JP2004210492A - トラバース制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】トラバース幅指令補正値を求め、さらに、励磁角に応じて変化し、トラバースガイドのターン位置での位置決め精度に関与するモータトルクを考慮し、トラバースガイドをターンさせ、巻き形状不良の改善を図る。
【解決手段】トラバースガイドを往復動させるモータ11を備え、トラバースガイドの位置と、モータ11の位置とが対応するトラバース装置を制御するトラバース制御装置5において、実際のトラバース幅と目標トラバース幅との偏差に基づいて、ターン位置補正を行う目標トラバース幅補正手段(目標トラバース幅補正部56e)を備えるとともに、トラバースガイドのターンのタイミングにおけるステータの励磁状態を予測する励磁状態予測手段(ターン時励磁位相予測部56d)とを備え、前記目標トラバース幅補正手段は、該予測手段の予測結果に基づいて、予め設定された目標トラバース幅を補正する。
【選択図】 図2
【解決手段】トラバースガイドを往復動させるモータ11を備え、トラバースガイドの位置と、モータ11の位置とが対応するトラバース装置を制御するトラバース制御装置5において、実際のトラバース幅と目標トラバース幅との偏差に基づいて、ターン位置補正を行う目標トラバース幅補正手段(目標トラバース幅補正部56e)を備えるとともに、トラバースガイドのターンのタイミングにおけるステータの励磁状態を予測する励磁状態予測手段(ターン時励磁位相予測部56d)とを備え、前記目標トラバース幅補正手段は、該予測手段の予測結果に基づいて、予め設定された目標トラバース幅を補正する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、トラバースガイドを往復動させるモータを備え、トラバースガイドの位置と、モータの位置とが対応するトラバース装置を制御するトラバース制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のトラバース装置においては、正逆回転するトラバースモータの駆動により、紡出された糸条又は給糸パッケージから解舒された糸条をトラバースして、所定の巻き形状の巻き取りパッケージを生成している。
そして、所定の巻き形状を形成すべく、正確に整列巻をするための技術が公開されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−334995号公報
【0004】
この文献では、トラバースガイドとなるトラバース軸を駆動するモータと、巻き取り側の主軸を駆動するモータとの間での「制御遅れ」や、「トラバース軸の慣性」が巻き幅不足や巻き太りの不具合につながることに着目し、これらの不具合を解消するための補正値の導出に関する技術が開示されている。
具体的には、記憶手段により実際のトラバース幅を記憶しておき、制御手段により目標トラバース幅を算出し、前記実際のトラバース幅と目標トラバース幅との偏差を算出し、該偏差より補正値を算出し、次回のターン位置についてのトラバース幅指令補正値を求める制御を内容とするものである。
そして、この技術によれば、巻き取りパッケージとなる主軸と、トラバースガイドとなるトラバース軸との位相を同期させることが可能となり、巻き取り用ボビンに巻線を正確に整列巻きできることとしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、上述したトラバースモータにおいて、例えば、図6に示すようなステッピングモータを用いた場合、ステータ側に備える複数の励磁相を形成する各モータコイルを励磁させ、励磁されたモータコイルにより生じる磁力によりロータ41を引き付けることにより、ロータの制動・正逆回転の変更といった制御をする構成としている。
そして、例えば、本構成のような2相モータであって、1相2相交互に励磁するハーフステップ駆動(1−2相励磁)又は、マイクロステップ駆動とする場合では、隣合う2つの励磁相の中間の角度の位置、即ち、B相、Abar相間における、2相励磁位置P1の際に電気角一周内にて最も大きなトルクT1をロータに付与させることができるから、ターン時における「励磁角ψ」が、トルクT1における励磁角Ψ(以下、「最大トルク励磁角Ψ」とする)と一致する場合には、最大のトルクT1により確実にロータの制動・正逆回転の変更、即ち、目標トラバース幅又は、トラバース幅にて確実にターンさせることができる。
一方、1相励磁位置P3では、トルクT1と比較して小さいトルクT3が生じるにとどまる。ここで、あらゆる位置での位置決めを正確に行うにはトルク特性が不十分な低容量のモータを用いた場合、前記2相励磁の場合と比較してロータの制動性が悪く、目標トラバース幅にて確実にターンされないといった問題が生じることになる。尚、Abar相の励磁:B相の励磁を1:2の比率で2相励磁とした場合の中間位置P2でも、トルクT1と比較して小さいトルクT2が生じるにとどまる点で同様である。
【0006】
そして、パッケージ端部の形状をテーパー形状とするテーパーエンドパッケージを形成する場合には、パッケージの巻太り、即ち、巻取時間の経過に伴い、この目標トラバース幅指令値は変化する。従って、目標トラバース幅指令値に対応する「励磁角ψ」は、巻取時間の経過に伴い変化する。即ち、励磁位置によって、ロータの制動性(位置決め精度)が異なるとすると、トラバース毎にロータに付与するトルクが異なることになる。このことから、上記文献で開示される技術による補正のみでは、トラバース毎に、トラバースガイドのターン位置での位置決め精度にばらつきが生じる。この場合、パッケージ端部の形状が所望の形状に対してばらつき、テーパー面に段が形成されるなどの不良パッケージとなるおそれがあるという点で不十分であるといえる。
即ち、トラバースガイドの実際のトラバース幅を所望のパッケージ形状を得るように制御するには、上述したような前記トラバース幅指令値を求め目標トラバース幅補正を行った上で、さらに、前記「励磁角ψ」に応じて異なるターン位置決め精度を考慮した補正の必要があるのである。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、トラバース幅指令補正値を求めた上で、さらに、励磁角に応じて変化し、トラバースガイドのトラバース幅での位置決め精度に関与するモータトルクを考慮して、トラバースガイドをターンさせることにより、巻き形状不良の改善を図ることを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の解決しようとする課題は以上のごとくであり、次に該課題を解決する為の手段を説明する。
即ち、請求項1に記載のごとく、トラバースガイドを往復動させるモータを備え、トラバースガイドの位置と、モータの位置とが対応するトラバース装置を制御するトラバース制御装置において、実際のトラバース幅と目標トラバース幅との偏差に基づいて、トラバース幅補正を行う目標トラバース幅補正手段を備えるとともに、トラバースガイドのターンのタイミングにおけるステータの励磁状態を予測する励磁状態予測手段とを備え、前記目標トラバース幅補正手段は、予測手段の予測結果に基づいて、予め設定された目標トラバース幅を補正することである。
【0009】
また、請求項2に記載のごとく、請求項1に記載のトラバース制御装置において、実際のトラバース幅と目標トラバース幅との偏差に基づいて、トラバース幅補正を行う目標トラバース幅補正手段を備えるとともに、トラバースガイドのターンのタイミングにおけるステータの励磁状態を予測する励磁状態予測手段とを備え、上記予測手段が、上記トラバースガイドのターン時点で、電気角一周内において最大のトルクが付与されるとの予測結果を出力した時、位置補正部は、目標トラバース幅の補正量を最大にするよう予め設定されていることである。
【0010】
また、請求項3に記載のごとく、トラバースガイドを往復動させるモータを備え、トラバースガイドの位置と、モータの位置とが対応するトラバース装置を制御するトラバース制御装置において、実際のトラバースターン位置と目標ターン位置との偏差に基づいて、ターン位置補正を行う目標ターン位置補正手段を備えるとともに、トラバースガイドのターンのタイミングにおけるステータの励磁状態を予測する励磁状態予測手段とを備え、前記目標ターン位置補正手段は、予測手段の予測結果に基づいて、予め設定された目標ターン位置を補正することである。
【0011】
また、請求項4に記載のごとく、請求項3に記載のトラバース制御装置において、上記予測手段が、上記トラバースガイドのターン時点で、電気角一周内において最大のトルクが付与されるとの予測結果を出力した時、前記目標ターン位置補正手段は、目標ターン位置の補正量を最大にするよう予め設定されていることである。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
図1は本発明のトラバース装置の全体構成を示す図、図2はトラバース制御装置の構成を示すブロック図、図3はトラバース幅補正制御の手順を示すフローチャート、図4は後述する第二補正におけるトラバースターン回数と補正値との関係を示す図、図5の(a)は、マイクロステップ駆動における励磁角ψと最大トルク励磁角Ψの関係を示す模式図、図5の(b)は、トラバース幅指令補正値に対応する励磁角ψと補正値との関係を示す図、図5の(c)は、トラバース幅と補正値との関係を示す図、図6は励磁相とトルクの関係を示す図である。
【0013】
まず、本発明に係るトラバース装置の構成について説明する。
図1に示すように、本発明にかかるトラバース制御装置を搭載したトラバース装置1は、紡出されたか又は図示しない給糸パッケージから解舒された糸条Yをボビン軸方向にトラバースしながら巻取りパッケージ3に巻き返す巻取装置に用いられている。
巻取りパッケージ3は、ボビン31に糸条Yを巻き取ることで形成され、クレードル32により回転自在に支持されている。更に、トラバースガイド15の位置と、トラバースモータ11のロータ位置は互いに対応するようになっている。尚、図1では、巻取りパッケージ3として、巻太りに伴って次第にトラバース幅(巻き幅)を狭くして形成したテーパーエンドパッケージが図示されているが、パッケージ形状は、このようなテーパーエンド形状に限定されるものではない。
巻取りパッケージ3の外周面には、巻取用モータにより回転駆動される巻取りローラ2が当接しており、該巻取りローラ2により巻取りパッケージ3を回転駆動している。
【0014】
トラバース装置1は、例えばステッピングモータに構成されるトラバースモータ11と、該トラバースモータ11により正逆回転切換可能に回転駆動される駆動プーリ12と、トラバース範囲の両側方に配置される従動プーリ13・13と、該駆動プーリ12及び従動プーリ13・13に巻回される駆動ベルト14と、該駆動ベルト14に固設され糸条Yをガイドするトラバースガイド15とを備えている。
尚、駆動ベルト14としては、タイミングベルト等の各種ベルトや金属製ワイヤをはじめ、その他同様の機能を有する可撓性のエンドレス体を使用することができる。
トラバースガイド15は、駆動プーリ12の正逆回転に伴って、ボビン31の軸方向における一端側から他端側、又は他端側から一端側へ往復移動し、これにより、巻取りパッケージ3に巻き取られる糸条Yをトラバースするように構成している。
また、トラバース装置1はトラバース制御装置5を備えており、トラバースモータ11の駆動を制御して、トラバースガイド15の位置及び駆動速度を制御している。
このように、トラバースモータ11の正逆駆動を制御することにより、糸条Yが係合したトラバースガイド15を所定のトラバース幅で往復動させることができる。
【0015】
以上のごとく構成されるトラバース装置1は、単一の巻取りパッケージ3に対して個別にトラバースモータ11を設け、マイクロコンピュータを有するトラバース制御装置5により、トラバースガイド15の位置及び速度を制御するようにしている。
そして、トラバース制御装置5は、後述するモーションコントローラ52及びモータドライバ51により構成されている。
モーションコントローラ52は、トラバースモータ11に対する位置指令を出力し、モータドライバ51は、位置指令に応じた回転量となるようにトラバースモータ11を制御する。
また、モータドライバ51にはトラバースのトラバース幅補正部56が設けられており、トラバースのトラバース幅を制御して、巻き形状不良を防止するようにしている。
【0016】
次に、トラバース制御装置5による、トラバースモータ11の制御について説明する。
トラバース制御装置5は、トラバースモータ11を介してトラバースガイド15の位置制御を行うものであり、トラバースモータ11に所定の駆動動作を行わせるための指令信号(位置指令)を生成するモーションコントローラ52と、生成した指令信号に従ってトラバースモータ11を駆動するモータドライバ51とを備えている。
モーションコントローラ52及びモータドライバ51の主な機能は、共通のマイクロコンピュータ(図示略)により実現されている。
このマイクロコンピュータは、トラバースガイド15の原点出し機能、モーションコントロール機能及びモータドライバ機能を実行する手段の主構成となる、単一の中央処理装置(CPU)と、トラバースガイド15のトラバース幅補正プログラムやトラバースの制御プログラム(モーションプログラム)等を格納するROMと、演算データ等を一時的に格納するRAMとを備えている。中央処理装置は、ROMに格納された制御プログラムを実行することにより、後述するようなトラバース幅補正に関するトラバースモータ11の制御(トラバース制御)等を行う。尚、モーションコントローラ52及びモータドライバ51に対してそれぞれ個別にマイクロコンピュータ(中央処理装置)を設け、各機能を別個のマイクロコンピュータにより実現するようにしてもよい。
また、トラバース制御装置5には、トラバースモータ11の回転速度を検出するためのモータ回転検出器(ロータリエンコーダ)53、及び巻取りパッケージ3の回転速度を検出するためのパッケージ回転検出器54が接続されており、それぞれの検出値がトラバース制御装置5に入力されている。
【0017】
トラバース制御装置5のモーションコントローラ52内にはパッケージ径算出手段52aが設けられており、巻取中パッケージ回転検出器54の検出値に基づいて常時パッケージ径が算出される。
また、モーションコントローラ52内に設けられる指令信号生成手段52bが、予め設定された駆動パターン及び算出されたパッケージ径に基づいて、トラバースモータ11を駆動制御するための位置指令を生成する。
尚、パッケージ径算出方法としては、巻取りローラ2に対する巻取りパッケージ3の相対位置(クレードル32の角度)を検出する等、他の方法を使用することもできる。
【0018】
トラバース制御装置5のモータドライバ51は、複数のスイッチング素子を有する駆動回路(図示略)を含み、モーションコントローラ52により生成された位置指令に従い、トラバースモータ11に対してモータ駆動信号を出力する。
モータ駆動信号が入力されたトラバースモータ11は、位置指令の周波数に応じた速度で、位置指令に応じた角度だけ回転駆動される。即ち、モータドライバ51は、トラバースモータ11の回転位置をロータリエンコーダ等の回転検出器53により検出し、その検出された回転位置と位置指令との偏差をマイクロコンピュータにより求めて、この偏差がゼロになるように、即ち検出位置が位置指令に追従するようにトラバースモータ11の位置制御を行う。
さらに、図2に示すごとく、モータドライバ51には、トラバース幅補正部56が備えられており、前記モーションコントローラ52のパッケージ径算出手段52aにより算出された算出パッケージ径と、指令信号生成手段52bにより生成された位置指令が入力される。
該トラバース幅補正部56には、トラバースガイド15が右側でターンする際に、前記回転検出器53で検出される回転位置検出値をターン位置として記憶する右ターン位置記憶部56aと、同じく左側でターンする際に、前記回転検出器53で検出される回転位置検出値を実際のターン位置として記憶する左ターン位置記憶部56bと、前記算出パッケージ径と指令信号に基づき、パッケージの巻太り状態に応じて変化するトラバースガイド15の目標トラバース幅の理論値を算出する目標トラバース幅算出部56cと、同じく前記算出パッケージ径と指令信号に基づき、トラバースガイド15のターン時において励磁されるモータのステータコイルの励磁状態、即ち、ターン時の励磁位相を予測する励磁状態予測手段であるターン時励磁位相予測部56dが備えられている。
また、前記右ターン位置記憶部56a、左ターン位置記憶部56b、及び目標トラバース幅算出部56cは、目標トラバース幅補正手段である目標トラバース幅補正部56e内に設けた目標トラバース幅偏差算出部56fに接続されており、該目標トラバース幅偏差算出部56fでは、上述した前回の実際のターン位置と前回の目標トラバース幅の理論値とから、両幅の偏差が算出され、そして、該偏差にゲインを乗じて得る第一補正値(後述の偏差補正値kΔX)と、該第一補正値を今回の目標トラバース幅の理論値に加えた今回の目標トラバース幅が算出される。また、目標トラバース幅補正部56eでは、ターン位置が1箇所近辺に集中し、その部分に過剰な糸層が形成されないように、第一目標値からトラバースの内、外側に周期的に目標値をずらす第二補正を行う。ここで、前記ターン時励磁位相予測部56dにより予測された今回のターン時の励磁位相より第二補正値が算出されるとともに、該第二補正値を前記目標トラバース幅に加えた最終的な目標トラバース幅指令補正値が算出され、該目標トラバース幅指令補正値がモータ駆動信号として出力される。
【0019】
以上のように、トラバース幅補正部56は、トラバースガイドの実際のターン位置を記憶するターン位置記憶部56a・56bと、トラバースガイドの目標トラバース幅の理論値を算出する目標トラバース幅算出部56cと、ターン時の前記トラバースモータのステ一夕の励磁相の励磁角を予測するターン時励磁位相予測部56dと、前記実際のトラバース幅と前記目標トラバース幅との偏差及び該偏差に基づく第一補正値を算出し、前記理論値に第一補正値を加算することで今回のトラバースの目標トラバース幅を算出する目標トラバース幅偏差算出部56fと、今回の前記目標トラバース幅における励磁相の励磁角の予測値から第二補正値を算出し、今回の前記目標トラバース幅に第二補正値を加算又は減算することで最終的な今回のトラバース幅指令補正値を算出する目標トラバース幅補正部56eとから構成されている。
尚、本実施例では、トラバース幅を基準にトラバース幅の補正を行うものであるが、トラバースのターン位置を基準にターン位置の補正を行うようにしてもよく、この場合は、目標トラバース幅補正部56eの変わりに、目標ターン位置補正部を設ける構成とすることで対応できるものである。
【0020】
以上のごとくのトラバース装置1においては、巻き取りパッケージの巻き形状不良を防止すべく、上記トラバース幅補正部56によりトラバースガイド15のターン位置補正の制御モード(以下、「トラバース幅補正制御」とする)を実行可能としている。
そして、このトラバース幅補正制御は、図3に示すフローチャートの例に示されるごとく、目標トラバース幅偏差算出部56fにて算出した第一補正値に基づき、「制御遅れ」や「機械的な慣性」の影響を補正した目標トラバース幅を算出するステップ100と、該目標トラバース幅に第二補正値を加えて目標トラバース幅指令補正値を求めるステップ200と、これらステップ100、200から最終的な今回の目標トラバース幅の理論値X1を算出するステップ300から構成される。
【0021】
以下各ステップについて説明する。
先ず、ステップ100の前段階として、図3に示すごとく、目標トラバース幅算出部56c(図2)が、前記モーションコントローラ52のパッケージ径算出手段52aにより算出された算出パッケージ径と、指令信号生成手段52bにより生成された指令信号とに基づいて、今回のトラバースの両側の目標トラバース幅の理論値を算出するとともに、記憶する(ステップ10)。
次に、目標トラバース幅偏差算出部56fにて算出した第一補正値としての偏差補正値kΔX(k:ゲイン)に基づき、「制御遅れ」や「機械的な慣性」の影響を補正した第一補補正値S1を算出するステップ100が行われる。
図3に示すステップ100のフローについて順に説明すると、先ず、後述するステップ200による第二補正が行われたか否かの判断が行われる(ステップ101)。
そして、前回のステップ200の第二補正を行わなかった時のみ、目標トラバース幅偏差算出部56f(図2)は、前記右ターン位置記憶部56a及び左ターン位置記憶部56bに記憶された前回のターン位置より求まる前回の実際のトラバース幅X2と、前回実行されたステップ10により算出された前回の目標トラバース幅の理論値X1とから、偏差ΔXを算出する(ステップ102)。偏差ΔXがある場合には(ステップ103)、今回の往復分のトラバースターン位置を目標トラバース幅の理論値に近づける補正を実行するものである。
【0022】
偏差ΔXが正であれば、実際のトラバース幅X2が、目標トラバース幅の理論値X1よりも狭い、つまりは、トラバース幅が狭い(足りない)として、目標トラバース幅の理論値X1に対する偏差補正値kΔX(k:ゲイン)=目標トラバース幅指令補正値(第一補正値S1)を算出する(ステップ104)。この第一補正値S1の算出は、目標トラバース幅偏差算出部56fにより行われる。
一方、偏差ΔXが負であれば、実際のトラバース幅X2が、目標トラバース幅の理論値X1よりも広い、つまりは、トラバース幅が広い(大きい)として、目標トラバース幅の理論値X1に対する偏差補正値kΔX(k:ゲイン)=目標トラバース幅指令補正値(第一補正値S1)を算出する(ステップ104)。この第一補正値S1の算出は、同じく、目標トラバース幅偏差算出部56fにより行われる。
以上のようにして、「制御遅れ」や「機械的な慣性」の影響を補正した第一補正値S1が算出される。
【0023】
他方、偏差ΔXがない場合は、前回の実際のトラバース幅X2と前回の目標トラバース幅の理論値X1が一致することから、補正の必要がないものとみなし、後述するステップ200に移り、次回のトラバース幅に対するトラバース幅補正制御を実行する。
【0024】
次に、第二補正値としてのトラバース幅指令補正値S2を求めるステップ200について説明する。
先ず、このステップ200では、上記理由により第二補正を行うが、例えば、右側のトラバースでは、図4に示すごとく、目標トラバース位置よりも外側(+f(TR)→第二補正しない→トラバース目標位置よりも内側(−f(TR))の順番を繰り返してステップ200を実行する。勿論、左側でも同様である。つまり、前記トラバース幅の理論値X1に対応するターン位置から、外側又は内側へずらす、若しくはずらさないようにすることで、意図的に、ターン位置をばらつかせようとするものである。
このステップ200では、ステップ201にて上記外側、内側への補正を行う順番であると判断したときのみステップ102において求めた今回の目標トラバース幅の理論値X1における、トラバースガイド15の位置に対応するトラバースモータ11のロータ位置に対応する「励磁角ψ」にて、ステータ側から付与される励磁状態(トルク)(図6)が予測されるとともに、該予測に基づいて予測される付与トルクを考慮した補正をすることで、今回の目標トラバース幅指令補正値S2が求められる(ステップ202)。
【0025】
ここで、トラバースモータ11の駆動ステップモードとしては、例えば、マイクロステップ駆動(図5(b):モータ電流の連続的変化による励磁)があり、図においては、目標トラバース幅の理論値X1に対応するロータ位置を示す励磁角ψ(目標トラバース幅補正部56eにて予測された励磁状態に対応する)、電気角一周内での最大トルク励磁角Ψ、及びターン位置補正量(第二補正値f(TR)・f(TL))との関係を示すものである。
また、図5(c)では、ターン位置は、往復動の左右二箇所に存在するので、右のターン位置における第二補正値f(TR)と、左のターン位置における第二補正値f(TL)をそれぞれ示している。図5(b)(c)では、右のターン位置における第二補正値f(TR)のみを表示している。
また、図5(a)に示すような二相モータでは、最大トルク励磁角Ψは、電気角で互いにπ/2ずつ位相をずらして四箇所で発生し得るものであり(隣合う励磁相の中間位置)、図5(b)で示されるマイクロステップ駆動においては四箇所で発生し得る。尚、本発明を適用できるステッピングモータの構成は、二相モータに限られず、三相モータであってもよく、また、駆動ステップモードにおいても本実施例に限られるものではない。
また、図に示すAbar相は、A相コイルと逆向きに励磁される相を示し、Bbar相は、B相コイルと逆向きに励磁される相を示すものとする。
【0026】
図5に示すごとく、ステップ202において、両ターン位置での励磁角ψが最大トルク励磁角Ψのいずれかに一致する場合には、最大のトルク(磁力)を生じさせ得る励磁角(励磁のタイミング、状態)にて、ロータ41を制動し、また、正逆回転の変更を行うことができる状況にあるため、ロータ41の位置決め精度が最も高い。そこで、目標トラバース幅補正部56eは、他のロータ41の位置決め精度の低い励磁角ψでの位置決め精度の差をできる限り小さくするために、あえて、目標トラバース幅の理論値X1を中心に最もばらつかせた目標補正値を算出する。これにより、今回の目標トラバース幅の理論値X1に対応するターン位置におけるロータの励磁角ψが最大トルク励磁角Ψと算出されると、最大トルクT1の位置を中心に目標トラバース幅を最もばらつかせて、ターン位置決め精度を他の励磁角ψに近づけるように制御される。
このようにして、目標トラバース幅の理論値X1に対し最大の補正を行い(第二補正値f(TR)・f(TL)が最大値=f(T1R))、ステップ200を終了するものである。
尚、T1は、角度Ψにおける電気角一周内における最大トルクを表している。又、上記した位置決め精度はトルクTに略比例するため、第二補正値の量は、このトルクTに略比例して算出される。
【0027】
一方、いずれか一のターン位置において、又は両ターン位置において電気角一周内で励磁角ψが四箇所存在する最大トルク励磁角Ψのいずれにも一致しない場合には、最大のトルク(磁力)を生じさせ得る励磁のタイミングにてロータ41の制動や、正逆回転の位置決め精度が最大トルク励磁角ΨのトルクT1よりも低いため、励磁角ψ、即ち、励磁角ψに対応するトルクTに応じて第二補正値の量は小さく算出される。
このとこから、目標トラバース幅補正部56eは、目標トラバース幅の理論値X1の補正について、前記励磁角ψにてトルクTが低い程、その低いトルクでの位置決め精度を落とさないような補正を行う。即ち、目標トラバース幅の理論値X1に対して第二補正値f(TR)・f(TL)を算出するが、励磁角ψが最大トルク励磁角Ψから離れる(トルクTが小さくなる)につれて第二補正値f(TR)・f(TL)の補正量を小さくするようにし、目標トラバース幅の増減補正を行い、トラバース幅指令補正値S2を算出する。
ここで、左右のターン位置のそれぞれにおいて、目標トラバース幅の理論値X1に対し角度ψに相当する第二補正値f(TR)・f(TL)の算出は、予め設定された制御プログラムに基づいて実行されるものである。
【0028】
そして、目標トラバース幅補正部56eは、以上のステップ100、200より求まるステップ300で補正されたトラバース幅指令補正値S2をモータ駆動信号として出力し、トラバースモータ11は、この出力に基づいてトラバースを行う。
このようにして、目標トラバース幅の理論値X1、前記第一補正値S1、第二補正値f(TR)・f(TL)、トラバース幅指令補正値S2に基づいて、トラバースガイド15は略均一なトルク、即ち、トラバースターン位置決め精度でターンされる。
【0029】
また、第二補正値f(TR)・f(TL)の値は、図4のごとく、トラバース毎に変化するので、トラバース端において、糸条がトラバース方向に分配されることになり、局部的な巻き太り(段巻)が生じるといった不具合が生じることがない。この糸条のトラバース方向への分配は、反転時の精度を略均一とすることから、特に巻き取りパッケージの形状をテーパーエンド形状とする場合において、適正なテーパーの形状を生成し、巻き取りパッケージの品質の向上を図るといった点で有効である。
【0030】
また、上述したように、「トラバース幅」を基準とする補正の代わりに、「トラバースターン位置」と基準とする補正、即ち、実際のトラバースターン位置と予め設定された目標トラバースターン位置との偏差に基づいて、トラバースターン位置補正を行うとともに、前記励磁状態予測手段の予測結果に基づいて、予め設定された目標トラバースターン位置を補正するようにしてもよく、この場合は、説明中の記載に関し、「トラバース幅」の記載を「トラバースターン位置」と読み替えることで対応できるものである。
【発明の効果】
【0031】
本発明は以上のごとく構成したので、次のような効果を奏するのである。即ち、請求項1に記載のごとく、トラバースガイドを往復動させるモータを備え、トラバースガイドの位置と、モータの位置とが対応するトラバース装置を制御するトラバース制御装置において、実際のトラバース幅と目標トラバース幅との偏差に基づいて、トラバース幅補正を行う目標トラバース幅補正手段を備えるとともに、トラバースガイドのターンのタイミングにおけるステータの励磁状態を予測する励磁状態予測手段とを備え、前記目標トラバース幅補正手段は、予測手段の予測結果に基づいて、予め設定された目標トラバース幅を補正するので、モータの性能・容量に係わらず励磁状態より、トラバースターン位置での位置決め精度がばらつくことをできるだけ抑制し、いかなるトラバースターン位置でも略均一な位置決め精度とすることができる。従って、パッケージの端部形状を所望の形状とすることができる。
【0032】
また、請求項2に記載のごとく、請求項1に記載のトラバース制御装置において、実際のトラバース幅と目標トラバース幅との偏差に基づいて、トラバース幅補正を行う目標トラバース幅補正手段を備えるとともに、トラバースガイドのターンのタイミングにおけるステータの励磁状態を予測する励磁状態予測手段とを備え、上記予測手段が、上記トラバースガイドのターン時点で、電気角一周内において最大のトルクが付与されるとの予測結果を出力した時、位置補正部は、目標トラバース幅の補正量を最大にするよう予め設定されているので、モータのロータの位置決め精度に関与するロータ回転トルク値に関連付けてターン位置補正することができる。
【0033】
また、請求項3に記載のごとく、トラバースガイドを往復動させるモータを備え、トラバースガイドの位置と、モータの位置とが対応するトラバース装置を制御するトラバース制御装置において、実際のトラバースターン位置と目標ターン位置との偏差に基づいて、ターン位置補正を行う目標ターン位置補正手段を備えるとともに、トラバースガイドのターンのタイミングにおけるステータの励磁状態を予測する励磁状態予測手段とを備え、前記目標ターン位置補正手段は、予測手段の予測結果に基づいて、予め設定された目標ターン位置を補正するので、モータの性能・容量に係わらず励磁状態より、トラバースターン位置での位置決め精度がばらつくことをできるだけ抑制し、いかなるトラバースターン位置でも略均一な位置決め精度とすることができる。従って、パッケージの端部形状を所望の形状とすることができる。
【0034】
また、請求項4に記載のごとく、請求項3に記載のトラバース制御装置において、上記予測手段が、上記トラバースガイドのターン時点で、電気角一周内において最大のトルクが付与されるとの予測結果を出力した時、前記目標ターン位置補正手段は、目標ターン位置の補正量を最大にするよう予め設定されているので、モータのロータの位置決め精度に関与するロータ回転トルク値に関連付けてターン位置補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のトラバース装置の全体構成を示す図である。
【図2】トラバース制御装置の構成を示すブロック図である。
【図3】トラバース幅補正制御の手順を示すフローチャートである。
【図4】第二補正におけるトラバースターン回数と補正値との関係を示す図である。
【図5】図5の(a)は、マイクロステップ駆動における励磁角ψと最大トルク励磁角Ψの関係を示す模式図である。(b)は、トラバース幅指令補正値に対応する励磁角ψと補正値との関係を示す図である。(c)は、トラバース幅と補正値との関係を示す図である。
【図6】励磁相とトルクの関係を示す図である。
【符号の説明】
11 トラバースモータ
15 トラバースガイド
56 ターン位置補正部
56a 右ターン位置記憶部
56b 左ターン位置記憶部
56c 目標トラバース幅算出部
56d ターン時励磁位相予測部
56e 目標トラバース幅補正部
56f 目標トラバース幅偏差算出部
【発明の属する技術分野】
本発明は、トラバースガイドを往復動させるモータを備え、トラバースガイドの位置と、モータの位置とが対応するトラバース装置を制御するトラバース制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のトラバース装置においては、正逆回転するトラバースモータの駆動により、紡出された糸条又は給糸パッケージから解舒された糸条をトラバースして、所定の巻き形状の巻き取りパッケージを生成している。
そして、所定の巻き形状を形成すべく、正確に整列巻をするための技術が公開されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−334995号公報
【0004】
この文献では、トラバースガイドとなるトラバース軸を駆動するモータと、巻き取り側の主軸を駆動するモータとの間での「制御遅れ」や、「トラバース軸の慣性」が巻き幅不足や巻き太りの不具合につながることに着目し、これらの不具合を解消するための補正値の導出に関する技術が開示されている。
具体的には、記憶手段により実際のトラバース幅を記憶しておき、制御手段により目標トラバース幅を算出し、前記実際のトラバース幅と目標トラバース幅との偏差を算出し、該偏差より補正値を算出し、次回のターン位置についてのトラバース幅指令補正値を求める制御を内容とするものである。
そして、この技術によれば、巻き取りパッケージとなる主軸と、トラバースガイドとなるトラバース軸との位相を同期させることが可能となり、巻き取り用ボビンに巻線を正確に整列巻きできることとしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、上述したトラバースモータにおいて、例えば、図6に示すようなステッピングモータを用いた場合、ステータ側に備える複数の励磁相を形成する各モータコイルを励磁させ、励磁されたモータコイルにより生じる磁力によりロータ41を引き付けることにより、ロータの制動・正逆回転の変更といった制御をする構成としている。
そして、例えば、本構成のような2相モータであって、1相2相交互に励磁するハーフステップ駆動(1−2相励磁)又は、マイクロステップ駆動とする場合では、隣合う2つの励磁相の中間の角度の位置、即ち、B相、Abar相間における、2相励磁位置P1の際に電気角一周内にて最も大きなトルクT1をロータに付与させることができるから、ターン時における「励磁角ψ」が、トルクT1における励磁角Ψ(以下、「最大トルク励磁角Ψ」とする)と一致する場合には、最大のトルクT1により確実にロータの制動・正逆回転の変更、即ち、目標トラバース幅又は、トラバース幅にて確実にターンさせることができる。
一方、1相励磁位置P3では、トルクT1と比較して小さいトルクT3が生じるにとどまる。ここで、あらゆる位置での位置決めを正確に行うにはトルク特性が不十分な低容量のモータを用いた場合、前記2相励磁の場合と比較してロータの制動性が悪く、目標トラバース幅にて確実にターンされないといった問題が生じることになる。尚、Abar相の励磁:B相の励磁を1:2の比率で2相励磁とした場合の中間位置P2でも、トルクT1と比較して小さいトルクT2が生じるにとどまる点で同様である。
【0006】
そして、パッケージ端部の形状をテーパー形状とするテーパーエンドパッケージを形成する場合には、パッケージの巻太り、即ち、巻取時間の経過に伴い、この目標トラバース幅指令値は変化する。従って、目標トラバース幅指令値に対応する「励磁角ψ」は、巻取時間の経過に伴い変化する。即ち、励磁位置によって、ロータの制動性(位置決め精度)が異なるとすると、トラバース毎にロータに付与するトルクが異なることになる。このことから、上記文献で開示される技術による補正のみでは、トラバース毎に、トラバースガイドのターン位置での位置決め精度にばらつきが生じる。この場合、パッケージ端部の形状が所望の形状に対してばらつき、テーパー面に段が形成されるなどの不良パッケージとなるおそれがあるという点で不十分であるといえる。
即ち、トラバースガイドの実際のトラバース幅を所望のパッケージ形状を得るように制御するには、上述したような前記トラバース幅指令値を求め目標トラバース幅補正を行った上で、さらに、前記「励磁角ψ」に応じて異なるターン位置決め精度を考慮した補正の必要があるのである。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、トラバース幅指令補正値を求めた上で、さらに、励磁角に応じて変化し、トラバースガイドのトラバース幅での位置決め精度に関与するモータトルクを考慮して、トラバースガイドをターンさせることにより、巻き形状不良の改善を図ることを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の解決しようとする課題は以上のごとくであり、次に該課題を解決する為の手段を説明する。
即ち、請求項1に記載のごとく、トラバースガイドを往復動させるモータを備え、トラバースガイドの位置と、モータの位置とが対応するトラバース装置を制御するトラバース制御装置において、実際のトラバース幅と目標トラバース幅との偏差に基づいて、トラバース幅補正を行う目標トラバース幅補正手段を備えるとともに、トラバースガイドのターンのタイミングにおけるステータの励磁状態を予測する励磁状態予測手段とを備え、前記目標トラバース幅補正手段は、予測手段の予測結果に基づいて、予め設定された目標トラバース幅を補正することである。
【0009】
また、請求項2に記載のごとく、請求項1に記載のトラバース制御装置において、実際のトラバース幅と目標トラバース幅との偏差に基づいて、トラバース幅補正を行う目標トラバース幅補正手段を備えるとともに、トラバースガイドのターンのタイミングにおけるステータの励磁状態を予測する励磁状態予測手段とを備え、上記予測手段が、上記トラバースガイドのターン時点で、電気角一周内において最大のトルクが付与されるとの予測結果を出力した時、位置補正部は、目標トラバース幅の補正量を最大にするよう予め設定されていることである。
【0010】
また、請求項3に記載のごとく、トラバースガイドを往復動させるモータを備え、トラバースガイドの位置と、モータの位置とが対応するトラバース装置を制御するトラバース制御装置において、実際のトラバースターン位置と目標ターン位置との偏差に基づいて、ターン位置補正を行う目標ターン位置補正手段を備えるとともに、トラバースガイドのターンのタイミングにおけるステータの励磁状態を予測する励磁状態予測手段とを備え、前記目標ターン位置補正手段は、予測手段の予測結果に基づいて、予め設定された目標ターン位置を補正することである。
【0011】
また、請求項4に記載のごとく、請求項3に記載のトラバース制御装置において、上記予測手段が、上記トラバースガイドのターン時点で、電気角一周内において最大のトルクが付与されるとの予測結果を出力した時、前記目標ターン位置補正手段は、目標ターン位置の補正量を最大にするよう予め設定されていることである。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
図1は本発明のトラバース装置の全体構成を示す図、図2はトラバース制御装置の構成を示すブロック図、図3はトラバース幅補正制御の手順を示すフローチャート、図4は後述する第二補正におけるトラバースターン回数と補正値との関係を示す図、図5の(a)は、マイクロステップ駆動における励磁角ψと最大トルク励磁角Ψの関係を示す模式図、図5の(b)は、トラバース幅指令補正値に対応する励磁角ψと補正値との関係を示す図、図5の(c)は、トラバース幅と補正値との関係を示す図、図6は励磁相とトルクの関係を示す図である。
【0013】
まず、本発明に係るトラバース装置の構成について説明する。
図1に示すように、本発明にかかるトラバース制御装置を搭載したトラバース装置1は、紡出されたか又は図示しない給糸パッケージから解舒された糸条Yをボビン軸方向にトラバースしながら巻取りパッケージ3に巻き返す巻取装置に用いられている。
巻取りパッケージ3は、ボビン31に糸条Yを巻き取ることで形成され、クレードル32により回転自在に支持されている。更に、トラバースガイド15の位置と、トラバースモータ11のロータ位置は互いに対応するようになっている。尚、図1では、巻取りパッケージ3として、巻太りに伴って次第にトラバース幅(巻き幅)を狭くして形成したテーパーエンドパッケージが図示されているが、パッケージ形状は、このようなテーパーエンド形状に限定されるものではない。
巻取りパッケージ3の外周面には、巻取用モータにより回転駆動される巻取りローラ2が当接しており、該巻取りローラ2により巻取りパッケージ3を回転駆動している。
【0014】
トラバース装置1は、例えばステッピングモータに構成されるトラバースモータ11と、該トラバースモータ11により正逆回転切換可能に回転駆動される駆動プーリ12と、トラバース範囲の両側方に配置される従動プーリ13・13と、該駆動プーリ12及び従動プーリ13・13に巻回される駆動ベルト14と、該駆動ベルト14に固設され糸条Yをガイドするトラバースガイド15とを備えている。
尚、駆動ベルト14としては、タイミングベルト等の各種ベルトや金属製ワイヤをはじめ、その他同様の機能を有する可撓性のエンドレス体を使用することができる。
トラバースガイド15は、駆動プーリ12の正逆回転に伴って、ボビン31の軸方向における一端側から他端側、又は他端側から一端側へ往復移動し、これにより、巻取りパッケージ3に巻き取られる糸条Yをトラバースするように構成している。
また、トラバース装置1はトラバース制御装置5を備えており、トラバースモータ11の駆動を制御して、トラバースガイド15の位置及び駆動速度を制御している。
このように、トラバースモータ11の正逆駆動を制御することにより、糸条Yが係合したトラバースガイド15を所定のトラバース幅で往復動させることができる。
【0015】
以上のごとく構成されるトラバース装置1は、単一の巻取りパッケージ3に対して個別にトラバースモータ11を設け、マイクロコンピュータを有するトラバース制御装置5により、トラバースガイド15の位置及び速度を制御するようにしている。
そして、トラバース制御装置5は、後述するモーションコントローラ52及びモータドライバ51により構成されている。
モーションコントローラ52は、トラバースモータ11に対する位置指令を出力し、モータドライバ51は、位置指令に応じた回転量となるようにトラバースモータ11を制御する。
また、モータドライバ51にはトラバースのトラバース幅補正部56が設けられており、トラバースのトラバース幅を制御して、巻き形状不良を防止するようにしている。
【0016】
次に、トラバース制御装置5による、トラバースモータ11の制御について説明する。
トラバース制御装置5は、トラバースモータ11を介してトラバースガイド15の位置制御を行うものであり、トラバースモータ11に所定の駆動動作を行わせるための指令信号(位置指令)を生成するモーションコントローラ52と、生成した指令信号に従ってトラバースモータ11を駆動するモータドライバ51とを備えている。
モーションコントローラ52及びモータドライバ51の主な機能は、共通のマイクロコンピュータ(図示略)により実現されている。
このマイクロコンピュータは、トラバースガイド15の原点出し機能、モーションコントロール機能及びモータドライバ機能を実行する手段の主構成となる、単一の中央処理装置(CPU)と、トラバースガイド15のトラバース幅補正プログラムやトラバースの制御プログラム(モーションプログラム)等を格納するROMと、演算データ等を一時的に格納するRAMとを備えている。中央処理装置は、ROMに格納された制御プログラムを実行することにより、後述するようなトラバース幅補正に関するトラバースモータ11の制御(トラバース制御)等を行う。尚、モーションコントローラ52及びモータドライバ51に対してそれぞれ個別にマイクロコンピュータ(中央処理装置)を設け、各機能を別個のマイクロコンピュータにより実現するようにしてもよい。
また、トラバース制御装置5には、トラバースモータ11の回転速度を検出するためのモータ回転検出器(ロータリエンコーダ)53、及び巻取りパッケージ3の回転速度を検出するためのパッケージ回転検出器54が接続されており、それぞれの検出値がトラバース制御装置5に入力されている。
【0017】
トラバース制御装置5のモーションコントローラ52内にはパッケージ径算出手段52aが設けられており、巻取中パッケージ回転検出器54の検出値に基づいて常時パッケージ径が算出される。
また、モーションコントローラ52内に設けられる指令信号生成手段52bが、予め設定された駆動パターン及び算出されたパッケージ径に基づいて、トラバースモータ11を駆動制御するための位置指令を生成する。
尚、パッケージ径算出方法としては、巻取りローラ2に対する巻取りパッケージ3の相対位置(クレードル32の角度)を検出する等、他の方法を使用することもできる。
【0018】
トラバース制御装置5のモータドライバ51は、複数のスイッチング素子を有する駆動回路(図示略)を含み、モーションコントローラ52により生成された位置指令に従い、トラバースモータ11に対してモータ駆動信号を出力する。
モータ駆動信号が入力されたトラバースモータ11は、位置指令の周波数に応じた速度で、位置指令に応じた角度だけ回転駆動される。即ち、モータドライバ51は、トラバースモータ11の回転位置をロータリエンコーダ等の回転検出器53により検出し、その検出された回転位置と位置指令との偏差をマイクロコンピュータにより求めて、この偏差がゼロになるように、即ち検出位置が位置指令に追従するようにトラバースモータ11の位置制御を行う。
さらに、図2に示すごとく、モータドライバ51には、トラバース幅補正部56が備えられており、前記モーションコントローラ52のパッケージ径算出手段52aにより算出された算出パッケージ径と、指令信号生成手段52bにより生成された位置指令が入力される。
該トラバース幅補正部56には、トラバースガイド15が右側でターンする際に、前記回転検出器53で検出される回転位置検出値をターン位置として記憶する右ターン位置記憶部56aと、同じく左側でターンする際に、前記回転検出器53で検出される回転位置検出値を実際のターン位置として記憶する左ターン位置記憶部56bと、前記算出パッケージ径と指令信号に基づき、パッケージの巻太り状態に応じて変化するトラバースガイド15の目標トラバース幅の理論値を算出する目標トラバース幅算出部56cと、同じく前記算出パッケージ径と指令信号に基づき、トラバースガイド15のターン時において励磁されるモータのステータコイルの励磁状態、即ち、ターン時の励磁位相を予測する励磁状態予測手段であるターン時励磁位相予測部56dが備えられている。
また、前記右ターン位置記憶部56a、左ターン位置記憶部56b、及び目標トラバース幅算出部56cは、目標トラバース幅補正手段である目標トラバース幅補正部56e内に設けた目標トラバース幅偏差算出部56fに接続されており、該目標トラバース幅偏差算出部56fでは、上述した前回の実際のターン位置と前回の目標トラバース幅の理論値とから、両幅の偏差が算出され、そして、該偏差にゲインを乗じて得る第一補正値(後述の偏差補正値kΔX)と、該第一補正値を今回の目標トラバース幅の理論値に加えた今回の目標トラバース幅が算出される。また、目標トラバース幅補正部56eでは、ターン位置が1箇所近辺に集中し、その部分に過剰な糸層が形成されないように、第一目標値からトラバースの内、外側に周期的に目標値をずらす第二補正を行う。ここで、前記ターン時励磁位相予測部56dにより予測された今回のターン時の励磁位相より第二補正値が算出されるとともに、該第二補正値を前記目標トラバース幅に加えた最終的な目標トラバース幅指令補正値が算出され、該目標トラバース幅指令補正値がモータ駆動信号として出力される。
【0019】
以上のように、トラバース幅補正部56は、トラバースガイドの実際のターン位置を記憶するターン位置記憶部56a・56bと、トラバースガイドの目標トラバース幅の理論値を算出する目標トラバース幅算出部56cと、ターン時の前記トラバースモータのステ一夕の励磁相の励磁角を予測するターン時励磁位相予測部56dと、前記実際のトラバース幅と前記目標トラバース幅との偏差及び該偏差に基づく第一補正値を算出し、前記理論値に第一補正値を加算することで今回のトラバースの目標トラバース幅を算出する目標トラバース幅偏差算出部56fと、今回の前記目標トラバース幅における励磁相の励磁角の予測値から第二補正値を算出し、今回の前記目標トラバース幅に第二補正値を加算又は減算することで最終的な今回のトラバース幅指令補正値を算出する目標トラバース幅補正部56eとから構成されている。
尚、本実施例では、トラバース幅を基準にトラバース幅の補正を行うものであるが、トラバースのターン位置を基準にターン位置の補正を行うようにしてもよく、この場合は、目標トラバース幅補正部56eの変わりに、目標ターン位置補正部を設ける構成とすることで対応できるものである。
【0020】
以上のごとくのトラバース装置1においては、巻き取りパッケージの巻き形状不良を防止すべく、上記トラバース幅補正部56によりトラバースガイド15のターン位置補正の制御モード(以下、「トラバース幅補正制御」とする)を実行可能としている。
そして、このトラバース幅補正制御は、図3に示すフローチャートの例に示されるごとく、目標トラバース幅偏差算出部56fにて算出した第一補正値に基づき、「制御遅れ」や「機械的な慣性」の影響を補正した目標トラバース幅を算出するステップ100と、該目標トラバース幅に第二補正値を加えて目標トラバース幅指令補正値を求めるステップ200と、これらステップ100、200から最終的な今回の目標トラバース幅の理論値X1を算出するステップ300から構成される。
【0021】
以下各ステップについて説明する。
先ず、ステップ100の前段階として、図3に示すごとく、目標トラバース幅算出部56c(図2)が、前記モーションコントローラ52のパッケージ径算出手段52aにより算出された算出パッケージ径と、指令信号生成手段52bにより生成された指令信号とに基づいて、今回のトラバースの両側の目標トラバース幅の理論値を算出するとともに、記憶する(ステップ10)。
次に、目標トラバース幅偏差算出部56fにて算出した第一補正値としての偏差補正値kΔX(k:ゲイン)に基づき、「制御遅れ」や「機械的な慣性」の影響を補正した第一補補正値S1を算出するステップ100が行われる。
図3に示すステップ100のフローについて順に説明すると、先ず、後述するステップ200による第二補正が行われたか否かの判断が行われる(ステップ101)。
そして、前回のステップ200の第二補正を行わなかった時のみ、目標トラバース幅偏差算出部56f(図2)は、前記右ターン位置記憶部56a及び左ターン位置記憶部56bに記憶された前回のターン位置より求まる前回の実際のトラバース幅X2と、前回実行されたステップ10により算出された前回の目標トラバース幅の理論値X1とから、偏差ΔXを算出する(ステップ102)。偏差ΔXがある場合には(ステップ103)、今回の往復分のトラバースターン位置を目標トラバース幅の理論値に近づける補正を実行するものである。
【0022】
偏差ΔXが正であれば、実際のトラバース幅X2が、目標トラバース幅の理論値X1よりも狭い、つまりは、トラバース幅が狭い(足りない)として、目標トラバース幅の理論値X1に対する偏差補正値kΔX(k:ゲイン)=目標トラバース幅指令補正値(第一補正値S1)を算出する(ステップ104)。この第一補正値S1の算出は、目標トラバース幅偏差算出部56fにより行われる。
一方、偏差ΔXが負であれば、実際のトラバース幅X2が、目標トラバース幅の理論値X1よりも広い、つまりは、トラバース幅が広い(大きい)として、目標トラバース幅の理論値X1に対する偏差補正値kΔX(k:ゲイン)=目標トラバース幅指令補正値(第一補正値S1)を算出する(ステップ104)。この第一補正値S1の算出は、同じく、目標トラバース幅偏差算出部56fにより行われる。
以上のようにして、「制御遅れ」や「機械的な慣性」の影響を補正した第一補正値S1が算出される。
【0023】
他方、偏差ΔXがない場合は、前回の実際のトラバース幅X2と前回の目標トラバース幅の理論値X1が一致することから、補正の必要がないものとみなし、後述するステップ200に移り、次回のトラバース幅に対するトラバース幅補正制御を実行する。
【0024】
次に、第二補正値としてのトラバース幅指令補正値S2を求めるステップ200について説明する。
先ず、このステップ200では、上記理由により第二補正を行うが、例えば、右側のトラバースでは、図4に示すごとく、目標トラバース位置よりも外側(+f(TR)→第二補正しない→トラバース目標位置よりも内側(−f(TR))の順番を繰り返してステップ200を実行する。勿論、左側でも同様である。つまり、前記トラバース幅の理論値X1に対応するターン位置から、外側又は内側へずらす、若しくはずらさないようにすることで、意図的に、ターン位置をばらつかせようとするものである。
このステップ200では、ステップ201にて上記外側、内側への補正を行う順番であると判断したときのみステップ102において求めた今回の目標トラバース幅の理論値X1における、トラバースガイド15の位置に対応するトラバースモータ11のロータ位置に対応する「励磁角ψ」にて、ステータ側から付与される励磁状態(トルク)(図6)が予測されるとともに、該予測に基づいて予測される付与トルクを考慮した補正をすることで、今回の目標トラバース幅指令補正値S2が求められる(ステップ202)。
【0025】
ここで、トラバースモータ11の駆動ステップモードとしては、例えば、マイクロステップ駆動(図5(b):モータ電流の連続的変化による励磁)があり、図においては、目標トラバース幅の理論値X1に対応するロータ位置を示す励磁角ψ(目標トラバース幅補正部56eにて予測された励磁状態に対応する)、電気角一周内での最大トルク励磁角Ψ、及びターン位置補正量(第二補正値f(TR)・f(TL))との関係を示すものである。
また、図5(c)では、ターン位置は、往復動の左右二箇所に存在するので、右のターン位置における第二補正値f(TR)と、左のターン位置における第二補正値f(TL)をそれぞれ示している。図5(b)(c)では、右のターン位置における第二補正値f(TR)のみを表示している。
また、図5(a)に示すような二相モータでは、最大トルク励磁角Ψは、電気角で互いにπ/2ずつ位相をずらして四箇所で発生し得るものであり(隣合う励磁相の中間位置)、図5(b)で示されるマイクロステップ駆動においては四箇所で発生し得る。尚、本発明を適用できるステッピングモータの構成は、二相モータに限られず、三相モータであってもよく、また、駆動ステップモードにおいても本実施例に限られるものではない。
また、図に示すAbar相は、A相コイルと逆向きに励磁される相を示し、Bbar相は、B相コイルと逆向きに励磁される相を示すものとする。
【0026】
図5に示すごとく、ステップ202において、両ターン位置での励磁角ψが最大トルク励磁角Ψのいずれかに一致する場合には、最大のトルク(磁力)を生じさせ得る励磁角(励磁のタイミング、状態)にて、ロータ41を制動し、また、正逆回転の変更を行うことができる状況にあるため、ロータ41の位置決め精度が最も高い。そこで、目標トラバース幅補正部56eは、他のロータ41の位置決め精度の低い励磁角ψでの位置決め精度の差をできる限り小さくするために、あえて、目標トラバース幅の理論値X1を中心に最もばらつかせた目標補正値を算出する。これにより、今回の目標トラバース幅の理論値X1に対応するターン位置におけるロータの励磁角ψが最大トルク励磁角Ψと算出されると、最大トルクT1の位置を中心に目標トラバース幅を最もばらつかせて、ターン位置決め精度を他の励磁角ψに近づけるように制御される。
このようにして、目標トラバース幅の理論値X1に対し最大の補正を行い(第二補正値f(TR)・f(TL)が最大値=f(T1R))、ステップ200を終了するものである。
尚、T1は、角度Ψにおける電気角一周内における最大トルクを表している。又、上記した位置決め精度はトルクTに略比例するため、第二補正値の量は、このトルクTに略比例して算出される。
【0027】
一方、いずれか一のターン位置において、又は両ターン位置において電気角一周内で励磁角ψが四箇所存在する最大トルク励磁角Ψのいずれにも一致しない場合には、最大のトルク(磁力)を生じさせ得る励磁のタイミングにてロータ41の制動や、正逆回転の位置決め精度が最大トルク励磁角ΨのトルクT1よりも低いため、励磁角ψ、即ち、励磁角ψに対応するトルクTに応じて第二補正値の量は小さく算出される。
このとこから、目標トラバース幅補正部56eは、目標トラバース幅の理論値X1の補正について、前記励磁角ψにてトルクTが低い程、その低いトルクでの位置決め精度を落とさないような補正を行う。即ち、目標トラバース幅の理論値X1に対して第二補正値f(TR)・f(TL)を算出するが、励磁角ψが最大トルク励磁角Ψから離れる(トルクTが小さくなる)につれて第二補正値f(TR)・f(TL)の補正量を小さくするようにし、目標トラバース幅の増減補正を行い、トラバース幅指令補正値S2を算出する。
ここで、左右のターン位置のそれぞれにおいて、目標トラバース幅の理論値X1に対し角度ψに相当する第二補正値f(TR)・f(TL)の算出は、予め設定された制御プログラムに基づいて実行されるものである。
【0028】
そして、目標トラバース幅補正部56eは、以上のステップ100、200より求まるステップ300で補正されたトラバース幅指令補正値S2をモータ駆動信号として出力し、トラバースモータ11は、この出力に基づいてトラバースを行う。
このようにして、目標トラバース幅の理論値X1、前記第一補正値S1、第二補正値f(TR)・f(TL)、トラバース幅指令補正値S2に基づいて、トラバースガイド15は略均一なトルク、即ち、トラバースターン位置決め精度でターンされる。
【0029】
また、第二補正値f(TR)・f(TL)の値は、図4のごとく、トラバース毎に変化するので、トラバース端において、糸条がトラバース方向に分配されることになり、局部的な巻き太り(段巻)が生じるといった不具合が生じることがない。この糸条のトラバース方向への分配は、反転時の精度を略均一とすることから、特に巻き取りパッケージの形状をテーパーエンド形状とする場合において、適正なテーパーの形状を生成し、巻き取りパッケージの品質の向上を図るといった点で有効である。
【0030】
また、上述したように、「トラバース幅」を基準とする補正の代わりに、「トラバースターン位置」と基準とする補正、即ち、実際のトラバースターン位置と予め設定された目標トラバースターン位置との偏差に基づいて、トラバースターン位置補正を行うとともに、前記励磁状態予測手段の予測結果に基づいて、予め設定された目標トラバースターン位置を補正するようにしてもよく、この場合は、説明中の記載に関し、「トラバース幅」の記載を「トラバースターン位置」と読み替えることで対応できるものである。
【発明の効果】
【0031】
本発明は以上のごとく構成したので、次のような効果を奏するのである。即ち、請求項1に記載のごとく、トラバースガイドを往復動させるモータを備え、トラバースガイドの位置と、モータの位置とが対応するトラバース装置を制御するトラバース制御装置において、実際のトラバース幅と目標トラバース幅との偏差に基づいて、トラバース幅補正を行う目標トラバース幅補正手段を備えるとともに、トラバースガイドのターンのタイミングにおけるステータの励磁状態を予測する励磁状態予測手段とを備え、前記目標トラバース幅補正手段は、予測手段の予測結果に基づいて、予め設定された目標トラバース幅を補正するので、モータの性能・容量に係わらず励磁状態より、トラバースターン位置での位置決め精度がばらつくことをできるだけ抑制し、いかなるトラバースターン位置でも略均一な位置決め精度とすることができる。従って、パッケージの端部形状を所望の形状とすることができる。
【0032】
また、請求項2に記載のごとく、請求項1に記載のトラバース制御装置において、実際のトラバース幅と目標トラバース幅との偏差に基づいて、トラバース幅補正を行う目標トラバース幅補正手段を備えるとともに、トラバースガイドのターンのタイミングにおけるステータの励磁状態を予測する励磁状態予測手段とを備え、上記予測手段が、上記トラバースガイドのターン時点で、電気角一周内において最大のトルクが付与されるとの予測結果を出力した時、位置補正部は、目標トラバース幅の補正量を最大にするよう予め設定されているので、モータのロータの位置決め精度に関与するロータ回転トルク値に関連付けてターン位置補正することができる。
【0033】
また、請求項3に記載のごとく、トラバースガイドを往復動させるモータを備え、トラバースガイドの位置と、モータの位置とが対応するトラバース装置を制御するトラバース制御装置において、実際のトラバースターン位置と目標ターン位置との偏差に基づいて、ターン位置補正を行う目標ターン位置補正手段を備えるとともに、トラバースガイドのターンのタイミングにおけるステータの励磁状態を予測する励磁状態予測手段とを備え、前記目標ターン位置補正手段は、予測手段の予測結果に基づいて、予め設定された目標ターン位置を補正するので、モータの性能・容量に係わらず励磁状態より、トラバースターン位置での位置決め精度がばらつくことをできるだけ抑制し、いかなるトラバースターン位置でも略均一な位置決め精度とすることができる。従って、パッケージの端部形状を所望の形状とすることができる。
【0034】
また、請求項4に記載のごとく、請求項3に記載のトラバース制御装置において、上記予測手段が、上記トラバースガイドのターン時点で、電気角一周内において最大のトルクが付与されるとの予測結果を出力した時、前記目標ターン位置補正手段は、目標ターン位置の補正量を最大にするよう予め設定されているので、モータのロータの位置決め精度に関与するロータ回転トルク値に関連付けてターン位置補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のトラバース装置の全体構成を示す図である。
【図2】トラバース制御装置の構成を示すブロック図である。
【図3】トラバース幅補正制御の手順を示すフローチャートである。
【図4】第二補正におけるトラバースターン回数と補正値との関係を示す図である。
【図5】図5の(a)は、マイクロステップ駆動における励磁角ψと最大トルク励磁角Ψの関係を示す模式図である。(b)は、トラバース幅指令補正値に対応する励磁角ψと補正値との関係を示す図である。(c)は、トラバース幅と補正値との関係を示す図である。
【図6】励磁相とトルクの関係を示す図である。
【符号の説明】
11 トラバースモータ
15 トラバースガイド
56 ターン位置補正部
56a 右ターン位置記憶部
56b 左ターン位置記憶部
56c 目標トラバース幅算出部
56d ターン時励磁位相予測部
56e 目標トラバース幅補正部
56f 目標トラバース幅偏差算出部
Claims (4)
- トラバースガイドを往復動させるモータを備え、トラバースガイドの位置と、モータの位置とが対応するトラバース装置を制御するトラバース制御装置において、実際のトラバース幅と目標トラバース幅との偏差に基づいて、トラバース幅補正を行う目標トラバース幅補正手段を備えるとともに、トラバースガイドのターンのタイミングにおけるステータの励磁状態を予測する励磁状態予測手段とを備え、前記目標トラバース幅補正手段は、予測手段の予測結果に基づいて、予め設定された目標トラバース幅を補正することを特徴とするトラバース制御装置。
- 請求項1に記載のトラバース制御装置において、実際のトラバース幅と目標トラバース幅との偏差に基づいて、トラバース幅補正を行う目標トラバース幅補正手段を備えるとともに、トラバースガイドのターンのタイミングにおけるステータの励磁状態を予測する励磁状態予測手段とを備え、上記予測手段が、上記トラバースガイドのターン時点で、電気角一周内において最大のトルクが付与されるとの予測結果を出力した時、位置補正部は、目標トラバース幅の補正量を最大にするよう予め設定されていることを特徴とするトラバース制御装置。
- トラバースガイドを往復動させるモータを備え、トラバースガイドの位置と、モータの位置とが対応するトラバース装置を制御するトラバース制御装置において、実際のトラバースターン位置と目標ターン位置との偏差に基づいて、ターン位置補正を行う目標ターン位置補正手段を備えるとともに、トラバースガイドのターンのタイミングにおけるステータの励磁状態を予測する励磁状態予測手段とを備え、前記目標ターン位置補正手段は、予測手段の予測結果に基づいて、予め設定された目標ターン位置を補正することを特徴とするトラバース制御装置。
- 請求項3に記載のトラバース制御装置において、上記予測手段が、上記トラバースガイドのターン時点で、電気角一周内において最大のトルクが付与されるとの予測結果を出力した時、前記目標ターン位置補正手段は、目標ターン位置の補正量を最大にするよう予め設定されていることを特徴とするトラバース制御装置。
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JP2003000397A JP2004210492A (ja) | 2003-01-06 | 2003-01-06 | トラバース制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2004210492A true JP2004210492A (ja) | 2004-07-29 |
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JP2003000397A Pending JP2004210492A (ja) | 2003-01-06 | 2003-01-06 | トラバース制御装置 |
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2003
- 2003-01-06 JP JP2003000397A patent/JP2004210492A/ja active Pending
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