示す。これらを用いて、公知の手法を用いてパルスチェイス分析を行った。
Claims (9)
- びまん性大細胞性リンパ腫をサブタイプ分けする方法であって、
びまん性大細胞性リンパ腫に罹患した患者由来の生体試料中のゲノムDNA若しくはcDNA中の、Notch2タンパク質のTAD、PESTおよびそのC末端側をコードする核酸領域中において、1又は複数のアミノ酸配列の変異を生じさせるような、1又は複数の塩基の欠失、置換若しくは付加の塩基変異を有するタイプと、塩基変異を有しないタイプとを分類する
ことを含む、前記方法。 - Notch2のTAD、PESTおよびそのC末端側をコードする核酸領域が、配列番号1の塩基6371−7669の塩基配列からなる、請求項1に記載の方法。
- Notch2のTAD、PESTおよびそのC末端側をコードする核酸領域のうち、配列番号1の塩基7120、7454及び/又は7614に相当する塩基を含む領域において、1又は複数の塩基の欠失、置換若しくは付加の塩基変異を有するタイプと、塩基変異を有しないタイプとを分類する、請求項1又は2に記載の方法。
- Notch2のTAD、PESTおよびそのC末端側をコードする核酸領域のうち、配列番号1の塩基7120、7454及び/又は7614に相当する塩基が、欠失又は置換されている塩基変異を有するタイプと、塩基変異を有しないタイプとを分類する、請求項3に記載の方法。
- Notch2タンパク質のTAD、PESTおよびそのC末端側をコードする核酸領域中の塩基変異によって、Notch2タンパク質の生物活性が亢進している、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
- PCR−SSCP法、dHPLC法、PCR−APLP法、PCR−RFLP法、DNAアレイからなるグループから選択される手法を用いて塩基変異を検出する、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
- 配列番号3と4の塩基配列からなるプライマー対、配列番号7と8の塩基配列からなるプライマー対、配列番号9と10の塩基配列からなるプライマー対、並びに配列番号7と10の塩基配列からなるプライマー対、から成るグループから選択されるプライマー対を用いたPCR工程を含む手法を用いて塩基変異を検出する、請求項6に記載の方法。
- 配列番号1の塩基7120、7454及び/又は7614に相当する塩基を含む40−2000塩基の長さの核酸領域をPCR反応により増幅するためのプライマー対を含む、びまん性大細胞性リンパ腫をサブタイプ分けする方法に使用するためのキット。
- 配列番号3と4の塩基配列からなるプライマー対、配列番号7と8の塩基配列からなるプライマー対、配列番号9と10の塩基配列からなるプライマー対、並びに配列番号7と10の塩基配列からなるプライマー対から成るグループから選択されるプライマー対を含む、請求項8記載のキット。
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JP2007070859A JP2008228621A (ja) | 2007-03-19 | 2007-03-19 | びまん性大細胞性リンパ腫をサブタイプ分けする方法 |
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JP2015505668A (ja) * | 2011-11-16 | 2015-02-26 | オンコメッド ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド | ヒトnotch受容体変異およびその使用 |
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2007
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