JP2008228621A - びまん性大細胞性リンパ腫をサブタイプ分けする方法 - Google Patents

びまん性大細胞性リンパ腫をサブタイプ分けする方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、びまん性大細胞性リンパ腫をサブタイプ分けするための新規な方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明の方法は、
びまん性大細胞性リンパ腫に罹患した患者由来の生体試料中のゲノムDNA若しくはcDNA中の、Notch2タンパク質のTAD、PESTおよびそのC末端側をコードする核酸領域中において、1又は複数のアミノ酸配列の変異を生じさせるような、1又は複数の塩基の欠失、置換若しくは付加の塩基変異を有するタイプと、塩基変異を有しないタイプとを分類する
ことを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、びまん性大細胞性リンパ腫をサブタイプ分けする方法及び当該方法に使用するためのキットに関する。
びまん性大細胞リンパ腫
血液中の白血球は骨髄球系の細胞とリンパ球系の細胞に大まかに分類される。リンパ球系の細胞は成熟すると血管、リンパ管を通ってリンパ節に移動する。悪性リンパ腫はリンパ球の悪性腫瘍(すなわちリンパ球がクローン性に異常増殖する疾患)であり、リンパ節あるいはそのほかの様々なところに塊(しこり)を作る。
悪性リンパ腫はホジキン病と非ホジキンリンパ腫に大別される。さらに、非ホジキンリンパ腫は進行の早い(aggressive)タイプと進行の遅い(indolent)タイプに二分される。これらは、腫れたリンパ節(あるいはリンパ節以外の病変部位)を手術でとって(生検)、染色ないし免疫染色を行い顕微鏡で観察する、病理組織診断によって決定される。
「びまん性大細胞性リンパ腫」(diffuse large B−cell lymphoma、DLBCL)とは、非ホジキン性の悪性リンパ腫に属し、末梢性B細胞性腫瘍の一種である。大型異型細胞のびまん性浸潤が認められるB細胞性リンパ腫瘍として大別される。具体的には病理診断で大型(正常マクロファージの核と同等ないしこれより大きく、正常のリンパ球の2倍をこえる大きさ)のB細胞様の腫瘍細胞がびまん性に増殖する
という場合にDLBCLであると判断される。
病理組織診断は治療方針(手術、化学療法、放射線療法など)を決定する参考になるとともに、治療後の予後もあるていど予測することが可能となる。ただし、DLBCLは、病理組織像、臨床像、染色体転座、遺伝子異常などの点でバリエーションに富み、一つの疾患単位というより、さまざまな疾患単位あるいはサブタイプを包含していると理解されている。病理組織像からは以下のようなサブタイプへの分類が用いられることがある。ただし、しばしば病理医のあいだで診断の一致を見ず、曖昧である。
Centroblastic(胚中心芽球性)
Immunoblastic(免疫芽球性)
T cell/histiocyte rich(T細胞/組織球に富む)
Anaplastic(アナプラスティック)
染色体転座検査では、20−30%でBCL2遺伝子の転座すなわちt(14;18)が、30%程度にBCL6遺伝子を含む染色体3q27の以上が見られる。最近のDNAマイクロアレイを用いた網羅的発現解析では、胚中心細胞と類似の遺伝子発現パターンを示す群と培養で活性化された末梢血B細胞と類似の遺伝子発現パターンを示す群とに分けられる。
しかしながら、病理組織診断など既知の診断技術のみでは明確な疾患単位やサブタイプを抽出することはできず、より正確、かつ簡便に疾患単位やサブタイプを抽出ための手法の開発が求められていた。
Notch
Notchタンパク質は、ヘテロ二量体構造の細胞表面受容体である。Notchは、複数の器官における発生細胞運命決定づけを指示するために繰り返し使用される。血球新生及び免疫系の発生の際に、Notchは、T細胞/B細胞系列の特定及び脾臓の辺縁帯(marginal zone)B細胞の形成に重要な役割を果たす。初期の胚発生においては、Notchは造血幹細胞の形成に必須である。Notchシグナルは、進化的に保存されてきた経路であり、発生及び組織造血形成の多様な側面を制御する。
哺乳類では4種類のNotch遺伝子が発見されている(Notch1−4)。Notch受容体は、単一方向の膜貫通タンパク質であり、生合成中にゴルジ輸送ネットワーク中で切断され、ヘテロ二量体複合体を形成する。ヘテロ二量体は、細胞外サブユニット(NEC)と膜貫通サブユニット(NTM)の2つのサブユニットからなる。細胞外サブユニットは、N末端から膜貫通ドメインに向けて、EGF様繰り返し配列(Notchリガンド結合活性を有する)、Lin/Notch繰り返し配列(LNR)(リガンドに無関係なシグナル伝達を抑制すると考えられている)、ヘテロ二量体形成ドメイン(HD(heterodimerization)ドメイン)を含む。膜貫通サブユニットは、Notch2のシグナル複数の機能的ドメインを含んでいる。具体的には、N末端からC末端の向きに、ヘテロ二量体形成ドメイン(HD(heterodimerization)ドメイン)、膜貫通ドメイン(transmembrane domain)、RAMドメイン、アンキリン繰り返し配列(ANK)、転写活性化ドメイン(TADドメイン)、C末端のPESTドメインを含む。TADドメインは、Notch1及び2にはTADドメインが存在するが、Notch3及び4には存在しない。非特許文献1は、Notchおよびその免疫系に関する総説である。なお、HDドメインはHDECドメイン、HDドメインHDTMドメインと呼称されることもある。
Notch1は、胸腺細胞の発生、具体的には、多分化性始原細胞のT細胞運命への決定づけ、並びに、未成熟の胸腺細胞における前T細胞受容体複合体の構築の発生に必要であることが知られている(非特許文献2、3)。また、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T−cell Acute lymphoblastic leukemia(T−ALL))の稀なケースでは、t(7;9)型の染色体相互転座を有しており、これにより、短縮型で構成的に活性なNotch1が発現している(非特許文献3)。
非特許文献4及び5は、原発性T−ALLの50%以上が、Notch1が活性化されるようなアミノ酸変異を有していることを報告している。異常の箇所は、HDドメイン、HDドメイン、TADドメイン、PESTドメインと比較的多岐にわたっており、特にHDドメインの割合が高いことが報告されている(非特許文献4)。
一方、Notch2遺伝子は、成熟B細胞に特に優先的に発現されている(非特許文献6)。Notch2は、成熟したB細胞に選択的に発現する、膜貫通型受容体タンパク質であって、Notchリガンドに応じたシグナル伝達に関与する。Notch2シグナルは、B細胞の後期発生のサブセット、辺縁帯(marginal zone)B細胞中で、必須であることが知られている(非特許文献6、7)。しかしながら、B細胞悪性化におけるNotch2の役割は全く明らかにされていない。
以下に示す先行技術文献は、その内容が本明細書中に援用される。
Maillard et al., Immunity, Vol.19, 781-791, 2003 Ellisen et al., Cell, Vol.66, 649-, 1991 Radtke et al., Immunity Vol.10, 547-558, 1999 Weng et al., Science, Vol.306, 269-271, 2004 Lee et al., Leukemia, Vol.19, 1841-1843, 2005 Saito et al., Immunity, Vol.18, 675-685, 2003 Witt et al., Journal of Immunology, Vol.171, 2783-2788, 2003 Maillard, et al., Annu. Rev. Immunol. Vol.23, 945-74, 2005 Y. Nannya et al., Cancer Res. Vol.65, 6071, 2005 L. Wang et al., Blood, Vol.102, 2597, 2003
本発明は、びまん性大細胞性リンパ腫からサブタイプを抽出するための新規な方法及び当該方法に使用するためのキットを提供することを目的とする。
本発明者らは上記問題の解決のために鋭意研究に努めた結果、びまん性大細胞性リンパ腫のうち、一部のサブタイプはNotch2タンパク質のTAD、PESTおよびそのC末端側(「PEST周辺領域」)をコードする核酸領域中において塩基変異を有すること、そして、当該塩基変異を有するサブタイプではNotch2タンパク質の生物活性が亢進していることを見出し、本発明を想到した。
びまん性大細胞性リンパ腫をサブタイプ分けする方法
本発明は、びまん性大細胞性リンパ腫をサブタイプ分けするための新規な方法を提供する。
本発明の方法は、
びまん性大細胞性リンパ腫に罹患した患者由来の生体試料中のゲノムDNA若しくはcDNA中の、Notch2タンパク質のTAD、PESTおよびそのC末端側(PEST周辺領域)をコードする核酸領域中において、1又は複数のアミノ酸配列の変異を生じさせるような、1又は複数の塩基の欠失、置換若しくは付加の塩基変異を有するタイプと、塩基変異を有しないタイプとを分類する、ことを含む
ことを特徴とする。
「びまん性大細胞性リンパ腫」(diffuse large B−cell lymphoma、DLBCL)とは、非ホジキン性の悪性リンパ腫に属し、末梢性B細胞性腫瘍の一種である。大型異型細胞のびまん性湿潤が認められるB細胞性リンパ腫瘍として大別される。具体的には病理診断で大型(正常マクロファージの核と同等ないしこれより大きく、正常のリンパ球の2倍をこえる大きさ)のB細胞様の腫瘍細胞がびまん性に増殖するという場合にDLBCLであると判断される。ただし、DLBCLは、病理組織像、臨床像、染色体転座、遺伝子異常などの点でバリエーションに富み、一つの疾患単位というより、さまざまな疾患単位あるいはサブタイプを包含しており、より詳細には種々の異なるサブタイプの総称である。本明細書において、「びまん性大細胞性リンパ腫」とは病理組織診断でDLBCLと大別されたものをすべて含む。
「生体試料」は特に限定されず、患者の生体から得られゲノムDNAを利用可能な試料、あるいはcDNAを調製可能な試料であれば特に限定されない。例えば、血液、骨髄、腫瘍摘出物、針による腫瘍吸引物等が含まれる。
塩基変異を検出する核酸は、患者(ヒト)のゲノムDNA、その対応するcDNAのいずれでもよい。本発明の方法で利用するNotch2タンパク質のTADおよびPESTおよびそのC末端側をコードする核酸領域は、単一のエキソン(エキソン34)中に存在する。よって、例えばcDNAを用いた方法に使用可能なPCR用のプライマーが、ゲノムDNAを用いた方法でも使用可能である。検査の簡便性の観点からはゲノムDNAが望ましい。ゲノムDNAの場合は例えば血液等の生体試料からゲノムDNAを抽出・調製する必要なく塩基変異を検出するためのPCR等の工程に供することが可能である。しかしながら、検出感度の観点からはゲノムDNAまたはcDNAを調整して利用する方が好ましい。生体試料からのcDNAの調製方法は公知の方法を用いて行うことが可能である。
「Notch2タンパク質」は、成熟したB細胞に選択的に発現する、膜貫通型受容体タンパク質であって、Notchリガンドに応じたシグナル伝達に関与する。Notch2シグナルは、B細胞の後期発生のサブセット、辺縁帯(marginal zone)B細胞の形成に、必須であることが知られている(非特許文献6、7)。
ヒトNotch2タンパク質をコードするcDNAの塩基配列は、限定されるわけではないが、GenBank番号 NM_024408に開示されており、本明細書に配列番号1として記載する。限定されるわけではないが、ヒトNotch2タンパク質は、好ましくは配列番号1に記載の塩基配列1−11433のうち、塩基257−7635からなる塩基配列(塩基7636−7638は終始コドン)にコードされる、配列番号2に示される2279のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列を有する。
1つ以上のコドンが同一のアミノ酸をコードする場合があり、遺伝暗号の縮重と呼ばれている。このため、配列番号1の塩基257−7635とは完全には一致していないDNA配列が、配列番号2と全く同一のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードすることがあり得る。こうした変異体DNA配列は、サイレント(silent)突然変異から生じてもよいし、または遺伝的多型であってもよい。このような、配列番号1に対してアミノ酸配列に影響を与えない塩基変異のみを有する配列は、「Notch2タンパク質をコードする核酸領域中において、1又は複数のアミノ酸配列の変異を生じさせるような塩基変異を有しない」配列に含まれる。
Notch2タンパク質の構造は、例えばMaillard, et al. Annu. Rev. Immunol. 2005. 23:945-74(非特許文献8)に記載されている。Notch2タンパク質は、細胞外サブユニット(NEC)と膜貫通サブユニット(NTM)の2つのサブユニットに大別される。細胞外サブユニットは、N末端から膜貫通ドメインに向けて、EGF様繰り返し配列(Notchリガンド結合活性を有する)、Lin/Notch繰り返し配列(LNR)(リガンドに無関係なシグナル伝達を抑制すると考えられている)、膜貫通ドメイン(HD(heterodimerization)ドメイン)、を含む。
膜貫通サブユニットは、Notch2のシグナル複数の機能的ドメインを含んでいる。具体的には、N末端からC末端の向きに、ヘテロ二量体形成ドメイン(HD(heterodimerization)ドメイン)、膜貫通ドメイン(transmembrane domain)、RAMドメイン、アンキリン繰り返し配列(ANK)、転写活性化ドメイン(TADドメイン)、C末端のPESTドメインを含む。RAMドメイン及びANKドメインは、下流のエフェクタータンパク質(群)と相互作用し、PESTドメインはNotch2タンパク質の安定性に寄与すると考えられている。ヒトNotch2タンパク質において、EGF様繰り返し配列、LNR、膜貫通ドメイン、RAMドメイン、ANK、TADドメイン、PESTドメインは、各々配列番号2のアミノ酸残基26−1412、アミノ酸残基1425−1544、アミノ酸残基1678−1698、アミノ酸残基1799−1826、アミノ酸残基1827−2038、アミノ酸残基2039−2386並びにアミノ酸残基2387−2448に相当する。
ヒトNotch2タンパク質をコードするcDNAの塩基配列は、例えば、GenBank番号のQ04721に開示されている。PESTドメインをコードする核酸領域は、エキソン34中塩基7415−7600に相当する。本明細書の実施例では、Notch2タンパク質の半減期の増加、及び/又は生物活性の亢進と関連する塩基変異が3種類見出された。NA7120DelA(AA2288PLKGSTStop)はPESTよりN末端よりのTADの中に、NA7454C/T(AA2400Stop)はPEST中に、そしてNA7614G/A(AA2453R/Q)はPESTよりC末端側と、いずれもPEST領域を中心とするPEST周辺領域に塩基変異が存在した。よって、本発明の方法では、「PEST周辺領域」、即ち、TAD、PESTおよびそのC末端側を利用するものである。
PEST周辺領域の塩基変異とびまん性大細胞性リンパ腫のサブタイプ分け
PEST周辺領域、特にPESTドメインはNotch2タンパク質の安定性に寄与すると考えられている。本発明者らは、病理診断でびまん性大細胞性リンパ腫と診断された患者63名のうち5名(7.9%)において1又は複数のアミノ酸配列の変異を生じさせるような、1つ(又は複数)の塩基の欠失、置換若しくは付加の塩基変異を有することを見出した。これらのサブタイプでは、塩基変異によりNotch2タンパク質がPESTドメイン中で未成熟のまま終始する、あるいは、アミノ酸変異を生じ、その結果、Notch2タンパク質の半減期の増加、及び/又は生物活性の亢進が生じることが見出された。
本発明者は、上記発見に基づき、Notch2タンパク質のPESTドメインをコードする核酸領域中において、1又は複数のアミノ酸配列の変異を生じさせるような、1又は複数の塩基の欠失、置換若しくは付加の塩基変異の有無を指標に、びまん性大細胞性リンパ腫のサブタイプ分けを可能にした。
限定されるわけではないが、Notch2のPEST周辺領域をコードする核酸領域は、好ましくは配列番号1の塩基6371−7669の塩基配列からなる。遺伝子暗号の縮重により上記配列の同一のアミノ酸配列をコードする核酸配列も、「Notch2のPEST周辺領域をコードする核酸領域」に相当すると配列として、本発明に利用可能である。
本明細書の実施例1において後述するように、3名の患者及び細胞株では、配列番号1の塩基7454において塩基CがTに変異していた。この塩基変異によりNotch2タンパク質の2400番目のアミノ酸残基をコードするトリプレットコドンが終始コドンとなり、コードされるNotch2タンパク質は配列番号2のアミノ酸1−2399のアミノ酸配列からなる未成熟(短縮型)のものとなる。また、1名の患者では、配列番号1の塩基7120において塩基Aが欠失していた。この塩基変異によりフレームシフトが生じ、コードされるアミノ酸配列は2288番目のアミノ酸残基以後はPLKGSTとなり、終始コドンが続く。コードされるNotch2タンパク質は、配列番号2のアミノ酸1−2288のアミノ酸配列+LKGST、からなる未成熟(短縮型)のものとなる。さらに、別の1名の患者では、配列番号1の塩基7614において塩基GがAに変異していた。この塩基変異によりNotch2タンパク質の2453番目のアミノ酸残基アルギニン(R)をコードするトリプレットコドンがグルタミン(Q)をコードするトリプレットとなる。
よって、限定されるわけではないが、本発明の方法はその一態様において、Notch2のPEST周辺領域中でも特に、実施例において変異が確認された塩基を含む領域において、塩基変異を有するか否かをサブタイプ分けの指標とする。具体的には、Notch2のPEST周辺領域をコードする核酸領域のうち、配列番号1の塩基7120、7454及び/又は7614に相当する塩基を含む領域において、1又は複数の塩基の欠失、置換若しくは付加の塩基変異を有するタイプと、塩基変異を有しないタイプとを分類する。より好ましくは、Notch2のPEST周辺領域をコードする核酸領域のうち、配列番号1の塩基7120、7454及び/又は7614に相当する塩基が、欠失又は置換されている塩基変異を有するタイプと、塩基変異を有しないタイプとを分類する。
「1又は複数の」とは、Notch2のPEST周辺領域をコードする核酸領域の範囲内であれば、特に限定されない。好ましくは、1−50、より好ましくは1−20、さらに好ましくは1−10、さらにより好ましくは1−数個、より好ましくは1−5個の塩基変異である、最も好ましくは1塩基変異(点突然変異)である。
本発明者らは、Notch2のPEST周辺領域をコードする核酸領域中に、1又は複数のアミノ酸配列の変異を生じさせるような塩基変異を有するサブタイプでは、Notch2タンパク質の生物活性が亢進している、ことを見出した。Notchシグナルは、転写活性化を通じてさまざまな生物活性(未熟細胞の未分化性維持、例えば幹細胞の未分化性維持、幹細胞増幅、細胞分化抑制、個体発生期における側方特異性決定など)を発揮する。よって、「Notch2タンパク質の生物活性」とは、天然のNotch2タンパク質の有する任意の生物活性であれば特に限定されないが、例えば、転写活性化、細胞分化抑制効果、等の生物活性が含まれる。
具体的には、実施例4では、Notch2の生物活性に感受性のルシフェラーゼアッセイにおいて、塩基変異を有するサブタイプは塩基変異を有しないサブタイプと比較してルシフェラーゼ活性が、274364/34830=約7,9倍増加した。よって、本発明において「Notch2タンパク質の生物活性が亢進している」とは、例えば、「転写活性化」いう生物活性の強さが、塩基変異を有しない場合と比べて増加している、好ましくは1.5倍、より好ましくは3倍、さらに好ましくは7.9倍増加していることを意味する。
あるいは、実施例3の35[S]−標識パルスチェイス分析では、塩基変異を有するNotch2タンパク質の半減期は、塩基変異を有しない場合の40分から90分に増加した。よって、本発明において「Notch2タンパク質の生物活性が亢進している」とは、生物活性の強さのみでなく生物活性が持続する時間が増加する、例えば、塩基変異を有しない場と比較して増加している、好ましくは1.5倍、より好ましくは3倍、さらに好ましくは5倍増加する場合も含む。
本発明は、病理診断によってびまん性大細胞性リンパ腫であると判別された病態について、さらにサブクラス分けする方法を提供するものである。本発明において塩基変異を有すると判別されたサブグループは、有しないサブグループと比較してNotch2タンパク質の安定性が向上し、また生物活性も増加している。本発明は、病理診断によってびまん性大細胞性リンパ腫であると判別された病態のうち、さらにこのように生物活性が亢進しているサブタイプを遺伝子レベルで効率同定することを可能にする。
塩基変異の検出方法
本発明において、塩基変異を検出するための方法は特に限定されず、単一の塩基若しくは複数の塩基の変異を検出するための公知の方法を使用することができる。
限定されるわけではないが、例えば、PCR−SSCP法、PCR−dHPLC法、PCR−APLP法、PCR−RFLP法及びDNAアレイからなるグループから選択される手法を用いて塩基変異を検出することが可能である。PCR増幅産物の塩基配列を決定することによって変異を直接決定/確認することも可能である。
(1)PCR−SSCP法
PCR−SSCP法は、点突然変異を含む塩基変異による、一本鎖DNAの高次構造変異のゲル移動度の差を検出するものである。具体的には、一本鎖DNAは分子内水素結合などにより、その塩基配列に特異的な高次構造をとるため互いに相補的な一本鎖DNAアリルを電気泳動すると異なる位置に泳動される。DNA断片内の一塩基置換によってもこの一本鎖DNAの高次構造は変化し、電気泳動の際変化のないものとこの成る移動を示す。このような多型を一本鎖DNA高次構造多型(single−strand conformation polymorphism:SSCP)という。
PCR−SSCP法では、PCR産物を一本鎖としたのち、ポリアクリルアミドゲルにて電気泳動を行い、DNAバンドシフトの違いを対照と比較することにより変異の有無を判定する。PCR−SSCP法の利点の1つは、既知の変異部位だけでなく、PCR増幅産物の核酸領域中に存在する未知の変異部位についても迅速かつ容易にスクリーニングできることである。
PCR−SSCP法を利用した本発明の方法では、Notch2遺伝子のゲノム若しくはcDNAの塩基配列に基づき、サブタイプ分けをするための指標となる塩基部分を含むPESTドメイン全体又は一部を増幅するように、プライマー対を使用する。上記プライマー対を用いて、ヒトゲノムDNA又はcDNAを鋳型に核酸増幅反応を行う。核酸増幅反応は、複製連鎖反応(PCR)(サイキら、1985,Science 230,p.1350−1354)である。PCR−SSCP法では、PCR産物をアクリルアミドゲル電気泳動における移動度の差を認識するので、PCR産物の長さは、好ましくは50−1000 塩基、より好ましくは150−400である。
核酸増幅のためのプライマー対は、Notch2遺伝子のゲノム若しくはcDNAの塩基配列に基づいて、公知の方法により作成することが可能である。具体的には、限定されるわけではないが、例えば、以下の条件:
1)各プライマーの長さが15−30塩基であること;
2)各プライマーの塩基配列中のG+Cの割合が30−70%であること;
3)各プライマーの塩基配列中のA、T、GおよびCの分布が部分的に大きく偏らないこと;
4)プライマー対によって増幅される核酸増幅産物の長さが40−2000塩基、好ましくは150−400塩基であること;そして
5)各プライマー自身の塩基配列中、又はプライマー同士の塩基配列間に相補的な配列部分が存在しないこと
を満たすように、PEST周辺領域の塩基配列と同じ塩基配列若しくは上記領域に相補的な塩基配列を有する一本鎖DNAを製造し、または、必要であればPEST周辺領域の塩基配列に対する結合特異性を失わないように修飾した上記一本鎖DNAを製造する
ことを含む方法により、プライマー対を作成できる。
上記条件を満たすように選択され、サブタイプ分けをするための指標となる塩基部分を含むPEST周辺領域の全体又は一部を増幅しうるものであれば、プライマー対の塩基配列は特に限定されない。好ましくは、プライマー対は、配列番号3と4の塩基配列からなるプライマー対、配列番号7と8の塩基配列からなるプライマー対、配列番号9と10の塩基配列からなるプライマー対、並びに配列番号7と10の塩基配列からなるプライマー対からなるプライマー対から群から選択される。
核酸増幅反応の手順及び条件は特に限定されず、当業者に周知である。当業者は、Notch2遺伝子の塩基配列、プライマー対の塩基配列および長さ等の種々の要因に応じて適宜、条件を採用することが可能である。一般には、プライマー対の長さが長い程、G+Cの割合が高いほど、A、T、GおよびCの分布の偏りが小さい程、よりストリンジェントな条件(より高温度でのアニーリング反応および核酸伸長反応、より少ないサイクル数)で核酸増幅反応を行うことが可能である。よりストリンジェントな条件の採用により、特異性の高い増幅反応が可能となる。
増幅反応は、限定されるわけではないが、好ましくは変性反応を90℃ないし97℃で30秒ないし2分、アニーリング反応を53℃ないし65℃で30秒ないし2分、そして、伸長反応を70℃ないし75℃で30秒ないし2分を1サイクルとし、これを25サイクルないし50サイクル行う。より好ましくは、変性反応を94℃で1分、アニーリング反応を55℃で1分、そして、伸長反応を72℃で1分を1サイクルとし、35サイクル行う。あるいは、変性反応を95℃で30秒、アニーリング反応を55℃で30秒、そして、伸長反応を72℃で30秒を1サイクルとし、45サイクル行う。
SSCP法においてより良い泳動パターンを得るために重要な要因の1つはゲルの濃度と組成である。ゲルの組成と組み合わせて泳動時における電圧も分離に影響しうる。一般に高電圧であれば、バンドが押され気味になり前のバンドと重なってしまうことがある。しかし高濃度のゲル(例えば10%以上)で高電圧(例えば700ボルト以上)をかけることにより、ピークパターンがシャープになり比較しやすい場合もある。あるいは、反対に電圧を低めにしてゆっくり流すと分離がよくなることもあるが、ピークがだらだらと出てしまい特徴が表われにくい場合もある。
当業者は判定しやすく変位がわかりやすいパターンを検出するために適当なプライマー対、ゲルの組成及び濃度、電圧を適宜選択可能である。
(2)PCR−dHPLC法
SSCP法と同様に、点突然変異を含む塩基変異による、一本鎖DNAの高次構造変異を検出するための方法として、dHPLC(denaturing high performance liquid chromatography(dHPLC))も知られている。dHPLCは、PCR産物を一本鎖とした後、SSCP法のアクリルアミドゲルの代わりにHPLCに供するものである。dHPLC法は放射性同位元素(RI)を使用しない、という点において臨床検査での使用に好ましい。近年、特にPCR−dHPLC法などで簡便に変異を検出する機器が改良されている。
PCR−dHPLC法に供するのに好ましいPCR産物の長さは、好ましくは50−700塩基、より好ましくは100−300である。よって、PCR用プライマー対の選択における工程4)は、「プライマー対によって増幅される核酸増幅産物の長さが50−70塩基、好ましくは100−300塩基であること」となる。
(3)PCR−APLP法
PCR−APLP法は、塩基変異に基づくPCR産物の鎖長の差異を検出する方法である。塩基の点突然変異ではなく、塩基変異により複数の塩基が欠失または付加されているような領域が存在する場合、塩基変異の有無が直接PCR産物の鎖長の差異(APLP(amplicon length polymorphism))として表われるので、アガロースゲル又はアクリルアミドゲルにおける電気泳動における移動度の差異として検出することが可能である。
PCR−APLP法に供するのに好ましいPCR産物の長さは、好ましくは50−3000塩基、より好ましくは100−2000である。よって、PCR用プライマー対の選択における工程4)は、「プライマー対によって増幅される核酸増幅産物の長さが50−3000塩基、好ましくは100−2000塩基であること」となる。
(4)PCR−RFLP法
PCR増幅後、塩基変異部位を制限酵素により変異部位を認識・切断し、制限酵素断片長の多型(restriction fragment length polymorphism;RFLP)またはCAPS(cleaved amplified polymorphic sequences)をアガロースゲル又はアクリルアミドゲルにおける電気泳動における移動度の差異として検出する方法である。検出の簡便さ・明確さから優れているが、SSCP法と異なり既知の塩基変異しか検出できない。
PCR−RFLP法に供するのに好ましいPCR産物の長さは、好ましくは50−3000塩基、より好ましくは100−2000である。よって、PCR用プライマー対の選択における工程4)は、「プライマー対によって増幅される核酸増幅産物の長さが50−3000塩基、好ましくは100−2000塩基であること」となる。
さらに、核酸増幅産物中に制限酵素認識に差異を生じない塩基置換が存在する場合には、例えば、当該塩基置換部位を含み、そして、当該塩基置換部位を含む領域を核酸増幅産物では制限酵素認識に差異を生じるような塩基配列に変更するようなミスマッチ導入プライマー対を作成し、サブタイプ分けに利用することも可能である。これは、一般に、CAPS法の改良であるdCAPS(derived CAPS)法と呼ばれている手法を利用するものである。
(5)DNAアレイ
特に1塩基の変異の検出を含む塩基変異の検出に、DNAアレイを利用してもよい。DNAアレイは、ガラス基板上に数千〜数満のDNA分子を高密度に配列したデバイスであり、その利用によりcDNAやcRNA,あるいはゲノムDNAとのハイブリダイゼーションによって、遺伝子多型(疾患と関連する塩基変異を含む)をゲノムスケールでの解析が可能である。現在ではcDNAを固定化したDNAマイクロアレイ(狭義の「DNAアレイ」と、オリゴヌクレオチドをチップ上で合成するオリゴ型のDNAチップが知られている。例えば、後者では25塩基ないし80塩基の長さのcDNAを各スポットに固定化することが可能である。例えば、アフィメトリックス社のオリゴアレイのプローブは、一般に25塩基である。
例えば、当業者に公知のリシークエンシングアレイ(resequencing array)(例えば、Affymetrtix社)を利用することも可能である。基本的には4つの可能性のある塩基のオリゴを全ての塩基についてアレイ化し、これにlong PCR増幅(約10kb)後、断片化したゲノムDNAをハイブリダイズさせて、ハイブリだぜーションの特異性をシグナル強度差で定量することによって塩基配列を決定する方法である。
本発明の方法において、DNAアレイを例えば以下のように利用した方法が考えられる。ヒトNotch2タンパク質のPEST周辺領域をコードする核酸領域は、塩基数1299(配列番号1の6371−7669)の長さである。これらの塩基を例えば、50塩基ずつに分断すると、約26個の断片となる。各DNA断片をDNAアレイに配列させる。生体試料中のゲノムDNA若しくはcDNA中を上記DNAアレイにハイブリダイズさせると、塩基変異を有するサブタイプと塩基変異を有しないサブタイプでDNAアレイに対するハイブリダイゼーション強度の差異により塩基変異を検出する。前述の計算では、ヒトNotch2タンパク質のPEST周辺領域をコードする核酸領域は26個の断片となる。各断片の塩基配列が一部ずつ重複するように、例えば上記値の倍の52個の断片を準備するとして、この個数であれば1枚のチップに全ての領域を配列させることが十分にできる。よって、PESTドメインをコードする核酸領域をコードする塩基変異を一度のハイブリダイゼーション操作で検出することも可能である。
びまん性大細胞性リンパ腫をサブタイプ分けする方法に使用するためのキット
本発明はまた、びまん性大細胞性リンパ腫をサブタイプ分けする方法に使用するためのキットを提供する。本発明のキットは、塩基変異の検出を例えばPCR−SSCP法、PCR−dHPLC法、PCR−APLP法、PCR−RFLP法等を用いて行う場合に、PCR反応に使用するためのプライマー対を含む。
プライマー対は使用する方法に適した長さのPCR産物が得られるように、ヒトNotch2タンパク質のPEST周辺領域をコードする核酸領域の塩基配列に基づいて当業者が適宜選択可能である。具多的にはプライマー対は一般には下記の条件:
1)各プライマーの長さが15−30塩基であること;
2)各プライマーの塩基配列中のG+Cの割合が30−70%であること;
3)各プライマーの塩基配列中のA、T、GおよびCの分布が部分的に大きく偏らないこと;
4)プライマー対によって増幅される核酸増幅産物の長さが、PCRに続く各工程での検出に適した長さであること;そして
5)各プライマー自身の塩基配列中、又はプライマー同士の塩基配列間に相補的な配列部分が存在しないこと
満たすように、PEST周辺領域の塩基配列と同じ塩基配列若しくは上記ドメインに相補的な塩基配列を有する一本鎖DNAを製造し、または、必要であればPESTドメインの塩基配列に対する結合特異性を失わないように修飾した(例えば、1ないし3塩基の塩基変異(欠失、置換又は付加)を施した)上記一本鎖DNAを製造する
ことを含む方法により、プライマー対を作成できる。
特定の既知の塩基変異を検出する場合には、PEST周辺領域をコードする核酸領域中特にその塩基を含む領域が増幅されるようにプライマー対を選択する。限定されるわけではないが、好ましくは、本発明のキットは配列番号1の塩基7120、7454及び/又は7614に相当する塩基を含む40−2000塩基の長さの核酸領域をPCR反応により増幅するためのプライマー対を含む。より好ましくは、本発明のプライマー対は、配列番号3と4の塩基配列からなるプライマー対、配列番号7と8の塩基配列からなるプライマー対、配列番号9と10の塩基配列からなるプライマー対、並びに配列番号7と10の塩基配列からなるプライマー対からなるプライマー対から成るグループから選択される。必要であればPEST周辺領域の塩基配列に対する結合特異性を失わないように修飾して、例えば、1ないし3塩基の塩基変異(欠失、置換又は付加)を施して、上記一本鎖DNAを製造する。
実施態様
限定されるわけではないが、本発明は下記の実施態様(1)−(9)を含む。
態様(1)
びまん性大細胞性リンパ腫をサブタイプ分けする方法であって、
びまん性大細胞性リンパ腫に罹患した患者由来の生体試料中のゲノムDNA若しくはcDNA中の、Notch2タンパク質のTAD、PESTおよびそのC末端側をコードする核酸領域中において、1又は複数のアミノ酸配列の変異を生じさせるような、1又は複数の塩基の欠失、置換若しくは付加の塩基変異を有するタイプと、塩基変異を有しないタイプとを分類する
ことを含む、前記方法。
態様(2)
Notch2のTAD、PESTおよびそのC末端側をコードする核酸領域が、配列番号1の塩基6371−7669の塩基配列からなる、態様(1)に記載の方法。
態様(3)
Notch2のTAD、PESTおよびそのC末端側をコードする核酸領域のうち、配列番号1の塩基7120、7454及び/又は7614に相当する塩基を含む領域において、1又は複数の塩基の欠失、置換若しくは付加の塩基変異を有するタイプと、塩基変異を有しないタイプとを分類する、態様(1)又は(2)に記載の方法。
態様(4)
Notch2のTAD、PESTおよびそのC末端側をコードする核酸領域のうち、配列番号1の塩基7120、7454及び/又は7614に相当する塩基が、欠失又は置換されている塩基変異を有するタイプと、塩基変異を有しないタイプとを分類する、態様(3)に記載の方法。
態様(5)
Notch2タンパク質のTAD、PESTおよびそのC末端側をコードする核酸領域中の塩基変異によって、Notch2タンパク質の生物活性が亢進している、態様(1)ないし(4)のいずれか1項に記載の方法。
態様(6)
PCR−SSCP法、dHPLC法、PCR−APLP法、PCR−RFLP法、DNAアレイからなるグループから選択される手法を用いて塩基変異を検出する、態様(1)ないし(5)のいずれか1項に記載の方法。
態様(7)
配列番号3と4の塩基配列からなるプライマー対、配列番号7と8の塩基配列からなるプライマー対、配列番号9と10の塩基配列からなるプライマー対、並びに配列番号7と10の塩基配列からなるプライマー対、から成るグループから選択されるプライマー対を用いたPCR工程を含む手法を用いて塩基変異を検出する、態様(6)に記載の方法。
態様(8)
配列番号1の塩基7120、7454及び/又は7614に相当する塩基を含む40−2000塩基の長さの核酸領域をPCR反応により増幅するためのプライマー対を含む、びまん性大細胞性リンパ腫をサブタイプ分けする方法に使用するためのキット。
態様(9)
配列番号3と4の塩基配列からなるプライマー対、配列番号7と8の塩基配列からなるプライマー対、配列番号9と10の塩基配列からなるプライマー対、並びに配列番号7と10の塩基配列からなるプライマー対から成るグループから選択されるプライマー対を含む、態様(8)に記載のキット。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の技術的範囲を限定するためのものではない。当業者は本明細書の記載に基づいて容易に本発明に修飾・変更を加えることができ、それらは本発明の技術的範囲に含まれる。
実施例1 B細胞リンパ腫におけるNotch2遺伝子の塩基変異
本実施例では、生体試料(腫瘍摘出試料)中の、塩基変異をPolymerase chain reaction−Single Strand Conformational Polymorphism (PCR−SSCP)を用いて検出した。
具体的には、インフォームドコンセントの後、種々のB細胞リンパ腫を伴う109名の患者が本研究に参加した。市販のキット(PUREGENETM(商標),Gentra,Minneapolis,MN)を用いて凍結乾燥された生体試料からゲノムDNAを抽出した。Notch2遺伝子のエキソン26、27及び34の全体又は一部を増幅するようにPCRを行い、SSCP法により塩基変異を検出した。
エキソン26は、Notch2タンパク質の細胞外サブユニットのC端に存在するHDドメイン(HDECドメイン)をコードする。エキソン26を以下のプライマーを用いて増幅した。
N2Exon26FW:
GTTCTCTGCTTCCCCTTACCT (配列番号11)
N2Exon26RV:
GCCTTGAAGTTCAGAAACCAA (配列番号12)
エキソン27は、膜貫通サブユニットのN端に存在するHDドメイン(HDTMドメイン)をコードする。エキソン27を以下のプライマーを用いて増幅した。
N2Exon27FW:
TACCCCCATCTCTCCTCCTC (配列番号13)
N2Exon27RV:
AATTGTTCCCCCAATTGACA. (配列番号14)
エキソン34は、転写活性化ドメイン(TADドメイン)およびC末端のPESTドメインをコードする。TADドメインとPESTドメインを5つに分けて(TAD領域1つ、PEST領域4つ)アンプリコンを得た。
TADドメインコード領域
N2TADFW:
TCCCCTGTTGATTCCCTAGA (配列番号15)
N2TADRV:
CACAATGTGGTGGTGGGATA (配列番号16)
PESTドメイン
N2PEST−1FW:
GCACTGTGCTTCCCTCAGT (配列番号3)
N2PEST−1RV:
CTGCCTTTAGGGATGAGCTG (配列番号4)
N2PEST−2FW:
ACCCATCCTGGCATAGCTC (配列番号5)
N2PEST−2RV:
TAGGCTGGGAGAATGGTCTG (配列番号6)
N2PEST−3FW:
TTTGCCCAGTGTGGCTTT (配列番号7)
N2PEST−3RV:
GGTGATGAACTTGACCACTG, (配列番号8)
N2PEST−4FW:
ACACCCAGTCACAGTGGTCA (配列番号9)
N2PEST−4RV:
TGTCTCTACACTGGAGGTGGA (配列番号10)
異常な移動バンドを検出した検体に関して直接、あるいは異常な移動バンドが薄い場合(変異を持つ腫瘍細胞比率が低い場合)には異常移動バンドを切り出して、配列決定を行った。配列決定は、PCR反応に使ったプライマーと同じプライマーを用い、ABI3100シークエンサーを製造業者の使用説明書に従って行った。
その結果を図1及び図2に示す。3名の患者(検体L8、W121672およびW109539)及び細胞株では、配列番号1の塩基7454において塩基CがTに変異していた。これは配列番号7及び8のプライマー対によって増幅される核酸領域中に存在する。この塩基変異によりNotch2タンパク質の2400番目のアミノ酸残基をコードするトリプレットコドンが終始コドンとなり、コードされるNotch2タンパク質は配列番号2のアミノ酸1−2399のアミノ酸配列からなる未成熟(短縮型)のものとなる。また、1名の患者(検体L2)では、配列番号1の塩基7210において塩基Aが欠失していた。これは配列番号3及び4のプライマー対によって増幅される核酸領域中に存在する。この塩基変異によりフレームシフトが生じ、コードされるアミノ酸配列は2288番目のアミノ酸残基以後はPLKGSTとなり、終始コドンが続く。コードされるNotch2タンパク質は、配列番号2のアミノ酸1−2288のアミノ酸配列+PLKGST、からなる未成熟(短縮型)のものとなる。さらに、別の1名の患者(検体W117336)では、配列番号1の塩基7614において塩基GがAに変異していた。これは配列番号9及び10のプライマー対によって増幅される核酸領域中に存在する。この塩基変異によりNotch2タンパク質の2453番目のアミノ酸残基アルギニン(R)をコードするトリプレットコドンがグルタミン(Q)をコードするトリプレットとなる。
図1は、原発性B細胞リンパ腫中のNotch2変異を示す。ID:検体番号、Disease:疾患名、SeqPESTdomain:PESTドメイン延期配列中の変異、MutPESTdomain:PESTドメインアミノ酸変異、疾患名中のDCBLCは、びまん性大細胞性リンパ腫を示す。FLは、濾胞性リンパ腫を示す。図1から明らかなように、検体6および606はDLBCLを伴い、Notch2遺伝子、配列番号1の7597の塩基に1塩基変異(SNP)が観測されたが、当該変異はDLBCLと異なるFLを伴う検体(検体921、1846及び2208)にも観測される塩基変異であり、そしてコードされるアミノ酸は変化しない。また検体30(DLBCL)は、配列番号の7519の塩基に1塩基変異(SNP)が観測されたが、これもコードされるアミノ酸は変化せずDLBCLの病態とは直接関係のない塩基変異である。
DLBCLは種々の病態を含む大型異型細胞のびまん性湿潤が認められるB細胞性リンパ腫瘍の総称である。図2に示したように、DLBCLに罹患した63の検体のうち5つ(7.9%)でPESTドメイン中にアミノ酸変異を生じさせる塩基変異が観察される。当該塩基変異は種々の病態をサブタイプ分けするのに有用である。
実施例2 高密度オリゴヌクレオチドマイクロアレイを用いたゲノムコピー数の分析
本実施例では実施例1において、配列番号1の塩基7454において塩基CがTに変異していた検体を使用して、高密度オリゴヌクレオチドマイクロアレイを用いたゲノムコピー数の決定を行った。
具体的には、非特許文献9に記載されたような公知の方法に基づいて、ゲノムコピー数検出分析を行った。簡単には、Affimetrix GeneChip Mapping 100 k 高密度オリゴヌクレオチドアレイ(Affimetrix, Inc., Santa Clara, CA)を使用し、データをCNAGアルゴリズムを用いて分析した。
結果を図3に示す。図3は、上から全コピー数、移動平均(moving average)、ヘテロSNP call、アリルに基づくコピー数を示す。図3に示すように染色体1のNotch2遺伝子座(1p12)を含む領域において、染色体のゲノムコピー数が増幅していた。
実施例3 FISH分析
本実施例では実施例1の実施例1において、配列番号1の塩基7454において塩基CがTに変異していた検体(検体番号W109539)を使用して、FISH(Fluorescence in situ hybridization)分析行った。
具体的には、Bacterial Artificial Chromosome(BAC)クローンRP11−723d17(Notch2)及びRP11−80d6(1q23.3)を使用して、増幅を同定した。BACは、BAC/PAC Resource Center(Children’s Hospital,Oakland,CA)から得られた。先行技術文献10に記載されたような公知の方法に基づいて、細胞分裂間期の核に対してFISH実験を行った。
結果を図4に示す。緑色のシグナルは、Notch2の配列に相当し、赤色のシグナルは1q23.3上の対照配列に相当する。
実施例4 Notch2の転写活性アッセイ
公知のルシフェラーゼ感受性アッセイを使用して、Notch2の転写活性を調べた。
具体的には、先ず、野生型Notch2(wtN2)及び配列番号1の塩基7454において塩基CがTに変異していたノンセンス突然変異を有するNotch2(nsmN2)を発現する1×10個のCHO(r)細胞(wtN2/CHO(r)及びnsmN2/CHO(r))を6ウェル ディッシュ中に調製した。次の日に、pGa981−6ルシフェラーゼレポータープラスミドをSuperfectTMトランスフェクション試薬(QIAGEN,Hilden,Germany)を用いてトランスフェクトした。
次いで、全長のヒトDelta1 cDNAを発現する1×10個のCHO(r)細胞を、wtN2/CHO(r)及びnsmN2/CHO(r)上にオーバーレイした。細胞を2日間インキュベートし、ルシフェラーゼアッセイに使用した。
結果を図5に示す。図5に示すように塩基変異を有するサブタイプは塩基変異を有しないサブタイプと比較してルシフェラーゼ活性が、274364/34830=約7,9倍増加した。
実施例5 35[S]標識パルスチェイス分析
本実施例では、実施例1の実施例1において、配列番号1の塩基7454において塩基CをTに変異させたcDNA(Mut.ahNotch2)を使用して、[S]標識パルスチェイス分析を行い、塩基変異によるNotch2タンパク質の半減期の変化を調べた。使用した3*Flag/Mut.ahNotch2ペプチドの構造、及び対照の3*Flag/Wild.ahNotch2ペプチドの構造を図6に示す。これらを用いて、公知の手法を用いてパルスチェイス分析を行った。
結果を図7に示す。図7に示すように塩基変異を有するサブタイプの半減期は90分であるのに対し、塩基変異を有しないサブタイプの半減期は40分であった。よっって、本実施例では、塩基変異を有するサブタイプは有しないサブタイプと比較して半減期が2.25倍長かった。
図1は、原発性B細胞リンパ腫中のNotch2変異を示す。 図2は、DLBCL患者中の特定のサブタイプに観察されるNotch2変異を示す。 図3は、高密度オリゴヌクレオチドマイクロアレイを用いてゲノムコピー数の決定を行った結果を示す。 図4はFISH分析の結果を示す。 図5は、Nocth感受性ルシフェラーゼ分析を行った結果を示す。 図6は、35[S]標識パルスチェイス分析に使用したペプチド断片の構造を示す。 図7は、35[S]標識パルスチェイス分析の結果を示す。

Claims (9)

  1. びまん性大細胞性リンパ腫をサブタイプ分けする方法であって、
    びまん性大細胞性リンパ腫に罹患した患者由来の生体試料中のゲノムDNA若しくはcDNA中の、Notch2タンパク質のTAD、PESTおよびそのC末端側をコードする核酸領域中において、1又は複数のアミノ酸配列の変異を生じさせるような、1又は複数の塩基の欠失、置換若しくは付加の塩基変異を有するタイプと、塩基変異を有しないタイプとを分類する
    ことを含む、前記方法。
  2. Notch2のTAD、PESTおよびそのC末端側をコードする核酸領域が、配列番号1の塩基6371−7669の塩基配列からなる、請求項1に記載の方法。
  3. Notch2のTAD、PESTおよびそのC末端側をコードする核酸領域のうち、配列番号1の塩基7120、7454及び/又は7614に相当する塩基を含む領域において、1又は複数の塩基の欠失、置換若しくは付加の塩基変異を有するタイプと、塩基変異を有しないタイプとを分類する、請求項1又は2に記載の方法。
  4. Notch2のTAD、PESTおよびそのC末端側をコードする核酸領域のうち、配列番号1の塩基7120、7454及び/又は7614に相当する塩基が、欠失又は置換されている塩基変異を有するタイプと、塩基変異を有しないタイプとを分類する、請求項3に記載の方法。
  5. Notch2タンパク質のTAD、PESTおよびそのC末端側をコードする核酸領域中の塩基変異によって、Notch2タンパク質の生物活性が亢進している、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
  6. PCR−SSCP法、dHPLC法、PCR−APLP法、PCR−RFLP法、DNAアレイからなるグループから選択される手法を用いて塩基変異を検出する、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 配列番号3と4の塩基配列からなるプライマー対、配列番号7と8の塩基配列からなるプライマー対、配列番号9と10の塩基配列からなるプライマー対、並びに配列番号7と10の塩基配列からなるプライマー対、から成るグループから選択されるプライマー対を用いたPCR工程を含む手法を用いて塩基変異を検出する、請求項6に記載の方法。
  8. 配列番号1の塩基7120、7454及び/又は7614に相当する塩基を含む40−2000塩基の長さの核酸領域をPCR反応により増幅するためのプライマー対を含む、びまん性大細胞性リンパ腫をサブタイプ分けする方法に使用するためのキット。
  9. 配列番号3と4の塩基配列からなるプライマー対、配列番号7と8の塩基配列からなるプライマー対、配列番号9と10の塩基配列からなるプライマー対、並びに配列番号7と10の塩基配列からなるプライマー対から成るグループから選択されるプライマー対を含む、請求項8記載のキット。
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