JP2004209885A - インクジェット記録ヘッド - Google Patents
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Abstract
【課題】記録ヘッドの製造ばらつきが増大しても、安定したインク吐出による高画質な印刷を可能とする。
【解決手段】通電することにより発熱してインクを加熱する発熱体401と、発熱体を駆動するMOSトランジスタ502と、MOSトランジスタを駆動する論理回路と、論理回路から出力される信号電圧を所定の電圧に変換してMOSトランジスタのゲート電極に印加する電圧変換回路とを備え、電圧変換回路は、電圧供給部512と、電圧供給部からの電圧により信号電圧を所定の電圧に変換してMOSトランジスタのゲート電極に印加する電圧変換部513,514を備える。
【選択図】 図3
【解決手段】通電することにより発熱してインクを加熱する発熱体401と、発熱体を駆動するMOSトランジスタ502と、MOSトランジスタを駆動する論理回路と、論理回路から出力される信号電圧を所定の電圧に変換してMOSトランジスタのゲート電極に印加する電圧変換回路とを備え、電圧変換回路は、電圧供給部512と、電圧供給部からの電圧により信号電圧を所定の電圧に変換してMOSトランジスタのゲート電極に印加する電圧変換部513,514を備える。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録ヘッドの製造ばらつきによる印字品質のばらつきを抑制する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、数多くの記録装置(印刷装置)が使用されるようになり、これらの記録装置に対して、高速記録、高解像度、高画像品質、低騒音などが要求されている。このような要求に応える記録装置として、インクジェット装置をあげることができる。インクジェット式は、記録ヘッドの吐出口からインク(記録液)滴を吐出飛翔させ、これを被記録材に付着させて記録するように構成されている。このインクジェット記録装置では、記録ヘッドからインクを吐出させて記録を行うために非接触で印字が可能でありこのために非常に安定した記録画像を得ることができる。
【0003】
熱エネルギーを利用してインクを吐出する形態のインクジェット記録装置においては、電気熱変換素子(ヒータ)の両端に一定の電圧の駆動信号を印加することにより、インクが吐出する。このヒータは半導体プロセス技術を用いて、同一基板上に形成されるのが一般的である。
【0004】
図6に従来の基板の回路構成を示す。
【0005】
図6において、401は熱エネルギーを発生するための電気熱変換素子(ヒータ)、402はヒータ401に所望の電流を供給するためのパワートランジスタ、404は各ヒータ401に電流を供給し記録ヘッドのノズルからインクを吐出するか否かの画像データを一時的に格納するシフトレジスタ、406はヒータ401をON/OFFさせる画像データ(DATA)をシリアルに入力する画像データ入力端子、407はシフトレジスタ404に設けられた転送クロック(CLK)を入力する入力端子、403は各ヒータ401に対する画像データ(DATA)を各ヒータごとに記憶保持するためのラッチ回路、408はラッチ回路403にラッチのタイミング信号(LT)を入力するラッチ信号入力端子、409はヒータ401に電流を流すタイミングを決定するスイッチ、405はヒータに所定の電圧を印加し電流を供給するための電源ライン、410はヒータ401及びパワートランジスタ402を流れた電流が流れ込むGNDラインである。
【0006】
また、シフトレジスタ404に格納される画像データビット数とパワートランジスタ402の数とヒータ401の数とは同じである。
【0007】
図7は、図6に示した記録ヘッドの駆動回路を駆動するための各種信号のタイミングチャートである。
次に、図7を参照して図6に示した記録ヘッドの駆動回路の動作について説明する。
【0008】
転送クロック入力端子407にはシフトレジスタ404に格納される画像データのビット数分の転送クロック(CLK)が入力される。ここでは、シフトレジスタ404へのデータ転送が転送クロック(CLK)の立ち上がりのタイミングに同期して行われるものとし、各ヒータ401をON/OFFさせるための画像データ(DATA)が画像データ入力端子406から入力される。
【0009】
ここで、シフトレジスタ404に格納される画像データのビット数とヒータ401及び電流駆動用のパワートランジスタ402の数とは同じであるから、ヒータ401の数の分だけ転送クロック(CLK)のパルスを入力して画像データ(DATA)をシフトレジスタ404に転送した後、ラッチ信号入力端子408にラッチ信号(LT)を与えて各ヒータ401に対応した画像データをラッチ回路403に保持する。
【0010】
この後、スイッチ409を適当な時間“ON”にすれば、スイッチ409がON状態となっているその長さに応じてパワートランジスタ402及びヒータ401に電源ライン405を通って電流がながれ、その電流は再びGNDライン410へ流れ込む。この時、ヒータ401はインクを吐出するために必要な熱を発生し、画像データ(DATA)に見合ったインクが記録ヘッドのノズルから吐出される。
【0011】
以上、述べたような構成は、従来より知られているものであるが、更にこの改良型として図8に示すような構成の記録ヘッドも提案されている。
【0012】
図8において、502はヒータに所望の電流を供給するためのパワートランジスタとして動作するnMOS電界効果トランジスタ(FET)である。このように、 MOSトランジスタをパワートランジスタに用いた場合は、図8に示すように、スイッチ409とパワートランジスタ502との間に電圧変換部511を設け、ラッチ403から出力されるデジタル信号の電圧振幅をさらに高い電圧振幅に変換してパワートランジスタ502のゲートに印加し、パワートランジスタの駆動力を増大させることが望ましい。このようにパワートランジタの駆動力を増大させることで駆動回路におけるパワートランジスタが占有する面積を小さくすることができ、これによって回路全体の小型化に貢献する。また、図8において、512は電圧変換部511に電圧を印加するための電源ラインである。
【0013】
この回路構成を図6のそれと比較すると、図6に示した構成ではパワートランジスタとしてダーリントン接続されたNPNトランジスタが用いられている。このような構成のもとでは、通常シフトレジスタやラッチなどの論理回路にはCMOSゲートが使われ、これと同時にNPNトランジスタを形成するために、Bi−CMOSプロセスが用いられていた。しかし、Bi−CMOSプロセスはその工程に要するマスク枚数が多く、高価であるという欠点を持っている。そこで、図8に示すように、NPNトランジスタの代わりにnMOSトランジスタを用いることにより、論理回路と同様のプロセス(CMOSプロセス)を用いてパワートランジスタも形成できるため比較的安いコストで記録ヘッドの製造が可能となる。
【0014】
しかしながら上記従来例で示したようなMOSトランジスタをパワートランジスタとして用いた記録ヘッドでは、製造プロセスのバラツキによって記録ヘッドが所望の動作をしなくなるという問題点があった。この点を図9に示すnMOSトランジスタの電流・電圧特性図を参照して説明する。図9には、nMOSトランジスタの静特性と、記録ヘッドのヒータの抵抗による負荷線が示してある。
【0015】
さて、図8に示すような記録ヘッドが記録装置に搭載され、記録動作を実行しインクを吐出する時、nMOSトランジスタが動作状態となり、ヒータに電流が流れる。この時、nMOSトランジスタのドレインソース間にかかる電圧(Vop)及びドレインソース間をながれる電流(Iop)は夫々、図9に示したように、nMOSの静特性の曲線と、ヒータ抵抗による負荷線との交点(動作点)となる。ヒータに印加する電圧をVHとした場合、インク吐出時にヒータによって生じるエネルギーは、(VH−Vop)×Iopとなる。
【0016】
一方、インクジェット方式に従う記録ヘッドでは、電気熱変換効率を上げるためインク吐出時のドレインソース間電圧(Vop)は、小さい値であることが望まれる。そのため、 nMOSトランジスタの動作点では、nMOSトランジスタは3極管領域で動作するよう設計することが望ましい。この時のドレイン電流(IDS)とドレインソース間電圧(VDS)の関係は、式(1)のように表せる。
【0017】
IDS=(W/L)・μn・Cox[(VG−VTH)・VDS−(1/2)VDS2] …(1)
ここで、W:ゲート幅、L:ゲート長、μn:電子移動度、Cox:ゲート酸化膜厚、VG:ゲート電圧,VTH:閾値電圧である。
【0018】
また、nMOSトランジスタの特性を変動させる要因の中で、ゲート長(L)のプロセスバラツキによる影響が最も大きいことが知られている。例えば、ゲート長(L)が3≦LのnMOSトランジスタを製造する場合、その製造に用いるアライナにはミラープロジェクションアライナ(MPA)を用いるのが一般的であるが、設計値(L0)に対して最大±1.0μmのプロセスバラツキが生じる可能性がある。
【0019】
式(1)から明らかなように、ゲート長(L)はドレイン電流(IDS)と反比例の関係にあり、また設計値(L0)に対するプロセスバラツキによる寸法変化の割合が大きいため、nMOSトランジスタの静特性は大きな影響を受ける。図9にはゲート長(L)が設計値(L0)より大きくなった場合の静特性を破線で、設計値より小さくなった場合の静特性を点線で示している。
【0020】
このような特性変化によれば、ゲート長(L)が設計値(L0)より大きくなった場合(L>L0)は、nMOSトランジスタのヒータに印加される電圧、及びヒータに流れる電流がともに小さくなり、ヒータから発生するエネルギーは減少する。逆にゲート長(L)が設計値(L0)より小さくなった場合(L<L0)、nMOSトランジスタの駆動力が向上し、ヒータに印加される電圧及びヒータに流れる電流は共に大きくなり、ヒータから発生するエネルギーは増大する。
【0021】
従って、ヒータから生じるエネルギーが設計値よりも小さくなると、インクが吐出しないという問題が生じ、逆にヒータから生じるエネルギーが設計値よりも大きいと、インクがヒータ上にこげついたり、ヒータの寿命が低下するという問題が生じる。このように、記録ヘッドの製造プロセスのバラツキによりnMOSトランジスタの駆動力が変化し、その結果、記録ヘッドの記録動作やその寿命に大きな影響を与える。
【0022】
この問題解決のために、特開平10−138484号公報(特許文献1)に示すように、前記MOSトランジスタの特性バラツキを補正する補正回路を設ける方法などが知られている。
【0023】
また、このような基板に形成されるヒータ(発熱体)の抵抗値は、抵抗材の膜圧や寸法公差のため、バラツキが生じることが知られている。
【0024】
この公差については、ヒータ抵抗値をあらかじめ検出する端子を設け、その出力に従って、このヘッドを駆動するための発熱体への通電時間(駆動パルス)を制御したり、駆動電圧を制御するなどを行っている。
【0025】
さらには、発熱体の上層にはSiNなどの絶縁膜やTaなどの耐インクキャビテーション膜などが形成されているが、これらもバラツキを生じることが知られている。
【0026】
この公差については、さらに臨界発泡エネルギーを検出する工程により、適正な発熱体への通電時間(駆動パルス)を制御する方法などが取られている。
【0027】
【特許文献1】
特開平10−138484号公報
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、最近では更なる高画質化のため、飛翔液滴の小ドロップ化が進み、それに伴い、発熱体のサイズが微小になり公差が厳しい状況になってきている。例えば従来では、80plの液滴を飛翔させるには、5000μm2程の発熱体の面積であったが、昨今では4pl以下の液滴を吐出させるために、400μm2程の発熱体の面積となっている。半導体プロセスにおける最小デザインルールも向上しているが製造公差が大きくなってしまう傾向がある。
【0028】
また、コストダウンのため、基板サイズを小さくするために、配線抵抗値の公差、またMOSにおける公差も大きくなっている。MOSの公差については、先に示した特開平10−138484号公報のように、補正回路を設ける手段もあるが、補正回路は基板に機能をさらに設ける必要があり、コストアップにつながっていた。
【0029】
また、発熱体に接続するための配線も基板サイズを小さくするため細くする必要があり、これによる配線抵抗値の公差も大きくなってしまっていた。
【0030】
このように記録ヘッドにおける製造公差が大きくなるため、先に示した発熱体への通電時間(駆動パルス)における制御は複雑化し困難となってきている。駆動パルスにおける制御は、制御分の駆動テーブルが公差分必要である。駆動テーブルを格納するメモリが必要であり、このメモリの増大や、駆動テーブルを細かくするために周波数の高いクロック信号を作り出すことが必要となったりしており、どちらも困難になっていた。
【0031】
駆動電圧における制御はさらに困難となっている。電圧の制御を行うには、高精度の電圧設定が必須となる。しかしながら、駆動電圧は、ヒータに電力を供給する電源であり、電流値がプリンタ電気系においては比較的大きく、電力を多大に消費する。
【0032】
このような大電力を消費する発熱体供給電源を高精度に制御することは大変困難である。設定精度を下げれば、先に述べたように記録ヘッドの記録動作やその寿命に大きな影響を与える。ヘッド寿命においても、最近では大判のプロッタやネットワークプリンタとして用いる記録ヘッドにおいては、更なる長寿命が必要となっている。
【0033】
従って、本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、記録ヘッドの製造ばらつきが増大しても、安定したインク吐出による高画質な印刷を可能とすることである。
【0034】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係わるインクジェット記録ヘッドは、通電することにより発熱してインクを加熱する発熱体と、該発熱体を駆動するMOSトランジスタと、該MOSトランジスタを駆動する論理回路と、該論理回路から出力される信号電圧を所定の電圧に変換して前記MOSトランジスタのゲート電極に印加する電圧変換手段とを備え、前記電圧変換手段は、電圧供給部と、該電圧供給部からの電圧により前記信号電圧を前記所定の電圧に変換して前記MOSトランジスタのゲート電極に印加する電圧変換部を備えることを特徴とする。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0036】
まず、本実施形態の概要について説明する。
【0037】
本実施形態のインクジェット記録ヘッドは、通電することにより発熱してインクを加熱する発熱体と、該発熱体を駆動するMOSトランジスタと、該MOSトランジスタを駆動する論理回路と、該論理回路から出力される信号電圧を所定の電圧に変換して前記MOSトランジスタのゲート電極に印加する電圧変換手段とを備え、前記電圧変換手段は、電圧供給部と、該電圧供給部からの電圧により前記信号電圧を前記所定の電圧に変換して前記MOSトランジスタのゲート電極に印加する電圧変換部を備える。
【0038】
また、本実施形態のインクジェット記録ヘッドにおいて、前記インクジェット記録ヘッドは、複数の前記発熱体を備え、該複数の発熱体のそれぞれに印加する電圧値をそれぞれ個別に設定可能であることが好ましい。
【0039】
また、本実施形態のインクジェット記録ヘッドにおいて、前記電圧変換部は、前記インクジェット記録ヘッドの印字モードに応じて、前記MOSトランジスタのゲート電極に印加する電圧を変化させることが好ましい。
【0040】
また、本実施形態のインクジェット記録ヘッドの製造方法は、上記のインクジェット記録ヘッドを製造する方法であって、複数の前記発熱体の抵抗値又は配線抵抗値を検出する検出工程と、該検出工程において検出された前記複数の発熱体で消費されるエネルギーが略一定となるように、前記電圧変換部の特性を設定する設定工程とを備える。
【0041】
また、本実施形態のインクジェット記録ヘッドの製造方法において、前記発熱体の臨界発泡エネルギーを検出する工程をさらに備えることが好ましい。
【0042】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0043】
<装置本体の概略説明>
図1は、本発明の代表的な実施の形態であるインクジェットプリンタIJRAの構成の概要を示す外観斜視図である。
【0044】
図1において、駆動モータ5013の正逆回転に連動して駆動力伝達ギア5009〜5011を介して回転するリードスクリュー5005の螺旋溝5004に対して係合するキャリッジHCはピン(不図示)を有し、ガイドレール5003に支持されて矢印a,b方向を往復移動する。キャリッジHCには、記録ヘッドIJHとインクタンクITとを内蔵した一体型インクジェットカートリッジIJCが搭載されている。5002は紙押え板であり、キャリッジHCの移動方向に亙って記録用紙Pをプラテン5000に対して押圧する。5007,5008はフォトカプラで、キャリッジのレバー5006のこの域での存在を確認して、モータ5013の回転方向切り換え等を行うためのホームポジション検知器である。5016は記録ヘッドIJHの前面をキャップするキャップ部材5022を支持する部材で、5015はこのキャップ内を吸引する吸引器で、キャップ内開口5023を介して記録ヘッドの吸引回復を行う。5017はクリーニングブレードで、5019はこのブレードを前後方向に移動可能にする部材であり、本体支持板5018にこれらが支持されている。ブレードは、この形態でなく周知のクリーニングブレードが本例に適用できることは言うまでもない。又、5021は、吸引回復の吸引を開始するためのレバーで、キャリッジと係合するカム5020の移動に伴って移動し、駆動モータからの駆動力がクラッチ切り換え等の公知の伝達機構で移動制御される。
【0045】
これらのキャッピング、クリーニング、吸引回復は、キャリッジがホームポジション側の領域に来た時にリードスクリュー5005の作用によってそれらの対応位置で所望の処理が行えるように構成されているが、周知のタイミングで所望の動作を行うようにすれば、本例にはいずれも適用できる。
【0046】
<制御構成の説明>
次に、上述した装置の記録制御を実行するための制御構成について説明する。
【0047】
図2はインクジェットプリンタIJRAの制御回路の構成を示すブロック図である。制御回路を示す同図において、1700は記録信号を入力するインタフェース、1701はMPU、1702はMPU1701が実行する制御プログラムを格納するROM、1703は各種データ(上記記録信号や記録ヘッドIJHに供給される記録データ等)を保存しておくDRAMである。1704は記録ヘッドIJHに対する記録データの供給制御を行うゲートアレイ(G.A.)であり、インタフェース1700、MPU1701、RAM1703間のデータ転送制御も行う。1710は記録ヘッドIJHを搬送するためのキャリアモータ、1709は記録紙搬送のための搬送モータである。1705は記録ヘッドIJHを駆動するヘッドドライバ、1706,1707はそれぞれ搬送モータ1709、キャリアモータ1710を駆動するためのモータドライバである。
【0048】
上記制御構成の動作を説明すると、インタフェース1700に記録信号が入るとゲートアレイ1704とMPU1701との間で記録信号がプリント用の記録データに変換される。そして、モータドライバ1706、1707が駆動されると共に、ヘッドドライバ1705に送られた記録データに従って記録ヘッドIJHが駆動され、記録が行われる。
【0049】
次に、本発明の特徴的な部分について説明する。
【0050】
(第1の実施形態)
図3は第1の実施形態の記録ヘッドIJHの駆動回路における、電圧変換部の回路図である。従来例である図8に示した記録ヘッドの電圧変換部511にあたるものである。発熱駆動部の電源電圧が405、第2の駆動電圧(VHT)が512である。
【0051】
511がNMOSパワートランジスタ502のゲート入力電圧を制御する電圧変換部であり、昇圧用抵抗513、オフセットNMOS514を備え、ラッチ403より出力されるロジック出力(5Vor3.3V)を昇圧する回路である。NMOSパワートランジスタ502のゲート入力電圧が入力されると、パワートランジスタ502がONされ、電源電圧405から発熱体401に電流が流れる。このとき、パワートランジスタ502は、ゲート電圧値(VHTにより変化)に応じて異なる静特性を示し、図10に示す可変抵抗的な特性を示す。図5に発熱体の電流経路における等価回路図を示す。発熱体を流れる電流経路には、抵抗要素として、発熱体(R)401、パワートランジスタ負荷(Rmos:具体的には抵抗値)、配線抵抗(Rl)の大きくわけて3つが存在する。これはそれぞれ製造工程において、あるバラツキをもって製造される。その場合、発熱体Rに流れる電流値が変化し、発熱体で発生されるエネルギーがバラツキをもつ。これを補正するため、従来では通電時間(駆動パルス幅)を変化させ、ほぼ同じエネルギーが発熱体部で消費されるように制御が行われていた。しかし上述したように、制御パルスはこの3パラメータにより変化するものであり、バラツキが大きくなるとその制御は大変複雑なものとなっていた。これを改善すべく本実施形態では、図5において、パワートランジスタ502の負荷(Rmos)を第2電源VHTを変化させることにより、ゲート電圧値を変化させ、一定の駆動条件によるバラツキ補正を実現する。
【0052】
図11に制御の例を示す。
【0053】
まず、設計値は、発熱体抵抗値R=100Ω、パワートランジスタ負荷Rmos=20Ω(VHT=13.0V)、配線抵抗Rl=40Ωとなっており、駆動電圧20V、駆動パルス幅1.9μsである。これに対し、例(1)では、発熱体抵抗値R=115Ω、パワートランジスタ負荷Rmos=24Ω、配線抵抗Rl=48Ωとバラツキを生じた場合、従来では、ヒータで消費されるエネルギーが同じになるよう、図11に示すように、駆動パルス幅を2.45μsに変更して制御していた。また例(2)では、発熱体抵抗値R=85Ω、パワートランジスタ負荷Rmos=16Ω、配線抵抗Rl=32Ωとバラツキを生じた場合、従来では、同じく図11に示すように、駆動パルス幅を1.45μsに変更して制御していた。
【0054】
しかし本実施形態によれば、例(1)では、第2の駆動電圧(VHT)を可変制御し、パワートランジスタ負荷Rmos=8Ω(VHT=17.5V)とすることで駆動パルス幅を設計値と同じ1.9μsとすることができる。また例(2)では、第2の駆動電圧(VHT)を可変制御し、パワートランジスタ負荷Rmos=30Ω(VHT=12.5V)とすることで駆動パルス幅を設計値と同じ1.9μsとすることができる。
【0055】
この原理を次に説明する。
【0056】
図5において、発熱体を流れる電流値をi、駆動電圧をVH、駆動パルスをPwとすると、発熱体で消費されるエネルギーは、
E=i2R=VH2・R/(R+Rmos+Rl)2Pw
と表される。VH、Pwを一定とすると、Eを一定とするには
R/(R+Rmos+Rl)2=一定 …(1)
となるようにすれば良い。すなわち、それぞれのバラツキをもった抵抗パラメータR、Rlに対し、上記式が一定値を示すように、Rmosを決定する。その際、Rmosはゲート電圧によって変化できるから、搭載される記録ヘッドに応じて第2の電源電圧(VHT)を変化させることにより、ゲート電圧をRmosが所望の値になるように制御すれば、一定の駆動条件(電源電圧、駆動パルス幅)で駆動を行うことができる。
【0057】
(第2の実施形態)
図4は上記ゲート電圧の制御を記録ヘッド内で行う場合の電圧変換部の構成例を示した図である。
【0058】
図4において、VHTには記録ヘッドの電源電圧VHと同じ電圧が供給される。513a〜513dは、それぞれ昇圧用抵抗であり、515a〜515dは抵抗を選択するための切断端子である。まず、この記録ヘッドの製造時において、発熱体抵抗、配線抵抗、パワートランジスタ負荷を実際にパワートランジスタをONさせることにより検知する。この出力値に従って、上記式(1)が一定となるように、Rmosが決定される。次にRmosを出力するためのゲート電圧が決まり、所望のゲート電圧が出力されるべく、最も適正な昇圧抵抗となるように、a〜dの切断端子を選択切断する。それぞれの抵抗値のうち1つを選んでも良いし、このうちの2つ、又は3つの並列抵抗値として利用しても良い。これにより、第2の実施形態においては、第2の電源電圧を制御する必要はなく、一定の駆動条件(電源電圧、駆動パルス幅)で駆動を行うことができる。
【0059】
なおヘッド製造時の各種抵抗の検知は、テスト用発熱体、配線抵抗などを設けて予測検知しても良い。また、実際にインクを発泡吐出や印字をさせ、臨界の発泡エネルギーを求めて、Rmosの補正を行った方が、記録ヘッド総合のバラツキを補正できるため、より有効である。
【0060】
(第3の実施形態)
図12にもうひとつの制御例を示す。
【0061】
上記の第1及び第2の実施形態においては、あらゆる製造バラツキにおいて、発熱体で消費されるエネルギーが一定となるように制御を行う様に説明した。
【0062】
図12は、これを更に発展させた例であり、印字モードによる第2の電源電圧制御について説明する。
【0063】
図12に示す設計値の抵抗パラメータをもった記録ヘッドにおいて、例(3)では、VHTを低く設定することにより、パワートランジスタ負荷Rmosを大きくし、駆動パルス幅を3.5μsにすることができる。また例(4)では、VHTを高く設定することにより、Rmosを小さくし、駆動パルス幅を1.4μsにすることができる。駆動パルス幅を変更することで、インクジェット方式によるインク吐出量が変化することが知られている。図13に駆動パルス幅と吐出量の変化を示したものを示す。図13に示すように第2の電源電圧を制御することによって、吐出量を変化させることが可能である。すなわち印字モードによって、吐出量を変化させることが可能であり、高画質印刷では吐出量を小さくし、高速モードでは吐出量を大きくするといった吐出量を簡単に制御することができる。
【0064】
第2の電源電圧(VHT)によって供給される電流は、本実施形態では、1mA以下であり、発熱体に供給される電流100mA程度と比べはるかに小さい。吐出量変調の方法として、電源電圧を変化させる方法もあるが、第3の実施形態による供給電力の小さい電源電圧を制御する方が、簡易であり信頼性も高いものとなるといった優位性もある。
【0065】
以上説明したように、上記の実施形態によれば、記録ヘッドにおける発熱体抵抗、配線抵抗のバラツキや、発熱体上の保護膜バラツキによる記録素子の吐出バラツキがあっても、ゲート電圧を任意に可変である、簡易なゲート電圧変換部を記録ヘッドに設けたり、あるいは消費電力が少なく制御のより容易で簡素である第2電源を用いることにより、前述の記録ヘッドにおける製造公差が増大しても、安定した吐出による高画質な印刷で、かつ高耐久性、高信頼性の記録ヘッド及び記録ヘッド製造方法、記録装置を提供できる。
【0066】
また、従来のバラツキを補正するためにパルス幅を制御するといった複雑な制御手段も必要なくなり、制御を簡素化あるいは削除することが可能となり、かつ安定した吐出による高画質な印刷で、かつ高耐久性、高信頼性の記録ヘッド及び記録ヘッド製造方法、記録装置を提供できる。
【0067】
また、記録ヘッドのバラツキをさらに大きく許容することもでき、製造歩留まりが向上するだけでなく、さらには発熱体を有する回路基板チップサイズをより小さくすることもでき、大幅なコストダウンにつながる。
【0068】
さらには、消費電力が少なく制御のより容易で簡素である第2電源を用いることにより、簡単に吐出量変調を行うこともできる。
【0069】
以上の実施形態は、特にインクジェット記録方式の中でも、インク吐出を行わせるために利用されるエネルギーとして熱エネルギーを発生する手段(例えば電気熱変換体やレーザ光等)を備え、前記熱エネルギーによりインクの状態変化を生起させる方式を用いることにより記録の高密度化、高精細化が達成できる。
【0070】
その代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4723129号明細書、同第4740796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。この方式はいわゆるオンデマンド型、コンティニュアス型のいずれにも適用可能であるが、特に、オンデマンド型の場合には、液体(インク)が保持されているシートや液路に対応して配置されている電気熱変換体に、記録情報に対応していて核沸騰を越える急速な温度上昇を与える少なくとも1つの駆動信号を印加することによって、電気熱変換体に熱エネルギーを発生せしめ、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさせて、結果的にこの駆動信号に1対1で対応した液体(インク)内の気泡を形成できるので有効である。この気泡の成長、収縮により吐出用開口を介して液体(インク)を吐出させて、少なくとも1つの滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長収縮が行われるので、特に応答性に優れた液体(インク)の吐出が達成でき、より好ましい。
【0071】
このパルス形状の駆動信号としては、米国特許第4463359号明細書、同第4345262号明細書に記載されているようなものが適している。なお、上記熱作用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第4313124号明細書に記載されている条件を採用すると、さらに優れた記録を行うことができる。
【0072】
また、以上の実施形態は記録ヘッドを走査して記録を行なうシリアルタイプの記録装置であったが、記録媒体の幅に対応した長さを有する記録ヘッドを用いたフルラインタイプの記録装置であっても良い。フルラインタイプの記録ヘッドとしては、上述した明細書に開示されているような複数記録ヘッドの組み合わせによってその長さを満たす構成や、一体的に形成された1個の記録ヘッドとしての構成のいずれでもよい。
【0073】
加えて、上記の実施形態で説明した記録ヘッド自体に一体的にインクタンクが設けられたカートリッジタイプの記録ヘッドのみならず、装置本体に装着されることで、装置本体との電気的な接続や装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチップタイプの記録ヘッドを用いてもよい。
【0074】
また、以上説明した記録装置の構成に、記録ヘッドに対する回復手段、予備的な手段等を付加することは記録動作を一層安定にできるので好ましいものである。これらを具体的に挙げれば、記録ヘッドに対してのキャッピング手段、クリーニング手段、加圧あるいは吸引手段、電気熱変換体あるいはこれとは別の加熱素子あるいはこれらの組み合わせによる予備加熱手段などがある。また、記録とは別の吐出を行う予備吐出モードを備えることも安定した記録を行うために有効である。
【0075】
さらに、記録装置の記録モードとしては黒色等の主流色のみの記録モードだけではなく、記録ヘッドを一体的に構成するか複数個の組み合わせによってでも良いが、異なる色の複色カラー、または混色によるフルカラーの少なくとも1つを備えた装置とすることもできる。
【0076】
以上説明した実施の形態においては、インクが液体であることを前提として説明しているが、室温やそれ以下で固化するインクであっても、室温で軟化もしくは液化するものを用いても良く、あるいはインクジェット方式ではインク自体を30°C以上70°C以下の範囲内で温度調整を行ってインクの粘性を安定吐出範囲にあるように温度制御するものが一般的であるから、使用記録信号付与時にインクが液状をなすものであればよい。
【0077】
さらに加えて、本発明に係る記録装置の形態としては、コンピュータ等の情報処理機器の画像出力端末として一体または別体に設けられるものの他、リーダ等と組み合わせた複写装置、さらには送受信機能を有するファクシミリ装置の形態を取るものであっても良い。
【0078】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、記録ヘッドの製造ばらつきが増大しても、安定したインク吐出による高画質な印刷を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の代表的な実施の形態であるインクジェットプリンタIJRAの構成を示す外観斜視図である。
【図2】インクジェットプリンタIJRAの制御回路の構成を示すブロック図である。
【図3】記録ヘッドIJHにおける第1の実施形態の電圧変換部の回路図である。
【図4】記録ヘッドIJHにおける第2の実施形態の電圧変換部の回路図である。
【図5】発熱体を流れる電流経路の等価回路である。
【図6】従来の記録ヘッドの回路構成を示す図である。
【図7】図6に示した記録ヘッドの駆動回路を駆動するための各種信号のタイミングチャートである。
【図8】図6に示す記録ヘッドのパワートランジスタにnMOSFETを用いた従来の例を示すブロック図である。
【図9】nMOSトランジスタのVDS−IDS特性を示す図である。
【図10】図3におけるVHT入力電圧とRmos抵抗値特性を示したグラフである。
【図11】本発明の第1の実施形態の制御例と従来の制御例を示した図である。
【図12】本発明の第3の実施形態の制御例を示した図である。
【図13】駆動パルス幅と吐出量の関係を示した図である。
【符号の説明】
401 発熱体(ヒータ)
402 NPNトランジスタ
403 ラッチ回路
404 シフトレジスタ
405 電源電圧
502 nMOSトランジスタ
511 電圧変換部
512 第2の電源電圧
513 昇圧抵抗
514 nMOS
515 切断端子
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録ヘッドの製造ばらつきによる印字品質のばらつきを抑制する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、数多くの記録装置(印刷装置)が使用されるようになり、これらの記録装置に対して、高速記録、高解像度、高画像品質、低騒音などが要求されている。このような要求に応える記録装置として、インクジェット装置をあげることができる。インクジェット式は、記録ヘッドの吐出口からインク(記録液)滴を吐出飛翔させ、これを被記録材に付着させて記録するように構成されている。このインクジェット記録装置では、記録ヘッドからインクを吐出させて記録を行うために非接触で印字が可能でありこのために非常に安定した記録画像を得ることができる。
【0003】
熱エネルギーを利用してインクを吐出する形態のインクジェット記録装置においては、電気熱変換素子(ヒータ)の両端に一定の電圧の駆動信号を印加することにより、インクが吐出する。このヒータは半導体プロセス技術を用いて、同一基板上に形成されるのが一般的である。
【0004】
図6に従来の基板の回路構成を示す。
【0005】
図6において、401は熱エネルギーを発生するための電気熱変換素子(ヒータ)、402はヒータ401に所望の電流を供給するためのパワートランジスタ、404は各ヒータ401に電流を供給し記録ヘッドのノズルからインクを吐出するか否かの画像データを一時的に格納するシフトレジスタ、406はヒータ401をON/OFFさせる画像データ(DATA)をシリアルに入力する画像データ入力端子、407はシフトレジスタ404に設けられた転送クロック(CLK)を入力する入力端子、403は各ヒータ401に対する画像データ(DATA)を各ヒータごとに記憶保持するためのラッチ回路、408はラッチ回路403にラッチのタイミング信号(LT)を入力するラッチ信号入力端子、409はヒータ401に電流を流すタイミングを決定するスイッチ、405はヒータに所定の電圧を印加し電流を供給するための電源ライン、410はヒータ401及びパワートランジスタ402を流れた電流が流れ込むGNDラインである。
【0006】
また、シフトレジスタ404に格納される画像データビット数とパワートランジスタ402の数とヒータ401の数とは同じである。
【0007】
図7は、図6に示した記録ヘッドの駆動回路を駆動するための各種信号のタイミングチャートである。
次に、図7を参照して図6に示した記録ヘッドの駆動回路の動作について説明する。
【0008】
転送クロック入力端子407にはシフトレジスタ404に格納される画像データのビット数分の転送クロック(CLK)が入力される。ここでは、シフトレジスタ404へのデータ転送が転送クロック(CLK)の立ち上がりのタイミングに同期して行われるものとし、各ヒータ401をON/OFFさせるための画像データ(DATA)が画像データ入力端子406から入力される。
【0009】
ここで、シフトレジスタ404に格納される画像データのビット数とヒータ401及び電流駆動用のパワートランジスタ402の数とは同じであるから、ヒータ401の数の分だけ転送クロック(CLK)のパルスを入力して画像データ(DATA)をシフトレジスタ404に転送した後、ラッチ信号入力端子408にラッチ信号(LT)を与えて各ヒータ401に対応した画像データをラッチ回路403に保持する。
【0010】
この後、スイッチ409を適当な時間“ON”にすれば、スイッチ409がON状態となっているその長さに応じてパワートランジスタ402及びヒータ401に電源ライン405を通って電流がながれ、その電流は再びGNDライン410へ流れ込む。この時、ヒータ401はインクを吐出するために必要な熱を発生し、画像データ(DATA)に見合ったインクが記録ヘッドのノズルから吐出される。
【0011】
以上、述べたような構成は、従来より知られているものであるが、更にこの改良型として図8に示すような構成の記録ヘッドも提案されている。
【0012】
図8において、502はヒータに所望の電流を供給するためのパワートランジスタとして動作するnMOS電界効果トランジスタ(FET)である。このように、 MOSトランジスタをパワートランジスタに用いた場合は、図8に示すように、スイッチ409とパワートランジスタ502との間に電圧変換部511を設け、ラッチ403から出力されるデジタル信号の電圧振幅をさらに高い電圧振幅に変換してパワートランジスタ502のゲートに印加し、パワートランジスタの駆動力を増大させることが望ましい。このようにパワートランジタの駆動力を増大させることで駆動回路におけるパワートランジスタが占有する面積を小さくすることができ、これによって回路全体の小型化に貢献する。また、図8において、512は電圧変換部511に電圧を印加するための電源ラインである。
【0013】
この回路構成を図6のそれと比較すると、図6に示した構成ではパワートランジスタとしてダーリントン接続されたNPNトランジスタが用いられている。このような構成のもとでは、通常シフトレジスタやラッチなどの論理回路にはCMOSゲートが使われ、これと同時にNPNトランジスタを形成するために、Bi−CMOSプロセスが用いられていた。しかし、Bi−CMOSプロセスはその工程に要するマスク枚数が多く、高価であるという欠点を持っている。そこで、図8に示すように、NPNトランジスタの代わりにnMOSトランジスタを用いることにより、論理回路と同様のプロセス(CMOSプロセス)を用いてパワートランジスタも形成できるため比較的安いコストで記録ヘッドの製造が可能となる。
【0014】
しかしながら上記従来例で示したようなMOSトランジスタをパワートランジスタとして用いた記録ヘッドでは、製造プロセスのバラツキによって記録ヘッドが所望の動作をしなくなるという問題点があった。この点を図9に示すnMOSトランジスタの電流・電圧特性図を参照して説明する。図9には、nMOSトランジスタの静特性と、記録ヘッドのヒータの抵抗による負荷線が示してある。
【0015】
さて、図8に示すような記録ヘッドが記録装置に搭載され、記録動作を実行しインクを吐出する時、nMOSトランジスタが動作状態となり、ヒータに電流が流れる。この時、nMOSトランジスタのドレインソース間にかかる電圧(Vop)及びドレインソース間をながれる電流(Iop)は夫々、図9に示したように、nMOSの静特性の曲線と、ヒータ抵抗による負荷線との交点(動作点)となる。ヒータに印加する電圧をVHとした場合、インク吐出時にヒータによって生じるエネルギーは、(VH−Vop)×Iopとなる。
【0016】
一方、インクジェット方式に従う記録ヘッドでは、電気熱変換効率を上げるためインク吐出時のドレインソース間電圧(Vop)は、小さい値であることが望まれる。そのため、 nMOSトランジスタの動作点では、nMOSトランジスタは3極管領域で動作するよう設計することが望ましい。この時のドレイン電流(IDS)とドレインソース間電圧(VDS)の関係は、式(1)のように表せる。
【0017】
IDS=(W/L)・μn・Cox[(VG−VTH)・VDS−(1/2)VDS2] …(1)
ここで、W:ゲート幅、L:ゲート長、μn:電子移動度、Cox:ゲート酸化膜厚、VG:ゲート電圧,VTH:閾値電圧である。
【0018】
また、nMOSトランジスタの特性を変動させる要因の中で、ゲート長(L)のプロセスバラツキによる影響が最も大きいことが知られている。例えば、ゲート長(L)が3≦LのnMOSトランジスタを製造する場合、その製造に用いるアライナにはミラープロジェクションアライナ(MPA)を用いるのが一般的であるが、設計値(L0)に対して最大±1.0μmのプロセスバラツキが生じる可能性がある。
【0019】
式(1)から明らかなように、ゲート長(L)はドレイン電流(IDS)と反比例の関係にあり、また設計値(L0)に対するプロセスバラツキによる寸法変化の割合が大きいため、nMOSトランジスタの静特性は大きな影響を受ける。図9にはゲート長(L)が設計値(L0)より大きくなった場合の静特性を破線で、設計値より小さくなった場合の静特性を点線で示している。
【0020】
このような特性変化によれば、ゲート長(L)が設計値(L0)より大きくなった場合(L>L0)は、nMOSトランジスタのヒータに印加される電圧、及びヒータに流れる電流がともに小さくなり、ヒータから発生するエネルギーは減少する。逆にゲート長(L)が設計値(L0)より小さくなった場合(L<L0)、nMOSトランジスタの駆動力が向上し、ヒータに印加される電圧及びヒータに流れる電流は共に大きくなり、ヒータから発生するエネルギーは増大する。
【0021】
従って、ヒータから生じるエネルギーが設計値よりも小さくなると、インクが吐出しないという問題が生じ、逆にヒータから生じるエネルギーが設計値よりも大きいと、インクがヒータ上にこげついたり、ヒータの寿命が低下するという問題が生じる。このように、記録ヘッドの製造プロセスのバラツキによりnMOSトランジスタの駆動力が変化し、その結果、記録ヘッドの記録動作やその寿命に大きな影響を与える。
【0022】
この問題解決のために、特開平10−138484号公報(特許文献1)に示すように、前記MOSトランジスタの特性バラツキを補正する補正回路を設ける方法などが知られている。
【0023】
また、このような基板に形成されるヒータ(発熱体)の抵抗値は、抵抗材の膜圧や寸法公差のため、バラツキが生じることが知られている。
【0024】
この公差については、ヒータ抵抗値をあらかじめ検出する端子を設け、その出力に従って、このヘッドを駆動するための発熱体への通電時間(駆動パルス)を制御したり、駆動電圧を制御するなどを行っている。
【0025】
さらには、発熱体の上層にはSiNなどの絶縁膜やTaなどの耐インクキャビテーション膜などが形成されているが、これらもバラツキを生じることが知られている。
【0026】
この公差については、さらに臨界発泡エネルギーを検出する工程により、適正な発熱体への通電時間(駆動パルス)を制御する方法などが取られている。
【0027】
【特許文献1】
特開平10−138484号公報
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、最近では更なる高画質化のため、飛翔液滴の小ドロップ化が進み、それに伴い、発熱体のサイズが微小になり公差が厳しい状況になってきている。例えば従来では、80plの液滴を飛翔させるには、5000μm2程の発熱体の面積であったが、昨今では4pl以下の液滴を吐出させるために、400μm2程の発熱体の面積となっている。半導体プロセスにおける最小デザインルールも向上しているが製造公差が大きくなってしまう傾向がある。
【0028】
また、コストダウンのため、基板サイズを小さくするために、配線抵抗値の公差、またMOSにおける公差も大きくなっている。MOSの公差については、先に示した特開平10−138484号公報のように、補正回路を設ける手段もあるが、補正回路は基板に機能をさらに設ける必要があり、コストアップにつながっていた。
【0029】
また、発熱体に接続するための配線も基板サイズを小さくするため細くする必要があり、これによる配線抵抗値の公差も大きくなってしまっていた。
【0030】
このように記録ヘッドにおける製造公差が大きくなるため、先に示した発熱体への通電時間(駆動パルス)における制御は複雑化し困難となってきている。駆動パルスにおける制御は、制御分の駆動テーブルが公差分必要である。駆動テーブルを格納するメモリが必要であり、このメモリの増大や、駆動テーブルを細かくするために周波数の高いクロック信号を作り出すことが必要となったりしており、どちらも困難になっていた。
【0031】
駆動電圧における制御はさらに困難となっている。電圧の制御を行うには、高精度の電圧設定が必須となる。しかしながら、駆動電圧は、ヒータに電力を供給する電源であり、電流値がプリンタ電気系においては比較的大きく、電力を多大に消費する。
【0032】
このような大電力を消費する発熱体供給電源を高精度に制御することは大変困難である。設定精度を下げれば、先に述べたように記録ヘッドの記録動作やその寿命に大きな影響を与える。ヘッド寿命においても、最近では大判のプロッタやネットワークプリンタとして用いる記録ヘッドにおいては、更なる長寿命が必要となっている。
【0033】
従って、本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、記録ヘッドの製造ばらつきが増大しても、安定したインク吐出による高画質な印刷を可能とすることである。
【0034】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係わるインクジェット記録ヘッドは、通電することにより発熱してインクを加熱する発熱体と、該発熱体を駆動するMOSトランジスタと、該MOSトランジスタを駆動する論理回路と、該論理回路から出力される信号電圧を所定の電圧に変換して前記MOSトランジスタのゲート電極に印加する電圧変換手段とを備え、前記電圧変換手段は、電圧供給部と、該電圧供給部からの電圧により前記信号電圧を前記所定の電圧に変換して前記MOSトランジスタのゲート電極に印加する電圧変換部を備えることを特徴とする。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0036】
まず、本実施形態の概要について説明する。
【0037】
本実施形態のインクジェット記録ヘッドは、通電することにより発熱してインクを加熱する発熱体と、該発熱体を駆動するMOSトランジスタと、該MOSトランジスタを駆動する論理回路と、該論理回路から出力される信号電圧を所定の電圧に変換して前記MOSトランジスタのゲート電極に印加する電圧変換手段とを備え、前記電圧変換手段は、電圧供給部と、該電圧供給部からの電圧により前記信号電圧を前記所定の電圧に変換して前記MOSトランジスタのゲート電極に印加する電圧変換部を備える。
【0038】
また、本実施形態のインクジェット記録ヘッドにおいて、前記インクジェット記録ヘッドは、複数の前記発熱体を備え、該複数の発熱体のそれぞれに印加する電圧値をそれぞれ個別に設定可能であることが好ましい。
【0039】
また、本実施形態のインクジェット記録ヘッドにおいて、前記電圧変換部は、前記インクジェット記録ヘッドの印字モードに応じて、前記MOSトランジスタのゲート電極に印加する電圧を変化させることが好ましい。
【0040】
また、本実施形態のインクジェット記録ヘッドの製造方法は、上記のインクジェット記録ヘッドを製造する方法であって、複数の前記発熱体の抵抗値又は配線抵抗値を検出する検出工程と、該検出工程において検出された前記複数の発熱体で消費されるエネルギーが略一定となるように、前記電圧変換部の特性を設定する設定工程とを備える。
【0041】
また、本実施形態のインクジェット記録ヘッドの製造方法において、前記発熱体の臨界発泡エネルギーを検出する工程をさらに備えることが好ましい。
【0042】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0043】
<装置本体の概略説明>
図1は、本発明の代表的な実施の形態であるインクジェットプリンタIJRAの構成の概要を示す外観斜視図である。
【0044】
図1において、駆動モータ5013の正逆回転に連動して駆動力伝達ギア5009〜5011を介して回転するリードスクリュー5005の螺旋溝5004に対して係合するキャリッジHCはピン(不図示)を有し、ガイドレール5003に支持されて矢印a,b方向を往復移動する。キャリッジHCには、記録ヘッドIJHとインクタンクITとを内蔵した一体型インクジェットカートリッジIJCが搭載されている。5002は紙押え板であり、キャリッジHCの移動方向に亙って記録用紙Pをプラテン5000に対して押圧する。5007,5008はフォトカプラで、キャリッジのレバー5006のこの域での存在を確認して、モータ5013の回転方向切り換え等を行うためのホームポジション検知器である。5016は記録ヘッドIJHの前面をキャップするキャップ部材5022を支持する部材で、5015はこのキャップ内を吸引する吸引器で、キャップ内開口5023を介して記録ヘッドの吸引回復を行う。5017はクリーニングブレードで、5019はこのブレードを前後方向に移動可能にする部材であり、本体支持板5018にこれらが支持されている。ブレードは、この形態でなく周知のクリーニングブレードが本例に適用できることは言うまでもない。又、5021は、吸引回復の吸引を開始するためのレバーで、キャリッジと係合するカム5020の移動に伴って移動し、駆動モータからの駆動力がクラッチ切り換え等の公知の伝達機構で移動制御される。
【0045】
これらのキャッピング、クリーニング、吸引回復は、キャリッジがホームポジション側の領域に来た時にリードスクリュー5005の作用によってそれらの対応位置で所望の処理が行えるように構成されているが、周知のタイミングで所望の動作を行うようにすれば、本例にはいずれも適用できる。
【0046】
<制御構成の説明>
次に、上述した装置の記録制御を実行するための制御構成について説明する。
【0047】
図2はインクジェットプリンタIJRAの制御回路の構成を示すブロック図である。制御回路を示す同図において、1700は記録信号を入力するインタフェース、1701はMPU、1702はMPU1701が実行する制御プログラムを格納するROM、1703は各種データ(上記記録信号や記録ヘッドIJHに供給される記録データ等)を保存しておくDRAMである。1704は記録ヘッドIJHに対する記録データの供給制御を行うゲートアレイ(G.A.)であり、インタフェース1700、MPU1701、RAM1703間のデータ転送制御も行う。1710は記録ヘッドIJHを搬送するためのキャリアモータ、1709は記録紙搬送のための搬送モータである。1705は記録ヘッドIJHを駆動するヘッドドライバ、1706,1707はそれぞれ搬送モータ1709、キャリアモータ1710を駆動するためのモータドライバである。
【0048】
上記制御構成の動作を説明すると、インタフェース1700に記録信号が入るとゲートアレイ1704とMPU1701との間で記録信号がプリント用の記録データに変換される。そして、モータドライバ1706、1707が駆動されると共に、ヘッドドライバ1705に送られた記録データに従って記録ヘッドIJHが駆動され、記録が行われる。
【0049】
次に、本発明の特徴的な部分について説明する。
【0050】
(第1の実施形態)
図3は第1の実施形態の記録ヘッドIJHの駆動回路における、電圧変換部の回路図である。従来例である図8に示した記録ヘッドの電圧変換部511にあたるものである。発熱駆動部の電源電圧が405、第2の駆動電圧(VHT)が512である。
【0051】
511がNMOSパワートランジスタ502のゲート入力電圧を制御する電圧変換部であり、昇圧用抵抗513、オフセットNMOS514を備え、ラッチ403より出力されるロジック出力(5Vor3.3V)を昇圧する回路である。NMOSパワートランジスタ502のゲート入力電圧が入力されると、パワートランジスタ502がONされ、電源電圧405から発熱体401に電流が流れる。このとき、パワートランジスタ502は、ゲート電圧値(VHTにより変化)に応じて異なる静特性を示し、図10に示す可変抵抗的な特性を示す。図5に発熱体の電流経路における等価回路図を示す。発熱体を流れる電流経路には、抵抗要素として、発熱体(R)401、パワートランジスタ負荷(Rmos:具体的には抵抗値)、配線抵抗(Rl)の大きくわけて3つが存在する。これはそれぞれ製造工程において、あるバラツキをもって製造される。その場合、発熱体Rに流れる電流値が変化し、発熱体で発生されるエネルギーがバラツキをもつ。これを補正するため、従来では通電時間(駆動パルス幅)を変化させ、ほぼ同じエネルギーが発熱体部で消費されるように制御が行われていた。しかし上述したように、制御パルスはこの3パラメータにより変化するものであり、バラツキが大きくなるとその制御は大変複雑なものとなっていた。これを改善すべく本実施形態では、図5において、パワートランジスタ502の負荷(Rmos)を第2電源VHTを変化させることにより、ゲート電圧値を変化させ、一定の駆動条件によるバラツキ補正を実現する。
【0052】
図11に制御の例を示す。
【0053】
まず、設計値は、発熱体抵抗値R=100Ω、パワートランジスタ負荷Rmos=20Ω(VHT=13.0V)、配線抵抗Rl=40Ωとなっており、駆動電圧20V、駆動パルス幅1.9μsである。これに対し、例(1)では、発熱体抵抗値R=115Ω、パワートランジスタ負荷Rmos=24Ω、配線抵抗Rl=48Ωとバラツキを生じた場合、従来では、ヒータで消費されるエネルギーが同じになるよう、図11に示すように、駆動パルス幅を2.45μsに変更して制御していた。また例(2)では、発熱体抵抗値R=85Ω、パワートランジスタ負荷Rmos=16Ω、配線抵抗Rl=32Ωとバラツキを生じた場合、従来では、同じく図11に示すように、駆動パルス幅を1.45μsに変更して制御していた。
【0054】
しかし本実施形態によれば、例(1)では、第2の駆動電圧(VHT)を可変制御し、パワートランジスタ負荷Rmos=8Ω(VHT=17.5V)とすることで駆動パルス幅を設計値と同じ1.9μsとすることができる。また例(2)では、第2の駆動電圧(VHT)を可変制御し、パワートランジスタ負荷Rmos=30Ω(VHT=12.5V)とすることで駆動パルス幅を設計値と同じ1.9μsとすることができる。
【0055】
この原理を次に説明する。
【0056】
図5において、発熱体を流れる電流値をi、駆動電圧をVH、駆動パルスをPwとすると、発熱体で消費されるエネルギーは、
E=i2R=VH2・R/(R+Rmos+Rl)2Pw
と表される。VH、Pwを一定とすると、Eを一定とするには
R/(R+Rmos+Rl)2=一定 …(1)
となるようにすれば良い。すなわち、それぞれのバラツキをもった抵抗パラメータR、Rlに対し、上記式が一定値を示すように、Rmosを決定する。その際、Rmosはゲート電圧によって変化できるから、搭載される記録ヘッドに応じて第2の電源電圧(VHT)を変化させることにより、ゲート電圧をRmosが所望の値になるように制御すれば、一定の駆動条件(電源電圧、駆動パルス幅)で駆動を行うことができる。
【0057】
(第2の実施形態)
図4は上記ゲート電圧の制御を記録ヘッド内で行う場合の電圧変換部の構成例を示した図である。
【0058】
図4において、VHTには記録ヘッドの電源電圧VHと同じ電圧が供給される。513a〜513dは、それぞれ昇圧用抵抗であり、515a〜515dは抵抗を選択するための切断端子である。まず、この記録ヘッドの製造時において、発熱体抵抗、配線抵抗、パワートランジスタ負荷を実際にパワートランジスタをONさせることにより検知する。この出力値に従って、上記式(1)が一定となるように、Rmosが決定される。次にRmosを出力するためのゲート電圧が決まり、所望のゲート電圧が出力されるべく、最も適正な昇圧抵抗となるように、a〜dの切断端子を選択切断する。それぞれの抵抗値のうち1つを選んでも良いし、このうちの2つ、又は3つの並列抵抗値として利用しても良い。これにより、第2の実施形態においては、第2の電源電圧を制御する必要はなく、一定の駆動条件(電源電圧、駆動パルス幅)で駆動を行うことができる。
【0059】
なおヘッド製造時の各種抵抗の検知は、テスト用発熱体、配線抵抗などを設けて予測検知しても良い。また、実際にインクを発泡吐出や印字をさせ、臨界の発泡エネルギーを求めて、Rmosの補正を行った方が、記録ヘッド総合のバラツキを補正できるため、より有効である。
【0060】
(第3の実施形態)
図12にもうひとつの制御例を示す。
【0061】
上記の第1及び第2の実施形態においては、あらゆる製造バラツキにおいて、発熱体で消費されるエネルギーが一定となるように制御を行う様に説明した。
【0062】
図12は、これを更に発展させた例であり、印字モードによる第2の電源電圧制御について説明する。
【0063】
図12に示す設計値の抵抗パラメータをもった記録ヘッドにおいて、例(3)では、VHTを低く設定することにより、パワートランジスタ負荷Rmosを大きくし、駆動パルス幅を3.5μsにすることができる。また例(4)では、VHTを高く設定することにより、Rmosを小さくし、駆動パルス幅を1.4μsにすることができる。駆動パルス幅を変更することで、インクジェット方式によるインク吐出量が変化することが知られている。図13に駆動パルス幅と吐出量の変化を示したものを示す。図13に示すように第2の電源電圧を制御することによって、吐出量を変化させることが可能である。すなわち印字モードによって、吐出量を変化させることが可能であり、高画質印刷では吐出量を小さくし、高速モードでは吐出量を大きくするといった吐出量を簡単に制御することができる。
【0064】
第2の電源電圧(VHT)によって供給される電流は、本実施形態では、1mA以下であり、発熱体に供給される電流100mA程度と比べはるかに小さい。吐出量変調の方法として、電源電圧を変化させる方法もあるが、第3の実施形態による供給電力の小さい電源電圧を制御する方が、簡易であり信頼性も高いものとなるといった優位性もある。
【0065】
以上説明したように、上記の実施形態によれば、記録ヘッドにおける発熱体抵抗、配線抵抗のバラツキや、発熱体上の保護膜バラツキによる記録素子の吐出バラツキがあっても、ゲート電圧を任意に可変である、簡易なゲート電圧変換部を記録ヘッドに設けたり、あるいは消費電力が少なく制御のより容易で簡素である第2電源を用いることにより、前述の記録ヘッドにおける製造公差が増大しても、安定した吐出による高画質な印刷で、かつ高耐久性、高信頼性の記録ヘッド及び記録ヘッド製造方法、記録装置を提供できる。
【0066】
また、従来のバラツキを補正するためにパルス幅を制御するといった複雑な制御手段も必要なくなり、制御を簡素化あるいは削除することが可能となり、かつ安定した吐出による高画質な印刷で、かつ高耐久性、高信頼性の記録ヘッド及び記録ヘッド製造方法、記録装置を提供できる。
【0067】
また、記録ヘッドのバラツキをさらに大きく許容することもでき、製造歩留まりが向上するだけでなく、さらには発熱体を有する回路基板チップサイズをより小さくすることもでき、大幅なコストダウンにつながる。
【0068】
さらには、消費電力が少なく制御のより容易で簡素である第2電源を用いることにより、簡単に吐出量変調を行うこともできる。
【0069】
以上の実施形態は、特にインクジェット記録方式の中でも、インク吐出を行わせるために利用されるエネルギーとして熱エネルギーを発生する手段(例えば電気熱変換体やレーザ光等)を備え、前記熱エネルギーによりインクの状態変化を生起させる方式を用いることにより記録の高密度化、高精細化が達成できる。
【0070】
その代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4723129号明細書、同第4740796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。この方式はいわゆるオンデマンド型、コンティニュアス型のいずれにも適用可能であるが、特に、オンデマンド型の場合には、液体(インク)が保持されているシートや液路に対応して配置されている電気熱変換体に、記録情報に対応していて核沸騰を越える急速な温度上昇を与える少なくとも1つの駆動信号を印加することによって、電気熱変換体に熱エネルギーを発生せしめ、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさせて、結果的にこの駆動信号に1対1で対応した液体(インク)内の気泡を形成できるので有効である。この気泡の成長、収縮により吐出用開口を介して液体(インク)を吐出させて、少なくとも1つの滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長収縮が行われるので、特に応答性に優れた液体(インク)の吐出が達成でき、より好ましい。
【0071】
このパルス形状の駆動信号としては、米国特許第4463359号明細書、同第4345262号明細書に記載されているようなものが適している。なお、上記熱作用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第4313124号明細書に記載されている条件を採用すると、さらに優れた記録を行うことができる。
【0072】
また、以上の実施形態は記録ヘッドを走査して記録を行なうシリアルタイプの記録装置であったが、記録媒体の幅に対応した長さを有する記録ヘッドを用いたフルラインタイプの記録装置であっても良い。フルラインタイプの記録ヘッドとしては、上述した明細書に開示されているような複数記録ヘッドの組み合わせによってその長さを満たす構成や、一体的に形成された1個の記録ヘッドとしての構成のいずれでもよい。
【0073】
加えて、上記の実施形態で説明した記録ヘッド自体に一体的にインクタンクが設けられたカートリッジタイプの記録ヘッドのみならず、装置本体に装着されることで、装置本体との電気的な接続や装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチップタイプの記録ヘッドを用いてもよい。
【0074】
また、以上説明した記録装置の構成に、記録ヘッドに対する回復手段、予備的な手段等を付加することは記録動作を一層安定にできるので好ましいものである。これらを具体的に挙げれば、記録ヘッドに対してのキャッピング手段、クリーニング手段、加圧あるいは吸引手段、電気熱変換体あるいはこれとは別の加熱素子あるいはこれらの組み合わせによる予備加熱手段などがある。また、記録とは別の吐出を行う予備吐出モードを備えることも安定した記録を行うために有効である。
【0075】
さらに、記録装置の記録モードとしては黒色等の主流色のみの記録モードだけではなく、記録ヘッドを一体的に構成するか複数個の組み合わせによってでも良いが、異なる色の複色カラー、または混色によるフルカラーの少なくとも1つを備えた装置とすることもできる。
【0076】
以上説明した実施の形態においては、インクが液体であることを前提として説明しているが、室温やそれ以下で固化するインクであっても、室温で軟化もしくは液化するものを用いても良く、あるいはインクジェット方式ではインク自体を30°C以上70°C以下の範囲内で温度調整を行ってインクの粘性を安定吐出範囲にあるように温度制御するものが一般的であるから、使用記録信号付与時にインクが液状をなすものであればよい。
【0077】
さらに加えて、本発明に係る記録装置の形態としては、コンピュータ等の情報処理機器の画像出力端末として一体または別体に設けられるものの他、リーダ等と組み合わせた複写装置、さらには送受信機能を有するファクシミリ装置の形態を取るものであっても良い。
【0078】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、記録ヘッドの製造ばらつきが増大しても、安定したインク吐出による高画質な印刷を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の代表的な実施の形態であるインクジェットプリンタIJRAの構成を示す外観斜視図である。
【図2】インクジェットプリンタIJRAの制御回路の構成を示すブロック図である。
【図3】記録ヘッドIJHにおける第1の実施形態の電圧変換部の回路図である。
【図4】記録ヘッドIJHにおける第2の実施形態の電圧変換部の回路図である。
【図5】発熱体を流れる電流経路の等価回路である。
【図6】従来の記録ヘッドの回路構成を示す図である。
【図7】図6に示した記録ヘッドの駆動回路を駆動するための各種信号のタイミングチャートである。
【図8】図6に示す記録ヘッドのパワートランジスタにnMOSFETを用いた従来の例を示すブロック図である。
【図9】nMOSトランジスタのVDS−IDS特性を示す図である。
【図10】図3におけるVHT入力電圧とRmos抵抗値特性を示したグラフである。
【図11】本発明の第1の実施形態の制御例と従来の制御例を示した図である。
【図12】本発明の第3の実施形態の制御例を示した図である。
【図13】駆動パルス幅と吐出量の関係を示した図である。
【符号の説明】
401 発熱体(ヒータ)
402 NPNトランジスタ
403 ラッチ回路
404 シフトレジスタ
405 電源電圧
502 nMOSトランジスタ
511 電圧変換部
512 第2の電源電圧
513 昇圧抵抗
514 nMOS
515 切断端子
Claims (1)
- 通電することにより発熱してインクを加熱する発熱体と、
該発熱体を駆動するMOSトランジスタと、
該MOSトランジスタを駆動する論理回路と、
該論理回路から出力される信号電圧を所定の電圧に変換して前記MOSトランジスタのゲート電極に印加する電圧変換手段とを備え、
前記電圧変換手段は、電圧供給部と、該電圧供給部からの電圧により前記信号電圧を前記所定の電圧に変換して前記MOSトランジスタのゲート電極に印加する電圧変換部を備えることを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2003001381A JP2004209885A (ja) | 2003-01-07 | 2003-01-07 | インクジェット記録ヘッド |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2020138152A (ja) * | 2019-02-28 | 2020-09-03 | キヤノン株式会社 | ウルトラファインバブル生成装置 |
-
2003
- 2003-01-07 JP JP2003001381A patent/JP2004209885A/ja not_active Withdrawn
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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