JP2004211005A - アクリル発泡体の製造方法及びアクリル発泡体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】重合性不飽和結合を有するモノマー及び重合性不飽和結合を有するモノマーの重合物からなるアクリル系シロップを主成分とし、少なくとも架橋剤と熱重合開始剤、発泡剤を添加した発泡剤含有組成物を支持体上に塗布した後、重合及び架橋させて、複素動粘度が2×102〜5×104Pa・secの状態で加熱して発泡させることを特徴とするアクリル発泡体の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アクリル発泡体の製造方法及びアクリル発泡体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、アクリル発泡体には、(1)特開平8−60600号公報及び特開平11−35784号公報に開示されているように、アクリル粉末と発泡剤を可塑剤に分散させたアクリルゾルを加熱して発泡させることにより得られるアクリル発泡体の製造方法、(2)特開平5−295150号公報に開示されているように、アクリルエマルジョンを物理的に攪拌して起泡・発泡させたものを加熱して得られるアクリル発泡体の製造方法、(3)特公平8−32435号公報に開示されているように、アクリル系モノマーに中空球体又は加熱することで膨張し中空球体となる粉末物質を充填し、これを紫外線照射することでアクリル系モノマーを重合して得られるアクリル発泡体の製造方法、(4)特開昭48−99283号公報や、特開昭49−27559号公報、特開昭56−145931号公報に開示されているように、アクリル系モノマーと重合物の混合溶液に加熱分解型の発泡剤を分散させ、これを非開放状態で重合後さらに加熱することで発泡させて得られるアクリル発泡体の製造方法が知られている。
【0003】
しかし、上記(1)の方法は、近年、内分泌撹乱物質として疑われているフタル酸エステル系可塑剤を用いていることが多く、環境面での安全性が確立していない。また、フタル酸エステル系可塑剤以外の可塑剤を用いた報告もされているものの、アクリル粉末と可塑剤の相溶性、アクリルゾルの貯蔵安定性、成形品からの可塑剤の浸み出し等の問題が解決されておらず、ほとんど実用化されていない。さらに、得られた発泡体を粘着基材として使用した場合、可塑剤の浸み出しにより十分な粘着強度を得られないという問題がある。
【0004】
(2)の方法では、アクリルエマルジョン系原料に乳化剤や起泡剤等の界面活性剤を大量に使用している為、吸水性が高く、耐水性の悪いアクリル発泡体となっている。そのため、粘着基材として用いた場合、水がかかる部位に長期間使用すると、吸水によって粘着力が低下したり、劣化してしまうため、使用部位が限定されてしまう問題がある。
【0005】
(3)の方法では、(1)で挙げた可塑剤の浸み出しや(2)で挙げた耐水性の問題を解消したアクリル発泡体となっているものの、中空球体の分散性が悪い為に大量に充填できないので、低密度の発泡体が得られない。また、中空球体の粉末が飛散しやすい点、中空球体を添加すると粘度が増大する点から製造上取り扱いが困難になるという問題もある。
【0006】
例えば、特公平8−32435号公報においては、粘度が増大し、取り扱いが困難になる為、中空球体を10重量%程度しか充填できない。中空球体を10重量%程度充填しても、見掛け密度は350kg/m3程度までしか発泡していない。これらのことから、見掛け密度を350kg/m3よりも小さくすることは、中空球体の取り扱い上困難であることが言える。
【0007】
(4)の方法においては、非開放状態における重合方法としては注型とダブルコンベア方式が挙げられるが、注型方式は非連続生産である為、生産性があまり良くない。また、使用するモノマーの揮発分がガス溜りになりやすく、気泡の粗大化を招きやすい。また、ダブルコンベア方式においてもモノマーの揮発分がガス溜りとなりやすく、均一微細な気泡になりにくい。
【0008】
【特許文献1】
特開平8−60600号公報(段落[0034],[0035])
【0009】
【特許文献2】
特開平11−35784号公報(段落[0049]〜[0054])
【0010】
【特許文献3】
特開平5−295150号公報(段落[0041])
【0011】
【特許文献4】
特公平8−32435号公報(第7頁左欄等)
【0012】
【特許文献5】
特開昭48−99283号公報(4頁右上欄8行〜4頁左下欄8行)
【0013】
【特許文献6】
特開昭49−27559号公報(4頁右上欄10行〜4頁右下欄10行)
【0014】
【特許文献7】
特開昭56−145931号公報(3頁右上欄14行〜4頁左下欄18行)
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこうした事情を考慮してなされたもので、可塑剤を使用することなく、可塑剤の浸み出しが無く、吸水性が低く、耐水性が良く、更に連続生産及び低密度化が可能で、実用に供することのできる強度を有し、均一かつ微細な気泡のアクリル発泡体の製造方法及びアクリル発泡体を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本願第1の発明に係るアクリル発泡体の製造方法は、重合性不飽和結合を有するモノマー及び重合性不飽和結合を有するモノマーの重合物からなるアクリル系シロップを主成分とし、少なくとも架橋剤と熱重合開始剤、発泡剤を添加した発泡剤含有組成物を支持体上に塗布した後、重合及び架橋させて、発泡剤含有組成物の複素動粘度が2×102〜5×104Pa・secの状態で加熱して発泡させることを特徴とする。
【0017】
本願第2の発明に係るアクリル発泡体は、上記製造方法で得られることを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明のアクリル発泡体において使用する主成分には、重合性不飽和結合を有するモノマー及び重合性不飽和結合を有するモノマーの重合物を使用する。これらの主成分に少なくとも架橋剤及び熱重合開始剤、発泡剤を添加し、重合及び架橋させながら発泡剤含有組成物の複素動粘度が2×102〜5×104Pa・secの状態で加熱して発泡させることにより得られる。
【0019】
本発明において使用されるアクリル系シロップとしては、重合性不飽和結合を有するモノマーと重合性不飽和結合を有するモノマーの重合物との混合物(溶解物)をさす。この混合物としては、重合性不飽和結合を有するモノマー成分に重合性不飽和結合を有するモノマーの重合物を溶解させた重合物−モノマー溶液及び/又は重合性不飽和結合を有するモノマーの一部を重合させた部分重合物を使用することができる。
【0020】
重合性不飽和結合を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸(シクロ)アルキルエステル、官能基含有モノマーから少なくとも一種類選択し、原料コスト面及び原料の貯蔵安定性の観点から(メタ)アクリル酸(シクロ)アルキルエステルを主成分とすることが好ましい。
【0021】
(メタ)アクリル酸(シクロ)アルキルエステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ボルニルを挙げることができる。
【0022】
官能基含有モノマーとしては、例えば水酸基含有の重合性不飽和結合を有するモノマー、グリシジル基含有の重合性不飽和結合を有するモノマー、アミノ基含有の重合性不飽和結合を有するモノマー、アミド基含有の重合性不飽和結合を有するモノマー、不飽和カルボン酸を挙げることができる。水酸基含有の重合性不飽和結合を有するモノマーの例としては、例えば(メタ)アクリル酸−2ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸とポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールとのモノエステルを挙げることができる。グリシジル基含有の重合性不飽和結合を有するモノマーの例としては、例えば(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテルを挙げることができる。
【0023】
アミノ基含有の重合性不飽和結合を有するモノマーの例としては、例えば(メタ)アクリル酸ジメチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸プロピルアミノエチルを挙げることができる。アミド基含有の重合性不飽和結合を有するモノマーの例としては、例えば(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミドを挙げることができる。不飽和カルボン酸の例としては、例えば(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸を挙げることができる。
【0024】
その他の重合性不飽和結合を有するモノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等のアクリル酸アリールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、不飽和カルボン酸の塩、不飽和カルボン酸のエステル化合物、(メタ)アクリロニトリル、ビニル化合物、スチレンを挙げることができる。
【0025】
本発明において、アクリル系シロップは、重合性不飽和結合を有するモノマーと重合性不飽和結合を有するモノマーの重合物の混合物(溶解物)として構成され、この混合物としては重合性不飽和結合を有するモノマー成分に重合性不飽和結合を有するモノマーの重合物を溶解させた重合物−モノマー溶液及び/又は重合性不飽和結合を有するモノマーの一部を重合させた部分重合物を使用することができる。
【0026】
重合性不飽和結合を有するモノマーの重合物を構成するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸(シクロ)アルキルエステル、官能基含有モノマーから少なくとも一種類選択し、原料コスト面及び原料の貯蔵安定性の観点から(メタ)アクリル酸(シクロ)アルキルエステルを主成分とすることが好ましい。
【0027】
(メタ)アクリル酸(シクロ)アルキルエステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸一2一エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ボルニルが挙げられる。
【0028】
官能基含有モノマーとしては、例えば水酸基含有の重合性不飽和結合を有するモノマー、グリシジル基含有の重合性不飽和結合を有するモノマー、アミノ基含有の重合性不飽和結合を有するモノマー、アミド基含有の重合性不飽和結合を有するモノマー、不飽和カルボン酸を挙げることができる。水酸基含有の重合性不飽和結合を有するモノマーの例としては、例えば(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸とポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールとのモノエステルを挙げることができる。
【0029】
グリシジル基含有の重合性不飽和結合を有するモノマーの例としては、例えば(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテルを挙げることができる。アミノ基含有の重合性不飽和結合を有するモノマーの例としては、例えば(メタ)アクリル酸ジメチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸プロピルアミノエチルを挙げることができる。アミド基含有の重合性不飽和結合を有するモノマーの例としては、例えば(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミドを挙げることができる。不飽和カルボン酸の例としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸を挙げることができる。
【0030】
その他の重合性不飽和結合を有するモノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等のアクリル酸アリールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、不飽和カルボン酸の塩、不飽和カルボン酸のエステル化合物、(メタ)アクリロニトリル、ビニル化合物、スチレンを挙げることができる。
【0031】
上記重合性不飽和結合を有するモノマーの重合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量が、1万〜60万、好ましくは2万〜30万、さらに好ましくは3万〜10万のものを好適に使用することができる。重量平均分子量が1万より小さいと、架橋骨格を形成してもアクリル発泡体の強度が実用上十分な強度を保持することが難しい、低分子量体のブリードによる接着面の汚染が見られる等の影響が及ぼされる。重量平均分子量が60万を超えると、モノマーとの混合物にした場合、流動性が悪くなり均一に塗工するのが困難になる。
【0032】
また、上記アクリル系シロップの粘度範囲が0.1〜20.0Pa・sec/25℃、好ましくは1.0〜10.0Pa・sec/25℃であるものを好適に使用することができる。上記粘度範囲が0.1Pa・sec/25℃未満の場合、アクリル系シロップ中に含まれる重合性不飽和結合を有するモノマーの重合物の重量平均分子量が低く、またアクリル系シロップ中に重合性不飽和結合を有するモノマーの重合物の占める割合が低い場合が多く、このアクリル系シロップを使用して作成したアクリル発泡体の強度は実用上充分な強度を保持することが難しい。また、発泡剤含有組成物を均一に塗布する為には、発泡剤含有組成物の好適な粘度条件は1〜100Pa・sec/25℃であるのが好ましく、粘度範囲が0.1Pa・sec/25℃未満のアクリル系シロップを用いる場合には大量の充填剤を添加しなくてならない為、実用的な強度を保持するのが難しくなる。
【0033】
アクリル系シロップの粘度範囲が20.0Pa・s/25℃を超えると、各種充填剤類等の分散が困難になる、塗工時の厚み均一性が乏しくなる等の問題が発生しやすくなる。なお、アクリル系シロップを構成する上記重合性不飽和結合を有するモノマーの重合物の含有率については特に制限されるものではなく、上述した重合物の重量平均分子量範囲及びアクリル系シロップの粘度範囲に適合するように重合性不飽和結合を有するモノマーの重合物の含有率を自由に調整することができる。しかし、好ましくは、アクリル系シロップ中に重合性不飽和結合を有するモノマーの重合物を、10〜60%含有することが望ましい。
【0034】
上記アクリル系シロップは、架橋剤を用いて三次元網目構造に架橋させる事でアクリル発泡体の機械的強度を向上させることができる。上記架橋剤としては、アクリル樹脂中に含有されるカルボキシル基、水酸基、グリシジル基等の官能基と反応性を有する化合物を使用することができる。このような架橋剤の例としては、例えばイソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アミン化合物、カルボキシル基含有化合物、酸無水物、金属キレート化合物を挙げることができる。イソシアネート化合物の例としては、例えばトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、及びこれらをポリオールに付加させた化合物を挙げることができる。ブロックイソシアネート化合物の例としては、例えばトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等及びこれらをポリオールに付加させた化合物のイソシアネート基にε一カプロラクタム等のラクタム類、メチルエチルケトオキシム等のオキシム類、フェノール類、アルコール類等の活性水素化合物をマスキング剤として用いて調製した化合物を挙げることができる。
【0035】
エポキシ化合物の例としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、アルコール型エポキシ樹脂、ポリグリシジルアミン型エポキシ樹脂を挙げることができる。アミン化合物の例としては、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミンを挙げることができる。カルボキシル基含有化合物の例としては、例えばイソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸を挙げることができる。酸無水物の例としては、例えば無水フタル酸、無水トリメリット酸を挙げることができる。
【0036】
金属キレート化合物の例としては、トリn−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジn−ブトキシビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシトリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、ジイソプロポキシアセチルアセテートアルミニウム、イソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、イソプロポキシビス(アセチルアセテート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセテート)アルミニウム、モノアセチルアセテートビス(エチルアセトアセテート)アルミニウムを挙げることができる。これら架橋剤の内少なくとも一種類を選択し、アクリル系シロップ中に含有する官能基と架橋させる。
【0037】
上記架橋剤の添加量は特に制限するものではないが、好ましくは合計0.1〜30重量部、さらに好ましくは0.5〜15重量部添加することができ、発泡剤含有組成物の複素動粘度が2×102〜5×104Pa・secの範囲内になるように添加量を調整する必要がある。
【0038】
また、上記架橋剤の他に、重合性不飽和結合を2個以上有するモノマーを架橋剤として使用することができる。これらの例としては、例えばアルキレングリコール又はそのオリゴマーの両末端水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化した化合物、2価以上のアルコールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化した化合物、シリコーンオイルの両末端を(メタ)アクリル変性した化合物、アルケニル基を2個以上有するアリール化合物等のラジカル重合性多官能モノマーを挙げることができる。
【0039】
アルキレングリコール又はそのオリゴマーの両末端水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化した化合物の例としては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートを挙げることができる。2価以上のアルコールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化した化合物の例としては、例えばネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールを挙げることができる。シリコーンオイルの両末端を(メタ)アクリル変性した化合物の例としては、メタクリル変性シリコーンオイルを挙げることができる。アルケニル基を2個以上有するアリール化合物の例としては、ジビニルベンゼンを挙げることができる。
【0040】
本発明の重合性不飽和結合を有するモノマーを重合させる方法としては、従来公知の重合方法を用いることができる。例えば、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法が知られているが、本発明においては塊状重合法を用いるのが好ましい。溶液重合法と乳化重合法は、反応溶液としての溶剤又は水を除去するエ程が必要となる。また、溶液重合法は残存する溶剤の臭気が問題となり、乳化重合法は水の中に疎水性である樹脂分を均一に分散させる為に大量の界面活性剤が添加されており、得られる重合物に充分な耐水性を得られない場合が多い。
【0041】
塊状重合法は溶剤を使用しない重合法であり、光重合開始剤を使用する光重合法と熱重合開始剤を使用する熱重合法がある。しかし、光重合法では、支持体に塗布したモノマーを重合させるにはモノマーの重合に長時間を要する場合が多く、ランニングコストが大きくなる他、紫外線照射装置等特別な設備が必要となり、多額の設備投資が必要となる。また、シート厚みが厚くなるとシート内部への紫外線の透過が悪くなる為重合速度が遅くなり、その為用いる原料にも光透過性の良い原料を用いなければならず、原料の使用の制限を生ずる。熱重合法は、重合及び発泡工程に同じ加熱オーブンを用いることができるので設備投資額も低く、また使用原料の制限が無いので様々な配合剤を組み込むことが可能になる。
【0042】
塊状重合法に用いる熱重合開始剤としては、過酸化物系重合開始剤、アゾ系重合開始剤の少なくとも一種から選択することが好ましい。過酸化物系重合開始剤としては、アクリル系モノマーの熱重合開始剤として公知のものを全て使用することができ、好ましくは10時間半減期温度が60℃以上、更に好ましくは80℃〜125℃の熱重合開始剤を用いるのが望ましい。
【0043】
このような過酸化物系重合開始剤の例としては、α,α’ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(10時間半減期温度:35.9℃)、クミルパーオキシネオデカノエート(10時間半減期温度:36.5℃)、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート(10時間半減期温度:40.7℃)、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(10時間半減期温度:40.8℃)、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート(10時間半減期温度:41.4℃)、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート(10時間半減期温度:44.5℃)、t−ブチルパーオキシネオデカノエート(10時間半減期温度:46.4℃)、オクタノイルパーオキサイド(10時間半減期温度:61.5℃)、ラウロイルパーオキサイド(10時間半減期温度:61.6℃)、ステアロイルパーオキサイド(10時間半減期温度:62.4℃)、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(10時間半減期温度:65.3℃)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン(10時間半減期温度:66.2℃)、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(10時間半減期温度:69.9℃)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(10時間半減期温度:72.1℃)、ベンゾイルパーオキサイド(10時間半減期温度:73.6℃)、t−ブチルパーオキシイソブチレート(10時間半減期温度:77.3℃)、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(10時間半減期温度:86.7℃)、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(10時間半減期温度:87.1℃)、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(10時間半減期温度:90.0℃)、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(10時間半減期温度:90.7℃)、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(10時間半減期温度:95.0℃)、t−ブチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート(10時間半減期温度:97.1℃)、t−ブチルパーオキシラウレート(10時間半減期温度:98.3℃)、t−ブチルパーオキ
シイソプロピルモノカーボネート(10時間半減期温度:98.7℃)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(10時間半減期温度:99.0℃)、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート(10時間半減期温度:99.4℃)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン(10時間半減期温度:99.7℃)、t−ブチルパーオキシアセテート(10時間半減期温度:101.9℃)、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン(10時間半減期温度:103.1℃)、t−ブチルパーオキシベンゾエート(10時間半減期温度:104.3℃)、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート(10時間半減期温度:104.5℃)、ジ−t−ブチルパーオキサイド(10時間半減期温度:123.7℃)を挙げることができる。
【0044】
アゾ系重合開始剤の例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスー2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビスシクロヘキシルニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等を挙げることができる。
【0045】
発泡剤含有組成物の複素動粘度が2×102〜5×104Pa・secの範囲内で発泡ガスが発生するように上記熱重合開始剤量を調整することで、発泡ガスをアクリル組成物中に効率良く、均一に保持させることができる。熱重合開始剤の添加量は、特に制限するものではないが、好ましくは合計0.01〜10重量部、さらに好ましくは0.1〜5重量部添加することができる。熱重合開始剤の量が0.01重量部未満の場合、重合速度が遅くなる為、重合に長時間を要することが多く、ランニングコストが大きくなってしまう。熱重合開始剤の添加量が10重量部を越えた場合、重合速度が速くなりすぎてしまい、可使時間が短くなってしまうという問題点が発生する。
【0046】
ここで、複素動粘度η*(Pa/sec)とは貯蔵弾性率G’(Pa)、損失弾性率G”(Pa)、角振動数ω(rad/sec)からなる関数であり、η*={(G’/ω)2+(G”/ω)2}1/2で表すことができる。複素動粘度η*はレオメーターを用いて測定することができるが、本発明に示した複素動粘度とは全て周波数1Hz(角振動数6.28rad/sec)にて測定した数値である。
【0047】
発泡剤としては、従来公知の熱分解型発泡剤、有機系物理発泡剤などを使用することができる。熱分解型発泡剤としては、熱分解型有機発泡剤、熱分解型無機発泡剤等が挙げることができ、有機系物理発泡剤としては、例えば脂肪族炭化水素系発泡剤、脂環式炭化水素系発泡剤、ハロゲン化炭化水素系発泡剤を挙げることができる。
【0048】
熱分解型有機発泡剤としては、例えばアゾジカルボンアミド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、ヒドラゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレート、アゾビスイゾブチロニトリルを挙げることができる。
【0049】
熱分解型無機発泡剤としては、例えば炭酸水素ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウムを挙げることができる。脂肪族炭化水素系発泡剤としては、例えばプロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンを挙げることができる。脂環式炭化水素系発泡剤としては、例えばシクロブタン、シクロペンタン、シクロへキサンを挙げることができる。ハロゲン化炭化水素系発泡剤としては、例えばクロロジフルオロメタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロメタン、ジクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、クロロメタン、クロロエタン、ジクロロトリフルオロエタン、ジクロロフルオロエタン、クロロジフルオロエタン、ジクロロペンタフルオロエタン、テトラフルオロエタン、ジフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、トリフルオロエタン、ジクロロテトラフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタン、テトラクロロジフルオロエタン、クロロペンタフルオロエタン、パーフルオロシクロブタンを挙げることができる。これら発泡剤のうち熱分解型発泡剤から少なくとも一種類選択することが好ましく、有機系物理発泡剤を併用することもできる。このとき、環境面を考慮して脂肪族炭化水素系発泡剤、脂環式炭化水素系発泡剤の中から選択するのが好ましい。
【0050】
これらの発泡剤は、アクリル樹脂100重量部に対して合計0.01〜20重量部、好ましくは合計0.05〜10重量部添加することができ、また熱分解型発泡剤の場合、発泡助剤を加えて発泡剤分解温度を適当な温度に調整することもできる。発泡助剤の例としては、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、酢酸亜鉛、硼砂、水酸化カルシウム、グリセリン、ジエチレングリコールを挙げることができる。
【0051】
発泡剤の添加量が合計0.01重量部未満の場合、発泡体を形成することができない。また、発泡剤の添加量が合計20重量部を越えて添加すると、ガス抜けを起こしやすくなってしまい、気泡が粗大になりやすくなる。
【0052】
発泡剤として有機系物理発泡剤のみを使用する場合は、気泡が粗大化する傾向がある為、均一で微細な気泡の発泡体を得る為には熱分解型発泡剤を添加する必要がある。また、アクリル系シロップ中の重合性不飽和結合を有するモノマーを揮発させることによって気泡を形成させることもできるが、この場合においても気泡の粗大化を防ぐ為に熱分解型発泡剤を少なくとも0.01重量部添加する必要がある。
【0053】
熱分解型発泡剤が、重合及び架橋により発泡剤含有組成物の複素動粘度が2×102〜5×104Pa・secの範囲内にある時に分解するように発泡剤の分解温度を調整することにより、均一で微細な気泡を有するアクリル発泡体とすることができる。また、発泡剤含有組成物の複素動粘度が2×102〜5×104Pa・secの範囲内で有機系物理発泡剤及び重合性不飽和結合を有するモノマーを効率的に揮発させることによって、均一で微細な気泡を有するアクリル発泡体とすることができる。
【0054】
以上詳述したように本発明においては、発泡剤含有組成物の複素動粘度が2×102〜5×104Pa・secの範囲内で発泡ガスが発生するように、重合性不飽和結合を有するモノマーの重合物の重量平均分子量、アクリル系シロップ中の重合性不飽和結合を有するモノマーの種類と重合性不飽和結合を有するモノマーの重合物の種類及び含有率、架橋剤、熱重合開始剤、発泡剤の種類及び添加量等を調整することにより、均一かつ微細な気泡を有するアクリル発泡体を製造することができる。ここで、発泡剤含有組成物の複素動粘度が2×102Pa・sec未満で発泡ガスが発生した場合は、発泡ガスを保持することができずにガス抜けしやすい。また、発泡剤含有組成物の複素動粘度が5×104Pa・secより大きい状態で発泡ガスが発生した場合は、発泡剤含有組成物の粘度が高いために発泡ガスが膨張することを妨げられ、発泡しても三次元状に膨張して支持体上で平滑に発泡することが困難になる。
【0055】
さらに、上記成分の他に充填剤、補強剤、整泡剤等を添加することができる。
【0056】
充填剤としては、例えば無機充填剤、粉体樹脂、中空球体を使用することができる。無機充填剤としては例えば炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、クレー、タルク、酸化チタン、水酸化マグネシウム、ゼオライトを挙げることができる。粉体樹脂としては、例えばポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂を粉末化したものを用いることができる。中空球体としては、例えばガラスバルーン、シリカバルーン、シラスバルーン、カーボンバルーン、フェノールバルーン、塩化ビニリデンバルーン、アルミナバルーンを挙げることができる。
【0057】
補強剤としては、例えばカーボンブラック、シランカップリング剤を使用することができる。カーボンブラックの例としては、例えばSRF、FEF、MAF、HAF、ISAF、SAFを挙げることができる。シランカップリング剤については特に制限は無いが、アクリル系モノマーと重合可能な重合性不飽和基を持ったシランカップリング剤や、アクリル樹脂中に含有した官能基と反応可能な官能基を有するシランカップリング剤を使用することが好ましい。これらのシランカップリング剤の例として、例えばビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、トリエトキシシランプロピルイソシアネート、トリメトキシシランプロピルイソシアネートを挙げることができる。
【0058】
整泡剤としては、ポリジメチルシロキサン−オキシアルキレン共重合体等のシリコーン系整泡剤や界面活性剤を使用することができる。
さらに、必要に応じて上記成分の他に、粘着付与剤、難燃剤、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、顔料等を添加することができる。
【0059】
上記のようなアクリル系シロップ、架橋剤、熱重合開始剤、発泡剤及び必要であればその他添加剤を攪拌・混合した発泡剤含有組成物を紙、プラスチックフィルム、不織布、布及び離型紙、離型フィルム、ステンレスベルト、ガラス板に代表される支持体に塗布して重合及び架橋させながら加熱し発泡させ、アクリル発泡体を得ることができる。
【0060】
上記のような支持体の少なくとも片面に上記発泡剤含有組成物を塗布し、発泡剤含有組成物の複素動粘度が2×102〜5×104Pa・secの状態で加熱して発泡させることにより、塗布厚みに制限されること無く均一で微細な気泡を持ったアクリル発泡体にすることができる。塗布厚みは用途によって適宜設定するが、0.05〜10mmに塗布するのが通常で、好ましくは0.1〜5mmに塗布する。塗布厚みが0.05mm未満だと発泡ガスを保持するのが難しい為、発泡体になりにくい。また、塗布厚みが10mmを越えると、三次元状に発泡する傾向があり、表面に凹凸が発生しやすくなる他、気泡の均一性が損なわれる傾向がある。
【0061】
発泡剤含有組成物の塗布方法としては、上記の支持体に例えばロールコータ−、コンマコーター、ダイコーター、グラビアコータ−を用いることができる。
【0062】
上記塗布物はそのままでも発泡させることができるが、上面に通気性の高いシートを被せて発泡させることで、アクリル発泡体の複合品とすることもできる。このシートの例としては、薄い紙、不織布、布、発泡プラスチックシートを挙げることができる。ここで、通気性の低いPET等のプラスチックフィルムや厚手の紙等を用いると、発泡ガスがアクリル樹脂とシートとの間に溜まりやすく、均一な気泡の発泡体ができにくくなる。シートを被せるタイミングとしては、発泡剤含有組成物の複素動粘度が1×103Pa・sec以下の状態で行うことでアクリル発泡体とシートの接着性を高くすることができる。発泡剤含有組成物の複素動粘度が1×103Pa・secを越える状態でシートを被せた場合は、アクリル発泡体とシートは剥離しやすくなってしまう。
【0063】
上記塗布物はそのままでも発泡させることができるが、上面からも離型性の高い支持体で挟むことで発泡体の表面を平滑にすることができる。この離型性の高い支持体としては、例えば離型紙、離型フィルム、ステンレスベルトを挙げることができる。また、上面に凹凸模様がついた支持体を用いた場合は、発泡体表面にシボ模様をつけることも可能となる。離型性の低い支持体を用いた場合、支持体とアクリル発泡体をきれいに離型することは困難になるため好ましくない。支持体を被せるタイミングとしては、発泡剤含有組成物の複素動粘度が5×104Pa・sec以下であり、発泡の80%以上が完了した状態で行うことで、ガス溜りが無く表面が平滑なアクリル発泡体にすることが可能になる。発泡剤含有組成物の複素動粘度が5×104Pa・secを越える場合は、粘度が高すぎて、発泡体表面を平滑に変形させることが困難になる。また、80%未満しか発泡が完了していない場合は、発泡ガスが支持体との間に溜ってしまい、いずれの場合もきれいな表面のアクリル発泡体を得ることができない。
【0064】
一般に、ダブルコンベア方式は、支持体に成形材料を塗布し、重合叉は架橋を行う前に上面から別の支持体で挟む方式であり、発泡体を製造する場合においてこの方式を用いると上述したように発泡ガスが支持体との間に溜まってしまい、気泡が粗大になる傾向が見られる。本発明においては、上述したダブルコンベア方式とは違い、重合及び架橋が進行して発泡が80%以上完了した組成物に支持体を被せる方式を採っており、発泡ガスのガス溜りによる気泡の粗大化を防ぐことができる。
【0065】
上記発泡剤含有組成物の粘度は、1〜100Pa・sec/25℃、好ましくは3〜70Pa・sec/25℃であることが望ましい。上記発泡剤含有組成物の粘度が1Pa・sec/25℃未満の場合、流動性が高すぎ均一に塗布しにくくなり、100Pa・sec/25℃より大きいと流動性が低く取り扱いにくいという問題点がある。
【0066】
支持体に塗布された発泡剤含有組成物は、まず複素動粘度が2×102〜5×104Pa・secの状態になるまで0〜170℃(好ましくは50〜150℃)の雰囲気下に20秒〜24時間(好ましくは30秒〜1時間、より好ましくは1分〜30分間)掛けて、重合及び架橋させる。この発泡剤含有組成物を塗布した支持体をさらに100〜250℃(好ましくは140〜220℃)の雰囲気下で20秒〜24時間(好ましくは30秒〜1時間、より好ましくは1分〜30分)加熱し、発泡させる。これらの重合・架橋・発泡させる温度は一定温度で行っても良いし、2段階以上に昇温させて行っても良い。
【0067】
本発明において、重合及び架橋させるタイミングは、次のように行う。まず、重合を行うタイミングは、発泡開始より先に重合を開始している必要がある。重合開始より先に発泡を開始してしまうと、発泡開始時の複素動粘度を2×102Pa・sec以上にすることが困難となり、発泡ガスを保持できずにガス抜けしてしまう。また、一度ガス抜けしてしまうと、その跡から発泡ガスが抜けやすくなり、その後に重合と発泡が同時に進行したとしても効率的に発泡ガスを保持することが困難になる。
一方、架橋を行うタイミングは、重合より先に行っても良いし、発泡と同時及び/叉は発泡開始後に行っても良い。但し、発泡時の複素動粘度が2×102〜5×104Pa・secの範囲内になるように、架橋剤の種類及び添加量を調整する必要がある。
【0068】
本発明にて得られるアクリル発泡体の見掛け密度は用途によって適宜設定するが、100〜950kg/m3であることが好ましい。見かけ密度が950kg/m3を超える場合、軽量化や可撓性といった発泡体の利点を生かすことが難しい。また、見掛け密度が100kg/m3未満の場合は気泡が粗大になりやすく、表面の平滑性に乏しい等の問題が生じやすい。
【0069】
本発明にて得られるアクリル発泡体は、実用に供することのできる強度を有している。強度の範囲としては、100%モジュラスにおいて50kPa以上、好ましくは80kPa以上を有していれば、実用上問題は見られない。
【0070】
【実施例】
次に実施例、比較例を挙げるが、本発明はこれら実施例に制約されるものではない。なお、見掛け密度及び100%モジュラスは、JISK6767:1999「発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法」7.1見掛け密度及び7.4引張強さ及び伸びに準じて引張試験機(島津製作所製の商品名:オートグラフAG−1000E)を用いて測定した。複素動粘度は、レオメーター(TAインスツルメント製の商品名:AR2000)を用いて、周波数1Hzにて測定した。粘度は、粘度計(ビスコテック株式会社製の商品名:マルチビスコR型)を用いて測定した。また、重量平均分子量は、下記表1に示す条件でGPC(東ソー(株)製の商品名:HLC−8120)を用いて測定した。更に、発泡状態の評価は目視にて、「優」,「良」,「可」,「不可」の4段階とした。
【0071】
【表1】
【0072】
[アクリルシロップAの調整]
攪拌機と温度計と窒素ガス導入管及び冷却管を備えた容量2リットルの四つロフラスコに、アクリル酸−2−エチルヘキシル(2−EHA)514g、アクリル酸i−ボルニル(IBXA)176g、メタクリル酸メチル(MMA)240g、アクリル酸(AA)50g、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル(2−HEA)20g、ノルマルドデシルメルカプタン(NDM)3.0gを投入して、窒素気流中で55℃になるまで昇温し、加熱を停止した。次いで、重合開始剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(AMVN)0.3gを攪拌下に投入して均一に混合した。
【0073】
重合開始剤を添加した後、重合熱による温度上昇が見られ、フラスコを冷却せずに発熱するままにして反応させることにより、反応系の温度が90℃に達した。その後、反応系の温度が下がり始めた。反応系の温度が85℃になったところで、2−EHA 43g、IBXA 50g、AA 5g、2−HEA 2g及びNDM 1.5gを添加すると共に、外部冷却機を用いて反応系の温度を55℃まで冷却した。
【0074】
さらに、重合開始剤としてAMVN 0.6gを投入したところ、重合熱による温度上昇が見られ、フラスコを冷却せずに発熱するままにして反応させることにより、反応系の温度が110℃に達した。その後、反応系の温度が下がり始め、反応系の温度が105℃になったところで、2−EHA 43g、IBXA 50g、AA 5g及び2−HEA 2gを添加すると共に、外部冷却機を用いて反応系の温度を室温まで冷却した。この得られたアクリル系シロップAは、GPCによる重量平均分子量が6万のポリマー分が46%であり、25℃における粘度が3.5Pa・sであった。
【0075】
[アクリルシロップBの調整]
攪拌機と温度計と窒素ガス導入管及び冷却管を備えた容量2リットルの四つロフラスコに2−EHA 537g、IBXA 388g、2−HEA 75g、NDM 3.0gを投入して、窒素気流中で55℃になるまで昇温し、加熱を停止した。次いで、重合開始剤としてAMVN 0.025gを攪拌下に投入して均一に混合した。
【0076】
重合開始剤を添加した後、重合熱による温度上昇が見られ、フラスコを冷却せずに発熱するままにして反応させることにより、反応系の温度が115℃に達した。その後、反応系の温度が下がり始めた。反応系の温度が105℃になったところで、2−EHA 134g、IBXA 97g、2−HEA 19g及びNDM1.5gを添加すると共に、外部冷却機を用いて反応系の温度を55℃まで冷却した。
【0077】
さらに、重合開始剤としてAMVN 0.05gを投入したところ、重合熱による温度上昇が見られ、フラスコを冷却せずに発熱するままにして反応させることにより、反応系の温度が110℃に達した。その後、反応系の温度が下がり始め、反応系の温度が100℃になったところで、2−EHA 134g、IBXA 97g及び2−HEA 19gを添加すると共に、外部冷却機を用いて反応系の温度を室温まで冷却した。この得られたアクリル系シロップBは、GPCによる重量平均分子量が5.5万のポリマー分が52%であり、25℃における粘度が2.3Pa・sであった。
【0078】
[アクリルシロップCの調整]
攪拌機と温度計と窒素ガス導入管及び冷却管を備えた容量2リットルの四つロフラスコに2−EHA 537g、IBXA 388g、2−HEA 75g、NDM 0.5gを投入して、窒素気流中で55℃になるまで昇温し、加熱を停止した。次いで、重合開始剤としてAMVN 0.025gを攪拌下に投入して均一に混合した。
【0079】
重合開始剤を添加した後、重合熱による温度上昇が見られ、フラスコを冷却せずに発熱するままにして反応させることにより、反応系の温度が120℃に達した。その後、反応系の温度が下がり始めた。反応系の温度が110℃になったところで、2−EHA 134g、IBXA 97g、2−HEA 19gを添加すると共に、外部冷却機を用いて反応系の温度を室温まで冷却した。
【0080】
この得られたアクリル系シロップCは、GPCによる重量平均分子量が23万のポリマー分が33%であり、25℃における粘度が8.5Pa・sであった。
【0081】
(実施例1)
アクリルシロップA 100重量部に、t−ブチルパーオキシラウレート(熱重合開始剤、日本油脂製の商品名:パーブチルL、10時間半減期温度:98.3℃)を1重量部、メタクリル変性シリコーンオイル(架橋剤、東レ・ダウコーニング・シリコーン製の商品名:BX16−152B)を0.5重量部、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)(架橋剤、三井武田ケミカル製)を2重量部、ブロックイソシアネート(架橋剤、三菱化学製の商品名:アデスター2007)を2重量部、アゾジカルボンアミド(発泡剤、大塚化学製の商品名:AZウルトラ3050)を10重量部、シリコーン系整泡剤(日本ユニカー製の商品名:SZ−1919)を2重量部、シリカ(充填剤、日本アエロジル製の商品名:アエロジル200)を3重量部、シランカップリング剤(補強剤、日本ユニカー製の商品名:NUC A−1310)を2重量部、常温で攪拌混合及び脱泡し、25℃における粘度が25Pa・secである発泡剤含有組成物を得た。
【0082】
上記の発泡剤含有組成物を、剥離性を有するPETフィルム上に厚み0.8mmとなるように塗布した後、140℃で2分間加熱し、続けて200℃で4分間加熱して発泡させたところ、発泡開始時の複素動粘度が1×103Pa・sec、発泡完了時の複素動粘度は2×104Pa・secであった。また、均一な気泡を有する厚み2.80mm、見掛け密度125.6kg/m3、100%モジュラス81.2kPaのアクリル発泡体が得られた。
【0083】
(実施例2)
アクリルシロップB 100重量部に、t−ブチルパーオキシラウレート(熱重合開始剤、日本油脂製の商品名:パーブチルL、10時間半減期温度:98.3℃)を1重量部、メタクリル変性シリコーンオイル(架橋剤、東レ・ダウコーニング・シリコーン製の商品名:BX16−152B)を2重量部、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)(架橋剤、三井武田ケミカル製)を2重量部、ブロックイソシアネート(架橋剤、三菱化学製の商品名:アデスター2007)を2重量部、アゾジカルボンアミド(発泡剤、大塚化学製の商品名:AZウルトラ3050)を6重量部、シリコーン系発泡剤(日本ユニカー製の商品名:SZ−1919)を2重量部、シリカ(充填剤、日本アエロジル製の商品名:アエロジル200)を3重量部、シランカップリング剤(補強剤、日本ユニカー製の商品名:NUC A−1310)を2重量部、常温で攪拌混合及び脱泡し、25℃における粘度が30Pa・secである発泡剤含有組成物を得た。
【0084】
上記の発泡剤含有組成物を、剥離性を有するPETフィルム上に厚み0.8mmとなるように塗布した後、140℃で2分間加熱し、続けて200℃で4分間加熱して発泡させたところ、発泡開始時の複素動粘度が8×102Pa・sec、発泡完了時の複素動粘度は2×104Pa・secであった。また、均一な気泡を有する厚み1.38mm、見掛け密度318.4kg/m3、100%モジュラス208.2kPaのアクリル発泡体が得られた。
【0085】
(実施例3)
アクリルシロップB 100重量部に、t−ブチルパーオキシラウレート(熱重合開始剤、日本油脂製の商品名:パーブチルL、10時間半減期温度:98.3℃)を1重量部、メタクリル変性シリコーンオイル(架橋剤、東レ・ダウコーニング・シリコーン製の商品名:BX16−152B)を2重量部、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)(架橋剤、三井武田ケミカル製)を2重量部、ブロックイソシアネート(架橋剤、三菱化学製の商品名:アデスター2007)を2重量部、アゾジカルボンアミド(発泡剤、大塚化学製の商品名:AZウルトラ3050)を0.5重量部、シリコーン系整泡剤(日本ユニカー製の商品名:SZ−1919)を2重量部、シリカ(充填剤、日本アエロジル製の商品名:アエロジル200)を3重量部、シランカップリング剤(補強剤、日本ユニカー製の商品名:NUC A−1310)を2重量部、常温で攪拌混合及び脱泡し、25℃における粘度が28Pa・secである発泡剤含有組成物を得た。
【0086】
上記の発泡剤含有組成物を、剥離性を有するPETフィルム上に厚み0.8mmとなるように塗布した後、140℃で2分間加熱し、続けて200℃で4分間加熱して発泡させたところ、発泡開始時の複素動粘度が8×102Pa・sec、、発泡完了時の複素動粘度は9×103Pa・secであった。また、均一な気泡を有する厚み1.10mm、見掛け密度780.2kg/m3、100%モジュラス321.9kPaのアクリル発泡体が得られた。
【0087】
(実施例4)
アクリルシロップA 100重量部に、t−ブチルパーオキシラウレート(熱重合開始剤、日本油脂製の商品名:パーブチルL、10時間半減期温度:98.3℃)を1重量部、メタクリル変性シリコーンオイル(架橋剤、東レ・ダウコーニング・シリコーン製の商品名:BX16−152B)を2重量部、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)(架橋剤、三井武田ケミカル製)を2重量部、ブロックイソシアネート(架橋剤、三菱化学製の商品名:アデスター2007)を2重量部、アゾジカルボンアミド(発泡剤、大塚化学製の商品名:AZウルトラ3050)を0.5重量部、シリコーン系整泡剤(日本ユニカー製の商品名:SZ−1919)を2重量部、シリカ(充填剤、日本アエロジル製の商品名:アエロジル200)を3重量部、シランカップリング剤(補強剤、日本ユニカー製の商品名:NUC A−1310)を2重量部、常温で攪拌混合及び脱泡し、25℃における粘度が28Pa・secである発泡剤含有組成物を得た。
【0088】
上記の発泡剤含有組成物を、剥離性を有するPETフィルム上に厚み0.8mmとなるように塗布した後、140℃で2分間加熱し、続けて200℃で4分間加熱して発泡させたところ、発泡開始時の複素動粘度が2×103Pa・sec、発泡完了時の複素動粘度は1×104Pa・secであった。また、均一な気泡を有する厚み1.15mm、見掛け密度438.4kg/m3、100%モジュラス222.1kPaのアクリル発泡体が得られた。
【0089】
(実施例5)
アクリルシロップA 100重量部に、t−ブチルパーオキシラウレート(熱重合開始剤、日本油脂製の商品名:パーブチルL、10時間半減期温度:98.3℃)を4重量部、メタクリル変性シリコーンオイル(架橋剤、東レ・ダウコーニング・シリコーン製の商品名:BX16−152B)を0.5重量部、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)(架橋剤、三井武田ケミカル製)を2重量部、ブロックイソシアネート(架橋剤、三菱化学製の商品名:アデスター2007)を2重量部、アゾジカルボンアミド(発泡剤、大塚化学製の商品名:AZウルトラ3050)を10重量部、シリコーン系整泡剤(日本ユニカー製の商品名:SZ−1919)を2重量部、シリカ(充填剤、日本アエロジル製の商品名:アエロジル200)を3重量部、シランカップリング剤(補強剤、日本ユニカー製の商品名:NUC A−1310)を2重量部、常温で攪拌混合及び脱泡し、25℃における粘度が32Pa・secである発泡剤含有組成物を得た。
【0090】
上記の発泡剤含有組成物を、剥離性を有するPETフィルム上に厚み0.8mmとなるように塗布した後、140℃で2分間加熱し、続けて200℃で4分間加熱して発泡させたところ、発泡開始時の複素動粘度が4×103Pa・sec、発泡完了時の複素動粘度は3×104Pa・secであった。また、均一な気泡を有する厚み2.52mm、見掛け密度239.6kg/m3、100%モジュラス102.3kPaのアクリル発泡体が得られた。
【0091】
(実施例6)
アクリルシロップC 100重量部に、t−ブチルパーオキシラウレート(熱重合開始剤、日本油脂製の商品名:パーブチルL、10時間半減期温度:98.3℃)を0.5重量部、メタクリル変性シリコーンオイル(架橋剤、東レ・ダウコーニング・シリコーン製の商品名:BX16−152B)を0.5重量部、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)(架橋剤、三井武田ケミカル製)を2重量部、ブロックイソシアネート(架橋剤、三菱化学製の商品名:アデスター2007)を2重量部、アゾジカルボンアミド(発泡剤、大塚化学製の商品名:AZウルトラ3050)を2重量部、シリコーン系整泡剤(日本ユニカー製の商品名:SZ−1919)を2重量部、シリカ(充填剤、日本アエロジル製の商品名:アエロジル200)を3重量部、シランカップリング剤(補強剤、日本ユニカー製の商品名:NUC A−1310)を2重量部、常温で攪拌混合及び脱泡し、25℃における粘度が65Pa・secである発泡剤含有組成物を得た。
【0092】
上記の発泡剤含有組成物を、剥離性を有するPETフィルム上に厚み4.0mmとなるように塗布した後、140℃で2分間加熱し、続けて200℃で4分間加熱して発泡させたところ、複素動粘度が2×103Pa・sec、発泡完了時の複素動粘度は4×104Pa・secであった。また、均一な気泡を有する厚み7.81mm、見掛け密度523.2kg/m3、100%モジュラス281.3kPaのアクリル発泡体が得られた。
【0093】
(実施例7)
アクリルシロップA 100重量部に、t−ブチルパーオキシラウレート(熱重合開始剤、日本油脂製の商品名:パーブチルL、10時間半減期温度:98.3℃)を1重量部、メタクリル変性シリコーンオイル(架橋剤、東レ・ダウコーニング・シリコーン製の商品名:BX16−152B)を2重量部、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)(架橋剤、三井武田ケミカル製)を2重量部、ブロックイソシアネート(架橋剤、三菱化学製の商品名:アデスター2007)を2重量部、アゾジカルボンアミド(発泡剤、大塚化学製の商品名:AZウルトラ3050)を0.5重量部、常温で攪拌混合及び脱泡し、25℃における粘度が5.0Pa・secである発泡剤含有組成物を得た。
【0094】
上記の発泡剤含有組成物を、剥離性を有するPETフィルム上に厚み0.8mmとなるように塗布した後、140℃で2分間加熱し、続けて200℃で4分間加熱して発泡させたところ、発泡開始時の複素動粘度が6×102Pa・sec、発泡完了時の複素動粘度は8×103Pa・secであった。また、均一な気泡を有する厚み1.05mm、見掛け密度565.2kg/m3、100%モジュラス182.7kPaのアクリル発泡体が得られた。この発泡体の発泡状態は良好であった。
【0095】
(比較例1)
熱重合開始剤を1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(熱重合開始剤、日本油脂製の商品名:パーオクタO、10時間半減期温度:65.3℃)とした以外は、実施例4と同様に行ない、25℃における粘度が48Pa・secである発泡剤含有組成物を得た。
【0096】
上記の発泡剤含有組成物を、剥離性を有するPETフィルム上に厚み0.8mmとなるように塗布した後、100℃で2分間加熱し、続けて200℃で4分間加熱して発泡させたところ、発泡開始時の複素動粘度が9×101Pa・sec、発泡完了時の複素動粘度は8×102Pa・secであった。また、ガス抜けが先行して均一に発泡せず、厚み0.62mm、見掛け密度981.2kg/m3、100%モジュラス481.2kPaのアクリル発泡体が得られた。
【0097】
(比較例2)
アクリルシロップA 100重量部に、t−ブチルパーオキシラウレート(熱重合開始剤、日本油脂製の商品名:パーブチルL、10時間半減期温度:98.3℃)を1重量部、アゾジカルボンアミド(発泡剤、大塚化学製の商品名:AZウルトラ3050)を10重量部、シリコーン系整泡剤(日本ユニカー製の商品名:SZ−1919)を2重量部、シリカ(充填剤、日本アエロジル製の商品名:アエロジル200)を3重量部、シランカップリング剤(補強剤、日本ユニカー製の商品名:NUC A−1310)を2重量部、常温で攪拌混合及び脱泡し、25℃における粘度が23Pa・secである発泡剤含有組成物を得た。
【0098】
上記の発泡剤含有組成物を、剥離性を有するPETフィルム上に厚み0.8mmとなるように塗布した後、140℃で2分間加熱し、続けて200℃で4分間加熱して発泡させたところ、複素動粘度が2×102Pa・secの時、発泡開始し、一時的に気泡を形成したものの気泡が崩れてしまい保持することができなかった。発泡完了時の複素動粘度は1×102Pa・secであり、不均一な気泡を有する厚み1.12mm、見掛け密度626.4kg/m3、100%モジュラス32.1kPaのアクリル発泡体が得られた。
【0099】
(比較例3)
アクリルシロップB 100重量部に、t−ブチルパーオキシラウレート(熱重合開始剤、日本油脂製の商品名:パーブチルL、10時間半減期温度:98.3℃)を1重量部、メタクリル変性シリコーンオイル(架橋剤、東レ・ダウコーニング・シリコーン製の商品名:BX16−152B)を2重量部、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)(架橋剤、三井武田ケミカル製)を2重量部、ブロックイソシアネート(架橋剤、三菱化学製の商品名:アデスター2007)を2重量部、シリコーン系整泡剤(日本ユニカー製の商品名:SZ−1919)を2重量部、シリカ(充填剤、日本アエロジル製の商品名:アエロジル200)を3重量部、シランカップリング剤(補強剤、日本ユニカー製の商品名:NUCA−1310)を2重量部、常温で攪拌混合及び脱泡し、25℃における粘度が31Pa・secである組成物を得た。
【0100】
上記の組成物を、剥離性を有するPETフィルム上に厚み0.8mmとなるように塗布した後、140℃で2分間加熱し、続けて200℃で4分間加熱したところ、発泡しなかった。加熱完了時の複素動粘度は8×103Pa・secであり、厚み0.78mm、見掛け密度992.2kg/m3、100%モジュラス501.1kPaのアクリル発泡体が得られた。
【0101】
下記表2は、上記実施例1〜6及び比較例1〜3において発泡剤含有組成物の各材料の組成、組成物粘度、塗布厚み等を示したものである。下記表2により下記のようなことが明らかとなった。
【0102】
【表2】
【0103】
1)実施例1、実施例2及び実施例3は、発泡剤であるアゾジカルボンアミドの添加量による見かけ密度の異なるアクリル発泡体を作成する事例である。
2)実施例4は、実施例3のアクリル系シロップをアクリルシロップAに変更したものであり、どちらも発泡剤を少量しか添加していないが、実施例3と比較して低密度のアクリル発泡体を得ることができた。これは、アクリル系シロップ中に含まれる重合性不飽和結合を有するモノマーであるMMAの沸点が100℃であり、重合前のMMAが揮発して気泡が形成して低密度化したものと考えられる。
【0104】
3)実施例5は、実施例1の熱重合開始剤添加量を増やした事例であるが、熱重合開始剤を増やすことで重合速度が上昇し、発泡開始時及び発泡完了時の複素動粘度が実施例1と比較して高くなっている。これにより発泡時に発泡ガスが膨張するのを抑制し、見掛け密度が若干高くなったものと考えられる。
【0105】
4)実施例6は、アクリル系シロップを構成する重合物の重合平均分子量が高いものを使用すると同時に塗布厚みを厚くした事例であるが、良好な発泡体を得ることができた。実施例7は、請求項1記載の最低限必要な原料を用いた事例であり、良好な発泡体を得ることができた。
【0106】
5)比較例1は、実施例4の熱重合開始剤を10時間半減期温度が低温のものに変更した事例であるが、複素動粘度が低い状態でMMAが急激に揮発し、見掛け上発泡したが、ガス抜けが先行してしまい、均一に発泡しなかったものと考えられる。
【0107】
6)比較例2は、実施例1の全ての架橋剤を添加しない状態で発泡させた事例であるが、重合前のMMAが揮発して見掛け上発泡し、一時的に気泡は形成したものの、架橋密度が低すぎるために発泡ガスを効率的に保持することができず、気泡が崩れてしまい、外観不良が著しく、また実用的な強度を有する発泡体を得ることができなかった。
【0108】
7)比較例3は、実施例3の発泡剤を添加しない状態で発泡を試みた例であるが、気泡を形成することができなかったため、発泡体が得られなかった。
【0109】
【発明の効果】
本発明に係るアクリル発泡体の製造方法においては、重合性不飽和結合を有するモノマーと重合性不飽和結合を有するモノマーの部分重合物からなるアクリル系シロップを主成分とした発泡剤含有組成物を、可塑剤を使用することなく重合及び架橋させ、発泡させているため、得られる発泡体から可塑剤の浸み出しがない。また、乳化剤等の界面活性剤を大量に使用していないため、吸水性が低く、耐水性にも優れたアクリル発泡体を提供することができる。更に、連続生産が可能であり、生産性に優れ、見掛け密度100kg/m3程度の低密度のアクリル発泡体をも得ることが可能であり、実用に供することのできる強度を有した均一かつ微細な気泡を持つアクリル発泡体の製造方法並びにその製造方法によるアクリル発泡体を提供することができる。
Claims (9)
- 重合性不飽和結合を有するモノマー及び重合性不飽和結合を有するモノマーの重合物からなるアクリル系シロップを主成分とし、少なくとも架橋剤と熱重合開始剤、発泡剤を添加した発泡剤含有組成物を支持体上に塗布した後、重合及び架橋させて、複素動粘度が2×102〜5×104Pa・secの状態で加熱して発泡させることを特徴とするアクリル発泡体の製造方法。
- 前記重合性不飽和結合を有するモノマーとして、(メタ)アクリル酸(シクロ)アルキルエステル、官能基含有モノマーから少なくとも一種類選択することを特徴とする請求項1記載のアクリル発泡体の製造方法。
- 重合性不飽和結合を有するモノマーの重合物として(メタ)アクリル酸(シクロ)アルキルエステル、官能基含有モノマーから少なくとも一種類選択し、重合させたものであることを特徴とする請求項1記載のアクリル発泡体の製造方法。
- アクリル系シロップ中に水酸基、グリシジル基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基から少なくとも一種類含有したモノマー及び/又は重合物を用いたことを特徴とする請求項1記載のアクリル発泡体の製造方法。
- 重合性不飽和結合を有するモノマーの重合物の重量平均分子量が1万〜60万であり、粘度範囲が0.1〜20.0Pa・s/25℃であるアクリル系シロップを用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のアクリル発泡体の製造方法。
- 架橋剤としてイソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アミン化合物、カルボキシル基含有化合物、酸無水物、金属キレート化合物から少なくとも一種類選択することを特徴とした請求項1〜5のいずれか1項に記載のアクリル発泡体の製造方法。
- 熱重合開始剤として過酸化物系重合開始剤、アゾ系重合開始剤から少なくとも一種を選択することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のアクリル発泡体の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれか1項の方法で得られたアクリル発泡体。
- 見かけ密度が100〜950kg/m3であることを特徴とする請求項8記載のアクリル発泡体。
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JP2012519750A (ja) * | 2009-03-05 | 2012-08-30 | スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー | アクリルフォーム層を含む接着剤物品 |
CN104039902A (zh) * | 2012-01-19 | 2014-09-10 | 阿克佐诺贝尔国际涂料股份有限公司 | 可固化涂料组合物 |
US10316156B2 (en) * | 2014-09-24 | 2019-06-11 | Nitto Denko Corporation | Foamed sheet |
-
2003
- 2003-01-07 JP JP2003001430A patent/JP2004211005A/ja active Pending
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