JP2004215612A - ガレクチン−8活性制御剤 - Google Patents

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JP2004215612A JP2003009173A JP2003009173A JP2004215612A JP 2004215612 A JP2004215612 A JP 2004215612A JP 2003009173 A JP2003009173 A JP 2003009173A JP 2003009173 A JP2003009173 A JP 2003009173A JP 2004215612 A JP2004215612 A JP 2004215612A
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Kenichi Kasai
献一 笠井
Atsushi Hirabayashi
淳 平林
Takanori Nakamura
隆範 中村
Nozomi Nishi
望 西
Mitsuomi Hirashima
光臣 平島
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Abstract

【課題】ガレクチン−8は、血球凝集活性を有する他、強力な好中球接着誘導能を有し、その活性の発現には、その糖認識領域 (CRD)と生体内物質との相互作用が関与する可能性が高い。また、炎症部位への好中球浸潤の最初のステップが、接着などの血管内皮細胞との相互作用であることから、ガレクチン−8のCRD の果たす機能を解明し、ガレクチン−8活性を制御することのできる物質を検索することは、炎症を始めとした好中球などが関与する疾患などの生理的現象を理解し、それをコントロールする上で重要である。
【解決手段】ガレクチン−8のCRD に関する変異タンパク質、すなわち、N−末端CRD 及びC−末端CRD を構築し、各CRD と特異的に結合する活性を有する糖鎖構造を明らかにした。該糖鎖構造についての情報を利用し、ガレクチン−8のアンタゴニスト及びアゴニストを開発し、医薬品を開発する手法を提供できる。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガレクチン−8活性制御剤及びその方法、さらにはそのスクリーニング法並びにスクリーニング試薬、システムなどに関する。
本発明は、ガレクチン−8(galectin−8)に由来する新規なポリヌクレオチド(あるいは核酸)及びポリペプチド(あるいはタンパク質)(又はその一部)あるいはその塩;ガレクチン−8の変異体及び誘導体;該変異体又は誘導体ポリヌクレオチド(あるいは核酸)及びポリペプチド(あるいはタンパク質)の製造法;該ガレクチン−8が認識する糖鎖あるいはそのアナログ(あるいはタンパク質誘導体も含む)(又はその一部)に対する抗体、該抗体を用いた免疫学的測定法及びそれに使用する試薬; ガレクチン−8のアゴニスト及びアンタゴニスト、それらに関連したスクリーニング法及びスクリーニングキット;並びに該ポリヌクレオチド(あるいは核酸)、ポリペプチド(あるいはタンパク質)、変異体、誘導体、アゴニスト及びアンタゴニストの用途に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ガレクチン類 (galectins)とは、β−ガラクトシドに特異的な結合活性を有している一群の動物由来のレクチンのファミリーを指している。これまでに9つのヒト由来ガレクチンファミリーが同定されている、すなわち、ガレクチン−1〜4 (galectin−1〜−4) 、ガレクチン−7〜10(galectin−7〜−10)、そしてガレクチン−12(galectin−12)である。各ファミリーを構成するメンバーはさらにその構造にしたがい三つのサブタイプに分けられることができる (非特許文献1) 。ガレクチン−1, −2, −7及び−10 は、おおよそ130 〜140 個のアミノ酸残基からなる一つの糖鎖認識領域(carbohydrate−recognition domain; CRD)を有するもので、プロトタイプに属するものである。ガレクチン−3は、カルボキシ末端CRD と異なったタイプのアミノ末端領域とを有するもので、唯一のキメラタイプのものである。ガレクチン−4, −8, −9及び−12 は、リンカーペプチドにより連結された二つのCRD をもっており、タンデムリピートタイプに分類されているものである。
【0003】
プロトタイプ及びキメラタイプのガレクチン類は、一つのCRD を有するものであるが、そのうちガレクチン−1, −2及び−3、そしておそらくはガレクチン−7及び−10 も、ダイマー(二量体)/マルチマー(多量体)を形成し、多価糖結合能を有していることが知られている (非特許文献2〜6) 。従って、大部分のガレクチン類は多価性の結合機能を有しており、複合糖質(glycoconjugate)を架橋する能力を備えていると考えられる。
【0004】
ガレクチン−8はインシュリン受容体基質に対する抗体を使用するλZAP の発現ライブラリーのスクリーニングの過程で偶然に発見され、クローン化して得られたもの (非特許文献7) で、タンデムリピートタイプに分類されものである。ラット肝臓のcDNAライブラリーからクローン化されたが、ヒトガレクチン−8をコードするcDNAは、ヒト脳海馬のcDNAライブラリーからラット全長cDNAをプローブとして単離されている (非特許文献8: GenBank/EMBL accession no. X91790)。その後の研究により、Gal−8は、ガレクチン−4, −6, −9及び−12 などの他のタンデム・リピート型ガレクチン類よりは、より広い範囲の哺乳動物の組織(例えば、肝臓、心臓、筋肉、腎臓、脳など)に分布していることが見出されている。Gal−8は、強力な血液凝集活性を示し、ラクトシルアガロースに結合する。Gal−8のN−末端側CRD 及びC−末端側CRDはおおよそ40%のアミノ酸の同一性を有している。その生物学的な機能に関しては、Gal−8はヒトカルシノーマ細胞がインテグリン被覆したプレートに接着するのを阻害し、該細胞のアポトーシス誘導することが示されている (非特許文献9) 。Gal−8は結腸癌の移動に影響を及ぼすことも示されている(非特許文献10)。
Gal−8 mRNAは、肺で高く発現しているとの報告や、その発現量は減るが、肝、腎、脾、後脚、心筋等の各組織でも発現しているとの報告もある。さらに、ヒト前立腺癌抗原であるPCTA−1とタンパク質レベルで高い相同性を示すとの報告もある。
最近、本発明者等のグループは、ヒトガレクチン−8が、強力な好中球接着誘導能を有すること、Gal−8のC末端CRD がインテグリンαM に結合し、一方ガレクチン−8のN末端CRD がproMMP−9に結合し、さらにproMMP−9を活性化し、活性型MMP−9産生を促進すること、またガレクチン−8のC末端CRD は例えば好中球などにおけるスーパーオキシド産生を促進する活性を有し、それはラクトースなどの糖アナログにより阻害することができることなどを見出し、例えばガレクチン−8と好中球との相互作用(ガレクチン−8とインテグリンαM との相互作用やガレクチン−8とproMMP−9との相互作用、proMMP−9の活性化を含む)に関連する応答・症状・疾患の研究・解析・測定、診断、予防、治療などの目的で様々な試薬、方法などに係わる技術の提供を行っている(特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】
特願2002−46478
【非特許文献1】
Hirabayashi, J. et al., Glycobiology, 3: 297−304 (1993)
【非特許文献2】
Cho, M. et al., Biochemistry, 35: 13081−13088 (1996)
【非特許文献3】
Gitt, M. et al., J. Biol. Chem., 267: 10601−10606 (1992)
【非特許文献4】
Hsu, D.K. et al., J. Biol. Chem., 267: 14167−14174 (1992)
【非特許文献5】
Gitt, M. et al., J. Biol. Chem., 270: 5032−5038 (1995)
【非特許文献6】
Pfeifer, K. et al., Glycobiology, 3: 179−184 (1993)
【非特許文献7】
Hadari et al., J. Biol. Chem., 270: 3447−3453 (1995)
【非特許文献8】
Hadari et al., Trends in Glycoscience and Glycotechnology, Vol.9, No.45,pp.103−112 (1997)
【非特許文献9】
Hadari et al., J. Cell Sci., 113: 2385−2397 (2000)
【非特許文献10】
N.Nagym et al., Gut, 50: 392−401 (2002)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
Gal−8 に関するこれまでの研究から、ヒトGal−8 の構造とその局在についてはいくらかの知見が得られているものの、腫瘍細胞の転移に関与する働きを持つのか否かとか、もし持つとしてどの様にして機能するかなどは未だ不明である。また、他のガレクチンと同様、細胞外へ分泌されるなどして、細胞の接着、成長、アポトーシスなどの過程の基本的な部分で中心的な役割を担っているのではないかと予想されてはいるが、それがどの様に係わっているのかは未だ不明でその解明が待たれている。これまでGal−8 に関して明らかにされた現象についても、分子レベルではその糖鎖結合活性のあることと関係して十分には理解が得られているわけではない。
ヒトGal−8 が強力な好中球接着誘導能を有するとの発見を考え併せると、ガレクチン−8は、免疫系においても多様な役割を担っていると思われる。ガレクチン類がどのようなメカニズムにより免疫系を制御しているのかを理解するためにも、CRD のそれぞれの果たす機能を明らかにすると共に、それらの糖結合特異性を解明する必要がある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、Gal−8 CRD のそれぞれ、すなわち、ヒトGal−8 のN−末端側CRD とC−末端側CRD の二つのCRD がそれぞれ如何なる役割を果たしているのかを調べるため、保存領域のアミノ酸 Arg233 あるいはArg69 のいずれかをHis で置換したアミノ酸置換を導入してR233H(すなわち、Gal−8N) 及びR69H(すなわち、Gal−8C) を生成せしめて、機能的に単一の糖鎖結合性を持つ Gal−8タンパク質をリコンビナントタンパク質として作製及び調製した。
該リコンビナントタンパク質を利用し、フロンタルアフィニティクロマトグラフィー技術(Hirabayashi et al., J. Chromatogr. A, 890, 261−271 (2000); Arata et al., J. Biol. Chem., 276: 3068−3077 (2001))により、Gal−8 のN−末端CRD 及びC−末端CRD と各種糖タンパク質(glycoproteins) 由来の糖鎖及び糖脂質(glycolipids) 由来の糖鎖間の相互作用について調べた。その結果、いずれのCRD も、特徴的な糖鎖親和性を示すことが判明した。
以上の結果から、本発明で、ガレクチン−8活性制御剤並びに制御法、さらにはそのクリーニング法や各種医薬品開発のための手段、試薬、技術が提供される。好適な態様では、本発明は、
〔1〕 ガレクチン−8、そのN−末端CRD 又はC−末端CRD を固相化したことを特徴とする担体;
〔2〕 上記〔1〕記載の担体を使用し、ガレクチン−8が認識する糖鎖あるいはそのアナログをスクリーニングすることを特徴とするスクリーニング法;
〔3〕 上記〔2〕記載のスクリーニング法で得られ且つガレクチン−8に結合活性を有する物質を含有することを特徴とするガレクチン−8活性阻害剤又は制御剤;
〔4〕 上記〔1〕記載の担体を使用し、ガレクチン−8の生物学的活性を促進または阻害する化合物のスクリーニング方法およびスクリーニングキット;
〔5〕 上記〔2〕記載のスクリーニング法で得られ且つガレクチン−8に結合活性を有する物質を含有することを特徴とする医薬;
〔6〕 (a) ガレクチン−8のN−末端CRD を有し且つC−末端CRD を有していない変異タンパク質及び(b) ガレクチン−8のC−末端CRD を有し且つN−末端CRD を有していない変異タンパク質から成る群から選ばれたものであることを特徴とするポリペプチド又はその塩;
〔7〕 上記〔6〕記載のポリペプチドをコードする塩基配列を有することを特徴とする核酸;
〔8〕 上記〔7〕記載の核酸を含有することを特徴とするベクター;
〔9〕 上記〔7〕記載の核酸あるいは上記〔8〕記載のベクターで形質転換されたものであることを特徴とする宿主細胞;
〔10〕 上記〔9〕記載の宿主細胞を栄養培地中で培養し、該宿主細胞において上記〔6〕記載のポリペプチドを発現せしめ、該発現されたポリペプチドを回収することを特徴とする上記〔6〕記載のポリペプチドの製造法;
〔11〕 上記〔2〕記載のスクリーニング法で得られ且つガレクチン−8が認識する糖鎖あるいはそのアナログに対する抗体;
〔12〕 (i) ガレクチン−8が認識する糖鎖あるいはそのアナログ及び(ii)ガレクチン−8が認識する糖鎖あるいはそのアナログに対する抗体又はその模倣体から成る群から選ばれたものを含有することを特徴とするガレクチン−8の生物学的活性を促進または阻害する剤; 及び
〔13〕 ガレクチン−8が認識する糖鎖あるいはそのアナログに対する抗体又はその模倣体を含有し、ガレクチン−8と同等の生物学的活性を持つ、あるいは該活性の一部を持つ、あるいは該活性の一部を欠く、又は該活性の一部若しくは全部を阻害することを特徴とする剤を提供している。
【0008】
本発明のその他の目的、特徴、優秀性及びその有する観点は、以下の記載より当業者にとっては明白であろう。しかしながら、以下の記載及び具体的な実施例等の記載を含めた本件明細書の記載は本発明の好ましい態様を示すものであり、説明のためにのみ示されているものであることを理解されたい。本明細書に開示した本発明の意図及び範囲内で、種々の変化及び/又は改変(あるいは修飾)をなすことは、以下の記載及び本明細書のその他の部分からの知識により、当業者には容易に明らかであろう。本明細書で引用されている全ての特許文献及び参考文献は、説明の目的で引用されているもので、それらは本明細書の一部としてその内容はここに含めて解釈されるべきものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明に従い、ヒト由来ガレクチン類のうちのガレクチン−8サブクラスに属するヒトガレクチンのCRD と予測されている領域を選択的に利用できる変異体が提供される。ガレクチン−8には、N−末端CRD とC−末端CRD とがあるが、本発明では、そのN−末端CRD 、C−末端CRD 、N−末端CRD (あるいはC−末端CRD)を担体などに結合して固相化しうる形態のものなどが提供される。該ヒト由来のガレクチン−8CRDポリペプチド若しくは該ガレクチン−8 CRDポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも60%の相同性を有し且つ糖鎖結合活性あるいは同等の抗原性を有するペプチドまたはその塩、そのポリペプチドの特徴的な部分ペプチドまたはその塩、それらをコードする遺伝子、例えばDNA 、RNA など、その遺伝子を遺伝子組換え技術で操作することが可能なように含有しているベクターあるいはプラスミド、こうしたベクターなどで形質転換された宿主細胞、さらにはその形質転換細胞を、培養して該ポリペプチドまたはその塩を製造する方法、こうして得られた該ポリペプチドまたはその塩やそのポリペプチドの特徴的な部分ペプチドまたはその塩を用いてスクリーニングして得られる糖鎖及びそのアナログ、さらには該糖鎖あるいはそのアナログに対する抗体、特にはモノクローナル抗体、その抗体を産生するハイブリドーマ細胞、該変異体を利用したり、あるいは該同定された糖鎖及びそのアナログ、さらには該抗体を用いた測定・診断手段並びに試薬が提供される。さらには、本明細書で開示され説明されている活性成分の利用を提供し、例えば、該活性成分を含有する医薬あるいは試薬などが提供され、そうした活性成分を用いた疾患、疾病あるいは異常な状態の治療及び/又は予防方法、さらにはスクリーニング方法などが提供される。特には、ガレクチン−8活性制御剤並びに制御法、さらにはそのクリーニング法や各種医薬品開発のための手段、試薬、技術が提供される。Gal−8 の好中球接着誘導活性、さらには、例えば好中球などに存在するガレクチン−8結合因子、例えばインテグリンαM (integrin αM)、マトリックスメタロプロテアーゼ−9前駆体 (pro−matrix metalloproteinase−9: proMMP−9) への結合を制御し、活性型MMP−9 産生、例えば好中球などにおけるスーパーオキシド産生を制御する物質など、Gal−8 の生物活性に関連する応答・症状・疾患の研究・解析・測定、診断、予防、治療などの目的で様々な試薬、方法などの技術が提供される。
【0010】
本明細書で用いる用語「ポリペプチド」としては、以下に記載するような如何なるポリペプチドを指すものであってもよい。ポリペプチドの基本的な構造は周知であり、当該技術分野において非常に数多くの参考書及びその他の刊行物に記載がある。こうしたことに鑑み、本明細書で用いる用語「ポリペプチド」は、ペプチド結合又は修飾したペプチド結合により互いに結合しているような2個又はそれ以上のアミノ酸を含む任意のペプチド又は任意のタンパク質を意味する。本明細書で用いる用語「ポリペプチド」としては、当該分野において通常、例えばペプチド、オリゴペプチドあるいはペプチドオリゴマーとも称せられる短い鎖のもの、及びタンパク質と一般的に言われ、多くの形態のものが知られている長い鎖のものの両方を意味してよい。ポリペプチドは、しばしば、通常、20種の天然型アミノ酸(天然に存在しているアミノ酸: あるいは遺伝子でコードされるアミノ酸)と称されるアミノ酸以外のアミノ酸を含有していてもよい。ポリペプチドは、また末端アミノ酸残基を含めて、その多くのアミノ酸残基が翻訳された後にプロセッシング及びその他の改変(あるいは修飾)されるといった天然の工程によるのみならず、当業者に周知の化学的改変技術によっても、上記のポリペプチドはそれが改変(修飾)できることは理解されよう。該ポリペプチドに加えられる改変(修飾)については、多くの形態のものが知られており、それらは当該分野の基礎的な参考書及びさらに詳細な論文並びに多数の研究文献にも詳しく記載されており、これらは当業者に周知である。
【0011】
幾つかのとりわけ常套的な改変・修飾としては、例えばグリコシル化、脂質結合、硫酸化、グルタミン酸残基のγ−カルボキシル化、水酸化及びADP−リボシル化等が挙げられ、例えばT. E. Creighton, Proteins−Structure and Molecular Properties, Second Edition, W. H. Freeman and Company, New York, (1993);B.C.Johnson (Ed.), Posttranslational Covalent Modification of Proteins, Academic Press, New York, (1983) (Wold, F., ”Posttranslational ProteinModifications: Perspective and Prospects”, pp.1−12); Seifter et al., ”Analysis for Protein Modifications and nonprotein cofactors”, Meth. Enzymol., 182: 626−646 (1990); Rattan et al., ”Protein Synthesis: Posttranslational Modification and Aging”, Ann. N. Y. Acad. Sci., 663: p.48−62 (1992)等の記載を参照できる。
本発明の「ポリペプチド」としては、特にはヒトガレクチン−8M 及び−8L のうちのCRD に関連した変異体及びその関連ポリペプチドを包含する。ヒトガレクチン−8のCRD に備わる生物活性に着目したものであれば、ヒトガレクチン−8のCRD のアミノ酸配列の一つと少なくとも60% より高い相同性、好ましくは70% 以上の相同性、さらに好ましくは80% 以上の相同性、また好ましくは85% 以上の相同性、もっと好ましくは90% 以上の相同性、より好ましくは95% 以上の相同性、特に好ましくは97% 以上の相同性を有し且つ糖鎖結合活性あるいは同等の抗原性などといった実質的に同等の生物学的活性を有するアミノ酸配列を有するものがすべて挙げられる。
【0012】
本明細書中、「相同性」とは、ポリペプチド配列(あるいはアミノ酸配列)又はポリヌクレオチド配列(あるいは塩基配列)における2本の鎖の間で該鎖を構成している各アミノ酸残基同志又は各塩基同志の互いの適合関係において同一であると決定できるようなものの量(数)を意味し、二つのポリペプチド配列又は二つのポリヌクレオチド配列の間の配列相関性の程度を意味するものである。相同性は容易に算出できる。二つのポリヌクレオチド配列又はポリペプチド配列間の相同性を測定する方法は数多く知られており、「相同性」(「同一性」とも言われる)なる用語は、当業者には周知である (例えば、Lesk, A. M. (Ed.), Computational Molecular Biology, Oxford University Press, New York, (1988);Smith, D. W. (Ed.), Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Academic Press, New York, (1993); Grifin, A. M. & Grifin, H. G. (Ed.), Computer Analysis of Sequence Data: Part I, Human Press, New Jersey, (1994); von Heinje, G., Sequence Analysis in Molecular Biology, Academic Press, New York, (1987); Gribskov, M. & Devereux, J. (Ed.), Sequence Analysis Primer, M−Stockton Press, New York, (1991) 等) 。二つの配列の相同性を測定するのに用いる一般的な方法には、Martin, J. Bishop (Ed.), Guide to Huge Computers, Academic Press, San Diego, (1994); Carillo, H. & Lipman, D., SIAM J. Applied Math., 48: 1073 (1988) 等に開示されているものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。相同性を測定するための好ましい方法としては、試験する二つの配列間の最も大きな適合関係部分を得るように設計したものが挙げられる。このような方法は、コンピュータープログラムとして組み立てられているものが挙げられる。二つの配列間の相同性を測定するための好ましいコンピュータープログラム法としては、GCG プログラムパッケージ (Devereux, J. et al., Nucleic Acids Research, 12(1): 387 (1984)) 、BLASTP、BLASTN、FASTA (Atschul, S. F. et al., J. Molec. Biol., 215: 403 (1990)) 等が挙げられるが、これらに限定されるものでなく、当該分野で公知の方法を使用することができる。
【0013】
ヒトガレクチン−8をコードする遺伝子は、公知であり(Y.R.Hadari et al., J.Biol. Chem., Hadari et al., Trends in Glycoscience and Glycotechnology,Vol.9, No.45, pp.103−112 (1997): GenBank/EMBL accession no. X91790)、本発明の変異体を得るための鋳型として好適に利用可能であるが、別途ヒト類表皮癌細胞系細胞(A431)など当該遺伝子を発現しているものからクローニングしたものを使用できる。代表的には適切な塩基配列をプライマーとして利用することにより、所定のコード遺伝子部分を入手して使用することができる。本発明の変異体ポリヌクレオチド(あるいは核酸)は、その塩基配列に開始コドン、例えば、Met をコードするコドン(及び終止コドン、例えばTGA 、TAA またはTAG)が存在していてもあるいは欠いていて後から付加するものであってよく、また、該塩基配列がコードするタンパク質と少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を持ち且つ糖鎖結合活性を有するかあるいは同等の抗原性などのそれと実質的に同等の生物学的活性を有するペプチドをコードするといったそれと同効の塩基配列を含有するものであれば如何なるものであってもよい。
該ポリヌクレオチド(あるいは核酸)は、一本鎖DNA 、二本鎖DNA 、RNA 、DNA:RNA ハイブリッド、合成DNA などの核酸であり、またヒトゲノムDNA 、ヒトゲノミックDNA ライブラリー、ヒト組織・細胞由来のcDNA、合成DNA のいずれであってもよい。該ポリヌクレオチド(あるいは核酸)の塩基配列は、修飾(例えば、付加、除去、置換など)されることもでき、そうした修飾されたものも包含されてよい。さらには、以下説明するように、本発明の核酸は、本発明で記載するペプチド、特には本発明の変異ペプチドあるいはその一部をコードするものであってよく、好ましいものとしてはDNA が挙げられる。ヒト、チンパンジー、サル、マウス、ラット、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウサギなどの哺乳動物由来のものも包含されてもよい。また上記「同効の塩基配列」とは、例えばストリンジェントな条件でCRD の塩基配列うちの連続した5個以上の塩基配列、好ましくは10個以上の塩基配列、より好ましくは15個以上の塩基配列、さらに好ましくは20個以上の塩基配列とハイブリダイズし、糖鎖結合性の点で実質的に同等のアミノ酸配列をコードするものなどが挙げられる。
【0014】
本発明の遺伝子組換え技術は、例えば J. Sambrook, E. F. Fritsch & T. Maniatis, ”Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd edition)”, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (1989); D. M. Glover et al. ed., ”DNA Cloning”, 2nd ed., Vol. 1 to 4, (The Practical Approach Series), IRL Press, Oxford University Press (1995);日本生化学会編、「続生化学実験講座1、遺伝子研究法II」、東京化学同人 (1986);日本生化学会編、「新生化学実験講座2、核酸 III(組換えDNA 技術)」、東京化学同人 (1992); R. Wu ed., ”Methods in Enzymology”, Vol. 68 (Recombinant DNA), Academic Press, New York (1980); R. Wu et al. ed., ”Methods in Enzymology”, Vol. 100 (Recombinant DNA, Part B) & 101 (Recombinant DNA, Part C), Academic Press, New York (1983); R. Wu et al. ed., ”Methods in Enzymology”, Vol. 153 (Recombinant DNA, Part D), 154 (Recombinant DNA, Part E) & 155 (Recombinant DNA, Part F), Academic Press, New York (1987); J. H. Miller ed., ”Methods in Enzymology”, Vol. 204, Academic Press, New York (1991); R. Wu et al. ed., ”Methods in Enzymology”, Vol. 218, Academic Press,New York (1993)などに記載の方法あるいはそこで引用された文献記載の方法あるいはそれらと実質的に同様な方法や改変法により行うことができる (それらの中にある記載はそれを参照することにより本明細書の開示に含められる) 。
【0015】
本明細書中、「ポリメラーゼ・チェイン・リアクション(Polymerase Chain Reaction) 」又は「PCR 」とは、一般的に、米国特許第 4683195号明細書などに記載されたような方法を指し、例えば、所望のヌクレオチド配列をインビトロで酵素的に増幅するための方法を指している。一般に、PCR 法は、鋳型核酸と優先的にハイブリダイズすることのできる2個のオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、プライマー伸長合成を行うようなサイクルを繰り返し行うことを含むものである。典型的には、PCR 法で用いられるプライマーは、鋳型内部の増幅されるべきヌクレオチド配列に対して相補的なプライマーを使用することができ、例えば、該増幅されるべきヌクレオチド配列とその両端において相補的であるか、あるいは該増幅されるべきヌクレオチド配列に隣接しているものを好ましく使用されることができる。PCR 反応は、当該分野で公知の方法あるいはそれと実質的に同様な方法や改変法により行うことができるが、例えば R. Saiki, et al., Science, 230: 1350, 1985; R. Saiki, et al., Science, 239: 487, 1988 ; H. A.Erlich ed., PCR Technology, Stockton Press, 1989 ; D. M. Glover et al. ed., ”DNA Cloning”, 2nd ed., Vol. 1, (The Practical Approach Series), IRL Press, Oxford University Press (1995) ; M. A. Innis et al. ed., ”PCR Protocols: a guide to methods and applications”, Academic Press, New York(1990)); M. J. McPherson, P. Quirke and G. R. Taylor (Ed.), PCR: a practical approach, IRL Press, Oxford (1991); M. A. Frohman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85, 8998−9002 (1988)などに記載された方法あるいはそれを修飾したり、改変した方法に従って行うことができる。また、PCR 法は、それに適した市販のキットを用いて行うことができ、キット製造業者あるいはキット販売業者により明らかにされているプロトコルに従って実施することもできる。
【0016】
代表的な場合には、例えば鋳型DNA とプライマーとを、10×反応緩衝液 (Taq DNA ポリメラーゼなどDNA ポリメラーゼに添付されている) 、dNTPs ( デオキシヌクレオシド三リン酸dATP, dGTP, dCTP, dTTPの混合物)、Taq DNA ポリメラーゼ及び脱イオン蒸留水と混合する。5’端側のプライマーとしては、少なくとも開始コドンを含有するか、あるいは該開始コドンを含めて増幅できるように選択し、また3’端側のプライマーとしては、少なくともストップコドンを含有するか、あるいは該ストップコドンを含めて増幅できるように選択することが好ましい。混合物を、例えば、GeneAmp 2400 PCR system, Perkin−Elmer/Cetus などの自動サーマルサイクラーを用いて一般的なPCR サイクル条件下にそのサイクルを25〜60回繰り返すが、増幅のためのサイクル数は適宜目的に応じて適当な回数とすることができる。PCR サイクル条件としては、例えば、変性90〜95℃ 5〜100 秒、アニーリング40〜60℃ 5〜150 秒、伸長65〜75℃ 30 〜300 秒のサイクル、好ましくは変性 94 ℃ 15 秒、アニーリング 58 ℃ 15 秒、伸長 72 ℃ 45 秒のサイクルが挙げられるが、アニーリングの反応温度及び時間は適宜実験によって適当な値を選択できるし、変性反応及び伸長反応の時間も、予想されるPCR 産物の鎖長に応じて適当な値を選択できる。アニーリングの反応温度は、通常プライマーと鋳型DNA とのハイブリッドのTm値に応じて変えることが好ましい。伸長反応の時間は、通常1000bpの鎖長当たり1 分程度がおおよその目安であるが、より短い時間を選択することも場合により可能である。
【0017】
得られたPCR 産物は、通常 1〜2% アガロースゲル電気泳動にかけて、特異なバンドとしてゲルから切り出し、例えば、gene clean kit (Bio 101)などの市販の抽出キットを用いてDNA を抽出する。抽出されたDNA は適当な制限酵素で切断し、必要に応じ精製処理したり、さらには必要に応じ5’末端をT4ポリヌクレオチドキナーゼなどによりリン酸化した後、pUC18 などのpUC 系ベクターといった適当なプラスミドベクターにライゲーションし、適当なコンピータント細胞を形質転換する。クローニングされたPCR 産物は適宜その塩基配列を解析されることができる。PCR 産物のクローニングには、例えば、p−Direct (Clontech), pCR−Script TM SK(+) (Stratagene), pGEM−T (Promega), pAmp TM (Gibco−BRL)などの市販のプラスミドベクターを用いることが出来る。塩基配列の決定は、ダイデオキシ法、例えば M13ダイデオキシ法など、Maxam−Gilbert 法などを用いて行うことができるが、市販のシークエンシングキット、例えば Taqダイプライマーサイクルシークエンシングキット(Applied Biosystems)、Sequenase v 2.0 kit などを用いたり、自動塩基配列決定装置、例えば蛍光DNA シーケンサー装置 (例えば、Model 373A, Applied Biosystems) などを用いて行うことが出来る。ダイデオキシ法に用いられるポリメラーゼとしては、例えば、DNA ポリメラーゼ Iのクレノー・フラグメント、AMV 逆転写酵素、Taq DNA ポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ、修飾 T7 DNA ポリメラーゼなどが挙げられる。
【0018】
本明細書中、「オリゴヌクレオチド」とは、比較的短い一本鎖又は二本鎖のポリヌクレオチドで、好ましくはポリデオキシヌクレオチドが挙げられ、Angew. Chem. Int. Ed. Engl., Vol.28, p.716−734 (1989) に記載されているような既知の方法、例えば、トリエステル法、ホスファイト法、ホスホアミダイト法、ホスホネート法などの方法により化学合成されることができる。通常合成は、修飾された固体支持体上で合成を便利に行うことができることが知られており、例えば、自動化された合成装置を用いて行うことができ、該装置は市販されている。該オリゴヌクレオチドは、一つ又はそれ以上の修飾された塩基を含有していてよく、例えば、イノシンなどの天然においては普通でない塩基あるいはトリチル化された塩基などを含有していてよい。
【0019】
所定の核酸を同定したりするには、ハイブリダイゼーション技術を利用できる。ハイブリダイゼーションは、所定の挿入DNA を保持するなどしている微生物により形成されたプラーク(核酸自体でもよい)をナイロンフィルターなどの膜に転写せしめ、必要に応じ変成処理、固定化処理、洗浄処理などを施した後、その膜に転写せしめられたものを、必要に応じ変成させた標識プローブDNA 断片と、ハイブリダイゼーション用バッファ中で反応させて行われる。ハイブリダイゼーション処理は、普通約35℃〜約80℃、より好適には約50℃〜約65℃で、約15分〜約36時間、より好適には約1 時間〜約24時間行われるが、適宜最適な条件を選択して行うことができる。例えば、ハイブリダイゼーション処理は、約55℃で約18時間行われる。ハイブリダイゼーション用バッファとしては、当該分野で普通に使用されるものの中から選んで用いることができ、例えば、Rapid hybridization buffer(Amersham)などを用いることができる。転写した膜の変成処理としては、アルカリ変性液を使用する方法が挙げられ、その処理後中和液や緩衝液で処理するのが好ましい。また膜の固定化処理としては、普通約40℃〜約 100℃、より好適には約70℃〜約90℃で、約15分〜約24時間、より好適には約1 時間〜約4 時間ベーキングすることにより行われるが、適宜好ましい条件を選択して行うことができる。例えば、フィルターを約80℃で約2 時間ベーキングすることにより固定化が行われる。転写した膜の洗浄処理としては、当該分野で普通に使用される洗浄液、例えば1M NaCl, 1mM EDTA および 0.1% sodium dodecyl sulfate (SDS) 含有 50mM Tris−HC1緩衝液,pH8.0 などで洗うことにより行うことができる。ナイロンフィルターなどの膜としては、当該分野で普通に使用されるものの中から選んで用いることができ、例えば、ナイロンフィルター[ハイボンド(Hybond)−N、Amersham]などを挙げることができる。
【0020】
上記アルカリ変性液、中和液、緩衝液としては、当該分野で普通に使用されるものの中から選んで用いることができ、アルカリ変性液としては、例えば、0.5MNaOH および1.5M NaCl を含有する液などを挙げることができ、中和液としては、例えば、1.5M NaCl 含有 0.5M Tris−HCl 緩衝液,pH8.0 などを挙げることができ、緩衝液としては、例えば、 2×SSPE(0.36M NaCl、20mM NaHPOおよび2mM EDTA)などを挙げることができる。またハイブリダイゼーション処理に先立ち、非特異的なハイブリダイゼーション反応を防ぐために、必要に応じて転写した膜はプレハイブリダイゼーション処理することが好ましい。このプレハイブリダイゼーション処理は、例えば、プレハイブリダイゼーション溶液[50% formamide, 5×Denhardt’s溶液(0.2 %ウシ血清アルブミン、0.2 % polyvinyl pyrrolidone), 5×SSPE, 0.1 % SDS, 100 μg/ml熱変性サケ精子DNA]などに浸し、約35℃〜約50℃、好ましくは約42℃で、約 4〜約24時間、好ましくは約 6〜約8 時間反応させることにより行うことができるが、こうした条件は当業者であれば適宜実験を繰り返し、より好ましい条件を決めることができる。ハイブリダイゼーションに用いる標識プローブDNA 断片の変成は、例えば、約70℃〜約100 ℃、好ましくは約100 ℃で、約1 分間〜約60分間、好ましくは約 5分間加熱するなどして行うことができる。なお、ハイブリダイゼーションは、それ自体公知の方法あるいはそれに準じた方法で行うことができるが、本明細書でストリンジェントな条件とは、例えばナトリウム濃度に関し、約15〜約50mM、好ましくは約19〜約40mM、より好ましくは約19〜約20mMで、温度については約35〜約85℃、好ましくは約50〜約70℃、より好ましくは約60〜約65℃の条件を示す。
【0021】
ハイブリダイゼーション完了後、フィルターを十分に洗浄処理し、特異的なハイブリダイゼーション反応をした標識プローブDNA 断片以外の標識プローブを取り除く。フィルターの洗浄処理は、当該分野で普通に使用されるものの中から選んで用いて行うことができ、例えば、0.1 % SDS含有 0.5×SSC ( O.15M NaCl、15mM クエン酸)溶液などで洗うことにより実施できる。
ハイブリダイズしたプラーク(核酸)は、代表的にはオートラジオグラフィーにより検出することができるが、当該分野で用いられる方法の中から適宜選択してプラーク(核酸)検出に用いることもできる。検出したシグナルに相当するプラーク(核酸)を、適切な緩衝液、例えば、SM溶液(100mM NaCl および10mM MgSO含有50mM Tris−HCl 緩衝液、pH7.5 )などに懸濁し、ついでこのファージ(核酸自体を含めてよい)懸濁液を適度に希釈して、大腸菌に感染させ、得られた大腸菌を培養して、その培養された大腸菌から目的組換え体ファージ(核酸)を得る。なお、必要に応じて上記プローブDNA を使用して、ハイブリダイゼーション処理により遺伝子ライブラリーやcDNAライブラリーから目的組換え体ファージ(核酸)をスクリーニングする処理は、繰り返して行うことができる。また目的組換え体ファージ(核酸)は、培養された大腸菌から抽出処理、遠心分離処理などを施して得ることができる。
【0022】
得られた核酸や核酸を持つファージ粒子は、当該分野で普通に使用される方法で精製分離することができ、例えば、グリセロールグラジエント超遠心分離法(Molecular cloning, a laboratory manual, ed. T. Maniatis, Cold Spring Harbor Laboratory, 2nd ed. 78, 1989)などにより精製することができる。ファージ粒子からは、当該分野で普通に使用される方法でDNA を精製分離することができ、例えば、得られたファージをTM溶液(10mM MgSO含有50mM Tris−HCl 緩衝液、pH7.8 )などに懸濁し、DNase I およびRNase A などで処理後、20mM EDTA 、50μg/ml Proteinase K 及び0.5 %SDS 混合液などを加え、約65℃、約1 時間保温した後、これをフェノール抽出ジエチルエーテル抽出後、エタノール沈殿によりDNA を沈殿させ、次に得られたDNA を70%エタノールで洗浄後乾燥し、TE溶液(10mM EDTA 含有10mM Tris−HC1 緩衝液、pH8.0 )に溶解するなどして得られる。また、目的としているDNA は、サブクローニングなどにより大量に得ることも可能であり、例えばサブクローニングは、宿主として大腸菌を用いプラスミドベクターなどを用いて行うことができる。こうしたサブクローニングにより得られたDNA も、上記と同様にして遠心分離、フェノール抽出、エタノール沈殿などの方法により精製分離できる。こうして本発明に従って、目的とするDNA を含有するクローン(例えば、組換え体ファージなどとして)を得ることができる。
【0023】
本発明の所望の変異体の塩基配列の全部あるいは一部を有する核酸は、化学合成によって得ることも可能である。その場合断片を化学合成し、それらを酵素により結合することによってもよい。また、化学合成断片を上記したようにして、プライマーあるいはプローブとして用いて目的とする配列を得ることも可能である。PCR 法で用いるプライマーとしては、上記の部位を含むDNA 断片を増幅できるものであれば、特に限定されない。代表的には、プライマーは (a)配列表の配列番号:1に示された塩基配列のうちの任意の領域に相当する塩基配列を有するオリゴヌクレオチド及び (b)配列表の配列番号:1に示された塩基配列のうちの任意の領域に対する相補塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを使用することができ、より好ましくは(1) N−末端又はC−末端CRD 塩基配列のうちの5’端側の任意の領域に相当する塩基配列を有するオリゴヌクレオチド及び (2)N−末端又はC−末端CRD 塩基配列のうちの3’端側の任意の領域に対する相補塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを使用することができ、例えば、3〜100 個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜35個のヌクレオチドを含有するものが挙げられる。
【0024】
本発明で得られたDNA 断片を、下記で詳しく説明するような適当なベクター、例えば、プラスミドpEX 、pMAMneo 、pKG5などのベクターに組込み、下記で詳しく説明するような適当な宿主細胞、例えば、大腸菌、酵母、CHO 細胞、COS 細胞などで発現させることができる。また、該DNA 断片は、そのままあるいは適当な制御配列を付加したDNA 断片として、または適当なベクターに組込み、そして動物に導入して、ガレクチン−8N あるいはガレクチン−8C など変異体を発現するトランスジェニック動物を作成することができる。動物としては、哺乳動物が挙げられ、例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ウシなどが挙げられる。好ましくは、マウスなどの動物の受精卵に該DNA 断片を導入して、トランスジェニック動物を作成することができる。
この外来性核酸を哺乳動物などの動物細胞に導入する方法としては当該分野で知られた方法あるいはそれと実質的に同様な方法で行うことができ、例えばリン酸カルシウム法(例えば、F. L. Graham et al., Virology, 52: 456, 1973など)、DEAE− デキストラン法(例えば、D. Warden et al., J. Gen. Virol., 3: 371, 1968など)、エレクトロポレーション法(例えば、E. Neumann et al., EMBO J, 1: 841, 1982 など)、マイクロインジェクション法、リボソーム法、ウイルス感染法、ファージ粒子法などが挙げられる。こうして変異体核酸をトランスフェクションされた動物細胞の産生する遺伝子産物は、それを解析することもできる。
【0025】
本発明で得られたDNA などの核酸を組込むプラスミドとしては遺伝子工学的に常用される宿主細胞(例えば、大腸菌、枯草菌等の原核細胞宿主、酵母、CHO 細胞、COS 細胞等の真核細胞宿主、Sf21等の昆虫細胞宿主)中で該DNA が発現できるプラスミドであればどのようなプラスミドでもよい。こうした配列内には、例えば選択した宿主細胞で発現するのに好適に修飾されたコドンが含まれていることができるし、制限酵素部位が設けられていることもできるし、目的とする遺伝子の発現を容易にするための制御配列、促進配列など、目的とする遺伝子を結合するのに役立つリンカー、アダプターなど、さらには抗生物質耐性などを制御したり、代謝を制御したりし、選別などに有用な配列(ハイブリドタンパク質や融合タンパク質をコードするものも含む)等を含んでいることができる。好ましくは、適当なプロモーター、例えば大腸菌を宿主とするプラスミドでは、トリプトファンプロモーター(trp) 、ラクトースプロモーター(lac) 、トリプトファン・ラクトースプロモーター(tac) 、リポプロテインプロモーター(lpp) 、λファージ Pプロモーター等を、動物細胞を宿主とするプラスミドでは、SV40レートプロモーター、MMTV LTRプロモーター、RSV LTR プロモーター、CMV プロモーター、SRαプロモーター等を、酵母を宿主とするプラスミドでは、GAL1、GAL10 プロモーター等を使用し得る。
【0026】
大腸菌を宿主とするプラスミドとしては、例えばpBR322、pUC18 、pUC19、pUC118、pUC119、pSP64 、pSP65 、pTZ−18R/−18U、pTZ−19R/−19U、pGEM−3、pGEM−4、pGEM−3Z 、pGEM−4Z 、pGEM−5Zf(−) 、pBluescript KSTM、(Stratagene)などが挙げられる。大腸菌での発現に適したプラスミドベクターとしては、pAS、pKK223 (Pharmacia)、pMC1403、pMC931、pKC30、pRSET−B (Invitrogen)なども挙げられる。動物細胞を宿主とするプラスミドとしては、SV40ベクター、ポリオーマ・ウイルスベクター、ワクシニア・ウイルスベクター、レトロウイルスベクターなどが挙げられ、例えばpcD 、pcD−SRα、CDM8、pCEV4、pME18S、pBC12BI、pSG5 (Stratagene) などが挙げられる。酵母を宿主とするプラスミドとしては、YIp型ベクター、YEp型ベクター、YRp型ベクター、YCp型ベクターなどが挙げられ、例えばpGPD−2などが挙げられる。宿主細胞としては、宿主細胞が大腸菌の場合、例えば大腸菌K12 株に由来するものが挙げられ、例えばNM533 、XL1−Blue、C600、DH1、DH5、DH11S、DH12S、 DH5α、DH10B、HB101、MC1061、JM109、STBL2、B834株由来としては、BL21(DE3)pLysSなどが挙げられる。宿主細胞が動物細胞の場合、例えばアフリカミドリザル線維芽細胞由来のCOS−7細胞、COS−1細胞、CV−1細胞、マウス線維芽細胞由来のCOP 細胞、MOP細胞、WOP細胞、チャイニーズ・ハムスター細胞由来のCHO細胞、CHO DHFR細胞、ヒトHeLa細胞、マウス細胞由来C127細胞、マウス細胞由来NIH 3T3 細胞などが挙げられる。昆虫細胞としては、カイコ核多角体病ウイルス (Bombyx mori nuclear polyhedrosis virus) あるいはそれに由来するものをベクターとし、カイコ幼虫あるいはカイコ培養細胞、例えばBM−N細胞などを用いることが挙げられる。植物細胞を宿主細胞として使用することも可能であり、それに適するベクターと共に、それらは当該分野で広く知られている。
【0027】
本発明の遺伝子工学的手法においては、当該分野で知られたあるいは汎用されている制限酵素、逆転写酵素、DNA 断片をクローン化するのに適した構造に修飾したりあるいは変換するための酵素であるDNA 修飾・分解酵素、DNA ポリメラーゼ、末端ヌクレオチジルトランスフェラーゼ、DNA リガーゼなどを用いることが出来る。制限酵素としては、例えば、R. J. Roberts, Nucleic Acids Res., 13:r165, 1985; S. Linn et al. ed. Nucleases, p. 109, Cold Spring Harbor Lab., Cold Spring Harbor, New York, 1982; R. J. Roberts, D. Macelis, Nucleic Acids Res., 19: Suppl. 2077, 1991などに記載のものが挙げられる。逆転写酵素としては、例えばマウスモロネイ白血病ウイルス (mouse Moloney leukemiavirus; MMLV) 由来の逆転写酵素 (reverse transcriptase)、ニワトリ骨髄芽球症ウイルス (avian myeloblastosis virus; AMV)由来の逆転写酵素などが挙げられる。逆転写酵素は、RNase H 欠損体などは好ましく用いることができ、特にはRNase H 活性を欠いた修飾MMLV RT が好ましく使用でき、さらには熱安定性の高いものが好ましい。適した逆転写酵素としては、MMLV RT (Gibco−BRL) 、Superscript RT plus (Life Technologies) などが挙げられる。
【0028】
DNA ポリメラーゼとしては、例えば大腸菌DNA ポリメラーゼ、その誘導体であるクレノウ・フラグメント、大腸菌ファージT4 DNAポリメラーゼ、大腸菌ファージT7 DNAポリメラーゼ、耐熱菌DNA ポリメラーゼなどが挙げられる。末端ヌクレオチジルトランスフェラーゼとしては、例えばR. Wu et al. ed., ”Methods in Enzymology”, Vol. 100, p. 96, Academic Press, New York (1983) に記載の3’−OH 末端にデオキシヌクレオチド(dNMP)を付加するTdTaseなどが挙げられる。DNA 修飾・分解酵素としては、エキソヌクレアーゼ、エンドヌクレアーゼなどが挙げられ、例えばヘビ毒ホスホジエステラーゼ、脾臓ホスホジエステラーゼ、大腸菌DNA エキソヌクレアーゼ I、大腸菌DNA エキソヌクレアーゼIII 、大腸菌DNA エキソヌクレアーゼ VII、λエキソヌクレアーゼ、DNase I 、ヌクレアーゼS1、ミクロコッカス (Micrococcus) ヌクレアーゼなどが挙げられる。DNA リガーゼとしては、例えば大腸菌DNA リガーゼ、T4 DNAリガーゼなどが挙げられる。
DNA 遺伝子をクローニングしてDNA ライブラリーを構築するのに適したベクターとしては、プラスミド、λファージ、コスミド、P1ファージ、F因子、YAC などが挙げられ、好ましくはλファージ由来のベクターが挙げられ、例えばCharon4A 、Charon 21A、λgt10、λgt11、λDASHII、λFIXII 、λEMBL3 、λZAPII TM (Stratagene) などが挙げられる。
【0029】
本発明のタンパク質をコードする核酸を含有する発現ベクターで形質転換された形質転換体は、必要に応じて適当な選択マーカーを用い、繰り返しクローニングを行うことにより、高い発現能を安定して有する細胞株を得ることができる。例えば、宿主細胞として動物細胞を用いた形質転換体において、dhfr遺伝子を選択マーカーとして利用した場合、MTX 濃度を徐々に上げて培養し、耐性株を選択することにより、本発明のタンパク質をコードするDNA を増幅させ、より高い発現を得られる細胞株を得ることができる。本発明の形質転換体は、本発明のタンパク質をコードする核酸が発現可能な条件下で培養し、目的物を生成、蓄積せしめることができる。該形質転換体は、当該分野で汎用されている培地中で培養することができる。例えば、大腸菌、枯草菌等の原核細胞宿主、酵母などを宿主としている形質転換体は、液体培地を好適に使用することができる。培地中には、該形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物その他が含有せしめられる。炭素源としては、たとえばグルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖など、窒素源としては、たとえばアンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、麦芽エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質、無機物としては,例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウム、炭酸カルシウムなどが挙げられる。また、酵母、ビタミン類、カザミノ酸、生長促進因子などを添加してもよい。また、必要によりプロモーターを効率よく働かせるために、例えば、3β−インドリル アクリル酸のような薬剤を加えることができる。培地のpHは約5〜8が望ましい。
【0030】
培養は、例えば大腸菌では通常約15〜約45℃で約3〜約75時間行い、必要により、通気や攪拌を加えることもできる。宿主が動物細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、たとえば約5〜約20%の胎児牛血清を含むMEM 培地、PRMI1640培地、DMEM培地などが用いられる。pHは約6〜約8であるのが好ましい。培養は通常約30℃〜約40℃で約15〜約72時間行い、必要に応じて通気や攪拌を加える。所定の遺伝子産物を発現している形質転換体はそのまま利用可能であるが、その細胞ホモジュネートとしても利用できるが、所定の遺伝子産物を単離して用いることもできる。上記培養細胞から抽出するに際しては、培養後、公知の方法で菌体あるいは細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊したのち、遠心分離やろ過により粗抽出液を得る方法などを適宜用いることができる。緩衝液の中には尿素や塩酸グアニジンなどの蛋白変性剤や、トリトン X−100(商品名)、ツウィーン−80 (商品名)などの界面活性剤を加えてあってもよい。培養液中に目的生成物が分泌される場合には、培養終了後、それ自体公知の方法で菌体あるいは細胞と上清とを分離し、上清を集める。このようにして得られた培養上清、あるいは抽出液中に含まれる目的生成物は、自体公知の分離・精製法を適切に組み合わせてその精製を行なうことができ、例えば硫酸アンモニウム沈殿法などの塩析、セファデックスなどによるゲルろ過法、例えばジエチルアミノエチル基あるいはカルボキシメチル基などを持つ担体などを用いたイオン交換クロマトグラフィー法、例えばブチル基、オクチル基、フェニル基など疎水性基を持つ担体などを用いた疎水性クロマトグラフィー法、色素ゲルクロマトグラフィー法、電気泳動法、透析、限外ろ過法、アフィニティ・クロマトグラフィー法、高速液体クロマトグラフィー法などにより精製して得ることができる。好ましくは、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、リガンドなどを固定化したアフィニティー・クロマトグラフィーなどで処理し精製分離処理できる。例えば、ゼラチン−アガロース・アフィニティー・クロマトグラフィー、ヘパリン−アガロース・クロマトグラフィーなどが挙げられる。
【0031】
本発明では、ガレクチン−8の遺伝子塩基配列を基に遺伝子工学的に常用される方法を用いることにより、所定のアミノ酸配列中に適宜、1個ないし複数個以上のアミノ酸の置換、欠失、挿入、転移あるいは付加したごとき変異を導入した相当するタンパク質を製造することができる。こうした変異・変換・修飾法としては、日本生化学会編、「続生化学実験講座1、遺伝子研究法 II 」、p105(広瀬進)、東京化学同人(1986); 日本生化学会編、「新生化学実験講座2、核酸 III(組換えDNA 技術)」、p233(広瀬進)、東京化学同人(1992); R. Wu, L. Grossman, ed., ”Methods in Enzymology”, Vol. 154, p. 350 & p. 367, Academic Press, New York (1987); R. Wu, L. Grossman, ed., ”Methods in Enzymology”, Vol. 100, p. 457 & p. 468, Academic Press, New York (1983); J. A. Wells et al., Gene, 34: 315, 1985; T. Grundstroem et al., Nucleic Acids Res., 13: 3305, 1985; J. Taylor et al., Nucleic Acids Res., 13: 8765, 1985;R. Wu ed., ”Methods in Enzymology”, Vol. 155, p. 568, Academic Press, New York (1987); A. R. Oliphant et al., Gene, 44: 177, 1986 などに記載の方法が挙げられる。例えば合成オリゴヌクレオチドなどを利用する位置指定変異導入法(部位特異的変異導入法) (Zoller et al., Nucl. Acids Res., 10: 6487, 1987; Carter et al., Nucl. Acids Res., 13: 4331, 1986), カセット変異導入法 (cassette mutagenesis: Wells et al., Gene, 34: 315, 1985), 制限部位選択変異導入法 (restriction selection mutagenesis: Wells et al., Philos.Trans. R. Soc. London Ser A, 317: 415, 1986),アラニン・スキャンニング法(Cunningham & Wells, Science, 244: 1081−1085, 1989), PCR 変異導入法, PCR メガプライマー法, Kunkel法, dNTP[αS]法(Eckstein),亜硫酸や亜硝酸などを用いる領域指定変異導入法等の方法が挙げられる。
【0032】
さらに得られた本発明のタンパク質は、化学的な手法でその含有されるアミノ酸残基を修飾することもできるし、ペプチダーゼ、例えばペプシン、キモトリプシン、パパイン、ブロメライン、エンドペプチダーゼ、エキソペプチダーゼなどの酵素を用いて修飾したり、部分分解したりしてその誘導体などにすることができる。本発明のタンパク質は、C 末端が通常カルボキシル基(−COOH) またはカルボキシレート (−COO) であるが、C 末端がアミド(−CONH)またはエステル(−COOR) であってもよい。ここでエステルにおけるR としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルもしくはn−ブチルなどのC1−6アルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3−8 シクロアルキル基、例えば、フェニル、α−ナフチルなどのC6−12 アリール基、例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル−C1−2アルキル基もしくはα−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1−2 アルキル基などのC7−14 アラルキル基のほか、経口用エステルとして汎用されるピバロイルオキシメチル基などが用いられる。本発明のタンパク質がC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明のタンパク質に含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC 末端のエステルなどが用いられる。
【0033】
さらに、本発明のタンパク質には、上記したタンパク質において、N 末端のメチオニン残基のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチルなどのC1−5 アルキル−カルボニル基などのC1−6アシル基など)で保護されているもの、N 端側が生体内で切断され生成したグルタミル基がピログルタミル化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば、−OH 、−COOH 、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1−6アシル基など)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖タンパク質などの複合タンパク質なども含まれる。また遺伝子組換え法で製造する時に融合タンパク質として発現させ、生体内あるいは生体外で天然のCRD と実質的に同等の生物学的活性を有しているものに変換・加工してもよい。遺伝子工学的に常用される融合産生法を用いることができるが、こうした融合タンパク質はその融合部を利用してアフィニティクロマトグラフィーなどで精製することも可能である。こうした融合タンパク質としては、ヒスチジンタグに融合せしめられたもの、あるいは、β− ガラクトシダーゼ(β−gal) 、マルトース結合タンパク (MBP), グルタチオン−S−トランスフェラーゼ (GST)、チオレドキシン (TRX)又は Cre Recombinaseのアミノ酸配列に融合せしめられたものなどが挙げられる。同様に、ポリペプチドは、ヘテロジーニアスなエピトープのタグを付加され、該エピトープに特異的に結合する抗体を用いてのイムノアフィニティ・クロマトグラフィーによる精製をなし得るようにすることもできる。
【0034】
より適した実施態様においては、該エピトープタグとしては、例えば AU5, c−Myc, CruzTag 09, CruzTag 22, CruzTag 41, Glu−Glu, HA, Ha.11, KT3, FLAG (registered trademark, Sigma−Aldrich), Omni−probe, S−probe, T7, Lex A, V5, VP16, GAL4, VSV−G などが挙げられる。(Field et al., Molecular and Cellular Biology, 8: pp.2159−2165 (1988); Evan et al., Molecular and CellularBiology, 5: pp.3610−3616 (1985); Paborsky et al., Protein Engineering, 3(6): pp.547−553 (1990); Hopp et al., BioTechnology, 6: pp.1204−1210 (1988); Martin et al., Science, 255: pp.192−194 (1992); Skinner et al., J. Biol. Chem., 266: pp.15163−15166 (1991); Lutz−Freyermuth et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87: pp.6393−6397 (1990)など) 。酵母を利用した two−hybrid 法も利用できる。さらに融合タンパク質としては、検出可能なタンパク質となるようなマーカーを付されたものであることもできる。より好適な実施態様においては、該検出可能なマーカーは、ビオチン/ストレプトアビジン系のBiotin Avi Tag、螢光を発する物質などであってよい。該螢光を発する物質としては、オワンクラゲ (Aequorea victorea)などの発光クラゲ由来の緑色螢光タンパク質(green fluorescent protein: GFP)、それを改変した変異体(GFPバリアント) 、例えば、EGFP (Enhanced−humanized GFP), rsGFP (red−shift GFP), 黄色螢光タンパク質 (yellow fluorescent protein: YFP), 緑色螢光タンパク質 (green fluorescent protein: GFP),藍色螢光タンパク質 (cyan fluorescent protein: CFP), 青色螢光タンパク質 (blue fluorescent protein: BFP), ウミシイタケ (Renilla reniformis) 由来のGFP などが挙げられる(宮脇敦史編、実験医学別冊ポストゲノム時代の実験講座3−GFP とバイオイメージング、羊土社 (2000年))。また、上記融合タグを特異的に認識する抗体(モノクローナル抗体及びそのフラグメントを含む)を使用して検出を行うこともできる。
【0035】
本発明の好ましい態様において、精製を好適に実施するのに役立つマーカー配列、例えばヘキサ−ヒスチジンペプチドを融合したものなどが使用できる。こうした融合タンパク質の発現及び精製は、それに適した市販のキットを用いて行うことができ、キット製造業者あるいはキット販売業者により明らかにされているプロトコルに従って実施することもできる。タンパク質の構造の修飾・改変などは、例えば日本生化学会編、「新生化学実験講座1、タンパク質 VII、タンパク質工学」、東京化学同人(1993)を参考にし、そこに記載の方法あるいはそこで引用された文献記載の方法、さらにはそれらと実質的に同様な方法で行うことができる。また下記するようにその生物学的活性のうちには、免疫的に活性、例えば抗原性を有するということも含まれてよい。該修飾・改変のうちには、脱アミノ化、ヒドロキシル化、リン酸化、メチル化、アセチル化、開環、閉環、含有糖鎖の種類を違うものに変えること、含有糖鎖の数を増減すること、D−体アミノ酸残基への置換などであってもよい。それらの方法は、当該分野で知られている(例えば、T. E. Creighton, Proteins: Structure and Molecular Properties, pp.79−86 W.H. Freeman & Co., San Francisco, USA (1983),等) 。得られたタンパク質(ペプチドあるいはポリペプチドを包含していてよい)は、それを酵素免疫測定法など知られた手法で、適当な担体あるいは固相に結合せしめて固相化することがでる。固相化タンパク質、固相化ペプチドは、便利に結合アッセイや物質のスクリーニングに使用できる。かくして、ガレクチン−8、そのC末端CRD あるいはN末端CRD をリガンドとして使用するアフィニティ技術が提供され、該アフィニティ技術利用した各種分析・測定・分離法並びに試薬が提供され、それらはすべて本発明の範囲内のものである。
【0036】
かくして本発明の変異体タンパク質は、1個以上のアミノ酸残基が同一性の点で天然由来の形態と異なるもの、1個以上のアミノ酸残基の位置が天然由来の形態と異なるものであってもよい。本発明の変異体タンパク質は、ガレクチン−8のCRD に特有なアミノ酸残基が1個以上(例えば、1〜80個、好ましくは1〜60個、さらに好ましくは1〜40個、さらに好ましくは1〜20個、特には1〜10個など)欠けている欠失類縁体、特有のアミノ酸残基の1個以上(例えば、1〜80個、好ましくは1〜60個、さらに好ましくは1〜40個、さらに好ましくは1〜20個、特には1〜10個など)が他の残基で置換されている置換類縁体、1個以上(例えば、1〜80個、好ましくは1〜60個、さらに好ましくは1〜40個、さらに好ましくは1〜20個、特には1〜10個など)のアミノ酸残基が付加されている付加類縁体も包含する。ガレクチン−8の天然由来の形態のCRD の特徴であるドメイン構造あるいは活性中心構造が維持されていれば、上記のごとき変異体は、全て本発明に包含される。また本発明の変異体はガレクチン−8の天然由来の形態のCRD と実質的に同等の一次構造コンフォメーションあるいはその一部を有しているものも含まれてよいと考えられ、さらにガレクチン−8の天然由来の形態のCRD と実質的に同等の生物学的活性を有しているものも含まれてよいと考えられる。さらに天然に生ずる変異体の一つであることもできる。
【0037】
本発明のポリペプチドは、例えば、ガレクチン−8の天然由来の形態のCRD アミノ酸配列に対し、60% 、場合によっては70% より高い相同性を有しているものが挙げられ、より好ましくはそれに対し、80% あるいは90% 以上の相同アミノ酸配列を有するものが挙げられる。本発明のポリペプチドの一部のものとは、該ガレクチン−8のCRD タンパク質の一部のペプチド(すなわち、該タンパク質の部分ペプチド)であって、ガレクチン−8のCRD と実質的に同等な活性を有するものであればいずれのものであってもよい。例えば、該本発明のタンパク質の部分ペプチドは、ガレクチン−8のCRD の構成アミノ酸配列のうち少なくとも5個以上、好ましくは20個以上、さらに好ましくは50個以上、より好ましくは70個以上、もっと好ましくは100 個以上、ある場合には120 個以上のアミノ酸配列を有するペプチドが挙げられ、好ましくはそれらは連続したアミノ酸残基に対応するものであるか、あるいは、例えば、ガレクチン−8のCRD のアミノ酸配列のうち対応する領域に対する相同性に関して、上記と同様の相同性を有するものが挙げられる。
【0038】
本明細書において、「実質的に同等」とは蛋白質の活性、例えば、糖結合活性、好中球接着誘導活性、生理的な活性、生物学的な活性が実質的に同じであることを意味する。さらにまた、その用語の意味の中には、実質的に同質の活性を有する場合を包含していてよく、該実質的に同質の活性としては、例えば、N−アセチルラクトサミン構造を有する糖鎖に対する結合活性、好中球接着誘導活性などを挙げることができる。該実質的に同質の活性とは、それらの活性が性質的に同質であることを示す。例えば、N−アセチルラクトサミン構造を有する糖鎖に対する結合活性などの活性が、同等 (例えば、約 0.001〜約1000倍、好ましくは約0.01〜約100 倍、より好ましくは約 0.1〜約20倍、さらに好ましくは約 0.5〜約2 倍) であることが好ましいが、これらの活性の程度、タンパク質の分子量などの量的な要素は異なっていてもよい。次に、アミノ酸の置換、欠失、あるいは挿入は、しばしばポリペプチドの生理的な特性や化学的な特性に大きな変化を生ぜしめないし、こうした場合、その置換、欠失、あるいは挿入を施されたポリペプチドは、そうした置換、欠失、あるいは挿入のされていないものと実質的に同一であるとされるであろう。該アミノ酸配列中のアミノ酸の実質的に同一な置換体としては、そのアミノ酸が属するところのクラスのうちの他のアミノ酸類から選ぶことができうる。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、トリプトファン、メチオニンなどが挙げられ、極性(中性)アミノ酸としては、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミンなどが挙げられ、陽電荷をもつアミノ酸(塩基性アミノ酸)としては、アルギニン、リジン、ヒスチジンなどが挙げられ、陰電荷をもつアミノ酸(酸性アミノ酸)としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などが挙げられる。
【0039】
本発明のタンパク質及びその一部のペプチドの合成には、当該ペプチド合成分野で知られた方法、例えば液相合成法、固相合成法などの化学合成法を使用することができる。こうした方法では、例えばタンパク質あるいはペプチド合成用樹脂を用い、適当に保護したアミノ酸を、それ自体公知の各種縮合方法により所望のアミノ酸配列に順次該樹脂上で結合させていく。縮合反応には、好ましくはそれ自体公知の各種活性化試薬を用いるが、そうした試薬としては、例えばジシクロヘキシルカルボジイミドなどカルボジイミド類を好ましく使用できる。生成物が保護基を有する場合には、適宜保護基を除去することにより目的のものを得ることができる。
本発明のタンパク質及びその一部のペプチドは、それが遊離型のものとして得られた場合には、それ自体公知の方法あるいはそれに準じた方法で塩に変換することができ、またそれらは塩として得られた場合には、それ自体公知の方法あるいはそれに準じた方法で遊離型のものあるいは他の塩に変換することができる。本発明のタンパク質及びその一部のペプチドの塩としては、生理的に許容されるものあるいは医薬として許容されるものが好ましいが、これらに限定されない。こうした塩としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸との塩、例えば酢酸、ギ酸、マレイン酸、フマール酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、安息香酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などの有機酸との塩などが挙げられる。さらに該塩としては、アンモニウム塩、例えばエチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ヒドロキシエチルアミンなどの有機塩基との塩なども挙げられる。
【0040】
こうした本発明の変異体、修飾体、誘導体などは、上記で説明したような分離・精製処理を施すことができる。本発明では、「断片」、「誘導体」及び「類縁体」なる用語は、ガレクチン−8のCRD 関連ポリペプチド、相当する塩基配列から転写され且つスプライシングされていないか又は特異的にスプライシングされたhnRNA又はmRNAによりコードされるポリペプチド、又はジェノミックDNA によりコードされるポリペプチドに関連して、その「断片」、「誘導体」又は「類縁体」と称した場合、このようなポリペプチドと本質的に同一の生物学的機能又は活性を有しているポリペプチドを意味する。従って、類似体にはプロタンパク質部分が切断されて活性成熟ポリペプチドを産生するような、活性化できるプロタンパク質等が包含される。本発明のポリペプチドは組換えポリペプチド、天然ポリペプチド又は合成ポリペプチドでよい。特定の好ましい態様では、これは組換えポリペプチドである。
【0041】
本明細書中で開示したCRD に関連した変異タンパク質、そのフラグメント、さらにはDNA を含めた核酸(mRNA やオリゴヌクレオチドを含む) は、それらを単独あるいは有機的に使用し、更にはアンチセンス法、モノクローナル抗体を含めた抗体、トランスジェニク動物などとも適宜組合わせて、ゲノミックス及びプロテオミックス技術に応用できる。例えば、CRD 変異体は、ドミナントネガティブ効果を利用した機能解析にも利用可能である。また、二本鎖RNA (dsRNA) を使用してのRNAi (RNA interference) 技術への応用の途もある。かくして、一塩基多型(SNP; single nucleotide polymorphisms)を中心とした遺伝子多型解析、核酸アレイ、タンパク質アレイを使用した遺伝子発現解析、遺伝子機能解析、タンパク質間相互作用解析、関連疾患解析、疾患治療薬解析をすることが可能となる。例えば、核酸アレイ技術では、cDNAライブラリーを使用したり、PCR 技術で得たDNA を基板上にスポッティング装置で高密度に配置して、ハイブリダイゼーションを利用して試料の解析が行われる。該アレイ化は、針あるいはピンを使用して、あるいはインクジェトプリンティング技術などでもって、スライドガラス、シリコン板、プラスチックプレートなどの基板のそれぞれ固有の位置にDNA が付着せしめられることによりそれを実施することができる。該核酸アレイ上でのハイブリダイゼーションの結果得られるシグナルを観察してデータを取得する。該シグナルは、螢光色素などの標識(例えば、Cy3, Cy5, BODIPY, FITC, Alexa Fluor dyes(商品名), Texas red(商品名) など) より得られるものであってよい。検知にはレーザースキャナーなどを利用することもでき、得られたデータは適当なアルゴリズムに従ったプログラムを備えたコンピューターシステムで処理されてよい。また、タンパク質アレイ技術では、タグを付された組換え発現タンパク質産物を利用してよく、二次元電気泳動(2−DE)、酵素消化フラグメントを含めての質量分析 (MS)(これにはエレクトロスプレーイオン化法(electrospray ionization: ESI), マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(matrix−assisted laser desorption/ionization: MALDI)などの技術が含まれ、MALDI−TOF 分析計、ESI−3 連四重極分析計、ESI−イオントラップ分析計などを使用してよい) 、染色技術、同位体標識及び解析、画像処理技術などが利用されることができる。したがって、本発明には上記で得られるあるいは利用できるCRD 変異体に関連したソフトウエア、データベースなども含まれてよい。
【0042】
本発明で得られたDNA (例えば、CRD 含有変異体などCRD に関連した変異体をコードするDNA)を対象動物に転移させるにあたっては、それをDNA 断片としてあるいは該DNA を動物細胞で発現させうるプロモーターの下流に結合して用いるのが一般に有利である。たとえば、マウスにガレクチン−8 CRD DNAを導入する場合、これと相同性が高い動物由来のガレクチン−8 CRD DNAを動物細胞で発現させうる各種プロモーターの下流に結合した遺伝子コンストラクトを、対象動物の受精卵、たとえばマウス受精卵へマイクロインジェクションすることによってCRD 領域を高産生する遺伝子導入(トランスジェニック)マウスを作出できる。マウスとしては、特に純系のマウスに限定されないが、例えば、C57BL/6, Balb/C, C3H, (C57BL/6×DBA/2)F(BDF)などが挙げられる。このプロモーターとしては、例えばウイルス由来プロモーター、メタロチオネイン等のユビキタスな発現プロモーターなどが好ましく使用しうる。また該ガレクチン−8 CRD DNAを導入する場合、組換えレトロウイルスに組み換えて、それを用いて行うこともできる。好適には対象DNA を導入されたマウス受精卵は、例えば、ICR のような仮親のマウスを使用して生育せしめることができる。受精卵細胞段階における本発明で得られたDNA(例えば、CRD 含有変異体などCRD に関連した変異体をコードするDNA)の転移は、対象動物の胚芽細胞および体細胞の全てに存在するように確保される。DNA 転移後の作出動物の胚芽細胞においてCRD 含有変異体などCRD に関連した変異体をコードするDNA が存在することは、作出動物の子孫が全てその胚芽細胞および体細胞の全てに該ガレクチン−8 CRDをコードするDNA を有することを意味する。遺伝子を受け継いだこの種の動物の子孫はその胚芽細胞および体細胞の全てにおいて、該ガレクチン−8 CRDを発現できる可能性を有している。
【0043】
該ガレクチン−8 CRD DNA導入動物は、交配により遺伝子を安定に保持することを確認して、該DNA 保有動物として通常の飼育環境で飼育継代を行うことができる。さらに、目的DNA を保有する雌雄の動物を交配することにより、導入遺伝子を相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得し、この雌雄の動物を交配することによりすべての子孫が該DNA を有するように繁殖継代することができる。該ガレクチン−8 CRD DNAが導入された動物は、該CRD に関連した変異体タンパク質が高発現させられているので、該CRD に関連した変異体タンパク質に対する阻害剤(インヒビター)のスクリーニング用の動物などとして有用である。またガレクチン−8 CRD遺伝子の発現を阻害することのできるアンチセンス オリゴヌクレオチド、例えば、アンチセンスDNA などのスクリーニング用の動物などとして有用である。
この遺伝子導入動物を、組織培養のための細胞源として使用することもできる。例えば、遺伝子導入マウスの組織中のDNA もしくはRNA を直接分析するかあるいは遺伝子により発現されたタンパク質組織を分析することにより、ガレクチン−8活性阻害に関連したタンパク質について分析することができる。該CRD を有する組織の細胞を標準組織培養技術により培養し、これらを使用して、たとえば脳、胸腺、精巣、腸、腎臓、肝臓、骨髄やその他の組織由来の細胞あるいは血液細胞などについてその機能を研究することができる。また、その細胞を用いることにより、たとえば各種組織の機能を高めるような医薬開発に資することも可能である。また、高発現細胞株があれば、そこから、CRD を単離精製することも可能である。トランスジェニック マウスなどに関連した技術は、例えば、Brinster, R. L., et al.,; Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82: 4438, 1985; Costantini, F. & Jaenisch, R. (eds): Genetic manipulation of the early mammalian embryo, Cold Spring Harbor Laboratory, 1985などの文献に記載の方法あるいはそこに引用された文献に記載の方法、さらにはそれらの改変法により行うことができる。
【0044】
本発明で得られた核酸(例えば、CRD 含有変異体などCRD に関連した変異体をコードするDNA)をもち、ガレクチン−8を全く発現しない変異マウス(ノックアウトマウス)を作出することができる。たとえば、該遺伝子の翻訳開始コドンの前後4kb を含むおよそ8kb のゲノムDNA の中央近傍に位置し翻訳開始コドンに近いエクソンにneo 耐性遺伝子−polyA付加シグナルからなる遺伝子カセットを挿入した変異遺伝子を持つターゲティングベクターを構築することができる。挿入する遺伝子カセットはneo 耐性遺伝子カセット以外にDT−Aカセット、tkカセット、lacZカセットなどが挙げられる。ターゲティングベクターを直鎖状に開き、樹立したマウス胚性幹細胞(embryonic stem cells: ES細胞)にエレクトロポレーションで導入、さらに培養してneo 耐性を獲得したES細胞を選別する。ES細胞は129 、C57BL/6 、F1(C57BL/6×CBA)マウスなどのマウス系統から選択して調製することができる。neo 耐性を獲得したES細胞は、ガレクチン−8遺伝子領域において遺伝子カセットを挿入したターゲティングベクターと相同組換えを起こしていると想定され、少なくともガレクチン−8遺伝子アレルのうち一つは破壊され、ガレクチン−8を正常に発現できなくなる。選別には挿入した遺伝子カセットによりそれぞれ適当な方法が選択され、また、変異の導入はPCR 、サザンハイブリダイゼーションあるいはノーザンハイブリダイゼーションなどの方法を用いて確認することができる。
【0045】
変異を導入したES細胞は、C57BL/6 、BALB/c、ICR マウスなどから取り出した8細胞期胚に注入、1日培養し胚盤胞に発生したものをICR のような仮親に移植することで個体まで生育させることができる。生まれる子マウスは変異をもつES細胞と正常な宿主胚に由来するキメラマウスで、ES細胞に由来する細胞がどの程度含まれるかは個体の毛色で判断する。従って、ES細胞と宿主胚は毛色の異なった系統の組合わせが望ましい。得られたキメラマウスの変異はヘテロであり、これらを適宜交配することでホモ変異マウスを得ることができる。このようにして得られたホモ変異マウスは生殖細胞および体細胞の全てにおいて、ガレクチン−8遺伝子のみが破壊され、ガレクチン−8を全く発現せず、繁殖継代される子孫もまた同様の表現系をもつ。
このノックアウトマウスは正常マウスとの比較において、発生、成長、生殖、老化および死など個体のライフサイクルにおけるガレクチン−8の役割や各臓器、組織におけるガレクチン−8の機能を解析するのに有用である。また、ガレクチン−8阻害に関連した医薬品開発にも応用できる。ノックアウトマウスはこれらモデル動物としてだけではなく、組織培養のための細胞源として使用することもでき、細胞レベルでのガレクチン−8の機能解析などに供することができる。ノックアウトマウス等に関連した技術は、例えば、Mansour, S. L., et al.,; Nature, 336: 348−352, 1988; Joyner, A. L., ed.; Gene targeting, IRL Press, 1993; 相沢慎一, ジーンターゲティングES細胞を用いた変異マウスの作成,羊土社,1995などの文献に記載の方法あるいはそこに引用された文献に記載の方法、さらにはそれらの改変法により行うことができる。
【0046】
本発明に従えば、ガレクチン−8のCRD サイトの発現を阻害することのできるアンチセンス・オリゴヌクレオチド(核酸)を、クローン化したあるいは決定されたガレクチン−8をコードするDNA の塩基配列情報に基づき設計し、合成しうる。そうしたオリゴヌクレオチド(核酸)は、ガレクチン−8のCRD サイトmRNAとハイブリダイズすることができ、該mRNAの機能を阻害することができるか、あるいはガレクチン−8のCRD 関連mRNAとの相互作用などを介してCRD サイトの発現を調節・制御することができる。ガレクチン−8 CRD関連遺伝子の選択された配列に相補的なオリゴヌクレオチド、及びCRD 関連遺伝子と特異的にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドは、生体内及び生体外でCRD 部分の発現を調節・制御するのに有用であり、またガレクチン−8に関連した病気などの治療又は診断に有用である。用語「対応する」とは、遺伝子を含めたヌクレオチド、塩基配列又は核酸の特定の配列に相同性を有するあるいは相補的であることを意味する。ヌクレオチド、塩基配列又は核酸とペプチド(タンパク質)との間で「対応する」とは、ヌクレオチド(核酸)の配列又はその相補体から誘導される指令にあるペプチド(タンパク質)のアミノ酸を通常指している。
【0047】
目的核酸と、対象領域の少なくとも一部に相補的なオリゴヌクレオチドとの関係は、対象物とハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドとの関係を意味し、それは、「アンチセンス」であるということができる。アンチセンス・オリゴヌクレオチドは、2−デオキシ−D− リボースを含有しているポリデオキシヌクレオチド、D−リボースを含有しているポリデオキシヌクレオチド、プリン又はピリミジン塩基のN−グリコシドであるその他のタイプのポリヌクレオチド、あるいは非ヌクレオチド骨格を有するその他のポリマー(例えば、市販のタンパク質核酸及び合成配列特異的な核酸ポリマー)又は特殊な結合を含有するその他のポリマー(但し、該ポリマーはDNA やRNA 中に見出されるような塩基のペアリングや塩基の付着を許容する配置をもつヌクレオチドを含有する)などが挙げられる。それらは、2本鎖DNA,1本鎖DNA,2本鎖RNA,1本鎖RNA,さらにDNA:RNA ハイブリッドであることができ、さらに非修飾ポリヌクレオチド又は非修飾オリゴヌクレオチド、さらには公知の修飾の付加されたもの、例えば当該分野で知られた標識のあるもの、キャップの付いたもの、メチル化されたもの、1個以上の天然のヌクレオチドを類縁物で置換したもの、分子内ヌクレオチド修飾のされたもの、例えば非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメートなど)を持つもの、電荷を有する結合又は硫黄含有結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を持つもの、例えばタンパク質(ヌクレアーゼ、ヌクレアーゼ・インヒビター、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L− リジンなど)や糖(例えば、モノサッカライドなど)などの側鎖基を有しているもの、インターカレント化合物(例えば、アクリジン、プソラレンなど)を持つもの、キレート化合物(例えば、金属、放射活性をもつ金属、ホウ素、酸化性の金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾された結合を持つもの(例えば、αアノマー型の核酸など)であってもよい。ここで「ヌクレオシド」、「ヌクレオチド」及び「核酸」とは、公知のプリン及びピリミジン塩基を含有するのみでなく、修飾されたその他の複素環型塩基をもつようなものを含んでいて良い。こうした修飾物は、メチル化されたプリン及びピリミジン、アシル化されたプリン及びピリミジン、あるいはその他の複素環を含むものであってよい。修飾されたヌクレオシド及び修飾されたヌクレオチドはまた糖部分が修飾されていてよく、例えば1個以上の水酸基がハロゲンとか、脂肪族基などで置換されていたり、あるいはエーテル、アミンなどの官能基に変換されていてよい。
【0048】
本発明のアンチセンス核酸は、RNA 、DNA 、あるいは修飾された核酸である。修飾された核酸の具体例としては核酸の硫黄誘導体やチオホスフェート誘導体、そしてポリヌクレオシドアミドやオリゴヌクレオシドアミドの分解に抵抗性のものが挙げられるが、それに限定されるものではない。本発明のアンチセンス核酸は次のような方針で好ましく設計されうる。すなわち、細胞内でのアンチセンス核酸をより安定なものにする、アンチセンス核酸の細胞透過性をより高める、目標とするセンス鎖に対する親和性をより大きなものにする、そしてもし毒性があるならアンチセンス核酸の毒性をより小さなものにする。
こうした修飾は当該分野で数多く知られており、例えばJ. Kawakami et al., Pharm Tech Japan, 8: 247, 1992; 8: 395, 1992; S. T. Crooke et al. ed.,Antisense Research and Applications, CRC Press, 1993などに開示がある。本発明のアンチセンス核酸は、変化せしめられたり、修飾された糖、塩基、結合を含有していて良く、リポゾーム、ミクロスフェアのような特殊な形態で供与されたり、遺伝子治療により適用されたり、付加された形態で与えられることができうる。こうした付加形態で用いられるものとしては、リン酸基骨格の電荷を中和するように働くポリリジンのようなポリカチオン体、細胞膜との相互作用を高めたり、核酸の取込みを増大せしめるような脂質(例えば、ホスホリピッド、コレステロールなど)といった疎水性のものが挙げられる。付加するに好ましい脂質としては、コレステロールやその誘導体(例えば、コレステリルクロロホルメート、コール酸など)が挙げられる。こうしたものは、核酸の3’端あるいは5’端に付着させることができ、塩基、糖、分子内ヌクレオシド結合を介して付着させることができうる。その他の基としては、核酸の3’端あるいは5’端に特異的に配置されたキャップ用の基で、エキソヌクレアーゼ、RNase などのヌクレアーゼによる分解を阻止するためのものが挙げられる。こうしたキャップ用の基としては、ポリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのグリコールをはじめとした当該分野で知られた水酸基の保護基が挙げられるが、それに限定されるものではない。
アンチセンス核酸の阻害活性は、本発明の形質転換体、本発明の生体内や生体外の遺伝子発現系、あるいはガレクチン−8 CRD部の生体内や生体外の翻訳系を用いて調べることができる。該核酸はそれ自体公知の各種の方法で細胞に適用できる。
【0049】
以上述べた、本発明者らの研究成果によりガレクチン−8 CRD部に着目した変異体遺伝子及び組換えDNA 分子を宿主に移入し、該変異体を発現させ、目的とする変異体を得る方法が提供される。こうして本発明によれば、ガレクチン−8 CRD部に着目した変異体遺伝子を実質的に発現する組換え体あるいはトランスフェクタント及びその製造法、さらにはその用途も提供される。
別の面では、本発明はガレクチン−8 CRD部に着目した変異体であって且つ糖鎖結合活性を有する特有のポリペプチドの一種であり且つ天然のヒトガレクチン−8CRDと実質的に同等な活性を有することを特徴とするタンパク質またはその塩、より好ましくはガレクチン−8 CRD含有変異体またはその塩と、実質的に同等な活性を有するか、あるいは実質的に同等の一次構造コンフォメーションを持つ該タンパク質の少なくとも一部あるいは全部を有するポリペプチドを、大腸菌などの原核生物あるいは哺乳動物細胞などの真核生物で発現させることを可能にするDNA やRNA などの核酸に関するとすることができる。またこうした核酸、特にはDNA は、(a) ガレクチン−8 CRDに着目した変異体をコードできる配列あるいはそれと相補的な配列、(b) 該(a) のDNA 配列またはその断片とハイブリダイズすることのできる配列、及び(c) 該(a) 又は(b) の配列にハイブリダイズすることのできる縮重コードを持った配列であることができる。ここでハイブリダイズの条件としては、ストリンジェントな条件であることができる。こうした核酸で形質転換され、本発明の該ポリペプチドを発現できる大腸菌などの原核生物あるいは哺乳動物細胞などの真核生物も本発明の特徴をなす。
【0050】
典型的な場合、本発明の目的は、変異体ガレクチン−8 CRDタンパク質を使用して被検試料中のガレクチン−8結合性の物質、例えば、ガレクチン−8活性阻害物質をスクリーニングしたり、検知・分別定量する優れた方法及びその為の試薬キットを提供する。ヒトガレクチン−8のN−末端CRD あるいはC−末端CRD 、特にはそれらの固相化種を使用した技術を提供する。本発明はこうしたガレクチン−8 CRDタンパク質あるいはその遺伝子、さらには産生細胞などを含めた固有の物質を利用する検知・分別定量することのできる試薬キットのうちの各試薬をすべてその実施態様のうちに含むと理解される。また、ヒトガレクチン−8のN−末端CRD あるいはC−末端CRD に結合親和性を有する物質、例えば、特定の糖鎖を持つ物質などは、ヒトガレクチン−8活性に対して何らかの生物的活性、生理的活性を示し、ヒトガレクチン−8に関連して、生体における細胞内タンパク質代謝など、多くの正常な細胞あるいは異常な細胞のプロセスに関与して、多くの疾患などをモニターし得る方法並びに試薬あるいは診断剤、治療薬を提供する。したがって、医学的・生理学的分野における上記試薬の各種利用、腫瘍・癌といったヒトなどの動物の細胞・組織の研究・解析・測定などの目的で上記試薬を使用することはすべて本発明のその実施態様のうちに含まれると理解される。
【0051】
本発明のヒトガレクチン−8の固相化CRD 、例えば、固相化N−末端CRD あるいはC−末端CRD は、代表的にはリコンビナントポリペプチドを少なくとも水不溶性担体に固定して調製される。固相化方法としては、担体結合法、架橋法、包括法、それらを組み合わせた複合法が挙げられる。該固相化するには、当該分野で汎用されている方法を用いることができる。担体結合法としては、例えばイオン相互作用、疎水相互作用、物理的吸着などを利用する方法、共有結合などの化学的結合により行うことができる。物理的な吸着を利用する場合、例えば活性炭、酸性白土、漂白土、カオリナイト、アルミナ、シリカゲル、ベントナイト、金属酸化物、ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウムなどの無機物質、デンプン、キチン、グルテン、セルロース、アガロース、タンニンなどの天然高分子、ポリスチレンなどの合成高分子、疎水性基を持ったアガロース誘導体などを担体として用いることが挙げられる。イオン結合を利用した場合、デキストラン、セルロース、アガロース、デンプンなどの多糖類のイオン交換体、例えばDEAE基、TEAE基、CM基、スルホン酸アルキル基などを持つ誘導体、イオン交換樹脂などを担体として用いることが挙げられる。
【0052】
共有結合法としては、ペプチド法、ジアゾ法、アルキル化法、臭化シアン活性化法、架橋試薬による結合法、ユギ(Ugi)反応を利用した固定化法、チオール・ジスルフィド交換反応を利用した固定化法、シッフ塩基形成法、キレート結合法、トシルクロリド法、生化学的特異結合法などが挙げられるが、好ましくは共有結合などのより安定した結合には、チオール基とマレイミド基の反応、ピリジルジスルフィド基とチオール基の反応、アミノ基とアルデヒド基の反応などを利用して行うことができ、公知の方法あるいは当該分野の当業者が容易になしうる方法、さらにはそれらを修飾した方法の中から適宜選択して適用できる。好ましくは共有結合などのより安定した結合を形成できる化学的結合剤・架橋剤などが使用される。
【0053】
こうしたものとしては、カルボジイミド、イソシアネート、ジアゾ化合物、ベンゾキノン、アルデヒド、過ヨウ素酸、マレイミド化合物、ピリジルジスルフィド化合物などが挙げられる。好ましい試薬としては、例えばホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソチオシアネート、N,N’−ポリメチレンビスヨードアセトアミド、N,N’−エチレンビスマレイミド、エチレングリコールビススクシニミジルスクシネート、ビスジアゾベンジジン、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、スクシンイミジル 3−(2− ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、N−スクシンイミジル 4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1− カルボキシレート(SMCC)、N−スルホスクシンイミジル 4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート、N−スクシンイミジル (4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート、N−スクシンイミジル 4−(1−マレイミドフェニル)ブチレート、 N−(ε−マレイミドカプロイルオキシ)コハク酸イミド(EMCS), イミノチオラン、S−アセチルメルカプトコハク酸無水物、メチル−3−(4’−ジチオピリジル)プロピオンイミデート、メチル−4−メルカプトブチリルイミデート、メチル−3−メルカプトプロピオンイミデート、N−スクシンイミジル−S− アセチルメルカプトアセテートなどが挙げられる。
【0054】
ペプチド法では、担体と所要のポリペプチドとの間にペプチド結合を形成させて固相化される。例えばカルボキシル基を持つ担体をアジド、クロリド、イソシアネートなどの誘導体とし、当該ポリペプチド中の遊離アミノ基との間でペプチド結合を形成させる。ペプチド合成に用いられる試薬、例えばカルボジイミド試薬、ウッドワード試薬K(N−エチル−5−フェニルイソキサゾリウム−3’−スルホナート)などが用いられる。担体のアミノ基及びカルボキシル基と所要のポリペプチド中のアミノ基及びカルボキシル基との間でペプチド結合を形成させることもできる。ジアゾ法は、芳香族アミノ基を持つ担体をジアゾニウム化合物とし、これと所要のポリペプチドとをジアゾカップリングさせて固相化するものである。遊離アミノ基、ヒスチジンのイミダゾール基、チロシンのフェノール性水酸基などを持つ当該ポリペプチドに好適に適用できる。担体としては、多糖類、アミノ酸共重合物、ポリアクリルアミド、スチレン系樹脂、エチレン・マレイン酸共重合物、多孔性ガラス・芳香族アミノ誘導体などが挙げられる。
【0055】
アルキル化法は、当該ポリペプチド中の遊離アミノ基、フェノール性水酸基、スルフヒドリル基をハロゲンのような反応性官能基を持つ担体によりアルキル化して固相化する方法である。担体としては、ハロゲン化アセチル誘導体、トリアジニル誘導体、ハロゲン化メタクリル誘導体などが挙げられる。臭化シアン活性化法は、デキストラン、セルロース、アガロース、デンプンなどの多糖類、多孔性ガラスなどを臭化シアンで活性化した後、当該ポリペプチドを固相化するものである。架橋試薬による結合法のうち、特にグルタルアルデヒドなどの二官能性試薬を用いた場合、セルロース、アガロース、アルブミン、ゼラチン、キトサンなどのアミノ基を導入したりあるいは有する天然高分子、合成高分子、多孔性ガラス、多孔性セラミックスなどの無機担体のアミノシラン誘導体などが挙げられる。ユギ反応とは、カルボキシル基、アミノ基、アルデヒド基、イソニトリル基が共存していて反応させると縮合反応が起こることを利用するものである。カルボキシル基又はアミノ基を持つ担体と当該ポリペプチドとを混合した中にアセトアルデヒド及び3−ジメチルアミノプロピルイソシアニドを加えることで反応させるものが挙げられる。担体としては、多糖類、ポリアクリルアミドのアミノ誘導体、ナイロンのイソニトリル誘導体などが挙げられる。
【0056】
生化学的特異結合法においては、特異的結合反応ペア同志の生化学的特異結合反応を利用するもので、例えば抗原とそれに対する抗体、抗体とハプテン、エフェクターとレセプター、酵素と酵素インヒビター、酵素基質、補酵素類、複合蛋白質における補欠分子団、レクチンと糖鎖含有物質、酵素と酵素基質、核酸とその相補的な核酸などが挙げられ、それらは公知のものの中から選んでよい。
包括法とは、多糖類や蛋白質などの天然高分子や合成高分子の細いゲル・マトリックスの中に当該ポリペプチドを閉じ込めるものと、膜で区切られた空間に当該ポリペプチドを閉じ込めるものとに大別できる。膜包括には、半透性の固体膜に包み込むマイクロカプセル型、半透膜性のホロー・ファイバーや限外濾過膜による空間に包み込むもの、液体状の膜に包み込むリポソーム型などが挙げられる。
高分子ゲルを用いる方法は、網目構造を持つ高分子ゲルのマトリックスの中に当該ポリぺプチドを閉じ込めて固相化するもので、固定時にゲルを球状、フィルム状、チューブ状、膜状に自由に成形できる。ゲルの調製法としては、モノマーと架橋剤を重合させて高分子ゲルを形成させる方法、プレポリマーあるいはオリゴマーを重合させる方法、高分子を可溶性の状態から不溶の状態に変化させることによりゲルを形成させる方法などが挙げられる。ポリマーとしては、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、光硬化性樹脂、ウレタンポリマーなどの合成高分子、κ−カラギーナン、アルギン酸、ペクチン、キトサン、デンプン、コラーゲンなどの天然高分子などが挙げられる。ポリアクリルアミドの場合、アクリルアミドモノマー、架橋剤N,N’−メチレンビスアクリルアミド、重合促進剤N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、重合開始剤過硫酸カリウムを用いてゲル化させたり、γ線又はX線のような放射線を用いたりできる。アルギン酸カルシウムを利用する場合、アルギン酸ナトリウムは水に可溶であるが、そのカルシウム塩やアルミニウム塩は水に不溶であることを利用している。まずアルギン酸ナトリウム水溶液と当該ポリペプチドとを混合し、塩化カルシウム水溶液と接触させる。
【0057】
κ−カラギーナンの場合、κ−カラギーナンは加熱すると水に溶解するが、アンモニウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、脂肪族アミンなどが存在するとゲル化するので、こうして得られたゲルをグルタルアルデヒドやヘキサメチレンジアミンなどで架橋して安定化させる。
光架橋性樹脂ポリマーを用いる方法としては、適度な重合度のポリエチレングリコール(PEG)あるいはポリプロピレングリコール(PPG)を主鎖とし、その末端にアクリロイル基、メタクリロイル基、シンナモイル基などの光感応性基を組み込んだプレポリマーを用いるものが挙げられる。こうしたプレポリマーは光増感剤ベンゾインエチルエーテル又はベンゾインイソブチルエーテル存在下、当該ポリペプチドを含む溶液と混合し、紫外線を照射してゲル化させることができる。ウレタンプレポリマーは当該ポリペプチドを含む水溶液と混合するだけでゲル化させることができる。
【0058】
マイクロカプセル型膜包括法は、例えば親水性モノマーと疎水性モノマーとをその界面で重合させる際、当該ポリペプチドを被覆して固相化したり、液中乾燥法で例えばベンゼン、ヘキサン、クロロホルムなどの揮発性の高い有機溶媒にポリマーを溶解し、その中に当該ポリペプチドを含む水溶液を分散させ一次乳化液とし、次にこの一次乳化液をゼラチン、ポリビニル又は界面活性剤などの保護コロイド物質を含む水溶液中に分散させ、得られた二次乳化液から有機溶媒を除去することによりカプセルを形成させるものである。
ホロー・ファイバーや限外濾過膜に当該ポリペプチドを固相化する方法では、複数の当該ポリペプチドを固相化することも可能で、さらに膜に結合すること無く遊離状態で固相化することができる。
参考となる文献としては、例えば米国特許第4,003,988号、B. K. Van Weemen 及び A. H. A. Schuurs, Febs Letters, Vol. 15, No. 15, pp.232−235, (1971, 6); P. Leinikki及び Suvi Passila, J. Clin. Path., 29, pp.116−120, (1976); B. R. Brodeur, F. E. Ashton及び B. B. Diena, The Journal of Medical Microbiology, Vol. 15, No. 1, pp.1−9, (1981); J. Clin. Path., 29, pp.150−153, (1976);石川栄治、他編「酵素免疫測定法」株式会社医学書院、1978年などを挙げることができる。
【0059】
水不溶性担体としては、固定化、保存、測定などにおいて用いられる液体媒質に実質的に不溶性である担体を指す。
これらの担体としては、特異的結合反応に使用されるものが種々知られており、本発明においてもこれらの公知のものの中から選んで使用できる。特に好適に使用されるものとしては、上記したものが挙げられ、例えば架橋化アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、アガロース、架橋アガロース、セルロース、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテート、架橋デキストラン、ポリアクリルアミド、架橋ポリアクリルアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルアミド、ポリメタクリレート、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−メタクリレート共重合体、ポリグリシジルメタクリレート、アクロレイン−エチレングリコールジメタクリレート共重合体などのポリエステル、ナイロンなどのポリアミド、ポリウレタン、ポリエポキシ樹脂などの有機高分子物質を乳化重合して得られたものなどの有機高分子物質、ガラス、例えば活性化ガラス、シリカゲル、シリカ−アルミナ、アルミナなどの無機材料などからなるもので、必要に応じ、シランカップリング剤などで官能性基を導入してあるものが挙げられる。
【0060】
好適な具体例では、当該ヒトガレクチン−8のN−末端CRD あるいはC−末端CRD 固相化担体は、カラムなどに詰めて、アフィニティクロマトグラフィー技術、特にはフロンタルアフィニティクロマトグラフィー技術(Hirabayashi et al., J. Chromatogr. A, 890, 261−271 (2000); Arata et al., J. Biol. Chem., 276: 3068−3077 (2001))により被検試料につきCRD との結合親和性などを利用したスクリーニングに利用できる。例えば、ヒトガレクチン−8のN−末端CRD あるいはC−末端CRD に結合親和性を有する物質は、その結合親和性のより低い物質よりカラム内の滞留時間が長い。
被検試料としては、例えば糖鎖を有するものが挙げられ、糖タンパク質、糖ペプチド、糖脂質、非ペプチド性糖鎖含有化合物、合成化合物、発酵生産物、植物抽出物、動物などの組織抽出物、細胞抽出物などが挙げられる。試験試料に使用される試験化合物の例には、好ましくはN−アセチルラクトサミン構造を有するもの、ガレクチン−8阻害剤、ガレクチン−8に対するインヒビター活性を有する化合物、特には合成化合物を含んでいてよい。これら化合物は、新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
ガレクチン−8が認識する糖鎖(そのアナログも包含されてよい)としては、代表的にはグリカン類が挙げられるが、それには限定されないことは明らかである。例えば、糖タンパク質由来のN−グリカン類、糖脂質由来のグリカン類が挙げられ、3分岐型及び4分岐型の糖鎖構造を持つものであってもよく、より好ましくは N−アセチルラクトサミン構造を有する糖鎖又は該糖鎖含有物質、糖脂質型グリカン類又は該グリカン類に特徴的な糖鎖構造を有する物質、酸性サッカライド類又は該酸性サッカライド骨格を有する物質、B−サッカライド又はそれに類似した糖鎖含有物質、さらにはGM3, N−アセチルノイラミン酸トリサッカライド, GD1aヘキササッカライド, A−ヘキササッカライド, ポリラクトサミンなどが挙げられるが、そうした特徴的な構造の一部を有するものあるいはそれから誘導されたものであって当該結合能を有するものが挙げられ、例えば糖ペプチド、糖タンパク質、糖脂質、糖鎖含有レセプター、それらの断片などであってもよい。糖誘導体あるいはアナログとしては、ガレクチン−8の各CRD と親和性を持つ構造と同一あるいは類似の構造を持つように修飾したものあるいは置換基又は官能基などを導入したものが挙げられ、例えば分岐構造の導入、N−アセチル化などの修飾が含まれてよい。こうした目的のための技術としては、当該糖鎖合成化学の分野で知られた技術及び当業者が容易に採用することのできる技術のうちから適宜選択してそれを利用できる。ガレクチン−8の各CRD との結合活性をみながら、上記糖鎖含有誘導体あるいはアナログのデザイン・作製を進めることが可能であり、こうした思想に沿うかぎり、本発明の技術の範囲内のものと考えてよい。
【0061】
かくして、ヒトガレクチン−8のN−末端CRD あるいはC−末端CRD に結合親和性を有する物質、例えば特定の糖鎖構造を有する物質(そのアナログを包含してよい) 又はその塩は、ガレクチン−8 (ガレクチン−8, −8M 及び−8L を包含する) の生物学的活性などの機能(例えば、好中球接着誘導活性など)を促進するもの(アゴニスト、あるいは促進剤)として有用であり、ヒトガレクチン−8機能不全症状などの各種の疾病の治療及び/又は予防剤として有用な医薬として使用できる。さらに、ヒトガレクチン−8のN−末端CRD あるいはC−末端CRD に結合親和性を有する物質、例えば特定の糖鎖構造を有する物質(そのアナログを包含してよい) 又はその塩は、該ガレクチン−8の生物学的活性などの機能(例えば、好中球接着誘導活性など)を阻害する化合物(アンタゴニスト、あるいは阻害剤)として有用であり、過ヒトガレクチン−8機能症などの各種の疾病の治療及び/又は予防剤などの医薬として使用できる。
本発明の変異体などのポリペプチド等は、ガレクチン−8 (ガレクチン−8, −8M 及び−8L を包含する) の生物学的活性などの機能(例えば、好中球接着誘導活性など)を促進する化合物(アゴニスト)や阻害する化合物(アンタゴニスト)又はそれらの塩をスクリーニングするための試薬として有用で、また、ガレクチン−8に関連したタンパク質、その一部のペプチド又はそれらの塩などの生物学的活性などの機能(例えば、好中球接着誘導活性、血球凝集活性など)を促進する化合物(アゴニスト)や阻害する化合物(アンタゴニスト)又はそれらの塩のスクリーニング方法も提供される。
【0062】
本発明のスクリーニング方法又はスクリーニングキットを用いて得られる化合物又はその塩は、上記した試験化合物、例えば、糖ペプチド、糖タンパク質、糖脂質、糖含有非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などから選ばれた化合物であり、ガレクチン−8タンパク質等の機能を促進あるいは阻害する化合物である。該化合物の塩としては、例えば、薬学的に許容される塩などが挙げられる。例えば、無機塩基との塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩などが挙げられる。無機塩基との塩の好適な例としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、並びにアルミニウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。有機塩基との塩の好適な例としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6−ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’− ジベンジルエチレンジアミンなどとの塩が挙げられる。無機酸との塩の好適な例としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸などとの塩が挙げられる。有機酸との塩の好適な例としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸などとの塩が挙げられる。塩基性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えば、アルギニン、リジン、オルニチンなどとの塩が挙げられ、酸性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸などとの塩が挙げられる。
【0063】
本明細書中、「抗体」との用語は、広義の意味で使用されるものであってよく、所望のヒトガレクチン−8のN−末端CRD あるいはC−末端CRD に結合親和性を有する糖鎖あるいはそのアナログなどの物質 (N−アセチルラクトサミン構造を有するもの及びその関連ペプチド断片、糖タンパク質なども含む) に対するモノクローナル抗体の単一のものや各種エピトープに対する特異性を持つ抗体組成物であってよく、また1価抗体または多価抗体並びにポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を含むものであり、さらに天然型(intact)分子並びにそれらのフラグメント及び誘導体も表すものであり、F(ab’), Fab’ 及びFab といったフラグメントを包含し、さらに少なくとも二つの抗原又はエピトープ (epitope)結合部位を有するキメラ抗体若しくは雑種抗体、又は、例えば、クワドローム(quadrome), トリオーム(triome)などの二重特異性組換え抗体、種間雑種抗体、抗イディオタイプ抗体、さらには化学的に修飾あるいは加工などされてこれらの誘導体と考えられるもの、公知の細胞融合又はハイブリドーマ技術や抗体工学を適用したり、合成あるいは半合成技術を使用して得られた抗体、抗体生成の観点から公知である従来技術を適用したり、DNA 組換え技術を用いて調製される抗体、本明細書で記載し且つ定義する標的抗原物質あるいは標的エピトープに関して中和特性を有したりする抗体又は結合特性を有する抗体を包含していてよい。
【0064】
抗原物質に対して作製されるモノクローナル抗体は、培養中の一連のセルラインにより抗体分子の産生を提供することのできる任意の方法を用いて産生される。修飾語「モノクローナル」とは、実質上均質な抗体の集団から得られているというその抗体の性格を示すものであって、何らかの特定の方法によりその抗体が産生される必要があるとみなしてはならない。個々のモノクローナル抗体は、自然に生ずるかもしれない変異体が僅かな量だけ存在しているかもしれないという以外は、同一であるような抗体の集団を含んでいるものである。モノクローナル抗体は、高い特異性を持ち、それは単一の抗原性をもつサイトに対して向けられているものである。異なった抗原決定基(エピトープ) に対して向けられた種々の抗体を典型的には含んでいる通常の(ポリクローナル)抗体調製物と対比すると、それぞれのモノクローナル抗体は当該抗原上の単一の抗原決定基に対して向けられているものである。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ培養により合成され、他のイムノグロブリン類の夾雑がないあるいは少ない点でも優れている。モノクローナル抗体は、ハイブリッド抗体及びリコンビナント抗体を含むものである。それらは、所望の生物活性を示す限り、その由来やイムノグロブリンクラスやサブクラスの種別に関わりなく、可変領域ドメインを定常領域ドメインで置き換えたり(例えば、ヒト化抗体) 、あるいは軽鎖を重鎖で置き換えたり、ある種の鎖を別の種の鎖でもって置き換えたり、あるいはヘテロジーニアスなタンパク質と融合せしめたりして得ることができる(例えば、米国特許第4816567 号; Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp.79−97, Marcel Dekker, Inc., New York, 1987 など) 。
【0065】
モノクローナル抗体を製造する好適な方法の例には、ハイブリドーマ法 (G. Kohler and C. Milstein, Nature, 256, pp.495−497 (1975)); ヒトB細胞ハイブリドーマ法 (Kozbor et al., Immunology Today, 4, pp.72−79 (1983); Kozbor,J. Immunol., 133, pp.3001 (1984); Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp.51−63, Marcel Dekker, Inc., New York (1987);トリオーマ法; EBV−ハイブリドーマ法 (Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp.77−96 (1985))(ヒトモノクローナル抗体を産生するための方法);米国特許第4946778 号 (単鎖抗体の産生のための技術) が挙げられる他、抗体に関して以下の文献が挙げられる: S. Biocca et al., EMBO J, 9, pp.101−108 (1990); R.E. Bird et al., Science, 242, pp.423−426 (1988); M.A. Boss et al., Nucl. Acids Res., 12, pp.3791−3806 (1984); J. Bukovsky et al., Hybridoma, 6, pp.219−228 (1987); M. DAINO et al., Anal. Biochem., 166, pp.223−229 (1987); J.S. Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85, pp.5879−5883 (1988); P.T. Jones et al., Nature, 321, pp.522−525 (1986); J.J. Langone et al. (ed.), ”Methods inEnzymology”, Vol. 121 (Immunochemical Techniques, Part I: Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies), Academic Press, New York (1986); S. Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81, pp.6851−6855 (1984); V.T. Oi et al., BioTechniques, 4, pp.214−221 (1986); L. Riechmann et al., Nature, 332, pp.323−327 (1988); A. Tramontano et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 83, pp.6736−6740 (1986); C. Wood et al., Nature, 314, pp.446−449 (1985); Nature, 314, pp.452−454 (1985) あるいはそこで引用された文献(それらの中にある記載はそれを参照することにより本明細書の開示に含められる) 。
【0066】
本発明に係るモノクローナル抗体は、それらが所望の生物活性を示す限り、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の種から誘導される又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体の対応配列と同一又はホモローガスであるが、一方、鎖の残部は、別の種から誘導される又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体の対応配列と同一又はホモローガスである、「キメラ」抗体(免疫グロブリン) を特に包含する(米国特許第4816567 号明細書; Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81, pp.6851−6855 (1984)) 。以下、モノクローナル抗体を例に挙げて、抗体の作製につき詳しく説明する。本発明のモノクローナル抗体は、ミエローマ細胞を用いての細胞融合技術(G. Kohler and C. Milstein, Nature, 256, pp.495−497 (1975)など) を利用して得られたモノクローナル抗体であってよく、例えば次のような工程で作製できる。(1) 免疫原性抗原の調製、(2) 免疫原性抗原による動物の免疫、(3) ミエローマ細胞(骨髄腫細胞)の調製、(4) 抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞融合、(5) ハイブリドーマ(融合細胞)の選択及びモノクローン化、及び(6) モノクローナル抗体の製造
【0067】
(1) 免疫原性抗原の調製は次のようにして実施できる。抗原としては、上記で記載してあるようして同定されたヒトガレクチン−8のN−末端CRD あるいはC−末端CRD に結合親和性を有する糖鎖あるいはそのアナログなどの物質 (N−アセチルラクトサミン構造を有するもの及びその関連断片なども含むし、より好ましくはヒトガレクチン−8に対する結合親和性を有する糖鎖など) 又はそれから誘導された断片である。抗原は天然物から単離されものであっても、決定された糖鎖配列情報を基に、適当な化学合成法で得たものであってよい。抗原は、そのまま適当なアジュバントと混合して動物を免疫するのに使用できるが、免疫原性コンジュゲートなどにしてもよい。また、糖鎖断片を適当な縮合剤を介して種々の担体タンパク質類と結合させてハプテン−タンパク質の如き免疫原性コンジュゲートとし、これを用いて特定の配列のみと反応できる(あるいは特定の配列のみを認識できる)モノクローナル抗体をデザインするのに用いることもできる。デザインされる糖鎖断片には予め結合用の残基などを付加し、免疫原性コンジュゲートの調製を容易にできるようにしておくことができる。担体タンパク質類と結合させるにあたっては、担体タンパク質類はまず活性化されることができる。こうした活性化にあたり活性化結合基を導入することが挙げられる。活性化結合基としては、(1) 活性化エステルあるいは活性化カルボキシル基、例えばニトロフェニルエステル基、ペンタフルオロフェニルエステル基、1−ベンゾトリアゾールエステル基、N−スクシンイミドエステル基など、(2) 活性化ジチオ基、例えば2−ピリジルジチオ基などが挙げられる。担体タンパク質類としては、キーホール・リンペット・ヘモシアニン (KLH)、牛血清アルブミン (BSA)、卵白アルブミン、グロブリン、ポリリジンなどのポリペプタイド、細菌菌体成分、例えばBCG などが挙げられる。
【0068】
(2) 免疫原性抗原による動物の免疫は次のようにして実施できる。免疫は、当業者に知られた方法により行うことができ、例えば村松繁、他編、実験生物学講座 14 、免疫生物学、丸善株式会社、昭和60年、日本生化学会編、続生化学実験講座5、免疫生化学研究法、東京化学同人、1986年、日本生化学会編、新生化学実験講座 12 、分子免疫学 III、抗原・抗体・補体、東京化学同人、1992年などに記載の方法に準じて行うことができる。免疫化剤を(必要に応じアジバントと共に)一回又はそれ以上の回数哺乳動物に注射することにより免疫化される。代表的には、該免疫化剤及び/又はアジバントを哺乳動物に複数回皮下注射あるいは腹腔内注射することによりなされる。免疫化剤は、上記抗原糖鎖あるいはその関連断片を含むものが挙げられる。免疫化剤は、免疫処理される哺乳動物において免疫原性であることの知られているタンパク質(例えば上記担体タンパク質類など)とコンジュゲートを形成せしめて使用してもよい。アジュバントとしては、例えばフロイント完全アジュバント、リビ(Ribi)アジュバント、百日咳ワクチン、BCG 、リピッドA、リポソーム、水酸化アルミニウム、シリカなどが挙げられる。免疫は、例えばBALB/cなどのマウス、ハムスター、その他の適当な動物を使用して行われる。抗原の投与量は、例えばマウスに対して約1〜400 μg/動物で、一般には宿主動物の腹腔内や皮下に注射し、以後1〜4週間おきに、好ましくは1〜2週間ごとに腹腔内、皮下、静脈内あるいは筋肉内に追加免疫を2〜10回程度反復して行う。免疫用のマウスとしてはBALB/c系マウスの他、BALB/c系マウスと他系マウスとのF1マウスなどを用いることもできる。必要に応じ、抗体価測定系を調製し、抗体価を測定して動物免疫の程度を確認できる。本発明の抗体は、こうして得られ免疫された動物から得られたものであってよく、例えば、抗血清、ポリクローナル抗体等を包含する。
【0069】
(3) ミエローマ細胞(骨髄腫細胞)の調製は次のようにして実施できる。細胞融合に使用される無限増殖可能株(腫瘍細胞株)としては免疫グロブリンを産生しない細胞株から選ぶことができ、例えば P3−NS−1−Ag4−1 (NS−1, Eur. J. Immunol., 6: 511−519, 1976) 、SP−2/0−Ag14 (SP−2, Nature, 276: 269 〜270,1978)、マウスミエローマ MOPC−21セルライン由来のP3−X63−Ag8−U1 (P3U1, Curr. topics Microbiol. Immunol., 81: 1−7, 1978 )、P3−X63−Ag8 (X63, Nature, 256: 495−497, 1975 ) 、P3−X63−Ag8−653 (653, J. Immunol., 123: 1548−1550, 1979) などを用いることができる。8−アザグアニン耐性のマウスミエローマ細胞株はダルベッコMEM 培地 (DMEM培地) 、RPMI−1640 培地などの細胞培地に、例えばペニシリン、アミカシンなどの抗生物質、牛胎児血清(FCS) などを加え、さらに8−アザグアニン(例えば5〜45μg/ml) を加えた培地で継代されるが、細胞融合の2〜5日前に正常培地で継代して所要数の細胞株を用意することができる。また使用細胞株は、凍結保存株を約37℃で完全に解凍したのち RPMI−1640培地などの正常培地で3回以上洗浄後、正常培地で培養して所要数の細胞株を用意したものであってもよい。
【0070】
(4) 抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞融合は次のようにして実施できる。上記(2) の工程に従い免疫された動物、例えばマウスは最終免疫後、2〜5日後にその脾臓が摘出され、それから脾細胞懸濁液を得る。脾細胞の他、生体各所のリンパ節細胞を得て、それを細胞融合に使用することもできる。より具体的には、細胞融合は、例えば、細胞融合促進剤の存在下に通常の栄養培養液中で実施される。前記細胞融合に用いる培養液としては、例えば、前記ミエローマ細胞株の増殖に好適なRPMI1640培養液、MEM 培養液、その他、この種の細胞培養に用いられる通常の培養液が使用可能であり、さらに、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。かくして、こうして得られた脾細胞懸濁液と上記(3) の工程に従い得られたミエローマ細胞株を、例えば最小必須培地(MEM培地) 、DMEM培地、RPMI−1640 培地などの細胞培地中に置き、細胞融合促進剤、例えばポリエチレングリコールを添加する。細胞融合促進剤としては、この他各種当該分野で知られたものを用いることができ、この様なものとしては不活性化したセンダイウイルス(HVJ: Hemagglutinating Virus of Japan)なども挙げられる。好ましくは、例えば30〜60%のポリエチレングリコールを 0.5〜2ml加えることができ、分子量が 1,000〜8,000 のポリエチレングリコールを用いることができ、さらに分子量が 1,000〜4,000 のポリエチレングリコールがより好ましく使用できる。
【0071】
融合培地中でのポリエチレングリコールの濃度は、例えば30〜60%となるようにすることが好ましい。必要に応じ、例えばジメチルスルホキシドなどの補助剤を少量加え、融合効率を高めることもできる。免疫細胞とミエローマ細胞との使用割合、すなわち融合に使用する脾細胞(リンパ球): ミエローマ細胞株の割合は、任意に設定することができ、例えば 1:1〜20:1とすることが挙げられるが、より好ましくは 4:1〜10:1とすることができる。
細胞融合は、免疫細胞とミエローマ細胞との所定量を培養液中でよく混合し、予め37℃程度に加温したPEG 溶液(例えば平均分子量1000−6000 程度)を通常30−60 %(w/v )の濃度で添加し、混合することによって目的とする融合細胞(ハイブリドーマ)を形成する。続いて、適当な培養液を逐次添加し、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことによりハイブリドーマの生育に好ましくない細胞融合剤等を除去する。
融合反応を1〜10分間行い、次にRPMI−1640 培地などの細胞培地を加える。融合反応処理は複数回行うこともできる。融合反応処理後、遠心などにより細胞を分離した後選択用培地に移す。
【0072】
(5) ハイブリドーマ(融合細胞)の選択及びモノクローン化は次のようにして実施できる。選択用培地としては、通常の選択培養液、例えばヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含む、FCS 含有MEM 培地、RPMI−1640 培地などの培地、所謂 HAT培地が挙げられる。上記HAT 培養液での培養は、目的とするハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な時間(通常、数日〜数週間)継続する。選択培地交換の方法は、一般的には培養プレートに分注した容量と等容量を翌日加え、その後1〜3日ごとに HAT培地で半量ずつ交換するというように処理することができるが、適宜これに変更を加えて行うこともできる。また融合後8〜16日目には、アミノプテリンを除いた、所謂HT培地で1〜4日ごとに培地交換をすることができる。フィーダーとして、例えばマウス胸腺細胞を使用することもでき、それが好ましい場合がある。
【0073】
ハイブリドーマの増殖のさかんな培養ウェルの培養上清を、例えば放射免疫分析(RIA) 、酵素免疫分析(ELISA) 、蛍光免疫分析(FIA) 、発光免疫分析(LIA) 、ウエスタンブロッティングなどの測定系、あるいは蛍光惹起細胞分離装置(FACS)などで、所定の糖鎖断片を抗原として用いたり、あるいは標識抗マウス抗体を用いて目的抗体を測定するなどして、スクリーニングしたりする。目的抗体を産生しているハイブリドーマをクローニングする。クローニングは、寒天培地中でコロニーをピック・アップするか、あるいは限界希釈法によりなされうる。限界希釈法でより好ましく行うことができる。クローニングは複数回行うことが好ましい。このようにして作製されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、通常の培養液中で継代培養することが可能であり、また、液体窒素中で長期保存することが可能である。
【0074】
(6) モノクローナル抗体の製造は次のようにして実施できる。当該ハイブリドーマからモノクローナル抗体を取得するには、当該ハイブリドーマを通常の方法にしたがい培養し、その培養上清として得る方法、あるいはハイブリドーマをこれと適合性がある哺乳動物に投与して増殖させ、その腹水として得る方法などが採用される。前者の方法は、高純度の抗体を得るのに適しており、一方、後者の方法は、抗体の大量生産に適している。
かくして、得られたハイブリドーマ株は、FCS 含有MEM 培地、RPMI−1640 培地などの適当な増殖用培地中で培養し、その培地上清から所望のモノクローナル抗体を得ることが出来る。大量の抗体を得るためには、ハイブリドーマを腹水化することが挙げられる。この場合ミエローマ細胞由来の動物と同系の組織適合性動物の腹腔内に各ハイブリドーマを移植し、増殖させるか、あるいは例えばヌード・マウスなどに各ハイブリドーマを移植し、増殖させ、該動物の腹水中に産生されたモノクローナル抗体を回収して得ることが出来る。
【0075】
動物はハイブリドーマの移植に先立ち、プリスタン(2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン)などの鉱物油を腹腔内投与しておくことができ、その処理後、ハイブリドーマを増殖させ、腹水を採取することもできる。腹水液はそのまま、あるいは従来公知の方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿法などの塩析、セファデックスなどによるゲルろ過法、イオン交換クロマトグラフィー法、電気泳動法、透析、限外ろ過法、アフィニティ・クロマトグラフィー法、高速液体クロマトグラフィー法などにより精製してモノクローナル抗体として用いることができる。好ましくは、モノクローナル抗体を含有する腹水は、硫安分画した後、DEAE−セファロースの如き、陰イオン交換ゲル及びプロテインAカラムの如きアフィニティ・カラムなどで処理し精製分離処理できる。特に好ましくは抗原又は抗原断片(例えば合成ペプチド、組換え抗原タンパク質あるいはペプチド、抗体が特異的に認識する部位など)を固定化したアフィニティ・クロマトグラフィー、プロテインAを固定化したアフィニティ・クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイト・クロマトグラフィーなどが挙げられる。
【0076】
また、トランスジェニックマウス又はその他の生物、例えば、その他の哺乳動物は、本発明の免疫原糖鎖産物に対するヒト化抗体等の抗体を発現するのに用いることができる。
またこうして大量に得られた抗体の配列を決定したり、ハイブリドーマ株から得られた抗体をコードする核酸配列を利用して、遺伝子組換え技術により抗体を作製することも可能である。当該モノクローナル抗体をコードする核酸は、例えばマウス抗体の重鎖や軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用するなどの慣用の手法で単離し配列決定することができる。一旦単離されたDNA は、発現ベクターに入れ、CHO, COSなどの宿主細胞に入れることができる。該DNA は、例えばホモジーニアスなマウスの配列に代えて、ヒトの重鎖や軽鎖の定常領域ドメインをコードする配列に置換するなどして修飾することが可能である (Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81: 6581, 1984)。かくして所望の結合特異性を有するキメラ抗体やハイブリッド抗体も調製することが可能である。また、抗体は、下記するような縮合剤を用いることを含めた化学的なタンパク合成技術を適用して、キメラ抗体やハイブリッド抗体を調製するなどの修飾をすることも可能である。
【0077】
ヒト化抗体は、当該分野で知られた技術により行うことが可能である(例えば、Jones et al., Nature, 321: pp.522−525 (1986); Riechmann et al., Nature, 332: pp.323−327 (1988); Verhoeyen et al., Science, 239: pp.1534−1536 (1988))。ヒトモノクローナル抗体も、当該分野で知られた技術により行うことが可能で、ヒトモノクローナル抗体を生産するためのヒトミエローマ細胞やヒト・マウスヘテロミエローマ細胞は当該分野で知られている (Kozbor, J. Immunol.,133, pp.3001 (1984); Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp.51−63, Marcel Dekker, Inc., New York (1987)) 。バイスペシフィックな抗体を製造する方法も当該分野で知られている (Millstein et al., Nature, 305: pp.537−539 (1983); WO93/08829; Traunecker et al., EMBO J., 10: pp.3655−3659 (1991); Suresh et al., ”Methods in Enzymology”, Vol. 121, pp.210 (1986)) 。
該抗体は、ガレクチン−8が認識する糖鎖構造に対することから、それに基づいて模倣体分子を設計でき、該模倣体はガレクチン−8様の糖鎖認識活性が期待できる。すなわち、該抗体に基づいて分子設計を施して、ガレクチン−8活性を有する物質を得るのに使用できる。こうして得られる物質も本発明の思想の範囲内のものであるし、本発明の活性成分として扱うことができる。該配列から特定の特徴部分を選択し、(i) そのうちの薬理作用団をイソスターで置き換えることによりなされるか、(ii) 構成アミノ酸残基の少なくとも1個をD体のアミノ酸残基に置き換えるか、(iii) アミノ酸残基の側鎖を修飾するか、(iv) 該配列に存在するアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基を配置して連結するか、(v) 立体構造を解析してmimic 体をデザインすることなど、当該分野で採用される技術を駆使して行うことができる(例えば、首藤 紘一 編 医薬品の開発7巻(分子設計)、平成2年6月25日発行、株式会社廣川書店及びそこで引用している文献や論文など) 。そうした技術の一部は、上記で説明したものを含んでいる。
さらにこれら抗体をトリプシン、パパイン、ペプシンなどの酵素により処理して、場合により還元して得られるFab 、Fab’、F(ab’)といった抗体フラグメントにして使用してもよい。
【0078】
抗体は、既知の任意の検定法、例えば競合的結合検定、直接及び間接サンドイッチ検定、及び免疫沈降検定に使用することができる(Zola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques, pp.147−158 (CRC Press, Inc., 1987) 。抗体を検出可能な原子団にそれぞれコンジュゲートするには、当分野で知られる任意の方法を使用することができ、例えば、David et al., Biochemistry, 13巻, 1014−1021 頁(1974); Pain et al, J. Immunol. Meth., 40: pp.219−231 (1981);及び ”Methods in Enzymology”, Vol. 184, pp.138−163 (1990) により記載の方法が挙げられる。標識物を付与する抗体としては、IgG 画分、更にはペプシン消化後還元して得られる特異的結合部Fab’を用いることができる。これらの場合の標識物の例としては、下記するように酵素(ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼあるいはβ−D− ガラクトシダーゼなど)、化学物質、蛍光物質あるいは放射性同位元素などがある。
【0079】
本発明での検知・測定は、免疫染色、例えば組織あるいは細胞染色、免疫電子顕微鏡、イムノアッセイ、例えば競合型イムノアッセイまたは非競合型イムノアッセイなど、フローサイトメトリー、例えばMultiplexed Flow Cytometric Assay 法などで行うことができ、放射免疫測定法(RIA), FIA, LIA, EIA, ELISA などを用いることができ、B−F 分離を行ってもよいし、あるいは行わないでその測定を行うことができる。好ましくはRIA, EIA, FIA, LIAであり、さらにサンドイッチ型アッセイが挙げられる。例えばサンドイッチ型アッセイでは、一方を本発明のガレクチン−8結合親和性糖鎖に対する抗体あるいは関連断片に対する抗体とし、他方を該ガレクチン−8結合親和性糖鎖の別の断片部分に対する抗体とし、そして一方を検出可能に標識化する(もちろん、その他の組み合わせも可能であり、目的に応じて適宜デザインできる)。同じ抗原を認識できる他の抗体を固相に固定化する。検体と標識化抗体及び固相化抗体を必要に応じ順次反応させるためインキュベーション処理し、ここで非結合抗体を分離後、標識物を測定する。
【0080】
測定された標識の量は抗原、すなわちガレクチン−8結合親和性糖鎖抗原の量と比例する。このアッセイでは、不溶化抗体や、標識化抗体の添加の順序に応じて同時サンドイッチ型アッセイ、フォワード(forward)サンドイッチ型アッセイあるいは逆サンドイッチ型アッセイなどと呼ばれる。例えば洗浄、撹拌、震盪、ろ過あるいは抗原の予備抽出等は、特定の状況のもとでそれら測定工程の中で適宜採用される。特定の試薬、緩衝液等の濃度、温度あるいはインキュベーション処理時間などのその他の測定条件は、検体中の抗原の濃度、検体試料の性質等の要素に従い変えることができる。当業者は通常の実験法を用いながら各測定に対して有効な最適の条件を適宜選定して測定を行うことが出来る。
抗原あるいは抗体を固相化できる多くの担体が知られており、本発明ではそれらから適宜選んで用いることができる。担体としては、抗原抗体反応などに使用されるものが種々知られており、本発明においても勿論これらの公知のものの中から選んで使用できる。
【0081】
特に好適に使用されるものとしては、例えばガラス、例えばアミノアルキルシリルガラスなどの活性化ガラス、多孔質ガラス、シリカゲル、シリカ−アルミナ、アルミナ、磁化鉄、磁化合金などの無機材料、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアクリルアミド、架橋ポリアクリルアミド、スチレン−メタクリレート共重合体、ポリグリシジルメタクリレート、アクロレイン−エチレングリコールジメタクリレート共重合体など、架橋化アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、デキストラン、アガロース、架橋アガロース、セルロース、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートなどの天然または変成セルロース、架橋デキストラン、ナイロンなどのポリアミド、ポリウレタン、ポリエポキシ樹脂などの有機高分子物質、さらにそれらを乳化重合して得られたもの、シリコンガムなど、細胞、赤血球などで、必要に応じ、シランカップリング剤などで官能性基を導入してあるものが挙げられる。
【0082】
さらに、ろ紙、ビーズ、チューブ、キュベット、試験容器の内壁、例えば試験管、タイタープレート、タイターウェル、マイクロプレート、ガラスセル、合成樹脂製セルなどの合成材料からなるセル、ガラス棒、合成材料からなる棒、末端を太くしたりあるいは細くしたりした棒、末端に丸い突起をつけたりあるいは偏平な突起をつけた棒、薄板状にした棒などの固体物質(物体)の表面などが挙げられる。
これら担体へは、抗体を結合させることができ、好ましくは本発明で同定できる糖鎖抗原に対し特異的に反応する抗ガレクチン−8結合活性保有糖鎖抗体(抗血清や精製抗体を含む)や抗ガレクチン−8結合活性保有糖鎖モノクローナル抗体を結合させることができる。担体とこれら抗原抗体反応に関与するものとの結合は、吸着などの物理的な手法、あるいは縮合剤などを用いたり、活性化されたものなどを用いたりする化学的な方法、さらには相互の化学的な結合反応を利用した手法などにより行うことが出来る。
【0083】
標識としては、酵素、酵素基質、酵素インヒビター、補欠分子類、補酵素、酵素前駆体、アポ酵素、蛍光物質、色素物質、化学ルミネッセンス化合物、発光物質、発色物質、磁気物質、金属粒子、例えば金コロイドなど、非金属元素粒子、例えばセレンコロイドなど、放射性物質などを挙げることができる。酵素としては、脱水素酵素、還元酵素、酸化酵素などの酸化還元酵素、例えばアミノ基、カルボキシル基、メチル基、アシル基、リン酸基などを転移するのを触媒する転移酵素、例えばエステル結合、グリコシド結合、エーテル結合、ペプチド結合などを加水分解する加水分解酵素、リアーゼ、イソメラーゼ、リガーゼなどを挙げることができる。酵素は複数の酵素を複合的に用いて検知に利用することもできる。例えば酵素的サイクリングを利用することもできる。代表的な放射性物質の標識用同位体元素としては、[32P], [125I], [131I],[H],[14 C],[35S] などが挙げられる。代表的な酵素標識としては、西洋ワサビペルオキシダーゼなどのペルオキシダーゼ、大腸菌β−D− ガラクトシダーゼなどのガラクトシダーゼ、マレエート・デヒドロゲナーゼ、グルコース−6− フォスフェート・デヒドロゲナーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコアミラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、カタラーゼ、ウシ小腸アルカリホスファターゼ、大腸菌アルカリホスファターゼなどのアルカリフォスファターゼなどが挙げられる。
【0084】
アルカリホスファターゼを用いた場合、4−メチルウンベリフェリルフォスフェートなどのウンベリフェロン誘導体、ニトロフェニルホスフェートなどのリン酸化フェノール誘導体、NADPを利用した酵素的サイクリング系、ルシフェリン誘導体、ジオキセタン誘導体などの基質を使用したりして、生ずる蛍光、発光などにより測定できる。ルシフェリン、ルシフェラーゼ系を利用したりすることもできる。カタラーゼを用いた場合、過酸化水素と反応して酸素を生成するので、その酸素を電極などで検知することもできる。電極としてはガラス電極、難溶性塩膜を用いるイオン電極、液膜型電極、高分子膜電極などであることもできる。
酵素標識は、ビオチン標識体と酵素標識アビジン(ストレプトアビジン)に置き換えることも可能である。このように、ビオチン−アビジン系を使用したり、抗ガレクチン抗体に対する抗体などの二次的な抗体を使用するなど、当該分野で公知の感度増強法を適宜採用することができる。標識は、複数の異なった種類の標識を使用することもできる。こうした場合、複数の測定を連続的に、あるいは非連続的に、そして同時にあるいは別々に行うことを可能にすることもできる。
【0085】
本発明においては、信号の形成に4−ヒドロキシフェニル酢酸、o−フェニレンジアミン (OPD)、テトラメチルベンジジン (TMB)、5−アミノサリチル酸、3,3−ジアミノベンジジンテトラヒドロクロライド (DAB)、3−アミノ−9− エチルカルバゾール (AEC)、チラミン、ルミノール、ルシゲニンルシフェリン及びその誘導体、Pholad luciferinなどと西洋ワサビ・ペルオキシダーゼなどのペルオキシダーゼ、ルミジェンPPD 、(4− メチル) ウンベリフェリル− リン酸、p−ニトロフェノール− リン酸、フェノール− リン酸、ブロモクロロインドリルリン酸(BCIP)、AMPAK TM(DAKO)、AmpliQTM(DAKO)などとアルカリフォスファターゼ、4−メチルウンベリフェリル− β−D− ガラクトシドといったウンベリフェリルガラクトシド、o−ニトロフェノール− β−D− ガラクトシドといったニトロフェニルガラクトシドなどとβ−D− ガラクトシダーゼ、グルコース−6− リン酸・デヒドロゲナーゼ、ABTSなどとグルコースオキシダーゼなどの酵素試薬の組合わせも利用でき、ヒドロキノン、ヒドロキシベンゾキノン、ヒドロキシアントラキノンなどのキノール化合物、リポ酸、グルタチオンなどのチオール化合物、フェノール誘導体、フェロセン誘導体などを酵素などの働きで形成しうるものが使用できる。
【0086】
蛍光物質あるいは化学ルミネッセンス化合物としては、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、例えばローダミンB イソチオシアネート、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(RITC)、テトラメチルローダミンイソチオシアネートアイソマーR (TRITC) などのローダミン誘導体、7−アミノ−4− クマリン−3− 酢酸、ダンシルクロリド、ダンシルフルオリド、フルオレスカミン、フィコビリプロテイン、アクリジニウム塩、ルミフェリン、ルシフェラーゼ、エクォリンなどのルミノール、イミダゾール、シュウ酸エステル、希土類キレート化合物、クマリン誘導体などが挙げられる。発色、螢光などを含めた生成する信号などを検知するには、視覚によることもできるが、公知の装置を使用することもでき、例えば螢光光度計、プレートリーダーなども使用できる。また、放射性同位体(アイソトープ)などの出す信号を検知するには、公知の装置を使用することもでき、例えばガンマーカウンター、シンチレーションなども使用することができる。
標識するには、チオール基とマレイミド基の反応、ピリジルジスルフィド基とチオール基の反応、アミノ基とアルデヒド基の反応などを利用して行うことができ、公知の方法あるいは当該分野の当業者が容易になしうる方法、さらにはそれらを修飾した方法の中から適宜選択して適用できる。また上記免疫原性複合体作製に使用されることのできる縮合剤、担体との結合に使用されることのできる縮合剤などを用いることができる。縮合剤としては、上記でCRD 固相化に使用したものが挙げられる。
【0087】
本発明の測定法によれば、測定すべき物質を酵素などで標識した抗血清、精製抗体あるいはモノクローナル抗体などの標識抗体試薬と、担体に結合された抗体とを順次反応させることができるし、同時に反応させることもできる。試薬を加える順序は選ばれた担体系の型により異なる。感作されたプラスチックなどのビーズを用いた場合には、標識した抗血清、精製抗体あるいはモノクローナル抗体などの標識抗体試薬を測定すべき物質を含む検体試料と共に最初適当な試験管中に一緒に入れ、その後該感作されたプラスチックなどのビーズを加えることにより測定を行うことができる。
本発明の測定法においては、免疫学的測定法が用いられるが、その際の固相担体としては、抗体などタンパク質を良く吸着するポリスチレン製、ポリカーボネイト製、ポリプロピレン製あるいはポリビニル製のボール、マイクロプレート、スティック、微粒子あるいは試験管などの種々の材料および形態を任意に選択し、使用することができる。
測定にあたっては至適pH、例えばpH約4〜約9に保つように適当な緩衝液系中で行うことができる。特に適切な緩衝剤としては、例えばアセテート緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤、フォスフェート緩衝剤、トリス緩衝剤、トリエタノールアミン緩衝剤、ボレート緩衝剤、グリシン緩衝剤、炭酸塩緩衝剤、トリス−塩酸緩衝剤、ベロナール緩衝剤などが挙げられる。緩衝剤は互いに任意の割合で混合して用いることができる。抗原抗体反応は約0℃〜約60℃の間の温度で行うことが好ましい。
【0088】
酵素などで標識された抗血清、精製抗体、あるいはモノクローナル抗体などの抗体試薬及び担体に結合せしめられた抗体試薬、さらには測定すべき物質のインキュベーション処理は、平衡に達するまで行うことができるが、抗原抗体反応の平衡が達成されるよりもずっと早い時点で固相と液相とを分離して限定されたインキュベーション処理の後に反応を止めることができ、液相又は固相のいずれかにおける酵素などの標識の存在の程度を測ることができる。測定操作は、自動化された測定装置を用いて行うことが可能であり、ルミネセンス・ディテクター、ホト・ディテクターなどを使用して基質が酵素の作用で変換されて生ずる表示シグナルを検知して測定することもできる。抗原抗体反応においては、それぞれ用いられる試薬、測定すべき物質、さらには酵素などの標識を安定化したり、抗原抗体反応自体を安定化するように適切な手段を講ずることができる。さらに、非特異的な反応を除去し、阻害的に働く影響を減らしたり、あるいは測定反応を活性化したりするため、タンパク質、安定化剤、下記するような界面活性剤、キレート化剤などをインキュベーション溶液中に加えることもできる。キレート化剤としては、エチレンジアミン四酢酸塩 (EDTA) がより好ましい。当該分野で普通に採用されていたりあるいは当業者に知られた非特異的結合反応を防ぐためのブロッキング処理を施してもよく、例えば、哺乳動物などの正常血清や血清タンパク質、アルブミン、ヘモグロビン、オボアルブミン(OVA) 、スキムミルク、乳発酵物質、コラーゲン、ゼラチンなどで処理することができる。非特異的結合反応を防ぐ目的である限り、それらの方法は特に限定されず用いることが出来る。
【0089】
さらに、試料や固相などの洗浄には、上記した緩衝液系や食塩液から適宜適当な液を選択してそれを使用でき、さらにそこにTween 20 (商品名) 、Tween 80 (商品名) 、NP−40(商品名) 、Triton X100(商品名) 、Briji(商品名) などの非イオン性界面活性剤、CHAPS などの両イオン性界面活性剤の他、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤などから成る群から選ばれたものを添加して使用できる。本発明の測定方法で測定される試料としては、あらゆる形態の溶液やコロイド溶液、非流体試料などが使用しうるが、好ましくは生物由来の試料、例えば胸腺、睾丸、腸、腎臓、脳、乳房組織、卵巣、子宮、前立腺、結腸・直腸、胃、肺、気管支、膵臓癌、肝臓などの全ての臓器及び組織、さらにそれら臓器・組織の悪性腫瘍、白血病細胞、血液、血清、血漿、関節液、脳脊髄液、膵液、胆汁液、唾液、羊水、尿、その他の体液、細胞培養液、組織培養液、組織ホモジュネート、生検試料、組織、細胞などが挙げられる。
これら個々の免疫学的測定法を含めた各種の分析・定量法を本発明の測定方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて、本発明の当該対象物質あるいはそれと実質的に同等な活性を有する物質に関連した測定系を構築すればよい。
【0090】
本発明の抗ガレクチン−8結合糖鎖抗体、特にモノクローナル抗体を用いて、エピトープマッピングを行うこともでき、各エピトープを認識する抗体を用いれば各ガレクチン−8結合物質及びその関連アナログなどの検知・測定を行うことができる。
EIA の測定系において、例えば競合法では、抗ガレクチン−8結合糖鎖などを保有する物質に対する抗体を固相化抗体として使用し、標識抗原及び非標識抗原(抗原としては、ガレクチン−8に結合親和性をもつ糖鎖を保有するものなどが挙げられる)を使用するし、また非競合法で、例えばサンドイッチ法では、固相化抗体や標識抗体を利用できる他、抗体を直接標識したり、固相化せずに、抗ガレクチン−8結合糖鎖などを保有する物質に対する抗体に対する抗体を標識したり、固相化して行うこともできる。感度増幅法としては、例えば、非酵素標識一次抗体との組み合わせでは、高分子ポリマーと酵素と一次抗体を利用するもの(Envision試薬を応用したもの; Enhanced polymer one−step staining (EPOS))が挙げられ、非酵素標識二次抗体との組合せでは、例えば PAP (peroxidase−antiperoxidase)法などの酵素と抗酵素抗体複合体の組合せ、SABC (avidin−biotinylated peroxidase complex) 法などのビオチン標識二次抗体とビオチン標識酵素−アビジン複合体の組合せ、ABC (streptavidin−biotin complex) 法、LSAB (labeled streptavidin−biotin)法などのビオチン標識二次抗体とビオチン標識酵素−ストレプトアビジン複合体の組合せ、CSA (catalyzed signal amplification)法などのSABCとビオチン標識タイラマイドと酵素標識ストレプトアビジンの組合せ、高分子ポリマーで二次抗体と酵素を標識してあるものなどが挙げられる。
【0091】
これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる〔例えば、入江 寛編,「ラジオイムノアッセイ」,講談社,昭和49年発行;入江 寛編,「続ラジオイムノアッセイ」,講談社,昭和54年発行;石川栄治ら編,「酵素免疫測定法」,医学書院,昭和53年発行;石川栄治ら編,「酵素免疫測定法」(第2版),医学書院,昭和57年発行;石川栄治ら編,「酵素免疫測定法」(第3版),医学書院,昭和62年発行;H. V. Vunakis et al. (ed.), ”Methods in Enzymology”, Vol. 70 (Immunochemical Techniques, Part A), Academic Press, New York (1980); J. J. Langone et al. (ed.), ”Methods inEnzymology”, Vol. 73 (Immunochemical Techniques, Part B), Academic Press, New York (1981); J. J. Langone et al. (ed.), ”Methods in Enzymology”,Vol. 74 (Immunochemical Techniques, Part C), Academic Press, New York (1981); J. J. Langone et al. (ed.), ”Methods in Enzymology”, Vol. 84 (Immunochemical Techniques, Part D: Selected Immunoassays), Academic Press, New York (1982); J. J. Langone et al. (ed.), ”Methods in Enzymology”, Vol. 92 (Immunochemical Techniques, Part E: Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Methods), Academic Press, New York (1983); J. J. Langoneet al. (ed.), ”Methods in Enzymology”, Vol. 121 (Immunochemical Techniques, Part I: Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies), Academic Press, New York (1986); J. J. Langone et al. (ed.), ”Methods in Enzymology”, Vol. 178 (Antibodies, Antigens, and Molecular Mimicry), Academic Press, New York (1989); M. Wilchek et al. (ed.), ”Methods in Enzymology”, Vol. 184 (Avidin−Biotin Technology), Academic Press, New York (1990); J. J. Langone et al. (ed.), ”Methods in Enzymology”, Vol. 203 (Molecular Design and Modeling: Concepts and Applications, Part B: Anibodies and Antigens, Nucleic Acids, Polysaccharides, and Drugs), Academic Press, New York (1991) などあるいはそこで引用された文献 (それらの中にある記載はそれを参照することにより本明細書の開示に含められる) 〕。
【0092】
本発明の抗体(ガレクチン−8に対する結合親和性をもつ糖鎖及びその関連断片に対する抗体)は、該糖鎖あるいはそのアナログによるガレクチン−8の活性阻害などの現象の検出及び/又は測定、さらにはガレクチン−8活性の過剰により生ずる各種の生理活性物質の検出及び/又は測定に有用である。該抗体、特にモノクローナル抗体は、(i) ガレクチン−8による組織あるいはタンパク質が関連する障害、異常及び/又は疾患を検出したり、(ii) ガレクチン−8に関連した細胞の腫瘍化、細胞の移動、浸潤、遊走及び/又は転移あるいはその可能性を検出したり、及び/又は(iii) 細胞の腫瘍化、腫瘍細胞、血液系細胞などの細胞の移動、浸潤、遊走及び/又は転移あるいはその可能性を検出するのに有用である。癌の移動性、浸潤性、走化性及び/又は転移性の程度を知るのに使用できると期待される。本発明の抗体は、ガレクチン−8 (ガレクチン−8, −8M 及び−8L を包含する) の生物学的活性などの機能(例えば、好中球接着誘導活性など)を阻害する化合物(アンタゴニスト、あるいは阻害剤)として有用であり、過ヒトガレクチン−8機能症などの各種の疾病の治療及び/又は予防剤などの医薬として使用できる。更に本発明の抗体に基づいてデザインされた抗体模倣体は、該ガレクチン−8の生物学的活性などの機能(例えば、好中球接着誘導活性など)を促進するもの(アゴニスト、あるいは促進剤)として有用であり、ヒトガレクチン−8機能不全症状などの各種の疾病の治療及び/又は予防剤として有用な医薬として使用できる。本発明の変異体などのポリペプチド等は、ガレクチン−8 (ガレクチン−8, −8M 及び−8L を包含する) の生物学的活性などの機能(例えば、好中球接着誘導活性など)を促進する化合物(アゴニスト)や阻害する化合物(アンタゴニスト)又はそれらの塩をスクリーニングするための試薬として有用で、また、ガレクチン−8に関連したタンパク質、その一部のペプチド又はそれらの塩などの生物学的活性などの機能(例えば、好中球接着誘導活性、血球凝集活性など)を促進する化合物(アゴニスト)や阻害する化合物(アンタゴニスト)又はそれらの塩のスクリーニング方法も提供される。
本発明にしたがえば、特定の構造を有する糖鎖あるいはそのアナログによるガレクチン−8の活性阻害を検出及び/又は測定し、抗癌剤、癌転移阻害剤及び/又は免疫抑制剤の効果判定モニターとして使用することが可能となる。
【0093】
本発明の活性成分〔例えば、(a) ガレクチン−8の変異ポリペプチド、その一部のペプチドまたはそれらの塩、それに関連するペプチド等、(b) 該変異体をコードするDNAなどの核酸等、(c) 本発明の抗体、その一部断片(モノクローナル抗体を包含する) またはその誘導体(模倣体を含む) 、(d) ガレクチン−8に結合親和性を有する糖鎖を有する化合物あるいはそのアナログ、さらにガレクチン−8の生物学的活性を抑制及び/又は阻害する化合物またはその塩、(e) ガレクチン−8に結合親和性を有する糖鎖を有する化合物あるいはそのアナログ、さらにガレクチン−8の生物学的活性を促進及び/又は増強する化合物またはその塩、(f) 本発明のDNA などの核酸に対するアンチセンス・オリゴヌクレオチドなど〕を医薬として用いる場合、例えばガレクチン−8に対するアゴニスト又はアンタゴニストまたはそれらの塩等は、通常単独或いは薬理的に許容される各種製剤補助剤と混合して、医薬組成物又は医薬調製物などとして投与することができる。好ましくは、経口投与、局所投与、または非経口投与等の使用に適した製剤調製物の形態で投与され、目的に応じていずれの投与形態(吸入法、あるいは直腸投与も包含される)によってもよい。
【0094】
また、本発明の活性成分は、抗腫瘍剤(抗癌剤)、腫瘍移転阻害剤、血管新生阻害剤、アルツハイマー治療剤、関節破壊治療剤、消炎剤及び/又は免疫抑制剤と配合して使用することもできる。抗腫瘍剤(抗癌剤)、腫瘍移転阻害剤、血管新生阻害剤、アルツハイマー治療剤、関節破壊治療剤、消炎剤や免疫抑制剤としては、有利な働きを持つものであれば制限なく使用でき、例えば当該分野で知られたものの中から選択することができる。
そして、非経口的な投与形態としては、局所、経皮、静脈内、筋肉内、皮下、皮内もしくは腹腔内投与を包含し得るが、患部への直接投与も可能であり、またある場合には好適でもある。好ましくはヒトを含む哺乳動物に経口的に、あるいは非経口的(例、細胞内、組織内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、腹腔内、胸腔内、脊髄腔内、点滴法、注腸、経直腸、点耳、点眼や点鼻、歯、皮膚や粘膜への塗布など)に投与することができる。具体的な製剤調製物の形態としては、溶液製剤、分散製剤、半固形製剤、粉粒体製剤、成型製剤、浸出製剤などが挙げられ、例えば、錠剤、被覆錠剤、糖衣を施した剤、丸剤、トローチ剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、マイクロカプセル剤、埋込剤、粉末剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、注射剤、液剤、エリキシル剤、エマルジョン剤、灌注剤、シロップ剤、水剤、乳剤、懸濁剤、リニメント剤、ローション剤、エアゾール剤、スプレー剤、吸入剤、噴霧剤、軟膏製剤、硬膏製剤、貼付剤、パスタ剤、パップ剤、クリーム剤、油剤、坐剤(例えば、直腸坐剤)、チンキ剤、皮膚用水剤、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、塗布剤、輸液剤、注射用液剤などのための粉末剤、凍結乾燥製剤、ゲル調製品等が挙げられる。
【0095】
医薬用の組成物は通常の方法に従って製剤化することができる。例えば、適宜必要に応じて、生理学的に認められる担体、医薬として許容される担体、アジュバント剤、賦形剤、補形剤、希釈剤、香味剤、香料、甘味剤、ベヒクル、防腐剤、安定化剤、結合剤、pH調節剤、緩衝剤、界面活性剤、基剤、溶剤、充填剤、増量剤、溶解補助剤、可溶化剤、等張化剤、乳化剤、懸濁化剤、分散剤、増粘剤、ゲル化剤、硬化剤、吸収剤、粘着剤、弾性剤、可塑剤、崩壊剤、噴射剤、保存剤、抗酸化剤、遮光剤、保湿剤、緩和剤、帯電防止剤、無痛化剤などを単独もしくは組合わせて用い、それとともに本発明のタンパク質等を混和することによって、一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態にして製造することができる。
非経口的使用に適した製剤としては、活性成分と、水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る媒体との無菌性溶液、または懸濁液剤など、例えば注射剤等が挙げられる。一般的には、水、食塩水、デキストロース水溶液、その他関連した糖の溶液、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどのグリコール類が好ましい注射剤用液体担体として挙げられる。注射剤を調製する際は、蒸留水、リンゲル液、生理食塩液のような担体、適当な分散化剤または湿化剤及び懸濁化剤などを使用して当該分野で知られた方法で、溶液、懸濁液、エマルジョンのごとき注射しうる形に調製する。
【0096】
注射用の水性液としては、例えば生理食塩液、ブドウ糖やその他の補助薬(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)を含む等張液などが挙げられ、薬理的に許容される適当な溶解補助剤、たとえばアルコール(たとえばエタノールなど)、ポリアルコール(たとえばプロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、非イオン性界面活性剤(たとえばポリソルベート80 TM, HCO−50など)などと併用してもよい。油性液としてはゴマ油、大豆油などが挙げられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液など)又は浸透圧調節のための試薬、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、アスコルビン酸などの酸化防止剤、吸収促進剤などと配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。
【0097】
非経口投与には、界面活性剤及びその他の薬学的に許容される助剤を加えるか、あるいは加えずに、水、エタノール又は油のような無菌の薬学的に許容される液体中の溶液あるいは懸濁液の形態に製剤化される。製剤に使用される油性ベヒクルあるいは溶剤としては、天然あるいは合成あるいは半合成のモノあるいはジあるいはトリグリセリド類、天然、半合成あるいは合成の油脂類あるいは脂肪酸類が挙げられ、例えばピーナッツ油、トウモロコシ油、大豆油、ゴマ油などの植物油が挙げられる。例えば、この注射剤は、通常本発明化合物を0.1 〜10重量%程度含有するように調製されることができる。
局所的、例えば口腔、又は直腸的使用に適した製剤としては、例えば洗口剤、歯磨き剤、口腔噴霧剤、吸入剤、軟膏剤、歯科充填剤、歯科コーティング剤、歯科ペースト剤、坐剤等が挙げられる。洗口剤、その他歯科用剤としては、薬理的に許容される担体を用いて慣用の方法により調製される。口腔噴霧剤、吸入剤としては、本発明化合物自体又は薬理的に許容される不活性担体とともにエアゾール又はネブライザー用の溶液に溶解させるかあるいは、吸入用微粉末として歯などへ投与できる。軟膏剤は、通常使用される基剤、例えば、軟膏基剤(白色ワセリン、パラフィン、オリーブ油、マクロゴール400 、マクロゴール軟膏など)等を添加し、慣用の方法により調製される。
【0098】
歯、皮膚への局所塗布用の薬品は、適切に殺菌した水または非水賦形剤の溶液または懸濁液に調剤することができる。添加剤としては、例えば亜硫酸水素ナトリウムまたはエデト酸二ナトリウムのような緩衝剤;酢酸または硝酸フェニル水銀、塩化ベンザルコニウムまたはクロロヘキシジンのような殺菌および抗真菌剤を含む防腐剤およびヒプロメルローズのような濃厚剤が挙げられる。
坐剤は、当該分野において周知の担体、好ましくは非刺激性の適当な補形剤、例えばポリエチレングリコール類、ラノリン、カカオ脂、脂肪酸トリグリセライド等の、好ましくは常温では固体であるが腸管の温度では液体で直腸内で融解し薬物を放出するものなどを使用して、慣用の方法により調製されるが、通常本発明化合物を0.1 〜95重量%程度含有するように調製される。使用する賦形剤および濃度によって薬品は、賦形剤に懸濁させるかまたは溶解させることができる。局部麻酔剤、防腐剤および緩衝剤のような補助薬は、賦形剤に溶解可能である。経口的使用に適した製剤としては、例えば錠剤、丸剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、トローチのような固形組成物や、液剤、シロップ剤、懸濁剤のような液状組成物等が挙げられる。製剤調製する際は、当該分野で知られた製剤補助剤などを用いる。錠剤及び丸剤はさらにエンテリックコーティングされて製造されることもできる。調剤単位形態がカプセルである場合には、前記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。
【0099】
さらに、本発明のDNA などの核酸を上記したような治療及び/又は予防剤として用いる場合、該核酸はそれを単独で用いることもできるし、あるいは上記したような遺伝子組換え技術で使用される適当なベクター、例えばレトロウイルス由来ベクターなどウイルス由来のベクターなどに結合させるなどして用いることができる。本発明のDNA などの核酸は通常の知られた方法で投与でき、そのままで、あるいは、例えば細胞内への摂取が促進されるように、適当な補助剤あるいは生理的に許容される担体などと共に、製剤化されて用いることができ、上記したような、医薬組成物又は医薬調製物などとして投与することができる。また遺伝子治療として知られた方法を適用することもできる。
本発明の活性成分は、その投与量を広範囲にわたって選択して投与できるが、その投与量及び投与回数などは、処置患者の性別、年齢、体重、一般的健康状態、食事、投与時間、投与方法、排泄速度、薬物の組み合わせ、患者のその時に治療を行なっている病状の程度に応じ、それらあるいはその他の要因を考慮して決められる。
医薬品製造にあたっては、その添加剤等や調製法などは、例えば日本薬局方解説書編集委員会編、第十三改正 日本薬局方解説書、平成8年7月10日発行、株式会社廣川書店;一番ヶ瀬 尚 他編 医薬品の開発12巻(製剤素剤〔I〕)、平成2年10月15日発行、株式会社廣川書店;同、医薬品の開発12巻(製剤素材〔II〕)平成2年10月28日発行、株式会社廣川書店などの記載を参考にしてそれらのうちから必要に応じて適宜選択して適用することができる。
【0100】
本明細書において、ガレクチン−8(ガレクチン−8M 及び−8L を含む) の活性は、以下のことを意味してよい。
ガレクチン−8は、サイトカイン活性、細胞増殖活性(誘導又は阻害活性)あるいは細胞分化活性(誘導又は阻害活性)、特定の細胞集団における他のサイトカインの産生誘導活性について試験されることができる。多くの因子依存性細胞増殖アッセイが知られており、例えば、32D, DA2, DA1G, T10, B9, B9/11, BaF3, MC9/G, M+ (preB M+), 2E8, RB5, DA1, 123, T1165, HT2, CTLL2, TF−1, Mo7e, CMK などの細胞株のためのアッセイが知られている。T細胞または胸腺細胞増殖活性に関するアッセイとしては、それに限定されるものではないが、例えばJohnE. Coligan, Ada M. Kruisbeek, David H. Margulies, Ethan M. Shevach, Warren Strober (Ed.), Current Protocols in Immunology(以下、単に”J. E. Coligan et al. (Ed.), Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, Inc.”という) (Chapter 3: ”In Vitro assays for Mouse Lymphocyte Function (3.1−3.19)”; Chapter 7: ”Immunologic studies in Humans”), John Wiley & Sons, Inc; Takai et al., J. Immunol., 137:3494−3500 (1986); Bertagnolli etal., J. Immunol., 145:1706−1712 (1990); Bertagnolli et al., Cellular Immunology, 133:327−341 (1991); Bertagnolli et al., J. Immunol., 149:3778−3783 (1992); Bowman et al., J. Immunol., 152: 1756−1761 (1994)に記載されるものが挙げられる。脾臓細胞、リンパ節細胞及び胸腺細胞のサイトカイン生産及び/又は増殖活性に関するアッセイとしては、それに限定されるものではないが、例えば J. E. Coligan et al. (Ed.), Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, Inc. (Chapter 3 ”In Vitro assays for Mouse LymphocyteFunction−−Proliferative Assays for T Cell Function” and Chapter 6 ”Cytokines and Their Cellular Receptors−−Measurement of mouse and human Interferon γ”)に記載されるものが挙げられる。造血性細胞およびリンパ球産生性細胞の増殖および分化活性に関するアッセイとしては、それに限定されるものではないが、例えばJ. E. Coligan et al. (Ed.), Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, Inc. (Chapter 6 ”Cytokines and Their Cellular Receptors−−Measurement of Human and Murine Interleukin 2 and Interleukin 4; −−Measurement of mouse and human interleukin 6; −−Measurement of human Interleukin 11; −−Measurement of mouse and human Interleukin 9); deVries et al., J. Exp. Med., 173:1205−1211 (1991); Moreau et al., Nature, 336:690−692 (1988); Greenberger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 80:2931−2938 (1983); Smith et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 83:1857−1861(1986) に記載されるものが挙げられる。
【0101】
抗原に対するT細胞クローンの応答性についてのアッセイ(特に、その増殖およびサイトカイン産生を測定して、APC−T 細胞相互作用および直接的なT細胞に作用するタンパク質を同定することを含む)としては、それに限定されるものではないが、例えばJ. E. Coligan et al. (Ed.), Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, Inc. (Chapter 3 ”In Vitro assays for Mouse Lymphocyte Function”; Chapter 6 ”Cytokines and Their Cellular Receptors”; Chapter 7 ”Immunologic studies in Humans”); Weinberger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 77:6091−6095 (1980); Weinberger et al., Eur. J. Immun., 11:405−411 (1981); Takai et al., J. Immunol., 137:3494−3500 (1986); Takai et al., J. Immunol., 140:508−512 (1988)に記載されるものが挙げられる。
ガレクチン−8は、免疫刺激または抑制活性について試験されることができる。種々の免疫不全症および免疫障害(重症複合免疫不全症(SCID)を包含する)の処置における活性、例えば、Tおよび/またはBリンパ球の増殖の調節(アップレギュレーションまたはダウンレギュレーション)における活性、さらにはNK細胞及びその他の細胞群が細胞溶解活性を発揮する場合に活性であるか否かを試験できる。当該免疫不全症は遺伝的なものであってもよく、またはウイルス(例えば、HIV)ならびに細菌または真菌感染により引き起こされたものであってよく、さらには自己免疫障害から生じてもよい。より具体的には、ウイルス、細菌、真菌又はその他の感染症により引き起こされる感染性疾患(HIV、肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、ミコバクテリア、マラリアなどによる感染およびカンジダ症のような種々の真菌感染症を包含していてよい)がそれに含まれてよい。また、免疫系を刺激することが求められるような場合、例えばガンの治療などの場も包含されてよい。該自己免疫障害としては、例えば、結合組織疾患、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、自己免疫性肺炎、ギヤン−バレー症候群、自己免疫性甲状腺炎、インスリン依存性糖尿病、重症筋無力症、対宿主性移植片病、自己免疫性炎症性眼疾患などが挙げられる。また、喘息(特にアレルギー性喘息)及びその他の呼吸器系の疾患といったアレルギー反応およびアレルギー性症状の処置における活性の試験を含んでいてよい。免疫を抑制することが望まれるようなその他の症状(例えば、器官移植を包含する)に対する活性の試験を含んでいてよい。
【0102】
ガレクチン−8が、免疫応答を可能にするか否かを多数の方法で試験できる。例えば、ダウンレギュレーションは、すでに進行中の免疫応答を阻害またはブロックする形態のものであってもよく、または免疫応答の誘導を防止することを含んでもよい。T細胞応答を抑制することにより、またはT細胞において特異的寛容性を誘導することにより、またはその両方により、活性化T細胞の機能を阻害してもよい。一般的に、T細胞応答を免疫的に抑制するには、T細胞をその抑制因子に連続的に接触せしめることが必要であるような、能動的なそして非抗原特異的なプロセスである。寛容(T細胞における非応答性またはアネルギーの誘導を含む)というものは、一般的には抗原特異的であり、寛容化因子に接触することが止められた後も持続するという点で、免疫抑制と区別される。該寛容性であるか否かは、実際の操作では、寛容化因子の非存在下で特異的抗原に再度曝露した場合、T細胞応答が有るか無いかをみることにより確かめることが可能である。1つ以上の抗原機能(それに限定されるものではないが、例えばBリンパ球(例えばB7のような)抗原機能が包含される)のダウンレギュレーションまたは阻害、例えば、活性化T細胞による高レベルのリンホカイン合成の阻害は、組織、皮膚および器官の移植の状況ならびに対宿主性移植片病(GVHD)において有用である。例えば、T細胞機能を阻害すると、組織移植における組織破壊を減少せしめるはずである。代表的には、組織を移植した場合、移植片の拒絶は、T細胞により当該組織片を外来物として認識することを介して開始され、移植片を破壊するような免疫反応がそれに続く。B7リンパ球抗原と免疫細胞上のその天然のリガンド(単数または複数)との相互作用を阻害またはブロックする分子(B7−2活性を有する可溶性でモノマー形態のペプチドの単独、または別のBリンパ球抗原(例えば、B7−1、B7−3) 活性を有するモノマー形態のペプチドあるいはブロッキング抗体のようなものとの組合せ) を移植前に投与すると、対応する副次的刺激シグナルを伝達することなく、免疫細胞上の天然のリガンド(単数または複数)への分子の結合を導くことができる。こうしてBリンパ球抗原機能をブロックすると、T細胞のような免疫細胞によるサイトカイン合成を阻止し、従って、免疫抑制剤として作用する。さらに、副次的刺激を欠如することにより、T細胞を不活化し、それによって対象物における寛容性を誘発するのに十分であるようになるのである。Bリンパ球抗原ブロッキング剤による長期の寛容誘導により、該ブロッキング剤を繰り返し投与することの必要性はこれを避けることができよう。ターゲットが十分に免疫抑制または寛容とされるためには、Bリンパ球抗原組合せ機能をブロックすることも必要であるかもしれない。
【0103】
器官移植片拒絶またはGVHDを防止する場合の特定のブロッキング剤の効力は、ヒトにおける効力を予測するに有用な動物モデルを使用して行うことができる。適切な使用可能な系としては、例えばラットの同種心臓移植片、マウスの異種膵島細胞移植片などが挙げられる。Lenschow et al., Science, 257:789−792 (1992)及びTurka et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 89:11102−11105 (1992)に記載されるように、両方ともインビボにおいてCTLA4Ig融合タンパク質の免疫抑制作用を検討するために使用されている。さらに、GVHDのマウスモデル(Paul(Ed.), Fundamental Immunology, Raven Press, New York, pp.846−847 (1989))を使用して、疾患の進行に対するインビボにおけるBリンパ球抗原機能ブロッキング効果を測定することもできる。また、自己免疫疾患の治療的処置に抗原機能をブロックすることが有用である場合もある。多くの自己免疫障害は、自己組織に対しての反応の結果であり、疾患に関与するサイトカインおよび自己抗体の産生を促進するT細胞の不適切な活性化の結果に起因している。自己応答性T細胞の活性化を防止することによって疾患の症状を少なくしたり、無くすことができる。Bリンパ球抗原受容体:リガンド相互作用を破壊することを介してT細胞の副次的刺激をブロックするような薬剤を投与することにより、T細胞活性化を阻害し、疾患の過程に関与するような自己抗体またはT細胞由来のサイトカインの産生を防止することができる。さらに、ブロッキング剤により、疾患からの長期の軽減を誘導することを可能にするような自己反応性T細胞の抗原特異的な寛容性を誘導することが可能となる。ヒトの自己免疫疾患に対応した、十分に特徴付がなされている多くの動物モデルを使用して自己免疫障害の防止または改善に対するブロッキング剤の効力試験を行うことができよう。例えばマウス実験的自己免疫性脳炎、MRL/lpr/lpr マウスまたはNZB ハイブリッドマウスにおける全身性エリテマトーデス、マウス自己免疫性コラーゲン関節炎、NODマウスおよびBBラットにおける糖尿病、マウス実験的重症筋無力症などを挙げることができる(Paul (Ed.), Fundamental Immunology, Raven Press, New York, 840−856 (1989) 。また、抗原機能(好ましくは、Bリンパ球抗原機能)のアップレギュレーションも、免疫応答をアップレギュレートする手段として治療上有用であろう。
免疫応答のアップレギュレーションは、既存の免疫応答を増強する形態または最初の免疫応答を誘起する形態であってよい。例えば、Bリンパ球抗原機能を刺激することを介しての免疫応答の増強は、ウイルス感染の場合に有用であり得る。さらに、刺激性形態のBリンパ球抗原を全身投与することにより、インフルエンザ、通常のかぜ、および脳炎のような全身性ウイルス性疾患を改善し得る。
抗原機能(好ましくは、Bリンパ球抗原機能)のアップレギュレーションまたは増強は、腫瘍免疫性の誘導においても有用であろう。
例えば、ガレクチン−8の少なくとも1つをコードする核酸を用いてトランスフェクトした腫瘍細胞(例えば、肉腫、黒色腫、リンパ腫、白血病、神経芽細胞腫、ガン腫)をターゲットに投与して、ターゲット中の腫瘍特異的寛容の克服を達成するか否かを調べることができる。
【0104】
ガレクチン−8は、造血調節活性について試験することができ、さらには骨髄系またはリンパ系細胞欠損症の処置に有用であるか否か調べることができる。
種々の造血細胞株の増殖および分化活性を調べるのに適したアッセイ法は当該分野で広く知られており、それを使用することができる。胚幹細胞の分化に関するアッセイ(特に、胚分化造血に対する作用)としては、それに限定されるものではないが、例えばJohansson et al., Cellular Biology, 15: 141−151 (1995); Keller et al., Molecular and Cellular Biology, 13: 473−486 (1993); McClanahan et al., Blood 81: 2903−2915 (1993) に記載されるものが挙げられる。幹細胞の生存および分化(特に、リンパ−造血調節に対する作用)については、それに限定されるものではないが、例えばMethylcellulose colony forming assays, Freshney, M.G. Culture of Hematopoietic Cells. R.I. Freshney ら編Vol 265−268頁, Wiley−Liss, Inc., New York, NY. 1994; Hirayamaら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 5907−5911, 1992; Primitive hematopoietic colonyforming cells with high proliferative potential, McNiece, I.K. およびBriddell, R.A. Culture of Hematopoietic Cells. R.I. Freshneyら編 Vol 23−39頁, Wiley−Liss, Inc., New York, NY. 1994; Neben ら, Experimental Hematology 22: 353−359, 1994; Cobblestone area forming cell assay, Ploemacher, R.E. Culture of Hematopoietic Cells. R.I. Freshneyら編 Vol 1−21 頁, Wiley−Liss, Inc., New York, NY. 1994; Long term bone marrow cultures in the presence of stromal cells, Spooncer, E., Dexter, M. およびAllen, T. Culture of Hematopoietic Cells. R.I. Freshney ら編 Vol 163−179頁, Wiley−Liss, Inc., New York, NY. 1994; Long term culture initiating cell assay, Sutherland, H.J. Culture of Hematopoietic Cells. R.I. Freshney ら編 Vol 139−162頁, Wiley−Liss, Inc., New York, NY. 1994に記載されるものが挙げられる。
【0105】
ガレクチン−8は、骨、軟骨、腱、靭帯および/または神経組織の成長または再生、ならびに創傷治癒および組織の修復および置換に使用する医薬組成物として、さらに熱傷、裂傷および潰瘍の処置用剤としての活性についてもそれを調べることができる。骨が正常には形成されないような状態の下での軟骨および/または骨の成長を誘導する活性は、ヒトおよび他の動物における骨折および軟骨の損傷または欠損の治癒に有用である。ガレクチン−8の歯周病の処置および他の歯の修復プロセスに対する活性もそれを試験できる。骨形成細胞を誘引したり、骨形成細胞の増殖を刺激したり、あるいは骨形成細胞の前駆体の分化を誘導するような活性も調べることができる。ガレクチン−8は、例えば、骨および/もしくは軟骨の修復の刺激を介するか、または炎症もしくは炎症過程により媒介される組織破壊の過程(コラゲナーゼ活性、破骨細胞活性など)をブロックすることによる、骨粗鬆症または骨関節炎の処置に活性を示す可能性がある。さらに、ヒトおよびその他の動物における腱または靭帯の裂傷、変形および他の腱または靭帯の欠損の治癒に対する活性も試験されてよい。ガレクチン−8は、神経細胞または神経組織に対する変性、死滅もしくは外傷が関与する神経細胞の増殖ならびに神経および脳組織の再生に、すなわち、中枢および末梢神経系疾患およびニューロパシーならびに機械的および外傷性障害の処置に活性を有するか否か試験されてよく、より具体的には、末梢神経傷害、末梢ニューロパシーおよび局在化ニューロパシーのような末梢神経系疾患、ならびにアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンティングトン病、筋萎縮性側索硬化症およびシャイ−ドレーガー症候群のような中枢神経系疾患に対する活性が調べられる。
【0106】
ガレクチン−8は、アクチビンまたはインヒビン関連活性、哺乳動物細胞(例えば、単球、線維芽細胞、好中球、T細胞、肥満細胞、好酸球、上皮細胞および/または内皮細胞を包含する)の走化性/遊走活性、止血または血栓溶解活性、受容体、受容体リガンドまたは受容体/リガンド相互作用のインヒビターもしくはアゴニストとしての活性、抗炎症活性(炎症応答に関与する細胞刺激活性を含む)、抗腫瘍活性も含む腫瘍に関連した活性、下記のさらなる活性または効果の1つ以上についてそれを試験できる:細菌、ウイルス、真菌および他の寄生体(これらに限定されない)を包含する感染性因子の増殖、感染もしくは機能の阻害またはその殺傷;身長、体重、体毛の色、目の色、皮膚、肥痩比(fat to lean ratio )もしくは他の組織の色素沈着、または器官もしくは身体部分のサイズもしくは形態(例えば、豊胸またはその逆、骨の形態もしくは形状の変化)(これらに限定しない)を包含する身体特性への影響(抑制または増強);バイオリズムまたは心周期もしくは律動への影響;雄性または雌性対象の繁殖能への影響;摂食した脂肪、脂質、タンパク質、炭水化物、ビタミン、ミネラル、補因子または他の栄養因子もしくは成分(単数または複数)の代謝、異化、同化、プロセシング、利用、貯蔵または排除への影響;食欲、性欲、ストレス、認識(認識障害を包含する)、鬱病(鬱病性障害を包含する)および暴力的行為(これらに限定しない)を包含する行動特性への影響;鎮痛効果または他の痛みを軽減する効果の提供;造血系以外の系統における胚幹細胞の分化および増殖の促進;ホルモンまたは内分泌活性;酵素の場合、酵素の欠損の修正および欠損関連疾患の処置;過剰増殖性障害(例えば、乾癬のような)の処置;免疫グロブリン様活性(例えば、抗原または補体に結合する能力のような);ならびにワクチン組成物において抗原として作用して、そのようなタンパク質またはそのようなタンパク質と交差反応性である別の物質もしくは物体に対する免疫応答を惹起する能力。 明細書及び図面において、用語は、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによるか、あるいは当該分野において慣用的に使用される用語の意味に基づくものである。
【0107】
【実施例】
以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。本発明では、本明細書の思想に基づく様々な実施形態が可能であることは理解されるべきである。全ての実施例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、又は実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。
【0108】
以下の実施例における通常慣用される分子生物学的技術としては、標準的な実験マニュアル、例えば J. Sambrook, E. F. Fritsch & T. Maniatis (ed.), ”Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd edition)”, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (1989) 及び D. M. Glover et al. (ed.), ”DNA Cloning”, 2nd ed., Vol. 1 to 4, (The Practical Approach Series), IRL Press, Oxford University Press (1995) 、また特にPCR 法では、R. Saiki et al., Science, 230: 1350, 1985; R. Saiki et al., Science,239: 487, 1988; H. A. Erlich (ed.), PCR Technology, Stockton Press, 1989 ; D. M. Glover et al. (ed.), ”DNA Cloning”, 2nd ed., Vol. 1, (The Practical Approach Series), IRL Press, Oxford University Press (1995); M. A.Innis et al. (ed.), ”PCR Protocols: a guide to methods and applications”, Academic Press, New York (1990)); M. J. McPherson, P. Quirke and G. R. Taylor (ed.), PCR: a practical approach, IRL Press, Oxford (1991); M. A. Frohman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85, 8998−9002 (1988) などに記載の方法あるいはそこで引用された文献記載の方法あるいはそれらと実質的に同様な方法や改変法により行うことができるし、また市販の試薬あるいはキットを用いている場合はそれらに添付の指示書(protocols) や添付の薬品等を使用している (それらの中にある記載はそれを参照することにより本明細書の開示に含められる) 。
【0109】
実施例1
(1) 発現ベクターの作成
ヒトガレクチン−8 cDNA は、extra 5’BglII
G8−F: 5’−CGTCCTAGATCTATGATGTTGTCCTTAAACAAC−3’;配列表の配列番号:1および
SalI
G8−R:5’−CGACCGGTCGACCTACCAGCTCCTTACTTCCAG−3’; 配列表の配列番号:2
配列によってそれぞれタグ付けされたフォアードおよびリバースプライマーを用いて、ヒト類表皮癌細胞系(A431)のポリ(A)RNA 画分から調製した第1鎖cDNAより増幅した。増幅cDNAをBglII およびSalIで消化し、生じたcDNAフラグメントは、pGEX−4T−2 (Amersham Pharmacia Biotech)のBamHI−XhoI部位に挿入した。
【0110】
(2) ガレクチン−8の部位指定変異誘発
以下のフォワードおよびリバースプライマーを用いて、ガレクチン−8の部位指定変異誘発体のためのcDNAを生成した:
G8R69H−F (5’−CATTTCAATCCTCATTTCAAAAGG−3’; 配列表の配列番号:3) 、
G8R69H−R (5’−CCTTTTGAAATGAGGATTGAAATG−3’; 配列表の配列番号:4) 、
G8R233H−F (5’−CACTTGAACCCACACCTGAATATT−3’;配列表の配列番号:5)および
G8R233H−R (5’−AATATTCAGGTGTGGGTTCAAGTG−3’;配列表の配列番号:6)。
ガレクチン−8の残基 Arg69(および Arg233) のHis への部位指定変異誘発は、以下のようにして行った。
2つのそれぞれの反応において、点突然変異の上流および下流のcDNAフラグメントは、G8−F + G8R69H−R (G8R233H−R) およびG8R69H−F (G8G233H−F) + G8−R を用いて増幅した。次に増幅フラグメントを混合し、G8−F + G8−R を用いた第2回のPCR を行って、全長cDNAを生成させた。点突然変異を有するcDNAは、BglII およびSalIを用いて消化した後、pGEX−4T−2 のBamHI−XhoI部位に挿入した。
【0111】
(3) 組換えタンパク質の発現および精製
J. Biol. Chem., 275, 8355−8360 (2000) に記載のようにして、E. coli BL21細胞における組換えタンパク質の発現及び精製を行った。
すべてリコビナントタンパク質は大腸菌 (E. coli)で発現させた。
それぞれ発現用プラスミドを保有する大腸菌BL−21 株を 2%(w/v)グルコース及び100 μg/mlアンピシリン含有 2×YT培地中で培養し、600nm での光学密度が0.7 になるまで生育せしめる。融合タンパク質の発現は、0.1 mMイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシドを添加することにより誘導し、37℃で2 〜3 時間培養した。500 mlの培養物から得られた菌体を0.5 M NaCl, 1 mMジチオスレイトール及び10 mM Tris−HCl (pH 7.5) 液90 ml 中に懸濁し、次に10分間ソニケーションした。ソニケートされた生成物に10%(w/v) Triton X−100 液 10 mlを加え、4 ℃で30分間撹拌し、次に15,000×g で30分間遠心処理した。得られた上清液中の組換えタンパク質は、ラクトース−アガロースカラム(生化学工業株式会社、日本、東京)またはグルタチオン−セファロースカラム(Amersham Pharmacia Biotech)によるアフィニティクロマトグラフィーによって精製した。GST 部分を除去するために、アフィニティ精製融合タンパク質はトロンビンによって消化し、放出されたGST 部分はグルタチオン−セファロースアフィニティクロマトグラフィーによって除去した。タンパク質濃度は、BCA タンパク質アッセイ試薬(Pierce)およびウシ血清アルブミンを標準として用いて決定した。
【0112】
(4) フロンタルアフィニティクロマトグラフィー(FAC)
ガレクチン類は、ガレクチン−9(Gal−9) に関して記載された(M.Sato et al., Glycobiology, 12: 191−197 (2002)) ようにして固相化された。ガレクチン−8のN−端側CRD 及びC−端側CRD のそれぞれと、オリゴサッカライド類との相互作用につき、FAC 解析をした。リコンビナントタンパク質を0.2 M NaCl及び0.1 M ラクトースを含有する0.1 M NaCO液 (pH 8.3) に溶解し、 Hi−Trap NHS− 活性化カートリッジカラム (Amersham Pharmacia Biotech。 Co. Ltd.)に結合せしめた(操作は、カラム販売業者の指示する操作法に従って行った) 。カラムは氷上で冷却し、予め氷上で冷却しておいたガレクチン溶液を少なくとも1分間以上の時間をかけて徐々に注入した。氷上で15分間反応させた後、室温(約22〜23℃)でさらに15分間反応させた。過剰量のエタノールアミンでもって室温で1時間処理してブロッキングした後、0.5 M NaClで良く洗った。次にEDTA−PBS (1 mM EDTA, 20 mMリン酸ナトリウム, pH7.2, 150mM NaCl)で洗浄した。ガレクチンを固定化したマトリックスをカートリッジから取り出し、ステンレス製のカラム (4 x 10 mm)に詰めた。従来から知られたような方法(例えば、Kasi et al., J. Chromatogr., 376: 33−47 (1986); Hirabayashi et al., J. Chromatogr. A, 890: 261−271 (2000); Arata et al., J. Biol. Chem., 276: 3068−3077 (2001)) でもって、アナライト(ピリジルアミノオリゴサッカライド類)の溶出容積を決定し、Kd値を計算して求めた。
フロンタルアフィニティクロマトグラフィー技術は、Hirabayashi et al., J.Chromatogr. A, 890, 261−271 (2000) 及びArata et al., J. Biol. Chem., 276: 3068−3077 (2001) に記載の方法を参考にして行い、固定化GST−ガレクチン−8NT及び固定化GST−ガレクチン−8CTに対するオリゴサッカライド類のピリジルアミノ(PA)誘導体の結合親和性を測定して決定した。各種の糖タンパク質由来N−グリカン類並びに糖脂質由来のグリカン類を試験した。FAC 解析に使用したPA−オリゴサッカライド類を表1に示す。
【0113】
【表1】
Figure 2004215612
【0114】
表1において、アノマー炭素、すなわち1位は右側に配置してあり、2, 3, 4 ... と時計回りに配置してある。そして太い線はα結合を示し、細い線はβ結合を示している。
【0115】
【表2】
Figure 2004215612
【0116】
実験に使用したカラムの詳細については、表2に示す通りであり、同時に実施された各種レクチン類及びガレクチン類についても併せてそこに示してある。
表2中、[Availability]は、次式: Bt (mol)/immobilized galectin (g)/molecular weight (g/mol)×100%により計算した。それぞれの濃度解析でのWoolf−Hofstee−typeプロットの結果得られたラインの[Reliability] を示す。固定化には、マッシュルームのフルーティングボディから精製されたA. cylindracea galectin を使用した。
本発明において、フロンタルアフィニティクロマトグラフィー及び各種オリゴ糖化合物を使用して、ガレクチン−8をリガンドとしているアフィニティ用担体に加えて、ガレクチン−8のN−末端側CRD をリガンドとしているアフィニティ用担体及びC−末端側CRD をリガンドとしているアフィニティ用担体を使用して、糖鎖結合特異性につき詳細な解析を行った。フロンタルアフィニティクロマトグラフィー(FAC) 解析を行った結果、次のような点でGal−8 の糖鎖結合における性状は、Gal−3 におけるそれに類似していることが解明された:
(1) 他のガレクチン類(例えば、Gal−1 やGal−7)が高い結合活性を示している複合体型N−グリカン類に対しては比較的低い親和性を示した。
(2) これに対して、両方のガレクチン(Gal−3及びGal−8)は、N−アセチルラクトサミンに対して高い親和性を示した(例えば、(LacNAc)(LN5) に対してはGal−3 のKd値は0.19μM で、Gal−8 のKd値は1.6 μM である)。
(3) Gal−3 とGal−8 の両者は、ある種の糖脂質型グリカン類に対して特別に親和性を示した。こうしたグリカン類としては、Galiliペンタサッカライド(Gal−3 では、0.68μM のKd値で、Gal−8 では8.8 μM のKd値)、A−ヘキササッカライド(Gal−3 では、0.63μM のKd値で、Gal−8 では3.3 μM のKd値)、B−テトラサッカライド(Gal−3 では、1.6 μM のKd値で、Gal−8 では9.6 μM のKd値)などが挙げられる。
【0117】
【表3】
Figure 2004215612
【0118】
表3はPA−オリゴサッカライド類とガレクチン類のフロンタルアフィニティクロマトグラフィーにより決定されたKd値を示す。表3中、データは20℃で得られたもので、解離定数(Kd値) はμM で示してある。データは37℃で得られたものである。ND: 未決定。
ガレクチン毎の特徴をみるために、41種のグリカン類に対するアフィニティ定数(Ka値) を棒グラフにプロットしたものを、図1に示す。さらに、タンデムリピートタイプガレクチン類のN−末端側CRD 及びC−末端側CRD のそれぞれにつきアフィニティ定数(Ka値) を棒グラフにプロットしたものを、図2に示す。N−末端側CRD のKa 値を中心部に示した糖鎖の番号の左側に示し、C−末端側CRD のKa 値を糖鎖の番号の右側に示してある。図3は、糖鎖認識単位の分岐構造や繰り返し構造のアフィニティに及ぼす作用効果を示す。図3Aは、分岐構造について、図3Bは、繰り返し構造についての解析結果を示す。LNnt(表1の26の糖化合物)に対する相対的アフィニティを示してある。図3A中、それぞれ3本ある棒グラフのうち、一番左側の棒線はバイアンテナリー(biantennary) NA2 (表1の1 の糖化合物)を、真ん中の棒線はトリアンテナリー(triantennary) NA3(表1の2 の糖化合物)を、一番左側の棒線はテトラアンテナリー(tetraantennary) NA4(表1の4 の糖化合物)を表し、図3B中、それぞれ3本ある棒グラフのうち、一番左側の棒線はオリゴラクトサミンのLN2 (表1の39の糖化合物)を、真ん中の棒線は LN3(表1の40の糖化合物)を、一番左側の棒線はLN5 (表1の41の糖化合物)を表す。なお、LNntに対する相対的アフィニティのより高いものが、Ka値からみてのアフィニティがより高いことと意味するわけではない。
【0119】
ラクトース/ラクトサミン・ユニットを置換することによるガレクチンのアフィニティに及ぼす影響を、図4に示す。図4中、A. LNFP−I/LNT はα1−2Fucでもっての置換の効果を調べたもので、LNT (表1の27の糖化合物)に対するLNFP−I(表1の28の糖化合物)の相対的アフィニティを示し、B. Galili/LNnTはα1−3Galでもっての置換の効果を調べたもので、LNnT(表1の26の糖化合物)に対するGaliliペンタサッカライド(表1の25の糖化合物)の相対的アフィニティを示し、C. A−hexa/LNFP−Iはα1−3GalNAc でもっての置換の効果を調べたもので、LNFP−I(表1の28の糖化合物)に対するA−ヘキササッカライド(表1の32の糖化合物)の相対的アフィニティを示し、D. GM3/GA3はα2−3NeuAcでもっての置換の効果を調べたもので、GA3 (表1の13の糖化合物)に対するGM3 (表1の16の糖化合物)の相対的アフィニティを示したものである。
【0120】
また、それぞれのガレクチンのCRD の糖鎖結合性状を表4に示す。表4中、結合様式(すなわち、タイプ1かタイプ2であるか)、A/B 型、あるいはどのような置換か(すなわち、α1−2Fuc, α1−3Gal, α1−3GalNAc か、あるいはα2−3NeuAcであるのか)により糖鎖結合性状がどのようになるかをみるため、関連したペアーの相対的アフィニティを表2に示したKd値に基づいて計算し、問題のガレクチンはA−テトラサッカライド及びB−テトラサッカライドの両方に非常に低い親和性しか示さなかったし、A−テトラサッカライドに対するアフィニティは検知できなかったし、B−テトラサッカライドに対するアフィニティは検知できなかったし、測定されなかった。
【0121】
【表4】
Figure 2004215612
【0122】
他方、Gal−3 とGal−8 との間で完全に異なっている特性としては次のようなものが挙げられる:
Gal−8 は酸性サッカライド類に対して大変強く結合し、GM3 に対しては1.5μMのKd値を、GD1aに対しては0.64μM のKd値を示す。これに対し、Gal−3 ではそれらに対しては僅かな限られた親和性しか示さず、GM3 に対しては26μM のKd値、そしてGD1aに対しては23μM のKd値であった。
Gal−8 のそれぞれのCRD (すなわち、Gal−8N及びGal−8C) を使用してのFAC 解析の結果、これらの特徴は、N−末端側のCRD に起因するものであることが示された。何故なら、Gal−8Nは GM3及びGD1aに対して高い親和性を残しており、GM3 では0.62μM のKd値、GD1aでは0.5 μM のKd値を示したが、Gal−8Cの場合、これらの糖鎖に対しては低い親和性しか示さず、GM3 では検知できないもので、GD1aでは230 μM のKd値であった(図5)。
興味深いことには、Gal−8Nは血液型B サッカライドに対して厳格な選択性を有していた。Gal−8NはB−テトラサッカライドに対して比較的高い親和性を示す(5.9μM のKd値) 。一方で、Gal−8NはA−テトラサッカライドには全く結合しなかった。
【0123】
Gal−8CはA−及びB−テトラサッカライドに対し中程度の親和性を持っていた。
オリゴラクトサミン類((LacNAc) (LN2), (LacNAc)(LN3) 及び(LacNAc)(LN5))に対する高い親和性は、N−末端側あるいはC−末端側のいずれのCRD でも保たれていた。しかしながら、Gal−8Nの糖鎖結合性状は、明らかに異常なものであった。何故なら、Gal−8NはLN2 及びLN5 の両方にかなり高い親和性を示した(LN2では1.7 μM のKd値、LN5 では1.8 μM のKd値) が、その中間に位置するものであるLN3 に対する親和性はもっと低いもの(Kd 値 12 μM)であるからである。
同じ糖鎖結合に対する性質は、天然型(インタクト)Gal−8 でも観察された。すなわち、天然型Gal−8 のKd値は、LN2 では3.5 μM 、LN3 では9.6 μM 、そしてLN5 では1.6 μM であった。他方、Gal−8CはLN2, LN3及びLN5 に対しては普通の挙動を示し、LN2 では23μM のKd値、LN3 では9.0 μM のKd値、そしてLN5 では2.1 μM のKd値であった。
別の特筆される特徴としては、Gal−8N(Gal−8C ではない) はラクト−N−フコペンタオース−I (lacto−N−fucopentaose−I; LNFP−I) に対して高い親和性を示し、そのKd値は1.6 μM であった。これに対する説明としては、Gal−8Nは還元末端側のラクトース単位を認識し(130μM のKd値) 、それに対する親和性はGalβ1−4(Fucα1−3)GlcNAcβ1−3 でもって置換することにより強く高められるということである。
【0124】
一つのN−末端側CRD を結合した変異ガレクチン−8タンパク質(ガレクチン−8N)及び一つのC−末端側CRD を結合した変異ガレクチン−8タンパク質(ガレクチン−8C)を使用することで、それぞれのCRD に特異的に結合する物質をスクリーニングすることが可能であり、該スクリーニングの結果得られた物質は、ガレクチン−8の活性を制御できる物質として有用で、医薬などへの利用可能性を有している。本発明で人工的に作製されたGal−8 CRD、すなわち、Gal−8N及びGal−8Cが、野生型ガレクチン−8の有する生物活性制御物質のスクリーニング用剤として有用であると考えられる。
【0125】
ガレクチン−8は強力な血液凝集活性を示すことが知られていたが、最近強力な好中球接着誘導能を持っており、Gal−8のC末端CRD がインテグリンαM に結合し、一方ガレクチン−8のN末端CRD がproMMP−9に結合し、さらにproMMP−9を活性化し、活性型MMP−9 産生を促進すること、またガレクチン−8のC末端CRD は例えば好中球などにおけるスーパーオキシド産生を促進する活性を有していることが見出されていることから、本発明の固相化 Gal−8N やGal−8Cを利用して、その各Gal−8 CRD が認識・結合することの同定された糖鎖構造を指標に、生体内の糖タンパク質、糖脂質などの糖鎖を含有する物質のスクリーニングを行い、上記したようなガレクチン−8の生物活性を含めた活性に関与する物質を同定することが可能となる。また、同定された糖鎖構造に特異的に結合する抗体を使用してガレクチン−8の生物活性を制御することも可能となり、ガレクチン−8に関連する応答・症状・疾患の研究・解析・測定、診断、予防、治療などの目的で様々な試薬、方法などに係わる技術の提供を行うことができる。
【0126】
【発明の効果】
本発明により、ガレクチン−8の活性発現において、ガレクチン−8のCRD への糖鎖の結合が重要な役割を果たしていることが見出された。したがって、ガレクチン−8のCRD を利用して、フロンタルアフィニティクロマトグラフィー技術を適用するなどして、ガレクチン−8が認識する糖鎖を同定する手段が提供され、該同定された糖鎖についての情報を利用して、ガレクチン−8の生物活性を解明し、さらにガレクチン−8の生物活性を促進する化合物及び抑制する化合物をスクリーニングできる。また該同定された糖鎖に対する抗体は、ガレクチン−8の生物活性に着いての研究、さらには医薬としても期待できる。
かくして、ガレクチン−8に関連し、癌、免疫、アレルギーなどの疾患用医薬品や治療法の開発に有用である。
本発明は、前述の説明及び実施例に特に記載した以外も、実行できることは明らかである。上述の教示に鑑みて、本発明の多くの改変及び変形が可能であり、従ってそれらも本件添付の請求の範囲内のものである。
【0127】
【配列表】
Figure 2004215612
Figure 2004215612
Figure 2004215612

【図面の簡単な説明】
【図1】各種ガレクチン類、すなわち、哺乳動物ガレクチン類(ヒトガレクチン−1(Gal−1),ラットガレクチン−2(Gal−2),ヒトガレクチン−3(Gal−3),ヒトガレクチン−7(Gal−7), Gal−8, ヒトガレクチン−9(Gal−9));トリガレクチン類(ニワトリ14−kDaガレクチン(C14),ニワトリ16−kDaガレクチン(C16)); 線虫ガレクチン類(C. elegans 32−kDa ガレクチン(LEC−1), C. elegans 16−kDaガレクチン(LEC−6)); カイメンガレクチン類(Geodia cydonium ガレクチンGC1, Geodia cydoniumガレクチンGC2); 及びキノコガレクチン(Agrocybe cylindracea ガレクチン(ACG))の、41種のグリカン類に対する各アフィニティ定数(Ka値) をプロットした棒グラフである。
【図2】タンデムリピートタイプガレクチン類のN−末端側CRD (左側)及びC−末端側CRD (右側)のそれぞれにつき、41種のグリカン類に対する各アフィニティ定数(Ka値) をプロットした棒グラフである。
【図3】糖鎖認識単位の分岐構造(図3のA)や繰り返し構造(図3のB)の、ガレクチン類のアフィニティに及ぼす作用効果を示すため、LNnt(26)に対する相対的アフィニティを棒グラフにして示してある。図3A中、それぞれ3本ある棒グラフのうち、一番左側の棒線はバイアンテナリー(biantennary) NA2(1)を、真ん中の棒線はトリアンテナリー(triantennary) NA3(2) を、一番左側の棒線はテトラアンテナリー(tetraantennary) NA4(4) を表し、図3B中、それぞれ3本ある棒グラフのうち、一番左側の棒線はオリゴラクトサミンのLN2(39) を、真ん中の棒線は LN3(40)を、一番左側の棒線はLN5(41) を表す。
【図4】ラクトース/ラクトサミン・ユニットを置換することによるガレクチン類のCRD のアフィニティに及ぼす影響を示す棒グラフである。A. LNFP−I/LNT はα1−2Fucでの置換の効果を調べたもので、LNT(27)に対するLNFP−I(28)の相対的アフィニティを、B. Galili/LNnTはα1−3Galでの置換の効果を調べたもので、LNnT(26)に対するGaliliペンタサッカライド(25)の相対的アフィニティを、C. A−hexa/LNFP−Iはα1−3GalNAc での置換の効果を調べたもので、LNFP−I(28)に対するA−ヘキササッカライド(32)の相対的アフィニティを、D. GM3/GA3はα2−3NeuAcでの置換の効果を調べたもので、GA3(13) に対するGM3(16) の相対的アフィニティを示したものである。

Claims (13)

  1. ガレクチン−8(galectin−8; Gal−8)、Gal−8のN−末端糖鎖認識ドメイン(carbohydrate recognition domain: CRD)又はGal−8のC−末端CRD を固相化したことを特徴とする担体。
  2. 請求項1記載の担体を使用し、ガレクチン−8が認識する糖鎖あるいはそのアナログをスクリーニングすることを特徴とするスクリーニング法。
  3. 請求項2記載のスクリーニング法で得られ且つガレクチン−8に結合活性を有する物質を含有することを特徴とするガレクチン−8活性阻害剤又は制御剤。
  4. 請求項1記載の担体を使用し、ガレクチン−8の生物学的活性を促進または阻害する化合物のスクリーニング方法およびスクリーニングキット。
  5. 請求項2記載のスクリーニング法で得られ且つガレクチン−8に結合活性を有する物質を含有することを特徴とする医薬。
  6. (a) ガレクチン−8のN−末端CRD を有し且つC−末端CRD を有していない変異タンパク質及び(b) ガレクチン−8のC−末端CRD を有し且つN−末端CRD を有していない変異タンパク質から成る群から選ばれたものであることを特徴とするポリペプチド又はその塩。
  7. 請求項6記載のポリペプチドをコードする塩基配列を有することを特徴とする核酸。
  8. 請求項7記載の核酸を含有することを特徴とするベクター。
  9. 請求項7記載の核酸あるいは請求項8記載のベクターで形質転換されたものであることを特徴とする宿主細胞。
  10. 請求項9記載の宿主細胞を栄養培地中で培養し、該宿主細胞において請求項6記載のポリペプチドを発現せしめ、該発現されたポリペプチドを回収することを特徴とする請求項6記載のポリペプチドの製造法。
  11. 請求項2記載のスクリーニング法で得られ且つガレクチン−8が認識する糖鎖あるいはそのアナログに対する抗体。
  12. (i) ガレクチン−8が認識する糖鎖あるいはそのアナログ及び(ii)ガレクチン−8が認識する糖鎖あるいはそのアナログに対する抗体又はその模倣体
    から成る群から選ばれたものを含有することを特徴とするガレクチン−8の生物学的活性を促進または阻害する剤。
  13. ガレクチン−8が認識する糖鎖あるいはそのアナログに対する抗体又はその模倣体を含有し、ガレクチン−8と同等の生物学的活性を持つ、あるいは該活性の一部を持つ、あるいは該活性の一部を欠く、又は該活性の一部若しくは全部を阻害することを特徴とする剤。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2007332136A (ja) * 2006-05-19 2007-12-27 National Institute Of Advanced Industrial & Technology 新規なガレクチン−糖鎖結合体、ガレクチン活性調節剤
JP2013056932A (ja) * 2006-05-19 2013-03-28 National Institute Of Advanced Industrial Science & Technology 新規なガレクチン−糖鎖結合体、ガレクチン活性調節剤
CN114544826A (zh) * 2020-11-24 2022-05-27 重庆医科大学 检测血浆中组氨酸的试剂在制备抑郁症检测试剂盒中的用途

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