JP2004214483A - ペルチェ素子及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】熱伝導性が良いのみならず、水分子の内部に侵入することをも阻止することができるペルチェ素子及びその製造方法を提供しようとする。
【解決手段】互いに対向しており、且つ、両方とも電極層(211,221)の内面を有する一対の基板(21,22)で、複数のN型とP型との半導体(231,232)を交互に配列してなる略平面状の熱電素子(23)を挟んでなるペルチェ素子(2)において、前記一対の基板は、いずれも、前記内面の電極層から外面へと、順次に、所定金属の陽極酸化物からなる金属酸化層(212,222)と、前記所定金属からなる金属層(213,223)とを更に備えていることを特徴とするペルチェ素子を提供する。
【選択図】 図3
【解決手段】互いに対向しており、且つ、両方とも電極層(211,221)の内面を有する一対の基板(21,22)で、複数のN型とP型との半導体(231,232)を交互に配列してなる略平面状の熱電素子(23)を挟んでなるペルチェ素子(2)において、前記一対の基板は、いずれも、前記内面の電極層から外面へと、順次に、所定金属の陽極酸化物からなる金属酸化層(212,222)と、前記所定金属からなる金属層(213,223)とを更に備えていることを特徴とするペルチェ素子を提供する。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ペルチェ素子及びその製造方法に関し、もっと詳しくはペルチェ効果を用いて加熱・冷却するペルチェ素子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のペルチェ素子1は、図1に示すように、それらの内面が互いに対向している一対の基板11,12と、前記一対の基板11,12間に挟まれている略平面状の熱電素子13とからなる。前記一対の基板11,12は、いずれも、外面から前記内面へと、順次に、アルミナからなるセラミック板111,121と、溶接により前記熱電素子13と電気的に接触できるように前記セラミック板111,121の内面に敷設されていて、外部から前記熱電素子13へ電流を導入する所定パターンの電極層112,122とを備えてなる。前記熱電素子13は、複数のP型とN型との半導体131,132を交互に配列してなる。
【0003】
それにより、ペルチェ効果により前記一対の基板11,12の間に温度差を生じ、且つ、前記セラミック板111及び121をそれぞれ吸熱面(冷面)及び放熱面(熱面)として加熱したり冷却したりすることができる。例えば、CPUなどの電子デバイスを冷却しようとする場合、前記ペルチェ素子1の吸熱面(セラミック板111)を前記CPUと密接させることにより、前記CPUの発熱を前記吸熱面(セラミック板111)から前記放熱面(セラミック板121)へ導き、前記ペルチェ素子1の前記放熱面(セラミック板121)に設けられているヒートシンクまたは扇風機を介して外部へ発散することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このようなペルチェ素子1は、加熱したり冷却したりする機能を有するが、その最外層がアルミナ粉末などから焼結してなるセラミック板であるため、粒径が約10μmである粒子同士間に約4乃至5nmほどの大きい隙間が散在しているので、多孔性になって、図2に示すように、水分子100(半径=約0.193nm)が前記セラミック板111,121の隙間14を経由して前記電極層112,122乃至前記熱電素子13内に侵入し、前記電極層112,122及び前記熱電素子13のP型とN型の半導体131,132を酸化して腐食し、ペルチェ素子1の使用寿命を短くさせるという欠点がある。
【0005】
その外、セラミック板は、熱伝導性が良くない上、硬くて脆く、変形性が悪いので、不意の衝突を受けると、割れ易いのみならず、加熱または冷却しようとする対象に固定する方法としては粘着より他の方法がないという欠点もある。
【0006】
上記に鑑みて、本発明の目的は、上記の欠点を解消することができるペルチェ素子及びその製造方法を提供しようとすることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、発明者は、互いに対向しており、且つ、両方とも電極層の内面を有する一対の基板で、複数のN型とP型との半導体を交互に配列してなる略平面状の熱電素子を挟んでなるペルチェ素子において、前記一対の基板は、いずれも、前記内面の電極層から外面へと、順次に、所定金属の陽極酸化物からなる金属酸化層と、前記所定金属からなる金属層とを更に備えていることを特徴とするペルチェ素子を提供する。
【0008】
この構成によるペルチェ素子は、その最外層が金属材からなるので、材質が従来の多孔性のセラミック板より遥かに緻密で、水分子が前記金属層を経由して前記電極層乃至前記熱電素子内に侵入することができない上、熱伝導性が高いので、処理対象をもっと速く加熱したり冷却したりすることができる。その外、金属の延性が高くて、加工性がよいので、割れ難いのみならず、加熱または冷却しようとする対象に固定する方法として粘着の外にねじ合いなどの方法もある。即ち、使用寿命も熱伝導効果も加工性も従来より良いペルチェ素子を提供することができる。
【0009】
そして、前記一対の基板それぞれの前記金属層の外面に、更に、前記所定金属の陽極酸化物からなる金属酸化層を最外層として備えていることが好ましい。それにより、水分子の侵入を阻止すると共に水分子による金属層の腐食を避けることができる。また、前記一対の基板中の一つは、外周縁に沿って複数の孔付きラグが形成してあるものであることが好ましい。それにより、複数のボルトによりペルチェ素子を加熱・冷却しようとする対象上にねじ付けることができる。
【0010】
なお、上記のペルチェ素子に基づいて、発明者は、更に、ペルチェ素子の製造方法を提供する。該ペルチェ素子の製造方法は、基板として一対の金属板を用意する基板用意工程と、前記一対の金属板それぞれの少なくとも一面に陽極酸化処理を施して金属酸化層を形成する陽極酸化処理工程と、前記一対の金属板それぞれの一金属酸化層上に電極層を形成する電極層形成工程と、前記一対の金属板それぞれの電極層を内面とし、複数のP型とN型との半導体を交互に配列してなる略平面状の熱電素子を挟んでペルチェ素子を組立てる組立工程とからなる。
【0011】
この製造方法は、基板として材質が緻密である金属板を使用するので、水分子が基板を経由して電極層乃至熱電素子内に侵入することができない上、金属の熱伝導性がセラミックより遥かに高いので、処理対象をもっと速く加熱したり冷却したりすることができる。
【0012】
そして、前記基板用意工程における一対の金属板は、いずれも、上下2面を有するものであり、前記陽極酸化処理工程における陽極酸化処理は、前記金属板の上下2面中の1面だけに対して行い、または前記金属板の上下2面に対しても行うことができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のペルチェ素子及びその製造方法の好ましい実施形態を詳しく説明する。なお、以下の説明においては、そのサイズに拘わらず、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0014】
図3は、本発明のペルチェ素子の第1の実施形態を示す断面図である。図示のように、このペルチェ素子2は、互いに対向しており、且つ、両方とも所定パターンの電極層211,221の内面を有する一対の基板21,22で、複数のP型とN型との半導体231,232を交互に配列してなる略平面状の熱電素子23を挟んでなる。もっと詳しく説明すると、前記一対の基板21,22は、いずれも、前記内面の電極層211,221から外面へと、順次に、絶縁層として所定金属の陽極酸化物からなる金属酸化層212,222と、前記所定金属からなる金属層213,223とを更に備えている。
【0015】
前記電極層211,221は、金属材からなり、且つ前記熱電素子23のP型及びN型の半導体231,232と電気的に接触している。前記所定の金属として、アルミニウム、マグネシウム、アルミニウム合金及びマグネシウム合金からなる群より選ばれたものを使用することができる。
【0016】
それにより、図3における配線のように、前記電極層221から前記熱電素子23へ電流を導入すると、ペルチェ効果により前記一対の基板21,22の間に温度差を生じ、且つ、前記基板21,22の金属層213及び223の面をそれぞれ吸熱面(冷面)及び放熱面(熱面)として加熱したり冷却したりすることができる。
【0017】
この構成によるペルチェ素子2は、図4に示すように、その最外層が金属材からなるので、材質が従来の多孔性のセラミック板より遥かに緻密で、水分子200が前記金属層213,223及び前記金属酸化層212,222を経由して前記電極層211,221乃至前記熱電素子23内に侵入することができない上、熱伝導性が高いので、処理対象をもっと速く加熱したり冷却したりすることができる。
【0018】
以下、前記ペルチェ素子2の製造方法を詳しく説明する。図5に示すように、前記ペルチェ素子2は、主として基板用意工程31と、基板処理工程32と、陽極酸化処理工程33と、酸化層表面封孔工程34と、電極層形成工程35と、組立工程36とを経由して製造した。まず、前記基板用意工程31において、基板としてそれぞれ上下2面を有する一対のアルミニウム製金属板21,22(以下、アルミニウム板と略称)を用意した。そして、前記基板処理工程32において、前記一対のアルミニウム板21,22にポリシング、噴砂、研磨、脱脂、水洗(純水やイオン交換水、蒸留水)、超音波水洗などの前処理を行い、前記一対のアルミニウム板21,22の表面を平らにさせると共に洗浄した。続いて、前記陽極酸化処理工程33において、前記一対のアルミニウム板21,22を基礎溶液とバッファ液と金属塩とからなる電解液により所定時間の電解処理をして陽極酸化処理を施し、前記一対のアルミニウム板それぞれの上下2面中の1面に金属酸化層(アルミナ層)212,222を形成した。
【0019】
前記基礎溶液は、硫酸、クロム酸、蓚酸、燐酸などが挙げられる有機酸及び/または無機酸を含んでいた。電解処理の条件は各種の基礎溶液によって異なるが、基礎溶液として0.5〜10重量%の蓚酸を使用する場合、直流電流50〜400V、電流密度5〜100A・dm2、電解温度−10〜12℃、電解時間10〜60分のような電解条件を、5〜25重量%の硫酸を使用する場合、直流電流10〜200V、電流密度5〜50A・ft2、電解温度−5〜70℃、電解時間10〜240分のような電解条件をそれぞれ採用することができる。また、表面に陽極酸化処理した金属板21,22は、金属酸化層212,222と金属層213,223との二層の構成を有する。
【0020】
そして、前記陽極酸化した一対のアルミニウム板21,22を洗浄した後、前記酸化層表面封孔工程34において、高温水蒸気封孔法により前記金属酸化層212,222の多孔性表面をシールした。また、前記高温水蒸気封孔法の代わりに、沸騰水封孔法や蒸気封孔法、金属塩基封孔法、加圧容器封孔法などの方法を使用してもよい。次いで、前記電極層形成工程35において、物理蒸着(PVD)法によって、前記陽極酸化した一対のアルミニウム板それぞれの金属酸化層212,222上に金属材からなる所定パターンの電極層211,221を形成した。前記物理蒸着法として、例えばスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法などが挙げられるが、それに限らず、印刷や溶接などの周知の方法を使用してもよい。前記金属材は、例えば、銅、アルミニウムなどが挙げられる。
【0021】
そして、前記組立工程36において、前記一対のアルミニウム板それぞれの電極層211,221を内面とし、前記電極層211,221が前記熱電素子23と電気的に接触するように複数のP型とN型との半導体231,232を交互に配列してなる略平面状の熱電素子23を挟んでペルチェ素子2を組立てた。また、前記実施形態において一対のアルミニウム板を例として説明するが、それに限らず、マグネシウム板、アルミニウム合金板またはマグネシウム合金板を使用してもよい。
【0022】
図6は、本発明のペルチェ素子の第2の実施形態を示す。この実施形態の前記第1の実施形態との異なる点は、前記一対の基板21,22それぞれの前記金属層213,223の外面に、更に、前記所定金属の陽極酸化物からなる金属酸化層214,224を最外層として備えていることにある。即ち、前記一対の金属板21,22それぞれの上下2面にも金属酸化層を形成した。この第2の実施形態の製造方法の前記第1の実施形態の製造方法との異なる点は、前記陽極酸化処理工程33において、前記金属板21,22の上下2面に対しても陽極酸化処理を行い、前記酸化層表面封孔工程34において、高温水蒸気封孔法などにより前記金属板21,22それぞれの上下2面の金属酸化層212,222,214,224の多孔性表面をシールするが、前記電極層形成工程35において、前記金属板21,22それぞれの2つの金属酸化層中の一つの金属酸化層上に金属材からなる所定パターンの電極層211,221を形成したことにある。
【0023】
本発明のペルチェ素子2をCPUなどの電子デバイスの冷却に応用しようとする場合、ペルチェ素子2の吸熱面(金属板21)を前記CPU(図示せず)と密接させるように本発明のペルチェ素子2をCPU上に溶接や粘着し、または、図7に示すように、予め前記一対の基板中の一つに外周縁に沿って複数の孔付きラグ4を形成してから複数のボルト5でペルチェ素子2をCPUの上面に設けられたヒートシンク6にねじ付けることにより、前記CPUの発熱を前記吸熱面(金属板21)から前記放熱面(金属板22)へ導き、外部へ発散することができる。
【0024】
【発明の効果】
本発明のペルチェ素子は、基板として材質が緻密である金属板を使用するので、水分子が基板を経由して電極層乃至熱電素子内に侵入することができない上、金属の熱伝導性がセラミックより遥かに高いので、物体をもっと速く加熱したり冷却したりすることができる。
【0025】
以上説明した実施の形態は、あくまでも本発明の技術的内容を明らかにする意図のものにおいてなされたものであり、本発明はそうした具体例に限定して狭義に解釈されるものではなく、本発明の精神とクレームに述べられた範囲で、いろいろと変更して実施できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のペルチェ素子の構造及び配線を説明する断面図。
【図2】水分子が図1における従来のペルチェ素子のセラミック板の隙間を経由して電極層乃至熱電素子内に侵入する状況を示す説明図。
【図3】本発明のペルチェ素子の第1の実施形態の構造及び配線を説明する断面図。
【図4】前記第1の実施形態の一部拡大断面図。
【図5】前記第1の実施形態の製造方法のフローチャート。
【図6】本発明のペルチェ素子の第2の実施形態の一部拡大断面図。
【図7】本発明のペルチェ素子の応用例。
【符号の説明】
2…ペルチェ素子、21…基板、211…電極層、212…金属酸化層、
213…金属層、214…金属酸化層、22…基板、221…電極層、
222…金属酸化層、223…金属層、224…金属酸化層、
23…熱電素子、231…P型の半導体、232…N型の半導体、
200…水分子、4…孔付きラグ、5…ボルト、6…ヒートシンク。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ペルチェ素子及びその製造方法に関し、もっと詳しくはペルチェ効果を用いて加熱・冷却するペルチェ素子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のペルチェ素子1は、図1に示すように、それらの内面が互いに対向している一対の基板11,12と、前記一対の基板11,12間に挟まれている略平面状の熱電素子13とからなる。前記一対の基板11,12は、いずれも、外面から前記内面へと、順次に、アルミナからなるセラミック板111,121と、溶接により前記熱電素子13と電気的に接触できるように前記セラミック板111,121の内面に敷設されていて、外部から前記熱電素子13へ電流を導入する所定パターンの電極層112,122とを備えてなる。前記熱電素子13は、複数のP型とN型との半導体131,132を交互に配列してなる。
【0003】
それにより、ペルチェ効果により前記一対の基板11,12の間に温度差を生じ、且つ、前記セラミック板111及び121をそれぞれ吸熱面(冷面)及び放熱面(熱面)として加熱したり冷却したりすることができる。例えば、CPUなどの電子デバイスを冷却しようとする場合、前記ペルチェ素子1の吸熱面(セラミック板111)を前記CPUと密接させることにより、前記CPUの発熱を前記吸熱面(セラミック板111)から前記放熱面(セラミック板121)へ導き、前記ペルチェ素子1の前記放熱面(セラミック板121)に設けられているヒートシンクまたは扇風機を介して外部へ発散することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このようなペルチェ素子1は、加熱したり冷却したりする機能を有するが、その最外層がアルミナ粉末などから焼結してなるセラミック板であるため、粒径が約10μmである粒子同士間に約4乃至5nmほどの大きい隙間が散在しているので、多孔性になって、図2に示すように、水分子100(半径=約0.193nm)が前記セラミック板111,121の隙間14を経由して前記電極層112,122乃至前記熱電素子13内に侵入し、前記電極層112,122及び前記熱電素子13のP型とN型の半導体131,132を酸化して腐食し、ペルチェ素子1の使用寿命を短くさせるという欠点がある。
【0005】
その外、セラミック板は、熱伝導性が良くない上、硬くて脆く、変形性が悪いので、不意の衝突を受けると、割れ易いのみならず、加熱または冷却しようとする対象に固定する方法としては粘着より他の方法がないという欠点もある。
【0006】
上記に鑑みて、本発明の目的は、上記の欠点を解消することができるペルチェ素子及びその製造方法を提供しようとすることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、発明者は、互いに対向しており、且つ、両方とも電極層の内面を有する一対の基板で、複数のN型とP型との半導体を交互に配列してなる略平面状の熱電素子を挟んでなるペルチェ素子において、前記一対の基板は、いずれも、前記内面の電極層から外面へと、順次に、所定金属の陽極酸化物からなる金属酸化層と、前記所定金属からなる金属層とを更に備えていることを特徴とするペルチェ素子を提供する。
【0008】
この構成によるペルチェ素子は、その最外層が金属材からなるので、材質が従来の多孔性のセラミック板より遥かに緻密で、水分子が前記金属層を経由して前記電極層乃至前記熱電素子内に侵入することができない上、熱伝導性が高いので、処理対象をもっと速く加熱したり冷却したりすることができる。その外、金属の延性が高くて、加工性がよいので、割れ難いのみならず、加熱または冷却しようとする対象に固定する方法として粘着の外にねじ合いなどの方法もある。即ち、使用寿命も熱伝導効果も加工性も従来より良いペルチェ素子を提供することができる。
【0009】
そして、前記一対の基板それぞれの前記金属層の外面に、更に、前記所定金属の陽極酸化物からなる金属酸化層を最外層として備えていることが好ましい。それにより、水分子の侵入を阻止すると共に水分子による金属層の腐食を避けることができる。また、前記一対の基板中の一つは、外周縁に沿って複数の孔付きラグが形成してあるものであることが好ましい。それにより、複数のボルトによりペルチェ素子を加熱・冷却しようとする対象上にねじ付けることができる。
【0010】
なお、上記のペルチェ素子に基づいて、発明者は、更に、ペルチェ素子の製造方法を提供する。該ペルチェ素子の製造方法は、基板として一対の金属板を用意する基板用意工程と、前記一対の金属板それぞれの少なくとも一面に陽極酸化処理を施して金属酸化層を形成する陽極酸化処理工程と、前記一対の金属板それぞれの一金属酸化層上に電極層を形成する電極層形成工程と、前記一対の金属板それぞれの電極層を内面とし、複数のP型とN型との半導体を交互に配列してなる略平面状の熱電素子を挟んでペルチェ素子を組立てる組立工程とからなる。
【0011】
この製造方法は、基板として材質が緻密である金属板を使用するので、水分子が基板を経由して電極層乃至熱電素子内に侵入することができない上、金属の熱伝導性がセラミックより遥かに高いので、処理対象をもっと速く加熱したり冷却したりすることができる。
【0012】
そして、前記基板用意工程における一対の金属板は、いずれも、上下2面を有するものであり、前記陽極酸化処理工程における陽極酸化処理は、前記金属板の上下2面中の1面だけに対して行い、または前記金属板の上下2面に対しても行うことができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のペルチェ素子及びその製造方法の好ましい実施形態を詳しく説明する。なお、以下の説明においては、そのサイズに拘わらず、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0014】
図3は、本発明のペルチェ素子の第1の実施形態を示す断面図である。図示のように、このペルチェ素子2は、互いに対向しており、且つ、両方とも所定パターンの電極層211,221の内面を有する一対の基板21,22で、複数のP型とN型との半導体231,232を交互に配列してなる略平面状の熱電素子23を挟んでなる。もっと詳しく説明すると、前記一対の基板21,22は、いずれも、前記内面の電極層211,221から外面へと、順次に、絶縁層として所定金属の陽極酸化物からなる金属酸化層212,222と、前記所定金属からなる金属層213,223とを更に備えている。
【0015】
前記電極層211,221は、金属材からなり、且つ前記熱電素子23のP型及びN型の半導体231,232と電気的に接触している。前記所定の金属として、アルミニウム、マグネシウム、アルミニウム合金及びマグネシウム合金からなる群より選ばれたものを使用することができる。
【0016】
それにより、図3における配線のように、前記電極層221から前記熱電素子23へ電流を導入すると、ペルチェ効果により前記一対の基板21,22の間に温度差を生じ、且つ、前記基板21,22の金属層213及び223の面をそれぞれ吸熱面(冷面)及び放熱面(熱面)として加熱したり冷却したりすることができる。
【0017】
この構成によるペルチェ素子2は、図4に示すように、その最外層が金属材からなるので、材質が従来の多孔性のセラミック板より遥かに緻密で、水分子200が前記金属層213,223及び前記金属酸化層212,222を経由して前記電極層211,221乃至前記熱電素子23内に侵入することができない上、熱伝導性が高いので、処理対象をもっと速く加熱したり冷却したりすることができる。
【0018】
以下、前記ペルチェ素子2の製造方法を詳しく説明する。図5に示すように、前記ペルチェ素子2は、主として基板用意工程31と、基板処理工程32と、陽極酸化処理工程33と、酸化層表面封孔工程34と、電極層形成工程35と、組立工程36とを経由して製造した。まず、前記基板用意工程31において、基板としてそれぞれ上下2面を有する一対のアルミニウム製金属板21,22(以下、アルミニウム板と略称)を用意した。そして、前記基板処理工程32において、前記一対のアルミニウム板21,22にポリシング、噴砂、研磨、脱脂、水洗(純水やイオン交換水、蒸留水)、超音波水洗などの前処理を行い、前記一対のアルミニウム板21,22の表面を平らにさせると共に洗浄した。続いて、前記陽極酸化処理工程33において、前記一対のアルミニウム板21,22を基礎溶液とバッファ液と金属塩とからなる電解液により所定時間の電解処理をして陽極酸化処理を施し、前記一対のアルミニウム板それぞれの上下2面中の1面に金属酸化層(アルミナ層)212,222を形成した。
【0019】
前記基礎溶液は、硫酸、クロム酸、蓚酸、燐酸などが挙げられる有機酸及び/または無機酸を含んでいた。電解処理の条件は各種の基礎溶液によって異なるが、基礎溶液として0.5〜10重量%の蓚酸を使用する場合、直流電流50〜400V、電流密度5〜100A・dm2、電解温度−10〜12℃、電解時間10〜60分のような電解条件を、5〜25重量%の硫酸を使用する場合、直流電流10〜200V、電流密度5〜50A・ft2、電解温度−5〜70℃、電解時間10〜240分のような電解条件をそれぞれ採用することができる。また、表面に陽極酸化処理した金属板21,22は、金属酸化層212,222と金属層213,223との二層の構成を有する。
【0020】
そして、前記陽極酸化した一対のアルミニウム板21,22を洗浄した後、前記酸化層表面封孔工程34において、高温水蒸気封孔法により前記金属酸化層212,222の多孔性表面をシールした。また、前記高温水蒸気封孔法の代わりに、沸騰水封孔法や蒸気封孔法、金属塩基封孔法、加圧容器封孔法などの方法を使用してもよい。次いで、前記電極層形成工程35において、物理蒸着(PVD)法によって、前記陽極酸化した一対のアルミニウム板それぞれの金属酸化層212,222上に金属材からなる所定パターンの電極層211,221を形成した。前記物理蒸着法として、例えばスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法などが挙げられるが、それに限らず、印刷や溶接などの周知の方法を使用してもよい。前記金属材は、例えば、銅、アルミニウムなどが挙げられる。
【0021】
そして、前記組立工程36において、前記一対のアルミニウム板それぞれの電極層211,221を内面とし、前記電極層211,221が前記熱電素子23と電気的に接触するように複数のP型とN型との半導体231,232を交互に配列してなる略平面状の熱電素子23を挟んでペルチェ素子2を組立てた。また、前記実施形態において一対のアルミニウム板を例として説明するが、それに限らず、マグネシウム板、アルミニウム合金板またはマグネシウム合金板を使用してもよい。
【0022】
図6は、本発明のペルチェ素子の第2の実施形態を示す。この実施形態の前記第1の実施形態との異なる点は、前記一対の基板21,22それぞれの前記金属層213,223の外面に、更に、前記所定金属の陽極酸化物からなる金属酸化層214,224を最外層として備えていることにある。即ち、前記一対の金属板21,22それぞれの上下2面にも金属酸化層を形成した。この第2の実施形態の製造方法の前記第1の実施形態の製造方法との異なる点は、前記陽極酸化処理工程33において、前記金属板21,22の上下2面に対しても陽極酸化処理を行い、前記酸化層表面封孔工程34において、高温水蒸気封孔法などにより前記金属板21,22それぞれの上下2面の金属酸化層212,222,214,224の多孔性表面をシールするが、前記電極層形成工程35において、前記金属板21,22それぞれの2つの金属酸化層中の一つの金属酸化層上に金属材からなる所定パターンの電極層211,221を形成したことにある。
【0023】
本発明のペルチェ素子2をCPUなどの電子デバイスの冷却に応用しようとする場合、ペルチェ素子2の吸熱面(金属板21)を前記CPU(図示せず)と密接させるように本発明のペルチェ素子2をCPU上に溶接や粘着し、または、図7に示すように、予め前記一対の基板中の一つに外周縁に沿って複数の孔付きラグ4を形成してから複数のボルト5でペルチェ素子2をCPUの上面に設けられたヒートシンク6にねじ付けることにより、前記CPUの発熱を前記吸熱面(金属板21)から前記放熱面(金属板22)へ導き、外部へ発散することができる。
【0024】
【発明の効果】
本発明のペルチェ素子は、基板として材質が緻密である金属板を使用するので、水分子が基板を経由して電極層乃至熱電素子内に侵入することができない上、金属の熱伝導性がセラミックより遥かに高いので、物体をもっと速く加熱したり冷却したりすることができる。
【0025】
以上説明した実施の形態は、あくまでも本発明の技術的内容を明らかにする意図のものにおいてなされたものであり、本発明はそうした具体例に限定して狭義に解釈されるものではなく、本発明の精神とクレームに述べられた範囲で、いろいろと変更して実施できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のペルチェ素子の構造及び配線を説明する断面図。
【図2】水分子が図1における従来のペルチェ素子のセラミック板の隙間を経由して電極層乃至熱電素子内に侵入する状況を示す説明図。
【図3】本発明のペルチェ素子の第1の実施形態の構造及び配線を説明する断面図。
【図4】前記第1の実施形態の一部拡大断面図。
【図5】前記第1の実施形態の製造方法のフローチャート。
【図6】本発明のペルチェ素子の第2の実施形態の一部拡大断面図。
【図7】本発明のペルチェ素子の応用例。
【符号の説明】
2…ペルチェ素子、21…基板、211…電極層、212…金属酸化層、
213…金属層、214…金属酸化層、22…基板、221…電極層、
222…金属酸化層、223…金属層、224…金属酸化層、
23…熱電素子、231…P型の半導体、232…N型の半導体、
200…水分子、4…孔付きラグ、5…ボルト、6…ヒートシンク。
Claims (13)
- 互いに対向しており、且つ、両方とも電極層の内面を有する一対の基板で、複数のP型とN型との半導体を交互に配列してなる略平面状の熱電素子を挟んでなるペルチェ素子において、
前記一対の基板は、いずれも、前記内面の電極層から外面へと、順次に、所定金属の陽極酸化物からなる金属酸化層と、前記所定金属からなる金属層とを更に備えていることを特徴とするペルチェ素子。 - 前記一対の基板それぞれの前記金属層の外面に、更に、前記所定金属の陽極酸化物からなる金属酸化層を最外層として備えていることを特徴とする請求項1に記載のペルチェ素子。
- 前記所定の金属として、アルミニウム、マグネシウム、アルミニウム合金及びマグネシウム合金からなる群より選ばれたものを使用したことを特徴とする請求項1または2に記載のペルチェ素子。
- 前記一対の基板中の一つは、外周縁に沿って複数の孔付きラグが形成してあるものであることを特徴とする請求項1または2に記載のペルチェ素子。
- 基板として一対の金属板を用意する基板用意工程と、
前記一対の金属板それぞれの少なくとも一面に陽極酸化処理を施して金属酸化層を形成する陽極酸化処理工程と、
前記一対の金属板それぞれの一金属酸化層上に電極層を形成する電極層形成工程と、
前記一対の金属板それぞれの電極層を内面とし、複数のP型とN型との半導体を交互に配列してなる略平面状の熱電素子を挟んでペルチェ素子を組立てるペルチェ素子組立工程とからなることを特徴とするペルチェ素子の製造方法。 - 前記基板用意工程における一対の金属板は、いずれも、上下2面を有するものであり、
且つ、前記陽極酸化処理工程における陽極酸化処理は、前記金属板の上下2面中の1面だけに対して行うことを特徴とする請求項5に記載のペルチェ素子の製造方法。 - 前記基板用意工程における一対の金属板は、いずれも、上下2面を有するものであり、
且つ、前記陽極酸化処理工程における陽極酸化処理は、前記金属板の上下2面に対しても行うことを特徴とする請求項5に記載のペルチェ素子の製造方法。 - 前記基板用意工程における一対の金属板は、いずれも、アルミニウム板、マグネシウム板、アルミニウム合金板及びマグネシウム合金板からなる群より選ばれることを特徴とする請求項5に記載のペルチェ素子の製造方法。
- 前記基板用意工程と前記陽極酸化処理工程との間に、ポリシング、噴砂、研磨、脱脂、水洗、超音波水洗などにより前記一対の金属板を前処理する基板処理工程を更に有することを特徴とする請求項5に記載のペルチェ素子の製造方法。
- 前記陽極酸化処理工程において、前記一対の金属板を基礎溶液とバッファ液と金属塩とからなる電解液に置いて所定時間の電解処理をして前記金属酸化層を形成することを特徴とする請求項5に記載のペルチェ素子の製造方法。
- 前記基礎溶液は、有機酸及び/または無機酸を含んでいることを特徴とする請求項10に記載のペルチェ素子の製造方法。
- 前記陽極酸化処理工程と前記電極層形成工程との間に、前記金属酸化層の多孔性表面をシールする酸化層表面封孔工程を更に有することを特徴とする請求項5に記載のペルチェ素子の製造方法。
- 前記基板用意工程において、前記一対の金属板の一つとして、外周縁に沿って複数の孔付きラグが形成してある金属板を用意することを特徴とする請求項5に記載のペルチェ素子の製造方法。
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JP2013251333A (ja) * | 2012-05-30 | 2013-12-12 | Fujifilm Corp | 熱電変換素子の製造方法 |
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2003
- 2003-01-07 JP JP2003000993A patent/JP2004214483A/ja active Pending
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