JP2004214416A - 化学的機械的研磨パッドおよびこれを用いた半導体装置の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ダイヤモンドコンディショナーによるコンディショニングを行わなくとも研磨面の平坦性を有意に悪化させないで研磨を行い得る研磨パッドを提供する。
【解決手段】研磨パッドは、グラファイトを主成分とする。
【選択図】 なし
【解決手段】研磨パッドは、グラファイトを主成分とする。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、化学的機械的研磨パッドおよびこれを用いた半導体装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体装置の製造分野では、素子の微細化および高密度化がより一層進むにつれ、半導体ウエハ表面を平坦化する技術が種々研究開発されている。その中でも、化学的機械的研磨(CMP)技術は、フォトリソグラフィーによる微細化限界を克服し得るものとして脚光を浴びている。簡単に述べると、CMPは、CMPスラリーを半導体ウエハ表面に供給しながら、研磨パッドにより半導体ウエハ表面を研磨する技術である。このようなCMP技術は、例えば、層間絶縁層の平坦化、素子間分離絶縁層の形成、埋め込み(ダマシン)配線の形成に使用されている。
【0003】
かかるCMP技術において、従来、研磨パッドとして、発泡樹脂、特に発泡ポリウレタンが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、発泡ポリウレタンにより構成される研磨パッドは、市販もされている(例えば、ロデール・ニッタ社から入手し得るIC1000シリーズパッド)。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−244223号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような発泡ポリウレタンからなる研磨パッドは、CMPスラリー中の研磨粒子を保持するため、さらには研磨面に詰まった研磨副生物や研磨粒子を除去するために、研磨の前後および研磨中に、研磨面をダイヤモンドホイール(ダイヤモンドコンディショナー)により機械的に削り、粗面化する必要がある。しかしながら、このコンディショニング(ドレッシング)により、ポリウレタン発泡体表面は、毛羽立つことにより柔軟化し、被研磨面の平坦性を悪化させる。また、このコンディショニングにより、研磨パッドが削られるので、消耗が大きく、研磨パッドの寿命が短くなる。
【0006】
従って、本発明は、ダイヤモンドコンディショナーによるコンディショニングを行わなくとも被研磨面の平坦性を有意に悪化させることなく研磨を行い得る研磨パッド、およびこれを用いた半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の1つの側面によれば、グラファイトを主成分とすることを特徴とする化学的機械的研磨パッドが提供される。
【0008】
また、本発明の他の側面によれば、半導体基板上に形成された化学的機械的研磨対象層を、化学的機械的研磨用スラリーの存在下、研磨パッドを用いて研磨することを包含し、前記研磨パッドとしてグラファイトを主成分とする化学的機械的研磨パッドを用いることを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態をより詳しく説明する。
【0010】
本発明の1つの実施の形態による研磨パッドは、グラファイトを主成分とする。従来の発泡ポリウレタン研磨パッドは疎水性であるのに対し、グラファイトは、親水性であるので、水系CMPスラリーとの親和性が良好であり、従来発泡ポリウレタン研磨パッドの使用開始時に行っていたダイヤモンドコンディショナーを用いてパッド表面を削り取るようなコンディショニングを行う必要がない。また、グラファイトは、それ自体柔らかいので、被研磨面にスクラッチを発生させ難い。さらにグラファイトは、化学的に不活性であるので、研磨スラリー中の薬剤成分と反応することがなく、それ自体の劣化を生じないし、また研磨特性も実質的に一定に保たれ得る。
【0011】
グラファイトは、多孔質体の形態にあることが好ましい。多孔質グラファイトは、上記グラファイトの利点を有するほか、その表面の凹凸構造により、上記ダイヤモンドコンディショナーを用いたコンディショニングによる粗面化を行うことなくCMPスラリー中の研磨粒子を保持することができる。また、研磨副生物や研磨粒子凝集物も多孔質グラファイトの表面の凹凸がこれらを吸収し、研磨副生物や凝集研磨粒子による被研磨面のスクラッチの発生を抑制し得る。さらに、多孔質グラファイトは、研磨副生物や研磨粒子により目詰まりした場合でも、高圧流体の噴流の吹き付けにより容易に研磨副生物や研磨粒子を除去することができる。高圧流体としては、水ジェットまたは水とガス(例えば、空気)の混合ジェットを使用することができる。
【0012】
本発明の1つの実施の形態において、多孔質グラファイト研磨パッドは、平坦な研磨面を再生させるため、および/または表面凹凸に詰まった研磨副生物や研磨粒子を除去するために、ダイヤモンドコンディショナーを用いたコンディショニングに供してもよい。しかしながら、その場合でも、従来発泡ポリウレタン研磨パッドに対して行われていたように1枚の半導体ウエハの研磨終了毎にコンディショニングを行う必要はなく、例えば25枚の半導体ウエハの研磨終了毎にコンディショニングを行えば十分である。
【0013】
以上のように、グラファイト研磨パッドは、ダイヤモンドコンディショナーによるコンディショニングを行う必要がないか、あるいはかかるコンディショニングを行う場合でも、その頻度は低くてよいため、可使寿命が大幅に向上する。また、コンディショニングによる厚さの減少をさほど考慮しなくてもよいことから、特に厚さについて制限されず所望の厚さのグラファイト研磨パッドを使用することができる。
【0014】
多孔質グラファイトは、グラファイト材料粒子の焼結により製造することができ、種々の見かけ比重を有するものが市販されている。多孔質グラファイトは、2〜4μmの平均気孔径を有し得る。また、グラファイトは、通常、100ppm以下の金属不純物(アルカリ金属その他の金属)合計含有率を有するものとして入手できるので、半導体基板に悪影響を与えない。
【0015】
本発明の1つの実施の形態において、多孔質グラファイトは、1.8以下の見かけ比重を有することが好ましい。1.8以下の見かけ比重を有する多孔質グラファイトは、被研磨面におけるスクラッチの発生をより一層抑制し、被研磨面のディッシングを一層減少させることができる。多孔質グラファイトは、研磨パッドとしての機械的強度の観点から、1.7以上の見かけ比重を有することが好ましい。
【0016】
本発明の実施の形態に係るグラファイトパッドは、例えば、層間絶縁層の平坦化、素子間分離絶縁層の形成、ダマシン配線の形成に使用することができる。
【0017】
本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、半導体基板上に形成されたCMP対象層を、CMPスラリーの存在下、研磨パッドを用いて研磨することを包含する。研磨パッドとして、上記グラファイトを主成分とする研磨パッドを用いる。
【0018】
CMP対象層は、半導体基板上に形成された層間絶縁材料層、半導体基板内に形成された素子分離溝(トレンチ)内を埋め、かつ半導体基板表面上に形成された素子分離用絶縁材料層、半導体基板上に形成された絶縁層内に設けられた少なくとも1つの凹部(ヴィアホール、配線溝)を埋め、かつ絶縁層上にわたって形成された金属材料層(ダマシン配線材料層)、さらには、ダマシン配線材料層と絶縁層との間に形成されるバリヤー材料層が含まれる。
【0019】
上記各絶縁材料層は、無機絶縁材料または有機絶縁材料で形成することができる。無機絶縁材料には、二酸化シリコン、フッ素添加二酸化シリコン(SiOF)、多孔質水素化シルセスキオキサンスピン塗布ガラス(HSQ−SOG)、ブラックダイヤモンドが含まれる。有機絶縁材料には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素添加ポリイミド樹脂、ベンゾシクロブテン(BCB)が含まれる。これら絶縁材料は、それぞれの性質により、CVDまたはスピン塗布により形成することができる。これらの絶縁材料うち、二酸化シリコンおよび二酸化シリコンよりも誘電率の低い低誘電率材料がしばしば使用される。
【0020】
また、上記ダマシン配線材料としては、アルミニウム、銅、タングステンまたはそれらの合金を例示することができる。ダマシン配線材料は、スパッタ、CVD、メッキ、またはそれらの組合せ等それ自体既知の堆積法により形成することができる。
【0021】
上記バリヤー材料としては、チタン、モリブデン、ニオブ、タンタル、バナジウム等の金属、これら金属を主成分とする合金、これら金属の窒化物、ホウ化物もしくは酸化物で形成することができ、これら材料は単層または2種以上の積層構造として形成することができる。
【0022】
CMP対象層の研磨は、研磨パッドとして上記グラファイトを主成分とする研磨パッドを用いること以外は、通常のCMP技術を用いて行うことができる。使用するCMPスラリーは、CMP対象層に応じて適宜選択することができる。CMPスラリーの選択は、当業者の範囲内のものである。例えば、二酸化シリコンやブラックダイヤモンド等の絶縁材料に対しては、シリカ粒子またはセリア粒子を研磨粒子として含有するCMPスラリーを用いることができる。銅等のダマシン配線材料に対しては、シリカ粒子またはアルミナ粒子を研磨粒子として含有するCMPスラリーを用いることができる。また、バリヤー材料に対しては、シリカ粒子を研磨粒子として含有するCMPスラリーを用いることができる。
【0023】
CMPスラリーは、樹脂粒子を含有することが好ましい。グラファイトは、それ自体柔らかいので、スクラッチを発生させ得ないが、異物や凝集した研磨粒子あるいは研磨副生物が大きいと、それらがもたらすスクラッチ発生に対する影響はグラファイトパッドの表面の凹凸では吸収しきれない。しかしながら、CMPスラリーに樹脂粒子を添加すると、樹脂粒子がクッションとなり、また上記大きなスクラッチ原因粒子に対しスペーサとなってスクラッチを減少させ得る。樹脂粒子としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)粒子、ポリスチレン粒子を用いることができる。樹脂粒子は、通常、0.05μm〜0.3μmの平均一次粒径を有し、CMPスラリーに0.01〜2重量%の割合で含めることができる。
【0024】
図1は、本発明の1つの実施の形態に係る半導体装置の製造方法を実施する際に使用し得る高圧水による洗浄システムを備えたCMP装置の一例を概略的に示すものである。
【0025】
図1に示すCMP装置10は、回転可能な円板状プラテン(ターンテーブル)11を備え、このプラテンは、矢印で示すように、その回転軸11aに接続されたモータ12により軸回りに回転可能である。プラテン11の上面には、本発明の実施の形態に係る研磨パッド13が載置されている。半導体ウエハSWは、例えば真空吸着によりトップリング14に保持されてその研磨すべき面が研磨パッド13に押圧される。トップリング14は、揺動可能であり、かつその回転軸14aに接続されたモータおよび昇降シリンダ(ともに図示せず)により、矢印で示すように、軸14a回りに回転可能であるとともに、昇降可能とされている。研磨パッド13に対する半導体ウエハSWの押し付け圧は、昇降シリンダにより調節される。
【0026】
研磨パッド13の上方で、その半径方向にわたってジェットノズルアーム15が横方向に延びている。ジェットノズルアーム15は、プラテン11の外側で垂直方向下方に延びる支持部15aに連接され、この支持部15aは、矢印で示すように、その回りに回転可能とされている。ジェットノズルアーム15内には、共通の流体流路15bが設けられており、この流体流路15bと連通して複数(図1では6個)のジェットノズル16が下方に延出している。流体流路15bに脱イオン水のような純水を送るためのチューブ17が流体流路15bのほぼ中央に接続されている。純水は、ポンプ18によって加圧され、チューブ17を通り、流体流路15bを経て、各ジェットノズル16から噴出され、研磨パッド13の洗浄を行う。ポンプ18による純水の加圧力は、5〜30kg/cm2とすることができる。
【0027】
また、研磨パッド13のほぼ中心上方には、CMPスラリーSLを供給するためのCMPスラリー供給機構19が設けられている。
【0028】
CMPに際し、半導体ウエハSWをトップリング14に保持させ、ウエハの被研磨面をトップリング14で研磨パッド13に押し付ける。スラリー供給機構19からCMPスラリーSLを研磨パッド13上に供給しながら、プラテン11とトップリング14(従って、半導体ウエハSW)を同じ回転方向に回転させる。通常、加工圧力(半導体ウエハSWの押し付け圧)は、100〜500gf/cm2、トップリング回転数は、10〜150rpm、プラテン回転数は、30〜150rpm、CMPスラリーの供給流量は、50〜300mL/分であり得る。研磨終了後、研磨に使用した研磨パッド13の領域をジェットノズルアーム15の下に位置させ、ジェットノズル16から純水を噴出させて研磨パッド13を洗浄する。チューブ17に、純水に加えて空気等のガスを供給すれば、ジェットノズル16から水とガスの混合ジェットを噴出させることができる。
【0029】
図2は、本発明の1つの実施の形態に係る層間絶縁層の平坦化工程を含む半導体装置の製造方法を工程順に説明するための概略断面図である。
【0030】
図2(A)に示すように、種々の半導体素子(図示せず)が集積形成されているシリコン基板のような半導体基板21上に第1の層間絶縁層22を形成する。第1の層間絶縁層22は、例えば酸化シリコンで形成することができ、酸化シリコンは、熱酸化層であり得る。あるいは、この熱酸化層の上に低誘電率層をさらに形成してもよい。熱酸化膜あるいは低誘電率層は、グラファイトを主成分とする研磨パッドを用いたCMPに供することによって、表面を平坦化することができる。第1の層間絶縁層22の上に、常法に従って、第1の配構造23を形成する。図2において、第1の配線構造23は、2つの配線層231および232により構成されるものとして示されている。この第1の配線構造23を覆って、第2の層間絶縁材料を層24として堆積する。第2の層間絶縁材料は、例えば酸化シリコンであり得、CVD法により堆積させることができる。
【0031】
ついで、層間絶縁材料層24をグラファイト主成分とする研磨パッドを用いたCMPに供して層間絶縁材料層24の表面を平坦化する。こうして、平坦化された表面を有する第2の層間絶縁材料からなる第2の層間絶縁層241が形成される(図2(B))。この第2の層間絶縁層241の上に、第2の配線構造(図示せず)を形成することができる。
【0032】
図3は、本発明の1つの実施の形態に係る素子分離工程を含む半導体装置の製造方法を工程順に説明するための概略断面図である。
【0033】
図3(A)に示すように、シリコン基板等の半導体基板31上に絶縁層32を形成する。この絶縁層32は、シリコンの熱酸化膜からなるパッド酸化膜321とその上に例えばCVD法により形成された窒化シリコン膜からなるマスク窒化膜322により構成することができる。
【0034】
ついで、図3(B)に示すように、通常のリソグラフィー技術およびドライエッチングを用いて、絶縁層32を介して半導体基板31内に素子分離溝(トレンチ)を形成する(図3においては、2つのトレンチ31aおよび31bを見ることができる)。
【0035】
次に、図3(C)に示すように、トレンチ31aおよび31bを埋め、かつ絶縁層32の頂表面上にわたって絶縁材料を堆積する。得られる絶縁材料層33は、トレンチ31aおよび31bの外部にも形成される。絶縁材料層33は、高密度プラズマCVD法のようなCVD法等それ自体既知の堆積法により形成することができる。絶縁材料層33は、トレンチ31aおよび31bの深さに対して50〜250nm程度積み増した厚さに形成することができる。
【0036】
ついで、図3(D)に示すように、絶縁材料層33に対して、本発明の実施の形態に係るグラファイトを主成分とする研磨パッドを用いたCMPを適用する。絶縁材料層33は、絶縁層32の頂表面と直角の方向に研磨され、絶縁層32上の部分が除去される(絶縁層32の表面が露出される)。このCMPにより研磨されずにトレンチ31aおよび31b内に残った絶縁材料層33の部分が、素子分離層331および332を形成する。最後に、ウエットエッチング等の既知の手法により、残存する絶縁層32を除去する。
【0037】
図4は、本発明の1つの実施の形態に係る埋め込み(ダマシン)配線の形成工程を含む半導体装置の製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【0038】
図4(A)に示すように、種々の半導体素子(図示せず)が集積形成されているシリコン基板等の半導体基板41上に形成された絶縁層42に少なくとも1つの配線溝(図4においては、2つの配線溝42aおよび42bを見ることができる)を形成する。各配線溝は、製造される所望の最終半導体装置に依存して、0.12〜100μmの幅、0.1〜2μmの深さを有し得る。絶縁層42は、100〜2000nmの厚さに形成することができる。
【0039】
配線溝42aおよび42bの内壁面および絶縁層42の頂表面上に、配線金属の拡散を防止するために、バリヤー材料の層43を形成することができる。バリヤー材料層13は、0.5〜60nmの厚さに形成することができる。
【0040】
次に、図4(B)に示すように、配線溝42aおよび42bを埋め、かつバリヤー材料層43の頂表面上にわたって配線金属材料を堆積する。得られる配線金属材料層44は、配線溝42aおよび42bの外部にも形成される。配線金属材料層44は、スパッタ、CVD、メッキ等それ自体既知の堆積法により形成することができる。配線金属材料層44は、絶縁層12の頂表面上において、600〜3000nmの厚さに形成することができる。
【0041】
ついで、配線金属材料層44に対して、本発明の実施の形態に係る研磨パッドを用いたCMPを適用する。金属配線材料層44は絶縁層12の頂表面と直角の方向に研磨される。この研磨は、バリヤー材料層43上の金属配線材料層部分が除去されるまで(配線溝42aおよび42bの外部のバリヤー材料層43の部分の表面が露出するまで)行われる。こうして、図4(C)に示すように、配線溝42aおよび42b内には、金属配線材料層14の部分44aおよび44bがそれぞれ残る。
【0042】
最後に、配線溝42aおよび42bの外部のバリヤー材料層43の部分と金属配線材料層44の残存部分44aおよび44bの表面部を研磨除去するために、本発明の実施の形態に係る研磨パッドを用いたCMPを適用する。このCMPには、上記金属配線材料層44のCMPに用いたスラリーと異なるCMPスラリーを用いることができる。このCMPの結果配線溝42aおよび42b内に残った配線金属材料が埋め込み配線層441および442を形成する。また、このCMPの結果配線溝42aおよび42b内にそれぞれ残ったバリヤー材料が配線溝42aおよび42bのそれぞれの内壁と埋め込み配線層441および442それぞれとの間のバリヤー層431および432をそれぞれ形成する(図4(D))。
【0043】
以上、本発明の種々の実施の形態を説明したが、本発明はそれら実施の形態に限定されるものではない。また、上述した種々の実施の形態の2つまたはそれ以上を組み合わせることができることはいうまでもない。
【0044】
【実施例】
以下本発明を実施例により説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0045】
実施例1〜4、比較例1〜3
径8インチのシリコン基板に厚さ1μmのシリコン熱酸化膜を形成し、このシリコン熱酸化膜を各種研磨パッド上でシリカスラリーを用いて研磨した。
【0046】
研磨パッドとして、(1)ロデール・ニッタ社製IC−1000/SUBA−4(発泡ポリウレタンの2層パッド;以下、「IC−1000パッド」)、(2)見かけ比重1.9の多孔質グラファイトパッド(以下、「グラファイトパッド1」)、(3)見かけ比重1.85の多孔質グラファイトパッド(以下、「グラファイトパッド2」)、(4)見かけ比重1.8の多孔質グラファイトパッド(以下、「グラファイトパッド3」)、(5)見かけ比重1.72の多孔質グラファイトパッド(以下、「グラファイトパッド4」)、または(6)見かけ比重3.1のアルミナパッドを使用した。グラファイトパッド1〜4およびアルミナパッドの厚さは、それぞれ、6mmであった。シリカスラリーとしては、JSR社製CMS−1101を純水で3倍に希釈したものを使用した。また、研磨条件は、以下の通りであった。
【0047】
研磨圧力 :400gf/cm2
研磨プラテン回転数:30rpm
基板回転数 :30rpm。
【0048】
IC−1000パッドについては、#200ダイヤモンドコンディショナーを用い、押し付け圧150Nで15秒間のコンディショニングを基板1枚おきに行った(比較例1)。グラファイトパッド1〜4およびアルミナパッドについては、供給流量2L/分の脱イオン水と供給流量20L/分の空気を混合した水/空気混合ジェットを研磨プラテン半径に配置したノズルから15秒間吹き付け、表面を洗浄した。なお、別のIC−1000パッドについては、入手したままのパッド表面を#200ダイヤモンドコンディショナーで3分間コンディショニングした後、基板1枚おきに、グラファイトパッド1〜4について行った水/空気混合ジェットによる洗浄を行った。研磨時間は、1分間と5分間であり、いずれの研磨パッドでも、処理した基板は10枚であった。それぞれの場合における熱酸化膜の研磨速度と、被研磨表面に発生したスクラッチの数(KLA−Tencor社製測定器KLA−2139を使用)を測定した。結果(平均値)を下記表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1に示す結果からわかるように、グラファイトパッド1〜4を用いた場合、水/空気混合ジェットによる洗浄を行っただけでも、ダイヤモンドコンディショナーによるコンディショニングを行ったIC−1000パッドを用いた場合(比較例1)と同等あるいはそれ以上の研磨速度が達成されている。グラファイトパッドのうちでも、見かけ比重が1.8以下のもの(グラファイトパッド3および4)を用いた場合には、IC−1000パッドを用いた場合よりも約1.5倍以上高い研磨速度が得られている(実施例3および4)。
【0051】
また、スクラッチ数について見ても、グラファイトパッド1〜4を用いた場合、水/空気混合ジェットによる洗浄を行っただけでも、ダイヤモンドコンディショナーによるコンディショニングを行ったIC−1000パッドを用いた場合(比較例1)と同等あるいはそれ以下に抑えられていることがわかる。
【0052】
なお、IC−1000パッドについては、水/空気混合ジェットによる洗浄だけを行った場合、研磨速度が大幅に低下し、スクラッチ数も多いことがわかる。
【0053】
これらの結果から、研磨速度については、グラファイトパッドが研磨粒子の保持性能が良好であり、見かけ比重が1.8以下の多孔質グラファイトパッドは研磨粒子の保持性能が一層向上することを示唆している。見かけ比重が3.1のアルミナパッドは、空孔率がグラファイトパッド4よりも高いと推測されるが、研磨速度がIC−1000パッドを用いた場合の研磨速度の1/2にも満たず、5分間の研磨ではさらに研磨速度が低下している。これは、アルミナパッドは、シリカ粒子により目詰まりしやすいことによると考えられる。また、グラファイトパッドを用いると、スクラッチが大幅に減少しているが、これは、グラファイト自体が非常に柔らかい材料であるために被研磨面にスクラッチがつきにくくなっているからであると考えられる。このことは、非常に硬いアルミナパッドを使用したときに、スクラッチ数が多くなっていることからも裏付けられる。
【0054】
さらに、ダイヤモンドコンディショナーによりコンディショニングを行ったIC−1000パッドは、基板1枚処理毎に1.6μmずつ薄くなってしまった。しかしながら、水/空気混合ジェットによる洗浄を行ったグラファイトパッド3は、パッドの消耗量は多く見積もっても基板1枚処理毎に0.1μmであり、グラファイトパッドは寿命が一層長くなることがわかる。
【0055】
実施例5、比較例4
径8インチのシリコン基板上に厚さ5nmのシリコン熱酸化膜を形成した後、この熱酸化膜上に厚さ120nmの窒化シリコン膜を形成した。ついで、通常のリソグラフィーとドライエッチングを用いて、このシリコン基板内に窒化シリコン膜と熱酸化膜を介して深さ400nmのトレンチを複数形成した。これらのトレンチを埋め、かつ窒化シリコン膜の頂表面上にわたって酸化シリコン層をHDP−CVDにより形成した。HDP−CVD酸化シリコン層の厚さは、トレンチ底部から垂直方向に測定して500nmであった。
【0056】
ついで、窒化シリコン膜上のHDP−CVD酸化シリコン層部分が除去されるまでHDP−CVD酸化シリコン層をCMPに供した。このCMPに際し、研磨パッドとして、IC−1000パッドまたはグラファイトパッド3を使用し、JSR製CMS−4301セリアスラリーを脱イオン水で10倍に薄めた研磨剤スラリー(供給流量190mL/分)とJSR製CMS−4302界面活性剤水溶液(供給流量8mL/分)を同時に研磨パッド上に供給した。研磨条件は、以下の通りであった。
【0057】
研磨圧力 :400gf/cm2
研磨プラテン回転数:100rpm
基板回転数 :100rpm。
【0058】
なお、IC−1000パッドについては、比較例1と同様にダイヤモンドコンディショニングを行い、グラファイトパッド3については、実施例3と同様の水/空気混合ジェットによる洗浄を行った。
【0059】
得られた素子分離層表面のスクラッチ数を測定するとともに、150μm×150μm素子分離領域における酸化シリコン層の厚さについて半導体基板内の最大厚と最小厚を測定した。結果を表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
表2に示す結果からわかるように、グラファイトパッドは、IC−1000パッドよりも大幅にスクラッチ数を減少させる。これは、グラファイト自体が柔らかい材料であること、および研磨粒子が被研磨面に均一に供給されることにより、研磨粒子自体や研磨副生物による凝集粒子の生成が抑制されたことによると考えられる。素子分離領域の酸化シリコン層の厚さについて見ると、素子分離溝の深さが400nmであるので、理想的には、酸化シリコン層の厚さも400nmである。IC−1000パッドを用いた場合、酸化シリコン層の最小厚が315.6nmであり、84nm程度のディッシングが生じている。これに対し、グラファイトパッドを用いた場合、酸化シリコン層の最小厚が389.6nmであり、ディッシングは10nm程度まで減少している。これは、グラファイト自体が発泡ウレタンに比べて圧縮弾性の観点から硬いこと、さらに発泡ポリウレタンに対して行われるダイヤモンドコンディショナーを用いたコンディショニングによるパッド表層の柔らかい層がグラファイトパッドでは生じないことによるものであると考えられる。
【0062】
実施例6、比較例5
径8インチのシリコン基板上に厚さ5nmのシリコン熱酸化膜を形成した後、この熱酸化膜上に層間絶縁層として厚さ500nmの酸化シリコン層をプラズマCVD法で形成した。ついで、通常のリソグラフィーとドライエッチングを用いて、このプラズマCVD酸化シリコン層内に深さ400nmで幅100μmの配線溝を複数形成した。溝間の間隔は17μmであった。これらの配線溝の表面および層間絶縁層表面上にスパッタリングによりタンタル(Ta)からなるバリヤー材料層を15nmの厚さに堆積した後、このバリヤー材料層の上にスパッタリングにより銅を80nmの厚さに堆積した。ついで、メッキにより銅を被着した。この銅メッキ層の厚さは、配線溝底部のスパッタ銅層表面から垂直方向に測定して750nmであった(銅層の合計厚さ:830nm)。
【0063】
ついで、銅層をCMPに供し、配線溝外部の銅層部分を除去し、タンタル層表面が露出したところでCMPを停止した(第1研磨工程)。このCMPに際し、研磨パッドとして、IC−1000パッドまたはグラファイトパッド3を使用し、JSR製CMS−7303アルミナスラリーとJSR社製CMS−7304錯化剤を体積比3:1で混合した混合物(供給流量100mL/分)と濃度4重量%の過硫酸アンモニウム水溶液(供給流量100mL/分)を同時に研磨パッド上に供給した。研磨条件は、以下の通りであった。
【0064】
研磨圧力 :400gf/cm2
研磨プラテン回転数:100rpm
基板回転数 :100rpm。
【0065】
なお、IC−1000パッドについては、比較例1と同様にダイヤモンドコンディショニングを行い、グラファイトパッド3については、実施例3と同様の水/空気混合ジェットによる洗浄を行った。
【0066】
得られた銅層の表面のスクラッチ数を測定するとともに、ディッシングを測定した。結果を表3に示す。
【0067】
次に、配線溝外部のタンタル層を除去するために、同様の研磨パッドを用いてCMPを行った(第2研磨工程)。用いたCMPスラリーは、JSR社製CMS−8301シリカスラリーと濃度1重量%の過酸化水素水を9:1で混合した混合物からなるものであった(供給流量200mL/分)。研磨条件は、以下の通りであった。
【0068】
研磨圧力 :250gf/cm2
研磨プラテン回転数:50rpm
基板回転数 :50rpm。
【0069】
なお、IC−1000パッドについては、比較例1と同様にダイヤモンドコンディショニングを行い、グラファイトパッド3については、実施例3と同様の水/空気混合ジェットによる洗浄を行った。
【0070】
得られたダマシン銅配線層の表面のスクラッチ数を測定するとともに、ディッシングを測定した。結果を表3に併記する。
【0071】
【表3】
【0072】
表3に示す結果からわかるように、第1研磨および第2研磨のいずれの研磨でも、グラファイトパッドは、IC−1000パッドよりもスクラッチおよびディッシングの点で優れている。
【0073】
実施例7、比較例6
実施例6で用いたCMPスラリーに平均一次粒径0.08μmのPMMA粒子を0.5重量%含有させ、これをCMPスラリーとして用いた以外は、実施例6、比較例5と同様にして、銅層およびタンタル層の研磨を行った。スクラッチ数およびディッシングについての結果を表4に示す。
【0074】
【表4】
【0075】
表4に示す結果からわかるように、特に第2研磨工程において、グラファイトパッドを用いた場合、IC−1000パッドを用いた場合に比べ、スクラッチ数が顕著に減少している。グラファイトはそれ自体柔らかく、これがスクラッチの原因となることはないものと考えられるが、異物や凝集した研磨粒子あるいは研磨副生物が大きいと、それらがもたらすスクラッチ発生に対する影響はグラファイトパッドの表面の凹凸では吸収しきれない。しかしながら、CMPスラリーに樹脂粒子を添加すると、樹脂粒子がクッションとなり、また上記大きなスクラッチ原因粒子に対しスペーサとなってスクラッチを減少させたものと考えられる。
【0076】
実施例8、比較例7
プラズマCVD酸化シリコン層を塗布法で形成したアプライドマテリアル社製のブラックダイヤモンド層に代え、CPMスラリーとして実施例7で用いた樹脂添加CMPスラリーを用いた以外は実施例6、比較例5と同様にして、銅層およびタンタル層の研磨を行った。結果を表5に示す。
【0077】
【表5】
【0078】
表5に示す結果からわかるように、第1研磨および第2研磨のいずれの研磨でも、グラファイトパッドは、IC−1000パッドよりもスクラッチおよびディッシングの点で優れている。
【0079】
実施例9、比較例8
径8インチのシリコン基板に厚さ1μmのシリコン熱酸化膜を形成し、このシリコン熱酸化膜上に、アプライドマテリアル社製のブラックダイヤモンドを塗布法により500nmの厚さに形成した。このブラックダイヤモンド層を実施例6においてタンタル層の研磨で使用したCMPスラリーと研磨条件を用いて2分間研磨した。その際の、ブラックダイヤモンド層の研磨速度とスクラッチ数を測定した。結果を表6に示す。
【0080】
【表6】
【0081】
表6に示す結果からわかるように、グラファイトパッドを用いると、低誘電率膜のスクラッチが大幅に減少するとともに、高い研磨速度が達成される。
【0082】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、ダイヤモンドコンディショナーによるコンディショニングを行わなくとも被研磨面の平坦性を有意に悪化させることなくCMP対象層の研磨を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1つの実施の形態に係る半導体装置の製造方法を実施する際に使用し得る高圧水による洗浄システムを備えたCMP装置の一例を概略的に示す図。
【図2】本発明の1つの実施の形態に係る層間絶縁層の平坦化工程を含む半導体装置の製造方法を工程順に説明するための概略断面図。
【図3】本発明の1つの実施の形態に係る素子分離工程を含む半導体装置の製造方法を工程順に説明するための概略断面図。
【図4】本発明の1つの実施の形態に係る埋め込み(ダマシン)配線の形成工程を含む半導体装置の製造方法を工程順に示す概略断面図。
【符号の説明】
11…プラテン(ターンテーブル)、13…研磨パッド、14…トップリング、15…ジェットノズルアーム、16…ジェットノズル、17…純水供給チューブ、21,31,41…半導体基板、22…第1の層間絶縁層、23…第1の配線構造、24…第2の層間絶縁材料層、32…絶縁層、31a,31b…素子分離溝、33…素子分離絶縁材料層、42…絶縁層、43…バリヤー材料層、44…ダマシン配線材料層
【発明の属する技術分野】
本発明は、化学的機械的研磨パッドおよびこれを用いた半導体装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体装置の製造分野では、素子の微細化および高密度化がより一層進むにつれ、半導体ウエハ表面を平坦化する技術が種々研究開発されている。その中でも、化学的機械的研磨(CMP)技術は、フォトリソグラフィーによる微細化限界を克服し得るものとして脚光を浴びている。簡単に述べると、CMPは、CMPスラリーを半導体ウエハ表面に供給しながら、研磨パッドにより半導体ウエハ表面を研磨する技術である。このようなCMP技術は、例えば、層間絶縁層の平坦化、素子間分離絶縁層の形成、埋め込み(ダマシン)配線の形成に使用されている。
【0003】
かかるCMP技術において、従来、研磨パッドとして、発泡樹脂、特に発泡ポリウレタンが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、発泡ポリウレタンにより構成される研磨パッドは、市販もされている(例えば、ロデール・ニッタ社から入手し得るIC1000シリーズパッド)。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−244223号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような発泡ポリウレタンからなる研磨パッドは、CMPスラリー中の研磨粒子を保持するため、さらには研磨面に詰まった研磨副生物や研磨粒子を除去するために、研磨の前後および研磨中に、研磨面をダイヤモンドホイール(ダイヤモンドコンディショナー)により機械的に削り、粗面化する必要がある。しかしながら、このコンディショニング(ドレッシング)により、ポリウレタン発泡体表面は、毛羽立つことにより柔軟化し、被研磨面の平坦性を悪化させる。また、このコンディショニングにより、研磨パッドが削られるので、消耗が大きく、研磨パッドの寿命が短くなる。
【0006】
従って、本発明は、ダイヤモンドコンディショナーによるコンディショニングを行わなくとも被研磨面の平坦性を有意に悪化させることなく研磨を行い得る研磨パッド、およびこれを用いた半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の1つの側面によれば、グラファイトを主成分とすることを特徴とする化学的機械的研磨パッドが提供される。
【0008】
また、本発明の他の側面によれば、半導体基板上に形成された化学的機械的研磨対象層を、化学的機械的研磨用スラリーの存在下、研磨パッドを用いて研磨することを包含し、前記研磨パッドとしてグラファイトを主成分とする化学的機械的研磨パッドを用いることを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態をより詳しく説明する。
【0010】
本発明の1つの実施の形態による研磨パッドは、グラファイトを主成分とする。従来の発泡ポリウレタン研磨パッドは疎水性であるのに対し、グラファイトは、親水性であるので、水系CMPスラリーとの親和性が良好であり、従来発泡ポリウレタン研磨パッドの使用開始時に行っていたダイヤモンドコンディショナーを用いてパッド表面を削り取るようなコンディショニングを行う必要がない。また、グラファイトは、それ自体柔らかいので、被研磨面にスクラッチを発生させ難い。さらにグラファイトは、化学的に不活性であるので、研磨スラリー中の薬剤成分と反応することがなく、それ自体の劣化を生じないし、また研磨特性も実質的に一定に保たれ得る。
【0011】
グラファイトは、多孔質体の形態にあることが好ましい。多孔質グラファイトは、上記グラファイトの利点を有するほか、その表面の凹凸構造により、上記ダイヤモンドコンディショナーを用いたコンディショニングによる粗面化を行うことなくCMPスラリー中の研磨粒子を保持することができる。また、研磨副生物や研磨粒子凝集物も多孔質グラファイトの表面の凹凸がこれらを吸収し、研磨副生物や凝集研磨粒子による被研磨面のスクラッチの発生を抑制し得る。さらに、多孔質グラファイトは、研磨副生物や研磨粒子により目詰まりした場合でも、高圧流体の噴流の吹き付けにより容易に研磨副生物や研磨粒子を除去することができる。高圧流体としては、水ジェットまたは水とガス(例えば、空気)の混合ジェットを使用することができる。
【0012】
本発明の1つの実施の形態において、多孔質グラファイト研磨パッドは、平坦な研磨面を再生させるため、および/または表面凹凸に詰まった研磨副生物や研磨粒子を除去するために、ダイヤモンドコンディショナーを用いたコンディショニングに供してもよい。しかしながら、その場合でも、従来発泡ポリウレタン研磨パッドに対して行われていたように1枚の半導体ウエハの研磨終了毎にコンディショニングを行う必要はなく、例えば25枚の半導体ウエハの研磨終了毎にコンディショニングを行えば十分である。
【0013】
以上のように、グラファイト研磨パッドは、ダイヤモンドコンディショナーによるコンディショニングを行う必要がないか、あるいはかかるコンディショニングを行う場合でも、その頻度は低くてよいため、可使寿命が大幅に向上する。また、コンディショニングによる厚さの減少をさほど考慮しなくてもよいことから、特に厚さについて制限されず所望の厚さのグラファイト研磨パッドを使用することができる。
【0014】
多孔質グラファイトは、グラファイト材料粒子の焼結により製造することができ、種々の見かけ比重を有するものが市販されている。多孔質グラファイトは、2〜4μmの平均気孔径を有し得る。また、グラファイトは、通常、100ppm以下の金属不純物(アルカリ金属その他の金属)合計含有率を有するものとして入手できるので、半導体基板に悪影響を与えない。
【0015】
本発明の1つの実施の形態において、多孔質グラファイトは、1.8以下の見かけ比重を有することが好ましい。1.8以下の見かけ比重を有する多孔質グラファイトは、被研磨面におけるスクラッチの発生をより一層抑制し、被研磨面のディッシングを一層減少させることができる。多孔質グラファイトは、研磨パッドとしての機械的強度の観点から、1.7以上の見かけ比重を有することが好ましい。
【0016】
本発明の実施の形態に係るグラファイトパッドは、例えば、層間絶縁層の平坦化、素子間分離絶縁層の形成、ダマシン配線の形成に使用することができる。
【0017】
本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、半導体基板上に形成されたCMP対象層を、CMPスラリーの存在下、研磨パッドを用いて研磨することを包含する。研磨パッドとして、上記グラファイトを主成分とする研磨パッドを用いる。
【0018】
CMP対象層は、半導体基板上に形成された層間絶縁材料層、半導体基板内に形成された素子分離溝(トレンチ)内を埋め、かつ半導体基板表面上に形成された素子分離用絶縁材料層、半導体基板上に形成された絶縁層内に設けられた少なくとも1つの凹部(ヴィアホール、配線溝)を埋め、かつ絶縁層上にわたって形成された金属材料層(ダマシン配線材料層)、さらには、ダマシン配線材料層と絶縁層との間に形成されるバリヤー材料層が含まれる。
【0019】
上記各絶縁材料層は、無機絶縁材料または有機絶縁材料で形成することができる。無機絶縁材料には、二酸化シリコン、フッ素添加二酸化シリコン(SiOF)、多孔質水素化シルセスキオキサンスピン塗布ガラス(HSQ−SOG)、ブラックダイヤモンドが含まれる。有機絶縁材料には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素添加ポリイミド樹脂、ベンゾシクロブテン(BCB)が含まれる。これら絶縁材料は、それぞれの性質により、CVDまたはスピン塗布により形成することができる。これらの絶縁材料うち、二酸化シリコンおよび二酸化シリコンよりも誘電率の低い低誘電率材料がしばしば使用される。
【0020】
また、上記ダマシン配線材料としては、アルミニウム、銅、タングステンまたはそれらの合金を例示することができる。ダマシン配線材料は、スパッタ、CVD、メッキ、またはそれらの組合せ等それ自体既知の堆積法により形成することができる。
【0021】
上記バリヤー材料としては、チタン、モリブデン、ニオブ、タンタル、バナジウム等の金属、これら金属を主成分とする合金、これら金属の窒化物、ホウ化物もしくは酸化物で形成することができ、これら材料は単層または2種以上の積層構造として形成することができる。
【0022】
CMP対象層の研磨は、研磨パッドとして上記グラファイトを主成分とする研磨パッドを用いること以外は、通常のCMP技術を用いて行うことができる。使用するCMPスラリーは、CMP対象層に応じて適宜選択することができる。CMPスラリーの選択は、当業者の範囲内のものである。例えば、二酸化シリコンやブラックダイヤモンド等の絶縁材料に対しては、シリカ粒子またはセリア粒子を研磨粒子として含有するCMPスラリーを用いることができる。銅等のダマシン配線材料に対しては、シリカ粒子またはアルミナ粒子を研磨粒子として含有するCMPスラリーを用いることができる。また、バリヤー材料に対しては、シリカ粒子を研磨粒子として含有するCMPスラリーを用いることができる。
【0023】
CMPスラリーは、樹脂粒子を含有することが好ましい。グラファイトは、それ自体柔らかいので、スクラッチを発生させ得ないが、異物や凝集した研磨粒子あるいは研磨副生物が大きいと、それらがもたらすスクラッチ発生に対する影響はグラファイトパッドの表面の凹凸では吸収しきれない。しかしながら、CMPスラリーに樹脂粒子を添加すると、樹脂粒子がクッションとなり、また上記大きなスクラッチ原因粒子に対しスペーサとなってスクラッチを減少させ得る。樹脂粒子としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)粒子、ポリスチレン粒子を用いることができる。樹脂粒子は、通常、0.05μm〜0.3μmの平均一次粒径を有し、CMPスラリーに0.01〜2重量%の割合で含めることができる。
【0024】
図1は、本発明の1つの実施の形態に係る半導体装置の製造方法を実施する際に使用し得る高圧水による洗浄システムを備えたCMP装置の一例を概略的に示すものである。
【0025】
図1に示すCMP装置10は、回転可能な円板状プラテン(ターンテーブル)11を備え、このプラテンは、矢印で示すように、その回転軸11aに接続されたモータ12により軸回りに回転可能である。プラテン11の上面には、本発明の実施の形態に係る研磨パッド13が載置されている。半導体ウエハSWは、例えば真空吸着によりトップリング14に保持されてその研磨すべき面が研磨パッド13に押圧される。トップリング14は、揺動可能であり、かつその回転軸14aに接続されたモータおよび昇降シリンダ(ともに図示せず)により、矢印で示すように、軸14a回りに回転可能であるとともに、昇降可能とされている。研磨パッド13に対する半導体ウエハSWの押し付け圧は、昇降シリンダにより調節される。
【0026】
研磨パッド13の上方で、その半径方向にわたってジェットノズルアーム15が横方向に延びている。ジェットノズルアーム15は、プラテン11の外側で垂直方向下方に延びる支持部15aに連接され、この支持部15aは、矢印で示すように、その回りに回転可能とされている。ジェットノズルアーム15内には、共通の流体流路15bが設けられており、この流体流路15bと連通して複数(図1では6個)のジェットノズル16が下方に延出している。流体流路15bに脱イオン水のような純水を送るためのチューブ17が流体流路15bのほぼ中央に接続されている。純水は、ポンプ18によって加圧され、チューブ17を通り、流体流路15bを経て、各ジェットノズル16から噴出され、研磨パッド13の洗浄を行う。ポンプ18による純水の加圧力は、5〜30kg/cm2とすることができる。
【0027】
また、研磨パッド13のほぼ中心上方には、CMPスラリーSLを供給するためのCMPスラリー供給機構19が設けられている。
【0028】
CMPに際し、半導体ウエハSWをトップリング14に保持させ、ウエハの被研磨面をトップリング14で研磨パッド13に押し付ける。スラリー供給機構19からCMPスラリーSLを研磨パッド13上に供給しながら、プラテン11とトップリング14(従って、半導体ウエハSW)を同じ回転方向に回転させる。通常、加工圧力(半導体ウエハSWの押し付け圧)は、100〜500gf/cm2、トップリング回転数は、10〜150rpm、プラテン回転数は、30〜150rpm、CMPスラリーの供給流量は、50〜300mL/分であり得る。研磨終了後、研磨に使用した研磨パッド13の領域をジェットノズルアーム15の下に位置させ、ジェットノズル16から純水を噴出させて研磨パッド13を洗浄する。チューブ17に、純水に加えて空気等のガスを供給すれば、ジェットノズル16から水とガスの混合ジェットを噴出させることができる。
【0029】
図2は、本発明の1つの実施の形態に係る層間絶縁層の平坦化工程を含む半導体装置の製造方法を工程順に説明するための概略断面図である。
【0030】
図2(A)に示すように、種々の半導体素子(図示せず)が集積形成されているシリコン基板のような半導体基板21上に第1の層間絶縁層22を形成する。第1の層間絶縁層22は、例えば酸化シリコンで形成することができ、酸化シリコンは、熱酸化層であり得る。あるいは、この熱酸化層の上に低誘電率層をさらに形成してもよい。熱酸化膜あるいは低誘電率層は、グラファイトを主成分とする研磨パッドを用いたCMPに供することによって、表面を平坦化することができる。第1の層間絶縁層22の上に、常法に従って、第1の配構造23を形成する。図2において、第1の配線構造23は、2つの配線層231および232により構成されるものとして示されている。この第1の配線構造23を覆って、第2の層間絶縁材料を層24として堆積する。第2の層間絶縁材料は、例えば酸化シリコンであり得、CVD法により堆積させることができる。
【0031】
ついで、層間絶縁材料層24をグラファイト主成分とする研磨パッドを用いたCMPに供して層間絶縁材料層24の表面を平坦化する。こうして、平坦化された表面を有する第2の層間絶縁材料からなる第2の層間絶縁層241が形成される(図2(B))。この第2の層間絶縁層241の上に、第2の配線構造(図示せず)を形成することができる。
【0032】
図3は、本発明の1つの実施の形態に係る素子分離工程を含む半導体装置の製造方法を工程順に説明するための概略断面図である。
【0033】
図3(A)に示すように、シリコン基板等の半導体基板31上に絶縁層32を形成する。この絶縁層32は、シリコンの熱酸化膜からなるパッド酸化膜321とその上に例えばCVD法により形成された窒化シリコン膜からなるマスク窒化膜322により構成することができる。
【0034】
ついで、図3(B)に示すように、通常のリソグラフィー技術およびドライエッチングを用いて、絶縁層32を介して半導体基板31内に素子分離溝(トレンチ)を形成する(図3においては、2つのトレンチ31aおよび31bを見ることができる)。
【0035】
次に、図3(C)に示すように、トレンチ31aおよび31bを埋め、かつ絶縁層32の頂表面上にわたって絶縁材料を堆積する。得られる絶縁材料層33は、トレンチ31aおよび31bの外部にも形成される。絶縁材料層33は、高密度プラズマCVD法のようなCVD法等それ自体既知の堆積法により形成することができる。絶縁材料層33は、トレンチ31aおよび31bの深さに対して50〜250nm程度積み増した厚さに形成することができる。
【0036】
ついで、図3(D)に示すように、絶縁材料層33に対して、本発明の実施の形態に係るグラファイトを主成分とする研磨パッドを用いたCMPを適用する。絶縁材料層33は、絶縁層32の頂表面と直角の方向に研磨され、絶縁層32上の部分が除去される(絶縁層32の表面が露出される)。このCMPにより研磨されずにトレンチ31aおよび31b内に残った絶縁材料層33の部分が、素子分離層331および332を形成する。最後に、ウエットエッチング等の既知の手法により、残存する絶縁層32を除去する。
【0037】
図4は、本発明の1つの実施の形態に係る埋め込み(ダマシン)配線の形成工程を含む半導体装置の製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【0038】
図4(A)に示すように、種々の半導体素子(図示せず)が集積形成されているシリコン基板等の半導体基板41上に形成された絶縁層42に少なくとも1つの配線溝(図4においては、2つの配線溝42aおよび42bを見ることができる)を形成する。各配線溝は、製造される所望の最終半導体装置に依存して、0.12〜100μmの幅、0.1〜2μmの深さを有し得る。絶縁層42は、100〜2000nmの厚さに形成することができる。
【0039】
配線溝42aおよび42bの内壁面および絶縁層42の頂表面上に、配線金属の拡散を防止するために、バリヤー材料の層43を形成することができる。バリヤー材料層13は、0.5〜60nmの厚さに形成することができる。
【0040】
次に、図4(B)に示すように、配線溝42aおよび42bを埋め、かつバリヤー材料層43の頂表面上にわたって配線金属材料を堆積する。得られる配線金属材料層44は、配線溝42aおよび42bの外部にも形成される。配線金属材料層44は、スパッタ、CVD、メッキ等それ自体既知の堆積法により形成することができる。配線金属材料層44は、絶縁層12の頂表面上において、600〜3000nmの厚さに形成することができる。
【0041】
ついで、配線金属材料層44に対して、本発明の実施の形態に係る研磨パッドを用いたCMPを適用する。金属配線材料層44は絶縁層12の頂表面と直角の方向に研磨される。この研磨は、バリヤー材料層43上の金属配線材料層部分が除去されるまで(配線溝42aおよび42bの外部のバリヤー材料層43の部分の表面が露出するまで)行われる。こうして、図4(C)に示すように、配線溝42aおよび42b内には、金属配線材料層14の部分44aおよび44bがそれぞれ残る。
【0042】
最後に、配線溝42aおよび42bの外部のバリヤー材料層43の部分と金属配線材料層44の残存部分44aおよび44bの表面部を研磨除去するために、本発明の実施の形態に係る研磨パッドを用いたCMPを適用する。このCMPには、上記金属配線材料層44のCMPに用いたスラリーと異なるCMPスラリーを用いることができる。このCMPの結果配線溝42aおよび42b内に残った配線金属材料が埋め込み配線層441および442を形成する。また、このCMPの結果配線溝42aおよび42b内にそれぞれ残ったバリヤー材料が配線溝42aおよび42bのそれぞれの内壁と埋め込み配線層441および442それぞれとの間のバリヤー層431および432をそれぞれ形成する(図4(D))。
【0043】
以上、本発明の種々の実施の形態を説明したが、本発明はそれら実施の形態に限定されるものではない。また、上述した種々の実施の形態の2つまたはそれ以上を組み合わせることができることはいうまでもない。
【0044】
【実施例】
以下本発明を実施例により説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0045】
実施例1〜4、比較例1〜3
径8インチのシリコン基板に厚さ1μmのシリコン熱酸化膜を形成し、このシリコン熱酸化膜を各種研磨パッド上でシリカスラリーを用いて研磨した。
【0046】
研磨パッドとして、(1)ロデール・ニッタ社製IC−1000/SUBA−4(発泡ポリウレタンの2層パッド;以下、「IC−1000パッド」)、(2)見かけ比重1.9の多孔質グラファイトパッド(以下、「グラファイトパッド1」)、(3)見かけ比重1.85の多孔質グラファイトパッド(以下、「グラファイトパッド2」)、(4)見かけ比重1.8の多孔質グラファイトパッド(以下、「グラファイトパッド3」)、(5)見かけ比重1.72の多孔質グラファイトパッド(以下、「グラファイトパッド4」)、または(6)見かけ比重3.1のアルミナパッドを使用した。グラファイトパッド1〜4およびアルミナパッドの厚さは、それぞれ、6mmであった。シリカスラリーとしては、JSR社製CMS−1101を純水で3倍に希釈したものを使用した。また、研磨条件は、以下の通りであった。
【0047】
研磨圧力 :400gf/cm2
研磨プラテン回転数:30rpm
基板回転数 :30rpm。
【0048】
IC−1000パッドについては、#200ダイヤモンドコンディショナーを用い、押し付け圧150Nで15秒間のコンディショニングを基板1枚おきに行った(比較例1)。グラファイトパッド1〜4およびアルミナパッドについては、供給流量2L/分の脱イオン水と供給流量20L/分の空気を混合した水/空気混合ジェットを研磨プラテン半径に配置したノズルから15秒間吹き付け、表面を洗浄した。なお、別のIC−1000パッドについては、入手したままのパッド表面を#200ダイヤモンドコンディショナーで3分間コンディショニングした後、基板1枚おきに、グラファイトパッド1〜4について行った水/空気混合ジェットによる洗浄を行った。研磨時間は、1分間と5分間であり、いずれの研磨パッドでも、処理した基板は10枚であった。それぞれの場合における熱酸化膜の研磨速度と、被研磨表面に発生したスクラッチの数(KLA−Tencor社製測定器KLA−2139を使用)を測定した。結果(平均値)を下記表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1に示す結果からわかるように、グラファイトパッド1〜4を用いた場合、水/空気混合ジェットによる洗浄を行っただけでも、ダイヤモンドコンディショナーによるコンディショニングを行ったIC−1000パッドを用いた場合(比較例1)と同等あるいはそれ以上の研磨速度が達成されている。グラファイトパッドのうちでも、見かけ比重が1.8以下のもの(グラファイトパッド3および4)を用いた場合には、IC−1000パッドを用いた場合よりも約1.5倍以上高い研磨速度が得られている(実施例3および4)。
【0051】
また、スクラッチ数について見ても、グラファイトパッド1〜4を用いた場合、水/空気混合ジェットによる洗浄を行っただけでも、ダイヤモンドコンディショナーによるコンディショニングを行ったIC−1000パッドを用いた場合(比較例1)と同等あるいはそれ以下に抑えられていることがわかる。
【0052】
なお、IC−1000パッドについては、水/空気混合ジェットによる洗浄だけを行った場合、研磨速度が大幅に低下し、スクラッチ数も多いことがわかる。
【0053】
これらの結果から、研磨速度については、グラファイトパッドが研磨粒子の保持性能が良好であり、見かけ比重が1.8以下の多孔質グラファイトパッドは研磨粒子の保持性能が一層向上することを示唆している。見かけ比重が3.1のアルミナパッドは、空孔率がグラファイトパッド4よりも高いと推測されるが、研磨速度がIC−1000パッドを用いた場合の研磨速度の1/2にも満たず、5分間の研磨ではさらに研磨速度が低下している。これは、アルミナパッドは、シリカ粒子により目詰まりしやすいことによると考えられる。また、グラファイトパッドを用いると、スクラッチが大幅に減少しているが、これは、グラファイト自体が非常に柔らかい材料であるために被研磨面にスクラッチがつきにくくなっているからであると考えられる。このことは、非常に硬いアルミナパッドを使用したときに、スクラッチ数が多くなっていることからも裏付けられる。
【0054】
さらに、ダイヤモンドコンディショナーによりコンディショニングを行ったIC−1000パッドは、基板1枚処理毎に1.6μmずつ薄くなってしまった。しかしながら、水/空気混合ジェットによる洗浄を行ったグラファイトパッド3は、パッドの消耗量は多く見積もっても基板1枚処理毎に0.1μmであり、グラファイトパッドは寿命が一層長くなることがわかる。
【0055】
実施例5、比較例4
径8インチのシリコン基板上に厚さ5nmのシリコン熱酸化膜を形成した後、この熱酸化膜上に厚さ120nmの窒化シリコン膜を形成した。ついで、通常のリソグラフィーとドライエッチングを用いて、このシリコン基板内に窒化シリコン膜と熱酸化膜を介して深さ400nmのトレンチを複数形成した。これらのトレンチを埋め、かつ窒化シリコン膜の頂表面上にわたって酸化シリコン層をHDP−CVDにより形成した。HDP−CVD酸化シリコン層の厚さは、トレンチ底部から垂直方向に測定して500nmであった。
【0056】
ついで、窒化シリコン膜上のHDP−CVD酸化シリコン層部分が除去されるまでHDP−CVD酸化シリコン層をCMPに供した。このCMPに際し、研磨パッドとして、IC−1000パッドまたはグラファイトパッド3を使用し、JSR製CMS−4301セリアスラリーを脱イオン水で10倍に薄めた研磨剤スラリー(供給流量190mL/分)とJSR製CMS−4302界面活性剤水溶液(供給流量8mL/分)を同時に研磨パッド上に供給した。研磨条件は、以下の通りであった。
【0057】
研磨圧力 :400gf/cm2
研磨プラテン回転数:100rpm
基板回転数 :100rpm。
【0058】
なお、IC−1000パッドについては、比較例1と同様にダイヤモンドコンディショニングを行い、グラファイトパッド3については、実施例3と同様の水/空気混合ジェットによる洗浄を行った。
【0059】
得られた素子分離層表面のスクラッチ数を測定するとともに、150μm×150μm素子分離領域における酸化シリコン層の厚さについて半導体基板内の最大厚と最小厚を測定した。結果を表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
表2に示す結果からわかるように、グラファイトパッドは、IC−1000パッドよりも大幅にスクラッチ数を減少させる。これは、グラファイト自体が柔らかい材料であること、および研磨粒子が被研磨面に均一に供給されることにより、研磨粒子自体や研磨副生物による凝集粒子の生成が抑制されたことによると考えられる。素子分離領域の酸化シリコン層の厚さについて見ると、素子分離溝の深さが400nmであるので、理想的には、酸化シリコン層の厚さも400nmである。IC−1000パッドを用いた場合、酸化シリコン層の最小厚が315.6nmであり、84nm程度のディッシングが生じている。これに対し、グラファイトパッドを用いた場合、酸化シリコン層の最小厚が389.6nmであり、ディッシングは10nm程度まで減少している。これは、グラファイト自体が発泡ウレタンに比べて圧縮弾性の観点から硬いこと、さらに発泡ポリウレタンに対して行われるダイヤモンドコンディショナーを用いたコンディショニングによるパッド表層の柔らかい層がグラファイトパッドでは生じないことによるものであると考えられる。
【0062】
実施例6、比較例5
径8インチのシリコン基板上に厚さ5nmのシリコン熱酸化膜を形成した後、この熱酸化膜上に層間絶縁層として厚さ500nmの酸化シリコン層をプラズマCVD法で形成した。ついで、通常のリソグラフィーとドライエッチングを用いて、このプラズマCVD酸化シリコン層内に深さ400nmで幅100μmの配線溝を複数形成した。溝間の間隔は17μmであった。これらの配線溝の表面および層間絶縁層表面上にスパッタリングによりタンタル(Ta)からなるバリヤー材料層を15nmの厚さに堆積した後、このバリヤー材料層の上にスパッタリングにより銅を80nmの厚さに堆積した。ついで、メッキにより銅を被着した。この銅メッキ層の厚さは、配線溝底部のスパッタ銅層表面から垂直方向に測定して750nmであった(銅層の合計厚さ:830nm)。
【0063】
ついで、銅層をCMPに供し、配線溝外部の銅層部分を除去し、タンタル層表面が露出したところでCMPを停止した(第1研磨工程)。このCMPに際し、研磨パッドとして、IC−1000パッドまたはグラファイトパッド3を使用し、JSR製CMS−7303アルミナスラリーとJSR社製CMS−7304錯化剤を体積比3:1で混合した混合物(供給流量100mL/分)と濃度4重量%の過硫酸アンモニウム水溶液(供給流量100mL/分)を同時に研磨パッド上に供給した。研磨条件は、以下の通りであった。
【0064】
研磨圧力 :400gf/cm2
研磨プラテン回転数:100rpm
基板回転数 :100rpm。
【0065】
なお、IC−1000パッドについては、比較例1と同様にダイヤモンドコンディショニングを行い、グラファイトパッド3については、実施例3と同様の水/空気混合ジェットによる洗浄を行った。
【0066】
得られた銅層の表面のスクラッチ数を測定するとともに、ディッシングを測定した。結果を表3に示す。
【0067】
次に、配線溝外部のタンタル層を除去するために、同様の研磨パッドを用いてCMPを行った(第2研磨工程)。用いたCMPスラリーは、JSR社製CMS−8301シリカスラリーと濃度1重量%の過酸化水素水を9:1で混合した混合物からなるものであった(供給流量200mL/分)。研磨条件は、以下の通りであった。
【0068】
研磨圧力 :250gf/cm2
研磨プラテン回転数:50rpm
基板回転数 :50rpm。
【0069】
なお、IC−1000パッドについては、比較例1と同様にダイヤモンドコンディショニングを行い、グラファイトパッド3については、実施例3と同様の水/空気混合ジェットによる洗浄を行った。
【0070】
得られたダマシン銅配線層の表面のスクラッチ数を測定するとともに、ディッシングを測定した。結果を表3に併記する。
【0071】
【表3】
【0072】
表3に示す結果からわかるように、第1研磨および第2研磨のいずれの研磨でも、グラファイトパッドは、IC−1000パッドよりもスクラッチおよびディッシングの点で優れている。
【0073】
実施例7、比較例6
実施例6で用いたCMPスラリーに平均一次粒径0.08μmのPMMA粒子を0.5重量%含有させ、これをCMPスラリーとして用いた以外は、実施例6、比較例5と同様にして、銅層およびタンタル層の研磨を行った。スクラッチ数およびディッシングについての結果を表4に示す。
【0074】
【表4】
【0075】
表4に示す結果からわかるように、特に第2研磨工程において、グラファイトパッドを用いた場合、IC−1000パッドを用いた場合に比べ、スクラッチ数が顕著に減少している。グラファイトはそれ自体柔らかく、これがスクラッチの原因となることはないものと考えられるが、異物や凝集した研磨粒子あるいは研磨副生物が大きいと、それらがもたらすスクラッチ発生に対する影響はグラファイトパッドの表面の凹凸では吸収しきれない。しかしながら、CMPスラリーに樹脂粒子を添加すると、樹脂粒子がクッションとなり、また上記大きなスクラッチ原因粒子に対しスペーサとなってスクラッチを減少させたものと考えられる。
【0076】
実施例8、比較例7
プラズマCVD酸化シリコン層を塗布法で形成したアプライドマテリアル社製のブラックダイヤモンド層に代え、CPMスラリーとして実施例7で用いた樹脂添加CMPスラリーを用いた以外は実施例6、比較例5と同様にして、銅層およびタンタル層の研磨を行った。結果を表5に示す。
【0077】
【表5】
【0078】
表5に示す結果からわかるように、第1研磨および第2研磨のいずれの研磨でも、グラファイトパッドは、IC−1000パッドよりもスクラッチおよびディッシングの点で優れている。
【0079】
実施例9、比較例8
径8インチのシリコン基板に厚さ1μmのシリコン熱酸化膜を形成し、このシリコン熱酸化膜上に、アプライドマテリアル社製のブラックダイヤモンドを塗布法により500nmの厚さに形成した。このブラックダイヤモンド層を実施例6においてタンタル層の研磨で使用したCMPスラリーと研磨条件を用いて2分間研磨した。その際の、ブラックダイヤモンド層の研磨速度とスクラッチ数を測定した。結果を表6に示す。
【0080】
【表6】
【0081】
表6に示す結果からわかるように、グラファイトパッドを用いると、低誘電率膜のスクラッチが大幅に減少するとともに、高い研磨速度が達成される。
【0082】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、ダイヤモンドコンディショナーによるコンディショニングを行わなくとも被研磨面の平坦性を有意に悪化させることなくCMP対象層の研磨を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1つの実施の形態に係る半導体装置の製造方法を実施する際に使用し得る高圧水による洗浄システムを備えたCMP装置の一例を概略的に示す図。
【図2】本発明の1つの実施の形態に係る層間絶縁層の平坦化工程を含む半導体装置の製造方法を工程順に説明するための概略断面図。
【図3】本発明の1つの実施の形態に係る素子分離工程を含む半導体装置の製造方法を工程順に説明するための概略断面図。
【図4】本発明の1つの実施の形態に係る埋め込み(ダマシン)配線の形成工程を含む半導体装置の製造方法を工程順に示す概略断面図。
【符号の説明】
11…プラテン(ターンテーブル)、13…研磨パッド、14…トップリング、15…ジェットノズルアーム、16…ジェットノズル、17…純水供給チューブ、21,31,41…半導体基板、22…第1の層間絶縁層、23…第1の配線構造、24…第2の層間絶縁材料層、32…絶縁層、31a,31b…素子分離溝、33…素子分離絶縁材料層、42…絶縁層、43…バリヤー材料層、44…ダマシン配線材料層
Claims (15)
- グラファイトを主成分とすることを特徴とする化学的機械的研磨パッド。
- 前記グラファイトが、多孔質体の形態にあることを特徴とする請求項1に記載の研磨パッド。
- 前記グラファイトが、1.8以下の見かけ比重を有することを特徴とする請求項2に記載の研磨パッド。
- 前記グラファイトが、100ppm以下の金属不純物合計含有率を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の研磨パッド。
- 半導体基板上に形成された化学的機械的研磨対象層を、化学的機械的研磨用スラリーの存在下、研磨パッドを用いて研磨することを包含し、前記研磨パッドとして、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の化学的機械的研磨パッドを用いることを特徴とする半導体装置の製造方法。
- 前記化学的機械的研磨対象層が、前記半導体基板上に形成された層間絶縁材料層であることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
- 前記層間絶縁材料層が、酸化シリコンまたは低誘電率絶縁材料で形成されることを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
- 前記化学的機械的研磨対象層が、前記半導体基板内に形成された素子分離溝を埋め、かつ該半導体基板表面上に形成された素子分離用絶縁材料層であることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
- 前記素子分離用絶縁材料層が、酸化シリコンまたは低誘電率絶縁材料で形成されることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
- 前記化学的機械的研磨対象層が、前記半導体基板上に形成された絶縁層内に設けられた少なくとも1つの凹部を埋め、かつ該絶縁層上にわたって形成された金属材料層であることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
- 前記絶縁層が、酸化シリコンまたは低誘電率絶縁材料で形成されることを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
- 前記金属材料層が、アルミニウム、銅、タングステンまたはそれらの合金で形成されることを特徴とする請求項10または11に記載の製造方法。
- 前記化学的機械的研磨対象層が、前記金属材料層と前記絶縁層との間に形成されるバリヤー材料層であることを特徴とする請求項10ないし12のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記スラリーが、樹脂粒子を含有することを特徴とする請求項5ないし13のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記研磨終了後、前記研磨パッドを水ジェットまたは水とガスの混合ジェットにより洗浄することをさらに包含する請求項5ないし14のいずれか1項に記載の製造方法。
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JP2002382391A JP2004214416A (ja) | 2002-12-27 | 2002-12-27 | 化学的機械的研磨パッドおよびこれを用いた半導体装置の製造方法 |
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JP2002382391A JP2004214416A (ja) | 2002-12-27 | 2002-12-27 | 化学的機械的研磨パッドおよびこれを用いた半導体装置の製造方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2017503102A (ja) * | 2014-01-17 | 2017-01-26 | ロイヤル アドヒーシブ アンド シーランツ カナダ エルティーディーRoyal Adhesives & Sealants Canada Ltd. | 耐荷重性構造のためのフーチング基礎におけるポリウレタンフォーム |
-
2002
- 2002-12-27 JP JP2002382391A patent/JP2004214416A/ja active Pending
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