JP2004210736A - 芳香族カルボン酸の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】芳香族カルボン酸結晶を得る芳香族カルボン酸の製造方法において、固液分離された分離母液を二分するに際してパージ液に同伴する固形分を減少させ、かつ、上記パージ液を固形分回収装置に通すことなく直接に後工程で処理させる。
【解決手段】分離母液を、沈降分離槽(シックナー)又はサイクロンに供給して、上記分離母液中に残存する上記芳香族カルボン酸の結晶物を沈降させ、上記沈降分離槽又はサイクロンの下部から、上記結晶物を上記分離母液とともに抜き出して酸化反応器に送り、また、上記沈降分離槽又はサイクロンの上部又は中部から、上記析出物の濃度が低下した液を抜き出す。
【選択図】 なし
【解決手段】分離母液を、沈降分離槽(シックナー)又はサイクロンに供給して、上記分離母液中に残存する上記芳香族カルボン酸の結晶物を沈降させ、上記沈降分離槽又はサイクロンの下部から、上記結晶物を上記分離母液とともに抜き出して酸化反応器に送り、また、上記沈降分離槽又はサイクロンの上部又は中部から、上記析出物の濃度が低下した液を抜き出す。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、芳香族カルボン酸の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、テレフタル酸製造工程のプロセスは、図3に示すように、まず原料であるp−キシレンbを、酢酸aを溶媒に用いて、酸化反応器1で空気酸化させてテレフタル酸を生成させる酸化工程を行なう。反応後のテレフタル酸含有スラリーは必要に応じて晶析槽2に送り、テレフタル酸結晶を晶析させる。得られたスラリーcは固液分離機3で中純度又は粗性のテレフタル酸結晶dと分離母液eとに分ける。回収される中純度又は粗性のテレフタル酸結晶dは製品として出荷される他、高純度テレフタル酸結晶の原料となる。
【0003】
ところで、分離母液eには、酸化触媒成分やテレフタル酸、その他酸化中間体などの有効成分が含有されており、これをそのまま後工程で溶媒回収処理すると、これらの成分は廃棄され、その分だけ生産性が低くなる。そこでこの分離母液eを酸化反応器1に戻すことにより、この分離母液eを回収する方法が考えられる。
【0004】
しかし、上記分離母液eの中には、酸化触媒成分やテレフタル酸、その他酸化中間体などの有効成分だけではなく、安息香酸などの反応阻害物質も含有されている。さらに、上記分離母液の中には、酸化反応により生成する水が含まれており、これが系内に蓄積されることとなる。そして、酢酸触媒中の水分濃度が高くなりすぎると、反応に影響を及ぼすことがある。この場合、通常、水分濃度は約20重量%以下であることが望ましい。
【0005】
そのため、上記分離母液eの全量を酸化反応器1に戻すような再利用を繰り返していると、系内に上記の水分や阻害成分が蓄積されて、テレフタル酸の反応や品質、特に色調に影響を与えるという問題を生じる。
【0006】
これに対し、図4に示すように、分離母液eのうちの一部e’を酸化反応器1に戻し、残りをパージ液fとして処理することにより、系内への水分や上記反応阻害成分の蓄積を抑えることが知られている(特許文献1,2等参照)。
【0007】
このパージ液fは、含有する溶媒成分が蒸発され、酸化触媒成分や高沸点成分からなる缶出物より酸化触媒が回収されて、その他の釜残は廃棄処理される。しかし、上記のパージ液fには、固液分離機3で漏出したテレフタル酸結晶も含有されており、そのまま処理すると上記の漏出したテレフタル酸結晶は釜残として廃棄されるため、テレフタル酸結晶の生産性低下に繋がる。これに対し、図5に示すように、上記分離母液eのうち直接酸化反応器1に送られないパージ液fを、固形分回収装置4に通して、テレフタル酸結晶を回収し、この回収ケーキgを酸化反応器1に戻し、残存の濾液hをパージ液として処理することにより、テレフタル酸の生産性の向上を図る方法が特許文献3に記載されている。
【0008】
【特許文献1】
特開昭51−52148号公報
【特許文献2】
特開昭53−37636号公報
【特許文献3】
特表2000−504741号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献3に記載の方法は、分離母液eを二分し、一方をリサイクル液e’としてそのまま酸化反応器1に戻し、他方のパージ液fを固形分回収装置4によって処理し、得られた回収ケーキgを酸化反応器1に戻す方法であるが、この方法では、パージ液fが固形分を含むため、上記のパージ液処理ラインに、フィルター等の固形分回収装置を必要とする。
【0010】
そこでこの発明は、分離母液を二分するに際してパージ液に同伴する固形分を減少させ、かつ、上記パージ液を固形分回収装置に通すことなく直接に後工程で処理させることとを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この発明は、脂肪族カルボン酸からなる溶媒中で、芳香族アルキル化合物を酸化させる酸化工程を行ない、得られた芳香族カルボン酸を含有するスラリーを得、この芳香族カルボン酸含有スラリーから固液分離機により上記芳香族カルボン酸結晶を得る芳香族カルボン酸の製造方法において、
固液分離された分離母液を沈降分離槽(シックナー)やサイクロン等の分離槽に供給して、上記分離母液中に残存する上記芳香族カルボン酸の結晶物を沈降させ、上記分離槽の下部から、上記結晶物を上記分離母液とともに抜き出して上記の酸化工程へ送り、また、上記分離槽の上部又は中部から、上記結晶物の濃度が低下した澄み液を抜き出すことによって、上記の目的を実現したのである。
【0012】
分離母液の全量を分離槽に供給するので、分離母液を、芳香族カルボン酸結晶の含有量が多い液と、含有量が少ない液とに分けることが出来る。そして、含有量が多い液を酸化工程に戻し、含有量が少ない液をパージ処理工程に送ることができる。このため、固形分回収装置を使用することなく、パージ処理工程へ同伴される芳香族カルボン酸を低減でき、芳香族カルボン酸の生産性をあげることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態を説明する。
【0014】
この発明にかかる芳香族カルボン酸の製造方法は、図1に示すように、酸化反応器11に、溶媒である脂肪族カルボン酸A及び原料である芳香族アルキル化合物Bを加えて空気酸化させて、芳香族カルボン酸を製造する方法である。芳香族カルボン酸がテレフタル酸であるときは、溶媒である脂肪族カルボン酸Aには酢酸が、原料である芳香族アルキル化合物Bにはp−キシレンが用いられる。
【0015】
酸化反応器11において得られた芳香族カルボン酸含有スラリーは、晶析槽12に送られて、さらに晶析されてスラリーCとなる。次いで固液分離機13でこのスラリーCを、中純度又は粗性の芳香族カルボン酸結晶Dと、分離母液Eとに分離する。芳香族カルボン酸結晶Dは、製品として出荷されたり、精製工程の原料として使用される。
【0016】
上記固液分離機13としてロータリーバキュームフィルターや水平ベルトフィルター等を用いることができる。上記ロータリーバキュームフィルターを用いる場合、上記の分離母液Eに含まれる上記芳香族カルボン酸結晶の濃度は、0.1〜10重量%がよく、0.1〜2重量%がより望ましい。0.1重量%より濃度を低くすることは機構上困難であり、一方、10重量%以上であると、後述する処理が困難となる場合がある。上記水平ベルトフィルターを用いる場合、上記の分離母液Eに含まれる上記芳香族カルボン酸の濃度は、上記と同様の理由により、0.5〜10重量%がよく、0.5〜5重量%がより望ましい。
【0017】
上記分離母液Eは沈降分離槽15すなわちシックナーに導入される。上記分離母液Eには、固液分離機13で回収されなかった微細な芳香族カルボン酸結晶物が含まれている。上記沈降分離槽15の中で静置されることによって、それら芳香族カルボン酸結晶物が液の下部へと集まり、液の上部は上記芳香族カルボン酸結晶の含有量が少なくなる。これにより、沈降分離槽15の上部から液を抜き出すと上記芳香族カルボン酸結晶の含有量が少ない上澄み液Iが得られ、沈降分離槽15の下部からは分離母液Eが含有する上記芳香族カルボン酸結晶の大半を含んだ濃縮スラリーJが得られる。
【0018】
上記沈降分離槽15では、上澄み液Iが含む上記芳香族カルボン酸結晶の濃度が、分離母液Eが含む上記芳香族カルボン酸結晶の濃度の半分以下になるまで、上記芳香族カルボン酸を沈降させることが望ましい。上澄み液Iはその後溶媒及び触媒回収工程に送られ、そこに含まれた上記芳香族カルボン酸結晶は釜残となり回収されないため、上澄み液Iに含まれる上記芳香族カルボン酸結晶は少ないほどより望ましい。
【0019】
上記沈降分離槽15の内部にはレーキが設けられていることが望ましい。沈降分離槽15の底には、濃縮スラリーJに含まれる固体の上記芳香族カルボン酸結晶が溜まることによって、スラリーから塊となった上記芳香族カルボン酸が槽の壁面に付着する場合がある。そこでレーキを槽内下部で回転させることによって、壁面から上記芳香族カルボン酸を掻き取り、上記塊の付着を防ぐことができる。その回転速度は、20rpm以下が望ましく、10rpm以下がより望ましい。あまり回転速度が速いと、その分だけ槽内の液体を攪拌し、沈降分離作業を妨げることになってしまうため、上記芳香族カルボン酸が付着しない速度の範囲で、出来るだけ遅いことが望ましい。ただし、付着を防ぐためにはある程度の頻度で攪拌しなければならないため、回転速度は1rpm以上であることが望ましい。
【0020】
上記濃縮スラリーJは、酸化反応器11へ送られる。濃縮スラリーJに含まれていた上記芳香族カルボン酸結晶は、酸化反応器11で新たに生成した上記芳香族カルボン酸結晶とともに、固液分離機13において回収される。先に沈降分離槽15において、より多くの上記芳香族カルボン酸結晶を濃縮スラリーJに含有させているため、固液分離機13で回収される上記芳香族カルボン酸結晶は多くなっている。
【0021】
上記分離母液Eを、上記芳香族カルボン酸結晶含有量の高いスラリーと、上記芳香族カルボン酸結晶含有量の低い液に分けるにあたって、図2に示すように沈降分離槽15の代わりにサイクロン16を用いてもよい。サイクロン16以外の部分のプロセスは図1と同じである。サイクロン16では遠心力を用いて、分離母液Eに含まれる上記芳香族カルボン酸結晶を沈降分離させる。分離母液Eに含まれる上記芳香族カルボン酸結晶の大半はサイクロン16の下部から濃縮スラリーJ’として排出され、また、サイクロン16の中部からは上記芳香族カルボン酸結晶の含有量が低下した中澄み液I’を溢流液として抜き出す。沈降分離槽15では分離させるのにある程度の時間を要するが、サイクロン16を用いると所要時間を短縮することができる。以後の工程は図1と同様に、中澄み液I’を溶媒及び触媒回収工程へ送って系外から除去にする。これにより、分離母液Eが含有する芳香族カルボン酸結晶は酸化反応器11に回収され、生産性の向上に繋がる。
【0022】
なお、上記分離母液Eを、上記芳香族カルボン酸結晶含有量の高いスラリーと、上記芳香族カルボン酸結晶含有量の低い液に分けるにあたって、この発明の効果を奏するものであれば、上記の沈降分離槽15やサイクロン16に限られず、他の分離槽を用いることもできる。
【0023】
【発明の効果】
この発明においては、芳香族カルボン酸結晶を含有する分離母液の全量を沈降分離槽やサイクロン等の分離機に供給して、上記芳香族カルボン酸結晶を沈降させて上記分離母液を分けるので、上記芳香族カルボン酸の濃度を高めたスラリーから上記芳香族カルボン酸結晶をより多く回収し、芳香族カルボン酸の生産性を向上させることができる。
【0024】
また、芳香族カルボン酸含有量を低減させた液を溶媒及び触媒回収工程へ送るので、これらの工程に送られる芳香族カルボン酸を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明にかかる芳香族カルボン酸製造工程を示すフロー図
【図2】この発明にかかる芳香族カルボン酸製造工程を示す他のフロー図
【図3】従来の方法を示すフロー図
【図4】従来の方法を示す他のフロー図
【図5】従来の方法を示す他のフロー図
【符号の説明】
1,11 酸化反応器
2,12 晶析槽
3,13 固液分離機
4 固形分回収装置
15 沈降分離槽
16 サイクロン
a 酢酸溶媒
b p−キシレン
c スラリー
d 中純度又は粗性のテレフタル酸結晶
e 分離母液
e’ リサイクル液
f パージ液
g 回収ケーキ
h 残存濾液
A 脂肪族カルボン酸溶媒
B 芳香族アルキル化合物
C スラリー
D 中純度又は粗性の芳香族カルボン酸結晶
E 分離母液
I 上澄み液
I’ 中澄み液
J 濃縮スラリー
J’ 濃縮スラリー
【発明の属する技術分野】
この発明は、芳香族カルボン酸の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、テレフタル酸製造工程のプロセスは、図3に示すように、まず原料であるp−キシレンbを、酢酸aを溶媒に用いて、酸化反応器1で空気酸化させてテレフタル酸を生成させる酸化工程を行なう。反応後のテレフタル酸含有スラリーは必要に応じて晶析槽2に送り、テレフタル酸結晶を晶析させる。得られたスラリーcは固液分離機3で中純度又は粗性のテレフタル酸結晶dと分離母液eとに分ける。回収される中純度又は粗性のテレフタル酸結晶dは製品として出荷される他、高純度テレフタル酸結晶の原料となる。
【0003】
ところで、分離母液eには、酸化触媒成分やテレフタル酸、その他酸化中間体などの有効成分が含有されており、これをそのまま後工程で溶媒回収処理すると、これらの成分は廃棄され、その分だけ生産性が低くなる。そこでこの分離母液eを酸化反応器1に戻すことにより、この分離母液eを回収する方法が考えられる。
【0004】
しかし、上記分離母液eの中には、酸化触媒成分やテレフタル酸、その他酸化中間体などの有効成分だけではなく、安息香酸などの反応阻害物質も含有されている。さらに、上記分離母液の中には、酸化反応により生成する水が含まれており、これが系内に蓄積されることとなる。そして、酢酸触媒中の水分濃度が高くなりすぎると、反応に影響を及ぼすことがある。この場合、通常、水分濃度は約20重量%以下であることが望ましい。
【0005】
そのため、上記分離母液eの全量を酸化反応器1に戻すような再利用を繰り返していると、系内に上記の水分や阻害成分が蓄積されて、テレフタル酸の反応や品質、特に色調に影響を与えるという問題を生じる。
【0006】
これに対し、図4に示すように、分離母液eのうちの一部e’を酸化反応器1に戻し、残りをパージ液fとして処理することにより、系内への水分や上記反応阻害成分の蓄積を抑えることが知られている(特許文献1,2等参照)。
【0007】
このパージ液fは、含有する溶媒成分が蒸発され、酸化触媒成分や高沸点成分からなる缶出物より酸化触媒が回収されて、その他の釜残は廃棄処理される。しかし、上記のパージ液fには、固液分離機3で漏出したテレフタル酸結晶も含有されており、そのまま処理すると上記の漏出したテレフタル酸結晶は釜残として廃棄されるため、テレフタル酸結晶の生産性低下に繋がる。これに対し、図5に示すように、上記分離母液eのうち直接酸化反応器1に送られないパージ液fを、固形分回収装置4に通して、テレフタル酸結晶を回収し、この回収ケーキgを酸化反応器1に戻し、残存の濾液hをパージ液として処理することにより、テレフタル酸の生産性の向上を図る方法が特許文献3に記載されている。
【0008】
【特許文献1】
特開昭51−52148号公報
【特許文献2】
特開昭53−37636号公報
【特許文献3】
特表2000−504741号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献3に記載の方法は、分離母液eを二分し、一方をリサイクル液e’としてそのまま酸化反応器1に戻し、他方のパージ液fを固形分回収装置4によって処理し、得られた回収ケーキgを酸化反応器1に戻す方法であるが、この方法では、パージ液fが固形分を含むため、上記のパージ液処理ラインに、フィルター等の固形分回収装置を必要とする。
【0010】
そこでこの発明は、分離母液を二分するに際してパージ液に同伴する固形分を減少させ、かつ、上記パージ液を固形分回収装置に通すことなく直接に後工程で処理させることとを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この発明は、脂肪族カルボン酸からなる溶媒中で、芳香族アルキル化合物を酸化させる酸化工程を行ない、得られた芳香族カルボン酸を含有するスラリーを得、この芳香族カルボン酸含有スラリーから固液分離機により上記芳香族カルボン酸結晶を得る芳香族カルボン酸の製造方法において、
固液分離された分離母液を沈降分離槽(シックナー)やサイクロン等の分離槽に供給して、上記分離母液中に残存する上記芳香族カルボン酸の結晶物を沈降させ、上記分離槽の下部から、上記結晶物を上記分離母液とともに抜き出して上記の酸化工程へ送り、また、上記分離槽の上部又は中部から、上記結晶物の濃度が低下した澄み液を抜き出すことによって、上記の目的を実現したのである。
【0012】
分離母液の全量を分離槽に供給するので、分離母液を、芳香族カルボン酸結晶の含有量が多い液と、含有量が少ない液とに分けることが出来る。そして、含有量が多い液を酸化工程に戻し、含有量が少ない液をパージ処理工程に送ることができる。このため、固形分回収装置を使用することなく、パージ処理工程へ同伴される芳香族カルボン酸を低減でき、芳香族カルボン酸の生産性をあげることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態を説明する。
【0014】
この発明にかかる芳香族カルボン酸の製造方法は、図1に示すように、酸化反応器11に、溶媒である脂肪族カルボン酸A及び原料である芳香族アルキル化合物Bを加えて空気酸化させて、芳香族カルボン酸を製造する方法である。芳香族カルボン酸がテレフタル酸であるときは、溶媒である脂肪族カルボン酸Aには酢酸が、原料である芳香族アルキル化合物Bにはp−キシレンが用いられる。
【0015】
酸化反応器11において得られた芳香族カルボン酸含有スラリーは、晶析槽12に送られて、さらに晶析されてスラリーCとなる。次いで固液分離機13でこのスラリーCを、中純度又は粗性の芳香族カルボン酸結晶Dと、分離母液Eとに分離する。芳香族カルボン酸結晶Dは、製品として出荷されたり、精製工程の原料として使用される。
【0016】
上記固液分離機13としてロータリーバキュームフィルターや水平ベルトフィルター等を用いることができる。上記ロータリーバキュームフィルターを用いる場合、上記の分離母液Eに含まれる上記芳香族カルボン酸結晶の濃度は、0.1〜10重量%がよく、0.1〜2重量%がより望ましい。0.1重量%より濃度を低くすることは機構上困難であり、一方、10重量%以上であると、後述する処理が困難となる場合がある。上記水平ベルトフィルターを用いる場合、上記の分離母液Eに含まれる上記芳香族カルボン酸の濃度は、上記と同様の理由により、0.5〜10重量%がよく、0.5〜5重量%がより望ましい。
【0017】
上記分離母液Eは沈降分離槽15すなわちシックナーに導入される。上記分離母液Eには、固液分離機13で回収されなかった微細な芳香族カルボン酸結晶物が含まれている。上記沈降分離槽15の中で静置されることによって、それら芳香族カルボン酸結晶物が液の下部へと集まり、液の上部は上記芳香族カルボン酸結晶の含有量が少なくなる。これにより、沈降分離槽15の上部から液を抜き出すと上記芳香族カルボン酸結晶の含有量が少ない上澄み液Iが得られ、沈降分離槽15の下部からは分離母液Eが含有する上記芳香族カルボン酸結晶の大半を含んだ濃縮スラリーJが得られる。
【0018】
上記沈降分離槽15では、上澄み液Iが含む上記芳香族カルボン酸結晶の濃度が、分離母液Eが含む上記芳香族カルボン酸結晶の濃度の半分以下になるまで、上記芳香族カルボン酸を沈降させることが望ましい。上澄み液Iはその後溶媒及び触媒回収工程に送られ、そこに含まれた上記芳香族カルボン酸結晶は釜残となり回収されないため、上澄み液Iに含まれる上記芳香族カルボン酸結晶は少ないほどより望ましい。
【0019】
上記沈降分離槽15の内部にはレーキが設けられていることが望ましい。沈降分離槽15の底には、濃縮スラリーJに含まれる固体の上記芳香族カルボン酸結晶が溜まることによって、スラリーから塊となった上記芳香族カルボン酸が槽の壁面に付着する場合がある。そこでレーキを槽内下部で回転させることによって、壁面から上記芳香族カルボン酸を掻き取り、上記塊の付着を防ぐことができる。その回転速度は、20rpm以下が望ましく、10rpm以下がより望ましい。あまり回転速度が速いと、その分だけ槽内の液体を攪拌し、沈降分離作業を妨げることになってしまうため、上記芳香族カルボン酸が付着しない速度の範囲で、出来るだけ遅いことが望ましい。ただし、付着を防ぐためにはある程度の頻度で攪拌しなければならないため、回転速度は1rpm以上であることが望ましい。
【0020】
上記濃縮スラリーJは、酸化反応器11へ送られる。濃縮スラリーJに含まれていた上記芳香族カルボン酸結晶は、酸化反応器11で新たに生成した上記芳香族カルボン酸結晶とともに、固液分離機13において回収される。先に沈降分離槽15において、より多くの上記芳香族カルボン酸結晶を濃縮スラリーJに含有させているため、固液分離機13で回収される上記芳香族カルボン酸結晶は多くなっている。
【0021】
上記分離母液Eを、上記芳香族カルボン酸結晶含有量の高いスラリーと、上記芳香族カルボン酸結晶含有量の低い液に分けるにあたって、図2に示すように沈降分離槽15の代わりにサイクロン16を用いてもよい。サイクロン16以外の部分のプロセスは図1と同じである。サイクロン16では遠心力を用いて、分離母液Eに含まれる上記芳香族カルボン酸結晶を沈降分離させる。分離母液Eに含まれる上記芳香族カルボン酸結晶の大半はサイクロン16の下部から濃縮スラリーJ’として排出され、また、サイクロン16の中部からは上記芳香族カルボン酸結晶の含有量が低下した中澄み液I’を溢流液として抜き出す。沈降分離槽15では分離させるのにある程度の時間を要するが、サイクロン16を用いると所要時間を短縮することができる。以後の工程は図1と同様に、中澄み液I’を溶媒及び触媒回収工程へ送って系外から除去にする。これにより、分離母液Eが含有する芳香族カルボン酸結晶は酸化反応器11に回収され、生産性の向上に繋がる。
【0022】
なお、上記分離母液Eを、上記芳香族カルボン酸結晶含有量の高いスラリーと、上記芳香族カルボン酸結晶含有量の低い液に分けるにあたって、この発明の効果を奏するものであれば、上記の沈降分離槽15やサイクロン16に限られず、他の分離槽を用いることもできる。
【0023】
【発明の効果】
この発明においては、芳香族カルボン酸結晶を含有する分離母液の全量を沈降分離槽やサイクロン等の分離機に供給して、上記芳香族カルボン酸結晶を沈降させて上記分離母液を分けるので、上記芳香族カルボン酸の濃度を高めたスラリーから上記芳香族カルボン酸結晶をより多く回収し、芳香族カルボン酸の生産性を向上させることができる。
【0024】
また、芳香族カルボン酸含有量を低減させた液を溶媒及び触媒回収工程へ送るので、これらの工程に送られる芳香族カルボン酸を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明にかかる芳香族カルボン酸製造工程を示すフロー図
【図2】この発明にかかる芳香族カルボン酸製造工程を示す他のフロー図
【図3】従来の方法を示すフロー図
【図4】従来の方法を示す他のフロー図
【図5】従来の方法を示す他のフロー図
【符号の説明】
1,11 酸化反応器
2,12 晶析槽
3,13 固液分離機
4 固形分回収装置
15 沈降分離槽
16 サイクロン
a 酢酸溶媒
b p−キシレン
c スラリー
d 中純度又は粗性のテレフタル酸結晶
e 分離母液
e’ リサイクル液
f パージ液
g 回収ケーキ
h 残存濾液
A 脂肪族カルボン酸溶媒
B 芳香族アルキル化合物
C スラリー
D 中純度又は粗性の芳香族カルボン酸結晶
E 分離母液
I 上澄み液
I’ 中澄み液
J 濃縮スラリー
J’ 濃縮スラリー
Claims (11)
- 脂肪族カルボン酸からなる溶媒中で、芳香族アルキル化合物を酸化させる酸化工程を行ない、得られた芳香族カルボン酸を含有するスラリーから固液分離機により上記芳香族カルボン酸結晶を得る芳香族カルボン酸の製造方法において、
固液分離された分離母液を沈降分離槽(シックナー)に供給して、上記分離母液中に残存する上記芳香族カルボン酸の結晶物を沈降させ、上記沈降分離槽の下部から、上記結晶物を上記分離母液とともに抜き出して上記の酸化工程へ送り、また、上記沈降分離槽の上部から、上記結晶物の濃度が低下した上澄み液を抜き出す、芳香族カルボン酸の製造方法。 - 上記上澄み液中の上記結晶物の濃度が、上記沈降分離槽に供給する上記分離母液中の上記結晶物の濃度の半分以下である、請求項1に記載の芳香族カルボン酸の製造方法。
- 上記沈降分離槽にレーキを設けた、請求項1又は2に記載の芳香族カルボン酸の製造方法。
- 上記沈降分離槽内における上記レーキの回転速度が20rpm以下である、請求項3に記載の芳香族カルボン酸の製造方法。
- 上記沈降分離槽内における上記レーキの回転速度が10rpm以下である、請求項3に記載の芳香族カルボン酸の製造方法。
- 脂肪族カルボン酸からなる溶媒中で、芳香族アルキル化合物を酸化させる酸化工程を行ない、得られた芳香族カルボン酸を含有するスラリーから固液分離機により上記芳香族カルボン酸結晶を得る芳香族カルボン酸の製造方法において、
固液分離された分離母液をサイクロンに供給して、上記分離母液中に残存する上記芳香族カルボン酸の結晶物を沈降させ、上記サイクロンの下部から、上記結晶物を上記分離母液とともに抜き出して上記の酸化工程へ送り、また、上記サイクロンの中部から、上記結晶物の濃度が低下した中澄み液を溢流液で抜き出す、芳香族カルボン酸の製造方法。 - 上記分離母液中の上記結晶物の濃度が0.1〜10重量%である、請求項1乃至6のいずれかに記載の芳香族カルボン酸の製造方法。
- 上記固液分離機がロータリーバキュームフィルターである、請求項7に記載の芳香族カルボン酸の製造方法。
- 上記分離母液中の上記結晶物の濃度が0.5〜10重量%である、請求項1乃至6のいずれかに記載の芳香族カルボン酸の製造方法。
- 上記分離母液中の上記結晶物の濃度が0.5〜5重量%である、請求項1乃至6のいずれかに記載の芳香族カルボン酸の製造方法。
- 上記固液分離機が水平ベルトフィルターである、請求項9又は10に記載の芳香族カルボン酸の製造方法。
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CN109173322A (zh) * | 2018-08-27 | 2019-01-11 | 北京万邦达环保技术股份有限公司 | 利用快插式结晶分离器进行蒸发结晶的方法 |
CN109400466B (zh) * | 2018-11-12 | 2021-05-18 | 天华化工机械及自动化研究设计院有限公司 | 一种提高粗对苯二甲酸浆料进料浓度的方法及增浓装置 |
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2003
- 2003-01-07 JP JP2003000925A patent/JP2004210736A/ja active Pending
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